明細書 ラットにおけるメサンギゥム増殖性腎炎の診断方法 技術分野
本発明はラットにおけるメサンギゥム増殖性腎炎の診断方法と、 この方法に有 用なラッ卜のメグシンを認識する抗体、 並びにその用途に関する。 背景技術
腎臓の血液濾過作用や解毒作用が全く機能しない末期腎不全においては、 賢移 植が唯一の治療手段であるが、 我が国においては、 移植腎の供給体制が十分に整 備されているとは言い難い。 また、 移植療法自体に対する社会的認知も進んでい ないことなどから、 賢代用療法としては透析療法に頼らざるを得ないのが現状で ある。
現在、 日本の透析患者は推定約 1 7万人を数える。 一人当たりの平均的な治療 費は年間約 6 0 0万円を必要とし、 医療保険制度を圧迫する大きな原因の一つと されている。 また、 毎週 2〜 3日、 1日 4〜 6時間を透析治療のために拘束され ることから、 患者本人の社会活動も大きく妨げられることになる。
腎不全は、 腎疾患患者が最終的に至る病態である。 その原因や経歴は一様では なく、 薬物中毒、 感染症、 悪性腫瘍、 糖尿病、 全身性エリテマトーデス (S L E ) などの本来腎臓以外の病変により、 腎障害が発症し、 腎不全に至る場合も数 多くみられる。
腎障害においては、 末期即ち腎不全近くになるまで顕著な自覚症状が現れない ことから、 その発生が見過ごされ易く、 発症した時点では既に腎臓は回復不可能 なダメージを受けている場合が多い。 従って、 自覚症状の発現をみる前に、 でき
る限り初期の段階で腎障害を発見することが、 腎不全への移行を防ぐために、 ま た、 透析治療による保険財政圧迫を避けるためにも大切である。
従来、 腎障害を診断する手がかりとして、 いわゆる検尿による尿タンパクや尿 沈渣の検査が広く行われている。 しかし、 尿タンパクは健常人でも過激な運動、 精神的ストレス、 多量の肉食、 月経前などで一過性に増加する。 また、 若年者に 多くみられる (健常人の 0 . 5 %程度) 起立性タンパク尿など、 腎疾患に由来し ない尿タンパクもある。 さらに尿路疾患、 膀胱疾患、 女性性器疾患などでも尿夕 ンパクが認められる。 従って、 尿タンパクの検査のみで腎障害を確定診断するこ とは困難である。
尿沈渣は、 尿を遠心分離し、 その沈渣を顕微鏡で観察するものであるが、 赤血 球沈渣は健常人でもみられ、 腎障害以外の尿路系関連臓器に由来する場合もある ので、 これもまた腎障害の確定診断には不十分である。
また、 糖尿病性腎症の診断の指標として尿中に漏洩したアルブミンを定量し、 健常人の正常値と比較して早期の糖尿病性腎症を特定する方法が知られている。 しかし、 尿中のアルブミン量は健常人においても変動することから、 糖尿病性腎 症の正確な病態を把握することはできない。
さらに、 尿成分の血中停滞を検査する目的で血清クレアチニン (C r ) 、 血中 尿素窒素 (B U N) の測定なども行われるが、 これらの検査も食事の影響を受け やすい。 このように、 尿タンパクや血清 C r、 B U Nの検査において異常値が顕 れても、 それが必ずしも腎障害に由来するものとは限らず、 健常人や他の疾患で もしばしば異常値が発現する。
他に、 尿中 ? 2—ミクログロブリン、 N—ァセチルグルコサミニダ一ゼ (N A G)、 I g G、 トランスフェリン、 あるいはインタ一ロイキン一 6など様々な物 質の測定による腎障害の診断が試みられているが、 腎障害の重症度と一致しない 場合も多く、 いずれも有効でない。
また、 これら血液成分を尿中で測定する方法については、 腎全体の障害または 免疫反応の関与を推測することは可能であるが、 腎組織内の障害部位を特定する ことは困難である。 そして、 上記に列記した手段以外には、 腎障害の診断および 重症度の判定に充分な感度および特異性を有する検査方法はまだ知られていない c 現在のところ、 腎障害の診断や重症度の最終的判定には、 腎生検による組織学的 診断が不可欠とされている。
しかしながら、 腎生検は侵襲的検査であり、 出血、 感染などの合併症の危険性 が常に伴う。 また、 検査を実施するためには、 専門医と設備の整った施設に入院 しなければならず、 患者への肉体的、 社会的負担は無視できない。 '
以上のように、 検尿による検査は簡便で、 且つ、 多量の検体を処理できる優れ た検査方法ではあるが、 腎障害の確定診断という観点からは満足できるものでは ない。 一方、 腎生検は、 腎障害の診断、 重症度の判定は確実であるものの、 その 利用は極く限られたものとならざるを得ない。 このような背景から検尿の簡便さ と、 腎生検の正確さを兼ね備えた腎障害の診断方法が望まれていた。
さて、 腎に限らず特定の組織に特異的に発現しているタンパク質は、 しばしば その臓器の機能障害の指標として用いられる。 たとえば、 L D Hゃァ G T Pとい つた酵素タンパク質は、 肝機能マーカーとして広く利用されている。 しかし腎に おいては、 その機能の指標となるような腎に特異的なタンパク質の存在は知られ ていない。
ところで、 本発明者は、 大規模 D N A配列決定およびデータベース解析により、 メサンギゥム細胞で特に強く発現する遺伝子として、 メグシンと命名した遺伝子 を単離している。 そして、 メグシンの全長 c D N Aクローンがコードする 3 8 0 個のアミノ酸からなる新規タンパク質であるメグシンタンパク質を取得すること に成功した。 更に、 S w i s s P r o tデ一夕ベースを用いて F A S T Aプロ グラムによるアミノ酸ホモロジ一検索を行ったところ、 ヒトメグシンタンパク質 が、 S E R P I N (セリンプロテアーゼインヒビ夕一) スーパーファミリ一 (R.
Carrell et al ., Trends Biochem. Sci . , 第 10卷, 20頁, 1985年; R. Carre 11 e t al ., Cold Spring Harbor Symp. Quant. Biol . , 第 52卷, 527頁, 1987年; E. K. O.Kruithof et al . , Blood, 第 86卷, 4007頁, 1995年; J.Potempa et al ., J. Biol. Chem. , 第 269卷, 15957頁, 1994年; E.Remold-O' Dormell, FEBS Let. , 第 315巻, 105頁, 1993年) に属するタンパク質であることを見出した (T.Miy ata et al . , J. Clin. Invest. , 第 120卷, 828-836頁, 1998年)。加えて、 ラヅ トにおけるホモ口グの単離に成功した。 そしてこれらの知見を特許出願した(W09 9/15652)。
ところで、 たとえば生殖発生毒性試験のような動物実験の結果をヒ卜に外挿す るには、 生理状態がヒトに良く似た動物を利用した実験系が必要である。 生殖発 生毒性試験は、 医薬品の生体への適用がその生殖発生の過程において、 何らかの 悪影響を誘発するかどうかに関する情報を得ることを目的として行われる動物試 験である。 得られた試験結果は、 ヒ トへ外挿され、 ヒ トの生殖発生に対する医薬 品の安全性 (危険性) の評価に利用される。
ラットは、 実験動物としての歴史が長く、 生殖生理に関する知見や一般的な代 謝様式がかなりよく知られている。 加えて、 成熟に至るまでの期間と妊娠期間や 授乳期間が比較的短く、 自然発生奇形も比較的少ない。 このような利点によって、 ラットは生殖発生毒性試験の試験動物として好適である。 また、 生殖発生に関す る試験に用いられた経験が最も豊富な動物種であり、 背景データも多い。 生殖発 生毒性試験においては、 障害を観察すべき臓器に応じた様々なマーカーが測定さ れる。 腎機能のマ一力一としては、 血中クレアチニン、 尿中のアルブミンやグロ ブリンなどが公知である。 しかしこれらのマーカ一は、 腎機能を総合的に評価す るためのものである。 したがって、 メサンギゥム増殖性腎炎の病態を反映するも のではない。 メサンギゥム細胞は、 腎糸球体の構造および機能の維持に中心的な 役割を果たしている。 またメサンギゥム細胞の増殖や細胞外メサンギゥム基質の 蓄積は、 末期腎不全の 2大原因である慢性糸球体腎炎および糖尿病性腎症のよう
な種々の糸球体障害を有する患者に糸球体硬化症をもたらす最初の過程とされて いる (D. Schlondorff, Kidney Int. , 第 49巻, 1583-1585頁, 1996年; R. B. Ste rzel et al . , Glomerular mesangial cells. Immunologic Renal Diseases, 595 -626頁, 1997年) 。 したがって、 ラットにおいて、 メサンギゥム増殖性腎炎の 病態を反映する指標の提供が望まれる。 発明の開示
本発明は、 上記のような課題を解決し、 ラットにおけるメサンギゥム増殖性腎 炎の診断や重症度の判定を可能とする方法と、 そのための試薬の提供を課題とし ている。
まず本発明者は、 ラットにおけるメサンギゥム増殖性腎炎の診断および重症度 を判定するためには、 病態と密接に関連した特異的なタンパク質を測定する必要 があると考えた。 そこで、 糸球体に存在するメサンギゥム細胞 (mesangial eel 1) に注目した。 メサンギゥム (mesangium) は、 腎糸球体の毛細管係蹄の小葉中 心部に位置し、 各小葉を結びつける芯となる組織である。 メサンギゥムは糸球体 基底膜に覆われており、 毛細管腔とは内皮細胞によって隔てられている細胞 (メ サンギゥム細胞) と 3層からなる糸球体基底膜の中の内透明層と連続している無 形物質 (メサンギゥム基質: mesangial matrix) から構成されている。
ヒトのメサンギゥム細胞は、 腎糸球体の構造および機能の維持に中心的な役割 を果たしていることが知られている。 またその増殖は、 糸球体腎炎や糸球体硬化 症などの糸球体疾患の発症における主要な要因であると考えられている。 そして、 メサンギゥム細胞は、 各種腎炎において障害の標的となっている。 例えば、 メサ ンギゥム細胞の増殖や細胞外メサンギゥム基質の蓄積は、 末期腎不全の 2大原因 である慢性糸球体腎炎および糖尿病性腎症のような種々の糸球体障害を有する患 者に糸球体硬化症をもたらす最初の過程とされている (D. Schlondorff, Kidney
Int 第 49卷, 1583- 1585頁, 1996年; R. B. Sterzel et al. Glomerular mesa ngial cells. Immunologic Renal Diseases, 595-626 M, 1997年) 0
更に本発明者らは、 ヒト体液中のメグシンタンパク質と、 腎疾患の病態の進行 との相関関係を明らかにし、 この知見を特許出願した(W000/57189)。 この知見に より、 ヒトにおいては、 体液中のメグシン測定値が腎機能の指標として有用であ ることが明らかにされた。
