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JP7541655B1 - 溶鉄の脱燐方法 - Google Patents

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Abstract

電気化学的手法によって電気エネルギーを付与することにより、効果的に燐分配を向上させ、溶鉄の脱燐反応を促進することができる溶鉄の脱燐方法を提供すること。溶鉄に接する電極を陽極とし、溶融スラグのみに接する電極を陰極として該両電極を通じて前記溶融スラグと前記溶鉄との間に電流を印加する溶鉄の脱燐方法であって、前記電流の印加電流密度Iが前記溶鉄の溶鋼温度Tと前記溶融スラグの燐分配をLpと前記溶融スラグの必要燐分配をLp’との間において下記関係式(1)を満たすことを特徴とする溶鉄の脱燐方法。
【数1】
Figure 0007541655000020
関係式(1)において、Iは印加電流密度(A/m)であり、αは定数であり、Lpは溶融スラグの燐分配(-)であり、Lp’は溶融スラグの必要燐分配(-)であり、Tは溶鉄の溶鋼温度(K)である。

Description

本発明は、溶鉄の脱燐方法に関する。特に、本発明は、脱燐反応を促進することができる溶鉄の脱燐方法に関する。
溶鋼に含まれる燐は、溶鋼から形成される材料中の粒界に偏析し易く、溶鋼から形成される鋼の強度や靭性を低下させる。このため、一般的に溶鋼から鋼を製造する際において溶鋼に含まれる燐の含有量は、低含有量となるように制御されている。
近年、高級鋼の製造指向が高まり、溶鋼に含まれる燐の含有量を更に低下することが求められている。しかしながら、溶鋼の原材料である鉄鉱石の品質が劣化していること等の理由により、溶鉄における脱燐処理による負荷は、ますます過酷なものとなっている。このような技術的観点から、溶鋼を処理した後、溶鋼に含まれる燐濃度を低減させる技術開発が必須となる。
従来技術における溶鋼の脱燐技術において、溶鋼に含まれる燐酸化物が酸性を示すことから、溶鋼を製造する際に形成される溶融スラグの塩基度を高位するために溶鋼にCaO等の石灰系フラックスが投入されている。溶鋼にCaO等の石灰系フラックスが投入されることによって、溶融スラグの脱燐能を向上させ、溶鋼の平衡燐濃度を低減することができる。
しかしながら、塩基度が高い溶融スラグは、溶融温度が高く、溶銑予備処理中に溶鋼温度が降下すると、溶融スラグの粘度が高くなる。このため、溶鋼に吸い込まれた石灰系フラックスに含まれるCaOの滓化が不十分となり、脱燐効率が低くなる傾向があった。このような低い脱燐効率を高くして、脱燐反応の反応効率を補うためには、溶鋼に過剰の精錬材を使用する必要がある。溶鋼に過剰の精錬材を使用した場合には、溶鋼を精錬するためのコストが増加する。さらに、溶鋼に含まれる燐の濃度を極低燐濃度まで脱燐しようとすると、溶融スラグの量が過多となる。その結果、溶鋼精錬設備や排滓設備の容量が不足するといった問題が発生する。
そこで、極低燐を目標とする溶鋼の脱燐処理では、石灰系フラックスに含まれるCaOの滓化を促進して、投入されるフラックスの量を減らすため、蛍石(CaF)などのハロゲン化物を添加し、脱燐能力と、溶融スラグの量を減少させることとを両立させて、高い脱燐速度を極低燐領域まで維持するという手法が採られてきた。
しかしながら、この蛍石(CaF)等のハロゲン化物を溶鋼に添加することは、形成される溶融スラグ中のフッ素(F)等の含有量を高めることになる。近年、環境問題に対する社会的関心が高まる中、フッ素(F)の溶出が問題となる使用は制限されている。このような観点から、溶鋼に蛍石(CaF)などのハロゲン化物を使用することは困難となっている。そこで、スラグの塩基度を高位にすることなく、効率よく溶鋼中の燐を脱燐する技術が求められている。
上記状況を鑑みて、電気エネルギーに着目し、溶融スラグの塩基度を高位にすることなく、効率よく溶鋼中の燐を脱燐する技術に関する研究が行われてきた。例えば、非特許文献1には、スラグと溶鉄の界面で起こる反応(以下、スラグ-メタル反応という。)を電気化学の概念に基づいて整理した脱燐反応の促進方法が開示されている。非特許文献1によれば、溶鉄の電位を貴側に分極することで鉄がスラグ中に酸化除去され、逆に卑側に分極するとスラグ中の鉄イオンが還元されて溶鉄中に戻ることを具体例として、電気エネルギーによる反応促進の概念が示されている。その後、非特許文献1に基づいて、スラグ-メタル反応に関連する種々の研究が報告されている。
特許文献1は、溶融スラグに接する電極と鉄浴に接する電極を用いて通電することにより、溶融スラグ中の粒鉄の含有量とチャージ毎のスラグ中の金属鉄分のばらつきとを低減させる方法を開示する。
特許文献2は、製鋼スラグ中の燐や硫黄などの不純物を炉底上に沈下した溶融スクラップ鉄内に移行して吸収させて製鋼スラグとして再生する方法を開示する。特許文献2に記載された製鋼スラグの再生方法は、スラグ側の電極を陽極、溶融スクラップ鉄側を陰極として電流を付与することでスラグ中の燐や硫黄を還元し、溶融スクラップ鉄中に移行させている。
特許第7158570号明細書 特開平11-302719号公報
徳田昌則「スラグ-メタル反応におけるカップリング現象」日本金属学会会報第15巻 第6号(1976)1976年2月17日受理
しかしながら、かかる従来の技術には、未だ解決すべき以下のような問題があった。すなわち、非特許文献1はスラグ-メタル反応を電気化学的に整理したうえで脱燐反応の促進方法を開示している。しかしながら、非特許文献1に記載された溶鉄の脱燐反応の促進方法は、いずれも添加物などにより、溶鉄の脱燐反応系の混成電位や燐反応の平衡電位を変化させるといったものであり、電気エネルギーを外部より付与して脱燐反応を促進するものではない。一方、特許文献1に開示された技術は、スラグ-メタル間に電流を印加している。そして、特許文献1に記載された溶融スラグの処理方法において、スラグ-メタル間に電流を印加する目的は、スラグ中に存在する粒鉄の含有量と、当該粒鉄のばらつきとを低減することである。つまり、特許文献1に記載された溶融スラグの処理方法において、スラグ-メタル間に通電をすることによる効果は、粒鉄の凝集粗大化を促進するものであるため、電気化学反応への影響は考慮されておらず、溶鉄からの脱燐反応を促進するものでもない。
