明 細 書
電波伝搬シミュレート方法、 波動場強度推定方法、
及び 3次元遅延分散推定方法
技術分野
この発明は例えば高速無線 LANの実用化に必要とされる構内や市街空地での 、 電波のマルチバス伝搬のシミュレート方法、 電波や音波などの波源から放射さ れた波動の各所での強度を推定する方法、 及び 3次元的なマルチバス遅延波の分 散を推定する方法に閬する。
高速データ無線通信網を構築するには、 その通信網における 3次元電波伝搬環 境、 つまり電波のマルチパス伝搬、 周波数選択性フュージングの状況、 各所にお ける電界強度や遅延分散を精度よく知る必要がある。
構内無線 L ANのマルチバス伝搬をシミュレートする従来の方法は、 J.W. Mck nown and R. し. Hamilton, Jr.: 'Ray Tracing as a Design Tool for Radio Ne tworks", IEEE Network Magazine, pp. 27-30, Nov. 1991に示されているような レイ ト レーシング法であった。 これはある受信点において、 直接光や各種反射光 の受光方向から、 その各光がそれぞれ反射することなくその受信点に到達する各 送信源を仮定し、 これらの各送信源より受信点までの距離から減衰と、 遅れとを 求め、 干涉状態を求める。
前記レイ ト レーシング法では構内における各種物体にもとづく各反射について それぞれ反射面を仮定しているため、 現実における複雑な反射について各送信源 を正しく想定することは困難であり、 正しいシミュレーショ ンを行うことができ なかった。 このように複雑な反射面を正しく想定することが困難な上、 各物体で の反射は、 金属と木材とで反射状態が異なり、 この反射面の材質までも正しく想 定することも困難であり、 遅延波の推定誤差は 1 n s〜 l 00 P s程度もあった 。 このような点から高速データ通信を考慮したマルチパスフヱージング下におけ る伝送系の品質を直接シミユレーショ ンすることはできなかった。 つまり従来で はたかだか 2波又は 3波の干涉のシミュレーショ ン及び遅延分散量からのビ ッ ト 誤り率の統計的推定しかできず、 現実に適用できるのは例外的なものにしか過ぎ なかった。
また、 3次元電波伝搬環境において観測すべき個所に受信機を置いて電界強度 を測定していた。 このように直接測定法ではいちいち観測点に受信機を置く必要 があり、 時間と手間が掛り、 しかも通信網を構成する広い 3次元空間を短い距離 間隔で測定することは現実には困難である。
運延分敢は通信品質の評価に利用され、 例えば遅延分散の値から通信可能な最 大ビッ トレートが決まる。 従来においては例えば I EEE Transactions on Antennas and Propagation, Vol.4 2 , No. 1 0. Oct., 1 9 9 4 , P P. 1 3 6 9〜 1 3 7 6 「 A New Approach for Estinating Indoor Radio Propagation Characteristics 」 に示されているように、 P Nコードで変調した電波を送信し 、 測定したい位置に設けた受信機で前記送信波を受信して測定している。 この場 合も評価したい各場所に、 いちいち受信機を置いて、 直接測定しているため、 測 定作業が大変で時間も掛る。 P Nコードで変調した電波を送信しているため、 変 調周波数帯域幅を十分広げないと短かい遅延を分離することができず、 測定精度 も悪かった。
この発明の目的は比較的簡単な構成により、 複雑な反射物体が多く、 かつ複雑 に配置され、 従って複雑なパスが生じる場合でも、 また反射特性が各種のものが あっても、 正確に電波伝搬をシミュレ一卜することができる電波伝搬シミュレ一 ト方法を提供することにある。
この発明の他の目的は広い 3次元空間における電波、 音波のような波動の場強 度を、 短い距離間隔でしかも比較的簡単に測定することができる波動場強度測定 方法を提供することにある。
この発明の更に他の目的は、 広い 3次元空間において、 各部の 3次元遅延分散 を比較的簡便に、 高い精度で測定することができる 3次元遅延分散推定方法を提 供することにある。
発明の開示
この発明による電波伝搬シミュレ一ト方法、 波動場 (電波) 強度推定方法、 及 び 3次元遅延分散推定方法の何れにおいても対象空間を電波の 2次元干涉データ 、 つまりホログラムを少く とも 2周波数で観測する第 1ステップを有する。 この発明による電波伝搬シミュレ一ト方法では、 前記第 1ステップによる観測
データから、 各伝搬路よりの受信波の振幅及び遅延を第 2ステップで測定し、 こ れら振幅及び遅延と受信アンテナ指向特性とから各伝搬路の時間応答関数を第 3 ステツプで生成し、 この伝搬路時間応答閲数を変調搬送波信号に第 4ステツプで 畳み込み、 その畳み込み結果に対し、 無変調搬送波を乗算して受信ベースバンド 信号を第 5ステップで得る。
前記第 5ステツプの無変調搬送波信号の乗箕は、 上記時間応答閲数の実部を変 調搬送波信号に畳み込んだものに対し無変調搬送波信号の同相成分を乗算し、 上 記時間応答関数の虚部を変調搬送波信号に畳み込んだものに対して無変調搬送波 信号の直交成分を乗算し、 これら両乗算結果を加算して受信ベースバンド信号の 同相成分を得る。
前記第 5ステップにおいて、 変調搬送波信号としてべク トル変調搬送波信号を 用い、 上記無変調搬送波信号の乗算に、 上記時間応答関数をヒルベル ト変換した ものの実部を変調搬送波信号に畳み込んだものに対し無変調搬送波信号の同相成 分を乗算し、 上記ヒルベル ト変換した時間応答関数の虚部を変調搬送波信号に畳 み込んだものに無変調搬送波信号の直交成分を乗算し、 これら両乗算結果を加算 して上記受信ベースバンド信号の直交成分を得ることを舍む。
