明 細 書
L—体及び D—体アミノ酸を輸送するナ ト リ ウム非依存性 小型中性アミ ノ酸トランスポーター及びその遺伝子 技術分野
本発明は、 小型中性アミ ノ酸及びその類似物質のナ 卜 リ ゥム非依存的な輸送に 関与する遺伝子、 その遺伝子がコー ドするタンパク質、 及び当該タンパク質に対 する抗体に関する。 また、 本発明は、 当該タンパク質を用いた被検物質のスクリ 一ニング方法に関する。 背景技術
細胞は、 栄養としてアミ ノ酸を常時取り込むことを必要するが、 この機能は細 胞膜に存在する膜夕ンパク質であるアミ ノ酸トランスポー夕一によって担われて いる。 また、 アミノ酸 トランスポー夕一は、 多細胞生物においては各組織の中で 特定の部位に配置され、 各組織の特異機能の発現に重要な役割を果たしている。 輸送系 a s c は、 ァラニン、 セリ ン、 システィ ンを中心とする小型の中性アミ ノ酸を輸送するアミ ノ酸輸送系であり、 もともとは赤血球膜において見出されて. 種々の文献に記載された。 その後、 培養細胞においてもその存在が確認されてい る (Chr is tensen, Physiol. Rev.,第 7 0巻、 4 3頁、 1 9 9 0年) 。 輸送系 a s c は、 ナ ト リ ウム非依存的な、 すなわちその機能にナ トリ ウムイオンを必要とし ない トランスポ一ターである。 その輸送基質選択性や輸送特性は、 細胞や動物種 により多少の差異があることが知られていた。
輸送系 a s c は、 ァラニン、 セリ ン、 システィンなどの輸送基質に対して高親 和性を示すが、 これと類似の輸送系として、 同様にァラニン、 セリ ン、 システィ ンなどの小型中性アミ ノ酸を輸送基質とするが、 輸送基質に対し低親和性の示す 輸送系 Cがある (Young et al., Biochem. ],,第 154巻、 43頁、 1976年 ; Young e t al., Biochem. ;. ,第 162卷、 33頁、 1977年) 。 輸送系 Cは、 輸送系 a s c の亜 系と考えられている。 輸送系 Cを遺伝的に欠損したヒッジが見い出され、 その赤
血球においてはグルタチオン含量が低下していることが示され、 グル夕チオン生 成における細胞膜を介するシスティン取り込みの重要性が立証されている (Youn g et al., Nature,第 254卷、 156頁、 1975年) 。
しかし、 従来の方法では、 アミ ノ酸輸送系 a s c を介するアミ ノ酸及びその類 似物質の輸送の詳細や、 生体内での機能的役割を解析することは困難であり、 ァ ミ ノ酸輸送系 a s c の機能を担う中性アミ ノ酸トランスポー夕一の遺伝子を単離 して詳細な機能解析を可能とすることが望まれていた。
小型中性アミノ酸トランスポー夕一としては、 A S C T 1 および A S C T 2が クロ一ニングされている (Kanai,Curr. Opin. Cell Biol,第 9巻、 565頁、 1997 年) 。 しかし、 これらは、 ナト リウム依存的な トランスポ一夕一であり、 ナ ト リ ゥム非依存的なアミ ノ酸輸送系 a s c とは根本的に異なっている。 また、 グリ シ ン トランスポーターとプロリ ン 卜ランスボーターがクローニングされているが (Amara and Kuhar,Annu.Rev.Neurosci.,第 16卷、 73頁、 1993年) 、 これらはいず れもナ ト リ ゥム依存的にグリ シン及びプロリ ンのみを輸送し、 輸送系 a s c とは 異なる。
トランスポー夕一自体ではないが、 アミノ酸トランスポー夕一の活性化因子で あると考えられている膜貫通構造を一回しか持たない二型膜糖タンパク質である r B A T及び 4 F 2 h eの c D NAがクローニングされており、 それらをァフリ カツメガエル卵母細胞に発現させると中性アミ ノ酸とともに塩基性アミ ノ酸の取 り込みを活性化することが知られている (Palacin, J. Exp. Biol. ,第 196巻、 123 項、 1994年) 。
中性アミ ノ酸を選択的に輸送する トランスポー夕一として、 輸送系 Lに相当す る中性アミ ノ酸トランスポーター L AT 1 (Kanai et al., J. Biol. Chem. , 第 273巻、 23629- 23632項、 1998年) 及び L AT 2 (Sega a et al. , J. Biol. Che m. , 第 274巻、 19745- 19751項、 1999年) がクロ一ニングされた。 また、 L AT 1 及び L AT 2は、 補助因子 4 F 2 h c と共存することによってのみ機能すること が示された。 両者は N a +に依存せず、 L AT I はロイシン、 イソロイシン、 ノ、'リ ン、 フエ二ルァラニン、 チロシン、 トリプトファン、 メチォニン、 ヒスチジンな ど大型の中性アミノ酸を輸送する交換輸送活性を示し、 L AT 2 は、 大型の中性
アミノ酸に加えグリ シン、 ァラニン、 セリ ン、 システィン、 スレオニンなどの小 型の中性アミ ノ酸も輸送とする広い基質選択性を有する。 しかし、 これらもアミ ノ酸輸送系 a s c とは基質選択性が異なっている。
中性アミ ノ酸トランスポー夕一 L A T 1及び L A T 2の類似蛋白質として、 中 性アミ ノ酸及び塩基性アミ ノ酸を輸送する輸送系 y +Lの機能を有する前記 y +L A T 1 と y + L A T 2がクローニングされた (Torrents et al., J. Biol . Chem., 第 273卷、 32437- 32445項、 1998年) 。 また、 y +L A T l 、 y +L A T 2共に補助 因子 4 F 2 h c と共存することによってのみ機能することが示された。 y +L A T 1 と y +L A T 2は、 中性アミ ノ酸としてはグルタミ ン、 ロイシン、 イソロイシン を主に輸送し、 ァミノ酸輸送系 a s c とは基質選択性が異なっている。
機能発現に補助因子 4 F 2 h e を要求する トランスボー夕一として、 中性アミ ノ酸トランスポー夕一 L A T 1及び L A T 2の類似蛋白質である x C Tがクロ一 ニングされた (Sato et al . , J. Biol. Chem. 274: 11455-11458, 1999) 。 x C Tはシスチンとダルタミ ン酸を輸送し、 アミ ノ酸輸送系 a s c とは基質選択性が 異なっている。
また、 4 F 2 h c と類似構造を持つ他の補助因子 r B A Tを機能発現に要求す る トランスポーターとして、 中性アミ ノ酸トランスポーター L A T 1及び L A T 2の類似蛋白質である B A T 1がクローニングされた (Chairoungdua et al. , J. Biol. Chem. 274: 28845-28848, 1999) 。 B A T 1 は、 シスチン、 中性アミ ノ酸 及び塩基性アミ ノ酸を輸送し、 アミ ノ酸輸送系 a s c とは基質選択性が異なって いる。
以上のように、 4 F 2 h c及び r B A Tと連結することによって機能する トラ ンスポー夕一の分子的実体が明かにされ、 二型糖夕ンパク質と分子複合体を形成 することによって輸送機能を発揮する一群の トランスボ一ターが存在することが 明らかにされた。 発明の開示
本発明の目的は、 ナ トリウム非依存的に小型中性アミ ノ酸を輸送し、 輸送系 a s cの機能を示すトランスポ一夕一の遺伝子及びその遺伝子がコードするポリべ
プチドであるナ ト リゥム非依存性小型中性アミ ノ酸 トランスポーターを提供する ことにある。 その他の目的については、 以下の記載より明らかである。 本発明者らは、 L AT 1 の c D N Aの翻訳領域の塩基配列を用いて E S T (ex pressed sequence tag) データベースを検索し、 L A T 1 と類似の塩基配列を同 定した。 それに相当するプローブを作製して c D NAライブラリ一をスク リー二 ングし、 新規タンパク質をコー ドする遺伝子をクロ一ニングした。 さ らに、 この 遺伝子の産物をアフリカッメガエルの卵母細胞に発現させて、 この遺伝子の産物 が機能を発揮するためには 4 F 2 h cが必須であること、 及び発現する機能は、 中性アミ ノ酸輸送系 a s c に相当するカ^ 従来記述されていた輸送系 a s c の性 質と異なり、 L—体アミ ノ酸のみならず、 D—体アミ ノ酸も高親和性の輸送基質 とすることを明らかにし、 本発明を完成するに至った。
すなわち、 本発明は、 配列番号 1若し くは 4で示されるアミ ノ酸配列、 又は当 該アミ ノ酸配列において 1 もしくは 2以上のアミ ノ酸が欠失、 置換もしくは付加 されたアミ ノ酸配列からなり、 かつ N a +非依存的に小型中性アミノ酸及びその類 似物質を輸送する能力を有するタンパク質に関する。 本発明のタンパク質は、 配 列番号 3又は 6で示されたアミ ノ酸配列を有するタンパク質あるいは 1 もしくは 2個以上のアミ ノ酸が欠失、 置換もしく は付加されたアミ ノ酸配列からなるタン パク質と共存したとき、 ナ ト リウム非依存的に小型中性アミ ノ酸及びその類似物 質を輸送する能力を有するタンパク質である。
また、 本発明は、 前記した本発明のタンパク質をコー ドする遺伝子に関する。 より詳細には、 本発明は、 配列番号 2若しく は 5で示される塩基配列、 又は当該 塩基配列からなる D NAとス トリ ンジェン 卜な条件下でハイプリダイズし得る塩 基配列からなる、 ナト リウム非依存的に小型中性アミ ノ酸及びその類似物質を輸 送する能力を有するタンパク質をコ一 ドする遺伝子に関する。
