明 細 書 ヒト血小板由来成長因子に対するリボザィム 技術分野
本発明はヒ ト血小板由来成長因子に対するリボザィムに関する。
背景技術
本態性高血圧症は脳卒中、 虚血性心疾患及び腎硬化症等の重篤な合併症を引き 起こす。 これらの合併症は、 基本的には血管平滑筋細胞 (VSMC) の過剰増殖 による血管障害と関連しており、 高血圧症の治療の標的である。 我々は高血圧自 然発症ラット (SHR) 由来 VSMCにおいて PDGF— A鎖 mRNA発現の增 大をすでに示した (Fu k u d a N, Ku b o A, Wa t a n a b e Y, Na k a y ama T, S oma M, I z u m i Y, Ka nma t s u s e K. (1 997) J . Hy p e r t e n s . 1 5 : 1 1 23. , Fu k u d a N, K i s h i o k a H, S a t o h C, Na k a y ama T,
Wa t a n a b e Y, S oma M, I z um i Y, Ka nma t s u s e K. (1997) Am. J. Hy p e r t e n s. 10 : 1 1 1 7) 。 一方、 狭 心症、 心筋梗塞の治療としての経皮的冠動脈形成術 (PTCA) 後の約 4割に冠 動脈の再狭窄が起こり、 今のところ有効な薬物療法がなく、 循環器領域で大きな 問題となっている。 病理組織的には、 中膜平滑筋細胞の遊走、 増殖による新生内 膜形成により、 PDGF— A鎖が関与することが知られている (S c o t t N A, C i p o 1 1 a GD, Ro s s C E, Du nn B, Ma r t i n F H, S i mo n e t L, Wi l c o x J N. (1996) 93 : 21 78) 。 細胞増殖は種々の作用機構によってブロックすることができると考えられる。 そのうちの 1つは、 PDGF等の増殖因子の発現を抑制することである。 PDG Fは細胞増殖に対して増殖作用及び遊走作用を発揮する V S MC増殖の強力な刺 激物質である。 PDGFは A鎖及び B鎖として知られるジスルフィ ド結合ポリぺ プチドからなる二量体である。 PDGFの 3つの形態 (AA、 AB及び BB) は 細胞分布及び生物学的活性において異なり、 少なくとも 2つの PDGF受容体
(α及び ]3) と選択的に相互作用する。 S t 1 1? 0—1¾31^1らは、 培養された
V SMC又は粥状硬化プラークにおける VSMCは PDGF— A鎖 mRNAを発 現して PDGF—AAタンパク質を分泌するが、 正常な、 増殖を抑制されている
V SMCは PDGF— A鎖 mRNAを発現しないことを示した
(S t i k o-Ra hm A, Hu l t g a r d h— N i 1 s s o n A,
Re g n s t r om J, Hams t e n A, N i 1 s s o n J . (1 99 2) Ar t e r i o s c l e r T h r o mb 1 2 : 1099) 。
発明の開示
本発明は、 血管増殖性疾患の遺伝子治療薬を提供することを目的とする。 高血圧症における心血管系臓器の過剰増殖における PDGF— A鎖の関与を評 価するため、 我々は PDGF— A鎖 mRNAに相補的なアンチセンスオリゴデォ キシヌクレオチド (ODN) が SHRにおける心血管系臓器の過剰増殖を i n v i t r o及び i n v i v oで抑制することを見出した。 このことは、 高血圧 症における心血管系臓器の過剰増殖における P D G F— A鎖の関与を示唆してい る。 また、 我々は、 ラット PDGF— A鎖 mRNAを標的として設計した DNA — RNAキメラ型リボザィムが生きている VSMCの PDGF— A鎖 mRNAを 配列特異的に切断することが可能で、 その結果、 VSMCにおける PDGF— A A蛋白質の発現を低下させ、 SHR由来 VSMCの過剰増殖を抑制することを見 出した。 さらに、 我々はヒ ト PDGF— A鎖 mRNAを切断するための 38塩基 のハンマーへッド型リボザィムを設計し、 そして血管増殖性疾患に対する遺伝子 治療に用い得るリボザィムを開発するために、 ヒ ト VSMCの増殖に対するこの ハンマーヘッ ド型リボザィムの効果を検討したところ、 ヒ ト VSMCにおけるァ ンジォテンシン I I又は TGF— )3刺激 DN A生合成が用量依存的に大きく抑制 され、 ヒト VSMCにおいてアンジォテンシン I Iによって誘導される PDGF — A鎖 mRNA発現及び PDGF— AA蛋白質発現の両方が有意に抑制されるこ とがわかった。 本発明は上記の知見に基づいて完成された。
すなわち、 本発明は、 下記の塩基配列 (ヌクレオチド配列) (I) を有するリ ボザィムを提供する。
3, -GUGCCCCA GUACGGUG - 5,
A C
A UGA
G AG U ( i)
N3 N1
(配列中、 A、 C、 G、 Uはそれぞれ、 アデニン、 シトシン、 グァニン、 ゥラシ ルを塩基成分とするリボヌクレオチドを表し、 N1及び N 3は互いに相補的塩基 対形成が可能な少なくとも 1対のヌクレオチドであり、 N はループ形成が可能 な少なくとも 3個のヌクレオチドである。 )
^^ェ及び^^^ま、 1〜 3対のヌクレオチドであることが好ましい。 Ν2は、 3 〜 4個のヌクレオチドであることが好ましい。
また、 本発明は、 下記の塩基配列 (ヌクレオチド配列) ( ) (配列番号 1 4) を含むリボザィムを提供する。
5 ' -GUGGCAUGCUGAUGANGAAAC CC CGUG- 3 ' (I ' )
(配列中、 A、 C、 G、 Uはそれぞれ、 アデニン、 シトシン、 グァニン、 ゥラシ ルを塩基成分とするリボヌクレオチドを表し、 Nは互いに相補的塩基対形成が可 能な少なくとも 2個のヌクレオチドとループ形成が可能な少なくとも 3個のヌク レオチドを含む。 )
塩基配列 (I) ではこの Nが N1, N2, N3として表されている。
本発明のリボザィムの一例として、 下記のヌクレオチド配列 ( I I ) 又は (I I ' ) (配列番号 1) を含むものを挙げることができる。
3 ' -GUGCCCCA GUACGGUG-5
