JPWO1998035035A1 - 新規マウスcxcケモカインレセプター - Google Patents
新規マウスcxcケモカインレセプターInfo
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Abstract
(57)【要約】
本発明は、配列表の配列番号:17に記載のアミノ酸配列の全部又は一部からなるポリペプチド、又は該ポリペプチドを含むポリペプチドであって、マウスPBSF/SDF-1と結合可能なレセプター活性を有するポリペプチドをコードするDNA;該DNAによりコードされるポリペプチドであって、マウスPBSF/SDF-1と結合可能なレセプター活性を有するポリペプチド;該ポリペプチド及びヒトCD4タンパク質を発現する細胞;並びに該細胞を用いることを特徴とするAIDS発症阻害剤やHIV−1感染阻害剤等をスクリーニングする方法に関する。本発明により、AIDSの治療薬及びHIV−1の感染の作用機序等の研究に有用な、新規なマウスCXCケモカインレセプター遺伝子や、HIV−1感染阻害剤のスクリーニング方法等が提供される。
Description
新規マウスCXCケモカインレセプター
技術分野
本発明は、新規マウスCXCケモカインレセプター、及びマウスケモカインレ
セプター遺伝子に関する。さらに詳しくは、該遺伝子にコードされるポリペプチ
ド、該遺伝子を含有する発現ベクター、該発現ベクターを導入した形質転換体、
前記ポリペプチドに対する単クローン抗体に関する。さらには前記形質転換体を
用いる前記ポリペプチドの生産方法に関する。さらには、ケモカインのアゴニス
ト又はアンタゴニストのスクリーニング方法、及びAIDS発症阻害剤又はHI
V−1感染阻害剤のスクリーニング方法に関する。
背景技術
細菌またはウイルスによる感染、物理的または化学的な外傷、自己免疫疾患、
アレルギー疾患などが原因で組織障害が起こると、発赤、浮腫、発熱、疼痛など
の兆候を伴う炎症反応が惹起され、炎症局所に末梢血白血球の集積および浸潤が
観察される。白血球は、疾患によって炎症部位に浸出する種類が異なっている。
通常の細菌感染、免疫複合体の沈着、外傷などの急性炎症では主に好中球が、結
核菌感染、チフス菌感染、および遅延型過敏症では主に単球が、ウイルス感染で
は主にリンパ球が集積および浸潤し、そして好酸球および好塩基球は即時型アレ
ルギーまたは寄生虫感染に伴って浸出する(Baggioloni,M.ら、Immunol.Today
,15,127-133(1994)。近年、遊走する白血球に対してある程度の選択性を有し
、特徴的な4つのシステイン残基を有するポリペプチドの走化因子が発見された
。これらは、アミノ酸配列に相同性があり、生物活性にも関連性のあるファミリ
ーであるため、ケモカイン(Chemokine;Chemoattractant and cytokine activit
y)と命名されている(Lindley,I.J.D.ら、Immnunol.Today,14-24(1993))。
ケモカインの4つのシステイン残基は、第1と第3の残基間および第2と第4
の残基間でそれぞれジスルフィド結合している。第1と第2とのシステイン残基
間に別のアミノ酸を1つ含むか否かで生物活性に特徴が認められるので、それぞ
れのサブファミリーをCXCケモカインおよびCCケモカインと呼んで区別して
いる(Baggioloni,M.ら、Adv.Immunol.,55,97-179(1994))。
これまでに発見されたCXCケモカインは、PBSF/SDF-1、IL-8(Yoshimura,T.
ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.84,9233-9237(1987)),NAP-2(Walz,A,ら、
Biochem.Biophys.Res.Commun.,159,969-975(1989)),NAP-4,GRO α(Richmo
ndo,A.ら、J.Cell.Biochem.,36,185-198(1988)),GRO β(Haskill,S.ら、P
roc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87,77732-7736(1990)),GRO γ(Haskil,S.ら
、(1990)前出)、GCP-2(Proos t,P.ら、J.Immunol.,150,1000-1010(1993),E
NA-78(Wayz,A.ら、J.Exp.Med.,174,1355-1362(1991)),PF-4(Deuel,T.F
.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.74,2256-2258(1977))、ヒトCXCR4/fu
sin/HUMSTSR(Feng,Y.ら、Science,272.872-877(1996))、及びIP-10(Dewald,B.
ら、Immunol,Lett.,32,81-84(1992)である。
そしてCCケモカインは、MCP-1((Yoshimura,T.ら、J.Immunol.,142,195
6-1962(1989),MCP-2(Chang,H.C.ら、Int.Immunol.,1,388-397(1989)),MCP
-3(Van Damme,J.ら、J.Exp.Med.,176,59-65(1992)),MIP-1 α(Obaku,K.
ら、J.Biochem.,99,885-894(1986)),MIP-1β(Lipes,M.A.ら、Proc.Natl
.Acad.Sci.U.S.A.,85,9704-9708(1988)),RANTES(Schall,T.ら、J.Imm
unol.,141,1018-1025(1988),I-309(Miller,M.D.ら、J.Immunol.,143,290
7-2916(1989))およびエオタキシン(Jose,P.ら、J.Exp.Med.,179,881-887(1
994))である。
ほとんどのCXCケモカインは好中球を遊走させて単球を遊走させない。また
、ほとんどのCCケモカインは単球を遊走させて好中球を遊走させない。また、
他の白血球である好酸球、好塩基球、リンパ球については、それぞれ一部のCX
CおよびCCケモカインに遊走活性が報告されている。ヒトリンパ球の遊走活性
としては、CCケモカインのRANTES、MIP-1α、MCP-1、そしてCXCケモカイン
であるIL-8において認められているが、いずれもリンパ球に特異的な走化因子で
はない。
マウスPBSF/SDF-1は、元来マウス骨髄間質細胞株PA6より分泌されるマウスB
前駆細胞増殖促進因子として同定されたCXCケモカインであり、そのアミノ酸
配列も報告されている(図1)(Nagasawa,T.らProc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,9
1,2305-2309(1994))。また最近ヒトTリンパ球に対しても強い遊走活性をもつ
ことが明らかとなっている(Bleul,C.ら、J.Exp.Med.,184,1101-1110)。
ケモカインのレセプターについても、種々の研究が行われており、IL-8に特異
的なレセプターであるIL-8RA,IL-8およびその他のCXCケモカインのレセプタ
ーであるIL-8RB,MIP-1αおよびRANTESに特異的なレセプターであるCC CKR1,MC
P-1に特異的なレセプターであるCC CKR2A、MCP-1およびMCP-3に特異的なCC CKR2
B,エオタキシン、MCP-3、RANTESに特異的なレセプターであるCC CKR3(Comb
adiere,C.ら、J.Biol.,270,16491-16494(1995),またMIP-1α,MIP
-1β,RANTESに特異的なレセプターであるCC CKR5が報告されている。また、最
近ヒトCXCケモカインであるSDF-1レセプターとしてCXCR4/fusin/HUMSTSRが同
定された。
また、上記のケモカインレセプターのうちCC CKR5,CC CKR2B,CC CKR3および
CXCR4/fusin/HUMSTSRは細胞膜上に存在するタンパク質てあるCD4と協調してHIV-
1のレセプターとしての作用をもつこと、さらにそれぞれのレセプターのリガン
ドによりそれらのレセプターを介するHIV-1の感染が阻害されることが明らかと
なっている。
AIDSの病因ウイルスであるHIV-1の感染とAIDSの発症には性質の異なる2種のH
IV-1が関与している。主に単球、マクロファージ、Tリンパ球に感染する単球
指向性HIV-1は感染および潜伏感染期間中のヒト体内でのウイルスの増殖に関与
し、主にTリンパ球に感染するT細胞株指向性HIV−1はTリンパ球数の減少
とAIDSの発症に関与している。上記の2種のHIV-1が細胞に感染するには、2つ
のレセプターが必要である。1つは細胞膜タンパク質の一種のであるCD4タンパ
ク質であり、上記の2種のHIV-1で共通するレセプターである。もう1つはCD4タ
ンパク質と協調してレセプターとしての活性をもつcoreceptorと呼ばれるタンパ
ク質であり、上記の2種のHIV-1のそれぞれに特異的なレセプターである。
最近、単球指向性HIV−1の主なcoreceptorはCCケモカインレセプターで
あるCC CKR5であり、T細胞株指向性HIV−1のcoreceptorはCXCケ
モカインレセプターであるヒトCXCR4/fusin/HUMSTSRであることが明らかとなっ
た。更に、CC CKR5のリガンドであるMIP−1α、MIP−1β、RA
NTESで単球指向性HIV−1の感染が、ヒトCXCR4/fusin/HUMSTSRのリガン
ドであるヒトPBSF/SDF-1でT細胞株指向性HIV−1の感染がそれぞれ阻害され
る事が明らかとなり、上記のケモカインレセプターがHIV−1感染阻害剤の標
的となりうることが示唆された。
一方、T細胞株指向性HIV−1の感染にヒトCXCR4/fusin/HUMSTSRのどのド
メイン必要であるかは、現在のところ同定されていない。CXCケモカインレセ
プターであるヒトCXCR4/fusin/HUMSTSRは7回膜貫通型レセプターであり、4つ
の細胞外ドメインにより形成される立体構造がリガンドまたはHIV−1との結
合に重要であると考えられる。ヒトCXCR4/fusin/HUMSTSRの機能ドメインを同定
するにはレセプターとしての立体構造が保たれるようなCXCR4/fusin/HUMSTSR変
異体を作製する事が必要である。ヒトCXCR4/fusin/HUMSTSRの機能ドメインを同
定することは、HIV−1感染阻害剤の開発に極めて有用である。
また、HIV-1の種特異性の原因となるメカニズムを解明する事は、ウィルスの
感染に必要な細胞内因子を明らかにするのと同様、HIV-1感染のモデル動物を開
