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JP7764991B1 - 前駆体の製造方法および正極材の製造方法 - Google Patents

前駆体の製造方法および正極材の製造方法

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JP7764991B1
JP7764991B1 JP2025549686A JP2025549686A JP7764991B1 JP 7764991 B1 JP7764991 B1 JP 7764991B1 JP 2025549686 A JP2025549686 A JP 2025549686A JP 2025549686 A JP2025549686 A JP 2025549686A JP 7764991 B1 JP7764991 B1 JP 7764991B1
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瞬 岩田
諒介 長岡
東洋司 山口
雄太 日野
陽太郎 井上
克則 ▲高▼橋
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JFE Steel Corp
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Abstract

NiおよびCoからなる群から選ばれる少なくとも1種ならびにMnである有価元素と銅および鉄である不純物元素とを含有する酸化物に、還元剤を添加して、混合酸化物を得る。混合酸化物を加熱することにより酸化物を還元して金属を得る。金属を酸液に接触させて有価元素および不純物元素を含有する浸出液を得る。浸出液に硫化剤を添加して銅を銅硫化物として沈殿させ、銅除去溶液を得る。銅除去溶液に酸化剤を添加して鉄を鉄水酸化物として沈殿させ、有価元素を含有する有価元素溶液を得る。有価元素溶液と錯化剤とアルカリ性水溶液とを反応槽液に導入して、有価元素を含有する沈殿物を得る。還元剤が、C系還元剤、Si系還元剤およびAl系還元剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し、還元剤の添加量Rが、特定の式(1)を満たす。

Description

本発明は、前駆体の製造方法および正極材の製造方法に関する。
近年、電気自動車の普及により、リチウムイオン電池の需要が急速に増加している。
特に、昨今のCO発生量削減の観点から、化石燃料を使用しない電気自動車の需要は、今後は更に拡大すると思われ、それに伴うリチウムイオン電池の需要も今後は更に増加することが予想される。
一般に、リチウムイオン電池の正極材は、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)等を含有する酸化物(複合酸化物)からなる。この複合酸化物の具体例としては、LiNiO、LiCoO、LiMnOなどが挙げられる。
Ni、Co、Mnなどの金属元素は、世界的に見ても豊富にあるとは言えない。
このため、廃リチウムイオン電池の正極材から、これらの金属元素(有価元素)を回収することは、資源を有効利用する観点から、非常に有益である。
ここで、「廃リチウムイオン電池」とは、リチウムイオン電池の廃品(使用済み品);リチウムイオン電池の不良品(リチウムイオン電池の製造過程などで発生したもの);等を指す。
リチウムイオン電池は、正極材、負極材、セパレータ等の部材の組み合わせにより構成され、更に、電解液なども含む。
このため、廃リチウムイオン電池の正極材から有価元素を回収するに際しては、回収に先立って、電解液の除去、粉砕、破砕などの事前処理を実施する。
このような事前処理を経て、廃リチウムイオン電池から正極材を分離し、その後、分離した正極材から有価元素を回収する。
有価元素を回収する際の処理としては、正極材を還元剤とともに加熱して有価元素を還元生成させる乾式処理(例えば、特許文献1)が挙げられる。
特開2021-95628号公報
乾式処理では、複合酸化物(LiNiO、LiCoO、LiMnO)を還元することにより、有価元素(Ni、Co、Mn)を含有する金属のほか、スラグが生成する。
このとき、Mnを極力還元させないこと(Mnを金属に移行させないでスラグに残留させること)、ならびに、NiおよびCoを選択的に金属に移行させて回収することが要求される場合がある。
また、乾式処理により得られる金属は、Ni、Coなどの有価元素のほかに、不純物元素を含む場合がある。不純物元素としては、廃リチウムイオン電池に由来する銅(Cu)および鉄(Fe)が挙げられる。
乾式処理により得られる金属を、リチウムイオン電池の正極材として再利用する場合、この金属に不純物元素(CuおよびFe)が含まれていると、電池性能を悪化させる可能性がある。このため、不純物元素は、できる限り除去することが望ましい。
本発明は、以上の点を鑑みてなされたものであり、リチウムイオン電池に用いる正極材およびその前駆体を製造する新規な方法を提供することを目的とする。
より詳細には、廃リチウムイオン電池の正極材などの酸化物から、不純物元素を除去しつつNi等の有価元素を回収し、回収した有価元素を含有する前駆体および正極材を製造する新規な方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、下記構成を採用することにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[13]を提供する。
[1]リチウムイオン電池に用いる正極材の前駆体を製造する方法であって、ニッケルおよびコバルトからなる群から選ばれる少なくとも1種ならびにマンガンである有価元素と、銅および鉄である不純物元素とを含有する酸化物に、還元剤を添加して、混合酸化物を得て、上記混合酸化物を加熱することにより、上記酸化物を還元して、金属を得て、上記金属を酸液に接触させて、上記有価元素および上記不純物元素を含有する浸出液を得て、上記浸出液に硫化剤を添加して、銅を銅硫化物として沈殿させ、銅が除去された上記浸出液を銅除去溶液として得て、上記銅除去溶液に酸化剤を添加して、鉄を鉄水酸化物として沈殿させ、鉄が除去された上記銅除去溶液を、上記有価元素を含有する有価元素溶液として得て、上記有価元素溶液と錯化剤とアルカリ性水溶液とを反応槽液に導入して、上記有価元素を含有する沈殿物を得て、上記還元剤が、炭素を含有するC系還元剤、ケイ素を含有するSi系還元剤およびアルミニウムを含有するAl系還元剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し、上記還元剤の添加量Rが、下記式(1)を満たす、前駆体の製造方法。
(0.30a-0.15b+0.60)×[Ni]≦R≦(0.33a-0.17b+0.67)×[Ni]+(0.33a-0.17b+0.67)×[Co]+(0.23a-0.12b+0.47)×[Mn]・・・(1)
ただし、上記式(1)中、
R:上記還元剤の添加量(単位:モル部)
[Ni]:上記酸化物のニッケル含有量(単位:モル部)
[Co]:上記酸化物のコバルト含有量(単位:モル部)
[Mn]:上記酸化物のマンガン含有量(単位:モル部)
a:上記還元剤の合計の添加量(単位:モル部)に対する、上記還元剤における上記C系還元剤の含有量(単位:モル部)のモル比
b:上記還元剤の合計の添加量(単位:モル部)に対する、上記還元剤における上記Si系還元剤の含有量(単位:モル部)のモル比
である。
[2]上記酸化物が、廃リチウムイオン電池から得られる、上記[1]に記載の前駆体の製造方法。
[3]上記混合酸化物を加熱する際の温度が、1400℃以上である、上記[1]または[2]に記載の前駆体の製造方法。
[4]上記混合酸化物を加熱することにより得られる上記金属が、上記有価元素および上記不純物元素を含有する、上記[1]~[3]のいずれかに記載の前駆体の製造方法。
[5]上記金属を、粉末化してから、上記酸液に接触させる、上記[1]~[4]のいずれかに記載の前駆体の製造方法。
[6]上記酸液は、酸および酸液用酸化剤を含有し、上記酸液用酸化剤の含有量が、上記酸に対して、0.5体積%以上である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の前駆体の製造方法。
[7]上記酸液用酸化剤が、過酸化水素である、上記[6]に記載の前駆体の製造方法。
[8]上記硫化剤の添加量が、上記浸出液が含有する銅に対して、1.0当量以上であり、上記銅硫化物を沈殿させる際に、上記硫化剤を添加した上記浸出液のpHを3.0以下にする、上記[1]~[7]のいずれかに記載の前駆体の製造方法。
[9]上記酸化剤が、空気およびオゾンからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化剤A、または、過酸化水素、次亜塩素酸および過マンガン酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化剤Bであり、上記酸化剤Aの添加量が、上記銅除去溶液に対して、0.1vvm以上であり、上記酸化剤Bの添加量が、上記銅除去溶液に対して、0.005体積%以上であり、上記鉄水酸化物を沈殿させる際に、上記酸化剤を添加した上記銅除去溶液のpHを3.0以上7.0以下にする、上記[1]~[8]のいずれかに記載の前駆体の製造方法。
[10]上記酸化剤を添加した上記銅除去溶液の温度が、10℃以上である、上記[9]に記載の前駆体の製造方法。
[11]上記アルカリ性水溶液が、水酸化ナトリウム水溶液であり、上記錯化剤が、アンモニアおよびアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のアンモニウム源である、上記[1]~[10]のいずれかに記載の前駆体の製造方法。
[12]リチウムイオン電池に用いる正極材を製造する方法であって、上記[1]~[11]のいずれかに記載の前駆体の製造方法によって得られた前駆体と、リチウム含有化合物とを混合し、得られた混合物を焼成して、上記有価元素およびリチウムを含有する焼成物を得る、正極材の製造方法。