特許文献2に開示された技術において、電気エネルギーは、溶融スラグ及びスクラップ鉄を溶融するための通電加熱のために用いられており、電気化学反応に寄与していない。また、特許文献2に開示された技術は、溶融スラグから燐を除去し、溶鉄に移行させるいわゆる復燐を促進するものであり、溶鉄からの脱燐反応を促進するものではない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電気化学的手法によって電気エネルギーを付与することにより、効果的に燐分配を向上させ、溶鉄の脱燐反応を促進することができる溶鉄の脱燐方法を提供することを目的とする。
そこで、本発明者は、上記課題を解決すべく、種々実験を重ねた結果、溶融スラグと溶鉄との間に電流を印加する溶鉄の脱燐方法において、溶融スラグの燐分配、溶融スラグの必要燐分配、溶鉄の溶鋼温度との関係に基づいて、印加電流を制御することにより効果的に燐分配を向上させ、溶鉄の脱燐反応を促進することができるという知見を見出した。本発明は、上記知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
すなわち、上記課題を有利に解決する本発明に係る溶鉄の脱燐方法は、溶鉄に接する電極を陽極とし、溶融スラグのみに接する電極を陰極として該両電極を通じて前記溶融スラグと前記溶鉄との間に電流を印加する溶鉄の脱燐方法であって、前記電流の印加電流密度Iが前記溶鉄の溶鋼温度Tと前記溶融スラグの燐分配をLPと前記溶融スラグの必要燐分配をLP’との間において下記関係式(1)を満たすことを特徴とする溶鉄の脱燐方法。
Figure 0007541655000001
関係式(1)において、Iは印加電流密度(A/m)であり、αは定数であり、LPは溶融スラグの燐分配(-)であり、LP’は溶融スラグの必要燐分配(-)であり、Tは溶鉄の溶鋼温度(K)である。
なお、本発明に係る溶鉄の脱燐方法は、
(a)前記溶鉄に含まれる炭素の炭素濃度[C]が4.0mass%以下であり、前記印加電流密度I(A/m)が下記関係式(2)を満たすこと、
Figure 0007541655000002
関係式(2)において、Iは印加電流密度(A/m)であり、LPは溶融スラグの燐分配(-)であり、LP’は溶融スラグの必要燐分配(-)であり、Tは前記溶鉄の溶鋼温度(K)である。
(b)前記溶融スラグと前記溶鉄との間に前記電流を印加することによってアーク放電が発生しないこと、
(c)前記電流の電流値が5000(A)以下であること、
(d)前記溶融スラグの液相率が60vol.%以上であること等がより好ましい解決手段になり得るものと考えられる。
本発明によれば、電気化学的手法によって電気エネルギーを溶鉄に付与することによって、スラグを改質することなく効果的に燐分配を向上させ、溶鉄の脱燐反応を促進することができる。
本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法の実施に使用する溶鉄脱燐装置の概要を示した模式図である。 本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法を実施した場合の溶鉄の脱燐処理時間(min)と燐濃度(mass%)との関係を示したグラフである。 溶鉄脱燐装置を用いて電極に電流を印加した場合の印加電流密度と溶鉄に含まれる燐の燐分配との関係を示したグラフである。
[第1実施形態]
第1実施形態に係る溶鉄の脱燐方法について説明する。本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法は、溶鉄に接する電極を陽極とし、溶融スラグのみに接する電極を陰極として該両電極を通じて溶融スラグと溶鉄との間に電流を印加する溶鉄の脱燐方法である。本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法を実施に使用する溶鉄脱燐装置について説明する。
<溶鉄脱燐装置の概要>
図1は、本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法の実施に使用する溶鉄脱燐装置の概要を示した模式図である。図1に示されるように溶鉄脱燐装置100は、MgO坩堝101とラミング材102と誘導溶解炉103とを備えている。MgO坩堝101は、スクラップ、溶銑等が溶解して形成される溶鉄を装入する。MgO坩堝101は、溶鉄に対しする溶解度が低く、熱力学的に安定である材料から構成されていることが好ましい。
なお、MgO坩堝101の他に使用することができる坩堝としては、CaO坩堝、Al坩堝を使用することができる。MgO坩堝101の形状は、特に制限されるものではないが、円柱形状であってもよい。MgO坩堝101の形状が円柱形状である場合には、その断面積は0.005~0.030mであってもよく、例えば、0.018mであってもよい。
ラミング材102は、耐火物である。ラミング材102は、MgO坩堝101の側壁及びその底面を覆い、かつ誘導溶解炉103の内壁に張り付けられている。ラミング材102の厚さは、耐熱性及び耐久性の観点から100~150mmであることが好ましい。誘導溶解炉103は、坩堝型の低周波誘導炉である。誘導溶解炉103は、高温を保持した状態で溶鉄を保持することができる。誘導溶解炉103の側壁には、誘導ヒータが設けられていてもよい。