A C
A ひ GA
G
CG (ID
A U
GC
G C C U G U
又は 5, -<
CCCCGUG- 3, (1 1, )
(配列中、 A、 C、 G、 Uはそれぞれ、 アデニン、 シトシン、 グァニン、 ゥラシ ルを塩基成分とするリボヌクレオチドを表す。 )
また、 本発明は、 上記のリボザィムとリボソームとの複合体を提供する。 リポ ノームとしては、 N— [1— (2, 3-d i o l e y l o x y) p r o p y l ] ― η , η , η— t r i me t h y l a mm ο η i u m c h l o r i d e (DO TMA) と d i o l e o y l p h o s p h o t i d y l e t h a n o l am i n e (DOPE) の複合体 (例えば、 L i p o f e c t i n (G I B CO) ) 、 エチレンィミンの直鎖状のポリマーの混合物 (例えば、 E xG e n 500 (Eu r ome d e x) ) などを挙げることができる。
さらに、 本発明は、 上記のリボザィムを化学合成により製造する方法を提供す る。 合成法としては、 リン酸トリエステル法、 ホスホロアミダイ ド法、 ホスホン 酸エステル法などを利用することができる。
さらにまた、 本発明は、 上記のリボザィム又はリボザィムとリボソームとの複 合体を有効成分として含む医薬組成物を提供する。 本発明の医薬組成物は、 血管 増殖性疾患、 例えば、 高血圧症、 PTC A後の冠動脈の再狭窄を予防及び Z又は 治療するのに有効である。
本発明は、 また、 上記のリボザィムを用いて、 標的 RNAを特異的に切断する
方法を提供する。 標的 RNAの特異的切断は i n V i t r o又は i n v i v oのいずれで行ってもよレ、。 標的 RNAとしては、 ヒ ト PDGF— A鎖 mRNA である。 また、 標的 RN Aは下記のヌクレオチド配列 (配列番号 2) を含むこと が好ましい。
5 ' - C ACGGGGUCCAUGCC AC - 3
(配列中、 A、 C、 G、 Uはそれぞれ、 アデニン、 シトシン、 グァニン、 ゥラシ ルを塩基成分とするリボヌクレオチドを表す。 )
図面の簡単な説明
図 1は、 GENETYX— MACによるヒ ト PDGF— A鎖 mRNA (ヌクレ ォチド 501から 700) の二次構造、 及びヌクレオチド 591の矢印によって 示した切断部位 G U C配列を示す写真である。
図 2 A及び Bは、 ヒ ト PDGF— A鎖 mRNAに対するリボザィム及びコント ロールであるミスマッチリボザィムの配列を示す写真である。 リボザィム (下 部) は PDGF— A鎖 mRNA (上部) の G U Cコドンを矢印で示すように切断 することができる。 ミスマッチリボザィムはリボザィムの配列のうち 5, 側から
31番目の Aを Cに一塩基置換したものである。
図 3は、 T7 RNAポリメラーゼを用いて作製した、 ヒト PDGF— A鎖 m
RNAに対する合成リボザィム及び標的 RNAを示す写真である。
図 4は、 配列決定用ゲルを用いた電気泳動によって i n V i t r o切断反応 を分析し、 次に乾燥ゲルにフィルムを密着させてオートラジオグラフィーを実施 した結果を示す写真である。 切断反応には、 合成した 8 5塩基の標的 RN A (T) 及びヒ ト PDGF— A鎖 mRNAに対する合成した 38塩基の全 RNAリ ボザィム (R) を用いた。 ァニールした標的 RNA (Ι Ο ηΜ) 及び全 RNAリ ボザィム (Ι Ο ΟηΜ) を 25 mM MgC l 2の存在下で、 37°〇で1、 5及 び 1 5時間インキュベートした。 MgC 1 2の存在下で、 合成リボザィムは時間 依存的に標的 RNAを予測されたサイズ (60及び 25塩基) に一致する 2つの
RNA断片に切断した。
図 5は、 ヒ ト VSMCにおける、 ヒ ト PDGF— A鎖 mRNAに対するハンマ
一へッド型リボザィムのアンジォテンシン I I刺激 DN A生合成に及ぼす効果を 示す写真である。 静止期の VSMCを、 アンジォテンシン I I及び 0. 01から 1. 0 /zMのミスマッチリボザィム又はリボザィムと共に、 L i p o f e c t i nの存在下で 20時間インキュベートした。 データは平均土 S EMで示す (n =4) 。 * : ミスマッチリボザィムと比較して Pく 0. 01。
図 6は、 ヒ ト VSMCにおける、 ヒ ト PDGF— A鎖 mRNAに対するハンマ 一へッド型リボザィムの TGF— )3刺激 DN A生合成に及ぼす効果を示す写真で ある。 静止期の VSMCを、 10 /zMの TGF— j3及び 0. 01から 1. ΟμΜ のミスマッチリボザィム又はリボザィムと共に、 L i p o f e c t i nの存在下 で 20時間インキュベートした結果を示す。 データは平均土 S EMで示す (n = 4) 。 * : ミスマッチリボザィムと比較して Pく 0. 01の有意差を認める。 図 7A及び Bは、 ヒ ト VSMCにおける、 ヒ ト PDGF— A鎖 mRNAに対す るハンマーへッド型リボザィムのアンジォテンシン I I刺激 PDGF— A鎖 mR NA発現に及ぼす効果を示す写真である。 図 7 Aは、 静止期の VSMCを、 アン ジォテンシン I I及び 1. 0 のミスマッチリボザィム又はリボザィムと共に、 L i p o f e c t i nの存在下で 20時間インキュベートした結果を示す写真で ある。 PDG F— A鎖 mRNA及び 18 S r RN Aの量を RT— P C Rによつ て測定した。 図 7 Bは、 PDGF— A鎖 mRNAの 1 8 S r RNAに対する比 をデンシトメ トリ一分析によって評価した結果を示す写真である。 データは平均 土 S EMで示す (n = 4) 。 * : ミスマッチリボザィムと比較して P < 0. 0 1の有意差を認める。