本発明のナ ト リ ウム非依存的に小型中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する 能力を有する新規タンパク質、 すなわちアミ ノ酸トランスポ一夕一 a s c - 1 (asc-type amino acid transporter 1) は、 アミ ノ酸輸送活性化因子 4 F 2 h c と共存することにより、 グリ シン、 Lーァラニン、 L—セリ ン、 L—システィン、
Lースレオニンなどの小型中性アミ ノ酸を高親和性に輸送する (取り込む) 能力 を有する。 さらに、 Lーバリ ン、 L—メチオニオン、 L—イソロイシン、 L一口 イシン、 L—ヒスチジン、 L—フエ二ルァラニンを低親和性に輸送する。 a s c 一 1は、 さらに D—ァラニン、 D—セリ ン、 D—システィン、 D—スレオニンを 輸送し、 特に D—セリ ンを高親和性に輸送する。 また、 a s c _ 1は、 アミ ノ酸 類似化合物として、 ひ 一アミ ノイソ酪酸、 β —ァラニン、 及びァラニンメチルェ ステルを輸送する。
また、 本発明の L一体及び D—体のアミ ノ酸を輸送するナ ト リ ゥム非依存性小 型中性アミ ノ酸トランスポーター a s c — 1は、 生体内においては脳、 肺、 小腸、 胎盤に主に発現している。 特に、 a s c — 1は、 NMDA型グルタミ ン酸受容体 の内因性の機能修飾物質と考えられている D—セリ ンを輸送するため、 脳内での D—セリ ンの動態に関わり、 NMDA受容体機能状態に影響を与えている可能性 がある。 また、 a s c -1はシスティ ンを輸送するため、 システィ ンを材料として 生成されるグル夕チオンの生成量を規定する要因となっていると考えられる。 図面の簡単な説明
第 1図は、 マウス a s c— 1 とラッ 卜 L AT 2 , ラッ ト L AT 1、 ヒ ト y+LA T 1、 ヒ ト y'L AT 2およびマウス x C Tのアミ ノ酸配列の比較を示す図である 予想される膜貫通部位を付線で示した。
第 2図は、 マウス a s c— 1 とヒ ト a s c— 1のアミ ノ酸配列の比較を示す図 である。
第 3図は、 マウスの各臓器組織における a s c — 1遺伝子 mRN Aの発現をノ 一ザンブロッテイ ングにより解析した結果を示した図面に代わる写真である。 第 4図は、 抗 a s c— 1抗体 (左) と抗 4 F 2 h c抗体 (右) を用い、 非還元 条件下 (一) 及び還元条件下 (+ ) で行ったマウス脳膜標本を用いたウエスタン プロッ ト解析の結果を示す図面に代わる写真である。
第 5図は、 マウス a s c一 1遺伝子の c RNA及び 又はマウス 4 F 2 h e遺 伝子の c RN Aを注入した卵母細胞によるァラニン取り込み実験の結果を示す図 である。
第 6図は、 マウス a s c — 1遺伝子の c R N A及びマウス 4 F 2 h c遺伝子の c R N Aを注入した卵母細胞によるァラニン取り込み実験において添加する塩類 の影響を調べた結果を示す図である。
第 7図は、 マウス a s c — 1遺伝子の c R N A及びマウス 4 F 2 h c遺伝子の c R N Aを注入した卵母細胞によるァラニン取り込み実験において基質ァラニン の濃度の影響を調べた結果を示す図である。
第 8図は、 マウス a s c 一 1遺伝子の c R N A及びマウス 4 F 2 h c遺伝子の c R N Aを注入した卵母細胞によるァラニン取り込み実験において、 系への各種 L一アミ ノ酸もしく はその類似化合物添加の影響を調べた結果を示す図である。 第 9図は、 マウス a s c — 1遺伝子の c R N A及びマゥス 4 F 2 h c遺伝子の c R N Aを注入した卵母細胞によるァラニン取り込み実験において、 系への各種 D—アミ ノ酸添加の影響を調べた結果を示す図である。
第 1 0図は、 マウス a s c — 1遺伝子の c R N A及びマウス 4 F 2 h c遺伝子 の R N Aを注入した卵母細胞によるァラニン取り込み実験において、 系へのァ ラニンもしくはその類似化合物添加の影響を調べた結果を示す図である。
第 1 1 図は、 マウス a s c — 1遺伝子の c R N A及びマウス 4 F 2 h c遺伝子 の c R N Aを注入した卵母細胞による放射能標識 L一アミ ノ酸の取り込みを調べ た結果を示す図である。
第 1 2図は、 マウス a s c 一 1遺伝子の c R N A及びマウス 4 F 2 h c遺伝子 の c R N Aを注入した卵母細胞による放射能標識 D _アミ ノ酸の取り込みを調べ た結果を示す図である。
第 1 3図は、 マウス a s c — 1遺伝子の c R N A及びマウス 4 F 2 h c遺伝子 の c R N Aを注入した卵母細胞による放射能標識 L—ァラニンもしくはその類似 化合物の取り込みを調べた結果を示す図である。
第 1 4図は、 マウス a s c — 1遺伝子の c R N A及びマウス 4 F 2 h c遺伝子 R N Aを注入した卵母細胞によるァラニン取り込み実験において p Hの影響 を調べた結果を示す図である。
第 1 5図は、 マウス a s c — 1遺伝子の c R N A及びマウス 4 F 2 h c遺伝子 の c R N Aを注入した卵母細胞よる 14 Cーァラニンの放出を調べた結果を示す図
である。 縦軸は、 放出された放射活性を卵母細胞に注入した放射活性に対する割 合 (%) を示す。
第 1 6図は、 マウス a s c— 1遺伝子の c R N A及びマウス 4 F 2 h c遺伝子 の c RNAを注入した卵母細胞による —ァラニンの放出の時間経過を調べた 結果を示す図である。 図中の、 〇 : 対照としてマウス a s c— 1遺伝子の c RN A及びマウス 4 F 2 h c遺伝子の c RNAの代わりに水を注入した卵母細胞にお ける 14Cーァラニンの放出をァラニン未添加のナ ト リ ウムイオンを含まない取り 込み用溶液 ( N a—-free uptake solut ion) を用いた場合であり、 拿 : 対照とし てマウス a s c — 1遺伝子の c RNA及びマウス 4 F 2 h c遺伝子の c RNAの 代わりに水を注入した卵母細胞における '4 Cーァラニンの放出をァラニンを添加 したナ ト リウムイオンを含まない取り込み用溶液 (N a +-free uptake solutio n) を用いた場合であり、 口 : マウス a s c— 1遺伝子の c RNA及びマウス 4 F 2 h c遺伝子の c RNAを注入した卵母細胞における —ァラニンの放出をァ ラニン未添加のナ ト リウムイオンを含まない取り込み用溶液 (N a +-free uptak e solution) を用いた場合であり、 騸 : マウス a s c— 1遺伝子の c R NA及び マウス 4 F 2 h c遺伝子の c RNAを注入した卵母細胞における 14 C—ァラニン の放出をァラニンを添加したナ ト リ ウムイオンを含まない取り込み用溶液 (N a 一- free uptake solution) を用いた場合である。 縦軸は、 放出された放射活性を 卵母細胞に注入した放射活性に対する割合 (%) を示す。
第 1 7図は、 ラッ ト L AT 1遺伝子の c RNA及びラッ ト 4 F 2 h c遺伝子の c RN Aを注入した卵母細胞による '4 C一口イシンの放出の時間経過を調べた結 果を示す図である。 〇 : 対照としてラッ ト LAT 1遺伝子の c RNA及びラッ ト 4 F 2 h c遺伝子の c RNAの代わりに水を注入した卵母細胞における 14 C—口 イシンの放出をロイシン未添加のナ ト リ ウムイオンを含まない取り込み用溶液
(N a + - free uptake solution) を用いた場合であり、 拿 : 対照としてラッ ト L AT 1遺伝子の c RNA及びラッ ト 4 F 2 h c遺伝子の c RNAの代わりに水を 注入した卵母細胞における 14 C—ロイシンの放出をロイシンを添加したナ ト リウ ムイオンを含まない取り込み用溶液 (N a +- free uptake solution) を用いた場 合であり、 口 : ラッ ト LAT 1遺伝子の c RNA及びラッ ト 4 F 2 h c遺伝子の
c RNAを注入した卵母細胞における 14C—ロイシンの放出をロイ シン未添加の ナトリウムイオンを含まない取り込み用溶液 (N a +- free uptake solution) を 用いた場合であり、 園 : ラッ 卜 L A T 1遺伝子の c R NA及びラッ ト 4 F 2 h c 遺伝子の c R N Aを注入した卵母細胞における 14C一口イ シンの放出をロイシン を添加したナト リウムイオンを含まない取り込み用溶液 (N a +- free uptake so lution) を用いた場合である。 縦軸は、 放出された放射活性を卵母細胞に注入し た放射活性に対する割合 (%) を示す。
第 1 8図は、 マウス a s c — 1遺伝子の c R N A及びマウス 4 F 2 h c遺伝子 の c R N Aを注入した卵母細胞 (黒塗りのカラム) 、 又は対照として c R NAの 代わり に水を注入した卵母細胞 (白抜きのカラム) による、 ナ ト リウムイオンを 含まない取り込み用溶液 (N a— - free uptake solution) へ各主の L一アミ ノ酸 を添加した場合の 14 Cーァラニンの放出を調べた結果を示す図である。 (一) は、 ナト リウムイオンを含まない取り込み用溶液 (N a +- free uptake solution) へ アミノ酸を添加しない場合のマウス a s c ― 1 を介する 14C—ァラニンの放出を 示す。 縦軸は、 放出された放射活性を卵母細胞に注入した放射活性に対する割合 (%) を示す。
