明 細 書
多型性を測定する方法
本出願は、 2 0 0 0 年 3 月 2 7 日 に出願された 日 本特許出 願第 2 0 0 0 — 8 7 5 0 0 、 同 日 に出願された 日 本特許出願 第 2 0 0 0 — 8 7 5 0 1 、 および同 B に出願された 日 本特許 出願第 2 0 0 0 - 8 7 5 0 4 か らの優先権を基礎 とする もの であ り 、 且つ該優先権を主張する ものである。 これらの文献 は、 引用する こ と に よ っ て こ こ に組み込まれる。
技術分野
本発明は多型性を測定する方法に関 し、 特に、 ヌ ク レオチ ドにおける単一塩基置換部位を正確且つ迅速に検出でき る方 法に関する。
背景技術
近年、 特定の疾患 と 遺伝子の多型と の関連が急速に明 らか に さ れつつある。 遺伝子の多型の分析は、 疾患関連遺伝子の 探索、 病気の遺伝子診断、 並びに輸血およ び移植医療におい て極めて有用 と なる も の と 期待される。
遺伝子の多型性を分析する主な方法は、 血清学的な方法と D N Aを用いた方法がある。 後者の方法は、 前者に比べて判 定に試験者の熟練を必要 と せず、 検査工程の 自動化も可能で 優れている。
しか しなが ら、 後者の方法であって も、 ( 1 ) 操作が複雑 であ り 、 分析に長時間を要する こ と 、 ( 2 ) マイ ク ロ タイ タ 一プレー ト等に固相化 されたプロ ーブを用いて多型分析を行 う 場合には、 同時に測定可能な項 目 の数が制限される こ と 、
( 3 ) 残存標識物質や非特異的反応がある ため、 精度が十分 でなレヽこ と 、 ( 4 ) 検查コ ス ト が高レヽ こ と 、 が問題であ る。
今 日 、 多 く の 多型性の 中 で も 特 に 単ヌ ク レオチ ド多型 (Single Nucleotide Polymorpism : 以下、 S N P と 称する)の分 析が注目 さ れている。 S N P は、 塩基配列中の 1 塩基が置換 されている こ と に よ っ て定義される多型性である。 ヒ ト の場 合、 個体間における ゲノ ム D N Aの同一性は 9 9 %以下であ り 、 その相違は僅かに 1 %程度である。 従っ て、 S N P への 関心は高ま っている。
S N P を検出する ための主な方法と しては、 P C R — R F L P 、 P C R — S S P お よ び P C R — S S O等 と 呼ばれ る 種々 の方法が存在する。 これらの方法は、 何れも P C R を利 用 している。 これらの方法は、 P C R に よ り 得た産物を電気 泳動や、 プロ ーブ配列 と のハイ ブ リ ダイ ゼーシ ョ ン反応によ つて解析する も のであ る。
例えば、 P C R — S S P法は、 多型部位を特異的に増幅す る た め のプ フ づ マ ー (sequence-specific-primer)試薬を用 ヽ る 方法である。 こ の方法は、 S N P の判定に頻繁に用い られて いる。 し力 し、 こ の方法は、 当該増幅の後に、 電気泳動に よ つて どの よ う な増副産物が存在するか確認 しな く てはな ら な レヽ
ま た、 D N Aチ ッ プまたは D N Aア レイ と称さ れる装置を 用レヽる V D A (High-Densitv variant detection arravs)技術 こ よ り 、 S N P を 検 出 す る 方 法 も 試 み ら れ て レ、 る (Science vol280,15,Mav 1998)。 V D A技術は、 一般的に、 固相基板上
に多数のプローブ D N Aを高密度に配列 し、 該プローブと 検 体 D N A と を固相表面でハイ ブ リ ダイ ズする方法であ る。 し か し この方法は効率が悪いよ う である。
ま た、 S N P の場合、 多型間の T m値は殆ど変わ ら ないの で、 従来の方法では、 高感度で ミ スマ ッチを検出する こ と は 困難である。 従って、 従来の検出方法では、 臨床学的に充分 な精度は得 られに く い。 '
発明の開示
本発明の 目 的は、 迅速、 簡便、 且つ高精度に多型の分析を 行 う こ と が可能な方法を提供する こ と である。 特に、 本発明 の 目 的は、 1 塩基置換部位であっ て さ えも、 高感度且つ高精 度な分析を簡便に行える多型の分析方法を提供する こ と であ る。
前記目 的は、
多型部位の検出方法であっ て、
( 1 ) 多型部位を含む検体と 、
前記検体の多型部位と 高親和性に結合 し、 且つ標識物質が付 された少な く と も 1 種類のプロ ーブと 、
を反応させる こ と と ; および
( 2 ) 前記反応の進行中において、 複数の経過時点で前 記標識物質の位置変化を光学的に測定する こ と と ;
を具備する検出方法
に よ って達成される。
本発明の 1 側面に従 う と 、 従来に比較 して少ない量の試薬 およ び検体で行 う こ と のでき る 多型分析方法が提供される。
また、 本発明の 1 側面に従 う と 、 少量の検体 と試薬を用いて 複数の多型部位を同時に検出でき る方法が提供される。 本発 明の 1 側面に従 う と 、 極めて多数の多型配列を迅速且つ簡便 に決定する こ と が可能な方法が提供される。 また、 こ の よ う な方法は、 B Z F分離、 P C Rおよび電気泳動等を必要 と し ないので、 各種多型を簡便に分析する こ と が可能であ る。
上述の よ う な本発明の思想か ら は、 更に以下の よ う な効果 も得る こ と が可能である。 即ち、 本発明の方法は、 一塩基置 換部位に限 らず、 多型部位の塩基配列を簡便に決定する こ と が可能である。 また更に、 血液型に代表さ れる血球の多型性 も簡便に検出する こ と が可能であ る。
図面の簡単な説明
図 1 は、 本発明の実施例 1 に従った検出方法において検出 し得る検体 D N Aの模式図であ り 、
図 2 は、 図 1 の検体 D N Aを検出するために使用 し得る プ ロ ーブの 1 例の模式図であ り 、
図 3 は、 本発明の実施例 1 に従った検出方法におけ る 、 プ ロ ーブ I について進行する反応の概要を示すス キーム図であ り 、
図 4 は、 本発明の実施例 1 に従った検出方法におけ る、 プ ローブ I I について進行する反応の概要を示すス キー ム図で あ り 、
図 5 は、 本発明の態様に従っ た検出方法に使用 し得る検出 シス テ ム の 1 例を示す模式図であ り 、
図 6 Aおよび 6 B は、 本発明の態様で使用 し得る蛍光顕微
鏡の測定部分の 1 例を示 し、
図 7 は、 図 5 に示す検出シス テ ム で得られ得る蛍光強度の 時間的変化を示すグラ フであ り 、
図 8 は、 図 7 に示すデータ を 自 己相関関数で変換 した と き の統計学的データ を示すグラ フであ り 、
図 9 Aか ら図 9 D までは、 本発明の態様に従った検出方法 によ る多型配列の決定方法の概念を示す図であ り 、 図 9 Aは 微小空間におけ る比較的小さ い分子の動き を示す図であ り 、 図 9 B は図 9 Aの場合に得られる経時的なゆ ら ぎを示すダラ フの例であ り 、 図 9 C は微小空間における比較的大き い分子 の動き を示す図であ り 、 図 9 D は図 9 Cの場合に得られる経 時的なゆ ら ぎを示すグラ フの例であ り 、
図 1 0 は、 本発明の実施例 3 において用い得る プロ ーブを 示す図であ り 、
図 1 1 は、 本発明の方法の臨床医学への応用例を示す図で あ り 、
図 1 2 Aは、 ス ライ ドグラ ス に点着 された試料を示す模式 図であ り 、 図 1 2 B は、 図 1 2 Aの線 X I I A— Aに沿った 断面図であ り 、
図 1 3 Aか ら C は、 本発明の実施例 4 において使用 し得る マイ ク ロ プ レー ト の例を示 し、 図 1 3 Dは、 図 1 3 C のマイ ク ロ プ レー ト の線 X I I I D — D に沿った断面図を示す。 発明を実施する ための最良の形態
本発明の多型性を測定する方法は、 一般的に大き く 分けて 2 工程、 即ち、 反応工程と検出工程と を具備する。 該反応ェ
程は、 目 的 とする多型部位に特異的に結合するプロ ーブ物質 と 、 該多型部位 と を反応させ結合 させる工程である。 また、 該検出工程は、 前記反応工程中お よび反応工程後に得 られる 分子の動態を測定する過程である。
Γ田Πき。五口
本明細書において、 「多型遺伝子」 と は、 一つの遺伝子座 を占める複数種の対立遺伝子群、 又はこの よ う な対立遺伝子 群に属する個々 の対立遺伝子を指称する も の とする。
