(第1実施形態)
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。最初に、図1乃至図5を参照して、本発明に係る骨固定システムの第1実施形態の全体構成について説明する。第1実施形態の骨固定システム100は、図1に示すように、第1の保持体110と、第2の保持体120と、第1の骨固定具130と、第2の骨固定具140とを備える。ここで、第1の骨固定具130は、第1の保持体110によって保持される。また、第2の骨固定具140は、第2の保持体120によって保持される。
第1の保持体110は、図3(a)-(c)に示すように、第1の骨固定具130を出没可能に収容するバレル部111と、このバレル部111と一体に構成されるフランジ部112とを有する。バレル部111は骨内に導入される部分であり、好ましくは円筒状に構成される。フランジ部112は、バレル部111の軸線と交差する方向に延出するプレート状に構成され、バレル部111の内部に連通する開口部112aと、骨ねじ150や位置決め用係合ねじを受け入れるための基準孔113とを備える。バレル部111の軸線とフランジ部112の板面との間の角度φは、患者の頚体角(通常、120~135度)に整合する角度とされる。また、フランジ部112の側縁112bは後述する嵌合部122aの側溝122bに嵌合可能に構成される。基準孔113の内面上には雌ねじ113aが形成され、この雌ねじ113aは、ロッキングスクリューである骨ねじ150の頭部152の外周面上に形成された雄ねじ152aと螺合可能となるように構成される。
第1の骨固定具130は、図示例の場合、先端にねじ山を備えた骨係合部131を備えるとともに、上記バレル部111の内部に出没自在に導入された軸部132を備えた骨ねじである。ただし、第1の骨固定具130としては、骨ねじに限らず、骨係合部を備えたものであればよく、例えば、先端に拡大可能な骨係合部を備えた係止ピン、或いは、先端にフック状に突出可能なフック部を骨係合部として備えたフックピンなどによって構成されていてもよい。
図示例の場合、第1の骨固定具130は、大腿骨近位部の骨頭部T3に向けて導入される。本実施形態では、第1の骨固定具130と第2の骨固定具140はともに骨頭部T3に向けて導入されるが、第1の骨固定具130は、骨頭部T3の遠位側に導入される。また、第2の骨固定具140は、骨頭部T3の近位側に導入される。
第2の骨固定具140は、図1に示すように、第2の保持体120に保持されるスリーブ140Aと、スリーブ140Aに対して出没可能に挿通され、先端に骨に係合する骨係合部141を備え、その基端側にスリーブ部140Aに挿入可能な軸部142を備える骨固定軸140Bとを有する。スリーブ140Aには、第2の保持体120の上記保持孔124に対応する頭部143が設けられる。頭部143には、保持孔124の上記雌ねじ124aと螺合する雄ねじ143aが形成されている。スリーブ140Aの上記頭部143よりも先端側の外周面には、骨係合構造144が形成される。図示例の場合、骨係合構造144は、スリーブ140の外周面上に形成された螺旋状のねじ山(スレッド)である。この骨係合構造144は、第2の骨固定具140を骨内に導入していく際に、第2の保持体120の保持孔124と第2の骨固定具140の頭部143がロッキングされる過程で、上記外側部T1の皮質骨と係合し、第2の保持体120をスリーブ140Aを介して外側部T1にしっかりと固定する。
第2の保持体120は、図3(d)及び(e)に示すように、全体としてプレート状に構成され、骨とは反対側の表面121と、骨側に向く裏面122とを有する。表面121及び裏面122には、貫通孔である開口部123、保持孔124、位置決め孔125が開口している。裏面122には、第1の保持体110のフランジ部112が嵌合する凹部122aが設けられ、この凹部122aの幅方向両側に、フランジ部112の側縁(溝嵌合部)112bが嵌合する側溝(溝構造部)122bが形成されている。第2の保持体120は、フランジ部112に対して遠位側から凹部122aを嵌合させ、近位側へ向けてスライドさせることによって、重なるように組み立てられる。第2の保持体120(表面121及び裏面122)は、上記開口部123から位置決め孔125までの範囲を含む遠位側領域では、長手方向軸線XLに沿ったほぼ平坦なプレート形状を備える。一方、上記開口部123よりも近位側の近位側領域では、近位端に向けて外側へ徐々に湾曲し、近位端では、長手方向軸線XLに対して角度δを備えた方向に延在するプレート形状となっている。この角度δは、近位側領域に形成された保持孔124に保持された第2の骨固定具140が上記頚体角に整合するように設定される。
第2の保持体120は、長手方向軸線XLに沿った方向の中央近傍に上記第1の骨固定具130の軸部132の基部が通過可能な開口部123を備える。この開口部123は、後述する第1の保持体110と第2の保持体120との相対移動に支障のないようにするという理由で、第2の保持体120の長手方向(図示上下方向、すなわち、移動方向XL)に沿って延長された形状(楕円状若しくは長円状)とされた開口形状を備える。また、開口部123の近位側には、二つの保持孔124が形成される。これらの保持孔124は、図示例の場合、内面上に雌ねじ124aを備え、この雌ねじ124aは、後述する第2の骨固定具140の頭部143の外周上に形成された雄ねじ143aと螺合可能に構成される。