発するために重要である。マウスは、扱いやすく、低コストで、性質が詳細に明
らかとなっている優れた実験動物であるが、HIV-1に感染するという報告はない
。
マウス細胞にはHIV-1ウィルス感染に関していくつかの障壁が存在している。
最初の障壁は、マウス細胞へのウィルスの結合の段階に存在する。ヒトCD4はHIV
-1に結合するが、マウスCD4はHIV-1に結合しない。しかし、これまでの研究から
、in vitroにおいてT細胞株を含むマウス細胞株の細胞表面にヒトCD4を発現させ
ると、HIVの細胞への吸着は起こるがエントリは起こらない事が明らかになって
いる。この結果から、ヒトCD4を発現するマウス細胞はウィルスのエントリを支
持しない事が明らかとなり、CD4以外にも(ウィルスのエントリの時に起こる)
膜融合に必要で、かつヒト特異的な受容体が存在しており、その分子はマウス細
胞には欠如している事が示唆されていた。
HIV-1は株によりCD4陽性細胞に対する感染能力に差異が認められる。ある株は
単球に感染するため単球或いはマクロファージ指向性株(M-tropic)に分類され
、その他の株はT細胞株に感染するためT細胞株指向性株(T-tropic)に分類されて
いる。
HIV-1感染が進行するに従って、感染初期に多く認められる単球指向性のウイ
ルスは、T細胞株指向性のウイルスに置き換わっていく。1996年に、7回膜貫通
型でG蛋白質結合性受容体てあるCXCR4/fusinがヒトCD4陽性細胞へのT細胞株指向
性HIV-1のエントリに必須であることが示された。この結果は、ウィルスエント
リの受容体としての機能に関してCXCR4に種特異性があるかどうかを検討する事
を本発明者らに促した。
発明の開示
本発明者らは、CXCケモカインの一種のマウスPBSF/SDF-1の受容体としてマ
ウスCXCR4を単離し、それがヒトCXCR4とアミノ酸配列か90%一致している事をこ
こに明らかにした。本発明者らは、ヒトCD4とマウスCXCR4をトランスフェク
トした細胞を樹立し、HIV-1の受容体であるヒトCXCR4がマウス細胞に存在するHI
V-1エントリに対する障壁であるかどうかを検討した。
したがって本発明の目的は、AIDSの治療薬及びHIV-1の感染の作用機序等の研
究に有用な、新規なマウスCXCケモカインレセプター遺伝子、該遺伝子にコー
ドされるポリペプチド、該遺伝子の発現ベクター、該発現べクターを有する形質
転換体、該ポリペプチドに対する単クローン抗体、該ポリペプチドの生産方法、
さらには該ポリペプチドのアゴニスト又はアンタゴニストの、及びHIV-1感染阻
害剤のスクリーニング方法を提供することにある。
そこで本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、マウスPBSF
/SDF-1依存的に増殖が促進されるマウスB前駆細胞株DW34より新規マウスケモカ
インレセプター遺伝子のクローニングに成功した。さらに、マウスCXCR4とヒトC
D4細胞を発現する細胞はT細胞株指向性HIV-1株由来のenv蛋白質を発現する細胞
と融合する事、また、それらの細胞はT細胞株指向性HIV-1株に感染する事を見出
した。これらの結果は、CXCR4がマウス細胞に存在するT細胞株指向性HIV-1のエ
ントリに対する種特異的な障壁ではないと結論付けられるものである。また、en
v領域もしくはV3領域を単球指向性HIV-1のものに置換したT細胞株指向性HIV-1の
キメラウイルスクローンは、マウスCXCR4とヒトCD4細胞を発現する細胞に感染し
ない事からHIV-1のエンベロープ蛋白質のV3ループがマウスCXCR4を介するHIV-1
のエントリーに必要である事を明らかにした。かかる知見に基づいて、本発明を
完成させた。
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕 配列表の配列番号:17に記載のアミノ酸配列の全部又は一部からな
るポリペプチド、又は該ポリペプチドを含むポリペプチドであって、マウスPBSF
/SDF-1と結合可能なレセプター活性を有するポリペプチドをコードするDNA、
〔2〕 配列表の配列番号:17に記載のアミノ酸配列の全部又は一部のアミ
ノ酸配列において、1以上のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入又は置換の少なく
とも一つが生じ、かつマウスPBSF/SDF-1と結合可能なレセプター活性を有するポ
リペプチドをコードするDNA、
〔3〕 配列表の配列番号:1に記載の塩基配列の全部又は一部からなるDN
A、又は該DNAを含むDNAであって、マウスPBSF/SDF-1と結合可能なレセプ
ター活性を有するポリペプチドをコードするDNA、
〔4〕 配列表の配列番号:1に記載の塩基配列の全部又は一部のDNA、又
は該DNAを含むDNAであって、1以上の塩基の欠失、付加、挿入又は置換の
少なくとも一つが生じ、マウスPBSF/SDF-1と結合可能なレセプター活性を有する
ポリペプチドをコードするDNA、
〔5〕 前記〔1〕〜〔4〕いずれか記載のDNAとストリンジェントな条件
下でハイブリダイズするDNAであって、マウスPBSF/SDF-1と結合可能なレセプ
ター活性を有するポリペプチドをコードするDNA、
〔6〕 前記〔1〕〜〔5〕いずれか記載のDNAによりコードされるポリペ
プチドであって、マウスPBSF/SDF-1と結合可能なレセプター活性を有するポリペ
プチド、
〔7〕 配列表の配列番号:17に記載のアミノ酸配列の全部又は一部からな
るポリペプチド、又は該ポリペプチドを含むポリペプチドであって、マウスPBSF
/SDF-1と結合可能なレセプター活性を有するポリペプチド、
〔8〕 配列表の配列番号:17に記載のアミノ酸配列の全部又は一部のアミ
ノ酸配列において、1以上のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入又は置換の少なく
とも一つが生じ、かつマウスPBSF/SDF-1と結合可能なレセプター活性を有するポ
リペプチド、
〔9〕 マウスB前駆細胞株DW34に由来する、前記〔6〕〜〔8〕いずれか
記載のポリペプチド、
〔10〕 前記〔1〕〜〔5〕いずれか記載のDNAを含む発現ベクター、
〔11〕前記〔10〕記載の発現ベクターを宿主に導入して得られる形質転換体
、
〔12〕 宿主が哺乳類細胞株である前記〔11〕記載の形質転換体、
〔13〕 前記〔11〕又は〔12〕記載の形質転換体を、前記〔10〕記載の
発現ベクターの発現可能な条件下で培養することを特徴とする、マウスPBSF/SDF
-1と結合可能なレセプター活性を有するポリペプチドの生産方法、
〔14〕 前記〔6〕〜
〔9〕いずれか記載のポリペプチドに対する単クローン
抗体、
〔15〕 マウスPBSF/SDF-1を含有し、AIDS発症阻害剤又はHIV−1感染
阻害剤として用いられる医薬組成物、
〔16〕 前記〔6〕〜
〔9〕いずれか記載のポリペプチド及びヒトCD4タン
パク質を発現する細胞、
〔17〕 (a)前記〔6〕〜
〔9〕いずれか記載のポリペプチドを発現する細
胞又は前記〔16〕記載の細胞;ヒトT細胞株指向性HIV−1;及びスクリー
ニングの対象となる物質を混合してインキュベートを行う工程、及び
(b)該細胞におけるHIV-1の局在性を分析する工程、
を含んでなることを特徴とする、AIDS発症阻害剤又はHIV−1感染阻害剤
をスクリーニングする方法、
〔18〕 HIV-1の局在性を分析する工程を、ヒトT細胞株指向性HIV−1に
対するモノクローナル抗体を用いて行う、前記〔17〕記載の方法、
〔19〕 (a)前記〔6〕〜
〔9〕いずれか記載のポリペプチドを発現する細
胞又は前記〔16〕記載の細胞;HIV−1エンベロープタンパク質を発現する
細胞;及びスクリーニングの対象となる物質を混合してインキュベートを行う工
程、及び
(b)HIV−1エンベロープタンパク質を発現する細胞と該細胞との融合性を
測定する工程、
を含んでなることを特徴とする、AIDS発症阻害剤又はHIV−1感染阻害剤
をスクリーニングする方法、
〔20〕 (a)前記〔6〕〜
〔9〕いずれか記載のポリペプチドを発現する細
胞又は前記〔16〕記載の細胞;マウス又はヒトPBSF/SDF-1;及びスクリーニン
グの対象となる物質を混合してインキュベートを行う工程、及び
(b)該細胞内のカルシウムイオン濃度を測定する、及び/又は発現したポリペ
プチドと該マウス又はヒトPBSF/SDF-1との結合活性を測定することを特徴とする
、AIDS発症阻害剤若しくはHIV−1感染阻害剤、又は該PBSF/SDF-1のアゴ
ニスト若しくはアンタゴニストをスクリーニングする方法、
〔21〕 該アンタゴニストが造血幹細胞遊離促進剤である前記〔20〕記載の
方法、
〔22〕 前記〔6〕〜
〔9〕いずれか記載のポリペプチドを発現する細胞又は
前記〔16〕記載の細胞を含む、AIDS発症又はHIV−1感染を検出するた
めのキット、
〔23〕 (a)前記〔6〕〜
〔9〕いずれか記載のポリペプチドを発現する細
胞又は前記〔16〕記載の細胞、及びHIV−1に感染していることが疑われる
患者の血清、血球又は血液を混合してインキュベートを行う工程、及び
(b)該細胞におけるHIV-1の局在性を分析する、又はHIV−1感染細胞と該
細胞との融合性を測定する工程、
を含んでなることを特徴とする、AIDS発症又はHIV−1感染を検出する方
法、に関するものである。
図面の簡単な説明
図1は、マウスPBSF/SDF-1のcDNA塩基配列、及び該塩基配列にコードされるマ
ウスPBSF/SDF-1のアミノ酸配列を示す図である。
図2は、実施例2のノーザンブロッティング法による電気泳動の結果を示す図
である。Aはマウス組織のmRNAについての結果を示し、Bはマウス胎児のm
RNAについての結果を示す。
図3は、実施例6の結果を示す図である。図中、横軸は経過時間を示し、縦軸
は蛍光強度の比(〔340nmにおける蛍光強度〕/〔380nmにおける蛍光
強度〕)を示す。使用した細胞はケモカインレセプターが発現していないCHO
細胞である。
図4は、実施例6の結果を示す図である。図中、横軸は経過時間を示し、縦軸
は蛍光強度の比(〔340nmにおける蛍光強度〕/〔380nmにおける蛍光
強度〕)を示す。使用した細胞はヒトケモカインレセプターCC CKR2Bが
発現したCHO細胞である。
図5は、実施例6の結果を示す図である。図中、横軸は経過時間を示し、縦軸
は蛍光強度の比(〔340nmにおける蛍光強度〕/〔380nmにおける蛍光
強度〕)を示す。使用した細胞はマウスケモカイン(PBSF/SDF−1)の
レセプター(マウスCXCR4)が発現したCHO細胞である。
図6は、実施例6の結果を示す図である。図中、横軸は経過時間を示し、縦軸
