MEK/ERKシグナル伝達を調節する化合物のスクリ一二ング方法および該化合物の 薬剤用途 技術分野
本発明は、ポイツ ·イエーガーズ症候群に関連する細胞内シグナル伝達を調節す る化合物のスクリーニングおよびその薬剤用途に関する。 背景技術
ポイツ .イエ一ガーズ症候群 (Peutz-Jeghers Syndrome, MIM 175200, PJS)は、 消化管におけるポリポーシス症と、粘膜や皮膚における色素班形成を主な症候とす るヒトの遺伝病である。 PJSは常染色体優性遺伝形式により遺伝するが、 1997年 He 遺 inki等により、 PIS患者家系における連鎖 (リンケージ) 解析からその原因遺伝 子は、第 19番染色体 pl3.3領域にマップされることが示された(He讓 inki A et al., Nat Genet 1997 Jan; 15 (1) :87-90) 。 この領域には、 本発明者らが新規プロティ ンキナーゼ探索プロジェクトにおいて見いだしていた新規セリンノスレオニンキ ナ一ゼ LKB1 (GenBankァクセッションナンバー U63333) が存在する。 ; fenne等はこれ を原因遺伝子の候補であると考え、 PJS患者における LKB1遺伝子の変異解析を行つ たところ、調べた全ての患者において LKB1遺伝子の変異が存在することが明らかと なった (Jenne DE et al., Nat Genet 1998 Jan;18(l) :38-43) 。 さらに、 他のグ ループからも同様の報告が相次いでなされ、 現在までに少なくとも 60種類以上の L KB1遺伝子変異が PJS患者において見いだされている(He匪 inki A et al., Nature 1998 Jan 8;391 (6663) : 184 - 7、 Nakagawa H et al., Hum Genet 1998 Aug; 103 (2): 168 - 72、 Resta N et al., Cancer Res 1998 Nov 1 ;58(21) :4799- 801、 Ylikorka la A et al., Hum Mol Genet 1999 Jan;8(l) :45-51) 。 また、 本発明者等は、 LKB
1遺伝子産物が自己リン酸化能を持つキナーゼであり、 PJS患者において見いだされ たミスセンス変異はキナーゼ活性を失う変異であることの証明を行った(Mehenn i H et al., Am J Hum Genet 1998 Dec;63(6) :1641-50) 。 これらの事実から、 LKBl セリン/スレオニンキナーゼの遺伝子変異による機能欠損が HSの発症原因である ことが確証されるに至っている。
また、 PJS患者は様々な癌に対する発症リスクが健常人に比較して著しく増加し ていることが疫学的研究から知られており、このことからその原因遺伝子は癌抑制 遺伝子様の活性を持つことが推測されていた。 実際、 PJSと無関係な散発性の癌に おいても LKB1遺伝子の変異がみられることが報告されてきており、一般の散発性癌 においても LKB 1遺伝子の不活が関与していることが明らかとなりつつある (Dong SM et al. , Cancer Res 1998 Sep 1 ;58(17) :3787-90, Rowan A et al., J Inves t Dermatol 1999 Apr ; 112 (4) :509 - 11、 Guldberg P et al. , Oncogene 1999 Mar 4;18(9) :1777-80, Su GH et al., Am J Pathol. 1999 Jun; 154(6) : 1835-40, Wa ng ZJ et al., J Pathol. 1999 May;188(l) :9-13) 。
ところで、 単一の LKBl遺伝子の異常により、 ポリポーシス症や、 癌化といった PJS 患者にみられる表現形質が現れるという事実からは、 LKB1が細胞増殖や細胞分化の 制御機構において要となる非常に重要な役割を果たしていることが示唆される。従 つて、 LKB1が関与する細胞内生理機能を分子レベルで明らかにすることができれば、 その分子機構を標的とする薬剤を合理的に設計することができ、これによりこれら 表現形質を人為的にコントロールすることが可能であると考えられる。そして、 こ のような薬剤には、 Sを初めとする疾患の治療や予防への応用も期待できる。 しかしながら、現段階では、 LKB1が関与する細胞内生理機構に関しては、 その分 子レベルでの解明は、 ほとんどなされていない。 発明の開示
本発明は、 このような状況に鑑みてなされたものであり、 その目的は、 PJSの原
因遺伝子である LKB1が関与する細胞内生理機構を解明すると共に、該細胞内機構を 制御する化合物およびそのスクリーニング方法を提供することにある。 さらに、本 発明は、該細胞内生理機構を制御する化合物を有効成分とする薬剤を提供すること をも目的とする。
