本開示は、炎症、侵害受容性/掻痒受容性増感作用、上皮バリア統合性、リポタンパク質機能およびアテローム性動脈硬化症のin vitroおよびin vivoモデルにおいて活性があることが示されている脂肪酸誘導体のファミリーに関する。したがって、開示化合物は複数の高度に利用された細胞過程を調節する。特定された脂肪酸誘導体のいくつかは内在的に存在する。特定された内在性化合物の機能的な部分を共有し、安定性、活性、および対象への送達の容易さを最大化しつつ、対応する内在性生理活性化合物の作用を維持または拮抗するように修飾された追加の誘導体もまた提供される。
I.用語
以下の用語および略語の説明は、本開示をより良く説明し、本開示の実施において当業者を先導するように提供される。本明細書で使用される場合、「含んでいる(comprising)」は、文脈が明らかに他を指示しない限り、「含む(including)」を意味し、単数形「a」または「an」または「the」は複数についての言及を含む。「または」という用語は、文脈が明らかに他を示唆しない限り、述べられている代替の要素の単一の要素または2つもしくはそれよりも多くの要素の組合せを指す。
他に説明されていない限り、本明細書で使用されているすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者により共通して理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または同等の方法および物質を本開示の実施もしくは試験で使用することができるが、適切な方法および物質が以下に記載されている。物質、方法、および実施例はほんの例示であり、限定することを意図しない。本開示の他の特徴は以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかである。
開示された方法の一部のステップが好都合な提示に対して特定の、連続的な順序で記載されているが、特定の順序付けが以下に記載の特定の言語で要求されない限り、この記載方式は再編成を包含することを理解すべきである。例えば、逐次的に記載されているステップはある場合には、再編成されたり、または並行的に実施されたりしてもよい。さらに、記載は時には、開示された方法を記載するのに「もたらす」および「提供する」などの用語を使用する。これらの用語は実施される実際のステップを高レベルに抽象化したものである。これらの用語に対応する実際のステップは特定の実施に応じて変動し、当業者には容易に認識される。
他に指摘されていない限り、明細書または特許請求の範囲に使用されているような構成成分、分子量、パーセンテージ、温度、時間などの量を表現するすべての数は、「約」という用語で修飾されていると理解されている。したがって、暗示的または明示的に他に指摘されていない限り、記載されている数値パラメーターは、標準的試験条件/方法下で探究されている所望の特性および/または検出限界に依存し得る近似値である。実施形態を、考察された従来の技術から直接的および明示的に区別する場合、実施形態の数は、単語「約」が列挙されていない限り、近似値ではない。さらに、本明細書で列挙されたすべての代替形態が同等物であるとは限らない。
本明細書で開示されている化合物の実施形態は、化学的コンジュゲートが異なる立体異性形態で存在できるように、1つまたは複数の非対称的要素、例えば、立体中心、ステレオジェニック軸、例えば、不斉炭素原子などを含有することができる。これらの化合物の実施形態は、例えば、ラセミ体または光学活性な形態であることができる。2つまたはそれよりも多くの非対称的要素を有する化合物実施形態に対して、これらの化合物実施形態はさらにジアステレオマーの混合物であることができる。不斉中心を有する化合物実施形態に対して、文脈が明確に他を指摘してもいないし、異性体を除外する表現の記述が提供されてもいない限り、純粋な形態およびその混合物のすべての光学異性は、対応する一般式により包含される。これらの状況では、単一のエナンチオマー、すなわち、光学活性形態は、当業者に公知の方法により、例えば、不斉合成、光学的に純粋な前駆体からの合成、またはラセミ体の分割などにより得ることができる。ラセミ体の分割はまた、例えば、従来の方法、例えば、分割剤の存在下での結晶化、または、例えば、キラルHPLCカラムを使用したクロマトグラフィーなどにより達成することができる。すべての異性体の形態は、これらを得るために使用される方法に関わらず、本明細書で想定される。
投与:対象に、薬剤、例えば、開示された脂肪酸誘導体を、任意の有効な経路により提供または付与すること。投与の例示的経路として、これらに限定されないが、経口、注射(例えば、皮下、筋肉内、皮内、腹腔内、および静脈内)、舌下、直腸、経皮的(例えば、局所的)、鼻腔内、経膣、および吸入経路などが挙げられる。
化合物の「投与」および化合物を「投与する」ことは、本明細書に記載されているような化合物、化合物のプロドラッグ、または医薬組成物を提供することを意味すると理解されるべきである。化合物または組成物は別の人間により対象(例えば、静脈内に)に投与することもできるし、または対象(例えば、錠剤)により自己投与することもできる。
アルキル:飽和した炭素鎖を有する炭化水素基。鎖は、環式、分枝または非分枝であってよい。アルキル基の例として、制限なしで、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルおよびデシルが挙げられる。低級アルキルという用語は、1~10個の炭素原子を含む鎖を意味する。アルケニルおよびアルキニルという用語は、それぞれ1つまたは複数の二重結合または三重結合を含有する炭素鎖を有する炭化水素基を指す。
アミンまたはアミノ:式-NRR’の基(式中、RおよびR’は、独立して、水素またはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アルケニル、またはヘテロシクロアルキル基であることができる)。例えば、「アルキルアミノ」または「アルキル化アミノ」は-NRR’(式中、RまたはR’の少なくとも1つはアルキルである)を指す。
アリール:単環(例えば、フェニル)または多重縮合環(例えば、ナフチルまたはアントリル)を有する一価の不飽和の芳香族炭素環式基であり、必要に応じて非置換であるか、または置換されていることができる。ヘテロアリール基は、芳香族基の環内に少なくとも1個のヘテロ原子が組み込まれている芳香族基である。ヘテロ原子の例として、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄、およびリンが挙げられる。ヘテロアリールとして、これらに限定されないが、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、チオフェニル、フラニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、キノキサリニルなどが挙げられる。アリールまたはヘテロアリール基は、これらに限定されない、アルキル、アルキニル、アルケニル、アリール、ハロゲン化物、ニトロ、アミノ、エステル、ケトン、アルデヒド、ヒドロキシ、カルボン酸、またはアルコキシを含む1つもしくは複数の基で置換されていることができるか、またはアリールもしくはヘテロアリール基は非置換であることができる。
アテローム性動脈硬化症:時間の経過による、血管の進行性狭小化および硬化。アテローム性動脈硬化症は、コレステロールを含有する黄色がかったプラーク(アテローム)、類脂質の物質および脂肪貪食細胞の堆積物が、大きなサイズおよび中間サイズの動脈の内膜および内側の媒体内に形成される、動脈硬化症の一般的形態である。アテローム性動脈硬化症の処置は、例えば、動脈硬化性病変の存在および/または疾患の機能的徴候により測定されるようなアテローム性動脈硬化症の進行を逆転または減速させること、例えば、徴候(例えば、末梢毛細血管の再充填など)、症状(例えば、胸痛および間欠性跛行など)、または検査による証拠(例えば、EKG、血管造影、または他の画像化技術により得たものなど)により測定されるような心血管機能の改善を含む。「アテローム性動脈硬化症を診断すること」は、対象がアテローム性動脈硬化症を有するかどうか判定すること、対象においてアテローム性動脈硬化症の予後を判定すること、および/または対象に投与された治療レジメンが対象においてアテローム性動脈硬化症を処置もしくは予防するのに有効であるかどうか判定することを示す。
自己免疫障害:免疫系が内在性抗原に対する免疫応答(例えば、B細胞またはT細胞応答)を生成し、結果として組織に損傷を生じる障害。例えば、関節リウマチは、自己免疫障害であり、中でも橋本甲状腺炎、悪性貧血、アジソン病、I型糖尿病、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、皮膚筋炎、エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、ライター症候群、およびグレーヴス病がある。
対照:実験的試料との比較のために使用される試料または標準物質。一部の実施形態では、対照は健康な患者から得た試料である。他の実施形態では、対照は、疾患または状態、例えば、炎症、かゆみ、疼痛、自己免疫、および/またはアテローム性動脈硬化症などと診断された患者から得た試料である。一部の実施形態では、対照は、疾患または状態(例えば、炎症、かゆみ、疼痛、自己免疫、および/またはアテローム性動脈硬化症など)と診断された患者から得た試料であり、この場合、患者は本明細書で開示されているような脂肪酸誘導体を用いた処置を受けたことがない。さらなる他の実施形態では、対照は過去の対照または標準的基準値もしくは値の範囲である(例えば、以前に試験した対照試料、例えば、既知の予後もしくはアウトカムを有する患者の群など、またはベースラインまたは正常値を表す試料の群である)。
低減または減少させる:何かの品質、量、または強度を減少させること;例えば、疾患または状態の徴候または症状における減少。1つの例では、療法は、療法が存在しない場合の応答と比較して、疾患または状態の徴候または症状を減少させる。特定の例では、療法は、療法が存在しない場合と比較して、疾患または状態の徴候または症状を減少させる、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%減少させる。
誘導体:誘導体は、親化合物からの化学構造が異なる分子であり、例えば、ホモログ(化学構造における増加が異なる、例えば、アルキル鎖の長さの差異など)、分子断片、1つまたは複数の官能基が異なる構造、イオン化の変化などである。一部の例では、誘導体は、生体系内での送達に対して、所望の特性、例えば、安定性、溶解度、および/または適性などを付与することを意図する、非天然の(または非生物学的に誘導された)変化形を含有する内在性化合物に、構造的に類似する、または関係する(例えば、官能基を共有する)。誘導体は必ずしも親化合物から合成されるわけではない。構造誘導体は、多くの場合、Remington(The Science and Practice of Pharmacology、第19版(1995年)、第28章)において開示されたような技術を用いて、定量的構造活性関係(QSAR)を使用して見出される。
診断:その徴候、症状および様々な試験の結果により疾患を特定するプロセス。そのプロセスを介して到達した結論もまた「診断」と呼ばれる。一般的に実施される試験の形態は血液試験、医学画像、尿検査、および生検を含む。
炎症:組織への損傷が生じた場合、損傷に対する身体の応答は普通炎症である。例えば、損傷は、外傷、血液供給の欠如、出血、自己免疫性攻撃、移植した外部組織または感染が原因となり得る。この身体による全身性応答は、免疫系の多くの構成成分(例えば、IL-1およびTNF)の放出、損傷部位への細胞の誘引、流体放出による組織の膨潤および他のプロセスを含む。炎症は、当技術分野で周知の多くの方法により、例えば、白血球の数、多形核球好中球(PMN)の数など、PMN活性化の程度の測定、例えば、腸管促進性化学発光、または存在するサイトカインの量の測定などにより測定することができる。
炎症は急性または慢性のいずれかに分類することができる。急性炎症は有害な刺激に対する身体の最初の応答であり、血漿および白血球の、血液から損傷した組織への運動増加により達成される。続いて起こる生化学的事象は、損傷した組織内の局所的血管系システム、免疫系、および様々な細胞を巻き込んで、炎症性応答を増殖させ、成熟させる。慢性炎症として公知の長期炎症は、炎症部位に存在する細胞の種類の進行性シフトをもたらし、炎症過程からの同時に起こる組織の破壊および治癒を特徴とする。慢性炎症の例は炎症性関節炎である。
かゆみ:掻痒症としても公知のかゆみは、対象が患部をひっかく原因となる皮膚のピリピリ感または刺激である。かゆみは、全身にわたりまたは1つの場所のみに生じ得る。かゆみはヒスタミン依存性であっても、または独立したものであってよい。
かゆみは、1次疾患に罹患した、炎症性の皮膚を襲うかゆみ(例えば、炎症性、感染性、自己免疫障害、リンパ腫または薬物反応などに罹患した皮膚)、1次疾患に罹患していない、非炎症性皮膚を襲うかゆみ(例えば、神経性または精神的起源に関連したかゆみなど)、または2次的ひっかき病変に伴うかゆみ(これらのひっかき病変は最初のかゆみに応答して患者により引き起こされ、皮膚の擦りむき、かさぶた、丘疹、こぶおよび結節性痒疹などの慢性的な2次的ひっかき病変を含む)に分類することができる。
かゆみは、大部分の炎症性皮膚障害(例えばアトピー性皮膚炎、乾癬、接触性皮膚炎、じんま疹、薬物反応、類天疱瘡、疱疹状皮膚炎)、寄生虫症または感染症(例えば疥癬、真菌症、水痘)、虫刺され、ならびに皮膚T細胞リンパ腫の最も一般的な症状である。
いくつかの実施形態では、本明細書で開示されている脂肪酸誘導体は、対象においてかゆみ(例えば、慢性のかゆみなど)を処置または予防するために使用することができる。
疼痛:実際のまたは潜在的な組織損傷に伴う、またはこのような損傷として記載される不快な感覚および情緒的な経験。哺乳動物が経験する疼痛は、2つの主要なカテゴリー:急性疼痛(または侵害受容性)と慢性疼痛に分割することができ、慢性疼痛は、慢性炎症性疼痛および慢性神経障害性疼痛に分割することができる。急性疼痛は組織傷害を引き起こす刺激に対する応答であり、組織損傷を最小化するために、刺激から離れるためのシグナルである。他方では、慢性疼痛は、生物学的機能を発揮せず、組織損傷(炎症性疼痛)により、または神経系、例えば、脱髄(神経障害性疼痛)などへの損傷により引き起こされる炎症の結果発症する。慢性疼痛は一般的に刺激から独立した、持続性疼痛または無害な刺激により誘発される異常な疼痛知覚を特徴とする。疼痛の非限定的例として、術後痛、組織損傷に伴う疼痛、炎症による疼痛、感染症による疼痛(帯状疱疹)、神経障害性状態による疼痛、および骨格筋肉の状態による疼痛が挙げられる。
薬学的に許容される:対象に対して著しい有害な毒物学的作用を生じることなく、対象に取り入れることができる物質。「薬学的に許容される形態」という用語は、任意の薬学的に許容される誘導体または変化形、例えば、立体異性体、立体異性体混合物、エナンチオマー、溶媒和物、水和物、同形体、多形、擬形、中性形態、塩形態、およびプロドラッグ薬剤などを意味する。
薬学的に許容される担体:本開示に有用な薬学的に許容される担体(ビヒクル)は従来のものである。Remington: The Science and Practice of Pharmacy、The University of the Sciences in Philadelphia、Lippincott編、Williams, & Wilkins、Philadelphia、PA、第21版(2005年)は、1つまたは複数の治療用組成物および追加の薬剤の医薬品送達に対して適切な組成物および製剤について記載している。一般的に、担体の性質は、利用する特定の投与モードに依存することになる。例えば、非経口製剤は普通、薬学的および生理学的に許容される流体、例えば、水、生理的食塩水、平衡塩類溶液、水性ブドウ糖、グリセロールなどをビヒクルとして含む注射用流体を含む。一部の例では、薬学的に許容される担体は、対象への投与(例えば、非経口、筋肉内、または皮下注射による)に対して適切なように滅菌であってよい。生物学的に中性の担体に加えて、投与される医薬組成物は、微量な無毒性補助物質、例えば、湿潤化剤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤など、例えば酢酸ナトリウムまたはモノラウリン酸ソルビタンなどを含有することができる。一部の例では、薬学的に許容される担体は非自然発生または合成の担体である。担体はまた、予め選択した治療用の用量の活性剤を有する単位剤形、例えば、丸剤、バイアル、ビン、またはシリンジなどに製剤化することができる。
薬学的に許容される塩:薬物として使用することができる化合物の生物学的に適合性のある塩であり、当技術分野で周知の様々な有機および無機対イオンから誘導される塩であり、単なる例示として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムなどを含み、分子が塩基性官能基を含有する場合には、有機酸または無機酸の塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩などである。薬学的に許容される酸付加塩は、遊離塩基の生物学的有効性を保持するような塩であるが、生物学的にも他の点でも有害ではない酸のパートナー、例えば、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など、ならびに有機酸、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ベンゼンスルホン酸(ベシル酸塩)、ケイヒ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などにより形成される。薬学的に許容される塩基付加塩として、無機塩基から誘導されるもの、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウム塩などが挙げられる。例示的塩はアンモニウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、およびマグネシウム塩である。薬学的に許容される有機の無毒性塩基から誘導される塩として、これらに限定されないが、第1級、第2級、および第3級アミン、天然の置換アミンを含む置換アミン、環状アミンおよび塩基性イオン交換樹脂の塩、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂の塩などが挙げられる。例示的な有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン、およびカフェインである。(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、S. M. Bergeら、「Pharmaceutical Salts」、J. Pharm. Sci.、1977年;66巻:1~19頁を参照されたい)。
皮膚障害:皮膚の疾患または状態、例えば、炎症性、増殖性の感覚、皮膚バリア機能障害疾患または状態など。皮膚障害の非限定的例として、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、ざ瘡、酒さ、魚鱗癬、紅皮症、脱毛症、しわ、乾燥皮膚/水バリア機能、必須脂肪酸欠損症、尋常性白斑、脂腺嚢胞、毛巣嚢胞、肥厚性瘢痕/ケロイド、脂漏性の角化上皮症、および光線性角化上皮症が挙げられる。