ラッ卜においても、 メサンギゥム細胞で特異的に発現している遺伝子を見いだ し、 その発現の調節機構ゃ腎疾患における病態との関連性を明らかにすることは、 メサンギゥム細胞の生物学的性質の解明、 メサンギゥム細胞に関連する疾患の原 因の究明、 更にはメサンギゥム細胞に関連する疾病の治療、 診断等に有効である と考えられる。
本発明者は、 ラットにおいても腎疾患の発症およびその亢進に関連してメグシ ン夕ンパク質遺伝子の発現が増加し、 それに伴ってメグシンタンパク質の産生が 増大すれば、 尿中あるいは血中へメグシンタンパク質が漏出し、 しかもその漏出 量は病態の進行に伴って増加するのではないかと考えた。 そしてこのメカニズム を確かめるために、 様々なラット生体試料中のメグシンタンパク質濃度、 あるい はその量の測定と比較を試み、 その測定値に基づいてメグシンタンパク質が関与 した腎疾患の状態を評価し得ることを見出し本発明に到達した。 すなわち本発明 は、 以下のメサンギゥム増殖性腎炎の診断方法、 そのための試薬、 ラット 'メグ シンに対する抗体、 並びにその用途に関する (以下、 本明細書においては、 メグ シンタンパク質を単にメグシンと記載する場合もある) 。
〔1〕 配列番号: 3に記載のアミノ酸配列からなるペプチドを認識する抗体。
〔2〕 モノクローナル抗体である 〔1〕 に記載の抗体。
〔3〕 配列番号: 3に記載のアミノ酸配列を含むペプチドと、 アジュバントを含 む組成物。
〔4〕 ラット由来の生体試料中のメグシンタンパク質を、 〔1〕 に記載の抗体と 反応させ、 抗原抗体反応の生成物を検出する工程を含むラット ·メグシンの 測定方法。
〔 5〕 〔 1〕 に記載の抗体を含む組成物。
〔6〕 抗体が標識されているか、 または担体に固定化されている 〔5〕 に記載の 組成物。
〔7〕 以下の工程を含む、 ラットにおけるメサンギゥム増殖性腎炎を診断する方 法。
a ) 被検ラット由来の生体試料中のラット 'メグシンタンパク質を、 〔1〕 に記載の抗体と反応させ、 抗原抗体反応の生成物を検出する工程、 および b ) 正常ラットのラヅ ト ·メグシンの測定値と比較してラット ·メグシン測 定値が高い場合にメサンギゥム増殖性腎炎と診断する工程、
〔8〕 被検ラッ卜のメグシン測定値を経時的に観察することによって、 メサンギ ゥム増殖性腎炎の病態の悪化または改善をモニタリングする 〔7〕 に記載の 方法。
〔9〕 〔 1〕 に記載の抗体の、 ラットのメサンギゥム増殖性腎炎の診断剤の製造 における使用。
〔1 0〕 〔1〕 に記載の抗体の、 ラットのメサンギゥム増殖性腎炎の診断に おける使用。
あるいは本発明は、 配列番号: 3に記載のアミノ酸配列を含むペプチドの、 ラット ·メグシンを認識する抗体の製造における使用に関する。
ラット ·メグシンタンパク質は、 ヒト腎メサンギゥム細胞で高度に発現してい る遺伝子のラヅトにおけるホモログ (配列番号: 1 ) によってコードされるタン パク質 (配列番号: 2 ) として単離された。 ヒト ·メグシンは腎機能の指標とな ることは明らかにされているが、 ラットにおいてメサンギゥム増殖性腎炎の指標 として有用であることは、 知られていない。 本発明におけるメグシンタンパク質
には、 配列番号: 2に示すアミノ酸配列を持つタンパク質 (ラヅト 'メグシン夕 ンパク質) のみならず、 その機能的に同等なタンパク質も含まれる。 機能的に同 等なタンパク質としては、 以下の D N Aによってコードされるタンパク質が含ま れる。
( a ) 配列番号: 1の塩基配列のコード領域を含む D N A
( b ) 配列番号: 2のアミノ酸配列をコードする D N A
( c ) 配列番号: 1の塩基配列からなる D NAとストリンジェントな条件下でハ イブリダィズし、 ラットのメサンギゥム細胞で高度に発現している D N A
( d ) 配列番号: 2のアミノ酸配列において、 1若しくは数個のアミノ酸が、 置 換、 欠失、 不可、 および/または挿入されたアミノ酸配列からなるタンパク質を コ一ドし、 ラヅトのメサンギゥム細胞で高度に発現している D N A
このような D N Aは、 たとえばラット培養メサンギゥム細胞から抽出した mRN Aを鍊型として RT-PCRを行うことによって得ることができる。 RT-PCRに必要な プライマーは、 配列番号: 1に記載の塩基配列に基づいて設定することができる 本発明において用いられるメグシンタンパク質の測定法は制限されない。 たと えば、 メグシンタンパク質に対する抗体と、 メグシンタンパク質との免疫学的反 応を応用した免疫学的測定方法は特異性と感度の点で優れている。 このような例 としては、 免疫沈降、 ラジオィムノアヅセィ、 免疫蛍光分析、 ェンザィムィムノ アツセィ、 化学発光分析、 ィムノヒストケミスト(I誦 unohistochemist)分析が包 含される。 またメグシンタンパク質に対する抗体を利用して、 ウエスタンブロッ ト法によりメグシンタンパク質を測定することもできる。 また、 これらのィムノ アツセィは、 例えば免疫沈降とその後のウエスタンブロット法のように組み合わ せて用いることもできる。 これらの分析手段は、 当該技術分野において公知であ る。
ィムノヒストケミスト (免疫組織染色) とは、 分離したラットの細胞あるいは その破砕液、 組織あるいはその破砕液、 血清、 胸水、 腹水、 眼液などに本発明の
抗体を反応させ、 さらにフルォレシンイソチオシァネート (FITC)などの蛍光物 質、 ペルォキシダーゼなどの酵素標識を施した抗マウス I g G抗体あるいは結合 断片を反応させた後、 顕微鏡を用いて観察する方法である。 各標識物質は、 ピオ チン化した抗体にストレブトァビジン結合標識物質を結合させることによって間 接的に標識することもできる。 その他メグシンタンパク質がプロテアーゼインヒ ビ夕一であることから、 プロテアーゼの阻害活性を指標として検出することが可 能である。 あるいは、 プロテアーゼに対する親和性を利用してメグシンタンパク 質の測定を実施することができる。
メグシン夕ンパク質の免疫学的な測定方法に必要な抗体は、 検出対象であるメ グシンタンパク質を認識することができるものであれば、 その由来や調製方法は 限定されない。 したがって、 ポリクロ一ナル抗体、 モノクローナル抗体、 あるい はそれらの混合物等を利用することができる。 また、 抗体分子の可変領域を含む 断片を利用することもできる。 メグシンタンパク質の抗体は、 たとえば以下のよ うにして得ることができる。 本発明に用いる抗体には、 例えば、 配列番号: 2に 記載のアミノ酸配列を有するタンパク質に対する抗体が含まれる。 メグシンタン パク質またはその部分アミノ酸配列に対する抗体 (例えばポリクローナル抗体、 モノクローナル抗体) 、 あるいは抗血清は、 メグシンタンパク質、 その部分アミ ノ酸配列を含むオリゴぺプチド、 あるいは c-myc- (His)6-Tag-メグシンタンパク 質や M B P—メグシンタンパク質のような融合タンパク質を抗原として用い、 自 体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。 例えば、 モ ノクローナル抗体は、 後述の方法に従って製造することができる。 なお部分アミ ノ酸配列を有する合成べプチドを免疫原とする場合には、 できるだけメグシン夕 ンパク質に特異的に存在し、 かつ親水性の高い部分のアミノ酸配列を利用するの が一般に有利である。
本発明は、 ラット ,メグシンの免疫学的な測定において特に有利な抗体を提供 する。 すなわち本発明は、 配列番号: 3に記載のアミノ酸配列(ESNIVEKLLPESTV)
からなるペプチドを認識する抗体に関する。 ラット ·メグシンにおけるこの領域 は、 メグシンが属する SERPINスーパ一ファミリ一の中で、 ラヅ 卜 'メグシンに 特異的に見出されるアミノ酸配列を含んでいる。 したがって、 この領域を認識す る抗体は、 ラット 'メグシンに対して特異性に優れると言うことができる。 SERP INスーパーフアミリーには、 プラスミノ一ゲンァクチべ一夕ーィンヒビ夕一 1 あるいは 2のような、 生体液中に一般に見られるタンパク質も多い。 したがって、 これらのタンパク質との交差性が低いことは、 診断指標としてのメグシンを免疫 学的に測定する上で有用な特徴である。 また、 メグシンタンパク質の活性部位は 現在のところ必ずしも明らかではないが、 仮に本発明のぺプチド抗体がメグシン タンパク質の活性部位以外の領域と結合している場合、 メグシンタンパク質とぺ プチド— 2抗体が結合したままで生理活性測定などの試験に供することができる。 従って、 単離 '精製したメグシンタンパク質べプチドー 2抗体結合物を直ちに試 験に用いることができるから、 試験の迅速化が期待できる。
更に本発明は、 前記抗体の調製に用いることができる免疫原組成物に関する。 本発明の組成物は、 配列番号: 3に記載のアミノ酸配列を含むペプチドを、 アジ ュバントとともに含む。 本発明において、 前記ペプチドは、 少なくとも配列番 号: 3に記載のアミノ酸配列を含む。 前記ペプチドは、 配列番号: 3の配列に加 え、 配列番号: 2に記載のアミノ酸配列のうち、 配列番号: 3に記載のアミノ酸 配列に隣接するアミノ酸残基を含むことができる。 あるいは前記ペプチドは、 配 列番号: 2から選択されたアミノ酸配列に、 更に不活性なアミノ酸配列を付加す ることもできる。 本発明において、 配列番号: 3に記載のアミノ酸配列に対して、 更に付加的なアミノ酸配列を含むペプチドを構成するアミノ酸の数は、 通常 1 0 0以下、 好ましくは 5 0以下、 より好ましくは 3 0以下、 特に好ましくは 2 0以 下である。 一方、 前記アジュバントには、 免疫動物に対して免疫増強作用を有す るあらゆる物質を用いることができる。 具体的には、 後に述べる担体タンパク質 や、 細菌毒素、 あるいは細菌の菌体成分等がアジュバントとして用いられる。 ァ
ジュバントとして担体タンパク質を用いるときには、 前記べプチドに結合させて おくこともできる。
