以下、本発明の実施形態の一例を説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、構成要素の一部を適宜省略したり、その寸法を適宜拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。本明細書での「固定」、「接触」とは、特に明示がない限り、言及している条件を二者が直接的に満たす場合の他に、他の部材を介して満たす場合も含む。
本明細書で用いられる用語を説明する。図1を用いて靴10の平面視での位置関係を説明する。図1は、アッパー14内の収容室18の内底面18aに足の骨格モデルを重ねた平面図である。収容室18の内底面18aに四辺が外接するとともに短辺長さLaが最小となる仮想矩形16を想定する。この仮想矩形16の長辺に沿った方向を「前後方向X」とし、その短辺に沿った方向を「足幅方向Y」とする。「前後方向X」の前側は足のつま先側とし、その後側は足の踵側とする。「足幅方向Y」の足内側は足の第一趾側とし、足外側は足の第五趾側とする。「前後方向X」は、母趾球の中心N1及び小趾球の中心N2の中点N3と、踵の中心N4とを通る直線を想定したとき、その直線と平行になることが想定される方向でもある。また、足長方向Xの軸線周りを回る方向を「足囲方向」とする。また、前述の仮想矩形16の短辺長さLaを二等分する位置を通る前後方向Xに沿った線を靴10の「中心線CL1」という。
人体の足は、主に、楔状骨Ba、立方骨Bb、舟状骨Bc、距骨Bd、踵骨Be、中足骨Bf、趾骨Bgで構成される。足の関節には、MP関節Ja、リスフラン関節Jb、ショパール関節Jcが含まれる。
「足の中足部」は、MP関節Jaからショパール関節Jcまでの部分をいう。足の「縦アーチ」とは、「内側縦アーチ」と「外側縦アーチ」の何れかをいう。「内側縦アーチ」とは、足の足内側において、踵骨Beから距骨Bd、舟状骨Bc、内側楔状骨Baを経て第一中足骨Bfの母趾球までの範囲にある領域をいう。「外側縦アーチ」とは、足の足外側において、踵骨Beから立方骨Bbを経て第五中足骨Bfの小趾球までの範囲にある領域をいう。
靴の構成要素に関する「中足部」とは、平面視において、足の中足部が重なることが想定される領域である。靴10の全長Lbに対して踵側から50%~75%の範囲S1に位置する足幅方向Yに沿った直線を線Pとする。靴10の全長Lbに対して踵側から20%~45%の範囲S2に位置する足幅方向Yに沿った直線を線Qとする。このとき、靴の構成要素に関する「中足部」は、平面視において、線Pから線Qまでの領域をいう。
以下の実施形態では、足幅方向の両側のうち、その第一側が足内側であり、その第二側が足外側である例を説明する。また、実施形態では、足囲方向の両側のうち、その第一側が回外方向であり、その第二側が回内方向である例を説明する。また、実施形態では、回内方向での過度のプロネーションの抑制を図れる靴を説明する。
(第1実施形態)
図2~図4を参照する。第1実施形態の靴10を説明する。右足用の靴を図示するが、以下の説明は、左足用の靴にも同様に適用される。靴10は、たとえば、ランニングに用いられる。このランニングには、通常の路面を走行する動作の他に、短距離走等の陸上競技や球技で走行する動作も含まれるし、歩行する動作も含まれる。
靴10は、着用者の足Fを支持するソール12を備える。本実施形態のソール12は、地面に接地するアウトソールを備える。この他に、ソール12は、たとえば、アウトソールの上方に積層されるミッドソール、インソール及びインナーソールの何れか一つ又は複数を備えてもよい。
靴10は、着用者の足Fを包むアッパー14を備える。アッパー14は、ソール12との間に足を収容する収容室18を形成する。アッパー14は、足のつま先から甲の一部にかけての範囲を上方から覆い、その足のつま先から踵までの範囲を足幅方向Y両側から覆い、その踵を後方から覆う。アッパー14の下側周縁部は、接着、縫合等によりソール12に固定される。
アッパー14は、たとえば、織地、編地等の生地や、合成皮革、人工皮革等の皮革の素材を用いて構成される。これには、足の形状に適合する可撓性を持つ素材が用いられる。本実施形態のアッパー14は、収容室18を形成する内層材20と、内層材20の外側に配置される外層材22とを備える複層構造である。
アッパー14には、アッパー14の後部にて上向きに開放する第1開口部として履き口部24が形成される。履き口部24には、靴10を着用した状態(以下、単に着用状態という)にあるとき、足Fの足首等の足の一部が挿通される。
アッパー14には、履き口部24に連続するとともに履き口部24から前方に延びる第2開口部としてスロート部26が形成される。スロート部26は、足幅方向Yの足内側に設けられる足内側縁部28(第一側縁部)と、足外側に設けられる足外側縁部30(第二側縁部)とを備える。各縁部28、30は、スロート部26の後端部から前端部に向けて延びるように設けられる。
アッパー14は、足幅方向Yの足内側に設けられる足内側部分32(第一側部分)と、足幅方向Yの足外側に設けられる足外側部分34(第二側部分)とを備える。本実施形態の足内側部分32は、スロート部26の設けられる前後方向範囲ではスロート部26の足内側縁部28から下方の部分が構成し、それ以外の前後方向範囲では前述の中心線CL1(図示せず)より足内側の部分が構成する。足外側部分34は、スロート部26の設けられる前後方向範囲ではスロート部26の足外側縁部30から下方の部分が構成し、それ以外の前後方向範囲では中心線CL1(図示せず)より足外側の部分が構成する。
本実施形態の靴10は、スロート部26に固定される飾り材36を備える。飾り材36は、スロート部26の前端部から足幅方向両側の縁部28、30を経由して履き口部24まで連続するようにスロート部26に沿って設けられる。飾り材36は、たとえば、テープ材、人工皮革等を用いて構成される。飾り材36は、アッパー14より伸縮性の小さい素材を用いて構成され、接着、縫合等によりアッパー14に固定される。
なお、アッパー14の前後方向Xに直交する断面において、最も足内側に位置する箇所を最内端38とし、最も足外側に位置する箇所を最外端40とし、その最内端38と最外端40を通る直線を「基準線L1」という。
靴10は、着用者の足の甲の上方に配置される締付具42を備える。締付具42は、アッパー14の足内側部分32及び足外側部分34を引き寄せる締付力をアッパー14に付与可能である。締付具42は、アッパー14の足内側部分32に回外方向の締付力Fa1を付与し、アッパー14の足外側部分34に回内方向の締付力Fa2を付与する。本実施形態の締付具42は、スロート部26の足内側縁部28に回外方向の締付力Fa1を付与し、スロート部26の足外側縁部30に回内方向の締付力Fa2を付与する。アッパー14は、締付具42により締付力が付与されることで足にフィット可能である。本実施形態の締付具42はシューレースであるが、その具体例は締付力を付与できれば特に限られず、ベルト、ワイヤー等でもよい。