[13]上記リチウム含有化合物が、水酸化リチウムおよび炭酸リチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記[12]に記載の正極材の製造方法。
本発明によれば、前駆体および正極材を製造する新規な方法を提供できる。
有価元素の回収方法の一例を示すフローチャートである。 前駆体および正極材を製造する流れの一例を示すフローチャートである。 CuおよびNiの電位-pH図(S-HO系)である。 FeおよびNiの電位-pH図(O-HO系)である。
[前駆体および正極材の製造方法]
以下、リチウムイオン電池に用いる正極材を製造する方法(正極材の製造方法)について説明する。以下の説明は、正極材に用いる前駆体を製造する方法(前駆体の製造方法)の説明も兼ねる。
まず、図1Aに示すように、廃リチウムイオン電池の正極材などの酸化物から有価元素を回収する。すなわち、酸化物に対して、乾式処理および湿式処理を施すことにより、有価元素を含有する有価元素溶液を得る。
その後、図1Bに示すように、得られた有価元素溶液を用いて、前駆体を製造し、次いで、正極材を製造する。
図1Aは、有価元素の回収方法の一例を示すフローチャートである。
図1Aに基づいて、有価元素の回収方法を概略的に説明する。
乾式処理では、まず、酸化物(Ni、Co、Mn、Cu、Fe)に、後述する還元剤を後述する添加量で添加して、混合酸化物を得る。
次いで、得られた混合酸化物を加熱することにより、酸化物を還元して、金属(Ni、Co、Cu、Fe)およびスラグ(Mn)を得る。適宜、両者は分離される。
湿式処理の前に、得られた金属を粉末化して、金属粉末(Ni、Co、Cu、Fe)を得ることが好ましい。
湿式処理では、まず、金属(金属粉末)を酸液に接触させて、浸出液(Ni、Co、Cu、Fe)および浸出残渣を得る。適宜、両者は分離される。
次いで、得られた浸出液に硫化剤を添加して、銅硫化物(Cu)を沈殿させて、銅除去溶液(Ni、Co、Fe)を得る。適宜、両者は分離される。
その後、銅除去溶液に酸化剤を添加して、鉄水酸化物(Fe)を沈殿させて、有価元素溶液(Ni、Co)を得る。
このようにして、酸化物から、不純物元素(Cu、Fe)を除去しつつ、有価元素であるNiおよびCoを、同じく有価元素であるMnとは区別して、選択的に回収できる。
廃リチウムイオン電池の正極材(酸化物)から、有価元素を、リチウムイオン電池の原料として再利用できる程度の高純度で、容易に回収できる。
次に、有価元素の回収方法を、より詳細に説明する。
〈還元対象(酸化物)〉
還元対象は、ニッケル(Ni)およびコバルト(Co)からなる群から得られる少なくとも1種ならびにマンガン(Mn)である有価元素と、銅(Cu)および鉄(Fe)である不純物元素とを含有する酸化物であり、具体的には、例えば、廃リチウムイオン電池の正極材である。
廃リチウムイオン電池に対して、電解液の除去、破砕、粉砕、選別などの事前処理を施すことによって、正極材(酸化物)を得る。
〈還元剤の添加(混合酸化物の取得)〉
まず、還元対象である酸化物に、還元剤を添加して、酸化物と還元剤との混合物である混合酸化物を得る。
《還元剤》
乾式処理における還元剤として、炭素を含有するC系還元剤、ケイ素を含有するSi系還元剤およびアルミニウムを含有するAl系還元剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いる。
C系還元剤としては、例えば、黒鉛、石炭、コークスなどが挙げられる。
Si系還元剤としては、例えば、フェロシリコン、金属シリコン、シリコンスラッジなどが挙げられる。
Al系還元剤としては、例えば、金属アルミニウム、アルミスラッジ、アルミドロスなどが挙げられる。
《還元剤の添加量R》
後述するように、酸化物と還元剤との混合物である混合酸化物を加熱することにより、酸化物が還元されて、金属(生成金属)およびスラグ(生成スラグ)が得られる。
このとき、還元剤の添加量として、下記式(1)を満たす添加量Rを採用する。これにより、Mnの還元が抑制されて、Mn含有量が低い生成金属が得られる。また、NiおよびCo(特に、Ni)については、高い還元率が得られる。
詳細は、後述する試験Aを参照されたい。
(0.30a-0.15b+0.60)×[Ni]≦R≦(0.33a-0.17b+0.67)×[Ni]+(0.33a-0.17b+0.67)×[Co]+(0.23a-0.12b+0.47)×[Mn]・・・(1)
ただし、上記式(1)中、
R:還元剤の添加量(単位:モル部)
[Ni]:酸化物のニッケル含有量(単位:モル部)
[Co]:酸化物のコバルト含有量(単位:モル部)
[Mn]:酸化物のマンガン含有量(単位:モル部)
a:還元剤の合計の添加量(単位:モル部)に対する、還元剤におけるC系還元剤の含有量(単位:モル部)のモル比
b:還元剤の合計の添加量(単位:モル部)に対する、還元剤における前記Si系還元剤の含有量(単位:モル部)のモル比
還元剤の添加量を決定する際には、まず、還元対象である酸化物におけるNiO、CoOおよびMnOの含有量を求める。
具体的には、還元対象(酸化物)におけるNi、CoおよびMnの含有量を測定し、それぞれ、還元対象(酸化物)におけるNiO、CoOおよびMnOの含有量とみなす。
Ni、CoおよびMnの含有量は、エネルギー分散型X線分析装置(EDX)を用いて測定する。蛍光X線(XRF)分析を用いてもよい。
〈混合酸化物の加熱(金属の取得)〉
次に、混合酸化物(酸化物と還元剤との混合物)を加熱する。これにより、酸化物が還元される。
なお、加熱に際しては、還元剤とは別に、CaO、SiOなどのフラックスを添加してもよい。すなわち、混合酸化物は、更に、フラックスを含有していてもよい。
混合酸化物の加熱に用いる設備としては、特に限定されず、例えば、電気炉、抵抗炉、高周波溶解炉、低周波溶解炉、ロータリーキルン、竪型炉、製鋼炉などの従来公知の設備が挙げられる。
《加熱温度》
混合酸化物を加熱する際の温度(加熱温度)は、ニッケル酸化物、コバルト酸化物およびマンガン酸化物を含有する酸化物(正極材)の融点以上であることが好ましい。
電気炉の加熱効率を考慮すると、加熱温度は、1400℃以上が好ましく、1450℃以上がより好ましく、1450℃以上が更に好ましい。
ところで、廃リチウムイオン電池の正極材は、リチウムを含み得る。例えば、炭酸リチウムは、上記温度範囲で加熱すると、融点以上となり、液状化するため、取り扱いが難しい場合がある。
しかし、正極材に含有されるリチウムは、酸化物であり、その融点は炭酸リチウムよりも500℃以上ほど高いため、その形態を保ったまま生成スラグに移行する。
このため、上述した液状化に起因する取り扱いの問題は生じない。
加熱温度が高くなるほど、還元反応速度が増加する。このため、加熱温度を高くすることにより、酸化物を還元する際の時間を短縮できる。
もっとも、加熱温度が高すぎると、NiおよびCoの揮発を招く場合がある。このため、加熱温度は、1600℃以下が好ましく、1550℃以下がより好ましい。
《加熱雰囲気》
混合酸化物を加熱する際の雰囲気(加熱雰囲気)としては、例えば、窒素ガス(N)雰囲気、アルゴンガス(Ar)雰囲気などの不活性雰囲気;一酸化炭素ガス(CO)雰囲気などの還元性雰囲気;等が好適に挙げられる。
《加熱時間》
混合酸化物を加熱する時間(加熱時間)は、還元不良(還元反応が不十分になること)を抑制しやすいという理由から、1時間以上が好ましく、2時間以上がより好ましく、3時間以上が更に好ましい。
上限は特に限定されないが、加熱時間は、6時間以下が好ましく、5時間以下がより好ましい。
《生成物(金属およびスラグ)》
還元対象である酸化物(正極材)を還元することにより、金属が生成する。すなわち、酸化物に含有される有価元素であるNiおよびCoは、金属として回収される。
なお、酸化物に含有されるMnの一部も、この金属として回収される場合がある。
酸化物の還元により得られる金属(「生成金属」ともいう)は、少なくとも、有価元素(Ni、Co)および不純物元素(Cu、Fe)を含有する合金である。
生成金属は、有価元素(Ni、Co)のうち1種のみを含有していてもよい。
酸化物(正極材)を還元することにより、金属のほか、更に、スラグが生成する。スラグ(「生成スラグ」ともいう)は、例えば、還元剤としてAl系還元剤を使用した場合、Alなどの酸化物を含有する。
そのほか、生成スラグは、生成金属に含まれなかった有価元素であるMnを、酸化物(例えば、MnO)の形態で含有する。
なお、湿式処理によって生成金属中からMnを分離することは、負荷が大きい。生成金属中にMnが混入することを抑制して、生成スラグ中にMnを留めておくことは、このような負荷を低減できるため、有益である。
〈金属とスラグとの分離〉
酸化物の還元によって得られる生成金属および生成スラグについては、後述するように、生成金属を粉末化する前に、両者を分離することが好ましい。分離の方法は、特に限定されず、公知の方法を採用できる。
〈金属の粉末化(金属粉末の取得)〉
次に、得られた生成金属を粉末化して、金属粉末を得ることが好ましい。
湿式処理では、後述するように、まず、生成金属に対して、酸液を用いた浸出を実施する。このとき、生成金属が、酸化物の還元により得られた状態のままでは、浸出効率が不十分となる場合がある。このため、酸液を用いた浸出を実施する前に、生成金属を粉末化することが好ましい。
金属粉末の粒径が小さいほど、浸出効率は良い。
もっとも、金属粉末の粒径が小さすぎると、ハンドリング性が悪化したり、爆発的な反応による危険性が増大したりする可能性もあることから、これらの点も考慮して、金属粉末の粒径を、適正な範囲に収める。
具体的には、例えば、金属粉末の粒径は、250~6000μmが好ましく、300~5000μmがより好ましい。
粒径は、レーザ回折・散乱法によって求める粒度分布における体積基準のメディアン径(積算値50%での粒径)である(以下、同様)。
生成金属を粉末化する方法としては、得られる金属粉末の粒径を適正な範囲に収めることができれば特に限定されず、例えば、ジョークラッシャー、振動ミルなどの粉砕装置を用いる方法;アトマイズ法;等が挙げられる。
〈金属と酸液との接触(浸出液の取得)〉