本発明によるラット ·メグシンタンパク質の部分アミノ酸配列を有するぺプチ ドは、 温血動物に対して投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体または担体、 希釈剤と共に投与される。 本発明の免疫原を構成するべプチドのアミノ酸配列は、 配列番号: 3に示すアミノ酸配列を含むものであれば、 いずれのペプチドを用い ることもできる。 したがって、 配列番号: 3に示すアミノ酸配列を含む部分ぺプ チド、 あるいはこのアミノ酸配列に不活性なアミノ酸配列を付加したぺプチドな どは、 本発明に含まれる。 本発明の免疫原は、 ラット ·メグシンタンパク質の切 断によって得ることができる。 あるいは、 必要なアミノ酸配列を持つペプチドを、 化学的に合成することもできる。 ペプチドは、 ゥシチログロブリンやキーホール リンペットへモシァニン (以下 KLHと省略する) のような担体タンパク質と結合 させて免疫原として使用する。 投与に際して抗体産生能を高めるため、 完全フロ ィントアジュバントゃ不完全フロイントアジュバン卜とともに投与することがで きる。 投与は通常 1〜 6週毎に 1回ずつ、 計 2〜1 0回程度行われる。 用いられ る温血動物としては、 例えばサル、 ゥサギ、 ィヌ、 モルモット、 マウス、 ヒッジ、 ャギ、 ニヮトリが挙げられるが、 マウスが好ましく用いられる。 モノクローナル 抗体産生細胞の作製に際しては、 抗原を免疫された温血動物、 例えばマウスから 抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の 2〜 5日後に脾臓またはリンパ節を 採取し、 それらに含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させることにより、 モノクローナル抗体産生ハイプリ ドーマを調製することができる。 抗血清中の抗 体価の測定は、 例えば後述の標識化メグシンタンパク質と抗血清とを反応させた 後、 抗体に結合した標識剤の活性を測定することによりなされる。
本発明によるモノクローナル抗体は、 メグシンタンパク質に特異的なェピト一 プを認識するものを選択することによって他のタンパク質と交差しないものとす ることができる。 一般的に、 そのタンパク質を構成するアミノ酸配列の中から、
連続する少なくとも 7以上のアミノ酸残基、 望ましくは 1 0〜2 0アミノ酸のァ ミノ酸配列によって提示されるェビトープは、 そのタンパク質に固有のェピトー プを示すといわれている。 したがって、 たとえば配列番号: 2に記載されたアミ ノ酸配列から選択され、 かつ連続する少なくとも 7アミノ酸残基からなるアミノ 酸配列を持つぺプチドによって構成されるェビトープを認識するモノクローナル 抗体は、 ラット ·メグシンタンパク質特異的なモノクローナル抗体といえる。 抗メグシンタンパク質モノクローナル抗体の分離精製は通常のポリクロ一ナル 抗体の分離精製と同様に免疫グロプリンの分離精製法に従って行われる。 公知の 精製法としては、 例えば、 塩析法、 アルコール沈殿法、 等電点沈殿法、 電気泳動 法、 イオン交換体 (例えば DEAE) による吸脱着法、 超遠心法、 ゲル濾過法、 抗 原結合固相またはプロティン Aまたはプロティン Gなどの活性吸着剤により抗体 のみを採取し、 結合を解離させて抗体を得る特異的精製法のような手法を示すこ とができる。
このようにして得られたラット ·メグシンタンパク質を認識するモノクロ一ナ ル抗体あるいはポリクローナル抗体は、 本発明によるメサンギゥム増殖性腎炎の 診断に利用することができる。 すなわち本発明は、 配列番号: 3に記載のァミノ 酸配列を含むぺプチドを認識する抗体を含む組成物に関する。 本発明の抗体含有 組成物において、 抗体は、 好ましくは、 標識され、 あるいは担体に固定化される。 本発明の組成物は、 ラット 'メグシンの免疫学的な測定に有用である。 これらの 抗体を用いてラット ·メグシンタンパク質を測定する方法としては、 不溶性担体 に結合させた抗体と、 標識分子を結合した標識化抗体とによりメグシンタンパク 質を反応させて生成したサンドイッチ錯体を検出するサンドイッチ法、 また、 標 識ラット ·メグシンタンパク質と検体中のラット ·メグシンタンパク質を抗体と 競合的に反応させ、 抗体と反応した標識抗原量から検体中のラット ·メグシン夕 ンパク質を測定する競合法を利用して検体中のラット 'メグシンタンパク質を測 定することができる。
サンドイッチ法によるラット ·メグシンタンパク質の測定においては、 まず、 固定化抗体とラット ·メグシンタンパク質とを反応させた後、 未反応物を洗浄に よって十分に除去し、 標識化抗体を添加して固定化抗体—ラット ·メグシンタン パク質標識化抗体を形成させる 2ステップ法、 若しくは固定化抗体、 標識化抗体 及びラット ·メグシンタンパク質を同時に混合する 1ステップ法などを用いるこ とができる。
測定に使用される不溶性担体は、 例えばポリスチレン、 ポリエチレン、 ポリプ ロピレン、 ポリ塩化ビニル、 ポリエステル、 ポリアクリル酸エステル、 ナイロン、 ポリアセタール、 フッ素樹脂等の合成樹脂、 セルロース、 ァガロース等の多糖類、 ガラス、 金属などが挙げられる。 不溶性担体の形状としては、 例えば粒子状、 ト レイ状、 球状、 繊維状、 棒状、 盤状、 容器状、 セル、 試験管等の種々の形状を用 いることができる。 抗体を吸着した担体は、 適宜アジ化ナトリウム等の防腐剤の 存在下、 冷所に保存する。
一方、 ヒト精子の受精能を評価するための試薬として、 固体顆粒の表面に、 先 体反応後のヒト精子と特異的に反応するモノクローナル抗体を結合してなる、 精 子受精能検出用顆粒が知られている (特許第 2 6 5 1 2 4 9号) 。 この検出用顆 粒は、 先体反応後のヒト精子と特異的に反応するモノクローナル抗体を固体顆粒 に結合させているものである。 これに精子を結合させて、 結合した精子を計数す ることにより、 ヒト精子の受精能を評価することができる。 放射能、 蛍光などの 煩雑な測定手段を必要とせず、 短時間で容易 ·確実に受精能の試験が可能である。 また、 磁性を有する固体顆粒を用いる場合は、 磁石により容易に固体顆粒を集束 させることができ、 微量サンプルの測定も可能となる。 この技術をメグシンタン パク質の検出に適用することにより、 より簡便かつ正確なメグシンタンパク質の 検出が可能になる。
抗体の固相化は、 公知の化学結合法又は物理的吸着法を用いることができる。 化学的結合法としては例えばグルタルアルデヒドを用いる方法、 N-スクシニイミ
ジル -4- (N-マレイミ ドメチル) シクロへキサン-卜カルボキシレート及び N-ス クシニイミジル -2-マレイミ ドアセテートなどを用いるマレイミ ド法、 卜ェチル- 3- (3-ジメチルァミノプロピル) カルポジイミ ド塩酸などを用いるカルポジイミ ド法が挙げられる。 その他、 マレイミ ドベンゾィル -N-ヒドロキシサクシニミ ド エステル法、 N-サクシミジル- 3- (2-ピリジルジチォ) プロピオン酸法、 ビスジ ァゾ化べンジジン法、 ジパルミチルリジン法が挙げられる。 あるいは、 先に被検 出物質とェピト一プの異なる 2種類の抗体を反応させて形成させた複合体を、 抗 体に対する第 3の抗体を上記の方法で固相化させておいて捕捉することも可能で ある。
標識物質は、 免疫学的測定法に使用することができるものであれば特に限定さ れない。 具体的には、 酵素、 蛍光物質、 発光物質、 放射性物質、 金属キレート等 を使用することができる。 好ましい標識酵素としては、 例えばペルォキシダーゼ、 アルカリフォスファタ一ゼ、 ?-D-ガラクトシダーゼ、 リンゴ酸デヒドロゲナ一 ゼ、 ブドウ球菌ヌクレアーゼ、 デル夕- 5-ステロイ ドイソメラーゼ、 ひ-グリセ口 ールホスフェートデヒドロゲナ一ゼ、 トリオースホスフヱ一トイソメラーゼ、 西 洋わさびパ一ォキシダーゼ、 ァスパラギナーゼ、 グルコースォキシダ一ゼ、 リボ ヌクレアーゼ、 ゥレアーゼ、 力タラ一ゼ、 グルコース一 6—ホスフェートデヒド ロゲナーゼ、 グルコアミラーゼ、 およびアセチルコリンエステラーゼ等が挙げら れる。 好ましい蛍光物質としては、 例えばフルォレセインイソチアネート、 フィ コビリプロテイン、 口一ダミン、 フィコエリ トリン、 フィコシァニン、 ァロフィ コシァニン、 およびオルトフタルアルデヒド等が挙げられる。 好ましい発光物質 としてはイソルミノール、 ルシゲニン、 ルミノール、 芳香族ァクリジニゥムエス テル、 ィミダゾール、 ァクリジニゥム塩及びその修飾エステル、 ルシフェリン、 ルシフヱラーゼ、 およびェクオリン等が挙げられる。 そして好ましい放射性物質 としては、 1251、 1271、 1311、 14 、 32PS あるいは35 S等が挙げられる。
前記標識物質を抗体に結合する手法は公知である。 具体的には、 直接標識と間 接標識が利用できる。 直接標識としては、 架橋剤によって抗体、 あるいは抗体断 片と標識とを化学的に共有結合する方法が一般的である。 架橋剤としては、 Ν,Ν' -オルトフェニレンジマレイミ ド、 4- (Ν-マレイミ ドメチル) シクロへキサン 酸 · Ν-スクシンィミ ドエステル、 6-マレイミ ドへキサン酸 · Ν-スクシンィミ ドエ ステル、 4,4' -ジチォピリジン、 その他公知の架橋剤を利用することができる。 これらの架橋剤と酵素および抗体との反応は、 それそれの架橋剤の性質に応じて 既知の方法に従って行えばよい。 この他、 抗体にピオチン、 ジニトロフヱニル、 ピリ ドキサール又はフルォレサミンのような低分子ハプテンを結合させておき、 これを認識する結合成分によって間接的に標識する方法を採用することもできる ピオチンに対してはアビジンゃス卜レプトアビジンが認識リガンドとして利用さ れる。 一方、 ジニトロフエニル、 ピリ ドキサール又はフルォレサミンについては、 これらのハプテンを認識する抗体が標識される。
抗体を標識する場合、 西洋わさびペルォキシダ一ゼを標識化酵素として用いる ことができる。 本酵素は多くの基質と反応することができ、 過ヨウ素酸法によつ て容易に抗体に結合させることができるので有利である。 また、 抗体としては場 合によっては、 そのフラグメント、 例えば Fab'、 Fab F(ab,)2を用いる。 また、 ポリクローナル抗体、 モノクローナル抗体にかかわらず同様の処理により酵素標 識体を得ることができる。 上記架橋剤を用いて得られる酵素標識体はァフィニテ ィークロマトグラフィ一等の公知の方法にて精製すれば更に感度の高い免疫測定 系が可能となる。 精製した酵素標識化抗体は、 防腐剤としてチメロサール (Thime rosal )等を、 そして安定剤としてグリセリン等を加えて保存する。 標識化抗体は、 凍結乾燥して冷暗所に保存することにより、 より長期にわたつて保存することが できる。
標識化剤が酵素である場合には、 その活性を測定するために基質、 必要により 発色剤が用いられる。 酵素としてペルォキシダ一ゼを用いる場合には、 基質溶液
として ¾02を用い、 発色剤として 2,2,-アジノ-ジ -[3-ェチルベンズチアゾリン スルホン酸]アンモニゥム塩 (ABTS)、 5-ァミノサリチル酸、 オルトフエ二レン ジァミン、 4-ァミノアンチビリン、 3,3,,5,5,-テトラメチルベンジジン等を使用 することができる。 酵素にアルカリフォスファターゼを用いる場合は、 基質とし てオルト二トロフエニルフォスフェート、 パラ二トロフエ二ルリン酸等を使用す ることができる。 酵素に/? -D-ガラクトシダーゼを用いる場合は基質としてフル ォレセイン-ジ- ( ? -D-ガラクトビラノシド) 、 4-メチルゥンベリフエニル - 5 -D -ガラクトビラノシド等を使用することができる。 本発明は、 また、 前述のモノ クロ一ナル抗体、 あるいはポリクロ一ナル抗体を標識して、 あるいは固相化して メグシンタンパク質の免疫学的測定用試薬としたもの、 更にはこの試薬に標識検 出用の指示薬や対照試料等をキット化したものをも含むものである。
