曰月 糸田 チアゾリジンジオン誘導体の製造方法 技術分野
本発明は、 血糖降下剤及びィンス リ ン感受性増強剤として有用な
N—ベンジルジォキソチアゾリジニルベンズアミ ド誘導体を製造す るにあたり、 その合成中間体である一般式 ( 2 ) で表されるベンジ ルチアゾリ ジンジオン誘導体の製造方法に関する。
N—ベンジルジォキソチアゾリジニルベンズアミ ド誘 体は優れ た血糖低下作用及び脂質低下作用を有する化合物として公知である (特開平 9 一 4 8 7 7 1 ) 。 これら一連の化合物を製造するには一 般式 ( 1 ) で表されるベンジリデンチァゾリジンジオン誘導体を還 元し、 ベンジルチアゾリジンジオン誘導体とする必要があった。 従 来、 この形のチアゾリジンジオン誘導体の還元方法としては、 パラ ジゥム炭素を触媒とした高圧接触還元法が知られており (特開平 8 一 1 0 4 6 8 8 ) 、 同様の方法で還元が行われていた。
しかしながら、 この方法は多量の触媒と高圧接触還元装置が必要 なため、 安全な大量合成に適した方法とは言えなかった。
一方、 このようなチアゾリジンジオン誘導体を還元する別の方法
と して、 水素化ホウ素ナ ト リウムとコバルト錯体を用いて還元する 例 (特表平 7 - 5 0 2 5 3 0 ) が知られていた。 しかし本発明に関 わるべンジリデンチァゾリジンジオン誘導体の還元に利用できるか どうかは未知であった。 さらに、 この特表平 7— 5 0 2 5 3 0に記 載の方法をそのまま本発明に関わるベンジリデンチァゾリジンジォ ン誘導体に応用した場合、 収率、 純度にばらつきが大きく、 反応の 再現性に乏しいため、 工業的に有利な方法とは言えず、 工夫、 改良 する必要があった。 · 発明の開示
本発明者らは、 N—ベンジルジォキソチアゾリジニルベンズアミ ド誘導体の工業的製造方法を確立するため、 その原料の製造につい て鋭意研究を重ねた結果、
一般式 ( 1 )
[式中、 Rは水素又は低級アルキル基を表す。 ]
で表される化合物に、 同一の反応系内において、 特定の p H範囲内 で、 C o錯体触媒を形成させ、 次いで還元剤を作用させることによ り、 室温で迅速に還元反応が進行し、 ' 一般式 ( 2 )
で表されるベンジルチアゾリジンジオン誘導体が収率、 純度良く ま た安定して得られることを見いだし、本発明を完成したものである。
本発明の一般式 ( 1 ) で表される化合物は、 特開平 9— 48 7 7 1に記載の方法により、 合成することができる。 一般式 ( 1 ) にお いて、 Rと して定義される基は水素又は低級アルキル基であり、 そ れはメチル基、 ェチル基あるいはイソプロピル基である。 原料であ る一般式 ( 1 ) の化合物の Rは水素か低級アルキル基のいづれの場 合でも良いが、 低級アルキルキの場合、 反応系中で加水分解が容易 に進行し、 結果と してカルボン酸基に変化する。
本発明の製法における反応溶媒としては、 水酸化ナ ト リ ウム、 水 酸化カ リ ウム、 炭酸ナ ト リ ウム、 炭酸カ リ ウムなどの水溶液及びこ れらの水溶液とジメチルホルムアミ ド、 テ トラヒ ドロフラン、 メタ ノール、 エタノール、 イソプロピルアルコールなどの有機溶媒との 混合溶媒を用いることができる。 好ましくは、 0. 5〜 lmol/L の 水酸化ナ ト リゥム水溶液である。
反応の温度範囲は 0〜 5 0°Cである。 好ましくは、 20〜40°C である。
本発明に用いる C o錯体触媒としては、 例えば I n 0 r g . S y n t h . 1 1、 6 1 ( 1 9 6 8 ) 記載の方法によ り合成されるクロ 口 (ピリジル) コバロキシム (III) 等を用いることができるが、 触 媒を別途に調製する煩わしさがある。 本発明の特徴は、 同一の反応
系内で、 特定の p H範囲内において C o (Π)とジメチルグリオキシ ムによ り C 0錯体触媒を形成さ'せ、 還元反応を行うものである。
