本発明は、概して、バイオテクノロジー工学、具体的には、大規模メタノール発酵に特に有用なものとなるように改善された特性を有するメチロバチルス属の遺伝子改変細菌に関する。より具体的には、本発明は、菌体外多糖(EPS)の産生が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して減少するように改変されている、メチロバチルス属の細菌を提供する。本発明は、本発明の遺伝子改変細菌を用いて生化学化合物を生成する方法をさらに提供する。
発明の背景
メタノール発酵は、石油由来の化学物質の生成に取って代わる可能性を有する。これを実現するためには、効率的なメチロトローフ(メタノールもしくはメタン等の一炭素化合物、または炭素-炭素結合を有しない多炭素化合物を消費する)株を開発する必要がある。メタノールを唯一の炭素源として成長および産物形成に利用することができる幾つかの細菌が同定された。幾つかの例としては、バチルス・メタノリカス(Bacillus methanolicus)、メチロバクテリウム・エクストルケンス(Methylobacterium extorquens)、メチロバチルス・グリコゲネス(Methylobacillus glycogenes)およびメチロバチルス・フラゲラータス(Methylobacillus flagellatus)が挙げられる。メチロトローフ細菌は、メタノール同化経路に基づいて大きく2つの群に分けることができる。最初の工程は常に、メタノールデヒドロゲナーゼ酵素によって触媒されるメタノールからホルムアルデヒドの変換である。第1の群では、ホルムアルデヒドがリブロース一リン酸(RuMP)と反応してC6化合物を形成し、これが続いてさらに代謝される。この群のメンバーは、一般に「RuMPサイクルメチロトローフ」と称される。M.エクストルケンス(M.extorquens)を含む第2の群は、ホルムアルデヒドをグリシンと反応させ、セリンサイクルとして知られる経路でセリンを形成することによってホルムアルデヒドを同化する。どちらの群のメチロトローフ細菌も、メタノールからの様々な生化学物質の生成に使用されてきた。しかしながら、RuMPサイクルは、セリンサイクルよりもエネルギー効率が高く、より速い成長およびバイオマス形成をもたらす。
メチロトローフ微生物は海洋、土壌、植物根圏、さらには下水等の極めて多様な環境に存在し得る。メチロトローフ細菌は、これらの多様で、多くの場合、過酷な環境で生き抜くことができなければならないため、最低限の栄養素で効率的に成長しながらも、非常に頑強であり、様々なタイプのストレスに対して耐性を示す傾向があることが多い。RuMPサイクルを利用するメチロバチルス属の株は、最少ミネラル培地中で迅速かつ再現性よく成長し、温度およびメタノール濃度の変動に影響を受けにくいという、生化学物質生成系列に望ましい多数の特質を有する。さらに、これらの株は、遺伝子操作に非常に適しており、複雑な経路の代謝工学の可能性を引き出すものである。
メチロバチルスを含む多くのメチロトローフは、多量の菌体外多糖(EPS)を産生し、その自然環境内の生物に乾燥からの保護、バイオフィルム足場形成、エネルギー貯蔵等の複数の利点を与える。流加発酵では、メチロバチルスのバイオマスは、最大30%のEPSからなることがある。
特にメチロバチルスにおけるEPS産生は、比較的研究されていない。メタノランと称される新規のEPSを合成することが見出された、土壌から単離された偏性メチロトローフであるメチロバチルス属種12S株の単一株のみに対して研究が行われている(Yoshida et al., 2000)。メチロバチルス属種12S株におけるメタノラン合成に関与する遺伝子クラスターは、同定および特性化されているが(Yoshida et al., 2003)、他のメチロバチルスでは、そのような研究は行われていない。バイオインフォマティクス分析および配列相同性に基づいて、メチロバチルス・フラゲラータス(Methylobacillus flagellatus)のKT株(Chistoserdova et al., 2007)およびメチロバチルス・グリコゲネス(Methylobacillus glycogenes)(Hattori et al., 2020)におけるEPS遺伝子クラスターが予測されているが、遺伝子自体は特性化されていない。
発明の概要
本発明の目的は、メタノールベースのバイオプロセスにおける或る特定の欠点を克服することである。これは、菌体外多糖(EPS)の産生が減少しているメチロバチルス属の種々の遺伝子改変細菌を操作した本発明者らによって達成される。
本発明者らは、メチロバチルスにおける一般的なEPS産生について研究した。M.フラゲラータス(M.flagellatus)およびM.グリコゲネス(M.glycogenes)のゲノムのバイオインフォマティクス分析に基づいて、本発明者らは、2つの推定EPS産生遺伝子クラスターを同定した。両方のEPSクラスターを破壊すると、EPS産生が完全に消失した。
改変されたM.フラゲラータス(M.flagellatus)およびM.グリコゲネス(M.glycogenes)株における予期せぬ驚くべき観察結果は、成長培養物におけるその挙動であった。メチロバチルス細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する1つ以上の内在性ポリペプチドの発現を消失させると、培養物は、メタノールベースのバイオプロセスの開発に有益な多数の驚くべき予期せぬ特性を示した。予期せぬことに、振盪フラスコおよびバイオリアクターの両方における過剰な培養物の発泡が低減した。さらに、未改変の親株では細胞の凝集が観察されたが、改変メチロバチルスの培養物では、凝集が低減するか、あるいは見られなかった。EPS産生を排除すると、バイオマスの遠心分離および濾過も改善された。これらの特性の組合せにより、バイオプロセス、株の取扱いおよび下流の処理が大幅に改善され、改変メチロバチルス細菌が大規模メタノール発酵に好適なものとなる。EPS合成の除去は、予期せぬことに、M.フラゲラータス(M.flagellatus)および他のメチロバチルス種のメタノール耐性も改善した。
以上の発見に基づき、本発明は、第1の態様において、菌体外多糖(EPS)の産生が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して減少するように改変されている、メチロバチルス属の遺伝子組換え細菌を提供する。
本発明は、本発明の細菌を、メタノール等の還元一炭素化合物、またはジメチルアミン等の炭素-炭素結合を有しない多炭素化合物を含む培養培地中にて適切な培養条件下で培養することを含む、生化学化合物を生成する方法をさらに提供する。
本発明は、以下の項目によってまとめることができる:
1. 菌体外多糖(EPS)の産生が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して減少するように改変されている、メチロバチルス属の遺伝子組換え細菌。
2. 上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも1つの内在性ポリペプチドの発現および/または機能(例えば活性)が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌(参照細菌)と比較して減少するように改変されている、項目1記載の細菌。
3. 上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも1つの内在性ポリペプチドの発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌(参照細菌)と比較して減少するように改変されている、項目1または2記載の細菌。
4. 上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも2つの内在性ポリペプチドの発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌(参照細菌)と比較して減少するように改変されている、項目1から3までのいずれか1つ記載の細菌。
5. 上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも3つの内在性ポリペプチドの発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌(参照細菌)と比較して減少するように改変されている、項目1から4までのいずれか1つ記載の細菌。
6. 上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも4つの内在性ポリペプチドの発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌(参照細菌)と比較して減少するように改変されている、項目1から5までのいずれか1つ記載の細菌。
7. 上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも5つの内在性ポリペプチドの発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌(参照細菌)と比較して減少するように改変されている、項目1から6までのいずれか1つ記載の細菌。
8. 上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも6つの内在性ポリペプチドの発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌(参照細菌)と比較して減少するように改変されている、項目1から7までのいずれか1つ記載の細菌。
9. 上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する全ての内在性ポリペプチドの発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌(参照細菌)と比較して減少するように改変されている、項目1から8までのいずれか1つ記載の細菌。
10. 上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも1つのポリペプチドが、a)配列番号1~38のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、およびb)配列番号1~38のいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、参照ポリペプチドと同じ機能特性を有するポリペプチドからなる群から選択される、項目2から9までのいずれか1つ記載の細菌。
11. 上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも1つのポリペプチドが、a)配列番号1~26のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、およびb)配列番号1~26のいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、参照ポリペプチドと同じ機能特性を有するポリペプチドからなる群から選択される、項目2から10までのいずれか1つ記載の細菌。
12. 上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも1つのポリペプチドが、a)配列番号27~38のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、およびb)配列番号27~38のいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、参照ポリペプチドと同じ機能特性を有するポリペプチドからなる群から選択される、項目2から10までのいずれか1つ記載の細菌。
13. 上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも1つのポリペプチドが、a)配列番号39~86のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、およびb)配列番号39~86のいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、参照ポリペプチドと同じ機能特性を有するポリペプチドからなる群から選択される、項目2から12までのいずれか1つ記載の細菌。
14. 上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも1つのポリペプチドが、a)配列番号39~60のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、およびb)配列番号39~60のいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、参照ポリペプチドと同じ機能特性を有するポリペプチドからなる群から選択される、項目2から13までのいずれか1つ記載の細菌。
15. 上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも1つのポリペプチドが、a)配列番号61~86のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、およびb)配列番号61~86のいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、参照ポリペプチドと同じ機能特性を有するポリペプチドからなる群から選択される、項目2から13までのいずれか1つ記載の細菌。
16. 上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも1つのポリペプチドが、ペプチジルプロリルシス-トランスイソメラーゼ活性を有するポリペプチド、多糖排出輸送体として作用することが可能なポリペプチド;鎖長決定タンパク質として作用するポリペプチド;およびタンパク質チロシンキナーゼ活性を有するポリペプチドからなる群から選択される、項目2から15までのいずれか1つ記載の細菌。
