JP7727195B2 - マルテンサイト系ステンレス鋼の溶接継手、溶接構造体および溶接方法 - Google Patents
マルテンサイト系ステンレス鋼の溶接継手、溶接構造体および溶接方法Info
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Description
(a)
マルテンサイト系ステンレス鋼の溶接に際してのHAZの靭性低下と改善のメカニズムについて検討した。各種マルテンサイト系ステンレス鋼において、溶接および溶接後の熱処理による熱サイクル(温度の経時変化)をシミュレーションし、HAZ組織の変化を実験により確認した。その結果、溶接時の入熱によりHAZのマルテンサイト結晶が粗大化し、これが靭性悪化の要因となっていることが分かった。さらに、この結晶粗大化は溶接入熱量が大きいほど顕著で、その結果HAZ靭性もより低下することが分かった。
一方、HAZを1000℃程度に再加熱すると粗大マルテンサイト結晶(以下「粗大マルテンサイト」と呼ぶことがある。)が微細なマルテンサイト結晶(以下「微細マルテンサイト」と呼ぶことがある。)に変化し、靭性が改善されることが確認された。
他方、1300℃程度に加熱した場合は、微細マルテンサイトにならず靭性が改善されなかった。また、800℃未満に加熱した場合も、微細マルテンサイトにならず靭性が改善されないことが分かった。
また、成分によっては上記の微細マルテンサイト化を生じないものも見られた。図1に一例として11.3%Cr-0.95%Ni鋼(11.3%Cr鋼とも呼ぶ。)と13.75%Cr-0.88%Ni鋼(13.75%Cr鋼とも呼ぶ。)の熱サイクル試験での組織を示す。溶接時を模擬した入熱(初回入熱)により11.3%Cr鋼では全てが粗大マルテンサイト相になっているが、13.75%Cr鋼はフェライト相が主体で一部マルテンサイト相が存在する組織となっている。これを再加熱(再入熱)すると、11.3%Cr鋼は全てが微細マルテンサイトとなっているが、13.75Cr鋼はフェライト相部分が粗大なフェライト相のまま残存し、そのため靭性も低いままであった。
さらに検討を進め、微細マルテンサイト化のメカニズムについて考察した。溶接後にHAZのマルテンサイト結晶が粗大化し靭性が悪化することは既に述べたが、一方、マルテンサイト相は内部に微細な転位が高密度に存在することは良く知られている。再加熱してマルテンサイト相がオーステナイト相に変態する際に、この微細転位がオーステナイトの生成核となり、微細な結晶粒のオーステナイト相(以下、微細オーステナイト相と呼ぶ。)に変態するものと思われる。次に、この微細オーステナイト相が急冷されるため、微細マルテンサイトが得られるものと思われる。この効果は最初の入熱で大部分がマルテンサイト相になる成分でなければ達成できず、また再加熱温度が、オーステナイト変態温度より低い800℃未満の場合、もしくはオーステナイト相が粗大結晶のフェライト相に再変態する再変態温度より高い1250℃以上の場合では得られないものである。これらのことから、溶接による入熱でマルテンサイト相になる成分であって、溶接後の再加熱によりオーステナイト相になる温度で維持することにより、HAZにおいて微細化したマルテンサイトが得られ、HAZ靭性が改善することを見出した。
本発明者らは、さらに溶接構造体に対し、熱処理炉を使わずに、そのような温度履歴(熱サイクル)を付与する再加熱方法を検討した。その結果、特許文献4にあるような二相ステンレス鋼の溶接部の再加熱手法を想起し、一旦溶接により溶接継手を作成した後に、その溶接金属の一部を再溶接(厳密にいうと入熱のための溶接)し、HAZの粗大結晶のマルテンサイト部分を再加熱することを思い付いた。
[1]
少なくとも一方が、質量%で、
C :0.030%以下
Si:1.00%以下
Mn:0.10~3.00%、
P :0.050%以下、
S :0.003%以下、
Cr:10.0~13.5%、
Ni:0.10~3.00%、
N :0.0200%以下、
Cu:2.00%以下、
Al:0.050%以下を含み、
C+N:0.040%以下であり、
残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
式1で示されるγmaxが75以上あるマルテンサイト系ステンレス鋼である溶接継手であって、
前記溶接継手を構成する溶接金属の少なくとも一部に再溶接部を有し、
前記溶接継手の前記再溶接部に対応する前記マルテンサイト系ステンレス鋼の溶接熱影響部において、結晶粒径が面積同等円相当径で0.05mm以下のマルテンサイト結晶が面積率で75%以上であることを特徴とするマルテンサイト系ステンレス鋼の溶接継手。
