明 細 書 ヌ ク レ オ シ ドの製造法 技 術 分 野
本発明は、 バチルス属に属する好熱菌由来のヌク レオ シ ドホスホリラーゼを含有する酵素調製物を用いたヌク レオシ ドの製造法に関するものである。
背 景 技 術
ヌク レオシ ド、 リボース - 1 - リ ン酸等の糖残基供与 体と塩基供与体とを酵素的に反応させてヌク レオシ ドを 製造する方法としては、 例えば、 各種プリ ンヌク レオシ ドの製造法 (特公昭 43 - 24475号、 特公昭 43一 28954号、 特公昭 43 - 28955号、 特公昭 43 一 28956号、 特公昭 45 - 1 1 1 1 6号、 特公昭 48 - 14957号、 特開昭 55 - 7 149 5号、 特開 昭 56 - 18599号、 特開昭 56 - 142293号、 特開昭 56 - 1 64793号、 特開昭 56 - 1661 99号、 特開昭 58 - 63393号、 特開昭 58— 94396号、 特開昭 58 - 1 704 93号な ど) 、 各種ピリ ミ ジンヌ ク レオシ ドの製造法 (特公昭 35 - 16478号、 特開昭 56 - 1 02794号、 特 開昭 59 - 21 3397号、 特開昭 60 - 239495 号、 特開昭 60— 239495号など) 、 その他各種の
ヌ ク レオ シ ドの製造法 (特開昭 50— 29720号、 特 開昭 57 - 146593号、 特開昭 58 - 1 90396 号、 特開昭 58 - 216696号、 特開昭 59—
143599号、 特開昭 59 - 179094号、 特開昭 59 - 213397号、 特開昭 60— 1 20981号、 特開昭 60— 133896号、 特開昭 63 - 31093 号、 特開昭 63— 1 77797号など) などが報告され ている。
しかしながら、 これらの酵素的なヌク レオシ ドの製造 法は、 酵素反応特有の基質特異性、 立体選択性などの点 において化学的合成法と比較して優れたものであるが、 酵素の能力が十分でなく収率および収量の点では必ずし も満足できるものではなかった。
また、 常温で反応を行なえば、 雑菌による汚染が原因 と考えられる収率の低下も観察され、 汚染を回避するた めに高温 (例えば 45て以上) で反応を行なうと藓素が 徐々に失活してしまい、 結果的に収率が著しく低下する という問題点もあった。
一般に、 化合物の合成は生成反応と分解反応との平衡 が生成反応に傾く ことによってもたらされるものである, このため、 化合物の収率および収量を高めるためには、 生成反応を促進し、 かつ分解反応を抑制することが肝要 であり、 この原則は酵素的な化合物の製造法においても 例外ではない。
また、 反応温度を高くすれば、 反応速度が速く なり、 短時間のうちに反応が終了し、 かつ基質の溶解性も高ま ることから、 目的化合物を収率よく製造できる可能性を 有している。
ヌク レオシ ドホスホリラーゼを用いてヌク レオシ ドを 製造する場合、 ヌク レオシ ドの生成反応を促進するため には'、 触媒として使用する酵素自体の能力および反応条 件の 2つの点から考慮しなければならない。 反応条件の 選定は使用する酵素の能力を引き出すための補助的な手 段にすぎず、 生成反応を促進し、 目的化合物の収率を高 めるための抜本的な方法は優れた能力を有するヌク レオ シ ドホスホリラーゼを用いることである。
ヌク レオシ ドの製造に使用されている従来のヌク レオ シ ドホスホリラーゼは、 調製の容易な微生物から調製し たものが大多数である。 しかし、 反応の効率、 比活性、 耐熱性、 目的化合物の収率などから酵素の能力を検討し た場合、 従来使用されているものは必ずしも満足できる ものではなかった。
—方、 製造したヌク レオシ ドの分解反応に関与すると 考えられる酵素、 例えばヌク レオシダーゼに関しては光 硬化樹脂を用いた固定化法によるヌク レオシダーゼの抑 制法が報告されている (特開昭 6 2— 2 5 3 3 9 3号) , 該方法は優れた方法であるが、 酵素調製物として微生物 菌体を使用する場合には微生物によっては固定化しにく
いものもあり、 汎用性に欠ける方法であった。
本発明者らは、 ヌク レオシ ドの酵素的製造に使用でき る能力の優れた酵素を発見するため種々の微生物をスク リ一二ングした結果、 バチルス属に属する好熱菌の中に 極めて比活性が高く、 耐熱性のあるヌク レオシ ドホスホ リラーゼを多量に含有し、 菌体単位重量当りのヌク レオ シ ドホスホリラーゼ活性が高い微生物群を発見した。
従来、 バチルス属に属する好熱菌であるバチルス · ス テアロザーモフィ スからヌク レオシ ドホリホ リ ラーゼが 単離精製されて、 その酵素的性質が検討報告されている (J. Biol . Chem.. 244, 3891〜3697 (1969) 、 Agric. Biol . Chera. ,53, 2205〜 2210 (1989年 8月 23日) 、
Agric. Biol . Chem.. 53, 3219〜 3224 (1989年 12月 23-日) 参照) 。 また、 ノくチルス · ステアロザーモフィ ラスの微 生物菌体を酵素源として用いた 5 - メチルゥリ ジンまた はチミ ジンの製造法も報告されている (特開苹 1 一 3 2 0 9 9 5号公報 ( 1989年 12月 27日公開) 、 Agric. Biol . Chem, , 53. 197〜 202 (1989 年 1 月 23日) 参照) 。 しかしながら、 上記報告のヌク レオシ ドホスホリラーゼ は、 耐熱性を有するという利点は有するものの、 比活性 が低く、 かつ菌体単位重量当りの酵素活性も低いために ヌク レオシ ドを収率よく製造することができないという 従来の問題点を解決するまでには至らなかった。 すなわ ち、 特開苹 1 - 3 2 0 9 9 5号公報に記載されているヌ
ク レオシ ドの収率を使用した塩基供与体に対する割合で 表わせば、 せいぜい 3 0 %前後 (理想的に反応したとし ても酵素反応の平衡定数から求められる目的物の収率は 5 3〜 5 6 %である) である。
発 明 の 開 示
