ノ、°ルプ蒸解液およびノ、。ルプ製造方法 技術分野
本発明は、 リグノセルロース材料を蒸解する効果的なノ、°ルプ蒸解液およびノ、°ルプ製 造方法に関し、 特に、 少ない薬液添加量でパルプ収率を向上させることのできる新規 、 有用なパルプ蒸解液およびこのパルプ蒸解液を用いるパルプ製造方法に関する。 背景技術
これまでに工業的に実施されている化学パルプの主な製造法は、 木材チップのリグ ノセルロース材料のアルカリ性蒸解法であり、 このうち、 水酸化ナトリウムと硫化ナ トリゥムが主成分のアルカリ性蒸解液を用いるクラフト法が多く利用されている。 こ のようなクラフト蒸解法にキノン化合物を存在させて蒸解するキノン蒸解法も広く知 られている。 キノン蒸解法によれば、 パルプの同一カッパ一価で比較した場合、 ノ、レ プ収率が増加するとともに、 用いられる蒸解液 (使用薬液) 量が減少することも知ら れている。
すなわち、 キノン化合物が木材チップ中のセルロースおよびへミセルロースの末端 アルデヒド基を酸化し安定化させることにより、 セル口一スおよびへミセルロース溶 出反応であるピーリング反応を抑える。 一方、 それ自体は還元されてハイ ドロキノン 型となったキノン化合物はリグニンに作用し、 リグニンを還元溶出させ、 それ自体は 酸化されてキノン型になる。 このように、 キノン化合物はそれ自体の酸化還元サイク ルを通じてセルロースおよびへミセルロースを安定化させ、 脱リグニンを促進させる ことにより、 パルプの同一カッパ一価で比較した場合、 パルプ収率が向上するのと同 時に、 蒸解で必要な活性アルカリ量を減少させるという効果をもたらす。
一方、 パルプ収率の向上技術として多硫化物 (ポリサルフアイ ド) 蒸解法も広く知 られている。 多硫化物蒸解法とはクラフトパルプ蒸解に用いられる白液を酸化し、 成 分中の硫化物イオンを一部多硫化物イオンに変化させた蒸解液を用いる蒸解法である 。 このような多硫化物蒸解法によれば、 セルロースおよびへミセルロースの末端アル
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デヒド基が多硫化物イオンにより酸化され安定化されることにより、 パルプ収率の向 さらに、 上記の蒸解方法を組み合わせたいわゆる P S (ポリサルファイ ド) キノ ン蒸解法も知られている。 この蒸解方法では上記で述べた効果が相乗的に現れるとい われている。 つまり、 P S—キノン蒸解法の効果として、 同一カッパ一価でのパルプ 収率を向上させ、 使用活性アルカリ量を減少させる。 両効果によ り、 同じ量の未晒し パルプ量を得るならば、 使用薬液量が少なくて済むので回収ボイラーの負荷が減り、 また力ッパー価が小さくなるので後の漂白工程の負荷が減る等の効果がある。
しかし、 このようなパルプ蒸解法においては、 パルプ工場内の薬液回収バランスを 崩すことなく、 更にパルプ収率を向上させ、 また薬液使用量の削減を達成できるパル プ蒸解液が望まれ、 また、 回収ボイラーの負荷を低減させることも望まれている。 パルプ蒸解液の改良によるパルプ収率等の効果は、 用いる木材チップによりそ の現れ方に差があるので、 標準となる木材チップを定めて検討するのが好ましい
。 そこで、 木材チップとして学名 : F a g u s C r e n a t a B l umeから 選ばれるチップを選択し、 通常のクラフトパルプ (KP) 蒸解を行った場合と比較し て述べる。 たとえば、 前述したキノン蒸解法の場合、 得られた同一カッパ一価のパル プで比較してパルプ収率が絶乾チップに対して約 1 %増加するとともに、 用いられる 蒸解液 (使用薬液) 量が活性アルカリ (N a20換算) として絶乾チップに対して約 1 %減少する。
また、 前述した多硫化物蒸解法の場合、 得られた同一カッパ一価のパルプで比 較してパルプ収率が絶乾チップに対して約 1 6増加するが、 用いられる蒸解液 ( 使用薬液) 量も活性アルカリ (N a20換算) として絶乾チップに対して約 1 %増加 してしまう。 更に、 P S (ポリサルファイ ド) 一キノン蒸解法の場合、 それぞれの効 果力'相乗的に現れるといわれている力、 最も大きな効果が得られたとしても、 得られ た同一力ッパ一価のパルプで比較してパルプ収率が絶乾チップに対して最大で 3 %増 加し、 用いられる蒸解液 (使用薬液) 量が活性アルカリ (Na20換算) として絶乾 チップに対して最大 1. 5 %減少するにすぎなかった。 実験室レベルでの蒸解実験 であれば、 パルプ収率の向上と薬液使用量の削減効果が共に大きい蒸解液が調製 可能であるが、 パルプ工場でそのような蒸解液を用いるには、 工場内の薬品バラ
ンスを崩さないことが使用の前提となるので、 従来、 パルプ収率が 3. 5 %以上 ±曾カ卩し、 活性アルカリが 2 %以上減少するような蒸解液は得られていない。
そこで、 本発明は、 少ない薬液添加量でパルプ収率を向上させ、 回収ボイラーの負 荷を低減させることができる新規、 有用なノ、°ルプ蒸解液およびこのパルプ蒸解液を用 いるパルプ製造方法を提供することを目的とする。 発明の開示