さらに、溶鉄脱燐装置100は、MgO坩堝101に装入された溶融スラグ200と溶鉄300との間に電流を印加するための陰極104と陽極105とを備えている。陰極104は、溶融スラグ200のみに接触し、当該溶融スラグ200の下面に存在している溶鉄300には接触しない。陰極104は、MgO坩堝101に装入された溶融スラグ200の溶融スラグ温度が極めて高温になることから耐熱性を有している材料から形成されていることが好ましい。陰極104を形成する材料としては、黒鉛、人造黒鉛であることが好ましい。陰極104の形態は、棒形状、平板形状であってもよい。
陽極105は、溶鉄300に接触する。陽極105は、溶融スラグ200及び溶鉄300に接触している。陽極105は、MgO坩堝101に装入された溶融スラグ200及び溶鉄300の溶鋼温度が極めて高温になることから耐熱性を有している材料から形成されていることが好ましい。陽極105を形成する材料としては、炭素、C-MgO等の複合材料であってもよい。陽極105の形態は、例えば、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスを吹き込んで溶鉄(溶融金属)を攪拌するために溶鉄(溶融金属)に浸漬される攪拌ランスの芯金部分、もしくは溶鉄(溶融金属)の湯面下まで施工された黒鉛含有耐火物煉瓦などであってもよい。
誘導溶解炉103に取り付けられた陰極104と、誘導溶解炉103の外部に設置された直流電源106の負極とは導線107を通じて接続される。誘導溶解炉103に取り付けた陽極105と、誘導溶解炉103の外部に設置した直流電源106の正極とは導線107を通じて接続される。このように、陰極104と陽極105とからなる両電極が誘導溶解炉103の外部に設置した直流電源106と接続されることによって電気回路が形成される。
溶鉄脱燐装置100が備えているMgO坩堝101とラミング材102と誘導溶解炉103との上面は、断熱ボード108により覆われる。断熱ボード108は、MgO坩堝101とラミング材102と誘導溶解炉103との上面を塞ぎ、MgO坩堝101に装入された溶鉄300の温度を保持する役割を有する。断熱ボード108は、断熱性を有する材料であれば、特に制限されない。
<電流印加による溶鉄脱燐>
本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法は、溶鉄に接する電極を陽極とし、溶融スラグのみに接する電極を陰極として該両電極を通じて溶融スラグと溶鉄との間に電流を印加する。
以下、本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法において、電流印加による溶鉄脱燐について説明する。
MgO坩堝101に工業用純鉄を装入する。MgO坩堝101の外壁にラミング材102を埋め込み、誘導溶解炉103を用いて、工業用純鉄を加熱して溶解し、溶鉄300とする。溶鉄300に含まれる燐の燐濃度が所定の範囲となるように調製して溶鉄300を製造する。ここで、溶鉄300に含まれる燐の燐濃度は、0.01~0.20質量%であってもよく、好ましくは、0.05~0.15質量%、さらに好ましくは0.08質量%であってもよい。そして、工業用純鉄を溶解して製造される溶鉄300の総量が5~30kg、好ましくは10~20kg、さらに好ましくは、15kgとなるように設定することができる。
さらに、溶鉄脱燐装置100の系内において、溶鉄300の上面に溶融スラグ200を形成するために当該溶鉄300の上面にフラックスを投入する。フラックスの投入量は、MgO坩堝101の内容積、溶鉄300の総量等により適宜定めることができる。フラックスの投入量は、例えば、10~30kg/溶鉄-t、好ましくは、15~25kg/溶鉄-t、さらに好ましくは、20kg/溶鉄-tの割合であってもよい。
フラックスの組成成分は、溶融スラグ200を形成することができる組成成分を含んでいるものであれば、特に制限されるものではない。フラックスの組成成分は、例えば、CaO、SiO、FeO、MgO等を含んでいてもよい。フラックスがその組成成分として、CaO、SiO、FeO、MgOを含む場合には、その含有量は、質量基準で、22.5(%CaO)、28.0(%SiO)、42.5(%FeO)、7.0(%MgO)であってもよい。
溶鉄300の上面にフラックスを投入した後、MgO坩堝101の内部に存在する溶鉄300の溶鋼温度を1300~1700℃、好ましくは1585~1615℃の範囲に維持する。溶鉄300にフラックスを投入し、その温度を保持することにより、溶鉄脱燐装置100の系内に溶融スラグ200と溶鉄300が形成される。溶融スラグ200は、溶鉄300の表面に形成される。溶融スラグ200と溶鉄300との間に溶融スラグ200(スラグ)-溶鉄300(メタル)界面が形成される。
このように形成された溶融スラグ200は、溶融スラグ200と溶鉄との間に電流を印加するために使用する陰極104と陽極105とを当該溶融スラグ200に挿入することができる溶融スラグ組成を有する。
溶鉄脱燐装置100の系内に形成された溶融スラグ200に陰極104が浸漬される。陰極104は、溶融スラグ200にのみ浸漬される。一方、溶鉄脱燐装置100の系内に形成された溶融スラグ200及び溶鉄300に陽極105が浸漬される。すなわち、陽極105は、炭素含有耐火物であるC-MgO煉瓦により形成された溶融スラグ200及び溶鉄300に浸漬されていてもよい。このように溶鉄脱燐装置100に設置された陰極104及び陽極105からなる両電極間に直流電源106を用い、溶融スラグ200と溶鉄300とに直流電流を印加する。
電極間に印加される電流の印加電流密度は、脱燐処理時間、目的の燐濃度を考慮した必要燐分配、電力コストを加味して決定することが好ましい。具体的には、電極間に印加される電流の印加電流密度を増大させるために電極間に印加される電流の印加電流密度を設定することで到達し得る燐濃度を低減し、脱燐速度を増加させることができる。
このため、両電極間に大電流を印加することで溶鉄の脱燐処理に要する処理時間を短縮し、目的の燐濃度以下の溶鉄(溶融金属)を得ることができるが、その電力コストは過大となる。このような技術的観点から、下記の関係式(1)を満たすように印加電流密度を設定して、電極間に電流を印加することができる。