発明者らは、 前述の本発明者らの発見した比活性が高 く、 耐熱性のあるヌ ク レオシ ドホスホリラーゼを多量に 含有し、 菌体単位重量当りのヌ ク レオシ ドホスホリラー ゼ活性の高い微生物群に関してさらに研究を重ねた結果、 ①これらの微生物群は、 比活性が高く、 耐熱性のあるプ リ ンヌク レオシ ドホスホリラ一ゼとピリ ミ ジンヌク レオ シ ドホスホリラーゼを合わせ持ち、 かつヌク レオシダー ゼを含有していないか、 含有していてもヌク レオシ ドを 製造する際の反応温度 ( 3 5〜 8 0て) においては極く 微弱な活性しか示ざないものであるこ と、 および②この 微生物群の 1種もしく は 2種以上の微生物の菌体由来の ヌク レオシ ドホスホリラーゼを含有する酵素調製物をヌ ク レオシ ドの酵素的製造に使用すればわずかな酵素量で 短時間に収率よく ヌク レオシ ドを製造することができる ことを知見して本発明を完成させた。
すなわち、 本発明は塩基供与体、 糖残基供与体および リ ン酸供与体をヌク レオシ ドホスホリ ラーゼ調製物を用 いて反応させ、 塩基供与体の塩基部分と糖残基供与体の 糖部分との間に N - グリ コシ ド結合を形成させてヌク レ
ォシ ドを製造する方法において、 ヌク レオシ ドホスホリ ラーゼを含有する酵素調製物として、 バチルス属に属す る好熱菌のうち、 菌体単位重量当りのヌ ク レオシ ドホス ホリラーゼ活性の高い微生物群の 1種または 2種以上の 微生物の菌体に由来するものを用いることを特徵とする ヌク レオシ ドの製造法に関するものである。
なお、 本明細書において 「ヌ ク レオシ ド」 とは、 ゥリ ジン、 チミ ジン、 シチジン、 アデノ シン、 グアノ シンな どの天然に存在するヌク レオシ ドのほか各種のヌク レオ シ ドアナログをも包含する範囲を指称するものである。 また、 本発明は、 上記酵素調製物自体、 該酵素調製物 を調製するために使用する新規な微生物、 該微生物から 調製され、 ヌク レオシ ドの製造にも使用できる新規なヌ ク レオシ ドホスホリラーゼに関するものである。
図面の簡単な説明
第 1図は本発明のプリ ンヌク レオシ ドホスホリラ一ゼ の至適 p Hおよび安定 p H範囲を示したものである。 第 2図は本発明のプリ ンヌク レオシ ドホスホリラーゼ の至適温度および安定温度範囲を示したものである。 第 3図は本発明のピリ ミ ジンヌ ク レオシ ドホスホリラ 一ゼの至適 p Hおよび安定 p H範囲を示したものである 第 4図は本発明のピリ ミ ジンヌク レオシ ドホスホリラ 一ゼの至適温度および安定温度範囲を示したものである 第 5図は、 バチルス * ステアロザーモフィ ラス T H 6
— 2とブレビバクテリ ゥム · ァセチリカム AT 6— 7と を酵素源と して使用して 1一 S— D—リボフラノ シルー 1, 2 , 4一 ト リァゾールー 3—カルボキサミ ド (リバ ピリ ン) を製造した時の反応時間におけるリバピリ ンの 生成率を比較したものである。
発明を実施するための最良の形態 I ヌク レオシ ドホスホリラーゼを含有する酵素調製物 本発明の 「ヌク レオシ ドホスホリラーゼを含有する酵 素調製物」 (以下、 「酵素調製物」 と称する) とは、 プ リ ンヌク レオシ ドホスホリラーゼまたはピリ ミ ジンヌク レオシ ドホスホリラーゼの少なく とも一方、 好ま しく は 両方のヌク レオシ ドホスホリラーゼを含有するものを指 称する。
また、 「酵素の精製度合」 とは、 総蛋白量に占める酵 素蛋白量の割合を意味する。
本発明の酵素調製物は、 バチルス属に属する好熱菌、 具体的にはバチルス ♦ ァシ ドカルダリアス (Bacil lus acidocaldarius) ヽ ノくチノレス · シエ レエゲリ (Bacillus schlegeli ) 、 バチルス * ステアロザーモフ ィ ラス (Bacil lus stearotherniophi lus ) などの中等度好熱菌 に属する微生物のうち、 菌体単位重量当りのヌク レオシ ドホスホリラーゼ活性が高い微生物群の微生物 (以下、 本発明の微生物という) より調製することができる。
微生物を選定するためのヌク レオシ ドホスホリラーゼ
活性は、 例えば、 以下の値が一応の目安となる。
♦ プリ ンヌ ク レオシ ドホスホリ ラ一ゼ
1 O UZg湿菌体以上、 好ま しく は 1 2 U/g湿 菌体以上
· ピリ ミ ジンヌ ク レオシ ドホスホ リラーゼ
1 湿菌体以上、 好ま しく は 1 5 UZg湿 菌体以上
これらの 2つの条件のうち一方を满足するものは本発 明方法に使用する酵素調製物の調製源と して使用するこ とができ、 上記の 2つの条件を同時に満足するものは酵 素調製物の調製源として好適である。
そのような条件を満足する好適な微生物を具体的に例 示すれば、 バチルス · ステアロザー乇フィ ラス TH 6 一 2、 同 P— 21、 同 P— 23など (いずれもャマサ醤 油㈱敷地内の土壌より分離した土壌分離菌株) を例示す ることができる。 その菌株群の中の最も代表的な菌株で ある T H 6— 2株の菌学的性質を以下に示す。
H 6 - 2の菌学的性質 :
(Α) 形 態
① 細胞の形および大きさ
短桿状 (Rod ) 、 0. 6〜: L . 1 2〜7 111
② 胞子の有無 有
③ 胞子のうの膨化の有無 有
④ 細胞内の胞子の部位および大きさ
末端部または中央部、 0. 8 X 0. 8〜: L. 0 m ⑤ グラム染色性
グラムバリ アブル (培養初期はグラム陽性)
(B) 各培地での生育状態
① 肉汁寒天斜面培地
生育の様相 : 生育旺盛、 表面平滑、 不透明、 培地変 化なし
② 肉汁寒天平板培地
生育の様相 : 円形コロニー形成、 薄く広がる、 粘性 を示す、 不透明、 周縁波状
③ リ トマス · ミルク培地
生育せず
( C ) 生理的性質
① 酸素存在下での生育 : 生育する
② 酸素非存在下での生育 : 生育せず
③ カタラーゼ : 陽性
④ V— Pテス ト : 陰性
⑤ メチルレッ ドテス ト (pH in V-P broth): <pH6
⑥ 加水分解能 カゼイ ン : 陰性
ゼラチン : 陽性 デンプン : 陽性
⑦ クェン酸の利用 : 陽性
⑧ 硝酸塩の還元 : 陽性
⑨ イ ン ドールの生成 : 陰性
⑩ 塩化ナ ト リ ウムまたは
塩化力リ ゥムの要求性 : 陰性
Θ 糖質からの酸の生成
陽性 : グルコース、 ァラ ビノース、 キシロース、 フラク トース、 マル トース
陰性 : デンプン、 グリセロール、 ショ糖、 ラフィ ノース
© 各 p Hによる生育
6. 8で生育、 5. 7で生育せず
⑬ 塩化ナ ト リ ゥム存在下での生育
2 %N a C 1存在下: 生育する
5 %N a C 1存在下 : 生育せず
