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JP7477621B2 - 磁気粘性流体およびその製造方法ならびに磁気粘性流体デバイス - Google Patents

磁気粘性流体およびその製造方法ならびに磁気粘性流体デバイス Download PDF

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Description

本発明は、磁気粘性流体およびその製造方法ならびに磁気粘性流体デバイスに関する。
磁気粘性流体は、MR流体(Magneto Rheological Fluid)とも呼ばれ、近年、様々な用途における有用性が期待されている機能性材料である(例えば特許文献1参照)。
特開2019-033222号公報
磁気粘性流体は、磁性粒子とキャリア流体とを含み、磁場の印加によってレオロジーが変化する性質を有する流体である。磁気粘性流体は、磁場印加時には、無磁場時と比べて大きな降伏せん断応力(以下、「せん断応力」または「応力」とも記載する。)を示すことができる。これは、磁場が印加されると磁性粒子がクラスターを形成し、これにより磁気粘性流体の流動性が低下するためである。この性質を利用することによって、各種デバイスの動作を磁場の印加によって制御することができる。一例として、磁気粘性流体を利用したブレーキの動作制御について説明する。かかるブレーキは、MR(Magneto Rheological)ブレーキと呼ばれる。MRブレーキの一般的な構造は、以下の通りである。ブレーキ内部には、外部の軸と連動して回転可能なディスクおよび磁場を発生させるためのコイルが配置され、更に磁気粘性流体が封入されている。コイルから磁場を発生させることで磁気粘性流体に磁場が印加されると、磁気粘性流体ではディスクの回転方向に対して垂直に磁性粒子のクラスターが形成される。クラスターが形成された状態でディスクを回転させるとディスクによってクラスターが切断され、このときのせん断応力が制動トルク(braking torque)として発揮される。このようなMRブレーキの高出力化のためには、磁気粘性流体は、磁場印加時に高い応力を発揮できることが望ましい。
また、ブレーキに関しては、引きずりトルク、即ち無磁場時のトルクが小さいことも望まれる。引きずりトルクが大きいと、ブレーキを解除した後にも大きなトルクが生じてしまい、発熱および/または消費エネルギー量の増大を引き起こすためである。
加えて、ブレーキには、繰り返し使用されてもブレーキ性能を安定に発揮し続けることが求められる。そのためには、磁気粘性流体には、磁場印加を繰り返しても性能低下が少ないこと(即ち耐久性に優れること)が望まれる。
上記の点は、MRブレーキに限らず、磁気粘性流体を利用する各種デバイスにおいても当てはまる。
以上に鑑み、本発明の一態様は、磁気粘性流体デバイスの高出力化および無磁場時の低トルク化に寄与することができ、かつ耐久性に優れる磁気粘性流体を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、
磁気粘性流体であって、
磁性粒子と、
キャリア流体と、
有機モリブデン化合物と、
を含み、
上記磁性粒子の含有率は、上記磁気粘性流体の体積に対して35体積%以上50体積%以下であり、
測定温度25℃において電磁回転型粘度計により測定される上記キャリア流体の粘度は10mPa秒(ミリパスカル秒)以上であり、かつ
測定温度25℃においてせん断速度1000秒-1で測定される上記磁気粘性流体のせん断粘度は500mPa秒以下である、磁気粘性流体、
に関する。
一形態では、上記磁気粘性流体において、上記磁性粒子の含有率は、上記磁気粘性流体の体積に対して40体積%以上50体積%以下であることができる。
一形態では、上記有機モリブデン化合物は、モリブデンジチオカーバメートであることができる。
一形態では、上記磁気粘性流体は、有機亜鉛化合物を更に含むことができる。
一形態では、上記有機亜鉛化合物は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛であることができる。
一形態では、上記磁気粘性流体において、上記有機亜鉛化合物の含有率は、上記磁性粒子の質量を除く上記磁気粘性流体の質量に対して3.0質量%以上であることができる。
一形態では、上記磁気粘性流体は、フェノール系化合物および硫黄系化合物を更に含むことができる。
一形態では、上記フェノール系化合物は、ヒンダードフェノール系化合物であることができる。
一形態では、上記硫黄系化合物は、チオエーテル系化合物であることができる。
一形態では、上記磁気粘性流体において、上記フェノール系化合物および上記硫黄系化合物の合計含有量は、上記磁性粒子の質量を除く上記磁気粘性流体の質量に対して0.1質量%以上3.0質量%以下であることができる。
一形態では、上記磁気粘性流体は、アクリルシリコーンを更に含むことができる。
一形態では、上記キャリア流体は、シリコーン系流体であることができる。
一形態では、上記磁気粘性流体の上記せん断粘度は、50mPa秒以上500mPa秒以下であることができる。
一形態では、上記キャリア流体の上記粘度は、10mPa秒以上35mPa秒以下であることができる。
本発明の一態様は、上記磁気粘性流体を含む磁気粘性流体デバイスに関する。本発明および本明細書において、「磁気粘性流体デバイス」とは、磁気粘性流体を含む部分を有するデバイスをいうものとする。
本発明の一態様は、上記磁気粘性流体の製造方法であって、上記磁性粒子、上記キャリア流体および上記有機モリブデン化合物を含む混合物を共振音響混合することを含む製造方法に関する。
本発明の一態様によれば、磁気粘性流体を利用するデバイスの高出力化および無磁場時の低トルク化に寄与することができ、かつ耐久性に優れる磁気粘性流体およびその製造方法を提供することができる。また本発明の一態様によれば、かかる磁気粘性流体を含む磁気粘性流体デバイスを提供することができる。
[磁気粘性流体]
本発明の一態様は、磁気粘性流体に関する。上記磁気粘性流体は、磁性粒子と、キャリア流体と、有機モリブデン化合物と、を含む。上記磁気粘性流体において、上記磁性粒子の含有率は、上記磁気粘性流体の体積に対して35体積%以上50体積%以下である。測定温度25℃において電磁回転型粘度計により測定される上記キャリア流体の粘度は10mPa秒以上であり、かつ測定温度25℃においてせん断速度1000秒-1で測定される上記磁気粘性流体のせん断粘度は500mPa秒以下である。
本発明者は、検討を重ねる中で、上記粘度を有する高粘度のキャリア流体を含有させたうえで磁気粘性流体としての粘度(詳しくは上記せん断粘度)は低下させるべきと考え、更に検討を重ねた結果、磁気粘性流体デバイスの高出力化および無磁場時の低トルク化に寄与することができ、かつ優れた耐久性を発揮できる上記磁気粘性流体を見出すに至った。本発明者は、上記磁気粘性流体に関して以下のように推察している。ただし、本発明は、本明細書に記載の推察に限定されるものではない。
上記磁気粘性流体の上記せん断粘度が500mPa秒以下であることは、磁気粘性流体デバイスの無磁場時の低トルク化に寄与し得る。
上記磁気粘性流体において、磁気粘性流体の体積に対する磁性粒子の含有率が35体積%以上であることは磁気粘性流体デバイスの高出力化に寄与し得る。また、その含有率が50体積%以下であることは磁気粘性流体の低粘度化に寄与し得る。
上記磁気粘性流体が有機モリブデン化合物を含むことおよび上記磁気粘性流体に含まれるキャリア流体の粘度が10mPa秒以上であることは、磁気粘性流体の耐久性向上に寄与し得る。
<磁気粘性流体のせん断粘度>
上記磁気粘性流体の測定温度25℃においてせん断速度1000秒-1で測定されるせん断粘度は、500mPa秒以下である。本発明および本明細書において、磁気粘性流体の上記せん断粘度は、以下の方法によって測定されるものとする。