こ こで使用 さ れる 「多型部位」 と は、 各多型遺伝子間で塩 基配列が異なる部位をい う 。 例えば、 多型遺伝子 A 1 の塩基 配列が A A A T T T ( C C C ) G G Gであ り 、 多型遺 伝子 A 2 の塩基配列が A A A T T T ( A G T ) G G G である場合には、 括弧内に示されている部位が多型部位に該 当する。 多型部位の中で 1 塩基のみが異な る も の は、 特に 「単ヌ ク レオチ ド多型」 と指称する も の と する。
ま た更に、 本発明の態様に従 う と 、 検出対象と なる 多型性 は、 遺伝子 レベルに限 られる ものではな く 、 タ ンパク 質 レべ ルで表さ れる多型性にまで及ぶ。 従っ て、 こ のよ う な場合に は、 「多型部位」 は発現されたタ ンパク質を示す。
こ こ で使用 さ れる 「 1 塩基置換部位」 の語は、 単ヌ ク レオ チ ド多型性の由来である 1 塩基か ら な る多型部位を指示する , 本発明の態様に従 う と 、 1 つの検体 D N Aの配列中に 1 塩基 置換部位が 1 つ存在 して も、 ま た、 それ以上で存在 して も、 それ (ま たはそれら) は測定さ れ得る。 複数の 1 塩基置換部 位を検出する場合には、 複数種類の標識物質を使用 して も よ
レヽ
また、 こ こで使用 される 「多型配列」 の語は、 多型部位に 含まれる塩基配列を意味する。 上記事例では、 括弧内に示さ れている塩基配列であ る。
こ こで使用する 「校正機能を有する核酸合成酵素」 の語は 一部分が二重鎖になっ た塩基配列の 3 ' 末の ミ スマ ッチを認 識 し、 その塩基を削除 し、 且つ適切な条件下で核酸を合成 し て二重鎖を合成する活性を有する酵素をい う 。 本発明の態様 に従 う と 、 使用可能な酵素の例は、 校正機能を有する核酸合 成酵素であ り 、 好ま し く は、 E x ' 丁 3 または ' 丁 3 q 等である。 これら は、 例えば宝酒造から入手でき る が、 こ れに限 られる も のではない。
こ こで使用する 「標識物質」 の語は、 異な る測定時点にお いて、 略一定の出力 を維持する よ う な標識材料を示す。 例え ば、 発光性物質、 蛍光物質、 磁性物質および放射性物質等で ある。 なお、 該標識物質は、 後述する検出工程で使用する手 段に適切な標識物質を選択するべきである。
こ こで使用する 「 自 由な微小運動」 または 「微小運動」 と は、 主に、 ブラ ウ ン運動をレヽ う 。
こ こで使用する 「微小空間」 と は、 分子の 自 由 な微小運動 を良好に検出するための微小な空間をい う 。 本発明の態様に 従 っ て使用 さ れる微小空間の例は、 容積 と して 1 0 — 2 1 L ( lOOnm 四方の立方体の体積に相当する ) 〜 1 0 — 3 L であ ればよ く 、 典型的には 1 0 — 1 8 L 〜 : L O — 9 L 、 最も典型的 に は 1 0 _ 1 5 L 〜 1 0 — 1 2 L の空間をレ、 う 。 微小空間の形
状は、 球状、 円柱、 円錐状、 立方体状、 直方体状等任意の形 状であ り 得る。
本発明の 1 つの側面に従 う と 、 任意の多型遺伝子の多型部 位に含まれる塩基配列を明 らかにする方法、 即ち、 多型遺伝 子の型を決定する方法が提供でき る。
なお、 以下では、 検出 しょ う と する多型遺伝子 (以下標的 多型遺伝子 と称する) の多型部位中に含まれる こ と が知 られ てレ、る 多型配列 を、 P S i P S n ( n は 2 以上の整数) と 表記する もの と する。 例えば、 上記の例にぉレ、ては、 P S 2 は C C C であ り 、 P S 2は A G Tである。
本発明の態様に従 う と 、 方法を用いれば、 極めて迅速に多 型部位の型を決定でき る。 また、 本発明の態様に従 う と 、 多 数の多型部位を含有する多型遺伝子や多種類の多型か ら なる 多型部位を含む多型遺伝子が検出でき る。 このよ う な遺伝子 と しては、 種々 の S N P 、 ヒ ト 白血球抗原 (以下 HLA と称 する) を含む主要組織適合抗原、 種々 の疾患関連遺伝子を挙 げる こ と ができ る が、 これに限定される も のではない。
本発明の態様に従 う と 、 多型部位の検出ま たは多型部位の 型を決定する場合、 まず、 標的多型遺伝子またはタ ンパク質 を含む検体を準備する。 本発明の態様に従 う と 、 ヒ ト に適用 する場合、 典型的には、 検体は血液、 骨髄液、 脳脊髄液等を 含む体液であ り 得る が、 これら に限定されない。
本発明の態様に従 う と 、 高感度に多型を検出する こ と がで き る。 従って、 遺伝子を扱 う 場合でも、 従来法の よ う な P C R増幅の操作は省略さ れて も よい。 しか しなが ら、 標的多型
遺伝子が特に少量であれば、 P C R増幅を行って も よい。 実施例 1
本発明の 1 つの側面に従 う と 、 ヌ ク レオチ ドにおける 単一 ヌ ク レオチ ド多型部位を検出する方法が提供される。
前記反応工程は、 一般的に、 検体 D N A と 、 標識 した D N Aプロ ーブと をハイ ブ リ ダィ ゼーシ ョ ンする こ と と 、 得 られ た二重鎖を校正機能を有する酵素で処理する こ と と を具備す る。
前記検出工程は、 一般的に、 前記反応工程の反応系で生 じ た分子の 自 由 な微小運動を測定 して評価する工程である。
1 . 反応工程
以下、 本例の反応工程の 1 例を図 1 か ら 3 を用いて説明す る。 しか しなが ら、 これは例示であ り 、 本発明を制限する も のではない。
( 1 ) 検体 D N A
図 1 に、 本例の検体 D N Aの 1 例を模式的に示 した。 こ こ では、 検体 D N Aにおける多型遺伝子が、 2 つの多型配列を 持つ、 即ち、 多型 I と 多型 I I と して存在する場合を例 と し て説明する。 多型 I と 多型 I I は、 1 塩基置換部位を除く 他 の部分の塩基配列は相同である。 また、 多型 I の 1 塩基置換 部位は、 アデニ ン [以下、 塩基 ( A ) または A と称 し、 図中 では A と示す] であ り 、 多型 I I の 1 塩基置換部位は、 グァ ニ ン [以下、 塩基 ( G ) ま たは G と 称 し、 図 中 では G と 示 す] とする。
( 2 ) 標識 D N Aプローブ
次に、 図 1 に示 した 1 塩基置換部位を検出する ためのプロ ーブの 1 例を図 2 に示す。 プロ ーブ I は、 多型 I の 3 , 末端 か ら 1 塩基置換部位ま での配列に相補的な配列か らな り 、 且 つプロ ーブ I の 3 ' 末端の塩基 (即ち、 1 塩基置換部位の塩 基と 対をなす塩基) には、 標識物質が付与されている。 この 例では、 プロ ーブ I の 3 ' 末端は標識されたチ ミ ン [以下、 塩基 ( T ) または T と 称 し、 図中では T と 示す] であ る。
同様に、 プロ ーブ I I は多型 I I の 3 ' 末端か ら 1 塩基置 換部位ま での配列に相補的な配列か ら な り 、 且つプロ ーブ I I の 3 ' 末端の塩基には標識物質が付与さ れている。 こ の例 では、 プロ ーブ I I の 3 ' 末端は標識されたシ ト シン [以下 塩基 ( C ) または C と称 し、 図中では C と 示す] であ る。
( 3 ) 反応工程
以下に、 本発明の最もシンプルな例 と して、 実施例 1 に従 う 方法で得 られる反応系における反応を図 3 および 4 に例示 し、 該反応をシ ミ ュ レー トする。 この例では、 試料中に含ま れる検体 D N Aは、 多型 I である のか、 または多型 I I であ る のかが検出 さ れる。 こ こ では、 試料中に多型 I が含まれて いる と過程する。 まず、 該試料を 2 つの容器、 即ち、 容器 I と容器 I I に添加する。
図 2 に示 した夫々 のプロ ーブは種類毎に夫々 の容器に添加 され、 該試料と の反応に供される。 図 3 は、 容器 I で進行す る反応を示す。 即ち、 図 3 の容器 I では、 多型 I と プロ ーブ I と のハイ ブ リ ダィ ゼーシ ヨ ンが適切な条件下で進む。 図 3 か ら 明 らかであ る よ う に、 多型 I と プロ ーブ I と は完全マ ツ
チ している (図 3 ) 。 一方、 図 4 は、 容器 I I において進行 する反応を示す。 即ち、 図 4 の容器 I I では、 多型 I と プロ ーブ I I と のハイ ブ リ ダィ ゼーシ ヨ ンが適切な条件下で進行 する。 図 4 から明 らかである よ う に、 1 塩基置換部位での ミ スマ ッチが生 じてレヽる。
