明 紬 新規 FK 1 - 0 0 7 6物質およびその製造法 発明の属する技術分野
本発明は、 ァゾール系抗真菌剤の活性増強作用を有する新規 FK 1 - 0 0 7 6物質およびその製造法に関する。 従来の技術
真菌感染症、 特に深在性真菌症などの疾患の治療に用いられるアブール系化 合物、 例えばミコナゾ一ル ( 1 — [2, 4 - d i c h l o r o b e n z y l o x y ) - 2 - ( 2 , 4 - d i c h l o r o p h e n y l e t h y l ] i m i d a z o 1 e ; シグマ社製) 、 フルコナゾ一ル (2, 4— d i f l u o r o—ひ, a — b i s ( 1 H, 1, 2, 4— t r i a z o l — 1 — y l m e t h y l ) b e n z y 1 a l c o h o l ; アイシ一ェヌファーマス一ティカルズ社製) およびィ トラコナゾ一ル ( (土) 一 1 — S e c— b u t y l — 4一 [P— [4— [P - [ [2 R, 4 S) - 2 - (2, 4 - d i c h l o r o p h e n y l ) - 2 - ( 1 H 一 1 , 2, 4— t r i a z o l - 1 一 y l me t h y l ) - 1 , 3— d i o x o 1 a n - 4 -y 1 ] m e t h o x y] p h e n y l」 — 1 — p i p e r a z i n y l ] p h e n y l ] -Δ2 - 1 , 2 , 4— t r i a z o l i n— 5— o n e ; 協和醱酵工業社製) は、 同疾患に用いられるポリェン系のアムホテリ シン B等と 比較して安全性が高く、 最も高頻度に使用されている薬剤である (An a i s s i e E. J. ら、 クリニカル インフエクシァス ディジーズ、 2 3巻、 9 6 4— 9 7 2、 1 9 6 6年) ことが報告されている。 しかしながら最近、 これらァ ゾール系抗菌剤の長期間または反復投与による耐性菌の出現が問題となっている ため、 安全性が高く、 耐性菌の出現頻度の低い薬剤の開発が社会的急務とされて いる。
発明が解決しょうとする課題
H I V感染や血液疾患など、 免疫力の低下を伴う疾患では易感染状態が惹起 され、 日和見感染症として真菌感染症の発生頻度が増加する。 またこれら免疫力 低下を伴う疾患の多くは重篤で治療期間も長期にわたる。 このため、 真菌感染症 の化学療法も長期間におよぶ場合が多く、 現在最も高頻度に使用されているァゾ ール系抗真菌剤は薬剤耐性の誘導が極めて起こりやすい状態と考えられる。
ァゾール系抗真菌剤に対する耐性機構としては、 Ca n d i d a a l b i c a n sにおいて標的酵素である P - 4 50 1 -ひ—デメチラ一ゼの過剰発 現ゃァミノ酸変異による薬剤との親和性の低下 (Va n d e n Bo s s c h e H. ら、 アンチミクロビアル ·ェイジェント アンド ケモセラピー、 36巻、 2602— 26 1 0頁、 1 992年; S a ng l a r d D. ら、 アンチミ クロ ビアル - エイジェン ト アン ド ケモセラピ一、 42巻、 24 1— 253頁、 1 998年) 、 MSF (Ma j o r Fa c i l i a t o r Su e r f a m i l y) や ABC (ATP B i n d i ng C a s s e t t e ) などの多剤排出 トランスポー夕による細胞内薬剤濃度の低下 (F i ng M. F. ら、 Mo 1 Gen Ge n e t、 227巻、 3 1 8 - 329頁、 1 995年; Sang l a r d D. ら、 ミクロピオ口ジー、 1 4巻、 405— 4 1 6、 1 997年) 力、 Sa c c ha r omy c e s c e r e v i s i a eでは、 MDR (Ma i t i p i e Dr ug Re s i s an ) 遺伝子である PDR 1 6、 PDR 1 7 により脂質代謝を変化させ、 ァゾール系化合物に対する耐性を獲得していること が報告されている (H. Ba r t va n d e n Ha z e l ら、 ジャーナル 'ォブ 'バイオロジカル · ケミストリ一、 274巻、 1 934— 1 94 し 1 9 99年) 。