図3(e)に示すように、第1の保持体110の上記フランジ部112は、第2の保持体120の裏面122に設けられる凹部122aに嵌合する。より具体的には、フランジ部112の幅方向両側の側縁112bが、凹部122aの幅方向両側に設けられた側溝122にそれぞれ係合した状態で嵌合した状態に保持される。このとき、フランジ部112と凹部122は、第1の保持体110及び第2の保持体120の長手方向に沿ってスライドさせることにより、分離状態と嵌合状態の間を移行させることができる。なお、図示例の場合、上記の側縁112bと側溝122bが相互に嵌合することにより、フランジ部112と第2の保持体120とが上記長手方向には相対移動可能であるが、厚み方向には相互に係合して相対移動ができないように組み立てられる。ただし、本発明では、第1の保持体110(フランジ部112)と第2の保持体120とが重なった状態で位置決め可能であればよく、厚み方向にも相対移動可能に構成され、着脱自在に構成されていてもよい。
第2の保持体120には、第3の開口部である位置決め孔125が設けられる。位置決め孔125は、フランジ部112が凹部122aに嵌合しているときに、フランジ部112の基準孔113に対応する第1の位置Aと、第2の位置Bとを有する。すなわち、位置決め孔125は、基準孔113に装着される骨ねじ150若しくは位置決め用係合ねじ150′が位置決めされる位置AとBの二つの穴部分を備える。なお、これらの穴部分は、複数設けられていればよく、3以上の穴部分であってもよい。また、複数の穴部分は、図示例のように一つの開口内に相互に連結された形ではなく、別々に設けられた複数の穴で構成されていてもよい。ここで、第1の位置Aと第2の位置Bとの間隔は、長手方向軸線XLに沿った設定位置の間の距離である位置決め範囲ΔSである。基準孔113と位置決め孔125には、係合部材である骨ねじ150若しくは位置決め用係合ねじ150′が挿通され、それらの頭部152の外周面上に形成された雄ねじ152aが雌ねじ113a及び雌ねじ125a,125bと螺合することにより、フランジ部112と第2の保持体120とが上記長手方向及び厚み方向に位置決めされる。ここで、位置決め用係合ねじ150′は、図示しないが、一例として、骨ねじ150から骨係合部151を除去した構造、すなわち、頭部152のみの構造を備えたものが挙げられる。頭部152の外周面上には、雌ねじ113a,125a,125bと螺合可能な雄ねじ152aが形成される。
このとき、フランジ部112と第2の保持体120の間に構成されたガイド構造(側縁112bと側溝122b)に対して上記長手方向にスライド可能に嵌合することにより、基準孔113に螺合する係合部材である骨ねじ150若しくは位置決め用係合ねじ150′が、第1の位置Aと、第2の位置Bのいずれにも配置されるように、位置決め、固定可能となっている。なお、上記骨ねじ150や位置決め用係合ねじ150′はいずれも頭部152に雄ねじ152aを備えたねじ部材であるが、係合部材は、第1の位置Aと第2の位置Bに対する位置決め機能や固定機能を備えていれば、ねじ部材以外のもので構成しても構わない。係合部材が骨ねじ150である場合には、第1の保持体110(フランジ部112)と第2の保持体120の相互の位置決め機能に加えて、第1の保持体110及び第2の保持体120を骨表面上に固定する固定機能を備えたものとなる。なお、本実施形態のように、係合部材が第1の係合部と第2の係合部のいずれにも螺合することにより、上記位置決め機能の精度や強度を高めることができる。
図1及び図2においては、フランジ部112の基準孔113が、骨ねじ150や位置決め用係合ねじ150′などの係合部材を介して、第2の保持体120の位置決め孔125の第1の位置Aに対応する位置に配置された状態を示す。この状態では、図2に示すように、第2の保持体120の開口部123内に第1の保持体110のバレル部111を介して軸部132が保持される第1の骨固定具130の軸線X1と、保持する第2の保持体120の保持孔124に頭部143が保持される第2の骨固定具140の軸線X2,X3との距離が骨固定具の間隔LS1となる。ここで、第2の骨固定具140は二本あり、それらの軸線はX2とX3であるが、図示例では、間隔LS1は、軸線X1を通過する長手方向軸線XLと、軸線X2とX3を結ぶ直線との交点を基準とし、当該交点と軸線X1との距離を示している。ただし、軸線X1と軸線X2,X3との距離を示すパラメータは、移動方向XLの上記相対位置関係に相関するものであればよく、上記間隔LS1に限定されない。なお、軸線X1、X2、X3は、本実施形態の場合、相互に平行である。
第1の骨固定具130及び第2の骨固定具140は、図1(a)に示すように、いずれも外側部T1から頚部T2を経て骨頭部T3へ向けて導入されるため、各軸線X1,X2,X3の相対的位置は極めて重要である。ここで、図2(a)に示すように、遠位側の軸線X1と近位側前方の軸線X3の距離をL1、軸線X1と近位側後方の軸線X2の距離をL2、軸線X1を通過する長手方向軸線XLを基準としたとき、軸線X1から軸線X3へ向かう線の角度をθ1、軸線X1から軸線X2に向かう線の角度をθ2とすると、これらの距離L1、L2と、角度θ1,θ2とによって、大腿骨近位部Tの骨折安定性が決定される。なお、第2の骨固定具140が1本の場合には、軸線X1とX2の距離L1と、軸線X1からX2へ向かう線の長手方向軸線XLとの間の角度θ1によって、大腿骨近位部Tの骨折安定性が決定される。距離L1,L2は、第2の骨固定具140が1本であっても2本であっても、頚部T2の内部を軸部132,142が通過する位置(頚部T2の側面の皮質骨からの距離)が規定されるとともに、骨頭部T3の内部の骨係合部131,141の位置(骨頭部T3の先端の皮質骨からの距離)が規定されることから、大腿骨近位部Tの骨折に対する整復保持力が定まるとともに、骨頭部T3の回旋を防止する回旋安定性も定まる。