17. ペプチジルプロリルシス-トランスイソメラーゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号6に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、多糖排出輸送体として作用することが可能なポリペプチドが、配列番号7に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、鎖長決定タンパク質として作用するポリペプチドが、配列番号8に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、タンパク質チロシンキナーゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号9に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目16記載の細菌。
18. ペプチジルプロリルシス-トランスイソメラーゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号42に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、多糖排出輸送体として作用することが可能なポリペプチドが、配列番号43に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、鎖長決定タンパク質として作用するポリペプチドが、配列番号44に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、タンパク質チロシンキナーゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号45に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、項目16記載の細菌。
19. 上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも1つのポリペプチドの発現が、それ以外は同一の細菌と比較して少なくとも50%、例えば少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%減少している、項目2から18までのいずれか1つ記載の細菌。
20. 上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも1つのポリペプチドの発現が、それ以外は同一の細菌と比較して消失している、項目2から19までのいずれか1つ記載の細菌。
21. 上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する上記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子が不活性化されている、項目2から20までのいずれか1つ記載の細菌。
22. 上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する上記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子が、遺伝子配列の一部または全体の欠失によって不活性化されている、項目2から21までのいずれか1つ記載の細菌。
23. 上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する上記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子が、上記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子をDNA切断により選択的に不活性化することが可能なそれぞれのレアカットエンドヌクレアーゼを細菌に導入または発現させることによって不活性化されている、項目2から22までのいずれか1つ記載の細菌。
24. 上記レアカットエンドヌクレアーゼが転写アクチベーター様エフェクター(TALE)ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)およびRNA誘導型エンドヌクレアーゼからなる群から選択される、項目23記載の細菌。
25. RNA誘導型エンドヌクレアーゼが、触媒的に不活性なCas9タンパク質である、項目24記載の細菌。
26. 上記酵素をコードするゲノムDNAと細胞条件下で特異的にハイブリダイズする(例えば結合する)少なくとも1つのシングルガイドRNA(sgRNA)を含む(例えば発現する)、項目25記載の細菌。
27. 上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与するポリペプチドの発現が、上記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子の転写抑制および/または翻訳抑制によって減少する(例えば阻害される)、項目2から21までのいずれか1つ記載の細菌。
28. 上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与するポリペプチドの発現が、上記ポリペプチドをコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAと細胞条件下で特異的にハイブリダイズする(例えば結合する)少なくとも1つの阻害性核酸分子を細菌に導入または発現させることによって減少する(例えば阻害される)、項目2から21までのいずれか1つ記載の細菌。
29. 阻害性核酸分子がアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイムまたは干渉RNA(RNAi)分子である、項目28記載の細菌。
30. 干渉RNA分子がマイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)または短ヘアピンRNA(shRNA)である、項目29記載の細菌。
31. 上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する内在性ポリペプチド(単数または複数)が、第1のEPS遺伝子クラスターおよび/または第2のEPS遺伝子クラスターに含まれる遺伝子(単数または複数)によってコードされる、項目2から30までのいずれか1つ記載の細菌。
32. 第1のEPS遺伝子クラスターが、配列番号174または177に見られるオープンリーディングフレーム(ORF)によって定義されるか、またはそれにオーソロガスな遺伝子を含む、項目31記載の細菌。
33. 第1のEPS遺伝子クラスターが遺伝子epsD、epsE、epsF、epsG、epsB、epsL、epsH、epsI、epsJおよびepsS、またはそれらのオーソログを含む、項目31または32記載の細菌。
34. 第1のEPS遺伝子クラスターが遺伝子epsD、epsE、epsFおよびepsG、またはそれらのオーソログを含む、項目31から33までのいずれか1つ記載の細菌。
35. 第1のEPS遺伝子クラスターが、配列番号174または177のヌクレオチド配列と少なくとも50%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、項目31から34までのいずれか1つ記載の細菌。
36. 第1のEPS遺伝子クラスターが、配列番号174のヌクレオチド配列と少なくとも50%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、項目31から34までのいずれか1つ記載の細菌。
37. 上記第1のEPS遺伝子クラスター中の少なくとも1つの遺伝子が、例えば遺伝子配列の一部または全体の欠失によって不活性化されている、項目31から36までのいずれか1つ記載の細菌。
38. epsD、epsE、epsF、epsG、epsB、epsL、epsH、epsI、epsJおよびepsS、またはそれらのオーソログから選択される少なくとも1つの遺伝子が、例えば遺伝子配列の一部または全体の欠失によって不活性化されている、項目31から37までのいずれか1つ記載の細菌。
39. epsD、epsE、epsFおよびepsG、またはそれらのオーソログから選択される少なくとも1つの遺伝子が、例えば遺伝子配列の一部または全体の欠失によって不活性化されている、項目31から38までのいずれか1つ記載の細菌。
40. 遺伝子epsD、epsE、epsFおよびepsG、またはそれらのオーソログが、例えば遺伝子配列の一部または全体の欠失によって不活性化されている、項目31から39までのいずれか1つ記載の細菌。
41. 遺伝子epsDが、配列番号6に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、遺伝子epsEが、配列番号7に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、遺伝子epsFが、配列番号8に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、遺伝子epsGが、配列番号9に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、項目39または40記載の細菌。
42. 遺伝子epsDが、配列番号92と少なくとも70%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、遺伝子epsEが、配列番号93と少なくとも70%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、遺伝子epsFが、配列番号94と少なくとも70%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、遺伝子epsGが、配列番号95と少なくとも70%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、項目41記載の細菌。
43. 遺伝子epsDが、配列番号42に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、遺伝子epsEが、配列番号43に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、遺伝子epsFが、配列番号44に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、遺伝子epsGが、配列番号45に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、項目39または40記載の細菌。
44. epsD遺伝子が、配列番号128と少なくとも70%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、遺伝子epsEが、配列番号129と少なくとも70%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、遺伝子epsFが、配列番号130と少なくとも70%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、遺伝子epsGが、配列番号131と少なくとも70%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、項目43記載の細菌。
45. 第1のEPS遺伝子クラスターが不活性化されている、項目31から44までのいずれか1つ記載の細菌。
46. 第1のEPS遺伝子クラスターが、上記クラスターの配列の一部または全体の欠失によって不活性化されている、項目31から45までのいずれか1つ記載の細菌。
47. 第1のEPS遺伝子クラスターが、遺伝子発現の欠如を引き起こすプロモーターおよび/またはリボソーム結合部位領域の改変(例えば、その領域への少なくとも1つの突然変異の導入)によって不活性化されている、項目31から45までのいずれか1つ記載の細菌。
48. 第2のEPS遺伝子クラスターが、配列番号175または179に見られるオープンリーディングフレーム(ORF)によって定義されるか、またはそれにオーソロガスな遺伝子を含む、項目31から47までのいずれか1つ記載の細菌。
49. 第2のEPS遺伝子クラスターが、配列番号175または179のヌクレオチド配列と少なくとも50%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、項目31から48までのいずれか1つ記載の細菌。
50. 第2のEPS遺伝子クラスターが、配列番号175のヌクレオチド配列と少なくとも50%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む、項目31から48までのいずれか1つ記載の細菌。
51. 上記第2のEPS遺伝子クラスター中の少なくとも1つの遺伝子が、例えば遺伝子配列の一部または全体の欠失によって不活性化されている、項目31から50までのいずれか1つ記載の細菌。
52. 第2のEPS遺伝子クラスターが不活性化されている、項目31から51までのいずれか1つ記載の細菌。
53. 第2のEPS遺伝子クラスターが、上記クラスターの配列の一部または全体の欠失によって不活性化されている、項目31から52までのいずれか1つ記載の細菌。
54. 第2のEPS遺伝子クラスターが、遺伝子発現の欠如を引き起こすプロモーターおよび/またはリボソーム結合部位領域の改変(例えば、少なくとも1つの突然変異の導入)によって不活性化されている、項目31から52までのいずれか1つ記載の細菌。
55. 上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する酵素をコードする全ての内在性遺伝子が不活性化、例えば欠失している、項目1から52までのいずれか1つ記載の細菌。
