以下、添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本開示を具体化した一例であり、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
図1は、本開示の実施形態に係る空気入りタイヤ1(以下「タイヤ1」と略称する。)を側方から見た側面図である。図2は、タイヤ1の断面図であり、図1における切断面II-IIの断面を示している。図1では、赤道面CL(図2参照)の断面構造が部分的に示されている。ここで、図1及び図2における紙面の上下方向は、タイヤ1の径方向D2である。図2における紙面の左右方向は、タイヤ1の幅方向D1である。また、図1に示す矢印D3は、タイヤ1の周方向である。なお、タイヤ1は、赤道面CL1を基準として幅方向D1に対称に形成されているため、図2では、タイヤ1の部分断面図が示されており、他の部分の図示が省略されている。
タイヤ1は、ゴム材料を主成分とするものであり、主として、自動車などの車両に装着されて用いられる。図1及び2に示すように、タイヤ1はホイール30のリム30Rに組み込まれている。リム30Rは後述する正規リムである。タイヤ1は、リム30Rとタイヤ1の内面7Aとの間の中空部に空気が充填される空気入りタイヤである。タイヤ1の内部の内圧は後述する正規内圧に調整されている。
本明細書において、リム30Rに組み込まれたタイヤ1の内圧が前記正規内圧に調整され、タイヤ1に荷重がかけられていない状態のことは、正規状態と称される。図1及び図2には、ホイール30に取り付けられた前記正規状態のタイヤ1が示されている。本実施形態においては、特に言及しない限り、タイヤ1及びその各部の形状は前記正規状態における形状であり、タイヤ1及びその各部の寸法並びに角度は前記正規状態で測定される。
ここで、前記正規リムは、タイヤ1が依拠する規格において定められたリムのことである。前記正規リムは、具体的には、JATMA(一般社団法人日本自動車タイヤ協会)が定める規格(JATMA規格)における「標準リム」であり、米国のTRA(The Tire and Rim Association)が定める規格(TRA規格)における「Design Rim」であり、ETRTO(European Tyre Rim Technical Organisation)が定める規格(ETRTO規格)における「Measuring Rim」である。
また、前記正規内圧は、タイヤ1が依拠する規格において定められた内圧のことである。前記正規な威圧は、具体的には、JATMA規格における「最高空気圧」であり、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に示される「最大値」であり、ETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」である。
本実施形態に係るタイヤ1は、自動車用のラジアルタイヤとして好適に用いられる。なお、タイヤ1は、車両に用いられる空気入りタイヤであり、自動車用に限られず、乗用車、トラックやバスなどの大型車両、自動二輪車、競技用車両、産業用車両、特殊車両、トレーラーや台車などの荷重用車両などの多種多様な車両に使用される空気入りタイヤであってもよい。また、タイヤ1はラジアルタイヤに限られず、バイアスタイヤにも好適に用いられる。とりわけ、タイヤ1は、センサーなどの各種電気機器が搭載された、高い利便性と高速走行時の低ノイズ性が求められる乗用車用タイヤとして好適に用いられる。なお、前記乗用車用タイヤは、四輪で走行する自動車に装着されるタイヤであって、最大負荷能力が1000Kg以下のタイヤのことである。
前記最大負荷能力は、1000Kg以下であれば特に限定されないが、一般的に、最大負荷能力の増加に伴い、タイヤ重量が増加しやすく、タイヤ1のトレッド部2で生じる振動が大きくなり、走行時のノイズが大きくなりやすいことから、前記最大負荷能力は、900Kg以下であることが好ましく、800Kg以下であることがより好ましく、更に700Kg以下であることが好ましい。
また、タイヤ1のタイヤ重量は、トレッド部2での振動を和らげる観点から、20Kg以下であることが好ましく、15Kg以下であることがより好ましく、更に12Kg以下、10Kg以下、8Kg以下であることが好ましい。なお、前記タイヤ重量は、前記電気機器及び後述のマウント部材10の重量を含み、また、タイヤ1の内腔部にシーラントやスポンジなどが設けられている場合は、それらの重量も含む。
図2に示すように、タイヤ1は、トレッド部2と、トレッド部2の幅方向D1の両端部に位置する一対のショルダー部3と、ショルダー部3からタイヤ1の中心軸へ向かう中心方向D21(径方向D2の内側)へ延在する一対のサイドウォール部4と、サイドウォール部4における中心方向D21側の端部に位置する一対のビード部5と、を備える。
更に、タイヤ1は、トレッド部2からショルダー部3、サイドウォール部4を経てビード部5のビードコア5Aに至るカーカス6(本開示のカーカス部の一例)と、タイヤ1の内面7Aを構成するインナーライナー7と、トレッド部2における径方向D2の内側に配置されたベルト部8及びバンド部9と、タイヤ1の内面7A(つまり、インナーライナー7の内面7A)に取り付けられたマウント部材10と、を備える。
トレッド部2は、車両の走行時に路面に接触する部分である。トレッド部2は、加硫されたゴム組成物(加硫ゴム)からなるトレッドゴム2Aで構成されている。トレッド部2の外側の表面は、路面との接触面であるトレッド面21(タイヤ表面の一例)である。本実施形態では、トレッド面21は、幅方向D1に対して概ね平坦な面とされている。つまり、タイヤ1は、トレッド部2が幅方向D1に対して平坦形状に形成されたものである。
トレッドゴム2Aを構成するゴム組成物は、ゴム成分に加え、カーボンブラックやシリカなどの充填剤(補強剤)、オイル、フェノール樹脂などの樹脂類、加工助剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、硫黄、加硫促進剤などの添加剤を含む。
前記ゴム成分としては、一般的なゴム材料を用いることができ、例えば、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンゴム、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、イソプレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、アクリロニトリルスチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレン等が前記ゴム材料として挙げられる。前記イソプレン系ゴムは、例えば、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。前記ゴム成分は、いずれか1種類の前記ゴム材料を単一で用いられてもよく、或いは、2種類以上の前記ゴム材料を所定の配合割合で混合して用いられてもよい。
トレッド面21には、グリップ性や制動性、排水機能、摩耗抑制などの各タイヤ性能を発揮させるためのトレッドパターンが形成されている。前記トレッドパターンは、トレッド面21に形成された複数の凹溝によって形成される。トレッド面21には、タイヤ1の周方向D3(図1参照)に連続して延在する複数の主溝22(本開示の周方向溝の一例)が前記凹溝として形成されている。なお、主溝22に交差する複数のラグ溝(不図示)や、主溝22及び前記ラグ溝よりも細幅で深さの浅い複数のサイプなどがトレッド面21に形成されていてもよい。なお、ここでいう前記凹溝とは、溝幅が2.0mm超、溝深さ5.0mm超のものを指す。
トレッド面21に形成される前記トレッドパターンは、複数の主溝22を有する所謂リブ型パターンや、主溝22と前記ラグ溝とを有する所謂リグラグ型パターンなどが考えられる。しかし、タイヤ1のトレッド部2は、前記各パターンのいずれかがトレッド面21に形成されたものに限られない。例えば、トレッド部2は、主として前記ラグ溝を有する所謂ラグ型パターンがトレッド面21に形成されたものであってもよく、また、それぞれ独立したブロックを有する所謂ブロック型パターンがトレッド面21に形成されたものであってもよい。また、前記トレッドパターンは、接地面の幅方向に対して非対称となっているものでもよい。
本実施形態では、トレッド面21に形成される前記トレッドパターンは、赤道面CL1を基準として幅方向D1に対称である。具体的には、図2に示すように、前記周方向D3に沿って4本の主溝22がトレッド面21に形成されている。4本の主溝22は、タイヤ1の幅方向D1へ所定間隔を隔てて配置されており、トレッド面21において、赤道面CL1から幅方向D1の外側の領域それぞれに2本ずつ配置されている。したがって、トレッド部2は、周方向D3に沿って延びる4本の主溝22によって、幅方向D1に区分けされた5つの陸部24を有する。なお、本実施形態では、図2に示される4本の主溝22がトレッド面21に形成された構成を例示するが、本開示はこのような構成に限定されるものではない。例えば、各主溝22の位置は、幅方向D1に対して非対称であってもよい。また、主溝22の数は4本に限られず、4本未満でも、5以上であってもよい。また、いずれか一つの主溝22が赤道面CL1上に設けられていてもよい。
図2に示すように、5つの陸部24は、1つのクラウン陸部24Aと、2つのミドル陸部24Bと、2つのショルダー陸部24Cとを含む。ショルダー陸部24Cは、ショルダー部3の近傍に配置されており、トレッド部2における幅方向D1の両側端部と、幅方向D1の最も外側に配置された2本の第2主溝22Bとの間に区分されている。ミドル陸部24Bは、赤道面CL1の近傍に配置された2本の第1主溝22Aと、2本の第2主溝22Bとの間に区分されている。また、クラウン陸部24Aは、タイヤ1のトレッド部2において幅方向D1の中央部に配置されている。本実施形態では、クラウン陸部24Aは、トレッド部2において、赤道面CL1と交差する部分に配置されている。例えば、クラウン陸部24Aは、トレッド部2において、赤道面CL1と交差する点から幅方向D1それぞれへ所定距離を隔てた領域を占める。当該領域は、当該領域の中心が赤道面CL1に一致し、且つ、トレッド部2の接地面における接地幅に対して10~50%の範囲内で定められる比率に応じた領域である。例えば、前記比率は好ましくは30%であり、より好ましくは20%である。また、クラウン陸部24Aは、トレッド部2において、2本の第1主溝22Aそれぞれの間に区分される領域に設けられている。例えば、クラウン陸部24Aは、2本の第1主溝22Aによって挟まれるように区分された部分である。