本発明におけるラット ·メグシンタンパク質の測定対象は、 ラット ·メグシン タンパク質、 あるいはその前駆体や断片を含む生体試料であれば限定されない。 具体的な測定対象としては、 たとえば血漿、 血清、 血液、 尿、 組織液、 あるいは 脳脊髄液等の体液等を挙げることができる。 これらの生体試料の中でも特に尿に おいては、 メサンギゥム細胞の増殖や活性化に伴って高い頻度でメグシンタンパ ク質が検出されるようになる。 したがって、 尿中メグシンタンパク質の測定は、 IgA腎症などのメサンギゥム増殖性腎炎のマーカ一として有用である。
本発明におけるメサンギゥム増殖性腎炎の診断とは、 腎臓組織を構成する重要 な細胞であるメサンギゥム細胞の状態を把握し、 メサンギゥム細胞に異常を生じ る腎疾患の有無、 あるいはその程度を知ることを意味する。 本発明におけるメサ ンギゥム増殖性腎炎とは、 メサンギゥム細胞の増殖を伴う腎炎の全てを含む。 具 体的には、 I g A腎症、 急性糸球体腎炎、 巣状糸球体硬化症、 膜性増殖性糸球体 腎炎、 糖尿病性腎炎、 およびループス腎炎などが挙げられ、 かかる腎疾患により 変化した腎機能の状態が本発明の方法によつて評価することができる。 本発明に よる腎機能の評価方法は、 これらの疾患の中でも I g A腎症のようなメサンギゥ
ム増殖性腎炎のマ一カーとして特に有用である。 また、 本発明の腎機能評価方法 は、 腎疾患の有無や程度の判定の他、 治療効果の評価や予後の判定に適用するこ とができる。 更に、 本発明による腎機能の評価方法によれば、 尿タンパクの検査 で陽性を示す検体についてメグシンタンパク質の量を測定することにより、 メサ ンギゥム細胞の増殖に起因しない急性腎盂腎炎、 慢性腎盂腎炎、 微小変化型ネフ ローゼ症候群、 慢性糸球体腎炎、 および腎アミロイ ドーシスなどの疾患を除外す ることができる。
本発明におけるメサンギゥム増殖性腎炎には、 上記疾患に加え、 人為的に誘導 される腎炎が含まれる。 人為的に誘導される腎炎としては、 様々な毒性物質によ つてラットの腎に引き起こされるメサンギゥム増殖性腎炎症状を挙げることがで きる。 このような人為的に誘導された腎炎ラットは、 各種の毒性試験等に用いる ことができるが、 メグシンを評価の指標とすることで、 より的確な判定が可能と なる。 たとえば、 ラットを用いた生殖発生毒性試験において、 メグシンを指標と することにより、 メサンギゥム増殖性腎炎を的確に、 そして容易に診断すること ができる。 ラットにおける毒性試験の結果は、 容易にヒトへ外挿することができ る。 ラットの生理的な状態はヒトに類似している上、 指標として測定するメグシ ンがヒ卜とラッ卜において共通のマ一力一であることから、 ラヅ卜の実験結果の ヒトへの外揷は容易である。 本発明は、 ラットにおけるメグシンが、 単に構造的 なホモログであるのみならず、 メサンギゥム増殖性腎炎の指標として有用である ことを見出した点に大きな意義がある。
たとえば後に述べる実施例で明らかにされているように、 抗 Thy 1抗体の投与 によって人為的に腎炎症状を誘導したラットにおいて、 尿中ラット ·メグシンの 顕著な上昇が見られた。 このことは、 ラット生体液中のメグシンが、 メサンギゥ ム増殖性腎炎の鋭敏なマーカーとして有用であることを裏付けている。 したがつ て、 人為的にメサンギゥム増殖性腎炎を誘導したラットに、 治療薬候補化合物を 投与し、 その生体液中のメグシン濃度を追跡することにより、 候補化合物の治療
効果を評価することができる。 なお本発明において、 抗 Thyl抗体の投与によつ て誘導される腎炎を ATSと記載する場合がある。
あるいは、 アンチセンス DNAやトランスジエニックラヅトのように、 遺伝子操 作によってメサンギゥム細胞に異常をもたらされたラッ卜における、 メサンギゥ ム増殖性腎炎の病態の変化を本発明によつて追跡することができる。
本発明に基づいて、 メサンギゥム増殖性腎炎の診断を行うには、 診断すべき個 体の生体試料を採取し、 これに含まれるメグシンタンパク質の濃度を先に述べた ような方法に基づいて測定する。 そして望ましくは、 濃度と体液の体積とからメ グシンタンパク質の量を明らかにし、 正常ラッ卜の値と比較する。 メグシンタン パク質の量を求めるには、 尿を試料として用いる場合には、 たとえば 1日分の尿 をプールして尿量を測定すれば、 尿における 1日あたりのメグシンタンパク質の 量を明らかにすることができる。 あるいは、 随時尿を試料とした場合であっても、 クレアチニン補正によって量に類する値を推定することもできる。 クレアチニン 補正とは、 クレァチニンの濃度に基づいて尿量の変動による測定対象成分の希釈 (または濃縮) の影響を補正する手法である。 1日当たりの尿へのクレアチニン 排泄量が一定であることに基づいて、 クレアチニンの濃度から随時尿が 1日にお ける尿の総排泄量に占める割合を算出し、 同じ尿から得られた測定対象成分の濃 度を 1日当たりの総排泄量に換算することができる。 また血液においては、 体重 補正などの腎機能診断の際に一般的に使用される数値補正を適用して量の推定が 可能である。 体重補正とは、 血液を採取した個体の体重から推測される血液の体 積に基づいて、 血液中成分の量を算出する手法である。
この他に、 ある個体に由来する生体試料のメグシンタンパク質濃度の変動を観 察すれば、 量への換算を行わなくても腎機能の変化を経時的に追跡することがで きる。 あるいは、 特定の種、 などの集団における体液試料のメグシンタンパク質 濃度の正常値を予め設定しておき、 特定の個体のメグシンタンパク質濃度 (また
は量) と比較することにより、 メサンギゥム増殖性腎炎の有無を知ることもでき 。
本発明において、 生体試料としては、 尿や血液を用いることができる。 中でも 尿は、 非侵襲的に採取することができ、 腎機能の状態を直接的に反映する好まし い試料である。 血液の採取は若干の侵襲を伴うものの、 メグシンタンパク質が腎 臓に特異的なタンパク質であることから、 その測定値の異常は、 腎機能の異常と 密接に関連している。 したがって、 腎機能の指標として高い特異性を期待するこ とができる。 以下に、 モノクローナル抗体を利用したメグシンタンパク質の免疫 学的な測定方法に基づいて尿中のメグシンタンパク質を測定し腎機能を評価する ための具体的な操作について詳細に説明する。
( A) 抗体の製造
( 1 ) 動物の免疫と抗体産生細胞の調製
動物の免疫は、 例えば次のように行う。 ラット ·メグシンタンパク質の部分べ プチド (たとえば配列番号: 3のアミノ酸配列からなるペプチド) を合成し、 KL Hと結合して免疫原とする。 この免疫原をマウスなどの哺乳類動物に免疫する。 哺乳類動物は細胞融合する際の相手の永久増殖性細胞と同系統の動物を用いるの が好ましい。 動物の週令は、 例えばマウスでは 8〜1 0週令が好適である。 性は 雌雄何れでも構わない。 免疫の方法は、 前記免疫原を適当なアジュバント (例え ばフロイント完全アジュバントまたは水酸化アルミニウムゲル—百日咳菌ヮクチ ンなど) と混合しェマルジヨンとした後、 動物の皮下、 腹腔内、 静脈内などに投 与する。 以後、 この免疫操作を 1〜2週間間隔で 2〜 5回行う。 最終免疫は、 0 . 5〜2 zgの免疫原を動物の腹腔内に投与することにより行う。 このようにして 免疫した動物の体液からは、 ポリクロ一ナル抗体が得られる。 各免疫操作後 3〜 7日後に眼底静脈叢より採血し、 その血清の抗体価を以下に示すプロティン A口 ゼットアツセィ法 (Eur. J. Immunol . , 第 4卷, 500- 507頁, 1974年) により測定 し、 抗体価が充分上昇したとき、 抗体または抗体産生細胞を採取する。
プロテイン Aロゼットアツセィ法は、 例えば、 72穴のテラサキプレート (フ アルコン製) にヒト赤芽球性細胞株 K 562 (ジャパニーズ 'キャンサー ' リサ ーチ · リソ一シズ 'バンク (JCRS)製) をコートし、 PBS (リン酸ニナト リウム 2.90g、 リン酸一力リウム 0.20g、 塩化ナトリゥム 8g、 塩化力リゥ ム 0.2g、 蒸留水 1い で希釈した試料を加え、 C02インキュベーター内に 3 7°Cで 30分間放置する。 そして、 PBSで洗浄後、 プロテイン A (アマシャ ム · フアルマシア ·バイオテク製) をコ一卜したヒヅジ赤血球を加えてロゼット の形成を顕微鏡で観察することによつて実施される。
上記のように合成べプチドで免疫した動物から抗体産生細胞を採取する。 抗体 産生細胞は、 脾臓、 リンパ節、 末梢血などから得ることができるが、 特に脾臓が 好ましい。 例えば、 最終免疫の 3〜4日後に脾臓を無菌的に摘出し、 Minimal Es sential Medium (MEM)培地 (日水製薬製) 中で細断し、 ピンセッ卜で解し、 120 Orpmx 5分間の条件で遠心分離させた後、 上清を除き、 トリス—塩酸緩 衝液 ( p H 7.65 ) で 1〜 2分間処理して赤血球を除去し、 さらに M E M培地 で 3回洗浄して細胞融合用脾臓細胞を得る。
( 2 ) 永久増殖性細胞の調製
融合される相手方の永久増殖性細胞には、 永久増殖性を有する任意の細胞を用 いることができるが、 一般的には骨髄腫細胞が用いられる。 永久増殖性細胞は抗 体産生細胞と同種の動物由来のものを用いるのがよい。 例えばマウスの場合、 8 —ァザグァニン耐性マウス (BALB/c) 由来骨腫瘍細胞株として次のような 細胞株が知られている。
P3-X63Ag8-Ul (P 3 -U 1 ) (Current. Topics in Microbiol. Immu nol., 第 81卷, 1-7頁, 1978年) 、
P 3/NS 1/1 -Ag4- 1 (NS- 1) (Eur. J. I腿 unol., 第 6巻, 51卜 51 9頁, 1976年) 、
SP 2/0-A 14 (SP- 2) (Nature, 第 276卷, 269-270頁, 1978年) 、
P 3-X63-Ag 8653 ( 653) (J. Immunol., 第 123卷, 1548- 1550頁, 1979年) 、 および
P 3-X 63-Ag8 (X 63) (Nature, 第 256卷, 495-497頁, 1975年) これらの永久増殖性細胞株は、 8—ァザグァニン培地 (RPMI— 1640培 地にグル夕ミン ( 1.5m ) 、 2—メルカプトエタノール (5 x 10"5 ) 、 ゲ ンタマイシン ( 10〃g/mL) およびゥシ胎児血清 (FCS、 CLS製) (1 0%) を加えた正常培地に、 さらに 8—ァザグァニン ( 15 /g/mL) を加えた培 地) で継代培養し、 細胞融合の 3〜4日前に正常培地に継代し、 融合当日 2 X I 07個以上の細胞数を確保する。