外側部T1、頚部T2や骨頭部T3の形状やサイズには個人差があるだけでなく、人種、性別によっても変化する。また、骨折態様や、骨粗鬆症などの骨質にも差が生ずる。これらの形状やサイズ、骨質などに応じて適切な骨折部の整復状態を維持するためには、共に頚部T2の内部を通過して骨頭部T3の内部へ向かう第1の骨固定具130と第2の骨固定具140の導入位置に対し、以下のような条件が課せられる。一般的には、第1の骨固定具130の導入位置は、図2(c)に示すように、頚部軸と直交する逆三角形状の断面構造を備える頚部T2の遠位側に配置される皮質骨CRの一部であるカルカーCLの内側に接するか隣接する海綿骨CAの内部位置に設定される。このとき、第1の骨固定具130は、主として患者の体重を支える役割をもつ。これは、一般にカルカーCLの皮質骨CRは厚いため、安定した支持が期待されるからである。また、一対の第2の骨固定具140が用いられる場合には、頚部T2の逆三角形状の断面の近位側の前方(図示左方)と後方(図示右方)の二箇所の頂点に相当する皮質骨CRの内側に接するか隣接する海綿骨CA内の位置に配置されることが好ましい。この場合、後方の頂点に相当する皮質骨CRの方が厚いことから、この近傍を通過する第2の骨固定具140による支持安定性がより期待される。
第1の骨固定具130に加えて第2の骨固定具140を用いる理由は、骨頭部T3が第1の骨固定具130を中心に回旋してしまうことを防止することにある。このため、第2の骨固定具140の骨頭部T3の内部への導入位置は、第1の骨固定具130を中心とした骨頭部T3の回旋を阻止しうる位置であることが好ましい。すなわち、当該回旋が生じようとしたときに、軸線X2,X3を備える第2の骨固定具140が骨頭部T3の皮質骨に当接し、上記回旋を妨げるように構成されることが最も望ましい。好ましい態様としては、L1≧L2、特にL1>L2であり、θ1≧θ2、特にθ1>θ2である。ここで、第1の骨固定具130及び第2の骨固定具140は、第1の保持体110のバレル111により、また、第2の保持体120の保持孔124のロッキングにより、それぞれ導入角度が強固に保持される。これにより、複数の骨固定具がX型に重なり破綻してゆく、いわゆる"Chop-stick phenomenon"の発生を回避でき、骨頭部T3の回旋を防止できる。
第2の骨固定具140が1本のみ用いられる場合では、第2の骨固定具140は、頚部T2の近位側の皮質骨CRの内側に接するか隣接する海綿骨CA内に導入されるが、特に、上記逆三角形状の断面の近位側の前方と後方のいずれか(皮質骨CRの厚みから見て、好ましくは後方)の角部の皮質骨CRの内側に接するか隣接する海綿骨CA内の位置を通過することが好ましい。
本実施形態では、図4に示すように、第1の保持体110(フランジ部112)と第2の保持体120とが相互に嵌合した状態で、長手方向軸線XL(移動方向)に沿って相対移動可能に構成されているため、骨ねじ150若しくは位置決め用係合ねじ150′を第2の位置B(図3(c)参照)に位置決めし、固定することができる。これにより、図5に示すように、軸線X1とX3の間隔をLS1よりも小さなLS2にすることができる。このようにすると、軸線X1と軸線X2及びX3との距離L3,L4をそれぞれL1,L2よりも小さくすることができる。
本実施形態では、骨ねじ150若しくは位置決め用係合ねじ150′が第1の位置Aに配置されることにより、例えば、軸線X1とX3の間隔LS1が大きく設定される。この場合においては、第1の骨固定具130と第2の骨固定具140の間隔が大きくなるため、頚部T2が細い場合には、第2の骨固定具140が頚部T2の近位側の皮質骨に抵触し、第2の骨固定具140の導入ができなくなることがある。図2(c)に示すように、一般には、前方の角部はより近位側に配置され、後方の角部はより遠位側に配置されるところ、前方の角部と後方の角部の上下の差は患者によってばらつきがあるため、後方の角部がどの程度遠位側に配置されるかを認識しないと、後方の角部の皮質骨CRに隣接する位置に導入する骨固定具の位置を定めることができない。しかし、X線画像の正面像では、逆三角形状の近位側の前方の角部の内側近傍を通過する骨固定具と後方の角部の内側近傍を通過する骨固定具とが前後に重なるため、後方の骨固定具の通過位置を視認しにくいうえに、後方の角部自体が前方の骨組織の画像と重なるために判明しにくいことから、手術前に後方の角部の位置を認識することが困難である。
このために、従来では、手術の途中で第2の保持体120に相当するプレートを、頚部幅の大小に対応する複数種類用意した上で、最初のプレートが適合しなければ、その取り外しと、別のサイズのプレートの再設置を行う作業を実施していた。このため、複数のプレートを用意するためにコストが増大するとともに、無駄な作業が必要となるため、手術時間も長くなるという問題があった。