アッパー14の足幅方向両側の部分32、34には締付具42が挿通される締付具挿通部44(以下、単に挿通部44という)が設けられる。本実施形態では、アッパー14の足内側部分32と足外側部分34のそれぞれに複数の挿通部44が前後方向に間隔を空けて列状に設けられる。本実施形態では、スロート部26の縁部28、30に挿通部44が設けられる。本実施形態の挿通部44は、締付具42を挿通する貫通孔であるが、この他にも、ハトメ、シューレースフック等でもよい。
本実施形態において、一部の挿通部44はアッパー14の足内側部分32や足外側部分34そのものに設けられ、一部の挿通部44は足内側部分32設けられるアッパー14とは別部材(後述のサポート部材50)に設けられる。アッパー14の各部分32、34そのものに設けられる挿通部44は飾り材36にも設けられる。締付具42の一端側部分は、足内側部分32と足外側部分34の挿通部44に交互に挿通され、かつ、列状の複数の挿通部44に一つおきに挿通される。締付具42の他端側部分も、足内側部分32と足外側部分34の挿通部44に交互に挿通され、かつ、列状の複数の挿通部44に一つおきに挿通される。
本実施形態の靴10は、平面視においてスロート部26を塞ぐように設けられるシュータン48を備える。シュータン48の前端部はスロート部26の前端部に縫合等により固定され、その後端部はアッパー14に対して移動可能な自由端となる。
靴10は、アッパー14とは別体であり、足囲方向に帯状に延びるサポート部材50を備える。サポート部材50は、足とソール12の間に配置される内底部52と、内底部52に対して足幅方向Yの足内側に設けられる足内側側部54(第一側側部)と、内底部52に対して足幅方向Yの足外側に設けられる足外側側部56(第二側側部)とを備える。
サポート部材50の足内側側部54は、アッパー14の足内側部分32に沿って足囲方向に延びるように設けられる。アッパー14の足内側部分32には、収容室18の内面に開口する下側貫通孔58と上側貫通孔60が上下に間を空けた位置に形成される。本実施形態の各貫通孔58、60は、アッパー14の外内を貫通している。本実施形態の足内側側部54は、アッパー14の下側貫通孔58や上側貫通孔60に移動自在に挿通される。足内側側部54は、足内側側部54の先端側に向かう途中で、アッパー14の下側貫通孔58から収容室18の外側に突き出るように設けられ、アッパー14の上側貫通孔60から収容室18の内側に突き出るように設けられる。本実施形態の足内側側部54は、下側貫通孔58に対する挿通箇所から上側貫通孔60に対する挿通箇所までの範囲において、外部空間に露出するように設けられる。本実施形態の足内側側部54の先端部はスロート部26の足内側縁部28に設けられる。
サポート部材50の長手方向の一端部62は、その足内側側部54の先端部に設けられる。本実施形態のサポート部材50の一端部62は、前述の基準線L1より上方に配置される。サポート部材50の足内側側部54は、足幅方向Yの足内側において、前述の基準線L1を上下に跨ぐように配置される。足内側側部54は、締付具42により付与される回外方向の締付力Fa1を伝達可能に設けられる。これを実現するため、足内側側部54の先端部、つまり、サポート部材50の一端部62には、前述の複数の挿通部44の一つが設けられる。
本実施形態のサポート部材50の挿通部44は、前後方向に間隔を空けて複数設けられる。本実施形態の挿通部44は、前側の第1挿通部44Aと、第1挿通部44Aより後側の第2挿通部44Bとを含む。本実施形態において、第1挿通部44Aと第2挿通部44Bの間には、アッパー14の足内側部分32そのものに設けられる他の挿通部44が配置される。これらの挿通部44は、足内側部分32に設けられる列状の複数の挿通部44の少なくとも一部を構成する。
サポート部材50の足外側側部56は、アッパー14の足外側部分34に沿って足囲方向に延びるように設けられる。本実施形態のアッパー14の足外側部分34の内層材20には切れ込み64が形成されている。サポート部材50の足外側側部56は、その切れ込み64を通してアッパー14の外層材22と内層材20の間に差し込まれている。サポート部材50の足外側側部56は、外部空間に露出しないように設けられることになる。サポート部材50の足外側側部56は、着用状態にあるとき、足の甲の足外側部分を上方から覆うように設けられる。
サポート部材50の長手方向の他端部66は、その足外側側部56の先端部に設けられる。本実施形態のサポート部材50の他端部66は、前述の基準線L1より上方に配置される。サポート部材50の足外側側部56は、足幅方向Yの足外側において、前述の基準線L1を上下に跨ぐように配置される。本実施形態のサポート部材50の足外側側部56の一部は、スロート部26の足外側縁部30と重なる位置に配置され、その足外側縁部30に縫合等により固定される。足外側側部56は、基準線L1より上方においてアッパー14に固定されることになる。サポート部材50の他端部66には、サポート部材50の一端部62とは異なり、締付具挿通部44が設けられない。
サポート部材50は、幅広部70と、幅広部70からサポート部材50の一端側に延びるとともに幅広部70より前後方向での幅が狭い幅狭部72とを備える。本実施形態の幅広部70はサポート部材50の内底部52が構成し、幅狭部72はサポート部材50の足内側側部54が構成している。サポート部材50の幅狭部72は、前後方向に間隔を空けて複数設けられる。本実施形態の幅狭部72は、前側の第1幅狭部72Aと、第1幅狭部72Aより後側の第2幅狭部72Bとを含む。複数の挿通部44A、44Bのそれぞれは複数の幅狭部72A、72Bのそれぞれに設けられる。
図4、図5を参照する。図中の「S」は縫合箇所を示す。靴10は、ソール12に対するサポート部材50の内底部52の上下方向での動きを拘束するとともに、その内底部52の足囲方向での動きを許容する拘束部76を備える。本実施形態の拘束部76は、ソール12とは別体の部材が構成しており、織地、編地等の可撓性を持つ生地を用いて構成される。拘束部76は、その前縁部や後縁部が縫合等によりソール12の上面に固定され、ソール12との間にサポート部材50の内底部52が挿通される挿通路78を形成する。サポート部材50の内底部52は、拘束部76が形成する挿通路78に挿通されることで、前述のように上下方向での動きが拘束されるとともに、その足囲方向での動きが許容される。サポート部材50の内底部52は、ソール12に対して足囲方向に移動可能に設けられることになる。
