本発明のシート状空気電池においては、電解質塩を含有するpHが3以上12未満の水溶液と、増粘剤として、アクリルアミド重合体を含有させてなる電解質を使用する。
電解質に増粘剤として含有させるアクリルアミド重合体は、電解質(電解液)の粘度を高めると共に、保湿剤としても機能する。これにより、本発明のシート状空気電池においては、シート状外装体に設けられる空気孔を通じて、電解質から水分が蒸発して電池外に散逸することなどによって生じ得る液枯れを抑制できるため、良好な放電特性を長期にわたって維持できる。よって、本発明のシート状空気電池は、優れた貯蔵特性を有するものとなる。
しかも、アクリルアミド重合体は、ごく少量含有させるだけで、電解質からの水分の揮発を抑制することができるため、電解質の過度の増粘を抑えることが可能であり、電池の内部抵抗上昇を防ぐことができる。よって、本発明のシート状空気電池においては、貯蔵時の放電特性の低下を良好に抑制することもできる。
また、アクリルアミド重合体は、亜鉛(亜鉛合金を含む)の腐食を抑える作用も有している。よって、負極活物質として亜鉛系材料(亜鉛材料および亜鉛合金材料を纏めてこのように称する。以下同じ。)を有するシート状空気電池においては、その貯蔵特性の向上効果は、より顕著なものとなる。
電解質を形成するための増粘剤としては、アクリルアミド重合体、すなわち、アクリルアミドをモノマーとする単独重合体または共重合体であって、電解質の溶媒である水に溶解するものが挙げられる。アクリルアミド重合体のなかでも、本発明の効果を高める作用がより良好であることから、アニオン性アクリルアミド重合体が好ましく、アクリルアミドとアクリル酸塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)との共重合体がより好ましい。このようなアクリルアミド重合体には、三洋化成社製「サンフロック AH-200P(商品名)」(アクリルアミド-アクリル酸ナトリウム共重合体)などの市販品を使用することができる。
増粘剤には、必要に応じて、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース(CEC)などのセルロースの誘導体;ポリアルキレングリコール(ポリアルキレンオキシドと称されるものも含む)〔ポリエチレングリコール(PEG)など〕;ポリビニルピロリドン;ポリ酢酸ビニル;デンプン;グアーガム;キサンタンガム;アルギン酸ナトリウム;ヒアルロン酸;ゼラチン;ポリアクリル酸;などの各種合成高分子または天然高分子を、アクリルアミド重合体と共に用いることもできる。
電解質の形成には、電解質塩を含有するpHが3以上12未満の水溶液を使用する。水溶液に溶解させる電解質塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化アンモニウムや塩化亜鉛などの塩化物;アルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムなど)、酢酸塩(酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸マグネシウムなど)、硝酸塩(硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸マグネシウムなど)、硫酸塩(硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウムなど)、リン酸塩(リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウムなど)、ホウ酸塩(ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸マグネシウムなど)、クエン酸塩(クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸マグネシウムなど)、グルタミン酸塩(グルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸カリウム、グルタミン酸マグネシウムなど);アルカリ金属の炭酸水素塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなど);アルカリ金属の過炭酸塩(過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウムなど);フッ化物などのハロゲンを含む化合物;多価カルボン酸;などが挙げられ、前記水溶液は、これらの電解質塩のうちの1種または2種以上を含有していればよい。