第 5ステップの上記無変調搬送波信号の乗算は、 上記時間応答閲数の実部を変 調搬送波信号に畳み込んだものに、 中間周波数だけ低い無変調搬送波信号の同相 成分を乗算し、 時間応答関数の虚部を変調搬送波信号に畳み込んだものに中間周 波数だけ低い無変調搬送波信号の直交成分を乗算し、 これら両乗算結果を加算し 、 その加算結果に中間周波数搬送波信号の同相成分を乗算して受信ベースバンド 信号の同相成分を得、 加算結果に中間周波数搬送波信号の直交成分を乗算して受 信ベースバンド信号の直交成分を得る。
時間応答閩数は、 各受信波の振幅、 遅延、 アンテナ指向特性から周波数選択性 フュージング特性を求め、 そのフュージング特性を、 伝搬周波数帯域と対応した 正の周波数範囲に制限して逆フーリェ変換して求め、 畳み込み演算における計箕 間隔を比較的大にする。
時間応答関数は各受信波の振幅、 遅延、 アンテナ指向特性を重ね合せたイ ンパ ルス応答として求める。 この場合時間応答関数の値をもつ時点と演算タイ ミ ング
とのずれを求め、 そのずれだけ時間応答関数の位相をずらして上記畳み込み演算 を ί亍ぅ。
この発明による波動場強度推定方法においては、 前記第 1ステップは対象波動 に応じて電波又は音波などが用いられ、 また対象空間は一次波源を見ることがで き、 かつ推定したい波動空間を見渡せる位置でホログラムを測定する。 更にこの 波動場強度推定方法では第 1ステツプで測定した 2次元干涉データ (ホログラム ) を用いて波源像を第 2ステップで再生し、 つまり各波源像の観測面から見える 方向と強さとを求め、 その各再生波源像の一次波源に対する伝搬遅延時間をその 波源の位相から第 3ステップで求め、 これら再生波源像と、 伝搬遅延時間と、 推 定したい周波数で観測された波源の位相とを用いて、 各波源を 3次元空間に再配 置することを第 4ステツプで行い、 これら再配置された波源からの波動を再放射 し合成して観測点での波動場強度を第 5ステップで推定する。
この発明による 3次元遅延分散推定方法では前記第 1 ステツプは一次波源を見 ることができ、 かつ推定したい電磁波空間を見渡せる位置で測定し、 この測定し た 2次元干涉データ (ホログラム) を用いて波源像を第 2ステップで再生し、 そ の再生波源像の一次波源に対する伝搬遅延時間をその波源の位相から第 3ステ 'ノ プで求め、 更に再生波源像と、 伝搬遅延時間と、 推定したい周波数で観測された 波源の位相とを用いて各波源を 3次元空間中に再配置することを第 4 ステツプて 行い、 評価したい受信点から、 再配置された各波源までの距離に応じた遅延時間 と強度減衰量とを第 5 ステップで求め、 これら遅延時間と強度減衰量から遅延平 均値と遅延分散値を第 6ステップで算出する。
図面の簡単な説明
図 1 はこの発明方法における、 波動の二次元干涉データを複数の周波数につい て測定するため構成例を示すプロック図である。
図 2 Αはこの発明の伝搬シミュレ一ト方法における変調搬送波信号と、 その変 調搬送波信号がフュージングを受けた信号と、 これらからベースバンド信号の各 生成を示すプロック図である。
図 2 Bは変調搬送波信号がフュージングを受け、 かつ受信機の中間周波数まで の特性の影響を含めた信号の生成とそれからベースバンド信号を求める各処理を
示すブロック図である。
図 2 Cは直交変調搬送波信号と、 その信号がフェージングを受けた信号と、 そ のベースバンド復調出力との各生成を示すプロック図である。
図 3はサンプリ ングバルスと時間応答関数との関係例を示す図である。
図 4はこの発明の電波伝搬シミュレ一ト方法の処理手順の例を示す流れ図であ る。
図 5はこの発明の波動場強度測定方法の処理手順の例を示す流れ図である。 図 6はこの発明の 3次元遅延分散測定方法の処理手順の例を示す流れ図である 図 7はこの発明方法における波動の二次元干涉データを測定するための他の構 成例を示すプロック図である。
発明を実施するための最良の形態
以下この発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。 先ず電波伝搬シミュ レー ト方法の実施例を述べる。 例えば図 1に示す直方体状空間 1 1、 例えば大き な工場内などにおける電波伝搬路をシミュレー卜する場合に、 この発明ではこの 対象空間 1 1を 2周波電波ホログラム (干涉) 、 つまり周波数 ί 1 の電波ホログ ラムと周波数 f ζ の電波ホログラムとで観測して各伝搬路ょりの受信波の振幅及 び遅延を測定する。 2周波電波ホログラムは例えば H.Kitayoshi, et al. , "Tw ο- tone CW Complex Holographic Radar Imaging " , IEEE AP-S International Symposium Digest, Vol. 3 , PP. 1 9 1 4— 1 9 1 7 , June 1993 , 又は II. Kit ayoshi "Imaging of Indoor Mul tipath Radio Propagation for 18 GHz Band Wi reless LAN System : Applied Radio Hologhaph " I E E E, V C Proceedi n gs, Vol. 2. pp 8 9 6 - 9 0 0 , June 1994)に述べられていることから理解され るように、 対象空間 1 1内の送信源となるべき位置から放射器 1 2より周波数 f , の電波と周波数 ί 2 の電波とを放射し、 任意の受信点に観測面 1 3を配し、 観 測面 1 3の各点に走査ァンテナ 1 4を順次位置させて前記電波を受信すると共に 、 この観測面 1 3と比較的接近した位置に固定的に設けた固定アンテナ 1 5で前 記電波を受信する。 アンテナ 1 4 , 1 5は放射器 1 2で放射電波の偏向方向と同 一の偏向方向を受信するアンテナである。 アンテナ 1 4 , 1 5の各受信出力は前
