明 細 書
モータ駆動式スロッ トル弁制御装置、 及びその制 御方法、 自動車、 及び自動車のスロッ トル弁駆動 用モータの温度測定方法、 モータの温度測定方法
技術分野
本発明はスロッ トル弁の開度がモータによって制御される自動車のモ ータ駆動式スロッ トル弁制御装置、 及びその制御方法に関し、 モータ駆 動式スロッ トル弁制御装置を備えた自動車、 及びこのようなところに用 いられるモータの温度測定方法にも関する。 背景技術
特開平 9— 317538 号公報にはモータ駆動式スロッ トル弁制御装置にお いて、 環境温度の変化があってもオーバーシュ一 トゃ目標開度への到達 時間遅れをなくすために、 スロッ トル弁の開度変化率を基準となる変化 率と比較し、 オーバーシュ一 卜誘発領域にあるか、 収束遅延領域にある かを判断して、 開度を制御するための制御デューティ一演算式の P I D (比例項, 積分項, 微分項) の各項の制御ゲインを補正するものが記載 されている。
また、 特開平 8— 303285 号にはスロッ トル弁駆動用の直流モータに流 れる電流を検出し、 この電流値をモータの目標電流値と比較してその偏 差が小さくなるようフィ一 ドバック制御するものが記載されている。
このような従来技術ではオーバ一シュ一 卜や目標開度への到達時間遅 れはある程度解消できる。 しかし、 前者の場合、 オーバ一シュー ト誘発 領域にあるか、 収束遅延領域にあるかを判断するための基準変化率は個
々のモータによって異なり、 またスロッ トル開度制御の制御特性によつ ても異なる。
従って各製品毎に特有の基準変化率を決める必要があリ、 作業性が悪 い。
なお、 環境温度の変化を温度センサで測温し、 環境温度の変化に応じ て D Cモータの制御に補正を加えることも考えられるとの記載があるが, 具体的な解決策は記載されていない。
また、 後者の場合、 モータの機械的応答遅れが制御系のハンチングを 招く虞れがある。 発明の開示
本発明はスロッ トル弁駆動用のモータの温度変化による種々の物理量 に対する好ましくない影響を、 簡単な方法でしかも副次的な問題を引き 起こすことなく、 取り除くことを目的とする。 その物理量の一つはスロ ッ トル弁開度そのものである。
また、 自動車のエンジンの回転数, 吸入空気量もその物理量の内の一 つである。
また本発明はモータの温度を、 電気的に測定する技術も提供する。
本発明はこの点に鑑み、 モータの卷線のインピーダンスおよび/また は前記モータの温度の変化を検出して、 当該モータへの供給電力を補償 する補償装置を設けたものである。
また、 本発明は、 モータへの供給電力を決定する制御パラメータを一 定の値に維持したときの開度でスロッ トル弁を固定し、 この状態でァク セルペダルを踏リ込んだときのモータへの印加電圧あるいは供給電流の 時間に対する変化率がモータの温度によって異なるようにしたものであ
る。
また、 本発明は、 スロッ トル開度センサの出力によるフィー ドバック を無効にした状態でスロッ トル開度制御指令信号として特定の値を与え たとき、 モータの温度条件によってその制御指令信号の特定の値が異な る値を取るようにしたものである。
また、 本発明は、 モータの卷線のインピーダンスおよびノまたは前記 モータの温度が変化しても、 当該スロッ トル弁の開度が変化しないよう にモータへの供給電力を補償する補償装置を設けたものである。
また、 本発明では、 スロッ トル弁駆動用のモータの巻線のインピーダ ンスおよび Zまたはモータの温度が変化しても、 エンジンの回転数が変 化しない自動車を提供するものである。
また、 本発明では、 スロッ トル弁駆動用のモ一タの卷線のイ ンピーダ ンスおよび /またはモータの温度が変化してもエンジンの空気量センサ の測定値が変化しない自動車を提供するものである。
本発明ではモータの温度を測定してモータへの供給電力量を補正する ようにしたので個々のモータに対応した制御が可能であるにも係わらず 基準値などの固有の値を求める特別な作業などが不要である。
別の発明では、 センサなしにモータの温度を測定できる。
また別の発明では、 スロッ トル弁駆動用モータの温度の変化によって 自動車の回転数が不安定になったり、 エンジンの吸入空気量の検出値が 不安定になったりすることがない。 図面の簡単な説明
第 1 図は本発明の構成を示すブロック図である。
第 2図はスロッ トル弁の目標開度に対する応答波形を模式的に示すグ
ラフである。
第 3図はモータの卷線抵抗と温度の関係を示す図面である。
第 4図は減速中の燃料カツ 卜時のスロッ トル弁とモータ電流を示すグ ラフである。
第 5図はモータ電流を簡単に測定するため駆動回路に付加した検出回 路を示す図である。
第 6図は駆動回路の各点での電位と P W M信号との関係を模式的に示 すグラフである。
第 7図は減速中の燃料カツ 卜時に温度を求める処理を表すフローチヤ 一卜であ 。
第 8図はダイォー ドを用いた電流検出回路及び特性を示す図である。 第 9図はサ一ミスタを用いた電流検出回路及び特性を示す図である。 第 1 0図は別体型のスロッ トルァクチユエ一タと制御ュニッ 卜の構成 図である。
第 1 1 図は一体型のスロッ 卜ルァクチユエ一タと制御ュニッ 卜の構成 図である。
第 1 2図はエンジン制御ュニッ 卜からの信号をもとに温度を推定する 方法の構成図である。
第 1 3図は本発明の別の実施例の具体的回路図である。
第 1 4図は電流検出方法の他の方法の詳細図である。
第 1 5図は電流検出の説明のためのタイムチャー トである。 発明を実施するための最良の形態
スロッ トル弁を与えられた開度に制御するためには、 開度センサで検 出したスロッ トル弁の開度と、 与えられた目標値に基づいてモータを駆