本実施形態では、実際に手術を開始し、ガイドピンや第1の保持体110や第2の保持体120を外側部T1上に設置してから、第1の保持体110(フランジ部112)に対する第2の保持体120の保持孔124の位置を長手方向軸線XLに沿った移動方向に相対移動可能に構成することにより、第2の骨固定具140の位置を頚部T2に対して適切に調整することができ、特に、位置を認識しにくい後方の角部に対応して配置される第2の骨固定具140の位置を容易に設定することが可能になる。
また、大転子の盛り上がりにより、外側部T1の近位側の骨表面が大きく張り出している場合には、第2の保持部120の近位端が外側部T1の骨表面に干渉し、第2の保持部120を外側部T1の骨表面上に安定した状態で固定することができなくなる場合もある。そして、上記大転子の盛り上がりは、患者によってばらつきが大きいため、第2の保持体120の裏面122(プレート形状)を外側部T1の骨表面に完全に合致させることは困難である。しかし、一般に、近位側の大転子に近づくほど、骨表面の湾曲が大きくなる一方で、遠位側の外側部T1の骨表面は骨幹軸に沿ってほぼ平行かつ平担に構成されているので、第2の保持体120が外側部T1の骨表面に合致しないという問題が生じても、第2の保持体120を遠位側に移動させることで解決することが多い。特に、第2の保持体120の近位側領域における裏面122の形状が外側に湾曲している場合には、図1(a)と図4(a)を比較してみれば明らかなように、第2の保持体120をわずかに遠位側へ移動させるだけで、裏面122と外側部T1の近位側の骨表面との干渉を避けることができる。図4の例では、第2の保持体120の近位側領域と外側部T1の近位側表面との間には「隙間」が存在している。このようにすると、第2の保持体120の裏面122をフランジ部112と共に外側部T1の表面上にしっかりと固定することができるので、第1の骨固定具130及び第2の骨固定具140をしっかりと固定することができるから、骨折部の保持強度が高められることにより体重などの負荷に確実に耐えることができるとともに、手術後における骨頭部T3の回旋などの重大な不良の発生を回避できる。なお、後述する第2実施形態では、この「隙間」を無くして第2の保持体120の裏面122の全体を外側部T1に密着させることも可能である。
ところで、前述のような骨の形状やサイズに合わせるための複数のプレートが用意されていない場合には、第1の保持体110に相当するフランジ部材を導入してから、プレートを装着した結果、外側部T1の骨表面の大転子の盛り上がり部分の形状がプレートと整合しない場合、例えば、上記フランジ部材が頚体角125度に対応するものであった場合、頚体角135度に対応する新たなフランジ部材に交換し、当該新たなフランジ部材を少し遠位側にずらして再設置し、その後、このフランジ部材に対応するプレートを装着するといったことが行われる。しかし、この場合には、手術時において多大な手間がかかることはもちろん、異なる形状のフランジ部材を装着するために外側部T1に複数の穿孔が形成されるため、骨の強度が低下し、二次的な骨折が発生したりするなどの不具合が生じやすくなる。
また、本実施形態では、第1の保持体110に対して第2の保持体120を移動方向XLにスライド移動可能に構成するガイド構造がフランジ部112の側縁112bと凹部122aの側溝122bとによって形成されている。これにより、手術中であっても、第1の骨固定具130の軸線X1の位置を動かさずに、第2の保持体120をスライド移動させることが容易にできるため、位置決め時の移動作業が簡略化される。特に、上記ガイド構造は、移動方向XLにのみ移動可能とし、厚み方向には移動不納となるように案内するため、位置決め後の相対位置関係も、より確実かつ高い剛性で維持される。
本実施形態では、第1の保持体110(フランジ部112)と第2の保持体120の移動方向XLに沿った相対位置関係が変更可能に構成され、相互に異なる相対位置関係の第1の位置Aと第2の位置Bにそれぞれ対応する二箇所において設定し、当該関係を維持することができるため、軸線X1と軸線X2,X3の距離L1,L2を、それぞれ大小の間隔LS1とLS2に対応するように、距離L3,L4に増減させることができる。なお、図示例では、軸線X2とX3の間の距離は不変であるので、距離L1、L2の変化(L3,L4へ減少)により角度θ1とθ2も変化(θ3、θ4へ増大)する。なお、位置決め可能な相互に異なる位置A,Bは、図示例のように2つの位置に限らず、3以上の位置であってもよい。このように、第1の保持体110と第2の保持体120を、不連続な複数の位置に位置決め可能に構成することにより、調整作業が容易化され、手術中の逡巡を避けることができる。
間隔LS1,LS2の変化量である位置決め範囲ΔS=LS1-LS2は、特に限定されないが、患者における頚部T2の逆三角形状の角部の間の上記距離L1に対応する距離の分布関数F(L1)、上記距離L2に対応する距離の分布関数F(L2)、上記角度θ1に対応する角度の分布関数F(θ1)、上記角度θ2に対応する角度の分布関数F(θ2)を勘案して、設定されることが好ましい。ここで、各分布関数は、症例ごとに患者の集合を設定し、求めることが望ましい。具体的には、各分布関数の平均値Mに対して標準偏差σを加算した値(M-σ)と減算した値(M+σ)の間に含まれる全ての患者に対応可能となるような位置決め範囲ΔSが設定されていることが好ましい。特に、(M-2σ)から(M+2σ)までの全ての患者に対応可能となるような位置決め範囲ΔSが設定されていることがさらに望ましい。