立体異性体:同じ分子式および結合原子配列を有するが、空間における原子の三次元の方向性のみが異なる異性体。互いにミラーイメージではない立体異性体は、「ジアステレオマー」と呼ばれ、互いに重ね合わせることができないミラーイメージのものは「エナンチオマー」と呼ばれる。化合物が不斉中心を有する場合、例えば、炭素原子が4つの異なる基と結合している場合、一対のエナンチオマーが可能である。エナンチオマーはその不斉中心の絶対配置を特徴とすることができ、CahnおよびPrelogのR-およびS-配列の法則により、または分子が偏光の平面を回転する方式により記載され、右旋性または左旋性(すなわち、それぞれ(+)または(-)異性体)と指定される。キラル化合物は、個々のエナンチオマーまたはその混合物のいずれかとして存在することができる。等しい割合のエナンチオマーを含有する混合物は「ラセミ混合物」と呼ばれる。E/Z異性体は二重結合の立体配置が異なる異性体である。E異性体(「反対」に対するドイツ語の単語エントゲーゲンに由来)は二重結合においてtrans-配置を有し、この配置の中で優先権の最も高い2つの基は二重結合の反対側にある。Z異性体(「一緒に」に対するドイツ語の単語ツザメンに由来)は二重結合においてcis-配置を有し、この配置の中で優先権の最も高い2つの基は二重結合の同じ側にある。
置換された、または置換:分子またはR基の水素原子の、1つまたは複数の追加のR基による置き換え。他に定義されない限り、「必要に応じて置換されている」または「必要に応じた置換基」という用語は、本明細書で使用される場合、1、2、3、4つまたはそれよりも多くの基、好ましくは1、2または3つ、より好ましくは1または2つの基でさらに置換されていてもいなくてもよい基を指す。置換基は、例えば、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6フルオロアルケニル、C2~6ジフルオロアルケニル、C2~6アルキニル、C3~8シクロアルキル、ヒドロキシル、オキソ、C1~6アルコキシ、アリールオキシ、C1~6アルコキシアリール、ハロ、C1~6アルキルハロ(例えば、CF3およびCHF2など)、C1~6アルコキシハロ(例えば、OCF3およびOCHF2など)、カルボキシル、エステル、シアノ、ニトロ、アミノ、置換アミノ、二置換アミノ、アシル、ケトン、アミド、アミノアシル、置換アミド、二置換アミド、チオール、アルキルチオ、チオキソ、スルフェート、スルホネート、スルフィニル、置換スルフィニル、スルホニル、置換スルホニル、スルホニルアミド、置換スルホンアミド、二置換スルホンアミド、アリール、arC1~6アルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールから選択することができ、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロシクリルおよびこれらを含有する基は、さらに必要に応じて置換されていてもよい。N-ヘテロ環の場合の必要に応じた置換基は、これらに限定されないがC1~6アルキルすなわちN-C1~3アルキル、より好ましくはメチル特にN-メチルもまた含むことができる。
互変異性体:プロトンおよび電子の位置のみが異なる有機化合物の構造異性体であり、水素原子の移動により相互変換可能である。互変異性体は普通、平衡状態で一緒に存在する。
治療有効量:対象または所与のパーセンテージの対象に有益な、または治療的作用を提供するのに十分な量。治療有効量の治療剤は、多くの異なる方式、例えば、疾患または状態(例えば、アテローム性動脈硬化症など)の減少についてアッセイすることにより決定することができる。治療有効量はまた、様々なin vitro、in vivoまたはin situアッセイを介して決定することができる。治療剤は、処置の過程の間、単回用量、またはいくつかの用量を、例えば毎日投与することができる。しかし、の有効量は、適用される原料、処置を受ける対象、処置を受ける状態の重症度および種類、ならびに投与方式に依存し得る。
処置する、または処置:疾患または状態に関して、これらのいずれかの用語は、(1)疾患または状態を予防すること、例えば、疾患または状態に曝露され得るまたはこれらに罹りやすい可能性があるが、未だ疾患または状態を経験しても、症状を示してもいない対象において、疾患または状態の臨床症候を発症しないようにすること、(2)疾患または状態を阻害すること、例えば、疾患もしくは状態またはその臨床症候の発症を止めること、あるいは(3)疾患または状態を軽減すること、例えば、疾患もしくは状態またはその臨床症候の退縮を引き起こすことを含む。
II.脂肪酸誘導体
脂肪酸誘導体の実施形態が開示される。本明細書で考察されたように、この開示された脂肪酸誘導体は、炎症、かゆみ、疼痛、自己免疫障害、およびアテローム性動脈硬化症を含めた複数の疾患および状態を処置するための有用性を有する。いくつかの実施形態では、開示された脂肪酸誘導体は、炎症、かゆみ、疼痛、自己免疫障害、および/またはアテローム性動脈硬化症を処置するために利用された以前の薬剤よりも、ヒト患者において、より高い活性、より低い毒性、より少ない副作用、より大きな安定性、より長い半減期、またはこれらの組合せを有する。有利なことに、開示された脂肪酸誘導体のある特定の実施形態は、血液脳障壁を横断することが可能である。
式Iの一部の実施形態では、XおよびZは、独立して、1~10、4~8、2~6、5~10、4~12、または10~16個の炭素の長さうちの1つから選択される。一部の実施形態では、Zは1~10個の炭素の長さであり、Xは1~10個の炭素の長さである。一部の実施形態では、Zは存在しない。式Iの一部の実施形態では、Xは4~8個の炭素の長さから選択され、Zは1~6個の炭素の長さから選択される。式Iの一部の実施形態では、Xは6個の炭素の長さであり、および/またはZは4個の炭素の長さである。式Iの一部の実施形態では、XおよびZは一緒になって、8~14個の炭素の長さである。式Iの一部の実施形態では、XおよびZは一緒になって、7~12個の炭素の長さである。式Iの一部の実施形態では、XおよびZは一緒になって、10個の炭素の長さである。いくつかの実施形態では、XおよびZは、独立して、アルキルまたはアルケニル、またはハロゲン化アルケニル、特にフルオロアルケニルまたはジフルオロアルケニルである。一部の実施形態では、XおよびZは、独立して、1つまたは複数のフルオロアルケンまたはジフルオロアルケン部分を含む。
カルボキシル基を含有する本明細書で開示されている化合物のいずれか(例えば、化合物1~330)は、カルボキシル基の代わりにメチルエステル基を用いて調製することができる。さらに、アルケニル基を含有する本明細書で開示されている化合物のいずれかは、任意の炭素-炭素二重結合の炭素上の水素の代わりに置換されたフッ化物を用いて調製することができる。
式(CIII)~(CX)は、化合物1~16の推定上の活性部位を包含し、したがって、化合物1~16の内在性標的の活性をモジュレートすると考えられる。式(CIII)~(CX)では、R5は水素、低級アルキル、またはハロゲン化物であり、各R7は、独立して、水素もしくはフッ化物であるか、または存在せず、隣接する炭素はアルキンを形成し、R10およびR11は、独立して脂肪族である。
式(I)~(CX)による化合物(例えば、化合物1~330など)は、本明細書に提供されている合成法(実施例を参照されたい)で必要に応じて補充した従来の方法により合成することができる。当業者であれば、化合物は、互変異性、立体配座異性、幾何異性、および/または光学異性の現象を示し得ることを認識している。例えば、ある特定の開示化合物は、1つまたは複数のキラル中心および/または二重結合を含むことができ、その結果、立体異性体、例えば、二重結合異性体(すなわち、幾何異性体)、エナンチオマー、ジアステレオマー、およびこれらの混合物、例えば、ラセミ混合物などとして存在することができる。別の例として、ある特定の開示化合物は、エノール形、ケト形、およびこれらの混合物を含めたいくつかの互変異性形態で存在することができる。明細書および特許請求の範囲内の様々な化合物名称、式および化合物の図は、可能な互変異性体、配座異性体、光学異性体、または幾何異性体の形態のうちの1つのみを表し得るので、開示化合物は、本明細書に記載されている化合物の任意の互変異性体、配座異性体、光学異性体、および/または幾何異性体形態、ならびにこれらの様々な異なる異性体形態の混合物を包含することを理解されたい。
追加の化合物実施形態
式CXIでは、Xは、10~25個の炭素の長さ(例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個の炭素の長さのいずれか1つ)の脂肪族であり、1つまたは複数のエポキシ、ヒドロキシル、またはカルボニル置換またはこれらの組合せを含み、R1は水素または低級アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、またはブチルなど)であり、各R2は、独立してメチルまたは水素である。式CXIの一部の実施形態では、Xは置換または非置換のアルキル、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のアルケニル、置換または非置換のヘテロアルケニル、置換または非置換のアルキニル、置換または非置換のヘテロアルキニル、置換または非置換のアリール、または置換もしくは非置換のヘテロアリールである。いくつかの実施形態では、Xはアルキルもしくはアルケニル、またはハロゲン化アルケニル、特にフルオロアルケニルまたはジフルオロアルケニルである。一部の実施形態では、Xは1つまたは複数のフルオロアルケンまたはジフルオロアルケン部分を含む。一部の実施形態では、Xはアルキルまたはアルケニルである。一部の実施形態では、Xは、1つまたは複数のビスアリル性重水素置換、例えば、Xはジュウテリオビスアリルアルケニルまたはジジュウテリオビスアリルアルケニルを含む。一部の実施形態では、各R2はメチルである。一部の実施形態では、各R2は水素である。一部の実施形態では、各R2はメチルであり、化合物はリノール酸の酸化誘導体である。一部の実施形態では、式CXIの化合物は、脂肪酸の酸化感受性部位またはさらなる変換により酸素感受性となる部位、例えば、ビス-アリル性の位置において、水素の1つまたは複数の重水素置換を含む。
III.医薬組成物
本開示はまた、本明細書で開示されているような少なくとも1つの脂肪酸誘導体、またはその立体異性体、互変異性体、もしくは薬学的に許容される塩を含む医薬組成物を含む。一部の実施形態では、脂肪酸誘導体は、構造1~330のいずれか1つによる化合物である。医薬組成物の一部の実施形態は、少なくとも1つの脂肪酸誘導体と、選択した分子に加えて、少なくとも1つのさらなる薬学的に許容される添加物、例えば、薬学的に許容される担体、増粘剤、希釈剤、緩衝剤、保存剤、界面活性剤とを含む。有用な薬学的に許容される担体および賦形剤は当技術分野で公知である。
1つまたは複数の脂肪酸誘導体を含む医薬組成物は、例えば、投与モードおよび/またはイメージする場所に応じて様々な方式で製剤化することができる。非経口製剤は、薬学的および生理学的に許容される流体ビヒクルである注射用流体、例えば、水、生理的食塩水、他の平衡塩類溶液、水性ブドウ糖、グリセロールなどを含むことができる。賦形剤は、例えば、非イオン性可溶化剤、例えば、Cremophor(登録商標)ポリエトキシ化洗剤など、またはタンパク質、例えば、ヒト血清アルブミンまたは血漿調製物などを含むことができる。所望する場合、投与される医薬組成物はまた、無毒性補助物質、例えば、湿潤化剤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤など、例えば、酢酸ナトリウムまたはモノラウリン酸ソルビタンなどを含有することもできる。
医薬組成物の形態は、選択された投与モードにより決定される。開示された医薬組成物の実施形態は、例えば、経口、口腔内頬側、全身性、経鼻、注射、経皮、直腸、経膣など、または吸入もしくは吹送法による投与に対して適切な形態を含めた、ほぼあらゆる投与モードに対して適切な形態をとることができる。一般的に、開示された医薬組成物の実施形態は、非経口的に(例えば、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内、または腹腔内注射により)、髄腔内、または経口的に投与されることになる。
有用な注射用調製物として、水性または油性のビヒクル中の活性化合物(複数可)の滅菌の懸濁液、溶液または乳剤が挙げられる。組成物はまた、配合剤、例えば、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などを含有することができる。注射用の製剤は、単位剤形、例えば、アンプルまたは複数回用量容器内に入れて提示することができ、添加した保存剤を含有することができる。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液または乳剤のような形態をとることができ、製剤化剤、例えば、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などを含有することができる。例えば、非経口投与は、ボーラス注射または連続注入により行うことができる。代わりに、脂肪酸誘導体は、使用前に、適切なビヒクル、例えば滅菌水を用いた再構成のための粉末形態であってもよい。
全身性製剤として、注射、例えば、皮下、静脈内、筋肉内、髄腔内または腹腔内注射による投与に対して設計されたもの、ならびに経皮的、経粘膜的、経口または肺投与に対して設計されたものが挙げられる。
経口製剤は液体(例えば、シロップ剤、液剤または懸濁剤)、または固体(例えば、粉末、錠剤、またはカプセル剤)であってよい。経口製剤は、内皮バリアを横断するための標的リガンドとカップリングすることができる。一部の脂肪酸誘導体製剤は、例えば、脂肪酸誘導体粉末を形成するために二糖でスプレー乾燥することにより、乾燥させることができる。薬学的に許容される賦形剤、例えば、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、マンニトール、微結晶性セルロースまたはリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)を用いて、従来の手段により調製した固体組成物。錠剤は、当技術分野で周知の方法により、例えば、糖、フィルムまたは腸溶コーティングを用いてコーティングすることができる。このような剤形を調製する実際の方法は公知であるか、または当業者には明らかである。
経口投与用の液体調製物は、例えば、エリキシル剤、液剤、シロップ剤または懸濁剤の形態をとることができる。このような液体調製物は、薬学的に許容される添加物、例えば、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ剤、セルロース誘導体または水素添加された食用脂肪);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、Cremophor(登録商標)洗剤、または分画された植物油);および保存剤(例えば、メチルまたはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)を用いた従来の手段により調製することができる。調製物はまた、適切であれば、緩衝塩、保存剤、香味剤、着色剤、および甘味剤を含有することもできる。経口投与のための調製物は、周知の通り、蛍光体の制御放出性が得られるように適切に製剤化することができる。
本明細書に記載されているような脂肪酸誘導体を含む医薬組成物のある特定の実施形態は、正確な用量の個々の投与に対して適切な単位剤形に製剤化することができる。医薬組成物は、所望する場合、脂肪酸誘導体を含有する1つまたは複数の単位剤形を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイスの中に提示されてもよい。パックは、例えば、金属またはプラスチックホイル、例えば、ブリスター包装などを含むことができる。パックまたはディスペンサーデバイスは、投与のための指示を付随することができる。投与される脂肪酸誘導体の量は、処置を受けている対象、標的(例えば、腫瘍のサイズ、場所、および特徴)、および投与方式に少なくとも部分的に依存することになり、当業者には公知である。これらの結合体の中で、投与される製剤は、処置を受けている対象に薬物の治療有効用量を提供するのに有効な量での本明細書で開示されている脂肪酸誘導体の量を含有することになる。
IV.方法
追加の実施形態では、開示された脂肪酸誘導体を使用して、対象において疾患または状態を処置する方法が提供される。本方法は、開示された脂肪酸誘導体を含む医薬組成物の治療有効量を、疾患もしくは状態を有する、または有する疑いがある対象に投与することを含む。本方法を適用することができる例示的な疾患または状態として、炎症、慢性のかゆみ、慢性疼痛、自己免疫障害、アテローム性動脈硬化症、皮膚障害、神経変性障害、精神疾患障害、および関節炎が挙げられる。追加の実施形態では、開示された脂肪酸誘導体は、皮膚に適用される任意の組成物、例えば、化粧品またはパーソナルケアの目的、または防虫剤のための組成物中で使用することができる。
医薬組成物は、任意の適切な経路により、例えば、局所的、非経口的、または経口的に投与することができる。対象は、哺乳動物例えば、ヒトまたはヒト以外の哺乳動物などであってよい。ある特定の実施例では、対象はヒトである。
脂肪酸誘導体は、単一のボーラス送達で、連続的な送達(例えば、連続的な静脈内の送達)を介して長期間にわたり、または繰り返される投与プロトコル(例えば、1時間ごとの、毎日、毎週、または隔週ごとに繰り返される投与プロトコル)により対象に投与することができる。脂肪酸誘導体の治療有効量は、疾患または状態に伴う1つまたは複数の症状または検出可能な状態を緩和するために臨床的に有意な結果をもたらす長期処置レジメンの範囲内で繰り返される用量として提供することができる。この状況において有効な用量の判定は通常、ヒト治験に引き続き行われる動物モデル実験に基づき、対象における標的とされる疾患症状または状態の発症または重症度を有意に減少させる投与プロトコルにより導かれる。この関連で適切なモデルとして、例えば、ネズミ、ラット、トリ、ブタ、ネコ、ヒト以外の霊長類、および他の一般に認められた、当技術分野で公知の動物モデル対象が挙げられる。代わりに、有効な用量は、in vitroモデルを使用して決定することもできる。このようなモデルを使用すれば、化合物の治療有効量(例えば、所望の免疫応答を誘発するまたは標的とされる疾患の1つまたは複数の症状を緩和するのに有効な量)を投与するのに適当な濃度および用量を決定するために必要とされるのは通常の計算および調節のみである。代替の実施形態では、脂肪酸誘導体の有効量または有効用量は、治療用または診断用のいずれかの目的に対して、本明細書で記載されているように、処置を受けている疾患または状態と相関する1つまたは複数の選択された生物学的活性を単に阻害するまたは増強することができる。
脂肪酸誘導体の実際の用量は、要素、例えば、対象の疾患の徴候および特定の状態(例えば、対象の年齢、大きさ、フィットネス、症状の範囲、感受性要素など)、時間および投与経路、並行的に投与される他の薬物または処置、ならびに対象において所望の活性または生物学的応答を導き出すための脂肪酸誘導体の特定の薬理などにより変動することになる。投与レジメンは、最適な治療応答が得られるように調整することができる。治療有効量はまた、臨床用語で言うところの治療上有益な効果が脂肪酸誘導体の任意の有毒性または有害な副作用を上回る量である。本開示の方法および製剤内での脂肪酸誘導体の治療有効量に対する非限定的な範囲は、0.01mg/kg体重~5g/kg体重、例えば、10mg/kg~5g/kg体重、または1g/kg~5g/kg体重などの範囲内であってよい。一部の実施形態では、脂肪酸誘導体は、0.1~100μMまたは1~5000μg/mLの血清脂肪酸誘導体濃度をもたらすのに有効な量で投与することができる。
用量は、標的部位(例えば、全身循環)で所望の濃度を維持するように主治医が変化させることができる。送達モード、例えば、経口、静脈内、または局所的送達に基づき、より高いまたはより低い濃度を選択することができる。用量はまた、投与される製剤の放出速度、例えば、肺内スプレーと粉末との対比、持続放出経口製剤と注射用微粒子または経皮送達製剤との対比などに基づき調整することができる。
