WO2001036012A1

WO2001036012A1 - Vital tissue for tendon or ligament and process for producing the same

Info

Publication number: WO2001036012A1
Application number: PCT/JP2000/007461
Authority: WO
Inventors: Junzo Tanaka; Masanori Kikuchi; Hironobu Fukuzaki; Isamu Yamaguchi; Kenji Kato; Kensaku Sonoda
Original assignee: National Institute for Research in Inorganic Material; NOF Corp; National Institute for Materials Science; Taki Chemical Co Ltd
Current assignee: NOF Corp; National Institute for Materials Science; Taki Chemical Co Ltd
Priority date: 1999-11-15
Filing date: 2000-10-25
Publication date: 2001-05-25
Anticipated expiration: 2002-05-15
Also published as: EP1230938A1; DE60021412T2; EP1230938A4; CA2390099C; CA2390099A1; JP2001137329A; DE60021412D1; EP1230938B1; EP1230938A8

Description

明細書

腱又は靱帯用生体組織及びその製造法

技術

本発明は、腱又は靱帯の再建手術に利用でき、術後の骨との迅速な固着並びに優れた生体適合性による早期回復が期待できる、腱又は靭帯用生体組織及びその製造法に関する。

從技術

腱又は靭帯の再建手術においては、正常な自家組織を出来るだけ傷つけることなく、また自家組織の採取を最小限にとどめるべく、再建材料を用いた手術が行われている。該手術方法としては、例えば、再建材料として非分解性で高強度の合成高分子材料を自家組織の代替として用いる方法、自家組織と合成高分子素材 (ポリプロピレン）とから成る人工靭帯を用レ、て、自家組織が再生するまでの期間、再建靭帯にかかる機械的なストレスの一部を該人工靭帯に担わせることにより、術後の早期リハビリテーションを可能とする方法、生分解性の人工靭帯を用いて、自家組織が誘導される期間、靱帯としてこれを機能させる方法が知られている。しかし、いずれの方法においても、特に再建手術後の腱又は靭帯と、骨との固着速度、あるいは固着強度が充分でないことが問題となっている。

そこで、現在では人工靭帯を用いない自家移植による再建術が主流となりつつある。例えば、膝前十字靭帯再建術における自家組織としては、骨付き膝蓋腱又はハムストリング腱が用いられている。

骨付き膝蓋腱を利用する特徴は、生来の骨 ·靭帯付着部を生かしインターファ一レンス .スクリユー（Interference Screw)を用いて早期再建を図ることにある。この再建術は、初期固定も良好で、骨トンネル内の早期骨癒合が可能である。しかし、この再建術は、術後膝伸展障害、膝疼痛、膝蓋骨骨折などの合併症が比較的多く、またスクリユー固定に技術を要するなどの改善すべき問題も多い。

ハムストリング腱を利用する特徴は、自家腱採取による合併症が少なく手術法も比較的容易で自由度も高いことにある。しかし、初期固着力が弱く、骨と軟部組織との固着に時間を要することによりリハビリテーションが遅れるなどの問題がある。このような骨と軟部組織、即ち腱又は靱帯との固着を改善する方法として、コラ一ゲンと B M P (Bone Morphogenetic Protein)とを用いて、骨と軟部組織とが接する部位に骨組成を早期に誘導 ·生成させる方法も提案されているが、満足すべき結果が得られていない。

ところで、リン酸カルシウム化合物が、生体親和性、骨誘導能及び骨伝導能に優れ、骨代替材料、医療用補綴材料として使用されることは従来からよく知られている。しかし、ハイドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム等のリン酸カルシゥム化合物の微粉末を、軟組織である腱又は靱帯等の生体組織に人工的に固定する技術は確立されていない。

発明の開示

本発明の目的は、術後の骨との迅速な固着並びに優れた生体適合性による早期回復が期待できる、腱又は靭帯用生体組織及びその製造法を提供することにある。本発明の別の目的は、術後の骨との迅速な固着並びに優れた生体適合性による早期回復が期待できる、腱又は靭帯用生体組織を、簡便に、且つ短期間で製造することができる腱又は靭帯用生体組織の製造法を提供することにある。

