以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比及び形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明が適用される車両10の概略構成を説明する図であると共に、車両10における各種制御の為の制御機能及び制御系統の要部を説明する図である。図1において、車両10は、走行用の動力源として機能する、エンジン12及び電動機MGを備えたハイブリッド車両である。又、車両10は、駆動輪14と、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路に設けられた動力伝達装置16と、を備えている。
エンジン12は、よく知られた公知の内燃機関である。エンジン12は、車両10に備えられたスロットルアクチュエータや燃料噴射装置や点火装置等を含むエンジン制御装置50が制御されることによりエンジン12の出力トルクであるエンジントルクTeが制御される。
電動機MGは、電力から機械的な動力を発生させる発動機としての機能及び機械的な動力から電力を発生させる発電機としての機能を有する回転電気機械であって、所謂モータジェネレータである。電動機MGは、車両10に備えられたインバータ52を介して、車両10に備えられたバッテリ54に接続されている。バッテリ54は、電動機MGに対して電力を授受する蓄電装置である。電動機MGは、後述する電子制御装置90によってインバータ52が制御されることにより、電動機MGのトルクであるMGトルクTmが制御される。前記電力は、特に区別しない場合には電気エネルギーも同意である。前記動力は、特に区別しない場合には駆動力、トルク、及び力も同意である。
動力伝達装置16は、ケース18内に、断接クラッチK0、発進クラッチWSC、自動変速機20、減速ギヤ機構22、ディファレンシャルギヤ24等を備えている。断接クラッチK0は、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路におけるエンジン12と電動機MGとの間を断接するクラッチである。発進クラッチWSCは、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路における、エンジン12及び電動機MGと自動変速機20との間に設けられたクラッチである。減速ギヤ機構22は、自動変速機20の変速機出力歯車26に連結されている。ディファレンシャルギヤ24は、減速ギヤ機構22に連結されている。
又、動力伝達装置16は、ディファレンシャルギヤ24に連結された1対のドライブシャフト28、エンジン12と断接クラッチK0とを連結するエンジン連結軸30、断接クラッチK0と発進クラッチWSCとを連結する電動機連結軸32、機械オイルポンプ34、電動機連結軸32と機械オイルポンプ34とを連結する伝達部材36等を備えている。伝達部材36は、例えばスプロケット及びチェーンで構成されている。
電動機MGは、ケース18内において、電動機連結軸32に動力伝達可能に連結されている。つまり、電動機MGは、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路、特には断接クラッチK0と発進クラッチWSCとの間の動力伝達経路に動力伝達可能に連結されている。
断接クラッチK0は、例えばアクチュエータによって押圧される多板式或いは単板式のクラッチから構成される、湿式の摩擦係合装置である。断接クラッチK0は、車両10に備えられた油圧制御回路56から供給される調圧された油圧であるK0油圧PRk0により断接クラッチK0のトルク容量であるK0トルクTk0が変化させられることで、係合状態、スリップ状態、解放状態などの作動状態つまり制御状態が切り替えられる。なお、断接クラッチK0が、本発明のクラッチに対応する。
断接クラッチK0は、エンジン12を電動機MGに対して接続したり遮断したりする、すなわちエンジン12と電動機MGとを断接するクラッチとして機能する。