クラウン陸部24Aは、周方向D3に沿って直線状に延在するものであってもよく、或いは、ジグザグ状に延在するものであってもよい。また、クラウン陸部24Aは、周方向D3に傾斜して延在するもの、或いは湾曲状又は円弧状に延在するものであってもよい。クラウン陸部24Aが上述の形状となるように、その幅方向D1の両側に位置する2本の第1主溝22Aそれぞれが、周方向D3に沿って直線状、ジグザグ状、傾斜状、湾曲状、或いは円弧状に延在するよう形成される。また、クラウン陸部24Aは、前記ラグ溝などの横溝或いは傾斜溝によって周方向D3に分断された複数のブロックを有するものであってもよく、或いは、前記サイプなど横溝或いは傾斜溝によって周方向D3に分断された複数のセミブロックを有するものであってもよい。なお、クラウン陸部24Aを除く他の陸部24についても、周方向D3に沿って延在しており、クラウン陸部24Aと同様の形状に形成されている。
なお、タイヤ1が乗用車用である場合は、第1主溝22Aの溝幅は、例えば、トレッド部2の幅の4.0%~7.0%である。また、第2主溝22Bの溝幅は、例えば、トレッド部2の幅の2.5%~4.5%である。また、第1主溝22A及び第2主溝22Bの溝深さは、例えば、5~10mmである。
ショルダー部3は、トレッド部2からサイドウォール部4に至るタイヤ1の角部に相当する部分である。ショルダー部3は、トレッド部2とサイドウォール部4とをつなぐ部分であり、トレッド部2の幅方向D1の端部からサイドウォール部4の上端部に亘ってラウンド形状(湾曲形状)に形成されている。
サイドウォール部4は、加硫されたゴム組成物(加硫ゴム)で構成されている。サイドウォール部4は、カーカス6の幅方向D1の外側に配置されている。サイドウォール部4は、トレッド部2を構成するトレッドゴム2Aの幅方向D1の端部に繋がっており、カーカス6に沿って中心方向D21へ延出している。サイドウォール部4によって、タイヤ1の側部のカーカス6が保護される。
カーカス6は、トレッド部2及び一対のサイドウォール部4の内側であって、インナーライナー7よりもトレッド部2及びサイドウォール部4側に配置されている。カーカス6は、少なくとも1枚のカーカスプライによって構成されている。前記カーカスプライは、タイヤ1の赤道面CL1に交差する方向に延びる多数のカーカスコード(不図示)を有するコード層である。前記カーカスプライは、これらのカーカスコードが所定のゴム組成物(加硫ゴム)からなるトッピングゴムによって被覆されたものである。多数のカーカスコードは、タイヤ1の赤道面CL1に対して、所定の角度(例えば70~90度の範囲内で定められた角度)で交差した状態で、タイヤ1の周方向D3に沿って並ぶようにして配列されている。前記カーカスコードとしては、例えば、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、アラミド繊維などの有機繊維からなるコード(以下「有機繊維コード」と称する。)が用いられる。
インナーライナー7は、カーカス6よりも内部側に設けられており、タイヤ1の内面7Aを形成している。インナーライナー7は、空気遮断性を有するゴム組成物(加硫ゴム)で構成されており、タイヤ1の内圧を保持する役割を担っている。
インナーライナー7は、カーカス6における内部側の面に貼り合わされている。なお、インナーライナー7は、カーカス6に直接貼り合わされていてもよく、或いは、カーカス2よりも半径方向の内側の配置されたインスレーション層に貼り合わされていてもよい。
インナーライナー7を構成するゴム組成物(第2ゴム組成物)は、ゴム成分に加え、カーボンブラックなどの充填剤(補強剤)、オイル、フェノール樹脂などの樹脂類、加工助剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、硫黄、加硫促進剤などの添加剤を含む。
前記ゴム成分としては、耐空気透過性に優れるブチル系ゴムを主体とするゴム材料を用いることができる。前記ブチル系ゴムとしては、ブチルゴム(IIR)、臭素化ブチルゴム(BR-IIR)、や塩素化ブチルゴム(Cl-IIR)などのハロゲン化ブチルゴム(X-IIR)、イソブチレンとp-アルキルスチレンとの共重合体、該共重合体のハロゲン化物等が挙げられる。とりわけ、シート加工性、空気遮断性をバランスよく向上できる点から、ハロゲン化ブチルゴムが好ましく、臭素化ブチルゴム、塩素化ブチルゴムがより好ましい。また、前記ゴム成分は、いずれか1種類の前記ブチル系ゴムを単一で用いられてもよく、或いは、2種類以上の前記ゴム材料を所定の配合割合で混合して用いられてもよい。なお、空気透過率の低い可塑性エラストマーなどを主体とする粘弾性体を、インナーライナー7を構成するゴム組成物として適用することも可能である。
前記ブチル系ゴムとして、通常のブチル系ゴム(再生ブチル系ゴム以外のブチル系ゴム)の他、再生ブチル系ゴムを併用することが好ましい。再生ブチル系ゴムは、通常、ハロゲン化されていないブチルゴム(レギュラーブチルゴム)の含有率が高いため、ハロゲン化ブチルゴムと併用することで、良好な空気遮断性、加硫速度を確保できる。
ゴム成分100質量%中のブチル系ゴムの合計含有量は、70質量%以上、好ましくは75質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。70質量%未満であると、充分な空気遮断性が得られないおそれがある。該合計含有量は、100質量%でもよいが、シート加工性、空気遮断性の観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下である。
ゴム成分100質量%中の再生ブチル系ゴムの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上である。5質量%未満であると、再生ブチル系ゴムを用いることによるメリットが充分に得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。30質量%を超えると、充分な空気遮断性、加硫速度を確保できないおそれがある。
インナーライナー7を構成するゴム組成物は、シート加工性、空気遮断性をバランスよく向上できるという点から、イソプレン系ゴムを含むことが好ましい。
前記イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、イソプレンゴム(IR)等が挙げられる。とりわけ、シート加工性、空気遮断性をバランスよく向上できるという理由から、NR、IRが好ましい。
NRとしては特に限定されず、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。5質量%未満であると、シート加工性、空気遮断性がバランスよく得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。30質量%を超えると、加硫ゴムの空気遮断性が充分に得られないおそれがある。
本実施形態では、インナーライナー7を構成するゴム組成物に含まれるゴム成分には、ブチル系ゴム、イソプレン系ゴムの以外に、他のゴム材料が含まれていてもよい。例えば、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等のジエン系ゴムが挙げられる。前記ゴム成分は、これらのゴム材料のうちいずれか1種類のゴム材料を単独で用いられていてもよく、或いは、2種類以上のゴム材料を所定の配合割合で混合して用いられていてもよい。
インナーライナー7を構成するゴム組成物は、充填剤を含有することが好ましい。具体的な充填剤としては、例えば、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカなどが挙げられ、このなかでも、カーボンブラック及びシリカが補強剤として好ましく使用でき、これらを併用することが好ましい。なお、シリカを使用する場合には、シランカップリング剤と併用することが好ましい。
前記カーボンブラックは、特に限定されず、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
前記カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
前記カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
インナーライナー7を構成するゴム組成物は、可塑剤(軟化剤)を含むことが好ましい。前記可塑剤としては、樹脂成分、オイル、液状ゴム、エステル系可塑剤などが挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。とりわけ、前記可塑剤は、オイル、樹脂成分が好ましい。
前記オイルは、タイヤ工業において一般的に使用されているものであれば特に限定されず、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。とりわけ、プロセスオイルが好ましく、アロマ系プロセスオイルがより好ましい。
前記オイルとしては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、ENEOS(株)、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
また、インナーライナー7を構成するゴム組成物は、必要に応じて、樹脂成分を含有することが好ましい。前記樹脂成分は、常温で固体であっても、液体であってもよく、具体的な樹脂成分としては、スチレン系樹脂、クマロン系樹脂、テルペン系樹脂、C5樹脂、C9樹脂、C5C9樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。樹脂成分の含有量は、ゴム成分100質量%に対して、2質量%超で、45質量%未満が好ましく、30質量%未満がより好ましい。
スチレン系樹脂は、スチレン系単量体を構成モノマーとして用いたポリマーであり、スチレン系単量体を主成分(50質量%以上)として重合させたポリマー等が挙げられる。具体的には、スチレン系単量体(スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-フェニルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等)をそれぞれ単独で重合した単独重合体、2種以上のスチレン系単量体を共重合した共重合体の他、スチレン系単量体及びこれと共重合し得る他の単量体のコポリマーも挙げられる。