本発明者等は、 LKB1が関与する細胞内シグナル伝達経路の特定を目指し、 LKB1 の様々な既知のシグナル伝達経路への関与について検討を行った。 その結果、 HeL a細胞において、 LKB 1が活性化型 K_Rasによる c- f o s遺伝子プロモータ一の活性化を 強く抑制することが明らかとなった (図 1) 。 この c - fosプロモ一ターは、 既知の転 写調節因子結合エレメントとして、 SRE (血清反応性エレメント) 、 CRE (cAMP反応 性エレメント) 、 及び TRE (TPA反応性エレメント) を持つが、 Rasによるこのプロ モータ一の活性化は、 Ras/MEK/ERKを介する経路により、主に SREが活性化されるこ とにより起こることが知られている(Fukumoto Y et al. , J Biol Chem 1990 Jan 15 ; 265 (2) : 774-80) 。 即ち、 図 2に示したように、 この経路は、 Rasにより c- Rafキ ナ一ゼが活性化され、それにより MEK1, 2キナーゼ、ついで ERK1, 2キナーゼが活性 化され、最終的に転写因子である Elklがリン酸化されることにより遺伝子転写が活 性化される経路であり、 いわゆる Ras/MEK/ERKカスケードとして、 主に細胞の増殖 調節において非常に重要な役割をしていることが良く知られている。 LKB1は活性化 型 K- Rasを強制発現することによつて活性化されたこのシグナル伝達経路のいずれ かのステップに作用して SREの活性化を抑制したものと考えられた。 そこで、 本発 明者等は、 次に、 LKB1が関与するステップについて調べたところ、 LKB1は Rasの下 流因子である MEK1による人工的 SREの活性化をも強く抑制することが明らかとなつ た (図 3) 。 このことから、 LKB1は、 少なくとも MEK1よりも下流で作用しているも のと考えられた。
一方、 MEKK1による C- fosプロモーターの活性化 (図 4) 、 同じく MEKK1による NF κ Β (Nuclear Factor of κ Β cel ls) 結合エレメントの活性化 (図 5) 、 PKA (cAM P依存性キナーゼ) による CREを介した C- fosプロモーターの活性化(図 6) に対して
は LKB1は全く作用しないことが判明した。 このことから、 LKB1の作用は、 Ras/MEK /ERKシグナル伝達経路特異的であると考えられた。
次に、 PJS患者において見出された変異体 (L67P、 D176N、 W308C) の作用につい て調べた (図 7) 。 その結果、 これらのキナーゼ活性が減弱した変異体は、 その抑 制効果もまた著しく減弱していることが明らかとなった。
Ras/MEK/ERKシグナル伝達経路は、 増殖因子レセプ夕一などからのシグナルを Ra sを介して伝達する経路として、 正常細胞の増殖制御機構などにおいて重要な役割 を持つことが知られている。 PJS患者においては、 遺伝子変異により LKB1キナーゼ が不活化し、 MEK/ERKシグナルの抑制が起こらなくなることにより細胞の過剰な増 殖が起こり、 ポリポーシスや発癌といった形質となって現れることが予想される。 従って、 LKB1キナーゼ活性を阻害する、 あるいは LKB1タンパク量を減少させるこ とにより、 MEK/ERKシグナル伝達を活性化することができ、 逆に、 LKB1キナーゼを 活性化する、 あるいは LKB1タンパク量を増加させることにより、 このシグナル伝達 を抑制することが可能であると考えられる。 LKB1遺伝子やその産物であるキナーゼ を標的とする薬剤は、 MEK/ERKシグナル伝達の異常により生じる様々な疾病に対し て有効であることが期待される。
本発明は以上の知見に基づいて完成されたものであり、 MEK/ERKシグナル伝達機 構を制御する化合物およびそのスクリーニング法、並びに、該シグナル伝達機構を 制御する化合物を有効成分とする薬剤を提供する。
より詳しくは、 本発明は、
( 1 ) MEK/ERKシグナル伝達を抑制する化合物をスクリ一二ングする方法であつ て、
( a ) LKB1蛋白質に被検試料を接触させる工程、
( b ) LKB1蛋白質のキナーゼ活性を測定する工程、 および
( c ) 被検試料を接触させない場合と比較して、 工程 (b ) において測定されるキ ナ一ゼ活性を増加させる化合物を選択する工程、 を含む方法、
( 2 ) MEK/ERKシグナル伝達を抑制する化合物をスクリ一二ングする方法であつ て、
(a) LKB1遺伝子を発現する細胞に被検試料を接触させる工程、
(b) 該細胞における LKB1遺伝子の発現量を測定する工程、 および
(c) 被検試料を接触させない場合と比較して、 工程 (b) において測定される L KB1遺伝子の発現量を増加させる化合物を選択する工程、 を含む方法、
(3) MEK/ERKシグナル伝達を促進する化合物をスクリーニングする方法であつ て、
(a) LKB1蛋白質に被検試料を接触させる工程、
(b) LKB1蛋白質のキナーゼ活性を測定する工程、 および
(c) 被検試料を接触させない場合と比較して、 工程 (b) において測定されるキ ナーゼ活性を低下させる化合物を選択する工程、 を含む方法、
(4) MEK/ERKシグナル伝達を促進する化合物をスクリーニングする方法であつ て、
(a) LKB1遺伝子を発現する細胞に被検試料を接触させる工程、
(b) 該細胞における LKB1遺伝子の発現量を測定する工程、 および
(c) 被検試料を接触させない場合と比較して、 工程 (b) において測定される L KB1遺伝子の発現量を低下させる化合物を選択する工程、 を含む方法、
(5) ポイツ ·イエ一ガーズ症候群の治療薬候補化合物をスクリーニングする方 法であって、
(a) c_fosプロモーターまたは SREの下流にレポーター遺伝子が機能的に結合され た構造を含むベクタ一、 および Ras/MEK/ERKシグナル伝達経路を構成する蛋白質を 発現するベクターが導入された細胞を提供する工程、
(b) 該細胞に被検試料を接触させ、 レポーター活性を測定する工程、 および
(c) 被検試料を接触させない場合と比較して、 工程 (b) において測定されるレ ポー夕一活性を低下させる化合物を選択する工程、 を含む方法、
(6) Ras/MEK/ERKシグナル伝達経路を構成する蛋白質が、 Ras、 c-Raf. MEK1、 および MEK2からなる群より選択される、 (5) に記載の方法、