動する信号を所定の周期で計算する制御系が必要で、 現在、 簡便な制御 系として非線形 P I D制御が広くに使用されている。 P I D制御は開度 センサで検出したスロッ トル弁の開度と与えられた目標値に対して、 偏 差 (開度と目標値との差) とその積分値及び微分値を所定のタイ ミング で求め、 それぞれに適当な定数 (以下 P I Dゲインという) を乗じたも のの和を用いてモータを駆動するものである。 ところがスロッ トル弁の 動特性は非線形で例えば、 アイ ドル時のエンジン回転数を一定に制御す るため弁を細かく動かすときは、 モータや弁の軸まわりの摩擦が大きく 影響し、 目標値に対する弁の開度の応答性が悪化したり、 定常的な偏差 が残ったりすることがある。 そこで、 偏差の大きさに応じて P I Dゲイ ンを動的に切リ換えて、 制御対象としての電子制御スロッ トルの非線形 性に対応している。 切り換えるゲインはマップと呼ばれるメモリ領域に あらかじめ格納しておき、 その時々の偏差に対応するゲインをマップか ら検索して P I Dゲインとして使用する。 マツプに格納する P I Dゲイ ンはモ一タゃギア等、 弁の駆動系の仕様ゃシミユレ一シヨンから大まか には算出可能ではあるが、 目標値に対する応答性の要求を満たすため実 験によリ微調整することが多い。
スロッ トル弁の開度の目標値に対する応答への要求には応答時間, 過 渡特性及び分解能がある。 応答時間は運転者のアクセル操作に対し違和 感がないような値であることが必要である。 また多くのスロッ トル弁は バタフライ弁であり、 弁の全開や全閉の位置は減速ギアが物理的なス 卜 ツバに接触したり、 スロッ トル弁が吸気管の壁面に接触することで決ま リ、 弁の可動範囲は 9 0度程度に制限されている。 このとき開度の目標 値が例えば全閉近くから全開に瞬間的に変化し、 弁がォ一バーシユ ー 卜 すると弁やギアに異常な衝撃が加わり破損するおそれがある。 つま リス
ロッ トル弁の応答性としては、 応答時間の要求を満たしつつ過渡的には オーバーシュー トが発生しないことが必要となる。 また、 アイ ドル時の エンジン回転数の制御を、 スロッ トル弁をバイパスする通路を通って流 れるバイパス空気量で制御する方法によらず、 電子制御スロッ トルで制 御するときには例えば 0 . 1 度以下のスロッ トル弁開度の分解能が必要 になる。
一方、 エンジンルームに設置される電子制御スロッ トルの温度は、 外 気温やエンジンの運転状態によって例えば、 一 4 0 °Cから 1 2 0 °C程度 まで変化する可能性があり、 この広い温度範囲で上記の応答時間, 過渡 特性及び分解能の要求を満たさなければならない。 一般に、 モータは巻 線の温度が上がると端子間抵抗が大きくなり、 トルク定数は小さくなる。 また潤滑油が封入してある回転軸では温度上昇とともに粘性抵抗が小さ くなる。 温度が下がると上記の性質は逆になる。 スロッ トル弁を制御す るときの分解能に関係する静的あるいは動的な摩擦について、 一般的な 温度特性を知るのは困難であるが、 電子制御スロッ トルの制御では無視 できない。
このようにスロッ トル弁の駆動系の特性は温度によって変化するため、 従来技術である偏差に応じて P I Dゲインを切り換えるマップ方式では 広い温度範囲で弁動作への要求を満たすことが本質的に困難である。 ま た、 マップを大きく し、 切り換える P I Dゲインを増やすことで要求仕 様を満たそうとすると制御ュニッ 卜上に大量の R O M領域が必要になる にもかかわらず、 最も影響の大きい温度を考慮できないので制御性能を 確保するのが困難である。 実験的に P I Dゲインのマップを決めるには 恒温槽を利用して電子制御スロッ トルの温度を管理した状態で弁の応答 性を見ながらゲインを微調整してゆく。 この方法ではゲイ ン調整と温度
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7 変更の繰り返しが必要で、 温度を変えるのに要する時間も長く、 最適な P I Dゲインを得るまで多大な工数を要している。
本実施例ではスロッ トル弁の応答性に大きな影響を与える雰囲気温度 を簡単な方法で検出し、 検出した温度に従って P I Dゲイ ンを切り換え ることで上記問題を解決する。
本実施例では以下の技術が提案されている。
スロッ 卜ル弁の開度指令信号とスロッ トル弁の開度を検出するセンサ 出力とに基づいてスロッ トル弁開閉制御用のモータを駆動する電子制御 スロッ トル制御装置において、 スロッ トル及びモ一タの温度を測定し、 それによつて前記スロッ トル弁開閉制御用の信号を補正する。
また、 スロッ トル開度センサの出力によるフィ一ドバックを無効にし た状態で前記指令信号として特定の値を与えたとき、 モータの温度条件 によって前記制御信号が変化する様にする。
また、 モータに流れる電流を測定する手段を備え、 所定の時間範囲で スロッ トル弁の開度が所定の範囲にあるとき、 モータに加えた電圧と前 記測定手段による電流とに基づき前記モータの雰囲気温度を推定する。 本発明の実施例を更に詳しく図面に基づいて説明する。
第 1 図は電子制御スロッ トルの弁の開度を本発明の方法によって制御 するときの構成の一例を表すプロック図である。 電子制御スロッ トルは、 吸気管 6に流れる空気流量を調節するバタフライ弁で構成されるスロッ トル弁 1 0を減速ギア 8 を介して直流モータ 7で駆動する装置である。 自動車の暴走を防止する機械的なフェールセーフ機構として、 スロッ ト ル弁 1 0の制御を中止したときなどモータ Ίがトルクを発生しないとき は、 弁の回転軸に付いている戻しばね 9で弁が一定の開度に戻るように なっている。 その開度はアイ ドルよリやや高いエンジン回転数で自動車
が自走できるように設定する。 モータ 7の駆動回路 5は 4つのパワー I Cからなる Hブリツジ回路で構成され、 デュ一ティー比を与えると対 応する P WM (パルス幅モジユレータ) パワー信号を発生する。 スロッ トル弁 1 0の実開度はその回転軸に取り付けられた開度センサ 1 1 (ポ テンショメータ) で測定する。 開度センサ 1 1の出力はローパスフィル タ L P F 1 2に通して雑音を取り除き、 A Z D変換器 1 3によりマイコ ン 1 5に取リ込む。 スロッ トル弁 1 ◦の目標開度はエンジン制御ュニッ 卜 (E C U ) 1 に取り込まれるアクセル 2からの信号や、 種々のェンジ ンの運転状態を示す信号により与えられる。 マイコン 1 5内のソフ トゥ エアで実現された P I D制御系では目標開度 T v cと実開度 T v oとの差