γmax=420C+470N+23Ni+9Cu+7Mn-11.5Cr-11.5Si-52×Al+189 : 式1
ただし、式中の元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を示し、含有しない場合は0を代入する。
[2]
前記マルテンサイト系ステンレス鋼が、さらに、質量%で
Mo:1.00%以下、
W :0.50%以下
V :0.30%以下、
Sn:0.100%以下、
Ca:0.0050%以下、
Mg:0.0050%以下
REM:0.050%以下、
Ti:0.020%以下、
Nb:0.05%以下、
B :0.0050%以下、
の1種または2種以上を含有する、[1]に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼の溶接継手。
[3]
前記マルテンサイト系ステンレス鋼どうしの溶接継手である、[1]または[2]に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼の溶接継手。
[4]
少なくとも前記[1]または[2]に記載の成分を有するマルテンサイト系ステンレス鋼を有する溶接継手の製造方法であって、
前記溶接継手を構成する溶接金属の少なくとも一部を再溶接し、
前記再溶接の入熱量をQ(J/mm)としたとき、
前記溶接継手を構成する溶接金属と再溶接による溶接金属との溶融境界線と、前記溶接継手を構成する溶接金属と前記マルテンサイト系ステンレス鋼の境界である溶融境界線との間の距離のうち、最も短い距離をL(mm)としたとき、
式2を満たすことを特徴とするマルテンサイト系ステンレス鋼の溶接継手の製造方法。
0.01≦L/√Q≦0.11 :式2
Q=I×V/v :式3
ただし、
I:溶接電流(A)
V:溶接電圧(V)
v:溶接速度(mm/秒)
[5]
前記再溶接における溶加材は、前記溶接継手で用いた溶加材、オーステナイト系ステンレス鋼用溶加材、または二相ステンレス鋼用溶加材から選ばれる、前記[4]に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼の溶接継手の製造方法。
[6]
前記溶接継手を構成する前記マルテンサイト系ステンレス鋼において、前記最も短い距離Lに対応する前記溶融境界線に隣接する溶接熱影響部(HAZ)において、結晶粒径が面積同等円相当径で0.05mm以下のマルテンサイト相が面積率で75%以上である、前記「4」または[5]に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼の溶接継手の製造方法。
[7]
前記[1]~[3]の何れか一項に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼の溶接継手を少なくとも一部に有することを特徴とする溶接構造体。
以下、本発明の実施に形態の一例について説明する。なお、特に断りのない限り、元素の含有量に関する「%」は質量%を意味する。また、特に下限を規定していない場合は、含有しない場合(0%)を含んでよい。さらに、式において元素記号を用いている場合は、元素記号は、各元素の含有量(質量%)を示し、含有していない場合は0(%)を代入するものとする。
Cは、強度を向上する効果を奏するが、一方で溶接割れ感受性を高める。このため、溶接時に予熱を必要としない本発明に係る鋼では極力低減するとよく、0.030%以下とする。C含有量の上限は、好ましくは0.028%、0.026%、0.024%、0.022%、0.020%、または0.018%の値を取り得る。
一方、C含有量の下限は特に限定せず、含まなくても(0%でも)よい。しかしC含有量の過度な低減は極端なコストの増加につながるため0.001%を下限としてもよく、好ましくは0.002%、0.003%、0.004%または0.005%にするとよい。
Siは、精錬時における脱酸効果を奏するとともに、熱処理時の酸化スケール生成を抑制するのにも有用であるが、Siはオーステナイト単相の温度域を狭くし、靭性も低下するために1.00%以下とする。オーステナイト単相温度域を確保する観点から、Si含有量の上限は、0.90%、0.80%、0.70%、0.60%、0.55%、0.50%、0.45%、または0.40%の値を取り得る。
一方、Si含有量の下限は特に限定せず、含まなくても(0%でも)よい。しかし、Siは精錬工程において脱酸元素でもあるので、Si含有量の下限を0.01%としてもよく、好ましくは0.03%、0.05%、0.08%、0.10%、0.13%、0.15%、0.17%または0.18%の値を取り得る。