本発明は、 カッパ一価が 1 0〜 4 5のパルプを生産する蒸解法のうち、 絶乾チップ に対する液比が 1. 5〜 5. 0 L Z k gであり、 最高温度が 1 40〜 1 80 °Cであり 、 チップが最高温度に達するまでの時間が 5分以上である蒸解法に適用される蒸解液 であって、 以下の標準蒸解液および液比: 3. 0 L/k g (絶乾チップ当り。 なお、 Lはリッ トルを表す、 本明細書中同じ) で所定の条件下で蒸解したとき、 パルプの力 ッパー価 1 8の時のパルプ収率が 50〜 5 1 %となるパルプが得られる木材チップ ( 学名: F a g u s C r e n a t a B l umeから選ばれるチップ) を標準チップ として、 この標準チップを用い、 同一液比で同一昇温プロファイルにおいて昇温して 、 カッパ一価が 1 8のパルプを得るとき、 パルプ収率を 3. 5%以上上昇させ、 対チ ップ活性アル力リ添加率を 2 %以上低下させる蒸解液であることを特徴とするパルプ 蒸解液を提供する。 この発明を以下第一発明という。
標準蒸解液組成: N a OH 70 g/L (N a 20換算)
N a 2S 30 g/L (N a 20換算)
Na2C03 1 5 g/L (N a20換算)
また、 本発明は、 少なくとも多硫化物イオンを含有する白液又は緑液のうち、 多硫 化物イオンを構成する多硫化硫黄濃度が 6 gZL以上で、 絶乾チップ当り 0. 0 1〜 1. 5重量%のキノン化合物を含有することを特徴とする蒸解液を提供する。 この発 明を以下第二発明という。 発明を実施するための最良の形態
本発明のノ、°ルプ蒸解液によれば、 蒸解で得られるパルプを同じカッパ一価で比較し たとき、 収率の向上効果と活性アルカリ使用量の低下効果が達成される。 従って回収
ボイラーの負荷を低減でき、 蒸解時間も短縮される。 本発明は現行のすべてのパルプ 蒸解システムに適用することができる。
第一発明は、 カッパ一価が 1 0〜4 5のパルプを生産する蒸解法のうち、 絶乾チッ プに対する液比が 1. 5〜 5. O LZk gであり、 最高温度が 1 40〜 1 80 °Cであ り、 チップが最高温度に達するまでの時間が 5分以上である蒸解法に適用されるパル プ蒸解液である。 そして、 ある蒸解条件下で比較した時に所定の効果を有するような パルプ蒸解液として規定される。 すなわち、 リグノセルロース材料として、 学名: F a g u s C r e n a t a B l um eから選ばれるチップを、 N a OH : 70 g/ L、 N a 2S : 3 0 g/L、 N a 2C 03 : 1 5 g/L (N a 20換算) の組成の蒸 解液に必要に応じて蒸留水を加え、 液比: 3. 0 L/k g (絶乾チップ当り) で 所定の条件下で蒸解し、 得られるパルプのカッパ一価が 1 8になるような昇温プ 口ファイル、 例えば、 室温から 1 6 0 °Cまで 6 0分で昇温して、 1 6 0 °Cで 4 1 分間維持する条件で蒸解を行う。 その時のパルプ収率が絶乾チップに対して 5 0 〜 5 1 %となるようなパルプを得ることができる木材チップを標準チップとする そして、 この同一素材で同一形状の同じ標準チップを用い、 必要に応じて蒸留水を 加えて同一液比とし、 同一昇温プロファイルにて昇温し、 蒸解液の浸透条件、 例えば 、 チップの形状、 大きさ等が同一の条件において蒸解を行い、 カッパ—価 1 8のパル プを得るようにする。 具体的には蒸解液の添加量を加減して蒸解を行う。 その結果得 られた力ッパー価 1 8のパルプの収率を絶乾チップに対して 3. 5 %以上上昇させ、 絶乾チップ当りの活性アルカリ添加率をチップ重量に対して 2 %以上低下させること ができるパルプ蒸解液である。
すなわち、 本発明に従う蒸解液によれば、 木材チップとして学名 : F a g u s C r e n a t a B 1 u m eから選ばれるチップを選択した場合に、 通常のクラフ トパルプ (KP) 蒸解を行った場合と比較して、 パルプ収率を 3. 5 %以上向上さ せるという、 これまでにない大きな効果と、 薬液使用量の減少が活性アルカリ添 加率として 2 %以上という大きな効果が同時に、 初めて達成される。 なお、 第一 発明において、 このようにパルプ蒸解液を規定する際に使用する蒸解釜は、 静止釜よ りは回転可能な蒸解釜であるのが好ましい。
第一発明のパルプ蒸解液を用いて、 実際に、 蒸解の原料となる種々のチップを蒸解 した場合、 チップの種類、 性状によりパルプ蒸解液の効果は大きくなつたり、 小さく なったりする力 \ 通常行われている KP蒸解の条件で本発明のパルプ蒸解液を用いれ ば、 これまで以上に、 収率は必ず向上し、 活性アルカリの添加率は必ず減少する。 第一発明のパルプ蒸解液は、 白液と同様、 水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムを含 有する力、 多硫化物イオンを含有することが好ましい。 ここで、 多硫化物イオンとは