第 1 9図は、 ナト リ ウムイオンを含まない取り込み用溶液 (N a T- free uptak e solution) へ各種の D—アミ ノ酸を添加した場合のマウス a s c — l を介する 14Cーァラニンの放出を調べた結果を示す図である。 (―) は、 ナ ト リ ウムィォ ンを含まない取り込み用溶液 (N a†-free uptake solution) へアミ ノ酸を添加 しない場合のマウス a s c — 1 を介する ' 4 C—ァラニンの放出を示す。 縦軸は、 放出された放射活性を卵母細胞に注入した放射活性に対する割合 (%) を示す。 第 2 0図は、 ナト リウムイオンを含まない取り込み用溶液 (N a - free upiak e solution) へ各種のァラニン類似化合物を添加した場合のマウス a s c — 1 を 介する 14 Cーァラニンの放出を調べた結果を示す図である。 (―) は、 ナト リ ウ ムイオンを含まない取り込み用溶液 (N a +- free uptake solution) へアミ ノ酸 を添加しない場合のマウス a s c 一 1 を介する 14 Cーァラニンの放出を示す。 縦 軸は、 放出された放射活性を卵母細胞に注入した放射活性に対する割合 (%) を 示す。
第 2 1図は、 マウス a s c — 1遺伝子の c R N A及びマウス 4 F 2 h c遺伝子 の RNAを注入した卵母細胞からの、 注入した 14 C—アミノ酸の放出を調べた 結果を示す図である。 黒塗りのカラムは、 ナトリ ウムイオンを含まない取り込み 用溶液 (N a +-free uptake solution) ヘアラニンを添加した場合を、 斜線の力 ラムはナ ト リウムイオンを含まない取り込み用溶液 (N a +-free uptake solut i on) ヘアラニンを添加しない場合を示す。 発明を実施するための最良の形態
後記配列表の配列番号 2及び 1は、 マウス脳由来の L一体及び D—体アミ ノ酸 を輸送するナ ト リ ウム非依存性小型中性アミ ノ酸 卜ランスポーター (マウス a s c - 1 ) の遺伝子の全長 c D NA塩基配列 (約 1. 6 k b p) 、 及びその翻訳領 域にコー ドされたタンパク質のアミ ノ酸配列 ( 5 3 0アミ ノ酸) を表わす。
後記配列表の配列番号 5及び 4は、 ヒ ト脳由来の L一体及び D—体アミ ノ酸を 輸送するナ ト リウム非依存性小型中性アミノ酸トランスポーター (ヒ ト a s c— 1 ) の遺伝子の全長 c D N A塩基配列 (約 1. 9 k b p) 、 及びその翻訳領域に コードされたタンパク質のアミ ノ酸配列 ( 5 2 3アミ ノ酸) を表わす。
前記配列番号 1若しくは 2又は 4若しく は 5に示される塩基配列もしくはアミ ノ酸配列について、 既知 DN Aデ一夕ベース ( G e n B a n k TMおよび E M B L ) 及びプロテインデ一夕ベース (N B R F及び SW I S S- P R OT) に含まれ るすべての配列に対してホモロジ一検索を行った結果、 一致するものはなく、 こ れらの配列は、 新規なものであると考えられる。
本発明のタンパク質としては、 配列番号 1又は 4で示されたアミ ノ酸配列を有 するもののほか、 例えば配列番号 1又は 4で示されたアミ ノ酸配列において 1 も しくは 2個以上のアミノ酸の欠失、 置換もしくは付加されたアミ ノ酸配列を有す るタンパク質が挙げられる。 アミ ノ酸の欠失、 置換もしくは付加は、 中性アミ ノ 酸輸送活性が失われない程度であればよく、 通常 1〜約 1 0 6個、 好ましくは 1 〜約 5 3個である。 このようなタンパク質は、 配列番号 1又は 4で示されたアミ ノ酸配列と通常、 1〜 8 0 %、 好ましく は 1〜 9 0 %のアミ ノ酸配列のホモロジ 一を有する。
また、 本発明の遺伝子としては、 配列番号 2又は 5で示された塩基配列を有す るもののほか、 配列番号 2又は 5で示された塩基配列からなる D N Aとス ト リ ン ジェン 卜な条件下でハイプリダイズし得る D N Aを含むものが挙げられる。 この ようにハイブリダィズし得る D N Aは、 その D N Aにコー ドされるタンパク質が 中性アミ ノ酸を輸送する能力を有するものであればよい。 このような D NAは配 列番号 2又は 5で示された塩基配列と、 通常 7 0 %以上、 好ましく は 8 0 %以上 の塩基配列のホモロジ一を有する。 このような D NAとしては、 自然界で発見さ れる変異型遺伝子、 人為的に改変した変異型遺伝子、 異種生物由来の相同遺伝子 等が含まれる。
本発明において、 ス ト リ ンジェン 卜な条件下でのハイプリダイゼ一ショ ンは、 通常、 ハイブリダィゼ一シヨ ンを、 5 X S S C又はこれと同等の塩濃度のハイブ リダィゼ一シヨ ン溶液中、 3 7 — 4 2 °Cの温度条件下、 約 1 2時間行い、 5 X S S C又はこれと同等の塩濃度の溶液などで必要に応じて予備洗浄を行った後、 1 X S S C又はこれと同等の塩濃度の溶液中で洗浄を行う ことにより実施できる。 本発明の L一体及び D—体アミ ノ酸を輸送するナトリウム非依存性小型中性ァ ミノ酸トランスポーター遺伝子は、 適当な哺乳動物の組織や細胞を遺伝子源とし て用いてスク リーニングを行う ことにより単離取得できる。 哺乳動物としては、 ィヌ、 ゥシ、 ゥマ、 ャギ、 ヒッジ、 サル、 ブ夕、 ゥサギ、 ラッ ト及びマウスなど の非ヒ 卜動物のほか、 ヒ 卜が挙げられる。
遺伝子のスク リーニング及び単離は、 ホモロジ一クロ一ニング法などにより好 適に実施できる。
例えば、 マウスあるいはヒ ト脳を遺伝子源として用い、 これから mR NA (ポ リ (A) +R NA) を調製する。 これから c D N Aライブラリーを構築し、 E S T (expressed sequence tag) データベースの検索によって得られる L A T 1類似 配列 (例えば、 GenBankTM/EBI/DDBJ accession No. 32639) に相当するプローブ を用いて c D NAライブラリ一をスク リーニングすることによって a s c _ l遺 伝子の c D NAを含むクローンを得ることができる。
得られた c D NAについては、 常法により塩基配列を決定し、 翻訳領域を解析 して、 これにコー ドされるタンパク質、 すなわち、 a s c — 1 のアミ ノ酸配列を
決定することができる
得られた c D NAが、 L—体及び D—体アミ ノ酸を輸送するナ ト リ ウム非依存 性小型中性アミ ノ酸トランスポーター遺伝子の c D NAであること、 すなわちは c D NAにコ一 ドされた遺伝子産物が L—体及び D—体アミ ノ酸を輸送するナト リウム非依存性小型中性アミ ノ酸トランスポーターであることは、 例えば次のよ うにして検証することができる。 すなわち、 得られた a s c — 1遺伝子の c D N Aから調整した、 これに相補的な R NA ( c R N A) (キャップ化されたもの) を配列番号 3又は 6 に示される 4 F 2 h c の塩基配列を有する c R NAとともに 卵母細胞内に導入して発現させ、 中性アミ ノ酸を細胞内へ輸送する (取り込む) 能力を、 適当な中性アミ ノ酸を基質とする通常の取り込み試験 (Kanai and Hedi ger, Nature,第 360巻、 467- 471頁、 1992年) により、 細胞内への基質の取り込みを 測定することにより確認できる。
得られた a s c 一 1遺伝子の c D N Aから調整した、 これに相補的な R N A ( c R NA) を用いて、 インビ トロ翻訳法 (Hedigerら、 Biochim. Biophys. Act a、 第 1064巻、 360項、 1991年) により、 a s c — 1 タンパク質を合成し、 電気泳 動によりタンパク質のサイズ、 糖付加の有無等を検討することができる。
4 F 2 h cの遺伝子の c D N Aはすでに報告されている (Broerら、 Biochem. J.、 第 312巻、 863項、 1995年) ので、 この配列情報から、 P C R法などを用いて、 容易に 4 F 2 h c の遺伝子を得ることが可能である。 得られた 4 F 2 h c の c D NAから、 c R NA (キャップ化されたもの) を合成できる。
また、 発現細胞について、 同様の取り込み実験を応用して、 a s c _ l の特性、 例えば、 a s c — 1がアミ ノ酸の交換輸送型の輸送を行っているという特性や、 a s c - 1 の基質選択性、 p H依存性などを調べることができる。
得られた a s c — 1遺伝子の c D NAを用いて、 異なる遺伝子源で作製された 適当な c D N Aライブラリ一又はゲノ ミ ック D N Aライブラリーをスク リ一ニン グすることにより、 異なる組織、 異なる生物由来の相同遺伝子や染色体遺伝子等 を単離することができる。
また、 開示された本発明の遺伝子の塩基配列 (配列番号 2又は 5 に示された塩 基配列、 もしく はその一部) の情報に基づいて設計された合成プライマ一を用い、
通常の P C R (Polymerase Chain Reaction) 法により c D N Aライブラリ一又は ゲノミ ック D N Aライブラリ一から遺伝子を単離することができる。