置増幅器 1 6 , 1 7を通じ、 更にそれぞれフイルク 1 8 , 1 9で不要波が除去さ れた後、 周波数混合器 2 1 , 2 2で局部発振器 2 3よりの局部信号とそれぞれ周 波数混合され、 これら周波数混合出力中の各差周波数成分 (例えば 2 1. 4 MH zの成分) が帯域通過フィルタ 2 4 , 2 5でそれぞれ取出され、 これらは更に周 波数混合器 2 6 , 2 7で局部発振器 2 8の局部信号 (例えば 2 2. 4 MH zの信 号) と周波数混合され、 これら各周波数混合出力中の各差周波数成分 (例えば 1 MH z成分) が低域通過フィルタ 2 9 , 3 1でそれぞれ取出される。 フィルタ 2 9 , 3 1 の各出力はフーリエ積分器 3 2 , 3 3に供給され、 発振器 3 4からのパ ルス (例えば 1 0. 2 4 MH zのパルス) によりそれぞれサンプリ ングされ、 各 サンプル値がディジタル信号に変換され、 更にそれぞれ離散的フーリェ積分され る。 フーリエ積分器 3 2のフーリエ積分結果 Sm ( X , y ) はホログラム演算部 3 5において、 フーリェ積分器 3 3の出力 Sr を基準とした次式のホログラム演 算がなされて干涉データが得られる。
H ( x > y ) = ( Sm ( x , y ) /Sr ) - i Sr | - ( 1 ) x . yは観測面 1 3上の直交座標の各点を示す。 発振器 2 3 , 2 8 , 3 4は基 準発振器 3 6からの安定した基準信号 (例えば 1 0 MH Zの信号) により同期化 されている。 局部発振器 2 3の周波数を調整して、 周波数 f , の電波を受信した 時の複素ホログラム (二次元干渉データ) と、 周波数 f 2 の電波を受信した時の 複素ホログラムとを測定する。 観測面 1 3の大きさは例えば 2 8 X 2 8 c m2 で あり、 走査アンテナ 1 4の X , yの各方向における移動ピッチはそれぞれ例えば
0. 4 5 c mである。
H ( X , y ) は観測面 1 3における各点の固定アンテナ 1 5の受信波を基準と した受信信号の振幅と位相とを求めたことになる。 この H ( X , y ) を二次元フ ーリェ積分すると、
1 ( ξ , V ) e x p ( i θ ( ξ , v ) )
= Κ"1 ( ξ , ν , z ) S S H (x,y)exp (— 」 2 π ( χ十?? y ) ) d x d y
… ( 2 ) となる。 zは観測面 1 3と垂直な z蚰上の観測面 1 3からの距離、 ξは z軸に対 する方位角、 7?は ζ蚰に対する仰角である。
この I ( ?7 ) は観測面 1 3から各方向を見た時の振幅と、 位相とが求まり 、 電波源像が再生されたことになる。 Κ— ' ( ξ, V , z ) は従来においては単な る定数として使われていたが、 これを次式に示すように周波数で微分すると距離 情報が得られる。
d [Κ'1 ( v . z ) 〕 P h a s e /d a) = ( z + ( ξ 2 十?? 2 ) /2 ζ ) /c = r /c … ( 3 ) ω = 2 π c λ
つまり前記周波数 と f 2 との差を小さい値としておき、 f , . f 2 の電波 より得た各 K-1 ( V , z ) 間の差をとり、 その差を ( ί , - f z ) で割算す ると ( 3 ) 式の微分値とほぼ等しいものとなる。 つまり距離 rを光速 cで割算し た遅延時間が得られる。 このようにして受信点 ( X , y ) において各方向 ( V ) からの受信波の振幅と遅延とが求まる。 例えば周波数 f , は 1 8 8 1 7 MH 1、 f z は 1 8 8 1 4 MH zである。
このようにして測定した観測点 ( X , y ) における、 各方向 ( ξ , ?? ) よりの 受信波の振幅 a ( V ) 、 遅延 d ( ξ , V ) と、 使用しょうとする受信アンテ ナの指向特性 g ( V ) (無指向性も、 各方向 ( ??) で同一値の指向特性 とする) とから周波数選択性フュージング特性 X ( ί ) を次式で求めることがで きる。
X ( f ) = S i g ( ? , 7? ) - a ( > 7? )
• e x p (- j 2 ?r f d ( ξ , ν ) ) d ξ d ν - ( 4 ) この特性 X ( f ) をもつ各方向からの合成伝搬路に、 周波数帯域幅 の変調 信号をもつ搬送波信号 (周波数 f c の信号) を伝搬させた時の複素時間応答 X ( t ) を、 次式に示すように特定の周波数帯域 ( f t 土 k厶 f ) で正の周波数に対 してのみフュージング特性 X ( f ) を逆フーリェ変換して求める。
x ( t ) = i X ( f ) e x p ( j 2 ^ f t ) d f - ( 5 )
Sは f c — k△ f から ί c + k△ f まで k >> 1. 0
ここで Δ f を k倍するのは通信帯域の少し外側をも舍めて時間応答を求めるた めである。 この時間応答を、 変調搬送波信号に畳み込み、 その結果に対し、 無変 調搬送波信号を乗算して復調ベースバンド信号を得る。 例えば図 2 Aに示すよう
に入力端子 4 1からベースバンド変調信号をベースバンドフィルタ 4 2に通して 带域制限し、 そのフィルタ出力と搬送波信号 Rf を乗算器 4 3で乗箕して変調搬 送波信号 y ( t ) を得、 この y ( t ) に対し、 時間応答、 つまり ( 5 ) 式の実部 Re 〔 X ( t ) 〕 と虚部 I n 〔 x ( t ) 〕 とを畳み込み演算部 4 4 , 4 5で畳み 込む。 つまり下記式を演算する。