なお、前記電解質塩としては、塩酸、硫酸および硝酸より選択される強酸と、アンモニアや、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなど金属元素の水酸化物に代表される弱塩基との塩が好ましく、アンモニウム塩または特定の金属元素の塩を使用することがより好ましい。具体的には、Cl-、SO4
2-、HSO4
-およびNO3
-より選択される少なくとも1種のイオンと、Alイオン、Mgイオン、Feイオンおよびアンモニウムイオンより選択される少なくとも1種のイオンとの塩であることがより好ましく、硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム〔(NH4)HSO4〕、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムなどのアンモニウム塩;硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムなどのアルミニウム塩;硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化水酸化マグネシウム〔MgCl(OH)〕、硝酸マグネシウムなどのマグネシウム塩;硫酸鉄(II)、硫酸アンモニウム鉄(II)〔(NH4)2Fe(SO4)2〕、硫酸鉄(III)、塩化鉄(II)、硝酸鉄(II)などの鉄塩;などが例示される。
前記例示の強酸と弱塩基との塩を含有する電解質は、塩化ナトリウムなどの強酸と強塩基との塩を含有する電解質などに比べて、負極活物質である金属や合金を腐食させる作用が比較的小さい。また、強酸の塩のうち、Al、MgおよびFeより選択される金属元素の塩またはアンモニウム塩を含有する電解質は、例えば塩化亜鉛水溶液などに比べて比較的高い導電率を有している。よって、強酸と弱塩基との塩として、Cl-、SO4
2-、HSO4
-およびNO3
-より選択される少なくとも1種のイオンと、Alイオン、Mgイオン、Feイオンおよびアンモニウムイオンより選択される少なくとも1種のイオンとの塩を含有する水溶液を電解質に用いた場合には、シート状空気電池の放電特性をより高めることができる。
ただし、Cl-イオンとFe3+イオンとの塩〔塩化鉄(III)〕については、その他のイオンの組み合わせによる塩に比べて負極活物質である金属材料を腐食させる作用が強いため、塩化鉄(III)以外の塩を用いることが好ましく、負極活物質である金属材料を腐食させる作用がより低いことから、アンモニウム塩を用いることがより好ましい。
また、前記強酸と弱塩基との塩のうち、過塩素酸塩は、加熱や衝撃により燃焼や爆発の危険を生じることから、環境負荷や廃棄時の安全性の観点からは、電解質の形成に使用する前記水溶液に含有させないか、または含有しても過塩素酸イオンの量がわずか(100ppm未満が好ましく、10ppm未満がより好ましい)であることが好ましい。
また、前記強酸と弱塩基との塩のうち、塩化亜鉛や硫酸銅などに代表される重金属塩(鉄の塩を除く)は、有害であるものが多いため、環境負荷や廃棄時の安全性の観点からは、電解質の形成に使用する前記水溶液に含有させないか、または含有しても鉄イオンを除く重金属イオンの量がわずか(100ppm未満が好ましく、10ppm未満がより好ましい)であることが好ましい。
電解質塩を含有する前記水溶液のpHは、3以上、好ましくは5以上であって、12未満、好ましくは10以下、より好ましくは7未満である。このようなpHの水溶液を使用することで、例えば、強アルカリである高pHのアルカリ水溶液を用いる場合に比べて、シート状空気電池を廃棄する際の安全性を高め、また、廃棄後の環境への負荷の低減を図ることができる。
前記水溶液における電解質塩の濃度は、例えば、前記水溶液の導電率が80~700mS/cm程度に調整できる濃度であればよく、通常は、5~50質量%である。
また、電解質におけるアクリルアミド重合体の含有量は、電解質からの水分の揮発をより良好に抑制する観点から、2質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。ただし、電解質におけるアクリルアミド重合体の含有量が多すぎると、電解質中に溶解し難くなる他、水溶液の粘度が高くなり過ぎて電解質のイオン伝導性が低下する虞がある。よって、電解質におけるアクリルアミド重合体の含有量は、8質量%以下であることが好ましく、特に良好なイオン伝導性を確保する観点からは、5質量%以下であることがより好ましい。