Mnは、精錬時における脱酸効果を奏するとともに、オーステナイト単相域を拡大する。その効果を得るためにMn含有量は0.10%以上にするとよい。オーステナイト単相域の拡大効果を確実に得る観点から、Mn含有量の下限は0.20%、0.30%、0.40%、0.50%、または0.60%の値を取り得る。
一方、必要以上のMnは耐食性を低下させ、酸化スケールの生成を促進するため、Mn含有量は3.00%以下にするとよい。MnS等の粒化物に起因する耐食性の低下も考慮するとMn含有量の上限は、2.80%、2.60%、2.50%、2.40%、2.30%、2.20%、2.10%、または2.00%の値を取り得る。
Pは原料である溶銑やフェロクロム等の主原料中に不純物として含まれる元素である。Pは、熱間延性低下の主要な原因となる元素であることからその含有量はできるだけ低減させた方がよい。この観点から、P含有量は0.050%以下にするとよい。好ましくはP含有量の上限を0.045%、0.040%、0.035%、または0.030%、であるとよい。
しかしながら、過度な低減は極端なコストの増加につながるため、P含有量の下限は0.001%、0.005%、または0.010%であるとよい。
Sは、硫化物系介在物を形成し、鋼材の一般的な耐食性(全面腐食や孔食)を劣化させる元素であり、また、熱間延性を低下させ熱延鋼板の耳割れ感受性を高めるため、その含有量はできるだけ少ない方が好ましい。また、SとPが共存する場合、特に熱間延性を低減し割れ感受性を高めることがあるため、Sを特に制限し、S含有量は0.0030%以下とする。これらの観点から、S含有量はできるだけ少ない方がよいので、その上限は、好ましくは0.0020%、または0.0010%であるとよい。一方、Sの含有量は少ないほど熱間加工性および耐食性は良好となるが、低S化には脱硫負荷が増大し、製造コストが増大するので、その含有量の下限は0.0001%であってもよく、好ましくは0.0003%の値を取り得る。
Crは、マルテンサイト系ステンレス鋼において耐食性を確保するために、その含有量は10.00%以上であるとよい。耐食性確保の観点からCr含有量の下限は、好ましくは10.10%、10.20%、10.30%、10.50%、10.70%、10.90%、11.00%、11.10%、または11.20%の値を取り得る。
一方、Cr含有量が多過ぎると、最初の溶接入熱時にHAZがフェライト相メインとなり、再熱時の微細化効果がなされないため、Cr含有量は13.50%以下の必要がある。Cr含有量の上限は、好ましくは13.40、13.30%、13.20%、13.10%、13.00%、12.90%、12.80%、12.70%、12.60%、または12.50%の値を取り得る。
Niは、Mnと同様にオーステナイト安定化元素であり、オーステナイト単相域を拡大し靭性を向上させるとともに、孔食の進展を抑制する効果も有す。この観点から、Ni含有量は0.10%以上とする。これらの効果を確実にする観点から、Ni含有量の下限は0.15%、0.20%、0.25%、0.30%、0.35%、0.40%、0.45%、または0.50%の値を取り得る。
一方、多量含有すると、残留オーステナイト相が生成して硬度を低下させることと、合金コストの観点から、Ni含有量は3.00%以下とする。Ni含有量の上限は、2.80%、2.60%、2.40%、2.20%、2.00%、1.80%、1.60%、1.40%、1.20%、1.00%、0.90%、または0.80%の値を取り得る。
Nは、オーステナイト生成元素であるが、Cと同様に溶接割れ感受性を高めることから、極力低減するとよく、N含有量を0.0200%以下とする。N含有量の上限は、好ましくは、0.0180%、0.0160%、0.0150%、0.0140%、0.0130%、0.0120%、0.0110%、または0.0100%の値を取り得る。
一方、N含有量の下限は特に限定せず、含まなくても(0%でも)よい。しかしN含有量の過度な低減は極端なコストの増加につながるため0.0010%を下限としてもよく、好ましくは0.0030%、または0.0050%の値を取り得る。
Cuは、オーステナイト安定化効果があるので含有してもよい。しかし、Cuを過剰に含有すると熱間加工性の低下や原料コストの増加につながるため、Cu含有量は2.00%以下とする。Cu含有量の上限は、好ましくは1.80%、1.60%、1.40%、1.20%、1.00%、0.90%、0.80%、0.70%、0.60%、または0.50%、の値を取り得る。