(7) (1) または (2) に記載の方法により単離しうる、 MEK/ERKシグナル伝 達を抑制する化合物、
(8) (3) または (4) に記載の方法により単離しうる、 MEK/ERKシグナル伝 達を促進する化合物、
(9) (5) または (6) に記載の方法により単離しうる、 ポイツ,イエ一ガー ズ症候群の治療薬候補化合物、
(10) LKB1のキナーゼ活性を促進する化合物を有効成分とする、 MEK/ERKシグ ナル伝達を抑制する薬剤、
(11) . 化合物が (1) に記載の方法により単離しうる化合物である、 (10) に記載の薬剤、
(12) LKB1遺伝子の発現を促進する化合物を有効成分とする、 MEK/ERKシグナ ル伝達を抑制する薬剤、
(13) 化合物が (2) に記載の方法により単離しうる化合物である、 (12) に記載の薬剤、
(14) LKB1を有効成分とする、 MEK/ERKシグナル伝達を抑制する薬剤、
(1 5) LKB1のキナーゼ活性を抑制する化合物を有効成分とする、 MEK/ERKシグ ナル伝達を促進する薬剤、
(16) 化合物が LKB1蛋白質に結合する抗体である、 (15) に記載の薬剤、
(17) 化合物が (3) に記載の方法により単離しうる化合物である、 (15) に記載の薬剤、
(18) LKB1遺伝子の発現を抑制する化合物を有効成分とする、 MEK/ERKシグナ ル伝達を促進する薬剤、
(19) 化合物が (4) に記載の方法により単離しうる化合物である、 (18) に記載の薬剤、
( 2 0 ) MEK/ERKシグナル伝達を抑制する化合物を有効成分とする、 ポイツ ·ィ エーガーズ症候群治療薬、
( 2 1 ) c-f osプロモータ一または SREの活性を抑制する化合物を有効成分とする、 ポイツ ·イエ一ガ一ズ症候群治療薬、 および
( 2 2 ) 化合物が (5 ) または (6 ) に記載の方法により単離しうる化合物であ る、 (2 0 ) または (2 1 ) に記載の治療薬、 を提供するものである。
なお、 本発明において 「MEK/ERKシグナル伝達」 とは、 低分子量 GTP結合タンパク 質の一つである Rasにより、 c-Rafキナーゼが活性化され、 次いで MEK1 , 2キナーゼ が活性化され、 次に ERK1 , 2キナーゼが活性化され、 最終的に E lklなどの転写因子 がリン酸化されて活性化し、 標的遺伝子の発現が誘導される経路 (Ras/MEK/ERKシ グナル伝達経路) における、 MEKより下流のシグナル伝達を意味する。
本発明は、 MEK/ERKシグナル伝達を調節 (促進あるいは抑制) する化合物をスク リーニングする方法を提供する。 本実施例において、 LKB1蛋白質が MEK/ERKシグナ ル伝達を抑制することが示された。そして、 この抑制が、 LKB1蛋白質のキナーゼ活 性に基づくことが示唆された。 これらの事実は、 LKB1蛋白質のキナーゼ活性あるい は LKB1蛋白質の発現を調節することにより、 MEK/ERKシグナル伝達を調節すること ができることを意味する。 本発明の MEK/ERKシグナル伝達を調節する化合物のスク リーニング方法は、 かかる知見に基づくものである。
このスクリーニング方法の一つの態様は、 LKB1蛋白質のキナーゼ活性を指標とす る方法に関し、 LKB1蛋白質に被検試料を接触させ (工程 (a ) ) 、 LKB1蛋白質のキ ナーゼ活性を測定し (工程 (b ) ) 、 被検試料を接触させない場合と比較して、 ェ 程(b ) において測定されるキナーゼ活性を増加または低下させる化合物を選択す る (工程 (c ) ) ことによって実施することができる。
被検試料としては特に制限はなく、 例えば、 細胞抽出物、 細胞培養上清、 発酵微 生物産生物、 海洋生物抽出物、 植物抽出物、 精製若しくは粗精製タンパク質、 ぺプ チド、 非ペプチド性化合物、 合成低分子化合物、 天然化合物が挙げられる。 被検試
料を接触させる本発明のタンパク質は、 例えば、 精製したタンパク質であっても、 担体に結合させた形態であってもよい。 また、 LKB1タンパク質を発現する細胞に被 検試料を接触させても良い。
LKB1タンパク質のキナ一ゼ活性は、例えば、 LKB1タンパク質による自己リン酸化
(オートホスフォリレーション)活性として検出することができる。該活性は、 [ァ -32P] ATPからの32 Pの LKB1タンパク質への転移量として液体シンチレーションカウ ンタ一等で測定することができる。
キナーゼ活性の検出の具体的な方法の一例を以下に挙げる。 LKB1発現用プラスミ ド DNA (pcDNA3/LKBlmyc)などの約 10 i gを、 SuperFec t (Qiagen社) を用いた方法に より、 C0S7細胞、 HeLa細胞 (子宮類部癌由来細胞) 、 HeLa細胞由来細胞 (HeLa S3 など) 、 G361細胞 (メラノ一マ) 、 ヒト THP1、 K562、 SW480、 HEK293、 マウス NIH3 T3、 HL60 (ヒト白血病由来細胞) 、 正常線維芽細胞、 正常上皮細胞、 正常血管平 滑筋細胞、 正常骨芽細胞などの細胞に導入 (卜ランスフエクシヨン) する。 すなわ ち、 約 106個の細胞を 10cmディッシュに蒔き、 ー晚培養した後、 lO gのプラスミド DNAと 60 1の SuperFec tの混合物を添加し、約 3時間培養を行う。その後培養液を新 しいものに交換し、 さらに卜 2日間培養した後、細胞をトリプシン -EDTA液ではがし て回収する。 細胞を NP40 キナーゼライシスバッファ一aOmM トリス塩酸 pH7. 8、 1% NP40、 0. 15M塩化ナトリウム、 lmM EDTA, 50mM フッ化ナトリウム、 5mM ピロリ ン酸ナトリウム、 10 g/ml ァプロチニン、 lmM PMSF) に懸濁し、 4°Cで 30分混合す ることにより夕ンパク質を可溶化する。こうして得た細胞ライゼ一トにプロティン A/Gプラスァガロース(Santa Cruz社)を加え 30分混合することにより非特異的にビ ーズに吸着するタンパクを除く。 次に抗 c_Myc抗体 A (Santa Cruz)を加え 4でで 1 時間放置した後、プロテイン A/Gプラスァガロース を加えてさらに 1時間放置する。 これを遠心する事により免疫複合体を沈殿させ、 NP40 キナ一ゼライシスバッファ 一、 1Mの塩化ナトリウムを含んだバッファー、および 50mM トリス塩酸 (pH7. 8)によ つて何回か洗浄し、 キナーゼアツセィに供する。