56. 細菌がメチロバチルス・フラゲラータス(Methylobacillus flagellatus)、メチロバチルス・グリコゲネス(Methylobacillus glycogenes)、メチロバチルス・プラテンシス(Methylobacillus pratensis)、メチロバチルス・リゾスファエラエ(Methylobacillus rhizosphaerae)、メチロバチルス・グラミネウス(Methylobacillus gramineus)、メチロバチルス・アルボレウス(Methylobacillus arboreus)、メチロバチルス・カリシス(Methylobacillus caricics)、メチロバチルス・メチロボランス(Methylobacillus methilovorans)およびメチロバチルス属種から選択される、項目1から55までのいずれか1つ記載の細菌。
57. 細菌がメチロバチルス・フラゲラータス(Methylobacillus flagellatus)およびメチロバチルス・グリコゲネス(Methylobacillus glycogenes)から選択される、項目1から56までのいずれか1つ記載の細菌。
58. 細菌がメチロバチルス・フラゲラータス(Methylobacillus flagellatus)である、項目1から55までのいずれか1つ記載の細菌。
59. 細菌がメチロバチルス・グリコゲネス(Methylobacillus glycogenes)である、項目1から55までのいずれか1つ記載の細菌。
60. 項目1から59までのいずれか1つ記載の細菌を、メタノール等の還元一炭素化合物、またはジメチルアミン等の炭素-炭素結合を有しない多炭素化合物を含む培養培地中にて適切な培養条件下で培養することを含む、生化学化合物を生成する方法。
61. 培養培地がメタノールを含む、項目60記載の方法。
62. 培養をバイオリアクター内で行う、項目60または61記載の方法。
63. 生化学化合物が有機酸、アミノ酸、脂肪酸およびそれらの誘導体から選択される、項目60から62までのいずれか1つ記載の方法。
加水分解したM.フラゲラータス(M.flagellatus)振盪フラスコ上清の糖含量を示す図である。濃い灰色のバーは、mg/L単位の全グルコースを表し、薄い灰色のバーは、全単量体糖を表す。エラーバーは、技術的反復試験の標準偏差である。
メチロバチルス・フラゲラータス(Methylobacillus flagellatus)の様々な株によって産生されたバイオリアクターブロスの測定された粘度を示す図である。
24時間のインキュベーション後の野生型M.フラゲラータス(M.flagellatus)およびM.グリコゲネス(M.glycogenes)の培養物の写真である。左側が野生型ABME 5および6、続いてM.フラゲラータス(M.flagellatus)における単一クラスター破壊、最後が二重破壊である。
発酵時間(x軸)に対するABME 6およびABME 131の2回の代表的なバイオリアクター発酵中の消泡剤添加(y軸)のプロットを示す図である。
野生型メチロバチルス・フラゲラータス(Methylobacillus flagellatus)(左)対二重破壊株ABME 131(右)のバイオリアクター発酵ブロスの位相差顕微鏡画像である。
親株と比較した、EPSを含まないABME 131の成長の改善を示す図である。
ここで、本発明を以下により詳細に説明する。
発明の詳細な説明
本明細書で特に定義されない限り、使用される全ての技術用語および科学用語は、生化学、遺伝学および微生物学の分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
本明細書に記載のものと同様または同等の全ての方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができ、好適な方法および材料が本明細書に記載される。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許および他の参照文献は、その全体が参照により援用される。矛盾する場合には、定義を含む本明細書が優先される。さらに、材料、方法および実施例は、特に指定のない限り、例示に過ぎず、限定を意図していない。
本発明の実施には、特に記載のない限り、当業者の技能の範囲内の細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学および組換えDNAの従来の手法が用いられる。かかる手法は、文献中で十分に説明される。例えば、Current Protocols in Molecular Biology (Frederick M. AUSUBEL, 2000, Wiley and son Inc, Library of Congress, USA);Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Third Edition, (Sambrook et al, 2001, Cold Spring Harbor, New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press);Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait ed., 1984);Mullis et al.の米国特許第4,683,195号明細書;Nucleic Acid Hybridization (B. D. Harries & S. J. Higgins eds. 1984);Transcription And Translation (B. D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984);Culture Of Animal Cells (R. I. Freshney, Alan R. Liss, Inc., 1987);Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press, 1986);B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984);Methods In ENZYMOLOGY (J. Abelson and M. Simon, eds.-in-chief, Academic Press, Inc., New York)のシリーズ、特にVols.154および155 (Wu et al. eds.)ならびにVol. 185, “Gene Expression Technology” (D. Goeddel, ed.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells (J. H. Miller and M. P. Calos eds., 1987, Cold Spring Harbor Laboratory)を参照されたい。
本発明の細菌
上述のように、本発明は、メタノールベースのバイオプロセスにおける或る特定の欠点が、メチロバチルス属の細菌において菌体外多糖(EPS)の産生を下方調節することによって克服され得るという予期せぬ驚くべき発見に基づく。
本発明は、このように、第1の態様において、菌体外多糖(EPS)の産生が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して減少するように改変されている、メチロバチルス属の遺伝子組換え細菌を提供する。
より具体的には、本発明は、上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも1つの内在性ポリペプチドの発現および/または活性が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌(参照細菌)と比較して減少するように改変されている、メチロバチルス属の遺伝子組換え細菌を提供する。
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え細菌は、上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも1つ、例えば少なくとも2つの内在性ポリペプチドの発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌(参照細菌)と比較して減少するように改変されている。
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え細菌は、上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも3つ、例えば少なくとも4つの内在性ポリペプチドの発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌(参照細菌)と比較して減少するように改変されている。
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え細菌は、上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも5つ、例えば少なくとも6つの内在性ポリペプチドの発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌(参照細菌)と比較して減少するように改変されている。
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え細菌は、上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも7つ、例えば少なくとも8つの内在性ポリペプチドの発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌(参照細菌)と比較して減少するように改変されている。
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え細菌は、上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも9つ、例えば少なくとも10個の内在性ポリペプチドの発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌(参照細菌)と比較して減少するように改変されている。
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え細菌は、上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも11個、例えば少なくとも12個の内在性ポリペプチドの発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌(参照細菌)と比較して減少するように改変されている。
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え細菌は、上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも13個、例えば少なくとも14個の内在性ポリペプチドの発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌(参照細菌)と比較して減少するように改変されている。
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え細菌は、上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも15個、例えば少なくとも16個の内在性ポリペプチドの発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌(参照細菌)と比較して減少するように改変されている。
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え細菌は、上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する全ての内在性ポリペプチドの発現が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌(参照細菌)と比較して減少するように改変されている。
幾つかの実施形態によると、上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも1つのポリペプチドは、a)配列番号1~38のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、およびb)配列番号1~38のいずれか1つと少なくとも70%、例えば少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、参照ポリペプチドと同じ機能特性を有するポリペプチドからなる群から選択される。
幾つかの実施形態によると、上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも1つのポリペプチドは、a)配列番号1~26のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、およびb)配列番号1~26のいずれか1つと少なくとも70%、例えば少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、参照ポリペプチドと同じ機能特性を有するポリペプチドからなる群から選択される。
幾つかの実施形態によると、上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも1つのポリペプチドは、a)配列番号27~38のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、およびb)配列番号27~38のいずれか1つと少なくとも70%、例えば少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、参照ポリペプチドと同じ機能特性を有するポリペプチドからなる群から選択される。