—般式 S で表され単に多硫化物ともいう。 多硫化硫黄とは多硫化物イオン中酸化 数が 0の硫黄で S 中 (X— 1) 個分の硫黄をいう。 また、 N a2S態硫黄とは多硫 化物イオン中酸化数 IIの硫黄 (Sx2 中 1個分の硫黄) と硫化物イオンの総称とす る。 活性アルカリ (以下適宜 「AA」 とも記載する) とは N a OH + N a2Sを N a2 0濃度に換算したものである。
第一発明のパルプ蒸解液は、 好ましくは多硫化物ィォンを含有することが好ましい 力 この多硫化物イオンを含有するパルプ蒸解液の製造方法としては、 例えば空気酸 化法や電解法が挙げられる。 空気酸化法は特開昭 6 1 - 2 59754号公報、 特開昭 53 - 9298 1号公報にも記載されているように、 活性炭触媒の存在下、 白液等の 硫化ナトリウムを含有する液を空気と接触させ、 硫化物イオンを酸化させて多硫化物 イオンを生成させるものである。 しかし、 この方法では必然的にチォ硫酸イオンが副 生し、 多硫化物ィォンを構成する多硫化硫黄濃度を大きくすることは比較的困難であ る。 このため、 本発明においては、 空気酸化法で製造してもよいが、 好ましくは電解 法が用いられる。
第一発明のパルプ蒸解液は 6 gZL以上の多硫化硫黄濃度を含有することが好まし い。 このように多硫化硫黄濃度を高くすることにより、 セルロースの安定化をより促 進させ、 パルプ収率をより向上させることができる。 多硫化硫黄濃度が 6 g/Lに満 たないとパルプ収率の向上効果が小さくなるおそれがある。 より好ましくは 8 g/L 以上である。
多硫化物イオンを含むパルプ蒸解液の製造方法の一つである電解法は、 多硫化硫黄 濃度が 8 gZL以上含有する蒸解液を製造する方法として特に好ましい。 このような 電解法としては、 例えば本発明者らが先に開発した PC Tノ J P 97/01456 , 特願平 1 0— 1 663 74号、 特願平 1 1一 5 1 0 1 6号、 特願平 1 1一 5 1 0
3 3号等の電解法を適用することができる。 電解法によれば、 空気酸化法のように高 濃度の多硫化硫黄濃度を製造するために反応率を上げると、 選択率が低下して蒸解に は無効なチォ硫酸ィォンが多く生成することなく、 従来の方法に比べて高い選択率で 高濃度の多硫化硫黄および N a 2 S態硫黄を含む蒸解液を製造することができる。 それら電解法では、 例えば陽極を備えた陽極室と陰極を備えた陰極室とそれら 2つ の部屋を区画する隔膜を有する電解槽の陽極室に硫化物イオンを含有する溶液、 例え ば白液や緑液を導入して電解酸化することにより多硫化物ィォンを含む蒸解液が得ら れる。 陽極としては耐アルカリ性と耐酸化性をを有することが必要で、 例えば非金属 では炭素材料、 金属ではニッケル、 コバルト、 チタン等の卑金属やそれらの合金およ び酸化物、 あるいは白金、 金、 ロジウム等の責金属やそれらの合金および酸化物等を 用いることができる。 陽極の構造は物理的に 3次元網目構造を有する多孔性構造が好 ましい。
陰極としては、 耐アルカリ性の材料が好ましく、 ニッケル、 ラネ一ニッケル、 硫化 ニッケル、 鋼、 ステンレス鋼などを用いることができる。 形状は平板またはメッシュ 状の形状のものを、 一つまたは複数を多層構成にして用いる。 線状の電極を複合した 3次元電極を用いることもできる。
陽極室と陰極室とを隔てる膜としては、 カチオン交換膜を用いるのが好ましい。 力 チオン交換膜は、 陽極室から陰極室へはカチオンを導くが、 硫化物イオンおよび多硫 化物イオンの移動を妨げる。 カチオン交換膜として、 炭化水素系またはフッ素系の高 分子に、 スルホン酸基、 カルボン酸基などのカチオン交換基が導入された高分子膜が 好ましい。 また、 耐アルカリ性などの面で問題がなければ、 バイポーラ膜、 ァニオン 交換膜などを使用することもできる。 このような電解槽の陽極室内で、 白液または緑 液の硫化物ィォンの一部を酸化して多硫化物ィオンを生成させ、 蒸解工程に供する。 第一発明のパルプ蒸解液では、 多硫化物イオンを含む場合、 N a 2 S態硫黄濃度が N a 2 0換算で 9 g Z L以上残存していることが好ましい。 この濃度が 9 g / Lに満 たないと多硫化物イオンが不安定になり、 蒸解により得られるパルプのカッパ一価が 上昇したり、 パルプ収率が低下するおそれがぁる。
第一発明の蒸解液はキノン化合物を含有することが好ましい。 キノン化合物として は、 具体的には、 9, 1 0 —アン トラキノン、 2—メチルー 9 , 1 0 —アン トラキノ
ン、 2—ェチルー 9, 1 0—アン トラキノン等のアルキルアン トラキノン、 1、 4、 4 a、 9 a—テトラヒ ドロー 9, 1 0—アン トラキノン、 1 , 4ージヒ ドロー 9, 1 0—アン トラキノン、 2— (9, 1 0—アン トラキノィル) 一 1一エタンスルホン酸 、 9, 1 0—アン トラキノンー 2—スルホン酸、 アミノー 9, 1 0—アン トラキノン 等のキノン化合物、 およびこれらの還元体 (ジヒドロ体またはジヒドロ体のナトリウ ム塩) があげられる。