前記他の単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリロニトリル類、アクリル類、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなどの不飽和カルボン酸エステル類、クロロプレン、ブタジエンイソプレンなどのジエン類、1-ブテン、1-ペンテンのようなオレフィン類;無水マレイン酸等のα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物等が例示できる。
クマロン系樹脂としては、クマロンインデン樹脂が好ましく使用される。クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成するモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂である。クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
クマロンインデン樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、例えば、1.0質量部超、50.0質量部未満である。
クマロンインデン樹脂の水酸基価(OH価)は、例えば、15mgKOH/g超、150mgKOH/g未満である。なお、OH価とは、樹脂1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量をミリグラム数で表したものであり、電位差滴定法(JIS K 0070:1992)により測定した値である。
クマロンインデン樹脂の軟化点は、例えば、30℃超、160℃未満である。なお、軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
テルペン系樹脂としては、ポリテルペン、テルペンフェノール、芳香族変性テルペン樹脂などが挙げられる。ポリテルペンは、テルペン化合物を重合して得られる樹脂及びそれらの水素添加物である。テルペン化合物は、(C5H8)nの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C10H16)、セスキテルペン(C15H24)、ジテルペン(C20H32)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。
ポリテルペンとしては、上述したテルペン化合物を原料とするα-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、β-ピネン/リモネン樹脂などのテルペン樹脂の他、該テルペン樹脂に水素添加処理した水素添加テルペン樹脂も挙げられる。テルペンフェノールとしては、前記テルペン化合物とフェノール系化合物とを共重合した樹脂、及び該樹脂に水素添加処理した樹脂が挙げられ、具体的には、前記テルペン化合物、フェノール系化合物及びホルマリンを縮合させた樹脂が挙げられる。なお、フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。芳香族変性テルペン樹脂としては、テルペン樹脂を芳香族化合物で変性して得られる樹脂、及び該樹脂に水素添加処理した樹脂が挙げられる。なお、芳香族化合物としては、芳香環を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール、不飽和炭化水素基含有フェノールなどのフェノール化合物;ナフトール、アルキルナフトール、アルコキシナフトール、不飽和炭化水素基含有ナフトールなどのナフトール化合物;スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、不飽和炭化水素基含有スチレンなどのスチレン誘導体;クマロン、インデンなどが挙げられる。
「C5樹脂」とは、C5留分を重合することにより得られる樹脂をいう。C5留分としては、例えば、シクロペンタジエン、ペンテン、ペンタジエン、イソプレン等の炭素数4~5個相当の石油留分が挙げられる。C5系石油樹脂しては、ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD樹脂)が好適に用いられる。
「C9樹脂」とは、C9留分を重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C9留分としては、例えば、ビニルトルエン、アルキルスチレン、インデン、メチルインデン等の炭素数8~10個相当の石油留分が挙げられる。具体例としては、例えば、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、及び芳香族ビニル系樹脂が好適に用いられる。芳香族ビニル系樹脂としては、経済的で、加工しやすく、発熱性に優れているという理由から、α-メチルスチレンもしくはスチレンの単独重合体又はα-メチルスチレンとスチレンとの共重合体が好ましく、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体がより好ましい。芳香族ビニル系樹脂としては、例えば、クレイトン社、イーストマンケミカル社等より市販されているものを使用することができる。
「C5C9樹脂」とは、前記C5留分と前記C9留分を共重合することにより得られる樹脂をいい、それらを水素添加したものや変性したものであってもよい。C5留分及びC9留分としては、前記の石油留分が挙げられる。C5C9樹脂としては、例えば、東ソー(株)、LUHUA社等より市販されているものを使用することができる。
アクリル系樹脂としては特に限定されないが、例えば、無溶剤型アクリル系樹脂を使用できる。
無溶剤型アクリル系樹脂は、副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを極力使用せずに、高温連続重合法(高温連続塊重合法)(米国特許第4,414,370号明細書、特開昭59-6207号公報、特公平5-58005号公報、特開平1-313522号公報、米国特許第5,010,166号明細書、東亜合成研究年報TREND2000第3号p42-45等に記載の方法)により合成された(メタ)アクリル系樹脂(重合体)が挙げられる。なお、本開示において、(メタ)アクリルは、メタクリル及びアクリルを意味する。
前記アクリル系樹脂を構成するモノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸エステル(アルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステルなど)、(メタ)アクリルアミド、及び(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。
また、前記アクリル系樹脂を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸誘導体とともに、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ビニルを使用してもよい。
前記アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル成分のみで構成される樹脂であっても、(メタ)アクリル成分以外の成分をも構成要素とする樹脂であっても良い。また、前記アクリル系樹脂は、水酸基、カルボキシル基、シラノール基等を有していてよい。
前記樹脂成分としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、ENEOS(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
インナーライナー7を構成するゴム組成物は、加工助剤を含むことが好ましい。加工助剤としては、タイヤ工業において一般的に使用されているものであれば特に限定されず、例えば、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、アミドエステル、シリカ表面活性剤、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩とアミドエステルとの混合物、脂肪酸金属塩と脂肪酸アミドとの混合物などが使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、脂肪酸金属塩、アミドエステル、脂肪酸金属塩とアミドエステル若しくは脂肪酸アミドとの混合物が好ましく、脂肪酸金属塩と脂肪酸アミドとの混合物が特に好ましい。
脂肪酸金属塩を構成する脂肪酸としては、特に限定されないが、飽和又は不飽和脂肪酸(好ましくは炭素数6~28(より好ましくは炭素数10~25、更に好ましくは炭素数14~20)の飽和又は不飽和脂肪酸)が挙げられ、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ネルボン酸等が挙げられる。これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。なかでも、飽和脂肪酸が好ましく、炭素数14~20の飽和脂肪酸がより好ましい。
脂肪酸金属塩を構成する金属としては、例えば、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、亜鉛、ニッケル、モリブデン等が挙げられる。なかでも、亜鉛、カルシウムが好ましく、亜鉛がより好ましい。
脂肪酸アミドとしては、飽和脂肪酸アミドでも不飽和脂肪酸アミドでもよい。飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、N-(1-オキソオクタデシル)サルコシン、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド等が挙げられる。不飽和脂肪酸アミドとしては、例えば、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等が挙げられる。
脂肪酸金属塩と脂肪酸アミドとの混合物の具体例としては、脂肪酸カルシウムと脂肪酸アミドとの混合物であるストラクトール社製のWB16等が挙げられる。