図 8A及び Bは、 ヒ ト VSMCにおける、 ヒ ト PDGF— A鎖 mRNAに対す るハンマーへッド型リボザィムの PDG F— AA蛋白発現に及ぼす効果を示す写 真である。 静止期の VSMCを、 アンジォテンシン I I及び 1. 0/xMのミスマ ッチリボザィム又はリボザィムと共に、 L i p o f e c t i nの存在下で 20時 間インキュベートした。 PDGF— AA蛋白及び αチュブリン蛋白の量をウェス タンブロット分析によって測定した。 図 8 Βは PDGF— Α鎖 mRNAの α—チ ュブリン mRNAに対する比をデンシトメ トリー分析によって評価した結果を示 す写真である。 データは平均土 S EMで示す (n = 4) 。 *ミスマッチリボザ
ィムと比較して P<0. 01の有意差を認める。
図 9 A及び Bは、 実施例 2で設計したハンマーヘッド型リボザィム (A) 、 ミ スマッチリボザィム (B) の基本構造をそれぞれ示す写真である。 上段がターゲ ットであるラット PDGF— A鎖 mRNAの一部で、 ラット PDGF— A鎖 c D N Aの 91 9一 921番塩基の GUC配列の直後で切断が起こる (矢印) 。 下段 がリボザィムであるが、 アンダーラインの引いてある塩基は R N A構造であり、 他は DNA構造という DNA—RNAキメラ型になっている。 *マークは、 核酸 分解酵素に対して耐性とするために、 3' 側の二塩基間の構造をホスホロチオア ート
(p h o s p h o r o t h i o a t e) の形に化学修飾してあることを意味する。 発明を実施するための最良の形態
本態性高血圧症患者及び高血圧自然発症ラット ( S H R) に観察される心血管 系臓器の過剰増殖は、 脳卒中、 虚血性心疾患及び腎硬化症等の重篤な合併症を引 き起こし得る。 これらの合併症は血管平滑筋細胞 (VSMC) の過剰増殖に基づ くものであり、 本態性高血圧症患者の治療の標的である。
高血圧症における心血管系臓器の過剰増殖における P D G F— A鎖の関与を評 価するため、 我々は PDGF— A鎖 mRNAに相補的なアンチセンス ODNが S HRにおける心血管系臓器の過剰増殖を i n V i t r o及び i n v i v oで 抑制することを示し、 高血圧症における心血管系臓器の過剰増殖における P D G F— A鎖の関与を示唆した。 我々はまた、 ラット PDGF— A鎖 mRNAを標的 として設計した DNA— RNAキメラ型リボザィムが、 培養 VSMCの PDGF 一 A鎖 mRNAを塩基配列特異的に切断することが可能で、 その結果、 VSMC における PDGF— AAタンパク質の発現を低下させ、 SHR由来 VSMCの過 剰増殖を抑制することを示した。
また PTC A後の冠動脈の新生内膜形成による再狭窄は今のところ有効な治療 法がなく、 循環器領域で大きな問題となっている。 冠動脈の再狭窄は中膜平滑筋 細胞の内膜側への遊走と増殖により、 PDGF— A鎖が関与することが知られて レヽる (S c o t t NA, C i p o 1 l a GD, Ro s s C E, Du n n B, Ma r t i n FH, S i mo n e t L, Wi l c o x J N. (199
6) 93 : 2178) 。 本研究において、 我々はヒ ト PDG F— A鎖 mRNAを GUC配列でより具体的にはヌクレオチド 591で切断するための 38塩基ハン マーへッド型リボザィムを設計し、 合成した。 Mg C 1 2の存在下で、 ヒ ト PD G F— A鎖 m R N Aに対する合成リボザィムは用量依存的に合成標的 R N Aを、 予測された大きさの 2つの RNA断片に切断した。 ヒ ト PDGF— A鎖 mRNA に 0. 01から 1. 0 //Mのリボザィムを投与すると、 ヒ ト VSMCによるアン ジォテンシン I I又は TGF— /3刺激 DNA生合成が用量依存的に有意に抑制さ れた。
ヒ ト PDGF— A鎖 mRNAに対する 1. 0 μ Mのリボザィムの投与は、 ヒ ト VSMCにおいてアンジォテンシン I Iによって誘導される PDG F— Α鎖 mR N A発現及び PDGF— AA蛋白発現の両方を有意に抑制した。 これらの結果は、 ヒ ト PDGF— A鎖 mRNAを標的として設計されたリボザィムは P D G F— A 鎖 mRNAを切断することによって、 アンジォテンシン I I又は TGF— ) 3によ つて刺激されたヒ ト VSMCの増殖を効果的かつ特異的に抑制し、 その結果ヒ ト VSMCにおける PDGF— AA蛋白発現を抑制することを示した。 このことは、 血管増殖性疾患のための遺伝子治療法としてこのリボザィムが利用可能であるこ とを示している。
遺伝子治療において生体内でリボザィムを発現させる場合、 外部から合成リボ ザィムをカチオン性の脂質膜などで包んで導入する方法 (Ma l o n e, RW. F e i g n e r, PL. , Ve rmn, I M (1989) P r o c. Na t l . Ac a d. S c i . , USA 86, 6077) と、 ウィルスベクターなどを用 いて、 リボザィムをコ一ドする DNAを含むベクター DNAを細胞内に導入して 細胞内でリボザィムを発現させる方法 (F r i e dma nn. T. ,
Ro b l i n. R. (1 972) S c i e n c e 1 75, 949) の 2種類が ある。 その代表的な方法どしては以下のものが挙げられる。
①リポフエクシヨン (L i p o f e e t i o n) 法
細胞の表面は負に荷電している。 そこで、 目的のリボザィム又はリボザィムを コードする DNAを含むベクター (DNA2本鎖環状プラスミ ド) とカチオン性 の脂質 (リポフエクション試薬 ( L i p o f e c t i nなど) ) とで複合体をつ
くり、 それを細胞内へ導入する。
②ウィルスベクター法
ウィルスの遺伝情報のうち遺伝子発現に必要な部分のみを残し、 そこへ治療効 果をもつリボザィムをコードする配列を組みこんだものを用意する。 このべクタ 一をウイルスの力によって目的細胞の D N Aに組み込む。
本発明のリボザィムを用いて、 標的 RNA、 特にヒ ト PDGF— A鎖 mRNA を特異的に切断することができる。