キナ一ゼアツセィは 50mM トリス塩酸 (pH 7. 8) , lmM DTT、 10mM二価カチオン (M nなど)および 10 C iの [ァ -3ZP] ATPを含む全量 5.0 1の反応系で行う。 免疫沈降物を このキナーゼアツセィ溶液中で 37°C、 30分保温して反応を行った後、 SDS-PAGEサン プルバッファーを加え煮沸することにより反応を停止し SDS- PAGEを行う。ゲルをメ 夕ノール/酢酸溶液で固定した後、 乾燥させ、 BAS200イメージアナライザ一 (Fuj i Fi lm社) によってイメージを解析する。 キナーゼ活性は、 また、 文献 (Am J Hu m Genet (1988) Dec ; 63 (6) : 1641-50, Hum Mo 1 Genet (1999) Jan; 8 (l) :45-51) に 記載の方法で検出することもできる。
この測定の結果、被検試料を接触させない場合と比較して、被検試料を接触させ た場合において測定される LKB1蛋白質のキナーゼ活性が増加していれば、用いた被 検試料は、 MEK/ERKシグナル伝達を抑制する化合物の候補となり、 一方、 キナーゼ 活性が低下していれば、 用いた被検試料は、 MEK/ERKシグナル伝達を促進する化合 物の候補となる。
本発明における MEK/ERKシグナル伝達を調節する化合物のスクリーニング方法の 他の一つの態様は、 LKB1遺伝子の発現を指標とする方法に関し、 LKB1遺伝子を発現 する細胞に被検試料を接触させ (工程 (a ) ) 、 該細胞における LKB1遺伝子の発現 量を測定し (工程 (b) ) 、 被検試料を接触させない場合と比較して、 工程 ( b ) において測定される LKB1遺伝子の発現量を増加または低下させる化合物を選択す る (工程 (c ) ) ことによって実施することができる。
被検試料としては、 上記スクリーニングと同様に、 特に制限はない。 また、 LKB 1遺伝子を発現する細胞としては、 例えば、 C0S7細胞、 HeLa細胞 (子宮顏部癌由来 細胞) 、 HeLa細胞由来細胞(HeLa S3など) 、 G361細胞(メラノーマ) 、 ヒト THP1、 K562、 SW480、 HEK293, マウス NIH3T3 、 HL60 (ヒト白血病由来細胞) 、 正常線維芽 細胞、 正常上皮細胞、 正常血管平滑筋細胞、 正常骨芽細胞などの細胞を好適に用い ることができる。 LKB1遺伝子の発現量の検出は、 ノーザンブロッテイング法や RT - PCR法などの当業者に公知の手法を用いて行なうことができる。
この測定の結果、被検試料を接触させない場合と比較して、被検試料を接触させ た場合において測定される LKB1遺伝子の発現量が増加していれば、用いた被検試料 は、 MEK/ERKシグナル伝達を抑制する化合物の候補となり、 一方、 LKB1遺伝子の発 現量が低下していれば、 用いた被検試料は、 MEK/ERKシグナル伝達を促進する化合 物の候補となる。
また、 本発明は、 ポイツ ·イエ一ガーズ症候群の治療薬候補化合物をスクリ一二 ングする方法を提供する。本実施例においてポイツ ·イエーガーズ症候群の原因遺 伝子である LKB1が MEK/ERKシグナル伝達を抑制することが示された。 これらの事実 は、 MEK/ERKシグナル伝達の抑制を指標としてポイツ ·イエーガーズ症候群の治療 薬候補化合物をスクリ一二ングできることを意味する。本発明のボイッ ·ィェ一ガ ーズ症候群の治療薬候補化合物のスクリーニング方法は、かかる知見に基づくもの である。
この方法は、 c-fosプロモーターまたは SREの下流にレポ一夕一遺伝子が機能的に 結合された構造を含むベクタ一、 およ miEK/ERKシグナル伝達を構成する蛋白質を 発現するベクターが導入された細胞を提供し (工程 (a ) ) 、 該細胞に被検試料を 接触させ、 レポーター活性を測定し (工程 (b ) ) 、 被検試料を接触させない場合 と比較して、 工程(b ) において測定されるレポーター活性を低下させる化合物を 選択する (工程 (c ) ) ことによって実施することができる。
c - fos遺伝子のプロモーター領域は、 c-fos cDNAや、 c- fos遺伝子の配列を含む合 成オリゴ DNAをプローブとして用いてゲノム DNAライブラリーを通常の方法により スクリーニングすることにより得ることができる。またはゲノム DNAを铸型とした P CRによっても得ることができる。 こうして得た DNA断片のうち適当な領域を、 適当 なレポーター遺伝子の上流調節領域に組み込むことで C- fosプロモーターレポ一夕 —遺伝子を作製することができる。 レポ一ター遺伝子を含むプラスミド DNAとして は、 pTAL_Luc (CL0NTECH社) 、 pTA-Luc (CL0NTECH社) 、 TAL-SEAP (CL0NTECH社) などを用いることができる。 SREレポ一夕一遺伝子は、 例えば、 「AGGATGTCCATATT