加工助剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
インナーライナー7を構成するゴム組成物に含まれるステアリン酸は、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
インナーライナー7を構成するゴム組成物に含まれる酸化亜鉛は、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
インナーライナー7を構成するゴム組成物に含まれる硫黄は、タイヤ工業で汎用されているものであれば特に限定されず、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
前記硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
インナーライナー7を構成するゴム組成物に含まれる加硫促進剤は、タイヤ工業で汎用されているものであれば特に限定されず、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N′-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。とりわけ、スルフェンアミド系加硫促進剤、チウラム系加硫促進剤が好ましく、スルフェンアミド系加硫促進剤及びチウラム系加硫促進剤の併用がより好ましい。
前記加硫促進剤としては、例えば、川口化学(株)、大内新興化学(株)、ラインケミー社製等の製品を使用できる。
本実施形態では、インナーライナー7は、マウント部材10を構成するゴム組成物(第1ゴム組成物)よりも、70℃における複素弾性率E*が小さいゴム組成物によって構成されている。つまり、インナーライナー7を構成するゴム組成物の70℃における複素弾性率E*2は、マウント部材10を構成するゴム組成物の70℃における複素弾性率E*1よりも小さい。かかる構成による作用効果については後述する。
ビード部5は、ホイールと結合される部分であり、内圧によってタイヤ1をリム30Rに固定させる。ビード部5は、スチール製の複数のビードワイヤー5Cからなるビードコア5Aと、エイペックスゴム5Bとを含む。エイペックスゴム5Bは、ビードコア5Aよりも径方向D2の外側に位置しており、例えば、高い剛性を有するゴム組成物(加硫ゴム)で構成されている。ビードコア5A及びエイペックスゴム5Bは、カーカス6のカーカスプライによって、その外側を囲まれている。具体的には、前記カーカスプライは、ビードコア5Aの周りを幅方向D1の内側から外側に折り返され、ビード部5における幅方向D1の外側を径方向D2の外側へ延出している。このように前記カーカスプライによって囲まれた部分にビードコア5A及びエイペックスゴム5Bが配置されている。
ベルト部8は、タイヤ1の周方向D3へ延びる帯状部材である。ベルト部8は、トレッド部2の径方向D2の内側に配置されており、カーカス6の外側に配置されている。ベルト部8は、カーカス6を径方向D2へ締め付けて、トレッド部2の合成を高める役割を担う。ベルト部8は、後述のバンド部9とともにカーカス6を補強する補強層でもある。
ベルト部8は、少なくとも1枚のベルトプライ8Aによって構成されている。本実施形態では、ベルト部8は、2枚のベルトプライ8Aを有している。ベルト部8は、タイヤ1をその周方向D3に一周するように延在している。
ベルトプライ8Aは、タイヤ1の赤道面CL1に交差する方向に延びる多数のベルトコード(不図示)を有する。ベルトプライ8Aは、これらのベルトコードがトッピングゴムによって被覆されたものである。多数のベルトコードは、タイヤ1の赤道面CL1に対して、所定の角度(例えば10~35度の範囲内で定められた角度)で交差した状態で、タイヤ1の周方向D3に沿って並ぶようにして配列されている。ベルト部8において、各ベルトプライ8Aは、前記ベルトコードが互いに交差する向きとなるように配置されている。前記ベルトコードとしては、例えば、スチール製のコード(スチールコード)や、前記有機繊維コードが用いられる。
バンド部9は、タイヤ1の周方向D3へ延びる帯状部材である。バンド部9は、トレッド部2の径方向D2の内側に配置されており、ベルト部8の外側に配置されている。バンド部9は、ベルト部8の全体を被覆するフルバンド9Aと、トレッド部2の幅方向D1の両端部に対応する位置に設けられる一対のエッジバンド9Bとを有する。バンド部9は、ベルト部8の動きを拘束して、車両の走行時の遠心力によってベルト部8が浮き上がったり剥がれたりすることを防止する役割を担う。また、バンド部9は、上述のベルト部8とともにカーカス6を補強する補強層でもある。
図3A及び図3Bは、マウント部材10の構成を示す図であり、図3Aはマウント部材10の斜視図、図3Bはマウント部材10の部分断面図である。
マウント部材10は、温度や、振動、圧力、加速度などを検出するセンサーなどの電気機器を装着するものであり、タイヤ1の内面7A、すなわち、インナーライナー7の内面7Aに固定されている。前記電気機器としては、前記センサーのほかに、無線通信などを中継する中継器、所定の信号を発信する発信機などが挙げられる。
図3A及び図3Bに示すように、マウント部材10は、内面7Aに固定される取付座部11と、前記電気機器を着脱可能に取り付ける本体部12とを有する。マウント部材10は、加硫されたゴム組成物(加硫ゴム)によって、取付座部11と本体部12とを一体に形成したものである。なお、図3Bにおいて点線で示す部分は、マウント部材10に装着された電気機器を示す。
マウント部材10は、インナーライナー7とは異なるゴム組成物によって構成されている。マウント部材10のゴム組成物に配合されるゴム成分以外の素材としては、インナーライナー7のゴム組成物と共通する素材を用いることができる。つまり、マウント部材10を構成するゴム組成物は、ゴム成分に加え、カーボンブラックやシリカなどの補強剤、老化防止剤や加硫促進剤、可塑剤などの添加剤を含んでいてもよい。もちろん、マウント部材10を構成する前記ゴム成分は、インナーライナー7のゴム成分と同じであってもよく、また、異なっていてもよい。つまり、マウント部材10のゴム成分は、インナーライナー7のゴム成分として適用可能な上述の各種類のゴム材料のうちのいずれか1種類の前記ゴム材料を単独で用いられてもよく、或いは、2種類以上の前記ゴム材料を所定の配合割合で混合して用いられてもよい。例えば、マウント部材10のゴム成分は、インナーライナー7とは異なるゴム成分、例えば、ガラス転移温度Tgが低く低温特性に優れたブタジエンゴム(BR)と機械的特性に優れたアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)とを主として含むゴム成分であってもよい。また、マウント部材10のゴム成分は、その他のゴム材料、例えば、イソプレン系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンゴム、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)などのジエン系ゴムを更に含んでいてもよい。もちろん、マウント部材10は、インナーライナー7と同じゴム成分で構成されていてもよい。なお、インナーライナー7と共通する素材については既述した説明を参照されたい。
取付座部11は、例えば円盤状に形成されており、その外径は本体部12の外径よりも大きく形成されている。また、本体部12は、その取付座部11の一方の盤面から突出する円筒状に形成されている。本体部12の突出端面には内部に連通する開口13が形成されており、この開口13から本体部12の内部に前記電気機器が嵌め入れられて、ゴムの弾性によって保持される。タイヤ1の内面7Aに対する取付座部11の取付方法としては、様々な方法を採用することができる。
例えば、内面7Aにおける取付領域A1(取付面)に所定の表面加工処理を施して取付領域A1の表皮を除去した状態で、マウント部材10の取付座部11を取付領域A1に溶着、或いは接着剤で接着して固定する取付方法を適用することができる。前記表面加工処理としては、内面7Aにおける取付領域A1の表面を研磨機で研磨して表皮とともに離型剤を除去する処理や、レーザー光を取付領域A1の表面に照射することにより取付領域A1の表面の表皮を離型剤とともに除去する処理などが考えられる。
前記表面加工処理は、より詳細には、研磨機による研磨、或いは前記レーザー光の照射によって、取付領域A1の表面を均一な面(例えば平坦面)に加工する処理である。これにより、取付領域A1と取付座部11の接触面との密着性が向上し、取付領域A1におけるマウント部材10の取付強度を向上させることができる。また、取付領域A1に付着している離型剤も除去されるので、離型剤に起因する強度低下を防止することができ、より強固にマウント部材10を取付領域A1に取り付けることができる。
なお、取付座部11の接着面に対しても、マウント部材10の取付前に、研磨機による研磨やレーザー光照射によって前記表面加工処理を施すことが好ましい。これにより、取付領域A1に対する取付座部11の接着面の密着性が更に高まり、マウント部材10の取付強度をより一層向上させることができる。
また、取付座部11の取付方法の他の例としては、前記取付領域A1に当初から離型剤を塗布せずにタイヤ1を加硫し、その後に前記取付領域A1に取付座部11を溶着、或いは接着剤で接着して固定する取付方法や、加硫前のタイヤ1の内面7Aに取付座部11を接合し、その後にマウント部材10とともにタイヤ1を加硫することによりマウント部材10を内面7Aに固定する取付方法などが考えられる。
ここで、マウント部材10の固定が不十分である場合、車両走行中にマウント部材10の取付座部11が部分的に剥離し、剥離部分がタイヤ1の転動に伴い内面7Aに接触し、接触音が不快なノイズとして感受されることが懸念される。このため、前記表面加工処理は、取付領域A1の表面、或いは取付座部11の接触面を高精度に均一に加工できるレーザー光照射による加工処理が好ましい。また、レーザー光照射による加工処理によれば、処理が行われた部分(表面加工済み面)と処理が行われなかった部分(未処理面)との境界部分の段差を200μm以下とすることができるため、表皮の削り量を研磨による加工処理に比べて少なくすることができる。なお、前記レーザー光による表面加工処理が行われたか否かについては、表面加工処理が行われた部分(表面加工済み面)と表面加工処理が行われなかった部分(未処理面)との境界部分の段差が200μm以下であるか否かを確認することによって判断できると考えられる。つまり、境界部分の段差が200μm以下である場合は前記レーザー光による表面加工処理が行われたと判断することができ、境界部分の段差が200μm超の場合は他の表面加工処理が行われたと判断することができると考えられる。