本発明のリボザィムは、 医薬、 特に、 血管増殖性疾患を予防及び/又は治療す るための遺伝子治療薬として使用することができる。 例えば、 本発明のリボザィ ムをリポフ クシヨン試薬に封入し、 これを生体に投与して、 疾患部位の細胞に 取り込ませることにより、 PDGF— A鎖 mRNAの翻訳を阻害することができ る。 また、 本発明のリボザィムをコードする DNAをウィルスなどのベクターに 組み込んで、 疾患部位の細胞内に導入することにより、 PDGF— A鎖 mRNA の翻訳を阻害することができる。 本発明のリボザィムの投与は、 疾病の状態の重 篤度や生体の応答性などによる力 予防及び Z又は治療の有効性が認められるま で、 あるいは疾病状態の軽減が達成されるまでの期間にわたり、 適当な用量、 投 与方法、 頻度で行えばよい。
本発明を以下の例によりさらに具体的に説明する。 本発明の範囲は、 これらの 実施例に限定されることはなレ、。
例 1 (参考:アンチセンス法)
我々は PDGF— A鎖 mRNAに対するアンチセンスオリゴデォキシヌクレオ チド (ODN) による SHRの血管増殖の i n v i t r。及び i n v i v o での抑制作用とその機序を検討した。
方法
PDGF— A鎖 mRNAの開始コドン領域 1 5塩基部位に相補的なホスホロチ オア一ト (p h o s p h o r o t h i o a t e) 型アンチセンス ODNとコント ロールとして同塩基組成であるが順不同のノンセンス ODNを使用した。
アンチセンス ODN : 5, 一 AGGTCCTCATCGCGT— 3 ' (配列番号 7)
ノンセンス ODN : 5, 一 TGCCGTCAGCTGCTA— 3 ' (配列番号 8)
実験 I : SHR及 i s t a r— Ky o t oラット (WKY) 由来 VSMCの 細胞周期を 0. 2%血清にて同調させ、 DNA生合成は3 H_チミジンの取り込 みで、 PDGF— A蛋白はウェスタンブロット法で、 PDGF— A鎖 mRNAは 逆転写ポリメラーゼチェインリアクション (RT— PCR) 法で測定し、 0. 0 1— 1. 0 μΜのアンチセンス ODNの作用を検討した。 さらに、 1つ又は 3つ の変異塩基を含んだァンチセンス O D Νの作用も検討した。
実験 I I : 100 n gアンチセンス ODNをポリヌクレオチドキナーゼを用い 32 Pでラベルしてからラット腹腔内に投与し、 1, 4及び 1 6時間後の心血管 系臓器及び核への取り込みを評価した。
実験 I I I : 15週令 SHR及び WKYをシャム群 ( A L Z E Tポンプで生理食 塩水を 28日間皮下投与) 、 ノンセンス群 (ノンセンス ODN 80n g/g体 重 Z日を 28日間皮下投与) 、 アンチセンス群 (アンチセンス ODNを同量 28 日間皮下投与) に分け、 血圧を 7日毎に測定し、 28日目に3 H—チミジンを腹 腔内に投与し、 大動脈、 心臓、 腎臓を摘出し、 3Hの放射活性 (3H—
t o t a l) 、 DNA含量、 3H— DNA、 及び P D G F— A蛋白を測定した。 未
実験 I :アンチセンス ODNはノンセンス ODNに比し SHR由来 VSMCの過 剰な DN A生合成を有意に抑制したが、 WKY由来 VSMCでは抑制しなかった。 変異塩基を含んだァンチセンス O D Nでは S H R由来 V S MCの増殖の抑制作用 は変異塩基数に相応して减弱した。 ウェスタンブロット法で PDGF—AA蛋白 は S H R由来 V S MCでのみ検出され、 ァンチセンス O D Nは濃度依存性にこれ を抑制したが、 ノンセンス ODNは抑制しなかった。 アンチセンス ODNは PD GF— A鎖 mRNAの発現に影響しなかった。
実験 I I : 。 P—アンチセンス ODNは 1時間以内に臓器に取り込まれ、 臓器 から核への取り込み効率は、 4時間をピークに大動脈で他の臓器に比較し約 2倍 で、 1 6時間まで持続していた。
実験 I I I :アンチセンス ODNは SHR及び WKYの血圧を変化させなかった。
SHRの大動脈の DNA含量、 DNA生合成は WKYに比し高く、 アンチセンス ODNはこれらを著明に抑制したが、 WKYでは影響しなかった。 ノンセンス O DNはこれらを抑制しなかった。 ウェスタンブロット法で大動脈の PDGF— A A蛋白発現は SHRでのみ検出され、 アンチセンス ODNはこれを著明に抑制し た。 アンチセンス ODNは心臓、 腎臓、 肝臓に対しては有意な作用を示さなかつ た。 以上から結論として、 PDGF— A鎖 mRNAに対するアンチセンス DNA 法は血圧を変化させないで S H Rにおける過剰な血管増殖を著明に抑制し、 高血 圧症の血管障害に対する遺伝子治療の可能性を示している。
例 2 (参考: ラッ ト PDGF— A鎖 mRNAに対するキメラ型リボザィムの作 用)
我々はラット PDG F— A鎖 mRNAに対する DNA— RNAキメラ型リボザ ィムの SHR由来 VSMCの過剰増殖に対する作用を検討した。
方法
ラット PDGF— A鎖 mRNAの GUC配列を含むループ構造に相補的なハン マーヘッド型リボザィム (図 9A、 下段の配列) 及びミスマッチリボザィム (図 9B、 下段の配列) を設計した。 アンダーラインは RNA構造であることを示し、 他は DNA構造である。 *はホスホロチオア一ト化学修飾を意味する。
ハンマーヘッド型リボザィム : 5' -CGGTGGTGCUGAUGAGTCC TTGCGGACGAAACCCTTネ G水 A— 3, (配列番号 9)
ミスマッチリボザィム : 5, -CGGTGGT GCUG AUGAGT C C T T G CGGACG_AAC.CCCTT*G*A- 3 ' (配列番号 10)
T 7プロモーターに連結した铸型 DNAから T 7 RNAポリメラーゼを用いて 下記のターゲット RN Aを合成し、 リボザィムとターゲット RNAとを、 Mgの 非存在下及び存在下でそれぞれインキュベートした。 ターゲット RNAはラット PDGF— A鎖 cDN Aの 897— 981番目を铸型として作成した以下の塩基 配列で、 アンダーラインを引いた G U C配列の直後で切断され得る。
ターゲット RNA : 5 ' -CGUC AAGUGCC AGC C CUC AAGGGU
3 ' (配列番号 1 1 )