なお、アクリルアミド重合体と、アクリルアミド重合体以外の増粘剤とを併用する場合、電解質中の増粘剤の総含有量が2質量%以上8質量%以下を満たす範囲内で使用することが好ましい。
また、電解質には、沸点が150℃以上の水溶性高沸点溶媒を含有させることが好ましく、これにより、電解質からの水分の蒸発(液枯れ)による電池特性の低下をより良好に抑制して、電池の貯蔵特性をさらに高めることができる。水溶性高沸点溶媒の沸点の上限値は、通常、320℃である。
シート状空気電池の放電特性をより良好に維持する観点からは、水溶性高沸点溶媒は、その表面張力や比誘電率が高いことが望ましい。シート状空気電池においては、放電に際し正極(触媒層)が空気と触れる必要があるが、電解質中の水溶性高沸点溶媒の表面張力が低いと、正極の触媒層の表面が電解質で覆われやすくなり、触媒層の反応を阻害して放電特性を低下させる虞を生じる。しかし、表面張力が高い水溶性高沸点溶媒を使用することで、こうした問題を回避することができる。
また、有機溶媒は、通常、水よりも比誘電率が低いため、これを水と混合して電解質を調製すると、水のみを使用した場合よりもイオン伝導性が低下して、電池の放電特性を損なう虞があるが、比誘電率が高い水溶性高沸点溶媒を使用することで、こうした問題の発生を抑制することができる。
具体的には、水溶性高沸点溶媒の表面張力は、30mN/m以上であることが好ましい。また、水溶性高沸点溶媒の表面張力の上限値は、通常、70mN/mである。本明細書でいう水溶性高沸点溶媒の表面張力は、市販の装置(例えば、協和界面科学社製「CBVP-Z」)を使用して、Wilhelmy法によって測定される値である。
さらに、水溶性高沸点溶媒の比誘電率は、30以上であることが好ましい。また、水溶性高沸点溶媒の比誘電率の上限値は、通常、65である。本明細書でいう水溶性高沸点溶媒の比誘電率は、HEWLETTPACKARD社製「プレジョンLCRメーターHP4284」などを用い測定される誘電率より求まる値である。
電解質に好適な水溶性高沸点溶媒の具体例としては、エチレングリコール(沸点197℃、表面張力48mN/m、比誘電率39)、プロピレングリコール(沸点188℃、表面張力36mN/m、比誘電率32)、グリセリン(沸点290℃、表面張力63mN/m、比誘電率43)などの多価アルコール;PEG(沸点230℃、表面張力43mN/m、比誘電率35)などのポリアルキレングリコール(ただし、分子量が600以下のもの);などが挙げられる。ゲル状電解質には、これらの水溶性高沸点溶媒のうちの1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、グリセリンを使用することがより好ましい。
水溶性高沸点溶媒を使用する場合、その使用による効果を良好に確保する観点から、電解質の全溶媒中の水溶性高沸点溶媒の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。ただし、電解質中の水溶性高沸点溶媒の量が多すぎると、電解質のイオン伝導性が小さくなりすぎて、電池特性が低下する虞があることから、電解質の全溶媒中の水溶性高沸点溶媒の含有量は、30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。
電解質には、その溶媒(水または水と水溶性高沸点溶媒との混合溶媒)中にインジウム化合物が溶解していることが好ましい。電解質中にインジウム化合物が溶解している場合には、電池内での水素ガスの発生を良好に抑制することができる。
電解質に溶解させるインジウム化合物としては、水酸化インジウム、酸化インジウム、硫酸インジウム、硫化インジウム、硝酸インジウム、臭化インジウム、塩化インジウムなどが挙げられる。
インジウム化合物の電解質中の濃度は、質量基準で、0.005%以上であることが好ましく、0.01%以上であることがより好ましく、0.05%以上であることが特に好ましく、また、1%以下であることが好ましく、0.5%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることが特に好ましい。
電解質には、前記の各成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて公知の各種添加剤を添加してもよい。例えば、負極に用いる金属材料の腐食(酸化)を防止するために、酸化亜鉛を添加するなどしてもよい。なお、酸化亜鉛は、負極に添加することもできる。
