〔第1の実施形態〕
(ベリリウム溶液の製造方法)
本発明の第1の実施形態に係るベリリウム溶液の製造方法M10について図1を参照して説明する。図1は、ベリリウム溶液の製造方法M10のフローチャートである。なお、以下においては、ベリリウム溶液の製造方法M10のことを単に製造方法M10とも称する。本実施形態では、ベリリウムの塩酸塩である塩化ベリリウム(BeCl2)の水溶液であるBeCl2溶液の製造方法について説明する。BeCl2溶液は、無機物溶液の一例である。ただし、製造方法M10を用いて製造するベリリウム溶液は、BeCl2溶液に限定されるものではなく、ベリリウムの硫酸塩である硫酸ベリリウム(BeSO4)の水溶液であるBeSO4溶液であってもよいし、ベリリウムの硝酸塩である硝酸ベリリウム(Be(NO3)2)の水溶液であるBe(NO3)2溶液であってもよいし、ベリリウムのフッ化水素酸塩であるフッ化ベリリウム(BeF2)の水溶液であるBeF2水溶液であってもよいし、ベリリウムの臭化水素酸塩である臭化ベリリウム(BeBr2)の水溶液であるBeBr2水溶液であってもよいし、ベリリウムのヨウ化水素酸塩であるヨウ化ベリリウム(BeI2)の水溶液であるBeI2水溶液であってもよい。
本実施形態においては、製造方法M10において用いる出発原料として、使用済みのトリチウム増殖材及び中性子増倍材を採用している。ただし、製造方法M10において用いる出発原料は、使用済みのトリチウム増殖材及び中性子増倍材に限定されず、無機物の中から適宜選択することができる。以下において、無機物は、無機化合物及び金属の総称である。また、無機化合物は、有機物あるいは有機化合物以外の化合物、すなわち炭素を含まない化合物を指す。無機化合物は、後述するレアメタル及びレアアースなどに代表される金属を含んでいることが好ましい。また、金属は、貴金属を含む。貴金属には、金(Au)、銀(Ag)、及び白金属(ルテニウム(Ru),ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd),オスミウム(Os),イリジウム(Ir),白金(Pt))が含まれる。使用済み触媒(例えば自動車の排ガス触媒)や廃電池(例えば燃料電池)等から貴金属をリサイクルする要望がある。トリチウム増殖材及び中性子増倍材は、無機物の一例である。より詳しくは、トリチウム増殖材は、複合酸化物の一例であり、中性子増倍材は、金属間化合物の一例である。なお、出発原料として用いる無機物は、トリチウム増殖材及び中性子増倍材のように工業的に製造されたものであってもよいし、後述する鉱石のように自然に生成されたものであってもよい。
例えば、ベリリウム鉱石のように塩基性溶液及び酸性溶液の何れに対しても溶解しにくい無機物を出発原料とする場合に、製造方法M10は好適である。ベリリウム鉱石は、ベリリウムを含む鉱石であり、Be-Si-O系の鉱石、及び、Be-Si-Al-O系の鉱石が知られている。ベリリウム鉱石は、珪酸塩鉱物の一例である。Be-Si-O系の鉱石の例としては、ベルトランダイト及びフェナサイトが挙げられ、Be-Si-Al-O系の鉱石の例としては、ベリル及びクリソベリルが挙げられる。ベリリウム鉱石は、ベリリウム酸化物の一例である。出発原料としてベリリウム鉱石を採用した場合、製造方法M10を実施することにより、例えばBeCl2溶液が得られる。
また、製造方法M10においては、出発原料として、1又は複数の種類の金属を含む鉱石を採用してもよい。このような鉱石の一例としては、リチウム鉱石、ドロマイト、ボーキサイト、磁鉄鉱、クロム鉄鉱、鉄鉱石、コバルト鉱、硫化鉱、パイロクロア、輝水鉛鉱、閃亜鉛鉱、重晶石、タンタル鉱石、鉄マンガン重石、PGM鉱石、ルチル、珪石、モナザイト、アパタイト、及びゼノタイムなどが挙げられる。リチウム鉱石は、リチウム(Li)を含む珪酸塩鉱物の一例である。リチウム鉱石としては、リチア輝石(スポジュミン:LiAlSi2O6)が知られている。ドロマイトは、マグネシウム(Mg)を含む炭酸塩鉱物の一例である。ボーキサイトは、アルミニウム(Al)及びガリウム(Ga)を含む。磁鉄鉱は、バナジウム(V)を含む。クロム鉄鉱は、クロム(Cr)を含む。鉄鉱石は、鉄(Fe)を含む。コバルト鉱は、コバルト(Co)を含む。硫化鉱は、ニッケル(Ni)及びアンチモン(Sb)を含む。バイオクロアは、ニオブ(Nb)を含む。輝水鉛鉱は、モリブデン(Mo)を含む。閃亜鉛鉱は、インジウム(In)を含む。重晶石は、バリウム(Ba)を含む。タンタル鉱石は、タンタル(Ta)を含む。鉄マンガン重石は、タングステン(W)を含む。PGM(Pt Group Metals)鉱石は、白金(Pt)及びパラジウム(Pd)を含む。ルチルは、二酸化チタン(TiO2)の結晶の一態様であり、正方晶系の結晶構造を有する鉱物である。珪石は、珪酸質の鉱物及び岩石を資源として扱う場合の鉱石名である。珪石の主成分は、二酸化珪素(SiO2)である。モナザイトは、希土類元素を含む。希土類元素は、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、及びランタノイドの総称である。モナザイトに含まれる希土類元素としては、例えば、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、及びジスプロシウム(Dy)が挙げられる。アパタイトは、カルシウム(Ca)を含む。ゼノタイムは、イットリウム(Y)を含む。モナザイト、アパタイト、及びゼノタイムの各々は、何れも、リン酸塩鉱物の一例である。
また、1又は複数の種類の金属を含む鉱石は、多金属団塊とも呼ばれ、この例としては、海底熱水鉱床や、コバルトリッチクラストや、マンガン団塊などが知られている。海底熱水鉱床は、銅や鉛や亜鉛などのベースメタルに加えて、金や銀などの貴金属、及び、レアメタルを含む。コバルトリッチクラストは、ニッケルやコバルトや白金などのレアメタルを含む。マンガン団塊は、銅などのベースメタル、及び、ニッケルやコバルトなどのレアメタルを含む。
また、製造方法M10においては、出発原料として、1又は複数の種類の金属を含む泥を用いてもよい。また、1又は複数の種類の金属を含む泥としては、レアアース(希土類)元素を含むレアアース泥が知られている。
また、製造方法M10においては、出発原料として、ガラスを用いてもよい。ガラスは、珪石と同様に、二酸化珪素(SiO2)を主成分とする酸化物の一例である。このようなガラスには、添加物としてレアアース元素が含まれている場合もある。また、酸化物の別の一例としては、酸化アルミニウム(Al2O3)及び酸化マグネシウム(MgO)が挙げられる。また、酸化物には、複合酸化物も含まれる。複合酸化物は、天然鉱石以外の酸化物であって、酸素以外に複数種類の元素を含む酸化物を指す。複合酸化物の例としては、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)や、コージェライト(2MgO・2Al2O3・5SiO2)などが挙げられる。また、製造方法M10においては、出発原料として、セラミックスを用いてもよい。セラミックスの一例としては、アルミナ(Al2O3)やチタニア(TiO2)などが挙げられる。なお、イットリア安定化ジルコニアや、コージェライトなどに代表される複合酸化物は、セラミックスの一例でもある。
これらの鉱石又は泥を出発原料として採用した場合、製造方法M10を実施することにより、上述したレアメタル及びレアアースの各元素の例えば塩酸塩溶液が得られる。
また、製造方法M10においては、出発原料として、金属を用いてもよい。金属の例としては、上述したレアメタル及びレアアースが挙げられる。また、出発原料は、これらのレアメタル及びレアアースのうち複数の金属を含む合金であってもよい。また、レアアース以外の金属の例としては、遷移金属が挙げられる。遷移金属の一例としては、チタン(Ti)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、及び亜鉛(Zn)が挙げられる。また、出発原料は、これらの遷移金属のうち複数の金属を含む合金であってもよい。このような遷移金属製の出発原料は、機械や電子部品などの製造工程や加工工程などにおいて、スクラップとして生じる場合が多い。このようなスクラップには、スラッジと呼ばれる汚泥あるいは汚水も含まれる。また、スラッジは、金属を精錬するときに鉱滓として生じる。スラッジに含まれる金属は、多岐に亘るが、その一例としてニッケルが挙げられる。これらの金属を出発原料として採用した場合、製造方法M10を実施することにより、上述したレアメタル、レアアース、及び遷移金属の各元素の例えば塩酸塩溶液が得られる。したがって、これらの金属をリサイクルすることができる。また、ニッケルスラッジを出発原料として採用した場合、製造方法M10を実施することにより、ニッケルスラッジ中に含まれているニッケル以外の元素(例えばフッ素(F)や硫黄(S)など)を塩酸塩溶液中に溶解させることができる。したがって、ニッケルスラッジにおけるニッケルの純度を高めることができる。
以上のように、製造方法M10における出発原料は、多岐に亘る。シュツルンツ分類を用いて表現する場合、出発原料は、酸化物、金属間化合物、珪酸塩鉱物、複合酸化物、リン酸塩鉱物、酸化鉱物、複酸化物鉱物、硫化鉱物、タングステン酸塩鉱物、及び、硫酸塩鉱物の何れかであればよい。
図1に示すように、製造方法M10は、取り出し工程S11と、粉砕・混合工程S12と、加熱工程S13と、溶解工程S14と、第1の濾過工程S15と、水酸化ナトリウム添加工程S16と、第2の濾過工程S17と、塩酸添加工程S18と、第1の不純物除去工程S19と、第2の不純物除去工程S20と、を含む。
(取り出し工程)
取り出し工程S11は、核融合炉のブランケットの内部に充填されているトリチウム増殖材及び中性子増倍材であって、使用済みのトリチウム増殖材及び中性子増倍材を、ブランケットから取り出す工程である。製造方法M10においては、使用済みのトリチウム増殖材及び中性子増倍材を出発原料として用いる。
トリチウム増殖材の例としては、リチウム酸化物が挙げられる。具体的には、チタン酸リチウム(Li2TiO3)、酸化リチウム(Li2O)、アルミン酸リチウム(LiAlO2)、及び珪酸リチウム(Li2SiO3及び/又はLi4SiO4)が挙げられる。また、中性子増倍材の例としては、ベリリウム(Be)及びベリリウムを含む金属間化合物(Be12Ti及び/又はBe12V、ベリライドとも称される)が挙げられる。トリチウム増殖材及び中性子増倍材の各々は、何れも、直径が1mm程度の微小な球状に成形されている。そのうえで、ブランケットの内部には、できるだけ均一に混合されたトリチウム増殖材と中性子増倍材とが充填されている。したがって、取り出し工程S11においてブランケットから取り出された出発原料は、トリチウム増殖材と中性子増倍材との混合物である。本実施形態では、トリチウム増殖材の一例としてチタン酸リチウムを用い、中性子増倍材の一例として表面に酸化層が形成されているベリリウムを用いて製造方法M10について説明する。なお、製造方法M10において出発原料として用いるトリチウム増殖材及び中性子増倍材の各々は、チタン酸リチウム及びベリリウムに限定されず、上述した例の中から適宜選択することができる。
なお、中性子増倍材として使用済みとなったベリリウムであっても、その大部分(例えば98%程度)は、ベリリウムのままである。したがって、核融合炉の運用コストを抑制するために、高価な元素であるベリリウムをベリリウム溶液にしたうえで再利用する技術の確立が強く求められている。また、使用済みのベリリウムの表面には酸化ベリリウム(BeO)の層が形成されている。したがって、使用済みのベリリウムを酸性溶液中に浸漬するだけでは、使用済みのベリリウムに含まれるベリリウムは、ほとんど溶解しない。
以上のように、製造方法M10において用いられる出発原料は、中性子増倍材として機能する、(1)ベリリウム、(2)ベリリウムを含む金属間化合物、(3)表面に酸化層が形成されているベリリウム、及び、(4)表面に酸化層が形成されている金属間化合物であって、ベリリウムを含む金属間化合物のうち少なくとも何れかを含む。また、製造方法M10において用いられる出発原料は、更に、トリチウム増殖材として働くリチウム酸化物を含んでいてもよい。
また、製造方法M10において用いられる出発原料は、核融合炉において使用済みとなった中性子増倍材及びトリチウム増殖材に限定されない。該出発原料は、核融合分野以外の原子力分野及び加速器分野において使用済みとなったベリリウム及びその合金であってもよいし、一般産業分野において産業廃棄物として生じるベリリウム及びその合金であってもよい。製造方法M10によれば、(1)核融合炉において生じる使用済みの中性子増倍材及びトリチウム増殖材と、(2)核融合分野以外の原子力分野及び加速器分野から生じる使用済みの中性子反射体や、中性子減速材や、中性子源としてのターゲット材などに含まれるベリリウム及びその合金と、(3)一般産業分野において産業廃棄物として生じるベリリウム及びその合金と、を区別することなく処理し、新たなベリリウムを製造できる。また、製造方法M10によれば、これらの出発原料に不純物として含まれるウランやその他の元素などを除去することができる。
(粉砕・混合工程)
粉砕・混合工程S12は、取り出し工程S11の後に実施する工程である。粉砕・混合工程S12では、まず、出発原料を粉砕することにより、出発原料の粉末を得る。出発原料を粉砕することによって、出発原料の粒径を小さくするとともに、中性子増倍材の表面に酸化層が形成されている場合であっても、その酸化層を機械的に破壊し、酸化層に覆われていたベリリウムを露出させる工程である。出発原料を粉砕するために用いる技術は、限定されるものではなく、既存の技術から適宜選択することができ、例えば、ボールミルが挙げられる。
また、粉砕・混合工程S12では、水酸化ナトリウム(NaOH)を粉砕することにより、水酸化ナトリウムの粉末を得る。ただし、粉末状の水酸化ナトリウムを購入して用いる場合には、粉砕・混合工程S12において水酸化ナトリウムを粉砕する工程を省略してもよい。また、粉砕・混合工程S12において用いる水酸化ナトリウムが顆粒状又はフレーク状である場合には、粉砕・混合工程S12における水酸化ナトリウムの粉砕を省略することができる。粉砕・混合工程S12において用いられる水酸化ナトリウムの形状は、限定されない。なお、水酸化ナトリウムは、水酸化物の一例である。製造方法M10において用いる水酸化物は、水酸化ナトリウムに限定されず、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、及び水酸化ストロンチウム(Sr(OH)2)のうち少なくとも何れかであってもよい。
そのうえで、粉砕・混合工程S12では、出発原料の粉末と、水酸化ナトリウム(本実施形態では水酸化ナトリウムの粉末)とを混合することによって、出発原料及び水酸化ナトリウムの粉末状混合物を得る。以下において、出発原料及び水酸化ナトリウムの粉末状混合物のことを単に粉末状混合物とも記載する。
(加熱工程S13)
加熱工程S13は、粉砕・混合工程S12の後に、粉末状混合物を誘電加熱することによって、出発原料及び水酸化ナトリウムを融解させる工程である。加熱工程S13を実施することにより、水酸化ナトリウムが後述する電磁波のエネルギーを熱に変換し、その結果、出発原料及び水酸化ナトリウムを含む液状混合物が得られる。以下において、出発原料及び水酸化ナトリウムの液状混合物のことを単に液状混合物とも記載する。出発原料及び水酸化ナトリウムは、水分を含まないため、粉末状混合物又は液状混交物の温度が100℃を超えた場合であっても水分の沸騰を考慮する必要がない。したがって、加熱工程S13においては、常圧下において粉末状混合物を誘電加熱することができる。加熱工程S13により得られた液状混合物は、乳液状であり、その温度の低下にともなって、少なくともその一部が乳液状から固体状に変化する場合もある。
誘電加熱は、所定の周波数を有する電磁波を対象物に印加することによって対象物を加熱する技術の総称であり、印加する電磁波の帯域に応じて、高周波加熱と呼んだり、マイクロ波加熱と呼んだりする。例えば、高周波加熱は、3MHz以上300MHz未満の帯域に含まれる電磁波(いわゆる短波又は超短波)を対象物に印加し、マイクロ波加熱は、300MHz以上30GHz未満の帯域に含まれる電磁波(いわゆるマイクロ波)を対象物に印加する。家庭にも普及している電子レンジは、マイクロ波加熱を実施可能な装置の一例である。
本実施形態では、加熱工程S13において、粉末状混合物に周波数が2.45GHzである電磁波を印加する。なお、粉末状混合物に電磁波を印加する装置の構成については、図5あるいは図9を参照して後述する。
誘電加熱を利用して粉末状混合物を加熱することにより、従来よりも高いエネルギー効率で出発原料及び水酸化ナトリウムを、酸性溶液に溶解可能な液状混合物に変化させることができる。後述するように、液状混合物は、酸(本実施形態では塩酸)溶液に対して容易に溶解するので、塩化ベリリウム水和物(BeCl2・xH2O)及び塩化リチウム(LiCl)が溶解した塩酸溶液を得ることができる。したがって、製造方法M10は、エネルギー効率が高い新規な製造方法を提供することができる。