細胞実験では活性部位のみ RN Aで他の部位を DN A構造としたキメラ型リボ ザィムを合成して用いた。 リボザィムの取り込み実験では、 キメラ型リボザィム を F I TCでラベルして L i p o f e c t i nにて V SMCに投与し、 細胞への 時間的な取り込みを調べた。
リボザィムの V SMC増殖に対する作用 : WKY、 SHR由来 V SMCにキメ ラ型リボザィムを投与し、 1 ) DNA生合成における3 H—チミジンの DNAへ の取り込み、 2) 血清刺激による細胞数の増加、 3) RT— PCR法による PD G F— A鎖 mRNAの発現、 4) ウェスタンブロット法による P D G F— A A蛋 白の発現に対するリボザィムの作用を検討した。
m
1 ) Mg 2 +存在下、 無修飾型リボザィム (DNA— RNAキメラにせず、 ホス ホロチォアートに化学修飾していないもので、 以下の塩基配列を持つ。 5 ' — C
A— 3 ' (配列番号 1 2) ) 及びキメラ型リボザィムはターゲット RNAを切断 したが、 Mg 2 +非存在下では切断しなかった。
2) F I TC—リボザィムは主に細胞質に取り込まれ、 核への移行は少なかった。
3) 0. 1、 1 キメラ型リボザィムは無血清で SHR由来 V SMCの基礎 D N A生合成を濃度依存的に抑制したが、 WK Y由来 V S M Cでは抑制は軽度で、 ミスマッチリボザィムは抑制しなかった。
4) 1 μΜキメラ型リボザィムは SHR由来 VSMCにおける PDG F— A鎖 m RN A発現を抑制したが、 ミスマツチリボザィムは抑制しなかった。
5) 1 μΜキメラ型リボザィムは SHR由来 V SMCにおける PDG F— AA蛋 白発現を抑制したが、 ミスマッチリボザィムは抑制しなかった。
以上から結論として、 PDG F— A鎖 mRNAに対するリボザィムは SHR由 来 V SMCの過剰な増殖を低濃度で特異的に抑制することが認められ、 今後高血 圧症を含む血管増殖性疾患の遺伝子治療に有用であると考えられた。
例 3 (ヒ ト PDG F— A鎖 mRNAに対する本発明のリボザィム)
方法
ヒ ト PDGF— A鎖 mRNAに対するハンマーへッド型リボザィムの設計
切断部位における 2本鎖構造を避けるため、 "GENETYX— MAC : S e c o n d S t r u c t u r e a n d M i n i mum F r e e
E n e r g y"にしたがって、 ヒ ト P D G F— A鎖 m R N A配列 (図 2 A及び B のそれぞれ下段の配列) (X i a Y, F e n g L, Ta n g WW, W i 1 s o n C B. (1 992) J Am S o c Ne p h r o l . 3 : 622) のヌクレオチド 591に位置するループ構造の GUC配列 (図 1参照) を切断部 位として選択し、 これを切断するための 38塩基ハンマーへッド型リボザィム
CCCGUG-3' ) (配列番号 1) を設計した (図 2A、 下段の配列参照) ま たコントロールとしてミスマッチリボザムも設計した (配列番号 13) (図 2B、 下段の配列) 。 これは上記リボザィムの配列のうち 5' 側から 3 1番目の Aを C に一塩基置換したものである。 。
T 7 RNAポリメラーゼを用いたハンマーへッド型リボザィム及び標的 RN A の合成
T 7 RNA ポリメラーゼ及び合成 DNA铸型を用いて、 以前に記述された ようにハンマーへッド型リボザィム及び標的 RN Aを合成した
(Uh l e n b e c k OC. (1 987) Na t u r e. 328 : 596) 。 十分に活性な铸型 DNA鎖として、 クラス I I I T7 RN Aポリメラ一ゼプ 口モーターの— 1 7から— 1までの領域、 及びこれに続く所望の RN A配列の相 補体を含む断片を作製した。 標的 DN A鎵型の全長は、 1 7塩基プロモーター領 域、 及びそれに続くヒ ト PDGF— A鎖 mRNA配列 (ヌクレオチド 567から 651) の 85塩基からなる相補体を含んでいる。 リボザィム铸型 DNAの全長 は、 1 7塩基プロモーター領域、 及びそれに続く リボザィム配列の 38塩基から なる相補体を含んでいる。
転写铸型を作製するため、 プロモーターの一 1 7から一 1に対応する 1 7ヌク レオチド断片からなる相補鎖を铸型 D N A鎖のプロモータ一部分にァニールさせ た。 ァニールした铸型を調製するため、 これら 2つの鎖を等モル濃度で混合し、 90°Cで 2分間加熱し、 60°Cで 3分間ァニールし、 次に氷上で素早く冷やした。
RN Aの合成には、 3 μ gのァニールした铸型を 6 μ 1の T 7 RNAポリメ
ラ一ゼ (50 U/μ 1, 宝バイオケミカル、 大阪) 、 5 1のひー32?—じ Τ Ρ (比活性 3000 C i /mm o 1 , New En g l a n d
Nu c l e a r, DE) 、 50 Uの RN a s e阻害剤 (宝バイオケミカル、 大 阪) 及び 50 μ 1の転写反応緩衝液 (4 OmM T r i s— HC 1 (pH 8. 0) , 0. 5mM r NT P, 8 mM Mg C 1 2, 5 mM ジチォスライ ト一 ノレ, 2mMスペルミジン) と混合し、 37°Cで 4時間インキュベートした。 次に、 これを 1 00 X 1のフエノール及びクロロホルム (1 : 1) と混合し、 1 600
0 r pmで 30秒間遠心した。 上清を新しい試験管に移し、 等容量のクロ口ホル ム イソアミルアルコール (25 : 1 ) と混合した。 16000 r pmで 30秒 間遠心した後、 上清を 200 μ 1の 100%エタノールと混合し、 16000 r pmで 1 5分間遠心し、 RNAペレットを調製した。 この RNAを 75%エタ ノールで 2回洗浄し、 エタノールを蒸発させ、 RNAをジェチルピロカルボネー ト (DEPC) で処理した H20 5 /z lに溶解した。