発進クラッチWSCは、例えばアクチュエータにより押圧される多板式或いは単板式のクラッチにより構成される湿式の摩擦係合装置である。発進クラッチWSCは、油圧制御回路56から供給される調圧された油圧であるWSC油圧PRwscにより発進クラッチWSCのトルク容量であるWSCトルクTwscが変化させられることで、係合状態、スリップ状態、解放状態などの制御状態が切り替えられる。
発進クラッチWSCの入力側部材は、電動機連結軸32と一体的に連結されている。発進クラッチWSCの出力側部材は、自動変速機20の入力回転部材である変速機入力軸38と一体的に連結されている。発進クラッチWSCの係合状態では、エンジン12の動力及び電動機MGの動力を自動変速機20へ伝達可能な状態とされる。一方で、発進クラッチWSCの解放状態では、エンジン12及び電動機MGから自動変速機20への動力伝達が遮断される。
自動変速機20は、例えば不図示の1組又は複数組の遊星歯車装置と、係合装置CBと、を備えている、公知の遊星歯車式の自動変速機である。係合装置CBは、例えば複数の公知の油圧式の摩擦係合装置を含んでいる。係合装置CBは、各々、油圧制御回路56から供給される調圧された油圧であるCB油圧PRcbによりそれぞれのトルク容量であるCBトルクTcbが変化させられることで、係合状態、スリップ状態、解放状態などの制御状態が切り替えられる。
自動変速機20は、係合装置CBのうちの何れかの係合装置が係合されることによって、変速比(ギヤ比ともいう)γat(=AT入力回転速度Ni/AT出力回転速度No)が異なる複数の変速段(ギヤ段ともいう)のうちの何れかのギヤ段が形成される有段変速機である。例えば、自動変速機20は、ドライバー(=運転者)のアクセル操作や車速V等に応じて形成されるギヤ段が切り替えられる。AT入力回転速度Niは、変速機入力軸38の回転速度である。AT出力回転速度Noは、変速機出力歯車26の回転速度である。
動力伝達装置16において、エンジン12から出力される動力は、断接クラッチK0及び発進クラッチWSCが共に係合された場合において、自動変速機20等を介して駆動輪14へ伝達される。又、動力伝達装置16において、電動機MGから出力される動力は、断接クラッチK0の制御状態に拘わらず、発進クラッチWSCが係合された場合に、自動変速機20等を介して駆動輪14へ伝達される。
車両10は、伝達部材36を介して電動機連結軸32に連結された機械オイルポンプ34を備えている。車両10は、更に、電動式のオイルポンプである電動オイルポンプ58、ポンプ用モータ60等を備えている。電動オイルポンプ58は、ポンプ用モータ60により駆動させられる。
機械オイルポンプ34や電動オイルポンプ58が吐出した作動油OILは、油圧制御回路56へ供給される。油圧制御回路56は、機械オイルポンプ34及び電動オイルポンプ58の少なくとも一方が吐出した作動油OILを元にして各々調圧した、K0油圧PRk0、WSC油圧PRwsc、CB油圧PRcbなどを供給する。作動油OILは、例えば動力伝達装置16の各部の潤滑などにも用いられる。
車両10は、更に、車両10の制御装置を含むコントローラとしての電子制御装置90を備えている。電子制御装置90は、必要に応じてエンジン制御用、電動機制御用、油圧制御用等の各コンピュータを含んで構成される。
電子制御装置90には、車両10に備えられた各種センサ等(例えばエンジン回転速度センサ70、MG回転速度センサ72、入力回転速度センサ74、出力回転速度センサ76、アクセル開度センサ78、スロットル弁開度センサ80、ブレーキセンサ82、バッテリセンサ84、油温センサ86など)による検出値に基づく各種信号等(例えばエンジン12の回転速度であるエンジン回転速度Ne、電動機MGの回転速度であって発進クラッチWSCの入力側部材の回転速度でもあるMG回転速度Nm、AT入力回転速度Ni、車速Vに対応するAT出力回転速度No、運転者の加速操作の大きさを表す運転者のアクセル操作量であるアクセル開度θacc、電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θth、図示しないホイールブレーキを作動させる為のブレーキペダルが運転者によって操作されている状態を示す信号であるブレーキオン信号Bon、ブレーキ操作量Bra、バッテリ54のバッテリ温度THbatやバッテリ充放電電流Ibatやバッテリ電圧Vbat、油圧制御回路56内の作動油OILの温度である作動油温THoilなど)が、それぞれ供給される。