電解質は、例えば、あらかじめ調製した電解質塩を含有するpHが3以上12未満の水溶液に、アクリルアミド重合体などの増粘剤や、その他必要に応じて使用される成分(インジウム化合物など)を溶解させることによって形成することができる。また、水溶性高沸点溶媒を使用する場合には、例えば、水と水溶性高沸点溶媒とを混合し、この混合溶媒を用いて前記水溶液を調製し、これをゲル状電解質の形成に使用すればよい。
シート状空気電池の正極(空気極)は、触媒層を有するものであり、例えば、触媒層と集電体とを積層した構造のものを使用することができる。
触媒層には、触媒やバインダなどを含有させることができる。
触媒層に係る触媒としては、例えば、銀、白金族金属またはその合金、遷移金属、Pt/IrO2などの白金/金属酸化物、La1-xCaxCoO3などのペロブスカイト酸化物、WCなどの炭化物、Mn4Nなどの窒化物、フタロシアニン系化合物の金属錯体、二酸化マンガンなどのマンガン酸化物、カーボン〔黒鉛、カーボンブラック(アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなど)、木炭、活性炭など〕などが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上が使用される。
なお、触媒層は、電解質の成分を除く重金属の含有量が、1質量%以下であることが好ましい。重金属の含有量が前記のように少ない触媒層を有する正極の場合、特別な処理などを経ずに廃棄しても環境負荷が小さい電池とすることができる。
本明細書でいう触媒層中の重金属の含有量は、蛍光X線分析により測定することができる。例えば、リガク社製「ZSX100e」を用い、励起源:Rh50kV、分析面積:φ10mmの条件で測定することができる。
よって、触媒層に係る触媒には、重金属を含有していないものが推奨され、前記の各種カーボンを使用することがより好ましい。
また、正極の反応性をより高める観点からは、触媒として使用するカーボンの比表面積は、200m2/g以上であることが好ましく、300m2/g以上であることがより好ましく、500m2/g以上であることがさらに好ましい。本明細書でいうカーボンの比表面積は、JIS K 6217に準じた、BET法によって求められる値であり、例えば、窒素吸着法による比表面積測定装置(Mountech社製「Macsorb HM modele-1201」)を用いて測定することができる。なお、カーボンの比表面積の上限値は、通常、2000m2/g程度である。
触媒層における触媒の含有量は、20~70質量%であることが好ましい。
触媒層に係るバインダとしては、PVDF、PTFE、フッ化ビニリデンの共重合体やテトラフルオロエチレンの共重合体〔フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVDF-HFP)、フッ化ビニリデン-クロロトリフルオロエチレン共重合体(PVDF-CTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン共重合体(PVDF-TFE)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体(PVDF-HFP-TFE)など〕などのフッ素樹脂バインダなどが挙げられる。これらの中でも、テトラフルオロエチレンの重合体(PTFE)または共重合体が好ましく、PTFEがより好ましい。触媒層におけるバインダの含有量は、3~50質量%であることが好ましい。
正極は、例えば、前記触媒、バインダなどを水と混合してロールで圧延し、集電体と密着させることにより製造することができる。また、前記の触媒や必要に応じて使用するバインダなどを、水や有機溶媒に分散させて調製した触媒層形成用組成物(スラリー、ペーストなど)を、集電体の表面に塗布し乾燥した後に、必要に応じてカレンダ処理などのプレス処理を施す工程を経て、正極を製造することもできる。
なお、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルトなどの、繊維状カーボンで構成された多孔性のカーボンシートを触媒層とすることも可能である。前記カーボンシートは、後述する正極の集電体として用いることもでき、両者を兼ねることもできる。
正極に係る集電体には、例えば、チタン、ニッケル、ステンレス鋼、銅などの金属の網、箔、エキスパンドメタル、パンチングメタル;カーボンの網、シート;などを用いることができる。正極に係る集電体の厚みは、10μm以上300μm以下であることが好ましい。
