明 細 書 硫化銅精鉱の熔鍊方法 技術分野 本発明は、 銅の乾式製鍊法に関し、 特に、 硫化銅精鉱あるいは硫化銅精鉱から 得られたマットを酸化熔鍊して白カヮあるいは粗銅を得る製鍊方法に関する。 背景技術 従来、 銅の溶融製鍊は、 硫化銅精鉱を酸化溶融し、 鉱石中の F eの一部を酸化 しスラグとして除去するとともに、 Sの一部を S〇2とし、 C uを F e Sと C U 2 Sの混合物であるマットとして濃縮するマット熔鍊工程、 次いで、 得られ たマツトをさらに酸化して F eをスラグとして除去し、 F eをほとんど含まない 白カヮ (C U 2 S ) を得る白カヮ製造工程、 この白カヮをさらに酸化して粗銅を 得る造銅工程からなる。 マット熔鍊炉としては一般的に自熔炉が用いられ、 白力 ヮ製造工程と造銅工程は、 通常、 転炉で行われる。
通常、 硫化銅精鉱には脈石分として S i 0 2が含まれるため、 マット熔鍊工程 では鉄シリケ一トスラグが用いられる。 転炉でも、 通常、 溶剤として珪酸鉱を添 加して鉄シリケ一トスラグを形成する。
マツト熔鍊炉では、 マツト中の銅品位 (マツトグレード; M G) が、 通常 7 0 重量%以下のマットを製造し、 これを転炉に導入する。 転炉はバッチ式で、 前述 のように、 白カヮ、 次いで粗銅とする。 プラント全体の生産性を高めるうえで、 マット熔鍊炉の M Gを高め、 バッチ式転炉の負荷を下げることが望ましい。 マツ ト熔鍊炉で白カヮまで酸化できれば、 転炉での白カヮ製造工程が不要になる。 さ らに、 粗銅まで酸化できれば、 転炉工程そのものが不要となる。 しかし、 マット 熔鍊炉の酸化度を上げようとすると、 鉄シリケ一トスラグに起因する以下の問題 があった。
( 1 ) マグネタイトトラブル:
鉄シリケ一トスラグでは 3価の F eの溶解度が低い。 このため、 固体マグネ夕 イトが析出して炉底に沈積するなど、 いわゆるマグネタイトトラブルを招く。 こ れを避けるために、 M Gを高くする場合には、 熔鍊温度を 1 3 0 0 °C以上に上げ ざるを得ない。 しかし、 これは炉体の損傷を促進する。 また、 銅の一部を酸化し てスラグ中の銅品位を高くすると、 鉄シリケ一トスラグでもマグネタイトトラブ ルを避けて粗銅が得られるが、 このときのスラグ中の銅品位は 2 5 %以上必要で、 粗銅の収率が著しく低くなる。
( 2 ) 銅の酸化溶解:
M Gの上昇にともなって、 鉄シリケ一トスラグ中への銅の酸化物としての溶解 度が著しく上昇する。
( 3 ) 不純物の濃縮:
鉄シリケ一トスラグとマットあるいは粗銅の共存下では、 A s、 S bなどの酸 化物の鉄シリケ一トスラグへの溶解度が低いために、 これらの不純物がマツトぁ るいは粗銅中に濃縮する。 その程度は、 鉄シリケ一トスラグと粗銅が共存する場 合、 特に著しく、 これらの不純物の高い硫化銅精鉱から鉄シリケ一トスラグ共存 下で直接粗銅を得ることができない理由の一つとされていた。
これらの点から、 鉄シリケ一トスラグを用いるマット熔鍊炉では、 通常、 M G 6 5〜7 0 %程度を上限として操業が行われている。
また、 同様の問題からマツトを S品位の低い粗銅にまで酸化する工程において は、 鉄シリケ一トスラグ共存下では連続化が不可能とされ、 通常、 転炉を用いた バッチ式の処理が行われてきた。 鉄シリケ一トスラグ共存下で、 マットから粗銅 を連続的に得ている報告 (特開昭 5 8— 2 2 4 1 2 8号) もあるが、 これはスラ グー白カヮー粗銅の 3相共存下で粗銅を得たもので、 このときの粗銅中の S品位 は 1 . 5 %と高くならざるを得ず、 後工程である精製炉の操業負荷を著しく増大 させる。