粘度計としては、外筒定速方式の共軸二重円筒形回転粘度計を使用する。使用可能な粘度計の具体例としては、大菜技研社製共軸二重円筒形レオメーターONRH-1型を挙げることができる。例えば、内筒としては大菜技研社製G2B-145、外筒としては大菜技研社製Small-175を使用することができる。測定温度については、粘度計が有する温度制御手段等を使用して温度制御を行い、内筒内に設置された温度計(例えば白金温度計)の読み値が25℃±1.0℃の範囲にあることを確認した後、測定を開始する。粘度計において、せん断速度0.464秒-1にて粘度測定を行い、次いでせん断速度を0.464秒-1から1000秒-1まで10段階順次増速させ、各段階の増速後に増速したせん断速度を維持した状態で粘度測定を行うことを、合計4回繰り返す。n段階の増速では、せん断速度を0.464秒-1に101/3(=2.1527…)をn回掛けた値とする。最終段階(n=10)の増速でのせん断速度1000秒-1は、0.464秒-1に101/3(=2.1527…)を10回掛けた値である。粘度測定は、せん断速度0.464秒-1、および10段階のそれぞれの増速後のせん断速度において行う。したがって、上記4回の繰り返しにおいて、各回での測定点数は合計11点である。11点のそれぞれのせん断速度での粘度測定では、定常状態となった粘度を測定する。定常状態とは、粘度計に表示される粘度の値が一定値になった状態をいうものとする。本発明および本明細書では、4回目の増速における最終段階(n=10)の増速後のせん断速度1000秒-1において測定される粘度を、測定対象の磁気粘性流体の測定温度25℃においてせん断速度1000秒-1で測定されるせん断粘度とする。以下において、かかるせん断粘度を、単に「せん断粘度」とも記載する。
上記磁気粘性流体のせん断粘度は、磁気粘性流体デバイスの無磁場時の低トルク化の観点から、500mPa秒以下である。磁気粘性流体デバイスの低トルク化に磁気粘性流体のせん断粘度の低粘度化が寄与する理由について、本発明者は以下のように考えている。
磁気粘性流体デバイスでは、円盤状または円筒状のローターが使われることが多い。無磁場時のトルクは、ローター半径r、ローター表面積S、応力σから計算により求めることができる。応力σは、磁気粘性流体の物性に依る値であり、せん断速度γとせん断粘度ηから、下記の式により求めることができる。
σ(Pa) = η(Pa秒)γ(秒-1
磁気粘性流体デバイスにおいて、ローターと磁極との間隙は数百μm程度、せん断速度としては数百~数千秒-1であることが多い。磁気粘性流体は、通常、チキソトロピックな性質を持っており、せん断粘度はせん断速度に応じて変化する。
以上の点に関して、本発明および本明細書における磁気粘性流体のせん断粘度は、せん断速度1000秒-1での測定値であるため、磁気粘性流体デバイスにおいて生じ得る応力に対応する値ということができる。かかるせん断粘度が500mPa秒以下の低粘度であることが上記応力σの低減につながり、その結果、無磁場時のトルクを低くできることに寄与すると本発明者は考えている。
上記磁気粘性流体のせん断粘度は、500mPa秒以下であり、450mPa秒以下であることが好ましく、400mPa秒以下であることがより好ましく、350mPa秒以下であることが更に好ましく、300mPa秒以下であることが一層好ましく、250mPa秒以下であることがより一層好ましい。また、上記磁気粘性流体のせん断粘度は、例えば50mPa秒以上または100mPa秒以上であることができる。磁気粘性流体デバイスの無磁場時の低トルク化の観点からは、磁気粘性流体のせん断粘度は低いことが好ましいため、上記磁気粘性流体のせん断粘度は、上記で例示した値を下回ってもよい。磁気粘性流体のせん断粘度については、磁気粘性流体における磁性粒子の含有率が高いほど、せん断粘度の値は大きくなる傾向がある。
<キャリア流体の粘度>
上記磁気粘性流体に含まれるキャリア流体の粘度は、10mPa秒以上である。本発明および本明細書において、「キャリア流体(carrier fluid)」とは、液状流体をいい、キャリア流体の上記粘度は、以下の方法によって測定されるものとする。
磁気粘性流体を自然静置することによって、または磁気粘性流体を遠心分離(超遠心分離を包含する)することによって、磁性粒子を沈降させ、上澄みをピペッター等によって採取することにより、磁気粘性流体から粘度測定のための試料とするキャリア流体を得ることができる。
粘度計としては、電磁回転型粘度計を使用する。電磁回転型粘度計は、一般にEMS(Electro-Magnetically Spinning)粘度計とも呼ばれる。電磁回転型粘度計の具体例としては、京都電子工業社製EMS粘度計EMS-1000を挙げることができる。プローブとしては直径2.0mmの球状プローブを使用し、モーター回転数を1000rpm(revolutions per minute)とし、測定時間の設定は使用する電磁回転型粘度計の仕様における最短時間に設定(例えば京都電子工業社製EMS粘度計EMS-1000であれば測定モードの「最速」を選択)し、プローブを回転させた状態で粘度計の試料温度の設定温度を25℃とし、試料の温度が25℃に到達してから5分後に測定を開始し、3回測定を行う。3回の測定で得られた値の算術平均を、測定対象のキャリア流体の粘度とする。
上記磁気粘性流体に含まれるキャリア流体の粘度は、磁気粘性流体の耐久性向上の観点から、10mPa秒以上であり、12mPa秒以上であることが好ましく、14mPa以上であることが更に好ましく、18mPa以上であることが一層好ましい。また、キャリア流体の粘度は、例えば35mPa秒以下、30mPa秒以下または25mPa以下であることができる。磁気粘性流体の耐久性向上の観点からは、キャリア流体の粘度は高いことが好ましいため、上記磁気粘性流体に含まれるキャリア流体の粘度は、上記で例示した値を上回ってもよい。
以下、上記磁気粘性流体について、更に詳細に説明する。
<磁性粒子>
上記磁気粘性流体は、磁気粘性流体の体積に対する含有率として、35体積%以上50体積%以下の含有率で磁性粒子を含む。本発明および本明細書において、磁気粘性流体における磁性粒子の含有率は、磁気粘性流体の総体積を100体積%として算出される値である。また、上記磁気粘性流体には、1種の磁性粒子のみ含まれる場合もあり、2種以上の磁性粒子が含まれる場合もある。2種以上含まれる場合の含有率は、それら2種以上の磁性粒子の合計含有率である。上記磁気粘性流体において磁性粒子の含有率が35体積%以上であることは、磁気粘性流体デバイスの高出力化に寄与し得る。磁気粘性流体デバイスの更なる高出力化の観点から、磁性粒子の含有率は、37体積%以上であることが好ましく、40体積%以上であることがより好ましく、42体積%以上であることが更に好ましく、45体積%以上であることが一層好ましい。他方、上記磁気粘性流体において磁性粒子の含有率が低いことは、磁気粘性流体のせん断粘度の低粘度化に寄与し得る。この点から、上記磁気粘性流体における磁性粒子の含有率は、50体積%以下であり、48体積%以下であることが好ましく、45体積%以下であることがより好ましく、43体積%以下であることが更に好ましい。
本発明および本明細書に記載の磁気粘性流体における磁性粒子の含有率(単位:体積%)は、以下の方法によって求められる値とする。
体積がVtotalで質量がWtotalの磁気粘性流体を自然静置することによって、または磁気粘性流体を遠心分離(超遠心分離を包含する)することによって、固形分と液状成分とに分離する。分離された固形分の体積をVmとし、分離された液状成分の体積をVlとする。分離された固形分の質量をWmとし、分離された液状成分の質量をWlとする。Vtotal、VmおよびVlは、公知の体積測定方法によって求められる。Wtotal、WmおよびWlは、公知の質量測定方法によって求められる。上記固形分には、磁性粒子が含まれる。固形分として分離された磁性粒子に吸着成分が吸着しているとしても、吸着成分が体積、質量および以下に記載する真密度の測定値に与える影響は、通常ごくわずかであるため、無視することができる。したがって、上記Vmを磁性粒子の体積とみなすものとし、上記Wmを磁性粒子の質量とみなすものとする。Vm、VlおよびVtotalとには、下記(1)式の関係が成り立つ。Wm、WlおよびWtotalとには、下記(2)式の関係が成り立つ。
Vm+Vl=Vtotal ・・・(1)
Wm+Wl=Wtotal ・・・(2)
上記(1)式をVtotalで除すると、下記(3)式が得られる。
Vm/Vtotal+Vl/Vtotal=1 ・・・(3)
ここで、Cm=Vm/Vtotalとすると、上記(3)式から、下記(4)式が得られる。
Vl/Vtotal=(1-Cm) ・・・(4)
また、上記磁気粘性流体の真密度をdtotalとし、上記で分離された固形分の真密度をdm、上記で分離された液状成分の真密度をdlとする。以下の関係:
Wm(単位:kg)=Vm(単位:m)×dm(単位:kg/m
Wl(単位:kg)=Vl(単位:m)×dl(単位:kg/m