一部の実施形態では、開示された脂肪酸誘導体は、対象においてかゆみ(例えば、慢性のかゆみなど)を処置するための有用性を有する。このような実施形態では、脂肪酸誘導体の治療有効量を投与することは、対象においてかゆみ(例えば、慢性のかゆみなど)に伴う少なくとも1つの徴候または症状を回復させる。例えば、脂肪酸誘導体は、炎症性皮膚、例えば、炎症性皮膚障害(例えばアトピー性皮膚炎、乾癬、接触性皮膚炎、じんま疹、薬物反応物、類天疱瘡、疱疹状皮膚炎)に罹患した皮膚など、寄生虫症または感染症(例えば疥癬、真菌症、水痘)、自己免疫障害、リンパ腫(例えば、皮膚T細胞リンパ腫))に伴うかゆみ(例えば、慢性のかゆみなど)、ならびに1次疾患に罹患していない、非炎症性の皮膚に作用するかゆみ(例えば、神経性のまたは精神的起源に関連するかゆみなど)、または2次的ひっかき病変に伴うかゆみ(最初のかゆみに応答して患者により引き起こされたひっかき病変であり、皮膚の擦りむき、かさぶた、丘疹、こぶおよび結節性痒疹などの慢性の2次的ひっかき病変を含む)を減少させるために使用することができる。一部の実施形態では、かゆみの処置のための、開示された脂肪酸誘導体の治療有効量の対象への投与は、処置しなかった場合と比較して、対象においてかゆみを、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはさらに100%減少させることができる。かゆみを処置するための、開示された脂肪酸誘導体の活性は、動物モデルにおいて、例えば、関連する脂肪酸誘導体と組み合わせたヒスタミン注射または対照に応答するマウスのかゆみ活動を評価することによって確認することができる(例えば、以下の実施例1を参照されたい)。
一部の実施形態では、開示された脂肪酸誘導体は、対象において疼痛(例えば、慢性疼痛など)を処置するための有用性を有する。このような実施形態では、脂肪酸誘導体の治療有効量を投与することは、対象において疼痛(例えば、慢性疼痛など)に伴う少なくとも1つの徴候または症状を回復させる。例えば、脂肪酸誘導体は、炎症に伴う疼痛(組織損傷により引き起こされる炎症、炎症性疼痛を含む)、または神経系への損傷による疼痛、例えば、脱髄など(神経障害性疼痛)、術後痛、組織損傷に伴う疼痛、感染症に由来する疼痛(帯状疱疹)、神経障害性状態に由来する疼痛、および骨格筋肉の状態に由来する疼痛を減少させるために使用することができる。一部の実施形態では、疼痛の処置のための、開示された脂肪酸誘導体の治療有効量の対象への投与は、処置しなかった場合と比較して、対象において疼痛を、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはさらに100%減少させることができる。疼痛を処置するための、開示された脂肪酸誘導体の活性は、動物モデルにおいて、例えば、関連する脂肪酸誘導体と組み合わせたPGE2注射または対照に応答するマウスの疼痛反応を評価することによって確認することができる(例えば、以下の実施例1を参照されたい)。
一部の実施形態では、開示された脂肪酸誘導体は、対象においてアテローム性動脈硬化症を処置するための有用性を有する。このような実施形態では、脂肪酸誘導体の治療有効量を投与することは、対象において、アテローム性動脈硬化症に伴う少なくとも1つの徴候または症状を回復させる。例えば、脂肪酸誘導体の治療有効量の対象への投与は、アテローム性動脈硬化症の進行を逆転または減速させるために、例えば、動脈硬化性病変および/または疾患の機能的徴候、例えば、徴候(例えば、末梢性の毛細血管再充満など)、症状(例えば、胸痛および間欠性跛行など)、または検査による証拠(例えば、EKG、血管造影、または他の画像化技術により得たものなど)の存在により測定される、心血管機能の改善などのために使用することができる。一部の実施形態では、脂肪酸誘導体の治療有効量の投与は、対象においてコレステロール流動を増加させる。一部の実施形態では、脂肪酸誘導体の治療有効量の投与は、対象において、例えば、LDLコレステロールのベースラインレベルと比較して、LDLコレステロールのレベルを減少させる。一部の実施形態では、アテローム性動脈硬化症の処置のための、開示された脂肪酸誘導体の治療有効量の対象への投与は、処置しなかった場合と比較して、対象において、アテローム性動脈硬化症を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはさらに100%減少させることができる。1つの実施例では、アテローム性動脈硬化症を処置するための、開示された脂肪酸誘導体の活性は、関連する対照と比較して、脂肪酸誘導体と組み合わせたApoA1により誘発されたコレステロール流動の増加を検出することによって示すことができる(例えば、以下の実施例14を参照されたい)。
一部の実施形態では、開示された脂肪酸誘導体は、対象において自己免疫障害を処置するための有用性を有する。このような実施形態では、脂肪酸誘導体の治療有効量を投与することは、対象において自己免疫障害に伴う少なくとも1つの徴候または症状を回復させる。例えば、脂肪酸誘導体の治療有効量の対象への投与は、中でも、関節リウマチ、橋本甲状腺炎、悪性貧血、アジソン病、I型糖尿病、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、皮膚筋炎、エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、ライター症候群、またはグレーヴス病の症状を処置する、予防する、および/または回復させるために使用することができる。一部の実施形態では、自己免疫障害の処置のための、開示された脂肪酸誘導体の治療有効量の対象への投与は、処置しなかった場合と比較して、対象において、自己免疫障害を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはさらに100%減少させることができる。
一部の実施形態では、開示された脂肪酸誘導体は、対象において関節炎(例えば、変形性関節症など)を処置するための有用性を有する。このような実施形態では、脂肪酸誘導体の治療有効量を投与することは、対象において、関節炎に伴う少なくとも1つの徴候または症状を回復させ、例えば、臀部、膝、下部腰椎および頸椎、指の近位および遠位指節間関節、第1手根中手関節、および/または足の第1足根中足関節における疼痛および/または膨潤を減少させる。例えば、脂肪酸誘導体の治療有効量の対象への投与は、関節炎の症状を処置する、予防する、および/または回復させるために使用することができる。一部の実施形態では、関節炎の処置のための、開示された脂肪酸誘導体の治療有効量の対象への投与は、処置しなかった場合と比較して、対象において、関節炎を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはさらに100%減少させることができる。
一部の実施形態では、開示された脂肪酸誘導体は、対象において神経変性障害を処置するための有用性を有する。このような実施形態では、脂肪酸誘導体の治療有効量を投与することは、対象において、神経変性障害に伴う少なくとも1つの徴候または症状を回復させる。例えば、脂肪酸誘導体の治療有効量の対象への投与は、アルツハイマー病、血管性認知症、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、または筋萎縮性側索硬化症(ALS)の症状を処置する、予防する、および/または回復させるために使用することができる。一部の実施形態では、神経変性障害の処置のための、開示された脂肪酸誘導体の治療有効量の対象への投与は、処置しなかった場合と比較して、対象において、神経変性障害を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはさらに100%減少させることができる。
一部の実施形態では、開示された脂肪酸誘導体は、対象において精神疾患障害を処置するための有用性を有する。このような実施形態では、脂肪酸誘導体の治療有効量を投与することは、対象において精神疾患障害に伴う少なくとも1つの徴候または症状を回復させる。例えば、脂肪酸誘導体の治療有効量の対象への投与は、うつ病、不安、および/または精神病の症状を処置する、予防する、および/または回復させるために使用することができる。一部の実施形態では、精神疾患障害の処置のための、開示された脂肪酸誘導体の治療有効量の対象への投与は、処置しなかった場合と比較して、対象において、神経変性障害を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはさらに100%減少させることができる。
一部の実施形態では、開示された脂肪酸誘導体は、対象において皮膚障害を処置するための有用性を有する。このような実施形態では、脂肪酸誘導体の治療有効量を投与することは、対象において皮膚障害に伴う少なくとも1つの徴候または症状を回復させる。例えば、脂肪酸誘導体の治療有効量の対象への投与は、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、ざ瘡、酒さ、魚鱗癬、紅皮症、脱毛症、しわ、乾燥皮膚/水バリア機能、必須脂肪酸欠損症、尋常性白斑、脂腺嚢胞、毛巣嚢胞、肥厚性瘢痕/ケロイド、脂漏性の角化上皮症、および光線性角化上皮症の症状を処置する、予防する、および/または回復させるために使用することができる。一部の実施形態では、脂肪酸誘導体の治療有効量の対象への投与は、水バリア機能障害または表皮性水分蒸散の増加を伴う状態、例えば、魚鱗癬、湿疹/アトピー性皮膚炎、乾癬、および/または乾燥皮膚などの症状を処置する、予防する、および/または回復させるために使用することができる。例えば、リノール酸の酸化誘導体であり、2-メチルまたは2,2-ジメチルを有し、リノール酸の酸化誘導体(例えば、化合物31~36、38~43、または66~72のいずれか1つなど)である開示化合物を含む医薬組成物は、水バリア機能障害または表皮性水分蒸散の増加を伴う状態を処置する、予防する、および/または回復させるために、対象に局所的に適用することができる。一部の実施形態では、皮膚障害の処置のための、開示された脂肪酸誘導体の治療有効量の対象への投与は、処置しなかった場合と比較して、対象において神経変性障害を少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、またはさらに100%減少させることができる。
追加の実施形態では、例えば、対象、例えば、他の健康な対象、あるいは疾患もしくは状態を有する疑いのある、またはリスクがある対象などが、疾患もしくは状態を有する、または将来、疾患もしくは状態を恐らく発症する可能性を判定するために、対象において疾患または状態を診断するための方法が提供される。本方法は、対応する対照と比較して(例えば、疾患もしくは状態を有さない対象、または疾患もしくは状態を発症するリスクのない対象における化合物のレベルなど)、化合物のレベルの変化(例えば、レベルの上昇、例えば少なくとも2倍の増加など)が生物学的試料において検出された場合、対象からの生物学的試料中の、化合物1~16のいずれか1つのレベルを測定すること、および疾患もしくは状態を有する、または疾患もしくは状態を発症するリスクがある対象であるとこの対象を診断することを含む。いくつかの実施形態では、疾患または状態は、炎症、慢性のかゆみ、慢性疼痛、自己免疫障害、皮膚障害、およびアテローム性動脈硬化症の1つから選択される。一部の実施形態では、対象からの生物学的試料中の、化合物1~16のいずれか1つの測定されたレベルは、疾患または状態を予防するまたは対処するための標的とする治療介入またはアドバイスを導くために使用することができる。例えば、化合物1~16のいずれか1つにおける特定された増加を有する対象には、化合物のレベルを減少させる食事による治療介入、例えば、多価不飽和脂肪酸を減らした食事を摂取させることができる。
一部の実施形態では、例えば、対象、例えば、他の健康な対象、あるいは炎症障害を有する疑いのある、またはリスクがある対象などが、炎症障害を有するまたは将来炎症障害を恐らく発症する可能性を判定するために、炎症を評価するための方法が本明細書で提供される。本方法は、対応する対照と比較して(例えば、健康な対象における化合物の対応するレベル)、化合物のレベルの上昇(例えば、レベルの上昇、例えば少なくとも2倍の増加など)が生物学的試料において検出された場合、対象からの生物学的試料中の、化合物1~16のいずれか1つのレベルを測定すること、および炎症障害を有する、または炎症障害のリスクがある対象であるとこの対象を診断することを含む。
一部の実施形態では、例えば、対象、例えば、他の健康な対象、あるいは慢性のかゆみを有する疑いのある、またはリスクがある対象などが、慢性のかゆみを有する、または将来慢性のかゆみを恐らく発症する可能性を判定するために、慢性のかゆみを評価するための方法が本明細書で提供される。本方法は、対応する対照と比較して(例えば、健康な対象における化合物の対応するレベル)、化合物のレベルの上昇(例えば、レベルの上昇、例えば少なくとも2倍の増加など)が生物学的試料において検出された場合、対象からの生物学的試料中の、化合物1~16のいずれか1つのレベルを測定すること、および慢性のかゆみを有するまたは慢性のかゆみのリスクがある対象であるとこの対象を診断することを含む。
一部の実施形態では、例えば、対象、例えば、他の健康な対象、あるいは慢性疼痛を有する疑いのある、またはリスクがある対象などが、慢性疼痛を有する、または将来、慢性疼痛を恐らく発症する可能性を判定するために、慢性疼痛を評価するための方法が本明細書で提供される。本方法は、対応する対照と比較して(例えば、健康な対象における化合物の対応するレベル)、化合物のレベルの上昇(例えば、レベルの上昇、例えば少なくとも2倍の増加など)が生物学的試料において検出された場合、対象からの生物学的試料中の、化合物1~16のいずれか1つのレベルを測定すること、および慢性疼痛を有する、または慢性疼痛のリスクがある対象であるとこの対象を診断することを含む。
一部の実施形態では、例えば、対象、例えば、他の健康な対象、あるいは自己免疫障害を有する疑いのある、またはリスクがある対象などが、自己免疫障害を有する、または将来、自己免疫障害を恐らく発症する可能性を判定するために、自己免疫を評価するための方法が本明細書で提供される。本方法は、対応する対照と比較して(例えば、健康な対象における化合物の対応するレベル)、化合物のレベルの上昇(例えば、レベルの上昇、例えば少なくとも2倍の増加など)が生物学的試料において検出された場合、対象からの生物学的試料中の、化合物1~16のいずれか1つのレベルを測定すること、および自己免疫障害を有するまたは自己免疫障害のリスクがある対象であるとこの対象を診断することを含む。
一部の実施形態では、例えば、対象、例えば、他の健康な対象、あるいはアテローム性動脈硬化症を有する疑いのある、またはリスクがある対象などが、アテローム性動脈硬化症を有する、または将来、アテローム性動脈硬化症を恐らく発症する可能性を判定するために、アテローム性動脈硬化症を評価するための方法が本明細書で提供される。本方法は、対応する対照と比較して(例えば、健康な対象における化合物の対応するレベル)、化合物のレベルの上昇(例えば、レベルの上昇、例えば少なくとも2倍の増加など)が生物学的試料において検出された場合、対象からの生物学的試料中の、化合物1~16のいずれか1つのレベルを測定すること、およびアテローム性動脈硬化症を有するまたはアテローム性動脈硬化症のリスクがある対象であるとこの対象を診断することを含む。一部の実施例では、対象は、コレステロールまたはトリ-グリセリドレベルの上昇、C反応性タンパク質レベルの上昇、糖尿病、または高血圧を有し得る。よって、本明細書で開示されている方法は、疾患の以前からの臨床的疑いを確定するために使用することができる。
一部の実施例では、生物学的試料は評価のために対象から得たものである。生物学的試料は、任意の関連する生物学的試料、例えば、これらに限定されないが、対象から得た血清、血液、血漿、尿、精製された細胞(例えば、血液細胞、例えば、白血球、B細胞、T細胞、または単核細胞など)、唾液、生検または組織(例えば、皮膚など)試料、例えば、血管、脂肪細胞、心臓組織、神経組織を含めた試料であってよく、これらは疾患または状態(例えば、炎症、慢性のかゆみ、慢性疼痛、自己免疫障害、およびアテローム性動脈硬化症など)の対象のリスクを予測するために使用される。
V.実施例
以下の実施例は、ある特定の実施形態の特定の特徴を例示するために提供されているが、特許請求の範囲は、これらの例示された特徴に限定されるべきではない。
(実施例1)
疼痛およびかゆみの新規伝達物質を発見するために使用される系統的手法
慢性疼痛およびかゆみは、個人的苦痛、能力障害および社会的出費の一般的な源である。現在の処置は、多くの場合、部分的または一時的な軽減を提供するのみで、実質的な副作用を有する。疼痛およびかゆみの根底にある新規内在性伝達物質および機序の発見が、標的とされる、有効な、より安全な治療介入の開発を促進するために必要とされる。
最も大きな感覚性器官として、皮膚は微細環境を感知することができる皮膚の神経終末により豊富に神経支配されている。リノール酸(LA、18:2n-6)は、これが皮膚内で最も豊富な多価不飽和脂肪酸であることは間違いないが、経表皮水分蒸散を予防する外側のろう状表皮性バリアを形成するために食事において少量(エネルギーの約0.5%)が必要とされるため、「必須脂肪酸」として公知である。かゆみおよび疼痛は皮膚の炎症性状態の一般的な所見であり、LAは生理活性の脂質伝達物質への変換のための内在性基質であるため、LA誘導される伝達物質は皮膚のかゆみおよび疼痛をモジュレートするために独特に配置され得る。
食事におけるLAの増加は、皮膚を含む多くの組織において用量依存性方式で周知のLA誘導体を増加させることがラットにおいて以前に示された。ヒトでは、低LAの食事の治療介入は頭痛を低減し、疼痛緩和と相関する循環LAを減少させ、これは、LA誘導性脂質伝達物質が、感覚性シグナル伝達の一因であり得ることを示唆している。しかし、感覚を媒介またはモジュレートしているLAの特定の誘導体およびこれらの生合成およびシグナル伝達に関与している分子経路は、完全に理解されていない。
皮膚に豊富に含まれる新規のLA誘導性オータコイドが疼痛およびかゆみの起源においてある役割を果たし得ることが仮定された。ラットおよびヒトにおいて、系統立てた、並進的アプローチを以下に適用することによって、この仮説を調査した:
(1)組織特異的な前駆体の存在量および生合成遺伝子の遺伝子発現プロファイルに基づく新規の脂質伝達物質を予測すること;
(2)全化学合成により、予測された化合物を合成すること;
(3)本物の標準物質および液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC-MS/MS)を使用して、ラットおよびヒト組織においてこれらの伝達物質を特定および定量化すること;
(4)これらの化合物のレベルが食事および慢性の炎症性状態により変更できるか決定すること、ならびに
(5)盲検されたex vivo感覚ニューロン培養物およびin vivo挙動試験を使用して、これら新規脂質の疼痛および掻痒性活性を調査すること。生合成遺伝子およびこれらの発現を特定するためのこのアプローチおよび文献の系統的見直しにより、炎症性皮膚障害、掻痒症および侵害受容を調節することができる新規LA誘導性脂質伝達物質を特定した。
結果
前駆体の存在量および生合成の遺伝子発現プロファイルに基づき伝達物質を予測する
新規脂質伝達物質の予測を導くために、組織の前駆体脂肪酸組成物および遺伝子発現プロファイルを使用した。LAは、ラットの皮膚および坐骨神経において最も豊富な多価不飽和脂肪酸であることが観察され、それぞれ全脂肪酸の27.4%および24.6%をしめた。知覚神経節および脊髄には、LAは、極めて豊富には存在しなかった。