Figure 0007541655000003
関係式(1)において、Iは印加電流密度(A/m)であり、αは定数であり、LPは溶融スラグの燐分配(-)であり、LP’は溶融スラグの必要燐分配(-)であり、Tは溶鉄の溶鋼温度(K)である。
本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法において、関係式(1)を用いて算出される印加電流密度Iの値は、溶鉄の脱燐効果を最低限得ることができる電流密度である。ここで、関係式(1)を用いて算出される印加電流密度Iの値以上の電流密度を溶融スラグ200と溶鉄300との間に印加した場合の効果は、主に2つある。
第1に、後述する関係式(5)式からわかるように溶鉄の脱燐反応の反応速度を増加させることにより溶鋼の生産性を向上できることである。
第2に、溶鉄の脱燐を実施するために必要な電力コストが増加することである。つまり、溶鉄の脱燐を実施するため使用する印加電流密度を必要以上に増加させれば、その生産性・生産コストいずれも増加する。このため、溶鉄の脱燐を実施するため使用する印加電流密度の上限に関しては、溶鉄の脱燐を実施するための操業の許容時間・コスト・電源の許容電流などを加味して決定することが望ましい。
このような技術的観点から、関係式(1)を用いて印加電流密度Iの値を算出できることは、溶鉄の脱燐効果を確保できるとともに、溶鉄の脱燐を実施するための操業の許容時間・コスト・電源の許容電流を考慮した溶鉄の脱燐方法の好適な条件を提供できることからきわめて重要な意義を有する。
具体的に、本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法において、関係式(1)を用いて設定することができる印加電流密度Iの値は、150~600(A/m)であり、好ましくは、200~500(A/m)である。印加電流密度Iの値が150(A/m)以上であれば、到達し得る溶鉄300に含まれる燐の燐濃度を低減し、その脱燐速度を増加させることができるため好ましい。印加電流密度Iの値が600(A/m)以下であれば、溶鉄300を脱燐処理する際の電力コストを抑制することができるため好ましい。
そして、本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法において、両電極間に電流の印加を開始した時間から一定時間が経過後における溶鉄300に含まれる燐の燐濃度を測定することができる。
図2は、溶鉄脱燐装置を用いて電極間に電流を印加して溶鉄の脱燐を実施した場合における溶鉄に含まれる燐の燐濃度の時間変化を示したグラフである。すなわち、図2は、溶鉄の脱燐処理時間(min)と燐濃度(mass%)との関係を示す。図2に示されるように、印加する電流値が大きくなるほど脱燐速度は高く、到達燐濃度が低下していることがわかる。
図3は、溶鉄脱燐装置を用いて電極に電流を印加して溶鉄を脱燐処理した場合の印加電流密度と溶融スラグに含まれる燐の燐分配との関係を示したグラフである。図3に示されるように、溶融スラグ200に含まれる燐分配Lpの対数は、両電極に印加した印加電流密度Iに対して直線的に増加するという傾向が理解される。このような傾向は、溶融スラグ200の成分組成を変えても同一である。さらに、溶鉄300のバブリングスランスによる攪拌を組み合わせて溶鉄300の脱燐処理をした場合であっても維持される。また、溶鉄300の脱燐方法を適用する際の溶鋼温度Tを変えた場合であっても、溶融スラグ200の燐分配の対数は、印加電流密度Iに対して直線的に増加することを本発明者らは確認している。
本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法が溶鉄の脱燐反応を促進できる原理は、以下のように考えられる。すなわち、溶鉄300と溶融スラグ200に電流が印加されることにより、両電極を通じて溶鉄300側の電位は貴に、溶融スラグ200側の電位は卑に分極される。この時の電位変化を過電圧という。ここで、過電圧に相当するギブスエネルギーの変化により、溶鉄300に含まれる燐の脱燐反応における平衡反応式及び燐の脱燐反応の平衡定数Kは、それぞれ以下の通りとなる。
Figure 0007541655000004
Figure 0007541655000005
溶鉄脱燐装置100を用いて両電極に電流を印加して溶鉄300に含まれる燐の脱燐反応が進行することにより、溶鉄300に含まれる燐(P)が燐イオン(P5+)となり、燐イオン(P5+)の濃度[P5+]が増加する。このため、溶鉄300に含まれる燐の脱燐反応の平衡定数Kは、増加する。その結果、溶鉄300に含まれる燐(P)の濃度[P]は低下すると考えられる。このとき、溶鉄300に含まれる燐の脱燐反応の反応次数を1次とし、当該脱燐反応の反応速度vを燐濃度[P]の1次式で表すと以下の関係式(5)となる。なお、関係式(5)において、tは溶鉄に含まれる燐の脱燐処理時間t(s)、kは溶鉄に含まれる燐の脱燐反応の見かけの反応速度定数、[P]eは溶鉄に含まれる燐の脱燐反応が溶解平衡に達した時の平衡燐濃度である。
Figure 0007541655000006
関係式(5)によれば、溶鉄300に含まれる燐の脱燐反応が溶解平衡に達したときの平衡燐濃度[P]eが低下することにより、溶鉄300に含まれる燐の脱燐反応の反応速度vは増加する。この場合において、溶鉄300に含まれる燐の脱燐反応が溶解平衡に達したときの溶鋼温度をT(K)、溶鉄300及び溶融スラグ200に電流を印加しないときの溶融スラグ200に含まれる燐の燐分配をLpとし、溶鉄300及び溶融スラグ200に電流を印加した後の溶融スラグ200に含まれる燐の必要燐分配をLp’とすると、燐の必要燐分配Lp’を得るために必要な電流の電流印加密度Iは、以下の関係式(1)により示される。
Figure 0007541655000007
関係式(1)において、Iは印加電流密度(A/m)であり、αは定数であり、Lpは溶融スラグの燐分配(-)であり、Lp’は溶融スラグの必要燐分配(-)であり、Tは溶鉄の溶鋼温度(K)である。