AGGACATCTZ配列番号: 7」 からなる配列を複数回繰り返す配列を上記のような適 当なレポ一夕一遺伝子の上流調節領域に組み込むことで作製することができる。 S REレポーター遺伝子 (pSRE- Luc) については市販されており (Stratagene社)、 こ れを用いることもできる。
Ras/MEK/ERKシグナル伝達経路を構成するタンパク質を発現するべクタ一は次の ようにして作製することができる。 まず、 Ras/MEK/ERKシグナル伝達経路を構成す るタンパク質である Rasや MEK1の全オープンリーディングフレームを有する cDNAを 通常の cDNAライブラリ一スクリ一二ングゃ RT- PCR法によりクローニングする。これ を適当な動物細胞発現用ベクター、例えば pcDNA3ベクタ一 (Invi trogen) などに組 み込み発現ベクターとする。 この際、恒常的に活性化状態のタンパク質を発現する ように、 適当な変異を加えることもできる。 例えば Rasの場合は、 12番目のコドン を Valなどに置換する。 また、 MEK1の場合は、 上流のキナーゼによりリン酸化され ることが判明している 218番目と 222番目のアミノ酸を Gluなどに置換することによ り、 活性化タンパクとなることが知られている。 変異の導入は、 例えば GeneEdi to r™ (Promega社) などを用いた一般的な部位特異的変異導入法などによって行うこ とができる。
ベクターに発現させる Ras/MEK/ERKシグナル伝達経路を構成する蛋白質としては、 例えば Ras、 c- Raf、 MEK1、 MEK2を例示することができる。 これら蛋白質を発現する ベクタ一としては、 市販 (Stratagene社) のものを用いることもできる。
ベクターを導入する細胞としては、 例えば、 C0S7細胞、 HeLa細胞(子宮顏部癌由 来細胞) 、 HeLa細胞由来細胞 (HeLa S3など) 、 G361細胞 (メラノ一マ) 、 ヒト TH Pl、 K562、 SW480、 HEK293, マウス NIH3T3、 HL60 (ヒト白血病由来細胞) 、 正常線 維芽細胞、 正常上皮細胞、 正常血管平滑筋細胞、 正常骨芽細胞などの細胞を用いる ことができる。
スクリーニングに用い得るレポ一ター遺伝子としては、 例えば、 SREレポーター 遺伝子(pSRE- Luc、 Stratagene社) などが挙げられる。 ベクターの細胞への導入法
は、 SuperFec t (Qi agen社) 、 Lipofec t Amine (GIBCO BRL社) などのリン脂質を用 いた方法 (具体的には実施例 2に記載の方法) 、 リン酸カルシウム法、 エレクト口 ポレーシヨン法、 DEAE-デキストラン法など、 当業者に公知の方法により行なうこ とができる。
これにより調製された細胞に接触させる被検試料としては、例えば、細胞抽出物、 細胞培養上清、 発酵微生物産生物、 海洋生物抽出物、 植物抽出物、 精製若しくは粗 精製蛋白質、 ペプチド、 非ペプチド性化合物、 合成低分子化合物、 天然化合物など を用いることができるが、 特に制限はない。
被検試料を接触させた細胞のレポーター活性の測定は、ルシフエラーゼをレポ一 ターとした場合は、ルシフェラーゼにより分解されると化学発光する適当な基質を 用い、この発光をルミノメーターで測定することにより活性を評価することができ る。 ホ夕ルルシフェラ一ゼをレポーターとした場合は、 例えば、 ホタルルシフェリ ンを基質として用いることができる。またゥミシィタケルシフェラーゼをレポ一夕 —とした場合は、 例えば、 コエレンテラジンを基質として用いることができる。 D ua卜 Luc i f erase™ Repor ter Assay Sys tem (Promega社)などの市販のキットゃ試薬 を用いることができる。 i3ガラクトシダーゼやアルカリフォスファターゼなどをレ ポーターとした場合は、 これらの酵素により分解されると発色する適当な基質、 あ るいは化学発光する適当な基質を用い、 この発色、 あるいは発光をそれぞれ分光光 度計かルミノメーターで測定することにより活性を評価することができる。 また、 クロラムフエニコールァセチルトランスフェラ一ゼ (CAT) をレポ一夕一とした場 合は、 例えば、 14Cなどで標識したクロラムフエ二コールとァセチル CoAを基質とし て用い、生成したァセチルクロラムフエ二コールの量を薄層ク口マトグラフィ一な どで分離して測定することにより活性を評価することができる。
この測定の結果、被検試料を接触させない場合と比較して、被検試料を接触させ た場合において測定されるレポ一ター活性が低下していれば、用いた被検試料に含 まれる化合物は、 ポイツ ·イエーガーズ症候群の治療薬の候補となる。
本発明は、 また、 MEK/ERKシグナル伝達を調節 (促進あるいは抑制) する薬剤を 提供する。 本実施例において、 LKB1蛋白質が MEK/ERKシグナル伝達を抑制すること が示された。そして、 この抑制が、 LKB1蛋白質のキナーゼ活性に基づくことが示唆 された。 この事実は、 LKB1蛋白質のキナーゼ活性あるいは LKB1蛋白質の発現を調節 する化合物が、 MEK/ERKシグナル伝達を調節する薬剤となりうることを意味する。 本発明の MEK/ERKシグナル伝達を調節する薬剤は、かかる知見に基づくものである。 本発明の薬剤には、試験研究目的で用いる試薬および疾患の治療や予防などの目 的で用いる医薬の双方が含まれる。 本発明の MEK/ERKシグナル伝達を抑制する薬剤 の有効成分としては、 LKB1蛋白質のキナ一ゼ活性を促進する化合物や LKB1遺伝子の 発現を促進する化合物を用いることができる。 これら化合物は、上記のスクリー二 ングにより単離しうる。 また、 LKB1蛋白質または該蛋白質をコードする DNAを用い ることも可能である。