次に、金属(金属粉末)と酸液とを接触させて、有価元素(Ni、Co)および不純物元素(Cu、Fe)を浸出させる。すなわち、有価元素および不純物元素を含有する浸出液を得る。
有価元素および不純物元素が浸出した金属は、残渣(浸出残渣)となる。
金属と酸液とを接触させる方法としては、特に限定されないが、例えば、金属を酸液に浸漬させる方法;金属に酸液をスプレーする方法;等が挙げられる。
《固液比(金属/酸液)》
金属に接触させる酸液の量が少なすぎる(酸液の量に対して金属の量が多すぎる)と、いったん酸液に溶け出した有価元素などの金属元素の一部が飽和溶解度に達して析出し、浸出率が不十分となり得る。
このため、液体である酸液の体積(単位:mL)に対する固体である金属の質量(単位:g)の割合(「固液比(金属/酸液)」ともいう)は、1/5以下が好ましく、1/7以下がより好ましく、1/10以下が更に好ましい。
なお、固液比(金属/酸液)が1/10であるとき、例えば、1gの金属を10mLの酸液に浸漬させる。
一方、固液比(金属/酸液)は、1/50以上が好ましく、1/35以上がより好ましく、1/20以上が更に好ましい。
《酸液》
金属に接触させる酸液は、少なくとも酸を含有する。
(酸)
酸液に用いる酸としては、硫酸、塩酸、硝酸などの無機酸が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
廃リチウムイオン電池をリサイクルして再びリチウムイオン電池の原料として用いる「バッテリー・トゥ・バッテリー」を実現する観点からは、酸として硫酸を用いることが好ましい。これは、リチウムイオン電池の正極材に利用しやすい硫酸塩の形態で有価元素を得ることができるからである。
硫酸中に塩化物を含有させ、これを酸として用いてもよい。
((酸濃度))
酸液に用いる酸(例えば、硫酸)の濃度(酸濃度)は、浸出の速度を上げることができるという理由から、0.1モル/L以上が好ましく、0.5モル/L以上がより好ましく、1.0モル/L以上が更に好ましい。
上限は特に限定されないが、酸濃度は、8.0モル/L以下が好ましく、6.0モル/L以下がより好ましく、4.0モル/L以下が更に好ましく、3.0モル/L以下が特に好ましい。
(酸液用酸化剤)
本発明者らが検討したところ、固液比(金属/酸液)および酸濃度が上述した範囲内であっても、浸出が不十分な場合があることが分かった。
このため、浸出の促進剤として、酸液に酸化剤(酸液用酸化剤)を添加することが好ましい。酸液用酸化剤としては、過酸化水素、次亜塩素酸、過マンガン酸カリウム、オゾンなどが挙げられる。これらのうち、次亜塩素酸および過マンガン酸カリウムを用いると、塩素、カリウム、マンガンなどに対する煩雑な後処理が必要となる可能性があることから、過酸化水素およびオゾンが好ましい。
((酸液用酸化剤の含有量))
浸出を十分に実施する観点から、酸液における酸液用酸化剤(例えば過酸化水素)の含有量は、酸(例えば硫酸)に対して、0.5体積%以上が好ましく、1.0体積%以上がより好ましく、3.0体積%以上が更に好ましく、5.0体積%以上がより更に好ましく、6.0体積%以上が特に好ましく、6.9体積%以上が最も好ましい。
一方、酸液における酸液用酸化剤(例えば過酸化水素)の含有量は、酸(例えば硫酸)に対して、15.0体積%以下が好ましく、13.0体積%以下がより好ましく、10.0体積%以下が更に好ましい。
《接触時間》
金属と酸液とを接触させる時間(接触時間)は、浸出を十分に実施するため、0.5時間以上が好ましく、0.8時間以上がより好ましく、1.0時間以上が更に好ましい。
一方、生産性の観点から、接触時間は、3.0時間以下が好ましく、1.5時間以下がより好ましい。
〈浸出液と浸出残渣との分離〉
浸出液および浸出残渣については、後述するように、浸出液に硫化剤を添加する前に、両者を分離することが好ましい。分離の方法は、特に限定されず、公知の固液分離方法を採用できる。
〈硫化剤の添加(銅除去溶液の取得)〉
次に、有価元素(Ni、Co)および不純物元素(Cu、Fe)を含有する浸出液に硫化剤を添加して、不純物元素である銅(Cu)を銅硫化物として沈殿させる。こうして、選択的に銅(Cu)が除去された浸出液を、銅除去溶液として得る。
図2は、銅(Cu)およびニッケル(Ni)の電位-pH図(S-HO系)である。図2では、銅(Cu)-硫黄(S)-水(HO)系の電位-pH図上に、溶解度を加味した銅(Cu)およびニッケル(Ni)の酸化物(水酸化物)または硫化物の沈殿が形成する領域を示している。
なお、コバルトはニッケルと同様の傾向で沈殿するため、図2ではコバルトの図示を省略している。
図2に示すように、pHが3.0以下であり、かつ、酸化還元電位が低い領域においては、銅(Cu)が選択的に沈殿する。図2には図示していないが、この領域では、銅は硫化銅(II)(CuS)として沈殿する。このことを利用して、浸出液を低pHかつ還元性にすることによって、浸出液に含まれる銅(Cu)を、硫化銅(II)として沈殿させて、選択的に除去する。すなわち、銅(Cu)が除去された浸出液である銅除去溶液を得る。
《硫化剤》
浸出液に添加する硫化剤としては、硫黄(S)、硫化水素(HS)、硫化水素ナトリウム(NaSH)、硫化ナトリウム(NaS)などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、取り扱い性の観点からは、有毒ガスである硫化水素よりも、固体または溶液として取り扱える硫黄、硫化水素ナトリウムおよび硫化ナトリウムの方が好ましい。
ただし、いずれの場合も、硫化反応によって硫化水素ガスが発生する場合があるので、実施の際は注意が必要である。
なお、硫化剤を添加した浸出液の温度(硫化温度)は、特に限定されず、例えば、室温でよい。
(硫化剤の添加量)
浸出液に含まれる銅を十分に除去する観点から、硫化剤の添加量は、浸出液が含有する銅(Cu)に対して、1.0当量以上が好ましく、1.5当量以上がより好ましく、2.0当量以上が更に好ましい。
一方、硫化剤を過剰に添加すると、有価元素(Ni、Coなど)の硫化物(沈殿)の量が多くなり、得られる銅除去溶液中に残したい有価元素の量が低下する可能性がある。このような観点からは、硫化剤の添加量は、浸出液が含有する銅(Cu)に対して、3.0当量以下が好ましく、2.5当量以下がより好ましく、2.0当量以下が更に好ましい。
例えば、1.0当量の硫化水素ナトリウム(NaSH)を硫化剤として用いて、硫化銅(II)(CuS)を生成させる場合、浸出液に含まれる1モルの銅(Cu)に対して、1モルの硫化水素ナトリウム(NaSH)を用いる。
《硫化pH》
浸出液に硫化剤を添加して銅硫化物を沈殿させる際、硫化剤を添加した浸出液のpH(硫化pH)が高いと、銅除去溶液に残したい有価元素の硫化物(沈殿)の量が多くなる可能性がある。このため、硫化pHは、3.0以下が好ましく、2.0以下がより好ましく、1.0以下が更に好ましく、0(ゼロ)が特に好ましい。
硫化pHは、例えば、浸出液にpH調整剤を添加することにより調整する。pH調整剤としては、特に限定されず、硫酸、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
《硫化時間》
浸出液に含まれる銅を硫化剤と反応させて硫化する時間(硫化時間)は、0.1時間以上が好ましく、0.2時間以上がより好ましく、0.3時間以上が更に好ましい。
一方、生産性の観点から、硫化時間は、3.0時間以下が好ましく、2.0時間以下がより好ましく、1.0時間以下が更に好ましい。
〈銅硫化物と銅除去溶液との分離〉
銅硫化物および銅除去溶液については、後述するように、銅除去溶液に酸化剤を添加する前に、両者を分離することが好ましい。分離の方法は、特に限定されず、公知の固液分離方法を採用できる。
〈酸化剤の添加(有価元素溶液の取得)〉
次に、有価元素(Ni、Co)および鉄(Fe)を含有する銅除去溶液に酸化剤を添加して、不純物元素である鉄(Fe)を鉄水酸化物として沈殿させる。こうして、選択的に鉄(Fe)が除去された銅除去溶液を、有価元素(Ni、Co)を含有する有価元素溶液として得る。
図3は、鉄(Fe)およびニッケル(Ni)の電位-pH図(O-HO系)である。図3では、鉄(Fe)-酸素(O)-水(HO)系の電位-pH図上に、溶解度を加味した鉄(Fe)およびニッケル(Ni)の酸化物(水酸化物)の沈殿が形成する領域を示している。
なお、コバルトはニッケルと同様の傾向で沈殿するため、図3ではコバルトの図示を省略している。
図3に示すように、pHが3.0以上7.0以下であり、かつ、酸化還元電位の高い領域においては、鉄(Fe)が選択的に沈殿する。図3には図示していないが、この領域では、鉄は酸化水酸化鉄(III)(FeO(OH))として沈殿する。このことを利用して、銅除去溶液を酸性~中性かつ酸化性にすることによって、銅除去溶液に含まれる鉄(Fe)を、酸化水酸化鉄(III)として沈殿させて、選択的に除去する。すなわち、鉄(Fe)が除去された銅除去溶液である有価元素溶液を得る。
《酸化剤》
銅除去溶液に添加する酸化剤としては、例えば、空気およびオゾンからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化剤A;過酸化水素、次亜塩素酸および過マンガン酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化剤B;等が挙げられる。
これらのうち、次亜塩素酸および過マンガン酸カリウムを用いると、塩素、カリウム、マンガンなどに対する煩雑な後処理が必要となる可能性があることから、空気、過酸化水素およびオゾンが好ましい。
(酸化剤の添加量)
銅除去溶液に含まれる鉄を十分に酸化させる観点から、ガスである酸化剤A(空気、オゾン)の添加量は、銅除去溶液に対して、0.1vvm以上が好ましく、0.3vvm以上がより好ましく、0.5vvm以上が更に好ましい。
一方、酸化剤Aの添加量は、銅除去溶液に対して、5.0vvm以下が好ましく、4.0vvm以下がより好ましく、3.0vvm以下が更に好ましい。
なお、単位「vvm」は、液に対して毎分で何倍のガスが吹き込まれるかを体積比で表す単位であり、例えば、酸化剤Aの添加量が2vvmである場合は、1Lの銅除去溶液に対して、毎分で2Lの酸化剤Aを吹き込む。