マウント部材10は、前記電子機器を保持可能な弾性を有するものであればよく、マウント部材10のゴム組成物の70℃における複素弾性率E*は、例えば、4.5MPaであることが好ましい。
本実施形態では、図2に示すように、マウント部材10は、タイヤ1の内面7Aにおいて、トレッド部2における幅方向D1の中央部に対応する位置に配置されている。言い換えると、マウント部材10は、タイヤ1の内面7Aにおいて、上述したクラウン陸部24Aに対応する位置に配置されている。具体的には、マウント部材10は、タイヤ1の内面7Aにおいて、上述したクラウン陸部24Aに対応する取付領域A1(取付位置)に配置されている。
取付領域A1は、クラウン陸部24Aの接地面を形成する幅方向D1の両端部を通り、クラウン陸部24Aの表面を仮想的に結ぶことにより得られるトレッド面プロファイルに対して垂直な二本の直線L1により区切られる内面7Aにおける領域である。言い換えると、取付領域A1は、トレッド部2の裏面(内部側の面)において、赤道面CL1に平行な二本の直線L1と内面7Aとが交差する二つの交差部P1,P1によって囲まれた領域である。なお、前記直線L1は、クラウン陸部24Aの幅方向D1の両端部それぞれを通り赤道面CL1に平行な直線である。ここで、クラウン陸部24Aに対応する位置とは、マウント部材10の取付座部11の中心が取付領域A1内にあるように配置された位置という意味であり、クラウン陸部24Aの中心を通る直線(赤道面CL1に含まれる直線)とマウント部材10の中心とが一致する位置に限られない。
なお、取付領域A1は、2つのミドル陸部24Bの両方又はいずれか一方に対応する領域であってもよい。この場合、取付領域A1は、ミドル陸部24Bの接地面を形成する幅方向D1の両端部を通り、ミドル陸部24Bの表面を仮想的に結ぶことにより得られるトレッド表面プロファイルに対して垂直な二本の直線L2により区切られる内面7Aにおける領域である。また、取付領域A1は、2つのショルダー陸部24Cの両方又はいずれか一方に対応する領域であってもよい。この場合、取付領域A1は、トレッド面21の接地面における幅方向D1の端部を通り、前記トレッド表面プロファイルに対して垂直な直線L31と、ショルダー陸部24Cにおける第2主溝22B側の端部を通り、前記トレッド表面プロファイルに対して垂直なL32とにより区切られる内面7Aにおける領域である。
本実施形態では、マウント部材10は、クラウン陸部24Aの中心を通る直線(赤道面CL1に含まれる直線)とマウント部材10の中心とが一致する位置に設けられている。より詳細には、マウント部材10は、その取付座部11の中心が、図2の断面図においてクラウン陸部24Aの中心及びタイヤ1の中心を通る直線(赤道面CL1に含まれる直線)と内面7Aとの交点に一致するように、内面7Aに固定されている。したがって、マウント部材10は、内面7Aにおいて、トレッド部2に形成された主溝22に対応する位置には配置されていない。つまり、マウント部材10は、トレッド部2において、主溝22の裏側に設けられていない。
また、取付座部11の中心は、トレッド部2の接地面における接地幅に対して、赤道面CL1を中心に50%の位置で前記トレッド表面プロファイルに対して垂直な線により区切られる領域内にあることが望ましい。50%よりも幅方向D1の外側の領域であると、転動時のトレッド部2の変形量が大きく、マウント部材10による振動音も大きくなると考えられるためである。
ここで、前記トレッド表面プロファイルは、前記正規状態における陸部24の表面を仮想的に結ぶことにより得ることができる表面形状である。
また、前記接地幅は、前記正規内圧、正規荷重、及びキャンバー角0度の状態で、平滑な路面にタイヤ1を押し付けた際に得られる接地面の幅方向の最大位置である。
なお、前記正規荷重は、タイヤ1が依拠する規格において定められた荷重のことである。前記正規荷重は、具体的には、JATMA規格における「最大負荷能力」であり、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に示される「最大値」であり、ETRTO規格における「LOAD CAPACITY」である。
なお、本実施形態では、取付座部11を備えるマウント部材10を例示するが、マウント部材10は、取付座部11を備えておらず、本体部12のみで構成されたものであってもよい。
また、複数のマウント部材10がタイヤ1の内面7Aに取り付けられる場合、各マウント部材10は、内面7Aにおいて、周方向D3に沿って等間隔となるように配置されることが好ましい。これにより、複数のマウント部材10が設けられた場合に、周方向D3の重量バランスを均等に保つことができる。
また、マウント部材10の取付位置は、取付領域A1に限定されない。例えば、マウント部材10は、タイヤ1の内面7Aにおいて、2つのミドル陸部24Bのいずれか一方に対応する位置に取り付けられていてもよい。また、マウント部材10は、2つのミドル陸部24Bの両方に対応する位置に取り付けられていてもよい。
また、2つ以上のマウント部材10を内面7Aにおいて幅方向D1に並んで取り付ける場合は、タイヤ1の赤道面CL1によって幅方向D1に均等に隔てられた2つのミドル陸部24Bの両方に対応する位置に取り付けられることが好ましい。この際、赤道面CL1上にクラウン陸部24Aが存在する場合、クラウン陸部24Aに対応する位置に各マウント部材10が取り付けられてもよい。この場合、幅方向D1における重量バランスを赤道面CL1を中心に対称とし、均等に保つことができる。
マウント部材10は、電気機器を装着可能なものであれば、如何なる形状のものであてもよく、例えば、図4A及び図4Bに示すように形成されたものであってもよい。ここで、図4A及び図4Bは、マウント部材10の他の構成を示す図であり、図4Aはマウント部材10の斜視図、図4Bはマウント部材10の部分断面図である。図4A及び図4Bに示すマウント部材10は、環状円形状の取付座部11Aと、取付座部11Aの開口13Aに内孔が連続する筒状の本体部12Aと、を有する。本体部12Aの他方側は閉塞されている。このため、本体部12Aの内部に電気機器が保持された状態で取付座部11Aが内面7Aに固定されると、電気機器は外部から遮断された密封状となる。
ところで、前記電気機器が装着されたマウント部材10がタイヤ1の内面7Aに設けられている場合、車両走行時に、路面からタイヤ1に伝達した振動がトレッド部2を伝播してマウント部材10及び電気機器に伝達し、タイヤ1の内部において前記電気機器が振動するおそれがある。また、タイヤ1が一周するたびにマウント部材10がトレッド部2を介して路面に周期的に当接して、マウント部材10及び前記電気機器の荷重がトレッド部2を介して路面に周期的に付与される。このため、トレッド部2に周期的な振動が発生するおそれがある。トレッド部2からマウント部材10及び前記電気機器に伝達される振動、及びマウント部材10及び前記電気機器からトレッド部2に伝達される振動は、いずれも、車両走行時に生じるノイズの原因であり、これらの振動音は、車両の搭乗者にとって不快なノイズとして感受されることが懸念される。かかる振動は、車両の高速走行時に顕著に現れる。
これに対して、本実施形態では、乾燥した路面を高速走行する場合のタイヤ1の内部側の温度が約70℃に達することから、マウント部材10は、インナーライナー7を構成するゴム組成物よりも、70℃における複素弾性率E*が大きいゴム組成物によって構成されている。つまり、マウント部材10を構成するゴム組成物の70℃における複素弾性率E*1は、インナーライナー7を構成するゴム組成物の70℃における複素弾性率E*2よりも大きい。言い換えると、マウント部材10の複素弾性率E*1とインナーライナー7の複素弾性率E*2との間には、E*1-E*2>0の関係を有する。
本実施形態においては、上述したように、マウント部材10を構成するゴム組成物の70℃における複素弾性率E*1は、インナーライナー7を構成するゴム組成物の70℃における複素弾性率E*2よりも大きいことが好ましい。このため、インナーライナー7をマウント部材10よりも柔軟な粘弾性体とすることができる。これにより、マウント部材10に前記電気機器が装着されたタイヤ1において、車両走行時にトレッド部2からマウント部材10及び前記電気機器に伝達される振動がインナーライナー7によって減衰され、また、マウント部材10及び前記電気機器からトレッド部2に伝達される振動がインナーライナー7によって減衰されると考えられる。
その結果、マウント部材10及び前記電気機器の荷重に起因する車両走行時のノイズを抑制することが可能である。とりわけ、時速80kmを超える高速走行時におけるノイズを効果的に抑制することができる。また、マウント部材10及び前記電気機器の荷重に起因する振動が抑えられるため、車両の走行安定性能も向上させることができる。
なお、複素弾性率E*1,E*2は、マウント部材10及びインナーライナー7のテストピースを所定の粘弾性スペクトロメータ(粘弾性測定装置)によって測定した測定値であり、例えば、測定温度70℃、初期歪み5%、動歪み±1%、周波数10Hz、伸長変形モードの測定条件の下で測定することができる。
ここで、マウント部材10の70℃における複素弾性率E*1とインナーライナー7の70℃における複素弾性率E*2との差分ΔE*(=E*1-E*2)は、2.5MPa未満であることが好ましい。マウント部材10に対してインナーライナー7が柔軟になり過ぎると、トレッド部2から伝達された振動がインナーライナー7で減衰せずに、却って増幅する場合がある。この場合、前記ノイズを助長させるおそれがある。また、マウント部材10及び前記電気機器が振動によって故障するおそれがある。このため、前記差分ΔE*は、車両走行時のノイズの抑制効果が生じうる範囲内であることが好ましく、具体的には、2.5MPa未満であることが好ましい。
一般に、複素弾性率E*1及びE*2は、ゴム成分の種類や配合量、カーボンブラックやシリカなどの充填剤(補強剤)の種類や形状、配合量、その他の添加剤の種類や配合量などを変更することにより調整することができる。本実施形態においても、インナーライナー7及びマウント部材10の各ゴム組成物を構成する各素材の種類や配合量に加え、前記補強剤の種類や形状を適宜変更することによって、E*1-E*2>0の関係を満たすことが可能である。