この問題を避けて、 本願発明者の一人は、 マット熔鍊炉で白カヮを製造する方 法を特公平 5— 1 5 7 6 9号で提案している。 これは、 溶剤として石灰を加え、 硫化銅精鉱中の鉄分をカルシウムフェライトスラグとして除去するというもので
ある。 カルシウムフェライトスラグを用いることで、 マグネ夕イトの析出は防止 でき、 また、 As、 S bなどの不純物のスラグへの除去率は、 鉄シリケ一トスラ グより高いという利点があった。 しかし、 下記のような問題があった。
(1) 硫化銅精鉱中には、 通常、 若干の S i〇2が含まれる。 このため、 なるベ く純粋なカルシウムフェライトスラグを生成させるためには、 処理する硫化銅精 鉱は S i 02品位の低いもの (3%以下) に限られる。
(2) 上記の低 S i 02硫化銅精鉱であっても、 カルシウムフェライトスラグ中 に少量の S i〇2が存在すると、 スラグの粘性を悪化させたり、 泡立ちを引き起 こし、 安定的な操炉が困難であった。 このため、 カルシウムフェライトスラグを 用いる場合、 スラグ中の S 1〇2品位は1 %以下 (スラグ中の F eに対し重量で 約 1. 7%以下) に制御しなければならず、 この方法により、 カルコパイライト を主体とした標準的な硫化銅精鉱から白カヮを得ようとする場合、 実用上は硫化 銅精鉱中の S i〇2品位は 0. 4%以下に限定されていた。
(3) カルシウムフェライトスラグへの P bの溶解度が低いため、 Pbが該スラ グ中に分配されにくく、 白カヮに濃縮する。
(4) カルシウムフェライトスラグへの銅の酸化物としての溶解量が多く、 選鉱 による回収率が低い。
一方、 転炉工程では、 マットをさらに酸化して白カヮ、 粗銅とするうえで、 鉄 シリケ一トスラグに起因する問題を避けるために、 工程をバッチとし、 白カヮと スラグが共存する状態でいったん吹鍊を中断して炉を傾転させてスラグを排出し、 白カヮのみを転炉内に残して粗銅までの酸化を行う。 この方式は、 バッチ方式に 起因する種々の不利益を含んでおり、 転炉操業を煩雑なものとしている。
三菱連続製銅法では、 転炉 (C炉) 工程でカルシウムフェライトスラグを用い ることでマグネタイ卜の析出を避け、 MG65%程度のマツトから粗銅を連続的 に製造している。 しかし、 カルシウムフェライトスラグに起因する以下のような 問題があった。
(1) スラグ中の銅品位は酸素分圧に対して連続的に変化し、 粗銅中の S品位を 下げるほどスラグ中の銅品位が高くなる。 実用上は、 粗銅中の Sを 0. 5〜1 % 程度でスラグ中の Cuは 13〜15%となり、 これ以下の S品位とするのは銅の
収率の点から効率的ではない。
(2) カルシウムフェライトスラグ中の銅分は、 主として酸化物で化学的に溶解 したものであり、 徐冷しても選鉱による銅の回収率が低い。
(3) 前述のように、 カルシウムフェライトスラグ中の S i 02が 1〜3%程度 になると粘性が著しく増大し、 フォーミング (泡立ち) を起こす。 このため、 鉄 シリケ一トスラグの混入したマツトは原料として使用困難であった。 マツト中の F e品位を 10 %とすると、 マツト中への混入が許容できる S i O2はマツ卜に 対して 2%以下であり、 マット熔鍊工程から産出されるマットへのスラグの 混入防止に特に注意する必要があった。
(4) Pbの溶解度が低いため、 Pbがスラグ中に分配されにくく、 粗銅に濃縮 する。 このため、 高 Pb原料から従来の方法で電解可能なアノードの製造は困難 であった。