Θ 生育範囲
生育 P H範囲 : 6. 5〜9. 0
生育温度範囲 : 3 5〜6 5で
グルコース存在下での生育
グルコース 0. 5 %以上の存在下で生育せず これらの菌学的性質を Bergey 's Manual of Systematic Bacteriology (第 8版) の分類基準と照合したとこ ろ、 本分離菌はバチルス ♦ ステアロザーモフィ ラスに属 するものであることが判明し、 バチルス ♦ ステアロザー モフィ ラス TH 6— 2と命名した。 また P— 2 1、 P 一 23 も同じ菌学的性質を示した。 なお、 TH 6— 2は 工業技術院微生物工業技術研究所にブタぺス ト条約に基 づいて寄託されており、 受託番号として微ェ研条寄第
2 7 5 8号が与えられている。 この国際寄託は、 1989年 2月 4 日に上記寄託機関に国内寄託された微ェ研菌寄第 10526 号より 1990年 2月 16日に移管したものである。
T H 6— 2、 P— 2 1、 P— 2 3はいずれもバチルス ♦ ステアロザー乇フィ ラスに属するものであるが、 菌体 単位重量当りのヌク レオシ ドホスホリ ラーゼ活性が非常 に高く、 かつヌク レオシダーゼを実質的に含有していな い点で公知の微生物とは明確に区別される。 例えば、 ァ メ リ カ ン ♦ タイプ♦ カルチャー ' コ レク ショ ン ( ATCC) に保存されている公知のバチルス · ステアロザーモフィ ラスに属する微生物と、 上記本分離菌とを用いて菌体単 位重量当りのビリ ミ ジンヌク レオシ ドホスホリラ一ゼぉ よびプリ ンヌク レオシ ドホスホリ ラーゼ活性を比較検討 したところ、 その結果は第 1表の通りであった。 第 1表 から、 丁 H 6— 2、 P — 2 1および P— 2 3の菌体単位 重量当りのヌ ク レオシ ドホスホリ ラーゼ活性は、 従来公 知の菌株の保有する酵素活性と比較してプリ ンヌク レオ シ ドホスホリラーゼ活性で 2倍弱およびピリ ミ ジンヌク レオシ ドホスホリラーゼ活性で 6倍強程度それぞれの活 性が高いことがわかる。 具体的には、 上記の本分離菌は、 菌体単位重量当りのプリ ンヌ ク レオシ ドホスホリラーゼ 活性およびピリ ミ ジンヌク レオシ ドホスホリ ラーゼ活性 はそれぞれ 1 3〜 1 5 U / g湿菌体および 2 0 ~ 2 2 U / 湿菌体の値を示すものであった。
第 1 表
したがって、 本分離菌は前述したヌ ク レオシ ドホスホ リ ラーゼ活性の選定基準を十分に満足するものであり、 ヌク レオシ ドを製造するために使用する酵素調製物の調 製源として有用である。
このことを証明するために、 リバビリ ンを製造し、 目 的化合物の生成率を公知菌株と比較してみた。 その結果、 第 2表に示すように、 本発明微生物群に属する微生物を 使用した場合にはいずれも 9 0 %以上の生成率を示すの に対して、 公知の微生物は最高でも 4 0 %の生成率しか 示さず、 本発明の微生物群に属する微生物はヌク レオシ ドの製造のための酵素源と して極めて有用であることを 確認した。
第 2 表
リノ ピリンの賊率 (%) 使 用 微 生 物 く対 1, 2, 4 - トリァ ゾール- 3 -カルボキ サミ ド比 >
^9enJimS.W 丄 Jl一 b— 95. 0
"D つ 1 ヽ u
" CP— 23) 94. 1
•A i しし / y づ Q
· O
〃 " Q U Π Π U 30. 3
〃 丄 u丄 4 y 11. 7
// 1丄 Π u 1丄 o 44. 4
〃 12976 8. 0
〃 12978 43. 5
〃 12980 0
〃 15952 39. 0
〃 21365 37. 6
〃 29609 4. 1
なお、 上記の比較試験において、 微生物の菌体は後述 の実施例 1と同様にして調製し、 プリ ンヌク レオシ ドホ スホリラ一ゼ活性およびピリ ミ ジンヌク レオシ ドホスホ リ ラーゼ活性の測定は後述の力価の測定法に準じて行つ た。 また、 リバピリ ンは、 基質溶液 (4 O mM 1, 2, 4 - ト リァゾール - 3 - カルボキサミ ド、 60 m Mゥ リ ジン、 40 m Mリ ン酸ニ水素力 リ ゥムを含有する p H 6. 0の水溶液) 1 Omlに菌体重量をそろえた菌体懸濁 液 1 Oml (湿菌体として 200 nigを含有) を添加して 50てで 24時間攪拌することにより製造した。 上記反 応後、 反応液を遠心分離し、 上清を 50〜 1 00倍に希 釈して、 これを H P L C法 (カラム : YMC A
- 31 2 (㈱山村化学研究所製) 、 溶出剤 : 0. 1 5M リ ン酸ニ水素力リ ゥム溶液、 検出 : 220 n mの吸収) でリバピリ ンの生成量を測定した。
生成率は次式により求めた。 生成したリバビリ ンの濃度 (M)
生成率(¾) = X 100
使用した 1, 2, 4 - トリ ァーゾール - 3 -カルボキ サミ ドの濃度 (M) 本発明の酵素調製物は、 本発明の微生物群に属する微 生物を培養し、 培養して得られた菌体を使用目的に応じ た使用態様に適宜処理加工することにより調製すること ができる。
微生物を培養するための培地としては、 これらの微生 物が資化可能な炭素源および窒素源を適当量含有し、 必 要に応じて金属塩、 微量発育促進物質、 消泡剤などを添 加したものが使用される。 具体的には、 培地成分と して は糖類 (グルコース、 サッカロースなど) 、 天然炭水化 物 (糖蜜、 廃糖蜜、 澱粉、 麦、 ふすま、 米など) 、 アル コール類、 脂肪酸類、 炭化水素類など、 窒素源としては、 肉エキス、 酵母エキス、 大豆加水分解物、 カザミ ノ酸、 各種アミ ノ酸、 尿素など、 無機塩としては亜鉛、 鉄、 マ グネシゥム、 ナ ト リ ウム、 カルシウム、 カ リ ウムなどの 金属のりん酸塩、 塩酸塩、 硫酸塩など、 微量発育促進物 質としてはビタ ミ ン 8 丄、 ビタ ミ ン B 2、 ノ、 'ン トテン酸、 ピオチンなどが例示される。
培養は、 通常の液体培養法 (振澄培養、 通気攪拌培養、 静置培養、 連続培養など) によって行えばよい。
培養条件は、 微生物および培地の種類によって異なり、 特定することはできない。 通常は、 培養開始の p Hを 6 . 5〜 9 . 0に調整し、 約 3 5〜 6 5 °Cの温度条件下 で目的とする酵素活性が十分得られるまで、 具体的には 5〜 5 0時間程度培養する。