電子制御装置90からは、車両10に備えられた各装置等(例えばエンジン制御装置50、インバータ52、油圧制御回路56、ポンプ用モータ60など)に各種指令信号等(例えばエンジン12を制御する為のエンジン制御指令信号Se、電動機MGを制御する為のMG制御指令信号Sm、係合装置CBを制御する為のCB油圧制御指令信号Scb、断接クラッチK0を制御する為のK0油圧制御指令信号Sk0、発進クラッチWSCを制御する為のWSC油圧制御指令信号Swsc、電動オイルポンプ58を制御する為の電動オイルポンプ制御指令信号Seopなど)が、それぞれ出力される。
電子制御装置90は、車両10における各種制御を実現する為に、動力源制御手段すなわち動力源制御部92、及びクラッチ制御手段すなわちクラッチ制御部94を備えている。
動力源制御部92は、エンジン12の作動を制御する機能と、電動機MGの作動を制御する機能と、を含んでおり、それらの制御機能によりエンジン12及び電動機MGによるハイブリッド駆動制御等を実行する。
動力源制御部92は、例えば駆動要求量マップにアクセル開度θacc及び車速Vを適用することで、運転者による車両10に対する駆動要求量を算出する。前記駆動要求量マップは、予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された、すなわち予め定められた、前記駆動要求量を求める為の関係である。前記駆動要求量は、例えば駆動輪14における要求駆動トルクTrdem[Nm]である。要求駆動トルクTrdemは、見方を換えればそのときの車速Vにおける要求駆動パワーPrdem[W]である。前記駆動要求量としては、駆動輪14における要求駆動力Frdem[N]等を用いることもできる。動力源制御部92は、伝達損失、補機負荷、自動変速機20の変速比γat等を考慮して、要求駆動パワーPrdemを実現するように、エンジン12を制御するエンジン制御指令信号Seと、電動機MGを制御するMG制御指令信号Smと、を出力する。
動力源制御部92は、電動機MGの出力のみで要求駆動トルクTrdemを賄える場合には、車両10を駆動する駆動モードをBEV駆動モードとする。BEV駆動モードは、断接クラッチK0の解放状態において、電動機MGのみを動力源に用いて走行するモータ走行(=BEV走行)が可能なモータ駆動モードである。一方で、動力源制御部92は、少なくともエンジン12の出力を用いないと要求駆動トルクTrdemを賄えない場合には、駆動モードをエンジン駆動モードつまりHEV駆動モードとする。HEV駆動モードは、断接クラッチK0の係合状態において、少なくともエンジン12を動力源に用いて走行するエンジン走行、つまりハイブリッド走行(=HEV走行)が可能なハイブリッド駆動モードである。
動力源制御部92は、エンジン12の制御状態を停止状態から運転状態へ切り替えるエンジン始動要求の有無を判定する。例えば、動力源制御部92は、BEV駆動モード時(すなわちモータ走行時)に、要求駆動トルクTrdemが電動機MGの出力のみで賄える範囲よりも増大したか否か、又は、エンジン12等の暖機が必要であるか否か、又は、バッテリ54の充電が必要であるか否かなどに基づいて、エンジン始動要求が有るか否かを判定する。
クラッチ制御部94は、動力源制御部92によりエンジン始動要求が有ると判定された場合には、エンジン12の始動制御を実行するように断接クラッチK0を制御する。例えば、クラッチ制御部94は、クランキングトルクTcrをエンジン12側へ伝達する為のK0トルクTk0が得られるように、解放状態の断接クラッチK0を係合状態に向けて制御する為のK0油圧制御指令信号Sk0を出力する。クランキングトルクTcrは、エンジン回転速度Neを引き上げるエンジン12のクランキングに必要な所定のトルクである。
動力源制御部92は、エンジン始動要求が有ると判定した場合には、エンジン12の始動制御を実行するようにエンジン12及び電動機MGを制御する。例えば、動力源制御部92は、クラッチ制御部94による断接クラッチK0の係合状態への切替えに合わせて、電動機MGがクランキングトルクTcrを出力する為のMG制御指令信号Smを出力する。又、動力源制御部92は、エンジン12のクランキングに連動して、燃料供給やエンジン点火などを開始する為のエンジン制御指令信号Seを出力する。