すなわち、関係式(1)において、所定時間経過後の溶鋼温度T(K)における溶融スラグに含まれる燐の燐濃度Cslagと溶鉄に含まれる燐の濃度Cironを測定して溶融スラグ200の燐分配Lp(-)を算出する。次に、溶鉄脱燐装置100を用いて両電極に電流を印加して溶鉄300に含まれる燐の脱燐反応が進行して溶解平衡に達した場合の溶融スラグ200の必要燐分配Lp’(-)を設定する。
そして、溶鋼温度T(K)における溶融スラグ200の燐分配Lp(-)を算出し、溶融スラグ200の必要燐分配Lp’(-)を設定し、関係式(1)を用いて、溶融スラグ200の必要燐分配Lp’(-)に対応した印加電流密度I(A/m)を算出することができる。
ここで、関係式(1)中の定数αは、以下のように算出される。まず、印加電流密度I(A/m)と溶鉄300及び溶融スラグ200に電流を印加した際に陰極104と陽極105により形成される電極間に発生する過電圧ηとの関係を求める。印加電流密度I(A/m)と過電圧ηとは、比例関係にあり、以下の関係式(6)により表すことができる。このため、印加電流密度I(A/m)と過電圧ηとの関係を示したグラフからその傾きαを算出することができる。
Figure 0007541655000008
一方、溶鉄300及び溶融スラグ200に電流を印加した場合において、電流を印加したときのギブスエネルギーの変化ΔGinitialと、電流を印加した後に溶鉄中の燐が溶解平衡に達したときのギブスエネルギーの変化ΔGequilibriumは、それぞれ以下の関係式(7)、関係式(8)により表される。
Figure 0007541655000009
関係式(7)において、Rは気体定数、Tは溶鋼温度(K)、溶融スラグの燐分配Lp(-)、aslagは溶融スラグ中の燐の活量、aironは、溶鉄中の燐の活量を表す。
Figure 0007541655000010
さらに、関係式(7)~(8)により、溶鉄300及び溶融スラグ200に電流を印加した際に陰極104と陽極105により形成される電極間に発生する過電圧ηは、以下の関係式(9)により表される。そして、関係式(6)と関係式(9)とを対比することによって、関係式(1)中の定数αを算出することができる。
なお、関係式(9)において、ηは過電圧、Rは気体定数、Fはファラデー定数、Zは価数、Lpは溶鋼温度T(K)における溶融スラグ燐分配(-)、Lp’は必要燐分配(-)を表す。
Figure 0007541655000011
このように、本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法は、溶鋼温度T(K)における溶融スラグの燐分配Lp(-)、溶融スラグの必要燐分配Lp’(-)を設定して、定数αを決定した関係式(1)を用いることにより、燐の必要燐分配Lp’を得るために必要な電流の電流印加密度Iを決定することができる。
以上説明したように、第1実施形態に係る発明によれば、溶融スラグの燐分配、溶融スラグの必要燐分配、溶鉄の溶鋼温度との関係に基づいて、印加電流の印加電流密度を制御することにより効果的に燐分配を向上させ、溶鉄の脱燐反応を促進することができる。
[第2実施形態]
第2実施形態に係る溶鉄の脱燐方法について説明する。本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法は、上記実施形態に係る溶鉄の脱燐方法において、溶鉄に含まれる炭素の炭素濃度[C]が4.0mass%以下であり、印加電流密度I(A/m)が下記関係式(2)を満たすことを特徴とする。
Figure 0007541655000012
関係式(2)において、Iは印加電流密度(A/m)であり、Lpは溶融スラグの燐分配(-)であり、Lp’は溶融スラグの必要燐分配(-)であり、Tは溶鉄の溶鋼温度(K)である。以下、本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法に含まれる技術的特徴部分について説明する。
本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法は、上記実施形態に係る溶鉄の脱燐方法に採用されている関係式(1)の定数αを算出して、α=5.264×10-2と定めた関係式(2)を採用している。つまり、本実施形態に係る溶鋼の脱燐方法は、関係式(2)を採用して、印加電流密度Iを有する電流を溶融スラグ200及び溶鉄300に印加した後の燐濃度を測定することにより、溶融スラグ分配Lp’を得ることができる。
さらに、本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法は、溶融スラグ及び溶鉄に印加する電流を電流値によって制御している。このため、本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法は、溶鉄の電気特性が変化しても上述の過電圧変化への影響を小さくすることができる。
そして、本実施形態に係る溶鋼の脱燐方法において採用される関係式(2)を満たす印加電流密度を有する電流を溶融スラグ及び溶鉄に印加することで、溶融スラグを改質することなく効果的に燐分配を向上させ、様々な組成成分系の溶鉄に対して本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法を適用することができる。
本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法において、電流が印加される溶鉄に含まれる炭素の炭素濃度[C]は、4.0mass%以下であることが好ましい。電流が印加される溶鉄に含まれる炭素の炭素濃度[C]が4.0mass%以下であれば、溶鉄に含有可能な炭素含有量を確保することができるため好ましい。なお、電流が印加される溶鉄に含まれる炭素の炭素濃度[C]は、0.1mass%以上であってもよい。