なお、加熱工程S13における加熱温度は、適宜設定することができる。ただし、加熱工程S13における加熱温度は、粉末状混合物を収容する容器(例えば、第7の実施形態に記載の容器14)の耐熱温度以下であることが好ましい。例えば、該容器が容器14のようにポリテトラフルオロエチレン製である場合、加熱工程S13における加熱温度は、250℃以下であることが好ましい。加熱温度の一例としては、220℃が挙げられる。容器を構成する材料が酸性溶液に対する耐食性を有し、且つ、耐熱温度が250℃を上回る場合、加熱工程S13における加熱温度は、250℃を上回ってもよい。耐熱温度が250℃を上回る材料の例としては、アルミナ(Al2O3)や窒化ホウ素(BN)などが挙げられる。アルミナや窒化ホウ素などにより構成された容器を採用する場合、加熱工程S13における加熱温度は、250℃を上回ってもよい。このような容器を用いる場合の加熱温度の一例としては、300℃が挙げられる。加熱工程S13における加熱温度を高められることによって、加熱工程S13に要する時間を短縮できる可能性が高い。また、加熱工程S13における加熱時間も適宜設定することができる。加熱時間の一例としては、8分が挙げられる。
なお、加熱工程S13の一変形例では、粉末状混合物を誘電加熱する前に粉末状混合物に対して少量の水を添加してもよい。水は、誘電加熱において粉末状混合物に印加されるマイクロ波を効率良く吸収し、熱に変換することができる。したがって、粉末状混合物に対して少量の水を添加しておくことによって、粉末状混合物の温度を早く所望の温度(例えば250℃)まで加熱することができる。なお、粉末状混合物に対して添加する水の量は限定されないが、粉末状混合物の質量を基準にして5wt%以上であることが好ましい。
(溶解工程)
溶解工程S14は、加熱工程S13の後に実施する工程であり、加熱工程S13において得られた液状混合物を酸(本実施形態では塩酸(HCl))溶液に溶解させることによって、出発原料に含まれていた金属の塩酸溶液を得る工程である。本実施形態では、塩化ベリリウム水和物(BeCl2・xH2O)及び塩化リチウム(LiCl)が溶解した塩酸溶液が得られる。溶解工程S14において用いる酸溶液は、塩酸溶液に限定されず、硫酸(H2SO4)溶液、硝酸溶液、フッ化水素酸溶液、臭化水素酸溶液、及びヨウ化水素酸溶液のうち少なくとも何れかであってもよいし、これらの酸溶液のうち複数の酸溶液を混合することに得られる混合酸溶液であってもよい。このような混合酸溶液の例としては、濃塩酸と濃硝酸とを混合することにより得られる王水が挙げられる。また、溶解工程S14においては、加熱工程S13において得られた液状混合物を溶解させる液体として、水を用いることもできる。
溶解工程S14において、液状混合物は、常温且つ常圧下にある塩酸溶液中であっても溶解するが、塩酸溶液の温度を高めることによって液状混合物の塩酸溶液に対する溶解を促進することができる。塩酸溶液を加熱する手段としては、加熱工程S13において用いる電磁波を印加する装置が好適である。なお、溶解工程S14においては、塩酸溶液の沸騰を抑制するために、塩酸溶液の温度を100度未満に設定することが好ましい。これにより、塩酸溶液の加圧が不要であり、常圧下において溶解工程S14を実施することができる。
(第1の濾過工程)
第1の濾過工程S15は、溶解工程S14の後に実施する工程である。第1の濾過工程S15は、リチウムを含むベリリウム溶液中に含まれる固相と液相とを、フィルタを用いて分離する工程である。固相には、一部のチタン酸リチウム及び酸化チタンが含まれている。酸性溶液である液相には、塩化ベリリウム水和物及び塩化リチウムが主に含まれている。
第1の濾過工程S15を実施することにより、固相に含まれている酸化チタンと、液相に含まれている塩化ベリリウム水和物及び塩化リチウムとを容易に分離することができる。
(水酸化ナトリウム添加工程)
水酸化ナトリウム添加工程S16は、第1の濾過工程S15の後に実施する工程である。水酸化ナトリウム添加工程S16は、第1の濾過工程S15により分離された酸性溶液であって、液相である塩化ベリリウム水和物及び塩化リチウムを含み、固相である酸化チタンを含まない酸性溶液の極性を酸性から、中性を介して、塩基性に調整する工程である。
本実施形態においては、水酸化ナトリウム添加工程S16は、第1の濾過工程S15により分離された酸性溶液に対して、水酸化ナトリウムの水溶液を添加するように定められている。その結果、第1の濾過工程S15により分離された溶液の極性は、酸性から、中性(pH7)を経た後、塩基性となり、該溶液に含まれていた塩化ベリリウム水和物は、水酸化ベリリウム(Be(OH)2)となり、固相として塩基性の溶液中に沈殿する。なお、塩化リチウムは、上記塩基性の溶液中に溶解しており、沈殿しない。すなわち、塩化リチウムは、水酸化ナトリウム添加工程S16を実施した後であっても、水酸化リチウムとして液相中に存在したままである。
(第2の濾過工程)
第2の濾過工程S17は、水酸化ナトリウム添加工程S16の後に実施する工程である。第2の濾過工程S17は、水酸化ナトリウム添加工程S16により得られた塩基性の溶液中に含まれる固相と液相とを、フィルタを用いて分離する工程である。固相には、水酸化ベリリウムが含まれており、液相には、水酸化リチウムが含まれている。
第2の濾過工程S17を実施することにより、固相に含まれている水酸化ベリリウムと、液相に含まれている水酸化リチウムとを容易に分離することができる。
(塩酸添加工程)
塩酸添加工程S18は、第2の濾過工程S17の後に実施する工程である。塩酸添加工程S18は、第2の濾過工程S17により得られた水酸化ベリリウムにHCl溶液を添加することによって、再び、ベリリウムを塩化ベリリウム水和物の形で酸性溶液中に溶解させる工程である。なお、HCl溶液におけるHClの濃度は、適宜調整することができるが、pHが1以下となるように調整されていることが好ましい。
塩酸添加工程S18を実施することにより、塩化ベリリウム水和物が溶解した塩酸溶液(ベリリウム溶液又はBeCl2溶液とも称する)をえることができる。
(第1の不純物除去工程)
第1の不純物除去工程S19は、塩酸添加工程S18の後に実施する工程である。第1の不純物除去工程S19は、第1の元素を吸着する有機化合物を用いて、塩酸添加工程S18により得られたベリリウム溶液から上記第1の元素を除去する工程である。
第1の不純物除去工程S19において除去する第1の元素は、ここで用いる有機化合物によって決まる。第1の不純物除去工程S19において利用可能な有機化合物としては、酸化トリ-n-オクチルホスフィン(TOPO,Tri-n-octylphosphine oxide)、ジ(2エチルヘキシル)リン酸(D2EHPA,Di-(2-ethylhexyl) phosphoric acid)、リン酸トリブチル(TBP,Tri-n-butyl phosphate)、及びエチレンジアミン四酢酸(EDTA,Ethylenediaminetetraacetic acid)が挙げられる。また、第1の不純物除去工程S19において利用可能な有機化合物であって、市販されている有機化合物としては、eichrom technologies社のUTEVA(登録商標)レジンが挙げられる。
TOPOは、Al、Au、Co、Cr、Fe、Hf、Re、Ti、UO2
2+、V、Zr、希土類元素、及びアクチノイド元素を吸着することができる。D2EHPAは、Uや、Coや、Niや、Mnなどを吸着することができる。TBPは、Uや、Thなどを吸着することができる。EDTAの類は、Mgや、Caや、Baや、Cuや、Znや、Alや、Mnや、Feなどを吸着することができる。UTEVA(登録商標)レジンは、Uや、Thや、Puや、Amなどを吸着することができる。これらの元素は、第1の元素の例である。
これらの有機化合物は、有機溶媒(例えばケロシンや、シクロヘキサンや、ベンゼンなど)に溶解する。塩酸添加工程S18を実施した後のHCl溶液に、これらの有機化合物が溶解した溶液(以下において有機化合物溶液とも称する)を混合し、且つ、撹拌することによって、有機化合物は、第1の元素を吸着する。
第1の不純物除去工程S19において、有機化合物溶液を混合するHCl溶液の液性は、酸性であることが好ましく、pHが2以下であることがより好ましい。この構成によれば、有機化合物がベリリウムを吸着することなく、有機化合物が第1の元素を吸着する効率を高めることができる。なお、HCl溶液の液性を中性に近づければ近づけるほど、有機化合物がベリリウムを吸着する効率が高まり、且つ、第1の元素を吸着する効率が低下する。
本実施形態においては、第1の不純物除去工程S19において用いる有機化合物及び有機溶媒として、TOPO及びケロシンを採用する。ただし、有機化合物及び有機溶媒の各々は、TOPO及びケロシンに限定されるものではなく、上に例示した組み合わせのなかから適宜選択することができる。
塩酸添加工程S18により得られた、水溶液であるベリリウム溶液と、有機化合物溶液とは、しばらくの間放置しておくことによって2層に分離する。したがって、第1の不純物除去工程S19を実施することにより第1の元素の含有量が抑制されたベリリウム溶液と、第1の元素を含有する有機化合物溶液とは、容易に分離することができる。
第1の不純物除去工程S19を実施することにより、ベリリウム溶液中に含まれる第1の元素の濃度を低下させることができる。その結果として、出発原料を酸性溶液に溶解させることによってベリリウム溶液を製造する場合に、出発原料に上述したようなベリリウム以外の元素である第1の元素が含まれている場合であっても、ベリリウム溶液から、ベリリウム、水酸化ベリリウム、及び酸化ベリリウムの何れかを製造する場合に含まれる第1の元素の濃度を低下させることができる。第1の元素の例としては、ウランやトリウムやプルトニウムやアメリシウムなどが挙げられる。
具体的例としては、第1の不純物除去工程S19を含む製造方法M10を用いて製造した塩化ベリリウムを用いてベリリウムを製造した場合、ベリリウム中に含まれるウランの濃度を0.7ppm未満に抑制することができる。ウランの濃度が0.7ppm未満であるベリリウムは、核融合炉において中性子増倍材として使用された場合であっても、使用後におけるウラン濃度が浅地処分することができるか否かを定める閾値を下回る。したがって、本発明の一態様に含まれるベリリウムは、核融合炉において中性子増倍材として使用された場合であっても、そのまま浅地処分することができる。
(第2の不純物除去工程)
第2の不純物除去工程S20は、第1の不純物除去工程S19の後に実施する工程であって、塩酸添加工程S18により得られたベリリウム溶液の極性を酸性から、中性を介して、塩基性に調整することによって、ベリリウム溶液から第2の元素を除去する工程である。なお、本実施形態においては、塩酸添加工程S18のあとに第1の不純物除去工程S19及び第2の不純物除去工程S20を、この順番で実施するものとして説明しているが、第1の不純物除去工程S19と第2の不純物除去工程S20との順番は、入れ替えることもできる。
本実施形態においては、第2の不純物除去工程S20は、塩酸添加工程S18を実施した後のベリリウム溶液に対して、重曹(NaHCO3)を飽和するまで添加する。その結果、該ベリリウム溶液において、中性(pH7)を経た後、ベリリウム以外の元素(例えば、AlやFeなど)が水酸化物(例えば、Al(OH)3やFe(OH)3など)となって該ベリリウム溶液中に沈殿する。なお、重曹が飽和している状態であっても、Be(OH)2は、ベリリウム溶液中に溶解しており、沈殿しない。このように、アルミニウム(Al)及び鉄(Fe)は、第2の元素の例である。
第2の不純物除去工程S20を実施することによりベリリウム溶液中に沈殿したベリリウム以外の元素の水酸化物は、ベリリウム溶液を濾過することにより、容易にベリリウム溶液中から除去することができる。
なお、第2の不純物除去工程S20を実施することによって第2の元素を除去されたベリリウム溶液には、改めてHClを添加することが好ましい。このように、ベリリウム溶液に改めてHClを添加することによって、Be(OH)2溶液の極性が、中性を介して、酸性に調整され、溶液中には、純度が高い塩化ベリリウム水和物(BeCl2・xH2O)が生成される。
このように、第2の不純物除去工程S20を実施することにより、ベリリウム溶液中に含まれる第2の元素の濃度を低下させることができる。その結果として、出発原料を酸性溶液に溶解させることによってベリリウム溶液を製造する場合に、出発原料に上述したようなベリリウム以外の元素である第2の元素が含まれている場合であっても、ベリリウム溶液を用いてベリリウム、水酸化ベリリウム、及び酸化ベリリウムの何れかを製造する場合に含まれる第2の元素の濃度を低下させることができる。
上述したように、製造方法M10において、加熱工程S13は、マイクロ波を印加することによってベリリウム酸化物を含む上記酸性溶液を誘電加熱することが好ましい。
また、製造方法M10が予備加熱工程を含む場合、予備加熱工程は、加熱工程S13と同様に、マイクロ波を印加することによってベリリウム酸化物を含む塩基性溶液を誘電加熱することが好ましい。
マイクロ波を用いた誘電加熱(すなわちマイクロ波誘電加熱)の技術は、いわゆる電子レンジにおいて利用されている技術であり、広く普及している技術である。したがって、製造方法M10は、実施に要するコストを従来の製造方法よりも削減することができる。
上述したように、製造方法M10において、上記ベリリウム溶液は、塩化ベリリウム溶液であることが好ましい。
製造方法M10によれば、水酸化ベリリウムを経ることなく塩化ベリリウム溶液を容易に製造することができる。塩化ベリリウム溶液からは、後述するようにベリリウム、水酸化ベリリウム、及び酸化ベリリウムを容易に製造することができる。したがって、ベリリウム溶液としては、塩化ベリリウム溶液が好適である。
(ベリリウム溶液の製造方法の変形例)
上述したように、本実施形態では、出発原料として使用済みのトリチウム増殖材及び中性子増倍材を用いて製造方法M10について説明した。本変形例では、出発原料としてベリルを用いる場合の製造方法M10について、簡単に説明する。ベリルは、Be-Si-Al-O系のベリリウム鉱石の一態様であり、無機物の一例である。すなわち、ベリルは、ベリリウムの他にシリコン(Si)とアルミニウム(Al)とを含んでいる。なお、出発原料は、ベリル以外の鉱石(例えば後述するリチア輝石)を含んでいてもよい。
本変形例では、鉱山から採石されたベリルを出発原料として用いるので、取り出し工程S11を省略することができる。
粉砕・混合工程S12においては、ベリルを粉砕することによりベリルの粉末を得る。同様に、水酸化ナトリウムを粉砕することにより水酸化ナトリウムの粉末を得る。そのうえで、ベリル及び水酸化ナトリウムの各々の粉末を混合することによって、ベリル及び水酸化ナトリウムの粉末状混合物を得る。なお、本変形例においても、水酸化ナトリウムの形状は、粉末に限定されない。
加熱工程S13及び溶解工程S14については、図1を参照して上述した通りである。加熱工程S13においては、混合物の温度が220度になるように誘電加熱を行い、加熱時間を8分としている。加熱工程S13により得られる液状混合物は、白濁した乳液状である。
なお、ベリルの融点は1410℃であり、水酸化ナトリウムの融点は318度であるので、加熱工程S13における加熱温度は、これらの融点と比較すると低い温度である。それにも関わらずベリル及び水酸化ナトリウムが融解するのは、電磁波の印加に伴う融解の促進作用が働くためと考えられる。製造方法M10においては、粉状であるベリル及び水酸化ナトリウムを混合するため、印加される電磁波が粉状混合物の内部に直接作用し、内部を直接加熱することができる。また、粉状混合物の内部では、電磁波の印加に伴い放電が生じていると予想され、この放電も融解を促進していると考えられる。その結果、製造方法M10においては、220℃という低い温度にも関わらずベリルを塩酸溶液に溶解可能な状態に変化させることができる。非特許文献1に記載されている技術では、例えば2000℃程度の高温でベリルを溶融する。この技術と比較した場合、製造方法M10は、消費エネルギーを約1/10000(0.01%)に抑制できる。
なお、加熱工程S13及び溶解工程S14を実施したあとであっても、ベリルの含まれるシリコンは、酸化物の状態で固体として塩酸溶液中に残存している。したがって、第1の濾過工程S15を実施することにより、塩化ベリリウム溶液からシリコンを除去することができる。
出発原料としてベリルを用いる場合、水酸化ナトリウム添加工程S16、第2の濾過工程S17、及び塩酸添加工程S18は、省略することができる。
第1の不純物除去工程S19及び第2の不純物除去工程S20は、出発原料としてベリルを用いる場合においても実施することが好ましい。第1の不純物除去工程S19を実施することにより、塩化ベリリウム溶液中に含まれる第1の元素(例えば、ウランやトリウムやプルトニウムやアメリシウムなど)の濃度を低下させることができる。また、第2の不純物除去工程S20を実施することにより、塩化ベリリウム溶液中に含まれる第2の元素(例えば、アルミニウムや鉄など)の濃度を低下させることができる。ベリルにはアルミニウムが含まれているが、第2の不純物除去工程S20を実施することにより、塩化ベリリウム溶液中からアルミニウムを確実に除去することができる。
以上のように、本変形例を実施することにより、ベリルを出発原料として、水酸化ベリリウムを経ることなく、無機物溶液の一例である塩化ベリリウム溶液を容易に製造することができる。
(リチウム溶液の製造方法)
上述したベリリウム溶液の製造方法の変形例では、出発原料としてベリルを用い、塩化ベリリウム水和物(BeCl2・xH2O)が溶解した塩酸溶液が得られる。次に、出発原料としてリチウム鉱石を用い、リチウムの塩酸塩である塩化リチウム(LiCl)が溶解した塩酸溶液を得る場合について簡単に説明する。本製造方法は、上述したベリリウム溶液の製造方法の変形例において、出発原料をベリルからリチウム鉱石に変更したものなので、ベリリウム溶液の製造方法の一変形例とも言える。