(偏差) が少なくなるように、 すなわち、 両者が速やかに一致するよう な P WM信号のデューティ一比を算出し、 そのデューティー比に従って、 駆動回路 5がモータを駆動する。 P I D制御系のゲインである比例ゲイ ン Κ Ρ, 積分ゲイン Κ I及び微分ゲイン K Dは第 1 図の ( b ) に示すよ うにマップ 4に記録してあり、 偏差の大きさによってこれらゲインを変 化させるようになつている。 これは電子制御スロッ トルに含まれる摩擦 をはじめとする物理量の非線形特性に対応するためのものである。 例え ば弁が目標開度に近づく と弁の速度が遅くなリ、 摩擦の影響が大きくな るので目標開度へ収束するまでの時間が増大する。 そこで、 偏差が小さ いときは収束に関わる K I を大きく して、 応答時間が長くならないよう にする。 P I Dゲインのマップはシミュレ一ションによる計算値を基に 実機による実験を繰り返して作成する。 ところがこの方法によりマップ を作成して常温で第 2図のような望ましい弁の応答が得られるように設 定した場合、 雰囲気温度が高くなるとモータの卷線のインピーダンスの ^化ゃ軸受のグリースの粘度の変化が生じて、 常温で定めた P I Dゲイ
ンでは過渡特性が悪化してしまうことがある。 そこで温度測定制御手段 1 4 を設け偏差だけでなく、 温度によっても第 1 図の ( c ) に示すよう に P I Dゲインを変えられるようにする。 温度測定制御手段 1 4はェン ジン制御ュニッ 卜 1及び駆動回路 5からの信号を入力とし、 演算によつ て求めたモータの温度によって第 1 図 ( c ) に基づき P I Dゲインを切 り換える。 また、 温度測定制御手段 1 4は駆動回路 5に入力する信号を 切り換えて、 開度センサ 1 1の出力 T v。に基づいたフィー ドバック制御 信号 ( P W M信号) か温度測定制御手段 1 4 自身が生成するオープンル —プ制御信号 F tのいずれかを選択する。
以下では、 電子制御スロッ トルの雰囲気温度を測定する温度測定制御 手段の具体的な実現方法を 5つ述べる。 モータに加える電圧と電流から モータの巻線抵抗を求め、 温度を推定する方法と、 簡単な温度センサで 直接温度を測る方法を 2つ説明する。 また、 エンジン制御ユニッ トから の信号をもとに温度を求める方法を 2つ示す。
モータ 7の卷線抵抗から温度を測定 (推定) する方法を以下に説明す る。 電圧と電流の比から、 抵抗を求めこの抵抗値から温度を求めるのに は所定の精度で抵抗を求める必要がある。 このためモータが静止してい るときにある程度大きな電流を安定して流す必要がある。 モータが回転 しているときは逆起電力が発生するので電圧と電流の比から正確な電気 抵抗を求めることはできない。 また、 モータの抵抗は巻線抵抗とブラシ の接触抵抗等の和であリ、 接触抵抗は正確な測定が難しく特にモータが 回転している場合や印加電圧が小さい場合、 測定誤差が大きくなる。 こ れらの影響を軽減するためモータの静止時に大きな電圧を印加して抵抗 を求めることが望ましい。 しかし、 このような条件は第 1 図に示す、 ス 口ッ トル弁の実開度を検出してフィ一ドバック制御しているときには成
立しない。 そこで、 温度を求めるときはフィー ドバック制御を停止し、 エンジン制御ュニッ 卜 1 の信号と駆動回路 5からの信号を基にオープン ループで一定のデューティ一比の P W M信号 F t を温度測定手段 1 4か ら直接駆動回路 5に与えてスロッ トル弁 1 0を全閉位置に固定する。 温 度測定手段 1 4はこのときの平均的な印加電圧と電流および第 3図の抵 抗と温度との関係を用いて、 スロッ トル弁駆動用モータ 7の温度をモー タ 7の卷線抵抗 (インピーダンス) として求めるものである。
最近の自動車では燃費を向上するため、 運転者がアクセルを全閉にし て減速するときは燃料を噴射しない減速燃料カツ 卜モー ドが一般的に採 用されている。 このときは第 4図に示すようにスロッ トル弁 1 0も全閉 になっており特にフィー ドバック制御をする必要はない。 モータ駆動式 スロッ トル弁制御装置ではオーバーシユー 卜による吸気管壁面等への衝 突を防ぐため、 フィー ドバック制御をしているときは目標開度指令の制 御上の全閉位置を機械的な全閉位置 (吸気管壁面ゃス 卜ツバに接触する 位置) よりわずかに開いた位置に設定している。 いずれにしても本実施 例では減速時の燃料カツ 卜中は第 1 図のフィ一ドバック制御を停止し、 温度測定手段 1 4から一定のデューティ一比の P WM信号 F t を駆動回 路 5に印加する。 デューティ一比の大きさは例えば 5 0 %とし、 フィー ドバック制御で戻しばねのトルクに抗して制御上の全閉位置を超えて機 械的全閉位置に制御する値を設定する。 これによリスロッ トル弁 1 0は 機械的な全閉位置に押しつけられモータ 7にはフィ一ドバック制御時よ リも大きな電流が安定して流れるようになる。 この温度推定のための処 理を実行するのは減速時に燃料カツ トをしているときが望ましい。 その ときはもともとスロッ トル弁 7は全閉であるので自動車の運転性には悪 影響を与えない。 また、 多くのモータ駆動式スロッ トル制御装置は物理
的な全閉の位置を確認するため、 エンジンをスター トする前やエンジン を止める直前に一定のデューティ一比を加えて、 スロヅ トル弁 7 を全閉 の位置に押し付ける所謂、 全閉学習を行っていることを考えれば上記全 閉位置への制御がス口ッ トル弁制御装置の耐久性に影響を及ぼすことは ない。 また、 筒内噴射のエンジンのようにスロッ トル弁を大きく開く こ との多い場合は、 運転性に影響のない範囲でスロッ トルを全開位置に押 し付けて、 同様の方法で温度を測定することも可能である。