例えば、図示例の場合、第1の位置Aに対応するLS1=14.4mm、第2の位置Bに対応するLS2=11.5mmであり、このときのL1=16.3mm、L2=14.5mm、θ1=23度、θ2=19度であり、L3=13.8mm、L4=11.9mm、θ3=27度、θ4=23度であり、ΔS=2.9mmである。L1,L3の範囲としては、12.0-18.0mmの範囲内であることが好ましく、13.0-17.0mmの範囲内であることが望ましい。また、L2,L4の範囲としては、11.0-16.0mmの範囲内であることが好ましく、12.0-15.0mmの範囲内であることが望ましい。さらに、θ1、θ3の範囲としては、21.0-29.0度の範囲内であることが好ましく、22.0-28.0度の範囲内であることが望ましい。また、θ2、θ4の範囲としては、17.0-25.0mmの範囲内であることが好ましく、18.0-24.0mmの範囲内であることが望ましい。ΔSの範囲としては、1.0mm-5.0mmの範囲内であることが好ましく、2.0-4.0mmの範囲内であることが望ましい。なお、これらの点は以下の第2実施形態においても同様である。
(第2実施形態)
次に、図6を参照して、第2実施形態の骨固定システム100′について説明する。この第2実施形態では、第2の保持体120′及び骨ねじ160若しくは位置決め用係合ねじ160′の構造のみが第1実施形態とは異なるので、異なる部分のみを説明し、第1実施形態と同じ部分についての説明は省略する。
本実施形態では、図6(a)に示すように、第1実施形態の第2の保持体120の代わりに、第2の保持体120′を用いる。この第2の保持体120′は、第1実施形態の位置決め孔125の代わりに、異なる構造の位置決め孔125′を備えているが、位置決め孔125′以外の構造は第1実施形態の第2の保持体120と同様に構成できる。
位置決め孔125′は、図示のように長手方向軸線XLの方向に延長された長穴形状とされている。ここで、位置決め孔125′の内面125a′には雌ねじは形成されない。ここで、位置決め孔125′と、この位置決め孔125′と重なる基準孔113には、図6(b)に示す骨ねじ160、若しくは、この骨ねじ160から骨係合部161を除去した構造の位置決め用係合ねじ160′(図示せず)が用いられる。基準孔113の内面に形成された雌ねじ113aは、骨ねじ160若しくは位置決め用係合ねじ160′の頭部162の雄ねじ162bと螺合可能に構成される。頭部162は、第2の保持体120′の上記位置決め孔125′の内面125a′と係合する上側頭部領域H1と、上記雌ねじ162bが形成された下側頭部領域H2とを備える。これにより、骨ねじ160若しくは位置決め用係合ねじ160′は、雄ねじ162bと雌ねじ113aとの螺合によって、第1の保持体110(フランジ部112)に対してはロッキングされ、また、上側頭部領域H1の締付面162aと内面125a′の係合により、第2の保持体120′を第1の保持体110(フランジ部112)に対して締め付け固定するように機能する。
本実施形態では、上記位置決め孔125′及び基準孔113と骨ねじ160若しくは位置決め用係合ねじ160′からなる位置決め構造は、第1の保持体110(フランジ部112)と第2の保持体120′の長手方向軸線XLに沿って相対移動可能な構造により、第1の位置Aから第2の位置Bまでの位置決め範囲ΔSの中の任意の位置に骨ねじ160若しくは位置決め用係合ねじ160′を位置決めし、固定することができる。また、骨ねじ160若しくは位置決め用係合ねじ160′を位置決め孔125′及び基準孔113の内部に配置したままであっても、上側頭部領域H1が第2の保持体120′に対する締め付け作用を生じないねじ込み状態にあれば、上記位置決め範囲ΔS内の任意の位置へ移動させることができるので、手術中の位置変更作業がさらに容易化されるという利点もある。すなわち、係合部材が一方の係合穴に螺合するとともに、他方の係合穴である長穴の周縁を締め付けることにより、長孔の構造的範囲内であれば、任意の場所で位置決め機能を果たすことができるので、位置決め位置の自由度を高めることができる。
(使用態様-手術手技)
最後に、図7及び図8を参照して、各実施形態の骨固定システム100,100′の使用態様の一例を説明する。最初に、図7(a)に示すように、切開部を通して挿入したプレート型アングルガイド10のベース10Bを外側部T1に当接させ、ガイドピン13,14をアングルガイド10のガイドスリーブ11,12に挿通し、頚部T2を通して骨頭部T3内へ刺入する。ここで、アングルガイド10は、図8(c)において拡大されて示される。
アングルガイド10は、外側部T1に当接されるプレート状のベース10Bと、手術者が把持するためのハンドル10Hとを備える。ベース10Bには、ガイドスリーブ11,12が取付られており、ベース10Bに対して第2の保持体120,120′の開口部123や保持孔124の軸線に対応する予め設定された位置及び姿勢となるように取付される。ここで、ベース10Bは第2の保持体120、120′と同じ外形を備えることが好ましく、特に、第1の保持体110のフランジ部112と第2の保持体120,120′の組立体の裏面122の形状と同じ裏面形状を備えることが望ましい。このようにすると、実際に骨固定システム100,100′を使用する前に、骨折部に対する装着位置をX線画像などにより確認する作業(トライアル作業)を同時並行して実施可能になる。なお、ガイドスリーブ11,12の取付位置は、上記位置決め範囲ΔS内の予め設定された位置(すなわち、変更前位置、例えば、標準位置)に設定される。第1実施形態における図示例では、上記第1の位置Aに相当する標準位置に設定される。