本発明者らは、上述の課題を解決するため鋭意検討した結果、腱又は靭帯用組織基体を、カルシウム溶液と、リン酸溶液とに交互に浸漬させることにより、該基体の表面ゃ內部に生体適合性に優れるハイドロキシァパタイト等のリン酸カルシゥム化合物を短期間で生成させ、強固に固定させることができることを見出した。しかも、この交互浸漬法による製造法では、リン酸カルシウム化合物の生成量等の制御が容易であり、腱又は靭帯用組織基体が有する、腱又は靭帯用組織としての物性を維持させた状態でのリン酸カルシウム化合物の固定を容易に制御しうることを見出し、本発明を完成した。

本発明によれば、腱又は靭帯用組織基体と、リン酸カルシウム化合物とを有し、該リン酸カルシウム化合物が、腱又は靭帯用組織基体の少なくとも表面に固定されてなる腱又は靭帯用生体組織が提供される。

また本発明によれば、カルシウムイオンを含み、且つ実質的にリン酸イオンを含まないカルシウム溶液（以下、カルシウム溶液（A)と称することがある）と、リン酸イオンを含み、且つ実質的にカルシウムイオンを含まないリン酸溶液（以下、リン酸溶液（B )と称することがある）とに、腱又は靭帯用組織基体を交互に浸漬させて、該基体の少なくとも表面にリン酸カルシウム化合物を生成 ·固定させるェ程を含む上記腱又は靭帯用生体組織の製造法が提供される。

更に本発明によれば、ヒトを含む動物から基体として使用するために腱又は靭帯用自家組織を採取し、該基体を、カルシウム溶液（A)とリン酸溶液（B )とに交互に浸漬させて、該基体の少なくとも表面にリン酸カルシウム化合物を生成 ·固定させて上記腱又は靭帯用生体組織を得、得られた腱又は靭帯用生体組織を、ヒトを含む動物の欠損した腱又は靭帯に移植する腱又は靭帯の治療方法。

発明の好ましい実施の態様

以下、本発明を更に詳細に説明する。

本発明の腱又は靭帯用生体組織は、ヒトを含む動物の腱又は靭帯の再建手術等において、腱又は靭帯の代替材料として適用しうる組織であって、腱又は靭帯用組織基体（以下、基体と称することがある）と、リン酸カルシウム化合物とを有する。

前記基体は、ヒトを含む動物の腱又は靭帯に使用しうる機能を有するものであれば特に限定されない。例えば、人工腱、人工靱帯、動物の天然腱及び動物の天然靭帯からなる群より選択される 1種又は 2種以上の材料により構成された基体等が挙げられる。特に、動物の天然腱又は動物の天然靭帯を使用した基体が好ましい。人工腱及び人工靭帯としては、公知のものが使用でき、動物の天然腱及び天然靭帯としては、動物から外科的に取出したものが使用でき、特に自家組織の使用が好ましい。これらは、医薬的に許容される各種処理が施されていても、また本発明の目的を損なわない範囲において、他の材料を有していても良い。本発明の腱又は靭帯用生体組織において、上記基体に固定されるリン酸カルシゥム化合物は、リン酸とカルシウムとが化学反応して得られるリン酸カルシウム化合物であれば良い。例えば、ハイドロキシアパタイト、リン酸三カルシウム、リン酸八カルシウム又はこれらの混合物等が挙げられる。中でも、生体に最も近いという観点からハイドロキシアパタイトを含むことが最も好ましい。但し、本発明においてリン酸カルシウム化合物は、天然骨を含まない意であるが、本発明の腱又は靭帯用生体組織が天然骨を有していても良い。本発明の腱又は靱帯用生体組織は、上記基体の少なくとも表面に上記リン酸力ルシゥム化合物が固定されておれば良い。また、基体の内部にまでリン酸カルシゥム化合物が固定されていることが、再建手術後の骨との迅速な固着の点において好ましい。ここで、固定とは、通常の数回の洗浄作業において、リン酸カルシゥム化合物が基体から脱離しないことをいう。好ましくは、生体親和性に影響を及ぼす接着剤を介さずに、後述する本発明の製造法等により得られる、基体にリン酸カルシウム化合物が直接固定させた態様が挙げられる。