モータに流れる電流を測定する回路の一例を第 5図に示す。 第 5図は パワー トランジスタ T 1, T 2 , T 3及び T 4からなる Hブリ ッジを用 いた駆動回路 5 0に、 検出抵抗 Rを付加したもので、 検出抵抗 Rは温度 による抵抗値の変化が少ないものを選ぶ。 P I D制御系 5 1で求めた、 モータ 7に印加すべき電圧は PWM発生回路 5 2で PWM信号と回転方 向の信号 ( SW 1 , S W 2 ) とに変換される。 PWM信号はパワー トラ ンジスタ T l, Τ 2に入力され、 回転方向信号 SW 1 , SW2はパワー トランジスタ Τ 3, Τ 4に印加される。 この回路を用いればモータは回 転方向も含めて、 ノ ッテリ 54により PWM制御することができる。 検 出抵抗の両端の電圧はパワー トランジスタのスィツチングによる雑音が 重畳しているためローパスフィルタ 5 5を通して AZD変換する。 また、 両端電圧は一般的なマイコンに内蔵されている AZD変換器の電圧レべ ル (T T L) に比べると小さいので増幅器 5 6を介して A/D変換器 5 7に入力する。 ここで測定した第 5図の C点での電圧と検出抵抗 Rの 抵抗値からモータに流れる電流を求めることができる。 もともと電子制 御スロッ トルでは自己診断や制御に利用するため第 5図のような回路を 使用しているものもあり、 その場合は回路の兼用が可能でハー ドの変更 は必要ない。 新たに検出部分を付加する場合でも回路の変更ゃコス 卜上
昇はわずかである。
第 5図の駆動回路で A, B及び Cの各点での電圧と P WM信号との関 係は第 6図のようになる。 ただし、 パワー トランジスタ T 3は〇 F F、 T 4が O Nで電流は A, B, Cの順に流れるとする。 また、 実際はパヮ 一トランジスタのスィツチングの影響があるが第 6図では理想的な場合 を表している。 A点での電圧はモータの巻線抵抗、 パワー トランジスタ T 4のオン抵抗および検出抵抗のため最も高くなる。 モータの巻線抵抗 とパワー トランジスタは温度によって抵抗値が変化するため、 温度によ る抵抗の変化が少ない検出抵抗 Rの端子間電圧を c点で測定するのが最 適でめる。
上記のようなハー ドウエアを用意したとき温度検出のソフ 卜ウェア処 理のフローチャー トを第 7図に示す。 この処理は燃料カツ 卜時に温度を 推定するものなので処理の周期はエンジン制御ュニッ 卜 E C Uが燃料力 ッ 卜をするかどうかを判断する周期で十分である。 例えばこの場合は 1 0 m s毎に下記の処理を繰り返すこととする。 ステップ 7 1 はェンジ ン制御ユニッ ト E C Uと通信し、 減速中の燃料カツ 卜をしているか、 ァ クセルぺダルの開度が全閉かどうか確認する。 どちらか一つでも N 0の 場合は本処理を終了する。 このとき既にフィ一ドパック制御をしていな いオープンループ制御の場合、 通常のフィ一ドバック制御に復帰してス ロッ トル弁の開度を目標開度指令値と一致させるように制御する。 上記 ステップ 7 1で燃料カッ ト中で、 かつアクセルペダルが全閉であること を確認したら、 ステップ 7 2で前回の温度測定処理から 5分以内かどう かを調べる。 この処理は駆動回路 5 0に付加した検出抵抗 Rで測定した 電流値を平均化するものなので、 5分以上離れたデータでは平均化して も精度は向上しない。 前回実行時から 5分以上離れていたり、 初めて温
度測定をするときはステップ 7 7でフィー ドバック制御を停止し、 スロ ッ トル弁 1 0 を全閉位笸に押し付けるように、 回転方向信号と一定の P WM制御信号 F t を駆動回路 5 3に入力する。 ステップ 7 8は平均化 処理の初期化である。 ステップ 7 3では、 A Z D変換した検出抵抗 の 両端電圧から検出回路の非線形特性を補正したマツプに基づいてモータ 7の卷線に流れる電流を求める。 ステップ 7 4 と 7 5ではモータ 7に流 れる電流を一定の数 Nになるまで積算する。 N個のデータを積算したら ステップ 7 4で電流値を平均化し、 印加した P W M制御信号 F tのデュ —ティ一比からモータの卷線の抵抗値を求める。 さらに銅を主成分とす る巻線の抵抗と温度の関係を記述したマツプ等から温度を求める。
次に、 温度検出のための回路を構成する 2つの方法を述べる。 一方は ダイオー ドを利用した方法で、 他方はサ一ミスタを用いる方法である。 これらの方法では、 温度検出のためのハー ドウエアを付加するものの、 エンジンの運転状態に関係なく測温が可能なため、 温度検出のソフ 卜ゥ エアは上記の燃料カツ 卜のときを利用する方法に比べ簡単になる。 スロ ッ トルのヒー トマスを考慮した適当な周期で温度を求め、 温度に基づい て P I Dゲインを補正する。 具体的には例えばゲインを記述したマツプ を切り換えればよい。
第 8図の ( a ) にダイオー ドの順方向の抵抗を使った温度検出回路の 構成を示す。 定電流回路 8 1 を用いバッテリから一定の電流をダイォー ド Dに流す。 ダイォー ド Dにかかる電圧 V Dは電流によっても異なるが 電流を一定に制御すれば、 温度に対して例えば第 8図の ( b ) のような 特性がある。 このままではマイコン内蔵の A Z D変換器に対してはダイ ナミックレンジが小さく、 精度が確保できない。 そこでアナログアンプ 8 2 を利用した増幅回路を構成し、 ダイォー ドにかかる電圧 V Dを A Z
D変換に適した第 8図の ( c ) に示す電圧 V 0のような特性に変換する この信号を A / D変換し、 第 8図の ( b ) を用いた処理をすれば温度を 求めることができる。
第 9図の ( a ) はサーミスタ Tを利用した温度検出回路である。 サー ミスタ Tの抵抗の温度特性は第 9図の( b )のように強い非線形があるた め通常の抵抗 R 6 を並列に接続する。 温度に応じてブリッジ回路 (R 5 〜R 8 ) の Aと Bの電位が変化するが上記のダイォ一 ドを用いた温度検 出と同様に、 モータ駆動式スロッ トル弁制御装置で起り得る温度変化範 囲では電位の変化が小さい。 そこでアナログアンプ 9 1 で増幅回路を作 リ、 出力電圧 V 0を A D変換する。 ここで温度とアナログアンプの出 力電圧 V 0の関係は第 9図の ( c ) のようになつているのでこの特性か ら温度を求める。