サポート部材50の内底部52は、内底部52の足幅方向Yの足外側に設けられる被拘束領域80と、被拘束領域80より内底部52の足幅方向Yの足内側に設けられる移動許容領域82とを備える。被拘束領域80は、拘束部76により上下方向での動きが拘束される。移動許容領域82は、拘束部76により上下方向での動きが拘束されず、被拘束領域80よりも上下方向での移動可能な範囲が大きくなる。
図2~図4に戻る。靴10は、アーチサポート部84を備える。本実施形態のアーチサポート部84は、サポート部材50の内底部52の足内側に設けられる。アーチサポート部84は、サポート部材50の幅広部70に設けられるともいえる。アーチサポート部84は、サポート部材50の移動許容領域82が構成しており、ソール12に対して上下方向に移動可能に設けられる。アーチサポート部84は、アッパー14の足内側部分32に付与される回外方向での締付力Fa1が伝達可能に設けられる。本実施形態のアーチサポート部84には、足内側部分32に設けられるサポート部材50の挿通部44からサポート部材50そのものを通して回外方向での締付力Fa1が伝達される。アーチサポート部84は、後述のように、締付具42によりアッパー14に締付力を付与したとき、足幅方向Yの足内側における着用者の足の縦アーチA(内側縦アーチ)を下側から支持可能である。
アッパー14の足内側部分32は、アーチサポート部84に対して足内側に設けられる締付力伝達部86を有する。締付力伝達部86は、足内側部分32に付与される回外方向での締付力Fa1が伝達可能に設けられる。これを実現するうえで、本実施形態の締付力伝達部86は、前述のアッパー14の足内側部分32の下側貫通孔58から下側の部分が構成している。この部分では、前述の回外方向での締付力Fa1が付与されたとき、サポート部材50の足内側側部54から下側貫通孔58の内壁面を介して回外方向での締付力Fa1が伝達される。
この締付力伝達部86は、アーチサポート部84よりも足囲方向での伸縮性が高く設定される。本実施形態では、アッパー14の全体がサポート部材50の全体より足囲方向での伸縮性が高い素材で構成される。これを実現するため、アッパー14は、たとえば、ポリエステル糸で編まれたダブルラッセルメッシュを用いて構成され、サポート部材50は、たとえば、エーテル系人工皮革を用いて構成される。
以上の靴10の動作を説明する。図6を参照する。締付具42によりアッパー14に締付力を付与する場合を考える。アッパー14の足内側部分32には回外方向での締付力Fa1が付与され、アッパー14の足外側部分34には回内方向での締付力Fa2が付与される。
このようにアッパー14の足内側部分32に回外方向での締付力Fa1が付与されたとき、前述のように、その回外方向での締付力Fa1がアーチサポート部84に伝達される。アーチサポート部84は、この回外方向での締付力Fa1によって、ソール12に対して上下方向に離れるように移動し、足内側の縦アーチAに下側から接触する。このとき、アーチサポート部84は、縦アーチAに対するの接触位置に上向きの回外方向の力Fb1を付与し、足内側の縦アーチAを下側から支持する。このとき、アーチサポート部84は、側面視において、アッパー14の中足部と重なる位置に配置され、足の足内側の中足部(足内側の縦アーチ)を支持する。
このようにアッパー14の足内側部分32に回外方向での締付力Fa1が付与されたとき、前述のように、その回外方向での締付力Fa1がアッパー14の締付力伝達部86に伝達される。
以上の靴10の効果を説明する。
(A)アッパー14の締付力伝達部86は、アーチサポート部84より伸縮性が高い素材で構成される。これにより、アッパー14の足内側部分32に回外方向の締付力Fa1を付与したとき、アッパー14の締付力伝達部86とアーチサポート部84の伸縮性を同じにする場合と比べ、その締付力伝達部86が変形し易くなる。これに伴い、アーチサポート部84に伝達される締付力の増大を図れ、アーチサポート部84から足に付与される上向きの回外方向での力の増大を図れる。この結果、アーチサポート部84により足内側の縦アーチAをしっかりと支持し易くなり、その落ち込みを抑制でき、回内方向での過度のプロネーションの抑制を図れる。
(B)サポート部材50の複数の挿通部44は前後方向に間隔を空けて設けられる。よって、サポート部材50のアーチサポート部84も同様に前後方向の広い範囲に設けるような構造を実現できる。これに伴い、サポート部材50のアーチサポート部84により足内側の縦アーチAを広い範囲でサポートできる。
(C)複数の挿通部44のそれぞれは複数の幅狭部72のそれぞれに設けられる。よって、サポート部材50のアーチサポート部84もサポート部材50の幅広部70で前後方向の広い範囲に設けるような構造を実現できる。これに伴い、サポート部材50のアーチサポート部84により足内側の縦アーチAを広い範囲でサポートできる。
サポート部材50の内底部52はソール12に対して足囲方向に移動可能に設けられ、その足内側側部54は回外方向に向かう締付力Fa1が伝達可能に設けられ、その足外側側部56はアッパー14に固定される。これにより、サポート部材50の足内側側部54に回外方向での締付力Fa1が伝達されたとき、その締付力をサポート部材50の内底部52や足外側側部56を通してアッパー14の足外側部分34に下向きの回外方向の力Fb2として伝達できる。この下向きの回外方向の力Fb2をアッパー14から足に付与することで、回内方向での過度のプロネーションの抑制をより図れる。
なお、ここで説明した効果を得るうえでは、サポート部材50の足内側部分32に締付具42から伝達される回外方向での締付力Fa1より、その足外側部分34に締付具42から伝達される回内方向での締付力Fa2が小さくなるように構成するとよい。この条件を満たすうえで、本実施形態では、次に説明するように、サポート部材50の他端部66に締付具挿通部44を設けない構造を採用している。
サポート部材50の一端部62には締付具挿通部44が設けられ、その他端部66には締付具挿通部44が設けられない。これにより、締付具42により締付力を付与するとき、サポート部材50の一端部62に回外方向の締付力Fa1が直接に付与される一方で、サポート部材50の他端部66には回内方向の締付力Fa2が直接に付与させずに済む。このため、回外方向の締付力Fa1が回内方向の締付力Fa2と大きく相殺してしまう事態を避けられ、サポート部材50の足外側側部56を通してアッパー14の足外側部分34に下向きの回外方向の力Fb2を効果的に伝達できる。これに伴い、回内方向での過度のプロネーションの抑制をより一層図れる。