(5) 同一温度で比較した場合、 煉瓦への浸透性が大きいため、 シリケ一トスラ グより転炉煉瓦の浸食性が大きい。 発明の開示 本発明の目的は、 硫化銅精鉱あるいはマツトを連続的に酸化して白カヮあるい は粗銅を得るうえで、 (1) 1300°C以下の通常の銅熔鍊温度でマグネ夕イト トラブルがなく、 (2) S i〇2を含有する硫化銅精鉱ゃマットの処理にも適用 でき、 (3) スラグへの銅の損失が少なく、 (4) 浮選によりスラグ中の銅分の回 収が可能で、 (5) As、 S b、 Pbのスラグへの除去能が高く、 (6) 煉瓦の熔 損が少ない硫化銅精鉱の熔鍊方法を提供することにある。
本発明の方法は、 硫化銅精鉱に溶剤として S i〇2源と C a〇源を加え、 C a 〇/ (S i O2 + C a〇) の重量比が 0. 3〜0. 6で、 かつ F eZ (F e Ox + S i O2 + C aO) の重量比が 0. 2〜0. 5であるスラグと白カヮに近いマ ットあるいは白カヮあるいは粗銅とを生成するように酸化熔鍊することを特徴と する。
また、 硫化銅精鉱を熔鍊して得られるマットに S i 02源と C aO源を加え、
C aO/ (S i〇2 + C a〇) の重量比が 0. 3〜0. 6で、 かつ F e/ (F e O x +S i O2 + C aO) の重量比が 0. 2〜0. 5であるスラグと粗銅とを生 成するように酸化熔鍊することを特徴とする。 図面の簡単な説明 図 1 : 硫化銅精鉱を酸化して MG 75のマットを得る場合の、 1300°Cで のスラグ中の銅量 (A)、 生成するスラグ量 (B)、 スラグ中の銅品位 (C) をス ラグ中の C aOZ (S i O2 + C aO) 比 (横軸) および F e % (縦軸) に対し て示したグラフである。
図 2 : スラグ中の Asの活量係数をスラグ組成に対して示したグラフである。 図 3 : スラグ中の P bの活量係数をスラグ組成に対して示したグラフである。 図 4 : 白カヮ共存下で S品位 1〜: L . 5 %程度の粗銅を得る場合の、 130 0°Cでのスラグ中の銅量 (A)、 生成するスラグ量 (B)、 スラグ中の銅品位 (C) をスラグ中の C a〇Z (S i O2 + C aO) 比 (横軸) および F e % (縦 軸) に対して示したグラフである。
図 5 : 1573 Kにおいて、 溶銅共存下でスラグに酸化溶解する銅濃度と酸 素分圧の関係を示すグラフである。 発明を実施するための最良の形態 白カヮあるいは粗銅を製造する高い酸素分圧条件におけるスラグの特徴を、 従 来、 銅製鍊で用いられてきた鉄シリケ一トスラグ、 三菱法で用いられているカル シゥムフェライトスラグ、 本発明で用いる鉄カルシウムシリケ一トスラグとを、 比較して表 1に示す。
鉄シリゲート カルシウムフェラ 鉄カルシウムシリ スラグ ィ卜スラグ ケ一卜スラグ 粘性が低い X 〇 〇 - マット、 粗銅の X 〇 〇
懸垂が少ない 銅の酸化溶解か X X 〇
少ない 銅の硫化溶解が 〇 X X
少なレ
P bの溶解度が 〇 X 〇
咼ぃ
As, Sb溶解度 X 〇 〇 マク'ネタ仆溶解度 X 〇 〇 煉瓦の熔損が 〇 X 〇
少ない
従来、 鉄シリケートスラグに若干の C a Oを加えて粘性を改善することは行わ れてきた。 ただし、 マット熔鍊工程では C a〇品位が高くなると、 銅の硫化物と しての溶解度が増えるうえに、 スラグ量も増えるので不利と考えられてきた。 し かし、 硫化溶解が問題とならない白カヮゃ粗銅と共存する条件下では、 鉄シリケ —トスラグやカルシウムフェライトスラグで銅の酸化溶解が著しく多くなるのに 対し、 本発明で用いる鉄カルシウムシリケ一トスラグでは、 銅の酸化溶解が少な くて済むため、 スラグ量 X銅品位 =酸化溶解による銅の損失量で評価すると、 従 来法 (鉄シリケ一トスラグあるいはカルシウムフェライトスラグを用いる高 M G のマット熔鍊法や白力ヮ熔鍊や直接製銅法) より少なくなることを見出し、 本発 明に至った。