モータ駆動式スロッ トル弁制御装置はモータやギアからなるァクチュ ェ一タと制御ュニッ 卜から構成される力 第 1 0図のように両者が別れ た別体型と第 1 1 図のような一体型が考えられる。 別体型の構成では、 制御ュニッ 卜 1 0 1 は車室内に置かれることが多くエンジンルームに設 置されるァクチユエ一タ 1 ◦ 2 との温度差は大きくなる。 従って、 別体 型では減速時の燃料カツ 卜のときにスロッ トル弁が全閉になることを利 用した方法を用いるのがよい。 温度検出回路を用いる場合はダイォ一 ド ゃサーミスタをァクチユエータ (モータやスロッ トルのハウジング) に 付ける。 一方、 第 1 1 図の一体型の構成ではァクチユエータと制御ュニ ッ トは両方ともエンジンルーム内にあるのでほとんど同じ温度になる。 従って、 温度検出回路を用いる場合でも制御ュニッ 卜の基板上に取り付 けることが可能である。 一体型の場合でも回路変更をしない、 減速時の 燃料カツ 卜に同期する方法も当然可能である。 この場合は E C Uから減
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速, 燃料カツ 卜の信号を通信によって貰うのが好適である。
エンジン制御ュニッ 卜 1 2 1 内部の信号を利用して、 スロッ トルの雰 囲気温度を近似的に求めることも可能である。 エンジンの制御をする目 的で吸気管の中に吸入空気量センサ 1 2 3 と圧力センサ 1 2 を備えた エンジンの場合、 吸入空気量と吸気管圧力の情報をエンジン制御ュニッ 卜からスロッ トルの制御ュニッ 卜 1 2 2に渡し、 気体の状態方程式に基 づいて吸入空気の温度を計算することができる。 もちろん、 吸入空気の 温度を直接測定する温度センサを設けることも可能である。 いずれにし ても、 吸入空気の温度は電子制御スロッ トルのモータの温度より低いこ とが多いが、 マップなどを用いた適当な補正をすることでスロッ トルの 雰囲気温度を近似値に求めることができる。 また、 ほとんど全ての自動 車用エンジンでは温度センサで冷却水の温度を測定しているため、 水温 でモータの温度を代用する方法も考えられる。 この場合も水温の方が普 通低いため、 適当な補正をすると精度が向上する。 モータ駆動式スロッ トル弁制御装置の雰囲気温度は外気温とエンジンが発生する熱量の影響 が大きいことから、 補正方法としては回転センサ 1 2 6によるエンジン 回転数とィンジェクタ 1 2 5から噴射する燃料量を利用する。 一定の期 間回転数や燃料量が大きいときはエンジンが発生する熱量が大きいと判 断して、 吸入空気や冷却水の温度をよリ高く修正してスロッ トル弁駆動 用モータの温度とする。 この関係は実験的に求めて、 ソフ トウェア実装 時にはマップにまとめて利用する。 尚、 P I Dゲインの制御は第 1 図に 示すようにモータの温度範囲、 例えば— 4 0 ° 乃至 1 0 ° , 1 1 0 ° 以 下、 1 0 ° 乃至 8 0 ° , 8 0 ° 以上の 3枚のマップに集約し検出した温 度によって、 どのマップを用いるかを選択するように構成するとマツプ の枚数が少なくても実用上の問題のない温度補償が可能である。
以上の実施例ではモータ駆動式スロッ トル弁制御装置ではスロッ トル 弁の応答に大きな影響を与える雰囲気温度を測定し、 P I D制御系のゲ ィンを補正するのでエンジンの運転状態による温度変化があってもスロ ッ トル弁の応答性はほとんど変化しない。 また、 従来は目標開度と実開 度との差によってゲインを切り換えてきたが、 直接影響を与える温度に よってゲインを制御するのでゲイ ンを記録するマップを小さくすること ができる。 さらに、 多大な工数を要してきたマップの作成時間を短縮す ることが可能である。
第 1 3図は、 本発明の一実施例による電子スロッ トル制御装置の制御 システム構成図である。
マイコン 1の AZD入力端子には、 スロッ トルバルブの目標開度を指 示するスロッ トル弁の目標開度信号 Tvcが入力され、 マイコン 1 に内蔵 された AZD変換器によりディジタル信号に変換される。
スロッ トル弁の目標開度信号 Tvcは、 アクセルペダルセンサで検出し た、 アクセルペダルの踏込み量を示すアナログ信号である。
勿論、 このアクセルペダルセンサで検出した、 アクセルペダルの踏込 量を示すアナ口グ信号をエンジンコン卜ロールュニッ 卜 E CUのマイコ ンに取り込み、 エンジンコン トローソレュニッ ト E CUのマイコンでェン ジンの運転条件を示す他の種々の物理量 (エンジン回転数, 吸入空気量, 車速, パッテリの電圧, エアコンやランプなどの電気負荷の有無や大き さ等) を含む演算や、 マップ検索によってスロッ トル弁の目標開度信号 Tvcをディジタル信号として求めるようにしても良い。 この場合は、 マ イコン 1で A/D変換する必要はない。
スロッ トル弁の目標開度信号 Tvcのディジタル信号としては、 PWM 信号の周期を Ta とし、 オンパルスの長さを Tb として、 例えば (Tb
ZTa) のようなデューティ一比を表すデータ信号で与えることができ る。
スロッ トルボディ 2に回転可能に取り付けられたスロッ トルバルブ 1 0の開度は、 スロッ トルバルブ 1 0の回転軸に結合されたポテンショ メータ 1 1により検出される。 ポテンショメータ 1 1により検出された スロッ トルバルブ 1 0の開度は、 スロッ トル弁の実開度信号 TVFとして アンプ 3により増幅され、 マイコン 1の AZD入力に入力され、 マイコ ン 1に内蔵された AZD変換器によりディジタル信号に変換される。 マイコン 1 は、 入力されたスロッ トル弁の目標開度信号 Tvcとスロッ トル弁の実開度信号 TVFとに基づいて、 PWM駆動回路 8に制御信号 PWM, D/0を出力する。