Wtotal(単位:kg)=Vtotal(単位:m)×dtotal(単位:kg/m
が成り立つため、これらの関係から、上記(2)式は下記(2A)式に書き改めることができる。
Vm×dm+Vl×dl=Vtotal×dtotal ・・・(2A)
上記(2A)式をVtotalで除すると、下記(5)式が得られる。
(Vm/Vtotal)×dm +(Vl/Vtotal)×dl=dtotal ・・・(5)
上記(5)式と上記(4)式とから、下記(6)式が得られる。
Cm×dm+(1-Cm)×dl=dtotal ・・・(6)
上記(6)式をCmについて整理すると、下記(7)式が得られる。
Cm=(dtotal-dl)/(dm-dl) ・・・(7)
上記(7)式および上記の各種真密度から、Cmを算出できる。固形分の真密度dmは、液相置換法、気相置換法等の公知の方法によって求めることができる。後述の実施例では、JIS Z8807:2012にしたがい気相置換法によって求めた。磁気粘性流体の真密度dtotalおよび液状成分の真密度dlは、JIS K5600-2-4:2014にしたがいピクノメータ法によって求めることができ、後述の実施例では、かかる方法によって求めた。こうして求められた各種真密度の値を用いて、上記(7)式によって「Cm」を算出する。「算出されたCm×100」として、磁気粘性流体における磁性粒子の含有率(単位:体積%)を求める。
磁性粒子としては、常磁性、超常磁性または強磁性材料に分類される磁性材料の粒子を挙げることができ、一般に磁気粘性流体に使用される各種磁性粒子を使用することができる。具体例としては、鉄、コバルトおよびニッケルから選ばれる1種以上を含む金属粒子、窒化鉄、炭化鉄、カルボニル鉄、フェライトおよびマグネタイトから選ばれる1種以上を含む金属化合物粒子等を挙げることができる。上記の金属粒子は、鉄、コバルトおよびニッケルから選ばれる1種以上を含む金属成分を含む粒子であることができ、詳しくは、金属成分として鉄、コバルトおよびニッケルから選ばれる金属単体を含む粒子、または、鉄、コバルトおよびニッケルから選ばれる1種以上の金属成分を構成成分とする合金を含む粒子であることができる。合金を含む粒子は、合金の構成成分として鉄、コバルトおよびニッケル以外の金属成分を含んでもよい。この場合、鉄、コバルトおよびニッケルから選ばれる1種以上が主成分であることが好ましい。また、上記の金属化合物粒子は、窒化鉄、炭化鉄、カルボニル鉄、フェライトおよびマグネタイトから選ばれる1種以上を主成分とすることが好ましい。ここで、「主成分」とは、磁性粒子を構成する成分のうち質量割合が最も多い成分を意味する。主成分のみから磁性粒子が構成されていてもよい。
上記磁性粒子の中でも、鉄を含む磁性粒子が好ましく、一般にカルボニル鉄と呼ばれる金属化合物粒子がより好ましい。カルボニル鉄は、通常、鉄ペンタカルボニルの熱分解により製造される。例えば、カルボニル鉄粉として市販されているものを磁性粒子として使用して上記磁気粘性流体を調製してもよい。市販品としては、例えばBASF社から市販されているカルボニル鉄粉等が挙げられる。ただし、これに限定されず、市販の磁性粒子または公知の方法で調製された磁性粒子を使用することができる。
上記磁気粘性流体に含まれる磁性粒子は、シランカップリング剤等で表面コーティングされた磁性粒子でもよいし、表面コーティングされていない磁性粒子でもよい。
磁性粒子の平均粒子径は、磁場の印加によってレオロジーが変化する性質を良好に発揮できる磁気粘性流体を提供する観点から、0.05~50μmであることが好ましく、0.05~40μmであることがより好ましく、0.1~30μmであることが更に好ましい。上記の磁性粒子の平均粒子径は、JIS Z8825:2013にしたがいレーザー回折散乱式法によって測定される平均粒子径である。
<キャリア流体>
キャリア流体としては、一般に磁気粘性流体に使用される各種液状流体を使用することができる。具体例としては、天然の脂肪油、鉱油、ポリフェニルエーテル、二塩基酸エステル、ネオペンチルポリオールエステル、リン酸エステル、合成シクロパラフィンおよび合成パラフィン、合成未飽和炭化水素油、一塩基酸エステル、グリコールエステルおよびエーテル、ケイ酸エステル、シリコーンオイル、シリコーン共重合体、合成炭化水素、およびそれらの2種以上の混合物を挙げることができる。また、ホワイトオイルと呼ばれる流動パラフィン、油圧油および変圧器油として市販されている液状流体も使用可能である。キャリア流体としては、シリコーン系流体が好ましい。「シリコーン系流体」とは、シロキサン結合(Si-O-Si)を有する有機ケイ素化合物を含む液状流体であり、例えばシリコーンオイルとして市販されているものを使用することができる。市販品としては、例えば信越化学工業社製シリコーンオイルを例示できる。ただし、これに限定されず、市販の液状流体の中から先に記載した範囲の粘度を示すものを選択して使用することができ、または公知の方法で調製された液状流体を使用することもできる。
上記磁気粘性流体におけるキャリア流体の含有率は、磁気粘性流体の体積に対する(即ち磁気粘性流体の総体積を100体積%とした)含有率として、磁気粘性流体のせん断粘度の低粘度化の観点からは、50体積%以上であることが好ましく、52体積%以上であることがより好ましい。また、磁気粘性流体デバイスの更なる高出力化の観点からは、キャリア流体の上記含有率は、60体積%以下であることが好ましく、58体積%以下であることがより好ましい。また、ある成分は、上記磁気粘性流体に1種のみ含まれる場合もあり、2種以上含まれる場合もある。2種以上含まれる場合の含有率は、それら2種以上の合計含有率である。
<有機モリブデン化合物>
上記磁気粘性流体は、有機モリブデン化合物を含む。有機モリブデン化合物とは、モリブデン(Mo)を含む有機化合物である。有機モリブデン化合物は、磁性粒子の磁気的な特性が低下することを抑制すること、および/または、キャリア流体が劣化することを抑制すること、に寄与すると考えられ、このことが上記磁気粘性流体の耐久性向上につながると推察される。好ましい有機モリブデン化合物としては、硫黄(S)を含む有機モリブデン化合物を挙げることができる。硫黄を含む有機モリブデン化合物は、磁気粘性流体の調製時等において一部が還元されて二硫化モリブデン(MoS)になると推察され、このことは磁気粘性流体の低粘度化のために好ましいと本発明者は考えている。
硫黄を含む有機モリブデン化合物の具体例としては、モリブデンジチオカーバメート(MoDTC(dithiocarbamate))、モリブデンジチオホスフェート(MoDTP(dithiophosphate))、モリブデン化合物と硫黄含有有機化合物または更にその他の有機化合物との錯体、ならびに硫化モリブデンおよび硫化モリブデン酸等の硫黄含有モリブデン化合物とアルケニルコハク酸イミドとの錯体等を挙げることができる。上記モリブデン化合物としては、例えば、二酸化モリブデンおよび三酸化モリブデン等の酸化モリブデン、オルトモリブデン酸、パラモリブデン酸および(ポリ)硫化モリブデン酸等のモリブデン酸、これらモリブデン酸の金属塩およびアンモニウム塩等のモリブデン酸塩、二硫化モリブデン、三硫化モリブデン、五硫化モリブデンおよびポリ硫化モリブデン等の硫化モリブデン、硫化モリブデン酸、硫化モリブデン酸の金属塩またはアミン塩、塩化モリブデン等のハロゲン化モリブデン等が挙げられる。上記硫黄含有有機化合物としては、例えば、アルキル(チオ)キサンテート、チアジアゾール、メルカプトチアジアゾール、チオカーボネート、テトラハイドロカルビルチウラムジスルフィド、ビス(ジ(チオ)ハイドロカルビルジチオホスホネート)ジスルフィド、有機(ポリ)サルファイドおよび硫化エステル等が挙げられる。
硫黄を含む有機モリブデン化合物の好ましい具体例としては、モリブデンジチオカーバメート(MoDTC)を挙げることができる。モリブデンジチオカーバメートは、下記一般式1で表される化合物であることができる。
(一般式1中、R~Rは、それぞれ独立に炭化水素基を表し、X~Xは、それぞれ独立に硫黄原子または酸素原子を表す。)