これらのキノン化合物を蒸解液に蒸解以前または蒸解直前に添加することにより、 第一発明のパルプ蒸解液として好ましい蒸解液となる力5、 添加する状態は酸化型であ るキノン体でも還元型であるハイ ドロキノン体でもどちらでもよレ、。 また、 添加後の 状態もそのどちらでもよい。 例えば、 1、 4、 4 a、 9 a—テトラヒドロ一 9, 1 0 —アン トラキノンはアルカリ性の蒸解液中では 1, 4—ジヒ ドロ一 9, 1 0—ジヒ ド ロキシアン トラセンジナトリゥム塩になっている。
第一発明のパルプ蒸解液に、 好ましくは含まれるキノン化合物は、 絶乾チップ当り 0. 0 1〜 1. 5重量%になるように蒸解液に存在することが好ましい。 より好まし くは 0. 02〜0. 06重量0 /0である。 キノン化合物の存在量が絶乾チップ当り 0. 0 1重量0 /0未満であれば、 存在量が少なすぎて蒸解後パルプのカッパ一価や AA使用 量が低減されず、 力ッパー価と A A添加率およびパルプ収率の関係が改善されない。 また、 キノン化合物を 1. 5重量%を超えた量でも、 それ以上の蒸解後パルプの力ッ パー価や A A使用量の低減およびカッパ一価とパルプ収率および A A使用量の関係の 改善は認められない。
第二発明のパルプ蒸解液は、 少なく とも多硫化物イオンを含有する白液又は緑液の うち、 多硫化物イオンを構成する多硫化硫黄濃度が 6 gZL以上で、 絶乾チップ当り 0. 0 1〜 1. 5重量0 /0のキノン化合物を含有している。 この蒸解液に含まれる多硫 化物イオンの製造法は、 第一発明の蒸解液の場合と同様に、 空気酸化法で製造しても よいが、 多硫化物イオンを構成する多硫化硫黄濃度が 6 g/L以上の蒸解液は、 好ま しくは電解法で製造される。 電解法は前述のとおり実施することができる。 多硫化硫 黄濃度を高くすることによ り、 セルロースの安定化をより促進させ、 パルプ収率をよ り向上させることができる。 多硫化硫黄濃度が 6 g/Lに満たないとパルプ収率の向 上効果が小さくなるおそれがある。 より好ましくは 8 g/L以上である。
また、 第二発明のパルプ蒸解液には、 キノン化合物が絶乾チップ当り 0. 0 1〜 1 . 5重量%になるように存在する。 より好ましくは 0. 02〜0. 06重量%である 。 キノン化合物の存在量が絶乾チップ当り 0. 0 1重量%未満であれば、 存在量が少 なすぎて蒸解後パルプの力ッパー価や AA使用量が低減されず、 力ッパー価と AA添 加率およびパルプ収率の関係が改善されない。 また、 キノン化合物が 1. 5重量%を 超えた存在量でも、 それ以上の蒸解後パルプ力ッパー価や A A使用量の低減および力 ッパ一価とパルプ収率および A A使用量の関係の改善は認められない。 キノン化合物 の具体例や存在形態につていは前述第一発明の場合と同様である。
第二発明のパルプ蒸解液においても、 第一発明と同様に、 N a2S態硫黄濃度が N a 20換算で 9 gZL以上残存していることが好ましい。 この濃度が 9 g/Lに満た ないと多硫化物イオンが不安定になり、 蒸解により得られるパルプの力ツバ一価が上 昇したり、 パルプ収率が低下するおそれがぁる。
第一および第二の発明において、 キノン化合物の添加時期は、 蒸解前または蒸解途 中に一括添加する方法、 あるいは段階的に分割して添加する方法のいずれでも有効で ある。 ただし、 キノン化合物を含む蒸解液がチップ内に十分浸透するように添加する のが好ましい。 本発明の蒸解液を用い、 回分式蒸解釜を用いて蒸解を行う際の液比は 、 絶乾チップ当り 2. 0〜 5. 0 LZk gになるようにするのが好ましい。 より好ま しくは 2. 5〜4. 0 LZk gである。 液比が 2. 0 LZk g未満であると、 蒸解液 がチップに十分に浸透しないことによる蒸解効果の低下のおそれがあるので好ましく ない。 液比が 5. O LZk gを超えると使用薬液量削減効果が低下するので好ましく ない。
連続式蒸解釜を用いて蒸解を行う際には、 液比は絶乾チップ当り 1. 5〜 5. 0 L Zk gになるようにするのが好ましい。 より好ましくは 2. 0〜3. 5 L/k gであ る。 液比が 1. 5 L/k g未満であると、 浸透段に気相部が生じ、 蒸解効果が低下す るおそれがあるので好ましくない。 液比が 5. O L/k gを超えると、 使用薬液量削 減効果が低下するので好ましくない。 また、 特にリグノセルロース材料に針葉樹チッ プを用いる場合は 1. 5〜3. 5 L/k g、 広葉樹チップを用いる場合は 2. 5〜5 . 0 L/k gであるとより好ましい。 液比が 1. 5 L/k g未満であると、 アルカリ 性蒸解液がチップに十分に浸透しないことによる蒸解効果が低下するおそれがあるの
で好ましくない。 ここで液比とは、 回分式蒸解釜の場合には絶乾チップ重量当り の液量のことをいう力5、 連続式蒸解釜においては、 単位時間当りの釜への絶乾チ ップ流入重量と釜への液体の容積流入量の比をいう。