i y ( t ) - Re [ x ( t - r ) d r - ( 6 ) i y ( t ) - ( x ( t - r ) d r … ( 7 ) これら ( 6 ) 式、 ( 7 ) 式の演算により、 前記 a ( ξ , ν ) , d ( ξ , v ) , g ( ξ , ?7 ) で決るマルチパスフヱージング伝送系を y ( t ) が伝送された時の 信号が得られる。 このようにして得られた y ( t ) がフヱージングを受けた信号 、 つまり演算部 4 4 , 4 5の各演算結果にそれぞれ無変調搬送波の同相成分 R , と、 その直交成分 R, * とを乗算器 4 6 , 4 7で乗算し、 その両乗算結果を加算 すると、 受信機の復調ベースバン ド信号 Re 〔 r ( t ) 〕 が得られる。 この Re [ r ( t ) ) は次式で示される。
Re 〔 r ( t ) = j y ( t ) - R. ί x ( t — て) 〕 c o s ( 2 π Ϊ c t )
十 y ( t ) - I m ( x ( t - τ ) 1
• s i n ( 2 7t f c t ) d r - ( 8 ) このベースバン ド信号 Γ ( t ) から、 伝搬路のフヱ一ジングにもとづく影響を 知ることが.できる。 つまりこのような演算を行うことにより、 図 1中の対象空間 1 1内の電波伝搬をシミュレートし、 そのマルチパスフヱージング下の伝搬信号 の影響を各種ベースバンド信号 (入力端子 4 1の信号) 、 搬送波信号 R f につい てシミュレートすることができる。 図 2 Aは B P S K変調信号に対する伝送シ ミュレートであって、 ベースバン ド信号 r ( t ) の実部のみを見ればよい。
図 2 Bに示すように、 図 2 A中の乗箕器 4 3の出力である変調搬送波信号 y ( t ) に伝搬路時間応答の実部 Re 〔 X ( t ) 〕 と虚部 I„ ( X ( t ) ] をそれぞ れ畳み込み演算部 4 4 , 4 5で畳み込み、 これら畳み込み演箕結果に対し、 乗算 器 4 6 , 4 7でそれぞれ無変調搬送波信号の周波数 R f より中間周波数 I Fだけ 低い信号の同相成分と直交成分とを乗算し、 これらの乗箕結果を加算する。 この 加算結果は受信機の中間周波出力信号と対応する。 よってこの加算結果に対し、
乗算器 4 8 , 4 9でそれぞれ中間周波信号の同相成分及び直交成分を乗算し、 そ の乗算結果をそれぞれベースバンドフィルタ 5 1 , 5 2に通して復調ベースバン ド信号の同相成分 I と直交成分 Qとを得ることにより、 受信機の影響をも舍めて 伝搬特性をシミュレートすることもできる。 このシミュレートも B P S K変調信 号に対するものである。
Q P S K変調信号のようにベースバンド信号に同相成分 Iの他に直交成分 Qを 有する場合は図 2 Cに図 2 Aと対応する部分に同一符号を付けて示すように、 入 力端子 4 1 , よりの変調信号の同相成分 Iをベースバン ドフィルタ 5 3を通して 乗算器 5 4で搬送波信号 Rf の同相成分を乗算し、 入力端子 4 1。 よりの変調信 号の直交成分 Qをベースバンドフィルタ 5 5を通して乗算器 5 6で搬送波信号の 直交成分 * を乗算し、 乗算器 5 4 , 5 6の各乗算結果を加算してべク トル変 調搬送波信号 y ( t ) を得る。 この y ( t ) を畳み込み演算部 4 4 , 4 5へ供給 すると共に畳み込み演算部 5 7 , 5 8でそれぞれ時間応答閬数 X ( t ) をヒルべ ルト変換した閩数 Re 〔 x ( t — r ) 〕 , I n ( x * ( t 一 て ) 〕 を y ( t ) に 畳み込む。 これら畳み込み演算部 5 7 , 5 8の各演算結果に乗算器 6 し 6 2で それぞれ無変調搬送波信号の同相成分 R f 、 直交成分 R f * がそれぞれ乗算され 、 これ等乗算結果を加箕してベースバン ドフィルタ 5 2へ供給して受信機の復調 ベースバン ド信号の直交成分 Qと対応するものを得る。 乗算器 4 6 , 4 7の両乗 算結果を加算しベースバン ドフィルタ 5 1を通して受信機の復調ペースバンド信 号の同相成分 I と対応したものを得る。 なおベースバンドフィルタ 5 2の入力は 次式で示される。
I m [ r ( t ) 〕 = ί { y ( t ) · R e [ x * ( t — て ) 〕 cos ( 2 f c t ) 十 y ( t ) · I m [ x * ( t — て ) 〕 sin(2 π f c t ) } d て … ( 9 ) x * ( t ) は x ( t ) のヒルベル ト変換したもの、 つまり下記式で示される。
X * (t) = I (- 1 m 〔 X (f) 〕 十 j Re 〔 X ) 〕 ) exP( j 2 π f T. ) d f
••' ( 1 0 ) ίは i c — k A f から f c + k A f まで
I m 〔 r ( t ) 〕 の式中の右辺第 1項の cos(2 π ί c t ) の乗算を除く畳み込 み演算が演算部 5 7で行われ、 第 2項の sin(2 f 。 t ) の乗算を除く畳み込み
演算が演算部 5 8で行われる。 このようにして入力端子 4 1 , 〜4 1。 の I , Q 信号からなるベースバンド信号により搬送波を変調した信号が、 マルチバスフユ 一ジングの影響を受けた伝送信号の復調ベースバンドの I , Q成分を、 シミュレ ートすることができる。 時間応答関数 X ( t ) を y ( t ) に畳み込む演算は、 演 算周期 (サンプリ ング周期) を小さくする程、 精度が上るが演算周期を小さくす ると計算量が著しく多くなる。