一般式1中、R~Rは、それぞれ独立に炭化水素基を表す。炭化水素基の炭素数は、4~18の範囲であることが好ましく、6~15の範囲であることがより好ましく、8~13の範囲であることが更に好ましい。本発明および本明細書において、特記しない限り、記載されている基は置換基を有してもよく無置換であってもよい。ある基が置換基を有する場合、置換基としては、アルキル基(例えば炭素数1~6のアルキル基)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(例えば炭素数1~6のアルコキシ基)、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子)、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、アシル基、カルボキシ基等を挙げることができる。置換基を有する基について「炭素数」とは、置換基を含む炭素数を意味するものとする。
炭化水素基の具体例としては、n(normal)-ブチル基、イソブチル基、2級ブチル基、3級ブチル基、n-ペンチル基、分岐ペンチル基、2級ペンチル基、3級ペンチル基、n-ヘキシル基、分岐ヘキシル基、2級ヘキシル基、3級ヘキシル基、n-ヘプチル基、分岐ヘプチル基、2級ヘプチル基、3級ヘプチル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、分岐オクチル基、2級オクチル基、3級オクチル基、n-ノニル基、分岐ノニル基、2級ノニル基、3級ノニル基、n-デシル基、分岐デシル基、2級デシル基、3級デシル基、n-ウンデシル基、分岐ウンデシル基、2級ウンデシル基、3級ウンデシル基、n-ドデシル基、分岐ドデシル基、2級ドデシル基、3級ドデシル基、n-トリデシル基、分岐トリデシル基、2級トリデシル基、3級トリデシル基、n-テトラデシル基、分岐テトラデシル基、2級テトラデシル基、3級テトラデシル基、n-ペンタデシル基、分岐ペンタデシル基、2級ペンタデシル基、3級ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、分岐ヘキサデシル基、2級ヘキサデシル基、3級ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、分岐ヘプタデシル基、2級ヘプタデシル基、3級ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、分岐オクタデシル基、2級オクタデシル基、3級オクタデシル基等の飽和脂肪族炭化水素基;1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-メチル-2-プロペニル基、2-メチル-2-プロペニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-メチル-2-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、1-ヘプテニル基、6-ヘプテニル基、1-オクテニル基、7-オクテニル基、8-ノネニル基、1-デセニル基、9-デセニル基、10-ウンデセニル基、1-ドデセニル基、4-ドデセニル基、11-ドデセニル基、12-トリデセニル基、13-テトラデセニル基、14-ペンタデセニル基、15-ヘキサデセニル基、16-ヘプタデセニル基、1-オクタデセニル基、17-オクタデセニル基等の不飽和脂肪族炭化水素基;フェニル基、トルイル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基、スチレン化フェニル基、p(para)-クミルフェニル基、フェニルフェニル基、ベンジルフェニル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基等の芳香族炭化水素基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、メチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基、メチルシクロオクチル基、4,4,6,6-テトラメチルシクロヘキシル基、1,3-ジブチルシクロヘキシル基、ノルボルニル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、アダマンチル基、1-シクロブテニル基、1-シクロペンテニル基、3-シクロペンテニル基、1-シクロヘキセニル基、3-シクロヘキセニル基、3-シクロヘプテニル基、4-シクロオクテニル基、2-メチル-3-シクロヘキセニル基、3,4-ジメチル-3-シクロヘキセニル基等の脂環式炭化水素基等が挙げられる。一般式1中、R~Rは、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。R~Rは、それぞれ独立に飽和脂肪族炭化水素基または不飽和脂肪族炭化水素基であることが好ましく、飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。
~Xは、それぞれ独立に硫黄原子または酸素原子を表す。XおよびXが硫黄原子であることが好ましく、XおよびXが硫黄原子でありXおよびXが酸素原子であることがより好ましい。
有機モリブデン化合物としては、市販品を使用することができ、公知の方法で調製した化合物を使用することもできる。市販品としては、例えばADEKA社製アデカサクラルーブシリーズを挙げることができる。ただしこれに限定されるものではない。
上記磁気粘性流体の調製時、磁気粘性流体の調製に使用される磁性粒子以外の成分の質量の合計を100質量%として、有機モリブデン化合物を0.3質量%以上使用することが好ましく、1.0質量%以上使用することがより好ましい。また、磁気粘性流体の調製に使用される磁性粒子以外の成分の質量の合計を100質量%として、有機モリブデン化合物を3.0質量%以下使用することが好ましく、2.0質量%以下使用することがより好ましい。調製された磁気粘性流体における有機モリブデン化合物の含有率については、磁性粒子の質量を除く磁気粘性流体の質量に対する(即ち、かかる質量を100質量%とする)含有率が、0.3質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましく、また、3.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましい。尚、先に記載したように、硫黄を含む有機モリブデン化合物は、一部が二硫化モリブデンに還元されている場合がある。ただし、そのような場合であっても、通常、磁気粘性流体の調製のために使用された有機モリブデン化合物の一部は調製された磁気粘性流体に有機モリブデン化合物として含まれ、磁気粘性流体を公知の方法で分析することによって、かかる有機モリブデン化合物を検出し同定することができる。例えば、無機のモリブデン化合物は、一般にキャリア流体には溶解しないか溶解性に乏しい。したがって、磁気粘性流体を自然静置することによって、または磁気粘性流体を遠心分離(超遠心分離を包含する)することによって非溶解成分を沈降させた後の上澄み成分からモリブデンが検出された場合、その磁気粘性流体は有機モリブデン化合物を含有していると判定できる。判定方法の具体例としては、後述の実施例に記載の方法が挙げられる。
<添加剤>
上記磁気粘性流体は、磁性粒子、キャリア流体および有機モリブデン化合物を含む。それらについては、先に記載した通りである。上記磁気粘性流体は、それら成分に加えて、1種以上の添加剤を含むことができる。以下に、上記磁気粘性流体に含まれ得る添加剤について説明する。
(有機亜鉛化合物)
上記磁気粘性流体は、有機亜鉛化合物を含むことができる。有機亜鉛化合物とは、亜鉛(Zn)を含む有機化合物である、有機亜鉛化合物は、上記磁気粘性流体の耐久性をより一層向上させることに寄与すると推察される。この点から好ましい有機亜鉛化合物としては、極圧剤または摩擦調整剤(Friction Modifier:FM剤とも呼ばれる。)として機能し得る有機亜鉛化合物を挙げることができる。
より好ましい有機亜鉛化合物としては、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP;Zinc Dialkyldithiophosphate)を挙げることができる。ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、下記一般式2で表される化合物であることができる。