( 3 ) 細胞融合
細胞融合は例えば次のように行う。 ( 1) で得られた抗体産生細胞と (2) で 用意した永久増殖性細胞を M E M培地または P B Sでよく洗浄し、 細胞数が 5〜
10 : 1の比になるように混合する。 120 Orpmx 5分間遠心分離した後、 上 清を除き、 沈殿した細胞群をよく解した後、 攪拌しながら 37°Cに保ちつつ、 ポ リエチレングリコール一 1000 (PEG— 1000) l〜4g、 MEM培地 1 〜4mLおよびジメチルスルホキシド 0.5〜 1. OmLの混液 0.1〜 1. OmL/10 8個細胞を加えて細胞融合を起こさせる。 その後、 10分毎に MEM培地 3mLを 数回添加し、 MEM培地を全量が 5 OmLになるように加えて希釈し、 細胞融合 を停止させる。 次に、 遠心分離 ( 150 Orpmx 5分間) して上清を除去し、 緩 やかに細胞を解した後、 正常培地 (RPMI— 1640培地、 10%FCS) 1 0 OmLを加え、 メスピぺットによるピぺヅティングで緩やかに細胞を懸濁する。 この懸濁液を 96ゥエルの培養用プレートに 100〃L/wellずつ分注し、 5% C02インキュべ一夕一中、 37°Cで 3〜5日間培養する。 培養プレートに 10 0〃L/wellの HAT培地 (正常培地にヒポキサンチン ( 10— 4M) 、 チミジン
(1.5 x 10 5M) およびアミノブテリン (4 X 10— 7M) を添加した培地) を 加え、 さらに 3日間培養する。 以後 3日間毎に培養上清の半容量を除去し、 新た
に同量の H A T培地を加え、 5 % C 02インキュベータ一中、 3 7 °Cで約 2週間 培養する。
( 4 ) ハイブリ ドーマのスクリーニングおよびクロ一ニング
融合細胞がコ口二一状に生育しているのが認められるゥエルについて、 上清の 半容量を除去し、 H T培地 (H A T培地からアミノプテリンを除いたもの) を同 量加え、 4日間培養する。 培養上清の一部を採取し、 前述のプロテイン Aロゼッ トアツセィ法によりラット ·メグシンタンパク質に対する抗体価を測定する。 抗 体価は、 例えばラット ·メグシンタンパク質抗原を直接又は担体と共に吸着させ た固相 (例えば、 マイクロプレート) にハイプリ ドーマ培養上清を添加し、 次に 放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロプリン抗体 (細胞融合に用いられる 細胞がマウスの場合、 抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる) またはプロテ イン Aを加え、 固相に結合した抗ラット ·メグシンタンパク質モノクローナル抗 体を検出する方法、 抗免疫グロプリン抗体又はプロティン Aを吸着させた固相に ハイプリ ドーマ培養上清を添加し、 放射性物質や酵素などで標識したラット ·メ グシンタンパク質を加え、 固相に結合した抗ラット ·メグシンタンパク質モノク ローナル抗体を検出する方法等によって確認することもできる。
ラット 'メグシンタンパク質に反応する抗体の産生が観察されたゥエルにつき、 限界希釈法によりクローニングを 4回繰り返し、 安定したメグシンタンパク質の 抗体価を示すものを抗ラット ·メグシンタンパク質モノクローナル抗体産生ハイ プリ ドーマ株として選択する。
( 5 ) モノクローナル抗体の調製
上記のようにして得られたハイブリ ーマを in vitroおよび in vivoで培養 することによりモノクローナル抗体を産生させる。 in で培養する場合、 任 意の動物にハイプリ ドーマを移植するが、 細胞融合に用いた脾臓細胞を採取した 動物と同種の動物を使用するのが好ましい。 例えば、 プリスタン処理 (2 , 6 , 1 0, 1 4—テトラメチルペン夕デカン—プリスタン一 0 . 5 mLを腹腔内投与し、
2週間飼育する。 ) をした 8〜 10週令の BALB/c雌マウスに (4) で得ら れた抗メグシンタンパク質モノクロ一ナル抗体産生ノ、イブリ ドーマ細胞の 2〜 4 106個/匹腹腔内投与する。 2〜 3週間でマウスの腹腔内にモノクローナル 抗体を高濃度に含んだ腹水が貯留し腹部が肥大してくる。 このマウスから腹水を 採取し、 遠心分離 (300 Orpmx 5分間) して固形分を除去し、 I gGを精製 する。 一方ハイプリ ドーマの in での培養は、 好ましくは無血清培地中で 行われ、 至適量の抗体をその上清に与える。 腹水や培養上清を 50%硫酸アンモ 二ゥムを用いて塩析し、 PB Sで 1〜2週間透析する。 この透析画分をプロティ ン Αセファロースカラムに通し、 I gG画分を集め、 精製モノクローナル抗体を 得る。
抗体のイソタイプは、 ォク夕口ニイ (二重免疫拡散) 法 (免疫学実験入門, 生 物化学実験法 15, 学会出版センター刊, 74頁, 1981年) により決定した。 タン パク質量は、 フォーリン法および 280腿における吸光度 ( 1.4 (OD 280) =ィムノグロブリン lmg/mL) により算出する。
(6) モノクローナル抗体の特性
上記のようにして得られたモノクローナル抗体の特性は、 例えば、 ( 1) 細胞 表面をヨウ素ラベルした H SB— 2、 K 562などのヒトリンパ球由来の細胞株 を用いる免疫沈降反応 (J. Immunol., 第 138卷, 2850- 3855頁, 1987年) および
( 2 ) 酵素免疫測定法 ( E L I S A法) (J. Immunol., 第 142卷, 2743-2750頁,
1989年) 等により明らかにすることができる。
(7) 標識結合モノクローナル抗体の調製
得られた精製モノクローナル抗体は、 グルタルアルデヒド法 (I廳 unochem.,第 6卷, 43頁, 1969年) 、 過ヨウ素酸法 (J.Histochem.Cytochem., 第 22巻, 1084 頁, 1974年) 、 マレイミ ド法 (J.Biochem., 第 79卷, 233頁, 1976年)、 ピリ ジル 'ジスルフィ ド法 (Biochem.J., 第 173卷, 723頁, 1978年) などの方法に より、 酵素標識することができる。
例えば、 過ヨウ素酸法を用いた場合、 ペルォキシダ一ゼ溶液 (4mg/mL) に 5 0〃Lの過ヨウ素酸 (38.5mg/mL) を攪拌しながら加え、 室温で 20分間反応 させた後、 ImM酢酸緩衝液 (pH4.5) に置換した PD— 10 (アマシャム · フアルマシア ·バイオテク製) を用いて緩衝液交換を行う。 次に 0.2Mの水酸 化ナトリウム 40〃Lを加える。 これに 1 OmM炭酸緩衝液 (pH9.5) で透析 したモノクローナル抗体 1 Om を加え、 室温で 2時間反応する。 反応終了後、 氷冷し、 100〃Lの水素化ホウ素ナトリウム溶液 (4mg/mL) を加え 2時間反 応させる。 反応液を PD— 10を用いて PB Sに交換した後、 300 Orpm 3 0分間遠心分離し、 上清をセフアクリル S 200HR 26 X 30 (アマシャム · フアルマシア .バイオテク製) を用いてゲル濾過して、 403ぉょび280皿 の吸光度を測定し標識モノクローナル抗体の画分を分取する。 得られた分画にゥ シ血清アルブミン (l Omg/mL) を加え、 —20°Cで保存し、 使用直前に PBS — Twe en (登録商標) 20で希釈する。
(B) 検出用顆粒の製造
この発明で使用する検出用顆粒は、 適当な顆粒、 例えばクロマト用ゲルに、 物 理的または化学的に抗メグシンタンパク質抗体を結合させることによって製造す ることができる。 化学的に活性化した顆粒に、 本発明で用いる抗体を結合させる 方法は、 結合安定性を期待できることから望ましい結合方法である。 具体的には、 p—トルエンスルフォニルクロライ ドによってトシル化活性された顆粒に、 本発 明で用いる抗体を結合させる方法を示すことができる。
顆粒としては、 ガラス、 ァガロース、 セファロ一ス、 ァガロース充填多孔性珪 藻土、 親水性共重合アクリルゲル、 ポリスチレン等からなる顆粒が用いられる。 磁性を有する顆粒を使用すれば、 磁石等を用いて顆粒を集束することができるの で、 微量サンプルの測定が可能となる。 たとえば可磁性物質 (例えば Fe20 3) をコア内に含ませることにより超常磁性を持たせた顆粒とすることができる。 このような顆粒は、 免疫学的分析用の固相として市販されている。 顆粒の形状は
球形、 不定破砕形等任意であるが、 球形が好ましい。 粒径は特に制限されず、 例 えば平均粒径 5〜1 0 0 0 mを示すことができる。 また、 反応液の比重 (約 1 ) よりも比重の大きな顆粒を用いた場合も顆粒の集束が容易となり、 磁性を有 する顆粒を用いたときと同様の効果が得られる。 さらにこの場合、 顆粒を集束す るための遠心分離の条件を緩やかにできるため、 結合が外れ易い抗体を使用する 際にも有利である。
顆粒への抗ラット ·メグシンタンパク質抗体の結合は、 直接的な結合のみなら ず間接的な結合を利用することもできる。 たとえば、 マウスのモノクローナル抗 体を用いる場合であればマウスの I g Gを認識する抗体を顆粒に結合し、 間接的 に顆粒上にマウスの抗体を結合することができる。 このような抗体は二次抗体と 呼ばれている。 間接的な結合には、 二次抗体の他、 ィムノグロブリンの定常領域 を結合するプロティン Aやプロテイン Gの利用、 あるいはピオチン化した抗体を アビヂンを固定した顆粒で捕捉する方法等を応用することもできる。 上記のよう な顆粒に二次抗体、 プロティン Aまたはプロテイン Gを化学的に結合させるには、 顆粒を活性化させてから結合させるのが好ましい。 顆粒の活性化は、 この種の顆 粒にタンパク質を結合させる際の任意の活性化法を選択することができる。 この ような活性化法には、 トシルク口ライ ド法、 ブロムシアン法、 ブロムァセチル法、 グルタールアルデヒド法等がある。 活性化顆粒の中には市販されているものもあ る。 このような活性化、 および活性化顆粒と二次抗体、 プロテイン Aまたはプロ ティン G等のタンパク質との結合は、 常法によって行うことができる。
また、 既に二次抗体、 プロテイン Aまたはプロテイン G等を結合した顆粒も巿 販されている。 市販の顆粒としては、 たとえば次のようなものが知られている。 日本ダイナル株式会社輸入、 株式会社ベリタス販売のダイナビーズ (登録商標)
M— 4 5 0、 M - 2 8 0
ヒッジ抗マウス I g Gコートタイプ
ャギ抗マウス I g Gコートタイプ
ヒッジ抗ラット IgGコートタイプ
ヒッジ抗家兎 I gGコートタイプ
ポリサイエンス ·ィンコーポレイティッド製