1,4-cis、cis-ペンタジエン系を含有する多価不飽和脂肪酸の過酸化が可能な酵素をコードするALOX12BおよびALOX15B遺伝子は、ヒト皮膚において十分発現された。ALOX15Bではなく、ALOX12Bはラット皮膚においても十分発現した。ALOX15Bはヒト脛骨神経および後根神経節(DRG)にかなり十分に発現したが、侵害受容性回路を含むラット神経組織(すなわち、坐骨神経、DRGおよび脊髄後角)ではあまり発現しない、または存在しなかった。特異的なヒドロキシ-およびケト-エポキシド誘導体を形成する脂肪酸ヒドロペルオキシドの異性化が可能な酵素をコードするALOXE3遺伝子もまた、ラットおよびヒト皮膚において十分に発現するが、末梢神経、知覚神経節および背索ではあまり発現しない、または存在しなかった。脂肪酸ヒドロペルオキシドの異性化が可能な別の酵素をコードするCYP2S1遺伝子は、ラット皮膚および特に坐骨神経で十分に発現したが、ヒト痛覚回路組織ではあまり発現しない、または存在しなかった。これらの遺伝子発現および前駆体脂肪酸データは一緒になって、新規脂質伝達物質を予測するためのテンプレートを形成する。
ヒドロキシ-エポキシ-およびケト-エポキシ-オクタデセノエートの組織特異的な分布
高レベルのLAおよび上記に述べた生合成酵素をコードしている遺伝子の中程度から高い発現に基づき、2つの新規11-ヒドロキシ-trans-エポキシ-オクタデセノエート:
11-ヒドロキシ(H)-12,13-trans-エポキシ-(E)-オクタデセノエート(11H-12,13E-LA)
11-ヒドロキシ(H)-9,10-trans-エポキシ-(E)-オクタデセノエート(11H-9,10E-LA)
および2つの新規の11-ケト-trans-エポキシ-オクタデセノエート:
11-ケト(K)-12,13-trans-エポキシ-(E)-オクタデセノエート(11K-12,13E-LA)
11-ケト(K)-9,10-trans-エポキシ-(E)-オクタデセノエート(11K-9,10E-LA)
および以前に特定した4つの9-または13-ヒドロキシ-またはケト-trans-エポキシ-オクタデセノエート:
9-ヒドロキシ(H)-12,13-trans-エポキシ-(E)-オクタデセノエート(9H-12,13E-LA)
13-ヒドロキシ(H)-9,10-trans-エポキシ-(E)-オクタデセノエート(13H-9,10E-LA)
9-ケト(K)-12,13-trans-エポキシ-(E)-オクタデセノエート(9K-12,13E-LA)
13-ケト(K)-9,10-trans-エポキシ-(E)-オクタデセノエート(13K-9,10E-LA)
が、ヒトおよびラット皮膚において豊富であることが予測された。これらの化合物は以下の通りである:
本物の標準物質(材料および方法ならびに以下の実施例を参照されたい)として使用するためのこれら8つのLA誘導体の全化学合成後、超高速液体クロマトグラフィー直列質量分析法(UPLC-MS/MS)を使用して、ラットおよびヒト組織内のこれら伝達物質を定量した。8つの伝達物質のうちの5つは、ラット皮膚に存在することが判明したが、いずれもラット後角には検出されず、これは予測的モデルと一致する組織特異性を示している。すべての8つの伝達物質をヒト皮膚内で検出された。これら8つの伝達物質のうちの7つは、特徴的な保持時間において本物の標準物質およびヒト皮膚抽出物のイオンスペクトルをマッチングさせることにより確認した。
炎症性乾癬のヒト皮膚における遊離伝達物質レベルの上昇
乾癬病変は、病変のない乾癬皮膚と比較して、リパーゼ-媒介性放出(PLA2G2A、PLA2G2F)、酵素的過酸化(ALOX12B)、およびヒドロペルオキシド異性化(CYP2S1)に対する遺伝子コーディングのより高い発現を示した。よって、エステル化した、予め形成された脂質の局所的生合成と放出の両方の増加は、潜在的に、乾癬病変において観察されたヒドロキシ-エポキシ-およびケト-エポキシ-オクタデセノエートの濃度増加に寄与している可能性がある。
ヒトの乾癬の皮膚病変および非乾癬の対照皮膚において、これらの伝達物質を、非エステル化(遊離の)と全部の(遊離ものとエステル化の合計)脂質画分の両方において測定した。全脂質画分において、乾癬の皮膚病変と対照皮膚との間に有意な差異はなかった。しかし、伝達物質のうちの6つ(11H-12,13E-LA、11H-9,10E-LA、11K-9,10E-LA、9H-12,13E-LA、9K-12,13E-LAおよび13H-9,10E-LA)は、対照皮膚と比較して、乾癬の皮膚病変中で遊離酸(生理活性プール)として著しく上昇していた。遊離の11H-12,13E-LAおよび9K-12,13E-LAの濃度は、対照皮膚と比較して、乾癬の病変において、それぞれ>6倍、および>30倍高かった。最も高い濃度は、かゆみを報告した乾癬患者の病変で観察された(図1)。
各伝達物質の生化学的状態へのさらなる洞察を得るために、遊離酸濃度を全伝達物質濃度で割り、生物学的に利用可能な遊離酸として存在する各伝達物質のパーセントを決定した。遊離酸としてのパーセントは、伝達物質により著しく異なった。対照ヒト皮膚では、遊離酸としてのパーセントは、13H-9,10E-LAに対して0.05%、11H-12,13E-LAに対して44.4%の範囲であった。乾癬の皮膚病変では、遊離酸としてのパーセントは11H-12,13E-LA、11K-12,13E-LA;9K-12,13E-LA;および13H-9,10E-LAに対して、対照皮膚より有意に高かった。これらの知見は、慢性の表皮性炎症において、エステル化した脂質からの酵素合成および/または遊離酸の放出の増加がみられるという仮説を支持している。
血清における伝達物質濃度は、皮膚または乾癬の状態と相関しなかった
循環血液から得た測定値が皮膚炎症の代用マーカーを提供することができるかどうか決定するため、次に、乾癬患者および非乾癬対照からの血清中のこれらの伝達物質を定量化した。皮膚とは異なり、これら8つの伝達物質の血清中濃度は疾患状態により異なることはなかった。
新規LA誘導体は、部位選択的方式でラット感覚ニューロンを刺激する
これらの伝達物質がDRGニューロンを増感させるかどうか決定するため、PGE2がポジティブコントロールとしての役目を果たす、成体ラットのDRG ex vivoカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)放出アッセイで各伝達物質を試験した。濃度1μM、中性pHで、PGE2も、他の試験した化合物のいずれもCGRP放出を直接刺激することはなかった。しかし、11H-12,13E-LAおよび11H-9,10E-LAは、低pH誘発性とカプサイシン誘発性CGRP放出の両方を有意に増大した。13H-9,10E-LAは低pH誘発性CGRP放出を有意に増大したが、カプサイシン誘発性放出に対しては作用がなかった。9H-12,13E-LAも、試験したケト-エポキシ-オクタデセノエートのいずれも、低pH誘発性またはカプサイシン誘発性CGRP放出を増大させなかった(図2A~2C)。これらの観察は、オクタデセノエート誘発性増感作用は部位選択的であることを示し、炭素11のヒドロキシル基と隣接するエポキシド基の両方を含有する化合物に対して最も強力な作用が観察された。これら2つの化合物は3-ヒドロキシ-Z-ペンテニル-E-エポキシド部分を共有し、この下位構造は侵害受容器増感作用を媒介している可能なファーマコフォアとして特定される(図2D)。
新規伝達物質の皮内注射は、げっ歯類において疼痛およびかゆみに関連する挙動を引き起こす
次に、単離した感覚ニューロンからの誘発性CGRP放出の増大により測定されたような、増感作用を生じた伝達物質の皮内注射に対する挙動応答をアッセイした。疼痛反応について試験する第1の伝達物質として11H-12,13E-LAを選択した。これは、11H-12,13E-LAが炎症性のヒト皮膚において遊離酸として豊富に存在し、ラット感覚ニューロンにおいてカプサイシンおよびpH刺激性CGRP放出を増大したからである。
これらの実験のため、LA誘導体の作用をビヒクルおよび従来の炎症性伝達物質、PGE2(ポジティブコントロールとして機能する)と比較した。注射後、C線維の引き込み潜伏時間が、11H-12,13E-LAおよびPGE2に対して、それぞれ28%(p=0.03)および46%(p=0.001)低減したことが観察され、これは侵害受容性過敏症を示している(図3)。11H-12,13E-LAではなく、PGE2の皮内注射はまた、Aδ線維を励起させるように調整したレーザーによる刺激に続いて、引き込み応答の割合を有意に増強した。
次に、これら8つの伝達物質のかゆみに対する作用を調査するため、マウスモデルを利用して、首筋への皮内注射後、最初の30分間にわたりかゆみに関連したひっかき発作を定量した。1群当たりn=3を用いた全8つの伝達物質の予備検査において、2つの伝達物質、9K-12,13E-LAおよび13K-9,10E-LAが、ビヒクルと比較して、ひっかき発作を増加させるようにみえた。1群当たりn=6~8というより大きな試料サイズを用いて、9K-12,13E-LAがかゆみに関連したひっかき行動を誘発させたが、13K-9,10E-LAは誘発させなかったことが観察された(p=0.001)(図4A)。合わせると、9K-12,13E-LAプラス13K-9,10E-LAもまた、ビヒクルと比較してひっかき行動を有意に増加させたが(p=0.002)、9K-12,13E-LA単独で同程度が観察された。9K-12,13E-LAにより誘発されたひっかき応答は、ヒスタミンに対して観察されたものより遅く開始し、よりゆっくりと減少した。
一緒にすると、これらの結果は、9K-12,13E-LAはかゆみを伴う乾癬の病変皮膚において独占的に上昇したことを示し(図2B)、これらの挙動知見は、9K-12,13E-LAが新規のかゆみ伝達物質に相当し得ることを示唆している。
新規伝達物質は、食事性LAにより調節され、血漿レベルの低減は臨床的疼痛減少と相関する
次に、食事におけるこれらの前駆体LAの量を低下させることにより、これらの伝達物質を低減することができるかどうか決定するために、日常的な激しい慢性頭痛を有する患者において、12週間のLA低下食事を試験した、終了した無作為抽出ヒト治験からの血漿試料を使用した。これら8つの伝達物質のうちの5つは血漿中に存在したことが観察された(図5)。2つの伝達物質、11H-12,13E-LAおよび13H-9,10E-LAは、LA低下食事性治療介入により有意に低減した。4つのヒドロキシ-エポキシド-オクタデセノエートの合計は41%減少した(p<0.001)(図5A)。さらに、これらの伝達物質のうちの1つ(11H-12,13E-LA)における食事誘発性減少は、1日当たりの頭痛時間および1カ月当たりの頭痛日の低減と密接に相関したが、その他は相関しなかったことが観察された(図5Bおよび5C)。11H-12,13E-LAにおける各標準偏差低減は、1日当たりの頭痛時間および1カ月当たりの頭痛日のそれぞれ25%および11%の低減を伴った(両方ともp<0.001)。11H-12,13E-LAにおける減少はまた、全体的頭痛インパクトおよび身体機能の改善と相関する傾向にあり(図5D)、しかし心理的苦痛には関係していなかった。
考察
本実施例は、げっ歯類およびヒトにおいて、疼痛およびかゆみの内在性脂質伝達物質新規ファミリーを発見および特徴付ける学際的な、並進的アプローチを提供する。予測されたように、有意な濃度の11H-12,13E-LA、11H-9,10E-LA、11K-12,13E-LA、および11K-9,10E-LAがヒト皮膚において測定された。これは、任意の種におけるこれら4つの化合物のいずれかの最初の実証であると考えられている。とりわけ、11H-12,13E-LAは、炎症性の乾癬のヒト皮膚において上昇し、ex vivoCGRP放出アッセイで、主要な求心性神経後根神経節ニューロンを増感させ、ラットにおいてC線維媒介性疼痛に関連した過敏症を誘発させた。さらに、血漿11H-12,13E-LAは、ヒトにおいて頭痛頻度およびインパクトと相関し、食事においてその食事性前駆体(LA)の量を低下させることにより減少した。全体として、これらの知見は、11H-12,13E-LAが、食事および炎症によりモジュレートされる疼痛の伝達物質であり得ることを示唆している。11H-9,10E-LAは、3-ヒドロキシ-Z-ペンテニル-E-エポキシド部分を11H-12,13E-LAと共有するが、これもまた炎症性ヒト皮膚において上昇し、ラット感覚ニューロンを増感させ、これもまた炎症に関連する主要な求心性神経増感作用の一因となり得ることを示唆している。
新規の内在性LA-誘導体を特定することに加えて、知見は、以前に特定したヒドロキシ-およびケト-エポキシ-オクタデセノエートのヒト皮膚における存在を確定し、これらの潜在的なバイオアクションへの新規の洞察を提供する。12-R-リポキシゲナーゼ(ALOX12B)、15-リポキシゲナーゼ-2(ALOX15B)、およびヒドロペルオキシド-イソメラーゼ-e-リポキシゲナーゼ(lipoxygnease)-3(ALOXE3)に対する遺伝子コーディングは皮膚内で高発現であった。2つの特定の酵素、12-R-リポキシゲナーゼおよびe-リポキシゲナーゼ-3の連続した作用は、アシル-セラミド中でエステル化したLAを酸化させて、13H-9,10E-LA(13-(R)ヒドロキシ-9(R),10(R)-trans-エポキシ-(11E)-オクタデセノエートの特定の立体異性体および/またはそのトリヒドロキシLA誘導体を形成することが以前示唆され、これがひいては、角層細胞脂質エンベロープの形成において決定的役割を果たすことが提案されている。機能的水バリアを形成するためにこれらの特定のLA誘導体に対する必要性が提案されたことにより、皮膚乾燥、肥厚および落屑を含めた「必須脂肪酸欠損症」の臨床所見を予防するために少量の食事性LAが必要とされるという機序を説明することができる。過去の知見と一致して、げっ歯類およびヒトの皮膚において、比較的高濃度の13H-9-E-LAがそこで観察された。ヒト皮膚では、13H-9-E-LAはエステル化脂質プール中にほとんど独占的に(平均>99.5%)発見され、これは、表皮性角層細胞脂質エンベロープ形成におけるその提案された役割と一致する。加えて、遊離13H-9-E-LAの濃度は、対照ヒト皮膚と比較して、乾癬の皮膚病変において9倍高いことがここで初めて報告されている。遊離13H-9-E-LAが、低pH環境において感覚ニューロンCGRP放出を増大させたという発見と一緒に、乾癬の皮膚中のより高レベルのこの遊離酸は、潜在的に、皮膚の炎症に付随する過敏症の一因となり得ることを示唆している。
新規内在性起痒物質としての9-ケト-12,13-エポキシ-オクタデセノエートの特定
本発明の実施例の別の発見は、慢性かゆみを報告した乾癬患者の炎症性のヒト皮膚において上昇したが、かゆみ感覚を特徴としない病変では上昇しなかった内在性起痒物質としての9K-12,13E-LAの特定である。9K-12,13E-LAは、ヒト血漿中に以前に検出され、副腎ステロイド産生を刺激することが報告されたが、これは、9K-12,13E-LAが、生物活性を有することを示している。13H-9,10E-LAと同じ様に、対照ヒト皮膚において、9K-12,13E-LAの大部分(>99%)はエステル化脂質画分中に発見されたことが観察された。対照皮膚と比較して、乾癬の皮膚病変の遊離脂肪酸脂質プールにおけるこの伝達物質の顕著に高い(>30倍)濃度は、9K-12,13E-LAが皮膚炎症におけるシグナル伝達分子として作用することができることを示唆している。これと一致して、遊離9K-12,13E-LAのマウス真皮への注射は、かゆみに関連したひっかき行動を引き起こしたことが観察された。9K-12,13E-LAは、げっ歯類かゆみモデルにおいてひっかき行動を誘発することが報告された唯一の第4の脂質伝達物質であると考えられている。独占的に遊離酸として存在すると考えられている、他の公知の脂質起痒物質(ロイコトリエンB4、トロンボキサンA2、ヒドロペルオキシ-エイコサテトラエン酸)とは異なり、9K-12,13E-LAの大部分は、エステル化した皮膚脂質中に予め形成されて貯蔵されている。エステル化した脂質中のこの蓄積は、予め形成された9K-12,13E-LAを、リパーゼにより、掻痒症を直接的に刺激するよう放出させて、新規の生合成に対する必要性を未然になくすことができることを示唆している。この関連で、PLAG2AおよびPLAG2Fの高い発現が、関連するリパーゼ機能を機能させることができるラット皮膚、および特に炎症性ヒト皮膚において検出された。
ヒドロキシ-エポキシ-オクタデセノエートおよび慢性頭痛の食事による調節
ラットにおいて、食事性LAを制御された変数として増加させることにより、皮膚を含めた、特発性疼痛症候群に関連する組織中のLAの存在量およびその周知の酸化LA誘導体(例えばヒドロキシ-オクタデカジエノエート(HODE)、エポキシ-オクタデセノエート、ジヒドロキシ-オクタデセノエート)を顕著に増加させたことが以前に実証された。さらに、激しい慢性頭痛を有する患者において、LAを低下させた食事性治療介入は、頭痛を低減させ、循環LA中の低減は臨床的疼痛減少を伴い、LAまたはそのオータコイド誘導体が潜在的にヒトにおける疼痛の一因となる得ることを示唆している。本発明の研究では、循環11H-12,13E-LAにおける食事誘発性減少が臨床的疼痛の減少と密接に相関するという発見は、LAの高摂取が、部分的にヒドロキシ-およびケト-エポキシ-オクタデセノエートの組織レベルを増加させることにより、慢性疼痛またはかゆみを発症する生化学的感受性に貢献し得る可能性を高める。
現在の報告は、疼痛およびかゆみの脂質伝達物質の成長する分野に新規伝達物質を紹介するものである。本分野における研究の大部分は、より長い鎖(≧20個の炭素)多価不飽和脂肪酸から誘導される伝達物質、特にアラキドン酸(AA)から誘導されるものに集中している。LAは、皮膚およびある特定の上皮の組織内でAAおよび他の多価不飽和脂肪酸よりずっと豊富であり、また、酸化された伝達物質への酵素的変換に対する基質でもあることから、LA誘導性伝達物質は、これら組織内で侵害受容性および掻痒受容性応答を調節するために独特に配置される。Hargreavesおよび共同研究者(Patwardhanら、The Journal of clinical investigation 120巻、1617頁、2010年;Patwardhanら、P.N.A.S. 、106巻、18820頁、2009年)は、末梢性と中枢神経系侵害受容性応答の両方において9-HODE、13-HODEおよび他の周知のLA誘導体を以前関係づけた。in vivoでの皮膚の炎症性応答は、多くの脂質および非脂質伝達物質における低pHおよび同時発生的上昇を特徴とし、これらは一緒になって炎症に伴う過敏症に関わる(HanおよびSimon、Science signaling 4巻、er3、2011年; SunおよびChen、J dental research、95巻、135頁、2016年)。これらの状態において、9-HODEおよび13-HODEは潜在的に、チトクロムp450エポキシゲナーゼまたはリポキシゲナーゼにより変換されて、9H-12,13E-LA、13H-9,10E-LAおよび他の生理活性のLA-誘導性伝達物質を形成することができる。
材料および方法
臨床試料調製物、げっ歯類挙動試験、ex vivoのCGRP放出アッセイ、およびすべての検査分析は、臨床データおよび処置群に対して盲検された研究者により実施された。
データ分析
正常に分配されたデータは、平均値±標準誤差として表現され、図の凡例に記載されているように複数の比較に対して補正された、スチューデントのt検定(2群)または片側ANOVA(複数の群)を使用して比較した。正常に分配されなかったデータは、平均および四分位数範囲として表現され、図の凡例に記載されているように複数の比較に対して補正された、Wilcoxonランク合計試験(2群)およびKruskal-Wallis試験(複数群)を使用して比較した。p<0.05は、複数の比較に対して調節された場合、意義を有すると考えられる。
ラット組織収集