同様の理由から、酸化剤B(過酸化水素、次亜塩素酸、過マンガン酸カリウム)の添加量は、銅除去溶液に対して、0.005体積%以上が好ましく、0.015体積%以上がより好ましく、0.050体積%以上が更に好ましく、0.100体積%以上が特に好ましい。
一方、酸化剤Bの添加量は、銅除去溶液に対して、1.500体積%以下が好ましく、1.000体積%以下がより好ましく、0.500体積%以下が更に好ましく、0.300体積%以下が特に好ましい。
《酸化温度》
本発明者らが検討したところ、上述した酸化剤を使用するのみでは、銅除去溶液に含まれる鉄の酸化が不十分な場合があることが分かった。
このため、酸化を促進する観点から、酸化剤を添加した銅除去溶液の温度(酸化温度)は、高くすることが好ましい。具体的には、酸化温度は、10℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、50℃以上が更に好ましい。
一方、酸化温度は、90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましい。
《酸化pH》
銅除去溶液に酸化剤を添加して鉄水酸化物を沈殿させる際、酸化剤を添加した銅除去溶液のpH(酸化pH)が低すぎると、沈殿が生成しにくい場合がある。このため、酸化pHは、3.0以上が好ましく、3.7以上がより好ましく、4.0以上が更に好ましく、4.5以上が特に好ましい。
一方、酸化pHが高すぎると、有価元素(Ni、Coなど)の共沈が増え、得られる有価元素溶液中に残したい有価元素の量が低下する懸念がある。このため、酸化pHは、7.0以下が好ましく、6.0以下がより好ましく、5.0以下が更に好ましい。
酸化pHは、例えば、銅除去溶液にpH調整剤を添加することにより調整する。pH調整剤としては、特に限定されず、硫酸、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
《酸化時間》
銅除去溶液に含まれる鉄を酸化剤と反応させる時間(酸化時間)は、0.3時間以上が好ましく、0.5時間以上がより好ましく、1.0時間以上が更に好ましい。
一方、生産性の観点からは、酸化時間は、3.0時間以下が好ましく、2.0時間以下がより好ましく、1.5時間以下が更に好ましい。
《酸化助剤》
鉄水酸化物の沈殿を生成させる反応の速度を向上させる観点から、上述した酸化剤と併せて、酸化助剤を使用してもよい。
酸化助剤としては、例えば、酸化第二鉄(Fe)および酸化水酸化鉄(III)(FeO(OH))からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、酸化助剤の形態は、粉末が好ましい。
酸化助剤によって反応の速度が向上する原理は、触媒作用である。具体的には、酸化助剤は、水溶液(銅除去溶液)中で負に帯電しやすいことから、Fe2+イオンを吸着し、Fe2+内部のeとの結びつきを弱める。これにより、Fe2+→Fe3++eという反応(Fe酸化反応)の活性化エネルギーが低下し、反応が促進されると考えられる。
(酸化助剤の添加量)
酸化助剤の添加量が多いほど反応表面積が増え、Fe酸化反応の速度が大きくなると考えられる。このため、酸化助剤の添加量は、銅除去溶液に対して、0.1g/L以上が好ましく、0.5g/L以上がより好ましく、1.0g/L以上が更に好ましい。
一方、酸化助剤の添加量が多すぎると、有価元素(Ni、Coなど)の共沈が増える懸念がある。このため、酸化助剤の添加量は、銅除去溶液に対して、40.0g/L以下が好ましく、10.0g/L以下がより好ましく、5.0g/L以下が更に好ましい。
(酸化助剤の粒径)
酸化助剤の粒径が小さすぎると反応表面積が過大となり、有価元素(Ni、Coなど)の共沈が増える懸念がある。このため、酸化助剤の粒径は、0.1μm以上が好ましく、0.3μm以上がより好ましく、0.5μm以上が更に好ましい。
一方、酸化助剤の粒径が大きすぎると、反応表面積が過小となり、所望する効果が得られない場合がある。このため、酸化助剤の粒径は、3.0μm以下が好ましく、2.0μm以下がより好ましく、1.0μm以下が更に好ましい。
〈鉄水酸化物と有価元素溶液との分離〉
鉄水酸化物および有価元素溶液については、両者を分離することが好ましい。分離の方法は、特に限定されず、公知の固液分離方法を採用できる。
このようにして得られた有価元素溶液中の有価元素は、例えば、リチウムイオン電池の正極材として利用できる。
〈有価元素沈殿物の取得〉
図1Bは、前駆体を製造する流れの一例を示すフローチャートである。
次に、上述した有価元素の回収方法によって得られた有価元素溶液と、錯化剤と、アルカリ性水溶液とを、反応槽液に導入(滴下)して、いわゆる共沈法によって、図1Bに示すように、有価元素を含有する沈殿物(有価元素沈殿物)を得る。
有価元素沈殿物は、具体的には、例えば、有価元素を含有する複合水酸化物、および、有価元素を含有する複合酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種である。共沈法を用いることにより、有価元素(Ni、Co、Mn)を原子レベルで均一に分散できる。
得られた有価元素沈殿物を、反応槽液からろ別し、必要に応じて水洗および乾燥することにより、正極材の前駆体が得られる。
有価元素沈殿物を得る際には、有価元素溶液に代えて、原料水溶液を用いてもよい。
原料水溶液は、有価元素溶液に、ニッケル源、コバルト源およびマンガン源からなる群から選ばれる少なくとも1種を添加することにより調製される。
原料水溶液において、ニッケル含有量とコバルト含有量とマンガン含有量とのモル比(Ni/Co/Mn)は、1/1/1、5/2/3、6/2/2、または、8/1/1が好ましい。
ニッケル源は、例えば、硫酸ニッケル、炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、塩化ニッケルなどのニッケル塩であり、硫酸ニッケル(NiSO)が好ましい。
コバルト源は、例えば、硫酸コバルト、炭酸コバルト、硝酸コバルト、酢酸コバルト、塩化コバルトなどのコバルト塩であり、硫酸コバルト(CoSO)が好ましい。
マンガン源は、例えば、硫酸マンガン、炭酸マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガン、塩化マンガンなどのマンガン塩であり、硫酸マンガン(MnSO)が好ましい。
ニッケル源、コバルト源およびマンガン源は、それぞれ、水溶液の態様で用いられることが好ましい。各水溶液において、ニッケル源、コバルト源およびマンガン源の濃度(含有量)は、それぞれ、上述したモル比となるように調整されることが好ましい。
原料水溶液のpHは、8以下が好ましく、7以下がより好ましく、6以下が更に好ましい。また、原料水溶液のpHは、例えば1以上であり、2以上が好ましい。
有価元素溶液(原料水溶液)の滴下速度は、1.0mL/min以上が好ましく、2.5mL/min以上がより好ましい。
また、有価元素溶液(原料水溶液)の滴下速度は、7.0mL/min以下が好ましく、5.5mL/min以下がより好ましい。
錯化剤としては、例えば、アンモニア(NH)およびアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のアンモニウム源が挙げられる。
アンモニウム塩としては、例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、炭酸アンモニウムなどが挙げられる。
アンモニウム源である錯化剤としては、アンモニアが好ましい。
アンモニウム源は、水溶液の態様が用いられることが好ましい。
水溶液において、アンモニウム源の濃度(含有量)は、後述するモル比となるように調整されることが好ましい。
錯化剤の滴下速度は、0.1mL/min以上が好ましく、0.3mL/min以上がより好ましい。また、錯化剤の滴下速度は、1.0mL/min以下が好ましく、0.8mL/min以下がより好ましい。
原料水溶液における有価元素(Ni、Co、Mn)の合計含有量に対する、アンモニウム源(錯化剤)のアンモニウム換算の含有量のモル比(NH/(Ni+Co+Mn))は、0超が好ましく、2以上がより好ましく、4以上が更に好ましい。また、このモル比(NH/(Ni+Co+Mn))20以下が好ましく、15以下がより好ましく、12以下が更に好ましい。
アルカリ性水溶液としては、水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液が好ましい。
反応槽液は、反応槽の内容液であり、例えば、純水に水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性水溶液を加えて調製される水溶液である。
反応槽液のpHは、9.0以上が好ましく、9.5以上がより好ましい。また、反応槽液のpHは、12.0以下が好ましく、11.5以下がより好ましい。
反応槽液の温度は、30℃以上が好ましく、35℃以上がより好ましい。また、反応槽液の温度は、60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。
沈殿物を得る際に、撹拌棒などを用いて、反応槽液を撹拌することが好ましい。
このとき、撹拌速度(撹拌羽の回転速度)が遅すぎると、均質な有価元素沈殿物が得られない場合がある。一方、撹拌速度が速すぎると、撹拌の際に、錯化剤(例えばアンモニア水溶液)が飛散して、錯化剤と原料水溶液との反応が不安定化し、やはり、均質な有価元素沈殿物が得られない場合がある。これらの場合、有価元素沈殿物を乾燥して得られる前駆体が均一に球状化せず、高いタップ密度を得にくい。
このため、高いタップ密度を得る観点からは、撹拌速度は、例えば150~550rpmであり、200~500rpmが好ましく、250~450rpmがより好ましく、300~400rpmが更に好ましい。
なお、撹拌速度は、途中で変更してもよい。例えば、遅い撹拌速度で開始し、反応槽内の液量の増加に伴って、より速い好適な撹拌速度に変更してもよい。