一般式2中、R~Rは、それぞれ独立に炭化水素基を表す。上記炭化水素基は、炭素数1~20の炭化水素基であることが好ましい。上記炭化水素基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等の1級アルキル基;2級プロピル基、2級ブチル基、2級ペンチル基、2級ヘキシル基、2級ヘプチル基、2級オクチル基、2級ノニル基、2級デシル基、2級ウンデシル基、2級ドデシル基、2級トリデシル基、2級テトラデシル基、2級ペンタデシル基、2級ヘキサデシル基、2級ヘプタデシル基、2級オクタデシル基、2級ノナデシル基、2級イコシル基等の2級アルキル基;3級ブチル基、3級ペンチル基、3級ヘキシル基、3級ヘプチル基、3級オクチル基、3級ノニル基、3級デシル基、3級ウンデシル基、3級ドデシル基、3級トリデシル基、3級テトラデシル基、3級ペンタデシル基、3級ヘキサデシル基、3級ヘプタデシル基、3級オクタデシル基、3級ノナデシル基、3級イコシル基等の3級アルキル基;分岐ブチル基(イソブチル基等)、分岐ペンチル基(イソペンチル基等)、分岐ヘキシル基(イソヘキシル基)、分岐ヘプチル基(イソヘプチル基)、分岐オクチル基(イソオクチル基、2-エチルヘキシル基等)、分岐ノニル基(イソノニル基等)、分岐デシル基(イソデシル基等)、分岐ウンデシル基(イソウンデシル基等)、分岐ドデシル基(イソドデシル基等)、分岐トリデシル基(イソトリデシル基等)、分岐テトラデシル基(イソテトラデシル基)、分岐ペンタデシル基(イソペンタデシル基等)、分岐ヘキサデシル基(イソヘキサデシル基)、分岐ヘプタデシル基(イソヘプタデシル基等)、分岐オクタデシル基(イソオクタデシル基等)、分岐ノナデシル基(イソノナデシル基等)、分岐イコシル基(イソイコシル基等)等の分岐アルキル基;フェニル基、トルイル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基、スチレン化フェニル基、p-クミルフェニル基、フェニルフェニル基、ベンジルフェニル基等のアリール基等が挙げられる。一般式2中、R~Rは、それぞれ同一であっても、異なっていてもよい。
有機亜鉛化合物としては、市販品を使用することができ、公知の方法で調製された化合物を使用することもできる。市販品としては、例えばADEKA社製アデカキクルーブシリーズを挙げることができる。ただしこれに限定されるものではない。
上記磁気粘性流体における有機亜鉛化合物の含有率は、磁気粘性流体の耐久性の更なる向上および/または着色抑制の観点から、磁性粒子の質量を除く磁気粘性流体の質量に対して(即ち、かかる質量を100質量%として)、3.0質量%以上であることが好ましく、4.0質量%以上であることがより好ましい。また、上記磁気粘性流体における有機亜鉛化合物の上記含有率は、例えば10.0質量%以下または5.0質量%以下であることができる。
(フェノール系化合物、硫黄系化合物)
上記磁気粘性流体は、フェノール系化合物および/または硫黄系化合物を含むことができ、磁気粘性流体の低粘度化の観点からは、フェノール系化合物および硫黄系化合物を含むことが好ましい。フェノール系化合物および硫黄系化合物は、例えば酸化防止剤として機能することができる。
フェノール系化合物
本発明および本明細書において、「フェノール系化合物」には、フェノールおよびその誘導体が包含される。フェノール系化合物としては、2,6-ジ-tert(tertiary)-ブチルフェノール(以下、「tert-ブチル」を「t-ブチル」と略記する。)、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4’-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4’-ビス(2- メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-イソプロピリデンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-ノニルフェノール)、2,2’-イソブチリデンビス(4,6-ジメチルフェノール)、2,6-ビス(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、3-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、2-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸ステアリル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸オレイル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸ドデシル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸デシル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸オクチル、テトラキス{3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオニルオキシメチル}メタン、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸グリセリンモノエステル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸とグリセリンモノオレイルエーテルとのエステル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸ブチレングリコールジエステル、3-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオン酸チオジグリコールジエステル、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,6-ジ-t-ブチル-α-ジメチルアミノ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o(ortho)-クレゾール、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール、2,6-ジ-t-ブチル-4-(N,N’-ジメチルアミノメチルフェノール)、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)サルファイド、トリス{(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル-オキシエチル}イソシアヌレート、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、ビス{2-メチル-4-(3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル}サルファイド、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、テトラフタロイル-ジ(2,6-ジメチル-4-t-ブチル-3-ヒドロキシベンジルサルファイド)、6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-2,4-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン、2,2’-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ヘプチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクチル-3-(3-メチル-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ノニル-3-(3-メチル-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、[3,5-ビス(1,1-ジメチル-エチル)-4-ヒドロキシ]ベンゼンプロピオン酸の側鎖の炭素数が7~9のアルキルエステル、2,4,8-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン-3,9-ジイルビス(2-メチルプロパン-2,1-ジイル)ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジル-リン酸ジエステル、ビス(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルベンジル)サルファイド、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-{β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,1-ビス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)メシチレン、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルアルキルエステル、およびビス{3,3’-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド}グリコールエステル等のフェノール系化合物が挙げられる。