本製造方法では、リチウムの塩酸塩である塩化リチウム(LiCl)の水溶液であるLiCl溶液の製造方法について説明する。LiCl溶液は、無機物溶液の一例である。しかし、本製造方法を用いて製造するリチウム溶液は、LiCl溶液に限定されるものではなく、リチウムの硫酸塩である硫酸リチウム(Li2SO4)の水溶液であるLi2SO4溶液であってもよいし、リチウムの硝酸塩である硝酸リチウム(LiNO3)の水溶液であるLiNO3溶液であってもよいし、リチウムのフッ化水素酸塩であるフッ化リチウム(LiF)であってもよいし、リチウムの臭化水素酸塩である臭化リチウム(LiBr)であってもよいし、リチウムのヨウ化水素酸塩であるヨウ化リチウム(LiI)であってもよい。
リチウム鉱石は、リチウムを含有する鉱石の総称であり、リチウム酸化物の一例でもある。リチウム鉱石は、結晶性を有する。リチウム鉱石としては、リチア輝石(Spodumene,LiAlSi2O6)、リチア雲母(Lepidolite,K(Al,Li)2(Si,Al)4O10(OH,F)2)、ペタル石(Petalite,LiAlSi4O10)、及びリチア電気石(Elbaite,Na(Li,Al)3Al6(BO3)3Si6O18(OH)4)が挙げられる。本製造方法では、出発原料の一例としてリチウム鉱石の一態様であるリチア輝石を用いる。従来技術においては、リチア輝石を溶液中に溶解させるために1000℃以上の温度におけるか焼処理を行っている。
粉砕・混合工程S12においては、リチア輝石を粉砕することによりリチア輝石の粉末を得る。同様に、水酸化ナトリウムを粉砕することにより水酸化ナトリウムの粉末を得る。そのうえで、リチア輝石及び水酸化ナトリウムの各々の粉末を混合することによって、リチア輝石及び水酸化ナトリウムの粉末状混合物を得る。なお、本変形例においても、水酸化ナトリウムの形状は、粉末に限定されない。
加熱工程S13及び溶解工程S14については、図1を参照して上述した通りである。
なお、加熱工程S13及び溶解工程S14を実施したあとであっても、リチア輝石の含まれるシリコンは、酸化物の状態で固体として塩酸溶液中に残存している。したがって、第1の濾過工程S15を実施することにより、リチウム溶液からシリコンを除去することができる。
出発原料としてリチア輝石を用いる場合、水酸化ナトリウム添加工程S16、第2の濾過工程S17、及び塩酸添加工程S18は、省略することができる。
第1の不純物除去工程S19及び第2の不純物除去工程S20は、出発原料としてリチア輝石を用いる場合においても実施することが好ましい。第1の不純物除去工程S19を実施することにより、リチウム溶液中に含まれる第1の元素(例えば、ウランやトリウムやプルトニウムやアメリシウムなど)の濃度を低下させることができる。また、第2の不純物除去工程S20を実施することにより、リチウム溶液中に含まれる第2の元素(例えば、アルミニウムや鉄など)の濃度を低下させることができる。リチア輝石にはアルミニウムが含まれているが、第2の不純物除去工程S20を実施することにより、リチウム溶液中からアルミニウムを確実に除去することができる。
〔第2~第4の実施形態〕
本発明の第2~第4の実施形態の各々に係るベリリウム(Be)の製造方法M20、水酸化ベリリウム(Be(OH)2)の製造方法M30、及び酸化ベリリウム(BeO)の製造方法M40について、図2の(a)~(c)を参照して説明する。図2の(a)~(c)の各々は、それぞれ、ベリリウムの製造方法M20、水酸化ベリリウムの製造方法M30、及び酸化ベリリウムの製造方法M40の各々の主要部を示すフローチャートである。なお、以下においては、ベリリウムの製造方法M20、水酸化ベリリウムの製造方法M30、及び酸化ベリリウムの製造方法M40の各々のことを、それぞれ、単に製造方法M20、製造方法M30、及び製造方法M40とも称する。
(ベリリウムの製造方法M20)
図2に示すように、製造方法M20は、図1に示した製造方法M10が含む取り出し工程S11、粉砕・混合工程S12、加熱工程S13、溶解工程S14、第1の濾過工程S15、水酸化ナトリウム添加工程S16、第2の濾過工程S17、第1の不純物除去工程S19、及び第2の不純物除去工程S20の各工程と、無水化工程S21と、電解工程S22と、を含んでいる。以下において、取り出し工程S11、加熱工程S13、第1の濾過工程S15、水酸化ナトリウム添加工程S16、第2の濾過工程S17、第1の不純物除去工程S19、及び第2の不純物除去工程S20のことを、単に、各工程S11~S20とも称する。
製造方法M20が含む、製造方法M10の各工程S11~S20は、第1の実施形態において説明する各工程S11~S20と同様である。したがって、ここでは、各工程S11~S20に関する説明を省略する。すなわち、BeCl2がHCl溶液中に溶解したBeCl2溶液が得られているものとして、製造方法M20については、無水化工程S21と、電解工程S22とについてのみ説明する。
無水化工程S21は、製造方法M10の各工程S11~S20により得られたBeCl2溶液に含まれている塩化ベリリウム水和物(BeCl2・xH2O)を無水化することによって、ベリリウム塩の一例であるBeCl2を生成する工程である。
無水化工程S21では、塩化ベリリウム水和物に塩化アンモニウムを加え、真空中且つ90℃で、24時間に亘って当該塩化ベリリウム水和物を加熱することにより、含有水分量を限りなく0に近づけることができる。すなわち、塩化ベリリウム水和物を無水化することができる。
塩化アンモニウムは、塩化ベリリウム水和物中の水分と反応し、水酸化アンモニウムと塩酸になる。生成した水酸化アンモニウム及び塩酸は、再度反応して、水を放出しながら塩化アンモニウムに戻る。このような過程で塩化ベリリウム水和物から無水化された塩化ベリリウムを得ることができる。
なお、無水化工程S21における加熱温度は、90℃に限定されるものではなく、80℃以上110℃以下の温度範囲から適宜選択することができる。ただし、加熱温度が高すぎる場合、塩化ベリリウム水和物の無水化が不十分になりやすい。したがって、当該加熱温度は、80℃以上90℃以下であることが好ましく、90℃であることがより好ましい。
なお、無水化工程S21における無水化処理を施す時間は、24時間に限定されるものではなく、適宜定めることができる。
電解工程S22は、無水化工程S21により得られたBeCl2を溶融塩電解することによって金属のベリリウムを生成する工程である。
以上のように、製造方法M20を実施することにより、出発原料から金属のベリリウムを製造することができる。
(水酸化ベリリウムの製造方法M30)
図2に示すように、製造方法M30は、製造方法M10の各工程S11~S20と、中和工程S31と、を含んでいる。製造方法M20の場合と同様に、ここでは、中和工程S31についてのみ説明する。
中和工程S31は、製造方法M10の各工程S11~S20により得られたBeCl2溶液に含まれているBeCl2・xH2Oを、塩基で中和することによってBe(OH)2を生成する工程である。
以上のように、製造方法M30を実施することにより、出発原料からBe(OH)2を製造することができる。
(酸化ベリリウムの製造方法M40)
図2の示すように、製造方法M40は、製造方法M10の各工程S11~S20と、加熱工程S41と、を含んでいる。製造方法M20の場合と同様に、ここでは、加熱工程S41についてのみ説明する。
加熱工程S41は、製造方法M10の各工程S11~S20により得られたBeCl2溶液を加熱することによってBeOを生成する第3の加熱工程である。この工程により、BeCl2溶液に溶解しているBeCl2・xH2Oは、加水分解され、BeOが生成される。
以上のように、製造方法M40を実施することにより、出発原料からBeOを製造することができる。
(小括)
これらの製造方法M20,M30,M40の各々によれば、エネルギー効率が高い新規な製造方法を用いてベリリウム、水酸化ベリリウム、及び酸化ベリリウムの各々を製造することができる。なお、無水化工程S21、電解工程S22、中和工程S31、及び加熱工程S41の各々は、何れも、既存の技術を利用することによって実施することができる。
〔第5の実施形態〕
(チタン及びリチウムの分離方法M50)
本発明の第5の実施形態に係るチタン及びリチウムの分離方法M50について、図3を参照して説明する。図3は、チタン及びリチウムの分離方法M50のフローチャートである。なお、以下においては、チタン及びリチウムの分離方法M50のことを単に分離方法M50とも称する。
図3に示すように、分離方法M50は、図1に示した製造方法M10が含む取り出し工程S11、粉砕・混合工程S12、加熱工程S13、溶解工程S14、及び第1の濾過工程S15と、粉砕工程S51と、塩酸浸漬工程S52と、第3の濾過工程S53と、を含んでいる。以下において、取り出し工程S11、粉砕・混合工程S12、加熱工程S13、溶解工程S14、及び第1の濾過工程S15のことを、単に、各工程S11~S15とも称する。
分離方法M50が含む、製造方法M10の各工程S11~S15は、第1の実施形態において説明する各工程S11~S15と同様である。したがって、ここでは、各工程S11~S15に関する説明を省略する。すなわち、固相に含まれているチタン酸リチウムと、液相に含まれている塩化ベリリウム水和物及び塩化リチウムとが分離されているものとして、分離方法M50については、粉砕工程S51と、塩酸浸漬工程S52と、第3の濾過工程S53とについてのみ説明する。なお、第1の濾過工程S15を実施したあとの固相には、チタン酸リチウムに加えて酸化チタンが含まれていてもよい。
粉砕工程S51は、第1の濾過工程S15を実施したあとの固相に含まれているチタン酸リチウムを粉砕することによって、チタン酸リチウムの粒径を小さくする工程である。チタン酸リチウムを粉砕するために用いる技術は、限定されるものではなく、既存の技術から適宜選択することができ、例えば、ボールミルが挙げられる。
チタン酸リチウムをより細かく粉砕することができれば、チタン酸リチウムの全体積に対する表面積の割合を大きくすることができるので、後述する塩酸浸漬工程S52において、チタン酸リチウムに含まれるリチウムを溶液中に溶解させるために要する時間を短縮することが期待できる。その一方で、チタン酸リチウムを過度に細かく粉砕しようとした場合、粉砕工程S51に要する時間及びコストが増大する。したがって、粉砕工程S51の実施後に得られるチタン酸リチウムの粒子径は、塩酸浸漬工程S52に要する時間や、粉砕工程S51に要する時間や、粉砕工程S51に要するコストなどを考慮して決めることが好ましい。
なお、チタン酸リチウムの粒子径としては、平均径、モード径、及びメジアン径の何れを用いてもよい。チタン酸リチウムの粒子径分布を測定した場合に、平均径は、得られた粒子径分布の平均値となる粒子径であり、モード径は、粒子径分布の最頻度粒子径であり、メジアン径は、粒子径分布における頻度の累積が50%になる粒子径である。
本実施形態においては、チタン酸リチウムの平均径が100μmになるように粉砕工程S51を実施する。
塩酸浸漬工程S52は、粉砕工程S51の後に実施する工程である。塩酸浸漬工程S52は、粉砕工程S51により粉砕されたチタン酸リチウムを塩酸溶液中に浸漬させる工程である。塩酸浸漬工程S52を実施することにより、チタン酸リチウムに含まれるリチウムは、塩酸溶液中に塩化リチウムの形で溶解し、チタン酸リチウムに含まれるチタンは、酸化チタン(例えばTiO2)の形で塩酸溶液中に残存する。したがって、塩酸浸漬工程S52を実施した後の塩酸溶液中には、固相に含まれている酸化チタンと、液相に含まれている塩化リチウムとが含まれる。
なお、チタン酸リチウムに含まれるリチウムをより早く塩酸溶液中に溶解させたい場合には、加熱工程S13と同様の手法を適用し、チタン酸リチウムを含む塩酸溶液を誘電加熱してもよい。
第3の濾過工程S53は、塩酸浸漬工程S52の後に実施する工程である。第3の濾過工程S53は、固相に含まれている酸化チタンと、液相に含まれている塩化リチウムとを、フィルタを用いて分離する工程である。
第3の濾過工程S53を実施することにより、固相に含まれている酸化チタンと、液相に含まれている塩化リチウムとを容易に分離することができる。
なお、第3の濾過工程S53により分離された塩化リチウムを含む酸性溶液は、第1の濾過工程S15により分離された酸性溶液と同様に、水酸化ナトリウム添加工程S16に戻すことが好ましい。第1の濾過工程S15により分離された固相中に含まれるリチウムを塩化リチウムとして分離し、水酸化ナトリウム添加工程S16に戻すことによって、より効率よくリチウム化合物を回収することができる。言い替えれば、分離方法M50の粉砕工程S51、塩酸浸漬工程S52、及び第3の濾過工程S53は、製造方法M10の一部に含ませることができる。
以上のように、分離方法M50を実施することによって、チタン酸リチウムに含まれているチタン及びリチウムの各々を、それぞれ、酸化チタン及び塩化リチウムとして分離することができる。したがって、貴重な資源であるリチウムを、チタンとともに回収し、再利用することができる。
〔第6の実施形態〕
本発明の第6の実施形態に係る誘電加熱装置10について、図4及び図5を参照して説明する。誘電加熱装置10は、本発明の一態様に係るベリリウム溶液の製造装置の一例である。図4は、誘電加熱装置10の概略図である。誘電加熱装置10は、図1に示した製造方法M10が含む加熱工程S13と、図3に示した分離方法M50が含む加熱工程S13と、を実施する加熱装置である。また、製造方法M10が含む溶解工程S14において塩酸溶液を加熱する場合、その加熱にも誘電加熱装置10を用いることができる。
第1の実施形態において説明したとおり、誘電加熱は、印加する電磁波の帯域に応じて高周波加熱又はマイクロ波加熱の何れかに分類される。誘電加熱装置10は、対象物に対して、高周波加熱及びマイクロ波加熱のうちマイクロ波加熱を実施する装置である。
<誘電加熱装置の構成>
誘電加熱装置10は、図4に示すように、電磁波発生部11と、導波管12と、電磁波印加部13と、容器14と、回転テーブル15と、スターラ16と、温度計17と、を備えており、図5に示すように、アイソレータ18を更に備えている。また、誘電加熱装置10は、図4に図示していない制御部を更に備えている。
(電磁波発生部)
電磁波発生部11は、所定の周波数を有する電磁波を発振するように構成されている。所定の周波数は、例えば、マイクロ波の帯域内において適宜選択することができるが、本実施形態では、所定の周波数を2.45GHzとする。2.45GHzという周波数は、家庭用の電子レンジにおいて利用されている電磁波と同じ周波数である。
(導波管)
導波管12は、金属製の筒状部材であり、一方の端部が電磁波発生部11に接続されており、他方の端部が後述する容器14を収容する電磁波印加部13に接続されている。すなわち、導波管12は、電磁波発生部11と容器14との間に介在している。導波管12は、電磁波発生部11が発生した電磁波を一方の端部から他方の端部へ導波する。そのうえで、導波管12は、この電磁波を他方の端部から、容器14を収容する電磁波印加部13の内部空間に放射する。すなわち、導波管12は、電磁波発生部11が発生した電磁波を電磁波発生部11から容器14の方向に導波する。
(アイソレータ)
図5に示すように、導波管12の中途区間には、アイソレータ18が設けられている。アイソレータ18は、サーキュレータ181と、ダミーロード182と、冷却管183とを備えている。サーキュレータ181は、導波管12の中途区間に挿入されている。
サーキュレータ181は、磁石(例えばフェライト製)を備えており、図5に示すように3つのポートP1~P3を備えている。ポートP1には、導波管12の一方の区間を介して電磁波発生部11が接続されている。ポートP2には、導波管12の他方の区間を介して電磁波印加部13が接続されている。ポートP3には、ダミーロード182が設けられている。
磁石が形成する磁場と、サーキュレータ181内を透過する電磁波とが相互作用することにより、ポートP1に入射した電磁波は、ポートP2から出射され、ポートP2に入射した電磁波は、ポートP3から出射される。したがって、サーキュレータ181は、電磁波発生部11により発生された電磁波を電磁波印加部13の方向に結合させ、電磁波印加部13の内部空間において反射された電磁波をダミーロード182に結合させる。
ダミーロード182は、周波数が2.45GHzである電磁波を吸収する材料により構成されている。したがって、ダミーロード182は、電磁波印加部13の内部空間において反射された電磁波を吸収し、そのエネルギーを熱に変換する。
ダミーロード182には、冷却管183が設けられている。冷却管183の内部には、冷却された冷媒(例えば、水や空気)が循環するように構成が採用されている。冷却された冷媒がダミーロード182から熱を奪うことができるので、ダミーロード182の温度が過剰に上昇することを防ぐことができる。
以上のように構成されたサーキュレータ181は、電磁波発生部11により発生された電磁波をほとんど損失なく電磁波印加部13に結合させ、且つ、電磁波印加部13の内部空間において反射された電磁波を吸収することができる。すなわち、サーキュレータ181は、電磁波発生部11から容器14に向かってほとんど損失なく電磁波を伝搬させ、且つ、容器14から電磁波発生部11へ向かって伝搬する電磁波を吸収することができる。したがって、電磁波印加部13の内部空間において反射された電磁波が電磁波発生部11に戻り、電磁波発生部11の動作に悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