C o (II) イオンの供与体は、 塩化コバルトが好ましく、 好ましい 配位子はジメチルグリオキシムである。 この配位子はコバル卜に対 し 4倍モル%程度の量が好適である。
反応に用いる C 0触媒調製量は、 一般式 ( 1 ) で表される化合 物に対して 0. 1〜 1. 5fflol%である。 好ましくは、 0. 5〜 1. 0mol%である。
還元剤としては、 水素化ホウ素ナ ト リ ゥム、 水素化ホウ素リチウム、 水素化ホウ素力 リ ゥムなどの水素化ホウ素化合物を用いることがで きる。 好ましくは、 水素化ホウ素ナ ト リ ウムが安価に利用できる。 本反応を実施する際、 反応系の p Hは任意に設定し得るが、 p H により反応速度等が著しく変化し、 反応の成果に大きく影響を与え る。 本発明化合物において、 例えば、 還元反応は p H 9. 5以上で も進行はするものの、 原料化合物(1)が完全に消失しない。原料を完 全に消失させるためには、 さらに触媒や還元剤を再度添加する必要 があ り、 反応完結には長時間を必要とする。 一般に、 チアゾリジン - 2 , 4ージオン環は塩基性条件下では比較的不安定であるため、 長時間強い塩基性条件下に置く ことは、 製造上不利である。
上述の課題を解決するため、 一般式 ( 1 ) の化合物を還元するに あたり、 反応液中で C 0錯体触媒を形成させ、 次いで還元剤を添加 し、 還元を行わせる際の p Hについて検討したところ、 p H 8. 0 〜 9. 5において反応操作を行う と、 高純度のベンジルチアゾリジ ンジオン誘導体 ( 2 ) が高収率で、 再現性良く得られる事が判明し たものである。
即ち、 一般式 ( 1 ) の化合物を p H 8. 0〜 9. 5範囲において、 C 0錯体触媒を反応系中で調製し、 還元反応を行わせることが、 本
発明の大きな特徴である。 これによつて、 短時間で還元反応が終結 し、 しかも再現性良く、 良好な品質の一般式 ( 2 ) の化合物が製造 されるるので、 工業的製造する方法と して優れてたものである。 発明を実施するための最良の形態
以下に実施例を示して, 本発明を更に詳細に説明するが, 本発明 はこれら実施例によって何等の制限を受けるものではない。
(参考例 1)
5— [ ( 2 , 4—ジォキソチアゾリジン一 5—イ リデン) メチル]一 2—メ トキシ安息香酸メチルエステルの合成
1 ) 5—ホルミルサリチル酸 3 3 2. 3 g ( 2. O Omol) を アセ トン 1. 6 6L に懸濁した後、 1 0 °C以下に冷却した。 炭酸力 リ ウム 5 5 2. 8 g ( 4. 0 Omol) を加え、 1 0°C以下でジメチ ル硫酸(純度 9 5 %) 5 3 1. 1 ( 4. 0 Omol) を滴下した。 滴 下後、 2時間撹拌して、 さらに 1時間還流した。 反応液を室温まで 冷却し、 冷水 3. 3 2 Lに注ぎ、 さらに 水 3. 3 2 Lを滴下し、 室温で 1時間撹拌した。 結晶をろ取して水 3. 3 2Lで洗浄後、 4 0°Cで一夜送風乾燥して 3—ホルミル- 6—メ トキシ安息香酸メチ ルエステルを 3 3 5. 4 g ( 8 6. 4 %) 得た。
m.p. 84〜 8 6 °C。
2 ) 3—ホルミル一 6—メ トキシ安息香酸メチルエステル 3 1 0. 7 g ( 1 . 6 Oraol) をエタノール 1 . 5 5Lに懸濁した後、 2 , 4—チアゾリジンジオン 2 2 4. 9 g ( 1. 9 2 mol) 及び ピ ペリジン 1 3 6. 3 g ( 1 . 6 Omol) を加え、 還流下 6時間反応
した。 室温まで冷却した後、 反応液を冷水 3. 1 1Lに注いで冷却 しながら濃塩酸を滴下し、 pH2〜 3 とした。 3 0分間撹拌後、 結晶 をろ取してろ液が中性になるまで水洗した。 得られた湿潤粗結晶を メタノール 4. 6 9L に還流下 30分間懸濁した。 室温まで冷却し た後、 結晶をろ取してメタノール 1 . 4 1 Lで洗浄した。 6 0°Cで 送風乾燥し、 5— [ ( 2, 4—ジォキソチアゾリ ジン一 5—イ リ デン) メチル] 一 2—メ トキシ安息香酸メチルエステル 3 7 7. 7 g ( 8 0. 5 %) を得た。