この研究で分析したラット組織は、国立衛生研究所および臨床センター(National Institute of Dental and Craniofacial Research and the Clinical Center、NIH)の動物実験委員会(institutional Animal Care and Use Committees)により承認されたプロトコル下で得た。雄のスプラーグドーリーラットを対で飼育し、げっ歯類NIH-31Mの修正した調合法の固形飼料(Ziegler)および水を自由に摂取できるようにしておいた。後足、坐骨神経、DRG、TGおよび後角組織を得るため、ラットをイソフルランによる麻酔下におき、斬首して、組織を直ちに分析した。メスを使用して後足の足底表面のセクションを収集した。坐骨切痕の末端すぐ上から出発して、坐骨神経三枝分岐のすぐ上に広がる坐骨神経を切断した。椎弓切除術後、L4およびL5 DRGを取り出した。シリンジおよび生理食塩水を使用して水圧の力により、脊柱から脊髄を取り出し、左および右の背側4分の1を単離した。組織をドライアイス上で直ちに凍結し、処理するまで-80℃で貯蔵した。ラットDRGおよび坐骨神経RNA-Seqデータは、SRAデータベースのプロジェクトPRJNA313202下で入手可能である。
ラット痛覚回路組織の前駆体脂肪酸分析
組織脂肪酸を以前に記載されている通り分析した(11)。簡単に説明すると、試料を解凍し、秤量し、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)/メタノール中でホモジナイズし、Folchら(Ramsdenら、Molecular pain 12巻、2016年)の方法により脂肪酸抽出した。BHTをメタノールに加えて、この処置中脂質酸化を減少させた。内部標準メチルトリコサノエート(23:0)を各試料に加えた。これに続いて14%BF3/メタノールでメチル化した。窒素流を用いてヘキサン抽出物を少量に濃縮し、GC分析のためマイクロバイアルに移した。脂肪酸メチルエステルを、水素炎イオン化検出器(Hewlett-Packard、Palo Alto、CA)および石英ガラスキャピラリーカラム(DB-FFAP、15m×0.100mm i.d.×0.10μmのフィルム厚、J&W Scientific、Folsom、CA)を備えたHP-7890A気体クロマトグラフィーで分析した。検出器およびインジェクター温度を250℃にセットした。オーブン温度プログラムは、150℃で0.25分間から開始し、10℃/分の速度で200℃に増加させ、次いで3.5℃/分の速度で、225℃で0.5分間、最後に40℃/分の速度で245℃に増加させて、最終的に15分間保持した。50cm/秒の直線的速度で、キャリアガスとして水素を使用した。10~24個の炭素および0~6の二重結合を含有する、特注の混合した、30の構成成分、定量的メチルエステル標準物質を、保持時間の割り当てのため、および正確な定量化(Nu Chek Prep 462、Elysian、MN)を確実にするために使用した。脂肪酸データを全ピーク面積の%として表現し、これは定量的標準物質混合物により実証されたように、5%の範囲内で重量%に対応した。内部標準を使用して、組織脂肪酸濃度を計算した。
ヒト痛覚回路組織の遺伝子発現
RNA-Seq分析のための組織の収集およびRNA精製
混合した性別の4人の異なる正常な器官ドナーから得た、4つのヒトL3 DRGをAnabios(San Diego、CA)から購入した。3つのヒト延髄後角試料を錐体交叉のレベルで収集し、後角の灰色の物質を、Goswamiら(Molecular pain 10巻、44頁、2014年)に記載されているようなNIMH Human Brain Collection Coreからの収集手順の一部として解剖により新鮮な組織から単離した。ラットおよびヒト試料はFastprep 24ホモジナイザー(MP Biomedicals、Santa Ana、CA)を使用して、またはPolytronホモジナイザー(IKA、Wilmington、NC)を使用して、Qiazol試薬(Qiagen Inc、Valencia CA)中でホモジナイズし、DNase分解を用いたRNeasy Mini kit(Qiagen Inc、Valencia CA)を使用して精製した。Agilent Bioanalyzer(Agilent Technologies、Santa Clara、CA)を使用したゲル電気泳動後、RNA integrity number(RIN)を評価した。ラット組織に対して、8.5より上のRINを有する試料の配列を決定した。ヒトDRGに対して、7より上のRINを有する試料の配列を決定した。他のヒト試料に対して、起こり得る最も高いRINを得た。この実験に含まれた最も低い試料は5.5であった。
RNA-Seqカウント数データのアライメントおよび定量化
ラットデータをSTAR(バージョン2.4.2a)(Dobinら(Bioinformatics 29巻、15頁、2013年)およびrn6 genome build(Ensembl)によりアライメントを行った。この分析から生成したBamファイルをQoRTs(バージョン0.3.18)(HartleyおよびMullikin、BMC bioinformatics 16巻、224頁、2015年)を使用して定量化し、未加工の読取りカウント数およびFPKM(Fragments Per Kilobase of transcript per Million mapped reads)に変換した。GTEx貯蔵から8つの高品質試料(RINに基づく)を選択することによって、ヒト皮膚(脚下部)および脛骨神経からのデータを入手した。コンソーシアム(Consortium、Nature genetics 45巻、580頁、2013年)を介して入手可能なデータファイルからRPKM値を直接取り出した。乾癬の皮膚試料はSRAデータベース(PRJNA236547)(Swindell ら、Genome medicine 7巻、86頁、2015年)から入手した。MAGICパイプライン(Zhang ら、Genome biology 16巻、133頁、2015年)およびRefseqおよびAceview注釈に基づき2016年3月に構築したゲノム標的(Thierry-MiegおよびThierry-Mieg、Genome biology 7巻 補遺1、S12 1頁、2006年)を使用して、SRAから得たデータ、および他のヒトデータのアライメントを行い、定量化した。MAGICアライメントのためのゲノムの標的ファイルは、要求すれば入手可能である。遺伝子カウント数の定量化および正規化をMAGICで実施し、sFPKMで報告した。
ヒドロキシ-エポキシ-およびケト-エポキシ-オクタデセノエートの全化学合成
各化合物は、全化学合成により実施した。フラッシュクロマトグラフィーおよび/または順相HPLCを介して合成した化合物を精製した。NMR分析は、各化学構造と一致する化学シフトおよび結合定数を示した。ヒドロキシ-エポキシ-またはケト-エポキシ-オクタデセノエートを、重水素化クロロホルム中で、プロトンNMRにより、これらの遊離酸またはメチルエステルとして、示されている通り分析した。
LC-MS/MSを用いたヒドロキシ-およびケト-エポキシド-オクタデセノエートの特定および定量化
全合成により調製した本物の標準物質を、UPLC-MS/MSを使用して、ヒトおよびラット組織中でこれら8つの内在性化合物を特定および定量化するために使用した。簡単に説明すると、Strata X カートリッジ(33u、200mg/6mL、Phenomenex、PA)を使用して、生物学的マトリクスからのオキシリピンの固相抽出(SPE)を実施した。カートリッジを6mLのメタノールで調整し、これに続いて6mLの水で調整し、その後試料を抽出した。試料を6mLの10%メタノールで洗浄した。オキシリピンを、6mLのメタノールと共に、10μLのメタノール中30%グリセロールを含有するガラス管へと溶出した。溶出液を窒素流下で蒸発乾固させ、40μLのメタノールを用いて再構成し、アリコート(10μL)をLC/MS/MSシステムに注入した。Qtrap 5500(AB SCIEX、USA)を連結したUPLC(Shimadzu Scientific Instruments、Columbia、MD)を定性分析および定量分析に使用した。簡単に説明すると、(A)12mM酢酸アンモニウム溶液および酢酸(100:0.02v/v)および(B)12mM酢酸アンモニウムからなり、アセトニトリル/水/酢酸(90:10:0.02、v/v/v)で構成されたZorBAX RRHD EclipseプラスC18カラム(100mm×4mm;1.8μm)(Agilent Corporation、Palo Alto、CA)で分離を実施した。流速は0.5mL/分であった。カラムオーブン温度は30℃にセットした。溶出勾配条件は以下の通り:25~40%B、0~2.0分間、40~46%B、2~8分間、46~57%B、8~9分間、57~66%B、9~20分間、66~76%B、20~22分間、76~100%B、22~27分間、100%Bを27~33分間、100~25%Bを33.1~35分間保持した。90秒の保持時間ウィンドウを用いて、各分析物に対してMRMデータを獲得する、スケジュールされたマルチ反応モニタリング(sMRM)を使用して、質量分析器をエレクトロスプレーネガティブイオン化で作動する。ソースパラメーターを以下の通りセットした:イオンスプレー電圧、-4500V;ネブライザー気体(GS1)、65psi;ターボ-気体(GS2)、70psi;およびターボイオンスプレー源温度(TEM)、500℃。MRMを使用して、分析物を定量化した。合成した標準物質において2つまたは3つの異性体のピークを有するヒドロキシ-エポキシ-オクタデセノエートおよびケト-エポキシ-オクタデセノエートに対して、アナリスト1.6.2から生成したその関連ピーク面積の構成成分/ピーク面積ISの合計ピーク面積比により、分析物/ピーク面積ISと濃度との全ピーク面積比率の最も良いフィットをMicrosoft Excelでプロットすることにより、定量化を実施し、方程式y=ax+bにフィットさせた。増強された製品イオンスキャンモードを、スキャンスピード1000Da/秒で使用することによって、MS/MSスペクトルを得た。衝突エネルギー拡散10、衝突エネルギー35Vを使用して、衝突で誘発された解離(CID)を実施した。アナリストソフトウエア(バージョン1.6.2、AB Sciex)を使用してデータ加工を実施した。8つの予測された内在性化合物のうちの7つの特定は、全イオンモードを使用して、乾癬の皮膚試料からの内在性LA誘導体のMS/MSスペクトルおよび保持時間を、合成材料とマッチングさせることにより確認された。
試料収集物を用いたヒト実験
乾癬および対照参加者からの皮膚生検および血清収集物
乾癬および心血管代謝性疾患の進行中のNIH観察実験に(NCT01778569)登録した8人の連続した乾癬参加者および7人の非乾癬対照が実験(年齢26~82才の範囲)に含まれた。実験手順はNational Heart, Lung and Blood Institute Institutional Review Boardにより承認された。すべての参加者は、登録前に文書によるインフォームドコンセントを提出した。簡単に説明すると、乾癬の診断を確認し、Psoriasis Area Severity Index(PASI)を使用して皮膚科医により定量化した。自己申告による質問書を使用して、実質的なかゆみの存在または不在を記録した。引き続いて、対応する対照を集めて、乾癬参加者として同じ試験を受けさせた。すべての参加者は、生検2週間前にいかなる全身性抗乾癬処置または局所的療法も受けてはいない。ベースラインにおいて、4mmのパンチ生検を局所麻酔下で、乾癬プラークおよび影響を受けない皮膚から得た。生検部位は、活性のあるプラークに基づき選択し、対象間で変えた。しかし、罹患していないおよび対照皮膚の生検は主として臀部からのものだった。同じ参加者からの全血を血清分離体チューブに収集し、遠心分離し、分析まで-20℃で直ちに貯蔵した。
日常的な慢性頭痛(CDH)治験
CDH治験は、CDHを有する集団において、n-3脂肪酸を同時発生的に増加させて(H3-L6治療介入)、または増加させないで、低リノール酸の食事(L6治療介入)の臨床的および生化学的作用を試験するように設計された、無作為抽出による、12週間の治験であった。治験は、2009年4月から2011年11月まで、University of North Carolina at Chapel Hill(UNC)において行われた。治験手順は、UNC Institutional Review Boardにより承認され、治験プロトコル、食事用組成物、および主要な臨床的および一部の生化学的知見は以前に記述されたものであった(Ramsdenら、Trials 12巻、97頁、2011年; MacIntoshら、The British journal of nutrition 110巻、559号、28頁、2013年)。簡単に説明すると、少なくとも3カ月の間、1日当たり>4時間および1カ月当たり>15日の頭痛および>2年の頭痛病歴を有するというCDH基準を満たす成人を集めて、参加してもらった。4週間の事前治療介入段階の間、参加者らは、通常のケアおよび習慣的な食事を継続し、毎日の頭痛ダイアリーに頭痛の特徴を記録した。導入段階の完了時に、参加者を2種の実験食事のうちの1種に無作為抽出し、これを12週間続けた。植物油および他の豊富なLA源の消費を制限し、これらを植物油および単不飽和および飽和脂肪が豊富な食物で置き換えることにより、実験食事においてLAを減少させた。血漿をベースラインおよび12週間の食事段階の終局において収集した。H3-L6治療介入は、急性疼痛薬物の使用を減少させながら、頭痛頻度および重症度における顕著な減少を生じ、生活の質および機能を向上させたことが以前に報告された(Ramsdenら、Pain 154巻、2441頁、2013年;Ramsdenら、Pain 156巻、587頁、2015年)。1つまたは複数のファミリーのn-6またはn-3-誘導性脂質オータコイドにおける食事誘発性変化が、恐らくこれらの臨床的メリットに貢献した。しかし、これらの作用に関与した特定の機序は未知である。本発明の実験では、治療介入前および治療介入後の血漿試料を使用して、(1)ウィルコクソンのマッチトペア符号順位検定を使用して、実験の食事がLAのヒドロキシ-およびケト-エポキシド誘導体の血漿レベルを変化させたかどうか、および(2)各アウトカムおよび伝達物質のベースライン値に対して調節された退縮モデルを使用して、伝達物質濃度の変化が臨床的疼痛減少と相関するかどうかを調査した。
LC-MS/MS分析のための固体組織の調製
固体組織(ヒト皮膚、ラット後足、ラット後角)を、氷上のFastPrep Lysing Matrixチューブ(MP Biomedicals、USA;皮膚および後足用Lysing Matrix A、後角用Lysing Matrix D)に移し、少なくとも8倍大きな容量の、0.02%のBHTおよび0.02%のEDTAを含む氷冷メタノールを各チューブ(v/v)に直ちに加えた。既知の量の内部標準を各試料に加え、FastPrep-24ホモジナイザー(MP Bio)を使用して試料をホモジナイズした。組織ホモジネートを1時間-80℃に移して、タンパク質を沈殿させた。ホモジネートを4℃で10分間、17000gで遠心分離し、上清を新規試験管に移した。上清の半分は、SPE精製およびLC-MS/MS分析まで-80℃で貯蔵した。全脂質プールの分析を可能にするため、上清の他の半分を、60℃で、30分間、穏やかな振盪させながら、2.6%炭酸ナトリウム(重量による)でけん化した。次いで、酢酸を使用して、溶液を中和し(pH5~7)、-80℃で終夜貯蔵した。SPEおよびLC-MS-MS分析による精製の直前に、脂質抽出物(遊離およびけん化されたものの合計)を9倍大きな容量の氷冷した水に加えた。
LC-MS-MS分析のための血漿および血清の調製
200μLの血漿または血清を、0.02%のBHTおよび0.02%のEDTAを含む、500μLの氷冷メタノールに移し、-80℃に移して、タンパク質を沈殿させた(上に記載されている通り)。次いで、上に記載されているように、既知の量の内部標準を加え、試料を遠心分離し、上清を収集した。次いで、上に記載されているように、上清を9倍大きな容量の氷冷した水に加え、SPEで精製し、LC-MS/MSで分析した。
ex vivo感覚ニューロン増感作用アッセイ(CGRP放出アッセイ)
放出実験に対して、作業は、Animal Care and Use Committee at Indiana University School of Medicine、Indianapolis、INにより承認された。成体ラット感覚ニューロン培養物を以前に記載されている通り調製した(Burkey、Hingtgenおよび Vasko、Methods in molecular medicine 99巻、189頁、2004年;Kelleyら、PloS one 9巻、e106485頁、2014年)。10%ウマ血清、2mMグルタミン、100μg/mlのnormocin(商標)、50μg/mlのペニシリン、50μg/mlのストレプトマイシン、50μM 5-フルオロ-2’-デオキシウリジン(Invitrogen)、150μMウリジン、および30ng/mlのNGF(Harlan Bioproducts for Science,Inc. Indianapolis、IN)を補充したF-12培地(Invitrogen、Carlsbad、CA)内で、3%CO2中、37℃で細胞を10~12日間維持した。放出実験当日、培養物をHEPES緩衝液(25mM HEPES、135mM NaCl、3.5mM KCl、2.5mM CaCl2、1mM MgCl2、3.3mM D-グルコース、および0.1%ウシ血清アルブミン)、pH7.4で洗浄し、37℃で維持した。次いで、薬物の不在下でまたは存在下で、培養物を0.4mlの同じ緩衝液と共にインキュベートした。細胞をHEPES緩衝液に単独で10分間曝露し、次いで、伝達物質の存在下で、緩衝液に10分間曝露して、化合物が放出を刺激したかどうか確定することによって、基本的放出を決定した。次いで、伝達物質の不在下または存在下で、30nMカプサイシンを含有する緩衝液またはpHを6.0に調節した緩衝液に培養物を曝露した。次いで、10分間のインキュベーションのため、薬物を含まないHEPES緩衝液に細胞を再曝露して、基本的放出を再確立した。各インキュベーション後、以前に記載されている通り、緩衝液を除去して、ラジオイムノアッセイを使用してCGRPの量を測定した(Chenら、Peptides 17巻、31頁、1996年)。各放出実験の終わりに、培養物を0.1M HClに10分間曝露することによって、細胞を低浸透圧で溶解し、アリコートを採取して、ラジオイムノアッセイを使用して培養物中の全CGRP含有量を測定した。炎症性の伝達物質への曝露によっても、CGRPの全含有量は有意に変化しなかった。放出データは、別個の収穫物からの3回の独立した実験により、fmol/ウェルの細胞/10分として提示される。Tukey’s post hoc試験を用いたANOVAを使用して統計分析を実施した。
げっ歯類挙動アッセイ
掻痒受容性(かゆみ)挙動
LAのヒドロキシ-およびケト-エポキシド誘導体(100μg)またはヒスタミン(50μg)を雌のマウス(Jackson LaboratoryからC57BL/6J)の首筋に皮内注射した。LA誘導体(9-ケト-12,13-エポキシ-(10E)-オクタデセノエートまたは13-ケト-9,10-エポキシ-(11E)-オクタデセノエート)を独立して、および組み合わせて(9-ケト-12,13-エポキシ-(10E)-オクタデセノエートプラス13-ケト-9,10-エポキシ-(11E)-オクタデセノエート(それぞれ100μg))注射した。以前に記載されている通り、掻痒受容性挙動は、30分間にわたり評価したひっかき発作の回数として定量化した(MishraおよびHoon、Science 340巻、968頁、2013年)。
侵害受容性(疼痛)挙動