図 1は、 硫化銅精鉱を酸化して MG 75のマットを得る場合の、 1300°Cで のスラグ中の銅量 (A)、 生成するスラグ量 (B)、 スラグ中の銅品位 (C) を、 スラグ中の C a〇Z (S i O2 + C aO) の重量比 (横軸) および F e % (縦 軸) に対して示したグラフである。 各図には、 各固相の飽和線が示されており、 C aO/ (S i O2 + C aO) の重量比が 0. 6以上では 2 C aO · S i O2が 析出する。 また、 Fe品位が高すぎると、 マグネ夕イトが析出する。 図の左端が 従来の鉄シリケ一トスラグ (C aO=0%) に相当する。
スラグ中の鉄品位が低くなるほど銅品位が低くなる傾向にあり、 また C a〇 Z (S i O2 + C aO) の重量比が大きいほど銅品位は低ぐなる。 生成するスラグ 量は、 スラグ中の鉄品位によって決まり、 除去すべき鉄量は原料により決まるの で、 スラグ中の鉄品位が高いほどスラグ量は少なくなる。 スラグへ移行する銅量 (損失量) は、 スラグ量 Xスラグ中銅品位で決まり、 最上段に示したように、 C aOZ (S i O2 + C aO) の重量比が 0. 5〜0. 6、 そして、 F eZ (F e Ox +S i O2 + C a〇) の重量比が 0. 2〜0. 5の組成付近で極小値をもつ。 すなわち、 スラグ中への銅の損失を最小にするという点からは、 この付近の組成 のスラグを選べばよい。
一方、 図 2は、 スラグ中の Asの活量係数をスラグ組成に対して示したグラフ である。 横軸に CaO/ (S i O2 + C aO) の重量比、 縦軸に Asの活量係数
(7 As Ol.5) を示している。 図の左端が従来の鉄シリケ一トスラグ、 右端がカル シゥムフェライトスラグに相当し、 本発明で用いる鉄カルシウムシリケ一トスラ グは両者の中間に位置する。 活量係数は、 値が小さいほど、 その元素がスラグ中 に除去されやすいことを示す。
図 2より、 C a〇Z (S i O 2 +C aO) の重量比を 0. 3以上にすると、 A sの除去能は、 鉄シリケ一トスラグより高くなることがわかる。 なお、 Asと同 じ V族に属する S bも同様の挙動を示す。
一方、 図 3に示したように、 Pbは逆の挙動を示し、 Pbの活量係数 (rpb 0) がカルシウムフェライトスラグで著しく大きな値となっており、 C aOZ (S i O2 + C aO) の重量比が小さなほど小さな値を示す。 Pbの除去能は、 C aOZ (S i〇2 + C a〇) の重量比が 0. 3〜0. 6では、 鉄シリケ一トス
ラグと比べるとやや劣るものの、 カルシウムフェライトスラグに比べると、 かな り大きな除去能をもっている。
以上より、 C a〇Z (S i O2 + C aO) の重量比を 0. 3〜0. 6とするこ とで、 As、 S b、 P bのいずれについてもスラグ中に除去しやすくなることが わかる。
図 4は、 図 1と同様の関係を、 白カヮ共存下で S品位 1〜1. 5%程度の粗銅 を得る場合について示したものである。 図の左端が鉄シリケ一トスラグ (C aO = 0 %)、 右端がカルシウムフェライトスラグ (S i 02= 0 %) に相当する。 最上段の図より、 銅の損失量は、 2 C aO · S i 02の飽和線に近いところで極 小をとることがわかる。 カルシウムフェライトスラグでも、 銅の損失量は比較的 少ないが、 少量の S i O 2が持ち込まれると、 2 C aO ' S i O 2飽和となり、 スラグの泡立ちという問題を生ずる。