幾つかの実施形態によると、上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも1つのポリペプチドは、a)配列番号39~86のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、およびb)配列番号39~86のいずれか1つと少なくとも70%、例えば少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、参照ポリペプチドと同じ機能特性を有するポリペプチドからなる群から選択される。
幾つかの実施形態によると、上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも1つのポリペプチドは、a)配列番号39~60のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、およびb)配列番号39~60のいずれか1つと少なくとも70%、例えば少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、参照ポリペプチドと同じ機能特性を有するポリペプチドからなる群から選択される。
幾つかの実施形態によると、上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも1つの酵素は、a)配列番号61~86のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、およびb)配列番号61~86のいずれか1つと少なくとも70%、例えば少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、参照ポリペプチドと同じ機能特性を有するポリペプチドからなる群から選択される。
幾つかの実施形態によると、上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも1つのポリペプチドは、ペプチジルプロリルシス-トランスイソメラーゼ活性を有するポリペプチド、多糖排出輸送体として作用することが可能なポリペプチド;鎖長決定タンパク質として作用するポリペプチド;およびタンパク質チロシンキナーゼ活性を有するポリペプチドからなる群から選択される。
幾つかの実施形態によると、ペプチジルプロリルシス-トランスイソメラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号6に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
幾つかの実施形態によると、多糖排出輸送体として作用することが可能なポリペプチドは、配列番号7に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
幾つかの実施形態によると、鎖長決定タンパク質として作用するポリペプチドは、配列番号8に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
幾つかの実施形態によると、タンパク質チロシンキナーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号9に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
幾つかの実施形態によると、ペプチジルプロリルシス-トランスイソメラーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号42に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
幾つかの実施形態によると、多糖排出輸送体として作用することが可能なポリペプチドは、配列番号43に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
幾つかの実施形態によると、鎖長決定タンパク質として作用するポリペプチドは、配列番号44に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
幾つかの実施形態によると、タンパク質チロシンキナーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号45に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
内在性ポリペプチドの発現レベルは例えば、それ以外は同一の細菌と比較して少なくとも50%、例えば少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも100%減少し得る。
内在性ポリペプチドの発現の減少は、当該技術分野で既知の任意の好適な手段によって達成することができる。例えば、発現は、例えば遺伝子配列の一部または全体の欠失により、細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する上記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子を不活性化することによって減少させることができる。
幾つかの実施形態によると、上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも1つのポリペプチドの発現が、それ以外は同一の細菌と比較して消失している。
幾つかの実施形態によると、細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する上記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子は、例えば遺伝子配列の一部または全体の欠失によって不活性化されている。
幾つかの実施形態によると、上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する上記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子は、上記酵素をコードする内在性遺伝子をDNA切断により選択的に不活性化することが可能なレアカットエンドヌクレアーゼを細菌に導入または発現させることによって不活性化されている。内在性遺伝子を不活性化するために本発明に従って使用されるレアカットエンドヌクレアーゼは、例えば転写アクチベーター様エフェクター(TALE)ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)またはRNA誘導型エンドヌクレアーゼであり得る。
細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与するポリペプチドをコードする内在性遺伝子を不活性化する方法の1つは、CRISPRiシステムを使用することである。CRISPRiシステムは、遺伝子発現の標的抑制またはゲノム上の標的位置のブロックのためのツールとして開発された。CRISPRiシステムは、触媒的に不活性な「死んだ」Cas9タンパク質(dCas9)と、DNAに対するdCas9の結合部位を画定するガイドRNAとからなる。
幾つかの実施形態によると、細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する内在性ポリペプチドの発現は、阻害によって減少する。
上記ポリペプチドの発現の阻害は、当該技術分野で既知の任意の好適な手段によって達成することができる。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイムまたは干渉RNA(RNAi)分子、例えばマイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)または短ヘアピンRNA(shRNA)等の阻害性核酸分子の使用を伴う遺伝子サイレンシング技術によって発現を阻害することができる。
幾つかの実施形態によると、細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する内在性ポリペプチドの発現は、上記ポリペプチドをコードする内在性遺伝子の転写抑制および/または翻訳抑制によって減少する(例えば阻害される)。
幾つかの実施形態によると、細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する内在性ポリペプチドの発現は、阻害性核酸分子を細菌に導入または発現させることによって阻害される。例えば、阻害性核酸分子は、細菌において上記阻害性核酸分子の産生を引き起こすように機能するプロモーター、例えば誘導性プロモーターに操作可能に連結した、上記阻害性核酸分子をコードするヌクレオチド配列を含む外因性核酸分子によって導入することができる。好適には、阻害性核酸分子は、問題の内在性ポリペプチドをコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAと細胞条件下で特異的にハイブリダイズする(例えば結合する)ものである。標的に応じて、コードゲノムDNAの転写および/またはコードmRNAの翻訳を阻害する。
幾つかの実施形態によると、阻害性核酸分子はアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイムまたは干渉RNA(RNAi)分子である。好ましくは、かかる核酸分子は、問題のポリペプチドをコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAの相補体の少なくとも10個の連続ヌクレオチドを含む。
幾つかの実施形態によると、阻害性核酸はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。かかるアンチセンスオリゴヌクレオチドは、問題の酵素をコードする細胞mRNAおよび/またはゲノムDNAと細胞条件下で特異的にハイブリダイズする(例えば結合する)核酸分子(DNAまたはRNAのいずれか)である。
幾つかの実施形態によると、阻害性核酸分子は、ハンマーヘッド型リボザイム等のリボザイムである。リボザイム分子は、問題のポリペプチドの翻訳を防ぐためにmRNA転写産物を触媒的に切断するように設計されている。
幾つかの実施形態によると、阻害性核酸分子は干渉RNA(RNAi)分子である。RNA干渉は、RNA分子が発現を阻害する生物学的プロセスであり、通例、特定のmRNAの破壊を引き起こす。RNAi分子の例示的なタイプとしては、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)および短ヘアピンRNA(shRNA)が挙げられる。幾つかの実施形態によると、RNAi分子はmiRNAである。幾つかの実施形態によると、RNAi分子はsiRNAである。幾つかの実施形態によると、RNAi分子はshRNAである。
幾つかの実施形態によると、本発明の細菌は、細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも1つのポリペプチドの機能(例えば活性)が、改変を有しないが、それ以外は同一の微生物(参照細菌)と比較して減少するように改変されている。
少なくとも1つの内在性ポリペプチドの機能(例えば活性)の減少は、当該技術分野で既知の任意の好適な手段によって達成することができる。例えば、ポリペプチドが酵素である場合、活性の低下または喪失をもたらす1つ以上の突然変異を酵素の活性部位に導入することによって活性を減少させることができる。このように、幾つかの実施形態によると、細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する少なくとも1つの内在性酵素の活性が、活性の低下または喪失をもたらす少なくとも1つの活性部位突然変異によって減少する。少なくとも1つの活性部位突然変異は、例えば少なくとも1つの非保存的アミノ酸置換であり得る。
上述のように、本発明者らは、メチロバチルスのゲノムにおいて2つの推定EPS遺伝子クラスターを同定した。菌体外多糖(EPS)の産生に関与する内在性ポリペプチド(単数または複数)は、このように第1のEPS遺伝子クラスターおよび/または第2のEPS遺伝子クラスターに含まれる遺伝子(単数または複数)によってコードされる。
幾つかの実施形態によると、上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与する内在性ポリペプチド(単数または複数)は、第1のEPS遺伝子クラスターおよび/または第2のEPS遺伝子クラスターに含まれる遺伝子(単数または複数)によってコードされる。
幾つかの実施形態によると、第1のEPS遺伝子クラスターは、配列番号174または177に見られるオープンリーディングフレーム(ORF)によって定義されるか、またはそれにオーソロガスな遺伝子を含む。
幾つかの実施形態によると、第1のEPS遺伝子クラスターは、遺伝子epsD、epsE、epsF、epsG、epsB、epsL、epsH、epsI、epsJおよびepsS、またはそれらのオーソログを含む。
幾つかの実施形態によると、第1のEPS遺伝子クラスターは、遺伝子epsD、epsE、epsFおよびepsG、またはそれらのオーソログを含む。
幾つかの実施形態によると、第1のEPS遺伝子クラスターは、配列番号174または177のヌクレオチド配列と少なくとも50%、例えば少なくとも55%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
幾つかの実施形態によると、第1のEPS遺伝子クラスターは、配列番号174または177のヌクレオチド配列と少なくとも60%、例えば少なくとも65%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
幾つかの実施形態によると、第1のEPS遺伝子クラスターは、配列番号174または177のヌクレオチド配列と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
幾つかの実施形態によると、第1のEPS遺伝子クラスターは、配列番号174または177のヌクレオチド配列と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