Cuは含まなくても良いので、その含有量の下限は0%であるが、Cu除去にコストがかかるため、Cu含有量の下限を0.01%にしてもよい。好ましくは0.10%、または0.20%の値を取り得る。
Alは、脱酸元素であり、耐酸化性を向上させる元素であるので、含有してもよい。一方、Alの過剰含有は大型の酸化物系介在物の形成しやすくなり、靭性を損ねる。このため、Al含有量は0.050%以下とする。好ましくは0.040%、または0.030%の値を取り得る。
Alは含まなくても良いので、その含有量の下限は0%であるが、Al除去にコストがかかるため、Al含有量の下限を0.001%にしてもよい。好ましくは0.005%の値を取りうる。ここでAl含有量はT.Al(トータルAl)含有量である。
炭素Cは窒素Nと組合せることにより鋼の強度を高める効果があるが、溶接割れ感受性を高める。予熱を行わなくても溶接割れを生じない条件として、CとNの総量(C+N)を0.040%以下に制限する。CとNの総量(C+N)の上限は、好ましくは0.039%、0.038%、0.037%、0.036%、0.035%、0.034%、0.033%、0.032%、0.031%、0.030%、0.029%、0.028%、0.027%、0.026%、または0.025%の値を取り得る。
Moは、δフェライトを含むマルテンサイト組織の耐食性向上に有効であるため含有してもよい。しかし、Moはフェライト相の安定化元素であり、過度の添加は、Crと同様にHAZのフェライト相が多くなる。さらに、Moは高価な元素でもあるため、Mo含有量は1.000%以下とする。Mo含有量の上限は、好ましくは0.900%、0.800%、0.700%、0.600%、0.500%、0.450%、0.400%、0.350%、0.300%、0.250%、0.200%、0.150%、または0.100%の値を取り得る。
Mo含有量の下限は特に限定しないが、Mo除去にコストがかかるため、好ましくは0.005%、または0.010%の値を取り得る。
Wは、Moと同様にステンレス鋼の耐食性を向上させる元素であり、含有してもよい。しかし、高価な元素であるので0.50%以下にするとよい。好ましくは0.40%、または0.30%以下にするとよい。Wを含有する場合、その効果をより確実に得るため0.01%以上含有するとよく、好ましくは0.05%以上、さらに好ましくは0.10%以上にするとよい。
Vは、微細な炭窒化物を形成し、耐磨耗性を向上させる他、耐食性の向上にも効果を有するため、含有してもよい。一方、過剰に含有すると、析出物の粗大化を招くおそれがあり、その結果、靭性が低下してしまうので、V含有量の上限は0.30%、好ましくは0.20%または0.10%であるとよい。
V含有量の下限は特に限定しないが、製造コストや製造性を考慮すると0.01%、0.03%、0.05%、または0.07%であるとよい。
Snは焼入れ後の耐食性向上に有効な元素であるが、過度な添加は熱延時の耳割れを促進する。そのためSn含有量の上限は0.100%、好ましくは0.090%、0.080%、0.070%、0.060%、または0.050%であるとよい。Sn含有量の下限は特に限定しないが、効果を確実に得る観点から0.001%、好ましくは、0.002%、0.005%、0.010%、0.015%、または0.020%であるとよい。
Mg:0.0050%以下
CaおよびMgはそれぞれ製鋼段階で成分調整のために添加される場合があり、強力な脱酸材として作用し、脱酸を促進させる効果および熱間延性を改善する効果があるため含有してもよい。一方、耐食性を低下させる懸念があるので、CaやMg含有量は、それぞれ0.0050%以下とする。CaやMg含有量の上限は、好ましくはそれぞれ0.0030%0.0020%の値を取り得る。
CaやMg含有量の下限は特に限定しないが、効果を確実に得る観点からそれぞれ0.0001%、好ましくは0.0002%、0.0003%、0.0004%、または0.0005%であるとよい。
REMを適量含有することにより、Caと同様に熱間延性の顕著な向上が見られる。この効果を得るため、REMの含有量の下限は0.001%、0.002%、0.003%、0.004%、または0.005%とするとよい。
一方、過度に添加すると大型のREM系酸化物が形成しやすくなり、鋳造時のノズル詰まり等を引き起こすので好ましくなく、REM含有量の上限を0.050%または0.030%とするとよい。REMは通常、複合体であるミッシュメタルの形で添加することが多いが、La,Ce、Pr、Nd等の単体元素での添加でも同様の効果を示す。ここでREM(希土類元素)は、一般的な定義に従い、スカンジウム (Sc)、イットリウム (Y)の2元素と、ランタン(La)からルテチウム(Lu) までの15元素(ランタノイド)の総称を指す。これらのREM元素を単独で含有してもよいし、複数のREM元素を含有してもよい。複数のREM元素を含有する場合、それらの総量が上記下限および上限の範囲内に入っているとよい。