内底部52の足外側に設けられる被拘束領域80は、拘束部76により上下方向での動きが拘束される。よって、内底部52の足外側の被拘束領域80から足Fに回内方向での上向きの力が付与され難くなる。これに伴い、内底部52の移動許容領域82に設けられたアーチサポート部84により回外方向の力Fb1を足Fに付与する一方で、その被拘束領域80から回内方向での力が足に付与される事態を避けられ、回内方向での過度のプロネーションの抑制をより一層図れる。
第1実施形態の靴10の他の特徴を説明する。
図4を参照する。本実施形態のアッパー14の下側貫通孔58は、前述の基準線L1より上方に設けられる。これにより、サポート部材50の足内側部分32の下側貫通孔58に対する挿通箇所を基準線L1より上方にでき、その分、サポート部材50のアーチサポート部84の足に対する上下方向での接触範囲を広げられる。これに伴い、アーチサポート部84により足内側の縦アーチAをしっかりと支持し易くなり、回内方向での過度のプロネーションの更なる抑制を図れる。
図4、図7を参照する。靴10は、アッパー14の足外側部分34に設けられる規制部88を備える。本実施形態の規制部88は、アッパー14とは別体のクッション材90である。クッション材90は、アッパー14の外層材22と内層材20の間に配置される。本実施形態のクッション材90は、平面視において、たとえば、矩形状をなす。本実施形態におけるクッション材90は、未変形状態にあるとき、クッション材90の前後方向に直交する断面形状は矩形状をなす。
規制部88は、たとえば、スロート部26の足外側縁部30に沿うように設けられてもよい。規制部88は、前述の基準線L1より上方に設けられると好ましい。規制部88の下端位置は、前述の基準線L1より上方に設けられると好ましいということである。
規制部88は、足内側の縦アーチAをアーチサポート部84により支持した状態にあるとき、着用者の足の上向きの動きを規制可能である。本実施形態の規制部88は、この状態にあるとき、自らの弾性変形に伴う反発力を用いることで、その上向きの動きを規制する。規制部88は、クッション材90の反発力を調整することによって、足の中足部の甲を下向きに付勢することができる。
(D)これにより、着用者の足が回内方向に動こうとしたとき、その動きを規制部88により規制でき、回内方向での過度のプロネーションの抑制をより図れる。
(E)特に、規制部88が足の甲を下向きに付勢することで、着用者の足の回内方向への動きを抑えられ、回内方向での過度のプロネーションの抑制をより一層図れる。
規制部88はクッション材90が構成するため、足の甲の形状に適合するように規制部88が変形でき、その規制部88が足の甲に当たる範囲を広げることができる。これに伴い、規制部88を通して足の甲に付与される着圧を増大できるため、回内方向での過度のプロネーションの抑制を効果的に図れる。
規制部88を構成するクッション材90は、外層材22と内層材20の間に配置されるため、その内層材20が形成する収容室18に大きな凹凸が生じ難くなる。これに伴い、収容室18に収容される足に対する収容室18の内面の当たりがよくなり、良好なフィット性を得られる。
図4を参照する。内底部52の被拘束領域80と移動許容領域82の好ましい位置について説明する。前後方向に直交する靴10の断面形状を考える。ソール12の上面部の足幅方向Yでの寸法をLcとし、足外側の端12aからLc×50%の位置を第1基準位置92といい、足外側の端12aからLc×65%の位置を第2基準位置94という。ソール12の上面部を足幅方向Yの足外側から足内側に向かって第1領域96、第2領域98、第3領域100に区分けする。第1領域96は、足外側の端12aから第1基準位置92までの領域である。第2領域98は、第1基準位置92から第2基準位置94までの領域である。第3領域100は、第2基準位置94から足内側の端12bまでの領域である。
このとき、内底部52の被拘束領域80と移動許容領域82の境界位置102は、好ましくは、第2領域98と上下方向に重なる位置に設けられるとよい。この条件を満たすとき、被拘束領域80は、第1基準位置92から足内側に向かう第1領域96の少なくとも大部分の範囲で第1領域96と上下方向に重なる位置に設けられる。また、この条件を満たすとき、移動許容領域82は、第2基準位置94から足外側に向かう第3領域100の少なくとも大部分の範囲で第3領域100と上下方向に重なる位置に設けられる。ここでの「大部分」とは、言及している領域の足幅方向の全長×90%の範囲をいう。この条件は実験的な知見に基づき設定している。この理由を説明する。
足Fのソール12に対する接触範囲は、種々の要因によって、様々に変化する。ここでの「要因」とは、たとえば、靴の種類、靴を製造するうえで用いられるラストの種類、足の前後方向での位置等である。本発明者は、多くの場合において、このような要因の影響によらず、第1領域96において足の足外側部分のソール12に対する接触範囲の大部分が設けられ、第3領域100の上方に間隔を空けて足内側の縦アーチが位置するという認識を得た。この認識は、前述の実験的な知見をもとに得た。足の足外側部分のソール12に対する接触範囲で上向きの力を付与してしまうと、足に回内方向の力が付与されることになるため好ましくない。この一方で、第3領域100の上方にある足内側の縦アーチAは、できる限り広い足幅方向Yの範囲で下側から支持することが望まれる。
ここで、内底部52の被拘束領域80と移動許容領域82の境界位置が前述の条件を満たしていれば、その境界位置が第1領域96と上下方向に重なる位置に設けられている場合と比べ、足の足外側部分のソール12に対する接触範囲で回内方向の力が付与される事態を避けられる。また、この条件を満たしていれば、その境界位置が第3領域100に属している場合と比べ、第3領域100の上方にある足内側の縦アーチAを広い足幅方向範囲で、移動許容領域82に設けられるアーチサポート部84により下側から支持できる。この結果、前述の種々の要因の影響によらず安定して、広い範囲でアーチサポート部84により足内側の縦アーチAを支持しつつ、足に回内方向の力が付与される事態を避けられる。
(第2実施形態)
図8~図11を参照する。第2実施形態の靴10を説明する。アッパー14は、足を収容する収容室18を形成する第1アッパー構成層110と、第1アッパー構成層110の外側に配置される第2アッパー構成層112とを備える。第1アッパー構成層110は、アッパー14の前後方向X及び足幅方向Yの全域において、アッパー14の外内を隔てる層として設けられる。第1アッパー構成層110は、収容室18を形成する内層材20と、内層材20の外側に配置される外層材22とを備える複層構造である。