動力源制御部92は、車両10がBEV走行中である場合には、発進クラッチWSCのスリップ状態において、エンジン12の始動制御を実行する。これにより、エンジン12の始動制御に伴うトルク変動によるショックを抑制することができる。
又、クラッチ制御部94は、車両10の発進時には、解放状態又はスリップ状態にある発進クラッチWSCを滑らせながら係合状態へ切り替えるように制御する。又、クラッチ制御部94は、車両10の走行中には、発進クラッチWSCを係合状態に維持するように制御する。但し、クラッチ制御部94は、低車速でのHEV走行中にAT入力回転速度Niがエンジン12の運転可能回転速度を下回るなどの場合には、発進クラッチWSCをスリップ状態に制御する。又、クラッチ制御部94は、車両10のBEV走行中のエンジン12の始動制御の際には、発進クラッチWSCをスリップ状態に制御する。
クラッチ制御部94は、例えば予め定められた関係である変速マップを用いて自動変速機20の変速判断を行い、必要に応じて自動変速機20のギヤ段を切り替える為のCB油圧制御指令信号Scbを出力する。前記変速マップは、例えば車速V及び要求駆動トルクTrdemを変数とする二次元座標上に、自動変速機20の変速が判断される為の変速線を有する所定の関係である。
以下、上述したエンジン始動時の制御についてさらに詳細に説明する。動力源制御部92は、エンジン始動時におけるエンジン回転速度Neの上昇過渡期において、エンジン回転速度Neが同期回転速度に相当するMG回転速度Nmgに到達したか否かを判定する。例えば、動力源制御部92は、エンジン回転速度Neと電動機MGのMG回転速度Nmとの回転速度差ΔN1(=|Nm-Ne|)を随時算出し、回転速度差ΔN1が、予め設定されている同期判定閾値α以下になると、エンジン回転速度Neが同期回転速度(すなわちMG回転速度)に到達した、すなわちエンジン回転速度NeがMG回転速度Nmに回転同期したと判定する。
エンジン回転速度Neが同期回転速度(すなわちMG回転速度)に到達すると、動力源制御部92は、エンジン12のエンジントルクTeを増加させる一方で、電動機MGのMGトルクTmを減少させるトルクの掛替を実行する。ここで、動力源の掛替過渡期におけるエンジントルクTeの変化率であるエンジントルクレートRT(以下、トルクレートRT)が大きいと、エンジントルクTeが急激に増加し、これに伴って車両加速度Gが変動する虞がある。また、エンジン12のトルク変動に起因してダンパの捩りによる揺れが生じ、この揺れが駆動輪14側に伝達されてショックが発生する虞がある。更に、エンジン回転速度Neが高回転である場合には、エンジントルクTeの急変化に伴ってエンジンノイズが大きくなり、運転者に違和感を与える虞がある。このように、エンジン始動時にエンジントルクTeが急激に変化すると、NV特性(騒音・振動特性)の悪化に繋がる虞がある。
上記ショックの発生を抑制するため、電子制御装置90は、エンジン12の始動時におけるエンジントルクTeのトルクレートRTの上限値である上限ガード値GUを算出する、上限ガード値算出手段としての上限ガード値算出部98を機能的に備えている。上限ガード値算出部98は、例えば、アクセル開度θaccなどをパラメータとする上限ガード値算出用の関係マップ又は関係式に、現時点におけるアクセル開度θaccなどを適用することで、エンジン始動時における上限ガード値GUを算出する。前記関係マップ又は関係式は、予め実験的又は設計的に求められ、エンジントルクTeを増大する過渡期に発生するショックが許容範囲に抑えられる上限ガード値GUが求められるように構成されている。