なお、本実施形態のタイヤ1において、インナーライナー7を構成するゴム組成物の70℃における損失正接tanδ(=E″/E′)は、0.26以下であることが好ましい。以下、インナーライナー7の70℃における損失正接tanδをtanδ・70℃と示す。
また、インナーライナー7を構成するゴム組成物の70℃における損失正接tanδ・70℃は、0.13以下であることがより好ましい。インナーライナー7の前記損失正接tanδ・70℃の下限値は限定されず、その数値が低いほど好ましい。
なお、前記損失正接tanδ・70℃は、マウント部材10及びインナーライナー7のテストピースを所定の粘弾性スペクトロメータ(粘弾性測定装置)によって測定した測定値であり、例えば、測定温度70℃、初期歪み10%、動歪み±2.5%、周波数10Hz、伸長変形モードの測定条件の下で測定することができる。
一般に、損失正接tanδは、配合されている前記補強剤の種類や形状、或いはその配合量を変更することにより調整することができる。また、オイル等の可塑剤の配合量を変更することによっても調整することができる。本実施形態においても、インナーライナー7及びマウント部材10の各ゴム組成物を構成する各素材の種類や配合割合に加え、前記補強剤の種類や形状、配合量、更には、前記可塑剤の配合量を適宜変更することによって、前記損失正接tanδ・70℃を任意の数値に調整することが可能である。
インナーライナー7の部分で振動等を減衰させるため、カーカス6における内部側の面からインナーライナー7の内部側の面に至る厚さd(図2参照)は、好ましくは、0.6mm以上である。前記厚さdは、カーカス6とインナーライナー7との間にインスレーション層などの他の介在部材が設けられている場合は、当該部材の厚みとインナーライナー7の厚みとを合算した値である。また、前記介在部材が設けられていない場合は、前記厚さdはインナーライナー7の厚さである。前記厚さdの最小厚さは、0.6mmである。一般的な空気入りタイヤにおける前記厚さdは、インナーライナーの種類や、空気入りタイヤの用途や種類などによって定めることができる。前記厚さdが薄すぎると十分な減衰を得られないため、上述したように、前記厚さdは0.6mm以上であることが好ましい。なお、前記厚さdについて、上限値は限定されないが、一般的に取り得る範囲の上限値(乗用車用で1.0mm、大型車用で2.0mm)とすることができる。
特に、本実施形態では、上述したように、インナーライナー7の損失正接tanδ・70℃が0.26以下であり、より好ましくは、0.13以下である。そのため、インナーライナー7のゴム組成物の貯蔵弾性率E′(弾性項)に対して損失弾性率E″(粘性項)を小さくして、インナーライナー7における発熱を抑えることができる。これにより、インナーライナー7が軟化し難くなり、その結果、インナーライナー7における振動が抑えられ、車両走行時にノイズが生じ難くなる。また、インナーライナー7が軟化し難くなるため、インナーライナー7の厚さをサイズアップする方向に調整し易くなる。
なお、本実施形態のタイヤ1は、カーカス6の内側面にインナーライナー7が貼り合わされた構成であるため、インナーライナー7の厚さを0.6mm以上としたが、例えば、カーカス6の内側面とインナーライナー7との間にこれらとは別のゴム層が設けられている場合は、カーカス6の内側面からインナーライナー7の内面7Aに至る厚さが0.6mm以上となるように前記別のゴム層及びインナーライナー7それぞれの厚さを調整することが好ましい。
また、マウント部材10を構成するゴム組成物のガラス転移温度T1は、インナーライナー7を構成するゴム組成物のガラス転移温度T2よりも低いことが望ましい。つまり、マウント部材10のガラス転移温度T1とインナーライナー7のガラス転移温度T2との間には、T2-T1>0の関係を有する。
本実施形態のタイヤ1において、インナーライナー7のガラス転移温度T2とマウント部材10のガラス転移温度T1との差分ΔT(=T2-T1)は、0℃よりも大きく20℃以下の範囲内であることが好ましく、更には、差分ΔTは、2℃以上4℃以下の範囲内であることより好ましい。例えば、マウント部材10のガラス転移温度T1は-22℃であり、この場合、インナーライナー7のガラス転移温度T2は、好ましくは、-20~-18℃の範囲内の温度である。
一般的なインナーライナーのガラス転移温度Tgが-60℃程度であるのに対して、本実施形態のように、インナーライナー7のガラス転移温度T2が通常値(-60℃)よりも高く、それゆえに、本実施形態では、マウント部材10のガラス転移温度T1がインナーライナー7のガラス転移温度T2よりも低い関係を有する。このため、車両走行時にタイヤの温度が約70℃まで上昇した場合に、マウント部材10と比べて、インナーライナー7の方が軟化し難くなり、インナーライナー7における振動が抑えられる。これにより、タイヤ1の回転時に生じるノイズを更に抑制することができる。
一般に、ガラス転移温度T1,T2は、配合されるゴム材料の種類や配合量を変更し、或いは、前記補強剤を変更することにより調整することができる。本実施形態においても、前記補強剤の配合量を変更することにより、ガラス転移温度T1,T2を任意の数値に調整することが可能である。
また、本実施形態では、上述したように、取付領域A1にマウント部材10が固定されている。そのため、車両走行時にタイヤ1が回転した場合に、タイヤ1の回転と、マウント部材10及び電子部品の重量とによって生じる力の大部分は、クラウン陸部24Aに作用することになる。これにより、マウント部材10及び電子部品の荷重に起因する車両走行時のノイズは、クラウン陸部24Aのみから生じ、その結果、前記荷重に起因する前記ノイズを抑制することができる。
仮に、マウント部材10が、内面7Aにおいて、主溝22に対応する位置に配置されている場合、前記荷重は、主溝22を挟むように配置された幅方向D1両側の2つ陸部24それぞれに作用することになる。この場合、各陸部24それぞれから前記荷重に起因する車両走行時のノイズが生じ、各ノイズの音波が合成してより高いうなり音が生じるおそれがある。これに対して、本実施形態のタイヤ1においては、マウント部材10が取付領域A1に固定されているため、このようなノイズが生じることはない。
前記ノイズの抑制を効果的に発揮させるために、マウント部材10は、上述した取付領域A1の範囲内に配置されることが好ましい。しかし、取付座部11が円盤状に形成された板状部材であり、取付座部11の体積が本体部12に比べて十分に小さい場合は、取付座部11が前記ノイズに与える影響は小さい。そのため、この場合は、少なくとも、本体部12が前記取付領域A1の範囲内に配置されていればよい。
以上、本開示の実施形態に係るタイヤ1について説明したが、本開示は上述した実施形態に限定されるものではない。以下、表1~表3を参照して、本実施形態のタイヤ1の各実施例について、比較例を示しつつ説明する。
〈実施例〉
以下に説明する実施例1乃至17、及び比較例1乃至5の各タイヤは、いずれも、上述したタイヤ1と同様の空気入りタイヤであり、インナーライナー7及びマウント部材10を除く他の部分のゴム組成物を構成する各素材の配合割合は実質的に同じである。
インナーライナー7及びマウント部材10を構成するゴム組成物に用いた各種配合材料は以下の通りである。
(1)ゴム材料
(a)IIR:エクソンモービル社製のプロモブチル2222
(2)添加剤
(a)補強剤(カーボンブラック):三菱化学(株)製のダイヤブラックN220
(b)オイル:ENEOS(株)製のプロセスX-260
(c)樹脂A1:ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンPX1150N
(d)樹脂A2:アリゾナケミカル社製のSYLVATRAXX 4401(α-メチルスチレン系樹脂)
(e)加工助剤:Flow Polymers社製のPROMIX 400
(f)ステアリン酸:日油(株)製の椿
(g)酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
(h)加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラー CZ-G(CBS)
また、実施例1乃至17、及び比較例1乃至5の各タイヤは、いずれも、上述したタイヤ1と同様に構成されている。つまり、マウント部材10は、タイヤ内面7Aにおいてクラウン陸部24Aに対応する取付領域A1に取り付けられている。
表1は、実施例1乃至17、及び比較例1乃至5の各タイヤのインナーライナー7の配合情報R1~R15、及びマウント部材10の配合情報R21及びR22を示す。各配合情報R1~R15,R21,R22は、対応する部材のゴム組成物の配合割合及び所定の物性値を含む。
表1に示すように、配合情報R1~R15,R21,R22には、3種類のゴム材料の配合割合、及び9種類の添加剤の配合割合が示されており、また、5つの物性の物性値が示されている。ここで、前記配合割合は、各素材(ゴム材料及び添加剤)の配合量を質量部で表したものである。詳細には、各素材の配合割合は、1種類又は複数種類のゴム材料からなるゴム成分の合計質量部を100とした場合の各素材の配合量(質量部)の割合を示すものである。前記配合割合に用いられる単位はphr(:per hundred rubber)で表される。また、表1に示される各物性は、70℃における複素弾性率E*、70℃における損失正接tanδ・70℃、0℃における複素弾性率E*、0℃における損失正接tanδ・0℃、及びガラス転移温度Tgの5種類である。
各実施例及び各比較例のタイヤは、次のようにして製造されたものである。まず、硫黄及び加硫促進剤以外の添加剤及びゴム材料を表1の配合情報R1~R15に示す割合に従って配合し、所定のミキサーを用いて約130℃の温度条件の下で4分間混練りした。次に、得られた混練物に硫黄及び加硫促進剤を表1に示す割合に従って添加して練り込み、未加硫ゴム組成物を得る。このようにして得られた未加硫ゴム組成物を引き延ばしてドラムなどに巻回して、インナーライナー7用のシート状部材を形成する。このシート状部材をインナーライナー7としてタイヤ成形機に貼り付けたうえで、トレッド部2及び他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを形成し、170℃の温度条件下で前記未加硫タイヤを10分間プレス加硫することにより、試験用タイヤ(タイヤサイズ:205/55R16 91V、最大負荷能力:615kg)を製造した。