制御信号 PWMは、 パルス信号であり、 そのパルスの周期は一定であ り、 そのパルスのデューティー比が可変である。
パルスのデュ一ティ一比は、 スロッ トル弁の目標開度信号 Tvcとスロ ッ トル弁の実開度信号 TVFとの差分が大きいほど大きくなるようにマイ コン 1の中で演算される。
制御信号 D 0は、 モータ 9の回転方向を示す "正転" , "逆転" 及 びモータ 9の "停止" 並びに "ブレーキ" の 4状態を示すための 2ビッ トの制御信号である。
PWM駆動回路 8は、 入力された制御信号 PWM, DZ〇の内、 モ一 タ 9の回転方向を示す "正転" もしくは "逆転" に応じて、 "正転" 時 には、 制御信号 PWMを制御信号 PWM 1 として出力し、 正転方向を示 す制御信号 Fを出力する。
制御信号 Fは、 正転時には、 常にオンとなる信号である。
また、 "逆転" 時には、 制御信号 PWMを制御信号 PWM 2として出
力し、 逆転方向を示す制御信号 Rを出力する。
制御信号 Rは、 逆転時には、 常にオンとなる信号である。
PWM駆動回路 8から制御信号が供給される Hプリッジ形チヨッパ 4 は、 PWM制御用のパワー M〇 S F E T · M 1, M 2及び直流モータの 回転方向切替用のパワー M〇 S F E T · M 3 , M 4から構成されている, 従って、 正転時でしかも、 制御信号 PWMがオンの時には、 制御信号 PWM 1 と制御信号 Fが出力され、 Hブリッジ形チヨッパ主回路 4のパ ヮ一 MO S F E T ' M l及びパワー MO S F ET - M 4が導通する。 , ッテリ Bからの電源電圧 VB は、 ノ、 °ヮ一 MO S F E T ' M l を経由して モータ 9に印加され、 モータ電流 I F が流れ、 さらに、 パワー M0SFET . M 4及びシャン卜抵抗 5を介してバッテリ Bに戻る。
制御信号 P WM 1がォフになると、 ノ、。ヮー MO S F E T ' M lがォフ となるが、 パワー M〇 S F E T · M4は正転の制御信号 Fが出ているの でオンのままであり、 モータ電流 I F は、 ノ ヮ一 M0 S F E T . M4か らパワー MO S F E丁 · Μ 3の逆ダイオードを経由して、 フライホイ一 ル電流 I D3が流れる。 従って、 モータ電流 I F は、 制御信号 PWM 1が オンの時は、 パワー MO S F E T · M l を流れる電流 I M1となり、 制御 信号 PWM 1がオフの時は、 ノ ワ一 MO S F E T · M 3を流れるフライ ホイール電流 I D3となる。
さらに、 逆転時で、 しかも、 制御信号 PWMがオンの時には、 制御信 号 PWM 2と制御信号 Rが出力され、 Hプリッジ形チヨッパ主回路 4の パワー MO S F ET · M 2及びパワー MO S F E T · M 3が導通する。 パッテリ Bからの電源電圧 VB は、 ノ ヮ一MO S F E T · Μ 2を経由し てモータ 9に印加され、 モータ電流 I F が流れ、 さらに、 ノ、 °ヮ一 MOSFET • M 3及びシャント抵抗 5を介してバッテリ Bに戻る。 制御信号 PWM2が
オフになると、 パワー M〇 S F E T ' M 2がォフとなり、 モータ電流 I F は、 ノ ヮ一 M〇 S F E T ' M 3からパワー MO S F E T . M 4の逆 ダイオー ドを経由して、 フライホイール電流が流れる。
このようにして、 モータ 9には、 正転時とは、 逆方向にモータ電流 I p が流れることになリ、 モータ 9 を逆転することができる。
モータ 9は直流モータであるが、 ステッピングモータであってもよい t モータ 9は減速ギアを介してスロッ トルバルブ 1 0に連結されており、 モータ 9 を正転することにより、 スロッ トルバルブ 1 0が開き、 モータ 9 を逆転することにより、 スロッ トルバルブ 1 0が閉じて、 スロッ トル バルブ 1 0の開度が制御される。
シャン卜抵抗 5を流れるパワー素子電流 I D の詳細については、 第 1 5図を用いて後述する。
このパワー素子電流 I D は、 シャント抵抗 5の両端の電圧であるシャ ント抵抗電圧降下 VD として検出され、 アンプ 6で増幅される。
シャン卜抵抗 5の一端はアース電位であり、 シャン 卜抵抗 5は電流検 出用に用いられているため、 その抵抗値も小さなものである。
従って、 シャン 卜抵抗電圧 VD は、 アンプ 6の駆動電圧、 例えば 5 V に比べて低いものであり、 アンプ自体も高価な絶縁形の電流検出器でな く、 通常のアンプを使用できる。
このアンプ 6の出力電圧 VD まマイコン 1 が出力する制御信号 PWM に同期して動作するサンプルホールド回路 1 2でホールドされる。 サン プルホールド回路 1 2の出力電圧 VDHは、 マイコン 1 の A/D入力端子 に入力され、 マイコン 1 に内蔵された A ZD変換器でディジタル信号に 変換される。
このようにして検出されたパワー素子電流 I D は、 マイコン 1 の中で、
0
2 0 スロッ トル弁の目標開度信号 T v cとスロッ トル弁の実開度信号 T V Fの差 分から求められるモータ電流の制御信号と比較され、 モータ電流の制御 信号にパワー素子電流 I D がー致するように制御信号 P W Mのデュ一テ ィー比が補正され、 モータ電流のフィー ドバック制御がなされる。
スロッ トル開度の制御は、 原理的には、 スロッ トル弁の目標開度信号 T vcとスロッ トル弁の実開度信号 T V Fの差分に基づくフィ一 ドバック制 御だけで行えるわけである。
しかしながら、 実際には、 外気温度, モータの温度, モータの卷線温 度が変化すると、 他の制御パラメータ (エンジン回転数, 車速, バッテ リ Bの電圧, 電気負荷の有無や大きさ等) がコンスタン トで、 マイコン 1から出力される制御信号 P W Mが一定でもモータ 9のインピーダンス が変化するのでモータ 9 を流れる電流が変化することになる。