一方、 本発明の MEK/ERKシグナル伝達を促進する薬剤の有効成分としては、 LKB1 蛋白質のキナーゼ活性を促進する化合物や LKB1遺伝子の発現を抑制する化合物を 用いることができる。 これら化合物は上記のスクリーニングにより単離しうる。 ま た、該薬剤の有効成分として LKB1蛋白質に結合する抗体を用いることも可能である。 該抗体は、 ポリクロ一ナル抗体であっても、 モノクローナル抗体であっても良い。 ヒトに投与する場合には、ヒト抗体や遺伝子組み換えによるヒト型化抗体であるこ とが好ましい。 これら抗体は、 当業者に公知の方法により調製することができる。 また、 本発明は、 ポイツ'イエーガーズ症候群治療薬を提供する。本実施例にお いてポイツ ·イエ一ガーズ症候群の原因遺伝子である LKB1が MEK/ERKシグナル伝達 を抑制することが示された。 この事実は、 MEK/ERKシグナル伝達の抑制する化合物 がポイツ ·イエ一ガーズ症候群の治療薬となり得ることを意味する。本発明のボイ ッ 'イエ一ガ一ズ症候群の治療薬のスクリーニング方法は、かかる知見に基づくも のである。
本発明のポイツ ·イエ一ガーズ症候群治療薬の有効成分としては、 MEK/ERKシグ
ナル伝達を抑制する化合物を用いることができる。 該化合物は、 c-fosプロモータ —または SREの活性を抑制する化合物であり得る。 SREは LKB1が関係する MEK/ERKシ グナル伝達に特異的な要素であるため、 SREの活性を抑制する化合物は、 本発明の ポイツ ·イエ一ガ一ズ症候群の治療薬の有効成分として好適である。 これら化合物 は、 上記の本発明のスクリーニングにより単離しうる。
本発明の薬剤をヒトゃ動物、 例えばマウス、 ラット、 モルモット、 ゥサギ、 ニヮ トリ、 ネコ、 ィヌ、 ヒッジ、 ブ夕、 ゥシ、 サル、 マントヒヒ、 チンパンジーの医薬 として使用する場合には、有効成分である化合物自体を直接患者に投与する以外に、 公知の製剤学的方法により製剤化して投与を行うことも可能である。例えば、必要 に応じて糖衣を施した錠剤、 カプセル剤、 エリキシル剤、 マイクロカプセル剤とし て経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、 又は懸濁液剤の注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、薬理学上許容される 担体もしくは媒体、 具体的には、 滅菌水や生理食塩水、 植物油、 乳化剤、 懸濁剤、 界面活性剤、 安定剤、 香味剤、 賦形剤、 べヒクル、 防腐剤、 結合剤などと適宜組み 合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することに よって製剤化することが考えられる。これら製剤における有効成分量は指示された 範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
錠剤、 カプセル剤に混和することができる添加剤としては、 例えばゼラチン、 コ ーンスターチ、 トラガントガム、 アラビアゴムのような結合剤、 結晶性セルロース のような賦形剤、 コーンスターチ、 ゼラチン、 アルギン酸のような膨化剤、 ステア リン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖又はサッカリンのような甘味剤、 ぺパ一ミント、 ァカモノ油又はチェリーのような香味剤が用いられる。調剤単位形 態がカプセルである場合には、上記の材料にさらに油脂のような液状担体を含有す ることができる。注射のための無菌組成物は注射用蒸留水のようなべヒクルを用い て通常の製剤実施に従って処方することができる。
注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、 ブドウ糖やその他の補助薬を含む
等張液、 例えば!) -ソルビトール、 D-マンノース、 D_マンニ! ^一ル、 塩化ナトリウム が挙げられ、 適当な溶解補助剤、 例えばアルコール、 具体的にはエタノール、 ポリ アルコール、例えばプロピレングリコール、 ポリエチレングリコール、 非イオン性 界面活性剤、 例えばポリソルベート 80 (TM) 、 HCO-50と併用してもよい。
油性液としてはゴマ油、大豆油があげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、 ベンジルアルコールと併用してもよい。 また、 緩衝剤、 例えばリン酸塩緩衝液、 酢 酸ナトリウム緩衝液、 無痛化剤、 例えば、 塩酸プロ力イン、 安定剤、 例えばべンジ ルアルコール、 フエノール、 酸化防止剤と配合してもよい。 調製された注射液は通 常、 適当なアンプルに充填させる。
患者への投与は、 例えば、 動脈内注射、 静脈内注射、 皮下注射などのほか、 鼻腔 内的、 経気管支的、 筋内的、 経皮的、 または経口的に当業者に公知の方法により行 いうる。 投与量は、 患者の体重や年齢、 投与方法などにより変動するが、 当業者で あれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。 また、 該化合物が DNAによ りコードされうるものであれば、 該 DNAを遺伝子治療用ベクターに組込み、 遺伝子 治療を行うことも考えられる。 投与量、 投与方法は、 患者の体重や年齢、 症状など により変動するが、 当業者であれば適宜選択することが可能である。
