明細書 ボーノレぺン 技術分野
この発明は、 筆記ボールがチップ先端側のカシメ内面に密接するように常時弾性体で 押圧するように設け、 先端のボールをィンキ漏れを防止するバルブとして機能させたボ —ルペンに関するものである。 背景技術
従来から、 ボ一ルペンタイプの筆記具は、 油性ボ一ルペン、 水性ボ一ルペンあるいは 中性ボールペンが用いられていた。
ここで、 油性ボールペンは、 高級アルコール溶剤を主溶剤とした高粘度 (約 1万 c p ) のインクをインク収納管に直接収納したものである。 また、 水性ボールペンは、 水を主 溶剤としたごく低粘度 (2〜3 c p ) のインクを中綿と呼ぶ繊維束芯に保時させたもの である。 更に、 中性ボールペンは、 粘度が油性と水性との中間の中粘度インクや擬塑性 を付与したいわゆるゲルインクを用いたものである。
しかしながらどのタイプのインクを使用したボールペンであっても、 筆記をしていな い保管時には、 筆記時に見られない共通の不具合が確認された。
具体的には、 ノック式のボ一ルペンにおいてペン先を収納せずにペン先を下向きに突 出した状態で、 またはキヤップ式のボ一ルペンにおいてキヤップをせずにペン先を下向 きに突出した状態で、 ペン立て等に保管した場合に、 ペン先のボールバルブが開いてし まい、 インクが漏れだしたり、 ペン先が乾燥して筆記不能になる等の不具合が確認され ている。
そこで本発明は、 主として普及型のボールペンであって、 ペン先内部に筆記部となる ボールを先端から突出した状態で抜け止め不可能に遊嵌したボ一ルペンの改良を目的と している。
具体的には、 ペン先が下向きとなり、 ボールが露出した状態でペン立て等に保管され ているときに、 ペン先からのインク漏れを防止し、 更にはドライアップによる筆記不能
を防止したボールペンの提供を目 としている。 発明の開示
前述した目的を達成するために、 本発明のうち請求の範囲第 1項に記載した発明は、 チップの先端より臨出した状態で回転可能に遊嵌された筆記ボールが、 先端側にはカシ メ加工によって後端側には受け座によってそれぞれ前後退の移動規制されており、 内部 には、 筆記ボールと、 後端側からインクを導出するインク孔を有するペン先と、 インク を収納しておくインク収納管と、 受け座とインク孔を連通する複数の溝によって構成さ れているチャンネル溝と、 先端の筆記ボールを常時直接又は間に可動部材を介して押圧 するように設置された弾性体とを有するボ一ルペンにおいて、 弾性体の筆記ボール押力 F ( g )、 と リフィールを含むボ一ルペン総重量 M ( g ) との間に、 関係式: Mく Fを满 足する関係としたことを特徴とする。
このことによって、 ペン先が下向きとなり、 ボールが露出した状態でペン立て等に保 管された状態にボールペン位置させても、 弾性体によつて筆記ボールが先端側に押圧さ れ、筆記ボールがボールバルブとして機能するので、ペン先からのィンク漏れを防止し、 更にはドライアップによる筆記不能を防止することができる。 なおここにおける Fは、 装着時の筆記ボール押力である。
また、 請求の範囲第 2項記載の発明のように、 Fをボールペンへの組立時の値とした ときに、 Mと Fとの関係を、 1 . 3 Mく F Mにすると、 経時的要素を加味しても上記効 果が安定的に得られることがわかった。
更に、 請求の範囲第 3項記載の発明のように、 Fをボ一ルペンへの使用時の値とした ときに、 Mと Fとの関係を、 1 . 2 M < Fにすると、 使用時に、 ペン先からのインク漏 れ、 あるいはドライアップによる筆記不能を防止することができる。
請求の範囲第 4項記載の発明は、 カシメ加工時に、 チップ先端の内径部が筆記ボール に押圧するようにカシメ加工としたことを特徴とする。
このようにすると、 カシメ加工によって、 チップ先端内面に筆記ボールとほぼ同一の 曲率を有する一定巾のシール面が形成される。 従って、 筆記ボールをボールバルブとし て用いるに際して、 シールを確実に行うことができる。
請求の範囲第 5項記載の発明は、チップと リフィ一ルとの間に継ぎ手部材を位置させ、