11-ヒドロキシ-12,13-trans-エポキシ-(9Z)-オクタデセノエート(30μg)を雄のスプラーグドーリーラットの後足に皮内注射した。すべての試験に対して、注射前、ベースライン測定を行った。A-デルタおよびC線維媒介性後足の引き込み応答を以前に記載されている通り測定した(Mitchellら、Pain 155巻、733頁、2014年)。簡単に説明すると、足の足底表面への100msレーザーパルスによる刺激により、急速な引き込み応答を生じる。レーザーパルスは、赤外線ダイオードレーザー(LASS-10M;Lasmed、Mountain View、CA、USA)により送達し、0.5mm直径において3500mAに較正し、1cmの距離から送達し、足の自発的な引き込みにより刺激を停止させて、後足の足底表面への遅い温度傾斜の送達により、C線維媒介性応答を測定した。およそ10秒の引き込み潜伏時間(1000mA、13cm距離)をもたらすようにレーザー刺激を調節した。
(実施例2)
11-ヒドロキシ-および11-ケト-trans-エポキシ-オクタデセノエート
本実施例は、例示的な11-ヒドロキシおよび11-ケト-trans-エポキシ-オクタデセノエート化合物の生成を例示している。以下は、例示的な反応プロセスを例示している:
メチル9-ヒドロキシノナノエート(1g)のジクロロメタン(8ml)中溶液に、0℃で、デス-マーチンペルヨージナン(1.7当量;3.83g)を加えた。10分後、氷浴を除去し、反応を2時間まで進行させた(TLCにより、出発材料が残留しなくなるまで)。反応物を200mlの10%酢酸エチル/ヘキサンで希釈し、これを直ちにシリカゲルに注入した。同じ溶媒を用いた溶出により、収率90%(890mg)で生成物アルデヒドを生成した。
2.44gの(ホルミルメチル)トリフェニルホスホニウム塩化物の12mlのトルエン中溶液を、トリエチルアミン(1.1当量;1.11ml)で処置し、1時間撹拌し、次いで、アルデヒド(890mg;4.78mmol)のトルエン中溶液を加え、反応物を80℃で2時間撹拌した。次いで、混合物を、セライトを介して濾過し、シリカゲル(15%酢酸エチル/ヘキサン)上で精製して、608mgのエナール生成物を生成した。
ヘプチン(1.5当量;0.562ml)の5mlのTHF中冷却(-78℃)溶液に、エナール(608mg;2.87mmol)の2mlのTHF中溶液を滴下添加した。-78℃で1~2時間撹拌後、TLCは反応の完了を示したので、これをエーテルで希釈し、pH7になるまで、1M HClで洗浄し、次いで水で洗浄し、次いでブラインで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、次いで、生成物をシリカゲル上で精製して(20~30%酢酸エチル/ヘキサンで溶出)、503mg(57%を生成した)のヒドロキシエン-インを生成した。
ヒドロキシエン-イン(250mg;0.812mmol)のジクロロメタン中冷却溶液に、77%m-CPBA(1.5当量;272mg)を加えた。10分後、氷浴を除去し、TLCが完了を示すまで(およそ3時間)反応を進行した。反応物を、飽和チオ硫酸ナトリウムに注ぎ入れ、層を分離し、次いで、有機層を10%炭酸水素ナトリウムで洗浄し、次いでこれを硫酸ナトリウムで乾燥させた。シリカゲル上での精製(15~20%エーテル/ヘキサン溶出)により166mg(63%)のエポキシアルキンを生成した。
5mlのエタノールを含有する、気体バルーン装置を備えた、2口の100mlのRBF内に、Ni(OAc)2四水和物(12.5%mol;15.9mg)を加えた。大気を真空でパージし、水素を3×充填し直し、次いで、完全に溶解するまで、水素雰囲気下で撹拌させておいた。固体水素化ホウ素ナトリウム(12.5%mol;2.42mg)を加え、大気を再度真空/水素でパージし、黒色の混合物を水素雰囲気下で45分間撹拌した。次いで、エチレンジアミン(25%mol;8.5μl)を加え、大気をもう1回真空/水素でパージし、反応物を45分間撹拌した。エポキシアルキン(166mg)を1mlのエタノールに溶解し、シリンジを介して混合物に加えた。大気を真空/水素でパージし、反応を終夜進行させた。次いで、反応物をエーテルで希釈し、水の中に注ぎ入れた。層を分離し、水性の層をエーテルで4×再抽出し、次いで有機層を合わせ、ブラインで洗浄し、次いで硫酸ナトリウムで乾燥させた。シリカゲル上での蒸発および精製(15~20%エーテル/ヘキサン)により、155mgのエポキシアルケン生成物を生成した。0.5M(水性)K2CO3を用いた、メタノール中でのエステルの加水分解により、遊離酸:11-ヒドロキシ-9,10-trans-エポキシ-(12Z)-オクタデセン酸(11H-9,10E-LA)を得た:1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.63 (tt, J=7.46, 11.39 Hz, 1H), 5.26-5.52 (m, 1H), 4.66 (dd, J=2.84, 8.69 Hz)および4.28 (ddd, J=0.91, 5.35, 8.74 Hz, 1H), 3.01 (dt, J=2.38, 5.58 Hz, 1H), 2.92 (dt, J=2.38, 5.67 Hz, 1H), 2.74-2.82 (m, 1H), 2.34 (t, J=7.41 Hz, 2H), 1.97-2.24 (m, 2H), 1.46-1.69 (m, 5H), 1.22-1.46 (m, 16H), 0.88 (t, J=6.77 Hz, 3H)
メチル-11-ヒドロキシ-9,10-trans-エポキシ-(12Z)-オクタデセノエート(75mg)の7mlのジクロロメタン中溶液に、0℃で、デス-マーチンペルヨージナン(1.7当量;166mg)を加えた。20分後、TLCは反応の完了を示したので、反応物を5%エーテル/ヘキサンで希釈し、シリカゲル上で直ちに精製して、70mgのエノンを生成した。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.26 (td, J=7.30, 11.57 Hz, 1H), 6.13-6.18 (m, 1H), 3.66 (s, 3H), 3.20 (d, J=1.65 Hz, 1H), 2.99-3.04 (m, 1H), 2.64 (q, J=7.44 Hz, 2H), 2.20-2.34 (m, 2H), 1.53-1.67 (m, 5H), 1.22-1.49 (m, 16H), 0.87 (br t, J=6.86 Hz, 3H).
20mgのエノンの3mlのTHF中溶液に、0℃で、MeMgCl(3.0M、1.3当量;27μl)を加えた。反応物を室温に到達させ、出発材料の大半が消費されるまで撹拌した。これをエーテルで希釈し、素早く1M HCl(pH6~7まで)で洗浄し、これに続いて水、次いでブラインで洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥させ、シリカゲル上で精製して(20~30%のエーテル/ヘキサン)、15mgのヒドロキシメチルエポキシドを生成した:1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ 5.31-5.48 (m, 2H), 3.64 (s, 3H), 3.02 (dt, J=2.20, 5.58 Hz, 1H), 2.72-2.80 (m, 1H), 2.76 (d, J=2.20 Hz, 1H), 2.30 (q, J=6.83 Hz, 4H), 1.50-1.62 (m, 4H), 1.27-1.48 (m, 18H), 1.18-1.27 (m, 1H), 0.90 (t, J=6.86 Hz, 3H).
(実施例3)
11-ヒドロキシ-および11-ケト-trans-エポキシ-オクタデセノエート
本実施例は、例示的な11-ヒドロキシおよび11-ケト-trans-エポキシ-オクタデセノエート化合物の生成を例示する。以下は、例示的な反応物プロセスを例示している:
メチル9-デシノエート(1g;5.49mmol)の8mlのTHF中溶液に、n-BuLi(2.5M;1.1当量;2.41ml)を滴下添加した。反応物を0℃で45分間撹拌し、次いでこれを-78℃まで冷却し、2-E-オクテナール(0.9当量;735μl)の1.5mlのTHF中溶液を加えた。室温に温めながら、反応を2~3時間進行させた(TLCが完了を示すまで)。次いで、これをエーテルで希釈し、1M HCl(pH6~7まで)で洗浄し、次いで水、これに続いてブラインで洗浄した。これを硫酸ナトリウムで乾燥させ、シリカゲル上で精製して(5~10%酢酸エチル/ヘキサンで溶出した)、1.16g(68%)を生成した。
ヒドロキシエン-イン(650mg)の10mlのジクロロメタン中溶液に0℃で77%m-CPBA(1.5当量;699mg)を加えた。10分後、氷浴を除去し、完了するまで反応を進行させた。前の通りワークアップは、これに続いて精製(15~30%エーテル/ヘキサン)により、エポキシ-アルキン生成物、627mg(59%)を生成した。
実施例1のように、半水素化およびエステル加水分解を行い、123mgの11-ヒドロキシ-12,13-trans-エポキシ-(9Z)-オクタデセン酸(11H-12,13E-LA)を生成した。1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.59 (td, J=7.48, 11.02 Hz, 1H), 5.26-5.50 (m, 1H), 4.62-4.67および4.25 (tdd, J=1.37, 5.51, 8.58 Hz, 1H), 4.12-4.19 (m, 1H), 3.02 (dt, J=2.20, 5.49 Hz, 1H), 2.88-2.95 (m, 1H), 2.76-2.81 (m, 1H), 2.32 (dt, J=1.37, 7.46 Hz, 2H), 1.98-2.21 (m, 2H), 1.22-1.68 (m, 18H), 0.82-0.93 (m, 3H).
実施例1のように、ケト-エポキシドをアルコールから誘導した。メチル11-ケト-12,13-trans-エポキシ-(9Z)-オクタデセノエート(11K-12,13E-LAメチルエステル):1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.19-6.29 (m, 1H), 6.11-6.18 (m, 1H), 3.65 (s, 3H), 3.19 (d, J=1.83 Hz, 1H), 3.01 (dt, J=2.20, 5.49 Hz, 1H), 2.56-2.68 (m, 2H), 2.28 (t, J=7.51 Hz, 2H), 1.36-1.70 (m, 9H), 1.23-1.35 (m, 11H), 0.84-0.92 (m, 3H).
実施例1に記載されているように、ヒドロキシメチル誘導体をケトンから調製した:1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ 5.33-5.47 (m, 2H), 4.85 (s, 2H), 3.64 (s, 3H), 3.02 (dt, J=2.01, 5.49 Hz, 1H), 2.76 (d, J=1.65 Hz, 1H), 2.26-2.34 (m, 4H), 1.45-1.64 (m, 5H), 1.28-1.45 (m, 16H), 0.85-0.97 (m, 3H).
(実施例4)
13-ヒドロキシ-および13-ケト-trans-エポキシ-オクタデセノエート
本実施例は、例示的な13-ヒドロキシ-および13-ケト-trans-エポキシ-オクタデセノエート化合物の生成を例示する。以下は例示的な反応物プロセスを例示する:
実施例1に記載されている同じ手順に従い、エナールを調製した(400mg)。これを、ホスホネート(3当量;1.25g)と無水LiCl(3当量;237mg)の12mlのTHF中混合物にゆっくりと加えた。次いでトリエチルアミン(3.3当量;876μl)を加え、反応物を3~4時間反応させ(TLCが完了を示すまで)。反応物をエーテルで希釈し、水、次いでブラインで洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶出するための10~15%エーテル/ヘキサンを使用したシリカゲル上で精製した。371mg(64%)のジエノンが存在した。これを、順相HPLC(960/40ヘプタン/MTBE、275nm)でさらに精製して、348mgの白色の固体を生成した。
ジエノン(348mg)を13mlのジクロロメタンに溶解し、0℃に冷却し、次いで77%m-CPBA(1.5当量;374mg)を加えた。15分後、氷浴を除去し、完了する(3時間)まで、反応を進行させた。これをジクロロメタンで希釈し、飽和チオ硫酸ナトリウム、次いで10%炭酸水素ナトリウム、次いで水で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥させ、シリカゲル上で精製して(15~30%エーテル/ヘキサン)、226mg(62%)の白色の固体:13-ケト-9,10-trans-エポキシ-(11E)-オクタデセン酸(13K-9,10E-LA)を生成した:1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 6.47-6.54 (m, 1H), 6.34-6.43 (m, 1H), 3.20 (dd, J=1.83, 6.86 Hz, 1H), 2.89 (dt, J=2.01, 5.58 Hz, 1H), 2.41-2.60 (m, 2H), 2.25-2.37 (m, 2H), 1.56-1.71 (m, 4H), 1.40-1.53 (m, 2H), 1.11-1.38 (m, 12H), 0.82-0.94 (m, 3H).
実施例1のように、ヒドロキシメチル誘導体をケトンから調製した:1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ 5.98 (d, J=15.74 Hz, 1H), 5.35 (dd, J=7.96, 15.65 Hz, 1H), 3.64 (s, 2H), 3.14 (dd, J=2.20, 7.87 Hz, 2H), 2.83 (dt, J=2.20, 5.58 Hz, 2H), 2.31 (t, J=7.41 Hz, 2H), 1.42-1.62 (m, 7H), 1.25-1.39 (m, 12H), 1.22-1.25 (m, 3H), 0.89 (t, J=6.95 Hz, 3H).
メタノールとボレート緩衝液(pH8.5)の1:1混合物中、0℃での、ケトンの水素化ホウ素ナトリウム還元からヒドロキシル化合物を生成し、これに続いて、希釈炭酸カリウムを用いた、メタノール中でのエステル加水分解により、13-ヒドロキシ-9,10-trans-エポキシ-(11E)-メチル-オクタデセノエート(13H-9,10E-LAメチルエステル)を生成した:1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.91 (dd, J=6.40, 15.55 Hz, 1H), 5.40 (dd, J=7.87, 15.55 Hz, 1H), 3.90-4.17 (m, 1H), 3.65 (s, 3H), 3.08 (dd, J=2.10, 7.78 Hz, 1H), 2.80 (dt, J=2.01, 5.58 Hz, 1H), 2.29 (t, J=7.50 Hz, 2H), 1.69 (br. s., 1H), 1.48-1.63 (m,6H), 1.24-1.45 (m, 13H), 0.87 (t, J=6.59 Hz, 3H)
(実施例5)
9-ヒドロキシ-および9-ケト-trans-エポキシ-オクタデセノエート
この実施例は、例示的な9-ヒドロキシ-および9-ケト-trans-エポキシ-オクタデセノエート化合物の生成を例示する。以下は、例示的な反応プロセスを例示している:
9-ケト-12,13-trans-エポキシ-(10E)-メチル-オクタデセノエート(9K-12,13E-LAメチルエステル)は、Sayreら、J. Org. Chem. 2007年、72巻、9471~9480頁により公開された以下の類似の手順で、Sayreにより公開されたように、エナール(ウィティッヒ反応前)の代わりにウィティッヒ反応で生成されたジエノンにエポキシドを取り込むように修正を加えながら調製した。ヒドロキシ化合物を実施例3のように生成した:9-ヒドロキシ-12,13-trans-エポキシ-(10E)-オクタデセン酸(9H-12,13E-LA):1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 5.91 (dd, J=6.22, 15.55 Hz, 1H), 5.41 (dd, J=7.87, 15.55 Hz, 1H), 4.12 (quin, J=5.95 Hz, 1H), 3.04-3.16 (m, 1H), 2.82 (dt, J=1.92, 5.54 Hz, 1H), 2.33 (t, J=7.50 Hz, 2H), 1.49-1.64 (m, 5H), 1.27-1.47 (m, 11H), 1.09-1.27 (m, 3H), 0.79-0.93 (m, 3H).
ヒドロキシメチル誘導体を実施例1のようにケトンから調製した:1H NMR (400 MHz, メタノール-d4) δ 5.97 (d, J=15.74 Hz, 1H), 5.35 (dd, J=8.05, 15.74 Hz, 1H), 3.64 (s, 3H), 3.14 (dd, J=2.01, 8.05 Hz, 1H), 2.84 (dt, J=2.01, 5.58 Hz, 1H), 2.30 (t, J=7.41 Hz, 2H), 1.38-1.63 (m, 9H), 1.28-1.37 (m, 13H), 1.18-1.27 (m, 4H), 0.86-0.96 (m, 3H).
(実施例6)
2,2-ジメチル-13-ヒドロキシ-および2,2-ジメチル-13-ケト-trans-エポキシ-オクタデセノエート
本実施例は、例示的な2,2-ジメチル-13-ヒドロキシ-および2,2-ジメチル-13-ケト-trans-エポキシ-オクタデセノエート化合物の生成を例示する。以下は、例示的な反応プロセスを例示している:
イソ酪酸メチル(2g;19.60mmol)の25mlのTHF中溶液に、-78℃で、リチウムジイソプロピルアミド(2.0M、1.2当量;11.77ml)を滴下添加した。30分後、7-ブロモ-1-ヘプテン(1.2当量;4.14g)の5mlのTHF中溶液をゆっくりと加えた。反応物を室温で1~2時間撹拌し(TLCが完了を示すまで)、次いでこれをエーテルで希釈し、1M HClで洗浄し、次いで水、および最後にブラインで洗浄した。これを硫酸ナトリウムで乾燥させ、シリカゲル上で精製して(5%酢酸エチル/ヘキサン)、3.25g(87%)を生成した。
0.5M 9-BBNのTHF(1当量;20ml)中撹拌溶液に、2,2-ジメチルメチルノネノエート(2g;10.10mmol)のTHF中溶液を加えた。溶液を2時間撹拌し、次いでこれを0℃に冷却し、6mlのエタノールを加え、これに続いて2.2mlの6N NaOHおよび3.4mlの30%過酸化水素を加えた。反応物を50℃に加熱し、1時間撹拌し、次いで室温に冷却し、酢酸エチルで希釈し、水、次いでブラインで洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥させ、シリカゲル上で精製して、1.61g(76%)を生成した。
合成の残りは、実施例3の通り行った。
2,2-ジメチル-13-ヒドロキシ-9,10-trans-エポキシ-(11E)-オクタデセノエート:1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 5.88-5.97 (m, 1H), 5.41 (dddd, J=1.01, 3.09, 7.88, 15.57 Hz, 1H), 4.05-4.20 (m, 1H), 3.06-3.13 (m, 1H), 2.79-2.86 (m, 1H), 2.04 (s, 1H), 1.33-1.61 (m, 10H), 1.20-1.32 (m, 9H), 1.18 (s, 5H), 0.81-0.96 (m, 3H).