(電磁波印加部)
電磁波印加部13は、内部空間が中空な、金属製の箱状部材であり、内部空間に容器14を収容可能なように構成されている。電磁波印加部13は、導波管12の他方の端部から照射された電磁波を、容器14及び容器14に収容された加熱の対象物に対して印加する。電磁波印加部13は、電磁波を内部空間に閉じ込め、外部に漏らしにくいように構成されている。
(容器)
容器14は、皿状に成形された容器である。容器14の形状は、出発原料及び水酸化ナトリウムの粉末状混合物MPを収容可能な形状であれば限定されない。ただし、後述する温度計17を用いて粉末状混合物MPの温度を測定するために、容器14は、大きな開口部を有することが好ましい。また、加熱工程S13のあとに、容器14をそのまま用いて溶解工程S14を実施する場合には、容器14は、所定の量の塩酸溶液を収容可能な容積を有することが好ましい。
なお、後述する実施例のように、乳鉢を用いて出発原料の粉末と水酸化ナトリウム(後述する実施例においては、水酸化ナトリウムの粉末)とを混合することによって粉末状混合物を得る場合、乳鉢が混合部として機能する。また、出発原料の粉末と水酸化ナトリウムの粉末とを容器14にいれ、容器14においてこれらを混合することによって粉末状混合物を得る場合、容器14が混合部として機能する。
容器14は、電磁波発生部11が発振する電磁波(本実施形態においては2.45GHz)に対して高い透過率を有する材料により構成されていることが好ましい。また、容器14は、酸及び塩基に対する耐性が高い材料により構成されていることが好ましい。容器14が酸及び塩基に対する耐性が高い材料により構成されている場合、加熱工程S13を実施したあとに、容器14に塩酸溶液を注ぐことにより溶解工程S14を実施することができる。
本実施形態において、容器14は、ポリテトラフルオロエチレンに代表されるフッ素系樹脂により構成されている。ただし、容器14を構成する材料は、フッ素系樹脂に限定されず、ポリエーテルエーテルケトンに代表される芳香族ポリエーテルケトン樹脂であってもよいし、ポリイミド樹脂であってもよいし、アルミナや酸化チタンなどに代表される酸化物であってもよい。
(回転テーブル)
回転テーブル15は、電磁波印加部13の内部空間の底面に設けられた試料台であり、容器14を上面に載置可能なように構成されている。回転テーブル15は、平面視した場合に円形状であり、その中心軸を回転軸として、所定の速度で回転するように構成されている。この構成によれば、回転テーブル15の上面に載置された容器14が周期的に回転するため、粉末状混合物MPをより均一に加熱することができる。
(スターラ)
スターラ16は、電磁波印加部13の内部空間の天井面に設けられた金属製の羽状部材であり。羽状部材の中心に結合された支持棒により、上記天井面に対して回転自在な状態で固定されている。スターラ16は、支持棒を回転軸として、所定の速度で回転することにより、電磁波発生部11が発振した電磁波を反射し、電磁波印加部13の内部空間に散乱させる。この構成によれば、スターラ16が電磁波を散乱させるため、粉末状混合物MPをより均一に加熱することができる。
(温度計)
温度計17は、粉末状混合物MPが放射する赤外線を検出することにより容器14の温度を測定する放射温度計である。温度計17は、その受光部が粉末状混合物MPからの赤外線を検出できるように、電磁波印加部13の側壁の一部に固定されている。温度計17は、測定した粉末状混合物MPの温度を表す温度信号を制御部に出力する。
(制御部)
制御部は、出力が所定の値になるように電磁波発生部11の出力を制御してもよいし、温度計17から受け取った温度信号の温度が予め定められた温度になるように、電磁波発生部11の出力を制御してもよい。なお、この予め定められた温度は、時間に対して一定であってもよいし、時間に応じて変化してもよい。本実施形態において、制御部は、出力の値を時間に応じて変化させるように電磁波発生部11の出力を制御する。出力制御のパターンの一例としては、300Wの出力を600秒間に亘って維持し、その後、出力を0Wにするパターンが挙げられる。
製造方法M10を例にすれば、このように構成された誘電加熱装置10を用い、容器14の内部空間に、粉末状混合物MPを収容することによって、加熱工程S13を実施することができる。また、加熱工程S13を実施したあとの容器14に塩酸溶液を容器14に塩酸溶液を注ぐことにより溶解工程S14を実施することができる。また、誘電加熱装置10を用いて溶解工程S14を実施する場合、塩酸溶液を加熱することができるので、液状混合物の塩酸溶液に対する溶解を促進することができる。液状混合物の塩酸溶液は、無機物溶液の一例である。
〔第1の実施例〕
上述した誘電加熱装置10を用いた場合の製造方法M10の第1の実施例について、図6を参照して説明する。図6は、上述した加熱工程S13の一例における混合物Mの温度変化を示すグラフである。本実施例では、出発原料としてベリルを用いた。
本実施例では、粉砕・混合工程S12において、ボールミルを用いてベリルを粉砕した。粉砕・混合工程S12を実施した後のベリルの粒径は、150μm以下である。また、乳鉢を用いて水酸化ナトリウムを30分間粉砕した。そのうえで、ベリル及び水酸化ナトリウムの各々の粉末を、それぞれ、0.2g及び2gずつ分取し、乳鉢を用いて混合することにより粉末状混合物MPを得た。
本実施例では、加熱工程S13において、粉末状混合物MPを酸化アルミニウム(アルミナ:Al2O3)製の容器14の上にのせ、誘電加熱装置10にて大気雰囲気・常圧下で誘電加熱した。誘電加熱装置10の出力の値を300Wとし、加熱時間を8分間とした。加熱工程S13を実施することにより、粉末状混合物MPは、誘電加熱に伴い融解し、8分後には、全て乳液状の液状混合物となった。以下では、混合物が粉末状であるか液状であるかを区別しなくてもよい場合には、単に混合物Mと称する。本実施例の加熱工程S13において、混合物Mの最高到達温度は約220℃であった。
なお、出力の値を300Wに設定したのち、0秒から約345秒までの区間において、混合物Mの温度が50℃を示し続けている。これは、温度計17の検出可能な温度の下限値が50℃であるためである。
本実施例では、液状混合物を常温まで冷却した後に、溶解工程S14において、塩酸水溶液(HCl:6mol/L,20cm3)に、大気雰囲気・室温・常圧下で液状混合物を投入した。その結果、液状混合物は、塩酸水溶液に完全溶解(99%のベリリウム溶解を確認)した。
〔第2の実施例〕
上述した誘電加熱装置10を用いた場合の製造方法M10の第2の実施例について、以下に説明する。本実施例では、出発原料としてリチウム鉱石の一例であるリチア輝石(スポジュミン:LiAlSi2O6)を用いた。
本実施例では、粉砕・混合工程S12において、ボールミルを用いてスポジュミンを粉砕した。粉砕・混合工程S12を実施した後のスポジュミンの粒径は、150μm以下である。また、乳鉢を用いて水酸化ナトリウムを30分間粉砕した。そのうえで、スポジュミン及び水酸化ナトリウムの各々の粉末を、それぞれ、0.2g及び2gずつ分取し、乳鉢を用いて混合することにより粉末状混合物MPを得た。
本実施例では、加熱工程S13において、粉末状混合物MPを酸化アルミニウム(アルミナ:Al2O3)製の容器14の上にのせ、誘電加熱装置10にて大気雰囲気・常圧下で誘電加熱した。誘電加熱による温度履歴は、図6と同様の傾向であった。誘電加熱装置10の出力の値を300Wとし、加熱時間を8分間とした。加熱工程S13を実施することにより、粉末状混合物MPは、誘電加熱に伴い融解し、8分後には、全て乳液状の液状混合物となった。以下では、混合物が粉末状であるか液状であるかを区別しなくてもよい場合には、単に混合物Mと称する。本実施例の加熱工程S13において、混合物Mの最高到達温度は約220℃であった。
本実施例では、液状混合物を常温まで冷却した後に、溶解工程S14において、塩酸水溶液(HCl:6mol/L,20cm3)に、大気雰囲気・室温・常圧下で液状混合物を投入した。その結果、液状混合物は、塩酸水溶液に溶解(90%以上のリチウム溶解を確認)した。
(参考例)
また、製造方法M10に含まれる加熱工程S13の参考例として、水酸化ナトリウムの粉末、及び、炭酸水素ナトリウムの粉末の誘電加熱を行った。それらの結果について、図7及び図8を参照して説明する。図7は、水酸化ナトリウムの粉末を誘電加熱した結果得られた水酸化ナトリウムの温度変化を示すグラフである。図8は、炭酸水素ナトリウムの粉末を誘電加熱した結果得られた炭酸水素ナトリウムの温度変化を示すグラフである。
上述した実施例の場合と同様に、水酸化ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムの各々を、それぞれ、乳鉢を用いて30分間粉砕した。そのうえで、水酸化ナトリウム及び炭酸水素ナトリウムの各々を、それぞれ、2gずつ分取し、誘電加熱装置10を用いて誘電加熱した。本参考例においては、誘電加熱装置10の出力の値を300Wとし、加熱時間を10分間とした。
図7を参照すれば、水酸化ナトリウムの粉末は、誘電加熱を実施することにより加熱され、最高到達温度が約250℃であることが分かった。この誘電加熱を実施したあとの水酸化ナトリウムは、融解しており液状だった。この結果より、製造方法M10の加熱工程S13においては、粉末状混合物MPのうち水酸化ナトリウムが誘電加熱に用いる電磁波のエネルギーを吸収していると考えられる。
一方、図8を参照すれば、炭酸ナトリウムの粉末は、誘電加熱を実施した場合であっても、その温度がほとんど上昇しないことが分かった。図8において、炭酸ナトリウムの温度は、温度計17の検出可能な下限値である50℃を下回っている。この結果より、従来から知られているアルカリ溶融法において用いられる炭酸ナトリウムは、誘電加熱に用いる電磁波のエネルギーをほとんど吸収しないと考えられる。
なお、グラフは省略するが、ベリル及びスポジュミンの少なくとも何れかの粉末のみを誘電加熱を行った場合、ベリル及びスポジュミンの少なくとも何れかの粉末の温度は、炭酸ナトリウムの粉末の場合と同様にほとんど上昇しないことが分かった。この結果より、水酸化ナトリウムと混合していないベリル及びスポジュミンは、誘電加熱に用いる電磁波のエネルギーをほとんど吸収しないと考えられる。
〔第7の実施形態〕
<ベリリウムの製造システム>
本発明の第7の実施形態に係るベリリウムの製造システム20について、図9及び図10を参照して説明する。図9は、ベリリウムの製造システム20の一部を構成するベリリウム溶液(BeCl2溶液)の製造装置20Aの概略図である。図10の(a)は、晶析装置20B、無水化装置20C、及び電解装置20Dの概略図である。図10の(b)は、図10の(a)に示された晶析装置20Bが備えている晶析処理槽31の変形例の概略図である。図10の(c)は、図10の(a)に示された無水化装置20Cが備えている乾燥機33の変形例の概略図である。晶析装置20B、無水化装置20C、及び電解装置20Dの各々は、それぞれ、ベリリウムの製造システム20の一部を構成する。なお、以下において、ベリリウムの製造システム20のことを単に製造システム20とも称し、ベリリウム溶液の製造装置20Aのことを単に製造装置20Aとも称する。
図9及び図10に示すように、製造システム20は、製造装置20A、晶析装置20B、無水化装置20C、及び電解装置20Dを備えており、図2の(a)に示した製造方法M20を実施するための装置である。より詳しくは、製造装置20Aは、図1に示した製造方法M10の取り出し工程S11を除いた各工程を実施するための装置であり、晶析装置20B、及び無水化装置20Cは、図2の(a)に示した無水化工程S21を実施するための装置であり、電解装置20Dは、図2の(a)に示した電解工程S22を実施するための装置である。
なお、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、出発原料としてトリチウム増殖材の一例であるチタン酸リチウム(Li2TiO3)と、中性子増倍材の一例であるベリリウムであって、表面に酸化ベリリウム(BeO)からなる酸化層が形成されているベリリウム(Be)とを用いる。ただし、製造装置20Aにおける出発原料は、第1の実施形態に例示されているように、チタン酸リチウム(Li2TiO3)、及び、表面に酸化ベリリウム(BeO)からなる酸化層が形成されているベリリウム(Be)に限定されない。
(ベリリウム溶液の製造装置20A)
図9に示すように、製造装置20Aは、粉砕器21aと、フィーダーF1aと、粉砕器21bと、フィーダーF1bと、バルブV1~V15と、誘電加熱装置22と、フィルタ23,29と、容器24,26,27,28,30と、遠心分離機25と、を備えている。また、製造装置20Aは、図9に図示していない制御部を備えている。制御部は、フィーダーF1a,F1b、バルブV1~V15、及び誘電加熱装置22の各々を制御する。
粉砕器21aは、投入された出発原料であるチタン酸リチウム及び表面に酸化層が形成されたベリリウムを粉砕し粉末にする。そのうえで、粉砕器21aは、チタン酸リチウム及びベリリウムの粉末をフィーダーF1aに供給する。粉砕器21aは、既存の粉砕器の中から所望のスペックに応じて適宜選択することができる。したがって、ここでは、粉砕器21aに関する詳しい説明を省略する。粉砕器21aを用いて出発原料を粉砕することによって、中性子増倍材の一例であるベリリウムの表面に酸化層が形成されている場合であっても、その酸化層を機械的に破壊し、酸化層に覆われていたベリリウムを露出させることができる。したがって、加熱工程S13においてベリリウム水酸化ナトリウムと共に融解する速度を高めることができる。
フィーダーF1aは、制御部により制御されており、粉砕器21aから供給された出発原料を後述する誘電加熱装置22の容器22cに供給する。フィーダーF1aは、容器22cに出発原料を供給する原料供給部の一例である。
粉砕器21bは、投入された水酸化ナトリウムを粉砕し粉末にする。そのうえで、粉砕器21bは、水酸化ナトリウムの粉末をフィーダーF1bに供給する。粉砕器21bは、既存の粉砕器の中から所望のスペックに応じて適宜選択することができる。したがって、ここでは、粉砕器21bに関する詳しい説明を省略する。粉砕器21bを用いて水酸化ナトリウムを粉砕することによって、水酸化ナトリウムの粒径を所望のサイズにすることができる。なお、上述したように、水酸化ナトリウムの形状は、粉末に限定されない。したがって、製造装置20Aにおいては、粉砕器21bを省略することもできる。
フィーダーF1aは、制御部により制御されており、粉砕器21aから供給された出発原料の粉末を後述する誘電加熱装置22の容器22cに供給する。フィーダーF1aは、容器22cに出発原料を供給する原料供給部の一例である。同様に、フィーダーF1bは、制御部により制御されており、粉砕器21bから供給された水酸化ナトリウムの粉末を後述する誘電加熱装置22の容器22cに供給する。フィーダーF1bは、容器22cに水酸化ナトリウムを供給する水酸化物供給部の一例である。
誘電加熱装置22は、電磁波発生部22aと、導波管22bと、容器22cと、撹拌機構と、温度計と、を備えている。誘電加熱装置22は、図1に示した製造方法M10の加熱工程S13及び溶解工程S14を実施する。
電磁波発生部22aは、制御部により制御されており、所定の周波数を有する電磁波を発生するように構成されている。所定の周波数は、例えば、マイクロ波の帯域内において適宜選択することができるが、本実施形態では、所定の周波数を2.45GHzとする。2.45GHzという周波数は、家庭用の電子レンジにおいて利用されている電磁波と同じ周波数である。
導波管22bは、金属製の筒状部材であり、一方の端部が電磁波発生部22aに接続されており、他方の端部が容器22cに接続されている。導波管22bは、電磁波発生部22aが発振した電磁波を一方の端部から他方の端部へ導波し、この電磁波を他方の端部から容器22cの内部空間に放射する。なお、図9には図示していないが、導波管22bの中途区間には、図5に示したアイソレータが設けられている。この場合、図5に示した導波管12を導波管22bに読み替えればよい。
容器22cは、内部空間に出発原料の粉末及び水酸化ナトリウムの粉末を収容する箱状部材である。容器22cは、図4に示した容器14と同様に、耐酸性を有する材料により構成されている。容器22cには、フィーダーF1aを介して粉砕器21aから供給された出発原料の粉末と、フィーダーF1bを介して粉砕器21bから供給された水酸化ナトリウムの粉末と、が供給される。容器22cの内部には、図9への図示を省略している撹拌機構が設けられている。制御部が撹拌機構を回転させることによって、容器22cの内部空間に供給された出発原料の粉末と水酸化ナトリウムの粉末とは、混合され、粉末状混合物となる。このように、容器22cは、出発原料の粉末と、水酸化ナトリウムの粉末とを混合することによって、粉末状混合物を得る混合部の一例である。なお、容器22cはロータリーキルン炉のような管状且つ軸回りに回転する容器であってもよい。また、ロータリーキルン炉に後述する液体供給部を組み合わせることによって、連続処理を実施可能になる。
図9への図示を省略している温度計は、容器22cの内部空間に収容された内容物(この時点では粉末状混合物)の温度を検出し、その温度を表す温度信号を制御部に出力する。温度計は、放射温度計のような非接触式の温度計であってもよいし、熱電対のような接触式の温度計であってもよい。何れの方式の温度計を採用する場合であっても、温度計は、容器22cの内部空間に設けられており、当該内部空間に収容された内容物の温度を直接検出可能なように構成されていることが好ましい。