また、正極の集電体には、シート状外装体を構成する樹脂製フィルムや、樹脂製フィルムと金属フィルムとの積層体の一部を利用することもできる。この場合、例えば、樹脂製フィルムや前記積層体の、シート状外装体の内面となることが予定される面にカーボンペーストを塗布して集電体としたり、前記積層体の金属層を集電体としたりし、この表面に前記と同様の方法で正極合剤層や触媒層を形成することで、正極とすることができる。前記のカーボンペースト層の厚みは、30~300μmであることが好ましい。
シート状空気電池の負極には、例えば、亜鉛系材料(亜鉛材料と亜鉛合金材料とを纏めてこのように称する)やマグネシウム系材料(マグネシウム材料とマグネシウム合金材料とを纏めてこのように称する)、アルミニウム系材料(アルミニウム材料とアルミニウム合金材料とを纏めてこのように称する)などの金属材料を含有するものが使用できる。このような負極では、亜鉛やマグネシウムやアルミニウムといった金属が、活物質として作用する。
金属材料を含有する負極の具体例としては、亜鉛系粒子(亜鉛粒子と亜鉛合金粒子とを纏めてこのように称する)やマグネシウム系粒子(マグネシウム粒子とマグネシウム合金粒子とを纏めてこのように称する)やアルミニウム系粒子(アルミニウム粒子とアルミニウム合金粒子とを纏めてこのように称する)などを含有する負極が挙げられる。
亜鉛合金粒子の合金成分としては、例えば、インジウム(例えば含有量が質量基準で0.005~0.05%)、ビスマス(例えば含有量が質量基準で0.005~0.05%)、アルミニウム(例えば含有量が質量基準で0.001~0.15%)などが挙げられる。
また、マグネシウム合金粒子の合金成分としては、例えば、カルシウム(例えば含有量が質量基準で1~3%)、マンガン(例えば含有量が質量基準で0.1~0.5%)、亜鉛(例えば含有量が質量基準で0.4~1%)、アルミニウム(例えば含有量が質量基準で8~10%)などが挙げられる。
さらに、アルミニウム合金粒子の合金成分としては、例えば、亜鉛(例えば含有量が質量基準で0.5~10%)、スズ(例えば含有量が質量基準で0.04~1.0%)、ガリウム(例えば含有量が質量基準で0.003~1.0%)、ケイ素(例えば含有量が質量基準で0.05%以下)、鉄(例えば含有量が質量基準で0.1%以下)、マグネシウム(例えば含有量が質量基準で0.1~2.0%)、マンガン(例えば含有量が質量基準で0.01~0.5%)などが挙げられる。
金属粒子を含有する負極の場合、その金属粒子は、1種単独でもよく、2種以上であってもよい。
なお、電池の廃棄時の環境負荷の低減を考慮すると、負極に使用する金属材料は、水銀、カドミウム、鉛およびクロムの含有量が少ないことが好ましく、具体的な含有量が、質量基準で、水銀:0.1%以下、カドミウム:0.01%以下、鉛:0.1%以下、およびクロム:0.1%以下であることがより好ましい。
亜鉛系粒子の粒度としては、例えば、全粒子中、粒径が75μm以下の粒子の割合が50質量%以下のものが好ましく、30質量%以下のものがより好ましく、また、粒径が100~200μmの粒子の割合が、50質量%以上、より好ましくは90質量%以上であるものが挙げられる。
また、マグネシウム系粒子およびアルミニウム系粒子の粒度としては、例えば、全粒子中、粒径が30μm以下の粒子の割合が50質量%以下のものが好ましく、30質量%以下のものがより好ましく、また、粒径が50~200μmの粒子の割合が、50質量%以上、より好ましくは90質量%以上であるものが挙げられる。
本明細書でいう金属粒子における粒度は、レーザー散乱粒度分布計(例えば、堀場製作所製「LA-920」)を用い、粒子を溶解しない媒体に、これらの粒子を分散させて測定した、体積基準での累積頻度50%における粒径(D50)である。
前記の金属粒子を含有する負極の場合には、必要に応じて添加される増粘剤(ゲル状電解質に形成に使用し得るものとして先に例示した各種増粘剤と同じものなど)やバインダを含んでもよく、これに電解液を加えることで構成される負極剤(ゲル状負極など)を使用することができる。負極中の増粘剤の量は、例えば、0.5~1.5質量%とすることが好ましく、バインダの量は、0.5~3質量%とすることが好ましい。
金属粒子を含有する負極に係る電解液には、先に記載した、電解質塩を含有するpHが3以上12未満の水溶液と同じものを使用することができる。
負極における金属粒子の含有量は、例えば、60質量%以上であることが好ましく、65質量%以上であることがより好ましく、また、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。