ャギ抗マウス I gG (H&L) カルボキシレートビーズ
ャギ抗家兎 IgG (H&L) カルボキシレートビーズ
プロティン Aカルボキシレートビーズ
ャギ抗家兎 IgG (H&L) ミクロマグネットパーティクル
ャギ抗家兎 IgG (H&L) ミクロマグネットパーティクル
プロティン Aミクロマグネットパ一ティクル
ヒッジ抗マウス I gG (H&L) ミクロマグネットパーティクル
上記のような顆粒に本発明で用いる抗体を結合させるには、 適当な媒質中で懸 濁した顆粒をタンパク質溶液で処理して非特異的吸着を防止した後、 抗体を含む 腹水または精製した抗体の溶液を混合する。
(C)検出法
本発明の検出法を実施するには、 被験ラットから血液または尿を採取し、 遠心 分離後の上清を検体とする。 尿の遠心分離は沈殿を分離するために行うもので、 静置後の上清やろ過によって沈殿を除いた尿試料を利用することもできる。 前記 のようにして製造した検出用顆粒に希釈した検体および (7) で得られた標識結 合抗体を加え、 室温で 2時間インキュベーションする。 反応終了後、 洗浄し、 基 質液を加えて発色後、 遠心分離して顆粒を除去し、 上清をマイクロプレートに移 し、 吸光度を測定する。 同様に正常者の検体も測定し、 値を比較する。 値の比較 にあたっては、 単にラヅ ト ·メグシンタンパク質の濃度としての比較の他に、 そ の個体の体液の体積を乗じて得ることができるラット ·メグシンタンパク質の体 液中の絶対量、 あるいはそれに類する補正値に基づく比較を行うこともできる。
(D) キット
上記の試験を実施するために必要な材料は、 キットとして供給することができ る。 このようなキットは、 前述した抗体を固定化した検出用顆粒および磁石を含 むことができる。 さらに標識分子を結合した抗体を含むこともできる。 そのほか、 本発明によるキットには、 試験管、 遠心管、 その他類似の容器、 ピペットまたは 類似の吸引器具、 あるいは顕微鏡を含ませることができる。 あるいはまた、 標識 を検出すために必要な酵素基質、 陽性や陰性の標準試料などを組み合わせること もできる。 なお上記検出用顆粒の代わりに、 その製造原料となる固体顆粒と抗体 の組合せとすることもできる。 図面の簡単な説明
図 1は、 抗ラヅ ト ·メグシンペプチド- 2抗体の力価を示すグラフ。 横軸は希 釈倍率、 縦軸は吸光度 (0D490nm)を表す。 1〜 3はそれぞれゥサギの個体を表す。 図 2は、 ラヅ ト .メグシンべプチド- 2の部分ァミノ酸配列 (配列番号: 1 ) を免疫原として得られたポリクロ一ナル抗体の反応性をゥヱスタンプロット法に よって調べた結果を示すゲル写真。 各レーンは、 以下のタンパク質に対応する。 1 : MBP ヒ トメグシンタンパク質融合タンパク質
2 : CH0細胞で発現させたメグシンタンパク質
3 :ラットメサンギゥム細胞ライセ一ト
4 :マーカ一
図 3は、 正常なラッ卜の腎臓組織に対して組織免疫染色した顕微鏡写真を示す。 図 4は、 異なる種におけるメグシンアミノ酸配列の比較を示す図である。 Aは ヒトとラッ卜、 Bはヒトとマウス、 Cはラッ卜とマウスの比較を示す。 マッチし た領域は斜線で表した。 配列は、 ウィンドウサイズ 8、 最小%スコア 60、 ハツ シュ値 2でタンパク質スコアリングマトリックスパム 250を用いて整列化した。 図 5は、 糸球体におけるメグシン発現細胞の同定と、 ラット抗 Thyl腎炎モデ ルを使用してメグシンの発現変動を半定量 PCRにより確認した写真である。
A:培養ラットメサンギゥム細胞 (MC) におけるメグシンの発現を表す。 培養ラッ 卜糸球体上皮細胞 (GEC) および糸球体内皮細胞 (GEN) では発現は検出限度以下 であった。
B :総 RNA l /gを cDNA合成に用いて、 半定量 PCRに利用した。 PCRを 33サイク ル行ったところ、 メグシンの発現亢進がはっきりと現れた。 各レーンは異なる動 物に相当し、 3動物を各時点で試験した。 Dは抗 Thyl抗体処理後の日数を表す。 図 6は、 ノーザンプロット分析による、 ラット抗 Thyl腎炎モデルを利用した メグシン mRNAの発現変動を示す写真である。 総 A 10 を電気泳動により分 離し二トロセルロースフィルタ一にトランスファ一した。 メグシン mRNAは 8日 目にはっきりと検出された。 左側のラベルはそれぞれ 28Sおよび 18Sリポソーム RNAのサイズに相当する (それぞれ 5. 1および 1. 9kb) 。
図 7は、 抗ラットメグシン抗体の特異性を表す写真である。 組換えメグシンあ るいはタンパク質 (各 2 g) を 10%SDS- PAGEにより解析し、 抗ラヅ トメグシン 抗体を用いてィムノブロットを行った (レーン 1—3 ) 。
レーン 1、 4、 7 : CH0細胞由来 c-myc-ヒスチジン標識メグシン
レーン 2、 5、 8 : 0 '由来 MBP-メグシン融合タンパク質
レーン 3、 6、 9 : MBP
レーン 4— 6 :過剰量の合成ラットメグシンペプチド P2でプレインキュベ一ト した抗ラットメグシン抗体
レーン 7— 9 :免疫形成前ゥサギ IgG
各組換えタンパク質の位置を矢印で表した。
図 8は、 抗 Thyl腎炎モデルラット由来腎臓の免疫組織化学的分析の結果を表 す写真である。
(A) は競合実験の結果を表す。
(B) は、 8日目にメグシンタンパクが蓄積していることを示している。 腎炎誘 導後 2日目まではメグシンタンパクの発現に著しい変化を認めなかった。 メグシ
ン夕ンパクの蓄積は 4日目にわずかに亢進した。 メサンギゥム領域は、 8日目に メグシンタンパク染色に対し顕著な陽性反応を示した。 メグシンタンパクの蓄積 は 14日目まで増加し、 28日目に基底レベルに戻った。 倍率 x200。
図 9は、 一連の切片を用いたメグシンおよびひ-平滑筋ァクチンの発現を示す 写真である。 FITC標識した抗ラットメグシン抗体および抗ひ-平滑筋ァクチン抗 体を免疫蛍光染色した。 メグシンは主に、 ひ-平滑筋ァクチン陽性領域に局在し ていたが、 その領域以外にも観察された。 発明を実施するための最良の形態
以下、 この発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
〔実施例 1〕 抗ラット ·メグシン抗体の製造
(1) ラット ·メグシンの合成べプチドに対するポリクローナル抗体の製造 他の SERPINフアミリーとの相同性が低く、 かつ親水性を有する領域を利用し、 ラット ·メグシンに対するポリクローナル抗体を製造した。 ラット ·メグシン夕 ンパク質の N末端から 341〜354番目のぺプチドの C末端にシスティンを含有す るペプチド 「H2N-E-S-N-I- V-E-K- L-L-P-E-S- T-V- C- C00H/配列番号: 3」 を固相 ペプチド法により合成し (パーキンエルマ一製、 モデル 432A) 、 高速液体クロ マトグラフィ一により精製し、 MBS (m-マレイミ ドベンゾィル -N-ヒドロキシルス クシニミ ドエステル) を用いてキーホールリンペットへモシァニン (KLH:Calbio chem- Novabiochem製) に結合させた。 ゥサギ 1匹をフロインド完全アジュバン ト (DIFC0製) と混合した KLH結合ペプチド (200〃g/匹) で皮内免疫した。 初 回免疫 (30〃g/羽) 後 3週間後に 2回目 (30〃g/羽) の免疫を行い、 以後 2週間 毎に 5回免疫 (各回、 30〃g/羽) を行った。 2回目以降は、 フロインド不完全ァ ジュバント (DIFC0製) を用いた。 32日後、 46日後、 60日後、 79日後、 95日後、 採血で得た血清が合成ペプチドと反応するか確認するため、 酵素免疫測定法 (EL ISA) により評価した。
すなわち、 抗原 150ng/ゥエルを固相化した 96穴プレー卜に連続的に希釈した 抗血清を各ゥエルに 100〃1加えて一次反応を行い、 洗浄後、 二次反応として HR P結合ャギ抗ゥサギ IgG (免疫化学研究所製) を反応させた。 洗浄後、 基質とし てオルトフエ二レンジァミン (和光純薬製) を用いて発色させ、 吸光度 490nmで 測定した (日本モレキュラーデバイス製 SPECTRAmax250) 。 各希釈倍率における 吸光度を表 1に示す。 このときの測定値をグラフに表したものを図 1に示す。
32日後、 46日後、 60日後、 79日後、 および 95日後に抗体価を測定した結果、 抗体価が十分に上昇していることを確認した。 得られた抗体はウエスタンプロッ 卜によりラット ·メグシンタンパク質と反応することを確認した。
〔実施例 2〕 抗ラヅ ト 'メグシン抗体のヒトメグシンタンパク質に対する反応性 ラヅ ト ·メグシンの合成べプチドに対するポリクローナル抗体は、 公知の方法 (細胞工学別冊 実験プロトコールシリーズ 抗ペプチド実験プロトコール、 秀 潤社) に従ってィムノアフィニティクロマトグラフィーにより精製した。 操作は、 次のとおりである。 合成ペプチドを F M P (2-fluoro-l-methylpyridinium tolu ene- 4- sulfonate) 活性化セル口ファイン (生化学工業製) に固定化し、 ァフィ 二ティ一カラムを作製した。 抗体は、 実施例 1のとおり、 ラット ·メグシンのド
メインペプチドを免疫し抗体価の上昇したゥサギ血清を P B S ( - ) で希釈した のち、 ペプチドカラムを用いてァフィ二ティー精製した。 得られた精製抗体はゥ エスタンプロットにより、 次の試料と反応させることにより、 抗原特異性を確認 した (図 2 ) 。 この抗体は、 ヒト ·メグシンとわずかながら反応し、 ラット ·メ サンギゥム細胞のライセ一トとは強い反応性が確認された。
レーン 1 : ヒト 'メグシンタンパク質融合タンパク質 (W0 99/15652)、 レーン 2 : CH0細胞で発現させたヒトメグシンタンパク質 (CH0-メグシンタンパ ク質: T.Miyata et al ., J. Clin. Invest. , 第 120巻, 828-836頁, 1998年、 W0
99/15652)
レーン 3 :ラヅト 'メサンギゥム細胞ライセ一ト
〔実施例 3〕 ラット ·メグシン抗体を利用した腎臓組織に対する免疫組織染色 (ィムノヒストケミスト)
正常なラットから腎臓組織を採取した。 腎臓組織は、 常法に従い、 凍結組織包 埋剤 (0. C. T. compound, Miles Laboratories) を用いて包埋した。 この凍結 包埋組織からフリオス夕ットを用いて 4 /mの凍結切片を作製した。 この凍結切 片を 3-ァミノプロピルトリエトキシシラン (シグマ製) でコー卜したスライ ド 上にマウントした (4%パラホルムアルデヒド固定、 15分) 。