このようにして得られる生菌体を含有する培養液 (以 下、 培養物という) を用いて調製する酵素調製物の態様 は特に制限されるものではなく、 例えば、 微生物の培養 物自体、 培養物から通常の分離手段 (遠心分離、 沈澱分
- 1 1 -
離、 凝集分離、 洗浄など) によって分離された生菌体、 またはその菌体処理物を例示することができる。
生菌体の菌体処理物をさらに具体的に例示すれば、 生 菌体を機械的破壊 (ワーリ ング♦ プレンダ一、 フ レンチ ♦ プレス、 ホモジナイザー、 乳鉢などによる) 、 凍結融 解、 乾燥 (凍結乾燥、 風乾、 アセ ト ン乾燥などによる) 、 自己消化 ( トルエン、 酢酸ェチルなどの溶媒処理によ る) 、 酵素処理 (リ ゾチームなどの細胞壁溶解酵素によ る) 、 超音波処理、 浸透圧ショ ック法、 化学的処理 (塩 類溶液、 酸性溶液、 アルカ リ性溶液、 界面活性剤、 キレ — ト剤などによる) などの一般的処理法に従って処理し て得た生菌体の破壊物または生菌体の細胞壁もしく は Z および細胞膜を変性させたもの、 あるいは酵素活性を有 する画分を抽出し、 さ らに、 必要に応じて酵素活性を有 する抽出画分を一般的な酵素精製法 (塩析処理、 等電点 沈澱処理、 有機溶媒沈緞処理、 各種ク ロマ トグラフィ ー 処理、 透析処理などによる) に従って処理して本発明の 目的とする酵素活性を有する画分を分画するこ とによつ て得られる粗酵素または精製酵素を挙げることができる。
このような培養物、 生菌体および菌体処理物は固定化 処理を施さない遊離の状態で使用してもよく、 また包括 法、 架橋法、 吸着法など通常の方法により固定化処理を 施した固定化物として使用してもよい。
菌体処理物の一態様である精製酵索に関し、 具体的例
を挙げ説明すれば、 本発明微生物群に属するバチルス · ステアロザーモフィ ラス TH 6— 2より抽出精製して 得られたヌク レオシ ドホスホリラーゼは以下の酵素学的 性質を有する。
( A ) プリ ンヌク レオシ ドホスホリラーゼ
(1) 作 用
プリ ンヌ ク レオ シ ド + リ ン酸
^プリ ン塩基 +ペン トース - 1 - リ ン酸
本発明のプリ ンヌク レオシ ドホスホリラーゼは、 上記 の加リ ン酸分解反応を触媒する。 このため、 国際酵素分 類の E. C. 2. 4. 2, 1に属する。
(2) 基質特異性
各種のプリ ンヌク レオシ ドを基質に加リ ン酸分解反応 を行わせた結果を第 3表に示す。
9
第 3 表
基 質 塩基の生成量 相対活性
( n inol/lOfliin) (X) f 丁 J ンン 0. 1 5 5
2 - "才干ンァ "ノ ンン 0 0
3 - : r才キンァ: rノ シン 0 0 ノ し ノ ノ ノ ノ ン ノレ , ァー
0 0 ン イノ シン 2. 5 5 1 0 0
2 ' -デォキシィノ シン 2. 54 1 0 0
3 ' -デォキシィ ノ シン 0 0 グアノ シン 2. 1 5 84
2 ' -デォキシグアノ シン 2. 1 8 8 5
第 3表より、 本発明のプリ ンヌク レオシ ドホスホリラ ーゼは、 試験した範囲内においてはイノ シン、 2' - デ ォキシイノ シン、 グアノ シンおよび 2 ' - デォキシグァ ノ シンに特異的である。
(3) 至適 p Hおよび p H安定性
至適 p Hは p H 7〜8、 安定 p H範囲は p H 5〜 9で ある (第 1図参照) 。
(4) 至適温度および温度安定性
至適温度は 60〜80°C:、 安定温度範囲 60でまでで ある (第 2図参照) 。
(5) 分子量
S D S - ポアク リルア ミ ドゲル電気泳動法で測定した 分子量が約 45000である。 '
(6) 力価 (比活性)
80 %の酵素の精製度合で比活性が 400 (U/mg) 以上を示し、 90 %の酵素の精製度合で 450 (U/mg) を示す。
( B ) ピリ ミ ジンヌ ク レオシ ドホスホ リ ラーゼ
(1) 作 用
ピリ ミ ジンヌ ク レオシ ド + リ ン酸
^ピリ ミ ジン塩基 '+ペン トース - 1 - リ ン酸 本発明のピリ ミ ジンヌ ク レオシ ドホスホリ ラーゼは、 上記の加リ ン酸分解反応を触媒する。 このため、 国際酵 素分類の E. C. 2. 4. 2, 2に属する。
(2) 基質特異性
各種のピリ ミ ジンヌク レオシ ドを基質に加リ ン酸分解 反応を行わせた結果を第 4表に示す。
第 4 表
塩基の生成量 相対活性 ( (1 raol / lOniin) (X) ゥ リ ジン 1. 73 68
2 ' - デォキシゥ リ ジン 2. 55 1 00 ァラ ビノフラノ シルゥラ シ 0 0 ル シユー ドゥ リ ジン 0 - 0 サイ ク ロウ リ ジン 0 0 シチジン 0 0 一
2 ' - デォキシシチジン 0 0 リボフラノ シルチ ミ ン 0. 96 38 チ ミ ジン 1. 7 1 67
第 4表より、 本発明のピリ ミ ジンヌ ク レオシ ドホスホ リ ラーゼは、 試験した範囲内においてはゥ リ ジン、 2 ' - デォキシゥ リ ジン、 リ ボフラノ シルチ ミ ン、 チ ミ ジン に特異的である。
(3) 至適 p Hおよび p H安定性
至適 p Hは p H 7〜9、 安定 p H範囲は p H 5〜 9で ある (第 3図参照) 。
(4) 至適温度および温度安定性
至適温度は 60〜70で、 安定温度範囲 60°Cまでで ある (第 4図参照) 。
(5) 分子量
S D S - ポリアク リルアミ ド電気泳動法で測定した分 子量が約 31000である。
(6) 力価 (比活性)
80%の酵素の精製度合で比活性が 250 (U/ing) 以上を示し、 90 %の酵素の精製度合で 297 (U/mg) を示す。
なお、 上記の酵素的性質は以下に示す方法で測定した。 ① 力価の測定 、
プリ ンヌ ク レオシ ドホス リラーゼ活性 ― 基質溶液 (20 mMイノ シンおよび 0. 1Mリ ン酸ニ 水素カ リ ウムを含有する p H 8. 0の水溶液) 1. 0ml に酵素溶液 (精製酵素として 1 gを含有する 50 mM 齚酸緩衝液 (p H 6. 0) ) 20 £ を加えて 50eCで 1 0分間反応させた後、 塩酸を最終濃度で 0. I Nにな るように加えて反応停止させるとともに 0でで 10分間 冷却する。 次に、 反応液を遠心分離し、 得られた上清を H P L C法 (カラム : YMC A— 31 2 (㈱山村化学 研究所製) 、 溶出剤 : ァセ トニト リル 5. 0%含有 20 mMト リス -塩酸緩衝液 (p H 7. 5) 、 検出 : 260 n m) で生成するヒポキサンチンを定量する。 1分間に