は蛍光強度の比(〔340nmにおける蛍光強度〕/〔380nmにおける蛍光
強度〕)を示す。使用した細胞はヒトケモカインレセプターCXCR4/fus
in/HUMSTSRが発現したCHO細胞である。
図7は、実施例6の結果を示す図である。図中、横軸は経過時間を示し、縦軸
は蛍光強度の比(〔340nmにおける蛍光強度〕/〔380nmにおける蛍光
強度〕)を示す。使用した細胞はマウスCXCR4が発現したCHO細胞である。
図8は、マウスCXCR4がヒトT細胞株指向性HIV-1のenv蛋白質を介する膜融合
を支持することを示す図である。ターゲット細胞であるNIH3T3にはヒトCD4、T7
polymerase、β-galのω-subunitを発現する組み換えワクシニアウイルスを感染
させた。感染後、それらの細胞にマウスCXCR4、ヒトCXCR4、ヒトCCR5をトランス
フェクトした。エフェクター細胞であるHeLaS3にはNL432或いはSF162由
来のenv蛋白質とβ-galのα-subunitを発現する組み換えワクシニアウイルスを
感染させた。それらの細胞を細胞融合させた後にβ-galアッセイに用いた。
図9は、マウスCXCR4がヒトT細胞株指向性HIV-1ウイルスの感染を支持するこ
とを示す図である。SW480(A)細胞に、それぞれヒトCD4とケモカイン受容体(マ
ウスCXCR4、ヒトCXCR4、ヒトCCR5、ヒトCCR2b)をトランスフェクトし、HIV-1の
NL432株、IIIB株、SF162株をそれぞれ感染させた後に細胞溶解物をβ-galアッセ
イに用いた。
図10は、マウスCXCR4がヒトT細胞株指向性HIV-1ウイルスの感染を支持する
ことを示す図である。HOS細胞(B)に、それぞれヒトCD4とケモカイン受容体(マ
ウスCXCR4、ヒトCXCR4、ヒトCCR5、ヒトCCR2b)をトランスフェクトし、HIV-1の
NL432株、IIIB株、SF162株をそれぞれ感染させた後に細胞溶解物をβ-galアッセ
イに用いた。
図11は、マウスCXCR4がヒトT細胞株指向性HIV-1ウイルスの感染を支持する
ことを示す図である。U87MG細胞(C)に、それぞれヒトCD4とケモカイン受容体(
マウスCXCR4、ヒトCXCR4、ヒトCCR5、ヒトCCR2b)をトランスフェクトし、HIV-1
のNL432株、IIIB株、SF162株をそれぞれ感染させた後に細胞溶解物をβ-galアッ
セイに用いた。
図12はキメラプロウィルスクローンの構造を示す模式図である。SF162のenv
或いはV3ループを、ヒトT細胞株指向性HIV-1であるNL432のプロウィルスDNAに
組み込んだ(E:EcoRI、Ba:BamHI、St:StuI、Nh:Nhel)。
図13は、エンベロープ蛋白gp120のV3ループが、マウスCXCR4を介するHIV-1
エントリに必須であることを示す図である。ヒトCD4と図中に示す受容体を発現
するSW480細胞に、HIV-1のNL432株、SF162株及びキメラプロウィルスクローンで
あるNL432env-162、NL432V3-162を感染させた。
発明を実施するための最良の形態
1.本発明のDNAについて
本発明のDNAは、マウスの新規CXCケモカインレセプターであるマウスPB
SF/SDF-1のレセプター(マウスCXCR4)をコードするDNAであれば特に限定さ
れないが、具体的には、以下のDNAが例示される。
1)配列表の配列番号:17に記載のアミノ酸配列の全部又は一部からなるポリ
ペプチド、又は該ポリペプチドを含むポリペプチドであって、マウスPBSF/SDF-1
と結合可能なレセプター活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
2)配列表の配列番号:17に記載のアミノ酸配列の全部又は一部のアミノ酸配
列において、1以上のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入又は置換の少なくとも一
つが生じ、かつマウスPBSF/SDF-1と結合可能なレセプター活性を有するポリペプ
チドをコードするDNA。
3)配列表の配列番号:1に記載の塩基配列の全部又は一部からなるDNA、又
は該DNAを含むDNAであって、マウスPBSF/SDF-1と結合可能なレセプター活
性を有するポリペプチドをコードするDNA。
4)配列表の配列番号:1に記載の塩基配列の全部又は一部のDNA、又は該D
NAを含むDNAであって、1以上の塩基の欠失、付加、挿入又は置換の少なく
とも一つが生じ、マウスPBSF/SDF-1と結合可能なレセプター活性を有するポリペ
プチドをコードするDNA。
5)前記1)〜4)いずれか記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブ
リダイズするDNAであって、マウスPBSF/SDF-1と結合可能なレセプター活性を
有するポリペプチドをコードするDNA。
また、2)において、「1以上のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入又は置換」
とは、特に限定されるものではなく、例えば1個又は数個のアミノ酸残基の欠失
、付加、挿入又は置換をいう。ここで数個とは、例えば10個以下の個数をいう
。さらに、4)において、本発明のDNAの塩基の欠失、付加、挿入又は置換の
程度は1以上であるが、好ましくは1〜数個が好ましい。ここで数個とは、例え
ば10個以下の個数をいう。また、発現されるポリペプチドの機能又は活性が実
質的に同じ程度であるならば、化学的または生化学的な改変、あるいは非天然ま
たは誘導体化されたアミノ酸残基や塩基を含んでいてもよい。
本発明のDNAの単離は、既知のケモカインレセプター間でホモロジーを有す
る塩基配列をPCRにより増幅し、該増幅断片をプローブとしてマウスのcDN
Aライブラリー等をスクリーニングすることにより行うことができる。
なお、本発明において用い得る実験手法は、一般的な分子生物学的実験手法(
DNAの電気泳動、電気泳動により分離したDNAをゲル中から回収する方法、ライゲ
ーション、宿主の形質転換、組換え宿主の培養、プラスミドDNAの調製、DNAの制
限酵素による切断、DNAの放射標識など)は、例えばMolecular Cloning第2版(M
aniatisらCold Spring Harbor Laboratory,New York(1989))に記載されている
ような、当業者に公知の方法が採用される。
PCRに用いるプライマーとしては、報告されているヒトケモカインレセプタ
ーで保存されているアミノ酸配列に基づいて、例えば、第2膜貫通領域のアミノ
酸配列をコードするDNA配列に対する正方向の縮重プライマーの5’側に適切な
制限酵素部位を付加したもの、および第7膜貫通領域のアミノ酸配列をコードす
るDNA配列に対する逆方向の縮重プライマーの5’側に適切な制限酵素部位を付
加したものが挙げられる。かかるプライマーはDNA合成機を用いて合成すること
ができる。
また、cDNAのクローニングに用いられるマウスmRNAは、マウスB前駆
細胞株DW34(京都大学の西川教授より供与)等の細胞から、市販のmRNA
精製用キットを用いて精製し得る。
また、マウスCXCR4のcDNA由来のDNA断片等を用いて、マウスゲノムD
NAのクローニングを行うこともできる。
得られるcDNAの塩基配列やゲノムDNAの塩基配列を、例えば、GenBank/
EMBL/DDBJ DNA配列データベースに対して核酸ホモロジー検索を行うことにより
、得られるcDNAがケモカインレセプターをコードしているかどうかを推定す
ることができる。配列表の配列番号:1に、得られるcDNAの塩基配列を示す
。また、配列表の配列番号:1の第120位〜第1196位の塩基配列が最長の
オープンリーディングフレームであることから、このオープンリーディングフレ
ームの塩基配列に基づいて推定したアミノ酸配列(配列表の配列番号:17)に
ついて、Genbank、EMBL、DDBJなどのデータベースに対してDNASIS(日立)、BLA
ST(Altschul,F.ら,J.Mol.Biol.,215,403-410)などのプログラムを用いて、
ホモロジー検索を行い、本発明のDNAにコードされるポリペプチドについてさ
らに検討を加えることができる。
その結果、配列表の配列番号:17に記載されるアミノ酸配列を有するポリペ
プチドは、ケモカインレセプターに特徴的な7つの膜貫通ドメインを含む三量体
Gタンパク質結合型レセプターであると推定された。また、既知のCXCケモカ
インレセプターのアミノ酸配列と比較した結果、ヒトCXCR4/fusin/HUMSTSRが最
も類似している事が明らかとなった(相同率90%)。
また、本発明のDNAを発現させた細胞は、ケモカイン(マウスPBSF/SDF-1)
に対するレセプター活性、細胞内カルシウム濃度上昇活性のいずれをも有してい
たことから、本発明のDNAは新規のマウスケモカインレセプターをコードして
いることが分かり、該DNAにコードされるタンパク質をマウスCXCR4と命名す
る。
「ケモカイン」とは、前記のように白血球が炎症反応局所への走化性を示すた
めの誘因物質のうち、遊走する白血球に対してある程度の選択性を有し、特徴的
な4つのシステイン残基を有するポリペプチドのファミリーをいう。これらはア
ミノ酸配列および生物活性に関連性がある。ケモカインの4つのシステイン残基
は、第1と第3の残基間および第2と第4の残基間でそれぞれジスルフィド結合
している。第1と第2のシステイン残基間に別のアミノ酸を1つ含むケモカイン
を「CXCケモカイン」、別のアミノ酸を含まないケモカインを「CCケモカイ
ン」、として区別している。一般に、CCケモカインは単球を遊走させて好中球
を遊走させず、CXCケモカインは好中球を遊走させて単球を遊走させないこと
が知られている。
「ケモカインレセプター」とは上記ケモカインに特異的に結合する細胞膜タン
パク質ファミリーをいう。ケモカインレセプターはアミノ酸配列や構造上の関連
がある。ケモカインレセプターはすべてロドプシンファミリーに特徴的な7つの
膜貫通ドメインと三量体Gタンパク質との結合ドメインを有している。ケモカイ
ンレセプターはリガンドに対する特異性から2つのサブグループに分類される。
上記ケモカインのうちCXCケモカインに特異的に結合するものを「CXCケモ
カインレセプター」としてCCケモカインに特異的に結合する「CCケモカイン
レセプター」と区別している。一般にケモカインレセプターはそれぞれのリガン
ドと結合した時に、細胞内カルシウム濃度を上昇させる作用を有している。また
最近、ケモカインレセプターにはケモカインのレセプターとしての活性を持つだ
けでなく、細胞膜上に存在するCD4と呼ばれる分子と協調してHIV-1のレセプター
としての活性を有するものがあることが明らかとなっている。