第2アッパー構成層112は、アッパー14の前後方向Xの一部の範囲であって、足幅方向Yの一部の範囲のみに設けられる。第2アッパー構成層112は、足幅方向Yの足内側において、前述の基準線L1を上下に跨ぐように配置される。第2アッパー構成層112は、この「足幅方向Yの一部の範囲」として、アッパー14の足内側部分32のみに設けられる。第2アッパー構成層112は、アッパー14の外部に露出する露出面を形成する。第1アッパー構成層110は、第2アッパー構成層112以外の箇所でアッパー14の外部に露出する露出面を形成する。
第1アッパー構成層110の下側周縁部は、ソール12に接着、縫合等により固定される。第2アッパー構成層112の外周縁部は、第1アッパー構成層110またはソール12に固定される。本実施形態において、第2アッパー構成層112の下縁部はソール12に固定され、その前縁部、上縁部及び後縁部は第1アッパー構成層110に固定される。
アッパー14の履き口部24やスロート部26は第1アッパー構成層110に設けられる。また、複数の挿通部44は、アッパー14の足内側部分32や足外側部分34にて第1アッパー構成層110そのものに設けられる。
本実施形態の靴10は第1実施形態のサポート部材50を備えていない。本実施形態のアーチサポート部84は第1アッパー構成層110に設けられる。アーチサポート部84は、第2アッパー構成層112の足内側に設けられる。本実施形態のアーチサポート部84には、アッパー14の足内側部分32に付与される回外方向での締付力Fa1が第1アッパー構成層110そのものを通して伝達される。
図11、図12を参照する。図12では、アーチサポート部84(第1アッパー構成層110)のソール12の上面部に対する固定位置を示す。図12では、ソール12の上面部の他に、ソール12の上面部に対する足Fの接触位置114も示す。アーチサポート部84の下縁部は、平面視において、足内側の縦アーチAを支持できるように、ソール12の中足部において、その足内側の縁部12cより足外側にてソール12に接着、縫合等により固定される。アーチサポート部84は、本実施形態では、アッパー14の中足部にて足内側部分32に設けられる。
図8~図11に戻る。第2アッパー構成層112には締付力伝達部86が設けられる。本実施形態では第2アッパー構成層112の全体が締付力伝達部86を構成する。このような締付力伝達部86では、アッパー14の足内側部分32に回外方向での締付力Fa1が付与されたとき、第1アッパー構成層110から第2アッパー構成層112を通して締付力伝達部86に伝達される。
この締付力伝達部86は、第1実施形態と同様、アーチサポート部84よりも足囲方向での伸縮性が高く設定される。本実施形態では、第2アッパー構成層112の全体が第1アッパー構成層110より足囲方向での伸縮性が高い素材で構成される。よって、本実施形態においても、前述の(A)において説明した効果を得られる。
また、本実施形態によれば、アッパー14の第1アッパー構成層110がアーチサポート部84を兼ねているため、第1アッパー構成層110が形成する収容室18に大きな凹凸が生じ難くなる。これに伴い、収容室18に収容される足Fに対する収容室18の内面の当たりがよくなり、良好なフィット性を得られる。
次に、本実施形態の靴10の他の特徴を説明する。
本実施形態の靴10も、第1実施形態と同様のクッション材90が構成する規制部88を備える。本実施形態においても、第1実施形態と同様、前述した(D)、(E)の効果を得られる。
図13を参照する。以下、アッパー14の一部の平面視での形状を説明する。以下、アッパー14の足外側部分34の複数の挿通部44に関して、前側から後側に順に「L1、L2・・・、L6」を符号の末尾に付す。また、アッパー14の足内側部分32の複数の挿通部44に関して、前側から後側に順に「M1、M2、・・・、M6」を符号の末尾に付す。
スロート部26の足外側縁部30は、全体として、その前後方向の中間部30aにおいて足幅方向Yの足内側に凸となる輪郭をなす。足外側縁部30には、この輪郭において足内側に凸となる箇所が構成する凸端部120が設けられる。凸端部120は、足外側縁部30の前後方向の両端部30b、30cに対して足幅方向Yの足内側に偏った位置に設けられる。
アッパー14の足外側部分34に設けられる列状の複数の挿通部44L1~L6には、それらのなかで最も足内側に偏って位置する第1特定挿通部44C(44L3)と、その次に足内側に偏って位置する第2特定挿通部44D(44L4)とが含まれる。いずれも、列状の複数の挿通部44L1~44L6のうち前後方向Xの途中にある挿通部44L3、44L4が対象となる。第1特定挿通部44C(44L3)は、他の挿通部44L1、L2、L4~L6に対して足内側に偏って位置する。第1特定挿通部44Cは、凸端部120と足幅方向Yに重なる箇所に設けられる。第2特定挿通部44Dは、第1特定挿通部44Cに前後方向Xに隣り合わせとなり、本実施形態では第1特定挿通部44Cに対して後側に隣り合わせとなる。
第1特定挿通部44Cと前後方向に隣り合う二つの挿通部44L2、44L4に足内側から外接する線を第1外接線Ld1といい、これらの中心Cを結ぶ線を第1直線Le1という。本実施形態の第1特定挿通部44Cは、第1外接線Ld1に対して足内側に設けられる。また、本実施形態の第1特定挿通部44Cは、第1直線Le1に対して足内側に設けられる。
第1特定挿通部44Cと第2特定挿通部44Dの組に前後方向に隣り合う二つの挿通部44L2、44L5に足内側から外接する線を第2外接線Ld2といい、これらの中心Cを結ぶ線を第2直線Le2という。本実施形態の第1特定挿通部44Cと第2特定挿通部44Dの組は、第2外接線Ld2に対して足内側に設けられる。また、本実施形態の第1特定挿通部44Cと第2特定挿通部44Dの組は、第2直線Le2に対して足内側に設けられる。
スロート部26の足内側縁部28は、全体として、その前後方向の中間部28aにおいて足幅方向Yの足内側に凹となる輪郭をなす。足内側縁部28には、この輪郭において足内側に凹となる箇所が構成する凹底部122が設けられる。凹底部122は、足内側縁部28の前後方向Xの両端部28b、28cに対して足幅方向Yの足内側に偏った位置に設けられる。足外側縁部30の凸端部120と足内側縁部28の凹底部122とは足幅方向Yで揃うような位置に設けられる。