これらのことから、 ァゾ一ル系抗真菌剤の活性を上昇させる薬剤は、 薬剤の 投与量を減量し、 投与期間を短縮させることにより、 耐性菌出現の頻度を低減さ せることが期待される。 また同時に、 骨格の異なる 2つの薬剤を併用することに より、 ァゾール系抗真菌剤に対する耐性を克服することが期待される。
かかる実情において、 ァゾール系抗真菌剤の活性増強作用を有する薬剤を提 供することは、 深在性真菌症をはじめとする多くの真菌感染症の治療上有用であ る。 課題を解決するための手段
本発明者らは、 微生物の生産する代謝産物について種々研究を続けた結果、 新たに土壌から分離した FK 1 - 0 0 7 6菌株の培養物中に、 ァブール系抗真菌 剤の活性増強作用を有する物質が産生されることを見いだした。 次いで、 該培養 物から活性物質を分離、 精製した結果、 後記の式 [ I ] で示される化学構造を有 する物質を見出し、 これは従来まったく知られていないことから、 本物質を FK 1 - 0 0 7 6物質と称することにした。
本発明は、 かかる知見にもとずいて完成されたものであって、 下記式 [ I ]
で表される FK 1 - 0 0 7 6物質に関する。
本発明は更に、 次の理化学的性質を有する FK 1 - 0 0 7 6物質に関する。
( 1 ) 性状:黄色油状
(2) 分子量: 4 1 8 (高速原子衝撃質量分析による)
(3) 分子式: C21H22〇9
( 4 ) 比旋光度 : [ひ] 。 25 =+ 5. 2° ( c二 0. 2 3、 メタノール) (5) 紫外部吸収スぺク トル: メタノール中で測定した紫外部吸収スぺク ト ルは第 1図に示すとおりであり、 2 0 8 nm (£ = 3 4 9 0 0) 、 24 6 nm (£= 1 1 0 0 0 ) , 3 1 4 nm (£ = 3 9 5 0) 付近に特徴的な吸収極大を示
す
( 6) 赤外部吸収スぺク トル:臭化カ リウム錠剤法で測定した赤外部吸収ス ベク トルは第 2図に示すとおりであり、 34 1 0、 1 7 3 5、 1 7 24、 1 6 8 3、 1 6 5 8、 1 6 0 2、 1 5 7 9 c m—1に特徴的な吸収帯を有する
( 7) プ αトン核磁気共鳴スぺク トル: Va r i a n J a p a n社製、 核 磁気共鳴スぺク トロメ一夕を用いて測定したプロ トン核磁気共鳴スぺク トル (重 クロ口ホルム中で測定) は、 第 3図に示すとおり
(8) 13C核磁気共鳴スぺク トル: Va r i a n J a p a n社製、 核磁気 共鳴スぺク トロメータを用いて測定した磁気共鳴スぺク トル (重クロ口ホルム中 で測定) は、 第 4図に示すとおり
(9) 溶媒に対する溶解性: メタノール、 クロ口ホルム、 酢酸ェチルに可溶 、 水、 へキサンに難溶
(10) 呈色反応: リ ンモリブデン酸に陽性
(11) 酸性、 中性、 塩基性の区別 : 中性物質
本発明は更にまた、 タラロマイセス フラバス (Ta 1 a r omy c e s f 1 a v u s ) に属し、 FK I - 0 0 7 6物質を生産する能力を有する微生物を 培地で培養し、 培養液中に FK 1 - 0 0 7 6物質を蓄積せしめ、 該培養物から F K I - 0 0 7 6物質を採取する、 F K I - 0 0 7 6物質の製造法に関する。
