JP7747011B2 - 非調質円形溶接鋼管およびその製造方法 - Google Patents
非調質円形溶接鋼管およびその製造方法Info
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Description
[1] 鋼管母材の成分組成は、質量%で、
C:0.10~0.16%、
Si:0.50%以下、
Mn:1.20~1.80%、
P:0.030%以下、
S:0.006%以下を含有し、
さらに、Cu:0.50%以下、
Ni:0.50%以下、
Cr:0.50%以下、
Mo:0.30%以下、
Nb:0.08%以下、
V:0.08%以下、
Ti:0.03%以下、
Ca:0.0050%以下
のうちから選ばれた1種以上を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
下記(1)式で定義されるPcmyが0.17~0.22である成分組成を有し、
前記鋼管母材の板厚をtとするとき、前記鋼管母材の表面から(1/8)t~(3/8)tの領域におけるミクロ組織は、フェライトと該フェライトより硬質の第二相とを有し、
前記フェライトの面積率は30~70%であり、
前記フェライトと前記第二相との硬度差は平均でHV40~80であり、
前記鋼管の長手方向で、引張強度:590MPa以上、かつ、降伏比:85%以下である、
非調質円形溶接鋼管。
Pcmy=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/7+V/10+5B・・・式(1)
ただし、式(1)中における元素記号は各元素の含有量(質量%)を意味する。含有しない元素については0を代入する。
[2] [1]に記載の成分組成を有する鋼素材を1000~1250℃の温度に加熱する加熱工程と、
前記加熱された鋼素材を熱間圧延して熱延鋼板とする熱間圧延工程と、
前記熱延鋼板を、板厚中央温度で、
冷却開始温度:(Ar3-70℃)~(Ar3-10℃)、
冷却速度:3℃/s以上、
冷却停止温度:400℃超えかつ620℃以下
で冷却する加速冷却工程と、
前記加速冷却された鋼板を冷間成形で筒状に加工する冷間加工工程と、
前記冷間加工で筒状に加工された鋼板の突合せ部を溶接して溶接鋼管とする溶接工程と、
を有する、
鋼管長手方向で、引張強度:590MPa以上、かつ、降伏比:85%以下である非調質円形溶接鋼管の製造方法。
[3] さらに、前記溶接工程で製造された溶接鋼管に拡管を施す拡管工程を有する、[2]に記載の、鋼管長手方向で、引張強度:590MPa以上、かつ、降伏比:85%以下である非調質円形溶接鋼管の製造方法。
Cは、鋼の強度を増加させるとともに、フェライト以外の硬質相の含有量を増加させる作用を有する元素であり、高強度かつ低降伏比を確保するために有用な元素である。本発明で目的とする高強度と低降伏比を確保するために、C含有量は0.10%以上とし、0.13%以上であることが好ましい。一方、Cを過剰に含有させると溶接性が顕著に低下するため、C含有量は0.16%以下とする。
Siは、強度を上昇させる作用のある元素である。この効果を発揮されるため、Si含有量は0.10%以上であることが好ましい。しかし、Siを過剰に含有すると母材の靭性が低下するとともに、溶接熱影響部の靭性が低下する。このため、Si含有量は0.50%以下とし、好ましくは0.35%以下である。
Mnは、鋼の強度を増加させる作用を有する元素である。本発明では、他の合金元素の含有を最小限に抑え、目的とする引張強度590MPa以上の高強度を確保するために、Mn含有量は1.20%以上とし、好ましくは1.30%以上とする。一方、Mnを過剰に含有すると、母材の靭性が低下するとともに、溶接熱影響部の靭性が著しく低下する。このため、Mn含有量は1.80%以下とし、1.60%以下であることが好ましい。
Pは、鋼の強度を増加させるが靭性を低下させる作用を有する元素である。さらに、溶接部の靭性を著しく低下させる作用を有する元素である。このような理由から、本発明ではできるだけPを低減することが望ましい。よって、P含有量は0.030%以下とし、0.020%以下であることが好ましく、0.015%以下であることがより好ましい。
Sは、通常、介在物として鋼中に存在し、延性、靭性を低減させるとともに、熱間脆性を生じさせる作用を有する元素である。また、S含有量が過剰な場合、鋼素材の中央偏析部に多量のMnSが生成し、鋳造欠陥等の欠陥が生じやすくなるとともに、母材および溶接部の靭性を低下させる。このため、Sできるだけ低減することが望ましく、S含有量は0.006%以下とし、0.004%以下であることが好ましい。