差替え用紙 (規則 26)
かつチップ先端を下にしてを縦方向に位置すると、 チップの後端側に位置してチップへ の通路を塞ぎ、 リフィル中のインクのチップへの流入を阻止する逆止ボールを、 継ぎ手 部材中に設けたことを特徴とする。
このようにすると、 ボールペンをチップが下を向くように立てたとき、 インクがチッ プ側に流れにく くなるので、 更にペン先からのインク漏れを防止すると共に、 ドライア ップによる筆記不能を防止することができる。 図面の簡単な説明
第 1図は、 本発明の第 1の実施の形態を示すためのチップの縦断面図である。
第 2図は、 第 1図に示したチップを用いたボールペンの構造を示す縦断面図である。 第 3図は、 本発明の第 2の実施形態を示すためのボ一ルペンのペン先を示した縦断面 図である。 発明を実施するための最良の形態
第 1図から第 3図に本発明を用いたチップ及び筆記具としてのボ一ルペン等を図示す る。
第 1図は、 ボ一ルペンのペン先部分の詳細図である。
ここでチップ 1は、 切削加工によって、 インク孔 I d及び、 筆記ボールの後端を支持 するための受け座 1 bを形成し、 その後インク流路を確保するために複数本のチャンネ ル溝 l cが形成される。 そして、 チップ 1内の受け座 1 b側に筆記ボール 2を収納した 後、 チップ 1先端にカシメ加工によるカシメ 1 aを施して形成するものである。
従って、 筆記ボール 2は、 チップ 1の先端側がカシメ 1 aによって、 また後端側が受 け座 1 bによって、 各々抜け出ることがないようになつている。
更に、 筆記ポール 2は、 カシメ 1 a と受け座 1 bとの間で、 チップ 1の長手方向にガ タを有しているものである。
また更に、 この実施例では、 筆記ボール 2の後端に、 筆記ボ一ル 2をカシメ 1 aに押 しっけるための弾性体 3として、 スプリングが示してある。 この弾性体 3は、 先端が筆 記ボール 2によって、また後端がチップ 1の後端部のカシメあるいは段差によって、各々 抜けることがないように形成されている。
なお、 前記チップは、 ステンレス、 真鍮、 洋白等の金属、 またはプラステック等によ つて形成することができる。 また、 筆記ボールは、 セラミック、 超硬合金、 ステンレス 等によって形成することができる。
第 2図は第 1図に示したチップを用いた筆記体を示している。
ここでは、 前述したチップ 1が継ぎ手 4に固定され、 かつその継ぎ手 4にインク収納 管 9が固定されている。 そして、 チップ 1 と継ぎ手 4との間には、 逆止ボール 5が位置 させてある。 また前記インク収納管 9内部にはインク 6が収納され、 かつ反チップ 1側 には內部にフォロヮ一棒 8を位置させたフォロヮ一 7が充填してある。
ここで逆止ボール 5は、 チップ 1先端を下にしてを縦方向に位置すると、 チップ 1の 後端側に位置してチップ 1への通路を塞ぎ、 インク 6のチップ 1への流入を阻止するよ うに機能するものである。
ここで、 インク 6は、 一般的な剪断力下での 2 3 °C ± 5 °Cでの粘度が 1 0 c pから 5 0 0 0 c pとなっている。 また成分としては、 水をベースとし、 グリセリンゃプロピレ ングリコール等の低揮発性溶剤を 5〜 5 0 %、 着色剤として顔料や染料を 1〜2 0 %、 その他適宜の分散剤、 ゲル化剤、 防腐剤、 界面活性剤、 潤滑剤等の各種添加剤からなつ ている。
なお、 インク 6は、 他にも、 水をべ一スとした水性タイプ、 難揮発性の高級アルコ一 ルをベースとした油性タイプ、 低級アルコールをべ一スとしたアルコールタイプ、 メチ ルシク口へキサン等の揮発性溶剤をベースとした修正液タイプ等の、 種々のィンクに適 用できる。
またフォロワ一 7は難揮発性のグリス状のものを用い、 フォロヮ一棒 8はインク 6よ りも比重が軽い、 あるいは見かけ比重が軽いものが用いられている。
ここで、 前記弾性体 3の筆記ボール 2の押力を F ( g ) とし、 リフィ一ルを含むボ一 ルペンの総重量を M ( g ) とすると、 本発明では、 関係式: M < Fを満足する関係とな つてレ、る。