制御部は、出力が所定の値になるように電磁波発生部22aの出力を制御してもよいし、温度計から受け取った温度信号が表す温度が予め定められた温度になるように、電磁波発生部22aの出力を制御してもよい。なお、この予め定められた温度は、時間に対して一定であってもよいし、時間に応じて変化してもよい。本実施形態において、制御部は、温度信号が表す温度が時間に応じて所定のプロファイルで変化するように電磁波発生部22aの出力を制御する。温度の所定のプロファイルの一例としては、5分間かけて室温から250℃まで変化させ、その後250℃を10分間維持するパターンが挙げられる。
このように構成された誘電加熱装置22は、図1に示した製造方法M10の加熱工程S13を実施することにより、出発原料と水酸化ナトリウムとを含む液状混合物が得られる。
次に、バルブV1を介してHCl溶液が供給される。このバルブV1を介してHCl溶液を容器22cに供給することによって溶解工程S14が実施される。このバルブV1を介してHCl溶液を容器22cに供給する機構は、液状混合物に対して酸性溶液を供給する液体供給部として機能する。容器22cにおいて、液状混合物は、HCl溶液に対して溶解し、リチウムを含むベリリウム溶液(BeCl2溶液)となる。なお、上述のように、出発原料と水酸化ナトリウムとを含む液状混合物を溶解させる液体は、HCl溶液などの酸溶液に限定されず、水であってもよい。この液体として水を用いる場合には、バルブV1を介して水を容器22cに供給することによって溶解工程S14が実施される。
なお、溶解工程S14を実施している最中、制御部は、出力が所定の値になるように電磁波発生部22aの出力を制御してもよいし、温度計から受け取った温度信号が表す温度が予め定められた温度になるように、電磁波発生部22aの出力を制御してもよい。溶解工程S14を実施している最中にも誘導加熱を実施することにより、液状混合物のHCl溶液に対して溶解が促進される。また、溶解工程S14を実施している最中、制御部は、撹拌機構を動作させ続けてもよい。
バルブV2は、容器22cの内部空間と後述するフィルタ23との間の経路を開閉する。制御部は、加熱工程S13及び溶解工程S14を実施している間は、バルブV2を閉じておき、加熱工程S13及び溶解工程S14を実施した後にバルブV2を開く。その結果、加熱工程S13により得られたリチウムを含むベリリウム溶液は、容器22cからフィルタ23に供給される。
フィルタ23は、リチウムを含むベリリウム溶液のうち、液相(すなわちLiClを含むBeCl2溶液)を通過させ、固相(すなわち酸化チタン)を濾過するように構成されている。すなわち、フィルタ23は、製造方法M10の第1の濾過工程S15を実施する。フィルタ23は、既存のフィルタの中から所望のスペックに応じて適宜選択することができる。したがって、ここでは、フィルタ23に関する詳しい説明を省略する。
バルブV3は、フィルタ23と後述する容器24との間の経路を開閉する。制御部は、少なくとも、フィルタ23にリチウムを含むベリリウム溶液が供給されている期間中は、バルブV3を開く。その結果、第1の濾過工程S15により得られたLiClを含むBeCl2溶液は、フィルタ23から容器24に供給される。
容器24は、内部空間が中空な耐酸性及び耐塩基性を有する箱状部材である。容器の構成については、後述する容器26,27,28,30の各々は、耐酸性を有する箱状部材である。容器24には、バルブV4を介してNaOH溶液が供給される。このバルブV4を介してNaOH溶液を容器24内のベリリウム溶液に供給する機構は、ベリリウム溶液に対してNaOH溶液を供給するNaOH溶液供給部として機能する。
容器24に供給されたLiClを含むBeCl2溶液及びNaOH溶液は、容器24の内部空間において混合される。すなわち、容器24の内部空間において、製造方法M10の水酸化ナトリウム添加工程S16が実施される。その結果、容器24の内部では、固相である水酸化ベリリウム(Be(OH)2)が生成し、液相であるLiOHがNaOH溶液に溶解する。
なお、図9には図示していないものの、容器24の内部空間には、LiClを含むBeCl2溶液及びNaOH溶液を撹拌する撹拌機構が設けられていてもよい。同様に、後述する容器26,27,28,30の内部空間にも撹拌機構が設けられていてもよい。
バルブV5は、容器24の内部空間と後述する遠心分離機25との間の経路を開閉する。制御部は、水酸化ナトリウム添加工程S16を実施している間は、バルブV5を閉じておき、水酸化ナトリウム添加工程S16を実施した後にバルブV5を開く。その結果、水酸化ナトリウム添加工程S16により得られたBe(OH)2及びLiOHを含むNaOH溶液は、容器24から遠心分離機25に供給される。
遠心分離機25は、Be(OH)2及びLiOHを含むNaOH溶液のうち、液相(すなわちLiOHを含むNaOH溶液)と、固相(すなわちBe(OH)2)とを分離する。すなわち、遠心分離機25は、製造方法M10の第2の濾過工程S17を実施する。遠心分離機25は、既存の遠心分離機の中から所望のスペックに応じて適宜選択することができる。したがって、ここでは、遠心分離機25に関する詳しい説明を省略する。第2の濾過工程S17により得られたBe(OH)2は、後述する容器26の内部空間に投入され、第2の濾過工程S17により得られたLiOHを含むNaOH水溶液は、図示しない回収ラインに回収される。
また、Be(OH)2及びLiOHを含むNaOH溶液における液相と固相とを分離するために、遠心分離機25の代わりにフィルタ23のようなフィルタを用いてもよい。
容器26には、バルブV6を介してHCl溶液が供給される。容器26に供給されたBe(OH)2及びHCl溶液は、容器26の内部空間において混合される。すなわち、容器26の内部空間において、製造方法M10の塩酸添加工程S18が実施される。その結果、容器26の内部では、生成したBeCl2がHCl溶液に溶解したベリリウム溶液(BeCl2溶液)が生成される。
バルブV7は、容器26の内部空間と後述する容器27の内部空間との間の経路を開閉する。制御部は、塩酸添加工程S18を実施している間は、バルブV7を閉じておき、塩酸添加工程S18を実施した後にバルブV7を開く。その結果、塩酸添加工程S18により得られたベリリウム溶液は、容器26から容器27に供給される。
容器27には、バルブV8を介して有機化合物溶液が供給される。このバルブV8を介して有機化合物溶液を容器27に供給する機構は、塩化ベリリウム溶液に対して有機化合物溶液を供給する有機化合物溶液供給部として機能する。この有機化合物溶液は、製造方法M10の第1の不純物除去工程S19に記載の有機化合物溶液である。したがって、ここでは、有機化合物溶液に関する説明を省略する。
容器27に供給されたベリリウム溶液及び有機化合物溶液は、容器27の内部空間において混合される。すなわち、容器27の内部空間において、第1の不純物除去工程S19が実施される。その結果、容器27の内部では、第1の元素の含有量が抑制されたベリリウム溶液と、第1の元素を含有する有機化合物溶液とが2層に分離する。ベリリウム溶液の比重が有機化合物溶液の比重を上回るため、ベリリウム溶液が有機化合物溶液の下方に位置する。
バルブV9は、容器27の内部空間と図示しない回収ラインとの間の経路を開閉する。バルブV10は、容器27の内部空間と後述する容器28の内部空間との間の経路を開閉する。
制御部は、第1の不純物除去工程S19を実施している間は、バルブV9,V10を何れも閉じておく。制御部は、第1の不純物除去工程S19を実施した後に、まず、バルブV10のみを開く。これにより、第1の不純物除去工程S19により得られた第1の元素の含有量が抑制されたベリリウム溶液は、容器27から容器28に供給される。その後、制御部は、バルブV10を閉じ、バルブV9を開く。これにより、第1の不純物除去工程S19により得られた第1の元素を含有する有機化合物溶液は、回収ラインに回収される。
容器28には、バルブV11を介して重曹が供給される。このバルブV11を介して重曹を容器28に供給する機構は、塩化ベリリウム溶液に対して重曹を供給する重曹供給部として機能する。この重曹は、製造方法M10の第2の不純物除去工程S20に記載の重曹である。したがって、ここでは、重曹に関する説明を省略する。
容器28に供給されたベリリウム溶液及び重曹は、容器28の内部空間において混合される。すなわち、容器28の内部空間において、第2の不純物除去工程S20が実施される。その結果、容器28の内部では、第2の元素の水酸化物が沈殿し、水酸化ベリリウム(Be(OH)2)溶液における第2の元素の含有量が抑制される。
バルブV12は、容器28の内部空間と後述するフィルタとの間の経路を開閉する。制御部は、第2の不純物除去工程S20を実施している間は、バルブV12を閉じておき、第2の不純物除去工程S20を実施した後にバルブV12を開く。その結果、第2の不純物除去工程S20により得られた水酸化ベリリウム溶液であって、第2の元素の水酸化物を含む水酸化ベリリウム溶液は、容器28からフィルタ29に供給される。
フィルタ29は、第2の元素の水酸化物を含む水酸化ベリリウム溶液のうち、液相(すなわち水酸化ベリリウム溶液)を通過させ、固相(すなわち第2の元素の水酸化物)を濾過するように構成されている。フィルタ29は、既存のフィルタの中から所望のスペックに応じて適宜選択することができる。したがって、ここでは、フィルタ29に関する詳しい説明を省略する。
バルブV13は、フィルタ29と後述する容器30との間の経路を開閉する。制御部は、少なくとも、フィルタ29に第2の元素の水酸化物を含む水酸化ベリリウム溶液が供給されている期間中は、バルブV13を開く。その結果、第2の不純物除去工程S20により得られた水酸化ベリリウム溶液であって、第2の元素の含有量が抑制された水酸化ベリリウム溶液は、フィルタ29から容器30に供給される。
容器30には、バルブV13を介して水酸化ベリリウム溶液が供給され、バルブV14を介してHCl溶液が供給される。容器30に供給されたBe(OH)2溶液及びHCl溶液は、容器30の内部空間において混合される。その結果、容器30の内部では、生成したBeCl2がHCl溶液に溶解したベリリウム溶液(BeCl2溶液)が生成される。
バルブV15は、容器30と後述する晶析装置20Bの晶析処理槽31との間の経路を開閉する。制御部は、少なくとも、容器30にHCl溶液が供給されている期間中は、バルブV15を閉じておき、容器30に供給されたBe(OH)2溶液とHCl溶液とが十分に混合された後にバルブV15を開く。その結果、ベリリウム溶液(BeCl2溶液)は、容器30から晶析処理槽31に供給される。
(晶析装置20B)
図10の(a)に示すように、晶析装置20Bは、晶析処理槽31と、チラーCと、ポンプPと、復水槽と、バルブV16,V17を備えている。また、晶析装置20Bは、図10の(a)に図示していない制御部を備えている。制御部は、晶析処理槽31、チラーC、ポンプP、及びバルブV16,V17の各々を制御する。
晶析処理槽31は、内側槽と外側槽とを備えている。外側槽の内部空間には、バルブV16を介して温水が供給される。内側槽の内部空間には、製造装置20Aにより生成されたベリリウム溶液(BeCl2溶液)が供給される。上述した温水は、内側槽に収容されるベリリウム溶液及びHCl溶液を加熱する。温水の利用は、外部加熱方式を採用した加熱手段の一例である。
チラーCと、復水槽と、ポンプPは、減圧脱水系を構成する。ポンプPは、内側槽の内部空間を排気する。チラーCは、内側槽の内部空間から排気された気体を冷却する。復水槽は、チラーCにより冷却されることによって液化した復水を蓄える。
このように構成された晶析装置20Bは、塩化ベリリウムを晶析することができる。晶析された塩化ベリリウムは、バルブV17を介して晶析処理槽31から後述する遠心分離機32に供給される。
なお、晶析処理槽31は、図10の(b)に示すように、温水を供給するバルブV16の代わりに、電磁波発生部31aと、導波管31bとを備えていてもよい。電磁波発生部31a及び導波管31bの各々は、それぞれ、図9に示した電磁波発生部22a及び導波管22bと同様に構成されており、誘導加熱装置の一例である。
以上のように、晶析装置20Bにおいてベリリウム溶液及びHCl溶液を加熱する加熱手段は、図10の(a)に示すような外部加熱方式であってもよいし、図10の(b)に示すように、誘導加熱方式であってもよい。なお、エネルギー効率の観点からは、誘導加熱方式を採用することが好ましい。
(無水化装置20C)
図10の(a)に示すように、無水化装置20Cは、遠心分離機32と、乾燥機33とを備えている。また、無水化装置20Cは、図10の(a)に図示していない制御部を備えている。制御部は、遠心分離機32及び乾燥機33の各々を制御する。
晶析装置20Bにより晶析された塩化ベリリウムは、遠心分離機32を用いて脱水される。脱水された塩化ベリリウムは、乾燥機33を用いて無水化される。乾燥機33としては、熱風を生成する熱風生成機構が例示され、当該熱風生成機構が生成する熱風を利用して塩化ベリリウムを加熱し、無水化させる。すなわち、晶析装置20B及び無水化装置20Cは、特許請求の範囲に記載の無水化装置の一例であり、図2に示した製造方法M20の無水化工程S21を実施することができる。熱風は、外部加熱方式を採用した加熱手段の一例である。
なお、乾燥機33は、熱風を生成する熱風生成機構の代わりに、電磁波発生部33aと、導波管33bとを備えていてもよい(図10の(c)参照)。電磁波発生部33a及び導波管33bの各々は、それぞれ、図9に示した電磁波発生部22a及び導波管22bと同様に構成されており、誘導加熱装置の一例である。
以上のように、無水化装置20Cにおいて塩化ベリリウムを加熱する加熱手段は、図10の(a)に示すような外部加熱方式であってもよいし、図10の(c)に示すように、誘導加熱方式であってもよい。なお、エネルギー効率の観点からは、誘導加熱方式を採用することが好ましい。
(電解装置20D)
図10の(a)に示すように、電解装置20Dは、電解炉34aと、電源34bと、陽極34cと、陰極34dと、フィーダーF2を備えている。また、電解炉34aは、図10の(a)に図示していないヒータを備えている。また、電解装置20Dは、図10の(a)に図示していない制御部を備えている。制御部は、電源34b、ヒータ、及びフィーダーF2の各々を制御する。
電解炉34aの炉内には、無水化装置20Cにより生成された無水化した塩化ベリリウムが供給される。また、電解炉34aの炉内には、フィーダーF2を介して塩化ナトリウム(NaCl)が供給される。
塩化ベリリウム及び塩化ナトリウムを炉内に収容した電解炉34aは、ヒータを用いて加熱される。その結果、塩化ベリリウム及び塩化ナトリウムは、溶融する。なお、電解浴として塩化ベリリウムに塩化ナトリウムを加えた二元浴を用いることによって、電解浴の融点を低下させることができる。加熱した場合の電解炉34aの温度は、上記二元浴の融点を超える範囲内で適宜定めることができる。電解炉34aの温度の例としては、350℃があげられる。
陽極34cは、例えば炭素製の電極であり、陰極34dは、例えばニッケル製の電極である。
制御部は、上記二元浴が溶融した状態で、電源34bを用いて、陽極34cと陰極34dとの間に電流を流す。その結果、上記二元浴が電気分解され、陰極34dの表面には金属のベリリウムが生成する。
以上のように、電解装置20Dは、図2に示した製造方法M20の電解工程S22を実施することができる。
〔その他の実施形態〕
上述した第7の実施形態では、製造装置20Aと、晶析装置20Bと、無水化装置20Cとを用いたベリリウムの製造システム20であって、製造方法M20を実施する製造システム20について説明した。
しかし、本発明の範疇には、ベリリウムの製造システム20のみならず、水酸化ベリリウムの製造方法M30を実施する水酸化ベリリウムの製造システム、及び、酸化ベリリウムの製造方法M40を実施する酸化ベリリウムの製造システムの各々も含まれる。
水酸化ベリリウムの製造システムは、図9に示した製造装置20Aと、製造装置20Aが生成した塩化ベリリウム溶液を塩基で中和することによって水酸化ベリリウムを生成する中和装置と、を備えている。中和装置は、例えば、図9に示した容器24、バルブV4,V5、及び遠心分離機25の各々に対応する各部材により構成することができる。また、中和に用いる塩基として、水酸化ナトリウムの代わりにアンモニアを用いてもよい。
酸化ベリリウムの製造システムは、図9に示した製造装置20Aと、製造装置20Aが生成した塩化ベリリウム溶液を加熱することによって酸化ベリリウムを生成する第3の加熱装置と、を備えている。第3の加熱装置は、限定されるものではないが、例えば電気炉を用いることができる。
また、(ベリリウム溶液の製造方法の変形例)及び(リチウム溶液の製造方法)の項において、出発原料としてベリリウム鉱石(例えばベリル)又はリチウム鉱石(例えばリチア輝石)を用いる場合、水酸化ナトリウム添加工程S16、第2の濾過工程S17、及び塩酸添加工程S18は、省略することができると説明した。したがって、製造装置20Aを用い、且つ、出発原料としてベリリウム鉱石又はリチウム鉱石を用いる場合には、水酸化ナトリウム添加工程S16、第2の濾過工程S17、及び塩酸添加工程S18の各々を実施する構成を省略することができる。すなわち、バルブV3より供給されるベリリウム溶液又はリチウム溶液であって、第1の濾過工程S15により得られたベリリウム溶液又はリチウム溶液を、そのまま容器27に供給すればよい。