Cuは、固溶強化や焼入れ性の増加を介して、鋼の強度を増加させる作用を有する元素である。この効果は、Cu含有量が0.05%以上で発揮されるので、Cuを含有する場合にはその含有量は0.05%以上であることが好ましい。一方で、Cu含有量が過剰であると、熱間脆性が顕著となり、鋼板のそして鋼管母材の表面性状の劣化を招く。このため、Cuを含有する場合には、その含有量を0.50%以下とし、0.30%以下であることが好ましい。
Niは、靭性を向上させるとともに、靭性の低下を招くことなく鋼の強度を増加させる作用を有する元素である。さらに、Niは、溶接熱影響部の靭性への悪影響も小さい元素である。よって、Niを含有する場合、その含有量は0.05%以上であることが好ましい。一方、Niを過剰に含有すると、製鋼性の疵が発生し、スラブ手入れなどを必要とする。このため、Niを含有する場合には、その含有量を0.50%以下とし、0.30%以下であることが好ましい。
Crは、焼入れ性の向上を介して鋼の強度を増加させる作用を有し、高強度化のためには有用な元素である。この効果は、Cr含有量が0.05%以上で発揮されるので、Crを含有する場合にはその含有量は0.05%以上であることが好ましい。一方で、Crを過剰に含有すると、溶接性と溶接熱影響部の靱性とが顕著に劣化する。このため、Crを含有する場合、その含有量は0.50%以下とし、0.30%以下であることが好ましい。
Moは、焼入れ性の向上を介して鋼の強度を増加させる作用を有し、高強度化のためには有用な元素である。この効果は、Mo含有量が0.05%以上で発揮されるので、Moを含有する場合にはその含有量は0.05%以上であることが好ましい。一方で、Moは0.30%を超える含有は、溶接性が劣化する。また、製造コストの増大を招く。このため、Moを含有する場合、Moの含有量は0.30%以下とし、0.25%以下であることが好ましい。
Nbは、焼入れ性を向上させる作用を有する元素である。また、Nbは制御圧延の効果を促進させ、ミクロ組織を微細化させて、鋼の強度を増加させる作用を有する元素である。これらの効果はNb含有量が0.01%以上で発揮されるので、Nbを含有する場合、その含有量は0.01%以上であることが好ましい。一方、Nbを過剰に含有すると母材の靭性および溶接熱影響部の靭性を低下させる。このため、Nbを含有する場合には、Nb含有量は0.08%以下とし、0.04%以下であることが好ましい。
Vは、析出硬化を介して鋼の強度を増加させる作用を有し、高強度化のためには有用な元素である。この効果を発揮させるため、Vを含有する場合、その含有量は0.01%以上であることが好ましい。一方、Vを過剰に含有すると、母材の靭性低下および溶接熱影響部の靭性低下を招く。このため、Vを含有する場合には、V含有量は0.08%以下とし、0.05%以下であることが好ましい。
Tiは、Nとの結合力が強く、凝固時にTiNとして析出し、溶接時に溶接熱影響部のオーステナイト粒の粗大化を抑制するとともに、フェライト変態核として作用し溶接熱影響部の高靭性化に寄与する元素である。この効果を発揮させるため、Tiを含有する場合、その含有量は0.01%以上であることが好ましい。一方で、Tiを過剰に含有する場合、TiN粒の粗大化を促進し、上記した効果が期待できなくなる。このため、Tiを含有する場合には、Ti含有量は0.03%以下とし、0.02%以下であることが好ましい。
Caは、硫化物の形態を制御する効果があり、母材の靭性および延性の向上に寄与する。また、Caは、Ca硫化物が鋼中に微細に分散した場合には、フェライト変態核として作用し、溶接熱影響部の高靭性化に寄与する元素である。これらの効果を発揮させるため、Caを含有する場合、その含有量は0.0010%以上であることが好ましい。一方で、Caを過剰に含有すると、過剰の介在物が生成され、靭性が低下する場合がある。このため、Caを含有する場合には、Ca含有量は0.0050%以下とし、0.0040%以下であることが好ましい。
Pcmy=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/7+V/10+5B・・・式(1)
ただし、式(1)中における元素記号は各元素の含有量(質量%)を意味する。含有しない元素については0を代入する。