2,2-ジメチル-13-ケト-9,10-trans-エポキシ-(11E)-メチル-オクタデセノエート:1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 6.63 (dd, J=6.59, 15.75 Hz, 1H), 6.50 (dd, J=6.96, 16.11 Hz, 1H), 6.34-6.41 (m, 1H), 3.64 (s, 3H), 3.37-3.46 (m, 1H), 3.18 (dd, J=1.83, 6.96 Hz, 1H), 2.84-2.92 (m, 1H), 2.51 (t, J=7.32 Hz, 2H), 2.38-2.45 (m, 1H), 2.22-2.33 (m, 1H), 1.53-1.63 (m, 4H), 1.38-1.50 (m, 4H), 1.16-1.37 (m, 11H), 1.14 (s, 6H), 0.87 (t, J=6.77 Hz, 3H)
2,2-ジメチル-13-ヒドロキシ-13-メチル-9,10-trans-エポキシ-(11E)-オクタデセノエート:1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 5.95 (d, J=15.74 Hz, 1H), 5.39 (br dd, J=7.78, 15.65 Hz, 1H), 3.64 (s, 3H), 3.39-3.63 (m, 1H), 3.09 (br d, J=7.78 Hz, 1H), 2.78-2.90 (m, 1H), 1.32-1.67 (m, 13H), 1.17-1.32 (m, 20H), 1.15 (s, 6H), 0.87 (br t, J=6.59 Hz, 5H)
(実施例7)
2,2-ジメチル-11-ヒドロキシ-、メチル-2,2-ジメチル-11-ケト-、およびメチル-2,2-ジメチル-11-ヒドロキシ-trans-エポキシ-オクタデセノエート
本実施例は、例示的な2,2-ジメチル-11-ヒドロキシ-、メチル-2,2-ジメチル-11-ケト-、およびメチル-2,2-ジメチル-11-ヒドロキシ-trans-エポキシ-オクタデセノエート化合物の生成を例示している。以下は例示的反応プロセスを例示している:
示された2,2-ジメチル-11-ヒドロキシ-、メチル-2,2-ジメチル-11-ケト-、およびメチル-2,2-ジメチル-11-ヒドロキシ-trans-エポキシ-オクタデセノエート化合物は、上記に示されている反応プロセスを考慮して修正を加えながら、実施例6および2に示されている通り調製することができる。
(実施例8)
2,2-ジメチル-11-ヒドロキシ-、メチル-2,2-ジメチル-11-ヒドロキシ-、メチル-2,2-ジメチル-11-ケト-trans-エポキシ-オクタデセノエート
本実施例は、例示的な2,2-ジメチル-11-ヒドロキシ-、メチル-2,2-ジメチル-11-ヒドロキシ-、メチル-2,2-ジメチル-11-ケト-trans-エポキシ-オクタデセノエート化合物の生成を例示する。以下は、例示的な反応プロセスを例示している:
示された2,2-ジメチル-11-ヒドロキシ-、メチル-2,2-ジメチル-11-ヒドロキシ-、メチル-2,2-ジメチル-11-ケト-trans-エポキシ-オクタデセノエート化合物は、上記および以下の記載に示されている反応プロセスを考慮して修正を加えながら、実施例6および3に示されている通り調製することができる。
2,2-ジメチル-11-ヒドロキシ-12,13-trans-エポキシ-(9Z)-オクタデセノエート:1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 5.54-5.83 (m, 1H), 5.40-5.54 (m, 1H), 5.16-5.40 (m, 1H), 4.66 (br dd, J=2.06, 8.74 Hz, 1H), 4.26 (dd, J=5.67, 8.51 Hz, 1H), 3.03 (br dd, J=2.97, 8.46 Hz, 1H), 2.87-2.98 (m, 1H), 2.80 (dd, J=2.24, 5.44 Hz, 1H), 1.97-2.20 (m, 2H), 1.47-1.59 (m, 3H), 1.20-1.45 (m, 14H), 1.18 (s, 4H), 0.79-0.96 (m, 3H).
メチル2,2-ジメチル-11-ケト-12,13-trans-エポキシ-(9Z)-オクタデセノエート:1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 6.20-6.29 (m, 1H), 6.13-6.18 (m, 1H), 3.64 (s, 3H), 3.20 (d, J=1.83 Hz, 1H), 3.00-3.06 (m, 1H), 2.63 (q, J=7.32 Hz, 2H), 2.36-2.48 (m, 1H), 1.53-1.67 (m, 2H), 1.37-1.50 (m, 6H), 1.17-1.35 (m, 11H), 1.14 (s, 6H), 0.83-0.94 (m, 3H).
メチル2,2-ジメチル-11-ヒドロキシ-11-メチル-12,13-trans-エポキシ-(9Z)-オクタデセノエート:1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 5.60-5.76 (m, 1H), 5.44 (td, J=7.24, 12.05 Hz, 1H), 5.26-5.38 (m, 1H), 5.07-5.26 (m, 1H), 3.65 (s, 3H), 2.95-3.07 (m, 1H), 2.74-2.95 (m, 1H), 2.24-2.47 (m, 1H), 2.09-2.24 (m, 2H), 1.34-1.58 (m, 8H), 1.19-1.34 (m, 10H), 1.13-1.19 (m, 5H), 0.88 (br d, J=3.93 Hz, 3H).
(実施例9)
2,2-ジメチル-9-ヒドロキシ-、メチル-2,2-ジメチル-9-ケト-、メチル-2,2-ジメチル-9-ヒドロキシ-trans-エポキシ-オクタデセノエート
本実施例は、例示的2,2-ジメチル-9-ヒドロキシ-、メチル-2,2-ジメチル-9-ケト-、メチル-2,2-ジメチル-9-ヒドロキシ-trans-エポキシ-オクタデセノエート化合物の生成を例示する。以下は、例示的な反応プロセスを例示している:
示された2,2-ジメチル-9-ヒドロキシ-、メチル-2,2-ジメチル-9-ケト-、メチル-2,2-ジメチル-9-ヒドロキシ-trans-エポキシ-オクタデセノエート化合物は、上記に示されている反応プロセスを考慮して修正を加えながら、実施例6および7に示されている通り調製することができる。
(実施例10)
1,5-エポキシファーマコフォア
本実施例は、例示的1,5-エポキシファーマコフォア化合物の生成を例示する。以下は例示的な反応プロセスを例示している:
クロトンアルデヒド(1g)の15mlのメタノール中溶液に、0℃で、30%過酸化水素(>3当量;6.5ml)、これに続いてNaHCO3(1.2当量;1.44g)を加えた。15分後、氷浴を除去し、反応物を2時間撹拌した。これをジクロロメタンで希釈し、ブラインで洗浄し、次いで、硫酸ナトリウムで乾燥させ、およそ8mlに濃縮した。次いで、これを0℃に冷却し、1-(トリフェニルホスホラニリデン)-2-プロパノン(1.1当量;4.85g)の15mlのジクロロメタン中溶液を滴下添加した。反応物を室温に到達させ、4~5時間撹拌した。次いで、これを水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。シリカゲル上で精製させて(5~15%酢酸エチル/ヘキサン)、200mgの1,5-エポキシ(ケト)ファーマコフォアを生成した:1H NMR (82 MHz, ) δ 6.20 - 5.66 (m, 1H), 2.94 - 2.41 (m, 1H), 1.82 (s, 3H), 1.10 - 0.9 (m, 3H).
0℃で、水素化ホウ素ナトリウム(1当量;7.5mg)を、ケトン(25mg)の2mlの1:1メタノール:ボレート緩衝液(pH8.5)中溶液に加えた。20分後、反応を完了し、これを酢酸エチルで希釈し、飽和塩化アンモニウムで洗浄し、これに続いてブラインで洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥させた。1,5-エポキシ(ヒドロキシ)ファーマコフォアの収量は25mgであった。
ケトン(55mg)の4mlのTHF中溶液に、1M HCl(8~9滴)を加えた。これを終夜放置し、次いでこれを酢酸エチルで希釈し、水で洗浄し、これに続いてブラインで洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥させ、シリカゲル上で精製して、63mgのケト-ジヒドロキシ化合物を生成した:1H NMR (82 MHz, ) δ 6.62 (dd, J = 15.8, 7.8 Hz, 1H), 6.07 (d, J = 15.9 Hz, 1H), 4.25 (dd, J = 7.8, 4.4 Hz, 1H), 4.04 - 3.50 (m, 2H), 2.02 (d, J = 11.3 Hz, 4H), 1.07 (d, J = 6.1 Hz, 3H).
ケトジオールと同じ方法を使用して、トリヒドロキシ化合物を調製した。
(実施例11)
1,3-エポキシファーマコフォア
本実施例は、例示的1,3-エポキシファーマコフォア化合物の生成を例示する。以下は、例示的な反応プロセスを例示している:
0.5Mプロピニルマグネシウム臭化物(1.2当量;68ml)のTHF中溶液に、0℃で、クロトンアルデヒド(2g)の2mlのTHF中溶液をゆっくりと加えた。反応物を5時間にわたり室温まで到達させ、次いでこれをエーテルで希釈し、1M HCl、これに続いて水で洗浄し、次いでブラインで洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥させ、シリカゲル上で精製して、3.13gを生成した(>99%)。
0℃で、77%m-CPBA(1.3当量;8.29g)を、エン-イン(3.13g)の25mlのジクロロメタン中溶液に加えた。20分後、氷浴を除去し、反応物を5時間撹拌した。これを、セライトを介して濾過し、次いで、飽和チオ硫酸ナトリウムで洗浄し、これに続いて飽和炭酸水素ナトリウムで洗浄し、次いで硫酸ナトリウムで乾燥させた。シリカゲル上での精製により、分離できない不純物が混入した3gの油を生成した。
16mlのエタノールを含有する気体バルーン装置を備えた2口、100ml RBF内に、Ni(OAc)2四水和物(12.5%mol;385mg)を加えた。大気を真空でパージし、水素(3×)を充填し直し、次いで、完全に溶解するまで、水素雰囲気下で撹拌した。固体水素化ホウ素ナトリウム(12.5%mol;61mg)を加え、大気を再度真空/水素でパージし、黒色の混合物を水素雰囲気下で45分間撹拌した。次いで、エチレンジアミン(25%mol;206ml)を加え、大気をもう1回真空/水素でパージし、反応物を45分間撹拌した。エポキシアルキン(1.56g)を2mlのエタノールに溶解し、シリンジを介して、混合物に加えた。大気を真空/水素でパージし、反応を終夜進行させた。次いで、反応物をエーテルで希釈し、水の中に注ぎ入れた。層を分離し、水性層をエーテル(4×)で再抽出し、次いで、有機層を合わせ、ブラインで洗浄し、次いで硫酸ナトリウムで乾燥させた。シリカゲル上での蒸発および精製により、894mg(56%)の1,3-エポキシ(ヒドロキシ)ファーマコフォアを生成した:1H NMR (82 MHz, ) δ 5.07 (h, J = 5.4 Hz, 2H), 4.00-3.67 (m, J = 7.5, 3.8 Hz, 1H), 3.01 (s, 1H), 2.71 - 2.11 (m, 2H), 1.21 (d, J = 5.7 Hz, 3H), 0.81 (d, J = 5.2 Hz, 3H).
ヒドロキシエポキシド(142mg)を4mlのジクロロメタンに溶解し、次いでデス-マーチンペルヨージナン(1.7当量;787mg)を加えた。3時間後、これを5%酢酸エチル/ヘキサンで希釈し、シリカゲルを介して濾過し、精製して、39mg(28%)の1,3-エポキシ(ケト)ファーマコフォアを生成した:1H NMR (82 MHz, ) δ 6.27 - 5.62 (m, 2H), 2.77 (d, J = 4.3 Hz, 2H), 1.76 (d, J = 5.9 Hz, 3H), 1.20 - 0.81 (m, 3H).
ヒドロキシエポキシド(62mg)を2mlのt-ブタノールに溶解し、次いで、1M LiOH(8ml)を加えた。反応物を終夜撹拌し、次いで、これを1M HCl(pH3~4)でクエンチし、水で希釈し、次いで、1gのC18 SPE(水、これに続いてメタノール)を介して溶出した。メタノール層を蒸発させ、シリカゲル上で粗原料の一部分を精製して、3mgのトリオールファーマコフォアを生成した。
ケトジヒドロキシ化合物は、塩基性または酸性の加水分解のいずれかを使用して、ケトエポキシドから調製することができる。
(実施例12)
7-ヒドロキシ-5,6-trans-エポキシ-(8Z)-オクタデセン酸(7H-5E-SA)
本実施例は、例示的7-ヒドロキシ-5,6-trans-エポキシ-(8Z)-オクタデセン酸化合物の生成を例示する。以下は例示的な反応プロセスを例示する:
(実施例13)
9-ヒドロキシ-5,6-trans-エポキシ-(7E)-オクタデセン酸(9H-5E-SA)
本実施例は、例示的9-ヒドロキシ-5,6-trans-エポキシ-(7E)-オクタデセン酸化合物の生成を例示する。以下は、例示的な反応プロセスを例示している:
(実施例14)
5-ヒドロキシ-8,9-trans-エポキシ-(6E)-オクタデセン酸(5H-8E-SA)
本実施例は、例示的5-ヒドロキシ-8,9-trans-エポキシ-(6E)-オクタデセン酸化合物の生成を例示する。以下は例示的な反応プロセスを例示している:
(実施例15)
5-ヒドロキシ-8,9-trans-エポキシ-(6E)-オクタデセン酸(5H-8E-SA)
本実施例は、例示的5-ヒドロキシ-8,9-trans-エポキシ-(6E)-オクタデセン酸化合物の生成を例示する。以下は例示的な反応プロセスを例示している:
(実施例16)
9-ヒドロキシ-5,6-trans-エポキシ-(7E,11Z)-エイコサジエン酸(9H-5E-MA)
本実施例は、例示的9-ヒドロキシ-5,6-trans-エポキシ-(7E,11Z)-エイコサジエン酸化合物の生成を例示する。以下は例示的な反応プロセスを例示している:
(実施例17)
7-ヒドロキシ-5,6-trans-エポキシ-(8Z,11Z)-エイコサジエン酸(7H-5E-MA)
本実施例は、例示的7-ヒドロキシ-5,6-trans-エポキシ-(8Z,11Z)-エイコサジエン酸化合物の生成を例示する。以下は例示的な反応プロセスを例示している:
(実施例18)
9-ヒドロキシ-5,6-trans-エポキシ-(7E,11Z,14Z)-エイコサトリエン酸(9H-5E-AA)
本実施例は、例示的な9-ヒドロキシ-5,6-trans-エポキシ-エイコサトリエン酸化合物の生成を例示する。以下は例示的な反応プロセスを例示している:
(実施例19)
7-ヒドロキシ-5,6-trans-エポキシ-(8Z,11Z,14Z)-エイコサトリエン酸(7H-5E-AA)
本実施例は、例示的7-ヒドロキシ-5,6-trans-エポキシ-エイコサトリエン酸化合物の生成を例示する。以下は例示的な反応プロセスを例示している:
(実施例20)
2,2-ジメチル-5,6-エポキシド中間体の合成
本実施例は、2,2-ジメチル-5,6-エポキシド中間体の生成を例示する。以下は例示的な反応プロセスを例示している:
次いで、中間体は、以前に記載したように、各PUFA誘導体の合成に使用されている。
(実施例21)
2,2-ジメチル-4-ヒドロキシ-DHAの合成
本実施例は、2,2-ジメチル-4-ヒドロキシ-DHAの生成を例示する。以下は例示的な反応プロセスを例示している:
417mgのドコサヘキサエン酸の無水ジクロロメタン(7ml)中溶液に、0℃で、2,6-ルチジン、これに続いてヨウ素を加えた。反応物を室温で、窒素下で終夜撹拌した。これを酢酸エチルで希釈し、10%チオ硫酸ナトリウムで洗浄し、これに続いて水で洗浄し、次いでブラインで洗浄した。これを硫酸ナトリウムで乾燥させ、次いでこれをフラッシュクロマトグラフィーで精製して、570mgのヨードラクトンを生成した。
ヨードラクトンを無水トルエン(6ml)に溶解し、DBUを加えると、混合物は暗褐色のおよび粘性に変化した。これを窒素下で終夜撹拌した。これを酢酸エチルで希釈し、1M HClで洗浄し、次いで水で洗浄し、次いでブラインで洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥させ、次いで、フラッシュクロマトグラフィーで精製して、330mgの薄黄色の油を生成し、これは徐々に黒ずんだ。この材料をアルゴンでフラッシュし、-80℃で貯蔵した。
ジメチル類似体を調製するため、83mgのラクトンを2mlの無水THF中に溶解し、-78℃に冷却し、次いでLDA(2当量の2M溶液)を加えた。30分後、ヨウ化メチル(2当量)を加え、これを45分間撹拌し、次いでこれを素早くエーテルで希釈し、1M HClで洗浄し、次いで水で洗浄し、次いでブライン洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥させ、次いでフラッシュクロマトグラフィーで精製して、61mgの2-メチル類似体を生成した。一部分のこの材料(19mg)を上記のように反応させて、精製後、17mgの2,2-ジメチル類似体を生成した。LC-MSは、両方の類似体の識別情報を確認した。LC-MS(2-メチル-4-HDHAラクトン)(m/z)341.2[M+H]+、358.2[M+H2O]+、379.2[M+K]+;LC-MS(2,2-ジメチル-4-HDHAラクトン)(m/z)355.2[M+H]+、372.2[M+H2O]+、393.2[M+K]+。
(実施例22)
脂肪酸誘導体によるニューロン活性のモジュレーション
本実施例は、開示された脂肪酸誘導体の実施形態によるニューロンにおけるモジュレーションCa+応答を例示する。
ネズミ後根神経節感覚ニューロンを単離し、in vitroで培養し、アッセイを以前に記載されている通り実施した(PMID:25297838)。脂肪酸誘導体(1μM)を培養されたニューロンに適用し、任意の生成したCa2+応答を盲検方式で測定した。アッセイした化合物は、以下を含む:13H-9,10E-LA(化合物7)、2,2DM-13H-9,10E-LA(化合物53)、13-メチル-13H-9,10E-LA(化合物56)、2,2DM-13-メチル-13H-9,10E-LA(化合物55)、13K-9,10E-LA(化合物8)、11H-12,13E-LA(化合物1)、2,2DM-11H-12,13E-LA(化合物17)、11-メチル-11H-12,13E-LA(化合物26)、11K-12,13E-LA(化合物2)、9H-12,13E-LA(化合物5)、9-メチル-9H-12,13E-LA(化合物46)、11H-9,10E-LA(化合物3)、および11-メチル-11H-9,10E-LA(化合物36)。結果は図6に示されている。