アッパー14の足内側部分32に設けられる列状の複数の挿通部44M1~44M6には、それらのなかで最も足内側に偏って位置する第3特定挿通部44E(44M3)と、その次に足内側に偏って位置する第4特定挿通部44F(44M4)とが含まれる。いずれも、列状の複数の挿通部44M1~44M6のうち前後方向Xの途中にある挿通部44M3、44M4が対象となる。第3特定挿通部44E(44M3)は、他の挿通部44M1、M2、M4~M6に対して足内側に偏って位置する。第3特定挿通部44Eは、凹底部122と足幅方向Yに重なる箇所に設けられる。第4特定挿通部44Fは、第3特定挿通部44Eに前後方向Xに隣り合わせとなり、本実施形態では第3特定挿通部44Eに対して後側に隣り合わせとなる。
第3特定挿通部44Eと前後方向に隣り合う二つの挿通部44M2、44M4に足内側から外接する線を第3外接線Ld3といい、これらの中心Cを結ぶ線を第3直線Le3という。本実施形態の第3特定挿通部44Eは、第3外接線Ld3に対して足内側に設けられる。また、本実施形態の第3特定挿通部44Eは、第3直線Le3に対して足内側に設けられる。
第3特定挿通部44Eと第4特定挿通部44Fの組に前後方向に隣り合う二つの挿通部44M2、44M5に足内側から外接する線を第4外接線Ld4といい、これらの中心Cを結ぶ線を第4直線Le4という。本実施形態の第3特定挿通部44Eと第4特定挿通部44Fの組は、第4外接線Ld4に対して足内側に設けられる。また、本実施形態の第3特定挿通部44Eと第4特定挿通部44Fの組は、第4直線Le4に対して足内側に設けられる。
以上のように、アッパー14の足外側部分34に設けられる列状の複数の挿通部44のうち、その前後方向Xの途中にある第1特定挿通部44Cは、その足外側部分34に設けられる他の挿通部44に対して足内側に偏って位置する。よって、列状の複数の挿通部44L1~44L6が直線上に位置する場合と比べ、アッパー14の足外側部分34での足の甲に対する接触箇所であって、締付具42による締付力の作用する箇所の範囲の増大を図れる。これに伴い、足の甲に回外方向での大きな力を付与するような設計を実現し易くなり、回外方向での過度のプロネーションの抑制をより図れる。このような設計は、たとえば、アッパー14の足外側部分34にクッション材90を設けることで実現される。
アッパー14の足内側部分32に設けられる列状の複数の挿通部44のうち、その前後方向Xの途中にある第3特定挿通部44Eは、その足内側部分32に設けられる他の挿通部44に対して足内側に偏って位置する。よって、アッパー14の足外側部分34に設けられる第1特定挿通部44Cが足内側に偏って位置する場合でも、第1特定挿通部44Cと第3特定挿通部44Eの間の距離が近づき難くなる。これに伴い、アッパー14の足内側部分32や足外側部分34の挿通部44M1~M6、44L1~L6に締付具42を挿通する場合に、その挿通作業が容易となる。
なお、スロート部26の足内側縁部28には、第3特定挿通部44Eと前後方向Xに隣り合う挿通部44M2、44M4と、その第3特定挿通部44Eとの間に足内側に凹む切り込み124が形成される。切り込み124は、足内側縁部28の凹底部122に対して前後方向に形成されるともいえる。本実施形態では、第3特定挿通部44E(凹底部122)に対して前後方向Xの両側に形成されるが、それらの片側のみに形成されてもよい。本実施形態では、平面視において、飾り材36と上下方向に重なる範囲にのみ切り込み124が形成される。これにより、アッパー14の足内側縁部28を足内側に凹となる輪郭にした場合でも、その足内側縁部28の屈曲性が良好となり、良好なフィット性を得られる。
(第3実施形態)
第3実施形態の靴10を説明する。図14~図16を参照する。図16では、サポート部材50のソール12の上面部に対する固定位置を示す。
靴10は、第1実施形態と同様、アッパー14とは別体であり、足囲方向に帯状に延びるサポート部材50を備える。本実施形態のサポート部材50は、アッパー14の足内側部分32に沿って足囲方向に延びるように設けられる。サポート部材50の長手方向の一端部62は、アッパー14のスロート部26の足内側縁部28に設けられる。サポート部材50の一端部62には挿通部44が設けられる。本実施形態の挿通部44は、サポート部材50の一端部62をループ状に巻き回すことで構成される。サポート部材50の挿通部44を構成する巻き回し箇所より先端側部分は、アッパー14の足内側部分32に形成される貫通孔130に挿通され、その周縁部に接着、縫合等により固定される。サポート部材50の一端部62は、アッパー14の足内側部分32に固定されることになる。
本実施形態のサポート部材50の挿通部44は前後方向に間隔を空けて複数設けられる。本実施形態の挿通部44は、前側の第1挿通部44Aと、第1挿通部44Aより後側の第2挿通部44Bとを含む。本実施形態において、第1挿通部44Aと第2挿通部44Bの間には、アッパー14の足内側部分32そのものに設けられる他の挿通部44が配置されない。
サポート部材50は、幅広部70と、幅広部70からサポート部材50の一端側に延びるとともに幅広部70より前後方向での幅が狭い幅狭部72とを備える。サポート部材50の幅狭部72は、前後方向に間隔を空けて複数設けられる。本実施形態の幅広部70は、アッパー14の足内側部分32に沿って足囲方向に延びるように設けられ、幅狭部72は前述の挿通部44が構成している。
本実施形態のアーチサポート部84はサポート部材50の他端部66から一端側に向かう一部の範囲が構成している。本実施形態のアーチサポート部84は幅広部70に設けられる。アーチサポート部84の下縁部は、平面視において、足内側の縦アーチAを支持できるように、ソール12の中足部において、その足内側の縁部12cより足外側にてソール12に接着、縫合等により固定される。アーチサポート部84は、本実施形態では、アッパー14の中足部と足幅方向Yに重なる位置にてアッパー14の足内側部分32の足内側に設けられる。本実施形態のアーチサポート部84には、アッパー14の足内側部分32に設けられるサポート部材50の挿通部44からサポート部材50そのものを通して回外方向での締付力Fa1が伝達される。
アッパー14は、アーチサポート部84に対して足内側に設けられる締付力伝達部86を有する。本実施形態の締付力伝達部86は、アッパー14の足内側側部54の貫通孔130の周縁部に対するサポート部材50の固定位置(縫合箇所S)から下側の部分が構成している。この部分では、前述の回外方向での締付力Fa1が付与されたとき、サポート部材50を介して回外方向での締付力Fa1が伝達される。