もっとも、アングルガイド10の上記ガイドスリーブ11,12を少なくとも上記位置決め範囲ΔS内の設定可能な複数の位置に適宜に設定できるように、調整可能に構成してもよい。例えば、上記各実施形態であれば、ガイドスリーブ12を長手方向軸線XLに沿った方向に少なくともΔSだけ移動可能に構成してもよい。このようにすると、アングルガイド10を用いた手技であっても、予め患者の患部に適合した変更後位置に整合するようにガイドピン14を刺入することができる。このようにすれば、後述するようにガイドピン14の刺入し直しが不要になる。
次に、図7(b)に示すように、ガイドピン13を基準として、スリーブ器具20(リーマースリーブ)を介して穿孔器具30(ステップリーマー)を用いて、第1の保持体110及び第1の骨固定具130のための穿孔作業を行う。その後、図7(c)に示すように、ガイドピン13を基準として、第1の保持体110と第1の骨固定具130を組み立て、さらにフランジ部112を第2の保持体120、120′に装着し、体内に導入する。そして、回転工具40(スクリュードライバー)を用いて第1の骨固定具130を骨頭部T3の内部に向けてねじ込む。
次に、図8(a)に示すように、ガイドピン14を基準として、第2の保持体120の保持孔124を通して、穿孔器具50(ねじ式リーマースリーブ)を用いて穿孔し、その後、図8(b)に示すように、第2の骨固定具140を挿入し、回転工具60(バレルTレンチ)を用いて第2の骨固定具140を骨頭部T3内の所定位置まで導入する。
以上の手術手技は、当初ガイドピン13,14により設定された標準位置での骨固定システム100,100′の適用例(手術手技の手順)であるが、実際には、前述のように、第1の保持体110(フランジ112)と第2の保持体120、120′の間の位置を位置決め範囲ΔS内で変更する場合が考えられる。この場合には、例えば、上記各実施形態であれば、図7(c)の第1の骨固定具130の導入後に、好ましくは第2の保持体120,120′が外側部T1上に配置されている状態で、ガイドピン14の導入位置(例えば、標準位置)から変更する必要がある。このため、第2の保持体120,120′の位置変更後に、骨ねじ150,160や位置決め用係合ねじ150′,160′を用いて第2の保持体120,120′を固定し、保持孔124に装着した個別のガイドスリーブ(図示せず)を通してガイドピン14を刺入し直す。なお、二つの保持孔124や二本の第2の骨固定具140が用いられる場合には、骨折部の整復状態を維持するために、二本のガイドピン14の一方を刺入したまま、他方を抜き取って刺入し直し、その後、一方を刺入し直すといった方法を採ることが望ましい。
このとき、当初の標準位置に刺入されていたガイドピン14が第2の保持体120,120′の保持孔124内を通過するように、保持孔124の開口径を大きく設定することが好ましい。すなわち、ガイドピン14を上述のように変更前位置(標準位置)から変更後位置に修正する場合、保持孔124の開口半径は、上記位置決め範囲ΔSよりも大きいことが好ましい。このようにすると、変更前位置から変更後位置へ位置決め範囲ΔSだけガイドピン14の刺入位置を変更する場合において、変更前位置(例えば、標準位置)にあるガイドピン14が保持孔124の開口範囲内を通過する態様で、図7(c)の工程において第2の保持体120,120′を導入した後に、第2の保持体120,120′を変更後位置に設定できることを確認してから、ガイドピン14を適切な変更後位置に刺入し直すことができる。実際には、第2の保持体120,120′を変更後位置に設定することによって、保持孔124の中心を通過するように設定されたガイドピン14が適正な位置に刺入されうることを確認した後に、ガイドピン14の刺入し直し作業を行うことができる。
なお、位置決め用係合ねじ150′,160′を予め位置決め孔125、125′と基準孔113に装着しておき、図7(c)の第1の保持体110及び第1の骨固定具130並びに第2の保持体120の導入後に、第2の保持体120を移動させ、外側部T1上でのフィッティング状況を見ながら、位置決め用係合ねじ150′,160′を締め付けて、第2の保持体120を固定することができる。この場合、最終的に骨ねじ150,160を用いる必要があれば、第2の骨固定具140の導入後に、位置決め用係合ねじ150′,160′を抜去し、骨ねじ150,160を装着することも可能である。なお、上記の使用態様は一例であり、種々の使用態様で各実施形態を用いることができる。例えば、予め患者の状況に合わせて第1の保持体110と第2の保持体120,120′とを位置決め用係合ねじ150′,160′などによって位置決め若しくは固定した状態で、体内に導入するようにしても構わない。最終的に位置決め用係合ねじ150′,160′を用いるなど、骨ねじ150,160を用いない場合には、フランジ部112が第2の保持体120に対して軸線X1(厚み)方向に係合するとともに、第2の保持体120が他の手段、例えば、骨係合構造144などによって、外側部T1に対して軸線X2,X3方向に係合していることが好ましい。