即ち、 外気温度, モータの温度, モータの卷線温度が上昇するとモー タに流れる電流は減少する。
E C U (エンジンコン トロールユニッ ト) からの目標開度指令 以上のようなモータ電流の変化に対しては外気温度, モータの温度, モータの卷線温度, モータのインピーダンス (パワー素子電流 I D を検 出してその値と印加電圧から演算によって求める) , モータ冷却のため のエンジン冷却水温度などを検出して、 モータに流れる電流が減少した 時には、 そのモータ電流の減少分を補償するように、 マイコン 1 から出 力される制御信号 P W Mを増加して、 モータ電流を増加することにより、 スロッ トル開度を高精度に制御することができる。
次に、 第 1 4図及び第 1 5図を用いてパワー素子電流 I D の検出部の 回路の詳細について説明する。 第 1 4図において、 第 1 3図と同一符号 は、 同一部分を表す。
Hブリツジ形チヨッパ回路 4に接続されたシャント抵抗 5を流れるパ ヮー素子電流 I。 は、 シャント抵抗電圧 VD として、 アンプ 6に取り込 まれる。
アンプ 6は、 オペアンプ 6 1 と入力抵抗 R 1 , R 2と帰還抵抗 R 3, R 4と出力抵抗 R 5で構成される。
アンプ 6の出力電圧 VDAは、 サンプルホールド回路 1 2に入力する。 サンプルホールド回路 1 2は、 アナログスィッチ 1 2 1 とコンデンサ 1 2 2で構成され、 アナログスィッチ 1 2 1がマイコン 1からの PWM 信号に同期してオン, オフ動作する。
オン時にはアンプ 6の出力信号がそのまま出力され、 オフ時にはオフ する直前の電圧がコンデンサ 1 2 2に充電された電圧がホールドされる < なお、 第 1 3図において、 マイコン 1が出力する制御信号 PWMと、 PWM駆動回路が出力する制御信号 PWM 1, PWM 2が同じパルス信 号であるため、 アナログスィッチ 1 2 1 を動作させる信号は、 マイコン 1が出力する制御信号 PWMに代えて、 PWM駆動回路が出力する制御 信号 PWM 1 , PWM 2を用いてもよい。
その際には、 制御信号 PWM 1 と制御信号 PWM 2の論理和 (O R) をとることにより、 アナログスィッチ 1 2 1 を動作させる信号とするこ とができる。
いずれにしても、 最終的に Hブリッジ形チヨッパ回路のパワー素子の 制御信号である PWM信号に基づいてアナ口グスィッチを動作させてパ ヮー素子電流をサンプルホールドすればよい。
ここで、 第 1 5図を用いて各電流, 電圧波形に基づいて電流検出の原 理について説明する。
第 1 5図 (A) は、 マイコン 1からの制御信号 PWMを示しており、
PWM駆動回路 8から出力される制御信号 PWM 1, PWM 2も同様な 信号である。
制御信号 p WMは、 時刻 t 0にオンとなり、 時刻 t 1にオフとなり、 その後、 時刻 t 3にオンとなり、 時刻 t 4にオフとなる繰り返しパルス である。
このパルス周期 T Oは、 一定であるが、 このパルスのオン時間 T 1は、 可変であり、 スロッ トル開度指令 Tvcとスロッ トル弁の実開度信号 TVF の差分に応じてパルスのオン時間 T 1 を変えることによリ、 このパルス のデューティー比 (T 1 T 0) が変化する。
PWM信号として 2 0 k H zのものを用いると、 パルスの周期 T 0は、 5 0 μ sである。
第 1 5図(Β)は、 パワー素子電流 I。 を示しており、 制御信号 PWM がオンになると、 パワー素子電流 I。 が流れる始める。
この時、 パワー M〇 S F Ε Τの逆回復 (リカバリ一) 特性等の影響に より過電流が流れる。
また、 制御信号 PWMがオフになると、 パワー MO S F Ε Τの動作遅 れによリ時間 Τ 2だけ遅れて電流がゼロとなる。 遅れ時間 Τ 2は数; a s 程度である。
第 1 5図 (C) は、 シャン卜抵抗 5の両端のシャン卜抵抗電圧 VD を 示しており、 パワー素子電流 I。 の立ち下がリ時にリアクタンス Lの影 響で多少のオーバーシユー 卜が発生する。
第 1 5図 (D) は、 アンプ 5の出力電圧 VDAを示しており、 オペアン プの高周波特性により、 時刻 t 0の立ち上がりには振動し、 時刻 t 2の 立ち下がり時には時間遅れが生じる。 前述したように、 PWM信号は、 2 0 k H zの高周波信号であるため、 このような影響が生じている。
アンプ 6の出力電圧は、 第 1 5図 (D) に示すような波形の電圧信号 であるため、 種々の変動の影響を取り除くため、 この信号をマイコン 1 に取り込むにあたってサンプルホールド回路 1 2を用いている。 そして. サンプルホールドのタイミングは、 時刻 t 1, t 4、 即ち、 PWM信号 の立ち下がりに同期して、 サンプルホールド回路 1 2の中のアナログス イッチ 1 2 1 をオフすることにより、 その直前のアンプ出力電圧 VDAを コンデンサ 1 2 2にホールドする。
実際上は、 PWM信号は、 第 1 5図 (A) に示すようなパルス信号で あるため、 このパルス信号がオンからオフに替わる時に、 アナログスィ ツチ 1 2 1がオフして、 その直前のアンプ出力電圧 VDAをコンデンサ 1 2 2にホールドする。
従って、 サンプルホールド回路 1 2の出力である電流検出信号 VDHは, 第 1 5図 (E) に示すように、 時刻 t 0から時刻 t 1までは、 第 1 5図 (D) のアンプ出力電圧 VDAと等しいが、 時刻 t 1以降は、 その直前の 電圧をホールドしたものとなっている。
また、 PWM信号の立ち下がりに同期して、 第 1 5図 (F) に示すよ うに、 マイコン 1の中の AZD変換器に外部卜リガを掛けて、 サンプル ホールド回路 1 2の出力である電流検出信号 VDHの A ZD取り込みを開 始する。