有価元素溶液(原料水溶液)および錯化剤の滴下中、アルカリ性水溶液を反応槽液に滴下することにより、反応槽液のpHを上記範囲内に制御することが好ましい。
得られた有価元素沈殿物は、反応槽液からろ別(固液分離)し、水洗した後、乾燥することが好ましい。
乾燥温度は、90℃以上が好ましく、95℃以上がより好ましい。また、乾燥温度は、120℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましい。
乾燥時間は、5h以上が好ましく、8h以上がより好ましい。また、乾燥時間は、15h以下が好ましく、12h以下がより好ましい。
上述したように、例えば、有価元素沈殿物を、例えば水洗および乾燥することにより、正極材の前駆体が得られる。
前駆体において、有価元素(Ni、Co、Mn)の合計含有量に対する、ニッケル含有量のモル比(Ni/(Ni+Co+Mn))は、0.3以上が好ましく、0.4以上がより好ましい。また、このモル比(Ni/(Ni+Co+Mn))は、1.0以下が好ましく、0.8以下がより好ましい。
前駆体のタップ密度は、0.8g/cm以上が好ましく、1.0g/cm以上がより好ましく、1.2g/cm以上が更に好ましい。また、前駆体のタップ密度は、1.8g/cm以下であってもよく、1.5g/cm以下であってもよい。
タップ密度は、静置した容積100cmの容器内に試料を入れ、タッピング装置を用いて、試料の体積がそれ以上減少しないところまでタップし、その後、試料の質量(単位:g)を試料の体積(単位:cm)で除することにより求める(以下、同様)。
前駆体の粒径D10は、3.0μm以上が好ましく、4.0μm以上がより好ましい。また、前駆体の粒径D10は、10.0μm以下が好ましく、8.0μm以下がより好ましい。
前駆体の粒径D50は、8.0μm以上が好ましく、9.0μm以上がより好ましい。また、前駆体の粒径D50は、16.0μm以下が好ましく、14.0μm以下がより好ましい。
前駆体の粒径D90は、12.0μm以上が好ましく、14.0μm以上がより好ましい。また、前駆体の粒径D90は、24.0μm以下が好ましく、22.0μm以下がより好ましい。
粒径D10、粒径D50および粒径D90は、それぞれ、レーザ回折・散乱法によって求める粒度分布の累積度数が体積百分率で10%、50%および90%の粒径である(以下、同様)。
〈焼成物の取得〉
図1Bは、正極材を製造する流れの一例を示すフローチャートである。
次に、得られた前駆体とリチウム含有化合物とを混合し、得られた混合物を焼成する。こうして、図1Bに示すように、有価元素およびリチウムを含有する焼成物(有価元素およびリチウムを含有する複合酸化物)を得る。
得られた焼成物を適宜解砕等することにより、リチウムイオン電池に用いる正極材が得られる。正極材は、正極活物質とも呼ばれる。
得られる正極材は、有価元素(Ni、Co、Mn)およびリチウム(Li)を含有する複合酸化物であり、更に、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)および硫黄(S)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素Aを含有していてもよい。
以下、正極材の製造方法における各工程を、より詳細に説明する。
まず、前駆体とリチウム含有化合物とを混合し、混合物を得る。
このとき、前駆体のニッケル換算の含有量と前駆体のコバルト換算の含有量と前駆体のマンガン換算の含有量との合計に対する、リチウム含有化合物のリチウム換算の含有量のモル比(Li/(Ni+Co+Mn))は、1.03超が好ましく、1.04以上がより好ましい。また、このモル比(Li/(Ni+Co+Mn))は、1.10未満が好ましく、1.08以下がより好ましい。
リチウム含有化合物としては、例えば、水酸化リチウムおよび炭酸リチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種が好適に挙げられる。
得られる正極材が上述した元素Aを含有する場合、混合物に、更に、元素Aを含有する化合物(以下、「A含有化合物」ともいう)を混合してもよい。
A含有化合物としては、例えば、元素Aの水酸化物、酸化物、塩化物、塩(例えば、硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩など)などが挙げられるが、これらに限定されない。
A含有化合物の混合量は、所望する組成に応じて、適宜調整される。
次に、混合により得られた混合物を焼成して、焼成物を得る。
このとき、混合物を、仮焼成し、その後、本焼成することが好ましい。
仮焼成の焼成温度は、400℃以上が好ましく、500℃以上がより好ましい。また、仮焼成の焼成温度は、700℃以下が好ましく、680℃以下がより好ましい。
本焼成の焼成温度は、800℃以上が好ましく、900℃以上がより好ましい。また、本焼成の焼成温度は、1000℃以下が好ましく、980℃以下がより好ましい。
仮焼成の雰囲気としては、酸化性雰囲気(例えば大気雰囲気)または非酸化性雰囲気が挙げられる。非酸化性雰囲気としては、例えば、酸素濃度が10体積%以下の雰囲気が挙げられ、その具体例としては、窒素雰囲気が挙げられる。
本焼成の雰囲気としては、酸化性雰囲気(例えば大気雰囲気)または非酸化性雰囲気が挙げられる。
仮焼成の焼成時間は、2h以上が好ましく、3h以上がより好ましい。また、仮焼成の焼成時間は、48h以下が好ましく、12h以下がより好ましい。
本焼成の焼成時間は、1h以上が好ましく、2h以上がより好ましく、3h以上が更に好ましい。また、本焼成の焼成時間は、30h以下が好ましく、15h以下がより好ましく、8h以下が更に好ましい。
焼成物は、水洗してもよい。水洗することにより、内部に入り込んでいない余分なリチウムが洗い流される。水洗後、適宜乾燥する。
焼成物は、更に、200℃以上800℃以下で焼成したり、解砕したりしてもよい。
こうして、リチウムイオン電池に用いる正極材が得られる。
正極材のタップ密度は、1.0g/cm以上が好ましく、1.5g/cm以上がより好ましい。また、正極材のタップ密度は、3.5g/cm以下であってもよく、3.0g/cm以下であってもよい。
正極材の粒径D10は、3.0μm以上が好ましく、4.0μm以上がより好ましい。また、正極材の粒径D10は、10.0μm以下が好ましく、8.0μm以下がより好ましい。
正極材の粒径D50は、8.0μm以上が好ましく、9.0μm以上がより好ましい。また、正極材の粒径D50は、16.0μm以下が好ましく、14.0μm以下がより好ましい。
正極材の粒径D90は、12.0μm以上が好ましく、14.0μm以上がより好ましい。また、正極材の粒径D90は、24.0μm以下が好ましく、22.0μm以下がより好ましい。
リチウムイオン電池は、一般的に、正極と、負極と、正極と負極との間に介在してリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体(例えば、非水電解液などの電解質)とを備え、更に、セパレータを備えていてもよい。
上述した得られた正極材を用いて公知の方法により正極を製造し、製造した正極を用いて、リチウムイオン電池を製造する。製造されたリチウムイオン電池は、放電容量およびサイクル特性に優れる。
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施例に限定されない。
[試験A]
試験Aでは、還元剤(C系還元剤、Si系還元剤およびAl系還元剤)の添加量Rについて検討した。
〈試験A1:C系還元剤〉
NiO、CoOおよびMnOを混合し、酸化物を調製した。調製した酸化物におけるNi、CoおよびMnの含有量(単位:モル部)を下記表1に示す。
還元剤として、コークスであるC系還元剤を準備した。
調製した酸化物に、C系還元剤を下記表1に示す添加量(単位:モル部)で添加して、混合酸化物を得た。得られた混合酸化物を成形型に充填し、外部から成形型に圧力を印加して、混合酸化物の成形体を得た。
次いで、成形体を、Ar雰囲気下で、温度を1450℃に維持した加熱器(電気抵抗炉)を用いて、3時間加熱することにより、酸化物を還元して、金属(生成金属)およびスラグ(生成スラグ)を得て、両者を分離した。
生成金属における各元素の含有量(単位:モル%)を、蛍光X線(XRF)分析により求めた。結果を下記表1に示す。
また、酸化物のNi含有量と、生成金属のNi含有量とから、Ni還元率(単位:%)を求めた。結果を下記表1に示す。
上記表1に示すように、No.1~6は、生成金属のMn含有量が9.0モル%以下であり、かつ、Ni還元率が85%以上であった。
これに対して、No.7は、Ni還元率が70%であった。
また、No.8~9は、生成金属のMn含有量が28.5モル%以上であった。
生成金属のMn含有量を低位にする観点からは、還元剤の添加量Rの上限値として、2.70モル部が導ける。この上限値は、[Ni]+[Co]+α(C)×[Mn]という式で表すことができ、α(C)=0.70が得られる。
還元剤の添加量Rが低すぎると、NiOが還元されずに、生成スラグにNiが含まれ、Ni還元率が低減する。具体的には、還元剤の添加量Rが0.70モル部である場合、Ni還元率は70%である(No.7)。
ここで、還元剤の添加量Rが0.90モル部以上である場合は、Ni還元率は85%以上である(No.1~6)。このことから、還元剤の添加量Rの下限値として、0.90モル部が導ける。この下限値は、β(C)×[Ni]という式で表すことができ、β(C)=0.90が得られる。
Niだけでなく、Coも効率良く回収するためには、還元剤の添加量Rは、2.00モル部以上が適切である。この場合、還元剤の添加量Rの下限値は、[Ni]+[Co]に相当する。
〈試験A2:Si系還元剤〉
上述した試験A1と同様にして、酸化物を調製した。調製した酸化物におけるNi、CoおよびMnの含有量(単位:モル部)を下記表2に示す。
還元剤として、金属シリコンであるSi系還元剤を準備した。
調製した酸化物に、Si系還元剤を下記表2に示す添加量(単位:モル部)で添加し、混合酸化物を得た。