フェノール系化合物としては、市販品を使用することができ、公知の方法で調製されたものを使用することもできる。フェノール系化合物としては、ヒンダードフェノール系化合物が好ましい。本発明および本明細書において、「ヒンダードフェノール系化合物」とは、フェノールのヒドロキシ基のオルト位に置換基を有する化合物をいう。オルト位の置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。これらの中でも、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、2級ブチル基、イソブチル基、3級ブチル基等のアルキル基が好ましく、イソプロピル基、2級ブチル基、イソブチル基、3級ブチル基がより好ましく、3級ブチル基が更に好ましい。また、フェノールのヒドロキシ基に対する2つのオルト位がいずれも置換基で置換されていることが好ましい。ヒンダードフェノール系化合物は、一般にヒンダードフェノール系酸化防止剤として市販されている。フェノール系化合物の市販品の具体例としては、例えばADEKA社製アデカスタブAOシリーズが挙げられる。ただしこれに限定されるものではない。
硫黄系化合物
本発明および本明細書において、「硫黄系化合物」とは、硫黄(S)を含む化合物をいうものとし、硫黄を含有する有機化合物であることが好ましい。先に記載した有機モリブデン化合物が硫黄を含む場合、かかる有機モリブデン化合物は、ここに記載する「硫黄系化合物」には該当しないものとする。
硫黄系化合物としては、磁気粘性流体の低粘度化の観点から、チオエーテル系化合物が好ましい。チオエーテル系化合物とは、チオエーテル結合(-S-)を有する化合物であって、チオエーテル結合を有する有機化合物であることが好ましい。具体例としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジトリデシルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ドデシルチオプロピオネート)、4,4-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)ビス-3-(ドデシルチオ)プロピオネート等を挙げることができる。
硫黄系化合物としては、市販品を使用することができ、公知の方法で調製されたものを使用することもできる。市販品としては、例えばチオエーテル系酸化防止剤として市販されているものを使用することができる。市販品の具体例としては、例えばADEKA社製アデカエコロイヤルAINシリーズが挙げられる。ただしこれに限定されるものではない。
上記磁気粘性流体がフェノール系化合物および/または硫黄系化合物を含む場合、その含有量は、磁性粒子の質量を除く磁気粘性流体の質量に対して(即ち、かかる質量を100質量%として)、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましく、また、3.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましい。上記含有率は、フェノール系化合物が含まれ硫黄系化合物が含まれない場合にはフェノール系化合物の含有率であり、硫黄系化合物が含まれフェノール系化合物が含まれない場合には硫黄系化合物の含有率であり、フェノール系化合物および硫黄系化合物が含まれる場合には、それらの合計含有率である。
(分散剤)
上記磁気粘性流体は、磁気粘性流体における磁性粒子の分散性を高めるための分散剤を含むことができる。分散剤としては、磁性粒子の分散性向上に寄与し得る各種成分を使用することができる。分散剤として機能し得る化合物の具体例としては、オレイン酸、ステアリン酸等の脂肪酸、シリコーン系化合物等が挙げられる。「シリコーン系化合物」とは、シロキサン結合(Si-O-Si)を含む化合物であり、シロキサン結合を含む有機化合物であることが好ましい。上記磁気粘性流体に含まれるキャリア流体がシリコーン系流体の場合、上記シリコーン系化合物とは、シリコーン系流体とは異なるシリコーン系化合物をいうものとする。シリコーン系流体とシリコーン系化合物とを併用することは、磁気粘性流体の低粘度化の観点から好ましい。
シリコーン系化合物の一例としては、トリメチルシロキシケイ酸を挙げることができる。トリメチルシロキシケイ酸を含有する市販品としては、例えば信越化学工業社製KF-7312J(シクロペンタシロキサン溶解品)、X-21-5595(イソドデカン溶解品)、KF-9021(シクロペンタシロキサン溶解品)、X-21-5249L(ジメチルポリシロキサン(ジメチコンとも呼ばれる。)溶解品)等が挙げられる。
シリコーン系化合物としては、重合体を使用することもできる。ここで重合体は、単独重合体に限定されず、共重合体であることもできる。重合体は、一般に樹脂と呼ばれて市販されている。重合体のシリコーン系化合物としては、例えば、部分架橋型ポリエーテル変性シリコーン、部分架橋型ポリグリセリン変性シリコーン、直鎖または分岐状ポリオキシエチレン変性オルガノポリシロキサン、直鎖または分岐状ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン変性オルガノポリシロキサン、直鎖または分岐状ポリオキシエチレン・アルキル共変性オルガノポリシロキサン、直鎖または分岐状ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン・アルキル共変性オルガノポリシロキサン、直鎖または分岐状ポリグリセリン変性オルガノポリシロキサン、直鎖または分岐状ポリグリセリン・アルキル共変性オルガノポリシロキサンを挙げることができる。市販品の具体例としては、信越化学工業社製KSG-210、240、310、320、330、340、320Z、350Z、710、810、820、830、840、820Z、850Z、KF-6011、6013、6017、6043、6028、6038、6048、6100、6104、6105、6106、KP-578等が挙げられる。シリコーン系化合物の好ましい具体例としては、アクリルシリコーンを挙げることができる。ここで「アクリルシリコーン」とは、(メタ)アクリル酸エステルとジメチルポリシロキサンとの共重合体をいうものとする。アクリルシリコーンの具体例としては、信越化学工業社製KP-578等が挙げられる。
上記磁気粘性流体におけるシリコーン系化合物の含有率(ただしキャリア流体がシリコーン系流体の場合にはシリコーン系流体の含有率を除く)は、磁性粒子の質量を除く磁気粘性流体の質量に対して(即ち、かかる質量を100質量%として)、0.1~10.0質量%の範囲であることが好ましく、0.5~5.0質量%の範囲であることがより好ましい。
上記磁気粘性流体は、以上説明した成分に加えて、磁気粘性流体に使用可能な添加剤として知られる各種成分の1種以上を任意の含有率で含むこともできる。
上記磁気粘性流体は、上記の各種成分を、任意の順序でまたは同時に混合することによって製造することができる。好ましい製造方法としては、後述の製造方法を挙げることができる。
上記磁気粘性流体は、磁気粘性流体デバイスに適用することができる。この点については更に後述する。
[磁気粘性流体の製造方法]
本発明の一態様は、上記磁気粘性流体の製造方法に関する。上記製造方法は、上記磁性粒子、上記キャリア流体および上記有機モリブデン化合物を含む混合物を共振音響混合することを含む。