不純物の分配については、 マット熔鍊と同じ傾向にあり、 カルシウムフェライ トスラグは P bを吸収しにくく、 鉄シリケ一トスラグでは A s、 S bを吸収しに くいという欠点があるのに対し、 C aOZ (S i O2 + C aO) の重量比を 0. 3〜0. 6とすることで、 As、 S b、 Pのいずれをもスラグ中に除去しやすく なる。
以上より、 C aO/ (S i O2 + C aO) の重量比が 0. 3〜0. 6、 F eZ (F e〇 x +S i O2 + C aO) の重量比が 0. 2〜0. 5の範囲に銅の損失を 最小にし、 かつ Pb、 As、 S bのいずれをも除去しやすい最適組成があること がわかる。
図 5は、 酸素分圧に対するスラグ中の銅品位を示したもので、 図 4に示した場 合より、 さらに酸化度が高い領域で S品位の低い粗銅を得ようとする場合の挙動 が示されている。 図中、 曲線 Aが鉄シリケ一トスラグ、 曲線 Dがカルシウムフエ ライトスラグ、 曲線 B、 Cが本発明で用いる鉄カルシウムシリケ一トスラグを示 す。 鉄シリケ一トスラグ、 カルシウムフェライトスラグでは、 酸素分圧の上昇に 応じてスラグ中の銅は 1 00%まで連続的に変化する。 それに対して、 鉄カルシ ゥムシリケートスラグでは、 銅品位約 20 %で酸化銅飽和となるので、 スラグ中 の銅品位はこの品位以上には上がらない。 すなわち、 この条件で粗銅を作ると、
スラグ中の銅品位が約 20%で S品位が 0. 01 %以下の粗銅 (酸化銅飽和の粗 銅) が得られる。 同程度の酸化度の粗銅を鉄シリケ一トスラグあるいはカルシゥ ムフェライトスラグで作ると、 スラグ中の銅品位は著しく高くなり収率の点から 実用とはならない。
煉瓦の浸食については、 スラグ成分の煉瓦への浸透が大きな影響を及ぼすと考 えられている。 通常、 銅製鍊で用いられるマグクロ煉瓦中にスラグ成分が浸透し た場合、 スラグ中の酸化鉄はペリクレ一ス (MgO) や C r 2〇3を含むスピネ ルに吸収されることが知られている。 S i〇2を含むスラグの場合、 煉瓦内に浸 入すると、 酸化鉄がペリクレ一ス (Mg〇) ゃスピネル中に固溶することにより、 スラグ中の S i〇2濃度が高くなる。 その結果、 スラグの粘性が上昇し、 それ以 上のスラグ浸透が抑制されると考えられる。
以下に実施例を説明する。
[実施例 1 ]
1300°Cに保持されたマグネシア製ルツボ内に表 2に示す溶融マツト 40 g と溶融スラグ 60 gを用意し、 溶融浴中に同じく表 2に示す組成の硫化銅精鉱と S i〇2 (S i〇2純分 95 %以上) と C aO (C a〇純分 98%以上) とをラ ンスパイプを用いて 95 %〇2— 5 %N2 (容量%) とともに、 ランスパイプを 浸漬せずに、 吹き込んだ。 表 2
(重量%)
Cu Fe S S1O2 CaO 溶融マッ卜 74.8 2.0 20.5 溶融スラグ 2.4 35.1 22.9 16.2 硫化銅精鉱 31.4 24.0 30.2 6.9
吹き込みに用いたランスパイプはアルミナ製で、 20 gZ分の硫化銅精鉱と、 1. 94 ノ分の3 1〇2 、 2. 208 分の〇 0を4. 5リットル 分の 9 5%θ2- 5%N2 (容量%) ガスとともに吹き込んだ。
上記の条件で吹き込みを 50分間継続して、 10分間静止した後、 冷却凝固さ せて、 マットおよびスラグの重量ならびに分析品位を求め、 最初に装入したマツ ト、 スラグの量ならびに品位から各成分量を差し引いて、 反応により生成したマ ット量、 スラグ量ならびにその品位を計算した結果を表 3に示す。 表 3
[実施例 2 ]
1300°Cに保持されたマグネシア製ルツボ内に表 4に示す組成の溶融粗銅 3 0 gと溶融スラグ 80 gを用意し、 溶融浴中に同じく表 4に示す組成の硫化銅精 鉱と S i〇2 (S i O2純分 95 %以上) と C aO (C aO純分 98%以上) と をランスパイプを用いて 95 %〇2— 5 %N2 (容量%) とともに、 ランスパイ プを浸漬せずに、 吹き込んだ。