上記位置決め用係合ねじ150′,160′の利点としては、骨ねじ150,160と異なり、骨へのアクセスなしで第1の保持体110と第2の保持体120の位置決め機能を発揮することができる点が挙げられる。特に、図2(c)に示すように、大腿骨の頚部T2の軸線は、骨幹部軸線XTに対して前方へΔXだけオフセットしているため、第1の保持体110による第1の骨固定具130の軸線X1も同様にオフセットしている。このため、骨ねじ150,160を用いる場合には、これらの骨ねじ150,160も骨幹部軸線XTからオフセットした位置に導入されることとなるから、骨ねじの偏心性挿入により骨にひびが入りやすくなったり、骨質によっては骨ねじ150,160そのものが使用できないという問題がある。この問題は、位置決め用係合ねじ150′,160′を用いることによって回避できる。なお、上述の径部T2の前方へのオフセットΔXによる骨ねじ150,160の上記偏心性挿入は、基準孔113及び位置決め孔125,125′を斜め後方へ向けることによって骨ねじ150,160を骨幹部軸線XTに向かうように導入する方法で回避することも可能である。ただし、この方法ではインプラントを左右別々の形態にする必要があるため、在庫が増大するなど、コスト増の原因になる。
(作用効果)
以上説明した各実施形態の骨固定システム100,100′によれば、第1の保持体110と第2の保持体120は、第1の保持位置X1と第2の保持位置X2、X3の間隔が変化する移動方向XLに相対移動可能に構成されるとともに、移動方向XLに沿った相互に異なる複数の相対位置関係(A,B又はA-Bの範囲内)でそれぞれ配置可能に構成され、これらの複数の相対位置関係は、外側部T1から導入された第1の骨固定具130が第1の保持位置X1において第1の保持体110に保持されるとともに、外側部T1から導入された第2の骨固定具140が第2の保持位置X2,X3において第2の保持体120に保持される状態で、それぞれ維持可能に構成される。これにより、患者の状況に応じてプレートや骨固定具の配置を変更可能に構成することにより、骨折固定の最適化を図り、骨固定の安定性や強度を向上させることができる。
ここで、上記各実施形態では、第1の保持体110が外側部T1に対して固定されるとともに、第2の保持体120が外側部T1に対して固定されることにより、結果として、上記複数の相対位置関係は外側部T1(皮質骨)を介して維持される。特に、バレル部111は外側部T1上に配置されるフランジ部112と一体に構成され、フランジ部112の125,125′を通して骨に導入される骨ねじ150,160により横止めされるため、第1の保持体110は外側部T1に固定される。また、スリーブ部140Aは保持孔124にロッキングされるとともに、骨係合構造144が外側部T1の皮質骨に係合するため、第2の保持体120は外側部T1に固定される。したがって、第1の保持体110と第2の保持体120は外側部T1の皮質骨を介して固定されることから、複数の相対位置関係がそれぞれ維持されることとなる。
なお、骨ねじ150,160による外側部T1への軸線X1方向の固定作用と、骨係合構造144とロッキング124,143による外側部T1への軸線X2,X3方向の固定作用とは、いずれか一方が存在すれば、骨折部の短縮などが生じても、第1の保持体110と第2の保持体120の外側部T1上における固定状態が維持されるため、結果として移動方向XLの相対位置関係に間接的にも影響を与えることはない。また、バレル部111による第1の骨固定具130の軸方向ロッキング作用と、保持孔124とスリーブ部140Aの頭部143との螺合及び骨係合構造144と皮質骨の係合による第2の骨固定具140の軸方向ロッキング作用は、骨頭部T3の整復状態の維持に関しては、軸線X1,X2,X3の傾動を抑制することにより、これらと交差する移動方向XLの相対位置関係の維持と同等の効果を与える。
また、各実施形態では、第1の保持体110と第2の保持体120を、上記の複数の相対位置関係においてそれぞれ移動方向XLに位置決め可能に構成される位置決め手段125,125′,113,をさらに具備することにより、第1の保持体110に対する第2の保持体120の移動方向XLの位置を骨固定システム100,100′内で(構造的に)保持することが可能になるため、第1の保持体110と第2の保持体120の各相対位置関係を確実かつ正確に設定できるとともに、手術が容易化される。
さらに、各実施形態において、上記位置決め手段は、第1の保持体110に設けられた第1の係合部113と、第2の保持体120に設けられた第2の係合部125,125′と、第1の係合部と前記第2の係合部にそれぞれ係脱可能に係合する係合部材150,160,150′,160′とを有する。これにより、簡単な構造で確実な位置決めが可能になる。このとき、係合部材150,160,150′,160′は、第1の係合部113と第2の係合部125,125′の少なくとも一方に螺合するねじであることにより、簡単な操作により確実な位置決めが可能になる。特に、係合部材は、骨にねじ込まれる骨ねじ150,160であることにより、第1の保持体110及び第2の保持体120を骨に確実かつ安定に固定することができる。