金属粒子を含有する負極は、インジウム化合物を含有していることが好ましい。負極がインジウム化合物を含有することによって、金属粒子と電解質との腐食反応による水素ガス発生をより効果的に防ぐことができる。
前記のインジウム化合物としては、例えば、酸化インジウム、水酸化インジウムなどが挙げられる。
負極に使用するインジウム化合物の量は、質量比で、金属粒子:100に対し、0.003~1であることが好ましい。
また、負極には、前記亜鉛系粒子と同じ組成の亜鉛系シート(亜鉛箔や亜鉛合金箔など)や、前記マグネシウム系粒子と同じ組成のマグネシウム系シート(マグネシウム箔やマグネシウム合金箔など)といった金属シートを用いることもできる。このような負極の場合、その厚みは、10~500μmであることが好ましい。
また、金属材料を含有する負極には、必要に応じて集電体を用いてもよい。金属材料を含有する負極の集電体としては、ニッケル、銅、ステンレス鋼などの金属の網、箔、エキスパンドメタル、パンチングメタル;カーボンのシート、網;などが挙げられる。負極の集電体の厚みは、10μm以上300μm以下であることが好ましい。
また、負極の集電体には、前記正極の場合と同様に、シート状外装体の内面となることが予定される面にカーボンペーストを塗布して用いたり、シート状外装体を構成する金属層を用いたりすることができる。前記のカーボンペースト層の厚みは、50~200μmであることが好ましい。
シート状空気電池において、正極と負極との間にはセパレータを介在させる。電池がアルカリ電池やマンガン電池、空気電池の場合のセパレータには、ビニロンとレーヨンを主体とする不織布、ビニロン・レーヨン不織布(ビニロン・レーヨン混抄紙)、ポリアミド不織布、ポリオレフィン・レーヨン不織布、ビニロン紙、ビニロン・リンターパルプ紙、ビニロン・マーセル化パルプ紙などを用いることができる。また、微多孔性フィルムを用いることもでき、微多孔性ポリオレフィンフィルム(微多孔性ポリエチレンフィルムや微多孔性ポリプロピレンフィルムなど)が具体的に例示され、電解質(電解液)との濡れ性を改善するため、その表面を親水化処理したものであってもよい。
また、前記微多孔性フィルムとセロファンフィルムとビニロン・レーヨン混抄紙のような吸液層(電解液保持層)とを積み重ねたものをセパレータとしてもよい。セパレータの厚みは、例えば、10~500μmであることが好ましく、微多孔性フィルムの場合は、10~50μmであることが好ましく、不織布の場合は、20~500μmであることが好ましい。
本発明のシート状空気電池は、シート状外装体を有している。外装缶を有する形態では使用し難い用途への適用が可能となるほか、外装缶を有する形態のものに比べて廃棄も容易になることから、環境負荷が小さい利点をより生かすことが期待できる。
図1および図2に本発明のシート状空気電池の一例を模式的に示している。図1はシート状空気電池の平面図であり、図2は図1のI-I線断面図である。
図2に示すように、シート状空気電池1は、正極20、セパレータ40および負極30と、電解質(図示しない)とが、シート状外装体60内に収容されている。正極20は、電池1内でリード体を介して正極外部端子21と接続しており、また、図示していないが、負極30も、電池1内でリード体を介して負極外部端子31と接続している。なお、図1における点線は、シート状外装体60内に収容された正極20に係る触媒層の大きさを表している。
シート状外装体60は、正極20が配置された側の片面に、正極に空気を取り込むための空気孔61が複数設けられており、正極20のシート状外装体60側には、空気孔61からの電解質の漏出を防止するための撥水膜50が配置されている。
正極20は、触媒層を有しており、前記の通り、例えば触媒層が集電体と積層された構造を有しているが、図2では、図面が煩雑になることを避けるために、正極20の有する各層を区別して示していない。
シート状外装体は、例えば樹脂フィルムで構成することができ、このような樹脂フィルムとしては、ナイロンフィルム(ナイロン66フィルムなど)、ポリエステルフィルム〔ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなど〕などが挙げられる。樹脂フィルムの厚みは、20~100μmであることが好ましい。
なお、シート状外装体の封止は、シート状外装体の上側の樹脂フィルムの端部と下側の樹脂フィルムの端部との熱融着によって行うことが一般的であるが、この熱融着をより容易にする目的で、前記例示の樹脂フィルムに熱融着樹脂層を積層してシート状外装体に用いてもよい。熱融着樹脂層を構成する熱融着樹脂としては、変性ポリオレフィンフィルム(変性ポリオレフィンアイオノマーフィルムなど)、ポリプロピレンおよびその共重合体などが挙げられる。熱融着樹脂層の厚みが20~100μmであることが好ましい。