本発明の腱又は靭帯用生体組織において、前記リン酸カルシウム化合物の固定量は、特に限定されないが、骨へのより迅速な固着のために、腱又は靭帯用生体組織全量に対して、 0 . 5〜2 0重量％、特に、 1〜1 0重量％が好ましい。更には、リン酸カルシウム化合物の主成分がハイドロキシァパタイトとなるように、リン酸カルシウム化合物中のハイドロキシァパタイト量が 5 0〜 1 0 0重量％が望ましい。

本発明の腱又は靭帯用生体組織には、必要に応じて、医薬的に許容される各種処理が施されていても、また本発明の目的を損なわない範囲において、他の材料を有していても良い。

本発明の腱又は靭帯用生体組織は、腱又は靭帯の再建手術に用いることができる。また、基体として自家組織を用いる場合には、再建手術中に、外科的に採取した腱又は靭帯用の自家組織に、リン酸カルシウム化合物を固定して本発明の腱又は靭帯用生体組織を製造した後に、該生体組織を用いて再建手術を行うことができる。

従って、本発明においては腱又は靭帯の治療方法も提供できる。該治療方法は、ヒトを含む動物から基体として使用するために腱又は靱帯用自家組織を採取し、後述する交互浸漬により前記基体の少なくとも表面にリン酸カルシウム化合物を生成 ·固定させて腱又は靭帯用生体組織を得、得られた腱又は靭帯用生体組織を、ヒトを含む動物の欠損した腱又は靭帯に移植する方法である。

本発明の腱又は靭帯用生体組織を製造する方法は、基体にリン酸カルシウム化合物を直接、短期間において容易に固定させることができる方法が好ましい。例えば、カルシウム溶液（A)と、リン酸溶液（B )とに、腱又は靭帯用組織基体を交互に浸漬させて、該基体の少なくとも表面にリン酸カルシウム化合物を生成 ·固定させる工程 (以下、交互浸漬工程と称することがある）を含む方法が好ましく挙げられるがこれに限定されない。

前記交互浸漬工程に用いるカルシウム溶液（A)は、カルシウムイオンを含み、且つ実質的にリン酸イオンを含まない水溶液である。リン酸イオンが存在する場合は、ハイドロキシアパタイトの生成速度が低下する恐れがあるので、カルシゥム溶液（A)は、通常、カルシウムイオンを含み、且つリン酸イオンを全く含まない水溶液である。カルシウム溶液としては、例えば、塩化カルシウム水溶液、酢酸カルシウム水溶液又はこれらの緩衝溶液等が挙げられる。緩衝剤としては、例えば、トリス（ハイドロキシメチル）ァミノメタン一塩酸緩衝液（以下、トリス緩衝液という）等が挙げられるがこれに限定されない。

カルシウム溶液（A)において、カルシウムイオン濃度は、リン酸カルシウム化合物の生成速度及び生成効率を考慮した場合、好ましくは 0 . 1〜4 0重量％、特に好ましくは 1〜1 0重量％である。カルシウムイオン濃度が 0 . 1重量％未満では、交互浸漬工程により一回当たりに複合化されるリン酸カルシウム化合物の量が少なく、所望量生成させるために相当回数の交互浸漬工程を行う必要があり好ましくない。

カルシウム溶液（A)の p Hは限定されないが、生体に損傷を与える恐れを軽減するためにトリス緩衝液等を配合し、 p H 7〜 9に調整することが好ましい。前記交互浸漬工程に用いるリン酸溶液（B )は、リン酸イオンを含み、且つ実質的にカルシウムイオンを含まない水溶液である。カルシウムイオンが存在する場合は、ハイドロキシアパタイトの生成速度が低下する恐れがあるので、リン酸溶液（B )は、通常、リン酸イオンを含み、且つカルシウムイオンを全く含まない水溶液である。リン酸溶液としては、リン酸二水素ナトリウム水溶液、リン酸水素ニナトリゥム水溶液、リン酸水素二アンモニゥム水溶液又はこれらの緩衝溶液等が挙げられる。生体への損傷を軽減し、ハイドロキシァパタイトの生成を良好にするために、リン酸ニ水素ナトリゥム水溶液又はこの緩衝溶液の使用が特に好ましい。緩衝剤としてはトリス緩衝液等が挙げられるがこれに限定されない。リン酸溶液（B )において、リン酸イオン濃度は、リン酸カルシウム化合物の生成速度及び生成効率を考慮した場合、好ましくは 0 . 1〜2 0重量％、特に好ましくは 0 . 5〜1 0重量％である。リン酸イオン濃度が 0 . 1重量％未満では、交互浸漬工程により一回当たりに複合化されるリン酸カルシウム化合物の量が少なく、所望量の生成量を得るためには相当回数の交互浸漬工程を行う必要があり好ましくない。