ここで、 Mく Fとなっているので、 ボ一ルペンを横向きに置いたときだけでなく、 チ ップ 1を下向きにした立てたときにも、 筆記ボール 2が弾性体 3によってカシメ 1 aに 押しつけられていることとなり、インク 6がチップ 1の先端から漏れてくることがない。 次に発明者は、理論的には、 関係式: Mく Fを満足すれば足りるものの、実務的には、
関係式: a Mく Fとしたときの aを求めることとした。
そこで、 弾性体 3としてのスプリングを、 Fが 1 2 g f から 24 g f までのものを用 意し、 かつリフィ一ルを含むボ一ルペンの総重量を、 Mが 1 0 g, 1 2. 4 g , 1 5. 6 gのものを用意して実験した。
そして、 ボールペンを立設した状態で接触直流テス トを行った。
ここでは、 インク 6 としては下記の配合のものを用いた。
(ィンク配合)
ここで用いたインクは、 黒色顔料としてカーボンブラックを 7重量%使用した中性ィ ンクであり、 保湿湿潤剤としてプロピレングリコールを 2 0重量%、 グリセリンを 5重 量%、 粘性付与剤としてキサンタンガム及び架橋型アク リル酸重合体を 0. 3%、 その 他に適当量の分散剤、 潤滑剤、 防塵 ·防腐剤や p H調整剤を配合し、 残りを水で形成し た。
なおこのインクは、 東機産業株式会社製の E型回転粘度計で測定した結果、 l O r p mのときに 3 0 0m P a · sで、 力つ、 l O O r p mのときに l O O m P a · sを示し †:。
またチップ 1及び継ぎ手 4としては、 下記の仕様のものを用いた。
組立の期間 : 0. 5ヶ月
チップの筆記ボ一ル径 : 0. 5 mm
逆止ボール径 : 1. 4 mm
逆止ボール重量: 0. 0 1 g
そして、 綿布紙を 3枚重ね、 筆記ボール 2が直接紙面に当たるようにして、 垂直に設 置して、 1時間放置した。またそのときの温度は 2 5°Cであり、湿度は 6 0 %であった。 その結果、 下記のような評価を行った。
〇 : インクの裏抜きがなく、 かつ 1枚目のインクの跡は痕跡程度
攀 :インク抜けは 1枚目までであり、 1枚目のインク跡は 1 mmまで
△ : インク抜けは 2枚目までであり、 1枚目のィンク跡は 2 mmまで
結果を表 1に示す。
「表 1 J
M(g) 1 0 g 1 2 . 4 g 1 5 . 6 g
1 2 6 6 6
1 3 6 1 5 6
1 4 7 4 3 7
1 5 8 7 1 8
1 6 2 1 1 2
1 7 4 4 4
1 8 2 1 1 2
2 0 1 1 1
2 1 6 6 5 1
2 3 1 1 1
2 4 1 1 1
この結果から、 Fが 1 . 2 M程度の大きさであると、
〇 : インクの裏抜きがなく、 かつ 1枚目のインクの跡は痕跡程度
の評価が多くなり、実際の使用に十分耐えることがわかった。ただ、 Fが 1 3 gであり、 Mが 1 2 . 4 gである時、 〇の評価が 「 1」 あった。 このことは、 Fと Mとがほぼ同一 でも評価の高いものもあるが、 安全を考慮した実務面では、 Mと Fとの関係を、 1 . 2 Mく Fとすることが望ましいとの評価が得られる。
そこで、 Fをボールペンへの使用時の値としたときに、 Mと Fとの関係を、 1 . 2 M く Fとすることが望ましい。 また同時に、 組立後の弾性体の劣化について測定した、
ここでは、 弾性体が組み立て前に有していた Fが、 ボ一ルペンに組み付けた後に、 ど の程度変化したのかということを調べたものである。
なおこの実験では、 3 0本の弾性体を調べた結果を平均したものをデータとして示し
差替え用紙 (規則 26)
た:
その結果が、 表 2のようになった c
「表 2 J
この実験では、 組立 2ヶ月後に一番 Fが小さくなり、 初期値に比べて、 約 1割低下し た。 このデータとしては 3ヶ月までのものしか示していないが、 実験によると、 この 2 ヶ月経過時の Fの値で、 その後はほぼ安定した数値となっている。