また、各実施例及び各比較例のタイヤが備えるマウント部材10は、次のようにして製造されたものである。まず、硫黄及び加硫促進剤以外の添加剤及びゴム材料を表1の配合情報R21又はR21に示す割合に従って配合し、所定のミキサーを用いて約130℃の温度条件の下で4分間混練りし、次に、得られた混練物に硫黄及び加硫促進剤を表1に示す割合に従って添加して、約80℃の温度条件の下で4分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得る。このようにして得られた未加硫ゴム組成物を、マウント部材10の形状に押出し成形し、170℃の温度条件下で10分間加硫することにより、マウント部材10を製造した。
そして、製造されたマウント部材10は、上述した取付方法によって電気機器とともに各実施例及び各比較例のタイヤの内面に固定される。なお、得られたタイヤの重量は、前記電気部品及びマウント部材10の重量もあわせて何れも7.7kg±0.2kgの範囲であった。
なお、表1に示す複素弾性率E*及び損失正接tanδは、インナーライナー7のゴム組成物と同じ構成のテストピース、及びマウント部材10のゴム組成物と同じ構成のテストピースを用意し、各テストピースについて以下の方法で測定された数値である。各テストピースのサイズは、長辺が20mm、幅が4mm、厚さが1mmである。なお、インナーライナー7のテストピースについては、前記試験用タイヤから切り出されたゴム組成物のサンプル片であってもよい。前記テストピースは、前記長辺をタイヤの周方向D3(図1参照)に対応したサイズ、前記厚さをタイヤの厚み方向に対応したサイズとした。インナーライナー7及びマウント部材10それぞれのテストピースについて、独国GABO社製の粘弾性測定装置「イプレクサー(登録商標)」を用いて、複素弾性率E*、及び損失正接tanδを測定した。複素弾性率E*については、測定温度0℃又は70℃の温度環境において、初期歪み5%、動歪み±1%、周波数10Hz、及び伸長変形モードの測定条件の下で測定された数値である。また、損失正接tanδについては、測定温度0℃又は70℃の温度環境において、初期歪み10%、動歪み±2.5%、周波数10Hz、及び伸長変形モードの測定条件の下で測定された数値である。なお、同一のゴム組成物の各測定値については、複数回の測定値の平均値を算出して記載している。
また、表1に示すガラス転移温度Tgは、インナーライナー7のゴム組成物と同じ構成のテストピース、及びマウント部材10のゴム組成物と同じ構成のテストピースを用意し、各テストピースについて以下の方法で測定された数値である。インナーライナー7及びマウント部材10それぞれのテストピースについて、独国GABO社製の粘弾性測定装置「イプレクサー(登録商標)」を用いて、周波数10Hz、初期歪10%、振幅±0.5%、及び昇温速度2℃/minの測定条件の下で、所定の測定温度範囲の各温度ごとに損失正接tanδを測定し、測定時の温度を変数とする損失正接tanδの測定値の温度分布曲線を求めた。そして、求められた前記温度分布曲線におけるピーク位置(損失正接tanδの測定値が最も大きい位置)に対応するピーク温度を前記ガラス転移温度Tgとした。なお、前記測定温度範囲は、-60℃から40℃までの温度範囲とした。
表2は、実施例1乃至6、及び比較例1乃至5それぞれのタイヤのインナーライナー7及びマウント部材10それぞれの前記配合情報、インナーライナー7及びマウント部材10それぞれの複素弾性率E*の差分ΔE*(=E*1-E*2)、インナーライナー7のゴム組成物の前記損失正接tanδ・70℃、インナーライナー7の厚さを含む前記厚さd、マウント部材10の厚さ、ガラス転移温度の差分ΔT(=T2-T1)、及び、車両走行時のノイズに関する評価値(以下、ノイズ評価値と称する。)を示す。各実施例及び比較例においては、マウント部材10の厚さを6.0mmとした。
なお、表2に示すノイズ評価値は、以下の方法で算定した。各実施例及び各比較例のタイヤを4輪車両の全輪に前記正規状態となるように装着し、速度100km/hでテストコースを周回させ、ドライバーが車内で感じたノイズを1点から10点の10段階評価で評点付けを行った。同様のテストを10人のドライバーで実施し、各ドライバーの評点を合計し、実施例1の合計評点を100として、他の実施例及び各比較例の合計評点を指数化した。なお、ノイズ評価値が大きいほど、ドライバーが高速走行中に感じたノイズが小さく、良好であったことを示す。
表2に示すように、実施例1は、前記差分ΔE*は正(プラス)であり、つまり、マウント部材10の複素弾性率E*1はインナーライナー7の複素弾性率E*2よりも大きい。これに対して、比較例1乃至5それぞれは、前記差分ΔE*は負(マイナス)であり、つまり、マウント部材10の複素弾性率E*1はインナーライナー7の複素弾性率E*2よりも小さい。実施例1は、比較例1乃至5と対比した場合、前記差分ΔE*以外の項目においても相違点はあるものの、実施例1のノイズ評価値は、比較例1乃至5のいずれのノイズ評価値よりも高い。つまり、実施例1のタイヤは、比較例1乃至5のいずれのタイヤよりも、車両走行時に生じるノイズが低い。これは、実施例1の前記差分ΔE*が正(プラス)であること、つまり、マウント部材10の複素弾性率E*1がインナーライナー7の複素弾性率E*2よりも大きいことが起因していることが理解できる。
また、実施例2は、実施例1よりも、前記差分ΔE*が大きく、前記損失正接tanδ・70℃が小さい。このため、実施例2のノイズ評価値は、実施例1のノイズ評価値よりも高く、実施例2のタイヤは、実施例1のタイヤよりも、車両走行時に生じるノイズが低いことが理解できる。なお、実施例1及び2は、いずれも、前記差分ΔTが負(マイナス)であるため、インナーライナー7のガラス転移温度T2がマウント部材10のガラス転移温度T1よりも低い。
また、実施例3は、実施例2よりも、前記差分ΔE*が更に大きく、前記損失正接tanδ・70℃が更に小さい。このため、実施例3のノイズ評価値は、実施例2のノイズ評価値よりも高く、実施例3のタイヤは、実施例2のタイヤよりも、車両走行時に生じるノイズが低いことが理解できる。なお、実施例2及び3は、いずれも、前記差分ΔTが負(マイナス)であるため、インナーライナー7のガラス転移温度T2がマウント部材10のガラス転移温度T1よりも低い。
なお、比較例3と比較例4との相違点は、前記厚さdのみであり、その他の構成及び仕様は実質的に同じである。比較例3及び4を対比すると、前記厚さdが大きい比較例4のほうがノイズ評価値が高い。このことから、前記厚さdが大きいほうがインナーライナー7における減衰効果が高く、車両走行時に生じるノイズの抑制効果が高いことが理解できる。
また、比較例4と比較例5とを対比すると、前記差分ΔTが大きく相違しており、前記損失正接tanδ・70℃が若干相違するもののほとんど同じ値であり、その他の構成及び仕様は実質的に同じである。比較例4及び5を対比すると、前記差分ΔTが正(プラス)であるため、比較例5のほうが、インナーライナー7のガラス転移温度T2がマウント部材10のガラス転移温度T1よりも高く、ノイズ評価値が高い。このことから、インナーライナー7のガラス転移温度T2が高いほうがインナーライナー7における減衰効果が高く、車両走行時に生じるノイズの抑制効果が高いことが理解できる。
また、実施例4,5,6は、それぞれ、実施例1,2,3と対比して、配合情報の異なるマウント部材を適用したものであり、具体的には、実施例1,2,3のマウント部材の配合情報がR21であるのに対して、実施例4,5,6のマウント部材の配合情報がR22である点で相違する。表2に示すように、配合情報R22のマウント部材を適用した実施例4,5,6であっても、実施例1,2,3それぞれと同様のノイズ評価値を得られたことが理解できる。
表3は、実施例7乃至17それぞれのタイヤのインナーライナー7及びマウント部材10の各部材における前記配合情報、インナーライナー7及びマウント部材10の各部材の複素弾性率E*の差分ΔE*(=E*1-E*2)、インナーライナー7の前記損失正接tanδ・70℃、前記厚さd、マウント部材10の厚さ、ガラス転移温度の差分ΔT(=T2-T1)、及び、車両走行時のノイズに関する評価値(以下、ノイズ評価値と称する。)を示す。各実施例においては、マウント部材10の厚さを6.0mmとした。
なお、表3に示すノイズ評価値は、表2に示すノイズ評価値と同じ方法で算定した。
表3に示すように、実施例7は、実施例1と対比して、前記厚さdのみが相違しており、その他の構成及び仕様は実質的に同じである。具体的には、実施例7の前記厚さdは0.6mmであり、実施例1の前記厚さd(=0.4mm)と比べて0.2mm大きい。実施例7と実施例1とを対比すると、前記厚さdが大きい実施例7のほうが実施例1よりもノイズ評価値が高い。このことから、前記厚さdが大きいほうがインナーライナー7における減衰効果が高く、車両走行時に生じるノイズの抑制効果が高いことが理解できる。
また、実施例8は、実施例2と対比して、前記厚さdのみが相違しており、その他の構成及び仕様は実質的に同じである。具体的には、実施例8の前記厚さdは0.6mmであり、実施例2のインナーライナー7の前記厚さd(=0.4mm)と比べて0.2mm大きい。実施例8と実施例2とを対比すると、前記厚さdの厚さが大きい実施例8のほうが実施例2よりもノイズ評価値が高く、実施例7のノイズ評価値よりも更に高い。このことから、前記厚さdが大きいほうがインナーライナー7における減衰効果が高く、車両走行時に生じるノイズの抑制効果が高いことが理解できる。
また、実施例9は、実施例3と対比して、前記厚さdのみが相違しており、その他の構成及び仕様は実質的に同じである。具体的には、実施例9の前記厚さdは0.6mmであり、実施例3の前記厚さd(=0.4mm)と比べて0.2mm大きい。実施例9と実施例3とを対比すると、前記厚さdが大きい実施例9のほうが実施例3よりもノイズ評価値が高く、実施例8のノイズ評価値よりも更に高い。このことから、前記厚さdが大きいほうがインナーライナー7における減衰効果が高く、車両走行時に生じるノイズの抑制効果が高いことが理解できる。