電気泳動にかける前に 5 / 1の RNAを 90°Cで 2分間加熱してから、 6%ポ リアクリルアミ ド塩基決定用ゲルにのせた。 300 Vで 1時間電気泳動した後、 ゲルを 10分間フィルムに暴露し (図 3) 、 RNAのリサイクルのため放射能暴 露フィルムのバンドの位置でゲルを切り出した。 RNAを含むゲルを 400 1 の DE PC処理水中で破壊し、 50°Cで 2時間振とうして RNA抽出を行った。 14000 r pmで 4°Cで 15分間遠心した後、 上清を新しい試験管に移し、 4 0 μ 1の 3 Μ酢酸ナトリゥム及び 1000 μ 1の 99%エタノールと混合し、 一 20 °Cに 1時間保持した。 14000 r pmで 4 °Cで 1 5分間遠心した後、 R N Aペレットを 75%エタノールで 2回洗浄し、 エタノールを蒸発させ、 RNAを 50 μ 1の DE PC処理に溶解し、 — 80°Cで保存した。 RNA濃度は、 UV—
1 200分光光度計 (島津製作所、 東京) を用いた紫外分光法により測定した。
I n V i t r o切断反応
I n v i t r o切断反応を以前に記述されたように実施した (S a X e n a SK, Ac k e rma n E J . (1 990) J B i o l Ch e m. 26 5 : 1 7 106) 。 標的 RNAへのハンマーへッド型リボザィムのアニーリング は、 Ι μ Ιの 2. 4 / Μリボザィム及ぴ 1 μ 1の 240 ηΜ標的 RNAを 20
1の 50 mM T r i s— HC 1 (pH8. 0) に添カ卩し、 90 で 1分間加 熱して行った。 次に、 反応液をゆっく り (30分かけて) 3 7°Cに冷やした。 切 断反応は、 切断反応緩衝液中のァニールしたリボザィム及び標的 RN Aに 2 // 1 の 2 50mM Mg C 1 2を添加することによって開始し、 次に 3 7°Cで 1、 5 及び 1 5時間ィンキュベートした。 各サンプルを 90°Cで 2分間加熱し、 氷上で 素早く冷やした。 次に 5 μ 1の各サンプルを配列決定用ゲルにのせ電気泳動にか けた。 ゲルを乾燥させ、 フィルムに暴露してオートラジオグラフィーを行った。 細胞培養及び静止の確立
ヒ ト大動脈から分離し継代培養したヒ ト VSMC (B i oWh i t t a k e r , I n c. , MD, USA) を、 1 0%ゥシ胎児血清 (G i b c o, L i f e
T e c h n o l o g i e s , I n c . , G a i t h e r b u r g, MD, US A) 及び 50 μ g/m 1ストレプトマイシン (G i b c o) を含む平滑筋基礎培 地 (SmBM, B i oWh i t t a k e r , I n c. , MD, USA) 中で維持 した。 7— 1 0日で細胞が集密に達すると、 細胞は培養下の平滑筋に典型的な丘 と谷のパターン (h i l l — a n d— v a l l e y p a t t e r n) を示した。 これらの細胞を、 C a '及び Mg 2 +を含まないダルベッコのリン酸緩衝化生 理食塩水 (PB S) に溶解した 0. 05%トリプシン (G i b c o) を用いたト リプシン処理によって継代し、 7 5 cm の組織培養フラスコに入れて細胞 1 05個 Zm 1の密度でインキュベートした。 トリプシン処理した細胞を 24ゥ エルの培養皿に 1 05個 Zゥエルの密度で播いた。 細胞は C02インキュベータ 一内で 1 0%ゥシ胎児血清を含む SmBM中で 3 7°Cで 40-60%集密になる まで増殖させ、 次に培地を無血清 SmBM培地に交換して 48時間インキュベー 卜し、 静止を確立した。
VSMC中へのリボザィムのデリバリー
VSMC トランスフエクシヨンのため、 RNAシンセサイザ一によって全ての ハンマーへッド型リボザィムを合成し、 高速液体クロマトグラフィ一によつて精 製した。 各トランスフエクシヨンごとに、 1 00 1の無血清 DMEMを用いて リボザィムを 0. 0 1— 1. 0 μΜに希釈し、 また 1 00 μ 1の無血清 DMEM を用いて 5 μ ΐの L i p o f e c t i n (G i b c o) を希釈し、 そして室温に
45分間放置した。 両方の希釈物を混合し、 室温で 1 5分間インキュベートした。 静止 V SMCを無血清ダルベック修飾型イーグル培養液 (DMEM) で 2回洗浄 し、 次に L i p o f e c t i nリボザィム複合体 (200 μ 1 ) を細胞に添カロし、 C02インキュベーター内で 37°Cでィンキュベートした。
DN A生合成の測定
新たに生合成された DN Aへの" H—チミジンの取り込みを以前に記述された ように測定した (Ro s s R. (1 971) J Ce l l B i o l . 50 : 1 72) 。 24ゥエルプレート中のリボザィムで処理した V SMC及び処理して いない VSMCを、 H—チミジン (0. 5 i C iZm l ) (New
En g l a n d Nu c l e a r, F o s t e r, CA, USA) を含む DM E Mと共に 2時間インキュベートした。 lm lの150mM N a C 1を用いて各 ゥエルを洗浄して過剰の3 H—チミジンを除去した後、 細胞を 1 m 1のェタノ一 ル:酢酸 (3 : 1) 溶液中で 10分間固定した。 1 m 1の H20で洗浄した後、 1 m 1の冷過塩素酸を用いて酸不溶性物質を沈殿させ、 90°Cで 20分間加熱す ることによって 1. 5m 1の過塩素酸中に DNAを抽出した。 可溶化 DNAを含 む過塩素酸をシンチレーシヨンバイアルに移し、 10m 1のシンチレーシヨン力 クテルと混合し、 液体シンチレーシヨン検出計を用いて放射能を測定した。
PDGF—A鎖mRNA発現のRT—PCRァッセィ
24ゥエルプレート中のリボザィムで処理した VSMC及び処理していない V SMCを PBSで 1回洗浄し、 各ゥエルの VSMCを 8 Ο Ομ Ιの RNAz o l B B i o t e c x La b o r a t o r i e s I n c. , Ho u s t o n, TE, USA) 中で溶解した。 各サンプルを 1 5秒間ボルテックス攪拌によって 80μ 1の 100%クロ口ホルムと混合し、 氷上に 1 5分間放置し、 次に 1 2, 000 gで 15分間遠心して全 RN Aを抽出した。 無色の上部の水相を等容量の 100%イソプロパノールと混合し、 一 20°Cに 45分間維持し、 次に 1 2, 0 00 gで 15分間 4°Cで遠心して RNAを沈殿させた。 この RNAペレツトを 5 00 μ 1の 75%エタノールで 2回洗浄し、 1 2, 000 gで 8分間 4。Cで遠心 し、 乾燥させ、 10 μ 1の TE緩衝液 ( 1 OmM T r i s—HC l (pH8. 0) , 1 mM EDTA) に溶解した。 65 °Cで 1 5分間変性した後、 RNAサ