幾つかの実施形態によると、第1のEPS遺伝子クラスターは、配列番号174または177のヌクレオチド配列と少なくとも90%、例えば少なくとも93%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
幾つかの実施形態によると、第1のEPS遺伝子クラスターは、配列番号174または177のヌクレオチド配列と少なくとも95%、例えば少なくとも97%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
幾つかの実施形態によると、第1のEPS遺伝子クラスターは、配列番号174のヌクレオチド配列と少なくとも50%、例えば少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
幾つかの実施形態によると、第1のEPS遺伝子クラスターは、配列番号177のヌクレオチド配列と少なくとも50%、例えば少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
幾つかの実施形態によると、第2のEPS遺伝子クラスターは、配列番号175または179に見られるオープンリーディングフレーム(ORF)によって定義されるか、またはそれにオーソロガスな遺伝子を含む。
幾つかの実施形態によると、第2のEPS遺伝子クラスターは、配列番号175または179のヌクレオチド配列と少なくとも50%、例えば少なくとも55%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
幾つかの実施形態によると、第2のEPS遺伝子クラスターは、配列番号175または179のヌクレオチド配列と少なくとも60%、例えば少なくとも65%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
幾つかの実施形態によると、第2のEPS遺伝子クラスターは、配列番号175または179のヌクレオチド配列と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
幾つかの実施形態によると、第2のEPS遺伝子クラスターは、配列番号175または179のヌクレオチド配列と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
幾つかの実施形態によると、第2のEPS遺伝子クラスターは、配列番号175または179のヌクレオチド配列と少なくとも90%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
幾つかの実施形態によると、第2のEPS遺伝子クラスターは、配列番号175のヌクレオチド配列と少なくとも50%、例えば少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
幾つかの実施形態によると、第2のEPS遺伝子クラスターは、配列番号179のヌクレオチド配列と少なくとも50%、例えば少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
幾つかの実施形態によると、上記第1のEPS遺伝子クラスター中の少なくとも1つの遺伝子が、例えば遺伝子配列の一部または全体の欠失によって不活性化されている。
幾つかの実施形態によると、少なくとも1つの遺伝子はepsD、epsE、epsF、epsG、epsB、epsL、epsH、epsI、epsJおよびepsS、またはそれらのオーソログから選択される。
幾つかの実施形態によると、少なくとも1つの遺伝子はepsD、epsE、epsFおよびepsG、またはそれらのオーソログから選択される。
幾つかの実施形態によると、遺伝子epsD、epsE、epsFおよびepsG、またはそれらのオーソログが、例えば遺伝子配列の一部または全体の欠失によって不活性化されている。
幾つかの実施形態によると、遺伝子epsDは、配列番号6に対して少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、遺伝子epsEは、配列番号7に対して少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、遺伝子epsFは、配列番号8に対して少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、遺伝子epsGは、配列番号9に対して少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。
幾つかの実施形態によると、遺伝子epsDは、配列番号6に対して少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、遺伝子epsEは、配列番号7に対して少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、遺伝子epsFは、配列番号8に対して少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、遺伝子epsGは、配列番号9に対して少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。
幾つかの実施形態によると、遺伝子epsDは、配列番号6に対して少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、遺伝子epsEは、配列番号7に対して少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、遺伝子epsFは、配列番号8に対して少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、遺伝子epsGは、配列番号9に対して少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。
幾つかの実施形態によると、epsD遺伝子は、配列番号92と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、遺伝子epsEは、配列番号93と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、遺伝子epsFは、配列番号94と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、遺伝子epsGは、配列番号95と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
幾つかの実施形態によると、epsD遺伝子は、配列番号92と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、遺伝子epsEは、配列番号93と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、遺伝子epsFは、配列番号94と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、遺伝子epsGは、配列番号95と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
幾つかの実施形態によると、epsD遺伝子は、配列番号92と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、遺伝子epsEは、配列番号93と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、遺伝子epsFは、配列番号94と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、遺伝子epsGは、配列番号95と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
幾つかの実施形態によると、遺伝子epsDは、配列番号42に対して少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、遺伝子epsEは、配列番号43に対して少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、遺伝子epsFは、配列番号44に対して少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、遺伝子epsGは、配列番号45に対して少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。
幾つかの実施形態によると、遺伝子epsDは、配列番号42に対して少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、遺伝子epsEは、配列番号43に対して少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、遺伝子epsFは、配列番号44に対して少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、遺伝子epsGは、配列番号45に対して少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。
幾つかの実施形態によると、遺伝子epsDは、配列番号42に対して少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、遺伝子epsEは、配列番号43に対して少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、遺伝子epsFは、配列番号44に対して少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードし、遺伝子epsGは、配列番号45に対して少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。
幾つかの実施形態によると、遺伝子epsDは、配列番号128と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、遺伝子epsEは、配列番号129と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、遺伝子epsFは、配列番号130と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、遺伝子epsGは、配列番号131と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
幾つかの実施形態によると、遺伝子epsDは、配列番号128と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、遺伝子epsEは、配列番号129と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、遺伝子epsFは、配列番号130と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、遺伝子epsGは、配列番号131と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
幾つかの実施形態によると、遺伝子epsDは、配列番号128と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、遺伝子epsEは、配列番号129と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、遺伝子epsFは、配列番号130と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、遺伝子epsGは、配列番号131と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え細菌は、第1のEPS遺伝子クラスターを不活性化するように改変されている。
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え細菌は、第2のEPS遺伝子クラスターを不活性化するように(さらに)改変されている。
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え細菌は、第1のEPS遺伝子クラスターおよび第2のEPS遺伝子クラスターを不活性化するように改変されている。
幾つかの実施形態によると、第1のEPS遺伝子クラスターは、上記クラスターの配列の一部または全体の欠失によって不活性化されている。
幾つかの実施形態によると、第1のEPS遺伝子クラスターは、上記クラスターのコード配列全体の欠失によって不活性化されている。
幾つかの実施形態によると、第1のEPS遺伝子クラスターは、上記クラスターの配列全体の欠失によって不活性化されている。
幾つかの実施形態によると、第1のEPS遺伝子クラスターは、遺伝子発現の欠如を引き起こすプロモーターおよび/またはリボソーム結合部位領域の改変(例えば、少なくとも1つの突然変異の導入)によって不活性化されている。
幾つかの実施形態によると、第2のEPS遺伝子クラスターは、上記クラスターの配列の一部または全体の欠失によって不活性化されている。
幾つかの実施形態によると、第2のEPS遺伝子クラスターは、上記クラスターのコード配列全体の欠失によって不活性化されている。
幾つかの実施形態によると、第2のEPS遺伝子クラスターは、上記クラスターの配列全体の欠失によって不活性化されている。
幾つかの実施形態によると、第2のEPS遺伝子クラスターは、遺伝子発現の欠如を引き起こすプロモーターおよび/またはリボソーム結合部位領域の改変(例えば、少なくとも1つの突然変異の導入)によって不活性化されている。