さらに、ネズミ三叉神経の感覚ニューロンを単離し、in vitroで培養した。脂肪酸誘導体を培養したニューロンに適用し、生成した任意のCa2+応答を盲検方式で測定した。アッセイした化合物は以下を含む:11H-12,13E-LA(化合物1)、11K-12,13E-LA(化合物2)、11H-9,10E-LA(化合物3)、および11K-9,10E-LA(化合物4)。結果は図7Aに示されている。濃度応答曲線は、11H-12,13E-LAおよび11H-9,10E-LAに応答する細胞の数の増加を例示している(図7B)。
(実施例23)
脂肪酸誘導体によるかゆみ応答のモジュレーション
本実施例は開示された脂肪酸誘導体の実施形態による、かゆみ応答のモジュレーションを例示する。
脂肪酸誘導体9K-12,13E-LA(100μg)を、盲検方式で、正常なマウスまたは肥満細胞ノックアウトマウスの首筋に皮内注射した(図8)。掻痒受容性挙動を、以前に記載されている通り、30分間にわたり審査したひっかき発作の回数として定量化した(Mishra および Hoon、Science 340巻、968頁、2013年)。
(実施例24)
脂肪酸誘導体によるコレステロール排出のモジュレーション
本実施例は、開示された脂肪酸誘導体の実施形態によるコレステロール排出のモジュレーションを例示する。
ヒトTHP-1細胞を、リノール酸またはいくつかの異なる脂肪酸誘導体(50μM)の存在下で、盲検方式で、ApoA1とインキュベートし、以前に記載されている通り、生成したコレステロール排出を測定した(図9)(PMID:26879139)。リノール酸はコレステロール排出を増加させ、11H-12,13E-LAおよび11K-12,13E-LA誘導体(50μM)はApoA1媒介性単球コレステロール排出を阻害した。新たに単離したヒトPBMCを使用した同じコレステロール排出アッセイで、類似の結果が観察された(図10)。
(実施例25)
脂肪酸誘導体によるPBMCサイトカイン分泌のモジュレーション
本実施例は、開示された脂肪酸誘導体の実施形態によるPBMCサイトカイン分泌のモジュレーションを例示する。
新たに単離したヒトPBMCを、LPSと共に予備インキュベートした(図11Aおよび11C)またはしなかった(図11Bおよび11D)。次いでフェルラ酸(「FA」、100μM)および11H-12,13E-LA、11K-12,13E-LA、PBSと共に、またはLPS単独で24時間インキュベートした(盲検)。次いで、酵素結合免疫吸着法を使用して、TNF-アルファ(図11Aおよび11B)またはIL-ベータ(図11Cおよび11D)の中間濃度を測定した。結果は、11H-12,13E-LAおよび11K-12,13E-LAがTNF-アルファ分泌を減少させ、IL-ベータ分泌においては有意な変化はなかったことを示している。
(実施例26)
2,2-ジメチル-4-HDHA-d10の合成
(実施例27)
2,2-ジメチル-14-HDHAの合成
(実施例28)
2,2-ジメチル-16,17-エポキシ-DHAの合成
(実施例29)
2,2-ジメチル-7-HDHAの合成
(実施例30)
2,2-ジメチル-17-HDHAの合成
(実施例31)
11-OH-7,8-エポキシ-9,10-デヒドロアドレン酸の合成
本実施例は、例示的11-ヒドロキシおよび11-ケト-trans-エポキシ-9,10-デヒドロドコサジエノエート化合物の生成を例示する。以下は例示的な反応プロセスを例示している:
(実施例32)
9-OH-7,8-エポキシ-10,11-デヒドロアドレン酸の合成
本実施例は、例示的な9-ヒドロキシおよび9-ケト-trans-エポキシ-10,11-デヒドロドコサジエノエート化合物の生成を例示する。以下は例示的な反応プロセスを例示している:
(実施例33)
13-ヒドロキシ-9,10-trans-エポキシ-11,12-デヒドロ-オクタデセン酸の合成
(実施例34)
9-ヒドロキシ-12,13-trans-エポキシ-10,11-デヒドロ-オクタデセン酸の合成
2,2-ジメチル9-ヒドロキシメチルノナン酸を上に記載されている通り(実施例6)調製し、アルデヒドへと酸化し、次いで、ウィッティヒ条件下で反応させて、2,2-ジメチルリノール酸のメチルエステルを得る。これを、m-CPBA、または他の非選択的なエポキシ化試薬で処理して、9,10および12,13 2,2-ジメチル-EpOMEの混合物を生成する。これらは、クロマトグラフィーにより分離し、1H NMRおよび質量分析で特徴付け、メチルエステル加水分解することができる。代わりに、これらの化合物は、これらの対応する2,2-ジメチル ジHOMEメチルエステルへと加水分解することができる。メチルエステルを以前の通り加水分解して、遊離酸を生成する。
(実施例35)
13-ヒドロキシ-9(R),10(R)-エポキシ-オクタデカ-11-エノエートの合成
本実施例は、化合物7の個々のジアステレオマーおよび関連する安定した類似体の調製のための例示的合成スキームを例示する。
次いで、ジアステレオマーはクロマトグラフィーで分離することができる。適切に修飾された出発材料を使用して、2,2-ジメチル類似体を調製することもできる。
(実施例36)
13-ヒドロキシ-9(S),10(S)-エポキシ-オクタデカ-11-エノエートの合成
本実施例は、化合物7の個々のジアステレオマーおよび関連する安定した類似体の調製のための例示的合成スキームを例示する。
次いで、ジアステレオマーは、クロマトグラフィーにより分離することができる。適切に修飾された出発材料を使用して、2,2-ジメチル類似体を調製することもできる。
(実施例37)
9,10,13-トリヒドロキシ-オクタデカ-11-エノエートの合成
本実施例は、化合物13の個々のジアステレオマーおよび関連する安定した類似体の調製のための例示的プロセスを提供する。
Y. Kurashinaら、Tetrahedron 62巻(2006年)9483~9496頁から採用した。2,2-ジメチル誘導体は、13-メチル-13-ヒドロキシおよび2,2-ジメチル-13-メチル-13-ヒドロキシ誘導体が可能なように、この方法論を使用して、適切に修飾された出発材料を使用して調製することもできる。
(実施例38)
エステル化阻止のための2,2-ジメチル部分
本実施例は、酸化脂肪酸への2,2-ジメチル修飾の添加により提供されるエステル化に対する耐性を例示している。
LC-MS条件:Agilent 1100 LC
A:10mM NH4OAc、pH7.4
B:アセトニトリル+0.1%ギ酸
0~1.50分:5%B
1.50~2分:5~90%B
2~10分:90%B
10.01~15分:5%B
DAD1 254nm
DAD2 215nm
Agilent Zorbax XDB-C18 5μm C18 50×2.0mm
0.4ml/分
MSパラメーター:エレクトロスプレーイオン化を用いた、Agilent 6120
乾燥用気体流:11.0L/分
ネブライザー圧力:40psig
乾燥用気体温度:350℃
ポジティブキャピラリー電圧:4000V
ネガティブキャピラリー電圧:3000V
およそ30mgのシリカゲルを25mgのグリセロールに加え、次いでそれをボルテックスして、混和物が自由流動性となるまで、すべてのシリカをグリセロールでコーティングした。5~10mgの間のこの材料を遊離酸のエーテル中溶液に加え、これを素早くボルテックスした。3日間反応させておき、次いで濾過し、窒素下で蒸発させた。残渣をエタノールに再び溶解し、ポジティブモードとネガティブモードの両方でLC-MSにより分析した。これら条件下で反応させたいくつかの化合物に対する結果が図12~17に示されている。
2,2-ジメチル類似体のいずれも、これらの条件下で、LC-MSで検出可能なようにはエステル化されず、その一方で、内在性化合物のそれぞれは、4-HDHAを除いて、高収率でエステル化され、これは、そのカルボキシレートのリチウム塩を使用したにもかかわらず、容易にラクトン化されることが判明した。安定した類似体2,2-ジメチル-4-HDHAは、ラクトン化もしないし、リパーゼでエステル化もせず、よって2,2-ジメチル基からのエステル化に対する耐性をさらに確定した。
13-ヒドロキシ-9,10-trans-エポキシ-(11E)-オクタデセン酸2-グリセリルエステル
グリセリルエステル生成物RT=6.61分、(m/z)404.3[M+H2O]
+、425.24[M+K]
+385.30[M-H]
-
図12は、エステル化条件下で反応させた13-ヒドロキシ-9,10-trans-エポキシ-(11E)-オクタデセン酸に対するポジティブ(図12A)およびネガティブ(図12B)LC-MSモードに対する保持時間および質量スペクトルを示している。結果は、内在性酸化脂肪酸がエステル化したことを示している。
9,10,13-トリヒドロキシ-(11E)-オクタデセン酸2-グリセリルエステル
グリセリルエステル生成物RT=5.34~5.35分、(m/z)427.23[M+Na]
+、443.20[M+K]
+403.2[M-H]
-449[M-H+HCOOH]
-
図13は、エステル化条件下で反応させた9,10,13-トリヒドロキシ-(11E)-オクタデセン酸に対するポジティブ(図13A)およびネガティブ(図13B)LC-MSモードに対する保持時間および質量スペクトルを示している。図13Cは、未反応の遊離9,10,13-トリヒドロキシ-(11E)-オクタデセン酸に対するネガティブLC-MSモードを示している(RT=5.53分、(m/z)329.20[M-H]
-)。結果は、内在性酸化脂肪酸がエステル化したことを示している。
2,2-ジメチル-13-ヒドロキシ-9,10-trans-エポキシ-(11E)-オクタデセン酸
エステル化は観察されなかった。未反応の出発材料RT=7.392分、(m/z)358.30[M+H2O]
+、323.30[M+H-HO]
+339.30[M-H]
-
図14は、エステル化条件下で反応させた2,2-ジメチル-13-ヒドロキシ-9,10-trans-エポキシ-(11E)-オクタデセン酸に対するポジティブ(図14A)およびネガティブ(図14B)LC-MSモードに対する保持時間および質量スペクトルを示している。結果は、2,2-ジメチル修飾された酸化脂肪酸がエステル化に耐性があることを示している。
2,2-ジメチル-13-ヒドロキシ-9,10-trans-エポキシ-(11E)-オクタデセン酸および2,2-DM-13,9,10トリオールを混合物として分析した。2,2-ジメチル-13,9,10トリオールを、RT=6.537分、(m/z)357.29[M-H]
-で溶出した。結果は、2,2-ジメチル修飾された酸化脂肪酸トリオールがエステル化に耐性があることを示している。
4-ヒドロキシ-DHAおよび4-ヒドロキシ-DHAラクトン
図15は、エステル化条件下で反応させた4-ヒドロキシ-DHAに対するポジティブLC-MSモードに対する保持時間および質量スペクトルを示している。結果は、酸化脂肪酸に対して急速に内部ラクトン化が起こることを示している。
4-HDHAラクトンRT=8.73分、(m/z)327.23[M+H]
+、344.30[M+NH4]
+
2-メチル-4-ヒドロキシ-DHA
図16は、エステル化条件下で反応させた2-メチル-4-ヒドロキシ-DHAに対するポジティブLC-MSモードに対する保持時間および質量スペクトルを示している。結果は、2-メチル脂肪酸類似体が、競合的ラクトン化によりグリセロールエステル化に耐性があることを示している(直接注入MS;(m/z)341.30[M+H]
+、358.30[M+H2O]
+、379.2[M+K]
+)。
2,2-ジメチル-4-ヒドロキシ-DHA
図17は、エステル化条件下で反応させた2,2-ジメチル-4-ヒドロキシ-DHAに対するポジティブLC-MSモードに対する保持時間および質量スペクトルを示している。結果は、2,2-ジメチル4-ヒドロキシ-DHA類似体が、内部ラクトン化を含めて、エステル化に耐性があることを示している。未反応の出発材料は、RT=8.23分、(m/z)371.30[M-H]-で分析した。
4-HDHAおよび類似体に対する3つの実験は、2-メチルおよび修飾なし(両方とも急速にラクトン化した)と比較して、2,2-ジメチル修飾のエステル化(ラクトン化を含む)の減少が増加したことを例示している。よって、2,2-ジメチル修飾は、内部ラクトン化を含めて、エステル化を阻止する働きをする。
(実施例39)
リノール酸の酸化誘導体の類似体の局所投与を介した、皮膚遊離酸およびエステル化した脂質プールの選択的操作
本実施例は、リノール酸の酸化誘導体の類似体の局所投与を介した、皮膚遊離酸およびエステル化した脂質プールの選択的操作を例示している。
食事性リノール酸欠損症および/またはリノレートヒドロ過酸化および異性化に対する遺伝子コーディングの突然変異が、重度の表皮性バリア機能障害および経表皮水分蒸散を引き起こすという観察に基づき、皮膚のエステル化脂質プール内の特定の酸化リノール酸誘導体[13-ヒドロキシ-9,10-エポキシ-オクタデセノエート、13,9,10-トリヒドロキシ-オクタデセノエートおよびこれらの代謝性誘導体]が重大な水バリア構成成分であることが以前に提案された(例えば、Zhengら、J. Biol. Chem.、286巻(27号):24046~24056頁、2001年;Munoz-Garciaら、Biochim Biophys Acta、1841巻(3号):401~408頁、2014年;Nugterenら、Biochim Biophys Acta、834巻(3号):429~436頁、1985年を参照されたい)。遊離プール内のこれら生理活性の非エステル化脂質は、代わりに水バリア形成または修復を誘発する化学信号を提供することができる。よって、これら特定の酸化脂質を、遊離またはエステル化したプールのいずれかに標的送達することは、魚鱗癬、アトピー性皮膚炎/湿疹、乾癬、および皮膚および粘膜の他の炎症性またはハイパー増殖性状態を含めた、バリア機能障害を特徴とする状態に対して治療的意味を有することができる。本発明の実験の結果は、酸化脂質の遊離プールが、酸化リノール酸代謝産物の2,2-ジメチル類似体の局所投与の選択的標的となることができ、エステル化したプールが、遊離酸の局所投与の選択的標的となることができるという概念を立証している。
13-ヒドロキシ-9,10-エポキシ-オクタデセノエートおよび9,10,13-トリヒドロキシ-オクタデセノエートの類似体(「処置」)をマウスに局所的に適用した。手短に言えば、雄の、無毛のマウス(SKh1-e)に、30μLの処置(10mg/mL)を、5日間の間毎日、肩と臀部の間の正中から1cmに位置する、同じ右の背側のおよそ1.5×3.5cm領域に適用した。3つの処置群は13-ヒドロキシ-9,10-エポキシ-オクタデセノエート-d5(13-H-9,10-エポキシ-LA-d5)、2,2-ジメチル-13-ヒドロキシ-9,10-エポキシ-オクタデセノエート、および混合物を含有する2,2-ジメチル-13-ヒドロキシ-9,10-エポキシ-オクタデセノエートおよび2,2-ジメチル-9,10,13-トリヒドロキシ-オクタデセノエートであった。6日目に、処置領域内から皮膚試料(0.02~0.05g)を収集し、直ちに凍結した。
皮膚試料を7mlのck50ミックスPrecellys溶解チューブに加えた。cryolys(Bertin Corp)に結合しているPrecellysを用いて、8000rpmで、10秒の長さで6サイクル(サイクル間に2分間の休止)試料を振盪させた。既知の量のLTB4-d4(Cayman Chemical)を各粉砕した皮膚試料に加え、含有した(EDTAおよびBHT)500μlの氷冷メタノールで溶解チューブから新規微小遠心管へと各試料を抽出した。皮膚のすべての可視の固体小片が確実に抽出されることに重点を置き、別の500μlのメタノール(BHTおよびEDTAを含有する)を元の溶解チューブに加えて試料の残りを抽出した。抽出物を-80℃で2時間貯蔵し、遠心分離機で回転させて、タンパク質を沈殿させた。上清を収集し、半分を直ちに-80℃の窒素気体下で貯蔵した。残りを炭酸ナトリウムで30分間加水分解し(酢酸を使用して、反応を停止した)、次いで、N2下、-80℃で貯蔵した。試料をカラムに充填し、カラムを洗浄するために10%メタノールが使用されているPhenomenex Strata Xカラムを使用して、すべての試料を固相抽出で精製した。試料を、BHTを含有するメタノールで溶出し、N2気体下で乾燥させ、GCバイアルで再構成した。
LC-MS結果が図19に示されている。エポキシドとして適用した化合物を、皮膚pHへの推定されるエポキシド反応活性度により、これらの対応するトリヒドロキシ加水分解生成物として測定した。13-H-9,10-エポキシ-オクタデセノエート-d5は、遊離プールの中よりも、全プールの中で4×大きな存在量で発見され、これは、局所的に適用された試料の大部分がエステル化(構造的に)脂質に組み込まれたことを示している。2,2-ジメチル-13-H-9,10-エポキシ-オクタデセノエートは、全プールと遊離プールの両方で、およそ等量で発見され、これは、エステル化が最小からゼロであったことを示している(図19)。
内在性酸化リノール酸誘導体は、以下のいずれかにより、表皮性水バリアの形成において主要な役割を果たしていることが提案された:(1)バリアを形成するエステル化脂質の主要な構造的構成部分として作用すること;または(2)水バリア形成を誘発する化学信号を提供する不安定な、生理活性分子として作用すること(例えば、Zhengら、J. Biol. Chem.、286巻(27号):24046~24056頁、2001年;Munoz-Garciaら、Biochim Biophys Acta、1841巻(3号):401~408頁、2014年;Nugterenら、Biochim Biophys Acta、834巻(3号):429~436頁、1985年を参照されたい)。ここで、酸化リノール酸の2,2-ジメチル誘導体[2,2-ジメチル-13-ヒドロキシ-9,10-エポキシ-オクタデセノエート]の局所投与は、エステル化脂質へ実質的に取り込まれることなく、遊離酸プールにおいて独占的に2,2-ジメチル-13,9,10-トリヒドロキシ-リノレート誘導体を選択的に増加させることが実証されている。これは、遊離酸(図19A)プールと、全部の(遊離プラスエステル化の)脂質プール(図19B)との対比において、2,2-ジメチル-13,9,10-トリヒドロキシ-リノレートに対して同等のピーク面積が存在することより証明される。対照的に、13-ヒドロキシ-9,10-エポキシ-オクタデセノエート(13-H-9,10-エポキシ-LA-d5)のd5標識した遊離酸の局所投与は、遊離プール(図19C)と比較して、全プール(図19D)における13,9,10-トリヒドロキシ-リノレート-d5(9,10,13-トリヒドロキシ-LA-d5)誘導体の主要な増加をもたらした。総合的に、これらin vivoの知見は、以下を示す:(1)2,2-ジメチル部分の酸化脂肪酸への付加は、エステル化を阻止し、皮膚内の遊離酸プールの選択的操作を可能にする;および(2)水バリア形成において主要な構造的役割を果たすことが提案されている、特定の酸化されたリノール酸代謝産物[13-ヒドロキシ-9,10-エポキシ-オクタデセノエートおよび13,9,10-トリヒドロキシ-オクタデセノエート]は、これらの遊離酸の局所投与を介してエステル化した、構造的脂質プールを標的にすることができる。よって、遊離のおよびエステル化した脂質プールの両方を、合成した酸化された脂質またはこれらの安定した類似体の局所投与を介して選択的に変化させることができる。
記載されている方法または組成物の正確な詳細は、記載されている実施形態の趣旨から逸脱することなく、変化させても、または修正してもよいことは明らかである。発明者らは、すべてのこのような修正および変化形が、以下の特許請求の範囲の範囲および趣旨の中に入ることを主張する。