リン酸溶液（B )の p Hは限定されないが、生体に損傷を与える恐れを軽減するためにトリス緩衝液等を配合し、 p H 7〜 9に調整することが好ましい。

前記カルシウム溶液（A)及びリン酸溶液（B )には、本発明の所望の目的が損なわれない範囲において他のイオンが存在していても良い。

前記交互浸漬工程において、カルシウム溶液（A)とリン酸溶液（B )とに前記基体を浸漬させる方法としては、

(1)カルシウム溶液（A)に前記基体を浸漬させた後に、リン酸溶液（B )に基体を浸漬させる操作を 1サイクルとして 1回以上行う方法、

(2)リン酸溶液（B)に前記基体を浸漬させた後に、カルシウム溶液（A)に基体を浸漬させる操作を 1サイクルとして 1回以上行う方法等が挙げられる。

この際、前記各操作の繰り返し回数を多くすることにより、リン酸カルシウム化合物の生成量を増大させることができる。前記操作の繰り返し回数は、通常 1 〜2 0回程度である。前記操作を繰り返す場合、前記（1)の方法において、必ずしも最終が、リン酸溶液（B )に基体を浸漬させることにより終了させる必要はなく、カルシウム溶液（A)に基体を浸漬させて終了させても良レ、。同様に、前記（2)の方法において、必ずしも最終が、カルシウム溶液（A)に基体を浸漬させることにより終了させる必要はなく、リン酸溶液（B )に基体を浸漬させて終了させても良い。カルシウム溶液（A)及びリン酸溶液（B )に基体を浸漬させる浸漬時間は、リン酸カルシウム化合物の生成速度及び生成効率、並ぴに各溶液のイオン濃度等を考慮して適宜選択できる。通常、トータルの浸漬時間は、数十秒間〜 1時間程度であり、 1〜3 0分間でも良い。カルシウム溶液（A)及びリン酸溶液（B )に基体を浸漬させる操作を繰り返す場合の各 1回あたりの浸漬時間は、前記好ましいトータルの浸漬時間を考慮して適宜選択することができる。

前記各溶液に基体を浸漬させる際の各溶液の液温は、リン酸カルシウム化合物の生成速度及び生成効率を考慮して適宜選択でき、通常、 1 5〜4 0 °C程度が望ましい。

前記交互浸漬工程においては、リン酸カルシウム化合物の固定を強固にし、且つ過剰なカルシウムイオン及びリン酸イオンを除くために、上記各サイクルにおいて、カルシウム溶液（A)に、基体を浸漬させた後、リン酸溶液（B )に基体を浸漬させる前に、基体に付着したカルシウム溶液（A)を除去する操作、及び/又はリン酸溶液（B )に、基体を浸漬させた後、カルシウム溶液（A)に基体を浸漬させる前に、基体に付着したリン酸溶液（B )を除去する操作を行なうことが好ましレ、。このような基体に付着したカルシウム溶液（A)又はリン酸溶液（B )を除去する操作としては、基体表面に残存するカルシウムイオン又はリン酸イオン等が除去できれば良い。例えば、滅菌水、生理食塩水等の洗浄液により洗浄する方法が好ましい。該洗浄方法は、単に洗浄液に浸漬するのみでよいが、洗浄液を緩やかに攪拌するか或いは基体を緩やかに振盪させる操作を行うことが望ましい。この洗浄液の温度は、通常、 1 5〜4 0 °Cの範囲が望ましい。