本明細書において、マウスPBSF/SDF-1に対するレセプター活性は、例えば次の
ようにして測定することができる。
マウスCXCR4のリガンドであるPBSF/SDF-1ペプチドを、例えば、ボルトンハン
ター試薬などを用いて125Iで標識したり、アルカリホスファターゼなどの酵素
で標識する。標識されたPBSF/SDF-1ペプチドを、レセプター活性を有するポリペ
プチドを発現する細胞の懸濁液に添加し、一定の温度でインキュベートする。洗
浄後、細胞に結合したPBSF/SDF-1ぺプチドの量を、標識量を測定することにより
レセプター活性を測定し得る。ここで用いられる細胞としては、例えば、マウス
B前駆細胞株DW34、ヒト胎児腎細胞株293細胞、またはマウスCXCR4を発
現するように操作を行ったチャイニーズハムスター卵巣由来細胞株CHO細胞等
が挙げられる。
また、本発明のポリペプチドはリガンドと結合したときに細胞内カルシウムイ
オン濃度を上昇させる活性を有するものが好ましい。かかる活性は、例えば次の
ようにして測定することができる。
上記の活性の測定対象であるポリペプチドを発現する細胞を緩衝液で洗浄した
後、適当な緩衝液(例えば、HBSS(20mM Hepes、pH7.4中に
、125mM NaCl、5mM KCl、1mM MgCl2、0.5mMグ
ルコース及び0.1%BSAを含む)等)に懸濁し、さらに細胞内カルシウムイ
オンにより影響を受けるような蛍光試薬を加え、インキュベートすることで細胞
を標識し得る。標識した細胞を緩衝液で洗浄した後、適当な緩衝液に懸濁し、リ
ガンドとなるケモカインを加えたときの蛍光強度の変化から、活性を測定するこ
とができる。
例えば、蛍光試薬としてfura-PE3AM(テキサス フルオレッセンス ラボラト
リー)を用いる場合、励起波長が340nmと380nm、蛍光波長が510n
m、レスポンスが0.5秒の条件で測定する。そして、〔励起波長380nmで
の蛍光強度〕に対する〔励起波長340nmでの蛍光強度〕の比を求める。ケモ
カインの添加により測定対象の細胞において細胞内カルシウムイオン濃度が上昇
した場合、該蛍光強度の比の上昇が認められる。また、種類の異なるケモカイン
を添加することにより、リガンドに対するレセプターの特異性を確認することも
できる。
また、マウスCXCR4のmRNAの存在の確認は、通常の特異的なmRNAの検出法を用
いて行い得る。例えば、mRNAはアンチセンスRNAまたはcDNAをプローブとして用
いた、ノーザンブロット分析またはインサイチュハイブリダイゼーション法によ
り検出し得る。又は、mRNAはまたmRNAを逆転写酵素でcDNAに変換した後、適当な
プライマーの組み合わせによるPCR法によっても検出し得る。
2.本発明のポリペプチドについて
本発明のポリペプチドとしては、例えば以下のものが挙げられる。
1)本発明のDNAによりコードされるポリペプチドであって、マウスPBSF/SDF
-1と結合可能なレセプター活性を有するポリペプチド。
2)配列表の配列番号:17に記載のアミノ酸配列の全部又は一部からなるポリ
ペプチド、又は該ポリペプチドを含むポリペプチドであって、マウスPBSF/SDF-1
と結合可能なレセプター活性を有するポリペプチド。
3)配列表の配列番号:17に記載のアミノ酸配列の全部又は一部のアミノ酸配
列において、1以上のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入又は置換の少なくとも一
つが生じ、かつマウスPBSF/SDF-1と結合可能なレセプター活性を有するポリペプ
チド。
4)マウスB前駆細胞株DW34に由来する、前記1)〜3)いずれかのポリペ
プチド。
3)の態様において、本発明のポリペプチドのアミノ酸残基の欠失、付加、挿
入又は置換の程度は1以上であり、マウスPBSF/SDF-1と結合可能なレセプター活
性を有する限り、変異の個数は特に限定されない。例えば、1〜数個が例示され
る。ここで数個とは、例えば10個以下の個数をいう。また、ポリペプチドの機
能又は活性が実質的に同じ程度であるならば、化学的または生化学的な改変、あ
るいは非天然または誘導体化されたアミノ酸残基を含んでいてもよい。
また、本発明のポリペプチドは、マウスB前駆細胞株DW34に由来するもの
が好ましい。
また、本発明のポリペプチドの存在の確認は、通常の特異的なタンパク質の検
出法を用いて行い得る。例えば、マウスCXCR4に特異的な抗体を用いる通常の免
疫沈降法またはウエスタンブロット法、FACSによる解析により確認し得る。
3.本発明の発現ベクター及び形質転換体について
本発明の発現ベクターは、例えば、pEFBOS、pCAGGStkNeo、
pMXなどの公知のベクターに、本発明のDNAを組み込むことにより得ること
ができる。
また、本発明の形質転換体は、本発明の発現ベクターを所望の宿主に導入する
ことにより得ることができる。宿主としては特に限定されないが、哺乳類細胞株
が好ましい。哺乳類細胞株としては、例えば、マウスB前駆細胞株、ヒト胎児腎
細胞株、チャイニーズハムスター卵巣由来細胞株等が挙げられ、ハムスター卵巣
由来細胞株が好ましい。発現ベクターを宿主に導入する方法としては、例えは、
リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法等の
公知の方法を用いれば良い。
また、上記の形質転換体を、上記の発現ベクターの発現可能な条件下で培養す
ることにより、マウスPBSF/SDF-1と結合可能なレセプター活性を有するポリペプ
チドを生産することができる。このようにして生産されるポリペプチドは、通常
のカラムクロマトグラフィー又は本発明の抗体を用いたアフィニティークロマト
グラフィー等の方法により、容易に精製することができる。
4.本発明の単クローン抗体について
本発明の単クローン抗体としては、本発明のマウスCXCR4ポリペプチドに対す
るもの、及び該ポリペプチドとヒトCXCR4/fusin/HUMSTSRとの融合タンパク質に
対するものが挙げられる。
かかる単クローン抗体は、例えば次のようにして作製することができる。
免疫原として、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列の一部に基づいて通常の
ペプチド合成機で合成した合成ペプチドを、又はマウスCXCR4を発現するベクタ
ーで形質転換した細菌、酵母、動物細胞、昆虫細胞などにより産生されたマウス
CXCR4を細胞のまま、或いは通常のタンパク質化学的方法で精製して得られるタ
ンパク質を用いる。かかる免疫原を用いて、マウス、ラット、ハムスター、ウサ
ギなどの動物を免疫し、脾臓またはリンパ節から細胞を取り出し、ミエローマ細
胞と融合させて、KoehlerおよびMilsteinの方法(Nature,256,495-497(1975))ま
たはその改良法であるUedaらの方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,79,4386-439
0(1982))に従ってハイブリドーマを作製する。かかるハイブリドーマは単クロー
ン抗体を産生させ得る。
より具体的には、例えば、以下の工程によりマウスCXCR4の単クローン抗体を
得ることができる。
(a)マウスCXCR4タンパク質によりマウスを免疫する工程、
(b)免疫マウスの脾臓を摘出して脾臓細胞を分離する工程、
(c)分離された脾臓細胞とマウスミエローマ細胞とを、融合促進剤(例えば、ポ
リエチレングリコール)の存在下で、上記のKoehlerらに記載の方法によって融
合する工程、
(d)非融合ミエローマ細胞が成長しない選択培地で得られたハイブリドーマ細胞
を培養する工程、
(e)ELISA法および免疫電気移転法などにより所望の抗体を産生するハイブリドー
マ細胞を選択し、限界希釈法などによりクローニングする工程、および
(f)抗マウスマウスCXCR4の単クローン抗体を回収する工程。
また、マウスCXCR4とヒトCXCR4/fusin/HUMSTSRとの融合タンパク質に対する単
クローン抗体も本発明に含まれる。
このような単クローン抗体は、マウスCXCR4とヒトCXCR4/fusin/HUMSTSRとの融
合タンパク質を得、このタンパク質やそのペプチドを免疫原として、上記の方法
等により得ることがてきる。
5.本発明の医薬組成物及び細胞について
本発明の医薬組成物は、マウスPBSF/SDF−1を含有し、AIDS発症
阻害剤またはHIV−1感染阻害剤として用いられるものである。
本発明の医薬組成物は、経口的又は非経口的に投与することができる。すなわ
ち、通常用いられる投与形態、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等として
経口投与することができ、あるいは液剤、乳剤、懸濁液剤、リポソーム剤などと
して筋肉内注射又は皮下注射することができ、また、坐剤として直腸投与するこ
ともできる。このような剤形は、医薬として許容される通常の担体、賦型剤、結
合剤、安定剤、緩衝剤、溶解補助剤、等張剤等と本発明の有効成分を配合するこ
とにより製造することができる。
投与量、投与回数は、患者の症状、症歴、年齢、体重、投与形態等によって異
なるが、例えば成人に経口投与する場合、通常、1日当たり5〜500mg、好ま
しくは10〜100mgの範囲で適宜調節して、1回又は数回に分けて投与するこ
とができる。
また、本発明の細胞は、上記の本発明のポリペプチドを発現する細胞、又は該
ポリペプチド及びヒトCD4タンパク質の両者を発現する細胞である。
かかる細胞は、例えば次のようにして得ることができる。即ち、マウスCXCR4
をコードするポリヌクレオチドを組み込んだベクターを得る。ベクターとしては
、pEFBOS,pCAGGS、pMX等の公知のものが使用できる。次いで、
発現用の細胞に上記のポリヌクレオチドを組み込んだベクターを導入することに
より、本発明の細胞を得ることができる。発現用の細胞としては、チャイニーズ
ハムスター卵巣由来細胞株、CHO細胞、ヒト結腸癌細胞株、SW480細胞、
ヒト骨芽肉腫細胞株、HOS細胞、ヒトグリア芽細胞株、U87MG細胞等が挙
げられる。また、ベクターの導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法や
Lipofectin(GibcoBRL社)、Lipofectamine(GibcoBRL社)を用いる方法が挙げ
られる。
マウスCXCR4はHIV−1のco-receptorとなることが見出されたことから、本
発明の細胞は、AIDS発症阻害剤やHIV−1感染阻害剤、PBSF/SDF
−1のアゴニストやアンタゴニストのスクリーニングやAIDS発症またはH
IV−1感染の検出等に用いることができる。
6.本発明のスクリーニング方法について