続いて、 前記完全マ ッチの二重鎖と ミ スマ ッチの二重鎖に 対 して、 夫々 、 校正機能を有 した D N Aポ リ メ ラーゼを添加 する (図 3 およ び 4 ) 。 その結果、 容器 I における完全にマ ツチ した二重鎖に対 しては、 前記ポ リ メ ラーゼは活性 (即ち 3 ' → 5 ' ェク ソヌ ク レアーゼ活性) を示さ ない (図 3 ) 。 それに対 して、 容器 I I における前記ポ リ メ ラ一ゼは、 多型 I と プロ ーブ I I カゝ ら なる 二重鎖の 3 ' 末での ミ スマ ッ チを 認識 し、 該 ミ スマ ッチ した塩基を削除 し、 更に該 D N A鎖を 伸長する (図 4 ) 。 こ の結果、 容器 I I では、 標識さ れた塩 基 ( C ) が遊離する (図 4 ) 。
即ち、 局所的な ミ スマ ッ チが存在 し得るハイ プ リ ダイ ゼー シ ヨ ン反応生成物に対 して、 核酸合成試薬と しての D N Aポ リ メ ラーゼを処理 した場合、 そ こ において生 じ得る反応は以 下の 2 通 り である。
ハイ ブ リ ダイ ゼーシ ョ ン反応生成物に ミ スマ ッチが存在す る場合、 該 D N Aポ リ メ ラ ーゼは該ミ スマ ッチを認識する。 その結果、 該 D N Aポ リ メ ラーゼによ る 当該 D N A鎖の伸長 反応が進行 し、 同時に、 ミ スマ ッチ していた塩基を含む標識 分子は、 前記伸長反応の進行過程において標的 D N Aか ら脱 離する。
これに対 して、 も う 1 つの場合は、 ハイ ブ リ ダィ ゼーシ ョ ン反応生成物に ミ ス マ ツチが存在せず、 該反応生成物が完全 マ ッチの二重鎖であっ た場合である。 言い換えれば、 標的 D N A と 、 標識分子を具備する塩基 と が完全にマ ッチ してハイ ブ リ ダィ ズされている場合である。 この よ う な場合、 該 D N Aポ リ メ ラ ーゼは、 その二重鎖が完全マ ッ チで結合されてい る こ と を認識する。 その結果、 該 D N Aポ リ メ ラ ーゼは、 伸 長反応を引 き起こ さ ないか、 伸長を引 き起こ した と して もそ の途中で該伸長を中断 し、 それ以上は該伸長反応は進行 しな い。 また、 ミ スマ ッチが存在 しないので校正機能に関連する 該 D N Aポ リ メ ラーゼのェキソヌ ク レアーゼ活性は機能 しな い。 こ の よ う な D N Aポ リ メ ラーゼの校正機能を、 ミ スマ ツ チ した塩基を含む標識分子を脱離する ために使用する と い う 本発明者のユニーク な発想は、 全く 新 し く 且つ非常に有効な 多型性の検出方法の提供に大き く 寄与する も のである。
D N Aポ リ メ ラーゼによ る校正機能を利用 して該検出を行 えば、 ハイ ブ リ ダィ ゼーシ ヨ ンの有無を検出する こ と と 、 続 く 、 該校正活性によ る標識分子の脱離の有無を検出する こ と と 、 の二段階の検出が行われる。 従っ て、 よ り 精度の高い当 該検出方法が提供さ れる。
こ の よ う な二段階の検出は、 言い換えれば以下の よ う な 2 工程であ る と 言える。 即ち、 第 1 の検出工程では、 ハイ プ リ ダイ ゼーシ ョ ンが起こ り 得る条件下で、 試料と標識分子 と が 混合 され反応され、 こ の反応時におけるハイ プ リ ダイ ゼーシ ヨ ンの有無が検出 さ れる。 これに よ り 、 標的 D N Aの有無お
よび/ま たはハイ プ リ ダイ ゼーシ ョ ンの反応量が決定される 続く 、 第 2 の検出工程では、 当該合成反応が起こ り 得る条件 下で当該核酸合成酵素が添加され反応 され、 こ の と き に生 じ る脱離分子が検出 さ れる。 これに よ り 、 遺伝学的変異の有無 およ び Zまたは変異 した配列が決定される。
こ の よ う な第 1 お よび第 2 の検出工程か ら なる二段階の検 出工程は、 F C S に よ って、 二段階の工程を通 して継続的 し て実施されても、 ま た F C S に よ って夫々 の工程を別々 に行 われて も よい。 F C S に よ り 、 こ のよ う な二段階の検出を行 つた場合には次のよ う な結果が得られる。 第 1 の検出工程に おいて、 当該ハイ ブ リ ダィ ゼーシ ヨ ンが起こ る と 、 標識分子 のサイ ズが大き く な る ので、 F C S の反応曲線が変化する。 続く 第 2 の検出工程おいて、 該脱離が起こ る と 、 標識分子の サイ ズが小さ く なる ので、 前工程を経て変化 した F C S の反 応曲線は、 更に変化する。 この よ う に、 D N Aポ リ メ ラ ーゼ に よ る校正機能を利用 した場合には、 初めに、 ハイ ブ リ ダィ ゼーシ ョ ンの有無が検出 され、 次に該校正に よ る標識分子の 脱離の有無が検出 される。 従って、 従来の方法よ り も有意に 精度が高 く 且つ信頼性が高い検出方法が提供される。
なお、 本発明の態様に従 う と 、 校正機能を有 した D N Aポ リ メ ラーゼ類等の試薬を用いた ミ スマ ッチの検出は、 F C S を検出手段 と して用いた方法に限る ものではない。 検出手段 と し て 、 例 え ば、 結合の 有無 で分離す る よ う な種々 の B (bound)/ F (free)分離技術を用いて、 当該検出が行われて も よい。 その場合、 例えば、 上記の 2 段階の検出工程の夫々 か
ら 得 ら れ る 標的 D N A に結合 し た標識分子の量 ( B i ) と ( B 2 ) を比較 し て も 、 と 脱離 した標識分子の量 ( F 2 ) を比較 して も 、 当 該検出 はな さ れ得 る 。 こ こ で、 ( B ! ) は第 1 の検出工程後に得 られる標的 D N Aにハイ ブ リ ダィ ズ したプロ ーブに含まれる標識分子の量であ り 、 ( B
2 ) は第 2 の検出工程後に得 られる標的 D N A にハイ プ リ ダ ィ ズ したプロ ーブに含まれる標識分子の量であ り 、 ( F 2 ) は第 2 の検出工程後に得られる脱離 した標識分子の量である < 上述の よ う な反応に よ り 得られる標識さ れた分子の 自 由な 微小運動を、 後述する検出手段に よ り 測定 し評価する。 標識 分子の 自 由 な微小運動は、 該標識分子の大き さ に依存 して変 化する。 従って、 標識物質を指標に して、 その微小運動を測 定する こ と によ って塩基配列に関する情報を得る こ と が可能 である。
( 4 ) 反応工程の他の態様
本発明の検出方法に具備 される反応工程の最も シンプルな 1 例は、 上述 した通 り であ るが、 種々 の変更および修飾を行 な う こ と が可能であ る。 例えば、 複数の標識物質を用いて も よい。 また、 標識物質によ るプロ ーブの標識は、 プロ ーブの
3 ' 末だけではな く 5 ' 末に対 して行なっ て も よい。 また、 複数のプロ ーブを 1 つの容器内で試料と反応 させても よい。
また、 校正機能を有する核酸合成酵素に よ る ミ スマ ッチの 認識および切断の後で、 該切断部から 3 ' 末端方向に塩基配 列を延伸する こ と も可能である。 その場合、 適切な条件を設 定 し、 且つ更に必要な基質および試薬等を供給 して も よ く 、
ポ リ メ ラ ーゼ連鎖反応 (以下、 P C R と称する) 等に よ って 行なって も よい。 しか しなが ら、 該延伸を必ず しも行な う 必 要はない。
また、 上述 した反応を行な う 前に、 P C R等の技術に よ り 試料に含有 される多型を増幅する こ と も可能である。
2 . 検出工程
( 1 ) 検出原理
本発明の検出工程では、 所定空間内におけ る 1 以上の標識 分子の出力強度が測定される。 更に、 得られた出力強度の増 減ま たは消出が指標 と して使用 される。 出力強度の変化から 微小の測定視野内を出入 り する標識分子の運動速度が得 られ る。 従っ て、 プロ ーブを標識する標識分子は、 複数の測定時 点に亘つ て、 略一定 した出力を維持でき る よ う な標識材料で ある こ と が好ま しい。 この よ う な標識分子の材料の例は、 発 光性物質、 蛍光性物質、 磁性物質および放射性物質等が挙げ られる。 発光性物質 と 蛍光物質は、 長時間、 発光または蛍光 を発する よ う な色素を選ぶこ と が好ま しい。
標識に用い られる蛍光色素 と しては、 D A P I 、 F I T C ロ ーダ ミ ン、 C y 3 、 C Y 3 . 5 、 C y 5 、 C y 5 . 5 、 C y 7 等の種々 の公知物質が含まれる。
また、 例えば、 複数の項 目 を同時に測定するために、 複数 の蛍光物質を同時に用いて も よい。