表 4
(重量%)
吹き込みに用いたランスパイプはアルミナ製で、 20 gZ分の硫化銅精鉱と、 3. 02gZ分の S i〇2、 2. 88gZ分の C aOを 5, 8リットル Z分の 9 5 02- 5 %Ν2 (容量%) ガスとともに吹き込んだ。
上記の条件で吹き込みを 50分間継続して、 10分間静止した後、 冷却凝固さ せて、 粗銅およびスラグの重量ならびに分析品位を求め、 最初に装入した粗銅、 スラグの量ならびに品位から各成分量を差し引いて、 反応により生成した粗銅量, スラグ量ならびにその品位を計算した結果を表 5に示す。 表 5
(重量%)
[実施例 3 ]
1 300°Cに保持された 製ルツボ内に表 6に示す組成の溶融粗銅 6
0 gと溶融スラグ 40 gを用意し、 溶融浴中に同じく表 6に示す組成のマツ卜と S i〇2 (S i 02純分 95 %以上) と C aO (C aO純分 98 %以上) とを 9 5%02-5%N2 (容量%) とともに、 ランスパイプを浸漬せずに、 吹き込ん だ。 表 6
(重量%)
吹き込みに用いたランスパイプはアルミナ製で、 20 gZ分の硫化銅精鉱と、 1. 78 gZ分の S i〇2と、 1. 14 gZ分の C aOとを 4. 0リットル 分 の 95%〇2— 5%N2 (容量%) ガスとともに吹き込んだ。
上記の条件で吹き込みを 50分間継続して、 10分間静止した後、 冷却凝固さ せて、 粗銅およびスラグの重量ならびに分析品位を求め、 最初に装入した粗銅、 スラグの量ならびに品位から各成分量を差し引いて、 反応により生成した粗銅量、 スラグ量ならびにその品位を計算した結果を表 7に示す。
表 7
(重量%)
この実施例 1〜3の試験において、 ダスト発生率は 4〜 7重量%の範囲であつ た。 この間、 マグネ夕イトの発生によるトラブルは全くなかった。
[実施例 4]
実施例 3において生成したスラグを 200メッシュアンダーが 95 %となるま でボールミルにて微粉砕し、 このスラグ 200 gを水で 65重量%スラリーとし、 試験用浮選機によって浮選テス卜を実施した。 この際、 起泡剤としてパイン油 0. 02 g、 浮選剤として市販の DM— 2000、 MCB— 4、 ザンセ一トを各々 0. 006 g、 0. 01 g、 0. 03 g添加した。
テスト結果を表 8に示す。 浮選により 80 %以上の銅を回収できることが確認 された。
表 8
[実施例 5 ]
反応塔の内径 1 · 5m、 高さ 3 5m、 セトラ一部の内径 1. 5m、 長さ 5
2mの小型自熔炉を用い、 表 9に示した組成の精鉱と粉珪石と粉石灰 (いずれも 200 xm以下に粉碎したもの) を所定の比率で調合、 乾燥したもの (以下、 乾 鉱という) を反応塔天井に設けられた精鉱バーナーから酸素 50%の酸素富化空 気とともに反応塔内に吹き込み、 スラグとマットを得た。 精鉱バーナーには重油 バーナーが組み込まれており、 反応塔の熱バランスを保つように重油量を調節し た。 操業は 4日間行った。 得られた結果を表 9に示す。 表 9より、 MG約76の 高品位マットが安定的に得られたことがわかる。 表 9
(重量%)
精鉱バーナー送風空気量 580Nm3Zh、 酸素濃度 50%、
重油量 53リットル Zh、
生成スラグ平均温度 1258°C、 生成マツト平均温度 1 146°C
[比較例 1 ]
1300°Cに保持されたマグネシア製ルツボ内に表 10に示す組成の溶融マツ 卜 30 gと溶融スラグ 40 gを用意し、 溶融浴中に同じく表 10に示す組成の硫 化銅精鉱と S i〇2 (S i〇2純分 97 %以上) とを 95%θ 2— 5%N2 (容量