本発明はまた、 夕ラロマイセス フラバスに属し、 FK 1— 0 0 7 6物質を 生産する能力を有する微生物が、 タラロマイセス フラバス FK I— 0 0 7 6 (Ta l a r omy c e s f 1 a v u s F K I— 0 0 7 6、 F E R M B P 一 70 3 7 ) である FK I— 0 0 7 6物質の製造法に関する。 本発明は更にまた 、 夕ラロマイセス フラバスに属し、 FK I— 0 0 7 6物質を生産する能力を有 する微生物が、 夕ラロマイセス フラバス FK I— 0 0 7 6 (T a 1 a r om y c e s f 1 a v u s FK I - 0 0 7 6, FERM B P— 7 0 3 7 ) であ る微生物に関する。
本発明の FK 1 - 0 0 7 6物質を生産するために使用される菌株としては、 一例として、 本発明者らによって、 土壌より新たに分離された夕ラロマイセス
フラバス FK I — 0 0 7 6株が好ましい菌株として挙げられる。
本菌株の菌学的性状を示すと以下の通りである。
1. 形態的特徴
ッァペック ·イースト ·エキス寒天培地、 ォ一トミ一ル寒天培地、 麦芽汁寒 天培地、 コーン ' ミール寒天培地などで生育は良好で、 黄色〜橙色の多数の柔ら かい菌糸に包まれた子囊果が観察された。 コーン . ミール寒天培地上では多数の ベニシリが観察された。 一方、 2 5 %グリセリ ン '硝酸塩寒天培地においては生 育は抑制的で子囊果は観察されず、 ベニシリのみ観察された。 7日目において、 ッァぺック · イースト ·エキス寒天培地 3 7°Cでは 2 5°Cより速く生育する力、 子嚢果の成熟は観察されなかった。
子囊果は球形で、 直径 3 0 0〜 8 0 0 m、 1 0日以内に成熟する。 子囊果 原基は棍棒状の造囊器に造精器がコイル状に巻き付き発達する。 子嚢は球形〜亜 球形 ( 8. 8〜 1 1. 0 x 7. 5〜 1 0. 0 m) で成熟とともに消失しはじめ る。 子囊胞子は楕円形 ( 3. 5〜4. 5 x 2. 5〜3. 5 im) で全面に刺状突 起が観察された。
ベニシリの分生子柄は基底菌糸および気菌糸から生じ、 基底菌糸から生じる 分生子柄は長さ 1 8 0〜2 5 0 zmと長く、 一方、 気菌糸から生じる分生子柄の 長さは 5 0〜 2 0 umと短い。 ぺニシリは単輪生体から複輪生体であった。 メ トレは 1 2. 5〜 1 7. 5 2. 5〜3. 0〃 mで 2〜 4本群生している。 ペン 先型のフィアライ ドは 1 1. 0〜 1 5. 0 X 1. 8〜3. 0 mでメ トレにそれ ぞれ 3〜 6本輪生していた。 分生子は楕円形で 2. 0〜3. 0 X 1. 5〜2. 5 czm、 表面は滑面であった。
2. 各種寒天培地上での培養性状
各種寒天培地上で 2 5°C、 1 4 日間培養した場合の肉眼的観察結果は、 下記 第 1表に示すとおりである。
第 1表
培 地 培地上の生育状態 コロニー表面の コロニー裏面の (コロニーの直径) 色調 色調 ッァペック ·ィ一ストエキス寒天培地
( 6 2〜6 4mm) 黄色〜橙黄色 黄色〜黄土色 羊毛状〜ピロ一ド状、
しわ伏、 周辺平滑
オートミール寒天培地
( 7 5〜 7 7 mm) 黄色〜澄色 黄色 羊毛伏、 周辺平滑
麦芽汁寒天培地
( 3 0 - 3 2 mm) レモン色 黄色 羊毛状〜ビロード状、
周辺やや不規則、 乱糸状
コーン . ミール寒天培地
( 6 5〜6 7mm) 白色〜黄色 S色〜淡黄色 羊毛状、 周辺平滑
2 5 %グリセリ ン ,硝酸塩寒天培地
( 4〜 1 0 mm) 灰緑色 喑灰色
粉状、 周辺不規則 . 生理的性状
1 ) 最適生育条件
本菌株の最適生育条件は pH 4〜7、 温度 1 9. 5〜3 1. 5°Cである,
2) 生育範囲
本菌株の生育範囲は、 pH 3〜 7、 温度 9. 0〜3 7. 5°Cである。
3) 好気、 嫌気性の区別
好気性