m.p. 2 7 3〜 2 7 6 °C。
(参考例 2 )
2—メ トキシー 5— [ ( 2 , 4—ジォキソチアゾリジン一 5—ィ リデ ン) メチル]安息香酸の合成
5— [ ( 2 , 4—ジォキソチアゾリジン一 5—ィ リデン) メチル] 一 2—メ トキシ安息香酸メチルエステル 3 7 0. 0 g ( 1. 2 6 mol) を l mol/Lの水酸化ナ ト リ ゥム水溶液 3. 7 8 L ( 3. 7 8 mol) に 加え、 室温で 3時間撹拌した。 その後、 活性炭 3. 7 gを加えてさ らに 1時間撹拌した。 活性炭をセライ トを用いてろ別し、 水 3. 7 8Lで洗浄した。 ろ液に水 3. 7 8Lを加えた後、 6mol/Lの塩酸 を加えて PH2〜 3に調整した。 1時間撹拌後、 結晶をろ取してろ液 が中性になるまで水洗した。 湿潤粗結晶をァセ トン 3. 5L で還流 下 3 0分間懸濁した。 室温まで冷却した後、 結晶をろ取してァセ ト ン 1. ◦ 6L で洗浄した。 5 0°Cで送風乾燥し、 5— [ ( 2 , 4— ジォキソチアゾリジン一 5—ィ リデン)メチル]一 2—メ トキシ安息 香酸 2 8 5. 3 g ( 8 1. 0 %) を得た。
m.p. 2 6 8〜 2 7 0。C。
(参考例 3 )
クロ口 (ピリジン) コバロキシム (III) の調製
40 0 mLの 9 5 %ェ夕ノ一ルに、塩化コバルト(Π) 6水和物 1 0. 0 g、 ジメチルダリオキシム 1 1. 0 gを加えて加温溶解し、 ピリジン 6. 8 8 gを加えて撹拌した。 2 0°Cまで冷却し、 反応液 中に 3 0分間空気を吹き込み同温度で 1時間放置した。
析出晶をろ取し、 水、 エタノール、 ジェチルエーテル(各 5 0 mL) の順に洗浄した。 室温下減圧乾燥してクロ口 (ピリジン) コバロキ シム (III) 8. 6 を得た。
(参考例 4 )
5— [ ( 2 , 4—ジォキソチアゾリジン一 5—イ リデン) メチル] 一 2—メ トキシ安息香酸 5 0. 0 を 2 5°〇の 0. 5mol/L 水酸化 ナ ト リ ゥム水溶液 72 0 mL に投入して溶解した。 水素化ホウ素ナ ト リ ウム 6. 8 gを投入した後、 クロ口 (ピリジン) コバロキシ ム (III) 0. 3 6 gを加えて 2 5 °Cで 6. 5時間反応した。 反応液 を氷水冷却し、 5 0 %イ ソプロピルアルコール、 水 7 2 0 mL を加 えた後、 6mol/Lの塩酸を滴下して pH 2とした。氷水泠却下 1時間 撹拌して析出晶をろ取し、 1 0 %イソプロピルアルコール水溶液 5 00 mLで洗浄した。
5 0°Cで送風乾燥して 5— [ ( 2, 4ージォキソチアゾリジン一 5 一ィル) メチル ]— 2—メ トキシ安息香酸 4 3. 5 g ( 8 6. 4 を得た。
m.p. 1 8 7〜 1 8 9 °C。
(参考例 5 )
0. 5 mol/Lの水酸化ナ ト リ ゥム水溶液 4. 0 0 Lに 5 — [ ( 2 , 4ージォキソチアゾリジン _ 5 —ィ リデン)メチル]一 2—メ トキシ 安息香酸 2 7 9 . 3 g ( 1 . 0 Omol) を加えて溶解し、 1 0 °C以下 まで冷却した。 これに塩化コノ ルト 0. 6 5 ( 5 . 0 Ommol) 、 ジ メチルダリオキシム 2 . 3 2 g ( 2 0 . 0 mmol) 、 水素化ホウ素 ナ ト リ ウム 4 1 . 6 g ( 1 . l Omol) 及び D MF 4 0 0 mLを加え た。 室温で攪拌を続けたが、 未反応原料がみとめられたので、 3時 間後に、 水素化ホウ素ナ ト リ ウム 4 1 . 6 g ( 1 . 1 Omol) 、 さ ら に 1 Ί時間後に水素化ホウ素ナ ト リ ウム 3. 7 8 g ( 0 . 1 Omol) を追加した。 冷却下反応液に冷 5 0 %イソプロピルアルコール水溶 液 4. 0 0L を加えた後、 2 0 °C以下で 6 mol/Lの塩酸を滴下し、 p H 2〜 3 とした。