「共振音響混合」とは、音響共振エネルギーを利用して混合することをいう。好ましくは、粒子を含む混合物を容器に封入し、60Hz(ヘルツ)前後の低周波数の振動を与えて容器を上下に高加速力で振動させ、容器内の粒子の固有振動数(例えば60Hz程度)を使い、共振によって粒子に高エネルギーを伝搬し、粒子と粒子との衝突および/または粒子と容器との衝突によって、容器内の成分が混合される。上記製造方法において、混合処理として共振音響混合を採用することは、磁気粘性流体の低粘度化に寄与し得ると本発明者は考えている。共振音響混合を行うためのミキサーは、一般に共振音響ミキサーと呼ばれる。共振音響ミキサーは、通常RAM(Resonance Acoustic Mixer)と表記される。共振音響ミキサーとしては、例えばResodyn社製低周波共振音響ミキサーPharmaRAMを使用することができる。処理条件について、例えば、周波数は60Hz前後、重力加速度は50~100G程度、混合処理時間は1~60分間程度とすることができる。ただし、上記処理条件は例示であって、磁気粘性流体を製造するために使用する成分の種類、混合比、処理量等に応じて混合条件を設定すればよい。尚、重力加速度の単位Gについて、1G= 9.80665 m/秒である。
上記混合後、必要に応じて公知の方法で後処理を行うこともできる。後処理の一例としては、撹拌処理、超音波、サンドミル等を使用する分散処理、ろ過等を挙げることができる。
[磁気粘性流体デバイス]
本発明の一態様は、上記磁気粘性流体を含む磁気粘性流体デバイスに関する。
磁気粘性流体デバイスの具体例としては、ブレーキ、クラッチ、ダンパー、ショックアブソーバー等を挙げることができる。これらは、自動車、各種車両、建築構造物、無線操縦機、家電製品等に使用され得る。また、磁気粘性流体デバイスの具体例としては、義足、義手、トレーニング装置等の健康福祉分野において使用される各種デバイスを挙げることもできる。上記磁気粘性流体デバイスは、先に詳述した磁気粘性流体を含むことにより、磁場印加時に高出力を発揮することができ、磁場印加を解除することによって短時間で磁場印加前の状態に戻すことができる。更に、上記磁気粘性流体は優れた耐久性を発揮できるため、かかる磁気粘性流体を含む上記磁気粘性流体デバイスは優れた性能を長期にわたって発揮することができる。
上記磁気粘性流体デバイスは、デバイスの磁気粘性流体を導入すべき部分に上記磁気粘性流体が含有されているものであればよく、デバイス構成等の詳細については磁気粘性流体デバイスに関する公知技術を適用できる。
以下に、本発明を実施例に基づき説明する。ただし、本発明は実施例に示す実施形態に限定されるものではない。以下に記載の「部」は、質量部を示す。
[実施例1]
<磁気粘性流体の処方>
磁性粒子 :100.00部
BASF社製カルボニル鉄粉CM
キャリア流体 :17.00部
信越化学工業社製KF-96-20CS(シリコーンオイル)
有機モリブデン化合物 :0.20部
ADEKA社製サクラルーブ600(一般式1で表されるモリブデンジチオカーバメート(MoDTC)、一般式1中のXおよびXが硫黄原子でありXおよびXが酸素原子)
有機亜鉛化合物 :0.55部
ADEKA社製キクルーブZ-112(一般式2で表されるジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP))
フェノール系化合物 :0.05部
ADEKA社製アデカスタブAO-50(ヒンダードフェノール系酸化防止剤)
硫黄系化合物 :0.11部
ADEKA社製アデカエコロイヤルAIN-700(チオエーテル系酸化防止剤)
シリコーン系化合物 :0.25部
信越化学工業社製KP578(アクリルシリコーン)
<磁気粘性流体の調製>
内容積120mlのポリプロピレン製密閉容器に磁性粒子の量が200gとなるように上記の各種成分を投入し、この容器をResodyn社製低周波共振音響ミキサーPharmaRAM内に配置し、周波数60Hzかつ重力加速度65Gの混合条件で10分間共振音響混合を行った。かかる共振音響混合後の液を目開き寸法(opening size)100μmのナイロンメッシュによってろ過を行った。
こうして、実施例1の磁気粘性流体を調製した。
磁気粘性流体における磁性粒子の含有率(単位:体積%)を、先に記載した方法によって求めたところ、表1に示す値であった。
実施例1の磁気粘性流体の処方において、磁性粒子以外の成分の質量の合計を100質量%として、有機モリブデン化合物の含有率は1.1質量%である。磁性粒子の質量を除く磁気粘性流体の質量に対して(即ち、磁性粒子以外の成分の質量の合計を100質量%として)、実施例1の磁気粘性流体における有機亜鉛化合物の含有率は3.0質量%、酸化防止剤(フェノール系化合物+硫黄系化合物)の含有率は0.9質量%である。
[実施例2~5、比較例2]
実施例2、実施例3、実施例5および比較例2については、磁気粘性流体の処方中の磁性粒子量を、磁気粘性流体の磁性粒子の含有率が表1に示す値となる量に変更した点以外、実施例1と同様に磁気粘性流体を調製した。
実施例4については、キャリア流体を信越化学工業社製KF-96A-6CSとKF-96-20CSとをブレンドしたシリコーンオイルに変更した点および磁気粘性流体の処方中の磁性粒子量を、磁気粘性流体の磁性粒子の含有率が表1に示す値となる量に変更した点以外、実施例1と同様に磁気粘性流体を調製した。
調製した磁気粘性流体について、実施例1と同様の方法で磁気粘性流体における磁性粒子の含有率(単位:体積%)を求めたところ、表1に示す値であった。
実施例2~実施例5および比較例2の磁気粘性流体の処方において、磁性粒子以外の成分の質量の合計を100質量%として、有機モリブデン化合物の含有率は1.1質量%である。
磁性粒子の質量を除く磁気粘性流体の質量に対して(即ち、磁性粒子以外の成分の質量の合計を100質量%として)、実施例2~実施例5および比較例2の磁気粘性流体における有機亜鉛化合物の含有率は3.0質量%、酸化防止剤(フェノール系化合物+硫黄系化合物)の含有率は0.9質量%である。
[比較例3]
磁気粘性流体の処方中の磁性粒子量を、磁気粘性流体の磁性粒子の含有率が表1に示す値(65体積%)となる量に変更する点以外、実施例1と同様に磁気粘性流体の調製を試みた。しかし、砂状の混合物となってしまい流動性のある流体を得ることはできなかった。
[比較例4]
有機モリブデン化合物を添加しなかった点以外、実施例1と同様に磁気粘性流体を調製した。
調製した磁気粘性流体について、実施例1と同様の方法で磁気粘性流体における磁性粒子の含有率(単位:体積%)を求めたところ、表1に示す値であった。
磁性粒子の質量を除く磁気粘性流体の質量に対して(即ち、磁性粒子以外の成分の質量の合計を100質量%として)、比較例4の磁気粘性流体における有機亜鉛化合物の含有率は3.0質量%、酸化防止剤(フェノール系化合物+硫黄系化合物)の含有率は0.9質量%である。
[比較例5]
キャリア流体を信越化学工業社製KF-96-10CS(シリコーンオイル)に変更し、磁気粘性流体の処方におけるキャリア流体量を17.0部から16.9部に変更した点以外、実施例1と同様に磁気粘性流体を調製した。
調製した磁気粘性流体について、実施例1と同様の方法で磁気粘性流体における磁性粒子の含有率(単位:体積%)を求めたところ、表1に示す値であった。
比較例5の磁気粘性流体の処方において、磁性粒子以外の成分の質量の合計を100質量%として、有機モリブデン化合物の含有率は1.1質量%である。磁性粒子の質量を除く磁気粘性流体の質量に対して(即ち、磁性粒子以外の成分の質量の合計を100質量%として)、比較例5の磁気粘性流体における有機亜鉛化合物の含有率は3.0質量%、酸化防止剤(フェノール系化合物+硫黄系化合物)の含有率は0.9質量%である。
[比較例1]
MR流体として市販されている磁気粘性流体(LORD社製MRF-132DG)を、比較例1の磁気粘性流体とした。
[比較例6]
MR流体として市販されている比較例1とは異なる磁気粘性流体(LORD社製MRF-140CG)を、比較例6の磁気粘性流体とした。
比較例1および比較例6について、磁気粘性流体における磁性粒子の含有率(単位:体積%)は、実施例1と同様の方法で求めた。磁性粒子の真密度は、磁気粘性流体から採取された磁性粒子について、実施例1で記載した方法によって求めた。
[磁気粘性流体のせん断粘度]
実施例および比較例の各磁気粘性流体の一部を測定用試料とし、この試料を用いて、測定温度25℃においてせん断速度1000秒-1で測定されるせん断粘度を先に記載した方法によって求めた。測定には、粘度計として大菜技研社製共軸二重円筒形レオメーターONRH-1型、内筒として大菜技研社製G2B-145、外筒として大菜技研社製Small-175を使用し、測定温度の確認は内筒内に設置された白金温度計を使用して行った。