このように本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法は、溶鉄に含有可能な炭素濃度の範囲において、特に炭素濃度を限定することがなく適用することができる点において優れている。
以上説明したように、第2実施形態に係る発明によれば、溶鉄の電気特性が変化することによる過電圧変化、溶鉄に含まれる炭素濃度[C]、燐濃度[P]等の組成成分の濃度による影響を受けることなく、効果的に燐分配を向上させ、溶鉄の脱燐反応を促進することができる。
[第3実施形態]
第3実施形態に係る溶鉄の脱燐方法について説明する。本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法は、上記実施形態に係る溶鉄の脱燐方法において、前記溶融スラグと前記溶鉄との間に前記電流を印加することによってアーク放電が発生しないことを特徴とする。
以下、本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法に含まれる技術的特徴部分について説明する。
本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法は、溶融スラグと溶鉄との間に印加する電流によってアーク放電が発生しないようにする条件下において、溶鉄の脱燐を実施するものである。すなわち、本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法は、溶融スラグと溶鉄との間に印加する電流によってアーク放電が発生しないようにすることによって、溶鉄に含まれる燐と酸化鉄との反応を促進させ、溶鉄の脱燐を効果的に実施することができる。
溶融スラグと溶鉄との間に印加する電流によって、溶鉄脱燐装置の系内にアーク放電が発生することは、溶鉄の脱燐反応を促進する観点から好ましくない。以下、本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法において、溶融スラグと溶鉄との間に印加する電流によってアーク放電が発生しないようにする条件を採用する理由について説明する。
本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法において、以下の平衡反応式(10)に示されるように、脱燐前の溶鉄に含まれる燐(P)は、当該溶鉄に含まれる酸化鉄(FeO)と反応して五酸化二燐となり、脱燐前の溶鉄に含まれる酸化鉄(FeO)は、還元されて鉄(Fe)となる。化学平衡反応式(10)における平衡定数Kpは、以下の関係式(11)により示される通りとなる。
Figure 0007541655000013
Figure 0007541655000014
ここで、平衡定数Kpを示す関係式(11)において、ap2O5は溶鉄に含まれる五酸化二燐(P)の活量、aFeは溶鉄に含まれる鉄(Fe)の活量、aは溶鉄に含まれる燐(P)の活量、aFeOは溶鉄に含まれる酸化鉄(FeO)の活量をそれぞれ表す。
なお、溶鉄に含まれる燐(P)の活量aは、溶鉄に含まれる燐の燐濃度[P]と、その活量係数fpを用いて、以下の関係式(12)により表すことができる。
Figure 0007541655000015
さらに、衡定数Kpを示す関係式(11)において、その両辺の対数をとり、溶鉄に含まれる五酸化二燐(P)の活量、鉄(Fe)の活量、燐(P)の活量、酸化鉄(FeO)の活量の関係を整理すると、以下の関係式(13)の通りとなる。
Figure 0007541655000016
そうすると、関係式(13)から明らかなように、化学平衡反応式(10)により示される溶鉄の脱燐反応は、その反応温度Tを低下させることにより促進されることが理解される。一般に、溶鉄の脱燐方法において、溶融スラグと溶鉄との間に印加する電流によってアーク放電が発生することにより、溶鉄の脱燐反応の反応温度Tは高くなる。
このような技術的観点から、本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法は、溶融スラグと溶鉄との間に印加する電流によってアーク放電が発生しないようにして、反応温度Tを低下させることにより、溶鉄の脱燐反応を促進することができる。
さらに、化学平衡反応式(10)及び平衡定数Kpを示す関係式(11)から、溶鉄に含まれる酸化鉄(FetO)の活量を高めることにより、溶融スラグに含まれる酸化鉄と燐との反応が促進され、溶鉄の脱燐反応が促進することが明らかとなる。また、五酸化二燐(P)の活量を低下させることにより、溶融スラグに含まれる五酸化二燐(P)の分解反応が進行することによる溶鉄の脱燐反応の逆反応を抑制することができる。
一方、溶鉄に含まれる燐(P)の活量aを示した関係式(12)によれば、燐(P)の活量aは、溶鉄に含まれる燐の燐濃度[P]とその活量係数fpとの積である。ここで、活量係数fpは、溶鋼中の炭素濃度[%C]が高い方が大きい。このため、溶鋼中の炭素濃度[%C]を高めて、活量係数fpを大きくすることにより、溶鉄に含まれる燐(P)の活量aを大きくすることができる。
本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法において、溶融スラグと溶鉄との間に電流を印加することによってアーク放電が発生しないようにするために必要な電流の電流値は、5000(A)以下であることが好ましい。
本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法において、溶融スラグと溶鉄との間に印加する電流の電流値が500~5000(A)以下であれば、アーク放電が発生することなく、溶鉄の脱燐反応におけるエネルギーバランスをとることができ、溶鉄の脱燐処理における熱効率を担保することができる。このような技術的観点から、本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法を適用することができる溶鉄脱燐装置は、直流電気炉であることが好ましい。