本発明は、鋼管の母材を、軟質相と硬質相の複相組織に制御することで低降伏比化を達成し、その軟質相としてフェライトを用いる。硬質相は、ベイナイト、マルテンサイト、島状マルテンサイト(MA:Martensite-Austenite Constituent)、パーライト、などやその混合組織である。硬質相が複数の種類の組織で構成される場合でも、フェライト以外の組織全体を第二相と称する。
本発明は、鋼管の母材を、軟質相と硬質相の複相組織に制御することにより低降伏比化を達成する。低降伏比化の効果を発現するため、フェライトの面積率は30%以上とし、35%以上であることが好ましい。フェライトの面積率が過剰となると降伏比が大きくなるので、フェライトの面積率は70%以下とし、65%以下であることが好ましい。
上述のように、軟質相(フェライト)と硬質相(フェライト以外の組織からなる第二相)の硬さの差が大きいほど、鋼管母材は低降伏比化する。その効果により鋼管長手方向の降伏比を85%以下に制御するためには、フェライトと第二相との硬度差がHV40以上を必要とするため、硬度差はHV40以上であり、HV45以上であることが好ましい。フェライトと第二相との硬度差が過度に大きいと、降伏応力が過度に低下するので、フェライトと第二相の硬度差の上限をHV80以下とし、HV75以下であることが好ましい。
鋼素材の加熱温度:1000~1250℃
上記した成分組成を有する鋼素材(スラブなど)を1000~1250℃に加熱する。
上述のとおり加熱された鋼素材を熱間圧延して、所望の板厚の熱延鋼板を製造する。熱間圧延の条件は、特に限定されるものではなく、常法を用いて製造すればよい。
上述の熱間圧延工程で製造された熱延鋼板に対して、加速冷却を実施する。
加速冷却の開始温度は、本発明においてフェライトの面積率を制御する重要な因子である。鋼板温度が冷却中におけるフェライト変態開始温度であるAr3(℃)を下回るとフェライトが生成し、温度が下がるにつれて、フェライトの面積率が高くなる。加速冷却開始温度が(Ar3-10℃)より高いとフェライトの生成が少ない状態で加速冷却が始まることになり、冷却後に得られるミクロ組織において、フェライトの面積率が30%に達しない。よって、加速冷却の開始温度は、板厚中央温度で、(Ar3-10℃)以下とし、(Ar3-20℃)以下であることが好ましい。一方、加速冷却温度が(Ar3-70℃)を下回るとフェライトが過剰に生成した状態から加速冷却が始まることになり、冷却後に得られるミクロ組織において、フェライトの面積率が70%を超えてしまう。よって、加速冷却の開始温度は、板厚中央温度で、(Ar3-70℃)以上とし、(Ar3-60℃)以上であることが好ましい。
Ar3(℃)=910-310C-80Mn-20Cu-15Cr-55Ni-80Mo
ただし、式中における元素記号は各元素の含有量(質量%)を意味する。含有しない元素については0を代入する。
加速冷却の冷却速度は、第二相の組織形態に影響を及ぼす。冷却速度が3℃/s未満では、第二相がパーライト主体となり、本発明で目的とする軟質相(フェライト)と硬質相(第二相)の硬度差が十分には大きくならない。このため、加速冷却の冷却速度は3℃/s以上とし、5℃/s以上であることが好ましい。なお、冷却速度は、冷却開始温度と冷却停止温度との差を冷却時間で除したものである。
加速冷却の冷却停止温度は、硬質相の硬度を支配する重要な因子である。冷却停止温度が低くなればなるほど、変態組織である硬質相の強度は増加し硬度も高くなる。しかし、冷却停止温度が過度に低くなると硬質相の硬度が高くなりすぎ、軟質相(フェライト)と硬質相(第二相)の差が大きくなりすぎる。また、冷却停止温度が過度に低くなると、鋼板のひずみが発生しやすくなる。このため、冷却停止温度は400℃超えとし、450℃以上であることが好ましい。一方、冷却停止温度が高すぎると、硬質相の硬度が十分に高くならなかったり、あるいはパーライトが大量に生成したりして、軟質相(フェライト)と硬質相(第二相)の差が小さくなるおそれがある。このため、冷却停止温度は620℃以下とし、600℃以下であることが好ましい。
加速冷却工程を経て製造された鋼板について、冷間成形で筒状に加工する、冷間加工を実施する。鋼板の長手方向が鋼管の管軸方向になるように加工することが一般的である。
冷間加工工程で筒状に成形された鋼管(まだ対向する板幅端部が閉じていないのでオープンシーム管とも称する)の対向する板幅端部を突き合わせて溶接する。たとえば、突合せ溶接予定部に対して、連続仮付け溶接装置を用いて前記溶接予定部を突き合わせて連続仮付け溶接し、その後、内面溶接、ついで外面溶接、の順番で本溶接を実施すればよい。本溶接の方法としては、特に限定されず、たとえば、サブマージドアーク溶接を用いることができる。