ま た発光色素や蛍光色素を有する も のを標識分子と して使 用すれば、 容易な構成の装置に よ って分子 レベルを光学的に 測定でき る。 また、 後述する実施例 3 のハイ ブ リ ダィ ゼーシ
ョ ンのよ う な、 ヌ ク レオチ ド分子同士の相補的な結合の際に その相補的結合部分にイ ンターカ レー ト し、 それに よ つ て遊 離時 と は蛍光特性が変化する よ う な物質も、 蛍光色素 と して 使用する こ と ができ る。 そのよ う な蛍光色素の例は、 ア タ リ ジンオレンジ、 チア ゾーノレオ レンジ、 ォキサゾーノレイ ェ ロ ー およ びロ ーダミ ン等がある。
蛍光分子の位置変化を測定する場合には、 フォ ト マルチプ ラ イ ヤゃフ ォ ト ダイ ォー ド等の蛍光測定手段を検出手段 と し て用 いて蛍光デー タ を受光 して も よ い。 更に、 蛍光分子を 夫々 個々 に測定でき る よ う に、 該蛍光測定手段が、 単一フォ ト ンを計測 し得る よ う な測定モ ー ドを備えていて も よ い。 本発明の態様に従 う と 、 検出工程を行 う ための検出手段は 標識分子の材質に応 じて標識分子のシグナルを測定でき る測 定手段と 、 前記測定手段に よ って所定時間内に得られる複数 の測定データ を記憶する手段 と 、 記憶 した複数の測定データ を 自 己相関関数で演算する演算手段と を具備 して よい。
ま た、 検出手段は更に以下を具備 して も よい。 即ち、 所定 の測定領域内で得られる複数の標識分子に関する測定データ を記憶する手段 と 、 記憶 した測定データ を こ この標識分子倍 に 自 己相関関数で演算する演算手段と を具備 して も よい。 更 にま た、 得られたデータおよび解析結果を出力する ための出 力手段を設けて も よ い。 データ 出力手段は、 自 己相関関数で 演算 された結果に基づいて、 複数の追跡データ に関する時間 的な位置変化を表現する統計学的データ に変換する変換手段 を含むんでも よい。
本例における検出工程では、 液体中での標識分子のゆ ら ぎ 運動を測定する こ と に よ って、 該標的分子の微小運動を正確 に測定 し評価 して も よい。 ゆ ら ぎ運動の評価は、 自 己相関関 数 (Autocorrelation function) を用レヽて演算 して行っ て も よ い。 標識分子と して蛍光物質を用いる場合、 自 己相関蛍光分 光 fe ( Fluoresence Correlation Spectroscopy、 以 卜 、 F C S と 略する) を採用 して も よい。
生物学的材料の性質を F C S で測定 して得たデータ を解析 す る た め の 演 算 方 法 は 、 金 城 ら の 報 告 を 参 照 で き る ( K i nj 0, M., Rig ler,R , Nucleic Acids Research, 23, 1795- 1799,1995 ) 。 こ の文献は引用に よ って こ こ に組み込まれる 該報告では、 標識された核酸プロ ーブと標的核酸分子 と のハ イ ブ リ ダイ ゼーシ ョ ン反応を、 F C S で観察 した例が報告さ れている。 また、 F C S およびその測定データ の演算につい ては、 更に後段で記述する。
F C S では、 分離過程な しに、 非常に小 さ な試料体積に含 まれる蛍光粒子の数や拡散定数を略 リ アルタ イ ムで求め る こ と が可能である。 F C S を用いれば、 B Z F 分離が不要であ り 、 測定に係る 時間が短縮でき る。 溶液系のままで測定でき るので、 測定時間は更に短縮でき る。 また、 生体分子を 自然 な状態で測定でき る。
上述の反応工程で得 られた標識分子の検出は、 以下の よ う な工程に よ り 実施 して も よい。 上述 した本発明の実施例 1 に おいて具備 される検出工程は、 微小視野において顕微鏡的に 前記標識分子の動態を観察する こ と と 、 複数の測定データ を
時間変化のばらつき に応 じた統計学的データ に変換する こ と と 、 統計学的データ に基づいてハイ プ リ ダイ ゼーシ ョ ン反応 の反応曲線を得る こ と と を具備する。 こ こで、 反応曲線の立 ち上が り の高さ がヌ ク レオチ ド分子の個数を表 している。 本発明の検出工程が、 3 次元の微小視野内において実行さ れる こ と に よ り 、 標的分子の試料含有液の中における 自 由な 微小運動を高精度に検出 し評価でき る。 仮に、 こ の検出工程 を 2 次元的な視野内で測定する こ と に よ って実施 した場合、 ブラ ウ ン運動の よ う に、 標識分子の 3 次元的に 自 由な移動を 漏れな く 捕える こ と ができ ない。 そのため測定精度は低 く な る ので、 それは好ま し く ない。
検出工程の微小視野が共焦点光学系によ り 形成 される こ と に よ り 、 被写界深度の深い測定データ が得られる。 それに よ つて個々 の任意の標識分子が視野内で常に合焦する ので、 正 確な位置および出力データ が得 られる。
即ち、 微小分子の運動状態の検出手段は、 焦点付近の回折 限定領域に齎される微小視野内での測定を実施でき る光学系 を有する手段が好ま しい。 または、 検出手段は共焦点光学系 に よ り 形成される微小視野内での測定を実施する顕微鏡を有 する手段が好ま しい。
微小視野が、 焦点付近の回折限定領域である こ と に よ り 、 個々 の標識分子を高い S N比で測定でき る。
該回折限定が平均直径 1 5 ± 5 a mの ピンホールに よ り 形 成さ れる こ と に よ り 、 少数の選ばれた標識分子か らの測定デ ータ を効率良 く 得る こ と ができ る。
特に好ま しい微小空間は、 平均半径 2 0 0 ± 5 0 n mおよ び光軸上の平均長 さ 2 0 0 0 ± 5 0 0 n mの略円柱状領域で ある こ と によ り 、 測定視野内に照準された標識分子に関する 自 由 な微小運動を効率良 く 取得する こ と ができ る。
ま た、 極微小の平均半径からなる アパーチャ一 (ピンホー ル、 光フ ァ イ バ端面等) か ら出射する よ う に光学設計する こ と に よ って得る こ と が もでき るが、 レーザー光線によ る収束 光も好ま しい。
励起光である レーザー光は、 試料溶液のほんの 1 点に集中 され、 且つ共焦点光学系の特性か らその 1 点か ら の蛍光発光 を検出系で捕 ら える こ と になる。 実際の容器中の測定領域は 理想的な点ではな く 、 図 6 B に示すよ う な円柱状の領域と な る。 その大き さ は、 微量空間を形成する容量であればよ く 、 例えば、 直径約 5 0 0 n m、 軸長約 2 0 0 0 n m、 容積と し てフ エム ト リ ッ トルであっ て も よい。
F C S の測定領域は溶液であ り 、 領域中に存在する蛍光分 子はブラ ウ ン運動を行っている。 従って、 一定の測定領域の おけ る分子の数は常に一定ではな く 、 ある値を中心に変動 し て 「数ゆ ら ぎ」 が生 じている。 更にこ の数ゆ ら ぎに起因 して 測定される蛍光強度に 「強度ゆ ら ぎ」 が発生する。 こ の蛍光 強度のゆ ら ぎを解析する こ と で拡散速度に関する情報 と 分子 の数に関する情報を得る こ と が出来る。
F C S 自 体は公知であ り 、 その詳細は、 例えば特願平 1 0 — 3 0 1 3 1 6 号等に記載されている。 ま た、 F C S に よ る データ解析には、 Z e i s s 社製の C o n f o C o r (登録
商標) に付属の解析用 ソ フ ト ウ ェ アである 「 F C S A C C E S S 」 を使用でき る。
実施例 2
実施例 1 に記載 した態様で使用 し得る測定装置の例を図 5 を用いて説明する。 図 5 には本発明の態様に従 う F C S 装置 が示される。 該装置は、 共焦点光学系を用いた倒立型の蛍光 顕微鏡 1 と 、 試料か らの蛍光を測定する ためのフォ ト マルチ プラ イ ヤ 2 と 、 測定データ を受信 して 自 己相関関数に よ る演 算を行なっ て該測定デー タ の数値化ま たはダラ フ化を行な う データ処理装置 3 と 、 前記演算結果を画面上に表示する表示 装置 4 と を備えている。
試料含有液 1 1 は、 図 5 に示す通 り 、 試料台 1 2 に載せた ス ラ イ ドガラ ス 1 3 上に点着させる こ と に よ って簡単にセ ッ ト でき る。 こ の装置では、 特に、 微量の試料含有液 1 1 を用 いている ため、 水分の蒸発を防止する ための蓋 1 4 をス ライ ドガラ ス 1 3 上にかぶせてある。 こ の蓋 1 4 は、 好ま し く は 光透過性の低い ものを用いる。 これに よ つて気密性と遮光性 が同時に得 られる。 更に、 蓋の内面は、 励起光線の反射を防 止する よ う に、 でき るだけ光射性の低い も のを使用する こ と が好ま しい。