c D N Aライブラリ一又はゲノ ミ ック D N Aライブラリ一等の D N Aライブラ リーは、 例えば、 「モレキュラー ' クロ一ニング (Molecular cloning) 」 (Sam brook, 】., Fri tsh, E. F.及び Man i t i s , T.著、 Cold Spring Harbor Pressより、 1989に発刊) に記載の方法により調整することができる。 あるいは、 市販のライ ブラリーがある場合はこれを用いてもよい。
本発明の L一体及び D—体アミ ノ酸を輸送するナ ト リウム非依存性小型中性ァ ミ ノ酸 トランスポーター ( a s c — l ) は、 例えば、 それをコー ドする c D NA を用い、 遺伝子組換え技術によ り生産することができる。 例えば、 a s c — 1を コー ドする DNA ( c DNA等) を適当な発現ベクターに組み込み、 得られた組 換え D N Aを適当な宿主細胞に導入することができる。 ボリべプチド生産するた めの発現系 (宿主一べクタ一系) としては、 例えば、 細菌、 酵母、 昆虫細胞及び 哺乳類細胞の発現系等が挙げられる。 このうち、 機能タンパクを得るためには、 昆虫細胞及び哺乳類細胞を用いることが好ましい。
例えば、 ポリペプチドを哺乳類細胞で発現させる場合には、 L一体及び D—体 アミ ノ酸を輸送するナト リ ウム非依存性小型中性アミ ノ酸トランスポー夕一 a s c一 1 をコー ドする D N Aを、 適当な発現ベクター (例えば、 アデノウイルス系 ベクター、 レ トロウイルス系ベクター、 ノ ピロ一マウィルスベクター、 ワクシニ ァウィルスベクター、 S V 4 0系ベクター等) 中の適当なプロモーター (例えば、 サイ トメガロウイルスプロモーター、 S V 4 0プロモーター、 L T Rプロモータ 一、 ェロンゲ一シヨ ン l aブロモ一夕一等) の下流に挿入して発現ベクターを構 築する。 次に、 得られた発現べクタ一で適当な動物細胞を形質転換し、 形質転換 体を適当な培地で培養することによって、 目的とするポリペプチドが生産される。 宿主とする哺乳動物細胞としては、 サル C〇 S- 7細胞、 チャイニーズハムスター CHO細胞、 又はヒ ト H e L a細胞などの細胞株などが挙げられる。
L—体及び D—体アミ ノ酸を輸送するナ ト リウム非依存性小型中性アミノ酸ト ランスポ一夕一 a s c— 1をコー ドする D NAとしては、 例えば、 配列番号 2又 は 5で示される塩基配列を有する c D N Aを用いることができるほか、 前記の c
D N A配列に限定されることなく、 アミ ノ酸配列に対応する D NAを設計し、 ボ リペプチドをコードする D N Aとして用いることもできる。 この場合、 ひとつの アミノ酸をコードするコ ドンは各々 1〜 6種類知られており、 用いるコ ドンの選 択は任意で良いが、 例えば発現に利用する宿主のコ ドン使用頻度を考慮して、 よ り発現効率の高い配列を設計することができる。 設計した塩基配列を持つ D N A は、 D NAの化学合成、 前記 c D N Aの断片化と結合、 塩基配列の一部改変等に よって取得できる。 人為的な塩基配列の一部改変、 変異導入は、 所望の改変をコ —ドする合成オリゴヌク レオチドからなるプライマ一を利用して部位特異的変異 導入法 (site specif ic mutagenesis) (Mark, D.F. e t al . , Proceedings of N at ional Academy of Sciences, 第 81卷、 第 5662項 ( 1984年) ) 等によって実施 できる。
また、 本発明は、 配列表の配列番号 2 又は 5で示される塩基配列の中の連続す る 1 4塩基以上、 好まし く は 2 0塩基以上、 より好ましく は 3 0塩基以上の部分 配列もしくはその相補的な配列を含むヌク レオチドに関する。 本発明のヌクレオ チドは、 ナ ト リ ゥム非依存的に小型中性アミ ノ酸及びその類似物質を輸送する能 力を有するタンパク質をコー ドする遺伝子を検出するためのプローブとして使用 することができる。
本発明の L一体及び D—体アミ ノ酸を輸送するナ トリ ウム非依存性小型中性ァ ミ ノ酸トランスポーター又はこれと免疫学的同等性を有するポリペプチ ドを用い て、 その抗体を取得することができる。 抗体は、 L一体及び D—体アミ ノ酸を輸 送するナ ト リウム非依存性小型中性アミ ノ酸トランスポーターの検出や精製など に利用できる。 抗体は、 本発明の L一体及び D—体アミ ノ酸を輸送するナ ト リウ ム非依存性小型中性アミ ノ酸トランスポーター、 その断片、 またはその部分配列 を有する合成ペプチドなどを抗原として用いて製造できる。 ポリ クロナール抗体 は、 宿主動物 (例えば、 ラッ トやゥサギ等) に抗原を接種し、 免疫血清を回収す る、 通常の方法により製造することができ、 モノ クロナール抗体は、 通常のハイ プリ ドーマ法などの技術により製造できる。
本発明の L一体及び D—体アミ ノ酸を輸送するナ トリゥム非依存性小型中性ァ ミノ酸トランスポーター a s c — 1 、 その遺伝子およびその発現細胞は、 a s c
一 1 が存在する細胞膜や、 a s c — 1 が存在すると予想される部位での透過効率 についての、 インビ 卜口での試験に使用できる。
また、 L一体及び D —体アミ ノ酸を輸送するナ ト リ ウム非依存性小型中性アミ ノ酸トランスポーター a s c — 1 、 その遺伝子およびその発現細胞は、 a s c — 1が存在する細胞膜や、 a s c 一 1が存在すると予想される部位を効率良く透過 する化合物の開発に使用できる。 さ らに、 L —体及び D —体アミ ノ酸を輸送する ナ ト リウム非依存性小型中性アミ ノ酸 トランスポー夕一 a s c — 1 、 その遺伝子 およびその発現細胞は、 a s c — 1 が存在する細胞膜や、 a s c — 1が存在する と予想される部位での薬物間相互作用のイ ンビ ト口での試験に使用できる。
本発明の L _体及び D —体アミ ノ酸を輸送するナ ト リウム非依存性小型中性ァ ミノ酸トランスボー夕一 a s c — 1 を抑制することにより、 a s c — 1 を発現す る細胞膜や、 a s c — 1が存在すると予想される部位の特定の化合物の透過を制 限することができる。 また、 本発明の L —体及び D —体アミ ノ酸を輸送するナ ト リゥム非依存性小型中性アミ ノ酸トランスポー夕一 a s c 一 1 、 その遺伝子およ びその発現細胞は、 a s c — 1 により輸送される化合物の、 細胞膜通過や、 a s c - 1が存在すると予想される部位の透過を制限する薬物 ( a s c — 1 の特異的 なイ ンヒビター等) の開発に使用できる。
したがって、 本発明は、 本発明のタンパク質を用いて、 該タンパク質の有する ナト リウム非依存的に小型中性アミ ノ酸及びその類似物質を輸送する能力に対す る被検物質の基質としての作用を検出、 同定又は定量する方法を提供するもので ある。 本発明の方法により、 本発明のタンパク質の有する機能を促進する物質あ るいは抑制する物質をスク リーニングすることができる。 放射性や蛍光などによ り標識化されたアミ ノ酸、 例えば1 4 Cーァラニンを含有する取り込み用溶液を用 いて、 彼検物質の存在下に当該アミ ノ酸の取り込み又は放出量を測定することに より、 当該被検物質の本発明のタンパク質に対する作用を検定することができる, また、 本発明は、 本発明のタンパク質、 その特異抗体、 その機能促進物質ある いは機能抑制物質を用いて、 該タンパク質の有する小型中性アミ ノ酸及びその類 似物質を輸送する能力を変調させることにより、 細胞の酸化的ス トレスに対する 抵抗性を制御する方法を提供するものである。
さ らに、 本発明は、 本発明のタンパク質、 その特異抗体、 その機能促進物質あ るいは機能抑制物質を用いて、 該タンパク質の有する小型中性アミ ノ酸及びその 類似物質を輸送する能力を変調させることにより、 神経系における NMD A型グ ル夕ミ ン酸受容体の活性を制御する方法、 当該方法により、 NMDA型ダルタミ ン酸受容体の関わるシナプス伝達の可塑性を制御する方法、 及び当該方法により、 NMD A型ダルタミ ン酸受容体の関わる神経細胞死を制御する方法を提供するも のである。
本発明は、 前記した本発明のタンパク質、 及びその特異抗体、 その機能促進物 質又は機能抑制物質を用いて、 当該タンパク質の有する小型中性アミ ノ酸及びそ の類似物質を輸送する能力を変調させることにより、 細胞の増殖を抑制又は促進 するなどの制御する方法を提供するものである。
また、 本発明は、 本発明のタンパク質、 その特異抗体、 その機能促進物質ある いは機能抑制物質を用いて、 該夕ンパク質の有する中性アミ ノ酸及びその類似物 質を輸送する能力を変調させることにより、 該タンパク質によって輸送される薬 物の体内動態を変更する方法を提供するものである。
さ らに、 本発明は、 本発明のタンパク質、 その特異抗体、 その機能促進物質あ るいは機能抑制物質を用いて、 該タンパク質の有する中性アミ ノ酸及びその類似 物質を輸送する能力を変調させることにより、 該タンパク質によって輸送される 毒物あるいは外来性異物の体内動態を変更する方法を提供するものである。 以下、 実施例をもって本発明をさ らに詳しく説明するが、 本発明はこれらの実 施例に限定されるものではない。