本発明の薬剤の投与量は、 症状により差異はあるが、 経口投与の場合、 一般的に 成人 (体重 60kgとして) においては、 1日あたり約 0. 1から 100mg、 好ましくは約 1. 0から 50mg、 より好ましくは約 1. 0から 20mgであると考えられる。
非経口的に投与する場合は、 その 1回投与量は投与対象、 対象臓器、 症状、 投与 方法によっても異なるが、 例えば注射剤の形では通常成人(体重 60kgとして) にお いては、 通常、 1日当り約 0. 01から 30mg、 好ましくは約 0. 1から 20mg、 より好ましく は約 0. 1から 10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合であると考えられる。 他の動物の場合も、体重 60kg当たりに換算した量、 あるいは体表面積あたりに換算 した量を投与することができる。
図面の簡単な説明
図 1は、活性化型 K- Ras (K-RasV12) による c-f osプロモータ一の活性化に及ぼす LKB1の効果を検出した結果を示す図である。 K- Rasを導入しない時のホタルルシフ エラーゼの活性とゥミシィタケルシフェラ一ゼの活性の比を 1として、相対的な活 性を表した (平均土標準偏差 (n= 3) (以下、 標記法は同じ) ) 。 LKBl WTは野性 型 LKB1を、 LKBl K78Iは K78 I変異体をそれぞれあらわす。 +はそれぞれのタンパクを 発現させたことを、 -は発現させていないことを表す。 三角は右側に行くに従いト ランスフエクションしたプラスミド DNA量が加していることを表す。
図 2は、 c-f osプロモータ一レポーター遺伝子上の各種転写調節因子結合エレメ ントの活性化に関与する様々な細胞内シグナル伝達の模式図である。
図 3は、 MEK1による SREの活性化に及ぼす LKB1の効果を検出した結果を示す図で ある。
図 4は、 MEKK1による c_ f 0 sプロモータ一の活性化に及ぼす LKB 1の効果を検出した 結果を示す図である。
図 5は、 MEKK1による NF K Bの活性化に及ぼす LKB1の効果を検出した結果を示す図 である。
図 6は、 PKAによる C- f 0 sプロモータ一の活性化に及ぼす LKB 1の効果を検出した結 果を示す図である。
図 7は、 MEK1による SREプロモーターの活性化に及ぼす各種 LKB1変異体の効果を 検出した結果を示す図および写真である。下は、それぞれの変異体のキナーゼ活性 を表す。 発明を実施するための最良の形態
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例 に制限されるものではない。
[実施例 1 ] プラスミド DNAの作製
( 1 ) 発現プラスミド DNA
LK Elフライマ一 (5 gat gaa t ic ggg tec age atg gag gtg gtg gac 3' /配歹 U 番号: 1 ) と E2プライマー (5' gat gaa t tc t ta gag gtc t tc t tc tga gat g ag c.t t ctg e tc c tg c tg c t t gca ggc cga 3' /配列番号: 2 ) を用いた PCRを行う ことにより、 C末端に c- Myc ェピトープ配列(Glu Gin Lys Leu l ie Ser Glu Glu A sp Leu)が付加された全ヒト LKB1アミノ酸配列をコードする DNA断片を増幅した。こ れをプライマーに付加した EcoRIサイ卜で切断した後、 哺乳動物細胞用発現べクタ 一である PCDNA3ベクター(Invi trogen)の EcoRIサイに組み込んだ。 シークェンシン グにより PCRエラ一が無いことを確認したクローン(pcDNA3/LKBl myc) を選抜し発 現実験に用いた。
また、 pcDNA3/LKBlmycを铸型とし、 GeneEdi tor™ (Promega)を用いた in vi t roミ ユータジエネシスにより、各種変異体の作製を行った。変異導入用プライマーは以 下のものを使用した。
K78I変異体: 5' agg agg gcc gtc ate ate e tc aag aag 3' /配列番号: 3 D176N変異体: 5' at t gig cac aag aac ate aag ccg ggg 3' Z配歹 'J番号: 4 W308C変異体: 5' egg cag cac age tgc t tc egg aag aaa 3' Z配歹幡号: 5 L67P変異体: 5' gtg aag gag gtg ccg gac tcg gag acg 3' 配歹 !J番号: 6 変異導入用プライマーとキットに添付されている選択用プライマ一(ボトムスト ランド用) を共に一本鎖にした铸型プラスミド DNAとァニールさせ、新たな DNA鎖を 合成した。 これを大腸菌に導入し、 変異を持つプラスミドを保持したクロ一ンを G eneEdi tor™抗生物質耐性クローンとして選択した。シークェンシングにより変異が 入っていることを確認し、 発現実験に用いた。
MEK1、 MEKKU PKA発現用のプラスミド DNA (それぞれ pFC- MEK1、 pFC-MEKKK pFC -PKA) は Stratagene社から購入した。
活性化型 K- Ras発現プラスミド DNA (pCEV/k-RasV12) は神戸大学医学部の Fukumo to Yauso博士より御供与いただいた。
ゥミシィタケルシフェラ一ゼ発現プラスミド (PRL/SV40) は Pr omega社から購入 した。
(2) レポ一夕一遺伝子