上限ガード値GUが算出されると、動力源制御部92は、エンジントルクTeのベーストルクレートRTbsと上限ガード値GUのうち値の小さい側を、最終的なトルクレートRTに決定する。動力源制御部92は、最終的なトルクレートRTを決定すると、そのトルクレートRT基づいてエンジントルク指令値Tetgt(以下、トルク指令値Tetgt)を算出し、エンジントルクTeがトルク指令値Tetgtとなるように制御されるエンジン制御指令信号Seを出力する。上記ベーストルクレートRTbsは、加速の応答性や燃費(消費電力)を考慮して設定される値であり、例えば、エンジン始動後のエンジントルクTeの目標値である目標エンジントルクTeffに基づいて設定される。これより、エンジン始動時にエンジントルクTeが急激に変化することが抑制されるため、エンジン始動時に発生するショックが抑制される。一方で、エンジントルクTeのトルクレートRTが上限ガード値GUによって制限されると、駆動輪14に伝達される駆動トルクTrが不足する虞がある。これに対して動力源制御部92は、エンジントルクTeのトルクレートRTの制限による駆動トルクTrの不足分を補うように、MGトルクTmを増加させるMG制御指令信号Smを出力する。従って、エンジントルクTeのトルクレートRTが制限された場合であっても、駆動トルクTrが確保される。
しかしながら、エンジンを始動させるに当たって、バッテリの充電状態値SOCの低下、電動機MG又はバッテリ54の発熱などによって、電動機MGから出力可能な最大MGトルクTmmaxが制限されている場合には、電動機MGのMGトルクTmが制限される為、要求駆動トルクTrdemに対して実際の駆動トルクTrが不足することで加速がもたつくヘジテーションが発生する虞がある。
図2は、エンジン始動時における制御状態の一態様を説明するタイムチャートである。図2において、横軸が時間t[sec]を示し、縦軸が上から順番に、アクセル開度θacc、各回転速度(エンジン回転速度Ne、MG回転速度Nm、AT入力回転速度Ni)、各トルク(エンジントルク指令値Tetgt、エンジントルクTe、換算要求駆動トルクTidem、MGトルクTm、最大MGトルクTmmax)をそれぞれ示している。ここで、換算要求駆動トルクTidemは、駆動輪14での要求駆動トルクTrdemを、電動機連結軸32でのトルクに換算した換算値である。
図2のt1時点では、エンジン回転速度Neを引き上げるためのMGトルクTm(すなわちクランキングトルクTcr)が電動機MGから出力されている。又、図示しないが、断接クラッチK0のトルク容量Tkoが係合状態に向けて制御され、電動機MGのMGトルクTmが断接クラッチK0を経由してエンジン側に伝達されることによって、t1時点からエンジン回転速度Neが上昇している。t2時点では、エンジン回転速度NeとMG回転速度Nmとの回転速度差ΔN1が同期判定閾値α以下になることで、エンジントルクTeを増加させる一方で、MGトルクTmを減少させるトルクの掛替が開始されている。これより、t2時点以降において、実線で示すエンジントルクTeのトルク指令値Tetgtが漸増し、二点鎖線で示す実際のエンジントルクTeがトルク指令値Tetgtに追従するようにして増加している。又、t2時点以降において、MGトルクTmが所定値まで低下した後、その所定値付近で保持されている。t3時点では、電動機MGから出力可能な最大MGトルクTmmaxの低下に伴い、MGトルクTmが最大MGトルクTmmaxと共に低下している。この後、t4時点になるまでの間、最大MGトルクTmmaxの減少に伴い、MGトルクTmが制限されている。その結果、エンジントルクTeとMGトルクTmとの合算値が、換算要求駆動トルクTidemに到達するのに時間がかかることでヘジテーションが発生する。
上記ヘジテーションを抑制するため、電子制御装置90は、下限ガード値算出手段としての下限ガード値算出部100と、上限ガード値変更手段としての上限ガード値変更部102と、を機能的に備えている。
下限ガード値算出部100は、エンジントルクTeの上昇が開始されると、電動機MGの余剰パワーPexpを算出する。余剰パワーPexpは、下式(1)から算出される。式(1)において、Peは、現時点でのエンジンパワーに対応し、Pmmaxは、現時点での電動機MGから出力可能なMGパワー(以下、可能MGパワーPmmax)に対応し、Pidemは、車両10の要求駆動パワーPrdemを電動機連結軸32でのパワーに換算した換算値(以下、換算要求駆動パワーPidem)である。余剰パワーPexpは、言い換えれば、エンジン始動時にアシストできる電動機MGのパワーに相当する。
Pexp=Pe+Pmpos-Pidem・・・(1)