前述した表 1の結果と合わせると、 弾性体の初期の Fと Mとの関係は、 弾性体の Fの 値の変化を考盧すると、
Mと Fとの関係を、 1 . 3 M < F
とすることが、 一番実務的に安全であることが確認された。 なお以上の実験は、 ボ一ルペンを立設した状態で接触直流テス 卜であるが、 直流が少 なければ、 ドライアップによる筆記不能が生じないことも確認された。 即ち、 接触直流 テス 卜での良い成績が、 同時にドライアップテス 卜での良い成績となって評価された。 また、 前述した実験では、 いわゆるゲルインクを用いた場合を示した。
ただこの他にも、 擬塑性を有していない中性インク、 油性インク等を用いた場合であ つても、 同様の傾向にあることが確認されている。
次に、 第 3図に示した実施例について説明する。
この実施例は、 主として低粘度の水性ボールペンに用いられることが多いニードルタ ィプのペン先部分の詳細図である。
ここでは、 チップ 1 0に筆記ボール 1 1が前後方向に縦ガタを有した状態で回転可能 に位置させてある。 またこのチップ 1 0には、 チップ後端から弾性体 1 2を筆記ボール 1 1に到達するように挿入し、 先端で筆記ボール 1 1を押圧した状態で、 チップ 1 0外 面から塑性加工によって形成したカシメ 1 0 aによって抜け止めされている。
ここで弾性体 1 1は、 樹脂等の適度に弾性を有すると共に、 インクを毛細管現象で筆 記ボール 1 1に誘導可能な部材で形成することができる。
このように形成することによって、 未使用時には弾性体 1 2によって先端カシメ 1 0 bに筆記ボール 1 1が密着してシールされ、 また筆記時には弾性体 1 2がたわんだ状態 で筆記ボール 1 2が回転することによつて筆記可能となるも
なお、 このように形成しても、 未使用時には弾性体 1 2によって先端カシメ 1 0 bに 筆記ボール 1 1が密着してシールされるので、 ボ一ルペンを立設した状態で接触直流を 防止することができるだけでなく、 ドライアップも防止できるものである。
なお、 この実施例に関しても、 表 1 と同様の傾向が現れることが確認された。 産業上の利用可能性
以上説明したように、 本発明は、 ペン先が下向きとなり、 ボールが露出した状態でぺ ン立て等に保管された状態にボールペン位置させても、 弾性体によって筆記ボールが先 端側に押圧され、 筆記ボールがボールバルブとして機能するので、 ペン先からのインク 漏れを防止し、 更にはドライアップによる筆記不能を防止することができる。
また、 特に請求の範囲第 2項記載の発明のように、 Fをボールペンへの組立時の値と したときに、 Mと Fとの関係を、 1 . 3 M < Fにすると、 経時的要素を加味しても上記 効果が安定的に得られることがわかった。
更に、 請求の範囲第 3項記載の発明のように、 Fをボールペンへの使用時の値とした ときに、 Mと Fとの関係を、 1 . 2 Mく Fにすると、 使用時に、 ペン先からのインク漏 れ、 あるいはドライアップによる筆記不能を防止することができる。
請求の範囲第 4項記載の発明のように、 カシメ加工時に、 チップ先端の内径部が筆記
差替え用紙 (規貝 IJ26)
ポールに押圧するようにカシメ加工を行うと、 カシメ加工によって、 チップ先端内面に 筆記ボールとほぼ同一の曲率を有する一定巾のシール面が形成される。 従って、 筆記ボ —ルをボールバルブとして用いるに際して、 シールを確実に行うことができる。
また、 請求の範囲第 5項記載の発明のように、 チップと リフィールとの間に継ぎ手部 材を位置させ、 かつチップ先端を下にしてを縦方向に位置すると、 チップの後端側に位 置してチップへの通路を塞ぎ、 リフィル中のインクのチップへの流入を阻止する逆止ボ ールを、 継ぎ手部材中に設けると、 ボールペンをチップが下を向く ように立てたとき、 インクがチップ側に流れにく くなるので、 更にペン先からのインク漏れを防止すると共 に、 ドライアップによる筆記不能を防止することができる。