以上のように、 本菌株 FK 1 - 0 0 7 6株の形態的特徴、 培養性状および生 理的性状に基づき、 既知菌種との比較を試みた結果、 本菌株はタラロマイセス フラバス (Ta l a r omy c e s f l a v u s) に属するー菌株と同定し、 タラロマイセス フラバス F K I— 0 0 7 6と命名した。 なお、 本菌株はタラ ロマイセス フラバス FK I— 0 0 7 6 (Ta l a r omy c e s f 1 a v u s FK I— 0 0 7 6 ) として、 日本国茨城県つくば市東 1丁目 1番 3号に所 在する通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に平成 1 2年 2月 2 1 曰に 寄託され、 受託番号は FERM BP— 7 0 3 7である。
本発明で使用される FK 1 - 0 0 7 6物質生産菌としては、 前述の夕ラロマ イセス フラバス FK I— 0 0 7 6菌株が挙げられるが、 菌の一般的性状とし て菌学上の性状はきわめて変異し易く、 一定したものではなく、 自然的にあるい は通常行われる紫外線照射、 X線照射または変異誘導体剤、 例えば N—メチル- N' 一二トロ一 N—二トロソグァ二ジン、 2—ァミノプリンなどを用いる人工的 変異手段により変異することは周知の事実であり、 このような人工的変異株は勿 論、 細胞融合株、 遺伝子操作株も含め、 タラロマイセス フラバスに属し、 前記 式 [ I ] で表される FK 1 - 0 0 7 6物質を生産する菌株は、 すべて本発明に使 用することができる。
本発明の FK 1 - 0 0 7 6物質を製造するに当たっては、 先ず夕ラロマイセ ス フラバスに属する FK 1 - 0 0 7 6物質生産菌を適当な培地に培養すること により行われる。 上記 FK 1 - 0 0 7 6物質生産に適した栄養源としては、 微生 物が同化し得る炭素源、 消化し得る窒素源、 さらには必要に応じて無機塩、 ビ夕 ミン等を含有させた栄養培地が用いられる。
上記の同化し得る炭素源としては、 グルコース、 フラク トース、 マルト一ス 、 ラク トース、 ガラク ト一ス、 デキストリ ン、 澱粉等の糖類、 大豆油等の植物性 油脂類が単独または組み合わせて用いられる。
消化し得る窒素源としては、 ペプトン、 酵母エキス、 肉エキス、 大豆粉、 綿 実粉、 コーン ·スティ一プ · リカー、 麦芽エキス、 カゼィン、 アミノ酸、 尿素、
アンモニゥム塩類、 硝酸塩類等が単独または組み合わせて用いられる。 その他必 要に応じてリ ン酸塩、 マグネシウム塩、 カルシウム塩、 ナトリウム塩、 カリウム 塩塩などの塩類、 鉄塩、 マンガン塩、 銅塩、 コバルト塩、 亜鉛塩等の重金属塩類 ゃビ夕ミ ン類、 その他本 F K 1 - 0 0 7 6物質の生産に好適なものが適宜添加さ れる。
培養するの当たり、 発泡の激しいときには、 必要に応じて液体パラフィン、 動物油、 植物油、 シリコン等、 界面活性剤等の消泡剤を添加してもよい。 上記の 培養は、 上記栄養源を含有すれば、 培地は液体でも固体でもよいが、 通常は液体 培地を用い、 培養するのがよい。 少量生産の場合にはフラスコを用いる培養が好 適である。 目的物質を大量に工業生産するには、 他の醱酵生産物と同様に、 通気 攪拌培養するのが好ましい。
培養を大きなタンクで行う場合、 生産工程において、 菌の生育遅延を防止す るため、 はじめに比較的少量の培地に生産菌を接種培養した後、 次に培養物を大 きなタンクに移して、 そこで生産培養するのが好ましい。 この場合、 前培養に使 用する培地および生産培養に使用する培地の組成は、 両者ともに同一であっても よいし、 必要があれば両者を変えてもよい。
培養を通気攪拌条件で行う場合、 例えばプロペラやその他機械による攪拌、 ファメーターの回転または振とう、 ポンプ処理、 空気の吹き込み等既知の方法が 適宜使用される。 通気用の空気は滅菌したものを使用する。
培養温度は、 本 F K I — 0 0 7 6物質生産菌が本 F K 1 - 0 0 7 6物質を生 産する範囲内で適宜変更し得るが、 通常は 2 0〜3 0 °C、 好ましくは 2 7 °C前後 で培養するのがよい。 培養 p Hは、 通常は 5〜8、 好ましくは 7前後で培養する のがよい。 培養時間は培養条件によっても異なるが、 通常は 4〜7日程度である。