直流電気炉は、電力ならびに電極や耐火物の所要原単位が小さく、騒音・フリッカーも少ない。さらに、直流電気炉にスクラップの予熱・連続装入設備を取り付けることにより、高温の排ガスを予熱に利用し、またスクラップ装入時の炉蓋開放による放熱を防ぐことができ、エネルギー消費を減少させることができる。
また、直流電気炉は、スクラップの予熱と連続装入設備の導入、偏心炉底出鋼方式の採用が進んでいる。直流電気炉に偏心炉底出鋼方式を採用すれば、炉体を傾けずに迅速に出鋼できるため能率が良く、かつ出鋼時にスラグが取鍋に流入しにくいので、溶鋼の清浄度維持のうえで好ましい。
以上説明したように、第3実施形態に係る発明によれば、アーク放電が発生しないようにして反応温度Tを低下させ、溶融スラグと溶鉄との間に印加する電流の電流値を5000(A)以下に設定することにより、効果的に燐分配を向上させ、溶鉄の脱燐反応を促進することができる。そして、第3実施形態に係る溶鉄の脱燐方法は、直流電気炉を用いて実施することができる。
[第4実施形態]
第4実施形態に係る溶鉄の脱燐方法について説明する。本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法は、上記実施形態に係る溶鉄の脱燐方法において、溶融スラグの液相率が60vol.%以上であることを特徴とする。以下、本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法に含まれる技術的特徴部分について説明する。
本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法において、溶鉄300(溶融金属)が装入された精錬反応容器等の溶鉄脱燐装置100に溶融スラグ200を形成する。このとき溶融スラグ200は、陰極104が当該溶融スラグ200のみに浸漬できる程度の厚みとなるように溶鉄300の上面に添加される。導電性物質からなる電極が溶融スラグ200のみに浸漬されるようにして陰極104とする。
本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法において、溶鉄300に含まれる燐の脱燐処理に用いる溶融スラグ200の成分は、脱燐精錬で一般的に使用されるCaO、SiO、FeO、MgO等が含有された溶融スラグ200が好ましい。本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法によれば、関係式(1)及び(2)からも明らかなように、溶融スラグ200の成分組成は、特に限定されることなく、溶融スラグ200の必要燐分配を増大させることができる。
本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法において、溶鉄脱燐装置100が備えている陰極104が溶融スラグ200のみに浸漬している必要があるほか、脱燐反応の反応効率をよくするために溶融スラグ200の液相率は、60vol.%以上であることが好ましい。溶融スラグ200の液相率は、溶融スラグ200と溶鉄との間に電流を印加するために使用する陰極104と陽極105とを当該溶融スラグ200に挿入することができる値であればよい。溶融スラグ200の液相率は、60vol.%以上であれば、陰極104が溶融スラグ200に十分に浸漬することができ、溶鉄の脱燐反応を促進することができるため好ましい。溶融スラグ200の液相率が95vol.%以下であれば、溶鉄脱燐装置100の操作が容易となるため好ましい。なお、溶融スラグ200の液相率とは、溶融スラグ200に占める液相が占める割合をいう。
以上説明したように、第4実施形態に係る発明によれば、溶融スラグの液相率を60vol.%以上に設定することにより、溶鉄脱燐装置の陰極が溶融スラグに十分に浸漬することができ、効果的に燐分配を向上させ、溶鉄の脱燐反応を促進することができる。
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の技術的範囲で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたプログラム、システム、または装置も、本発明の技術的範囲に含まれる。
以下、本発明の効果を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(発明例1)
本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法を採用して、電気炉設備を使用して溶鉄の脱燐を実施した。電気炉設備が備える電気炉にスクラップ、燐化鉄(FeP)、炭材及びCaO-SiO-FeO-MgO系スラグを装入し、交流アークにより、これらの溶鋼原料を溶解させた。電気炉の内部において、300tの溶鋼と30kg/溶鋼-tの溶融スラグを得た。
次に、アーク交流に用いた炉上黒鉛電極を溶融スラグに浸漬させて陰極とした。撹拌ランスの芯金部分を溶鋼に浸漬させて陽極とした。さらに、攪拌ランスを用いてアルゴンガス(Ar)を2.0Nm/minで吹き込みながら、溶融スラグ-溶鋼間に平均電流密度300(A/m)、印加電流値2100(A)の直流電流を30分間印加して、溶鋼の脱燐処理を実施した(水準1)。
そして、溶鋼の脱燐処理において、脱燐処理前(0分)、脱燐処理開始から10分経過時、脱燐処理開始から20分経過時、及び脱燐処理開始から30分(脱燐処理完了)経過時の溶鋼のサンプリングを行い、溶鋼中の燐濃度を測定し、燐分配(実燐分配)を求めた。表1に溶鋼の脱処理時間における燐分配とスラグ組成比を示す。併せて、スラグ液相率、上記関係式(2)に示す関係を満たすか否かについて示した。なお、発明例1において、溶融スラグの必要燐分配を100に設定した。
併せて、発明例1の溶鉄の脱燐方法において、アーク発生の有無を確認し、溶融スラグ-溶鋼間に印加した電流の電流値を所定の電流値に設定した。
(発明例2~6)