また、樹脂フィルムには金属層を積層してもよい。金属層は、アルミニウムフィルム(アルミニウム箔。アルミニウム合金箔を含む。)、ステンレス鋼フィルム(ステンレス鋼箔。)などにより構成することができる。金属層の厚みが10~150μmであることが好ましい。
また、シート状外装体を構成する樹脂フィルムは、前記の熱融着樹脂層と前記の金属層とが積層された構成のフィルムであってもよい。
さらに、シート状外装体を構成する樹脂フィルムは、水蒸気の透過を防ぐため、無機酸化物で構成される水蒸気バリア層を樹脂フィルムに積層したものであってもよい。このような構成のフィルムは、例えば、バリアフィルムなどの名称で医療医薬用、電子デバイス用、食品用などの用途で市販されている積層フィルムを用いることができる。
市販の積層フィルムとしては、凸版印刷社製「GL FILM」および「PRIME BARRIER」(いずれも商品名)、三井化学東セロ社製「マックスバリア」および「TL」(いずれも商品名)、三菱ケミカル社製「テックバリア」(商品名)、大日本印刷社製「IB-Film」(商品名)、東洋紡社製「エコシアール」(商品名)などを例示することができる。
シート状外装体の形状は、平面視で多角形(三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形)であってもよく、平面視で円形や楕円形であってもよい。なお、平面視で多角形のシート状外装体の場合、正極外部端子および負極外部端子は、同一辺から外部へ引き出してもよく、それぞれを異なる辺から外部へ引き出しても構わない。
シート状空気電池には、図2に示すように、通常、正極と外装体との間に撥水膜を配するが、その撥水膜には、撥水性がある一方で空気を透過できる膜が使用される。このような撥水膜の具体例としては、PTFEなどのフッ素樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン;などの樹脂で構成された膜(微多孔フィルムなど)などが挙げられる。撥水膜の厚みは、50~250μmであることが好ましい。
また、外装体と撥水膜との間に、外装体内に取り込んだ空気を正極に供給するための空気拡散膜を配置してもよい。空気拡散膜には、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ナイロンなどの樹脂で構成された不織布を用いることができる。空気拡散膜の厚みは、100~250μmであることが好ましい。
シート状空気電池の厚み(図2中aの長さ)については特に制限はなく、シート状空気電池の用途に応じて適宜変更できる。なお、シート状空気電池は薄型にできることがその利点の一つであり、かかる観点からは、その厚みは、例えば1mm以下であることが好ましい。
また、シート状空気電池の厚みの下限値についても特に制限はないが、一定の容量を確保するために、通常は、0.2mm以上とすることが好ましい。
本発明のシート状空気電池は、貯蔵特性に優れていることに加えて、前記の通り、環境負荷が小さく、また、破損などによって電解質が漏出して身体に付着しても、例えばpHが高い強アルカリ性の電解質に比べて問題が生じ難い。よって、本発明のシート状空気電池は、身体に装着可能なパッチ、特に、皮膚の表面に装着し、体温、脈拍、発汗量など身体の状況に関する測定を行うためのパッチなど、医療・健康用途の機器の電源として好適であり、また、従来から知られている空気電池が採用されている用途と同じ用途にも適用することができる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
実施例1
10質量%の濃度でグリセリンを含有させた25質量%濃度の塩化アンモニウム水溶液を調製し、ここにアクリルアミド-アクリル酸ナトリウム共重合体〔三洋化成社製「サンフロック AH-200P(商品名)」〕を、1~8質量%のいずれかとなる量で添加し溶解させて、電解質(1)~(4)を調製した。
<正極>
DBP吸油量495cm3/100g、比表面積1270m2/gのカーボン〔ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ社製「ケッチェンブラックEC600JD(商品名)」〕:100質量部と、フタロシアニン系金属錯体:10質量部と、分散剤:25質量部と、エタノール:5000質量部とを混合して触媒層形成用組成物を作製した。