このようにして得られた本 F K 1 - 0 0 7 6物質は、 培養菌体および培養濾 液に存在する。 培養物から目的とする F K 1 - 0 0 7 6物質を採取するには、 全 培養をアセトンなどの水混和性有機溶媒で抽出し、 抽出液を減圧下有機溶媒を留 去後、 続いて残渣を酢酸ェチル等の水不混和性有機溶媒で抽出することによって 行われる。
上記の抽出法に加え、 脂溶性物質の採取に用いられる公知の方法、 例えば吸 着クロマトグラフィー、 ゲル濾過クロマトグラフィー、 薄層クロマトグラフィー 、 遠心向流分配クロマトグラフィー、 高速液体クロマトグラフィー等を適宜組み 合わせ、 あるいは繰り返すことにより、 FK I— 0 0 7 6物質を各成分に分離、 精製することができる。 次に、 本発明の FK 1 - 0 0 7 6物質の理化学的性状について述べる。
( 1 ) 性状:黄色油状
(2) 分子量: 4 1 8 (高速原子衝撃質量分析による)
(3) 分子式: C21H2203
(4) 比旋光度: [ひ] 。 25 = + 5. 2° (c = 0. 2 3、 メタノール)
(5) 紫外部吸収スぺク トル: メタノール中で測定した紫外部吸収スぺク トル は第 1図に示すとおりであり、 20 8 nm (£ = 3 4 9 0 0) 、 24 6 n m ( ε = 1 1 0 0 0) 、 3 1 4 nm (ε = 3 9 5 0 ) 付近に特徴的な吸収極大を示す
( 6) 赤外部吸収スぺク トル:臭化カリウム錠剤法で測定した赤外部吸収スぺ ク トルは第 2図に示す通りであり、 3 4 1 0、 1 73 5、 1 724、 1 6 8 3、 1 6 5 8、 1 6 0 2、 1 5 7 9 c m 1に特徴的な吸収帯を有する
(7) プロ トン核磁気共鳴スぺク トル: Va r i a n J a p a n社製、 核磁 気共鳴スぺク トロメータを用いて測定したプロ トン核磁気共鳴スぺク トル (重ク ロロホルム中で測定) は、 第 3図に示すとおり
(8) I3C核磁気共鳴スぺク トル: Va r i a n J a p a n社製、 核磁気共 鳴スぺク トロメータを用いて測定した磁気共鳴スぺク トル (重クロ口ホルム中で 測定) は、 第 4図に示すとおり
( 9) 溶媒に対する溶解性: メタノール、 クロ口ホルム、 酢酸ェチルに可溶、 水、 へキサンに難溶
(10) 呈色反応: リンモリブデン酸に陽性
(11) 酸性、 中性、 塩基性の区別 : 中性物質
以上のように、 FK I 0 0 7 6物質の各種理化学的性状やスぺク トルデ一
夕を詳細に検討した結果、 本 FK I— 0076物質は下記式 [ I ] で表される化 学構造であることが決定された。
上記したように、 本 FK I— 0076物質の各種理化学的性状について詳述 したが、 このような性質に一致する化合物はこれまでに全く報告されておらず、 それ故、 本発明による FK 1 - 0076物質は新規物質であると決定した。
次に本 FK 1 - 0076物質の生物学的性質について詳細に述べる。
(1) ァゾール系抗真菌剤の活性増強作用
ァゾール系抗真菌剤の活性増強作用は以下のようにして測定した。
試験菌として C a n d i d a a l b i c a n s KF 1および S a c c h a r omy c e s c e r e v i s i a e K F 26 ( AT C C 9763 ) を用 レ、て、 Ca n d i d a a l b i c an s K F 1は" W a k s m a n b r o t h (G l u c o s e 2. 0%、 P e p t on e 0. 5%、 Dr y y e a s t 0. 3%、 Me a t e x t r a c t 0. 5 N a C 1 0. 5%、 C a C 03 0. 3%、 p H 7. 0) 、 S a c c h a r omy c e s c e r e v i s i a e KF 26は Po t a t o b r o t h (G l u c o s e 1. 