試料含有液 1 1 が位置する ス ラ イ ドガラ ス 1 3 の部分の真 下には、 試料含有液 1 1 中で焦点を結ぶよ う に設定した対物 レ ンズ 1 5 が配置される。 なお、 蛍光顕微鏡 1 は落射型でも よい。 落射型においては、 対物 レ ンズ 1 5 の レ ンズ下面に直 接的に試料含有液 1 1 を点着 して も よい。 また、 図 5 に示す
例においては、 蛍光顕微鏡 1 の光源である レーザ発生装置 1 6 と して、 アルゴン ( A r ) イ オン レーザを使用 している。 ま た、 蛍光顕微鏡 1 における ス ライ ドガラ ス 1 3 の搬入や 搬出、 ス ラ イ ドガラ ス 1 3 等への試料含有液の点着、 蓋 1 4 の開閉等の各種動作は、 必要に応 じて適宜自 動化 されて も よ レヽ
この よ う な検出は、 図 5 に示すよ う な共焦点顕微鏡によ つてな し得る。 共焦点顕微鏡自 体は、 本分野で公知である。 共焦点顕微鏡を用いた検出は、
(1)レーザー光を励起光と して照射する ;
(2)フ ィ ルタ ー(IF)を通過 させた後、 レーザー光を集光 し、 ダイ ク ロ イ ツ ク ミ ラ ー(DM)に よ っ て試料中の一点に レーザ 一光を照射する ;
(3)試料中の蛍光物質を レーザー光で励起 して蛍光発光 さ せる ;
(4)ピ ン ホ ールを通過 さ せる こ と に よ り 、 試料の焦点中の 蛍光物質か ら発せ られた蛍光のみを光増倍管(PMT)で増幅す る
(5)増幅 した蛍光を検出する
こ と に よ っ てな される。
図 5 では、 アルゴンイ オ ン レーザーが例示されてい る が、 蛍光物質の種類に応 じて、 波長の異なる ク リ プ ト ンアルゴン イ オン レーザー、 ヘ リ ゥムネオン レーザー、 ヘ リ ゥムカ ド ミ ニ ゥ ム レーザー も使用でき る。 ま た、 図 5 は、 典型的な共焦 点顕微鏡の模式図にすぎないので、 図 5 に記載の共焦点顕微
鏡以外のシステム も 当然使用でき る。
こ のよ う な検出方法は、 微少な一点から発せられる蛍光の みを検出する ので、 ノ ッ ク グラ ウ ン ドがな く 、 通常の蛍光検 出に比べて、 感度が著 し く 高い。
標的多型遺伝子の検出は、 一般的には ミ リ 秒〜分の単位、 最も一般的には秒の単位で行われる。
検出結果が得 られた ら、 該結果を解析 して、 核酸プロ ーブ の う ちの何れが標的多型遺伝子に結合 したかを決定する。 標 的多型遺伝子に結合 した核酸プロ ーブの種類が決定されれば 標的多型遺伝子の型が明 らかになる。
図 6 Aおよび 6 B は、 図 5 の蛍光顕微鏡 1 の測定部分の拡 大図である。 図 6 Aにおいて、 ス ライ ドガラ ス 1 3 と 所定の 開 口数 (図では F A = 1 . 2 ) の対物 レンズ 1 5 と の位置関 係に応 じて、 微小空間 2 0 が形成される。 図 6 B に示すよ う に、 この微小空間 2 ◦ は、 実際にはボ リ ュームを有 した レー ザ光線の焦点である。 その形状は、 中間の く びれた部分から 上下に伸びた略円柱状であ る (図 6 B ) 。 焦点を基準位置と して、 この視野領域 2 0 は光軸上の長 さ Z と 平均半径 Yによ つて制限さ れる。 こ の よ う な微小空間 2 0 において個々 の蛍 光分子の蛍光が正確に測定される のは、 微小空間 2 0 の体積 を蛍光分子の微小運動を追跡 し得る最小の領域にまで小さ く した こ と に よ る。 それによ つて試料含有液 1 1 の中の焦点付 近以外の蛍光分子に由来する ノ イ ズは有効に除去 される。
以上の様な F C S 装置を用いての解析例を以下に説明する, 該 F C S を用いて、 図 6 に示すよ う な共焦点領域に出入 り
する蛍光分子の蛍光強度を、 1 分子 レベルで捕える と 、 該蛍 光強度にゆ ら ぎが検出 される。 更に、 この蛍光強度のゆ ら ぎ のデータ を 自 己相関関数で変換 し、 統計学的データ を得る。 これよ つ て、 分子を分離する こ と な く 、 蛍光分子の分子数お よび大き さ が評価さ れる。
上述の態様に よ って測定 したデータ の例をグラ フ と して図 7 に示 した。 図 7 の グラ フ は、 縦軸に蛍光強度 I (t)を、 横 軸は時間(t)と する。 こ のデー タ を以下の よ う な 自 己相関関 数で変換する と 図 8 のグラ フが得 られる。
自 己相関関数は、
G ( τ ) : G ( r ) = < I ( t ) I ( t + τ ) > であ り 、
これを平均強度 〈 I 〉 の 2 乗で規格化 して展開する と 、
2
G(x) /〈1广 = C(X)
+一 (1) N + 4Dて I w^y2 + 4DT / WZ 2 2 と 近似でき る。 この と き、 τ = 0 の と き C ( 0 ) = 1 + 1 / N、 D =拡散定数、 N =溶液中の分子数である。
こ の よ う な分析の概念は、 図 9 A力 ら図 9 Dま でに よ つて よ り 明確 と なる であろ う 。 即ち、 蛍光強度の関数 I ( t ) は 標識分子が結合 していない場合には、 分子のサイ ズが小さ い のでブラ ウ ン運動の速度が大き く (図 9 A ) 、 I ( t ) の周 波数が大き い (図 9 B ) 。 これに対 して、 標識分子が結合 し ている と 、 ブラ ウ ン運動の速度は小 さ く (図 9 C ) 、 周波数 の大き いデータ が得 られる (図 9 D ) 。 それ故、 上述の ごと
く 、 蛍光強度を基に して得られた 自 己相関関数を解析すれば 標識分子の状態が明 ら かと なる わけである。
本発明の も う 1 つの側面に従 う と 、 上述 したよ う な態様を 以下の様に変更する こ と が可能である。 該プロ ーブの 3 ' 末 の塩基分子に付与する標識物質と して、 多型部位の塩基配列 の種類毎に、 蛍光波長が互いに異なる標識物質を付加 しても よい。 こ の よ う なプロ ーブを検体 D N A と 混合 し、 実施例 1 と 同様にハイ ブ リ ダイ ズを し、 ミ スマ ッチを起こ した塩基の 削除を該酵素を用いて行な う 。 続いて F C S に よ る検出を実 施する。 こ の際、 異な る波長を用いて、 それぞれの標識物質 の解析を行 う 。 それに よ つて、 どのプロ ーブが完全マ ッチで ある かが明確に分かる。 それと 同時に、 3 ' 末の塩基の種別 が識別さ れ、 どの多型であるかが分る。 その結果、 よ り 確実 に 1 塩基置換を検出でき る。 また、 異種蛍光を利用する場合 には、 励起光の波長を変えて も よ く 、 または検出部にフ ィ ル タ ーを用いる こ と に よ って検出光の波長を変えて も よい。
以上、 F C S 装置の例を記載 したが、 本発明は、 これに限 定される ものではない。 こ の発明の実施の形態の各構成は、 各種の変形、 変更が可能である。
こ のよ う な本発明側面に よ って、 簡便且つ短時間で実施す る こ と が可能な 1 塩基置換検出方法が提供される。 こ の効果 は、 本発明の独創的な原理に基づ く も のである。 即ち、 本発 明は、 目 的 とする検出を、 夫々 の多型性に特異的なプロ ーブ に標識を付 して使用 して検体 D N A と 反応 し、 これを検出す る こ と に よ って、 こ の反応を分子 レベルで捉える。 こ の と き
複数の経過時点で標識物質を測定 し、 その時間的な位置変化 を検出 し評価する こ と に よ って、 分子の大き さ に依存 して変 化する位置変化を定量的に検出する こ と が可能になる。
従って、 従来方法に必要であっ た B / F 分離等の工程や、 酵素標識試薬の場合の基質反応等、 および R I 標識試薬を用 いた場合の放射性感応フ ィ ルムへの暴露、 並びに P C Rおよ び電気泳動工程等が不要である。
具体的には、 従来の方法では、 P C Rが必須であ り 、 また 電気泳動を行なった際に明確な結果を得る ためには、 その伸 長する長 さ も 2 0 0 カゝ ら 3 0 0 塩基ま で行な う こ と が好ま し い と されてレヽる。 しか しなが ら、 本発明の態様に従 う と 、 電 気泳動も P C R も必ず しも行な う 必要はない。 仮に、 よ り 高 い確実性を求めて P C R を行な う 場合であっても、 1 0 力、 ら 3 0 塩基の伸長だけ行えば充分に確実なデータ を得る こ と が でき る。