本発明のスクリーニング方法には、AIDS発症阻害剤、HIV−1感染阻害
剤、及びマウス又はヒトPBSF/SDF−1のアゴニストやアンタゴニストを
スクリーニングする方法がある。具体的には次の通りである。
1)(a)上記に記載の本発明の細胞;ヒトT細胞株指向性HIV−1;及びス
クリーニングの対象となる物質を混合してインキュベートを行う工程、及び
(b)該細胞におけるHIV-1の局在性を分析する工程、
を含んでなることを特徴とする、AIDS発症阻害剤又はHIV−1感染阻害剤
をスクリーニングする方法。
2)(a)上記に記載の本発明の細胞;HIV−1エンベロープタンパク質を発
現する細胞;及びスクリーニングの対象となる物質を混合してインキュベートを
行う工程、及び
(b)HIV−1エンベロープタンパク質を発現する細胞と該細胞との融合性を
測定する工程、
を含んでなることを特徴とする、AIDS発症阻害剤又はHIV−1感染阻害剤
をスクリーニングする方法。
3)(a)上記に記載の本発明の細胞;マウス又はヒトPBSF/SDF-1;及びスクリ
ーニングの対象となる物質を混合してインキュベートを行う工程、及び
(b)該細胞内のカルシウムイオン濃度を測定する、及び/又は発現したポリペ
プチドと該マウス又はヒトPBSF/SDF-1との結合活性を測定することを特徴とする
、AIDS発症阻害剤若しくはHIV−1感染阻害剤、又は該PBSF/SDF-1のアゴ
ニスト若しくはアンタゴニストをスクリーニングする方法。
また、ヒトT細胞株指向性HIV−1としては、例えばHIV−1 IIIB株(
熊本大学の原田教授より供与)やHIV−1 NL432株(徳島大学の足立教授よ
り供与)が挙げられる。
1)について
HIV-1の局在性を分析する工程としては、ヒトT細胞株指向性HIV−1に対
するモノクローナル抗体を用いて行うことがより好ましい。
かかるモノクローナル抗体を用いての分析方法としては特に限定されるもので
はなく、通常用いられる公知の方法が挙げられる。
また、HIV-1の局在性を分析する方法としては、以下に述べる酵素法も用いる
ことができる。
即ち、この方法で用いられる「本発明の細胞」としては、ヒトCD4タンパク
質とco-receptorを発現する細胞(例えば、SW480、U87MG、HOS等)であって、H
IV−1の遺伝子発現プロモーターであるLTRの下流に酵素(例えばβ−ガラ
クトシダーゼ、ルシフェラーゼ、CAT等)の遺伝子が導入されたものが好まし
く用いられる。HIV−1がかかる細胞に感染すると、ウイルスのタンパク質の
一種であるtatタンパク質が発現し、それがLTRを活性化させる。したがっ
て、細胞溶解物中に含まれる酵素活性を測定することにより、感染量を定量でき
る。
2)について
HIV−1エンベロープタンパク質を発現する細胞としては、例えばHeLaS3に
HIV−1エンベロープタンパク質の遺伝子を導入したものが挙げられ、さらに
例えばβ−ガラクトシダーゼのサブユニット(α又はωのいずれか一方)の遺伝
子を導入したものが好適に用いられる。また、「本発明の細胞」としては、例え
ばNIH3T3に、ヒトCD4タンパク質とco-receptorを導入したものであって、さ
らに例えばβ−ガラクトシダーゼのサブユニット(α又はωのいずれか一方であ
って、HIV−1エンベロープタンパク質を発現する細胞に導入されたものとは
異なるもの)の遺伝子を導入したものが好適に用いられる。HIV−1エンベロ
ープタンパク質を発現する細胞と本発明の細胞とか細胞融合した場合、β−ガラ
クトシダーゼのα−サブユニットとω−サブユニットが会合し、活性型のβ−ガ
ラクトシダーゼとなる。したがって、両細胞を混合して培養した後に、細胞溶解
物中に含まれるガラクトシダーゼ活性を測定することにより、細胞融合量が測定
できる。
3)について
(a)工程においてインキュベートが行われた結果、細胞内カルシウムイオン
濃度を上昇させる活性が認められた場合、対象物質はアゴニストの可能性がある
。また、細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性は認められないものの、
対象物質とレセプターとの結合が認められた場合、対象物質はアンタゴニストの
可能性かある。また、マウスPBSF/SDF-1の細胞内カルシウムイオン濃度を上昇さ
せる活性及び/又はレセプターとの結合活性に影響を及ぼす場合、すなわち活性
を阻害する場合、対象物質はアンタゴニストの可能性がある。また、該アンタゴ
ニストとしては、造血幹細胞遊離促進剤が例示される。
7.検出キット及び検出方法について
本発明のAIDS発症又はHIV−1感染を検出するためのキットは、本発明
の細胞を含むことを特徴とする。
かかるキットを用いることにより、簡単にAIDS発症又はHIV−1感染を
検出することかできる。本発明のキットは、以下に示す本発明の検出方法を利用
して検出を行うためのものである。
また、本発明のAIDS発症又はHIV−1感染を検出する方法は、
(a)上記に記載の本発明の細胞、及びHIV−1に感染していることが疑われ
る患者の血清、血球又は血液を混合してインキュベートを行う工程、及び
(b)該細胞におけるHIV-1の局在性を分析する、又はHIV−1感染細胞と該
細胞との融合性を測定する工程、を含んでなることを特徴とするものである。
法。
ここで、HIV-1の局在性を分析する方法としては、本発明のAIDS発症阻害
剤又はHIV−1感染阻害剤において用いられる方法か挙げられる。また、HI
V−1感染細胞と該細胞との融合性を測定する方法としては、本発明のAIDS
発症阻害剤又はHIV−1感染阻害剤において用いられる方法が挙げられる。な
お、(b)におけるHIV−1感染細胞とは、HIV−1に感染していることが
疑われる患者の血球であって、HIV−1に感染しているものである。
8.本発明の有用性について
本発明のマウスCXCR4とヒトCXCR4/fusin/HUMSTSRは共に、マウスPBSF/SDF-1に
反応する。マウスとヒトのPBSF/SDF-1は71アミノ酸のうち1つのアミノ酸の差
異しか認められないので、マウスCXCR4はヒトPBSF/SDF-1にも結合すると期待さ
れる。ヒトPBSF/SDF-1はCXCR4/fusin/HUMSTSRを介するT細胞株指向性HIV−
1の感染を阻害するので、本発明のマウスCXCR4タンパク質に対する抗体、およ
びマウスCXCR4とヒトCXCR4/fusin/HUMSTSRとの細胞外ドメインを互いに置換して
得られるT細胞株指向性HIV−1との結合部位を有するキメラタンパク質に対
する抗体は、HIV-1の感染阻害剤、すなわちAIDSの治療薬として用いられ得る。
また本発明により提供されるマウスCXCR4タンパク質およびマウスCXCR4とヒト
CXCR4/fusin/HUMSTSRとの細胞外ドメインを互いに置換したキメラタンパク質の
アゴニスト、アンタゴニストをスクリーニングする方法により、アゴニスト、ア
ンタゴニストを得、HIV-1の感染阻害剤、すなわちAIDSの治療薬として用いられ
得る。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施
例によりなんら限定されるものではない。
実施例1(マウスCXCR4のcDNAのクローニング)
(1)プライマーの合成
既知のケモカインレセプターのアミノ酸配列に基づいて、第2膜貫通領域のア
ミノ酸配列をコードするDNA配列に対する正方向の縮重プライマ−C2F2-2(配列
表の配列番号:5)、第7膜貫通領域のアミノ酸配列をコードするDNA配列に対
する逆方向の縮重プライマ-C4R1(配列表の配列番号:6)を、DNA合成機(Cyclo
ne Plus,日本ミリポア)を用いて合成した。
(2)マウスB前駆細胞株DW34からのmRNAの精製
マウスB前駆細胞株DW34をRPMI 1640培地に懸濁し、一週間培養した後、ダル
ベッコPBS(-)(ニッスイ)で洗浄し、mRNA精製キット(ファルマシア)を用いてmR
NAを精製した。
(3)マウスCXCR4のcDNA断片のクローニング
マウスB前駆細胞株DW34から精製したmRNAの200ngについて、Ready-To-Go T-P
rimed First-Strandキット(ファルマシア)を用いて一本鎖cDNAを合成した。こ
の一本鎖cDNAを鋳型とし、プライマーとしてC2F2-2およびC4R1を、耐熱性DNAポ
リメラーゼとしてTaqを用いて、PCR反応(94℃で0.5分間、55℃で0.5
分間、72℃で1分間の条件で30サイクル)を行った。得られた反応液を、低
融点アガロースゲル電気泳動で分離し、目的のサイズ(約690bp)のDNAバンドを切
り出し、Wizard PCR Preps DNA精製システム(プロメガ)を用いてDNA断片を精
製した。得られたDNA断片をpT7Blueベクターに、DNAライゲーションキット(タ
カラ)を用いて挿入した。この挿入DNAの塩基配列を、PRISM Ready Reactionシ
ーケンスキット(Applied Biosystems社)およびDNAシーケンサー(Applied Bio
systems社)を用いて決定した。得られたマウスCXCR4のcDNA配列を、
配列表の配列番号:2に示す。上記のようにして得られたマウスCXCR4のcDNA配
列を基に配列表の配列番号:7および配列表の配列番号:8に示すプライマーを
合成し、Marathon cDNA Amplificationキット(Clontech社)を用い、上記のよう
にして得たDW34細胞のcDNAを鋳型にして5’末端を含むcDNAクローンを得た。得
られたマウスCXCR4のcDNA配列を、配列表の配列番号:3に示す。
実施例2(マウスCXCR4の各組織における発現)
(1)プローブの作製
マウスCXCR4のマウス各組織における発現を検討するために、まず、以下のよ
うにプローブを作製した。マウスCXCR4の遺伝子の塩基配列に基づいて、第2膜
貫通領域部分に対応する正方向のDNA配列(配列表の配列番号:15)および第
7膜貫通領域部分に対応する逆方向のDNA配列(配列表の配列番号:16)をプ
ライマーとして合成し、次のPCRに用いた。上記実施例1の(3)項で得られた
塩基配列のcDNAを鋳型とし、Taqポリメラーゼを用いて、94℃で1分間、55
℃で1分間、72℃で2分間の条件で30サイクルのPCR反応を行った。PCR反応
物をアガロースゲル電気泳動で分離し、目的のサイズ(690bp)のDNAバンドを切り
出し、Wizard PCR Preps DNA精製システムを用いてDNA断片を精製した。得られ
たDNA断片50ngを、Prime-It IIランダムプライマーラベリングキット(ストラタ
ジーン)を用いて32P標識し、プローブとして用いた。
(2)マウス組織およびマウス胎児のノーザンブロット分析