実施例10は、実施例1と対比して、前記差分ΔTのみが相違しており、その他の構成及び仕様は実質的に同じである。具体的には、実施例10の前記差分ΔTは+2.0であり、つまり、インナーライナー7のガラス転移温度T2がマウント部材10のガラス転移温度T1よりも2℃高い。これに対して、実施例1は、前記差分ΔTが-3.0であり、インナーライナー7のガラス転移温度T2がマウント部材10のガラス転移温度T1よりも3℃低い。実施例10と実施例1とを対比すると、実施例10のほうが実施例1よりもノイズ評価値が高い。このことから、インナーライナー7のガラス転移温度T2がマウント部材10のガラス転移温度T1よりも高いほうがインナーライナー7における減衰効果が高く、車両走行時に生じるノイズの抑制効果が高いことが理解できる。
実施例11は、実施例2と対比して、前記差分ΔTのみが相違しており、その他の構成及び仕様は実質的に同じである。具体的には、実施例11の前記差分ΔTは+3.0であり、つまり、インナーライナー7のガラス転移温度T2がマウント部材10のガラス転移温度T1よりも3℃高い。これに対して、実施例2は、前記差分ΔTが-2.0であり、インナーライナー7のガラス転移温度T2がマウント部材10のガラス転移温度T1よりも2℃低い。実施例11と実施例2とを対比すると、実施例11のほうが実施例2よりもノイズ評価値が高く、実施例10のノイズ評価値よりも更に高い。このことから、インナーライナー7のガラス転移温度T2がマウント部材10のガラス転移温度T1よりも高いほうがインナーライナー7における減衰効果が高く、車両走行時に生じるノイズの抑制効果が高いことが理解できる。
実施例12は、実施例3と対比して、前記差分ΔTのみが相違しており、その他の構成及び仕様は実質的に同じである。具体的には、実施例12の前記差分ΔTは+4.0であり、つまり、インナーライナー7のガラス転移温度T2がマウント部材10のガラス転移温度T1よりも4℃高い。これに対して、実施例3は、前記差分ΔTが-1.0であり、インナーライナー7のガラス転移温度T2がマウント部材10のガラス転移温度T1よりも1℃低い。実施例12と実施例3とを対比すると、実施例12のほうが実施例3よりもノイズ評価値が高く、実施例11のノイズ評価値よりも更に高い。このことから、インナーライナー7のガラス転移温度T2がマウント部材10のガラス転移温度T1よりも高いほうがインナーライナー7における減衰効果が高く、車両走行時に生じるノイズの抑制効果が高いことが理解できる。
実施例13は、実施例3と対比して、前記差分ΔTのみが相違しており、その他の構成及び仕様は実質的に同じである。具体的には、実施例13の前記差分ΔTは+10.0であり、つまり、インナーライナー7のガラス転移温度T2がマウント部材10のガラス転移温度T1よりも10℃高い。また、実施例14は、実施例3と対比して、前記差分ΔTのみが相違しており、その他の構成及び仕様は実質的に同じである。具体的には、実施例14の前記差分ΔTは+20.0であり、つまり、インナーライナー7のガラス転移温度T2がマウント部材10のガラス転移温度T1よりも20℃高い。実施例13及び実施例14と実施例3とを対比すると、実施例13,14のほうが実施例3よりもΔTが大きく、ノイズ評価値も実施例9と同等である。このことから、インナーライナー7のガラス転移温度T2がマウント部材10のガラス転移温度T1よりも高いほうがインナーライナー7における減衰効果が高く、車両走行時に生じるノイズの抑制効果が高いことが理解できる。
実施例15は、実施例14と対比して、前記差分ΔTのみが相違しており、その他の構成及び仕様は実質的に同じである。具体的には、実施例15の前記差分ΔTは+21.0であり、つまり、インナーライナー7のガラス転移温度T2がマウント部材10のガラス転移温度T1よりも21℃高い。しかしながら、実施例15のノイズ評価値は、実施例14のノイズ評価値よりも低い。このことから、インナーライナー7のガラス転移温度T2がマウント部材10のガラス転移温度T1よりも高くなり過ぎると、車両走行時に生じるノイズの抑制効果が低下することが理解できる。したがって、前記差分ΔTは、20℃以下であることが好ましい。
実施例16は、他の実施例及び各比較例それぞれと対比して、前記差分ΔE*が比較的大きい+2.0であり、損失正接tanδ・70℃が最も小さい0.13であり、前記厚さdが0.6mmであり、前記差分ΔTが+4.0である点で相違しており、その他の構成及び仕様は実質的に同じである。この実施例16は、他の実施例及び各比較例を比べて、ノイズ評価値が最も高く、車両走行時に生じるノイズの抑制効果が最も高い。
実施例17は、実施例16と対比して、前記差分ΔE*のみが相違しており、その他の構成及び仕様は実質的に同じである。具体的には、実施例17の前記差分ΔE*は+2.5MPaであり、つまり、マウント部材10の複素弾性率E*1がインナーライナー7の複素弾性率E*2よりも2.5Mpa大きい。しかしながら、実施例17のノイズ評価値は、実施例16のノイズ評価値よりも低い。このことから、マウント部材10に対してインナーライナー7が柔軟になり過ぎると、車両走行時に生じるノイズの抑制効果が低下することが理解できる。したがって、前記差分ΔE*は、2.5MPa未満であることが好ましい。
以上説明した本開示の実施形態は、以下に記す各開示事項(1)から(15)を含む。
本開示(1)は、タイヤ表面を構成するトレッド部と、タイヤ内面を構成するインナーライナーと、前記タイヤ内面に設けられ、電気機器を装着可能なマウント部材と、を備えるタイヤである。前記タイヤにおいて、前記マウント部材を構成する第1ゴム組成物の70℃における複素弾性率E*1は測定温度70℃、初期歪み5%、動歪み±1%、周波数10Hz、及び伸長変形モードの測定条件の下で測定され、前記インナーライナーを構成する第2ゴム組成物の70℃における複素弾性率E*2は前記測定条件の下で測定される。前記第1ゴム組成物の70℃における前記複素弾性率E*1は、前記第2ゴム組成物の70℃における前記複素弾性率E*2よりも大きい。
このように前記タイヤが構成されているため、インナーライナーの硬度をマウント部材の硬度に比べて低くすることができ、インナーライナーをマウント部材よりも柔軟な粘弾性体とすることができる。これにより、マウント部材に電気機器が装着された前記タイヤにおいて、車両走行時にトレッド部からマウント部材及び電気機器に伝達される振動がインナーライナーによって減衰され、また、マウント部材及び電気機器からトレッド部に伝達される振動がインナーライナーによって減衰される。その結果、マウント部材及び電気機器の荷重に起因して生じるノイズを抑制することができる。
本開示(2)は、本開示(1)のタイヤにおいて、前記第1ゴム組成物の70℃における前記複素弾性率E*1と、前記第2ゴム組成物の70℃における前記複素弾性率E*2との差は、2.5MPa未満である。
マウント部材に対してインナーライナーの硬度が低すぎると、トレッド部から伝達された振動がインナーライナーで減衰せずに却って増幅してしまい、車両走行時に生じるノイズを助長させるおそれがある。また、マウント部材に装着された電気機器が振動によって故障するおそれがある。このため、複素弾性率E*の差は、前記ノイズ抑制効果が生じうる範囲内であることが好ましく、具体的には、2.5未満であることが好ましい。
本開示(3)は、本開示(1)又は(2)のタイヤにおいて、前記インナーライナーを構成する前記第2ゴム組成物の70℃における損失正接tanδは、0.26以下である。ここで、前記第2ゴム組成物の70℃における損失正接tanδは、測定温度70℃、初期歪み10%、動歪み±2.5%、周波数10Hz、及び伸長変形モードの測定条件の下で測定される。
本開示(4)は、本開示(1)又は(2)のタイヤにおいて、前記インナーライナーを構成する前記第2ゴム組成物の70℃における損失正接tanδは、0.13以下である。ここで、前記第2ゴム組成物の70℃における損失正接tanδは、測定温度70℃、初期歪み10%、動歪み±2.5%、周波数10Hz、及び伸長変形モードの測定条件の下で測定される。
本開示(5)は、本開示(1)から(4)のいずれかのタイヤにおいて、前記インナーライナーよりも前記トレッド部側に配置されたカーカス部を更に備える。この構成において、前記カーカス部における内部側の面から前記インナーライナーの内部側の面に至る厚さは0.6mm以上である。
本開示(6)は、本開示(1)から(5)のいずれかのタイヤにおいて、前記マウント部材の前記第1ゴム組成物のガラス転移温度T1は、周波数10Hz、初期歪10%、振幅±0.5%、及び昇温速度2℃/minの測定条件の下で測定される前記第1ゴム組成物の損失正接tanδの温度分布曲線におけるピーク位置に対応するピーク温度である。前記インナーライナーの前記第2ゴム組成物のガラス転移温度T2は、周波数10Hz、初期歪10%、振幅±0.5%、及び昇温速度2℃/minの測定条件の下で測定される前記第2ゴム組成物の損失正接tanδの温度分布曲線におけるピーク位置に対応するピーク温度である。前記ガラス転移温度T1は、前記ガラス転移温度T2よりも低い。
本開示(7)は、本開示(6)のタイヤにおいて、前記ガラス転移温度T1と前記ガラス転移温度T2との差は、0℃よりも大きく20℃以下の範囲内である。
本開示(8)は、本開示(1)から(7)のいずれかのタイヤにおいて、前記マウント部材は、前記タイヤ内面において前記トレッド部の幅方向中央部に対応する位置に配置されている。
本開示(9)は、本開示(1)から(8)のいずれかのタイヤにおいて、前記トレッド部は、前記タイヤ表面に形成された凹溝によって区分された陸部を有し、前記マウント部材は、前記タイヤ内面において前記陸部に対応する位置に配置されている。
本開示(10)は、本開示(1)から(9)のいずれかのタイヤにおいて、前記マウント部材は、前記タイヤ内面に固定される取付座部と、前記電気機器を着脱可能に取り付ける本体部とを有する。
本開示(11)は、本開示(1)から(10)のいずれかのタイヤにおいて、前記マウント部材は、前記タイヤ内面に溶着されている。
本開示(12)は、本開示(1)から(11)のいずれかのタイヤにおいて、前記タイヤ内面に複数の前記マウント部材が設けられており、前記複数のマウント部材は、前記タイヤ内面において、前記タイヤの周方向に沿って等間隔に配置されている。
本開示(13)は、本開示(1)から(12)のいずれかのタイヤにおいて、前記電気機器は、センサー、無線通信中継器、又は信号発信機である。
本開示(14)は、本開示(1)から(13)のいずれかのタイヤであって、乗用車用のタイヤである。
本開示(15)は、本開示(1)から(14)のいずれかのタイヤであって、空気入りタイヤである。