このようにして、 AZD変換のタイミングを規制することにより、 タ ィミングのバラツキによるデータのバラツキは発生しなくなる。
この AZD変換の開始から終了までの変換に要する時間 T 3は、 変換 すべきアナログ信号値によって、 異なるが、 本例では、 数 乃至数十 sである。
AZD変換が終了すると、 変換されたディジタル信号は、 第 1 5図
(G) に示すように、 マイコンデータ(IDCURNT) としてマイコン 1 の本 体に取り込まれる。
第 1 5図 (H) は、 モータ 9 を流れるモータ電流 I F を示している。 このモータ電流 I F において、 時刻 t 0から時刻 t 1 までの間に流れる 電流は、 第 1 3図において、 パワー M〇 S F E T · M 1 を流れる電流 I M1に相当し、 時刻 t 1 から時刻 t 2までの間に流れる電流は、 第 1 3 図において、 ノ、"ヮー M〇 S F E T · M 3 を流れるフライホイ一ル電流 I M3に相当するものである。
従って、 チヨッパ回路のオフ直前の電流値が取り込めるために電流立 ち上がり振動などの影響を受けない電流値を検出することが可能である。
PWM制御する場合には、 PWM信号のオン期間の中央で卜リガ信号 を出して A/D取り込みを行うこともできる。
即ち、 第 1 5図 (A) のように、 PWM信号が、 時刻 t Oから時刻 t 1 までの間オンであるとき、 時刻 (( t l — t O)ノ 2 ) のタイ ミング で AZDを開始するものであるが、 デューティー比が小さくなリ、 パル スオン期間が短くなると、 そのタイ ミングもパルスの立ち上がりに近付 いてくるため、 第 1 5図 (D) に示す立ち上がりの振動の影響を受ける ことになるが、 本実施例のように、 PWM信号の立ち下がりで外部トリ ガを掛けて A/D取り込みを行うことにより、 かかる影響を受けること もない。
この発明の効果を確認するにはモータの給電回路中にモータの温度上 昇による巻線のィンピーダンスの増加分と同じ程度の抵抗を接続してそ の時のスロッ トル弁の開度が変化しないことを確認すればよい。
本発明は、 モータの温度の測定はモータに流れる電流と印加された電 圧とから卷線のィンピ一ダンスとして演算によって間接的に求めること
ができる。
またその場合の電流値の検出は、 エンジンブレーキ時 (減速燃料カツ 卜時) あるいは全閉学習時のようなスロッ トル弁が全閉位置に制御され ている時に行うのが好適である。
モータの温度はハウジングに直接温度センサを取り付けて測定しても 良いし、 エンジン冷却水でモータを温度管理している場合はこのェンジ ン冷却水の温度をモータの温度とみなすこともできる。 モータの置かれ ている雰囲気の温度で代替えすることもできる。
勿論温度によって変わるのはモータの巻線のィンピ一ダンスであるの でこのインピーダンスを検出しても良い。
本発明で "スロッ トル弁の開度が変化しない" , "エンジンの回転数 が変化しない" , "空気量センサの出力が変化しない" あるいは "同じ 開度" , "同じ回転数" , "同じ空気量" との表現は物理量の変化が零, 物理量に差がまったくないということではなく、 当然制御に支障をきた さない範囲、 あるいは本発明の目的を逸脱しない範囲で許容される幅を 有する。
また、 アクセル踏み込み量をはじめとした全ての制御パラメータを一 定にし、 スロッ トル弁がある特定の開度で静止するようにする。 次にス ロッ トル弁をその開度から動かないように固定しておいて、 アクセルを 踏み込む。 するとスロッ トル弁の目標開度指令値は増加するのでスロッ トル弁制御装置はモータへの供給電圧を大きくする。 しかしスロッ トル 弁は固定されているので目標開度指令値と実開度との差は変わらない。 そこでスロッ トル弁制御装置は積分項の作用によってさらにモータへの 供給電圧を増加させる。 このような状態では供給電圧はランプ状に増加 することになる。 供給電圧の時間変化は目標開度指令値と実開度との差
およびスロッ トル弁制御装置のゲインによって決まる。 目標開度指令値 と実開度との差を所定の値に管理すれば供給電圧の時間変化はスロッ ト ル弁制御装置のゲインのみによって決まることになる。 上記の操作を常温で実行し、 供給電圧の時間変化を記録する。 次に、 周囲温度を 1 2 5 °Cに上げて、 目標開度指令値と実開度との差は常温の 操作と同じになるようにして同様の操作を実行し、 供給電圧の時間変化 を記録する。 このときの供給電圧の時間変化を常温のときのものと比べ れば、 温度によってスロッ トル制御装置のゲインが変わっているかどう かが分かる。
また、 モータにヒータを取り付け、 全ての制御パラメータを一定にし ておいてヒータを加熱する。
ヒータの温度上昇に伴って、 モータの温度が上昇し、 卷線のインピー ダンスが高くなつて電流が減少しょうとする。
本発明が実施されているなら、 直ちにこの電流の減少を補償するよう に補償装置が動作してモータへの供給電力が補償され、 開度は一定に保 たれる。
その結果、 吸入空気量測定装置は変わらぬ空気量検出値を出力する。 また、 エンジン回転数は同じ回転数を維持する。
この作用は、 スロッ トル弁の実開度を検出して目標開度指令値と比較 し、 その差が小さくなるようにフィー ドバック制御する技術と併用する ことができる。
上記実施例の技術を実施している場合、 スロッ トル弁の実開度を検出 するスロッ トル開度センサの端子をコネクタから外してフィ一ドノ ック 制御できないようにしてみることで確認できる。
上記実施例の技術を実施している場合、 スロッ 卜ル弁の実開度が入力
されなく とも、 モータの温度変化に対してモータへの供給電力量は補償 される。
結果的に本実施例ではスロッ トル開度センサからの信号が途絶えても モータの温度や、 電源電圧の変動によるモータのィンピーダンスの変化 に対しては補償作用が保持される。 産業上の利用可能性
本発明は、 自動車のスロッ 卜ル弁をモータで駆動するスロッ 卜ル弁制 御装置に適用できる。 また、 自動車そのものの制御にも利用できる。 更 に一般的なモータの制御にも利用できる。