集電体として多孔性のカーボンペーパー〔厚み:0.25mm、空孔率:75%、透気度(ガーレー):70秒/100ml〕を用い、前記触媒層形成用組成物を、乾燥後の塗布量が10mg/cm2となるよう前記集電体の表面にストライプ塗布し、乾燥することにより、触媒層が形成された部分と形成されていない部分とを有する集電体を得た。この集電体を、触媒層の大きさが15mm×15mmで、その一端に、触媒層が形成されていない5mm×15mmの大きさのリード部となる部分を有する形状に打ち抜いて、全体の厚みが0.27mmの正極(空気極)を作製した。
<負極>
亜鉛箔(厚み:0.05mm)を、活物質として機能する15mm×15mmの大きさの部分と、その一端にリード部となる5mm×15mmの部分とを有する形状に打ち抜いて負極を作製した。
<セパレータ>
セパレータには、ポリエチレン主鎖にアクリル酸をグラフト共重合させた構造を有するグラフト共重合体で構成されたグラフトフィルム(厚み:25μm)を、セロハンフィルム(厚み:20μm)の片面に配置したもの(全体の厚み:45μm)を用いた。
<撥水膜>
撥水膜には、厚みが250μmのPE製微多孔フィルムを用いた。
<電池の組み立て>
市販のバリアフィルム〔凸版印刷社製「GL FILM(商品名)」、厚み:67μm〕を25mm×30mmの大きさに切断したものを2枚用意し、外装体として用いた。
正極側に配置される一方の外装体には、直径約0.2mmの空気孔9個を縦9mm×横9mmの等間隔(空気孔同士の中心間距離は5mm)で規則的に形成し、その内面側に、ホットメルト樹脂を用いて前記撥水膜を熱溶着させた。
撥水膜を有するシート状外装体を正極側に配置して、前記外装体の撥水膜の上に、前記正極、前記セパレータおよび前記負極を順に積層し、更に、もう1枚の外装体を重ね、2枚の外装体の周囲3辺を互いに熱溶着して袋状にし、その開口部から電解質を入れた後、前記開口部を熱溶着して封止し、電解質(1)~(4)を有する4種のシート状空気電池を作製した。
比較例1
増粘剤を分子量が700万のPEOに変更し、その添加量を8質量%とした以外は、実施例1と同様にして電解質(5)を調製し、前記電解質を用いた以外は、実施例1と同様にしてシート状空気電池を作製した。
実施例1および比較例1のシート状空気電池を40℃の恒温槽中で35日間貯蔵し、貯蔵前後での電池の重量変化から電解質の減少量を測定し、増粘剤による水分蒸発の抑制についての評価を行った。
貯蔵前の電解質の重量に対する電解質の減少量の割合を求めた結果を表1に示す。
表1に示す通り、アクリルアミド-アクリル酸ナトリウム共重合体を増粘剤として含有させた電解質を有する実施例1の電池では、増粘剤の含有量を少なくしても、電解質の減少(水分の蒸発)を抑制できることがわかる。
実施例2
<負極>
Biを0.05質量%含有する電解亜鉛合金箔(厚み:0.05mm)を用いた以外は、実施例1と同様にして負極を作製した。
<電池の組み立て>
市販のバリアフィルム(凸版印刷社製「GL FILM」、厚み:67μm)を25mm×30mmの大きさに切断したものを2枚用意し、外装体として用いた。このうち、正極側に配置される一方の外装体には、直径約0.2mmの空気孔9個を縦9mm×横9mmの等間隔(空気孔同士の中心間距離は5mm)で規則的に形成し、その内面側に、ホットメルト樹脂を用いて前記撥水膜を熱溶着させた。
前記負極、前記外装体および電解質(2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、シート状空気電池を作製した。
実施例3、比較例2
電解質(4)および(5)をそれぞれ用いて電池を組み立てた以外は実施例2と同様にして、実施例3および比較例2のシート状空気電池を作製した。
実施例2、3および比較例2の各シート状空気電池について、下記の評価を行った。
〔貯蔵特性の評価〕
各シート状空気電池について、恒温槽中60℃で28日間貯蔵し、貯蔵後に取り出して室温まで放冷させた後、3.9kΩの放電抵抗を接続して放電させ、20mAh放電した時点での電池電圧(CCV)を測定することで、貯蔵特性を評価した。
前記評価結果を表2に示す。
表2に示す通り、アクリルアミド-アクリル酸ナトリウム共重合体を増粘剤として含有させた電解質を有する実施例2の電池では、増粘剤の含有量を3質量%と少なくしても、増粘剤としてPEOを8質量%含有する電解質を用いた比較例2の電池と同程度まで電解質の減少(水分の蒸発)を抑制できるため、増粘剤により放電反応が阻害されず、高温貯蔵後でも優れた放電特性を示していた。