一 2
1 μ mol のヒポキサンチンを生成する酵素量を 1単位
( ru」 ) とする。
ピリ ミ ジンヌク レオシ ドホスホリラーゼ活性
基質溶液中のイノ シンの代わりにゥリ ジンを使用し、 H P L C法でゥラシルを定量する以外は上記のプリ ンヌ ク レオシ ドホスホリラーゼ活性の測定法と同様にして行 う。 1分間に 1 mol のゥラシルを生成する酵素量を 1 単位とする。
② 基質特異性
基質溶液として 1 0 mMの各種ヌク レオシ ドおよび 50 mMのリ ン酸二水素カ リ ウムを含有する p H 8. 0 の水溶液を使用し、 50てで 1 0分間反応させ、 反応後、 H P L C法で各種ヌク レオシ ドの塩基を定量する以外は プリ ンヌク レオシ ドホスホリラーゼ活性の測定法と同様 にして行う。
③ 至適 p H
ヌク レオシ ド ( 20 m Mのイ ノ シンまたはゥ リ ジン) および 0. 1 Mのリ ン酸ニ水素力 リ ウムを溶解させ、 希 塩酸または希水酸化ナト リ ゥムの各水溶液で p H4〜 1 0に調整した基質溶液を使用した以外はプリ ンヌク レ オシ ドホスホリラーゼ活性の測定法と同様にして行う。
④ 安定 P H
0. 2Mの酢酸緩衝液 (p H 3. 5〜6) およびト リ ス -塩酸緩衝液 (p H 7〜9) 中で 37でで 16時間保
持した酵素溶液を使用した以外は、 プリ ンヌク レオシ ド ホスホリ ラーゼ活性またはピリ ミ ジンヌク レオシ ドホス ホリラーゼ活性の測定法と同様にして行う。
⑤ 至適温度
反応を 3 0〜8 0での各温度で行う以外はプリ ンヌク レオシ ドホスホリラーゼ活性またはピリ ミ ジンヌク レオ シ ドホスホリラーゼ活性の測定法と同様にして行う。
⑥ 安定温度範囲
3 0〜8 0でで 1 5分間加熱した酵素溶液を使用する 以外は、 プリ ンヌク レオシ ドホスホリラーゼ活性または ピリ ミ ジンヌ ク レオシ ドホスホリ ラ一ゼ活性の測定法と 同様にして行う。
上述の本発明微生物群中の微生物から得られた酵素の 特徵は、 比較的高温に至適温度と安定温度範囲を持ち、 かつ比活性が著しく高いところにある。 したがって、 こ のような特徵を有する酵素を含有する調製物をヌ ク レオ シ ドの製造に使用すれば、 反応に使用する酵素調製物の 量が少なくてすみ、 わずかな酵素量でヌク レオシ ドを収 率よく製造することができる。 さらに、 反応を比較的高 温 (4 5で以上) で行えるので雑菌微生物による汚染を 防止することもできる。
Π ヌ ク レオシ ドの製造
上述の酵素調製物を用いるヌク レオシ ドの製造は、 反 応容器内において後述の塩基供与体、 糖残基供与体およ
びリ ン酸供与体と酵素調製物を接触反応させることによ り実施することができる。
① 塩基供与体
本発明方法で使用する塩基供与体は反応系に塩基を供 耠する ものである。 使用する塩基供与体は目的とするヌ ク レオシ ドに応じて選択すればよ く 、 ヌ ク レオシ ドホス ホ リ ラ一ゼの作用によって糖残基供与体の糖部分と N - グリ コシ ド結合を形成しう る複素環塩基またはその誘導 体を例示することができる。 複素環塩基の具体例は、 例 えば、 プリ ンおよびその誘導体、 ピリ ミ ジンおよびその 誘導体、 ト リァゾールおよびその誘導体、 イ ミ ダゾール およびその誘導体、 デァザプリ ンおよびその誘導体、 ァ ザプリ ンおよびその誘導体、 ァザピリ ミ ジンおよびその 誘導体またはピリ ジンおよびその誘導体などである。 ま た、 塩基供与体と しては、 複素環塩基そのものはもとよ り、 該複素環塩基を有するヌ ク レオシ ド、 ヌ ク レオチ ド などであってもよい。
具体的には、 プリ ン塩基の 1位、 2位、 6位または 8 位の 1 または 2以上の位置に置換基 (例えば、 ア ミ ノ基、 置換ァ ミ ノ基、 水酸基、 ォキソ基、 メルカプト基、 ァシ ル基、 アルキル基、 置換アルキル基、 アルコキシル基、 ハロゲノ原子など) を有するプリ ン誘導体、 例えばアデ ニン、 グァニン、 ヒポキサンチン、 キサンチン、 6 - メ ルカプ トプリ ン、 6 - チォグァニン、 Ν σ - アルキルも
しく はァシルアデニン、 2 - アルコキシアデニン、 2 - チオアデニン、 2 , 6 - ジァ ミ ノプリ ンなど ; ピリ ミ ジ ンの 2位、 4位または 5位の 1 または 2以上の位置に前 記と同様の置換基を有する ピリ ミ ジン誘導体、 例えば、 シ ト シン、 ゥラ シル、 チ ミ ン、 5 - ノ、ロゲノ ウラ シル ( 5 - フルォロウラ シル、 5 - ョ一 ドウラ シルなど) 、 5 - ハロゲノ シ ト シン ( 5 - フルォロシ ト シンなど) 、 5 - ト リハロゲノメチルゥラ シル ( 5 - ト リ フルォロメ チルゥラ シルなど) 、 2 - チオシ ト シン、 4 - チォゥラ シル、 N 4 - ァシルシ ト シン、 5 - ハロゲノ ビ二ルゥラ シルなど ; 1 , 2, 4 - ト リァゾールの 3位に置換基を 有する 1, 2 , 4 - ト リ ァゾール誘導体、 例えば 1 , 2 , 4 - ト リァゾール - 3 - カルボキサミ ド、 1 , 2, 4 - ト リァゾ一ル - 3 - カルボン酸、 1 , 2, 4 - ト リァゾ ール - 3 - カルボン酸アルキルエステルなど ; ィ ミ ダゾ ールの 4位および 5位に置換基を有するィ ミ ダゾール誘 導体、 例えば 5 - ァミ ノ - 4 - イ ミ ダゾールカルボキサ ミ ド、 4 - カルバモイノレ - イ ミ ダゾリ ゥム - 5 - ォレ一 ト、 ベンズィ ミ ダゾールなど ; プリ ンの 1位、 3位も し く は 7位におけるデァザプリ ン誘導体、 例えば 1 - デァ ザアデニン、 3 - デァザアデ二ン、 3 - デァザグァニン、 7 - デァザアデニン、 7 - デァザグァニンも しく はこれ らに前記プリ ン誘導体と同様の置換基を有する化合物な ど ; 8 - ァザアデニン、 7 - デァザ - 8 - ァザヒポキサ
ンチン (ァロプリ ノール) などのァザプリ ン誘導体 ; 5 - ァザチ ミ ン、 5 - ァザシ ト シン、 6 - ァザゥラ シルな どのァザピリ ミ ジン誘導体 ; 3 - デァザゥラ シル、 ニコ チン酸、 ニコチン酸ァミ ドなどのピリ ジン誘導体などが 例示される。