種々のマウス組織のmRNA、及び生後7日目、11日目、15日目、17日目の
マウス胎児のmRNAを電気泳動で分離してトランスファーしたメンブラン、並びに
上記(1)項で得たプローブを用いて、ハイブリダイゼーションを行った。メン
ブランの洗浄は、0.05%SDSを含む2xSSCに浸して、室温で15分間を2回行っ
た後、さらに0.1%SDSを含む0.1xSSCに浸して50℃で20分間を2回行った。こ
のメンブランの放射線をオートラジオグラフィーで検出した。この結果を図2の
A(マウス組織)及びB(マウス胎児)に示す。バンドの濃さから明らかなよう
に、胸腺、リンパ節、脾臓に強いシグナルが得られ、脳、小腸、胃、腎臓で弱い
シグナルが得られた。またマウス胎児の全てで強いシグナルが得られた。
実施例3(マウスCXCR4のゲノムDNAのクローニング)
(A)プローブの作製
上記実施例1の(3)項で得られたマウスCXCR4のcDNAの塩基配列に基づいて
、適切な正方向および逆方向のプライマーを合成し、次のPCRに用いた。上記実
施例1(3)項で得られたcDNAから二本鎖DNAを得、この二本鎖DNAを
鋳型とし、Taqポリメラーゼを用いてPCR反応を行い、アガロース電気泳動で分離
し、目的のサイズ(約690bp)のDNAバンドを切り出し、DNA断片を精製した。得ら
れたDNA断片50ngを、Prime-It IIランダムプライマーラベリングキット(ストラ
タジーン)を用いて32P標識し、プローブとして用いた。
(B)マウスゲノムライブラリーのクローニング
まず、ファージベクターλFIXIIに組み込んだ129/SvJマウス肝臓ゲノムライブ
ラリーを大腸菌に感染させ、一次スクリーニングとして、プレートに播いてプラ
ークを形成させた後、ナイロンメンブラン(デュポン社)にトランスファーした
。このメンブランをプレハイブリダイゼーション液(5×SSPE(0.9M、NaCl、0.05M
リン酸ナトリウムpH7.7、0.005M Na2EDTA)、50%ホルムアミド、5×デンハルト
液、50μg/mlサケ精子DNA、0.1%SDS)に浸してプレハイブリダイゼーションした
後、上記(A)項で得られたプローブとハイブリダイゼーション液(5×SSPE、50%
ホルムアミド、1×デンハルト液、10%デキストラン硫酸二ナトリウム
、50μg/mlサケ精子DNA、0.1%SDS)に浸して42℃15時間ハイブリダイズさせた。
メンブレンを洗浄した後、放射活性を検出し、シグナルを生じる陽性のプラーク
を選択し、逐次希釈して二次および三次のスクリーニングを行ない、2個のシン
グルクローンを選択した。
クローニングしたファージDNAについて種々の制限酵素で切断してアガロース
電気泳動で分離し、バンドのパターンが同じものは同一クローンとし、同様のハ
イブリダイゼーションを繰り返して、できるだけ小さいサイズの陽性バンドを与
えるように、制限酵素で切断した。選択した陽性DNA断片を、pBluescripts KSII
ベクターに挿入し、ジデオキシ法により塩基配列を決定した。得られたマウスCX
CR4遺伝子のDNA配列を、配列表の配列番号:4に示す。また、配列表の配列番号
:3に示される塩基配列と、配列表の配列番号:4に示される塩基配列から、最
長のオープンリーディングフレームを含む塩基配列を見出し、この塩基配列を配
列表の配列番号:1に示す。そして、この配列表の配列番号:1に示される塩基
配列を、GenBank/EMBL/DDBJ NA配列データベースに対して核酸ホモロジー検索を
行った。この検索の結果、得られたクローンは、新規のマウスケモカインレセプ
ターをコードするDNAであることが明らかになり、これをマウスCXCR4と命名した
。
実施例4(マウスCXCR4のアミノ酸配列のホモロジー解析)
マウスCXCR4の塩基配列に基づいて推定したアミノ酸配列(配列表の配列番号
:17)は、ケモカインレセプターに特徴的な7つの膜貫通ドメインを含む三量
体Gタンパク質結合型レセプターであると推定された。そのアミノ酸配列を、既
知のCXCケモカインレセプターの配列と比較した(データベースとしてGenBan
k、EMBL、DDBJを用い、BLASTにて解析した)。その結果、ヒトCXCR4/fusin/HUMS
TSRが最も類似しており(相同率90%)、サルCXCR4、ウシCXCR4とはそれぞれ89
%、86%の相同率であり、ラットIL-8RB、ウサギIL-8RA、ウサギIL-8RBとは
それぞれ49%、47%、45%の相同率であった。
実施例5(マウスCXCR4ならびにヒトCXCR4/fusin/HUMSTSRの発現)
(1)マウスCXCR4、ヒトCCCKR2BおよびヒトCXCR4/fusin/HUMSTSR発現ベクター
の作製
既報のヒトケモカインレセプターであるCC CKR2Bの遺伝子ならびにCXCR4/fusi
n/HUMSTSRの遺伝子をクローニングするために、ヒト単球細胞株THP-1のcDNAを用
いて以下のようにPCR反応を行った。THP-1細胞のcDNA 500ngを鋳型として用い、
配列表の配列番号:11および配列番号:12に示すプライマーをヒトCXCR4/fu
sin/HUMSTSRの増幅のために、そして、配列表の配列番号:9および配列表の配
列番号:10に示すプライマーをCC CKR2Bの増幅のために、それぞれ500ngを用
いた。反応を行うための酵素としてはTaqポリメラーゼ(宝酒造社)を用いた。
反応を、94℃、3分で1サイクル行った後、94℃で1分間、55℃で2分間
、72℃で3分間の条件で35サイクル行い、さらに72℃で3分間の反応を行
った。この反応で得られたヒトCXCR4/fusin/HUMSTSRおよびCC CKR2Bの遺伝子断
片を、それぞれpCRII(Invitrogen社)のTAクローニング部位へ組み込んだ。この
ようにして得られたプラスミドを、それぞれpCRIICXCR4およびpCRIICC CKR2Bと
命名した。次に、得られたpCRIICXCR4およびpCRIICC CKR2Bプラスミドを、それ
ぞれNotlおよびXboI(ともに宝酒造社)で消化した後、pCAGGStkNeoのNotI/XboI
部位に組み込んだ。このようにして得られたプラスミドを、それぞれpCANCXCR4
およびpCANCC CKR2Bと命名した。
マウスCXCR4の遺伝子をクローニングするために、上記実施例1の(3)項で
得られた配列表の配列番号:3で示されるマウスB前駆細胞株DW34の一本鎖cDNA
を鋳型にPCR法を行った。cDNA 100ngを鋳型として用い、配列表の配列番号:1
3および配列表の配列番号:14に示すプライマーを用いた。反応を行うための
酵素としてはExTaq(宝酒造社)を用いた。反応を、94℃で3分間、1サイク
ル行った後、94℃で1分間、55℃で1分間、72℃で2分間の条件で20サイ
クル行い、さらに72℃で5分間の反応を行った。得られたマウスCXCR4遺伝子
断片をNotIとXhol(宝酒造社)で消化した後、pCAGGStkNeoのNotI/XboI部位に組
み込んだ。このようにして得られたプラスミドを、pCANmPBSFRと命名した。
(2)CHO細胞でのマウスCXCR4、ヒトCXCR4/fusin/HUMSTSR、ヒトCC CKR2Bの発
現
CHO細胞を直径10cmの細胞培養のシャーレー(岩城硝子社)で、37℃、10
%炭酸ガス存在下で1日培養した。上記(1)項で得た3種のケモカインレセプ
ターの発現ベクター(pCANmPBSFR、pCANCXCR4およびpCANCC CKR2B)のDNAそれぞ
れ30μgを蒸留水25μlに溶解した後、250mM塩化カルシウム(ナカライテスク社
)500μlを添加した。DNAおよび塩化カルシウムの混合液に2×BBS溶液(50mM BE
S(SIGMA).280mM塩化ナトリウム(ナカライテスク社)、および1.5mMリン酸水素
二ナトリウム(ナカライテスク社))500μlを添加した後、室温で25分間静置
した。このように調製したDNA溶液をCHO細胞を培養しているシャーレーに滴下し
、35℃、3%炭酸ガス存在下で20時間培養し、細胞にDNAを導入した。DNA導
入した細胞を、3mlのPBS(+)で2回洗浄した後、10mlの10%溶液FCSを含むα-MEM
(GIBCO社)を添加し、37℃、5%炭酸ガス存在下で1日培養した。
次いで、10%FCSを含むα-MEM(GIBCO社)培地に2mg/ml GENETICIN(和光純薬工
業社)を添加した培地に懸濁し、5×103個/シャーレーで直径10cmの細胞培養の
シャーレー(岩城硝子社)に分注した。37℃、10%炭酸ガス存在下で培養を
続け、GENETICIN耐性の細胞をマウスCXCR4、ヒトCXCR4/fusin/HUMSTSRおよびCC
CKR2B発現CHO細胞株として細胞内カルシウム濃度測定用に用いた。以下の実施例
6に示すように、CC CKR2Bについては、特異的リガンドであるMCP-1の
添加による細胞内カルシウム濃度上昇活性があっため、レセプターの発現が確認
された。また、マウスCXCR4とヒトCXCR4/fusin/HUMSTSRの発現については、CC C
KR2Bと同じ細胞株を用いて同様の形質転換および培養を行ったことから、同様に
発現していると考えられる。
実施例6(マウスCXCR4の生物活性)
上記実施例5の(2)項で得たマウスCXCR4ならびにヒトケモカインレセプタ
ー(CXCR4/fusin/HUMSTSRおよびCC CKR2B)が発現しているCHO細胞を、ダルベッ
コPBS(-)で洗浄した後、HBSS緩衝液(20mM Hepes,pH 7.4中に、125mM Nac1,5mM
KCl,1mM MgCl2,0.5mMグルコース、および0.1%BSAを含む)に5×106個/mlで懸
濁し、さらにfura-PE3AM(テキサス フルオレッセンス ラボラトリー)を2.5μ
Mになるように加え、37℃で30分間インキュベートした。HBSS緩衝液で洗浄
した後、各CCケモカインレセプター発現細胞を同緩衝液に5×106個/mlで懸濁
した。得られたケモカインレセプター発現細胞懸濁液各500μlに、ケモカイン(
マウスPBSF/SDF-1またはヒトMCP-1)をそれぞれ100nMになるように加えたときの
蛍光度の変化を、蛍光分光光度計(LS50B,PERKIN ELMER)を用いて、励起波長340n
mと380nm,蛍光波長510nm,レスポンス0.5秒で測定した。その結果を、時間経過と
340nmと380nmとの蛍光強度の比で図3〜図6に示す。
マウスPBSF/SDF-1刺激では、マウスCXCR4及びヒトCXCR4/fusin/HUMSTSR発現細
胞で蛍光強度の比の上昇が認められ、CCケモカインレセプターであるCC CKR2B
発現細胞では蛍光強度の比の上昇は認められなかった。なお、レセプターに対す
る陽性コントロールであるMCP-1ペプチドによる刺激では、CC CKR2B発現細胞で