前述では、
R f = c 0 s '( 2 π f c t )
Rf * = s i n ( 2 7T f c t )
f c は実際の搬送波周波数
として計箕シミュレーショ ンと実際に用いられる搬送波周波数とを一致させた が、 f c の代わりに f c ' すなわち、 f c より f 。 だけ低い周波数
f c ' = f c - f O
を用い、 かつ、 ( 5 ) 式を
X ( t ) = X ( f + f o ) e x p ( j 2 π f t ) d f - ( 5 ) ' ただし、 ίは、 f c ' — k Δ f から f c ' + k厶 f まで k >> 1. 0
とすれば、 計算シミュレーショ ンに用いる搬送波周波数 f c ' を実際の搬送波 周波数 f c より低く設定でき、 つまり
f = c 0 s ( 2 π f c ' t )
Rf * = s i n ( 2 7r f c ' t )
とする事ができる。 これにより、 変化の速い変調波信号を比較的低い周波数に 変換し、 遅いサンプリ ング周波数 (演算時間間隔が比較的長い) 、 つまり少ない 計算量でも伝搬信号波形を比較的忠実にシミュ レートできる。 しかし C DMA ( 符号分割多元接铙) のように変調搬送波信号の周波数帯域が広い場合は、 周波数 帯域を制限することがて'きない。 この場合は下記のようにして演算量を減少すれ ばよい。
伝搬路の時間応答閬数 X ( t ) としてイ ンパルス応答を次の式で求める。
X ( t ) = M g (I, V ) ' a ( v ) - δ ( t - d ( , 7? ) ) d ξ ό
δ ( u ) はデルタ閩数で u = 0で 1、 u≠ 0である。 つまり g ( 7? ) と a ( V ) と d ( V ) とを重ねたィ ンバルス応答として X ( t ) を求める。
y ( t ) に X ( t ) を畳み込むには時間間隔 Δ tで y ( t ) , χ ( t ) をサン プリ ング (時間量子化) して下記の演算を行う。
Γ ( η Δ t ) =∑ y ( n厶 t ) · x ( n厶 t — k厶 t ) … (12)
∑は kについて行い、 kの範囲は全観測時間範囲である。 (12) 式の r ( η Δ t ) は変調搬送波信号の受信信号である。 (11) 式を Δ t間隔でサンプリ ングす ると、 関数が 1、 つまり t = d ( ξ , ν ) となった時にしか χ ( t ) が値をも たないから、 図 3に示すようにサンプリ ングパルスに対し、 X ( t ) が値をもつ 時点との差厶 dは最大 となり、 つまりこの最大時間誤差で、 周波数 f の 成分に対して π f 厶 ( r a d ) の位相誤差が生じる。 そこで (11) 式を複素数で 搬送周波数 f c を中心に展開する、 つまり時間応答関数 X ( ) に位相を加える 。 1つの伝搬路の遅延を d = η Δ t + Δ dとして、
x ( n厶 t ) = x ( t ) e x p (— j 2 7T f c A d ) 〜 (13) を演算して、 この結果を (12) 式の演算に用いる。 このようにすれば位相項 e x p (— 」 2 ?r f c A d ) により、 厶 t間隔のサンプリ ングにもとづく位相 ί呉差 を補償することになり、 それだけサンプリ ング間隔 A tを大とし、 計算量を少く することができる。
なお、 y ( t ) の搬送周波数 f c が変調信号により Δ f だけずれた場合、 X ( η Δ t ) における位相誤差の実時間表現では
0 e = 2 E A d ( f c +厶 f ) 〔 r a d〕
となる力 複素拡張表現では
Θ e ' = 2 π Δ d Δ f 〔 r a d〕
となり、 f c 一 A f »A f であるから、 β e と 0 e ' とを比較すると、 複素拡 張表現は精密なシミュレーショ ンが可能であることが理解される。
イ ンパルス応答を (11) 式により求め、 この時間応答関数 X ( t ) を用いて., 図 2 A、 又は Bあるいは Cに示すようにして、 同様に電波伝搬のシミュレートを 行うことができる。 その場合時間応答関数 X ( t ) を (13) 式のように補正して 演算量を小とすることもできる。
以上述べたこの発明の電波伝搬シミュレ一ト方法における処理手順を示すと図 4の通りになる。 つまり周波数 f , , f 2 でそれぞれ対象空間の各二次元干涉デ ータを測定し ( S , ) 、 その各干涉データより電波源像を再生し ( S2 ) 、 次に 観測点における各再生波源像からの電波の振幅 a ( 7? ) 、 遅延 d ( v ) と使用受信アンテナ指向特性 g ( V ) とから伝搬路の時間応答関数 X ( t ) を求める ( S3 ) 。 この X ( t ) を求めるには ( 4 ) 式を逆フーリエ変換する方 法 ( ( 5 ) 式) と、 (11) 式を用いる方法とがある。 次に求めた X ( t ) を変調 搬送波信号 y ( t ) に畳み込む (S4 ) 。 この畳み込みには ( 5 ) ' 式について 述べたように、 搬送周波数を実際の値より下げて行う場合、 (12) 式及び (13) 式を用いて行う場合もある。 更に前記畳み込み結果をベースバンド信号に復調す る ( S5 ) 。 この場合、 畳み込み結果を、 搬送波で検波して直ちにベースバン ド 信号を得る場合の他に、 図 2 Bに示したように中間周波信号に変換した後、 その 中間周波信号を検波してベースバンド信号を得る場合がある。