なお、 下記実施例において、 各操作は特に明示がない限り、 「モレキュラー - クローニング (Molecular cloning) 」 (Sambrook, J. , Fritsh, E.F.及び Manit is, T.著、 Cold Spring Harbor Pressより、 1989に発刊) に記載の方法により行 うか、 または、 市販の試薬やキッ トを用いる場合には市販品の指示書に従って使 用した。 実施例
実施例 1 : L _体及び D—体アミ ノ酸を輸送するナ ト リウム非依存性小型中性ァ ミ ノ酸トランスポ一夕一の、 マウス及びヒ ト c DNAのクローニング
( 1 ) マウス及びヒ ト 4 F 2 h cの c DNAの単離と c RNAの調製
c D N Aライブラリ一はマウス脳から精製したポリ ( A ) + R N Aあるいはヒ ト 胎盤由来ポリ (A) — RNA (クロンテク社から購入) から、 c DNA合成用キッ ト (商品名 : Superscript Choice System, ギブコ社製) を使用して作製し、 ファ ージベクター λ Ζ i p L o x (ギブコ社製) の制限酵素 E c o R I切断部位に組 み込んだ。 P C R法にて、 ラッ ト 4 F 2 h c遺伝子 (Broerら、 Biochem. ].、 第 312卷、 863項、 1995年) の第 1 3 5— 5 8 0番目の塩基に相当するセグメン トを 増幅し、 これを32 P— d C T Pでラベルしてプローブとして用いて、 マウス脳 c D N Aライブラリ一及びヒ ト胎盤 c D N Aライブラリ一をスク リーニングした。 ハイブリ ダイゼ一シヨ ンは、 3 7 °Cのハイブリ ダイゼ一ショ ン用溶液中ー晚行い、 フィルター膜は、 3 7 °Cで 0. 1 X S S CZ 0. 1 % S D Sで洗浄した。 ハイブ リダィゼ一シヨ ン用溶液としては、 5 X S S C、 3 Xデンハー ド液 (Denhard' s 液) 0. 2 % S D S、 1 0 %硫酸デキス トラン、 5 0 %ホルムアミ ド、 0. 0 1 % A b t i f o r m B (商品名、 シグマ社) (消泡剤) 、 0. 2 m g Z m 1サ —モン精子変性 DNA、 2. 5 mMピロ リ ン酸ナ ト リ ウム、 2 5 mM— ME Sを 含む p H 6. 5の緩衝液を用いた。 c D N Aを組み込んだ λ Z 〖 p L o Xファー ジの c DNA部分を、 プラスミ ド p Z L l に組み込んだ。 ヒ ト 4 F 2 h cの c D NAは、 c DNAを組み込んだ λ Ζ i p L o xファージの c DNA部分を、 ブラ スミ ド p Z L 1に組み換えた。
得られたクローンすなわち、 マウス及びヒ ト 4 F 2 h cの c DNAを含むクロ ーンについて、 塩基配列決定のための合成プライマーを用いてダイターミネ一夕 —サイクルシ一ケンシング法 (Applied Biosystems社) により、 c DNAの塩基 配列を決定した。 これにより、 クローニングした c DN Aがマウスあるいはヒ ト 4 F 2 h c遺伝子のものであることが確認できた。 得られた 4 F 2 h cの塩基配 列を後記配列表の配列番号 3及び 6に示した。
上記より得られたマウス及びヒ ト 4 F 2 h c の c D N Aを含むプラスミ ドから、 T 7 R N Aポリ メラ一ゼを用いて、 c R NA ( c D N Aに相補的な R NA) 調製 した。 '
( 2 ) L一体及び D—体ァミノ酸を輸送するナ ト リゥム非依存性小型中性アミノ 酸トランスポー夕一 a s c - 1 のマウス c D N Aの単離と c R N Aの調製
L A T 1 の翻訳領域の塩基配列を用いた E S T (expressed sequence tag) デ 一夕ベースの検索によって得られた L A T 1類似配列 GenBankTM/EBI/DDBJ acce ssion No. 32639 の 3 5 — 5 4 b pに相当するセンスプライマ一 ( 5 ' - C T C T T C A C AT G C AT C T C C A C-3 ' ) と、 3 9 7— 4 1 6 b pに相当する アンチセンスプライマ一 ( 5 ' -G G T A C A C GA C C A C A C A C AT C -3 ' ) 、 および I MA G E (Integrated and Molecular Analysis of Genoms and t heir Express ion) c D NAクローン No. 267666 をテンプレー トとして用い、 D NA断片を P C R法によって増幅した。 得られた D NA断片を32 P— d C T Pで ラベルしてプローブとして用いて、 マウス脳 c D NAライブラリーをスク リー二 ングした。
c D NAライブラリ一はマウス脳由来ボリ (A) +R NAから、 c D NA合成用 キッ ト (商品名 : Superscript Choice System, ギブコ社製) を使用して作製し、 ファージベクタ一 λ Ζ i p L o x (ギブコ社製) の制限酵素 E c 0 R I 切断部位 に組み込んだ。 32 P— d C T Pでラベルしてプローブによるハイブリ ダィゼーシ ヨ ンは、 3 7 °Cのハイブリダィゼーシヨ ン用溶液中ー晚行い、 フィル夕一膜は、 3 7 °Cで 0. 1 X S S C / 0. 1 % S D Sで洗浄した。 ハイブリ ダィゼ一シヨ ン 用溶液としては、 5 X S S C、 3 Xデンハー ド液 (Denhard' s液) 0. 2 % S D S 1 0 %硫酸デキス トラン、 5 0 %ホルムアミ ド、 0. 0 1 %A b t i f o r m B (商品名、 シグマ社) (消泡剤) 、 0. 2 m g Zm 〖 サーモン精子変性 D N A、 2. 5 mMピロリ ン酸ナ ト リウム、 2 5 mM— ME Sを含む p H 6. 5の緩衝液 を用いた。 c D NAを組み込んだ A Z i p L o xファージの c D NA部分を、 プ ラスミ ド p Z L 1 に組み込み、 さ らにプラスミ ド p B l u e s c r i p t II S K— (S atagene社製) へサブクローン化した。
得られたクローンすなわち、 マウス a s c— 1の c DNAを含むクローンにつ いて、 塩基配列決定のための合成プライマーを用いてダイターミネータ一サイク ルシーケンシング法 (Appl ied Biosystems社) により、 c D NAの塩基配列を決 定した。
これにより、 マウス a s c — 1遺伝子の塩基配列が得られた。 また、 c DN A の塩基配列を常法により解析して、 c DNAの翻訳領域とそこにコー ドされる a s c— 1のアミ ノ酸配列を決定した。
これらの配列を、 後記配列表の配列番号 1 (アミ ノ酸配列) 及び 2 (塩基配 列) に示した。
a s c一 1は、 中性アミ ノ酸輸送系 Lに相当するラッ ト トランスボー夕一 L A T 1 と 4 5 %、 L A T 2 と 6 5 %のアミ ノ酸配列の相同性を有していた。 また、 a s c— 1は、 中性および塩基性ァミ ノ酸輸送系 y -Lに相当するヒ ト トランスボ —夕一 y +L AT l と 4 5 %、 +し八丁 2 と 4 5 %の相同性を有してぃた。 さら に、 a s c — 1は、 シスチン及び酸性アミ ノ酸輸送系 X-cに相当するマウス トラ ンスポ一ター x C Tと 4 6 %、 シスチン及び中性及び塩基性アミノ酸輸送系 b °' +に相当するラッ ト トランスポーター B AT 1 と 44 %のアミ ノ酸配列の相同性を 有していた。
a s c— 1 とラッ ト L AT 2、 ラッ 卜 L AT 1、 ヒ ト y十 L AT 1、 ヒ ト y +L AT 2及びマウス x C Tのアミノ酸配列の比較を第 1図に示した。
S O S U I アルゴリズム (Hirokawa, T. et al,、 Bioinformat ics、 第 14巻、 第 378項 (1998年)) により、 a s c — 1のアミ ノ酸配列を解析した結果、 第 1図に 付線により示したように、 1 2個の膜貫通領域 (membrane- spanning domain) が 予想された。 また、 第 2の親水性ループにチロシンリ ン酸化部位、 N—末端細胞 内領域、 第 8の親水性ループ、 および C一末端細胞内領域にプロテインキナーゼ C依存性のリ ン酸化部位、 N—末端細胞内領域に c AMP依存性のリ ン酸化部位 と考えられる部位があった。
( 3 ) L—体及び D—体アミ ノ酸を輸送するナ ト リ ウム非依存性小型中性アミ ノ 酸トランスポ一夕一 a s c一 1のヒ ト c DNAの単離と c RNAの調製
マウス a s c— l c DNAの N c o l 切断断片 (マウス a s c — 1 c D N A の 5 2 3— 1 3 6 6 b pに相当) を32 P— d C T Pでラベルしてプローブとして 用いて、 ヒ ト脳 c D N Aライブラリーをスク リーニングした。