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え細菌は、配列番号181または183と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するヌクレオチド配列が欠失するように改変されている。幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え細菌は、配列番号181または183と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列が欠失するように改変されている。幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え細菌は、配列番号181または183と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列が欠失するように改変されている。
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え細菌は、配列番号182または184と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するヌクレオチド配列が欠失するように改変されている。幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え細菌は、配列番号182または184と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列が欠失するように改変されている。幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え細菌は、配列番号182または184と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列が欠失するように改変されている。
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え細菌は、配列番号181と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するヌクレオチド配列が欠失し、配列番号182と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するヌクレオチド配列が欠失するように改変されている。幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え細菌は、配列番号181と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列が欠失し、配列番号182と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列が欠失するように改変されている。幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え細菌は、配列番号181と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列が欠失し、配列番号182と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列が欠失するように改変されている。
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え細菌は、配列番号183と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するヌクレオチド配列が欠失し、配列番号184と少なくとも70%、例えば少なくとも75%の配列同一性を有するヌクレオチド配列が欠失するように改変されている。幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え細菌は、配列番号183と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列が欠失し、配列番号184と少なくとも80%、例えば少なくとも85%の配列同一性を有するヌクレオチド配列が欠失するように改変されている。幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え細菌は、配列番号183と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列が欠失し、配列番号184と少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列が欠失するように改変されている。
幾つかの実施形態によると、本発明の遺伝子組換え細菌は、上記細菌における菌体外多糖(EPS)の産生に関与するポリペプチドをコードする全ての内在性遺伝子が欠失するように改変されている。
本発明による細菌は、メチロバチルス属の任意の好適な細菌から生成することができる。メチロバチルスは、グラム陰性メチロトローフ細菌の一属である。
幾つかの実施形態によると、本発明の細菌は、メチロバチルス・フラゲラータス(Methylobacillus flagellatus)、メチロバチルス・グリコゲネス(Methylobacillus glycogenes)、メチロバチルス・プラテンシス(Methylobacillus pratensis)およびメチロバチルス・リゾスファエラエ(Methylobacillus rhizosphaerae)から選択される。
幾つかの実施形態によると、本発明の細菌は、メチロバチルス・フラゲラータス(Methylobacillus flagellates)およびメチロバチルス・グリコゲネス(Methylobacillus glycogenes)から選択される。
幾つかの実施形態によると、本発明の細菌は、メチロバチルス・フラゲラータス(Methylobacillus flagellatus)である。
幾つかの実施形態によると、本発明の細菌は、メチロバチルス・グリコゲネス(Methylobacillus glycogenes)である。
本発明の方法
本発明は、本発明による細菌を、メタノール等の還元一炭素化合物、またはジメチルアミン等の炭素-炭素結合を有しない多炭素化合物を含む培養培地中にて適切な培養条件下で培養することを含む、生化学化合物を生成する方法も提供する。
用いられる培養培地は、問題の細菌細胞の培養に適した任意の従来の培地とすることができ、従来技術の原理に従って構成され得る。培地は通常、それぞれの細菌の成長および生存に必要とされる全ての栄養素、例えば炭素源および窒素源、ならびに他の無機塩を含有する。好適な培地、例えば最少培地または複合培地は、商業的供給業者から入手可能であるか、または公表されているレセプト、例えばアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)の菌株カタログに従って調製することができる。当業者に既知の非限定的な標準培地としては、ルリアベルターニ(LB)ブロス、サブローデキストロース(SD)ブロス、MSブロス、酵母ペプトンデキストロース、BMMY、GMMYまたは酵母麦芽エキス(YM)ブロスが挙げられ、全て市販されている。E.コリ(E.coli)細胞等の細菌細胞の培養に適した培地の非限定的な例としては、最少培地および富栄養培地、例えばルリアブロス(LB)、M9培地、M17培地、SA培地、MOPS培地、テリフィックブロス、YT等が挙げられる。
炭素源は、当該技術分野で既知の任意の好適な炭素基質、特にメチロトローフ細菌の培養および/または発酵に一般に使用される任意の炭素基質とすることができる。特に関心が持たれる炭素源は、メタノール等の還元一炭素化合物、またはメチルアミン、またはジメチルアミン等の炭素-炭素結合を有しない多炭素化合物である。このように、幾つかの実施形態によると、培養培地は、炭素源としてメタノールを含む。培養培地中のメタノールの濃度は、一般に約0.5%(w/v)~約4%(w/v)、例えば約2%(w/v)~約4%(w/v)の範囲であり得る。幾つかの実施形態によると、培養培地中のメタノールの濃度は、約2.5%(w/v)~約3.5%(w/v)の範囲である。
窒素源として、アンモニアおよび硫酸アンモニウム等の様々なアンモニウム塩、アミン等の他の窒素化合物、ペプトン、大豆加水分解物および発酵微生物の消化物等の天然窒素源を使用することができる。ミネラルとして、一リン酸カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、塩化カルシウム等を使用することができる。
好ましくは、培養は好気条件下で、例えば振盪培養により、撹拌培養により、または通気したバイオリアクター内にて約20~約45℃、例えば約30~38℃、好ましくは約37℃の温度で行うことができる。培養物のpHは、通常は5超、例えば約6~約8、好ましくは約6.5~約7.5、より好ましくは約6.8~約7.2の範囲である。培養物のpHはアンモニア、炭酸カルシウム、様々な酸、様々な塩基および緩衝剤で調整することができる。培養は、10~70時間の範囲、好ましくは24~60時間の範囲、より好ましくは36~50時間の範囲の期間にわたって行うことができる。
培養後に、細胞等の固形物を遠心分離または膜濾過によって培養培地から除去することができる。生化学化合物は、化学化合物を培地から単離および精製する従来の方法によって回収することができる。よく知られた精製手順としては、遠心分離または濾過、沈殿、イオン交換、クロマトグラフィー法、例えばイオン交換クロマトグラフィーまたはゲル濾過クロマトグラフィー、および結晶化法が挙げられるが、これらに限定されない。方法は、生化学化合物を培養培地から回収することをさらに含み得る。
本発明の方法によって生成される生化学化合物は、本発明の細菌の培養によって得られる任意の所望の化合物であり得る。非限定的な例としては、有機酸、アミノ酸、脂肪酸およびそれらの誘導体が挙げられる。有機酸の非限定的な例としては、フマレート、グリコレート、スクシネート、マレート、マロネート、ラクテートおよびそれらの誘導体が挙げられる。アミノ酸の非限定的な例としては、グルタメート、リジン、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニンおよびそれらの誘導体が挙げられる。
本発明は、このように、本明細書で詳述される方法によって得ることができる生化学化合物を提供する。
或る特定の他の定義
「ポリペプチド」および「タンパク質」は、長さまたは翻訳後修飾(例えばグリコシル化、リン酸化、脂質化、ミリスチル化、ユビキチン化等)にかかわらず、アミド結合によって共有結合した少なくとも2つのアミノ酸のポリマーを表すために本明細書で区別なく使用される。D-およびL-アミノ酸、ならびにD-およびL-アミノ酸の混合物がこの定義に含まれる。
「核酸」または「ポリヌクレオチド」は、長さまたは塩基修飾にかかわらず、ホスホジエステル結合によって共有結合した少なくとも2つの核酸モノマー単位または塩基(例えばアデニン、シトシン、グアニン、チミン)のポリマーを表すために本明細書で区別なく使用される。
例えば宿主細胞、核酸またはポリペプチドに関連して使用される「組換え」または「非自然発生」は、そうでなければ自然界には存在しない様式で修飾された、またはそれと同一であるが、合成物質から、かつ/または組換え技術を用いた操作によって生成または誘導された、物質またはその物質の自然もしくは天然形態に対応する物質を指す。非限定的な例としては、特に、細胞の天然(非組換え)形態に見られない遺伝子を発現するか、またはそうでなければ異なるレベルで発現される天然遺伝子を発現する組換え細菌細胞が挙げられる。
本明細書で遺伝子または核酸分子の文脈において使用される「異種」または「外因性」は、それが存在する細菌のゲノムの一部として天然に存在しない、または天然に存在する場合とは異なるゲノム内の位置(単数または複数)に見られる遺伝子または核酸分子(すなわちDNAまたはRNA分子)を指す。このように、「異種」または「外因性」の遺伝子または核酸分子は、細菌に対して内因性ではなく、微生物に外因的に導入されたものである。「異種」遺伝子または核酸分子のDNA分子は、宿主DNAとして異なる生物、異なる種、異なる属または異なる界に由来し得る。
本明細書でポリペプチドの文脈において使用される「異種」は、ポリペプチドが通常は宿主微生物に見られず、または宿主微生物によって作製(すなわち発現)されず、異なる生物、異なる種、異なる属または異なる界に由来することを意味する。
本明細書で使用される場合、「オーソログ」という用語は、共通の祖先遺伝子に由来するが、異なる種に存在する遺伝子、それによりコードされる核酸分子、すなわちmRNA、またはそれによりコードされるタンパク質を指す。
遺伝子の「発現の減少」とは、改変細菌が産生する転写産物の量、それぞれ上記遺伝子によってコードされるポリペプチド(例えば酵素)の量が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して減少することを意味する。より詳細には、遺伝子の「発現の減少」とは、改変細菌が産生する転写産物の量、それぞれ上記遺伝子によってコードされるポリペプチド(例えば酵素)の量が、改変を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して少なくとも10%、例えば少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも100%減少することを意味する。遺伝子発現のレベルは、PCR、サザンブロッティング等を含む既知の方法によって決定することができる。加えて、遺伝子発現のレベルは、ノーザンブロッティング、定量RT-PCR等を含む様々な既知の方法を用いて、遺伝子から転写されるmRNAの量を測定することで推定することができる。遺伝子によってコードされるポリペプチドの量は、ELISA、免疫組織化学またはウエスタンブロッティング等を含む既知の方法によって測定することができる。