得られた混合酸化物について、上述した試験A1と同様にして、成形および加熱を実施して、生成金属および生成スラグを得た。
次いで、上述した試験A1と同様にして、生成金属における各元素の含有量(単位:モル%)およびNi還元率(単位:%)を求めた。結果を下記表2に示す。
上記表2に示すように、No.10~15は、生成金属のMn含有量が8.9モル%以下であり、かつ、Ni還元率が86%以上であった。
これに対して、No.16は、Ni還元率が70%であった。
また、No.17~18は、生成金属のMn含有量が27.6モル%以上であった。
生成金属のMn含有量を低位にする観点からは、還元剤の添加量Rの上限値として、1.35モル部が導ける。この上限値は、0.50×[Ni]+0.50×[Co]+α(Si)×[Mn]という式で表すことができ、α(Si)=0.35が得られる。
還元剤の添加量Rが低すぎると、NiOが還元されずに、生成スラグにNiが含まれ、Ni還元率が低減する。具体的には、還元剤の添加量Rが0.35モル部である場合、Niの還元率が70%である(No.16)。
ここで、還元剤の添加量Rが0.45モル部以上である場合は、Ni還元率は86%以上である(No.10~15)。このことから、還元剤の添加量Rの下限値として、0.45モル部が導ける。この下限値は、β(Si)×[Ni]という式で表すことができ、β(Si)=0.45が得られる。
なお、還元剤の添加量Rが1.25モル部以上である場合、生成金属にSiが混合されるが、後に実施される湿式処理においてNiおよびCoを分離して回収する際には、回収の妨げにはならない。
Niだけでなく、Coも効率良く回収するためには、還元剤の添加量Rは、1.00モル部以上が適切である。この場合、還元剤の添加量Rの下限値は、0.50×[Ni]+0.50×[Co]に相当する。
〈試験A3:Al系還元剤〉
上述した試験A1と同様にして、酸化物を調製した。調製した酸化物におけるNi、CoおよびMnの含有量(単位:モル部)を下記表3に示す。
還元剤として、金属アルミニウムであるAl系還元剤を準備した。
調製した酸化物に、Al系還元剤を下記表3に示す添加量(単位:モル部)で添加して、混合酸化物を得た。
得られた混合酸化物について、上述した試験A1と同様にして、成形および加熱を実施して、生成金属および生成スラグを得た。
次いで、上述した試験A1と同様にして、生成金属における各元素の含有量(単位:モル%)およびNi還元率(単位:%)を求めた。結果を下記表3に示す。
上記表3に示すように、No.19~24は、生成金属のMn含有量が8.8モル%以下であり、かつ、Ni還元率が85%以上であった。
これに対して、No.25は、Ni還元率が70%であった。
また、No.26~27は、生成金属のMn含有量が27.1モル%以上であった。
生成金属のMn含有量を低位にする観点からは、還元剤の添加量Rの上限値として、1.80モル部が導ける。この上限値は、0.67×[Ni]+0.67×[Co]+α(Al)×[Mn]という式で表すことができ、α(Al)=0.47が得られる。
還元剤の添加量Rが低すぎると、NiOが還元されずに、生成スラグにNiが含まれ、Ni還元率が低減する。具体的には、還元剤の添加量Rが0.47モル部である場合、Ni還元率が70%である(No.25)。
ここで、還元剤の添加量Rが0.60モル部以上である場合は、Ni還元率は85%以上である(No.19~24)。このことから、還元剤の添加量Rの下限値として、0.60モル部が導ける。この下限値は、β(Al)×[Ni]という式で表すことができ、β(Al)=0.60が得られる。
Niだけでなく、Coも効率良く回収するためには、還元剤の添加量Rは、1.34モル部以上が適切である。この場合、還元剤の添加量Rの下限値は、0.67×[Ni]+0.67×[Co]に相当する。
なお、還元剤の添加量Rが1.67モル部以上である場合、生成金属にAlが混合されるが、後に実施される湿式処理においてNiおよびCoを分離して回収する際には、回収の妨げにはならない。
還元剤の添加量Rについて、上述した適正範囲は、還元剤がC系還元剤、Si系還元剤およびAl系還元剤の混合物である場合にも成立する。
すなわち、還元剤の添加量として、下記式(1)を満たす添加量Rを採用する。
(0.30a-0.15b+0.60)×[Ni]≦R≦(0.33a-0.17b+0.67)×[Ni]+(0.33a-0.17b+0.67)×[Co]+(0.23a-0.12b+0.47)×[Mn]・・・(1)
上記式(1)において、aは、還元剤の合計の添加量(単位:モル部)に対する、還元剤におけるC系還元剤の含有量(単位:モル部)のモル比(C系還元剤/還元剤の合計)である。
また、bは、還元剤の合計の添加量(単位:モル部)に対する、還元剤におけるSi系還元剤の含有量(単位:モル部)のモル比(Si系還元剤/還元剤の合計)である。
このような添加量Rを採用することにより、Mn含有量が低い生成金属が得られる。また、生成スラグに含まれるNiの量を低減して、高いNi還元率が得られる。
〈試験A4:C系還元剤、Si系還元剤およびAl系還元剤〉
上述した試験A1と同様にして、酸化物を調製した。調製した酸化物におけるNi、CoおよびMnの含有量(単位:モル部)を下記表4に示す。
準備した酸化物に、還元剤として、C系還元剤、Si系還元剤およびAl系還元剤の少なくともいずれかを、下記表4に示す添加量(単位:モル部)で添加して、混合酸化物を得た。
C系還元剤としては黒鉛を、Si系還元剤としては金属シリコンを、Al系還元剤としては金属アルミニウムを用いた。
得られた混合酸化物について、上述した試験A1と同様にして、成形および加熱を実施することにより、正極材(酸化物)を還元して、生成金属および生成スラグを得た。
次いで、上述した試験A1と同様にして、生成金属における各元素の含有量(単位:モル%)および各元素の還元率(単位:%)を求めた。結果を下記表4に示す。

上述したように、還元剤としてC系還元剤を用いる場合、還元剤の添加量(単位:モル部)として、0.90×[Ni]≦R≦[Ni]+[Co]+0.70×[Mn]を満たす添加量Rを採用する。ここでは、具体的には、0.216≦R≦0.376を満たす添加量Rを採用する。
上記表4に示すように、添加量Rが上記範囲を満たすNo.28~33は、Ni還元率が79%以上であり、かつ、生成金属のMn含有量が4.6モル%以下であった。
これに対して、添加量Rが上記範囲を下回るNo.34は、Ni還元率が69%であり、No.28~33よりも低位であった。
また、添加量Rが上記範囲を上回るNo.35~36は、生成金属のMn含有量が17.0%以上であり、No.28~33例よりも高位であった。
上述したように、還元剤としてSi系還元剤を用いる場合、還元剤の添加量(単位:モル部)として、0.45×[Ni]≦R≦0.5×[Ni]+0.5×[Co]+0.35×[Mn]を満たす添加量Rを採用する。ここでは、具体的には、0.108≦R≦0.188を満たす添加量Rを採用する。
上記表4に示すように、添加量Rが上記範囲を満たすNo.37~42は、Ni還元率が76%以上であり、かつ、生成金属のMn含有量が4.6モル%以下であった。
これに対して、添加量Rが上記範囲を下回るNo.43は、Ni還元率が70%であり、No.37~42よりも低位であった。
また、添加量Rが上記範囲を上回るNo.44~45は、生成金属のMn含有量が16.2モル%以上であり、No.37~42よりも高位であった。
上述したように、還元剤としてAl系還元剤を用いる場合、還元剤の添加量(単位:モル部)として、0.60×[Ni]≦R≦0.67×[Ni]+0.67×[Co]+0.47×[Mn]を満たす添加量Rを採用する。ここでは、具体的には、0.144≦R≦0.252を満たす添加量Rを採用する。
上記表4に示すように、添加量Rが上記範囲を満たすNo.46~51は、Ni還元率が77%以上であり、かつ、生成金属のMn含有量が4.4モル%以下であった。
これに対して、添加量Rが上記範囲を下回るNo.52は、Ni還元率が60%であり、No.46~51よりも低位であった。
また、添加量Rが上記範囲を上回るNo.53~54は、生成金属のMn含有量が12.0モル以上であり、No.46~51よりも高位であった。
更に、上記表4に示すように、還元剤がC系還元剤、Si系還元剤およびAl系還元剤の混合物であり、かつ、その添加量Rが上記式(1)を満たすNo.55~58は、生成金属のMn含有量が低く、かつ、高いNi還元率が得られた。
これに対して、添加量Rが上記式(1)を満たさないNo.59~60は、生成金属のMn含有量がNo.55~58よりも高位、または、Ni還元率がNo.55~58よりも低位であった。
これは、No.61~64とNo.65~66との対比結果、No.67~70とNo.71~72との対比結果、No.73~76とNo.77~78との対比結果においても、同様の傾向が見られた。
[試験B]
〈正極材の準備〉
廃リチウムイオン電池の正極材(酸化物)を準備した。
具体的には、廃リチウムイオン電池に対して、分解、放電、電解液の除去等の事前処理を実施して、正極材を分離した。なお、正極材は、破砕および粉砕によって粉末状としたものを用いた。
正極材(酸化物)におけるNi、CoおよびMnの含有量(単位:モル部)は、上述した試験A4で用いた酸化物と同様に、それぞれ、0.24モル部、0.08モル部および0.08モル部であった。
なお、正極材は、Ni、CoおよびMnのほか、更に、不純物元素として、CuおよびFeを含有していた。
〈還元剤の添加〉
準備した正極材(酸化物)に、還元剤として、C系還元剤、Si系還元剤およびAl系還元剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を、上述した試験A4のNo.28~30、37~39、46~48、55~56、61~62、67~68および73~74と同じ添加量R(単位:モル部)で添加して、混合酸化物を得た。
なお、C系還元剤としては黒鉛を、Si系還元剤としては金属シリコンを、Al系還元剤としては金属アルミニウムを用いた。
〈混合酸化物の加熱〉
得られた混合酸化物について、上述した試験A1と同様にして、成形および加熱を実施することにより、正極材(酸化物)を還元して、生成金属および生成スラグを得た。