c D N Aライブラリ一はヒ ト脳由来ポリ (A) RNA ( C 1 on t ech社から購入) から、 c D NA合成用キッ ト (商品名 : Superscript Choice System, ギブコ社 製) を使用して作製し、 ファージベクター λ Ζ i p L o x (ギブコ社製) の制限 酵素 E c o R I切断部位に組み込んだ。 32P— d C T Pでラベルしてプローブに よるハイブリダィゼ一シヨ ンは、 3 7 °Cのハイブリダィゼーシヨ ン用溶液中一晩 行い、 フィルタ一膜は、 3 7でで 0. 1 X S S CZ 0. 1 % S D Sで洗浄した。 ハイブリダィゼーシヨ ン用溶液としては、 5 X S S C、 3 Xデンハー ド液 ( Denh ard's液) 0. 2 % S D S、 1 0 %硫酸デキス トラン、 5 0 %ホルムアミ ド、 0. 0 1 % A b t i f o r m B (商品名、 シグマ社) (消泡剤) 、 0. 2 m g / m 1サーモン精子変性 D N A、 2. 5 m Mピロリ ン酸ナ ト リウム、 2 5 m M— M E Sを含む p H 6. 5の緩衝液を用いた。 c D N Aを組み込んだ λ Z i p L 0 Xフ ァ一ジの c D N A部分を、 プラスミ ド p Z L 1に組み込んだ。
得られたクローンすなわち、 ヒ ト a s c — 1の c DNAを含むクローンについ て、 塩基配列決定のための合成プライマ一を用いてダイ夕一ミネ一夕一サイクル シーケンシング法 (Appl ied Biosys teras社) により、 c DNAの塩基配列を決定 した。
これにより、 ヒ ト a s c — 1遺伝子の塩基配列が得られた。 また、 c DNAの 塩基配列を常法により解析して、 c DNAの翻訳領域とそこにコー ドされる a s c - 1のアミ ノ酸配列を決定した。
これらの配列を、 後記配列表の配列番号 4 (アミ ノ酸配列) 及び 5 (塩基配 列) に示した。
ヒ ト a s c— 1 とラッ ト a s c — 1の予想されるアミ ノ酸配列の比較を第 2図 に示し 7こ。
( 3 ) マウスの種々の組織における a s c— 1遺伝子の発現 (ノーザンブロッテ ィ ングによる解析)
a s c - 1遺伝子の第 1 — 5 1 2番目の塩基に相当する c D N A断片を制限酵 素 E c o R I 及び X h o l で切り出し、 32 P — d C T P でラベルしてプローブ として用いて、 マウスの種々の組織から抽出した R N Aに対してノーザンブロッ ティ ングを以下のようにして行った。 3 gのポリ (A) +R N Aを 1 %ァガ口一 ス Zホルムアルデヒ ドゲルで電気泳動したのち、 ニ トロセルロースフィルターに トランスファーした。 このフィルタ一を 4 2 °Cで、 32 P — d C T Pでラベルした a s c - 1 c D N A断片を含んだハイブリ ダイゼ一ショ ン液で 1晚ハイブリダイ ゼ一シヨ ンを行った。 フィル夕一を、 6 5 °Cにて、 0 . 1 % S D Sを含む 0 . 1 X S S Cで洗浄した。
ノーザンプロッティ ングの結果を第 3図に図面に代わる写.真で示す。 この結果、 脳、 肺、 胎盤において 1 . 9 k b付近にバン ドが検出された。 さらに、 小腸にお いて 4. 4 k b付近にバン ドが検出された。
( 4 ) マウス脳における a s c — : L及び 4 F 2 h c蛋白の発現
マウス a s c — 1 の 5 1 7 — 5 3 0アミ ノ酸残基に相当する合成オリゴぺプチ ド [ P S P L P I T D K P L K T Q C ] 及びマウス 4 F 2 h c の 5 1 6 — 5 2 6 アミ ノ酸残基に相当する合成オリゴペプチド [ C E G L L L Q F P F V A] ( C 一末¾あるレ ί3~ N—末 のシステン残基【ま K L H (keyhole l impet hemocyan i n e) とのコンジユゲーシヨ ンのために導入) に対する特異抗体をアル トマンらの方 法に準じて作製した (Al traan et al. , Proc. Natl. Acad. Sci. U. S.A. 第 81巻、 2176- O項、 1984年) 。
マウス脳膜画分を トレンスらの方法 (Thorens et al. Cel l 第 55巻、 28卜 290項. 1988) に従って調整した。 タンパク試料は、 5 %の 2 —メルカプトエタノール存 在下 (還元条件下) あるいは非存在下 (非還元条件下) で、 1 0 0 °Cで 5分間処 理後、 S D S -ポリアク リルアミ ドゲルで電気泳動し、 Hybond— P P V D V ト ランスファー膜にプロッティ ングし、 抗 a s c — 1抗血清 ( 1 : 1 0 , 0 0 0 ) あるいは抗 4 F 2 h c抗血清 ( 1 : 1 0 , ひ 0 0 ) で処理した。
結果を第 4図に図面に代わる写真で示す。 第 4図の左側は抗 a s c - 1抗体のも ので、 右側は抗 4 F 2 h c抗体を用いたものである。 それぞれ、 非還元条件下
(-) 及び還元条件下 (+ ) で行った。
抗 a s c — 1抗血清では、 第 4図に示すように、 非還元条件下において観察さ れる 1 1 8 K D aのバン ドは還元条件下では消失し、 3 3 k D aのバン ドに移行 した。 抗 4 F 2 h c抗血清では、 非還元条件下において観察される 1 1 8 k D a のバン ドは還元条件下では消失し、 8 5 k D aのバン ドが出現した。 これらの結 果は、 a s c — 1 と 4 F 2 h cがジスルフイ ド結合によ り連結し、 ヘテロダイマ —を形成することを示唆する。 実施例 2 : L一体及び D—体アミ ノ酸を輸送するナ ト リ ウム非依存性小型中性ァ ミノ酸 トランスポー夕一 a s c — 1 の特徴づけ
( 1 ) a s c 一 1 の輸送活性における 4 F 2 h c の役割
マウス a s c 一 1遺伝子 c R NAを単独でアフリカッメガエル卵母細胞に発現 させた場合と、 マウス a s c — 1遺伝子 c R N Aとマウス 4 F 2 h c遺伝子 c R NAを共にアフリカッメガエル卵母細胞に発現させた場合のァラニンの取り込み を比較した。
マウス a s c — 1遺伝子 c R N A 1 2 n g、 マウス 4 F 2 h c遺伝子 c R N A 1 3 n g、 又はマウス a s c — 1遺伝子 c R NA 1 2 n g/マウス 4 F 2 h e遺伝子 c R NA 1 3 n gを、 卵母細胞に注入することによって発現させ 3 日間培養した。 a s c — l遺伝子 c R NA、 4 F 2 h c遺伝子 c R NA、 又は a s c ― 1遺伝子 c R NAと 4 F 2 h c遺伝子 c R NAを注入した卵母細胞につい て、 基質としてァラニンを用い、 基質の取り込み実験を金井らの方法 (Kanai an d Hediger, Nature, 第 360巻、 467- 471頁、 1992年) に準じて、 以下のように行つ た。 基質として 14 Cーァラニン ( I O O M) を含むナ ト リ ウムイオンを含まな い取り込み用溶液 (N a + - free uptake solution) [ 1 0 0 mM塩化コ リ ン、 2 mM塩化カリウム、 1 . 8 mM塩化カルシウム、 1 m M塩化マグネシウム、 5 m M H E P E S、 p H 7. 4 ] 中にて卵母細胞を 3 0分間放置して、 細胞内に取 り込まれた放射能のカウン トで基質の取り込み率を測定した。
その結果を第 5図に示す。 ァラニンの取り込みは、 a s c — 1 のみを発現させ
た卵母細胞では、 対照として水を注入した卵母細胞と同レベルであつたが、 a s c - 1 と 4 F 2 h cを共に発現させた卵母細胞では大きなァラニンの取り込みを 示しており、 a s c— 1がその機能を発揮するためには、 4 F 2 h eが必要であ ると考えられた。
( 2 ) a s c— 1の輸送活性の塩依存性
マウス a s c 一 1遺伝子 c RNAと 4 F 2 h c遺伝子 c RNAを共に注入した 卵母細胞によるァラニン取り込み実験において培地に添加する塩の影響を調べた ( ァラニンの取り込み実験は、 マウス a s c - 1遺伝子 c RNAとマウス 4 F 2 h c遺伝子 c RN Aを共に注入した卵母細胞を用い、 前記実施例 2 ( 1 ) に記載 の方法に準じて実施した。 但し、 取り込み用溶液は、 ナ ト リ ウムイオンの影響を みる場合は、 ナ ト リ ウムイオンを含まない取り込み用溶液 (N a— - free uptake solution) にかえて、 標準取り込み用溶液 ( 1 0 O mM 塩化コ リ ンを 1 0 0 m M塩化ナ トリ ウムに変えたもの) を用いた。 塩素イオンの影響をみる場合は、 標 準取り込み用溶液に代えて、 ダルコン酸取り込み用溶液 ( 1 0 O mM塩化ナ トリ ゥムを 1 ◦ O mMダルコン酸ナトリ ウムに変えたもの) を用いた。
その結果を第 6図に示す。 細胞外のコ リ ンをナ ト リ ウムに変えても、 細胞外の 塩素イオンをダルコン酸イオンに変えても、 ァラニンの取り込みに何ら影響を与 えなかった。 このことから、 a s c — 1はナ ト リ ウムイオン及び塩素イオンに非 依存的に働く トランスポ一夕一であることが示された。
( 3 ) a s c— 1のミカエリス一メンテン動力学試験
L一体及び D—体アミ ノ酸を輸送するナ トリ ウム非依存性小型中性アミ ノ酸ト ランスポーター a s c - 1のミカエリス一メンテン動力学試験を行った。 基質ァ ラニンの濃度の違いによるァラニン取り込み率の変化を調べることによ り、 a s c一 1のミカエリス-メンテン動力学試験を行った。
ァラニンの取り込み実験は、 マウス a s c — 1遺伝子 c RNAとマウス 4 F 2 h c遺伝子 c RN Aを共に注入した卵母細胞を用い、 前記実施例 2 ( 1 ) に記載 の方法に準じて実施した。 その結果を第 7図に示す。 この結果、 Km値は 2 3.