蛍光強度の比の上昇が認められた。したがって、マウスPBSF/SDF-1は、本発明の
マウスCXCR4およびヒトCXCR4/fusin/HUMSTSR発現CHO細胞に対して、特異的に細
胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる活性を有することがわかった。また図7
に示すようにマウスCXCR4発現細胞では、マウスPBSF/SDF-1の連続しての添
加により蛍光強度の比が変化しない脱感作が認められた。脱感作は陰性コントロ
ールであるヒトMCP-1の添加では認められなかった。この結果より、本発明のレ
セプターは、マウスPBSF/SDF-1のレセプターである事が明らかとなった。
実施例7
材料と方法
細胞株:マウスNIH3T3細胞、ヒト小腸上皮由来のSW480細胞、ヒトグリア細胞
由来のU87MGは、10%FCSを含むDMEMで培養した。ヒトHeLaS3細胞は10%FCSを
含むRPMI1640で培養した。ヒト骨芽細胞由来のHOS細胞は1%不必須アミノ酸(Gibc
o社)と10%FCSを含むEagle MEMで培養した。
ウイルス:HIV-1のNL432株は、足立教授(徳島大学)より供与された。IIIB株
は、原田教授(熊本大学)より供与された。SF162株は、J.A.Levy教授(カリフ
ォルニア、サンフランシスコ大学)より供与された。HIV-1のキメラウイルスク
ローン、NL432env-162とNL432V3-162は、井阪(塩野義製薬)より供与された。
遺伝子組み換えワクシニアウイルス、Vac.Env(NL432 env)、Vac.Env162(SF16
2 env)、Vac T4(CD4)は、塩田教授(東京大学)より供与された。LO-T7(T7
polymerase)は、M.Kohara(都立臨床研)より供与された。
細胞へのトランスフェクション:NIH3T3 細胞を1ウェルあたり5x104細胞の
細胞密度で24ウェルプレートで一晩培養し、Lipofectamine(Gibco社)を用いて
pBluescriptに組み込んだケモカイン受容体遺伝子をトランスフェクトした。ト
ランスフェクト開始後4時間目に細胞をPBSで洗浄し、培養液を添加した後37℃で
一晩培養して融合アッセイに使用した。SW480細胞とHOS細胞は、5x105細胞の細
胞密度で6センチメートルプレートで一晩培養した。SW480細胞にはpEF
-BOSに組み込んだ受容体遺伝子を5μg、CD4を発現するベクターであるT4-Neoを7
.5μg、LTR(EcoRV)-β-Gal-Neoを2.5μgのプラスミド混合物を改良型リン酸カ
ルシウム法によりトランスフェクトした。ヒトCD4とLTR-Galを恒常的に発現する
HOS細胞には、同じ方法でpEF-BOSに組み込んだ受容体遺伝子を15μgトランスフ
ェクトした。細胞は3% CO2存在下で35℃一晩培養し、PBS(-)で洗浄後に0.5mM
EDTAを含むPBSを用いて回収した後、12ウェルプレートにまいて37℃で一晩培養
して感染アッセイに用いた。
細胞融合アッセイ:細胞融合を定量化するために我々は、β-galactosidase(
β-gal)のα-complementationを利用した改良型細胞融合アッセイを使用した(
志田等、論文作成中)。
β-galのα-subunitとenv蛋白質は、遺伝子組み換えワクシニアウイルスによ
りエフェクター細胞であるHeLaS3細胞(24ウェルプレート、1x105細胞/ウェル)
に導入した。
ヒトCD4、β-galのω-subunit、T7 RNA polymeraseは、遺伝子組み換えワクシ
ニアウイルスによりターゲット細胞であるNIH3T3細胞(24ウェルプレート5x104
細胞/ウェル)に導入し、ケモカイン受容体はLipofectamineを用いてターゲット
細胞にトランスフェクトした。トランスフェクト後16時間目に、エフェクター細
胞とターゲット細胞を0.5mM CaCl2を含むPBSで洗浄し、ワクシニアウイルスによ
り引き起こされる非特異的な細胞融合を抑制するために抗ワクシニアウイルス抗
体である2D5で処理した。エフェクター細胞を3mM CaCl2を含むHanksの緩衝液(pH
7.6)に懸濁し、24ウェルプレート中でターゲット細胞に重層した後、融合を開始
するために1,300rpmで5分間遠心した。
遠心後に細胞を5%CO2存在下で37℃12時間培養した。細胞融合が起きた場合、
融合細胞の細胞質に含まれるβ-galのα-subunitとω-subunitが会合し、α-com
plementationにより活性型β-gal酵素になるので、培養液を除いた後に、β-g
alの基質であるchlorophenolred-b-D-galactopyranoside(Boehringer Mannheim
)を8mMと、45ml 2-メルカプトエタノール、1mM、MgCl2、100mM HepespH8.0、0
.5% NP40、DNAse I 0.1mg/mlを含む溶液を1ウェルにつき200μl添加し、37℃
で30分間反応後、反応を停止するために2% SDSを1ウェルにつき200μl添加し
た。反応液中のβ-gal活性を定量するため波長590nmにおける吸光度を測定した
。
感染アッセイ:ヒトCD4と受容体を発現するヒトSW480或いはHOS細胞を12ウェ
ルプレートで培養した。各ウェルに、HIV-1ウイルスを含む培養液(reverse tra
nscriptase(RT)活性は、SF162が2x106RT/mL、NL432envl62、NL432V3-162、III
Bが5x106 RT/mL、NL432が3x106 RT/mL)を添加し、5%CO2存在下、37℃で2
時間培養した後、1ウェルあたり2.5mlの培養液を添加した。感染後4日目にRep
orter lysis buffer(Promega)を1ウェルあたり400μl添加し、-80℃で凍結後
に融解した。融解したサンプルをエッペンドルフチューブへ移し、4℃、5分間
12,000rpmで遠心した後、上清に含まれるβ-gal活性を発光β-gal検出キット(C
lontech社)で測定した。
結果
まず第一に、我々は、マウスCXCR4がHIV-1のenvを介した膜融合を支持するか
どうかを検討するために、env蛋白質を発現するエフェクター細胞(HeLaS3細胞
)とヒトCD4と受容体を発現するターゲット細胞(NIH3T3細胞)との融合により
β-Galの活性化が起こるアッセイシステムを用いて実験した。このアッセイでは
、エフェクター細胞であるHeLaS3細胞には遺伝子組み換えワクシニアウイルスを
感染させてβ-Galのα-subunitとHIV-1のenv蛋白質を発現させ、ターゲット細胞
であるNIH3T3細胞には遺伝子組み換えワクシニアウイルスを感染させて、β-Gal
のω-subunit、T7 polymerase、ヒトCD4を発現させた。ウイルス感染後
にNIH3T3細胞には更にヒトCXCR4、ヒトCCR5或いは、マウスCXCR4を含むプラスミ
ドをトランスフェクトした。一晩培養後に、エフェクター細胞とターゲット細胞
を混合して培養した。細胞融合が起こると、融合細胞の細胞質に含まれるβ-Gal
のα-subunitとω-subunitが会合し、β-Galが活性化する。図8に示すように、
T細胞株指向性HIV-1であるNL432由来のenv蛋白質を発現するHeLaS3細胞はヒトCX
CR4とヒトCD4を発現するNIH3T3細胞とは融合するが、ヒトCCR5とヒトCD4を発現
するNIH3T3細胞とは融合しなかった。
驚いた事に、NL432由来のenv蛋白質を発現するHeLaS3細胞はマウスCXCR4とヒ
トCD4を発現する細胞にも同様に融合した。単球指向性HIV-1であるSF162由来のe
nv蛋白質を発現するHeLaS3細胞はヒトCCR5とヒトCD4を発現するNIH3T3細胞とは
融合するが、ヒト或いはマウスCXCR4とヒトCD4を発現するNIH3T3細胞とは融合し
なかった。
第二に我々は、マウスCXCR4を発現した細胞にウイルスが感染するかを検討し
た。ヒトCXCR4とCD4を発現したマウス細胞ではNIH3T3細胞も含めHIV-1の複製効
率が低いので、ヒト小腸上皮細胞由来のSW480細胞、骨芽細胞由来のHOS細胞、グ
リア細胞由来のU87MG細胞の3種のヒト細胞株をウィルス感染のターゲット細胞と
して使用した。それらの細胞にはHIV-1のLTRをプロモーターとして持つレポータ
ー遺伝子(lacZ)をトランスフェクトした。ウイルスが細胞に感染すると、HIV-
1由来の転写活性化因子であるTat蛋白が発現され、LTRに作用してlacZの発現を
誘導する。それらの細胞に、更にヒトCD4とケモカイン受容体をトランスフェク
トした後に、T細胞株指向性ウイルス株(NL432、IIIB)或いは、単球指向性ウイ
ルス株(SF162)を感染させた。図9に示すように、NL432とIIIBはマウスCXCR4
とヒトCD4を発現するSW480にもヒトCXCR4とヒトCD4を発現するSW480にも同様に
感染した。この結果は、上記の融合アッセイの結果と一致するものであった。し
かし、ヒトCCR2bやCCR5をCXCR4の代わりに発現した場合はそれらのウイルスは感
染しなかった。
一方SF162は、ヒトCCR5とヒトCD4を発現するSW480には感染したが、マウスCXC
R4とヒトCD4を発現する細胞やヒトCXCR4とヒトCD4を発現する細胞には感染しな
かった。また、HOS細胞やU87MG細胞をSW480細胞の代わりに用いても同様の結果
であった(図10と図11)。すなわち、マウスCXCR4は、T細胞株指向性HIV-1
のターゲット細胞へのエントリーを支持する事、そして、ヒト細胞におけるプロ
ウィルスのDNAの合成、ゲノムDNAへの組み込み、ウイルスの発現に影響しない事
が示唆された。
ところで、ヒトCXCR4を介するHIV-1のエントリは、env蛋白のV3ループに対す
る単クローン抗体によって阻害されることが明らかとなっている。そこで、我々
はマウスCXCR4の機能がヒトCXCR4と同様であることを確認するために、(T細胞
株指向性ウイルス株の)env蛋白(gp120)のV3ループがマウスCXCR4を介するHIV-1
エントリにも必要であるかを検討した。そのために、ヒトCD4とケモカイン受容
体を発現するSW480細胞に、NL432とSF162のキメラウィルスのクローンであるNL4
32env-162或いはNL432V3-162を感染させた。図12に示すように、NL432env-162
はT細胞株指向性ウイルス株NL432のenv領域を単球指向性HIV-1であるSF162のも
のに置換したプロウィルスクローンであり、NL432V3-162は、NL432のenvのV3ル