ンプノレを 0. 5 μ 1の DN a s e緩衝液 (2 OmM T r i s—HC l (pH 8. 3) , 5 OmM KC 1及び 2. 5 mM M g C 1 2 ) に溶解した 0. 5 Uの DN a s e (G i b c o) で室温で 45分間処理した。 次に、 0. 5 μ 1の 20 mM EDTAを添加し、 98 °Cで 10分間加熱することによって D N a s eを 失活させた。
RT— P C Rを以前に記述されたように実施した (Mo c h a r 1 a H, Mo c h a r l a R, Ho c k s ME. (1 990) G e n e 93 : 27 1) 。 すなわち、 l OmM T r i s—HC l (pH 8. 3) に溶解した 0. 25υ μ 1の鳥類骨髄芽球腫ウィルス逆転写酵素 (L i f e
S c i e n c e s I n c. , S t. P e t e r s b u r g, FL, USA) , 5mM Mg C l 2、 5 OmM KC 1、 1 mMデォキシ N T P s、 及び 2. 5 μΜランダムへキサマ一を用いて、 RNA (1 μ g/20 μ 1 ) を 1本鎖 c D Ν Αに逆転写した。 5 μ 1の希釈した c DNA産物を、 1 OmM T r i s—HC 1 (p H 8. 3) 、 50 mM KC 1、 4 mM Mg C l 2及び 0. 025 υ μ 1 T a q D N Aポリメラーゼ (宝バイオケミカル、 大阪) ならびに 0. 2 μΜ上流センスプライマー及び下流アンチセンスプライマーと混合し、 全量を 25 1 とした。 GUC切断部位を含むセンスプライマー (5, 一 GCAGTC AGATCCACAGCATC— 3 ' ) (配列番号 3 ) 及びアンチセンスプライ マー (5, —TCCTCTAACCTCACCTGGAC— 3' ) (配列番号 4) を用いてヒ ト PDGF— Α鎖 mRNAの PCR増幅を実施し、 415塩基対 (b p) の産物を得た。 ヒ ト 18 Sリボソーム RNAに対するセンスプライマー (5, — TC AAGAACG AAAGTCGGAGG— 3, ) (配列番号 5) 及 びアンチセンスプライマー (5' — GGACATCTAAGGGCATC ACA — 3' ) (配列番号 6) を内部対照として用いた。 PCRは自動サーマルサイク ラー (P e r k i n E 1 m e r ) を用いて実施した。 じ1^增幅は96°じで5 分間最初の変性を行った後、 94°Cで 60秒間の変性、 58 °Cで 2分間のァニー リング及び 72 °Cで 1分間のプライマー伸長を 1サイクルとして 30サイクル行 レ、、 次に 72 °Cで 10分間最後の伸長を行って実施した。 得られた PCR産物を 1. 5 %ァガロースゲル上で電気泳動した。
VSMC中の PDGF—AA蛋白のウェスタンブロット分析
6ゥエルプレ一ト中の細胞密度が 105個 Zc m2のヒ ト VSMCをリボザィ ムで処理、 及び処理した後、 VSMCを P B Sで洗浄し、 1ゥエルあたり lm l の溶解緩衝液 ( 50 mM Tr i s— HC 1 (pH8. ◦ ) 、 1 50 mM N a C K 0. 02%アジ化ナトリウム、 100 μ g Zm 1フエ二ルメチルスル ホニルフノレオリ ド、 1 μ g m 1ァプロチニン、 l %T r i t o n X— 1 0 0) に溶解した。 100 μ 1のクロ口ホルム及び 400 μ 1のメタノールを用い て全タンパク質を抽出し、 精製した。 次に、 L ow r yらの方法 (L ow r y OH, Ro s e b r o u g h N J , F a r r AL, Ra n d a l l J . (1 951) J B i o l C h e m 1 93 : 265) によりタンパク質濃度 を測定した。 ウェスタンブロット分析には 5 gの蛋白を 20 X 1のサンプル緩 衝液と共に使用した。 サンプルを煮沸し、 6 %ポリアクリルアミ ドゲル電気泳動 に力 ナた。 次にタンパク質をニトロセルロース膜に転写した。 100%ブロック エース TM (大日本印刷株式会社、 大阪) を用いて 4°Cで一晚インキュベートし た後、 膜を、 15%ブロックエースを含む TB ST溶液 (1 OmM
T r i s—H C I (pH8. 0) 、 1 5 OmM N a C 1及び 0. 05% Twe e n 20) で 200倍に希釈した P D G F— A Aに特異的なゥサギポリ ク口一ナノレ f几体 (Au s t r a l B i o l o g i c a l s, S a n
Ramo n, CA, USA) 又はマウスモノクロ一ナノレ抗 αチュブリン抗体 (S i gma B i o s c i e n c e s, L o u i s, MI , USA) と共に、 室温で 3時間インキュベートした。 TB ST溶液で 10分間 2回洗浄した後、 膜 を、 15%ブロックエースを含む TB ST溶液で 3000倍に希釈したャギ抗ゥ サギ I g G又はャギ抗マウス I gG (B i o— Ra d L a b o r a t o r i e s) と共に、 室温で 1時間インキュベートし、 TB ST溶液で 10分間 3回洗浄 した。 p r o t e i n A— g o l d (B i o— Ra d
L a b o r a t o r i e s) を用いて以前に記述されたように膜上の免疫複合体 を検出した (Da n s c h e r G, N g a a r d J UR. ( 1 983) J H i s t o c h em Cy t o c h em 31 : 1 394) 。 すなわち、 4容量 の p r o t e i n g o l d緩衝液 ( 20 mM T r i s— HC 1 (p H 8.