この締付力伝達部86も、アーチサポート部84よりも足囲方向での伸縮性が高く設定される。本実施形態では、アッパー14の全体がサポート部材50の全体より足囲方向での伸縮性が高い素材で構成される。よって、本実施形態においても、前述の(A)において説明した効果を得られる。
また、本実施形態によれば、サポート部材50の複数の挿通部44は前後方向に間隔を空けて設けられる。よって、前述の(B)において説明した効果を得られる
また、複数の挿通部44のそれぞれは複数の幅狭部72のそれぞれに設けられる。よって、前述の(C)において説明した効果を得られる。
(第4の実施の形態)
第4実施形態の靴10を説明する。図17、図18を参照する。図18は、サポート部材50に締付力を付与する前後での状態を示す模式図であり、図17の矢視Eから見た図でもある。本実施形態の靴10は、第3実施形態と比べて、主に、アッパー14やサポート部材50の構成が相違する。
本実施形態のサポート部材50の長手方向の一端部62は、アッパー14の足内側部分32の裏側にて足内側部分32と重ねた位置に設けられる。サポート部材50の一端部62には挿通部44が設けられる。本実施形態のサポート部材50の挿通部44は貫通孔である。
アッパー14の足内側部分32にはサポート部材50の挿通部44と重なる位置に他の締付具挿通部132が設けられる。アッパー14の締付具挿通部132は、サポート部材50の挿通部44が構成する貫通孔より足囲方向に長い長孔134である。本実施形態の締付力伝達部86はアッパー14の足内側部分32の下側貫通孔58から下側の部分が構成している。
締付具42の締め付けを緩めた状態にあるとき、サポート部材50に付与される回外方向での締付力Fa1が解除されている。このとき、サポート部材50の挿通部44やアーチサポート部84は、ソール12に対して上下方向において下向きに移動している(図18(A)の方向Pc1参照)。また同様に、締付具42も、サポート部材50の挿通部44に対する挿通箇所の近傍で、かつ、アッパー14の足内側部分32の長孔134内において、サポート部材50に連動して下向きに移動している。つまり、締付具42の締め付けを緩めた状態にあるとき、長孔134内の上端内壁面から下方に離れた箇所に締付具42が配置されている。
この状態のもと、締付具42を締め付けようとしたとき、締付具42はサポート部材50の挿通部44に接触する一方で、アッパー14の長孔134内で上端内壁面には接触しない。この状態でさらに締付具42を締め付けると、回外方向の締付力Fa1がサポート部材50に先に付与され、サポート部材の50の挿通部44やアーチサポート部84が上向きに移動する(方向Pc2参照)。締付具42の締め付け量の増大に伴い、アッパー14の長孔134の上端内壁面に締付具42が接触する。この状態で締付具42をさらに締め付けると、回外方向の締付力Fa1がアッパー14の足内側部分32の締付力伝達部86にも付与される。
このように、本実施形態の締付力伝達部86は、締付具42を締め付けようとしたとき、アーチサポート部84よりも後に締付力が伝達されるように構成される。これにより、アーチサポート部84と締付力伝達部86に同時に締付力が伝達される場合と比べ、アーチサポート部84に締付力を伝達し易くなる。これに伴い、締付力伝達部86の変形量を抑えることで、その反発力を軽減でき、アーチサポート部84に伝達される締付力の増大を図れ、アーチサポート部84から足に付与される上向きの回外方向での力の増大を図れる。この結果、本実施形態においても、前述の(A)で説明したような、アーチサポート部84により足内側の縦アーチAをしっかりと支持し易くなり、その落ち込みを抑制でき、回内方向での過度のプロネーションの抑制を図れる。
各構成要素の他の変形例を説明する。
アッパー14はモノソック構造でもよい。ここでのモノソック構造とは、アッパー14とシュータン48が一体化されており、アッパー14にスロート部26がない構造をいう。この場合、アッパー14の足内側部分32は、その前後方向Xの全範囲で中心線CL1より足内側の部分が構成する。また、アッパー14の足外側部分34は、その前後方向Xの全範囲で中心線CL1より足外側の部分が構成する。
サポート部材50の挿通部44の数は特に限られず、単数又は三つでもよい。サポート部材50は幅広部70と幅狭部72を備えなくともよい。複数の幅狭部72の一部にのみ挿通部44が設けられてもよい。
挿通部44は、第1、第3、第4実施形態のようなサポート部材50を用いる場合、次の構成を採用してもよい。詳しくは、挿通部44は、アッパー14の縁部28の裏側にてサポート部材50の一部を重ね合わせ、その重ね合わせた箇所に形成される貫通孔が構成してもよい。
第1実施形態のアッパー14の足内側部分32に形成される貫通孔58、60は、アッパー14の外内を貫通していなくともよい。これは、たとえば、貫通孔58、60がアッパー14の内層材20のみに形成され、外層材22には形成されない場合を想定している。この場合、足内側側部54は、下側貫通孔58に対する挿通箇所から上側貫通孔60に対する挿通箇所までの範囲において、アッパー14の内層材20と外層材22の間を通るように設けられることになる。
拘束部76の具体例は特に限られない。拘束部76は、たとえば、足幅方向Yにおいてソール12の一部分のみに設けられてもよい。
アーチサポート部84は、アッパー14の足内側部分32に付与される回外方向の締付力が伝達可能に設けられていればよい。これを実現するうえで、第1、第3実施形態のように、アーチサポート部84を構成する部材(サポート部材50)の一部をアッパー14の足内側部分32に設け、その部材を介してアーチサポート部84に締付力を伝達してもよい。この他にも、第2実施形態のように、アッパー14の足内側部分32からアッパー14そのものを介してアーチサポート部84に締付力を伝達してもよい。
締付力伝達部86は、アッパー14の足内側部分32に付与される回外方向の締付力が伝達可能に設けられていればよい。これを実現するうえで、第1、第3実施形態のように、アーチサポート部84を構成する部材(サポート部材50)の一部をアッパー14の足内側部分32に設け、その部材を介して締付力伝達部86に締付力を伝達してもよい。この他にも、第2実施形態のように、アッパー14の足内側部分32からアッパー14そのもの(第1アッパー構成層110)を介してアーチサポート部84に締付力を伝達してもよい。
締付力伝達部86は、アーチサポート部84よりも足囲方向での伸縮性が高く設定されていればよい。これを実現するうえで、第1~第3実施形態のように、締付力伝達部86とアーチサポート部84の素材を変化させてもよいし、締付力伝達部86の一部に蛇腹構造等の伸縮可能な部位を設けてもよい。