0 ± 5. 1 i M (平均土標準誤差、 n = 4 ) であった。
ァラニン以外の a s c— 1の基質となるアミノ酸においても同様にミカエリス 一メンテン動力学試験を行い、 Km値と Vm a X値を算出した。 この結果を次の 表 1に示した。 表 1中の各々の Vm a x値は、 ァラニンの Vm a x値を 1. 0 0 とした場合の比率で示した。
基質となる各アミノ酸の Km値および Vmax値 アミノ酸 K m V max
μΜ
レアラニン 23.0 (1.00)
グリシン 7.8 0.89
し-セリン 11.3 1.02
L-スレ才ニン 19.3 0.86
L-システィン 23.7 0.82
レバリン 112 1.17
し-メチォニン 139 1.15
レイソロイシン 160 1,33
L-ロイシン 245 0.58
レヒスチジン 368 0.79
し-フエ二ルァラニン 464 1.09
ΑΙΒ 22.7 0.81
D-ァラニン 100 0.86
D-セリン 52.0 1.22
β-ァラニン 281 0.92 各々のアミノ酸の Vmax値は、 ァラニンの Vmax値に対す る比率で示した。
( 4 ) a s c— 1の基質選択性 (アミ ノ酸及びその類似物質添加による阻害実 験)
マウス a s c— 1遺伝子 c RNAとマウス 4 F 2 h c遺伝子 c RNAを共に注 入した卵母細胞によるァラニンの取り込み実験において、 系への各種アミ ノ酸及 びその類似物質添加の影響を調べた。
ァラニンの取り込み実験は、 マウス a s c一 1遺伝子 c R NAとマウス 4 F 2 h c遺伝子 c RN Aを共に注入した卵母細胞を用い、 前記実施例 2 ( 1 ) に記載 の方法に準じて実施した。 但し、 ナ ト リ ウムイオンを含まない取り込み用溶液
(N a +- free uptake solution) を用い、 5 mMの各種化合物 (非標識) の存在 下及び非存在下で、 '4Cーァラニン ( 5 0 x M) の取り込みを測定した。
各種 L一アミ ノ酸もしく はその類似化合物の存在下及び非存在下 (一) での結 果を第 8図に示す。 各種 D-アミ ノ酸の存在下及び非存在下 (一) での結果を第 9 図に示す。 ァラニンもしく はその類似化合物の存在下及び非存在下 (一) での結 果を第 1 0図に示す。
各種の中性 L一アミノ酸で、 c i s —阻害効果が観察された。 特に、 グリ シン、 ァラニン、 セリ ン、 スレオニン、 システィ ンは a s c— 1を介した 14 C—ァラニ ンの取り込みを強く阻害した (第 8図参照) 。
D—アミ ノ酸のうち、 D—ァラニン、 D—セリ ンは、 a s c — 1を介した 14 C —ァラニンの取り込みを強く阻害した。 D—スレオニン、 D—システィ ンは、 a s c— 1を介する 14 C—ァラニンの取り込みを中等度に阻害した (第 9図参照) 。 標準アミノ酸以外の物質でも、 β — ァ ラニン、 ァラニンメチルエステル、 ひ 一 ァミ ノイソブチル酸 ( α—メチルァラニン) も a s c — 1を介した '4 C—ァラニ ンの取り込みを阻害した (第 1 0図参照) 。 酸性アミ ノ酸、 塩基性アミ ノ酸、 輸 送系 L特異的抑制薬 2—アミ ノー 2—ノルボルナンカルボン酸 (2- amino - 2-norb ornane-carboxyl ic acid) ( B C H) 、 ァ ―ァミノイソブチル酸、 及び N—メチ ルアミ ノ酸 (N—メチルァラニン、 ひ 一アミノメチルイソブチル酸、 サルコシ ン) は、 a s c -1を介した 14 C—ァラニンの取り込みに影響を与えなかった (第 8図及び第 1 0図参照) 。
( 5 ) a s c — 1の基質選択性 (各種ァミ ノ酸及びその類似物質を基質とする取 り込み試験)
各種ァミ ノ酸及びその類似物.質を基質として、 a s c — 1 による取り込みを調 ベた。 各種アミノ酸及びその類似物質の取り込み実験は、 マウス a s c— 1遺伝 子 c RNAとマウス 4 F 2 h e遺伝子 c RNAを共に注入した卵母細胞を用い、 前記実施例 2 ( 1 ) に記載の方法に準じて実施した。 但し、 基質としては、 14 C ーァラニンに変えて、 放射能標識された各種の化合物を用いた。
放射能標識 L一アミ ノ酸の取り込みについての結果を第 1 1図に示す。 放射能 標識 D—アミ ノ酸の取り込みについての結果を第 1 2図に示す。 放射能標識 L— ァラニンもしく はその類似化合物の取り込みについての結果を第 1 3図に示す。 その結果、 グリ シン ( ' 4 C化合物) 、 Lーァラニン ( 14 C化合物) 、 Lーセリ ン (14C化合物) 、 L-スレオニン ( 14C化合物) 、 L -シス.ティ ン ( 14C化合 物) (以上、 第 1 1図参照) 、 D—ァラニン ( ' 4 C化合物) 、 D—セリ ン ( 14 C 化合物) (以上、 第 1 2図参照) 、 β - ァ ラニン ('4C化合物) 、 ひ —アミ ノィ ソブチル酸 ( 14C化合物) (以上、 第 1 3図参照) を基質とした場合に、 卵母細 胞への大きな取り込みが認められた。
( 6 ) a s c— 1の輸送活性の p H依存性
マウス a s c一 1遺伝子 c RNAと 4 F 2 h c遺伝子 c RNAを共に注入した 卵母細胞によるァラニン取り込み実験において p Hの影響を調べた。 ァラニンの 取り込み実験は、 マウス a s c— 1遺伝子 c RNAとマウス 4 F 2 h c遺伝子 c RN Aを共に注入した卵母細胞を用い、 前記実施例 2 ( 1 ) に記載の方法に準じ て実施した。
ァラニン取り込み実験において p Hの影響を調べた結果を第 1 4図に示す。 そ の結果、 ァラニン取り込みには有意な p H依存性はなかった (第 1 4図参照) 。
( 7 ) a s c— 1を介するアミノ酸の放出試験
マウス a s c— 1遺伝子 c RNAと 4 F 2 h c遺伝子 c RNAを共に注入した 卵母細胞において、 前負荷した 14 Cーァラニンの a s c - 1 を介する放出を調べ た。 マウス a s c — 1遺伝子 c RNAと 4 F 2 h c遺伝子 c RNAを共に注入し た卵母細胞に、 l O O n l の I O O Mの 14 C—ァラニン (:〜 3 n C i ) を注入
し、 氷冷のァラニンを含まないナト リウムイオンを含まない取り込み用溶液 (N a +- free uptake solut ion) で洗浄した後、 室温 ( 1 8 ° (:〜 2 2 °C ) のァラニン ( 1 0 0 M) 添加あるいは未添加のナトリ ウムイオンを含まない取り込み用溶 液 (N a +- free uptake solut ion) に移し、 細胞外に放出される '4 C—ァラニン の量を測定した。
また、 ラッ ト L A T 1遺伝子 c R N Aと 4 F 2 h c遺伝子 c R N Aを共に注入 した卵母細胞 (Kanai et al. , J. Biol . Chem., 第 Π3卷、 23629項、 1998年) に 同様に '4 C —ロイシンを注入し、 氷冷のロイシンを含まないナ ト リ ウムイオンを 含まない取り込み用溶液 (N a free uptake solut ion) で洗浄した後、 室温
( 1 8 °C 2 2 °C ) のロイシン ( Ι Ο Ο Μ) 添加あるいは未添加のナ ト リウム イオンを含まない取り込み用溶液 (N a free uptake solut ion) に移し、 細胞 外に放出される 14 C —ロイ シンの量を測定した。
これらの結果を、 第 1 5図、 第 1 6図及び第 1 7図に示す。
第 1 5図は、 マウス a s c — 1遺伝子の c R N A及びマウス 4 F 2 h c遺伝子の c R N Aを注入した卵母細胞よる 14 C—ァラニンの放出を調べた結果を示すもの であり、 図中の縦軸は、 放出された放射活性を卵母細胞に注入した放射活性に対 する割合 (%) を示す。 第 1 5図の左側は N a非存在下 (一) 、 右側は N a存在 下 (+ ) を示し、 各グラフの L — A l a (—) は L —ァラニン無添加の場合を、 L - A 1 a ( + ) は L —ァラニン添加の場合をそれぞれ示す。
第 1 6図は、 マウス a s c — 1遺伝子の c R N A及びマウス 4 F 2 h c遺伝子 の c R N Aを注入した卵母細胞による 14 Cーァラニンの放出の時間経過を調べた 結果を示すもので、 図中の〇印は対照としてマウス a s c - 1遺伝子の c R N A 及びマウス 4 F 2 h c遺伝子の c R N Aの代わり に水を注入した卵母細胞におけ る 14 Cーァラニンの放出をァラニン未添加のナ ト リ ウムイオンを含まない取り込 み用溶液 (N a +- free uptake solution) での場合を、 ·印は対照としてマウス a s c 一 1遺伝子の c R N A及びマウス 4 F 2 h c遺伝子の c R N Aの代わりに 水を注入した卵母細胞における ' 4 C—ァラニンの放出をァラニン添加のナ トリ ウ ムイオンを含まない取り込み用溶液 (N a +- free uptake solution) での場合を, 口印はマウス a s c ― 1遺伝子の c R N A及びマウス 4 F 2 h c遺伝子の c R N
Aを注入した卵母細胞における 14 Cーァラニンの放出をァラニン未添加のナ トリ ゥムイオンを含まない取り込み用溶液 (N a +- free uptake solution) での場合 を、 騸印はマウス a s c— l遺伝子の c RNA及びマウス 4 F 2 h c遺伝子の c RNAを注入した卵母細胞における 14Cーァラニンの放出をァラニン添加のナト リ ウムイオンを含まない取り込み用溶液 (N a +- free uptake solution) での場 合を、 それぞれ示す。 図中の縦軸は、 放出された放射活性を卵母細胞に注入した 放射活性に対する割合 (%) を示す。
第 1 7図は、 ラッ ト LAT 1遺伝子の c RNA及びラッ ト 4 F 2 h c遺伝子の c R N Aを注入した卵母細胞による 14 C一 口イシンの放出の時間経過を調べた結 果を示すもので、 図中の〇印は対照としてラッ ト L AT 1遺伝子の c R N A及び ラッ ト 4 F 2 h c遺伝子の c R NAの代わりに水を注入した卵母細胞における