冷却下 1時間撹拌し、 結晶をろ取後 1 0 %ィソプロピルアルコー ル水溶液 2 . 8 1 L で洗浄した。 5 0 °Cで送風乾燥し、 粗結晶を 2 2 9 . 2 g得た。 これに酢酸ェチル 2 . 2 9 L を加え、 還流下 3 0 分間懸濁して 2 0 °C以下まで冷却後、 結晶をろ取した。 結晶は酢酸 ェチル 1 . 1 5 L で洗浄後、 4 0 °Cで送風乾燥し、 5 — [ ( 2 , 4 ージォキソチアゾリジン一 5 —ィル)メチル]一 2 —メ トキシ安息香 酸 2 1 5 . 2 g ( 7 6 . 5 %) を得た。
m.p. 1 8 7〜 1 8 9 °C 、 H P L C純度 9 8 . 0 0 %。
(実施例)
5 - [ ( 2 , 4—ジォキソチアゾリジン一 5 —イ リデン)メチル]— 2 —メ トキシ安息香酸メチルエステル 3 7. 6 g ( 0 . 1 2 8 mol) を 1 mol/L 水酸化ナ ト リ ゥム溶液 2 8 2 mL に加え、 3 0〜 3 5 °C で 2時間攪拌した。 2mol/L 塩酸を滴下して p H 9 . 1 3に調整し
た。 これに塩化コバル ト 8 3 mg ( 0. 6 4 0 mmol) の水 5. 3 mL 溶液、 ジメチルグリオキシム 2 9 8 m g ( 2. 5 6 mmol ) のジ メチルホルムアミ ド ( D M F ) 3. 0 mL 溶液、 水素化ホウ素ナ ト リ ウム 2. 9 1 g ( 7 6. 9匪 ol ) を順次加え、 3 0〜 3 5 °Cで 2 時間攪拌した。 反応液にィソプロピルアルコール 2 8 2 mL を加え た後、 2 0〜 3 0 °Cで 6 mol/L 塩酸を滴下し、 p H 7. 8 1に調整 した。 活性炭 0. 3 8 gを投入し、 2 0〜3 0°Cで 3 0分間攪拌後。 不溶物をろ去した。 ろ液に 2 0〜 3 0 °Cで 6 mol/L塩酸を滴下し、 p H 2. 0 1に調整した。 冷却化結晶析出後、 0〜 5 °Cで 1時間 攪拌し、 結晶をろ取後、 1 0 %イソプロピルアルコール水溶液 3 7 6 mL で洗浄した。 湿潤粗結晶と して 4 6. 7 gを得た。 この湿潤 粗結晶 46. 1 gを水 1 5 7 mLに懸濁し、 2 mol/L水酸化ナ ト リ ゥ ム水溶液 8 3. 6 mL を加えて溶解した。 イソプロピルアルコール 1 2 0 mL及び D M F 2 1. 1 mL (水 : イソプロピルアルコール : DMF = 1 0 : 5 : 1になる量) を添加し、 6 mol/L塩酸を滴下し、 p H 2. 0 2に調整した。 2 0 °C以下で 1時間攪拌し、 結晶をろ 取後、 水 6 2. 7 mL で洗浄した。 6 0 °Cで 2 3時間送風乾燥し、 5— [ ( 2 , 4—ジォキソチアゾリジン一 5—ィル) メチル ]— 2— メ トキシ安息香酸を 30. 1 g ( 8 3. 6 %) 得た。
m.p. 1 8 8 °C, H P L C純度 9 9. 3 3 %。 産業上利用可能性
抗糖尿病剤として開発されている N—ベンジルジォキソチアゾリ ジニルベンズアミ ド誘導体の工業的製造方法を確立するため、 その 原料であるカルボキシル基を有するベンジルチアゾリジンジオン誘 導体の工業的に優れた製造法を見出した。 即ち、 ベンジリデンチァ ゾリジンジオン誘導体を同一反応系中で、 p H 8. 0〜 9. 5範囲
において C o錯体触媒を形成させ、 還元剤により還元すれば、 短時 間で反応が終結し、 しかも再現性良く、 良好な品質のベンジルチア ゾリジンジオン誘導体を得ることができる。 本発明のチアゾリ ンジ オン誘導体の製造方法は、 操作法が簡便で再現性が高く、 高圧接触 還元装置等の特別な装置を使用する必要もなく、 安全で大量合成に 適した工業的製造方法を提供するものである。