比較例3については、先に記載したように流動性のある流体を得ることはできなかったため、後述の表1には、「測定不能」と記載した。
[キャリア流体の粘度]
実施例および比較例の各磁気粘性流体の一部をキャリア流体採取用試料とし、この試料を自然静置することによって固形分を沈降させ、上澄みをピペッターによって採取した。こうして採取されたキャリア流体の測定温度25℃における粘度を、電磁回転型粘度計として京都電子工業社製EMS粘度計EMS-1000を使用し、先に記載した方法によって求めた。尚、上記で採取された上澄みには、キャリア流体に溶解した成分が含まれ得る。かかる成分が粘度の測定値に与える影響は、通常ごくわずかであるため、無視することができる。したがって、上記で採取された上澄みの粘度を、キャリア流体の粘度とみなすものとする。
[有機モリブデン化合物含有の有無]
無機モリブデン化合物は、一般にキャリア流体には溶解しないか溶解性に乏しい。したがって、磁気粘性流体を自然静置することによって、または磁気粘性流体を遠心分離(超遠心分離を包含する)することによって非溶解成分を沈降させた後の上澄み成分からモリブデンが検出された場合、その磁気粘性流体は有機モリブデン化合物を含有していると判定できる。
実施例および比較例の各磁気粘性流体について、上記のキャリア流体の粘度測定の後に静置沈降により得た上澄み成分をテフロン(登録商標)製の灰化容器に採取して灰化処理を行った。灰化処理後の残留分をICP(Inductively Coupled Plasma)分析し、モリブデンが検出された場合には磁気粘性流体に有機モリブデン化合物が含有されていたと判定した。この場合、表1の「有機モリブデン化合物」の欄に「含有」と記載した。一方、モリブデンが検出されなかった場合には磁気粘性流体には有機モリブデン化合物は含有されていなかったと判定した。この場合、表1の「有機モリブデン化合物」の欄に「非含有」と記載した。
[磁気粘性流体デバイスの出力評価]
株式会社ERテック社製のMR(Magneto Rheological)特性評価装置を用いて評価を行った。実施例および比較例の各磁気粘性流体2mlをMR特性評価装置のコイル部分に設けられた溝に入れ、ギャップ間隔0.05mm(ローター中心からギャップ部までの平均距離:21.5mm)のローターを溝部に差し込み、あふれた磁気粘性流体を紙製ウエス(日本製紙クレシア社製キムワイプ)で除去したのち、ローター回転数20rpmとし、コイル電流0.092A(アンペア)にて磁場を印加し、10秒間、20~30ミリ秒毎にトルク測定を行った。ここで求められるトルクの値が大きいほど高出力と判定できる。測定されたトルク値のうち、9秒から10秒までの値の算術平均を表1に示し、この値に基づき、以下の判定基準で出力評価を行った。
(判定基準)
A:1.9Nm(ニュートンメートル)以上
B:1.7Nm以上1.9Nm未満
C:1.7Nm未満
[無磁場状態での引きずりトルク評価]
実施例および比較例の各磁気粘性流体を株式会社ERテック社製中空型MR流体ブレーキに充填し、電流を印加しない状態(即ち無磁場状態)のトルクをトルクメータを使って測定した。測定されたトルクの値を表1に示し、この値に基づき、以下の判定基準で無磁場状態での引きずりトルク評価を行った。ここで測定されるトルクの値が小さいほど、無磁場時の低トルク化が達成されていると判定できる。
(判定基準)
A:0.13Nm未満
B:0.13Nm以上0.15Nm以下
C:0.15Nm超
[磁気粘性流体の耐久性評価]
実施例および比較例の各磁気粘性流体の耐久性を、出力評価に使用したMR特性評価装置を用いて評価した。実施例および比較例の各磁気粘性流体2mlをMR特性評価装置のコイル部分に設けられた溝に入れ、ギャップ間隔0.05mm(ローター中心とギャップ部までの平均距離:21.5mm)のローターをギャップ部に差し込み、あふれた磁気粘性流体を紙製ウエス(日本製紙クレシア社製キムワイプ)で除去したのち、ローター回転数を80rpmとし、トルクが2NmになるようにPID(Proportional-Integral-Differential )制御を行い、2時間30分、試験を行った。その際30分毎に回転数を20rpmに落とし、コイル電流を変化させながらトルクを読み取り、コイル電流0.092Aでの測定値の経時での傾き(時間0の時の切片は実測値に固定)から、初期の値の85%にトルクの値が低下する時間を、計算により求めた。こうして求められる値が大きい磁気粘性流体ほど、耐久性に優れるということができる。ここで求められた時間の値を表1に示し、この値に基づき、以下の判定基準で磁気粘性流体の耐久性評価を行った。
(判定基準)
A:2.0時間以上
B:1.5時間以上2.0時間未満
C:1.5時間未満
以上の評価結果を表1(表1-1、表1-2)に示す。比較例3については、先に記載したように流動性のある流体を得ることはできなかったため、各種評価は行わず、表1には、「測定不能」と記載した。
表1に示す結果から、実施例の磁気粘性流体によれば磁気粘性流体デバイスの高出力化および無磁場時の低トルク化が可能となること、ならびに実施例の磁気粘性流体が耐久性に優れることが確認できる。
本発明の一態様は、磁気粘性流体が利用されている各種技術分野および利用が期待されている各種技術分野において有用である。

Claims (16)

  1. 磁気粘性流体であって、
    磁性粒子と、
    キャリア流体と、
    有機モリブデン化合物と、
    を含み、
    前記磁性粒子の含有率は、前記磁気粘性流体の体積に対して35体積%以上50体積%以下であり、
    測定温度25℃において電磁回転型粘度計により測定される前記キャリア流体の粘度は10mPa秒以上であり、かつ
    測定温度25℃においてせん断速度1000秒-1で測定される前記磁気粘性流体のせん断粘度は500mPa秒以下である、磁気粘性流体。
  2. 前記磁性粒子の含有率は、前記磁気粘性流体の体積に対して40体積%以上50体積%以下である、請求項1に記載の磁気粘性流体。
  3. 前記有機モリブデン化合物はモリブデンジチオカーバメートである、請求項1または2に記載の磁気粘性流体。
  4. 有機亜鉛化合物を更に含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の磁気粘性流体。
  5. 前記有機亜鉛化合物はジアルキルジチオリン酸亜鉛である、請求項4に記載の磁気粘性流体。
  6. 前記有機亜鉛化合物の含有率は、前記磁性粒子の質量を除く前記磁気粘性流体の質量に対して3.0質量%以上である、請求項4または5に記載の磁気粘性流体。
  7. フェノール系化合物および硫黄系化合物を更に含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の磁気粘性流体。
  8. 前記フェノール系化合物は、ヒンダードフェノール系化合物である、請求項7に記載の磁気粘性流体。
  9. 前記硫黄系化合物は、チオエーテル系化合物である、請求項7または8に記載の磁気粘性流体。
  10. 前記フェノール系化合物および前記硫黄系化合物の合計含有率は、前記磁性粒子の質量を除く前記磁気粘性流体の質量に対して0.1質量%以上3.0質量%以下である、請求項7~9のいずれか1項に記載の磁気粘性流体。
  11. アクリルシリコーンを更に含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の磁気粘性流体。
  12. 前記キャリア流体はシリコーン系流体である、請求項1~11のいずれか1項に記載の磁気粘性流体。
  13. 前記磁気粘性流体の前記せん断粘度は50mPa秒以上500mPa秒以下である、請求項1~12のいずれか1項に記載の磁気粘性流体。
  14. 前記キャリア流体の前記粘度は10mPa秒以上35mPa秒以下である、請求項1~13のいずれか1項に記載の磁気粘性流体。
  15. 請求項1~14のいずれか1項に記載の磁気粘性流体を含む磁気粘性流体デバイス。
  16. 請求項1~14のいずれか1項に記載の磁気粘性流体の製造方法であって、
    前記磁性粒子、前記キャリア流体および前記有機モリブデン化合物を含む混合物を、共振音響混合することを含む、前記製造方法。
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