c - f osプロモーターレポ一ター遺伝子 (c_fosLV) は神戸大学医学部の Fukumoto Yauso博士より御供与いただいた。 SREレポ一夕一遺伝子 (pSRE_Luc) は Stratagen e社から購入した。 NFKBレポーター遺伝子(PNFKB_LUC) は C Ion tech社から購入し た。
[実施例 2] レポーター遺伝子アツセィ
( 1) 卜ランスフエクシヨン
トランスフエクシヨンは SuperFect (Qiagen社) を用い、 メーカーにより推奨さ れている方法に従って行った。 すなわち、 Hela細胞を 10ソゥエルで 12ゥエルプレ一 トに蒔き、 ー晚培養後、 DNA 1.5 と SuperFect 4 1との混合物を添加し、 3時間 培養した。その後培地を交換し、 さらに 24時間培養した後ルシフェラーゼ活性を測 定した。
(2) ルシフェラ一ゼ活性の測定
レシフェラーゼ活'性ま、 Dual-Luc if eRase™ Reporter Assay System (Promega社) を用い、 メーカー推奨の方法に従って、 ゥミシィタケルシフェラーゼを内在性コン トロールとした二重測定法(dual assay) にて測定した。 すなわち、 トランスフエ クシヨンした細胞を、 PBSで洗浄した後、 IOO Iの lXPassive Lysis Bufferにて溶 解した。 このうちの 5 1を用い、 LucifeRase Assay Reagent II (50^1) をホタル ルシフェラーゼの基質として、 また Stop & Glo(R) Reagent (50 1) をゥミシイタ ケルシフェラーゼの基質としてそれぞれのルシフエラ一ゼの活性を測定した。
(3) 結果
c-f osプロモ一タ一レポ一ター遺伝子 (C- fosLV) が導入された細胞を用いて、 R asによる c-fosプロモーターの活性化に対する LKB1の影響を検討した。その結果、 L
KB1は、 Rasによる c- fosプロモー夕 の活性化を顕著に抑制した (図 1) 。 一方、 自己リン酸化能を失った LKB1変異体である K78Iで同様に検討した場合では、 Rasに よる c-fosプロモー夕一の活性化を顕著に^ ^卬制することはなかった (図 1) 。
この c-f osプロモーターは、 既知の転写調節因子結合エレメントとして、 SRE (血 清反応性エレメ'ント) 、 CRE (cAMP反応性エレメント) 、 及び TRE (TP A反応性エレ メント) を持つが (図 2) 、 Rasによるこのプロモ一ターの活性化は、 MEK/ERKを介 する経路により、主に SREが活性化されることにより起こることが知られており (F ukumoto Y et al., J Biol Chem 1990 Jan 15 ;265 (2) :774-80) 、 LKBlは、 MEK/ER Kシグナル伝達経路のいずれかのステツプに作用して SREの活性化を抑制したもの と考えられた。 そこで次に、 LKB1が関与するステップについて検討した。
SREレポ一夕一遺伝子 (pSRE_Luc) が導入された細胞を用いて、 MEK1による SRE の活性化に対する LKB1の影響を検討した。 その結果、 LKB1は、 MEK1による SREの活 性化を顕著に抑制した (図 3) 。 一方、 K78Iで同様に検討した場合では、 MEK1によ る SRE の活性化を顕著に抑制することはなかった (図 3) 。 この事実から、 LKB1 は、 MEK/ERKシグナル伝達経路の少なくとも MEK1よりも下流で作用しているものと 考えられた。
次に、 LKB1が MEK/ERKシグナル伝達経路以外の経路に作用するか否かの検討を行 なった。 c-f osプロモータ一レポーター遺伝子 (C- fosLV) が導入された細胞、 また は NF KBレポーター遺伝子 (pNF/cB- Luc) 細胞を用いて、 MEKK1または PKAによる c- fosプロモーターまたは NF KBの活性化に対する LKBlの影響を検討した。 その結果、 LKB1は、 MEKK1による c- fosプロモ一夕一の活性化 (図 4) 、 MEKK1による NFKB (NU clear Factor of κΒ cells) 結合エレメントの活性化 (図 5) 、 PKA (cAMP依存性 キナーゼ) による C- fosプロモーターの活性化(図 6) に対しては全く作用しないこ とが判明した。 このことから、 LKB1の作用は、 少なくとも調べた範囲において MEK /ERKシグナル伝達経路特異的であると考えられた。
次に、 PJS患者において見出された変異体 (L67P; 67番目の Leuが Proに置換した
変異体、 D176N ; 176番目の Aspが Asnに置換した変異体、 W308C; 308番目の Τι:ρが C ysに置換した変異体) の作用について調べた。 SREレポ一ター遺伝子が導^^された 細胞を用いて、 MEK1による SREプロモータ一の活性化に対するこれら LKB1変異体の 影響を検討した。 その結果、 これらのキナーゼ活性が減弱した変異体は、 その MEK /ERK抑制効果も著しく減弱していることが明らかとなった (図 7 ) 。 産業上の利用の可能性
本発明により LKB1を標的とした MEK/ERKシグナル伝達を調節する化合物のスクリ 一二ング方法が提供された。 さらに、 MEK/ERKシグナル伝達を標的とした PJS治療薬 候禅化合物のスクリーニング方法が提供された。 これにより MEK/ERKシグナル伝達 を調節する化合物や PJS治療薬候補化合物を効率的にスクリーニングすることが可 能となった。 また、 本発明により、 これら化合物の薬剤用途が提供された。 該薬剤 は、 MEK/ERKシグナル伝達を調節するための試薬として、 あるいは PJSを含む疾患の 治療や予防のための医薬としての利用が期待される。