溶接工程にて突き合わせ部の溶接が完了した溶接鋼管に対して、拡管を実施してもよい。拡管装置を用いて拡管することにより、鋼管の真円度を向上させることができる。拡管率は、鋼管の管厚や外径や強度や目標とする真円度に応じて、適宜、設定すればよい。
ミクロ組織は、得られた円形溶接鋼管の母材(溶接部や熱影響部ではない部分)から採取したサンプルの鋼管長手方向(管軸方向)および管厚方向の両方に直交する断面を鏡面研磨した後、ナイタールエッチングを行い、光学顕微鏡で観察した。フェライトの面積率は、板厚をtとするとき、板厚方向(1/8)t~(7/8)tにかけて写真を撮影し、面積率を測定した。
引張試験は、鋼管母材の長手方向(管軸方向)から採取したJIS5号試験片を用いて実施し、引張強度(TS)と降伏応力(YS)を測定した。降伏応力(YS)は上降伏点を用い、上降伏点が発生しなかった鋼管については、0.2%耐力を用いた。降伏比(YR)は降伏応力/引張強度で算出して求めた。得られた結果を表3に示す。
溶接性の評価はJIS Z3158で規定されるy割れ試験を行い評価した。溶接は、予熱温度25℃で溶接材料LB32を用いた100%CO2ガスを用いたSMAWで170A-24V-150mm/min.の条件で行った。
Claims (3)
- 鋼管母材の成分組成は、質量%で、
C:0.10~0.16%、
Si:0.50%以下、
Mn:1.20~1.80%、
P:0.030%以下、
S:0.006%以下を含有し、
さらに、Cu:0.50%以下、
Ni:0.50%以下、
Cr:0.50%以下、
Mo:0.30%以下、
Nb:0.08%以下、
V:0.08%以下、
Ti:0.03%以下、
Ca:0.0050%以下
のうちから選ばれた1種以上を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
下記(1)式で定義されるPcmyが0.17~0.22である成分組成を有し、
前記鋼管母材の板厚をtとするとき、前記鋼管母材の表面から(1/8)t~(3/8)tの領域におけるミクロ組織は、フェライトと該フェライトより硬質の第二相とを有し、
前記フェライトの面積率は30~70%であり、
前記フェライトと前記第二相との硬度差は平均でHV40~80であり、
前記鋼管の長手方向で、引張強度:590MPa以上、かつ、降伏比:85%以下である、
非調質円形溶接鋼管。
Pcmy=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/7+V/10+5B・・・式(1)
ただし、式(1)中における元素記号は各元素の含有量(質量%)を意味する。含有しない元素については0を代入する。 - 請求項1に記載の成分組成を有する鋼素材を1000~1250℃の温度に加熱する加熱工程と、
前記加熱された鋼素材を熱間圧延して熱延鋼板とする熱間圧延工程と、
前記熱延鋼板を、板厚中央温度で、
冷却開始温度:(Ar3-70℃)~(Ar3-10℃)、
冷却速度:3℃/s以上、
冷却停止温度:400℃超えかつ620℃以下
で冷却する加速冷却工程と、
前記加速冷却された鋼板を冷間成形で筒状に加工する冷間加工工程と、
前記冷間加工で筒状に加工された鋼板の突合せ部を溶接して溶接鋼管とする溶接工程と、
を有する、
鋼管母材の板厚をtとするとき、前記鋼管母材の表面から(1/8)t~(3/8)tの領域におけるミクロ組織は、フェライトと該フェライトより硬質の第二相とを有し、
前記フェライトの面積率は30~70%であり、
前記フェライトと前記第二相との硬度差は平均でHV40~80であり、
鋼管長手方向で、引張強度:590MPa以上、かつ、降伏比:85%以下である非調質円形溶接鋼管の製造方法。
なお、冷却速度は、冷却開始温度と冷却停止温度との差を冷却時間で除したものである。 - さらに、前記溶接工程で製造された溶接鋼管に拡管を施す拡管工程を有する、
請求項2に記載の、鋼管母材の板厚をtとするとき、前記鋼管母材の表面から(1/8)t~(3/8)tの領域におけるミクロ組織は、フェライトと該フェライトより硬質の第二相とを有し、
前記フェライトの面積率は30~70%であり、
前記フェライトと前記第二相との硬度差は平均でHV40~80であり、
鋼管長手方向で、引張強度:590MPa以上、かつ、降伏比:85%以下である非調質円形溶接鋼管の製造方法。
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