本発明の製造法では、前記交互浸漬工程を行い、前記本発明の腱又は靭帯用生体組織が得られるのであれば、他の工程を含んでいてもよい。

実施例

以下、本発明の実施例を挙げて更に説明するが、本発明はこれらに限定されなレ、。尚、％は特に断らない限り全て重量％を示す。

実施例 1

屠殺した日本白色家兎の後足から外科的に遊離腱を取出した。次いで、トリス緩衝液で p H 7 . 4に調整した、カルシウムイオン濃度（C a ^{2 +}) 0 . 8 %の塩ィ匕カルシウム水溶液（2 4 C)中に、室温下において、取出した遊離腱を 5分間浸漬させた。続いて、生理食塩水に 3 0秒間浸漬させた後、リン酸イオン濃度（P〇₄ 2一）が 1 . 1 %のリン酸水素ニナトリウム水溶液に 5分間浸漬させた。この操作を 1、 3、 6及び 8回繰り返した後、さらに生理食塩水でそれぞれ 5分間洗浄し、腱用生体組織を調製した。

得られた各腱用生体組織を目視で観察したところ、交互浸漬回数が増すに従つて白色に変化していく様子が観察できた。また、各腱用生体組織を長軸方向に対して垂直に切断した切断面を観察したところ、 3回以上交互浸漬して得られたものは、その内部まで白色に変化している様子が観察できた。

得られた各々の腱用生体組織を凍結乾燥して、得られた生体試料の複合化量、即ちリン酸カルシゥム化合物量を熱分析装置（D T A— T G ) (理学電機（株）製、「T G 8 1 2 0」）を用いて測定した。結果を表 1に示す。

また、交互浸漬回数を 8回繰り返して得られた生体試料を、電気炉を用いて 1 2 0 0 °Cで焼成し、粉末化した。得られた粉末を粉末 X線回折装置（X R D) (フィリップス社製、「PW 1 7 2 9」）を用いて測定したところ、その主成分はハイドロキシアパタイトであることが確認できた。従って、上記白色の生成物の主成分はハイドロキシァパタイトであることが判る。

実施例 2

屠殺した日本白色家兎の後足から外科的に遊離腱を取出した。次いで、カルシゥムイオン濃度（C a ^{2 +}) 4 . 8 %の塩化カルシウム水溶液（2 4 °C)中に、室温下において、取出した遊離腱を 2分間浸漬させた。続いて、生理食塩水に 3 0秒間浸漬させた後、リン酸イオン濃度（P 0 ₄ ²—)が 6 . 8 %のリン酸水素ニナトリゥム水溶液に 2分間浸漬させた。この操作を 1、 2、 6及び 8回繰り返した後、さらに生理食塩水でそれぞれ 5分間洗浄し、腱用生体組織を調製した。

得られた各腱用生体組織を目視で観察したところ、交互浸漬回数が増すに従つて白色に変化していく様子が観察できた。また、各腱用生体組織の長軸方向に対して垂直に切断した切断面を観察したところ、 6回以上交互浸漬して得られたものは、その内部まで白色に変化している様子が観察できた。

得られた各々の腱用生体組織を凍結乾燥し、実施例 1と同様にリン酸カルシゥム化合物量を測定した。結果を表 1に示す。

表 1

実施例 3

屠殺した日本白色家兎の後足から外科的に遊離腱を取出した。次いで、トリス緩衝液で p H 7 . 4に調整した、カルシウムイオン濃度（C a ^{2 +}) 1 . 6 %の酢酸カルシウム水溶液（2 6 °C)中に、室温下において、取出した遊離腱を 5分間浸漬させた。続いて、生理食塩水に 3 0秒間浸漬させた後、リン酸イオン濃度（P〇₄ ²一）が 2 . 3 %のリン酸水素ニナトリウム水溶液に 5分間浸漬させた。この操作を 5回繰り返した後、さらに生理食塩水で 5分間洗浄し、腱用生体組織を調製した。得られた腱用生体組織を目視で観察したところ、表面及びその内部が白色に変化していることが観察できた。