発明例2~5において、溶融スラグ-溶鋼間に印加する直流電流の平均電流密度を300~350(A/m)、印加電流値を5000(A)以下において変化させた以外は、発明例1と同様にして溶鋼の脱燐処理を実施した(水準2~5)。
一方、発明例6において、溶融スラグ-溶鋼間に印加する直流電流の平均電流密度を3000(A/m)とし、印加電流値を21000(A)と設定してアーク放電を発生させた(水準9)。
表1に溶鋼の脱処理時間における燐分配(実燐分配)とスラグ組成比を示す。併せて、スラグ液相率、上記関係式(2)に示す関係を満たすか否かについて示した。また、発明例2~6の溶鉄の脱燐方法において、アーク発生の有無を確認し、溶融スラグ-溶鋼間に印加した電流の電流値を所定の電流値に設定した。
(比較例1~2)
溶融スラグ-溶鋼間に直流電流を印加することなく、発明例1と同様にして溶鋼の脱燐処理を実施した(水準6)。また、溶融スラグ-溶鋼間に印加する直流電流の平均電流密度を200(A/m)に設定して、上記関係式(2)を満たさない条件において溶鋼の脱燐処理を実施した(水準7)。表1に溶鋼の脱処理時間における燐分配(実燐分配)とスラグ組成比を示す。併せて、スラグ液相率、上記関係式(2)に示す関係を満たすか否かについて示した。
(比較例3)
溶融スラグ-溶鋼間に直流電流を印加することなく、発明例1と同様にして溶鋼の脱燐処理を実施した(水準8)。表1に溶鋼の脱処理時間における燐分配(実燐分配)とスラグ組成比を示す。併せて、スラグ液相率、上記関係式(2)に示す関係を満たすか否かについて示した。
Figure 0007541655000017
表1に発明例1~6、比較例1~3において採用した各水準における試験条件と結果を示す。なお、表1中には必要燐分配を示しており、算出された実燐分配がこれに到達するか評価している。表1からも明らかなように、スラグ液相率が100%の条件(発明例1~2、4~6)おいて、上記関係式(2)を満たさない条件では、算出された実燐分配(実験結果から得られた燐分配)は必要燐分配に到達しないことが判明した(比較例2)。
一方、スラグ液相率が100%の条件(発明例1~2、4~6)おいて、上記関係式(2)を満たす電流密度の直流電流を印加した条件では、必要燐分配を達成していることがわかる(発明例1~6)。
さらに、発明例1~5に示されるように、印加電流値を5000(A)以下に設定し、アーク放電を発生させないようした条件においても、必要燐分配をきわめて良好に達成することができることが判明した。このような技術的観点から、本実施形態に係る溶鉄の脱燐方法は、アーク放電を発生させないようにすることができる直流電気炉により好適に実施可能であることが明らかとなった。
さらに、溶鋼に印加される直流電流の平均電流密度が大きいほど必要燐分配に到達する時間は早く、脱燐処理時間を短縮可能であることがわかる。また、スラグ液相率が30%の条件では、固化したスラグが障害となり電極を浸漬することができないため、本発明に係る溶鉄の脱燐方法を適用することができない(比較例3)。
ただし、スラグ液相率が60vol.%以上の場合は、電極を溶融スラグに浸漬することが可能であるが、脱燐反応の反応効率の面から、スラグ液相率は60vol.%以上であることが好ましい。なお、これらの傾向は、溶鉄に含まれる炭素の炭素濃度[C]、燐の燐濃度[P]に依存しない。
このように、本発明に係る溶鉄の脱燐方法は、スラグ液相率を60vol.%以上に設定して、上記関係式(2)を満たす電流密度の直流電流を印加した条件では、必要燐分配を達成することができる。すなわち、本発明に係る溶鉄の脱燐方法を使用して、所定の条件を設定することにより、効果的に燐分配を向上させ、溶鉄の脱燐反応を促進できることが明らかとなった。
本発明に係る溶鉄の脱燐方法によれば、スラグを改質することなく効果的に燐分配を向上させ、溶鉄の脱燐反応を促進することができるので、製鉄業等の関連発達に寄与し、産業上きわめて有用である。
100 溶鉄脱燐装置
101 MgO坩堝
102 ラミング材
103 誘導溶解炉
104 陰極(黒鉛電極)
105 陽極(MgO-C電極)
106 直流電源
107 導線
108 断熱ボード
200 溶融スラグ
300 溶鉄

Claims (5)

  1. 溶鉄に接する電極を陽極とし、溶融スラグのみに接する電極を陰極として該両電極を通じて前記溶融スラグと前記溶鉄との間に電流を印加する溶鉄の脱燐方法であって、
    前記電流の印加電流密度Iが前記溶鉄の溶鋼温度Tと前記溶融スラグの燐分配をLPと前記溶融スラグの必要燐分配をLP’との間において下記関係式(1)を満たすことを特徴とする溶鉄の脱燐方法。
    Figure 0007541655000018
    関係式(1)において、Iは印加電流密度(A/m)であり、αは定数であり、LPは溶融スラグの燐分配(-)であり、LP’は溶融スラグの必要燐分配(-)であり、Tは溶鉄の溶鋼温度T(K)である。
  2. 前記溶鉄に含まれる炭素の炭素濃度[C]が4.0mass%以下であり、
    前記印加電流密度I(A/m)が下記関係式(2)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の溶鉄の脱燐方法。
    Figure 0007541655000019
    関係式(2)において、Iは印加電流密度(A/m)であり、LPは溶融スラグの燐分配(-)であり、LP’は溶融スラグの必要燐分配(-)であり、Tは前記溶鉄の溶鋼温度(K)である。
  3. 前記溶融スラグと前記溶鉄との間に前記電流を印加することによってアーク放電が発生しないことを特徴とする請求項1又は2に記載の溶鉄の脱燐方法。
  4. 前記電流の電流値が5000(A)以下であることを特徴とする請求項3に記載の溶鉄の脱燐方法。
  5. 前記溶融スラグの液相率が60vol.%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶鉄の脱燐方法。

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