ープをSF162のものに置換したプロウィルスクローンである。NL432はマウスCXCR
4とヒトCD4を発現するSW480に感染したが、NL432env-162及びNL432V3-162はそれ
らの細胞に感染しなかった(図13)。
一方、NL432env-162とNL432V3-162は、ヒトCCR5とヒトCD4を発現するSW480細
胞には感染した(図13)。これらの結果から、NL432のenvのV3ループがマウス
CXCR4でもヒトCXCR4の場合と同様にウィルスのエントリーに必要であることが明
らかになった。
論議
以上の研究より、マウスCXCR4がT細胞株指向性HIV-1のenvを介する細胞
膜融合とT細胞株指向性HIV-1の感染を支持する事が明らかとなった。これらの結
果はマウスCXCR4がHIV-1の感染に対する種特異的な障壁ではないことを示唆する
ものである。これまでの研究で、ヒトCD4をNIH3T3やT細胞クローン3DTなどのマ
ウスのリンパ球或いは非リンパ球細胞株に発現しても、HIV-1は吸着は起こるか
エントリは起こらない事が明らかとなっていた。この結果の解釈の1つは、ヒト
CD4を発現させたマウス細胞表面にCXCR4が発現していないというものである。実
際、マウスPBSF/SDF-1刺激は、NIH3T3細胞の細胞内カルシウム濃度の変化を誘導
しない。しかし、マウスCXCR4は、CD4とCD8が共に陽性の胸腺細胞や、CD4或いは
CD8のいずれかが陽性の胸腺細胞には発現している。従って、実験に用いられた3
DT細胞がCXCR4を発現しているかどうかを決定することか(上記の解釈が正しい
かを検証する上で)重要である。
最近の研究で単球指向性HIV-1の受容体であるヒトCCR5のマウス相同体(マウ
スCCR5)はHIV-1のエントリーを支持しない事が明らかとなった。この結果は単
球指向性HIV-1に対する受容体とT細胞株指向性HIV-1に対する受容体とで種特異
性が異なることを示唆している。この差異は、CCR5を含む他のケモカイン受容体
と比較してCXCR4は種間でアミノ酸配列が高度に保存されている事が原因である
かもしれない。マウスCXCR4のアミノ酸配列はヒトCXCR4と90%一致しているが、C
CR5やCXCR2では、マウスとヒトでそれぞれ82%、71%しか一致していない。CXCR4
の種間における高度な保存は、CCR5のリガンドであるMIP-1α,MIP-β,RANTESな
ど他のケモカインと比較すると、CXCR4のリガンドであるPBSF/SDF-1はユニーク
な機能を持つという事実を反映している。PBSF/SDF-1以外のケモカインは炎症に
おける白血球の遊走に関与していると考えられているのに対し、PBSF/SDF-1は、
造血や心臓形成など生体発生に必須な機能を持っている。
これまでの研究と、ヒトCD4とケモカイン受容体を発現したマウス細胞株NIH3T
3はHIV-1エントリを支持するものの、ヒトの細胞と比較してウイルス粒子の産生
効率が低いという事実から、マウス細胞にはHIV-1の複製に必要な細胞内分
子が欠損していると考えられる。しかし、種特異的な障壁の原因となる分子のヒ
ト遺伝子を導入したトランスジェニックマウスを作製することによってHIV-1感
染のモデルマウスを開発できるであろう。我々の結果は、ヒトCXCR4遺伝子をHIV
-1感染のモデルマウスに導入する必要はない事を明らかにした。またCXCR4の生
理的な発現の方がAIDS発症に至る単球指向性HIV-1からT細胞株指向性HIV-1への
移行の開始や進行を研究するのに適しているので、HIV-1感染の全過程をシュミ
レートするための動物モデルを開発する上で有益な情報を提供した。
産業上の利用可能性
本発明により、AIDSの治療薬及びHIV−1の感染の作用機序等の研究に
有用な、新規なマウスCXCケモカインレセプター遺伝子、該遺伝子にコードさ
れるポリペプチド、該ポリペプチドの発現ベクター、該発現ベクターを導入した
形質転換体、前記ポリペプチドに対する単クローン抗体、さらには前記形質転換
体を用いる前記ポリペプチドの生産方法、さらには、前記レセプターのアゴニス
ト又はアンタゴニストのスクリーニング方法、及びHIV−1感染阻害剤のスク
リーニング方法の提供が可能となった。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI
C07K 16/28
A61K 38/18
38/19
G01N 33/577
(72)発明者 吉田 進昭
奈良県香芝市穴虫1401
(72)発明者 中島 俊洋
大阪府豊中市長興寺北3丁目13−31−303
(72)発明者 義江 修
兵庫県西宮市北六甲台5丁目22−17
(注)この公表は、国際事務局(WIPO)により国際公開された公報を基に作
成したものである。
なおこの公表に係る日本語特許出願(日本語実用新案登録出願)の国際公開の
効果は、特許法第184条の10第1項(実用新案法第48条の13第2項)に
より生ずるものであり、本掲載とは関係ありません。
Claims (23)
- 1. 配列表の配列番号:17に記載のアミノ酸配列の全部又は一部からなるポ リペプチド、又は該ポリペプチドを含むポリペプチドであって、マウスPBSF/SDF -1と結合可能なレセプター活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
- 2. 配列表の配列番号:17に記載のアミノ酸配列の全部又は一部のアミノ酸 配列において、1以上のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入又は置換の少なくとも 一つが生じ、かつマウスPBSF/SDF-1と結合可能なレセプター活性を有するポリペ プチドをコードするDNA。
- 3. 配列表の配列番号:1に記載の塩基配列の全部又は一部からなるDNA、 又は該DNAを含むDNAであって、マウスPBSF/SDF-1と結合可能なレセプター 活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
- 4. 配列表の配列番号:1に記載の塩基配列の全部又は一部のDNA、又は該 DNAを含むDNAであって、1以上の塩基の欠失、付加、挿入又は置換の少な くとも一つが生じ、マウスPBSF/SDF-1と結合可能なレセプター活性を有するポリ ペプチドをコードするDNA。
- 5. 請求項1〜4いずれか記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブ リダイズするDNAであって、マウスPBSF/SDF-1と結合可能なレセプター活性を 有するポリペプチドをコードするDNA。
- 6. 請求項1〜5いずれか記載のDNAによりコードされるポリペプチドであ って、マウスPBSF/SDF-1と結合可能なレセプター活性を有するポリペプチド。
- 7. 配列表の配列番号:17に記載のアミノ酸配列の全部又は一部からなるポ リペプチド、又は該ポリペプチドを含むポリペプチドであって、マウスPBSF/SDF -1と結合可能なレセプター活性を有するポリペプチド。
- 8. 配列表の配列番号:17に記載のアミノ酸配列の全部又は一部のアミノ酸 配列において、1以上のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入又は置換の少なくとも 一つが生じ、かつマウスPBSF/SDF-1と結合可能なレセプター活性を有するポリペ プチド。
- 9. マウスB前駆細胞株DW34に由来する、請求項6〜8いずれか記載のポ リペプチド。
- 10. 請求項1〜5いずれか記載のDNAを含む発現ベクター。
- 11. 請求項10記載の発現ベクターを宿主に導入して得られる形質転換体。
- 12. 宿主が哺乳類細胞株である請求項11記載の形質転換体。
- 13. 請求項11又は12記載の形質転換体を、請求項10記載の発現ベクタ ーの発現可能な条件下で培養することを特徴とする、マウスPBSF/SDF-1と結合可 能なレセプター活性を有するポリペプチドの生産方法。
- 14. 請求項6〜9いずれか記載のポリペプチドに対する単クローン抗体。
- 15. マウスPBSF/SDF-1を含有し、AIDS発症阻害剤又はHIV−1感染阻 害剤として用いられる医薬組成物。
- 16. 請求項6〜9いずれか記載のポリペプチド及びヒトCD4タンパク質を 発現する細胞。
- 17. (a)請求項6〜9いずれか記載のポリペプチドを発現する細胞又は請 求項16記載の細胞;ヒトT細胞株指向性HIV−1;及びスクリーニングの対 象となる物質を混合してインキュベートを行う工程、及び (b)該細胞におけるHIV-1の局在性を分析する工程、 を含んでなることを特徴とする、AIDS発症阻害剤又はHIV−1感染阻害剤 をスクリーニングする方法。
- 18. HIV-1の局在性を分析する工程を、ヒトT細胞株指向性HIV−1に対 するモノクローナル抗体を用いて行う、請求項17記載の方法。
- 19. (a)請求項6〜9いずれか記載のポリペプチドを発現する細胞又は請 求項16記載の細胞;HIV−1エンベロープタンパク質を発現する細胞;及び スクリーニングの対象となる物質を混合してインキュベートを行う工程、及び (b)HIV−1エンベロープタンパク質を発現する細胞と該細胞との融合性を 測定する工程、 を含んでなることを特徴とする、AIDS発症阻害剤又はHIV−1感染阻害剤 をスクリーニングする方法。
- 20. (a)請求項6〜9いずれか記載のポリペプチドを発現する細胞又は請 求項16記載の細胞;マウス又はヒトPBSF/SDF-1;及びスクリーニングの対象と なる物質を混合してインキュベートを行う工程、及び (b)該細胞内のカルシウムイオン濃度を測定する、及び/又は発現したポリペ プチドと該マウス又はヒトPBSF/SDF-1との結合活性を測定することを特徴とする 、AIDS発症阻害剤若しくはHIV−1感染阻害剤、又は該PBSF/SDF-1のアゴ ニスト若しくはアンタゴニストをスクリーニングする方法。
- 21. 該アンタゴニストが造血幹細胞遊離促進剤である請求項20記載の方法 。
- 22. 請求項6〜9いずれか記載のポリペプチドを発現する細胞又は請求項1 6記載の細胞を含む、AIDS発症又はHIV−1感染を検出するためのキット 。
- 23. (a)請求項6〜9いずれか記載のポリペプチドを発現する細胞又は請 求項16記載の細胞、及びHIV−1に感染していることが疑われる患者の血清 、血球又は血液を混合してインキュベートを行う工程、及び (b)該細胞におけるHIV-1の局在性を分析する、又はHIV−1感染細胞と該細 胞との融合性を測定する工程、 を含んでなることを特徴とする、AIDS発症又はHIV−1感染を検出する方 法。
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