可能MGパワーPmmaxは、バッテリ54の充電状態値SOCや電動機MGのMG温度などで構成された、予め規定されている可能MGパワーPmmax算出用の関係マップ又は関係式に、充電状態値SOCやMG温度など適用することで算出される。換算駆動パワーPitgtは、アクセル開度θaccや車速Vに基づいて算出される駆動輪14での要求駆動パワーPrdemに、自動変速機20から駆動輪14までの間の動力伝達経路におけるギヤ比γm等を考慮して算出される。
下限ガード値算出部100は、余剰パワーPexpを算出すると、その余剰パワーPexpに基づいて下限ガード値GDを算出する。下限ガード値算出部100は、例えば余剰パワーPexpをパラメータとする下限ガード値GDを求める為の関係マップ又は関係式に、算出された余剰パワーPexpを適用することで下限ガード値GDを算出する。前記関係マップ又は関係式は、予め実験的又は設計的に求められ、余剰パワーPexpが小さい状態であっても、駆動輪14に伝達される駆動トルクTrが確保されることで、エンジン始動時のヘジテーションが抑制される値に設定されている。
図3は、余剰パワーPexpと下限ガード値GDとで構成される、関係マップの一態様を示している。図3に示すように、余剰パワーPexpが所定値P2以上の領域では、下限ガード値GDがゼロとされる。所定値P2は、電動機MGによるアシストトルクが十分に確保できる値とされている。従って、余剰パワーPexpが所定値P2では、下限ガード値GDを設定する必要がない為、下限ガード値GDがゼロとされている。又、余剰パワーPexpが所定値P2以下になると、余剰パワーPexpが低下するに従い下限ガード値GDが増加している。すなわち、余剰パワーPexpが所定値P2以下の領域では、余剰パワーPexpに拘わらず駆動トルクTrが確保されるように、余剰パワーPexpが小さくなるほど下限ガード値GDが増加している。又、余剰パワーPexpが所定値P1以下の領域では、例えばベーストルクレートRTbsを上限とした値に設定される。なお、所定値P2が、本発明の所定値に対応する。
上限ガード値変更部102は、下限ガード値GDが求められると、下限ガード値GDが上限ガード値GUよりも大きいか否かを判定する。上限ガード値変更部102は、下限ガード値GDが上限ガード値GUよりも大きい場合には、上限ガード値GUの値を下限ガード値GDで下限ガードする。具体的には、上限ガード値変更部102は、下限ガード値GDが上限ガード値GUよりも大きい場合には、上限ガード値GUの値を下限ガード値GDに変更する。一方、上限ガード値変更部102は、下限ガード値GDが上限ガード値GUよりも小さい場合には、上限ガード値GUの値を保持する。すなわち、上限ガード値GU及び下限ガード値GDの大きい側が、上限ガード値GUに設定される。このようにして、上限ガード値GUの下限が下限ガード値GDで制限されることで、電動機MGの余剰パワーPexpが小さいときには、エンジントルクTeのトルクレートRTが下限ガード値GDよりも小さくなることが防がれる為、エンジン始動時に駆動トルクTrが不足することによるヘジテーションが抑制される。
図4は、電子制御装置90の制御作動を説明する為のフローチャートであり、エンジン始動時に駆動トルクTrが不足することによるヘジテーションを防止できる制御作動を説明する為のフローチャートである。このフローチャートは、エンジン始動中において繰り返し実行される。
先ず、動力源制御部92の制御機能に対応するステップ(以下、ステップを省略)S10では、エンジン始動時において、エンジントルクTeを増加させると共に、電動機MGのMGトルクTmを減少させる、トルクの掛替中であるか否かが判定される。S10の判定が否定された場合、本ルーチンが終了させられる。S10の判定が肯定された場合、上限ガード値算出部98及び下限ガード値算出部100の制御機能に対応するS20において、エンジントルクTeのトルクレートRTの上限ガード値GUが算出される。さらに、余剰パワーPexpに基づいて下限ガード値GDが算出される。次いで、上限ガード値変更部102の制御機能に対応するS30において、下限ガード値GDが上限ガード値GUよりも大きいか否か判定される。