遺伝子の発現は、遺伝子によってコードされるポリペプチドの細胞内活性が、該突然変異を有しないが、それ以外は同一の細菌と比較して減少するように、細菌のゲノム内の遺伝子に突然変異を導入することによって減少させることができる。遺伝子の発現の減少をもたらす突然変異としては、遺伝子によってコードされるポリペプチドにおいてアミノ酸置換を引き起こす1ヌクレオチド以上の置換(ミスセンス突然変異)、終止コドンの導入(ナンセンス突然変異)、フレームシフトを引き起こすヌクレオチドの欠失もしくは挿入、薬剤耐性遺伝子の挿入、または遺伝子の一部もしくは遺伝子全体の欠失が挙げられる(Qiu and Goodman, 1997;Kwon et al., 2000)。プロモーター、シャイン-ダルガノ(SD)配列等の発現調節配列の改変等によっても発現を減少させることができる。遺伝子の発現は、「λ-レッド媒介遺伝子置換」等の遺伝子置換によって減少させることもできる(Datsenko and Wanner, 2000)。λ-レッド媒介遺伝子置換は、本明細書に記載される1つ以上の遺伝子を不活性化する特に好適な方法である。
「不活性化する」、「不活性化」および「不活性化した」は、遺伝子または遺伝子クラスターの文脈において使用される場合、問題の遺伝子または遺伝子クラスターがもはや機能性タンパク質を発現しないことを意味する。遺伝子もしくは遺伝子クラスターの配列の一部もしくは全体の欠失、遺伝子もしくは遺伝子クラスターのリーディングフレームの移動、ミスセンス/ナンセンス突然変異の導入、または遺伝子発現を制御する配列、例えばプロモーター、エンハンサー、アテニュエーター、リボソーム結合部位等を含む遺伝子もしくは遺伝子クラスターの調節領域の改変のために改変DNA領域が遺伝子または遺伝子クラスターを天然に発現することができない可能性がある。好ましくは、対象の遺伝子または遺伝子クラスターは、遺伝子置換等による遺伝子または遺伝子クラスターの配列の一部または全体の欠失によって不活性化される。不活性化は、対象の遺伝子または遺伝子クラスターをDNA切断、好ましくは二本鎖切断により選択的に不活性化することが可能なレアカットエンドヌクレアーゼを導入または発現させることによっても達成され得る。本発明の文脈における「レアカットエンドヌクレアーゼ」としては、転写アクチベーター様エフェクター(TALE)ヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)およびRNA誘導型エンドヌクレアーゼが挙げられる。
細菌のゲノム内の遺伝子または遺伝子クラスターの有無は、PCR、サザンブロッティング等を含む既知の方法によって検出することができる。加えて、遺伝子発現のレベルは、ノーザンブロッティング、定量RT-PCR等を含む様々な既知の方法を用いて、遺伝子または遺伝子クラスターから転写されるmRNAの量を測定することで推定することができる。遺伝子または遺伝子クラスターによってコードされるポリペプチドの量は、SDS-PAGEに続くイムノブロッティングアッセイ(ウエスタンブロッティング分析)等を含む既知の方法によって測定することができる。
本明細書で使用される場合、ポリペプチド(本明細書に記載される酵素等)の発現が「減少した」、「減少する」またはその「減少」とは、改変細菌における上記ポリペプチドの発現が、上記改変を有しないが、それ以外は同一の細菌(対照)における上記ポリペプチドの発現と比較して低下することを意味する。改変細菌におけるポリペプチドの発現は、上記改変を有しないが、それ以外は同一の細菌(対照)における上記ポリペプチドの発現と比較して少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%もしくは100%、または10%~100%の整数の任意のパーセンテージ(例えば6%、7%、8%等)で低下し得る。より詳細には、ポリペプチドの発現が「減少した」、「減少する」またはその「減少」とは、改変細菌におけるポリペプチドの量が、上記改変を有しないが、それ以外は同一の細菌(対照)における上記ポリペプチドの量と比較して少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%もしくは100%、または10%~100%の整数の任意のパーセンテージ(例えば6%、7%、8%等)で低下することを意味する。細菌におけるポリペプチドの発現または量は、ELISA、免疫組織化学、ウエスタンブロッティングまたはフローサイトメトリー等の手法を含む当該技術分野で既知の任意の好適な手段によって決定することができる。
本明細書で使用される場合、ポリペプチド(本明細書に記載される酵素等)の発現が「消失した」とは、改変細菌における上記ポリペプチドの発現が、上記改変を有しないが、それ以外は同一の細菌(対照)における上記ポリペプチドの発現と比較して検出可能でないことを意味する。
本明細書で使用される場合、ポリペプチド(本明細書に記載される酵素等)の活性が「減少した」、「減少する」またはその「減少」とは、改変細菌における上記ポリペプチドの触媒活性が、上記改変を有しないが、それ以外は同一の細菌(対照)における上記ポリペプチドの触媒活性と比較して低下することを意味する。細菌微生物におけるポリペプチドの活性は、上記改変を有しないが、それ以外は同一の細菌(対照)における上記ポリペプチドの発現と比較して少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%もしくは100%、または10%~100%の整数の任意のパーセンテージ(例えば6%、7%、8%等)で低下し得る。細菌におけるポリペプチドの活性は、任意の好適なタンパク質および酵素活性アッセイによって決定することができる。
「発現」は、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾および分泌を含むが、これらに限定されない、ポリペプチド(例えば、コードされる酵素)の産生に関与する任意の工程を含む。
本明細書で使用される場合、遺伝子または遺伝子クラスターの「調節領域」は、コード配列の発現に影響を与える核酸配列を指す。調節領域は、当該技術分野で既知であり、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位、マトリックス付着領域、および/またはコード配列の発現を調節する他の要素が挙げられるが、これらに限定されない。
「置換」または「置換された」は、或るアミノ酸残基を別のアミノ酸残基に置き換えることによるポリペプチドの改変を指し、例えばポリペプチド配列中のセリン残基をグリシンまたはアラニン残基で置き換えることは、アミノ酸置換である。ポリヌクレオチドに関して使用される場合、「置換」または「置換された」は、或るヌクレオチドを別のヌクレオチドで置き換えることによるポリヌクレオチドの改変を指し、例えばポリヌクレオチド配列中のシトシンをチミンで置き換えることは、ヌクレオチド置換である。
「保存的置換」は、ポリペプチドに関連して使用される場合、アミノ酸残基を同様の側鎖を有する異なる残基で置換することを指し、したがって、通例、ポリペプチド中のアミノ酸を同じまたは同様のクラス内のアミノ酸で置換することを含む。例としては、限定されるものではないが、脂肪族側鎖を有するアミノ酸は、別の脂肪族アミノ酸、例えばアラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンで置換されてもよく、ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸は、ヒドロキシル側鎖を有する別のアミノ酸、例えばセリンおよびトレオニンで置換され、芳香族側鎖を有するアミノ酸は、芳香族側鎖を有する別のアミノ酸、例えばフェニルアラニン、チロシン、トリプトファンおよびヒスチジンで置換され、塩基性側鎖を有するアミノ酸は、塩基性側鎖を有する別のアミノ酸、例えばリジンおよびアルギニンで置換され、酸性側鎖を有するアミノ酸は、酸性側鎖を有する別のアミノ酸、例えばアスパラギン酸またはグルタミン酸で置換され、疎水性または親水性アミノ酸は、それぞれ別の疎水性または親水性アミノ酸で置き換えられる。
「非保存的置換」は、ポリペプチドに関して使用される場合、ポリペプチド中のアミノ酸を側鎖の特性が顕著に異なるアミノ酸で置換することを指す。非保存的置換では、定義された基の中ではなく、その間のアミノ酸を使用することができ、(a)置換(例えば、グリシンの代わりにセリン)の領域におけるペプチド骨格の構造、(b)電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖の嵩高さに影響を与える。例として、限定されるものではないが、例示的な非保存的置換は、塩基性または脂肪族アミノ酸で置換された酸性アミノ酸;小型のアミノ酸で置換された芳香族アミノ酸;および疎水性アミノ酸で置換された親水性アミノ酸であり得る。
本明細書で使用される場合、「ベクター」は、それが連結した別の核酸分子を輸送することができる核酸分子を指す。ベクターの一種は、付加的な核酸セグメントがライゲートし得る環状二本鎖核酸ループを指す「プラスミド」である。或る特定のベクターは、それが操作可能に連結した遺伝子の発現を誘導することができる。かかるベクターは、本明細書で「発現ベクター」と称される。或る特定の他のベクターは、細菌のゲノムへの外因性核酸分子の挿入を促進することができる。かかるベクターは、本明細書で「形質転換ベクター」と称される。概して、組換え核酸技術に有用なベクターは、プラスミドの形態であることが多い。プラスミドがベクターの最も一般的に使用される形態であることから、本明細書では、「プラスミド」および「ベクター」は区別なく使用され得る。多数の好適なベクターが当業者に既知であり、市販されている。
本明細書で使用される場合、「プロモーター」は、RNAポリメラーゼおよび転写の開始に必要とされ得る他の因子の認識および結合部位を与えることによってコード領域の発現を制御する、通常は構造遺伝子のコード領域の上流(5’)にあるDNAの配列を指す。プロモーターの選択は、関心の核酸配列によって決まる。好適な「プロモーター」は一般に、本発明の細菌における転写の開始を支持し、mRNA分子の産生を引き起こすことができるものである。
本明細書で使用される場合、「操作可能に連結した」とは、記載の構成要素が意図されるように機能することを可能にする関係にある並置を指す。コード配列に「操作可能に連結した」制御配列は、制御配列に適合する条件下でコード配列の発現が達成されるようにライゲートする。プロモーター配列は、遺伝子の転写開始部位に、遺伝子の転写を調節するのに十分に近接している場合に「操作可能に連結している」。
「配列同一性のパーセンテージ」、「%配列同一性」および「パーセント同一性」は、ヌクレオチド配列と参照ヌクレオチド配列との間またはアミノ酸配列と参照アミノ酸配列との間の配列同一性を指す。配列同一性は、比較を目的としてアラインメントされ得る各配列中の位置を比較することによって決定することができる。比較される配列中の位置が同じ塩基またはアミノ酸で占められる場合、分子はその位置で同一である。ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間の同一性の程度は、それぞれヌクレオチドまたはアミノ酸配列に共有される位置での同一または一致するヌクレオチドまたはアミノ酸の数の関数である。GCG配列分析パッケージ(ウィスコンシン大学マディソン校、ウィスコンシン州)の一部として利用可能であり、デフォルト設定で使用することができるFASTAまたはBLASTを含む、様々なアラインメントアルゴリズムおよび/またはプログラムを用いて2つの配列間の同一性を計算することができる。
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、それが用いられる数の数値のプラスまたはマイナス10%を意味する。
数値の限界または範囲が本明細書において定められる場合、端点が含まれる。また、数値の限界または範囲内の全ての値および部分範囲は、明示的に書き出されるかのように具体的に含まれる。
本明細書で使用される場合、不定冠詞「a」および「an」は、文脈上そうでないことが明らかに指示されない限り、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味する。
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する」およびその文法的変形語は、記載される特徴、工程または構成要素を指定するとみなされるが、その1つ以上の付加的な特徴、工程、構成要素または群を加えることを排除するものではない。
本発明を一般的に説明したが、例示のみを目的として本明細書に提示され、特に指定のない限り、限定を意図するものではない或る特定の具体例を参照することによって更なる理解を得ることができる。
実施例
実施例1:メチロバチルス・フラゲラータス(Methylobacillus flagellatus)およびメチロバチルス・グリコゲネス(Methylobacillus glycogenes)におけるEPS産生遺伝子の同定
バイオインフォマティクス分析に基づき、幾つかのゲノム遺伝子座を破壊のために選択した。メチロバチルス・フラゲラータス(Methylobacillus flagellatus)における2つのEPS関連遺伝子クラスターの遺伝的位置は、以前に公表されている(Chistoserdova et al., 2007)。第1のメチロバチルス・フラゲラータス(Methylobacillus flagellatus)EPS産生遺伝子クラスター(配列番号87~112)における遺伝子をアノテーションするために、公表されたメチロバチルス属種12Sメタノラン合成クラスター(Yoshida et al., 2000)からの遺伝子のホモログを、Pythonプログラミング言語の特注スクリプトを用いて、NCBI BLASTタンパク質検索によりメチロバチルス・フラゲラータス(Methylobacillus flagellatus)ゲノムと比較した。E値、クエリーカバレッジおよび配列同一性からなる計算された組合せスコアに基づいてトップヒットを選択した。次いで、各遺伝子の単一トップヒットを、ゲノム配列において手動で位置決めし、アノテーションした。これらのトップヒットの位置は、公表された第1のクラスターの位置と一致した。各遺伝子について明らかなホモログが見られなかったため、最も遠いホモログの間の全ての遺伝子をクラスターの一部とみなした。このようなアノテーションされなかった遺伝子の殆どが糖および多糖関連遺伝子をコードしていた。同じ手順を用いて、メチロバチルス・グリコゲネス(Methylobacillus glycogenes)における完全にアノテーションされなかったEPSクラスターを同定した(配列番号125~146)。