② 糖残基供与体
糖残基供与体は反応系に糖残基を供給する ものである。 すなわち、 糖残基供与体と しては目的とするヌ ク レオシ ドに応じて選択すればよく 、 ヌ ク レオシ ドホスホ リラー ゼの作用により塩基供与体の塩基部分と N - グリ コシ ド 結合を形成しう る リ ボース化合物、 デォキシリボ一ス化 合物を例示する ことができる。 リボース化合物と しては、 イ ノ シン、 グアノ シン、 ゥ リ ジン、 リ ボフラノ シルチ ミ ンなどのリ ボヌ ク レオシ ドおよびリ ボース - 1 - リ ン酸 を、 デォキシ リ ボース化合物と しては、 2 ' - デォキ イノ シン、 2 ' - デォキシグアノ シン、 2 ' - デォキシ ゥ リ ジン、 チ ミ ジン、 2 ' , 3 ' - ジデォキシイ ノ シン、 2 ' , 3 ' - ジデォキシグアノ シ ン、 2 ' , 3 ' - ジデ ォキシゥ リ ジン、 3 ' - デォキシチミ ジンなどのデォキ シヌク レオシ ド、 および 2 - デォキシリボース - 1 - リ ン酸、 2 , 3 - ジデォキシリボース - 1 - リ ン酸などを それぞれ例示することができる。
また、 酵素調製物として精製酵素以外のものを使用す る場合には、 上記の糖残基供与体に加えて、 さ らにアデ
ノ シン、 シチジン、 キサン ト シンなどのリボース化合物、 および 2 ' - デォキシアデノ シン、 2 ' - デォキシシチ ジン、 2 ' - デォキシキサン トシンなどのデォキシリボ —ス化合物も使用しうる可能性を有する。
③ リ ン酸供与体
リ ン酸供与体としては、 反応液中でリ ン酸イオンに解 離しうるもののいずれを用いてもよく、 例えば遊離型の リ ン酸またはリ ン酸塩 (例えば、 ナ ト リ ウム、 カリ ウム などのアルカリ金属塩、 アンモニゥム塩など) が好適に 使用される。 また、 リ ン酸供与体としては、 反応液中で リ ン酸イオンを遊離しうる系、 例えば各種リ ン酸エステ ル誘導体とホスファターゼの組合せ、 ヌク レオチ ドとヌ ク レオチダーゼの組合せなどを利用することもできる。 ④ 反応条件
反応液としては、 塩基供与体、 糖残基供与体およびリ ン酸供与体が水または緩衝液に溶解または懸濁したもの を用い、 この反応液と前述の酵素調製物と接触させて、 使用した塩基供与体に対応するヌク レオシ ドを酵素的に 製造する。
塩基供与体、 糖残基供与体、 リ ン酸供与体の使用濃度 は、 0 . 1〜 5 0 0 m Mの範囲から適宜選定すればよい。 反応は通常、 3 5〜8 CTCの範囲で効率よく進行する が、 特に 4 0〜 7 0て程度の反応温度が好ま しい。 反応 温度が 3 5で以下のときは反応速度が遅く、 反応効率が
よく ない。 また、 80 °C以上の反応温度ではヌク レオシ ドホスホリラーゼ活性を低下させるおそれがある。
反応液の p Hは通常 p H 5〜 1 0、 好ま しく は p H 5 〜 9の範囲に保たれればよい。 反応中に p Hが変動する ときは酸またはアルカ リを用いて好ま しい p H範囲に補 正すればよい。
反応後、 反応液と酵素組成物とを分離し、 目的とする ヌク レオシ ドを分離精製工程に供する。
生成したヌク レオシ ドは公知の方法またはこれを応用 した方法によって分離精製することができる。 例えば、 イオン交換クロマ トグラフィ ー、 吸着ク ロマ トグラフィ ―、 分配ク口マ トグラフィ ー、 ゲル^過法など各種のク 口マ トグラフィ ー、 向流分配、 向流抽出など二液相間の 分配を利用する方法、 濃縮、 冷却、 有機溶媒添加など溶 解度の差を利用する方法などのヌ ク レオシ ドの分離精製 で使用されている一般的な分離精製法を単独で、 あるい は適宜に組合せて行えばよい。
〔実施例〕
以下、 実施例および比較例によって本発明を具体的に 説明する。
実施例 1
薛母エキス(Difco社製) 0. 5%、 ペプ ト ン (D co 社製) 1. 0%、 肉エキス (Difco 社製) 0. 7%およ び食塩 0. 3%を含む殺菌済みの培地 (p H 7. 0 )
500 mlにバチルス ♦ ステアロザーモフィ ラス TH 6— 2 (微ェ研条寄第 27 58号) を植菌し、 5 TCで 18 時間振盪培養した。
得られた培養液を遠心分離して菌体を集菌し、 洗浄後、 殺菌水を加えて 250mlの菌体懸濁液を調製した。 この 菌体懸濁液を 1 0mlずつ分取し、 40 mM塩基供与体、 40 mM糖残基供与体および 40 m Mリ ン酸ニ水素力 リ ゥムを含有する基質溶液 ( p H 6. 0 ) 1 0 mlを添加し て 40〜60でで、 攪拌条件下反応させた。
反応後、 各種ヌ ク レオシ ドの生成量は、 高速液体ク 口 マ トグラフィ ー (カラム : YMC A— 31 2 (㈱山村 化学研究所製) 、 溶出剤 : 2. 5~5%ァセ トニ 卜 リル 含有 2 OmMト リス塩酸緩衝液 (p H 7. 5) 、 検出 : 250〜 260 n mにおける吸収) を用いて測定した。 ヌク レオシ ドの生成率は下記式により求めた。
生成したヌクレオシドの濃度 (M) 生成率 ) X 100 使用した塩基供与体の濃度 (M) その結果を第 5表に示す,
第 5 表
* ±t /It iH. (± 成 物 反 応 条 件 生成率 (%)
•uni^l レ^ ί^Ί * υ ^ο- レ、 rr
温度 CO 時間 (hr) <対塩腿 > アデニン ゥ リ ジ ン ア デ ノ シ ン 40 24 61
// 50 2 45
// 〃 〃 50 24 82
〃 〃 60 2 60
〃 〃 60 24 85 アデニ ン 2' -デ才キシゥリジン 2' -デォキシアデノシン 40 2 25
〃 〃 〃 50 2 55
〃 〃 60 2 63
〃 〃 〃 60 4 70
〃 〃 〃 60 8 78 Ί 、
// 2', 3'-ジデ才キシゥリジン 2*.3 '-ジデォキシアデノシン 55 24 151) チ ミ ン ゥ リ ジ ン リボフラノシルチミン 40 2 48
〃 // 〃 50 2 58
〃 // 〃 60 2 60
〃 〃 60 24 65 チ ミ ン 2' -デ才キシゥリジン ナ ン ノ 40 2 23
〃 // 〃 50 2 55
// // 〃 60 ί 2 66
// // 〃 60 8 67
1 ) 対糖觀供与体比で示す。
実施例 2