1) 、 1 5 Om Na C l、 0. 1% BSA、 0. l%Twe e n— 20及 び 0. 02%aアジ化ナトリウム) に溶解した p r o t e i n A— g o 1 dと 共に、 膜を 20°Cで 1時間インキュベートした。 次に、 1% T r i t o n X - 100を含む p r o t e i n g o 1 d緩衝液で 1 0分間膜を洗浄し、 p r o t e i n g o l d緩衝液単独で 5分間 2回洗浄し、 脱イオン蒸留水で 1 分間 2回洗浄して塩素イオンを除去し、 そしてクェン酸緩衝液 (0. 2M タエ ン酸及び 0. 2 Mクェン酸ナトリウム、 pH3. 7) で 5分間洗浄した。 次に、 30m 1のヒ ドロキノン溶液 (300m lのクェン酸緩衝液中に溶解した 300 mgのヒ ドロキノン) に溶解した 4 Omgの乳酸銀を用いて膜を着色した。 統計学的分析
結果を平均土 S EMで示す。 平均値間の有意差は対になっていない
(un p a i r e d) データに対するスチューデント T検定、 及び二方向 (two-wa y) 分散分析 (ANOVA) によって評価し、 その後
Dun c a nの多範囲検定を行つた。
結果
I n V i t r o切断反応
ヒ ト PDGF— A鎖 mRNAに対する合成ハンマーへッド型リボザィム及び標 的 RN Aを用いた i n V i t r o切断反応を図 4に示す。 Mg C 1 2の存在下 で、 合成リボザィムは時間依存的に標的 RNAを予測されたサイズ (60及び 2 5塩基) に一致する 2つの RNA断片に切断した。
VSMCによる DNA生合成に及ぼすヒ ト PDGF— A鎖に対するハンマーへッ ド型リボザィムの効果
L i p o f e c t i nの存在下における、 ヒ ト V SMCにおけるアンジォテン シン I I刺激 DN A生合成に及ぼすヒ ト PDGF— A鎖に対するハンマーへッド 型リボザィム (0. 01— 1. 0 zM) の効果を図 5に示す。 1 0 μΜのアンジ ォテンシン I Iの投与はヒ ト VSMCにおける DNA生合成を有意に (Ρく 0. 01) 増加させ、 また 0. 1及び 1. 0 /iMのハンマーヘッド型リボザィムはヒ ト VSMCにおけるアンジォテンシン I I刺激 DNA生合成をミスマッチリボザ ィムに比較して、 有意に (P<0. 01) 抑制した。
L i p o f e c t i nの存在下における、 ヒ ト V S MCにおける T G F— ]3刺 激 DNA生合成に及ぼすヒ ト PDGF— A鎖に対するハンマーへッド型リボザィ ム (0. 01— 1. ΟμΜ) の効果を図 6に示す。 1 0 μ Μの T G F— 3の投与 はヒ ト VSMCにおける DNA生合成を有意に (P<0. 05) 増加させ、 また 0. 01から 1. 0 のハンマーヘッド型リボザィムは、 ヒト VSMCにおけ る TGF— /3刺激 DN A生合成をミスマッチリボザィムに比較して有意に (P< 0. 01) 抑制した。
ヒ ト VSMCにおける PDGF— A鎖 mRNA発現に及ぼすハンマーへッド型リ ボザィムの効果
図 7A, 7 Bはヒト VSMCにおけるアンジォテンシン I I刺激 PDGF— A 鎖 mRNA発現に及ぼすハンマーへッド型リボザィムの効果を示す。 10 μΜの アンジォテンシン I Iの投与はヒ ト VSMCにおける PDGF— Α鎖 mRNAの 発現を有意に (Pく 0. 01) 増加させた。 ミスマッチリボザィムはアンジオシ ンシン I I刺激による PDGF— A鎖 mRNA発現に影響しなかった。 1. Ο μ Μの PDGF— Α鎖に对するハンマーヘッド型リボザィムの投与は、 ヒ ト VSM Cにおけるアンジォテンシン I I刺激 PDG F— A鎖 mRNAをミスマッチリボ ザィムに比較して有意に (P<0. 01) 抑制した。
ヒ ト VSMCにおける PDGF— A蛋白発現に及ぼす PDGF— A鎖に対するハ ンマーへッド型リボザィムの効果
図 8 Aはヒト VSMCにおけるアンジォテンシン I I刺激 PDGF— AA蛋白 発現に及ぼすハンマーへッド型リボザィムの効果を示す。 10 のアンジォテ ンシン I Iの投与はヒ ト VSMCにおける PDGF—AA蛋白の発現を増加させ た。 ミスマッチリボザィムはアンジォシンシン I I刺激による PDGF— AA蛋 白発現に影響しなかった。 1. 0 /xMの PDGF— A鎖に対するハンマーヘッ ド 型リボザィムの投与は、 ヒ ト VSMCにおけるアンジォテンシン I I刺激 PDG F— A A蛋白発現を著明に抑制した。
産業上の利用可能性
本発明のリボザィムは、 PDGF— A鎖 mRNAを特異的に切断して、 PDG F— AA蛋白の発現を低下させることができるので、 本態性高血圧症、 PTCA
後の冠状動脈の再狭窄等の血管増殖性疾患の遺伝子治療薬となり得る。
配列表フリーテキスト
配列番号 1
人工配列:合成 RN Aの記載
リボザィムの塩基配列。
配列番号 2
リボザィムが標的とする塩基配列。
配列番号 3
人工配列:合成 DN Aの記載
GUC切断部位を含むセンスプライマ一の塩基配列。
配列番号 4
人工配列:合成 DN Aの記載
GUC切断部位を含むアンチセンスプライマーの塩基配列。
配列番号 5
人工配列:合成 DNAの記載
ヒ ト 18 Sリポソーム RNAに対するセンスプライマ一の塩基配列。
配列番号 6
人工配列:合成 DN Aの記載
ヒ ト 18 Sリボソーム RN Aに対するアンチセンスプライマーの塩基配列。 配列番号 7
人工配列:合成 DN Aの記載
ァンチセンス O D Nの塩基配列。
配列番号 8
人工配列:合成 DN Aの記載
ノンセンス ODNの塩基配列。
配列番号 9
人工配列:合成 DNA— RNAキメラの記載
ハンマーへッド型リボザィムの塩基配列。
配列番号 10
人工配列:合成 DNA— RNAキメラの記載
ミスマツチリボザィムの塩基配列。
配列番号 1 1
人工配列:合成 RN Aの記載
ターゲット RNAの塩基配列。
配列番号 1 2
人工配列:合成 RN Aの記載
無修飾型リボザィムの塩基配列。
配列番号 13
人工配列:合成 R N Aの記載
ミスマツチリボザィムの塩基配列。
配列番号 14
リボザィムの塩基配列: nは相補的塩基対形成可能な少なくとも 2個のヌクレ ォチドとループ形成が可能な少なくとも 3個のヌクレオチドを含む。