次に、 この発明による波動場強度推定方法を電磁場の強度推定に適用した実施 例を説明する。 この実施例では一次波源を見ることができ、 かつ推定したい電磁 場空間を見渡せる位置で電磁波の 2次元干涉データを少く とも 2周波数で測定す る。 例えば図 1において、 対象空間 1 1内の一次波源として周波数 ί , の電波と 周波数 f z の電波を放射する放射器 1 2が用いられ、 この放射器 1 2を見ること ができ、 かつ推定したい電磁場空間を見渡せる位置に観測面 1 3を配し、 その後 の , f z の各電波の二次元干涉データ (複素ホログラム) の測定は先の説明 と同様であり、 ホログラム演算部 3 5から複素ホログラム H ( X , y ) が得られ る。 更に先の場合と同様にこの H ( X , y ) を二次元フーリエ積分して、 電波源 像を再生する。 この実施例ではこの再生波源像の一次波源である放射器 1 2の波 動に対する各伝搬遅延時間をその波源の位相から求める。 即ち一次波源である放 射器 1 2の位置を ( ξ。 , "。 ) 、 放射器 1 2の観測面 1 3からの距離を 。 と し、 電波の速度を c、 ω , = 2 π f , 、 ω ζ = 2 π f ζ とすると再生波源像、 つ まり観測面から見た二次波源と一次波源との伝搬遅延時間 D ( ξ , V ) は次式よ り求まる。
D ( V ) = r 0 / c + { ( θ ( ξ , ν , ω , ) - θ (ミ 0 , τ, ο , ω , ) )
- ( ( θ ( ξ , ν , ω ζ ) - θ ( ξ ο , ?? ο , ω 2 ) ) }
/ (ω2 -ω, ) 〜(15) 次に上記再生波源像 1 ( 77 ) 6 ( 1] ( 7? ) ) と、 伝搬遅延時間
D (ミ, 7? ) と、 推定したい周波数 2 % ί =ωにより観測された波源の位相とを 用いて各波源を 3次元空間に再配置する。 つまり各波源の絶対座標 (X, Υ, Ζ ) は次式で与えられる。
r ( v ) =D ( ξ, ν ) · cとすると、
X ( , v ) = r ( ξ , v ) · ξ - c o s ( s i η - ' ( v ) ) …(16)
Y ( ξ , v ) = r ( v ) · 7? · c o s ( s i n-' ) …(17)
Z ( ξ , v ) =J~ i. r ( I, J? ) 2 -X ( f , v ) 2 - Y ( ξ , v ) 2
(18) となる。 この時の各波源の放射強度 I ' ( ξ v , ω ) と位相 0 ' (
) は波長をスとして次式となる。
I ' ί ξ , ν , ω ) = τ ( ξ , 7! ) · ] ( ξ , ν , ω ) 〜(19) θ ' ( ξ , V , ω ) = θ ( ξ , ν , ω ) ÷ 2 π r ( ) / …(20) 再生像の座標 ( V ) で決る 3次元空間の各位置、 つまり (16) , (17) , (18) 式で与えられる座標 X, Υ, Ζ上に (19) 式及び (20) 式て'与えられる波 源が存在することになる。
従ってホログラム観測面 1 3から見た 3次元空間の任意の位置 ( X ' , y ' , ζ ' ) での電場強度及び位相を舍む複素電界 Ε ( X y z , ω ) は、 一 次波源を舍む全ての波源からの波動を上記位置 ( X y ζ ' ) で合成した 次式で推定される。
Ε ( X ' , y ' , z ' , ω ) =∑∑ (1/ ' ( ξ 7? ) ) I ' ( e ν , ω )
• e χ ρ ( j ( θ ( v , ω )
- 2 π 7 ' ( V ) ' ) ) (21) ∑は ξと??とのそれぞれについての総和である。
τ ' ( I, V ) は位置 ( X ' , y ' , z ' ) から各波源までの距離であって次 式で与えられる。
τ ' ( f , v ) =^ { ί Χ ( ξ , ?? ) — χ ' ) ζ 十 (Υ ( ξ , v ) - y ' ) 2
+ ( Z ( ξ, 7? ) - z ' ) 2 } (22) 以上の処理ステップを簡単に示すと図 5に示すようになる。 つまり図 4におけ るステップ S, と S2 の処理を同様に行って波源像を再生し、 次にこの実施例で は各波源像の一次波源 1 2に対する伝搬遅延時間 D ( ) を (15) 式に求め
(St ) 、 次に各波源を (16) 乃至 (20) 式により絶対座標 (X, Υ, Z) に再 配置し (S7 ) 、 絶対座標における任意の位置における電場強度及び位相を再配 置波源からの電磁波を (21) 式により合成して求める (Sa ) 。
次にこの発明による 3次元遅延分散推定方法の実施例を説明する。 この場合も 電磁場強度推定方法の実施例と同様に図 1において対象空間 1 1内に一次波源と して周波数 f t の電波と周波数 f z の電波を放射する放射器 1 1が用いられ、 放 射器 1 2を見ることができ、 かつ推定したい電磁場空間を見渡せる位置に観測面
1 3を配し、 周波数 f , , f z の電波の各二次元干涉データ H ( X . y ) を得、 更に電波源像を再生し、 その再生二次波源像の一次波源の電波に対する各伝搬遅 延時間 D ( V ) を求め、 この D ( , V ) と再生波源像 I ( V ) e X p
( j θ ( , 7? ) ) と、 推定したい周波数 f により観測された波源の位相とを用 いて、 各波源を絶対座標 (X, Υ, Z ) に再配置する。 この時、 (16) 〜 (18) 式により波源位置、 (19) 及び (20) 式により、 その波源の放射強度 I ( ξ , V , ω) 及び位相 0 ' ( ξ , V . ω) が与えられる。