塩基供与体としてァロプリノール 2 0 mM、 糖残基供 与体としてゥリ ジン 3 0 mMおよびリ ン酸二水素力リゥ ム 7 5 mMを含有する基質溶液 ( p H 6. 0 ) を用いて 実施例 1 と同様にして 60 °Cで 8時間反応させてアルプ リノールのリボフラノ シル体を 9 5 %の収率 (対アルプ リ ノール比) で製造した。
実施例 3
塩基供与体 (ァロプリノール、 ベンズィ ミ ダゾール、 6 - メルカプトプリ ン、 プリ ン、 6 - チォグァニン) 2 0 mM. 糖残基供与体 (ゥリ ジン、 2 ' - デォキシゥ リ ジン) 3 0 m Mおよびリ ン酸ニ水素力 リ ウム 3 0 m M を用いて実施例 1 と同様にして 5 0 °Cで 8時間反応させ„ て各種塩基供与体を塩基として保有する リ ボフラノ シル 体または 2' - デォキシリボフラノ シル体を製造した。 その結果を第 6表に示す。
第 6 表 塩 基 供 与 体 生成率 (%) 糖残基供与体
<対塩基比 > ァロプリ ノール ゥ リ ジン 80
〃 2 ' - デォキ 97
シゥ リ ジン ベンズイ ミ ダゾ一ル ゥ リ ジン 75
2 ' - デォキ 86 シゥ リ ジン
6 - メルカプ トプリ ン ゥ リ ジン 50
〃 2' - デォキ 43
シゥ リ ジン
プリ ン ゥ リ ジン 94
〃 2' - デォキ 65
シゥ リ ジン
6 - チォグァニン ゥ リ ジン 9
〃 2 ' - デォキ 65
シゥ リ ジン
実施例 4
塩基供与体として 40 mM 1, 2, 4 - ト リァゾ一 ル - 3 - カルボキサミ ド (以下、 「 卜 リ アゾール」 とい う) 、 糖残基供与体として 40 mMのゥ リ ジン、 イ ノ シ ン、 シチジン、 アデノ シンも しく はグアノ シン、
40 mMリ ン酸ニ水素力リ ウムを含有する基質溶液
(p H 6. 0) を用いて実施例 1と同様にしてリバピリ
4 一
ンを製造した。 その結果を第 7表に示す,
反 応 条 件 生 成 率 (%) 糖残基供与体 温 度 時 間 (対ト リ アゾール
(°C) (hr) 比)
ゥ リ ジン 60 4 94. 2 イノ シン 67 48 83. 6 シチジン 50 24 92. 9 アデノ シン 67 24 72. 7 グアノ シン 67 24 98. 4 なお、 シチジン、 アデノ シンに関しては本発明のヌク レオシ ドホスホリラ一ゼは基質として認識しないため、 共存するデアミ ナーゼによりそれぞれゥリ ジン、 イノ シ ンに変換された後、 基質と して利用されていると考えら れる。
実施例 5
塩基供与体として ト リァゾール 40 mM、 糖残基供与 体としてイノ シン 60mM、 およびリ ン酸ニ水素力リウ ム 40 mMを含有する基質'溶液 (p H 6. 0) を用い、 実施例 1と同様に各反応-温度 (40〜70°C) で 24時 間反応させてリバビリ ンを製造した。 その結果を第 8表 に示す。
5 一
第 8 表
反 応 温 度 40 50 60 63 65 67 70
(°C) 生成率( !¾ )
(対ト リァ 37.0 58.0 71.7 73.7 76.0 78.7 77.9 ゾール比)
実施例 6
実施例 1と同様に培養して得られた培養物を遠心分離 して生菌体を得た。 次に、 生菌体 2. を 0. 1 Mト リス塩酸緩衝液 (p H 7. 0) 1. Omlに懸濁し、 別に 作製した光硬化性樹脂 (E NT— 2000 ; 関西ペイ ン ト㈱製) 8. 0 gに光重合開始剤としてべンゾイ ンェチ ルエーテル 0. 08 gを加えた樹脂液に上記菌体懸濁液 を添加し、 十分に混合した後、 透明フ ィ ルム上に流し込 み、 360 n m前後の光線をフ ィ ルム面の表裏に同時に 3分間照射して光重合物を得た。 この固定化物より菌体量と して 0. 2 gを含む部分を 取り、 細断して 40 m Mト リァゾ一ル、 40 m Mゥ リ ジ ンおよび 60 mMリ ン酸ニ水素力 リ ゥムを含む基質溶液 (p H 6. 0) 1 Omlに上記固定化物を投入し、 6◦で で 8時間攪拌しながら リバピリ ンを製造した。
前述の H P L C法で生成率を測定した結杲、 リバピリ ンの生成率は対 ト リアゾール比で 90 %であった。
さらに、 この反応を 1 0回連続して行ったが、 リバビ リ ンの生成率は 9 0 %を維持し、 酵素活性の低下は見ら れ 力、つた。
実施例 7
実施例 1 と同様にして得られた培養物に ト リァゾール、 ゥリ ジンまたはィノ シン、 リ ン酸ニ水素力 リ ゥムをそれ ぞれ最終濃度で 4 0 mMになるように加え、 5 0 °C (ゥ リ ジンを用いた場合) または 6 5 °C (イノ シンを用いた 場合) でさらに 24時間振盪培養を行った。 培養後、 遠 心上清を H P L C法により リバビリ ンの生成率を測定し た結果、 ゥ リ ジンを用いた場合のリバピリ ンの生成率は 対ト リアゾール比で 9 1. 9 %、 イノ シンを用いた場合 は 6 5, 9 %の生成率であった。
実施例 8
精製酵素の調製
バチルス · ステアロザー乇フィ ラス T H 6— 2をブ ィ ヨ ンスラ ン トよりペプ ト ン 1. 0 %、 肉汁 0. Ί %、 酵母エキス 0. 5 %、 食塩 0. 3 %を含み p H 7. 2に 調整した培地 1 Omlを入れた大型試験管に植菌し、 5 0 でで一夜培養した。 得られた培養物を同組成、 同 p Hの 培地 3 0 mlを含む 3 0 0 ml容積のフラスコに移し、 5 0 で 8時間培養し、 これを種培養と して全量を上記培地 3 S を含む 5£ 容のジャー ♦ ファーメ ンターに加え、 5 0 、 回転数 3 5 0 r.p.i, 通気量 1. O v.v.n の条
件にて 18時間培養した。 こう して得られた培養液から 遠心分離により約 30 gの湿菌体を得、 これを 1. 5ΰ の 0. 1 % トライ ト ン X— 1 00 (シダマ社製) 、
5 m M E D T Aを含む 50 m Mト リ ス -塩酸緩衝液 ( p H 7. 2) に懸濁し、 7 5 Omgのリ ゾチーム (シグ マ社製) を加え、 37 に 1時間保持した。 溶菌液を 8, 000 r. p.m.にて遠心分離し、 菌体残渣を除去した 後、 2 N塩酸を加えて p H 6. 0に調整し、 50 にて 5分間加熱処理し、 8, 000 r.p.m.にて遠心分離して 上清を粗酵素液として得た。