Nb:0.05%以下
B:0.0050%以下
Ti、Nbは耐食性、Bは熱間延性を改善する効果があり、Ti:0.020%以下、Nb:0.05%以下、B:0.0050%以下を含有してもよい。Ti、Nb、Bの各元素は含まなくてもよいが、過度に除去する必要もない。そのためこれら各元素の含有量の下限は特に限定しないが、Ti:0.001%、Nb0.01%、B:0.0001%としてもよい。
γmaxは式1で示され、900℃~1000℃域で生成するオーステナイト相率の最大値を予測する指標である。ここで、式1中の元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を示し、含有しない場合は0を代入する。
γmax=420C+470N+23Ni+9Cu+7Mn-11.5Cr
-11.5Si-52×Al+189 : 式1
前記説明したマルテンサイト系ステンレス鋼の製造方法は特に限定しない。常法の製造方法を適用して製造することができる。なお、低C+N鋼(低炭素・低窒素含有鋼)であるので極端な硬質にはならず、靭性も比較的良好であるので、一般のマルテンサイト系ステンレス鋼とは異なり長時間の焼きなまし等は必要なく、熱延後の水冷もしくは空冷でマルテンサイト相となったものを約700℃~800℃で短時間の焼き戻し熱処理をすることで十分な特性を有することができる。
本発明の実施形態における溶接継手の構造は、特に限定しない。例えば、突合せ溶接や隅肉溶接、重ね隅肉溶接など、通常用いられる溶接継手構造を採用することができる。また、溶接手段も特に限定しない。例えば、TIG溶接、MIG溶接、MAG溶接、プラズマ溶接、サブマージ溶接などのいわゆるアーク溶接やレーザー溶接などの既存の溶接手段を適用することができる。特に貯蔵設備のような厚手鋼材(厚板)の場合は、溶加材を伴うアーク溶接が一般的である。その場合、溶加材(溶接ワイヤー等)も特に限定しないが、マルテンサイト系ステンレス鋼と相性のよい、オーステナイト系ステンレス鋼または二相系ステンレス鋼用の溶加材を用いるとよい。
溶接継手を構成するマルテンサイト系ステンレス鋼板の板厚は特に限定しないが、薄すぎると初期の溶接金属上への再溶接が困難になるので、好ましくは板厚6mm以上、8mm以上、10mm以上、12mm以上、15mm以上、20mm以上、25mm以上、または30mm以上であるとよい。
次に、図2、3を用いて、本発明の実施形態の一例を示す突合せ溶接による溶接継手を例に説明する。
特に、継手に曲げ荷重がかかると継手表面近傍が亀裂発生源となるので、継手表面近傍の靭性改善が継手全体の靭性改善に寄与することから、継手表面近傍(さらに具体的には母材となるステンレス鋼のHAZ表面近傍)の靭性改善に着目して開発を進めた。
再加熱方法は、特に限定しない。しかしながら、溶接後の構造体をそのまま熱処理するような熱処理炉を準備することは現実的ではない。特に、貯蔵設備や船の貯槽などの溶接構造体は大型構造であるのでそのまま熱処理することは困難である。また、局所的に熱処理する手法を用いることもできるが、溶接構造体は種々個別の形状をしているため、汎用的に局所的加熱できるような装置はない。そのため、溶接構造体となっても溶接継手部を局所的且つ簡便に加熱できる手法を検討し、特許文献4に記載されているように、再加熱する熱源として溶接熱を適用することを着想した。
0.01≦L/√Q≦0.11 :式2
Q=I×V/v :式3
L:初期の溶接の溶融境界線と再溶接金属の溶融境界線との最短距離(mm)
Q:溶接入熱量(J/mm)
I:溶接電流(A)
V:溶接電圧(V)
v:溶接速度(mm/秒)
溶接により構成された構造体、即ち溶接継手を有する構造体を溶接構造体という。本発明に係る溶接構造体は、上記説明した溶接継手を少なくとも1か所以上有する溶接構造体である。本発明に係る溶接継手を有することにより、その溶接継手部の靭性を改善することができる。しかも、上記説明した再溶接方法を適用することにより、溶接構造体を形成した後であっても簡便に靭性改善を行うことが可能となる。