次いで、上述した試験A1と同様にして、生成金属における各元素の含有量(単位:モル%)および各元素の還元率(単位:%)を求めた。その結果は、いずれも、上述した試験A4のNo.28~30、37~39、46~48、55~56、61~62、67~68および73~74と同様であった。
〈金属の粉末化〉
正極材の還元により得られた金属(生成金属)のうち、下記表5に示す組成を有する金属を、振動ミルを用いて粉末化して、金属粉末を得た。
得られた金属粉末の粒径は、1100μmであった。
〈金属と酸液との接触〉
硫酸(濃度:2.0モル/L)に対して、7.0体積%の過酸化水素を酸液用酸化剤として添加して、酸液を調製した。
調製した酸液に、下記表5に示す組成を有する金属(金属粉末)を、1/10の固液比(金属/酸液)で接触させた(接触時間:1.0時間)。具体的には、金属粉末を酸液に浸漬させた。こうして、浸出液および浸出残渣を得て、両者を分離した。
浸出液に含まれる各元素の濃度を、XRF(蛍光X線)分析を用いて求め、金属から浸出液への各元素の浸出率(単位:質量%)を算出した。結果を下記表5に示す。
下記表5に示すように、各元素とも浸出率は100質量%であり、金属から浸出液に各元素を全て浸出できた。
〈硫化剤の添加〉
得られた浸出液における各元素の含有量(単位:g/L)を、下記表6に示す。
得られた浸出液に、硫化剤として硫化水素ナトリウム(NaSH)を添加し、室温(25℃)下で攪拌した。硫化剤(硫化水素ナトリウム)の添加量は、浸出液が含有するCuに対して、2.0当量とした。
硫化剤を添加した浸出液のpH(硫化pH)を、pH調整剤として硫酸および水酸化ナトリウムを用いて、0(ゼロ)に調整した。
こうして、浸出液に含まれる銅(Cu)を、硫化剤と反応させて硫化し(硫化時間:20分間)、銅硫化物(硫化銅(II))として沈殿させた。その後、銅硫化物と、銅が除去された浸出液である銅除去溶液とを分離した。
銅除去溶液における各元素の含有量(単位:g/L)を、ICP-AES(誘導結合プラズマ発光分光分析)によって求めた。結果を下記表6に示す。
更に、各元素について、浸出液での含有量に対する、銅除去溶液での含有量の割合を、残留率a(単位:質量%)として求めた。結果を下記表6に示す。
下記表6に示すように、銅除去溶液におけるCuの含有量は非常に低いので、浸出液からCuを非常に高い効率で除去できたことが分かる。
〈酸化剤の添加〉
次に、まず、銅除去溶液を、水を用いて希釈した。希釈後の銅除去溶液における各元素の含有量(単位:g/L)を、下記表6に示す。希釈した理由は、予備実験において、下記表6に示す銅除去溶液と同様の組成を有するモデル溶液に酸化剤を添加したところ、沈殿が過多となり、攪拌が不可となる場合があったからである。
銅除去溶液(希釈済み)に、酸化剤として過酸化水素を添加し、攪拌した。酸化剤(過酸化水素)の添加量は、銅除去溶液(希釈済み)に対して、0.020体積%とした。
酸化剤を添加した銅除去溶液のpH(酸化pH)を、pH調整剤として硫酸および水酸化ナトリウムを用いて、4.5に調整した。酸化剤を添加した銅除去溶液の温度(酸化温度)は、70℃とし、これを維持した。
こうして、銅除去溶液に含まれる鉄(Fe)を、酸化剤と反応させて酸化し(酸化時間:1.0時間)、鉄水酸化物(酸化水酸化鉄(III))として沈殿させた。その後、鉄水酸化物と、鉄が除去された銅除去溶液である有価元素溶液とを分離した。
有価元素溶液における各元素の含有量(単位:g/L)を、ICP-AESによって求めた。結果を下記表6に示す。
更に、各元素について、銅除去溶液(希釈済み)での含有量に対する、有価元素溶液での含有量の割合を、残留率b(単位:質量%)として求めた。結果を下記表6に示す。
下記表6に示すように、有価元素溶液におけるFeの含有量は非常に低いので、銅除去溶液からFeを非常に高い効率で除去できたことが分かる。
更に、各元素について、残留率aおよび残留率bから、有価元素溶液における最終的な残留率を、総合残留率(単位:質量%)として求めた。結果を下記表6に示す。
下記表6に示す結果から、乾式処理を実施し、その後、乾式処理によって得られた金属を粉末化してから、湿式処理を実施することによって、有価元素(Ni、Co)を非常に高い純度で回収できたことが分かる。
[試験C]
〈正極材の準備~金属の粉末化〉
正極材の準備から金属の粉末化までは、試験Bと同じであるため、説明を省略する。
〈金属と酸液との接触〉
硫酸(濃度:2.0モル/L)に対して、下記表7に示す添加量(単位:体積%)で、酸液用酸化剤(過酸化水素)を添加して、複数の酸液を調製した。
酸液用酸化剤の添加量を変更した以外は、上述した試験Bと同様にして、金属(金属粉末)を酸液に接触させて、浸出液を得た。
更に、上述した試験Bと同様にして、金属から浸出液への各元素の浸出率(単位:質量%)を算出した。結果を下記表7に示す。
下記表7に示すように、酸液用酸化剤の添加量が増大するに伴い、浸出率は増大した。有価金属(Ni、Co)を十分に浸出するためには、酸液用酸化剤(過酸化水素)の添加量は、6.9体積%以上が好適であることが分かった。
もっとも、添加量が6.9体積%を超えると、浸出率が頭打ちとなる。このため、コストの観点からは、本実施例の範囲においては、酸液用酸化剤(過酸化水素)の添加量として、6.9体積%が好適であることが分かった。
〈硫化剤の添加〉
上記表6に示す浸出液に、下記表8に示す添加量(単位:当量)で、硫化剤として硫化水素ナトリウム(NaSH)を添加し、攪拌した。このとき、硫化pHを、下記表8に示す値に調整した。
硫化剤の添加量および硫化pHを変更した以外は、上述した試験Bと同様にして、浸出液に含まれる銅を銅硫化物として沈殿させて、銅除去溶液を得た。
更に、上述した試験Bと同様にして、得られた銅除去溶液におけるCu含有量(単位:mg/L)、ならびに、Ni残留率(単位:質量%)およびCo残留率(単位:質量%)を求めた。結果を下記表8に示す。
下記表8に示すように、銅を十分に除去するためには、硫化剤の添加量は、銅に対して2.0当量以上が好適であるが、硫化剤の添加量が増えるほど、Ni残留率およびCo残留率が低下することが分かった。
また、下記表8に示すように、硫化pHが大きくなるに従い、銅の除去が不十分となり、かつ、Ni残留率およびCo残留率が低下する傾向が見られた。
以上のことから、本実施例の範囲においては、硫化剤の添加量は2.0当量、硫化pHは0(ゼロ)が好適であることが分かった。
〈酸化剤の添加〉
まず、上記表8の試験例8-4において得られた銅除去溶液を5倍に希釈した。
次いで、銅除去溶液(希釈済み)に、下記表9に示す添加量(単位:体積%)で、酸化剤として過酸化水素を添加し、攪拌した。このとき、酸化pHおよび酸化温度(単位:℃)を、下記表9に示す値に調整した。
酸化剤の添加量、酸化pHおよび酸化温度を変更した以外は、上述した試験Bと同様にして、銅除去溶液に含まれる鉄を鉄水酸化物として沈殿させて、有価元素溶液を得た。
なお、試験Aおよび試験Bともに、酸化助剤は使用しなかった。
更に、上述した試験Bと同様にして、得られた有価元素溶液におけるFe含有量(単位:mg/L)、ならびに、Ni残留率(単位:質量%)およびCo残留率(単位:質量%)を求めた。結果を下記表9に示す。
下記表9に示すように、鉄を十分に除去するためには、酸化pHを6.0にする、または、酸化pHを4.5以上にし、かつ、酸化剤を添加することが好適であることが分かった。
また、下記表9に示すように、酸化pHが大きくなるに従い、鉄が効率的に除去される一方で、Ni残留率およびCo残留率が低下する傾向が見られた。
以上のことから、本実施例の範囲においては、酸化剤(過酸化水素)の添加量は0.030体積%、酸化pHは4.5~5.0の範囲が好適であることが分かった。
[試験D]
〈前駆体の製造〉
以下のようにして、前駆体1~前駆体5を製造した。
《前駆体1》
上記表9に記載された試験例9-4の有価元素溶液に、ニッケル源としての硫酸ニッケル(NiSO)と、コバルト源としての硫酸コバルト(CoSO)と、マンガン源としての硫酸マンガン(MnSO)とを添加した。こうして、有価元素(Ni、Co、Mn)の含有量が1.25mol/Lであり、かつ、Ni/Co/Mn(モル比)が6/2/2である原料水溶液を調製した。
反応槽に、0.35Lの純水と水酸化ナトリウム水溶液とアンモニア水溶液とを加えて、pH11.0の反応槽液を調製した。
反応槽液に、原料水溶液と、錯化剤としてのアンモニア水溶液(濃度:28質量%)と、アルカリ性水溶液として水酸化ナトリウム水溶液(濃度:48質量%)とを滴下して、沈殿物(有価元素沈殿物)を得た。より詳細には、反応槽液に、原料水溶液を4.0mL/minの速度で滴下しつつ、錯化剤を0.8mL/minの速度で滴下した。原料水溶液および錯化剤の滴下中に、アルカリ性水溶液も滴下して、反応槽液のpHを11.0に制御した。このとき、撹拌羽によって反応槽液を撹拌しつつ、反応槽液の温度を40℃に制御した。撹拌速度(撹拌羽の回転速度)は、当初は200rpmとしたが、反応槽内の液量が増加に伴い、350rpmに上昇させた。
次いで、得られた沈殿物をろ別してから水洗し、その後、乾燥機を用いて沈殿物を100℃で10h乾燥した。こうして、前駆体1を得た。
《前駆体2》
原料水溶液の組成をNi/Co/Mn(モル比)=5/2/3にした以外は、前駆体1と同様にして、前駆体2を得た。
《前駆体3》
原料水溶液の組成をNi/Co/Mn(モル比)=1/1/1にした以外は、前駆体1と同様にして、前駆体3を得た。
《前駆体4》
錯化剤の滴下速度を0.6mL/minに変更した以外は、前駆体1と同様にして、前駆体4を得た。
《前駆体5》
上記表8に記載された有価元素溶液を使用せず、硫酸ニッケル、硫酸コバルトおよび硫酸マンガンの試薬を用いて、Ni/Co/Mn(モル比)が6/2/2の原料水溶液を調製した。それ以外は、前駆体1と同様にして、前駆体5を得た。
《前駆体6》
撹拌速度を当初から撹拌終了まで200rpmのまました(350rpmに上昇させなかった)以外は、前駆体1と同様にして、前駆体6を得た。
《前駆体7》