ここで 3次元空間 (Χ> Υ, Ζ ) の任意の位置 ( X ' , y ' , z ' ) における 各波源からの電波の遅延平均値て n 、 遅延の標準偏差て rms は、 その位置 ( χ ' , y ' , z ' ) から各波源までの距離 r ' ( ξ , 7? ) に応じた遅延時間 r ' ( ξ , ν ) / と強度 ( Ι ' ( ξ > τ , ω、 / γ ξ , η ) ) 2 とからそれぞれ次式 により求まる。
τη =∑∑ (1/ ( c · r ' ( ξ , ν ) ) ) · ( I ' ( V , ω ) ) 2 /∑ ∑ ( { \ / τ ' ( ξ , ν ) ) , ( I, V , ω ) ) ζ 〜(23)
r ' ( ξ , v ) 1
∑ ∑ ―て I ' ( e, V , ω )
r ' ( v )
1
∑ ∑ I ' ( V , ω )
r ' ( v )
(24)
(23) , (24) 式で∑∑はそれぞれ ξ , の各値についての加箕であり、 τ ' ( ??) は (22) 式で求められる。
このようにしてホログラム観測面 1 3から見える 3次元空間の任意の位置 ( X ' , y ' , z ' ) における遅延平均て„ 、 遅延の標準偏差て rms をそれぞれ (23 ) , (24) 式を演算することにより求めることができる。 なお遅延波分散量は ( 24) 式で求めた値て rms を自乗演算したものであるが、 (24) 式の値て rn(S を遅 延分散と呼ぶこともある。
通常の電波による通信においては有限の周波数帯域で行われる。 従って有限帯 域 ω土 Δωの範囲では各波源の強度 I ' ( , τ?, ω) 、 位相 £? ' ( , ω ) は変化が小さいと考えられ、 それぞれを I ' ( , τ 、 θ ' ( ξ , τ? ) とし 、 アンテナ指向特性を Α ( V ) とすると、 任意の位置 ( ' , y ' , z ' ) における伝搬路の周波数応答を次式で求めることができる。
G (ω) =∑∑ (A ( ξ , ν ) / τ ' ( I , V ) ) · 1 ' ( ξ , V ) · e χ ρ
( i ( θ ' ( ξ, 7? ) — r ' ( I , τ? ) · ω/c ) ) ··· (25) 更に周波数帯域制限関数を Β ( ω ) とすると、 伝搬路の時間応答関数 g ( t ) は次式で表すことができる。
g ( t ) = 5 G ( ω ) · Β (ω) - e x p ( i ω t ) ά ω ··■ (26)
5は制限されている周波数範囲の積分
この時間応答関数から、 任意の位置 ( χ ' , y ' , z ' ) における遅延平均て n 、 遅延の標準偏差 7r rms はそれぞれ次式で求めることができる。
て m = " . i g ( t ) i 2 d t /ί I g ( t ) d t ··· (27) て n =^ U ( t - rm ) 2 ί g ( t ) I 2 d t / Π g ( t ) I 2 d t }
… (28) r B 、 r rns を推定する処理手順を図 6に示す、 この図 6に示し、 先の説明か ら明らかなように、 各波源を絶対座標に再配置するまでは、 電磁場強度推定方法 の実施例と同一であり、 つまり図 5のステップ S , , S2 , S6 , S, の処理を 行い、 その後、 任意の位置 ( χ ' , y ' . z ' ) で各波源からの距離 r ' ( V ) に応じた遅延時間と強度とから遅延平均て m を (23) 式又は (27) 式で、 標 準偏差て rms を (24) 式又は (28) 式により求める ( S8 ) 。
上述した何れの実施例においても、 複素ホログラム (二次元干涉データ) H ( X , y ) を得るにはスぺク トル領域ではなく、 時間領域での積分により求めるこ ともできる。 その例を図 7に、 図 1 と対応する部分に同一符号を付けて示す。 低 域通過フィルタ 2 9よりのベースバンド信号は乗算器 6 4及び 6 5へ供給される 。 一方基準となる固定アンテナ 1 5側の帯域通過フィルタ 2 5の出力は、 局部発 振器 2 8の出力を移相器 6 6で 2ずらされたものと乗算器 6 7で乗算され、 その乗算出力から低域通過フィルタ 6 8によりベースバンド信号が取出される。 低域通過フィルタ 3 1 , 6 8の各出力はそれぞれ乗算器 6 4 > 6 5へ供耠される 。 つまり帯域通過フィルタ 2 5の出力は直交検波され、 その検波出力の同相成分 と、 直交成分とが低域通過フィルタ 2 9よりベースバンド信号と乗算器 6 4 , 6 5でそれぞれ乗箕さ る。 乗算器 6 4 , 6 5の各出力は積分器 7 1 > 2で発振 器 3 4からのクロックによりサンプリ ングされ、 時系列デジタル信号にされた後 、 それぞれ時間領域で積分され、 それぞれ実部 Re 、 虚部 I n として演算部 7 3 へ供給される。 低域通過フィルタ 3 1 , 6 8の各出力はそれぞれ分岐され、 二乗 器 7 4 , 7 5でそれぞれ二乗算された後、 加算開平器 7 6で加算され、 その加算 結果の開平がとられて固定ァンテナ 1 5の受信出力の大きさ : Sr i が得られ、 これが演箕部 7 3へ供給される。 演算部 7 3では Re + j l m S^ ' Sr * を 演算し、 これを | Sr i で割算して、 電波ホログラム H ( X , y ) を得る。
同様に前述した何れの実施例においても放射器 1 2から円偏波の電波を放射し 、 走査アンテナ 1 4、 固定アンテナ 1 5でそれぞれ水平偏波を受信して、 電波ホ ログラム HH ( X , y ) を求め、 また垂直偏波を受信して電波ホログラム H v ( X , y ) を求め、 複素重み係数 orH > orv を選定して任意の偏波についての電波
ホログラム H' ( x , y ) を次式により求め、
H ' ( X , y ) = arH HH ( x , y ) + a v H v ( x , y )