パルプ蒸解で通常用いられる白液の組成は、 現在行われているクラフトパルプ蒸解 に用いられている白液の場合、 通常、 アルカリ金属イオンとして 2〜6mo 1 ZLを 含有し、 そのうちの 90 %以上はナトリウムイオンであり、 残りはほぼ力リウムィォ ンである。 またァニオンは、 水酸化物イオン、 硫化物イオン、 炭酸イオンを主成分と し、 硫化物イオン濃度は通常 0. 5〜0. 8 mo 1 /Lであり、 他に硫酸イオン、 チ ォ硫酸イオン、 塩素イオン、 亜硫酸イオンを含む。 更にカルシウム、 ケィ素、 アルミ 、 リン、 マグネシウム、 銅、 マンガン、 鉄のような微量成分を含む。 緑液の組成は基 本的に白液と同じである。 ただし、 白液は硫化ナトリウムと水酸化ナトリウムが主成 分であるのに対して、 緑液は硫化ナトリウムと炭酸ナトリゥムが主成分である。
本発明のパルプ蒸解液によれば、 リグノセルロース材 である針葉樹または広葉樹 の何れの樹種でも良好な蒸解効果が得られる。 例えば、 針葉樹としては C r y p t 0 m e r i a (スギ)、 P i c e a (ェゾマッ、 トウヒ、 ォゥシユウ トウヒ、 シ トカ ト ゥヒ等)、 P i n u s (ラジア一夕マツ、 ァカマツ、 クロマツ等)、 Th u j a (べィ スギ、 ネズコ等)、 T s u g a (ッガ、 ペイッガ等)、 広葉樹では E u c a 1 y p t u s (ユーカリ類)、 F a g u s (ブナ類)、 Qu e r c u s (ナラ、 カシ等)、 A c a c i a (アカシア類) 等があげられる。 実施例
以下、 実施例に基づき本発明をさらに詳しく説明する力 s、 本発明がこれらの実施例 に限定されないことはもちろんである。 試験法は下記のとおりである。
《試験法》
得られた未晒しノ、°ルプのノ、°ルプ収率としては、 単繊維化していない柏を除去した精 選パルプの収率を測定した。 未晒しパルプの力ッパー価は、 T A P P I試験法 T 23 6 hm— 85に従って行った。 アルカリ性蒸解液中のチォ硫酸ナトリウム、 Na2S 態硫黄および硫黄換算での多硫化硫黄濃度の定量は特開平 7— 92 1 48号公報に記 載された方法に基づいて行つた。
〈比較例 1 >
オイルバス内で回転可能な蒸解釜を用い、 学名 : F a g u s C r e n a t a B 1 umeから選ばれた 3 0年生前後のチップのうち、 9 / 8インチ径丸穴篩を通過し 3/1 6ィンチ径丸穴篩を通過しないチップを用い、 水酸化ナトリウム 70 gZLお よび硫化ナトリウム 3 0 gZL、 炭酸ナトリウム 1 5 g/L (いずれも N a 20換算 ) のモデル白液を調製し、 活性アルカリ添加率を 1 4、 1 6、 1 8重量% (対絶乾チ ップ; N a 20換算) の割合で添加し、 液比を絶乾パルプ重量に対してチップ持ち込 み水分を合わせて 3. 0 k g/Lになるように蒸解液と水を加えた。 室温から 1 60 °Cまで 6 0分で昇温し、 1 60 °Cで 4 1分間維持した。 蒸解後のカツノ、'一価とパルプ 収率は、 次の通りである。
A A添加率% 力ッパ —価 パルプ収率%
1 4 2 9. 6 53. 3
1 6 2 0. 4 5 1. 7
1 6 1 9. 6 50. 7
1 8 1 6. 2 4 9. 1
1 8 1 6. 1 4 9. 8
これらのデータから、 カッパ一価 1 8でのパルプ収率は 50 · 3%、 AA添加率は 1 7. 0 %であった。
〈比較例 2 >
比較例 1 と同様のチップを用い、 蒸解液は比較例 1の組成のモデル白液を活性炭触 媒で空気酸化した多硫化物溶液を想定し、 反応率 60%、 選択率 63%を仮定し、 水 酸化ナトリウム 70 gZL、 N a 2 S態ィォゥ 1 2. 0 g/L, 炭酸ナトリウム 1 5 g/Lおよびチォ硫酸ナトリウム 3. 3 g/ (いずれも N a 20換算)、 多硫化硫黄 5. 9 g/ (硫黄換算) のモデル多硫化物蒸解液を調製した。 酸化する前の白液に 換算した活性アルカリ添加率を 1 5重量%、 1 7重量%、 1 9重量% (対絶乾チップ ; N a20換算) の割合で添加し、 比較例 1 と同様に、 液比を絶乾パルプ重量に対し てチップ持ち込み水分を合わせて 3. 0 k g/Lになるように蒸解液と水を加えた。 比較例 1 と同様の温度条件で蒸解を行った。 蒸解後のカッパ一価とパルプ収率は、 次 の通りである。
A A添加率% 力ッパー価 パルプ収率%
1 5 26. 7 54. 1
1 7 1 9. 5 52. 1
1 9 1 5. 8 49. 7
これらのデータから、 カッパ一価 1 8でのパルプ収率は 5 1. 0%、 AA添加率は 1 7. 9 %であった。
〈比較例 3 >
比較例 1と同様のチップを用い、 蒸解液は以下の構成の電解槽で以下の条件で製造 した。