撹拌速度を当初から撹拌終了まで500rpmにした以外は、前駆体1と同様にして、前駆体7を得た。
〈前駆体の特性〉
得られた前駆体1~前駆体5について、それぞれ、上述した方法により、タップ密度および粒径(D10、D50およびD90)を求めた。結果を下記表10に示す。
上記表10に示すように、前駆体1~前駆体5では、撹拌速度が200rpmの前駆体6および撹拌速度が500rpmの前駆体7と比較して、高いタップ密度が得られた。
〈正極材の製造〉
得られた前駆体1~前駆体5を用いて、以下のようにして、正極材1~正極材10を製造した。
《正極材1》
前駆体1と、リチウム含有化合物としての水酸化リチウムとを混合して混合物を得た。混合の際のモル比(Li/(Ni+Co+Mn))は1.075とした。得られた混合物を焼成して焼成物を得た。より詳細には、混合物を、大気雰囲気下、650℃で8h仮焼成し、その後、大気雰囲気下、950℃で3h本焼成した。得られた焼成物を、乳鉢を用いて粗解砕した。焼成物は水洗しなかった。こうして、正極材1を得た。
《正極材2~正極材5》
それぞれ前駆体2~正極材5を用いた以外は、正極材1と同様にして、それぞれ、正極材2~正極材5を得た。
《正極材6》
前駆体1と、リチウム含有化合物としての炭酸リチウムとを混合して混合物を得た以外は、正極材1と同様にして、正極材6を得た。
《正極材7~正極材10》
それぞれ前駆体2~正極材5を用いた以外は、正極材6と同様にして、それぞれ、正極材7~正極材10を得た。
〈正極材の特性および評価〉
得られた正極材1~正極材10について、上述した方法により、タップ密度および粒径(D10、D50およびD90)を求めた。更に、以下のようにして、充電容量、放電容量、サイクル特性およびサイクル試験後の放電容量を求めた。結果を下記表11に示す。
《試験1:充電容量および放電容量》
正極材(90質量%)、アセチレンブラック(5質量%)およびポリフッ化ビニリデン(5質量%)に、N-メチル-2ピロリドンを添加し混練して、混合物を得た。得られた混合物を、アルミニウム集電体に塗布し、塗膜を形成した。塗膜およびアルミニウム集電体の積層体を、ロールプレスを用いて、密度が3.1~3.3g/cmの範囲となるように加圧した。加圧した積層体から、直径14mmの円板を打ち抜いた。打ち抜いた円板を、150℃で10h真空乾燥した。真空乾燥後の円板を正極とした。
負極として、リチウム金属シートを用いた。セパレータとして、ポリエチレン製の多孔質膜(厚さ:16μm、星源材質社製)を用いた。
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)との体積比(EC/DMC)が1/1である混合溶液1Lに、1モルのLiPFを溶解させて、非水電解液を得た。
これらの正極、負極、セパレータおよび非水電解液を用いて、アルゴンで置換したグローブボックス内で、評価用のリチウムイオン電池(試験セル)を作製した。作製した試験セルを用いて、25℃で充放電した。具体的には、まず、0.05Cで定電流充電し、電圧が4.3Vに達したら、定電圧充電に切り替え、充電電流が0.01Cまで低下した時点で、充電を終了した。次に、電圧が2.75Vに達するまで、0.05Cで定電流放電した。こうして、充電容量(単位:mAh/g)および放電容量(単位:mAh/g)を求めた。
《試験2(サイクル試験):サイクル特性》
まず、負極を作製した。具体的には、人造黒鉛(96.5質量%)、アセチレンブラック(0.5質量%)、スチレンブタジエンゴム(2質量%)およびカルボキシメチルセルロース(1質量%)に、純水を添加し混練して、混合物を得た。得られた混合物を、銅集電体に塗布し、塗膜を形成した。塗膜および銅集電体の積層体を、ロールプレスを用いて、密度が1.3~1.5g/cmの範囲となるように加圧した。加圧した積層体から打ち抜いた円板を、負極とした。
負極以外は、上記試験1と同様にして、評価用のリチウムイオン電池(試験セル)を作製した。作製した試験セルを用いて、1.0Cの電流で、2.75~4.2Vの電圧範囲において、60℃での充放電を500回(500サイクル)繰り返した。得られた放電容量(単位:mAh/g)から、下記式を用いて、サイクル特性(単位:%)を求めた。
サイクル特性=(第500サイクルの放電容量/第1サイクルの放電容量)×100
《試験3:サイクル試験後の放電容量》
サイクル試験後の試験セルから、正極を取り出した。取り出した正極以外は、上記試験1と同様にして、評価用のリチウムイオン電池(試験セル)を作製した。作製した試験セルを用いて、上記試験1と同様にして、充放電して、放電容量(単位:mAh/g)を求めた。
上記表11に示すように、有価元素溶液を用いて得られた前駆体1~前駆体4を使用した正極材1~正極材4は、有価元素溶液を使用しなかった正極材5と比較して、充電容量、放電容量、サイクル特性およびサイクル試験後の放電容量は、いずれも同等であった。
また、有価元素溶液を用いて得られた前駆体1~前駆体4を使用した正極材6~正極材9は、有価元素溶液を使用しなかった正極材10と比較して、充電容量、放電容量、サイクル特性およびサイクル試験後の放電容量は、いずれも同等であった。

Claims (13)

  1. リチウムイオン電池に用いる正極材の前駆体を製造する方法であって、
    ニッケルおよびコバルトからなる群から選ばれる少なくとも1種ならびにマンガンである有価元素と、銅および鉄である不純物元素とを含有する酸化物に、還元剤を添加して、混合酸化物を得て、
    前記混合酸化物を加熱することにより、前記酸化物を還元して、金属を得て、
    前記金属を酸液に接触させて、前記有価元素および前記不純物元素を含有する浸出液を得て、
    前記浸出液に硫化剤を添加して、銅を銅硫化物として沈殿させ、銅が除去された前記浸出液を銅除去溶液として得て、
    前記銅除去溶液に酸化剤を添加して、鉄を鉄水酸化物として沈殿させ、鉄が除去された前記銅除去溶液を、前記有価元素を含有する有価元素溶液として得て、
    前記有価元素溶液と錯化剤とアルカリ性水溶液とを反応槽液に導入して、前記有価元素を含有する沈殿物を得て、
    前記還元剤が、炭素を含有するC系還元剤、ケイ素を含有するSi系還元剤およびアルミニウムを含有するAl系還元剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し、
    前記還元剤の添加量Rが、下記式(1)を満たす、前駆体の製造方法。
    (0.30a-0.15b+0.60)×[Ni]≦R≦(0.33a-0.17b+0.67)×[Ni]+(0.33a-0.17b+0.67)×[Co]+(0.23a-0.12b+0.47)×[Mn]・・・(1)
    ただし、前記式(1)中、
    R:前記還元剤の添加量(単位:モル部)
    [Ni]:前記酸化物のニッケル含有量(単位:モル部)
    [Co]:前記酸化物のコバルト含有量(単位:モル部)
    [Mn]:前記酸化物のマンガン含有量(単位:モル部)
    a:前記還元剤の合計の添加量(単位:モル部)に対する、前記還元剤における前記C系還元剤の含有量(単位:モル部)のモル比
    b:前記還元剤の合計の添加量(単位:モル部)に対する、前記還元剤における前記Si系還元剤の含有量(単位:モル部)のモル比
    である。
  2. 前記酸化物が、廃リチウムイオン電池から得られる、請求項1に記載の前駆体の製造方法。
  3. 前記混合酸化物を加熱する際の温度が、1400℃以上である、請求項1に記載の前駆体の製造方法。
  4. 前記混合酸化物を加熱することにより得られる前記金属が、前記有価元素および前記不純物元素を含有する、請求項1に記載の前駆体の製造方法。
  5. 前記金属を、粉末化してから、前記酸液に接触させる、請求項1に記載の前駆体の製造方法。
  6. 前記酸液は、酸および酸液用酸化剤を含有し、
    前記酸液用酸化剤の含有量が、前記酸に対して、0.5体積%以上である、請求項1に記載の前駆体の製造方法。
  7. 前記酸液用酸化剤が、過酸化水素である、請求項6に記載の前駆体の製造方法。
  8. 前記硫化剤の添加量が、前記浸出液が含有する銅に対して、1.0当量以上であり、
    前記銅硫化物を沈殿させる際に、前記硫化剤を添加した前記浸出液のpHを3.0以下にする、請求項1に記載の前駆体の製造方法。
  9. 前記酸化剤が、空気およびオゾンからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化剤A、または、過酸化水素、次亜塩素酸および過マンガン酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化剤Bであり、
    前記酸化剤Aの添加量が、前記銅除去溶液に対して、0.1vvm以上であり、
    前記酸化剤Bの添加量が、前記銅除去溶液に対して、0.005体積%以上であり、
    前記鉄水酸化物を沈殿させる際に、前記酸化剤を添加した前記銅除去溶液のpHを3.0以上7.0以下にする、請求項1に記載の前駆体の製造方法。
  10. 前記酸化剤を添加した前記銅除去溶液の温度が、10℃以上である、請求項9に記載の前駆体の製造方法。
  11. 前記アルカリ性水溶液が、水酸化ナトリウム水溶液であり、
    前記錯化剤が、アンモニアおよびアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種のアンモニウム源である、請求項1に記載の前駆体の製造方法。
  12. リチウムイオン電池に用いる正極材を製造する方法であって、
    請求項1~11のいずれか1項に記載の前駆体の製造方法によって得られた前駆体と、リチウム含有化合物とを混合し、得られた混合物を焼成して、前記有価元素およびリチウムを含有する焼成物を得る、正極材の製造方法。
  13. 前記リチウム含有化合物が、水酸化リチウムおよび炭酸リチウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項12に記載の正極材の製造方法。
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