本発明の態様に従 う 検出方法は、 検体量および試薬量と も 非常に少量のみを用いて実施する こ と が可能である。 具体的 には、 検体 と して用いる試料はフ ェ ム ト リ ッ ト ル ( f L ) レ ベルで充分であ る。 従って、 本発明の態様に従 う と 、 極小型 の容器で多数の検体を同時に測定する こ と が可能であ り 、 検 查に要する検体量および酵素試薬等の検出に必要な試薬を低 減する こ と が可能である。
また、 本発明の態様に従 う と 、 同一容器内で異なる多型部 位に特異性を有する複数の試薬を混合 し、 同時に検体に対 し て処理する こ と が可能である。 従って、 検体 D N Aの必要量
の低減、 および反応容器数の低減が可能であ る。 また、 多型 遺伝子検査が簡便に行える。
本発明の態様に従 う と 、 高感度な 1 塩基置換の検出が達成 される。 また上述 した本例の方法は、 ノ ッ ググラ ウ ン ドの影 響が少ないホモジニァ ス系であ る ため、 判定精度が高い。 こ れは本発明の検出原理に基づ く ものである。
実施例 3
本発明の も う 1 つの側面に従 う と 、 ヌ ク レオチ ドにおける S N P 以外の多型性を検出でき る方法が提供される。
即ち、 本態様は、 多型の検出方法であっ て、
前記ポ リ ヌ ク レオチ ドを含む検体を準備する工程と 、
検出可能な標識がラ ベルさ れた核酸プロ ーブ P R i 〜 P R „ であ っ て、 前記多型配列 P S 〜 P S n と 特異的に結合 し 得る核酸プロ ーブ P R P R n と 前記検体 と を混合する こ と に よ り 、 前記核酸プロ ーブ P R i P R n を前記ポ リ ヌ ク レオチ ドに結合せ しめる工程と 、
微小空間内 に存在する前記核酸プロ ーブ P R 〜 P R n を 検出する 工程と 、
検出結果を解析 して、 P R i P R nの う ち の何れが前記 ポ リ ヌ ク レオチ ドに結合 したかを決定する こ と に よ り 、 前記 多型部位の塩基配列が多型配列 P S 〜 P S nの何れであ る かを決定する工程と
を具備する方法である。 こ の態様に従 う と 、 ポ リ ヌ ク レオチ ド中に含まれる多型部位の塩基配列が多型配列 P S 〜 P S n ( n は 2 以上の整数) の何れである かが決定され得る。
本態様に従 う と、 所定のポリ ヌ ク レオチ ド、 最も典型的に は多型遺伝子中に含まれる多型部位を検出する と 同時に、 そ の多型部位の塩基配列を迅速且つ簡便に決定する方法が提供 される。
標的多型遺伝子を P C R増幅する場合には、 まず、 型を決 定すべき多型部位を挟むよ う にプライ マー対を選択しなけれ ばな らない。
続いて、 多型配列 P S i 〜 P s n と相補的な塩基配列を含 む核酸プローブ P R P R n ( n は 2 以上の整数) を、 前 記検体と 混合する。 核酸プローブ P R i は、 多型配列 P S と相補的な塩基配列を含むので、 標的多型遺伝子の型が P S の場合には、 核酸プロ ーブ P R iのみが標的多型遺伝子 と 結合 し得る。 同様に、 標的多型遺伝子の型が P S 2 〜 P S n の場合には、 それぞれ核酸プローブ P R 2 〜 P R nが標的多 型遺伝子と結合 し得る。
標的多型遺伝子に未知の多型配列が存在 しない限り 、 該多 型遺伝子には、 多型配列 P S i 〜 P S nの う ちの何れかが含 まれる ので、 該多型遺伝子 と核酸プロ ーブ P R i P R n と を混合すれば、 核酸プロ ーブ P R i 〜 P R nの何れかが該多 型遺伝子の多型部位に結合する。
核酸プローブ P R i P R nには、 検出可能な標識物質、 好ま しく は蛍光物質又は発光物質が標識されているので、 核 酸プローブが結合した多型遺伝子は、 以下で詳述する検出操 作で検出する こ と が可能と なる。
各核酸プローブに標識すべき標識物質は、 全て同種であつ
て も よい。 しか し、 何れの核酸プロ ーブが標的多型遺伝子に 結合 したかを識別でき る よ う に、 少な く と も 2 種類の標識物 質を用い る こ と が好ま しい。 1 種類の標識物質のみを使用す る場合には、 例えば、 各核酸プロ ーブの長さ を変える こ と に よ っ て、 何れの核酸プロ ーブが標的多型遺伝子に結合 したか 識別する こ と ができ る。
核酸プロ ーブ p R i〜 p R n の何れかを標的多型遺伝子に 結合 さ せた後に、 微小空間内 に存在する核酸プロ ーブ P R !
〜 P R nを検出する。
微小空間内の標的多型遺伝子は、 該遺伝子に結合 した核酸 プロ ーブの標識を検出する こ と に よ っ て検出 される。 前述の よ う に、 微小空間の容積は極めて小さ いので、 該検出は、 レ 一ザ一光を用いて、 顕微鏡視野下で微小空間内の蛍光発光を 検出する こ と が好ま しい。
検出工程は、 例えば、 実施例 2 に示すよ う な装置を用いて 行 う こ と が可能である。 例えば、 本態様では、 核酸プロ ーブ の う ち何れが標的対立遺伝子に結合 したかを明 らかにする た めに、 以下の よ う に F C S を行い得る。
( 1 )図 6 B に示 さ れてい る微小空間に レーザー光を照射す る。
( 2 )該微小空間 中に存在する蛍光物質か ら発せ られる 蛍光 の蛍光強度を経時的
に測定 し、 図 9 A力ゝ ら 図 9 D に示 されてレヽる よ う なデー タ を取得する。
( 3 )異な る 2 時点の蛍光強度 l it )と Iit+ τ )の積の期待値を
計算 し、 自 己相関関
数 G( τ ) = <I(t) I(t+て )>を得る
(4)下式 2 :
Y
G(T) = 1 + - N + + S 2
Tunbound -unbound
+ y
(2)
+ + S'
"bound bound
(こ こで、 N : 蛍光分子の平均数
2 / 4
^ u n b o u n d = W ° D b o u n d 遊離の核酸プロ一 ブの並進拡散時間
2 / 4
て o u n d = W O D b 。 u n d : 結合 した核酸プロ ーブの 並進拡散時間
y =結合 した核酸プロ ーブの割合
¾ = W O / Z O であ ^)
(なお、 wo は検出領域の径、 2zo は領域長、 Du n b 。 u n d と D b 。 u n dは、 それぞれ遊離の
核酸プローブ及び結合 した核酸プロ ーブの並進拡散定数 である) )
を用いて、 (3)で得た 自 己相関関数を解析する。
(5)各核酸プロ ーブについて、 添加前 と 添加後の 自 己相関 関数を比較する。
FCS に よ って、 何れの核酸プロ ーブが結合 したのかを決定 する ためには、 例えば、 各核酸プローブを励起波長及び 又
は蛍光波長の異なる蛍光標識で区別すればよい。
また、 各核酸プロ ーブのサイ ズが異なれば、 ブラ ウ ン運動 の変化及び自 己相関関数も異なる ので、 サイ ズの異な る核酸 プロ ーブを用いる こ と によ って何れの核酸プロ ーブが結合 し たかを決定する こ と もでき る。 も ちろん、 サイ ズと蛍光標識 の両者を組み合わせる こ と によ っ て、 標的対立遺伝子に結合 した核酸プロ ーブの種類を決定 して も よい。
上記の よ う なハイ ブ リ ダィゼーシ ョ ン反応を指標と した検 出のみな らず、 プロ ーブと して用いた標識配列をプラ イ マー と して用いて P C R反応を行い、 増幅産物の標識種類の判別 に よ って も標的対立遺伝子を決定する こ と が可能である。 ま た、 こ う した P C R反応を指標 と する こ と も可能である。 ま た、 こ う した P C R反応を指標 と する場合、 多型に よ って増 幅産物のサイ ズが異なる よ う にプライ マーの設計をする こ と によ り 、 増幅産物のサイ ズの差異に基づ く 自 己相関関数の差 によ って標的対立遺伝子の型を決定する こ と ができ る。
こ のよ う に、 本発明の方法を用いれば、 極めて迅速且つ簡 便に標的対立遺伝子の多型部位の型を決定でき る。
H L Aの型の決定 (図 1 0 参照)
実施例 3 に示す本発明の 1 側面に従 う と 、 例えば、 H L A の型を決定する方法が提供される。
本例では、 H L Aク ラ ス I I 領域 D R B 1 のァ ロ抗原性を 示す多型配列の型を決定する。 D R 2 のサブタイ プである D R B 1 * 1 5 (配列番号 1 ) と D R B 1 * 1 6 (配列番号 2 ) は、 1 4 1 番 目 のヌ ク レオチ ド (T→ C) と 1 8 0 番 目
のヌ ク レオチ ド(G→ C)のみが異なっている。