この H' ( x, y ) について前述したように I ( ?7 ) を求め、 更に伝搬路の 時間応答関数を求め、 電波伝搬シミュレーショ ンを同様に求めることもでき、 あ るいは 3次元絶対座標での各波源の位置と放射強度、 位相を求め、 更に任意の位 置での複素電界 E ( χ ' , y ' , ζ ' , ω) 、 又は各波源からの電波の遅延平均 値 " 、 その標準偏差 r rms を求めることもできる。 この場合電場強度を推定す る際には水平偏波の受信で求めた干涉データを HH ( X, y ) 、 垂直偏波の受信 で求めた干涉データを Hv ( X , y ) 、 複素重み付け係数を αΗ · αν とすると 、 任意偏波の干涉データ Η ' ( X , y ) は次式で求まる。
H ' ( X , y ) = arH H H ( x , y ) + av H v ( x , y )
O H · arv を選定して所望の干渉データ H ' ( X, y ) を得、 これを用いて前 述したように二次波源像を再生して、 任意の位置 ( X ' , y ' , ζ ' ) での電場 強度を求めればよい。
更に任意位置 ( χ ' , y ' , 1 ' ) での受信電場強度に受信アンテナ指向性特 性 A ( I , V ) を重ねて重み合成してもよい。 つまり次式の演算をするようにし てもよい。
E ( X ' , y ' , z ' , ω ) = ∑ ∑ (A ( | , ν ) / τ ' ( ν ) ) 1 '
( ξ , ν , ύ) ) e χ ρ ( j ( θ ' ( ξ , ν , ω ) - 2 π r ' , V ) / λ ) )
受信電場強度分布の推定において、 空間ダイバーシチを考慮した結果も容易に 得ることができる。 つまり Ε ( X , y , ' , z , ' , ω ) と E ( x 2 ' , y z ' , z 2 ' , ω ) との合成又は強度が大きい方を選択することにより受信ダイ バーシチの受信出力を推定することができる。 つまり合成の場合は E ' ( r, Δ r ) = a E ( x , ' , 1 ' , ζ ' , ω ) + a 2 Ε κ χ ζ ' , y 2 ' , ζ ' , ω ) を演算する。 ただし A r =^ { ( x , ' - χ 2 ' ) 2 + ( y , ' - y , ' ) ζ + ( ζ , ' - ζ ζ ' ) ζ } χ Τ =: ( χ ι , . , Ζ 1 ) o 1 , ff 2 はそ れぞれ複素重み係数であり、 合成電場強度 Ε' ( r , Δ Γ ) が最適化するように 決められる。
放射電波 f , , f ζ として、 現実に運用されている場所が既知の無線送信局か らのユニークヮード部分のみを取出したり、 周波数ホップ T D M Αのチャネル中 心周波数の切替え情報を利用してもよい。 つまり例えばユニークワード部分は、 その符号が予め知られているから、 変調によるスペク トルのシフ トが f , になつ た時と f 2 になった時はそれぞれ分離して受信してそれぞれの干涉データ H ( X , y ) を生成するようにしてもよい。 更にこの発明の波動場強度推定方法は電波 のみならず音波の伝搬場における各部の強度推定にも適用できる。
以上述べたようにこの発明の霄波伝搬シミュレート方法によれば少くとも 2つ の周波数について電波ホログラムを観測し、 これより例えば 4 0 9 6の伝搬路に 分離して各伝搬路の受信波の振幅及び遅延 ( P S分解能で) を求め、 これら振幅 、 遅延、 受信アンテナ特性から各伝搬路の時間応答関数を求め、 この時間応答閬 数を変調搬送波信号に畳み込んでいるため、 つまり実測により時間応答関数を求 めているため、 複雑な反射物体が多く、 かつ複雑に配置されている状態で多数の 複雑なバスが生じる場合でも、 例えば室内領域での各パスを 4 0 9 6にも分離す る場合、 時間幅 1 n s間に存在する数十ものマルチパスを分離でき、 かつ観測面 での電界分布を正確に反映し、 正しく時間応答関数を求めることができ、 それだ け正確に電波伝搬をシミュレ一トでき、 どのような受信復調信号が得られるかを シミ ュレー 卜することもできる。 例えば高速無線 L A N ( 1 9 G H z帯、 2 0 0 b p s ) のァンテナ系及び変復調系を含めたシミュレーショ ンなどに適用でき る。
またこの発明の波動場強度推定方法によれば、 波動の干涉データ (複素ホログ ラム) から二次波源を再生し、 その波源を 3次元の絶対値空間に再配置してこれ らからの波動を、 任意の点で合成して強度、 位相を推定するものであるから、 各 点をいちいちセンサで測定する必要がなく、 かつそのセンサの移動装置などの影 響を受けず、 精密に波動場の分布を推定することができる。
しかも例えば既存の通信システムにおける送信電波 (例えば送信されるュニー クワー ド) を利用して、 その通信システムの電波伝搬空間の電場分布を測定する ことができ、 通信システムの運用後にその電波伝搬空間における建物の出現、 解 体など、 形状的、 その他の変化にもとづく、 電場分布の変化を測定し、 その変化
に追従してその通信システムの障害発生を改善することも可能となる。
またこの発明の 3次元遅延分散推定方法によれば、 干涉データ (複素ホログラ ム) を観測し、 その波源像を再生し、 これを 3次元絶対値空間に再配置し、 ホロ グラム観測面から見ることができる任意の位置の各波源との距離に対応した滅衰 と遅延とを求めて遅延平均 τ η と遅延標準偏差 z: r„s とを求めているため、 各位 置に受信機を移動させて測定する従来技術と比較して簡単かつ短時間に求めるこ とができ、 しかも特別な変調を必要とせず、 狭带域で測定して、 短かい遅延も分 離することができる。