規制部88は、アッパー14の足内側側部54に設けられ、足の上向きの動きを規制可能であればよく、足の甲を下向きに付勢することは必須にならない。また、足の上向きの動きを規制するうえでは、たとえば、アッパー14の内層材20のさらに内側に固定したクッション材90により規制部88を構成してもよい。
この他にも、規制部88は、アッパー14の外層材22と内層材20が構成してもよい。この場合、アッパー14の規制部88が設けられた箇所では、未変形状態にあるときの、アッパー14の内層材20より外層材22の方が足囲方向での寸法が大きくなるように構成される。また、アッパー14の規制部88が設けられた箇所では、外層材22の足囲方向での寸法に合うように内層材20を足囲方向に弾性的に伸ばした状態で設けられる。この結果、内層材20には弾性変形に伴う反発力により足囲方向での張力が付与されており、その張力により外層材22が撓むように付勢される。このとき、外層材22は、その下側周縁部が固定されているため、その上側部分の下向きの動きを伴い撓むように付勢される。この結果、アッパー14の外層材22と内層材20が、足の甲を下向きに付勢する規制部88として機能する。
第2実施形態の第2アッパー構成層112は、アッパー14の前後方向の全範囲のうちの一部のみに設けられる例を説明したが、その全範囲に設けられてもよい。また、第2アッパー構成層112は、アッパー14の足内側部分32のみに設けられる例を説明したが、その足外側部分34に設けられていてもよい。
スロート部26の両縁部28、30の形状は、いずれの実施形態においても、特に限られない。また、スロート部26の足外側縁部30を足内側に凸となる輪郭にした場合でも、その足内側縁部28を直線的に延びる輪郭にしてもよい。
以上、本発明の実施形態や変形例について詳細に説明した。前述した実施形態や変形例は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態や変形例の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態」との表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
また、以上の構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。たとえば、実施形態に対して他の実施形態や変形例の任意の説明事項を組み合わせてもよいし、変形例に対して何れかの実施形態や他の変形例の任意の説明事項を組み合わせてもよい。この組み合わせの一例を説明する。
第1、第3、第4実施形態の複数の挿通部44に第2実施形態の複数の挿通部44の位置関係を適用してもよい。また、第2実施形態の複数の挿通部44に、第1、第3、第4実施形態の複数の挿通部44の位置関係を適用してもよい。
第2実施形態の靴10に、第1、第3、第4実施形態のサポート部材50を用いてもよい。第1、第3実施形態の靴10に、第2実施形態のアッパー構成層110、112を用いてもよい。
第4実施形態の靴10に、第1~第3実施形態の説明事項を組み合わせてもよい。たとえば、第4実施形態の靴10に、第1実施形態のサポート部材50を用いてもよいし、第2実施形態のアッパー構成層110、112を用いてもよい。
以上の実施形態や変形例では、回内方向での過度のプロネーションの抑制を図れる靴を説明した。本発明は、回外方向でのサピネーションの抑制を図れる靴にも適用できる。この靴に適用する場合、実施形態や変形例の説明を次の条件(1)~(3)を満たすように捉えればよい。この場合、前述した足幅方向の第一側が足外側であり、その第二側が足内側であると捉え、足囲方向の第一側が回内方向であり、その第二側が回外方向であると捉えることになる。
(1)実施形態や変形例の説明において、足幅方向の「足内側」の文言は「足外側」の文言に置き換えて捉え、「足外側」の文言は「足内側」の文言に置き換えて捉える。
(2)実施形態や変形例の説明において、「回外方向」の文言は「回内方向」の文言に置き換えて捉え、「回内方向」の文言は「回外方向」の文言に置き換えて捉える。
(3)実施形態や変形例の説明において、「プロネーション」の文言は「サピネーション」の文言に置き換えて捉える。
たとえば、第1実施形態で説明した前述の(A)の効果を得るうえでは、靴10のアーチサポート部84は、アッパー14の足内側部分32に付与される回内方向の締付力Fa2が伝達可能に設けられ、足外側における着用者の縦アーチ(外側縦アーチ)を下側から支持可能にする。また、アッパー14の締付力伝達部86は、アーチサポート部84に対して足外側に設け、アッパー14の足内側部分32に付与される回内方向での締付力が伝達可能に設けられる。さらに、締付力伝達部86は、アーチサポート部84より足囲方向での伸縮性が高く設定すればよい。
これにより、アッパー14の足内側部分32に回内方向の締付力を付与したとき、アッパー14の締付力伝達部86とアーチサポート部84の伸縮性を同じにする場合と比べ、その締付力伝達部86が変形し易くなる。これに伴い、アーチサポート部84に伝達される締付力の増大を図れ、アーチサポート部84から足に付与される上向きの回内方向での力の増大を図れる。この結果、アーチサポート部84により足外側の縦アーチをしっかりと支持し易くなり、その落ち込みを抑制でき、回外方向でのサピネーションの抑制を図れる。
また、サピネーションの抑制を図れる靴において、第4実施形態で説明した効果を得るうえでは、第4実施形態と同様、締付力伝達部86が、締付具42を締め付けようとしたとき、アーチサポート部84より後に締付力が伝達されるように構成されていればよい。
また、以上の実施形態、変形例により具体化される発明を一般化すると、以下の項目に記載の発明が含まれているともいえる。
(第1項目)
アッパーと、
着用者の足の甲の上方に配置され、前記アッパーの足幅方向両側の部分を引き寄せる締付力を前記アッパーに付与可能な締付具と、を備え、
前記アッパーは、足幅方向の第一側に設けられる第一側部分と、足幅方向の第二側に設けられる第二側部分とを備え、
前記第一側部分及び前記第二側部分のそれぞれには、前後方向に間隔を空けて列状の複数の締付具挿通部が設けられ、
前記第二側部分の前記複数の締付具挿通部のうち前後方向の途中にある締付具挿通部は、他の締付具挿通部に対して前記足幅方向の第一側に偏って位置する靴。
(第2項目)
前記第一側部分の前記複数の締付具挿通部のうち前後方向の途中にある締付具挿通部は、他の締付具挿通部に対して前記足幅方向の第一側に偏って位置する第1項目に記載の靴。
この項目に記載の発明の目的の1つは、過度のプロネーションの抑制を図れる靴を提供することにある。