ァノ一 ド集積体にニッケル板、 アノー ドにニッケル発泡体 ( 1 0 0 m m X 2 0 mm X 4 mm、 網目の平均孔径 0. 5 1 mm、 アノード室体積当りのアノード表 面積: 5 6 0 0 m2Zm3、 隔膜面積に対する表面積 : 2 8 m2/m2)、 力ソード として鉄のェクスパンジョンメタル、 隔膜としてフッ素樹脂系カチオン交換膜と からなる 2室型の電解槽を組み立てた。 ァノ一ド室は高さ 1 0 0 mm、 幅 20 m m、 厚み 4 mmであり、 力ソー ド室は高さ 1 00mm、 幅 2 0 mm、 厚み 5mm で、 隔膜の有効面積は 2 0 c m2であった。 比較例 1で使用した白液を用い、 ァ ノ―ド液線速度 : 4 c mZ s e c、 電流密度 : 6 k A7m2、 電解温度 : 9 0 °C にて循環電解を行い、 硫化ナトリゥムの反応率 : 5 5 %、 選択率 : 9 5 %で次の 組成の多硫化物蒸解液を得た。
水酸化ナ ト リ ウム 7 0 g/L (Na20換算)
N a 2 S態硫黄 1 3. 5 g/L (N a20換算) 炭酸ナ ト リ ウム 1 5 g/L (Na20換算)
チォ硫酸ナト リ ウム 0. 8 g/L (Na20換算)
多硫化硫黄 8. 1 g/L (硫黄換算)
活性アル力リ添加率を 1 5重量%、 1 7重量%、 1 9重量% (対絶乾チップ; N a 20換算) の割合で蒸解液を添加し、 比較例 1と同様に、 液比を絶乾パルプ重量に対 してチップ持ち込み水分を合わせて 3. 0 k g/Lになるように蒸解液と水を加えた 。 比較例 1と同様の温度条件で蒸解を行った。 蒸解後のカッパ一価とパルプ収率は、 次の通りである。
A A添加率0 /o カッパ一価 パルプ収率%
1 5 2 1. 2 5 3. 9
1 7 1 7. 6 5 1. 9
1 9 1 3. 7 5 0. 1
これらのデータから、 カッパ一価 1 8でのパルプ収率は 52. 3%、 AA添加率は 1 6. 6 %であった。
〈比較例 4〉
比較例 1 と同様のチップを用い、 蒸解液は比較例 3と同様にして製造し、 反応率 6 8 %、 選択率 95 %で以下の組成の多硫化物蒸解液を得た。
水酸化ナ ト リ ウム 7 0 g/L (N a 20換算)
N a 2 S態硫黄 9. 6 gZL (N a 20換算)
炭酸ナト リ ウム 1 5 gZL (Na20換算)
チォ硫酸ナトリウム 1. 0 g/L (N a 20換算)
多硫化硫黄 1 0. 0 g/ (硫黄換算)
活性アル力リ添加率を 1 5重量%、 1 7重量%、 1 9重量% (対絶乾チップ; N a 20換算) の割合で蒸解液を添加し、 比較例 1 と同様に液比を絶乾パルプ重量に対し てチップ持ち込み水分を合わせて 3. 0 k gZLになるように蒸解液と水を加えた。 比較例 1 と同様の温度条件で蒸解を行った。 蒸解後のカッパ一価とパルプ収率は、 次 の通りである。
A A添加率% 力ッパ一価 パルプ収率%
1 5 2 1. 1 54. 2
1 7 1 6. 0 5 2. 0
1 9 1 3. 7 50. 7
これらのデータから、 カッパ一価 1 8でのパルプ収率は 52 9%、 A A添加率は 1 6. 2 %であった。
〈比較例 5〉
比較例 2の蒸解液に 1, 4ージヒドロー 9, 1 0—ジヒドロキシアントラセンジナ トリウム塩を絶乾チップ当り 0. 0 5重量0 /0 (アントラキノン換算) 添加した蒸解液 を用いた以外は比較例 2と同様の実験を行った。 蒸解後の力ッパー価とパルプ収率は
、 次の通りである。
A A添加率% 力ッパ一価 パルプ収率%
1 5 2 9. 4 5 5. 8
1 7 1 7. 6 53. 1
1 9 1 4. 7 52. 5
これらのデータから、 カッパ一価 1 8でのパルプ収率は 53 4%、 A A添加率は 1 5. 4 %であった。
《実施例 1》
比較例 3の蒸解液に 1 , 4ージヒドロー 9, 1 0—ジヒドロキシアントラセンジナ トリゥム塩を絶乾チップ当り 0. 0 5重量0 /0 (アントラキノン換算) 添加し、 活性ァ ルカリ添加率を 1 3重量0 /0、 1 5重量%、 1 7重量% (対絶乾チップ; N a 20換算 ) の割合で蒸解液を添加した以外は比較例 3と同様の実験を行った。 蒸解後のカッパ 一価とパルプ収率は、 次の通りである。
A A添加率 % カッパ一価 ノ、°ルプ収率%
1 3 2 3. 0 5 5. 7
1 5 1 6. 7 54. 0
1 7 1 3. 8 52. 5
これらのデータから、 カッパ一価 1 8でのパルプ収率は 54. 3%、 AA添加率は 1 4. 6%であった。
《実施例 2》
比較例 4の蒸解液に 1, 4ージヒドロー 9, 1 0—ジヒドロキシアントラセンジナ トリゥム塩を絶乾チップ当り 0. 0 5重量0 /0 (アントラキノン換算) 添加し、 活性ァ ルカリ添加率を 1 3重量0 /0、 1 5重量%、 1 7重量% (対絶乾チップ; N a 20換算 ) の割合で蒸解液を添加した以外は比較例 4と同様の実験を行った。 蒸解後のカッパ 一価とパルプ収率は、 次の通りである。
添加率% 力ッノヽ。一価 パルプ収率%
1 3 20. 5 5 5. 6
1 5 1 5. 6 54. 0
1 7 1 2. 6 52. 6
これらのデータから、 カッパ一価 1 8でのパルプ収率は 54. 9%、 AA添加率は 1 3. 9 %であった。