〔第8の実施形態及び第9の実施形態〕
本発明の第8の実施形態に係る水酸化リチウム(LiOH)の製造方法M70、及び、本発明の第9の実施形態に係る炭酸リチウム(Li2CO3)の製造方法M80について、図11を参照して説明する。図11の(a)及び(b)の各々は、それぞれ、水酸化リチウムの製造方法M70及び炭酸リチウムの製造方法M80のフローチャートである。
水酸化リチウムの製造方法M70及び炭酸リチウムの製造方法M80は、いずれも、第2の濾過工程S17により液相として分離された溶液であって、水酸化リチウムを含む溶液を用いる。また、水酸化リチウムの製造方法M70及び炭酸リチウムの製造方法M80の何れを実施するかは、そのときの優先度に応じて適宜定めることができる。
(水酸化リチウムの製造方法M70)
図11の(a)に示すように、水酸化リチウムの製造方法M70は、乾燥工程S71を含んでいる。乾燥工程S71は、第2の濾過工程S17により分離された溶液を蒸発させ、且つ、析出する水酸化リチウムを乾燥させる工程である。水酸化リチウムの製造方法M70を実施することにより、固体の水酸化リチウムを得ることができる。
(炭酸リチウムの製造方法M80)
図11の(b)に示すように、炭酸リチウムの製造方法M80は、炭酸ガス導入工程S81と、第4の濾過工程S82と、乾燥工程S83と、を含んでいる。
炭酸ガス導入工程S81は、第2の濾過工程S17により分離された溶液に炭酸ガスを導入することによって、溶液中に炭酸リチウムを沈殿させる工程である。
第4の濾過工程S82は、炭酸ガス導入工程S81の後に実施する工程である。第4の濾過工程S82は、溶液中に沈殿している炭酸リチウムを、フィルタを用いて、溶液から分離する工程である。
乾燥工程S83は、第4の濾過工程S82の後に実施する工程である。乾燥工程S83は、第4の濾過工程S82により分離された炭酸リチウムを乾燥させる工程である。
炭酸リチウムの製造方法M80を実施することにより、固体の炭酸リチウムを得ることが出来る。
(小括)
以上のように、第2の濾過工程S17により液相として分離された水酸化リチウムを含む溶液を用いて、水酸化リチウムの製造方法M70又は炭酸リチウムの製造方法M80を実施することにより、固体の水酸化リチウム又は炭酸リチウムを製造することができる。したがって、第2の濾過工程S17により液相として分離された水酸化リチウムを資源として無駄にすることなく回収することができる。
なお、水酸化リチウムの製造方法M70及び炭酸リチウムの製造方法M80の各々は、分離方法M50と同様に、製造方法M10の一部に含ませることができる。
〔第10の実施形態〕
本発明の第10の実施形態に係る炭酸リチウム(Li2CO3)の製造方法M90について、図12を参照して説明する。図12は、製造方法M90のフローチャートである。本実施形態では、リチウム鉱石の一例であるリチア輝石(スポジュミン:LiAlSi2O6)を出発原料として用いる。
図12に示すように、製造方法M90は、粉砕・混合工程S12と、加熱工程S13と、溶解工程S14と、第1の濾過工程S15と、水酸化ナトリウム添加工程S16と、第2の濾過工程S17と、炭酸ガス導入工程S91と、分離工程S92と、乾燥工程S93と、を含む。
製造方法M90における粉砕・混合工程S12~第2の濾過工程S17は、出発原料がリチア輝石である点を除いて、製造方法M10における粉砕・混合工程S12~第2の濾過工程S17と同じである。したがって、本実施形態では、粉砕・混合工程S12~第2の濾過工程S17の詳しい説明を省略する。
なお、本実施形態では、粉砕・混合工程S12において出発原料に混合する水酸化物として水酸化ナトリウム(NaOH)を用い、且つ、溶解工程S14において用いる酸溶液として塩酸を用いる。
溶解工程S14を実施することによって、リチア輝石に含まれていたリチウム、アルミニウム、及びシリコンの各イオンと、塩化ナトリウム(NaCl)と、を含む酸溶液が得られる。
第1の濾過工程S15を実施することにより、固相に含まれる珪酸(H2SiO3)を分離することができる。
また、水酸化ナトリウム添加工程S16及び第2の濾過工程S17を実施することによって、固相に含まれる水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を分離することができる。また、出発原料に微量の鉄(Fe)が存在している場合には、固相に含まれる水酸化鉄(Fe(OH)3)として鉄を分離することができる。その結果、水酸化リチウム(LiOH)及び塩化ナトリウム(NaCl)を含む水酸化ナトリウム溶液が得られる。
炭酸ガス導入工程S91は、図11の(b)に示す炭酸リチウムの製造方法M80に含まれる炭酸ガス導入工程S81と同じ工程である。したがって、本実施形態では、炭酸ガス導入工程S91の説明を省略する。炭酸ガス導入工程S91を実施することにより、炭酸リチウム(Li2CO3)、塩化ナトリウム、及び炭酸ナトリウム(Na2CO3)を含む液相が得られる。
分離工程S92は、炭酸リチウム(Li2CO3)、塩化ナトリウム、及び炭酸ナトリウム(Na2CO3)を含む液相から炭酸リチウム(Li
2
CO
3
)を分離する工程である。分離工程S92では、炭酸リチウム、塩化ナトリウム、及び炭酸ナトリウムを含む液相を減圧濃縮することにより、炭酸リチウムが分散した懸濁液を得ることができる。このような懸濁液は、スラリーとも呼ばれる。なお、減圧濃縮は、70℃以下の温度において実施することが好ましい。
更に、分離工程S92では、上述した懸濁液に対して遠心分離を実施する。遠心分離を実施することにより、析出した炭酸リチウムを沈殿させることができる。したがって、固相に含まれる炭酸リチウムと、液相に含まれる塩化ナトリウム及び炭酸ナトリウムを分離することができる。
乾燥工程S93は、図11の(b)に示す炭酸リチウムの製造方法M80に含まれると同じ工程であり、分離工程S92により分離された炭酸リチウムを乾燥させる工程である。
以上のように、炭酸リチウムの製造方法M90を実施することにより、リチア輝石を出発原料として固体の炭酸リチウムを得ることができる。
<製造方法M90の変形例>
本実施形態では、出発原料としてリチア輝石を用いた。ただし、製造方法M90において用いる出発原料は、リチア輝石に限定されない。出発原料の例としては、酸化鉱物(例えばボーキサイト)や、人工の複合酸化物(例えば、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)及びコージェライト)などが挙げられる。ボーキサイトは、酸化アルミニウム水和物(Al2O3・2H2O)及びアルミニウム(Al)を含む。YSZは、ジルコニア(酸化ジルコニウム、ZrO2)及びイットリア(酸化イットリウム、Y2O3)を含む。コージェライトは、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、及び酸化シリコン(SiO2)を含む。
これらの出発原料を用いる場合であっても、製造方法M90は、好適に利用することができる。なお、製造方法M10の説明でも記載した通り、粉砕・混合工程S12において出発原料に混合する水酸化物は、水酸化ナトリウムであってもよいし、水酸化カリウムであってもよい。また、溶解工程S14において液状混合物を溶解させる液体としては、塩酸や、硫酸や、王水などに代表される酸溶液であってもよいし、水であってもよい。
以上のように、製造方法M90の一変形例を実施することにより、酸化鉱物又は複合酸化物を出発原料として、酸化鉱物または複合酸化物を構成する無機物が溶解した溶液(例えばアルミニウム溶液)を得ることができる。酸化鉱物または複合酸化物に複数の無機物(例えば、アルミニウム、貴金属等)が含まれている場合には、これらの無機物が2以上溶解した溶液を得ることができる。
〔第11の実施形態〕
本発明の第11の実施形態に係る炭酸リチウム(Li2CO3)の製造方法M100について、図13を参照して説明する。図13は、製造方法M100のフローチャートである。本実施形態では、リチウム鉱石の一例であるリチア輝石(スポジュミン:LiAlSi2O6)を出発原料として用いる。
図13に示すように製造方法M100は、粉砕・混合工程S12と、加熱工程S13と、溶解工程S14と、第1の濾過工程S15と、炭酸水素ナトリウム添加工程S1006と、第5の濾過工程S1007と、分離工程S1008と、乾燥工程S1009と、を含む。
製造方法M100における粉砕・混合工程S12~第1の濾過工程S15は、製造方法M90における粉砕・混合工程S12~第1の濾過工程S15と同じである。したがって、本実施形態では、粉砕・混合工程S12~第1の濾過工程S15の詳しい説明を省略する。
第1の濾過工程S15の後に実施する、炭酸水素ナトリウム添加工程S1006及び第5の濾過工程S1007は、製造方法M90に含まれる水酸化ナトリウム添加工程S16及び第2の濾過工程S17に対応する工程である。炭酸水素ナトリウム添加工程S1006及び第5の濾過工程S1007を実施することによって、固相に含まれる水酸化アルミニウム(Al(OH)3)を分離することができる。また、出発原料に微量の鉄(Fe)が存在している場合には、固相に含まれる水酸化鉄(Fe(OH)3)として鉄を分離することができる。その結果、炭酸リチウム、塩化ナトリウム(NaCl)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、及び炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)を含む水酸化ナトリウム溶液が得られる。
製造方法M100の分離工程S1008及び乾燥工程S1009は、製造方法M90の分離工程S92及び乾燥工程S93に対応する工程である。製造方法M100の分離工程S1008においても製造方法M90の分離工程S92と同様に、炭酸リチウム、塩化ナトリウム(NaCl)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、及び炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)を含む水酸化ナトリウム溶液を減圧濃縮及び遠心分離することにより、炭酸リチウムが分散した懸濁液を得る。ただし、分離工程S1008においては、減圧濃縮及び遠心分離するときに水酸化ナトリウム溶液にメタノールを添加しておく。これにより、塩化ナトリウム及び炭酸ナトリウムと比較して水溶性が低い炭酸水素ナトリウムを、液相中に溶解させることができる。
なお、乾燥工程S1009は、製造方法M90の乾燥工程S93と同じ工程であるため、ここでは、その説明を省略する。
以上のように、炭酸リチウムの製造方法M100を実施することにより、リチア輝石を出発原料として固体の炭酸リチウムを得ることができる。
〔第12の実施形態〕
本発明の第12の実施形態に係る水酸化リチウム(LiOH)の製造方法M110について、図14を参照して説明する。図14は、製造方法M110のフローチャートである。本実施形態では、リチウム鉱石の一例であるリチア輝石(スポジュミン:LiAlSi2O6)を出発原料として用いる。
図14に示すように、製造方法M110は、粉砕・混合工程S12と、加熱工程S13と、溶解工程S14と、第1の濾過工程S15と、第3の不純物除去工程S1106と、第1の抽出工程S1107と、硫酸添加工程S1108と、第2の抽出工程S1109と、水酸化カルシウム添加工程S1110と、第6の濾過工程S1111と、分離工程S1112と、乾燥工程S1113と、を含む。
製造方法M110における粉砕・混合工程S12~加熱工程S13は、製造方法M10における粉砕・混合工程S12~加熱工程S13と同じである。したがって、本実施形態では、粉砕・混合工程S12~加熱工程S13の詳しい説明を省略する。
製造方法M110における溶解工程S14は、用いる酸溶液が硫酸(H2SO4)である点を除いて、製造方法M10における溶解工程S14と同じである。したがって、本実施形態では、溶解工程S14の詳しい説明を省略する。溶解工程S14を実施することによって、リチア輝石に含まれていたリチウム、アルミニウム、及びシリコンの各イオンと、水酸化ナトリウムに由来するナトリウム(Na)のイオンと、を含む酸溶液が得られる。
第1の濾過工程S15を実施することにより、固相に含まれる珪酸(H2SiO3)を分離することができる。
第3の不純物除去工程S1106は、製造方法M10における第1の不純物除去工程S19と同様の工程である。ただし、第3の不純物除去工程S1106は、有機化合物として、ジ(2エチルヘキシル)リン酸(D2EHPA,Di-(2-ethylhexyl) phosphoric acid)と、リン酸トリブチル(TBP,Tri-n-butyl phosphate)との混合物を用いる点と、上述した有機物に対して更に水酸化ナトリウム(NaOH)を混合する点と、が第1の不純物除去工程S19とは異なる。第3の不純物除去工程S1106を実施することにより、リチウムは、D2EHPA及びTBPに吸着される。すなわち、リチウムは、有機層に含まれる。一方、アルミニウム、シリコン、及びナトリウムは、D2EHPA及びTBPに吸着されることなく、水層に含まれる。
第1の抽出工程S1107は、第3の不純物除去工程S1106を実施することにより得られる溶液から有機層を抽出する工程である。
硫酸添加工程S1108は、第1の抽出工程S1107を実施することにより得られる有機層に硫酸の水溶液を添加する工程である。硫酸添加工程S1108を実施することにより、D2EHPA及びTBPに吸着されていたリチウムは、硫化リチウム(Li2SO4)を形成し、有機層から水層へ移動する。したがって、水層は、リチウムを含む硫酸水溶液とも言える。
第2の抽出工程S1109は、硫酸添加工程S1108を実施することにより得られる溶液から硫化リチウムを含む水層を抽出する工程である。
水酸化カルシウム添加工程S1110は、第2の抽出工程S1109を実施することにより得られる水層(リチウムを含む硫酸水溶液)に水酸化カルシウム(Ca(OH)2)を添加する工程である。水酸化カルシウム添加工程S1110を実施することにより、カルシウムは、硫酸塩である硫酸カルシウム(CaSO4)を形成することにより沈殿し、リチウムは、水酸化物イオンとともにイオン化することにより溶解する。
第6の濾過工程S1111は、水酸化カルシウム添加工程S1110により得られるリチウムを含む水溶液に含まれる固相と液相とを、フィルタを用いて分離する工程である。固相には、硫酸カルシウムが含まれている。液相には、水酸化物イオンとともにイオン化したリチウムが含まれている。
製造方法M110の分離工程S1112及び乾燥工程S1113は、製造方法M90の分離工程S92及び乾燥工程S93に対応する工程である。分離工程S1112においても分離工程S92と同様に、水酸化物イオンとともにイオン化したリチウムが含まれている溶液に対して、減圧濃縮及び遠心分離を実施する。分離工程S1112を実施することにより、水酸化リチウムが分散した懸濁液を得る。なお、乾燥工程S1113は、製造方法M90の乾燥工程S93と同じ工程であるため、ここでは、その説明を省略する。
以上のように、水酸化リチウムの製造方法M110を実施することにより、リチア輝石を出発原料として固体の水酸化リチウムを得ることができる。
なお、第2の抽出工程S1109を実施することにより得られる硫化リチウムを含む水層に対して、分離工程S1112及び乾燥工程S1113と同様の分離工程及び乾燥工程を実施することにより、固体の硫化リチウムを得ることができる。
〔第13の実施形態〕
本発明の第13の実施形態に係る炭酸リチウム(Li2CO3)の製造方法M120について、図15を参照して説明する。図15は、製造方法M120のフローチャートである。本実施形態では、リチウム鉱石の一例であるリチア輝石(スポジュミン:LiAlSi2O6)を出発原料として用いる。
図15に示すように製造方法M120は、粉砕・混合工程S1202と、加熱工程S1203と、溶解工程S1204と、第1の濾過工程S1205と、二酸化炭素ガス導入工程S1206と、分離工程S1208と、乾燥工程S1209と、を含む。
製造方法M120における粉砕・混合工程S1202及び加熱工程S1203は、製造方法M90における粉砕・混合工程S12及び加熱工程S13と同じである。したがって、本実施形態では、粉砕・混合工程S1202及び加熱工程S1203の詳しい説明を省略する。
溶解工程S1204は、加熱工程S1203において得られる液状混合物を水(H2O)に溶解させる工程である。溶解工程S1204を実施することによって、リチウム(Li)とシリコン(Si)とが溶解している水酸化ナトリウム水溶液であって、析出した水酸化アルミニウムを含む水酸化ナトリウム水溶液が得られる。
第1の濾過工程S1205は、溶解工程S1204により得られる水酸化ナトリウム水溶液に含まれる固相と液相とを、フィルタを用いて分離する工程である。固相には、水酸化アルミニウムが含まれる。液相は、リチウム(Li)とシリコン(Si)とが溶解している水酸化ナトリウム水溶液である。
二酸化炭素ガス導入工程S1206は、第1の濾過工程S1205により分離された水酸化ナトリウム水溶液に二酸化炭素ガスを導入する工程である。二酸化炭素ガス導入工程S1206を実施することにより、リチウム及びナトリウムの各々は、それぞれ、炭酸塩である炭酸リチウム及び炭酸ナトリウムを形成する。シリコンは、珪酸イオンを形成する。