S30の判定が否定された場合、上限ガード値変更部102の制御機能に対応するS50において、上限ガード値GUが保持されて後述するS60に進む。S30の判定が肯定された場合、上限ガード値変更部102の制御機能に対応するS40において、上限ガード値GUの下限が下限ガード値GDによって制限される(下限ガード)。具体的には、上限ガード値GUが下限ガード値GDよりも小さい為、上限ガード値GUの値が下限ガード値GDに変更される。次いで、動力源制御部92の制御機能に対応するS60では、S40又はS50で決定された上限ガード値GU及びベーストルクレートRTbsのうち小さい側の値が最終的なトルクレートRTに設定される。その結果、S60で設定されたトルクレートRTに基づいてエンジントルクTeのトルク指令値Tetgtが設定されることで、電動機MGのMGトルクTmが制限された場合であっても、エンジン始動時に駆動トルクTrが不足することによるヘジテーションが抑制される。
図5は、エンジン始動時における制御状態の一態様を説明するタイムチャートである。図5において、横軸が時間t[sec]を示し、縦軸が上から順番に各回転速度(エンジン回転速度Ne、MG回転速度Nm、AT入力回転速度Ni)、各エンジントルクTe(指令値)を示している。
t1時点において、エンジン始動が開始されると、断接クラッチK0が係合状態に向かって制御されると共に、電動機MGからエンジン12のクランキング用のクランキングトルクTcrが出力されることで、エンジン回転速度Neが上昇している。t2時点では、エンジン回転速度NeがMG回転速度Nmに回転同期することで、t2時点以降からエンジントルクTeの増加が開始される。図5の実線で示すベースエンジントルクTebsは、ベーストルクレートRTbsに基づいて規定されるエンジン12のトルク指令値である。図5の破線で示す上限ガードトルクTguは、上限ガード値GUに基づいて規定されるトルク指令値である。又、図5のt3時点-t4時点の間で設定されている下限ガードトルクTgdは、下限ガード値GDに基づいて規定されるエンジン12のトルク指令値である。t3時点-t4時点の間では、この間で随時算出される下限ガード値GDが上限ガード値GUよりも大きくなっており、これに関連してt3時点-t4時点の間では、下限ガードトルクTgdが上限ガードトルクTguよりも大きくなっている。このとき、上限ガード値GUの下限が下限ガード値GDによって制限される為、最終的なトルク指令値Tetgtが下限ガードトルクTgdに沿って変化している。その結果、駆動トルクTrの不足が抑制され、エンジン始動時に発生するヘジテーションが防止される。
上述のように、本実施例によれば、エンジン始動時にエンジントルクTeを増加させると共に電動機MGのMGトルクTmを低下させるに当たり、エンジントルクTeの上限ガード値GU、及び、電動機MGの余剰パワーPexpに応じた下限ガード値GDが算出され、下限ガード値GDが上限ガード値GUよりも大きい場合には、上限ガード値GUの値が下限ガード値GDに変更されるため、上限ガード値GUが電動機MGの余剰パワーPexpを考慮した適切な値とされる。これより、電動機MGの余剰パワーPexpが小さい場合であっても、エンジントルクTeのトルク指令値Tetgtが大きくなることで、エンジン始動時の駆動トルクTrの不足が抑制される為、ヘジテーションが抑制される。
又、下限ガード値GDは、余剰パワーPexpが所定値P2以下になると、余剰パワーPexpが小さくなるほど大きくなるように設定されているため、下限ガード値GDが余剰パワーPexpに応じた適切な値となる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、エンジン12及び電動機MGと自動変速機20との間に発進クラッチWSCが設けられていたが、発進クラッチWSCが自動変速機20の係合装置CBの何れかに代用されるものであっても構わない。又、エンジン12及び電動機MGと自動変速機20との間に、ロックアップクラッチを有するトルクコンバータが介在される場合には、そのロックアップクラッチが発進クラッチWSCに代用されても構わない。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。