%) とともに、 ランスパイプを浸漬せずに、 吹き込んだ。 表 10
(重量%)
吹き込みに用いたランスパイプはアルミナ製で、 37. 5 gZ分の硫化銅精鉱 と、 7. 6 gZ分の S i〇2とを 9. 2リットル Ζ分の 95 %〇2— 5 %Ν2 (容 量%) ガスとともに吹き込んだ。
試験開始 5分後には、 マットと生成マグネタイトの混合した高融点物質の形成 により、 供給原料の融体中への吹き込みが不可能となり、 さらにこれらの物質の ため、 ランスパイプの閉塞が起こり、 実験の継続が不可能となった。
[比較例 2]
1300°Cに保持されたマグネシア製ルツボ内に表 1 1に示す組成の溶融粗銅 60 gと溶融スラグ 40 gを用意し、 溶融浴中に同じく表 1 1に示す組成のマツ トと C aO (Ca〇純分 98%以上) を 95%〇2— 5%N2 (容量%) ととも に、 ランスパイプを浸漬せずに、 吹き込んだ。
(重量%)
吹き込みに用いたランスパイプはアルミナ製で、 20 gZ分のマットと、 0. 73 gZ分の C a〇とを 0. 20リットル Z分の 95 %〇2— 5 %N 2 (容量 ) ガスとともに吹き込んだ。
試験開始 30分後、 スラグのわき上がり現象が起こり、 ルツボ内の熔体の大半 がルツボ外に吹きこぼれ、 実験の継続が不可能となった。
[比較例 3 ]
1300°Cに保持されたマグネシア製ルツボ内に表 12に示す組成の溶融粗銅 60 gと溶融スラグ 40 gを用意し、 溶融浴中に同じく表 12に示す組成のマツ 卜と C aO (C aO純分 98%以上) を 95%〇2—5 %Ν2 (容量%) ととも に、 ランスパイプを浸潰せずに、 吹き込んだ。
表 12
(重量%)
吹き込みに用いたランスパイプはアルミナ製で、 20gZ分のマットと、 0. 7gZ分の CaOとを 4. 2リットル 分の 95 %〇2— 5 %N 2 (容量%) ガ スとともに吹き込んだ。
上記の条件で吹き込みを 50分間継続して、 10分間静止した後、 冷却凝固さ せて粗銅およびスラグの重量ならびに分析品位を求め、 最初に装入した粗銅、 ス ラグの量ならびに品位から各成分量を差し引いて、 反応により生成した粗銅量、 スラグ量ならびにその品位を計算した結果を表 13に示す。
S品位 0. 06 %の粗銅が得られたが、 スラグ中の銅品位が高く、 粗銅の収率 は約 80 %であった。 表 13
(重量%)
Cu Fe S S1O2 CaO
(g) 生成粗銅 534 98.3 0.06 生成スラグ 290 32.7 32.0 11.2
[比較例 4]
Cu 16. 4%、 F e 47. 6%、 C aO 15. 7 %を含むカルシウムフェラ ィトスラグを 200メッシュアンダーが 95 %となるまでボ一ルミルにて微粉砕 し、 このスラグ 200 gを水で 65重量%スラリーとし、 試験用浮選機にて浮選 テストを実施した。 この際、 起泡剤としてパイン油 0. 02 g、 浮選剤として巿 販の DM— 2000、 MCB— 4、 ザンセ一トを各々 0. 006 g、 0. 01 g、 0. 03 g添加した。
テスト結果を表 14に示す。 カルシウムフェライトスラグから浮選により銅を 回収することは困難であった。 表 14
産業上の利用の可能性 本発明の方法により、 硫化銅精鉱あるいはマツトを連続的に酸化して白カヮぁ るいは粗銅を得るうえで、 マグネ夕イトトラブルがなく、 S i〇2を含有する硫 化銅精鉱ゃマットの処理にも適用でき、 スラグへの銅の損失が少なく、 また、 浮 選によるスラグ中の銅分の回収が可能で、 As、 Sb、 Pbのスラグへの除去能 が高く、 煉瓦の熔損が少ない硫化銅精鉱の熔鍊が行える。