凍結切片を 0. 5%の Tween20を含有する PBSで洗浄し、 4%のスキムミルクで プロッキング後、 4°Cの加湿チャンバ一内で抗ラット ·メグシン抗体と 1晚ィン キュベートした。 組織切片を洗浄し、 1: 100に希釈したペルォキシダ一ゼ標識 ャギ抗ゥサギ I g G抗体 (DAK0製)を用いて室温で 2時間ィンキュベ一トした。 ペルォキシダーゼの検出には、 0.003%の過酸化水素水を含有する 3,3,-ジアミ ノベンジジン溶液を用いた。 細胞核は、 へマトキシリンで染色した。 へマトキシ リン/ェォシン染色は、 公知の方法により実施した。
ラットの腎臓組織に対して組織免疫染色した顕微鏡写真 (ニコン製 ECLIPSE E 400 :倍率 80倍) を図 3に示す。 図から明らかなように、 ラット腎臓糸球体組織
に本発明のペプチド抗体で染色される部位が存在し、 特に、 メサンギゥム領域内 の細胞内およびメサンギゥム基質に顕著な陽性染色が認められたが、 尿細管には 認められなかった。
〔実施例 4〕 抗 Thyl腎炎モデルラットの作製法と動物検討の実験デザィン 全ての動物実験は東京大学医学部動物実験指針 (Guide for animal
Experimentation) により実施した。 6週齢の雄ウィスターラット (日本チヤ一 ルズリバ一製) を 1週間の予備飼育の後、 1.2mg/kg体重の IgGlマウスモノクロ —ナル抗 Thyl抗体 (0X-7) または基剤 (対照) を静脈内注射した。
〔実施例 5〕 ラヅ トメグシン cDNAのクロ一ニング
(1) degenerate PCRによる cDNAのクローニング
ISOGEN (Nippon Gene製) および oligotexを用い、 14継代目のラット培養メ サンギゥム細胞から mRNAを抽出した。 この mRNAを逆転写酵素 Superscript I I (GIBC0製) を逆転写反応に付し、 得られた cDNAを錶型とした。 ヒトメグシン の cDNAを元に、 degenerateプライマ一 FY: GTGMTGCTGTGTACTTAAAGGCAANTGN/配 列番号: 8 (172VMVYFKGK180に相当) 、 および R21: AANAGRAANGGRTCNGC/配列 番号: 9 (Rは、 Aまたは G: 357ADHPFLF363に相当) を作製し、 DNA Thermal Cy cler (Perkin Elmer Cetus製) を用い、 94°C45秒 (変性) 、 50°C45秒間 (ァニ —リング) 、 72°C2分 (増幅) 、 35サイクルの条件で PCRを行った。
予想される大きさ (576bp) に近い PCR産物を pCRI Iベクター (Clonetech 製) に組み込み、 DNAオートシーケンサーを用いたダイデォキシ法により塩基配 列を決定した。
次にラットメグシンの 5'領域を得るために、 ラットメグシンのクローン断片 から遺伝子特異的プライマーを調製し、 再度 degenerate PCRを行った。
まず、 ヒトメグシンをコードする配列の N-末端に対応する degenerateブラィ マ一 RM-CtermCl: ATGGCNTCNGCNGCNGCNGCNMYGC/配列番号: 1 0 (Yは Tまたは C)、 並びにラットメグシン特異的 reverseブラィマーである EM- MR- A2: CGACCTCCAGA
GGCMTTCCAGAGAGATCAGCCCTGG/配列番号: 1 1および -MR- A1: GTCTTCCAAGCCTA CAGATTTCMGTGGCTCCTC/配列番号: 1 2を作製した。 RM-CtermClおよび RM- MR- A2 を用いて、 94°C45秒、 55°C45秒、 72°C 1分、 45サイクルの条件で PCRを行った。 次に得られた PCR産物を铸型として、 RM-CtermClおよび RM- MR- A2を用いて、 9 4°C45秒、 55°C45秒、 72°C 1分、 25サイクルの条件で nested PCRを行った。 さ らに増幅を促進するために、 同一のプライマーを用い、 94°C30秒、 55°C30秒、 7 2°C40秒、 25サイクルの条件で PCRを繰り返した。
得られた PCR産物を pGEM-T- easyベクター (Promega製)に組み込んだ。 DNA自 動配列決定機を用いたダイデォキシ法により塩基配列を決定した。
(2) 5, -RACE法および 3, -RACE法による cDNAのクローニング
メグシンの開始コドンおよび終止コドンの部位に mutationの入っていないォ 一プンリ一ディングフレームを完全に含む配列を決定し、 全長の配列を確定する ために、 Marathon cDNA amplification kit (Clontech製) を用い、 上記で得ら れた配列を基にデザィンされたプライマーを使って、 5' -RACEおよび 3' -RACE法 を行った。 5, -RACEには、 2種の遺伝子特異的アンチセンスプライマー RM-PR01: GCTCAGGGCAGTGMGATGCTCAGGGMGA/配列番号: 1 3および - PR02: CTGACGTGCAC AGTCACCTCGAGCACC/配列番号: 1 4を用いた。 一方、 3,- RACEには、 遺伝子特異 的センスプライマ一 RM-MR- S3: GAGGTCTCAGMGMGGCACTGAGGCAACTGCTGCC/配列番 号: 1 5を使用した。 こうして得られた配列に基づいて、 最終的に配列番号: 1 に示す 1229bpからなるラットメグシンの cDNA全長の塩基配列をほぼ決定した。 ラヅ トメグシンのオープンリ一ディングフレームを含むクローンを得るために、 上記で得られた配列からデザィンされた 2種の遺伝子特異的プライマー RM- 5' UTR -FS2: CTCTATAGGAGACACTTGG/配列番号: 1 6 (センスプライマ一) および 3,-UT R-A1: GAAACAAATCAAAGCAAAC/配列番号: 1 7 (アンチセンスプライマ一) を使用 した。 94°C45秒 (変性) 、 50°Cで 45秒 (アニーリング) 、 72°C 1分 30秒 (増 幅) 、 35サイクルの条件で PCRを実施した。 予想される大きさ (約 1300bp) の
PCR産物を pCRI Iベクターに組み込んで、 ラットメグシンのオープンリーデイン グフレームを含むクローンを単離した。
〔実施例 6〕 ラットおよびマウスメグシン相同分子の単離、 同定
ラットおよびマウスメグシンは、 380個のアミノ酸を含み、 アミノ酸レベルで はヒトメグシンとの同一性がそれぞれ 75.3%および 73 · 9%であった (図 4 Aおよ び 。
〔実施例 7〕 メサンギゥム損傷後の尿中蛋白質排泄量の変化
本発明者らは、 ラットにおけるメサンギゥム増殖性糸球体腎炎の代表的なモデ ルである抗 Thyl腎炎を使用して、 メサンギゥム損傷後の尿中蛋白質排泄量の変 化を評価した。
24時間尿中のタンパク質濃度を市販のピロガロールレツドキット (和光純薬 工業、 東京、 日本) を使用して測定し、 24時間尿試料中の総タンパク質量を算 出した。 遠心分離によって血清を血液試料から分離し、 血中尿素窒素 (BUN) を 市販のゥレア一ゼ-インドフエノールキット (和光) を使用して測定した。
結果、 8日目では、 抗 Thyl処理ラヅ トは、 対照動物と比較して、 尿中蛋白質 排泄量が有意に増加していた (272± 13.1 対 86.3± 13.6mg/kg体重、 pく 0.05) 。 抗 Thyl処理動物の腎臓の蛋白質尿の程度および組織学は 28日目には正常に戻つ た (66.8±6.45mg/kg体重) 。
〔実施例 8〕 ラット糸球体由来培養細胞、 および抗 Thyl腎炎モデルラットにお けるメグシン mRNAの半定量 RT-PCR
ラット糸球体由来培養細胞、 および抗 Thyl腎炎モデルラットにおけるメグシ ン mRNA発現量を検討するために、 本発明者らは糸球体から MAを抽出し、 半定 量 RT-PCR分析を実施した。
詳しくは、 3匹のラヅ トを処理前 (0日) 、 処理後の 2、 4、 8、 14および 28日 目に安楽死させ、 従来の篩別法(Salant DJ, et al ., J.Clin. Invest. , 66 : 71-81, 1980 )により単離した糸球体から RNAを単離した。
培養糸球体細胞の総 RNAまたは各ラットの総糸球体 RNAの l /gを使用して、 製造業者のプロトコ一ルに従って SuperScriptl l (Gibco BRL) を用いて cDNAを 合成した。 逆転写反応混合物の をその後の半定量 RT- PCRに使用した。
ラヅト .メグシンのプライマ一には、 34~65bpに対応するラヅト ·メグシン S27フォワードプライマー (AGA ATT TGG CTT CGA CTT ATT CAG AGA GAT GG /配列番号: 4 ) 、 481〜513bpに対応するラット ·メグシン AS506 リバースプ ライマ一 (ATG ACA GCT GAT GAG CTG AGG CTG CTG TCC CCC/配列番号: 5 ) を 使用した。 PCRは、 各サイクルが 94°C 1分間の変性、 60°C 1分間のァニ一リン グおよび 72°C 1分間の伸長のインキュベーションからなるもので実施した。 β - ァクチンについては、 1455〜1484bpに相当するラット 5-ァクチンフォヮ一ドプ ライマー (GTG TGA TGG TGG GTA TGG GTC AGA AGG ACT/配列番号: 6 ) および 2318〜2288に相当するラヅト ? -ァクチンリバ一スプライマー (ATG GCA TGA GGG AGC GCG TAA CCC TCA TAG/配列番号: 7 ) を構築した。 増幅産物は、 ァガ 口一スゲル電気泳動によって可視ィ匕した。 ^ -ァクチン mRNAの増幅は、 cDNAの 完全性の対照に利用し、 各メグシン増幅反応に対しほぼ等量の cDNAの分配を可 能にした。 -ァクチンおよびメグシン mRNA増幅反応をさらに試験して、 使用し たサイクル数が反応プラトー外にある、 すなわち、 確実に増幅の増加範囲内とな るようにした。 この試験は、 25〜40サイクルの各増幅反応の進行を目で見てサ ンプリングして行った。 従って、 各増幅に使用した cDNAの量を正規化して/? -ァ クチン mRNAに匹敵するシグナルを獲得し、 また反応ブラトー外で検出するため に反応パラメ一夕一を選択したので、 メグシン mRNAのアツセィは半定量であつ た。 RT-PCRの陰性対照は逆転写酵素を欠損した、 または cDNA錶型を欠損した平 行増幅反応を含む。
結果、 培養細胞中にメグシンの発現が確認されたが、 糸球体上皮細胞または内 皮細胞では確認されなかった (図 5 A) 。 これは、 ラヅトメグシンも主にメサン ギゥム細胞において発現することを示唆している。 また、 PCRを 33サイクル行
つた場合、 8日目にメグシンの発現亢進がはっきりと観察された (図 5 B)。 3つ の独立した RT- PCRにおいても、 本質的に同じ結果が得られた。