具体的には、第1の係合部113及び第2の係合部125,125′は、それぞれ係合部材150,150′の頭部152が係合可能な係合穴であり、他方の係合穴125が前記移動方向に沿って配列された複数の穴部分125a,125bを含む。これにより、一方の係合穴113と複数の穴部分125a,125bのいずれかを選択して係合部材150,150′を用いるだけでよいため、移動方向に移動した後に容易に位置決めすることができる。この場合、係合部材の前記頭部152は雄ねじ152aを有し、第1の係合部と第2の係合部のうちの一方の係合穴113が前記頭部の前記雄ねじ152aと螺合する雌ねじ付きねじ穴であることにより、螺合による係合作用に基づいて、より確実かつ正確な位置決めが可能になる。
また、第1の係合部113及び第2の係合部125′は、それぞれ係合部材160,160′の頭部162が係合可能な係合穴であり、他方の係合穴125′が前記移動方向XLに沿った長穴である。これにより、係合穴125′の移動方向XLの延長方向の範囲内であれば、任意の位置において、係合穴113に挿通した係合部材160,160′を位置決めすることができるので、位置決めの自由度を高めることができる。この場合、係合部材の前記頭部162は雄ねじ162bを有し、第1の係合部と第2の係合部のうちの一方の係合穴113が前記頭部の前記雄ねじ162bと螺合する雌ねじ付きねじ穴であることにより、螺合による係合作用に基づいて、より確実かつ正確な位置決めが可能になる。
次に、第1の保持体110は、骨頭部T3とは逆側に向いた外側部T1の骨表面上に配置される第1の構造部分112を備え、前記第2の保持体120は、前記骨表面上に配置されるとともに、前記骨表面上で前記第1の構造部分に対して前記移動方向XLに相対移動可能な態様で係合する第2の構造部分122aを備え、第1の構造部分112と第2の構造部分122aは、前記骨表面上において相互に重なる態様に係合する。これによれば、骨表面上において第1の構造部分112と第2の構造部分122aとが相互に重なることにより、第1の保持体110と第2の保持体120が骨表面上で固定されることにより相互に強固に固定されるため、骨折箇所をしっかりと保持することができる。
ここで、第1の構造部分112と第2の構造部分122aは、第1の保持体110に対して第2の保持体120を移動方向XLに沿って相対移動可能に案内するガイド構造を備えることにより、当該ガイド構造によって第1の保持体110と第2の保持体120の相対移動の態様が安定するため、移動操作が容易化されるとともに、位置決め精度を高めることができる。特に、前記ガイド構造は、移動方向XLに沿って形成された溝構造部122bと、当該溝構造部122bに嵌合して移動方向XLに沿ってスライド可能に構成される溝嵌合部112bとを含むことにより、第1の保持体110と第2の保持体120が骨表面上において相互に嵌合して強固に固定される。
各実施形態では、骨頭部T3は大腿骨近位部に設けられ、第1の骨固定具130及び第2の骨固定具140は、頚部T2の逆三角形状の断面の三つの頂点のうち、遠位側の頂点の内側に隣接する箇所、並びに、近位側の二つの頂点の少なくとも一方の内側に隣接する箇所を通過して骨頭部T3に向かうことにより、大腿骨近位部の骨折部分を安定かつ強固に保持することができる。
このとき、第2の保持体120は、第1の保持体110より近位側に張り出し、第2の保持位置X2,X3を含む近位側領域と、第1の保持体110に対して移動方向XLに沿って相対移動可能に構成された遠位側領域とを有し、前記近位側領域は、前記遠位側領域から移動方向XLに沿って徐々に外側へ湾曲した裏面形状を備えることにより、外側部T1から大転子へ向かう骨表面上において第2の保持体110を安定かつ強固に配置できる。特に、大転子に向かう骨表面の湾曲形状に合わせて第2の保持体120の近位側領域を設置しやすいとともに、骨表面上における第2の保持体120の安定性を確保しつつ、第1の保持体110に対して第2の保持体120を移動方向XLに沿って相対移動させる位置決め範囲ΔSを広く確保することができる。
各実施形態の使用態様や手術手技に関しては、上記の間隔LS1,LS2の変更は、前述のように手術中に行うこともできるという利点を備えるものであるが、事前に把握した患者の状況に合わせて手術前に予め位置決めをしておくことも可能である。この場合においては、手術時間が短縮できるとともに、異なる寸法を備えた部品を多数用意する必要性が低減されるため、製品コストも低減できる。例えば、従来においては、患者の頚体角や前捻角などの骨形状や骨サイズに合わせて多くの部品を用意する必要があるが、上記移動方向XLに沿った第1の保持体110に対する第2の保持体120の相対移動が可能になることによって、或る程度、骨の形状やサイズの相違を吸収することが可能になるので、骨の形状やサイズに合わせるために要する部品数が低減されることが期待される。
なお、本発明の骨固定システムは、上述の図示例のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記各実施形態は、1本の第1の骨固定具130と、2本の第2の骨固定具140とを外側部T1から頚部T2を経て骨頭部T3に向けて導入する場合について説明している。しかし、第1の骨固定具130に加えて、1本の第2の骨固定具140のみを用いる場合でも、基本的に上述と同様の作用効果を奏することができる。