以上、 実施例 1、 2で用いた蒸解液は、 比較例 1〜 5で用いた蒸解液に比較して同 じ力ッパー価のパルプで比較した場合、 収率がいずれも高く、 活性アル力リ添加率も 低い。 また、 標準チップと標準蒸解条件で蒸解を行った比較例 1 と比べて、 実施例 1 , 2はカッパ一価 1 8のパルプで比較したとき、 収率は絶乾チップに対して 3. 5 % 以上上昇し、 活性アルカリ添加率も絶乾チップに対して 2%以上減少している。 なお 、 比較例 1が本発明の蒸解液を規定するための標準蒸解条件の一つに位置づけられる 以下に記載する比較例および実施例は、 比較例 1〜 5および実施例 1、 2で実施し た蒸解と同じ蒸解条件で同じ蒸解液を用いて、 別の種類の木材に適用した例である。 〈比較例 6 >
チリ産のュ一力リ(学名: E u c a l y p t u s S p e c i e s) を用い、 比較例 1と同様の蒸解液を、 その添加量を以下の活性アル力リ添加率 (対絶乾チップ; N a 20換算) で添加した以外は比較例 1 と同様の実験を行った。 蒸解後のカッパ一価と パルプ収率は、 次の通りである。
A A添加率% 力ッパ—価 パルプ収率%
1 2 2 7 . 9 58. 0
1 3 2 3 . 4 56. 0
1 4 1 7 . 5 54. 7
1 6 1 3 . 8 53. 6
1 8 1 3 . 1 5 1. 7
22 1 0 . 1 50. 8
22 1 0 . 6 5 0. 3
これらのデータから、 カッパ一価 1 8でのパルプ収率は 54. 6%、 AA添加率は 1 4. 8 %であった。
〈比較例 7〉
木材チップとして比較例 6同様のチリユーカリチップを用い、 比較例 2と同様の蒸 解液を、 以下の活性アルカリ添加率 (対絶乾チップ; N a20換算) で添加した以外
は比較例 2と同様の実験を行った。 蒸解後のカッパ一価とパルプ収率は、 次の通りで ある。
A A添加率% 力ッパー価 パルプ収率%
1 2. 5 2 8. 9 58. 3
1 4. 5 1 9. 3 5 6. 2
1 6. 5 1 5. 0 5 5. 3
これらのデータから、 カッパ一価 1 8でのパルプ収率は 5 6 0%、 A A添加率は 1 5. 2 %であった。
〈比較例 8〉
比較例 6と同様の木材チップを用い、 比較例 3と同様の蒸解液を用い、 比較例 3と 同様の実験を行った。 蒸解後のカッパ一価とパルプ収率は、 次の通りである。
A A添加率 % カッパ一価 ノ、°ルプ収率%
1 2. 5 23. 7 58. 3
1 4. 5 1 4. 8 5 7. 1
1 6. 5 1 3. 7 5 5. 3
これらのデータから、 カッパ一価 1 8でのパルプ収率は 56. 8%、 AA添加率は 1 4. 3 %であった。
〈比較例 9〉
比較例 6と同様の木材チップを用い、 比較例 4と同様の蒸解液を用い、 比較例 4と 同様の実験を行った。 蒸解後のカッパ一価とパルプ収率は、 次の通りである。
A A添加率0 /0 カッパ一価 パルプ収率%
1 2. 5 2 5. 3 58. 5
1 4. 5 1 4. 9 5 7. 0
1 6. 5 1 4. 7 54. 7
これらのデータから、 カッパ一価 1 8でのパルプ収率は 57. 2%、 AA添加率は 1 4 · 0%であった。
〈比較例 1 0〉
比較例 6と同様の木材チップを用い、 比較例 5と同様の蒸解液を用い、 比較例 5と 同様の実験を行った。 蒸解後のカッパ一価とパルプ収率は、 次の通りである。
A A添加率% カッパ一価 パルプ収率%
1 2 2 1. 0 58. 9
1 3. 2 1 5. 1 5 7. 9
1 5 1 3. 5 5 6. 1
これらのデータから、 カッパ一価 1 8でのパルプ収率は 58. 2%、 AA添加率は 1 2. 7 %であった。
《実施例 3》
比較例 6と同様の木材チップを用い、 実施例 1 と同様の蒸解液を用い、 実施例 1 と 同様の実験を行った。 蒸解後のカッパ一価とパルプ収率は、 次の通りである。
添加率% カッパ一価 パルプ収率%
1 2 2 0. 9 58. 7
1 3. 2 1 2. 8 5 7. 5
1 5 1 2. 1 5 7. 1
これらのデータから、 カッパ一価 1 8でのパルプ収率は 5 S . 3%、 AA添加率は 1 2. 3 %であった。
《実施例 4》
比較例 6と同様の木材チップを用い、 実施例 2と同様の蒸解液を用い、 実施例 2と 同様の実.験を行った。 蒸解後のカッパ一価とパルプ収率は、 次の通りである。
A A添加率% カッパ一価 パルプ収率 %
1 2 1 9. 3 58. 9
1 3. 2 1 4. 9 5 7. 4
1 5 1 2. 9 5 5. 9
これらのデータから、 カッパ一価 1 8でのパルプ収率は 58. 6%、 AA添加率は 1 2. 3 %であった。
以上、 比較例 6〜 1 0および実施例 3、 4で示したチリ産のユーカリチップの例か ら、 比較例 1〜5および実施例 1、 2の標準条件で規定した本発明に従う蒸解液を別 種類の木材チップに適用しても効果が確認された。 同じ力ツバ一価のパルプで比較す