0%、 P ep t on e 0. 5%、 Po t a t o e x t r a c t 1 00m l ) で 2 7°C、 40時間種培養後、 G Y寒天培地 (G 1 u c o s e 1. 0 Ye a s t e x t r a c t 0. 5%、 Aga r 0. 8%、 pH6. 0) に 0. 3% 植菌した。 アブ一ル系抗真菌剤としてミコナブール (シグマ社製) を使用し、 G Y寒天培地への添加濃度は両試験菌の生育に影響を与えない 0. 1 u gXm 1 (
終濃度) とした。 活性はべ一パーディスク法 (厚手 8 mm: ADVANTE C社 製) により評価し、 両試験菌共に 27°C、 24時間培養後に阻止円を測定した。
その結果、 本 FK I— 0076物質はミコナゾ一ル無添加では、 両試験菌に 対して 1 00 gで阻止円を示さなかった。 一方、 ミコナゾ一ルを添加した場合 には 1 00 /gで Sa c c ha r omy c e s c e r e v i s i a e K F 2 6に対して 25 mm、 C a n d i d a a l b i c an s KF 1に対して 1 5 mmの阻止円を示した。
(2) 各種試験菌に対する抗菌作用
各試験菌に対する最小生育阻止濃度 (MI C) はマイクロブロス希釈法 (M . Su z ann eら、 ジャーナル 'ォブ ·バイオロジカル 'ケミストリー、 27 2巻、 32709 - 327 1 4頁、 1 997年) により測定した。
即ち、 試験菌を 2 X 1 04 — 1 X 1 05 個 Zm 1の濃度に調製し、 0— 1 2 5 pi g/m 1の濃度の FK 1 - 0076物質と共に培養した。 各試験菌の増殖は OD 600 nmの測定値を指標とした。 また、 培養温度は X an t h omon a s c amp e s t r i s p v . o r yz a e、 Py r i c u l a r i a o r yz a e、 A s p e r g i 1 1 υ s n i ge r、 Mu c o r r a c emo s u s、 Cand i d a a l b i c a n s、 Sa c c ha r omy c e s c e r e v i s i a eについては 27°Cとし、 他の試験菌は 37°Cとした。 培養時 間は Py r i c u l a r i a o r y z a eおよび As p e r g i l l u s n i ge rは 48時間とし、 他の試験菌については 24時間とした。 各試験菌に対 する最小生育阻止濃度 (MI C) は、 下記第 2表に示す通りである。
第 2表 試 験 菌 M I C ( g/m 1 )
Bacillus subtilis KB27 (ATCC6633) > 125
Staphylococcus aureus KB210 (ATCC6538P) > 125
Micrococcus luteus KB40 (ATCC9431) > 125
Mycobacterium smegmatis KB42 (ATCC607) > 125
Escherichia coli KB176 (IFP12734) > 125
Pseudomonas aeruginosa KB105 (IF03080) > 125
Xanthoraonas campestris pv. oryzae B88 > 125
Acholeplasma laidlawii KB174 125
Pyricularia oryzae KF180 125
Aspergillus niger KF103 (ATCC6275) > 125
Mucor racemosus KF223 (IF04581) > 125
Candida albicans KF1 > 125