D R B 1 * 1 5 の 1 4 1〜 1 8 0 番 目 の塩基配列 と相補的 な塩基配列を有する プロ ーブ 1 と 、 D R B 1 * 1 6 の 1 4 1 〜 1 8 0番 目 の塩基配列 と 相補的な塩基配列を有する プロ一 ブ 2 を調製 し、 プロ ーブ 1 はフルォ レセイ ンィ ソ チオシァネ 一 ト(FITC)、 プロ ーブ 2 はロ ーダ ミ ンで標識する。 プロ ーブ 1 及びプロ ーブ 2 が、 各々 1 0 - 8 M程度の濃度にな る よ う に溶液に力 Pえる。
コ ンセ ンサス領域に特異的に結合 し得る プライ マ一対を用 いた P C R反応に よ り 、 6 0〜 2 0 0番 目 の塩基配列を増幅 する。 1 0 — 8程度の濃度にな る よ う に溶液を加えて、 DNA 検体を調製する。
カバーグラ ス の面に該 DNA 検体を 1 滴載置 し、 プロ ーブ 1 と プロ ーブ 2 を添力 [] した後、 5 8〜 6 0 °C前後のハイ ブ リ ダイ ゼー シ ョ ン反応を行 う 。
ハイ プ リ ダイ ゼーシ ョ ン反応の前後におけ る、 蛍光発光の 自 己相関関数の変化を測定する。
例えば、 検体 D N Aの型が D R B 1 * 1 5 の ホモ であ る場 合には、 プロ ーブ 1 のみが結合する ので、 F I T Cか ら発せ られる黄緑色の蛍光の 自 己相関関数のみが変化する。 他方、 検体 D N Aの型が D R B 1 * 1 6 の ホモ であ る場合には、 プ ローブ 2 のみが結合する。 従って、 ロ ーダ ミ ンか ら発せ られ る黄緑色の蛍光の 自 己相関関数のみが変化する。 また、 検体 D N Aの型が D R B 1 * 1 5 と D R B 1 * 1 6 のへテ ロ であ る場合には、 プロ ーブ 1 と プロ ーブ 2 が共に結合する。 従つ
て、 F I T C カゝ ら発せ られる蛍光 と ロ ーダ ミ ンカゝ ら発せ られ る蛍光の 自 己相関関数が共に変化する。 も し、 検体 D N Aの 型力 S D R B 1 * 1 5 と D R B 1 * 1 6 の何れで も なければ、 自 己相関関数は全く 変化 しない。
こ の よ う に、 プロ ーブ 1 と プロ ーブ 2 は異なる標識物質で ラベルさ れている ので、 同一の容器中に添カ卩 して も、 何れの プロ ーブが検体 D N A と結合 したかを決定でき る。 近年、 H L Aには多 く の多型部位が存在する ので、 多種類のプロ ーブ を同時に同 じ容器に添加 して分析でき る こ と は、 本発明の方 法の大き な利点であ る。
本例では、 異なる標識物質でラベルされたプロ ーブを用い る方法を記載 したが、 長さ が異な る プローブを用いて も よい, この場合、 各プロ ーブの長さ は、 FCS によ っ てゆ ら ぎの差異 を判別でき る よ う に選択 しなければな らない。 例えば、
D R B 1 * 1 5 と D R B 1 * 1 6 を判別する 上記事例におい ては、 プロ ーブ 1 と プロ ーブ 3 (配列番号 3 ; プロ ーブ 1 よ り 20塩基長い) を使用する こ と ができ る。
図 1 1 には、 本例の方法の臨床検査への応用を示 した。 該 応用によれば、 多数の多型配列のサブク ラ ス の型を迅速に決 定でき る ので、 多数の多型部位が存在 し、 多型部位毎に多く のサブク ラ スが同定されている H L Aの型を決定するのに有 用である。
図 1 1 カゝ ら明 らかのよ う に、 該方法では、 ガラ ス平板上の 各窪みの 中 には、 H L Aの多型配列 ( Α2、 Α26、 Β40···等) がそれぞれ各別に添加 した後、 各多型配列のサブク ラ ス と特
異的に結合 し得るプロ ーブ群を加える。 続いて、 本例で詳述 した よ う に、 各窪み毎に何れのプローブが結合 したかを決定 すれば、 多数の多型配列のサブタ イ プを決定する こ と ができ る。 勿論、 前記窪みの中に添加すべき 多型配列は H L Aのみ に限 ら ない。 ま た、 各窪みには、 全く 種類の異な る多型遺伝 子を添加 しても よい。
本発明の 1 例である この よ う な方法に従えば、 多種類のポ リ ヌ ク レオチ ド中の多型部位を迅速且つ簡便に決定でき る。 実施例 4
本発明の更な る も う 1 つの側面に従 う と 、 多型の 1 つであ る血型を解析する こ と ができ る方法を提供する こ と ができ る そのよ う な方法は、 例えば、 以下の通 り に行える。 まず、 試料中の抗原 と 抗体 と の反応を、 標識化抗体の運動状態を蛍 光相関分光法を用いて直接的に観察する。 それに よ つて、 標 識化抗体の存在状態を解析 し、 試料中で抗原抗体反応が生 じ ているか否かを判定する。
従って、 本発明の 1 つの側面に よれば、 本例は、 例えば、 血球血型の判定、 特に、 赤血球血型ォモテ試験およびゥ ラ試 験、 不規則抗体の検出、 抗血球特異抗原お よび抗体の検出、 ウ ィ ルスおよび細菌等の抗原および抗体の検出等を実施する こ と が可能であ る。
具体的には、 本例は、 まず、 試料中の検出対象 と なる抗原 ま たは抗体を検出する ために、 蛍光物質を付 した前記抗原ま たは抗体に特異的な抗体ま たは抗原を使用 し、 これ ら を反応 させる。 次に、 前記蛍光物質の蛍光強度のゆ ら ぎを経時的に
測定 し、 得 られたデータ を蛍光 自 己相関関数で変換する こ と によ り 、 蛍光物質を具備する分子の分子数および大き さ を検 出する。
本発明の態様に従 う 方法では、 測定開始か ら終了する まで を通 して、 試料に存在する何れの物質も B — F分離等の分離 操作を行 う 必要がない。 本例における標識分子の運動状態の 測定は、 試料お よび任意の試薬を反応容器に添加 した時点か ら、 経時的に該容器中で反応が進行する過程において継続 し て追跡する こ と に よ り 行われる。 従っ て、 抗原抗体反応によ る標識分子の運動状態の変化を経時的に測定する こ と が可能 であ る。 ま た、 この測定は、 該反応系において進行する抗原 抗体反応に応 じた 自 然状態のま まで高精度に測定する こ と が 可能であ る。
本発明の態様に従 う 方法は、 特異反応その もの以外の工程 即ち、 従来の輸血検査で実施されていたよ う な凝集反応また は洗浄反応、 および遠心反応凝集パタ ーン形成等の工程、 は 不要であ り 、 更に、 検体と試薬の混合直後に リ アルタイ ムに 測定開始でき る。 従って、 従来法に比較 して検査時間は短縮 され、 検査工程は簡便化され、 非特異反応は低減される。 上述の通 り に反応工程を行っ た後、 検出工程は実施例 2 に 従 う 装置に よ り 実施でき る。 得られたデータ の解析方法の例 を以下に説明する。 こ こでは、 蛍光信号は約 1 分間測定する こ と とする。 ま た、 得 られた蛍光信号を逐次記憶部に記憶さ せる と 共に、 蛍光 自 己相関関数 G ( t ) に適用 させる こ と に よ り 解析される よ う にプロ ダラ ミ ング して評価 してよい。
蛍光 自 己相関関数 G ( t ) は、 測定領域内での蛍光分子の 平均数 N、 蛍光標識物質を含む非反応分子 と しての遊離の標 識化基質分子の並進時間 τ m。 n 。 と 、 抗原抗体反応後に標的 分子に結合 した標識化基質分子の並進時間 て p 。 t y と 力ゝ ら、 R i g l e r 等の方法 ( F l u o r e s c e n c e S p e c t r o s c o p y — N e w M e t h o d s a n d a p p l i c a t i o n s , S p r i n g e r B e r l i n , 1 3 - 2 4 , I n J . R . L a d o w i c z ( E d . ) , 1 9 9 2 を参照 されたい) に基づき 、 以下の式 3 に よ っ て計算 した。 こ の文献は参照によ り こ こ に組み込ま れる。
Y
G(t) = 1 +
N + + S2 -
T, mono X mono
+ y
(3)
+ + S2
Τροΐγ y 丄, ροΐγ 数式 3 において、 y は反応成分の割合 て m。 n 。 = W o 2 // 4 D m 。 n 。 、 T p 。 l y = W o 2 / 4 D p 。 l y 、 S = W o / Z o (こ こ で、 W o は焦点付近の微小視野に形成 される略円柱状 の測定領域 (図 3 を参照 さ れたい) ) の体積要素の径であ り 2 Z o はその長 さ を意味する) 、 0 „1。 11 。ぉ ょ び 13 13 。 1 7 は 夫々 非結合成分および結合成分の並進拡散係数である。
本例は、 後述する血型に関する方法のみな らず、 同様の構 成に よ って ウ ィ ルスや細菌等の感染症またはその他抗原抗体
反応を介 した判定検査に応用する こ と も可能であ る等の幅広 い応用が可能である。