ると、 比較例 6〜 1 0で用いた蒸解液よりも実施例 3、 4で用いた蒸解液の方がパル プ収率が高く、 活性ァル力リ添加率が低くなつている。
〈比較例 1 1 >
ィンドネシァ産アカシア (学名 : A c a c i a ma n g i um) を用い、 比較例 1 と同様の蒸解液を、 その添加量を以下の活性アル力リ添加率 (対絶乾チップ; N a 2〇換算) で添加した以外は比較例 1 と同様の実験を行った。 蒸解後のカッパ一価と パルプ収率は、 次の通りである。
A A添加率% 力ッパー価 パルプ収率%
1 6 2 9. 1 54. 8
1 8 2 4. 6 52. 2
20 2 3. 0 50. 0
22 1 8. 1 49. 4
これらのデータから、 カッパ一価 1 8でのパルプ収率は 4 9 1 %、 A A添加率は 22. 0%であった。
〈比較例 1 2 >
比較例 1 1 と同様の木材チップを用い、 比較例 2と同様の蒸解液を用い、 比較例 2 と同様の実験を行った。 蒸解後のカッパ一価とパルプ収率は、 次の通りである。
A A添加率 % カッパ一価 パルプ収率 %
1 9. 5 2 2. 0 53. 3
2 1. 5 1 6. 9 50. 6
2 3 1 6. 3 5 1. 9
これらのデータから、 カッパ一価 1 8でのパルプ収率は 5 1. 8%、 AA添加率は 2 1. 5 %であった。
〈比較例 1 3 >
比較例 1 1と同様の木材チップと比較例 3と同様の蒸解液を用い、 比較例 3と同様 の実験を行った。 蒸解後のカッパ一価とパルプ収率は、 次の通りである。
A A添加率% カッパ一価 パルプ収率%
1 9. 5 1 8. 5 53. 6
2 1. 5 1 4. 9 52. 3
23 1 5. 0 5 1. 0
これらのデータから、 カッパ一価 1 8でのパルプ収率は 53. 4%、 AA添加率は 1 9. 5 %であった。
〈比較例 1 4 >
比較例 1 1 と同様の木材チップと比較例 4と同様の蒸解液を用い、 比較例 4と同様 の実験を行った。 蒸解後のカッパ一価とパルプ収率は、 次の通りである。
A A添加率0 /0 カッパ一価 パルプ収率 %
1 9. 5 1 7. 5 53. 9
2 1. 5 1 4. 7 52. 3
23 1 4. 1 5 1. 7
これらのデータから、 カッパ一価 1 8でのパルプ収率は 54. 1 %、 AA添加率は 1 9. 0 %であった。
〈比較例 1 5 >
比較例 1 1 と同様の木材チップと比較例 5と同様の蒸解液を用い、 比較例 5と同様 の実験を行った。 蒸解後のカッパ一価とパルプ収率は、 次の通りである。
A A添加率 % カッパ一価 パルプ収率%
1 7. 5 2 1. 3 54. 5
1 9. 3 1 5. 5 54. 4
2 1. 5 1 4. 7 52. 1
これらのデータから、 カッパ一価 1 8でのパルプ収率は 53. 9%、 AA添加率は 1 8. 7%であった。
《実施例 5》
比較例 1 1 と同様の木材チップと実施例 1 と同様の蒸解液を用い、 実施例 1と同様 の実験を行った。 蒸解後のカッパ一価とパルプ収率は、 次の通りである。
A A添加率0 /0 カッパ一価 パルプ収率%
1 7. 5 1 8. 1 5 5. 4
1 9. 3 1 4. 9 54. 1
2 1. 5 1 3. 5 52. 6
これらのデータから、 カッパ一価 1 8でのパルプ収率は 55. 5%、 AA添加率は
1 7. 4 %であった。
《実施例 6》
比較例 1 1 と同様の木材チップと実施例 2と同様の蒸解液を用い、 実施例 2と同様 の実験を行った。 蒸解後のカッパ一価とパルプ収率は、 次の通りである。
A A添加率0 /0 カッパ一価 パルプ収率%
1 7. 5 1 8. 2 5 5. 0
1 9. 3 1 5. 7 54. 2
2 1. 5 1 3. 1 53. 8
これらのデータから、 カッパ一価 1 8でのパルプ収率は 5 5. 0%、 AA添加率は 1 7. 6 %であった。
以上、 比較例 1 1〜 1 5および実施例 5、 6で示したイン ドネシア産アカシアチッ プの例から、 比較例 1〜 5および実施例 1、 2の標準条件で規定した本発明に従う蒸 解液を別種類の木材チップに適用しても効果が確認された。 同じ力ツバ一価のパルプ で比較すると、 比較例 1 1〜 1 5で用いた蒸解液よりも実施例 5、 6で用いた蒸解液 の方がパルプ収率が高く、 活性ァル力リ添加率が低くなつている。 産業上の利用の可能性
本発明のパルプ蒸解液を用いることにより、 また本パルプ蒸解液を用いるパルプ製 造法により、 パルプ収率を一層向上させ、 カッパ一価とパルプ収率の関係を更に改善 することができる。 すなわち、 本発明によれば、 同一活性アルカリ添加率における力 ッパ一価を減少させ、 かつ同一力ッパー価におけるパルプ収率を向上させるのに優れ ており、 併せて薬液使用量の削減効果、 回収ボイラーの負荷低減効果が達成される。 しかも、 パルプ工場内の薬液回収バランスを崩すことなく、 これらの効果を達成する ことができる。