製造方法M120の分離工程S1208及び乾燥工程S1209は、製造方法M90の分離工程S92及び乾燥工程S93に対応する工程である。分離工程S1208においても分離工程S92と同様に、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、及び珪酸イオンを含む溶液に対して、減圧濃縮及び遠心分離を実施する。分離工程S1208を実施することにより、炭酸リチウムが分散した懸濁液を得る。なお、乾燥工程S1209は、製造方法M90の乾燥工程S93と同じ工程であるため、ここでは、その説明を省略する。
以上のように、炭酸リチウムの製造方法M120を実施することにより、リチア輝石を出発原料として、溶解工程S1204において酸溶液を用いることなく、水を用いる場合であっても、固体の炭酸リチウムを得ることができる。
〔第14の実施形態〕
本発明の第14の実施形態に係る水酸化リチウム(LiOH)の製造方法M130について、図16を参照して説明する。図16は、製造方法M130のフローチャートである。本実施形態では、リチウム鉱石の一例であるリチア輝石(スポジュミン:LiAlSi2O6)を出発原料として用いる。
図16に示すように、製造方法M130は、粉砕・混合工程S1202と、加熱工程S1203と、溶解工程S1204と、第1の濾過工程S1205と、第4の不純物除去工程S1306と、第1の抽出工程S1107と、硫酸添加工程S1108と、第2の抽出工程S1109と、水酸化カルシウム添加工程S1110と、第6の濾過工程S1111と、分離工程S1112と、乾燥工程S1113と、を含む。
製造方法M130における粉砕・混合工程S1202~第1の濾過工程S1205は、製造方法M120における粉砕・混合工程S1202~第1の濾過工程S1205と同じである。したがって、本実施形態では、粉砕・混合工程S1202~第1の濾過工程S1205の詳しい説明を省略する。
第4の不純物除去工程S1306は、製造方法M110における第3の不純物除去工程S1106と同様の工程である。ただし、第4の不純物除去工程S1306は、有機物として、テノイルトリフルオロアセトン(TTA,ThenoylTrifluoroAcetone)と、リン酸トリブチル(TBP,Tri-n-butyl phosphate)との混合物を用いる点と、上述した有機物に対して更に塩酸(HCl)を混合する点と、が第3の不純物除去工程S1106とは異なる。第4の不純物除去工程S1306を実施することにより、TTA及びTBPに吸着される。すなわち、リチウムは、有機層に含まれる。一方、アルミニウム、シリコン、及びナトリウムは、TTA及びTBPに吸着されることなく、水層に含まれる。
製造方法M130における第1の抽出工程S1107~乾燥工程S1113は、製造方法M110における第1の抽出工程S1107~乾燥工程S1113と同じ工程である。したがって、本実施形態では、第1の抽出工程S1107~乾燥工程S1113の詳しい説明を省略する。
以上のように、水酸化リチウムの製造方法M130を実施することにより、リチア輝石を出発原料として、溶解工程S1204において酸溶液を用いることなく、水を用いる場合であっても、固体の水酸化リチウムを得ることができる。
なお、第2の抽出工程S1109を実施することにより得られる硫化リチウムを含む水層に対して、分離工程S1112及び乾燥工程S1113と同様の分離工程及び乾燥工程を実施することにより、固体の硫化リチウムを得ることができる。
〔第15の実施形態〕
本発明の第15の実施形態に係るニッケル化合物の製造方法M140について、図17を参照して説明する。図17は、製造方法M140のフローチャートである。本実施形態では、ニッケルスラッジを出発原料として用いる。ニッケルスラッジは、金属のスクラップの一態様であり、ニッケルを精錬するときに生じる鉱滓である。このように、製造方法M140においては、金属のスクラップを出発原料として用いることができる。なお、ニッケルスラッジは、ニッケル(Ni)以外の元素(例えばフッ素(F)や硫黄(S)など)を含んでいる。したがって、ニッケルスラッジは、ニッケル化合物の一例である。ただし、製造方法M140において用いる出発原料は、ニッケルスラッジに限定されず、機械や電子部品などの製造工程や加工工程などにおいて生じる金属であってもよいし、このような金属を含む化合物であってもよい。
製造方法M140においては、ニッケルスラッジに含まれるニッケルを溶液(酸溶液又は溶媒である水)に溶解させるのではなく、ニッケル以外の元素を溶液に溶解させる。このように、ニッケル以外の元素を溶液に溶解させることによって、固体として残存するニッケルの純度を高めることができる。したがって、製造方法M140は、ニッケル化合物の精製方法とも言える。
図17に示すように、製造方法M140は、粉砕・混合工程S1402と、加熱工程S1403と、溶解工程S1404と、第1の濾過工程S1405と、を含む。
粉砕・混合工程S1402は、製造方法M10における粉砕・混合工程S12に対応する工程である。すなわち、粉砕・混合工程S1402は、出発原料を粉砕したうえで、その出発原料と水酸化物の粉末とを混合する工程である。本実施形態では、水酸化物として水酸化ナトリウム(NaOH)を用いる。ただし、水酸化物は、水酸化ナトリウムに限定されず、水酸化カリウム(KOH)であってもよい。このように、粉砕・混合工程S1402は、出発原料がニッケルスラッジである点を除いて粉砕・混合工程S12と同じである。したがって、本実施形態では、粉砕・混合工程S1402の詳しい説明を省略する。
加熱工程S1403、溶解工程S1404、及び第1の濾過工程S1405の各々は、それぞれ、製造方法M10の加熱工程S13、溶解工程S14、及び第1の濾過工程S15と同様の工程である。したがって、本実施形態では、加熱工程S1403、溶解工程S1404、及び第1の濾過工程S1405の詳しい説明を省略する。
なお、溶解工程S1404では、加熱工程S1403において得られた液状混合物を溶解させる液体として水を用いる。本実施形態においては、液状混合物に含まれる水酸化ナトリウムが水に溶解するため、溶解工程S1404により得られる溶液は、出発原料を含む水酸化ナトリウム水溶液となる。溶解工程S1404を実施することにより、ニッケルスラッジに含まれるフッ素及び硫黄が水酸化ナトリウム水溶液中に溶解する。
第1の濾過工程S1405を実施することにより、固相を構成するニッケルスラッジと、液相に含まれるフッ素及び硫黄を含む水酸化ナトリウム溶液とが分離される。固相を回収することにより、出発原料のときと比較してフッ素及び硫黄といった不純物の濃度が低減されたニッケルスラッジを得ることができる。
以上のように、ニッケル化合物の製造方法M140を実施することにより、ニッケルスラッジを精製することができる。
なお、製造方法M140は、第1の濾過工程S1405を実施することにより得られる固相(すなわち、1度精製されたニッケルスラッジ)に対して再度実施することもできる。2回、又は、それ以上の回数に亘って、製造方法M140を繰り返し実施することにより、得られるニッケルスラッジにおけるニッケルの純度をより高めることができる。
〔第16の実施形態〕
本発明の第16の実施形態に係る鉄の分離方法M150について、図18を参照して説明する。図18は、分離方法M150のフローチャートである。本実施形態では、鉄重石(FeWO4)を出発原料として用いる。鉄重石は、タングステン酸塩鉱物の一例である。
図18に示すように、分離方法M150は、粉砕・混合工程S1502と、加熱工程S1503と、溶解工程S1504と、第1の濾過工程S1505と、塩酸浸漬工程S1552と、第3の濾過工程S1553と、を含む。
粉砕・混合工程S1502は、製造方法M10における粉砕・混合工程S12に対応する工程である。すなわち、粉砕・混合工程S1502は、出発原料を粉砕したうえで、その出発原料と水酸化物の粉末とを混合する工程である。なお、本実施形態においても、水酸化ナトリウムの形状は、粉末に限定されない。本実施形態では、水酸化物として水酸化ナトリウム(NaOH)を用いる。このように、粉砕・混合工程S1502は、出発原料が鉄重石である点を除いて粉砕・混合工程S12と同じである。したがって、本実施形態では、粉砕・混合工程S1502の詳しい説明を省略する。
加熱工程S1503、溶解工程S1504、及び第1の濾過工程S1505の各々は、それぞれ、製造方法M10の加熱工程S13、溶解工程S14、及び第1の濾過工程S15と同様の工程である。したがって、本実施形態では、加熱工程S1503、溶解工程S1504、及び第1の濾過工程S1505の詳しい説明を省略する。
なお、溶解工程S1504では、加熱工程S1503において得られた液状混合物を溶解させる液体として水を用いる。ただし、溶解工程S1504において用いる液体は、水に限定されず、酸溶液(例えば、塩酸溶液及び硫酸溶液)であってもよい。本実施形態においては、液状混合物に含まれる水酸化ナトリウムが水に溶解するため、溶解工程S1504により得られる溶液は、出発原料を含む水酸化ナトリウム水溶液となる。溶解工程S1504を実施することにより、鉄重石に含まれるタングステン(W)の大部分(例えば90%以上)が水酸化ナトリウム水溶液中に溶解する。したがって、固相には、鉄重石からタングステンが溶け出すことにより生成された酸化鉄が含まれる。
第1の濾過工程S1505を実施することにより、固相を構成する酸化鉄が得られる。
塩酸浸漬工程S1552及び第3の濾過工程S1553の各々は、それぞれ、チタン及びリチウムの分離方法M50における塩酸浸漬工程S52及び第3の濾過工程S53と同様の工程である。したがって、本実施形態では、塩酸浸漬工程S1552及び第3の濾過工程S1553の詳しい説明を省略する。
塩酸浸漬工程S1552を実施することにより、酸化鉄に含まれる鉄は、塩酸溶液中に塩化鉄の形で溶解する。したがって、塩酸浸漬工程S1552を実施した後の塩酸溶液中には、液相に含まれている塩化鉄が含まれる。
以上のように、鉄の分離方法M150を実施することによって、鉄重石に含まれているタングステン及び鉄を分離することができる。
なお、溶解工程S1504において、加熱工程S1503において得られた液状混合物を溶解させる液体として酸溶液(例えば塩酸溶液)を用いることもできる。この場合、鉄重石に含まれる鉄が塩酸溶液中に溶解し、鉄重石に含まれるタングステンが固相に残る。このように、溶解工程S1504において酸溶液を用いるだけでも鉄が溶解した酸溶液を得ることができる。
〔実施例群〕
本発明の実施例群について、以下に説明する。上述した第1の実施例及び第2の実施例の各々では、それぞれ、主発原料としてベリル及びスポジュミンを用いた。以下の実施例群では、出発原料として、酸化シリコン、ニッケルスラッジ、鉄重石、モナザイト、アパタイト、ゼノタイム、ボーキサイト、磁鉄鉱、鉄鉱石、ルチル、及び閃亜鉛鉱を用いた。また、出発原料としてスポジュミンを用いた実施例においては、溶解工程S14において混合物を溶解させる液体として水を用いた。各実施例における結果を、表1にまとめる。なお、表1には、第1の実施例及び第2の実施例の結果を含めている。
表1においては、出発原料に含まれる元素のうち溶解させるターゲットとなる元素が少なくとも一部溶解したことを白抜きの丸印で示し、溶解させるターゲットとなる元素が溶解しなかったことをバツ印で示している。
<第3の実施例>
第3の実施例では、図12に示す製造方法M90のうち、粉砕・混合工程S12~溶解工程S14を実施した。本実施例では、出発原料として酸化珪素(SiO2)の高純度試薬を用いた。また、本実施例では、粉砕・混合工程S12において混合する水酸化物として、水酸化ナトリウムを用いた。
本実施例では、粉砕・混合工程S12において混合する酸化シリコン及び水酸化ナトリウムの重量比を1:10とした。また、加熱工程S13においては、誘電加熱装置10にて大気雰囲気・常圧下で誘電加熱した。加熱工程S13における加熱温度を300℃とし、加熱時間を8分間とした。加熱工程S13を実施することにより、粉末状混合物は、誘電加熱に伴い融解し、8分後には、全て乳液状の液状混合物となった。以下では、混合物が粉末状であるか液状であるかを区別しなくてもよい場合には、単に混合物と称する。また、本実施例では、溶解工程S14において混合物を溶解させるための液体として、塩酸溶液を用いる場合と、水を用いる場合とについて実施した。
混合物を溶解させるための液体として塩酸溶液を用いた場合、珪酸(H2SiO4)の沈殿が生じた。珪酸は、出発原料である酸化珪素から2つの反応を経て生成されたと考えられる。1つ目の反応は、酸化珪素と水酸化ナトリウムとが反応することによりナトリウム珪酸塩(Na2SiO4)が生成される反応である。ナトリウム珪酸塩は、水溶性を有するため、溶液に溶解する。ただし、2つ目の反応として、ナトリウム珪酸塩と塩酸とが反応することにより珪酸が生成される。珪酸は、不溶性であるため、溶液中に珪酸の沈殿が生じた。なお、混合物を溶解させるための液体として塩酸溶液を用いた場合に、上述した2つの反応が進んでいたことは、塩酸の代わりに水を用いた場合に沈殿が生じなかったことからも確認された。したがって、表1においては、出発原料として酸化珪素を用い、混合物を溶解させるための液体として塩酸溶液を用いた場合を白抜きの△印で示した。
なお、混合物を溶解させるための液体として水を用いた場合には、水溶性を有するナトリウム珪酸塩の状態で、珪素が溶液中に溶解していると考えられる。この場合、酸化珪素の溶解度は、90%以上であった。
上述したように、本実施例では、出発原料として酸化珪素を用いた。ガラス材料(例えば石英ガラス)及び珪石においても、主成分は、酸化珪素である。したがって、第3の実施例の結果は、ガラス材料(例えば石英ガラス)及び珪石についても当てはまる。
<第4の実施例群>
第4の実施例群では、第3の実施例と同様に、図12に示す製造方法M90のうち、粉砕・混合工程S12~溶解工程S14を実施した。本実施例群では、出発原料として酸化アルミニウム(Al2O3)の試薬を用いた。本実施例群では、ボーキサイトを模して、出発原料として酸化アルミニウムを採用した。また、本実施例群では、粉砕・混合工程S12において混合する水酸化物として、水酸化ナトリウムを用いた。また、本実施例群では、溶解工程S14において混合物を溶解させるための液体として、塩酸溶液を用いる場合と、水を用いる場合とについて実施した。
溶解工程S14の実施後、混合物を溶解させるための液体として塩酸溶液及び水の何れを用いた場合についても、白濁した溶液が得られた。これらの白濁した溶液を分析した結果、酸化アルミニウムは、塩酸水溶液及び水の何れにも溶解することが分かった。塩酸水溶液に対するアルミニウムの溶解度は、99%であり、水に対するアルミニウムの溶解度は、95%であった。
<第5の実施例群>
第5の実施例群では、第3の実施例と同様に、図12に示す製造方法M90のうち、粉砕・混合工程S12~溶解工程S14を実施した。本実施例群では、出発原料として酸化チタン(TiO2)の試薬を用いた。また、本実施例群では、粉砕・混合工程S12において混合する水酸化物、及び、溶解工程S14において混合物を溶解させるための液体の組み合わせとして、(1)水酸化ナトリウム及び塩酸溶液、(2)水酸化ナトリウム及び硫酸溶液、(3)水酸化カリウム及び硫酸溶液を採用した。
溶解工程S14の実施後、上述した(1)、(2)、(3)の何れの場合についても、残渣を含む白濁した溶液が得られた。得られた残渣を分析した結果、酸化チタンは、酸溶液に溶解することが分かった。(1)、(2)、(3)の各組み合わせにおけるチタンの溶解度は、それぞれ、25%、50%、98%であった。なお、表1の酸化チタンの欄には、(3)の場合を記載している。
<第6の実施例群>
第6の実施例群では、図1に示す製造方法M10のうち、粉砕・混合工程S12~溶解工程S14を実施した。本実施例群では、出発原料として酸化ベリリウム(BeO)の試薬を用いた。本実施例群では、中性子増倍材の一例であるベリリウムの表面に形成された酸化ベリリウムを模して、出発原料として酸化ベリリウムを採用した。これは、ベリリウムが酸溶液に溶解しやすいことが分かっていることと、中性子増倍材として使用済となったベリリウムの表面には、酸化ベリリウムが形成されているためである。
また、本実施例群では、粉砕・混合工程S12において混合する水酸化物として、水酸化ナトリウムを用いた。また、本実施例群では、溶解工程S14において混合物を溶解させるための液体として、塩酸溶液を用いる場合と、水を用いる場合とについて実施した。
溶解工程S14の実施後、混合物を溶解させるための液体として塩酸溶液及び水の何れを用いた場合についても、残渣を含む白濁した溶液が得られた。得られた残渣を分析した結果、酸化ベリリウムは、塩酸水溶液及び水の何れにも溶解することが分かった。塩酸水溶液に対するベリリウムの溶解度は、90%であり、水に対するベリリウムの溶解度は、77%であった。
<第7の実施例群>
第7の実施例群では、図1に示す製造方法M10のうち、粉砕・混合工程S12~溶解工程S14を実施した。本実施例群では、出発原料としてチタン酸リチウム(Li2TiO3)の試薬を用いた。チタン酸リチウムは、トリチウム増殖材の一例である。また、本実施例群では、粉砕・混合工程S12において混合する水酸化物として、水酸化ナトリウムを用いた。また、本実施例群では、溶解工程S14において混合物を溶解させるための液体として、硫酸溶液を用いる場合と、水を用いる場合とについて実施した。