〔実施例 9〕 ノーザンプロット分析
ラットの各組識におけるメグシン発現分布を検討するため、 ノーザンブロット 分析を行った。
ラヅ卜のノザンブロヅト膜は、 Multiple Tissue Northern Blots (商標: Clontech製) を使用した。 Multiple Northern Tissue Blotsは、 心臓、 脳、 脾 臓、 肺、 肝臓、 骨格筋、 腎臓および精巣由来の poly+RMを 2 ^含有する。
結果、 デ一夕は示していないが、 メグシンはすべてにおいて検出できなかった ラット抗 Thyl腎炎におけるメグシン mRNA発現亢進を、 さらに 2つの別個の実 験動物群においてノーザンプロット分析によって再確認した。
ノーザンプロットを実施するために、 処理前 (0日) 、 処理後の 2、 4、 8、 14 および 28日目に腎臓を摘出した。 各時点で 6匹のラットを安楽死させ、 このセ ッ卜の実験を 2回実施した。 糸球体を分離するために篩別法(Salant DJ, et al ., J. Clin. Invest. , 66 :71-81, 1980)により一方の腎臓を細切し、 IS0GEN (二ッポ ンジーン製) を使用して単離した糸球体から MAを精製した。
詳しくは、 各時点でラットから単離した RNAを合わせ、 10 zgの総 RNAを電気 泳動によって、 2.2mol/Lホルムアルデヒド変性ゲルを含有する 1%ァガ口一ス中 で分離し、 次に二トロセルロースフィル夕一にキヤビラリートランスファーした。 プローブとして、 クローン 27.2cのラット 'メグシンの部分 cDNAを使用した。 膜を 65°Cで 3時間 Rapid Hyb (アマシャム製) 溶液中でハイブリダィゼーシヨン した。 プロットを 60°Cで最終ストリンジエンシーである 0.1 X SSC/0.1%SDS中で 洗浄した。
ハイプリダイゼーシヨンおよび洗浄は上記のように実施した。 デハイプリダイ ゼーシヨン後に実施した^ -ァクチンプローブを用いた同じ膜のその後のノーザ ンブロット分析は、 各レーンに等しい量の RNAが適用されていることを確認した。
代表的なノーザンブロヅ卜の写真を図 6に示す。 メグシン mRNAの発現は基底 レベルでは検出されなかったが、 長時間露出することによって 8日目にだけメグ シンのわずかなバンドが検出された。 これは半定量 RT- PCRによるデータを裏付 けるものである。 メグシンのバンドは他のどの時点においても観察されなかった c 〔実施例 1 0〕 免疫組織化学的分析
蛋白質は、 必ずしも mRNAと同じ場所に局在していない。 さらに、 メグシンは SERPINスーパ一ファミ リーの一員であり、 従って、 分泌因子として働く可能性 があるが、 その標的は未だ不明である。 in ' ひにおける生物学的機能を解明す るためには、 腎臓におけるメグシン蛋白質の発現および局在を検討する必要があ る。 従って、 本発明者らは、 ラットメグシンの合成ペプチドに対するポリクロー ナル抗体を形成し、 免疫組織化学的方法によってメグシン蛋白質の局在を検討し た。 抗原性合成べプチドはラヅトメグシンの 341〜353アミノ酸に相当し、 ヒト およびげつ歯類の間では保存されているが、 SERPINスーパーフアミリーの他の メンバーとは配列の相同性を共有していない。
本発明者らはウエスタンブロット分析を行い、 この抗体の特異性を実証した
(図 7 ) 。 抗メグシン抗体は CH0-メグシン (レーン 1) 、 MBP-メグシン (レーン 2) と反応したが、 MBP (レーン 3) または KLH (データは示していない) とは反 応しなかった。 組換えメグシンに対する抗体の結合は、 非特異的結合を反映しな かった。 その理由は、 免疫反応が過剰量の合成メグシンペプチド (レーン 4〜 6) の存在下では完全に阻害され、 また、 免疫したゥサギの免疫形成前ゥサギ IgG (レーン 7〜9) では免疫反応は観察されなかったからである。
〔実施例 1 1〕 抗 Thyl腎炎モデルラット由来の腎組識を用いた免疫組識学的検 討
抗 Thyl腎炎における一時的なメグシン発現プロフィールを検討するために、 先に記載されているように(Nangaku M., et al ., J.Am. Soc . ephrol . , 10 :2323- 2331, 1999)、 間接的な免疫ペルォキシダ一ゼ方法をメチルカルノィ(methyl
Carnoy' s)固定組織にて施行した。 詳しくは、 増殖細胞核抗原 (PCNA) に対する 抗体であるマウスモノクローナル抗体 PC10 (DAKO A/S , Denmark) で染色し、 糸球体細胞増殖を評価した。 メサンギゥム細胞活性化は、 ひ-平滑筋ァクチンに 対する抗体であるマウスモノクローナル抗体 1A4 (Sigma, St. Louis, MO) で染 色し評価した。
処理組識を、 4〃mの切片を過ヨウ素酸シッフ試薬で染色し、 へマトキシリン で二重染色した。 糸球体断面あたりの糸球体細胞数および増殖中の細胞数を盲検 的に計数した。 無作為に選抜したラット 1頭当たり 30個の糸球体を検討し、 糸 球体あたりの平均細胞数を算出した。 ごく少量 (断面あたり <20別個の毛細管 セグメント) の糸球体ふさ状分岐 (glomerular tuft)しか含有しない糸球体断面 は使用しなかった。
ひ-平滑筋ァクチンの染色作用を評価するために、 各糸球体を半定量的に段階 わけした(Yoshimura A. , et al., J.Am. Soc. Nephrol. , 9 :2027-2039, 1998) : 0 ;染色なし、 1 ; 1〜25%の糸球体ふさ状分岐のメサンギゥム染色、 2 ;陽性の 染色を示す 25〜50%の糸球体ふさ状分岐、 3 ;陽性の染色を示す 50〜75%の糸球 体ふさ状分岐、 4 ; >75%の糸球体ふさ状分岐が強く染色されている。
詳しくは、 2日目にメサンギゥム溶解 (mesangiolysis) により糸球体細胞が 減少したことが分かった (糸球体あたり 59.3± 1.9細胞対 0日目の 78.3±2.0) 。 その後、 4日目 (69.5±3.2) および 8日目 (92.6±2.9) には総細胞が増加した。 28日目には糸球体細胞数は基底レベルに戻った (76.5±3.4) 。 糸球体における ひ-平滑筋ァクチンの発現は、 最初は 0X-7注射後 4日目に見られ (1.6±0.2) 、 8日目に増加した (3.4±0.2) 。 28日目の糸球体でもひ-平滑筋ァクチンの低レ ベルの発現が観察された (1.3±0.2) 。 糸球体細胞増殖は 2日目に増加し (糸球 体あたり 7.7±3.3 PCNA陽性細胞対 0日目の 0.9±0.2) 、 4日目にピークに達し (18.6±2.2) 、 8日目まで高い値を維持し (14.3±2.0) 、 28日目に正常に戻つ た (1.4±0·4) 。
〔実施例 1 2〕 免疫組織化学分析
免疫組織化学分析を実施するために、 実施例 8と同じく腎臓を摘出し、 OCT (Lab-Tek Products, Miles Laboratories, Naperville, II) に包埋し、 液体窒 素を用いてァセトン中ですばやく凍結して凍結切片を得た。
ラット腎組織試料を 4〃mに切片化し、 4%パラホルムアルデヒドを PBSに加え たもので固定した。 PBSで洗浄後、 切片を等級エタノールで脱水し、 0.3%H202を 添加したメタノール中で室温において 20分間ィンキュベーシヨンし、 内因性べ ルォキシダ一ゼをブロッキングした。 0 · 25%Tween20を含有する PBSで 3回洗浄 後、 切片を室温においてブロッキングバッファ一 (Block AceTM, Snow Bland Tokyo, Japan) と共にプレインキュベーションし、 次に免疫化したゥサギのゥサ ギ抗ラヅトメグシン IgGまたは免疫前血清 IgGと共に 4°Cにおいて 1晚ィンキュ ベーシヨンした。 次いで、 切片を 50倍希釈したペルォキシダーゼ抱合ブ夕抗ゥ サギ抗体 (Dako, Glostrup, Denmark) と共に室温において 30分間インキュべ一 シヨンし、 0.03%H202を含有する 3,3-ジァミノべンジジン四塩酸で展開し、 次に へマトキシリンで二重染色した。 過剰量の合成ラットメグシンべプチド P2と共 にィンキュベ一シヨンしておいた抗メグシン抗体を使用して免疫染色の特異性を 確認するための競合実験を実施した。
結果、 ラット糸球体にメグシン蛋白質の局在的な蓄積が観察されたが (図 8 B) 、 肝臓、 脾臓および肺を含む他の器官では陰性であった (データは示してい ない) 。 メグシンの沈着は主にメサンギゥム領域に観察された。 疾患が誘発され る前の 0日目では、 メグシン陽性細胞は、 あらゆる時点における対照動物と同様 に少なかった (デ一夕は示していない) 。 メグシンの染色は 2日目でもわずかで、 これはおそらくメサンギゥム溶解 (mesangiolysis) が進行しているためと考え られる。 メグシンの蓄積は 4日目にわずかに亢進し、 8日目に最も顕著であった。 メグシン沈着が増加すると、 糸球体上皮細胞の一部も陽性染色を示した。 メグシ ン沈着の増加は 14曰目にも明らかであつたが、 28曰目には正常に戻った。 免疫
前血清を使用した場合、 または抗体を過剰量のメグシンべプチドとプレインキュ ベ一シヨンした場合には、 染色は陰性であった (図 8 A) 。
〔実施例 1 3〕 免疫蛍光学的検討
メグシンとメサンギゥム細胞活性化との関連をさらに検討した。
本発明者らは、 メグシンとメサンギゥム細胞活性化のマーカーであるひ-平滑 筋ァクチンの発現局在を同定するために、 抗メグシン抗体および抗ひ-平滑筋ァ クチン抗体を用いて、 一連の切片の免疫組識染色を行った。 4〃mに切片化した 凍結腎組織を、 4%パラホルムアルデヒドを PBSに加えたもので固定し、 ひ-平滑 筋ァクチンの検出は、 FITC-標識した 1A4モノクローナル抗体 (Sigma) を使用し た。 ラットメグシンを検出するためには、 FITC-標識したブ夕抗ゥサギ IgG (Dako) を 50倍希釈で使用した。
メグシンは、 主に、 ひ-平滑筋ァクチン陽性領域に局在していたが、 その領域 以外にも観察された (図 9 ) 。 産業上の利用の可能性
本発明によって、 ラットにおけるメサンギゥム増殖性腎炎の診断が可能となつ た。 ラットのメサンギゥム増殖性腎炎は、 たとえば生殖発生毒性試験のような人 為的に引き起こされる腎機能障害の代表的なものである。 ラットは、 実験動物と しては生理的にヒトに近いと言われている。 加えて本発明においては、 ヒトにお ける腎機能の指標となるメグシンのラッ卜におけるホモログが、 メサンギゥム増 殖性腎炎のマーカーとして有用であることを見出した。 したがって、 ラットにお けるメグシンの挙動は、 そのままヒトに外挿することができると考えられ、 メグ シンを指標とする毒性試験の価値を飛躍的に高めるものと言うことができる。