C一 口イシンの放出をロイシン未添加のナ ト リ ウムイオンを含まない取り込み用 溶液 ( N a T-free uptake solut ion) での場合を、 鲁印は対照としてラッ ト L A T 1遺伝子の c RNA及びラッ ト 4 F 2 h c遺伝子の c RN Aの代わりに水を注 入した卵母細胞における 14 C一口イ シンの放出をロイ シン添加のナ ト リ ウムィォ ンを含まない取り込み用溶液 (N a free uptake solution) での場合を、 口印 はラッ ト L A T 1遺伝子の c R N A及びラッ ト 4 F 2 h c遺伝子の c R N Aを注 入した卵母細胞における 14 C—ロイシンの放出をロイシン未添加のナ ト リ ウムィ オンを含まない取り込み用溶液 (N a +- free uptake solution) での場合を、 ■ 印はラッ ト LAT 1遺伝子の c RNA及びラッ ト 4 F 2 h c遺伝子の c RNAを 注入した卵母細胞における '4 C一口イ シンの放出をロイシン添加のナ ト リ ウムィ オンを含まない取り込み用溶液 (N a +-free uptake solution) での場合を、 そ れぞれ示す。 図中の縦軸は、 放出された放射活性を卵母細胞に注入した放射活性 に対する割合 (%) を示す。
その結果、 a s c一 1においては細胞外にァラニンを添加しない場合において も、 14Cーァラニンの有意な放出が観察され、 その放出は細胞外にァラニンを添 加することによって大きく増加した (第 1 5図、 第 1 6図参照) 。 これに対して. 強制交換を媒介する完璧な交換輸送体である L AT 1においては細胞外に口イシ ンを添加した場合のみロイシンの放出が観察された (第 1 7図参照) 。 従って、
a s c - 1は交換輸送モー ドが主でありながら、 促通拡散型輸送モー ドも混在す る トランスポーターであることがわかった。
( 8 ) アミ ノ酸の放出試験を利用した a s c 一 1の基質選択性の検討
マウス a s c一 1遺伝子 c RNAと 4 F 2 h c遺伝子 c RNAを共に注入した 卵母細胞において、 前負荷した 14Cーァラニンの a s c 一 1を介する放出を調べ ることにより、 a s c一 1を介する '4 Cーァラニンの取り込みを抑制する化合物 が a s c一 1の基質であるかどうかを検討した。
マウス a s c — 1遺伝子 c RNAと 4 F 2 h c遺伝子 c R N Aを共に注入した 卵母細胞に l O O n l の 1 0 0 x Mの '4 Cーァラニン (〜 3 n C i ) を注入し、 氷冷のァラニンを含まないナ ト リウムィオンを含まない取り込み用溶液 (N aT - free uptake solution) で洗浄した後、 室温 ( 1 8。(:〜 2 2 °C ) のアミ ノ酸及び アミ ノ酸類似化合物 ( 1 Ο Ο i M) 添加あるいは未添加のナ ト リウムイオンを含 まない取り込み用溶液 (N a +- free uptake solution) に移し、 細胞外に放出さ れる 14 Cーァラニンの量を測定した。
結果を第 1 8図に示す。 第 1 8図の黒塗りのカラムは、 マウス a s c— l遺伝 子の c RNA及びマウス 4 F 2 h c遺伝子の c RNAを注入した卵母細胞を用い た場合のものであり、 白抜きのカラムは対照として c R N Aの代わりに水を注入 した卵母細胞を用いた場合のものである。 (一) は、 ナ ト リウムイオンを含まな い取り込み用溶液にアミ ノ酸を添加していない場合を示す。 第 1 8図の縦軸は、 放出された放射活性を卵母細胞に注入した放射活性に対する割合 (%) を示す。 この結果、 グリ シン、 ァラニン、 セリ ン、 スレオニンにより高度の、 メチオン. パリ ンにより中程度の 14 Cーァラニン放出の増加が観察された (第 1 8図参照) , この結果は、 アミ ノ酸取り込み試験の結果 (第 1 1図参照) と一致し、 アミ ノ酸 の放出試験が a s c 一 1の基質選択性の決定に使用し得ることが示された。
この方法を用いて、 さ らに D—アミ ノ酸、 アミ ノ酸類似化合物について検討し た結果を第 1 9図及び第 2 0図に示す。 D—アミ ノ酸に関しては、 D—ァラニン. D—セリ ン、 D—スレオニン、 D—システィ ンが有意な '4 C—ァラニン放出の増 加を引き起こした (第 1 9図参照) 。 アミ ノ酸類似化合物に関しては、 /3—ァラ
ニン、 ァラニンメチルエステル、 ひーァミ ノイソブチル酸 (A I B ) が有意な 14 C—ァラニン放出の増加を引き起こした (第 2 0図参照) 。 従って、 放射能標識 化合物が入手できないために放射能標識を用いた取り込み実験を施行できなかつ た D—スレオニン、 D—システィン及びァラニンメチルエステルが a s c 一 1 の 基質となることが判明した。 このように、 アミ ノ酸放出試験を用いることにより、 検討のための放射能標識化合物を入手できない化合物においても、 a s c 一 1 の 基質となるかどうかすなわち a s c 一 1 のよつて輸送されるかどうかをスク リー ニングすることができる。
( 9 ) アミ ノ酸の放出試験を利用した a s c 一 1 の細胞内基質結合部位の基質選 択性の検討
マウス a s c — 1遺伝子 c R N Aと 4 F 2 h c遺伝子 c R N Aを共に注入した 卵母細胞において、 前負荷した 1 4 C—アミ ノ酸の a s c 一 1 を介する放出を調べ ることにより、 a s c — 1 の細胞内基質結合部位の基質選択性を検討した。
マウス a s c — 1遺伝子 c R N Aと 4 F 2 h c遺伝子 c R N Aを共に注入した 卵母細胞に l O O n l の 1 0 0 /x Mの 14 C—アミ ノ酸 (〜 3 n C i ) を注入し、 氷冷のァラニンを含まないナ ト リウムイオンを含まない取り込み用溶液 (N a + - free uptake solut ion) で洗浄した後、 室温 ( 1 8 ° (:〜 2 2 °C ) のァラニン ( 1 0 0 Μ) 添加あるいは未添加のナト リ ウムイオンを含まない取り込み用溶液 (N a— - free uptake solut ion) に移し、 細胞外に放出される 14 C—アミ ノ酸の 量を測定した。
結果を第 2 1 図に示す。 第 2 1 図の黒塗りのカラムはナ ト リ ウムイオンを含ま ない取り込み用溶液へァラニンを添加した場合を、 斜線のカラムはナト リ ウムィ オンを含まない取り込み用溶液へァラニンを添加しない場合を示す。 第 2 1 図の 縦軸は、 放出された放射活性を卵母細胞に注入した放射活性に対する割合 (%) ¾示す。
この結果、 細胞内に注入した '4 C一標識グリ シン、 ァラニン、 セリ ン、 スレオ ニン及びシスティ ンの、 細胞外ァラニンによる放出の増加が観察された。 これに より、 細胞内基質結合部位も細胞外と同様に、 グリ シン、 ァラニン、 セリ ン、 ス
レオニン及びシスティ ンなどの小型の中性アミ ノ酸を受け入れる基質選択性を示 すことが示された。
( 1 0 ) ヒ ト a s c— 1の機能の確認
実施例 1 ( 3 ) により得られたヒ ト a s c— lの c DNAを含むプラスミ ドか ら、 T 7 RNAポリ メラ一ゼを用いて、 c RNA ( c DNAに相補的な RN A) を調製した。 ヒ ト a s c — 1遺伝子 c R N Aを単独で卵母細胞に発現させた 場合と、 ヒ 卜 a s c— 1遺伝子 c RNAとヒ ト 4 F 2 h c遺伝子 c R N Aを共に 卵母細胞に発現させた場合の H C—ァラニンの取り込みを比較した。
ヒ ト a s c— 1遺伝子 c R N A 1 2. 5 n g、 ヒ ト 4 F 2 h c遺伝子 c R N A 1 2. 5 n g、 又はヒ ト a s c — 1遺伝子 c RNA 1 2. 5 n gZヒ ト 4 F 2 h c遺伝子 c RNA 1 2. 5 n gを、 卵母細胞に注入することによって発 現させ 3 日間培養した。 ヒ ト a s c — 1遺伝子 c R N A、 4 2 11 (;遺伝子 1^ NA、 もしくはヒ ト a s c — l遺伝子 c RNAと 4 F 2 h c遺伝子 c RNAを注 入した卵母細胞について、 基質としてァラニンを用い、 基質の取り込み実験を実 施例 2 ( 1 ) に準じて行った。
その結果、 ァラニンの取り込みは、 マウス a s c — 1 と同様、 a s c — 1のみ を発現させた卵母細胞では、 対照として水を注入した卵母細胞と同レベルであつ たが、 a s c 一 1 と 4 F 2 h cを共に発現させた卵母細胞では大きなァラニンの 取り込みが観察された。 よって、 ヒ ト a s c — 1 もマウス a s c — 1 と同様、 4 F 2 h c と共存することにより始めて機能を発揮することが示された。 また、 ヒ ト a s c — 1 も前記したマウス a s c— 1 と同様な性質を有することがわかる。 産業上の利用可能性
本発明の L一体及び D—体アミノ酸を輸送するナ ト リウム非依存性小型中性ァ ミノ酸トランスポーター及びその遺伝子は、 当該トランスボーターの発現箇所で の 一体及び D—体小型中性アミ ノ酸の及び外来性異物も含めたアミ ノ酸類似化 合物の輸送のイ ンビト口での検討や、 それを基にしたそれら化合物の体内動態の インビト口での予測を可能とする。 さ らに、 当該トランスポ一夕一の発現箇所を
効率良く透過する薬物の開発に有用であり、 本発明は新規なアミ ノ酸トランスボ 一夕一を提供するものである。 また、 当該トランスポ一ターの有する L一体及び D—体小型中性アミ ノ酸及びその類似物質を輸送する能力を変調させることによ り、 細胞の酸化的ス トレスに対する抵抗性を制御する方法、 神経系における N M D A型グルタミ ン酸受容体の活性を制御する方法、 細胞増殖を制御する方法や、 これらの活性を有する薬物をスク リーニングする方法として有用である。 '