表1に示す成分の鋼を実験室の50kg真空誘導炉によりMgOるつぼ中で溶製し、厚さが約100mmの扁平鋼塊に鋳造した。鋼塊の本体部分より熱間圧延用素材を加工し、1150~1250℃の温度に1~2h加熱後、熱間圧延により、板厚15mmの熱延鋼板とした。最終の溶体化熱処理は700℃×20分均熱後水冷の条件で実施した。得られた熱延板から、それぞれ長さ200mm幅100mmの短冊状の鋼試験材を複数枚(少なくとも4枚)準備した。
2 溶接金属
3 溶融境界線
4 高温熱影響部(最高到達温度が1100℃以上の溶接熱影響部)
5 母材(マルテンサイト系ステンレス鋼材)
6 初期の溶接継手の溶接金属(初期の溶接金属)
7 高温熱影響部(最高到達温度が1100℃以上の溶接熱影響部)
8 再溶接の溶接金属(再溶接溶融金属)
9 初期の溶接継手の溶融境界線(初期の溶融境界線)
10 再溶接金属の溶融境界線(再溶接溶融境界線)
Claims (7)
- 少なくとも一方が、質量%で、
C :0.030%以下
Si:1.00%以下
Mn:0.10~3.00%、
P :0.050%以下、
S :0.003%以下、
Cr:10.0~13.5%、
Ni:0.10~3.00%、
N :0.0200%以下、
Cu:2.00%以下、
Al:0.050%以下を含み、
C+N:0.040%以下であり、
残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
式1で示されるγmaxが75以上あるマルテンサイト系ステンレス鋼である溶接継手であって、
前記溶接継手を構成する溶接金属の少なくとも一部に再溶接部を有し、
前記溶接継手の前記再溶接部に対応する前記マルテンサイト系ステンレス鋼の溶接熱影響部において、結晶粒径が面積同等円相当径で0.05mm以下のマルテンサイト結晶が面積率で75%以上であることを特徴とするマルテンサイト系ステンレス鋼の溶接継手。
γmax=420C+470N+23Ni+9Cu+7Mn-11.5Cr-11.5Si-52×Al+189 : 式1
ただし、式中の元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を示し、含有しない場合は0を代入する。 - 前記マルテンサイト系ステンレス鋼が、さらに、質量%で
Mo:1.00%以下、
W:0.50%以下、
V :0.30%以下、
Sn:0.100%以下、
Ca:0.0050%以下、
Mg:0.0050%以下、
REM:0.050%以下、
Ti:0.020%以下、
Nb:0.05%以下、
B :0.0050%以下、
の1種または2種以上を含有する、請求項1に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼の溶接継手。 - 前記マルテンサイト系ステンレス鋼どうしの溶接継手である、請求項1または2に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼の溶接継手。
- 少なくとも前記請求項1または2に記載の成分を有するマルテンサイト系ステンレス鋼を有する溶接継手の製造方法であって、
前記溶接継手を構成する溶接金属の少なくとも一部を再溶接し、
前記再溶接の入熱量をQ(J/mm)としたとき、
前記溶接継手を構成する溶接金属と再溶接による溶接金属との境界線と、前記溶接継手を構成する溶接金属と前記マルテンサイト系スレンテス鋼の境界である溶融境界線との間の距離のうち、最も短い距離をL(mm)としたとき、
式2および式3を満足することを特徴とするマルテンサイト系ステンレス鋼の溶接継手の製造方法。
0.01≦L/√Q≦0.11 :式2
Q=I×V/v :式3
ただし、 I:溶接電流(A)
V:溶接電圧(V)
v:溶接速度(mm/秒) - 前記再溶接における溶加材は、前記溶接継手で用いた溶加材、オーステナイト系ステンレス鋼用溶加材、または二相ステンレス鋼用溶加材から選ばれる、請求項4に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼の溶接継手の製造方法。
- 前記溶接継手を構成する前記マルテンサイト系ステンレス鋼において、前記最も短い距離Lに対応する前記溶融境界線に隣接する溶接熱影響部(HAZ)において、結晶粒径が面積同等円相当径で0.05mm以下のマルテンサイト結晶が面積率で75%以上である、請求項4または5に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼の溶接継手の製造方法。
- 請求項1~3の何れか一項に記載のマルテンサイト系ステンレス鋼の溶接継手を少なくとも一部に有することを特徴とする溶接構造体。
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