Saccharomyces cerevisiae KF26 (ATCC9763) > 125 以上のように、 本発明による新規物質は、 ァブール系抗真菌剤の活性増強作 用を有することから、 深在性真菌症をはじめとする多くの真菌感染症に対して、 低濃度、 短期間で作用し、 耐性菌出現頻度の低減に有用である。 また耐性克服に 対する有用性が期待される。 図面の簡単な説明
第 1図は本発明の FK 1 - 0 0 7 6物質の紫外部吸収スぺク トル (メタノ一 ル中) を示したものである。
第 2図は本発明の FK 1 - 0 0 7 6物質の赤外部吸収スぺク トル (KB r法) を示したものである。
第 3図は本発明の FK 1 - 0 0 7 6物質のプロ トン核磁気共鳴スぺク トル ( 重クロ口ホルム) を示したものである。
第 4図は本発明の FK 1 - 0 0 7 6物質の13 C核磁気共鳴スぺク トル (重ク ロロホルム中) を示したものである。 発明の実施の態様
次に、 実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、 本発明はこれのみに限
定されるものではない。
実施例
5 0 Om 1容三角フラスコ 2本にグルコース 2. 0 %、 イーストエキストラ ク ト 0. 2 %、 ポリぺプトン 5 %、 硫酸マグネシゥム 7水和物 0. 0 5 %、 リン酸 2水素カリウム 0. 1 %、 寒天 0. 1 % (ρΗ 6. 0に調整) を各 1 0 0 m l仕込み、 綿栓後、 蒸気滅菌し、 寒天培地上に生育させたタラロマイセス フ ラバス F K I— 0 0 7 6菌株 (T a 1 a r om y c e s f 1 a v u s F K 1 - 0 0 7 6 (F ERM BP— 7 0 3 7) を白金耳にて無菌的に接種し、 2 7 でで 72時間振とう培養した。
そして、 それを種培養液として、 ポテトデキストロ一スブロス 2. 4 %、 マ ルトースエキス トラク ト 0. 5 %、 Mg3 (P04 ) 2 · 8 H2 0 0. 5 %、 寒天 0. l %を含む培地 (pH 6. 0に調整) を 3 0 L容ジャーフアーメ ン夕一 (三ッヮ社製) に仕込み、 蒸気滅菌後、 種培養した培養液 2 0 0 m lを無菌的に 移植し、 2 7 °Cで 5日間培養した。 得られた全培養液に 1 8 Lのアセトンを加え 、 よく攪拌した後、 減圧濃縮し、 これを再び酢酸ェチルで抽出後、 減圧濃縮して 粗製物 1 2 gを得た。
次に、 この粗製物 2. 5 gを中圧液体クロマ トグラフィー (ODS系樹脂、 センシユウ科学社製) のカラムにチャージし、 ァセトニトリルと水で溶出する力 ラムクロマトグラフィーを行った。 装置は、 L I QU I D C h r oma t o g r a p h 6 3 0 0 (センシユウ科学社製) を用い、 流速 1 0 m 1 /分とし、 溶媒 は 3 0 %ァセトニトリル水で溶出を開始し、 1 8 0分後に 8 0 %ァセトニトリル 水になるよう直線的に濃度を変化させ溶出した。 また、 各フラクショ ンは 1 5m 1づっ分画した。 活性成分を含んでいたフラクシヨン 8 5番から 1 0 0番を集め 、 ァセトニトリルを除いた後、 水層画分を酢酸ェチルで抽出し、 それを減圧乾固 し、 粗製物 1. 3 6 gを得た。
次にこの 1. 3 6 gの粗製物を高速液体クロマトグラフィ一により分離精製 した。 装置は PU— 9 8 0 (日本分光社製) を用い、 カラムは YMS— P a c k ODS - AM (ODS系樹脂、 2 0 X 2 5 0 mm. 山村化学研究所製) を用い、
溶媒系は 4 5 %ァセトニトリル水を用い、 検出は UV 2 2 0 nm、 流速 6 m 1 Z 分で行った。 その結果、 FK I - 0 0 7 6物質 1 Omgを単離した。 発明の効果
以上のことから、 本発明による新規 FK 1 - 0 0 7 6物質は、 ァゾール系抗 真菌剤の活性増強作用を有することから、 深在性真菌症をはじめとする多くの真 菌感染症に対して、 低濃度、 短期間で作用し、 耐性菌出現頻度の低減に有用であ る。 また耐性克服に対する有用性が期待される。