溶解工程S14の実施後、混合物を溶解させるための液体として硫酸溶液及び水の何れを用いた場合についても、残渣を含む白濁した溶液が得られた。こ得られた残渣を分析した結果、チタン酸リチウムは、硫酸水溶液及び水の何れにも溶解することが分かった。硫酸水溶液に対するリチウムの溶解度は、97%であり、水に対するリチウムの溶解度は、19%であった。
<第1,第2,第8の実施例>
第1の実施例で説明したように、ベリルは、塩酸水溶液に完全溶解(99%のベリリウムの溶解を確認)した。また、第2の実施例で説明したように、スポジュミンは、塩酸水溶液に溶解(90%以上のリチウムの溶解を確認)した。また、第1の実施例の変形例として、溶解工程S14において液状混合物を溶解させるための液体を塩酸水溶液から水に変更した。この場合、ベリルに含まれるベリリウムの溶解度は、56%だった。
また、第8の実施例として、第2の実施例と同様に出発原料としてスポジュミンを用い、混合物を溶解させるための液体として水を用いた。その結果、スポジュミンは、水に溶解(96%のリチウムの溶解を確認)した。
<第9の実施例>
第9の実施例では、第3の実施例と同様に、図12に示す製造方法M90のうち、粉砕・混合工程S12~溶解工程S14を実施した。本実施例では、出発原料としてモナザイト((Ce,La,Nd,Th)PO4)を用いた。また、本実施例では、粉砕・混合工程S12において混合する水酸化物として、水酸化ナトリウムを用いた。また、本実施例では、加熱工程S13における加熱温度を250℃とした。また、本実施例では、溶解工程S14において混合物を溶解させるための液体として、塩酸溶液を用いた。
溶解工程S14の実施後、黄色く濁った溶液が得られた。この溶液を分析した結果を図19に示す。図19は、モナザイトに含まれるイットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、テルビウム(Tb)、及びジスプロシウム(Dy)の溶解度を示すグラフである。図19によれば、イットリウムは、約80%の溶解度を示し、ランタン、ネオジム、サマリウム、テルビウム、及びジスプロシウムの各々は、50%以上65%以下の溶解度を示し、セリウムは、約20%の溶解度を示した。
<第10の実施例>
第10の実施例では、第3の実施例と同様に、図12に示す製造方法M90のうち、粉砕・混合工程S12~溶解工程S14を実施した。本実施例では、出発原料としてアパタイト(Ce5(PO4)3(F,Cl,OH)1)を用いた。また、本実施例では、粉砕・混合工程S12において混合する水酸化物として、水酸化ナトリウムを用いた。また、本実施例では、加熱工程S13における加熱温度を250℃とした。また、本実施例では、溶解工程S14において混合物を溶解させるための液体として、塩酸溶液を用いた。
溶解工程S14の実施後、ほとんど残渣のない溶液が得られた。この溶液を分析したところ、アパタイトの溶解度は、90%以上であった。
<第11の実施例>
第11の実施例では、第3の実施例と同様に、図12に示す製造方法M90のうち、粉砕・混合工程S12~溶解工程S14を実施した。本実施例では、出発原料としてゼノタイム(YPO4)を用いた。また、本実施例では、粉砕・混合工程S12において混合する水酸化物として、水酸化ナトリウムを用いた。また、本実施例では、加熱工程S13における加熱温度を250℃とした。また、本実施例では、溶解工程S14において混合物を溶解させるための液体として、塩酸溶液を用いた。
溶解工程S14の実施後、ゼノタイムの溶解度は、約50%であった。
<第12,第13の実施例>
第12の実施例及び第13の実施例では、第3の実施例と同様に、図12に示す製造方法M90のうち、粉砕・混合工程S12~溶解工程S14を実施した。第12の実施例及び第13の実施例の各々では、それぞれ、出発原料として磁鉄鉱(Fe3O4)及び鉄鉱石(Fe2O3)を用いた。また、本実施例では、粉砕・混合工程S12において混合する水酸化物として、水酸化ナトリウムを用いた。また、本実施例では、加熱工程S13における加熱温度を250℃とした。また、本実施例では、溶解工程S14において混合物を溶解させるための液体として、塩酸溶液を用いた。
溶解工程S14の実施後、得られた残渣を分析したところ、磁鉄鉱の溶解度は90%以上であり、鉄鉱石の溶解度も90%以上であった。また、出発原料として磁鉄鉱を用い、混合物を溶解させるための液体として水を用いた場合についても実施したが、磁鉄鉱は、溶解しなかった。
<第14の実施例>
第14の実施例では、第3の実施例と同様に、図12に示す製造方法M90のうち、粉砕・混合工程S12~溶解工程S14を実施した。本実施例では、出発原料として輝水鉛鉱(MoS2)を用いた。また、本実施例では、粉砕・混合工程S12において混合する水酸化物として、水酸化ナトリウムを用いた。また、本実施例では、加熱工程S13における加熱温度を250℃とした。また、本実施例では、溶解工程S14において混合物を溶解させるための液体として、(1)塩酸溶液、(2)2M硝酸溶液、(3)硫酸及び硝酸の混合溶液、及び(4)5M硝酸溶液を用いた。
溶解工程S14の実施後、得られた残渣を分析したところ、モリブデンの溶解度は、(1)~(4)の各々について、それぞれ、25%、44%、62%、65%であった。なお、表1の輝水鉛鉱の欄には、(3)、(4)の場合を記載している。
<第15の実施例群>
第15の実施例群では、第3の実施例と同様に、図12に示す製造方法M90のうち、粉砕・混合工程S12~溶解工程S14を実施した。本実施例群では、出発原料として閃亜鉛鉱((Zn,Fe)S)を用いた。また、本実施例群では、粉砕・混合工程S12において混合する水酸化物として、水酸化ナトリウムを用いた。また、本実施例群では、溶解工程S14において混合物を溶解させるための液体として、塩酸溶液を用いる場合と、水を用いる場合とについて実施した。
溶解工程S14の実施後、混合物を溶解させるための液体として塩酸溶液及び水の何れを用いた場合についても、残渣を含む濁った溶液が得られた。得られた残渣を分析した結果、閃亜鉛鉱は、塩酸水溶液及び水の何れにも溶解することが分かった。塩酸水溶液に対する閃亜鉛鉱の溶解度は、90%以上であり、水に対する閃亜鉛鉱の溶解度は、80%以上であった。
<第16の実施例及び第17の実施例>
第16の実施例では、第3の実施例と同様に、図12に示す製造方法M90のうち、粉砕・混合工程S12~溶解工程S14を実施した。本実施例群では、出発原料として鉄重石(FeWO4)を用いた。また、本実施例群では、粉砕・混合工程S12において混合する水酸化物として、水酸化ナトリウムを用いた。また、本実施例群では、溶解工程S14において混合物を溶解させるための液体として、塩酸溶液を用いた。
第17の実施例では、図18に示す分離方法M150を実施した。本実施例では、本実施例群では、出発原料として鉄重石(FeWO4)を用いた。また、本実施例群では、粉砕・混合工程S12において混合する水酸化物として、水酸化ナトリウムを用いた。また、本実施例群では、溶解工程S14において混合物を溶解させるための液体として水を用いた。
第16の実施例においては、溶解工程S14を実施した後に残渣を含む濁った溶液が得られた。得られた残渣を分析した結果、鉄重石に含まれている鉄の溶解度は、90%以上であることが分かった。ただし、この濁った溶液においては、タングステンを含む化合物が残渣として沈殿した。
第17の実施例について、溶解工程S1504を実施した後に残渣を含む濁った溶液が得られた。得られた残渣を分析した結果、鉄重石に含まれているタングステンの溶解度は、90%以上であることが分かった。ただし、この濁った溶液においては、鉄を含む化合物が残渣として沈殿した。次に、塩酸浸漬工程S1552及び第3の濾過工程S1553を実施したところ、透明な溶液が得られた。この溶液を分析した結果、鉄重石に含まれている鉄の溶解度は、90%以上であることが分かった。
<第18の実施例>
第18の実施例では、第3の実施例と同様に、図12に示す製造方法M90のうち、粉砕・混合工程S12~溶解工程S14を実施した。本実施例群では、出発原料としてコバルトリッチクラストを用いた。また、本実施例群では、粉砕・混合工程S12において混合する水酸化物として、水酸化カリウムを用いた。また、本実施例群では、溶解工程S14において混合物を溶解させるための液体として、塩酸溶液を用いた。
第18の実施例においては、溶解工程S14を実施した後に僅かな残渣を含む溶液が得られた。この残渣を分析した結果、コバルトリッチクラストの溶解度は、約95%であった。
<第19の実施例群>
第19の実施例群では、第3の実施例と同様に、図12に示す製造方法M90のうち、粉砕・混合工程S12~溶解工程S14を実施した。本実施例群では、出発原料としてマンガン団塊を用いた。また、本実施例群では、粉砕・混合工程S12において混合する水酸化物として、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを用いた。また、本実施例群では、加熱工程S13における加熱温度を250℃とした。また、本実施例群では、溶解工程S14において混合物を溶解させるための液体として、塩酸及び水を用いた。水酸化物及び液体の組み合わせとして、(1)水酸化ナトリウム及び塩酸溶液、(2)水酸化ナトリウム及び水、(3)水酸化カリウム及び塩酸溶液を採用した。なお、表1のマンガン団塊の欄には、(2)及び(3)の場合を記載している。
溶解工程S14の実施後、上述した(1)、(2)、(3)の何れの場合についても、残渣を含む溶液が得られた。(1)、(2)、(3)の各々について残渣を分析した結果、マンガン団塊の溶解度は、約56%、約27%、約85%であった。
<第20の実施例群>
第20の実施例群では、図17に示す製造方法M140を実施した。本実施例群では、出発原料としてニッケルスラッジを用いた。また、本実施例群では、粉砕・混合工程S12において混合する水酸化物として、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを用いた。また、本実施例群では、溶解工程S14において混合物を溶解させるための液体として、水を用いた。なお、第20の実施例群では、製造方法M140を実施した後に、得られた固相に対して、もう一度、製造方法M140を実施した。
水酸化物として水酸化ナトリウムを用いた場合、1回目の溶解工程S1404を実施した後に、残渣を含む黄色がかった溶液が得られた。この黄色がかった溶液を分析したところ、フッ素イオンの濃度は、16.7%であり、硫黄イオンの濃度は、3.4%であった。また、ニッケルは、検出されなかった。また、2回目の溶解工程S1404を実施した後に得られた溶液を分析したところ、フッ素イオンの濃度は、0.5%であり、硫黄イオンの濃度は、0.3%であった。
水酸化物として水酸化カリウムを用いた場合、1回目の溶解工程S1404を実施した後に、残渣を含む黄色がかった溶液が得られた。この黄色がかった溶液を分析したところ、フッ素イオンの濃度は、15.8%であり、硫黄イオンの濃度は、3.3%であった。また、ニッケルは、検出されなかった。また、2回目の溶解工程S1404を実施した後に得られた溶液を分析したところ、フッ素イオンの濃度は、0.5%であり、硫黄イオンの濃度は、検出限界未満であった。
以上のように、製造方法M140を実施することにより出発原料であるニッケルスラッジに含まれているフッ素イオン及び硫黄イオンを溶液中に溶け出させることができるので、ニッケルスラッジに含まれるニッケルの純度を高められることが分かった。
〔まとめ〕
本発明の第1の態様に係る無機物溶液の製造方法は、無機物の粉末と、水酸化物とを混合した粉末状混合物を誘電加熱することによって、前記無機物を含む液状混合物を得る加熱工程を含んでいる。なお、本製造方法において、水酸化物の形状は、限定されない。
水酸化物が含む水酸基は、誘電加熱に用いられる電磁波を吸収することによって、電磁波のエネルギーを自身の熱エネルギーに変換する。本製造方法の加熱工程においては、無機物の粉末と水酸化物の粉末とが混合されているため、水酸化物の熱エネルギーは、無機物にも効率よく供給される。その結果、無機物と水酸化物とが融解した液状混合物を得ることができる。この液状混合物は、酸溶液に対して容易に溶解する。したがって、この液状混合物を用いることによって、無機物溶液を製造することができる。
また、加熱工程においては、非特許文献1に記載されている焼結処理又は溶融処理のように高温(例えば770℃や1650℃や2000℃など)における処理が不要であり、粉末状混合物に対して誘電加熱を実施するだけで液状混合物を得ることができる。したがって、本製造方法は、非特許文献1に記載の製造方法と比較して、エネルギー効率が高い。
以上のように、本製造方法は、例えばベリリウム鉱石のように塩基性溶液及び酸性溶液の何れに対しても溶解しにくい無機物の溶液を製造する製造方法であって、エネルギー効率が高い新規な製造方法を提供することができる。
また、本発明の第2の態様に係る無機物溶液の製造方法においては、上述した第1の態様に係る製造方法の構成に加えて、前記無機物は、ベリリウム及びリチウムの少なくとも何れかを含んでいる、構成が採用されている。
このように、無機物の一例としてはベリリウム及びリチウムの少なくとも何れかを含んでいる物質が挙げられる。
また、本発明の第3の態様に係る無機物溶液の製造方法においては、上述した第1の態様又は第2の態様に係る無機物溶液の製造方法の構成に加えて、前記水酸化物は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの少なくとも何れかである、構成が採用されている。
このように、水酸化物の一例としては水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが挙げられる。なお、水酸化物として、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの混合物を用いてもよい。
また、本発明の第4の態様に係る無機物溶液の製造方法においては、上述した第1の態様~第3の態様の何れか一態様に係る無機物溶液の製造方法の構成に加えて、前記加熱工程において得られた前記液状混合物を酸溶液又は水に溶解させることによって、前記無機物の酸溶液を得る溶解工程を更に含んでいる、構成が採用されている。
上記の構成によれば、無機物溶液を確実に得ることができる。
また、本発明の第5の態様に係る無機物溶液の製造方法においては、上述した第1の態様~第4の態様の何れか一態様に係る無機物溶液の製造方法の構成に加えて、前記加熱工程は、常圧下において前記粉末状混合物を誘電加熱する工程である、構成が採用されている。
このように、本製造方法の加熱工程においては、粉末状混合物を加圧しながら誘電加熱しなくても液状混合物を得ることができる。したがって、本製造方法を実施する製造装置を簡易に構成することができるし、製造装置を設置するプラントの認可を得るための労力を削減することができる。
本発明の第6の態様に係る無機物溶液の製造装置は、無機物の粉末と、水酸化物とを混合することによって、無機物及び水酸化物の粉末状混合物を得る混合部と、前記粉末状混合物を収容する容器と、誘電加熱するための電磁波を発生させる電磁波発生部と、を備えている。
上記の構成によれば、上述した第1の態様に係る無機物溶液の製造方法と同様の効果を奏する。なお、本製造装置の混合部において無機物の粉末と混合される水酸化物の形状は、限定されない。
また、本発明の第7の態様に係る無機物溶液の製造装置においては、上述した第6の態様に係る無機物溶液の製造装置の構成に加えて、前記無機物は、ベリリウム及びリチウムの少なくとも何れかを含んでいる、構成が採用されている。
上記の構成によれば、上述した第2の態様に係る無機物溶液の製造方法と同様の効果を奏する。
また、本発明の第8の態様に係る無機物溶液の製造装置においては、上述した第6の態様又は第7の態様に係る無機物溶液の製造装置の構成に加えて、前記水酸化物は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの少なくとも何れかである、構成が採用されている。
上記の構成によれば、上述した第3の態様に係る無機物溶液の製造方法と同様の効果を奏する。なお、水酸化物として、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムとの混合物を用いてもよい。
また、本発明の第9の態様に係る無機物溶液の製造装置においては、上述した第6の態様~第8の態様の何れか一態様に係る無機物溶液の製造装置の構成に加えて、前記電磁波発生部と前記容器との間に介在し、前記電磁波を前記電磁波発生部から前記容器に導波する導波管と、前記導波管の中途区間に設けられたアイソレータであって、前記容器から前記電磁波発生部に向かって伝搬する電磁波を吸収するアイソレータと、を更に備えている、構成が採用されている。
上記の構成によれば、電磁波発生部が発生させた電磁波の一部が容器から電磁波発生部の方向に戻ってくる場合であっても、そのような電磁波をアイソレータが吸収することができる。したがって、電磁波発生部の動作に悪影響を及ぼすことを抑制することができる。
また、本発明の第10の態様に係る無機物溶液の製造装置においては、上述した第6の態様~第9の態様の何れか一態様に係る無機物溶液の製造装置の構成に加えて、前記容器に酸溶液又は水を供給する液体供給部を更に備えている、構成が採用されている。
上記の構成によれば、上述した第4の態様に係る無機物溶液の製造方法と同様の効果を奏する。
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。