得られた腱用生体組織を凍結乾燥して実施例 1と同様にリン酸カルシウム化合物量を測定したところ、 7 . 5 %であった。

本発明の腱又は靭帯用生体組織は、腱又は靭帯用組織基体の少なくとも表面にリン酸カルシウム化合物が固定されているので、該リン酸カルシウム化合物が容易に離脱することなく、腱又は靭帯の再建手術に利用できる。しかも、術後において、固定されたリン酸カルシウム化合物の生体親和性等に基づき、迅速な骨組成の誘導や、骨との強固な固着が期待できる。

本発明の製造法では、交互浸漬工程を採用するので、基体に直接リン酸カルシゥム化合物を生成固定させることができる。し力も、交互浸漬という簡便の方法で行うことが可能であるので、基体の腱又は靭帯用組織としての物性を維持させた状態でのリン酸カルシウム化合物の固定を容易に制御でき、短期間でのリン酸カルシウム化合物の生成固定が可能であり、再建手術中の製造も可能である。

Claims

請求の範囲

1)腱又は靭帯用組織基体と、リン酸カルシウム化合物とを有し、該リン酸カルシゥム化合物が、腱又は靭帯用組織基体の少なくとも表面に固定されてなる腱又は靭帯用生体組織。

2)腱又は靭帯用組織基体が、人工腱、人工靱帯、動物の天然腱及び動物の天然靭帯からなる群より選択される 1種又は 2種以上の材料により構成された基体である請求の範囲 1記載の腱又は靭帯用生体組織。

3)リン酸カルシウム化合物がノ、ィドロキシァパタイトを含む請求の範囲 1記載の腱又は靭帯用生体組織。

4)カルシウムイオンを含み、且つ実質的にリン酸イオンを含まないカルシウム溶液と、リン酸イオンを含み、且つ実質的にカルシウムイオンを含まないリン酸溶液とに、腱又は靭帯用組織基体を交互に浸漬させて、該基体の少なくとも表面にリン酸カルシウム化合物を生成 ·固定させる工程を含む請求の範囲 1記載の腱又は靭帯用生体組織の製造法。

5)腱又は靭帯用組織基体が、人工腱、人工靱帯、動物の天然腱及び動物の天然靭帯からなる群より選択される 1種又は 2種以上の材料により構成された基体である請求の範囲 4記載の製造法。

6)前記カルシウムイオンを含み、且つ実質的にリン酸イオンを含まないカルシゥム溶液のカルシウムイオン濃度が 0 . 1〜4 0重量％であり、リン酸イオンを含み、且つ実質的にカルシウムイオンを含まないリン酸溶液のリン酸イオン濃度が 0 . ：!〜 2 0重量％である請求の範囲 4記載の製造法。

7)前記カルシウム溶液と、前記リン酸溶液とに、腱又は靭帯用組織基体を交互に浸漬させるにあたり、前記カルシウム溶液に浸漬させた後、前記リン酸溶液に浸漬させる前に、腱又は靭帯用組織基体に付着したカルシウム溶液を除去する工程及び前記リン酸溶液に浸漬させた後、前記カルシウム溶液に浸漬させる前に、腱又は靭帯用組織基体に付着したリン酸溶液を除去する工程を行う請求の範囲 4記載の製造法。

8)前記カルシウム溶液と、前記リン酸溶液とに、腱又は靭帯用組織基体を交互に浸漬させる条件を、生成 ·固定されるリン酸カルシウム化合物がハイドロキシァパタイトを含む条件とする請求の範囲 4記載の製造法。

9)ヒトを含む動物から基体として使用するために腱又は靭帯用自家組織を採取し、該基体を、カルシウムイオンを含み、且つ実質的にリン酸イオンを含まないカルシウム溶液と、リン酸イオンを含み、且つ実質的にカルシウムイオンを含まないリン酸溶液とに交互に浸漬させて、該基体の少なくとも表面にリン酸カルシゥム化合物を生成'固定させて請求の範囲 1に記載の腱又は靱帯用生体組織を得、得られた腱又は靭帯用生体組織を、ヒトを含む動物の欠損した腱又は靭帯に移植する腱又は靭帯の治療方法。