メチロバチルス・フラゲラータス(Methylobacillus flagellatus)における第2のEPS関連クラスターを予測した(配列番号113~124)。これらの遺伝子をメタノランクラスターと比較するBLAST検索を行ったが、明らかなホモログは見られなかった。このクラスター内の個々の遺伝子のタンパク質産物を、全ての非冗長タンパク質配列に対するNCBIタンパク質BLAST検索によって同定し、それぞれのトップヒットを上記のように選択した。このメチロバチルス・フラゲラータス(Methylobacillus flagellatus)タンパク質クラスターからの各遺伝子のタンパク質配列を、メチロバチルス・グリコゲネス(Methylobacillus glycogenes)ゲノムにおいてNCBIタンパク質BLASTを用いて横断検索した。トップヒットは、メチロバチルス・グリコゲネス(Methylobacillus glycogenes)において同様のクラスターを形成することが見出された(配列番号147~172)。
各EPS関連遺伝子クラスターにおいて同定されたオープンリーディングフレーム(ORF)を下記表1~4に示す。
epsD、epsE、epsFおよびepsGとしてアノテーションされたORF(M.フラゲラータス(M.flagellatus)では配列番号6~9、M.グリコゲネス(M.glycogenes)では配列番号42~45)を、メチロバチルス属種株12におけるEPS産生必須遺伝子との類似性に基づいて欠失のために選択した(Yoshida et al., 2003)。第2のEPSクラスターが他の特性化されたEPSクラスターにおいて明らかなホモログを有しなかったため、M.フラゲラータス(M.flagellatus)における12個全てのORF(配列番号27~38)およびメチロバチルス・グリコゲネス(Methylobacillus glycogenes)における26個全てのORF(配列番号61~86)を欠失のために選択した。
実施例2:DNAの欠失
一方のEPS産生クラスターまたは両方のEPS産生クラスターが欠失したABME 5およびABME 6の改変株を作製した。ゲノム編集は、組込み部位の上流および下流に2kb長の配列が隣接したカナマイシンまたはリファンピシン耐性カセットからなる線状DNAフラグメントを導入することによって達成した。DNAフラグメントをエレクトロポレーションによってABME 5およびABME 6に形質転換した。形質転換体を20g/L寒天、50μg/mLカナマイシンまたは5μg/mLリファンピシンを含有する選択PM7プレートに24~48時間プレーティングした。ABME 5由来株は30℃でインキュベートした。ABME 6由来株は37℃で培養した。正確なクローンがコロニーPCRによって確認された。DNA欠失によって作製した株を表6に挙げる。
実施例3:メチロバチルス・フラゲラータス(Methylobacillus flagellatus)におけるEPS遺伝子破壊の前後の振盪フラスコ培養物中の全EPSの測定
ABME 6におけるEPS産生遺伝子の欠失の影響を評価するために、3つの改変ABME 6株(ABME 80、ABME 82およびABME 131)を実施例3に記載のように作製し、EPS産生について試験した。
確認された形質転換体をPM7+50μg/mLカナマイシン寒天プレート上で一晩成長させた。単一コロニーをバッフル付き250mL振盪フラスコ内で25mL PM7培地+25μg/mLカナマイシンに再懸濁し、200rpmで一晩インキュベートした。翌日、バッフル付き250mL振盪フラスコ内の50mL PM7培地+25μg/mLカナマイシンに2.5mLの一晩培養物を接種した。全てのABME 5由来株を30℃で培養し、全てのABME 6由来株を37℃で培養した。次いで、培養物を氷上で冷却し、2mLエッペンドルフチューブに分取し、4℃の標準卓上遠心機上にて15000rpmで15分間遠心分離した。細胞ペレット上にEPSの層が見えた時点で、上清に戻して混合した。培養上清をEPS加水分解のために保存した。上清の半量の6M TFA(トリフルオロ酢酸)を添加し、最終TFA濃度を3Mとすることによって加水分解を行った。120℃に加熱したサーモブロックにチューブを入れ、6時間インキュベートした。加水分解後に、液体(TFAを含む)を完全に乾燥するまで80℃で蒸発させた。乾燥した塊を0.5M NaOH(元の培養物アリコートと同じ容量)に再懸濁し、単量体糖についてHPLCで分析した。
ABME 6は、遠心分離後に細胞ペレットの上に目に見えるスライム層を生じ、加水分解後の全単量体糖は約1g/Lに達した。単一クラスター破壊(ABME 80およびABME 82)は、目に見えるスライム層を有しなかったが、依然として約500mg/Lの全糖を生じた。興味深いことに、グルコースと全糖との比率は、破壊された遺伝子クラスターに応じて逆転したが、これは産生される2つの異なるタイプのEPSによる可能性が最も高い。両方のクラスターが破壊された場合(株ABME 131)、糖は検出限界未満であった。
実施例4:EPS遺伝子破壊の前後のメチロバチルス・フラゲラータス(Methylobacillus flagellatus)のリアクター培養物における粘度の測定
EPS産生の破壊の前後の発酵ブロス粘度の変化を評価するために、酸素制限下での5リットルバイオリアクター発酵において株を比較した。バイオリアクター種培養物は、常に以下のように調製した。250mLバッフル付き振盪フラスコ内の25mLのPM7培地に、ストックODを5に調整した250uLの株クライオストックを接種し、0.05の開始ODを生じさせた。培養物を200rpm、37℃で一晩インキュベートした。朝に、2Lバッフル付き振盪フラスコ内の200mLのPM7培地に10%(20mL)の一晩培養物を接種し、OD約1(±0.2)まで成長させた。次いで、培養物を用いて、2.5L開始容量の滅菌PM3培地を5Lバイオリアクター(8%の接種材料)に接種した。NH4OHの自動添加によりpHを7に維持し、温度を37℃に維持した。
酸素制限プロセスについては、メタノールを自動的に供給し、濃度を3~6g/Lに維持した。リアクターの通気および撹拌を最大限に維持したが、プロセス中の酸素濃度は常に0%に低下した。OD、ミネラルおよび代謝産物の測定のためにブロスを定期的にサンプリングした。プロセスの最後に粘度を測定し、結果を図2にまとめる。野生型M.フラゲラータス(M.flagellatus)発酵ブロスは、サンプリング時に400センチポアズと高粘性であった。別の種のメチロバチルスであるABME 145を同様に測定したが、同様に422センチポアズの粘性のブロスを生じた。二重破壊により、明らかにより低粘性のブロスが得られ、先のサンプルでは可能でなかった標準卓上装置を用いた遠心分離および濾過が可能であった。粘度計でこの評価を確認したところ、35cP、すなわちほぼ10倍の粘度の低下が測定された。エシェリキア・コリ(Escherichia coli)発酵ブロスの代表的なサンプルも比較のために測定した。
実施例5:メチロバチルス・フラゲラータス(Methylobacillus flagellates)におけるEPS遺伝子除去の前後の振盪フラスコでの発泡の低減の測定
EPS欠損株が顕著に少ない発泡を示すことが観察された。ABME 6とEPS欠損突然変異株(ABME 82およびABME 131)との泡の形成を比較するために、実施例3に記載のように株を培養した。
泡の形成を測定するために、フラスコをシェーカーから取り外し、液体を5分間沈降させた。液体の上の泡層を巻き尺で測定した(図3)。野生型培養物は、液体の上に0.5~1cmの泡層を生じたが、単一クラスター破壊では、液体メニスカスに約1mmの泡しか蓄積しなかった。二重破壊培養物では、泡は全く見られなかった。
実施例6:メチロバチルス・フラゲラータス(Methylobacillus flagellatus)におけるEPS遺伝子破壊の前後のバイオリアクター培養での発泡の低減の測定
EPS産生の破壊の前後の発酵ブロスの発泡の変化を評価するために、5リットルバイオリアクター発酵において株を比較した。泡の形成量は、消泡剤(SAG 5693)の添加量によって概算した。発酵は炭素制限下で行った。
実施例5に記載のようにリアクターに接種した。炭素制限を達成するために、50%メタノールを、最高の通気および撹拌設定でpO2値を約30%に維持するように動的計算した速度でリアクターに自動的に供給した。添加したメタノールは即座に消費され、検出レベル未満に維持された。消泡剤は、発酵ブロスのメニスカス上に設置された検出器に泡が到達したときに自動的に添加された。ABME 6およびABME 131をこの方法で試験した。ABME 131の場合、消泡剤の添加は5時間後に開始した。ABME 131の発酵では、発酵時間に応じて約60%少ない消泡剤を添加した(図4)。
実施例7:EPS遺伝子破壊の前後のメチロバチルス・フラゲラータス(Methylobacillus flagellatus)細胞集合体の顕微鏡画像
EPS産生の破壊の前後の細胞凝集の変化を評価するために、実施例3に記載のように酸素制限下での5リットルバイオリアクター発酵において株を培養した。
ブロスのサンプルをZeiss Axioplan 2顕微鏡でZeiss Ph2 Plan-NEOFLUAR 40x対物レンズ(NA 0.75)を通した位相差顕微鏡法によって観察し、sCMOSカメラで記録した。ABME 6の細胞は大きな凝集塊を形成し、EPSマトリックスに固定化されていた(図5)。二重破壊株ABME 131の場合、細胞は溶液中で個々に浮遊し、凝集は最小であった。
実施例8:EPSを含まないM.フラゲラータス(M.flagellates)のメタノール耐性の改善
高メタノール濃度に対する耐性は、効率的なバイオプロセスにとって重要なパラメーターである。EPSを産生することができない株においてメタノール耐性が低下していないことを確認するために、ABME 6およびそのEPS産生派生株ABME 131においてメタノール濃度を上昇させた際の成長を試験した。
実施例4に記載のように振盪フラスコ内で株を試験した。メタノール耐性を試験するために、初期メタノール濃度を4.5%まで上昇させた。24時間後にOD600を測定した。
驚くべきことに、ABME 131のメタノール耐性は、ABME 6と比較して高かった。例えば、2.75%の初期メタノール濃度では、EPSを含まないABME 131は、1.6のOD600まで成長したが、野生型ABME 6は、0.3のOD600までしか成長しなかった。成長の差は、2.75%で最も顕著であった。しかしながら、ABME 6と比較したABME 131の成長の改善は、全てのメタノール濃度で明らかであった(図6)。
本明細書中に引用した参照文献のリスト
Chistoserdova, L. et al. (2007) ‘Genome of Methylobacillus flagellatus, Molecular Basis for Obligate Methylotrophy, and Polyphyletic Origin of Methylotrophy’, Journal of Bacteriology. American Society for Microbiology Journals, 189(11): 4020-4027.
Hattori, M. et al. (2020) Methylobacillus glycogenes JCM 2850, whole genome shotgun sequencing p - Nucleotide - NCBI.
Yoshida, T. et al. (2000) ‘Saccharide production from methanol by transposon 5 mutants derived from the extracellular polysaccharide-producing bacterium Methylobacillus sp. strain 12S’, Applied Microbiology and Biotechnology. doi: 10.1007/s002530000407.
Yoshida, T. et al. (2003) ‘Genes involved in the synthesis of the exopolysaccharide methanolan by the obligate methylotroph Methylobacillus sp. strain 12S’, Microbiology. Microbiology Society, pp. 431-444. doi: 10.1099/mic.0.25913-0.
Qui Z and Goodman MF: The Escherichia coli polB locus is identical to dinA, the structural gene for DNA polymerase II. Characterization of Pol II purified from a polB mutant. J Biol Chem. 1997, 272(13): 8611-8617.
Kwon DH, Pena JA, Osato MS, Fox JG, Graham DY, Versalovic J: Frameshift mutations in rdxA and metronidazole resistance in North American Helicobacter pylori isolates. J Antimicrob Chemother 2000, 46(5): 793-796
Datsenko KA, Wanner BL: One-step inactivation of chromosomal genes in Escherichia coli K-12 using PCR products. Proc Natl Acad Sci U S A 2000, 97:6640-6645.