この粗酵素液を硫酸ァンモニゥムを用いて塩析による 分画を行い、 40%— 90%飽和で得られた蛋白沈緞を 50 mM酢酸 -酢酸ナト リ ウム緩衝液 (p H 6, 0) に 溶解させ、 大量の同緩衝液に対して一夜透折し、 得られ た内液を遠心分離して透折中に生成した沈澱を除去した t 上清を上記の酢酸緩衝液 (以下バッファー Aと記す) で 平衡化した D E A E トヨパール (東ソ一㈱製) カラム
(2. 2 X 60 cm) に通し、 吸着した蛋白を 0〜 0. 5 M食塩のリニアグラジェン ト法 (バッファ一 A使用) で 溶出し、 プリ ンヌク レオシ ドホスホリラーゼ画分と ピリ ミ ジンヌク レオシ ドホスホリラ一ゼ画分をそれぞれ回収 した。 それぞれの活性画分をバッファー Aに対して透析 後、 25ml容注射筒 (テルモ赖製) に充填した 2 Oml D E A E トョパール樹脂を用いて上記と同じ操作により
- 3 S -
カラムクロマ トグラフィ ーを行い、 それぞれの活性画分 を回収した。 次にこれらの活性画分をそれぞれバッファ 一 Aで平衡化した トヨパール HW— 5 5 S (東ソー眯製) カラム ( 2, 4 X 8 0 cm) を用いてゲル-?戸過して両醇素 をほぼ均一な精製標品として回収した。
両酵素の精製過程での活性画分の蛋白量、 総活性およ び精製度合を第 9表に示す。
なお、 精製度合は、 S D S—ポリアク リルア ミ ドゲル 電気泳動法により得られた泳動パ夕一ンをデンシ トメ一 ターを用いて各バン ドの相対割合を測定する方法によつ た。
笫 9 表
Φ ¾白 Sは 608 Omgである。 »蛋白量は 377 Omgである <
比較例 1
ブレビパクテリ ゥム ♦ ァセチリ カム A T 6— 7 (A T C C 3 9 3 1 1 ) およびバチルス ♦ ステアロザ 一モフィ ラス T H 6— 2の各スラ ン トより培地 (ぺプ ト ン 1 %、 肉エキス 0. 7 %、 食塩 0. 3 %、 酵母ェキ ス 0. 5 %含有、 p H 7. 2) 1 0mlを含む大型試験管 植菌し、 それぞれ 28。C (A T 6— 7の場合) および 5 0 °C (T H 6— 2の場合) で 1 8時間振盪培養した。 培養後、 それぞれの培養液を遠心分離して菌体を分離し た。 洗浄後、 同湿重量の菌体をそれぞれ 1 0 mlの脱ィォ ン水に懸濁した。
この菌体懸濁液それぞれに 0. 4 m M ト リアゾール、 0. 4 m Mゥリ ジンおよび 0. 4 m Mリ ン酸ニ水素力リ ゥムを含有する基質溶液 (A T 6— 7の場合は p H 7. ◦、 T H 6— 2の場合は p H 6. ひに調整) 1 0 ml を添加し、 密閉系で 4 5 °Cまたは 6 5 °Cで攪拌しながら 反応させ、 定期的にサンプリ ングして前述の H P L C法 にてリバピリ ンの生成率を測定した。
その結果を第 5図に示す。 第 5図から明らかなように、 本発明の微生物から調製した酵素調製物を用いた場合、 従来、 極めて優れた酵素'調製源であった A T 6— 7より もさらに短時間に目的化合物を製造することができ、 酵 素調製物の使用量も少量ですませることができることが 明らかとなった。
以上のように、 本発明のヌ ク レオシ ドホスホリラーゼ を含有する酵素調製物は、 比活性が高く 、 耐熱性のある ヌク レオシ ドホスホリラ一ゼを多量に含有し、 菌体単位 重量当りのヌク レオシ ドホスホリ ラーゼ活性が高いバチ ルス属の好熱菌に属する微生物群の 1種もしく は 2種以 上の微生物の菌体に由来するものであり、 このような酵 素調製物をヌク レオシ ドの製造に使用すれば、 以下の特 徴を有し、 実用性に富んだ極めて有用な方法である。
① 比活性の高いヌク レオシ ドホスホリ ラーゼを多量 に含有しており、 ヌク レオシ ドの製造に使用した場合に は少量の酵素量で収率よく ヌ ク レオシ ドを製造すること ができる。
② 至適温度および安定温度範囲が比較的高温域にあ るヌク レオシ ドホスホリ ラーゼを含有している。 このた め、 反応を高温で行う ことができ、 雑菌の汚染による酵 素の失活、 反応生成物の分解等を抑制することができる。
③ ヌ ク レオシ ドホスホリラーゼと してプリ ンヌク レ オシ ドホスホリラ一ゼとピリ ミ ジンヌ ク レオシ ドホスホ リラーゼの両方の酵素を含有する調製物を得ることもで き、 このような調製物をヌク レオシ ド製造に使用すれば、 例えば下記の反応式に示されたごとく、 2つの酵素が共 同して作用するため、 1種類のヌ ク レオシ ドホスホリ ラ ーゼしか含有しない酵素調製物と比較して 2倍以上の速 度でヌク レオシ ドを製造することができる。
(プリ ンヌク レオシ
ドホスホリ ラーゼ)
1
糖残基供与体 -> 糖残基供与体
(プリ ンヌ ク の糖部分
レオシ ド)
プリ ン塩基
(ピリ ミ ジンヌク レオ
シ ドホスホリラ一ゼ)
1
- ピリ ミ ジ ンヌ ク レオ シ ド 个 - -:リ ミ ジン塩基 また、 本発明の微生物は比較的高温で生育して生育速 度も速く、 培養して得られた菌体には前述のようなヌク レオシ ドの製造に適した酵素を多量に含有しているため ヌク レオシ ド製造に使用するための酵素調製物またはそ の調製源と して極めて有用である。
さらに、 本発明の酵素調製物として微生物の培養物を 用いれば菌体の自己消化を防止することもできる。
また、 上記本発明の微生物から得られるヌク レオシ ド ホスホリラーゼは、 高い比活性を有し、 かつ比較的高温 域に至適温度と安定温度範囲を有するという特徴から公 知のヌク レオシ ドホスホリラーゼとは明確に区別される ものである。 また、 このような酵素をヌ ク レオシ ドの製 造に使用すれば、 上述の①および②の効果を有する。 ま た、 本発明のプリ ンヌク レオシ ドホスホリラ一ゼとピリ
ミ ジンヌ ク レオシ ドホスホリ ラ一ゼの両方の酵素を使用 すれば、 当然上述の③の効果を奏する。
産業上の利用可能性
本発明のヌ ク レオシ ドの製造法は、 バチルス属の好熱 菌に属す比活性が高く、 耐熱性のあるヌク レオシ ドホス ホリラ一ゼを大量含有し、 菌体単位重量当りのヌク レオ シ ドホスホリ ラーゼ活性の高い微生物群の微生物菌体に 由来する酵素調製物をヌク レオシ ド製造のための酵素源 として使用しており、 わずかな酵素量で収率よく 目的と するヌク レオシ ドを製造することができ、 極めて実用的 な方法である。