更に、 本態様では、 抗原抗体反応に影響を与えない蛋 白質 で修飾する こ と によ り 分子量で変化を付け る方法も実施する こ と も可能であ る。 この場合、 どの分子量の抗体試薬の移動 速度に変化が生 じたかが検出の指標であ り 、 用いる蛍光物質 は 1 種類で多項 目 の判定が可能と なる。
本例に使用する こ と が可能な反応容器は、 上述で示 したス ライ ドグラ ス に点着する タ イ プ (図 1 2 Aおよび B ) 、 マイ ク ロ ウ エルを多数設けたマイ ク ロ プレー ト (図 1 1 ) または 適 当 な数の ウ エ ノレ を具備する プ レ ー ト (図 1 3 Aカゝ ら 1 3 D ) を使用する こ と が可能である。 その場合、 必要な反応容 量は微量で十分である ため、 3 8 4 ゥ エル等の超マイ ク ロ ウ エルプレー ト タ イ プも適用可能で輸血検査を極めて高速のハ イ ス ループッ トイ匕する こ と が出来る。
以下の例は、 図 5 に示 した F C S装置を用いて F C S 測定 を実行 した。 即ち、 その試料液滴を試料用ス ライ ドに添加 し た状態で市販の F C S 装置 ( C o n f o C o r , C a r 1 Z i s s J e n a G m b H ) の試料台に載せ、 倍率 4 0倍の 対物 レ ンズ ( C _ A p o c h r o m a t , N A = 1 . 2 ) に よ り 、 レンズ内を通ってき た C W A r + レーザー ビームで 励起 し、 得 られる放出光はァバ ラ ンシュ ■ ダイ オー ド ( A P D ) であ る S P C M— 2 0 0 — P Q ( E G & G社) でシング ル ' フォ ト ン ' カ ウ ンテ ィ ング ' モー ドに よ り その蛍光信号 と して測定 した。 測定 した蛍光信号は、 デジタル · コ リ レー
ターであ る A L V 5 0 0 0 Z E ( A L V G m b H ) で解析 する こ と に よ り 評価 した。 焦点領域の試料体積は、 ロ ーダ ミ ン 6 Gの拡散係数値か ら決定 した。 ま た、 体積要素は、 フル ォレ ツセイ ン と F 1 u — d U T P の溶液の濃度を用いて定め た。
こ こ では、 検出領域 ( 1 0 — 1 5 L ) にお け る 分子の平均 数と 分子の並進拡散係数が求め られ.る。 以下に示す態様は、 特異的反応前と反応後における こ う した情報の時間的な変化 を検出、 変換 して図 9 に示すよ う な拡散速度から分子の大き さ を検出する こ と を利用 した血型の同定方法である。
( 1 ) 赤血球血液型ォモテ試験
図 1 3 B のよ う な複数の凹みを有 したス ラ イ ドガラ ス状の 測定用容器の コ ン ト ロ ールゥ エルに、 F I T C等の蛍光で標 識 した抗体試薬を分注 し、 直ちに測定する。 測定容器の体積 は、 例えば 1 0 μ 1 前後であれば F C S の測定領域と して十 分であ る。 また、 コ ン ト ロ ーノレウ エノレと 測定用 ウ エノレを各々 別にする 必要性は必ず しも ない。 試薬混合の前後を夫々 コ ン ト ロ ール と 被検試料群 と して測定する方式でも よい。
ま た、 使用する試料中の赤血球濃度は、 通常の血液型ォモ テ試験に使用 される ものに比較 して、 低い濃度でよい。 例え ば、 1 0 3〜 1 0 4 cells/ / L でよ く 、 好ま し く は 2 〜 5 X 1 0 3 cells/μ L でよい。 従って、 本態様を血型試験に使用すれ ば、 従来法 と 比較 して よ り 少ない採血量で試験を行 う こ と が 可能であ る。 即ち、 全血の希釈率は 0 . 1 %前後でよい。
反応系 と しては、 図 1 3 Cの よ う に、 F I T C で標識 した
抗 A抗体および抗 B抗体を夫々別々 の ゥ エルで試験する反応 系以外に、 図 1 3 Aの よ う な 1 つの ウ エノレ内でに、 抗 A抗体 を F I T C で、 抗 B抗体を C y 3 で標識 して同 じ ゥ エルにて 混合する 系 も可能である。 試験の判定は、 標識 した蛍光物質 の移動度に変化があったものを、 抗体 と 血球 と が反応 した反 応陽性 ( + ) と し、 移動度に変化のないも のを、 抗体と 血球 と が反応 しなかった反応陰性 (一) と する。
本反応方法に よれば、 抗原と抗体と を混合する ヮ ンステ ツ プのみで測定する こ と が可能である。 従って、 凝集パタ ー ン 形成に必要なィ ンキ ュ ベーシ ョ ン時間や遠心操作は不要 と な る。 また、 測定領域が極微小であるために、 反応に要する検 体血球や抗体試薬も微量でよ く 、 従つて、 反応コ ス ト が低減 でき る。 ま た、 固相面や凝集パター ンを介 さずに、 純粋に、 抗原抗体 1 分子間の反応の有無を蛍光分子の移動度の変化で 直接捕 ら える ため、 非特異性の反応が生 じる機会が少な く 、 測定数値と して定量的判定が可能であ る。 こ の こ と は、 現在 の輸血検査で問題と なっている亜型の判定上か ら も重要な特 徴である。
更に、 図 1 3 Aで示 した よ う に 1 検体の判定につき 、 同一 容器で複数項目 測定でき、 測定時間の短縮や検体および試薬
量等の削減も可能と なる。
ま た、 反応系の試料を超音波等の適切な手段に よ り 攪拌 し て も よい。
( 2 ) 赤血球血液型ゥ ラ試験
A型お よび B型の標準血球と被検血清と を混合 した後で、 これを、 蛍光標識した標準抗体を予め分注 しておい†こ ゥ 二 /レ に添加 し、 混合 して直ちに測定する。 この場合の判定原理は 被検血清中の抗血液型抗体 と標準抗体と の競合反応に よ る も のである。
ォモテ試験と 同様に異な る蛍光物質を標識に用いる こ と に よ り 、 A型および B型の両方の標準血球、 並びに抗 Aお よび 抗 B 両方の蛍光標識標準抗体を 1 検体について、 同一ウ エノレ 内にて反応する こ と が可能である。
試験の判定は、 標識 した蛍光物質の移動度に変化があった も のを、 抗体と 血球と が反応 した反応陽性 ( + ) と し、 移動 度に変化のないものを、 抗体と 血球と が反応 しなかつた反応 陰性 (一) とする。
表 2
( 3 ) 不規則性抗体のス ク リ ーニ ン グ試験
赤血球に対する不規則性抗体のス ク リ一ユング試験を行 う ためには、 反応 ゥエルに二次抗体であ る抗ヒ ト グロ ブ リ ン血
清を蛍光標識 した も のを予め分注 してお く 。 次に、 標準血球 即ち、 臨床的に重要な抗体を検出する のに十分な抗原構成と した、 通常 2 〜 3 種類の O型正常ヒ ト 血球 と 被検血清 と を混 合する。 混合後、 直ち に これを前記反応ゥ エルに分注 し、 検 出を行 う 。
被検血清中に遊離 している不規則性抗体以外のグロ ブ リ ン に対 して も蛍光標識血清は結合 し、 それに よ り 蛍光物質の移 動度に変化が現れる。 しカゝ しなが ら、 標準血球に結合 した不 規則抗体が存在する場合には、 蛍光物質の移動速度の変化は 前者の場合よ り も顕著に大き く 変化する。 不規則性抗体の存 在の判定は容易であ る。
( 4 ) 応用
上述 した態様は、 ス ク リ ーニング後の抗体同定にも応用す る こ と が可能である。 この場合、 臨床的に重要な抗原構成を パネルと して配分 した抗体同定用のパネル血球を別ゥ エルで 反応を用い、 その反応パターンを解析する こ と に よ り 抗体を 同定する。
ま た、 標準血球を用いた反応を用いる場合、 所望に応 じて 標準血球を反応容器に固相化する こ と 、 あ る いは、 仕切 り を 設けて微小視野内に血球が侵入 しないよ う な反応容器を使用 して も よい。 これに よ り 、 ノ ッ ク グラ ウ ン ドを最小 とする こ と が可能である。
こ こで引用 される文献は、 引用 される こ と に よ り その全体 に亘つて、 本命最初に組み込まれる。
更なる利益および変更が当業者によ って容易に想到 される
であろ う 。 従っ て、 そのよ り 広い範囲の側面における本発明 は、 こ こ に示 し且つ記載さ れた詳細お よび代表的な態様に よ り 限定される も のではない。 従って、 添付された請求の範囲 およびそれ らの等価物によ り 限定される よ う な全般的な発明 の思想の精神お よび範囲か ら逸脱 しなせずに、 種々 の変更が な される こ と が可能である。
産業上の利用可能性
本発明は、 遺伝子治療および診断等の臨床的における疾患 関連遺伝子の解析、 輸血および臓器移植における多型の解析 において有用である。 また同様に、 基礎的な多型および疾患 関連遺伝子の研究において も有用であ る。