特許文献2のブレーキ駆動制御回路では、2つのスイッチング制御手段の一方は電磁ブレーキと接地電位との間に設けられるローサイドスイッチとなるが、他方は、電磁ブレーキとブレーキ駆動用の電源電圧との間に設けられるハイサイドスイッチとなる。ブレーキ駆動用の電源電圧が低い場合は問題は生じにくいが、この電源電圧が高くなった場合には、ローサイドスイッチ及びハイサイドスイッチの双方に耐圧の高いデバイスが必要となる。これに加えて電源電圧が高い場合には、ハイサイドスイッチとして用いるデバイスの種類に応じ、次のような課題を生じる。すなわち、NチャネルのFET(電界効果トランジスタ)を用いた場合には、その駆動回路が大掛かりなものとなって部品点数が増大し、コストが高くなって実装面積も大きくなる。PチャネルのFETを用いた場合にはデバイスのサイズが大きくなるともにオン抵抗も大きくなって損失が大きくなり、またデバイスそのものについての選択肢が少ない。バイポーラトランジスタを用いる場合には、デバイスサイズが大きくなるとともに損失も大きい。
電磁ブレーキは、それを解除状態とするためにかなりの電流を要するので、ロボットの軸数が多くなって電磁ブレーキの数も多くなれば、電磁ブレーキ用の電源回路としても容量の大きなものを使用する必要がある。ロボットでは、そのモータの駆動のため大容量で比較的高い電圧の電源回路が用意されるが、モータ駆動用の電源回路をブレーキ駆動用の電源回路としても使用する場合には、ハイサイドスイッチに関わる上述した課題を解決することができない。ブレーキ駆動用に比較的低い電圧の電源回路を別個に用意する場合には、この別個に用意される電源回路にもある程度の容量が必要となるので、コストアップの要因などとなる。ロボットには、その制御回路のために比較的低い電圧の電源回路も用意されるが、制御回路はそれほど電力を消費しないため制御回路用の電源回路は比較的小容量であり、複数の軸を有するためにブレーキ解除用の電流が大きくなるロボットでは、制御回路用の小容量の電源回路をブレーキ駆動用の電源回路として用いることは現実的でない。
本発明の目的は、安全性を損なうことなく、ハイサイドスイッチとして用いられるスイッチング素子への印加電圧を比較的低い電圧とすることができ、かつ、大容量の別個の電源回路を設けることを不要とするブレーキ駆動制御回路と、そのようなブレーキ駆動制御回路の故障検出方法とを提供することにある。
本発明のブレーキ駆動制御回路は、通電することによりブレーキを解除する電磁ブレーキを制御するブレーキ駆動制御回路であって、第1回路電圧の第1電源と前記電磁ブレーキの一方の端子との間に設けられた第1整流素子と、前記第1電源を動作させるために前記第1電源に電力を供給するラインに挿入された遮断スイッチと、前記電磁ブレーキの他方の端子と接地点との間に設けられた第1スイッチング素子と、前記第1回路電圧とは異なる第2回路電圧の第2電源と前記電磁ブレーキの前記一方の端子との間で直列に設けられた第2スイッチング素子及び第2整流素子と、を有し、前記第2回路電圧は前記第1回路電圧よりも低い。
本発明のブレーキ駆動制御回路は、通電することによりブレーキを解除する電磁ブレーキを制御するブレーキ駆動制御回路であって、第1回路電圧の第1電源と前記電磁ブレーキの一方の端子との間に設けられた第1整流素子と、前記第1電源を動作させるために前記第1電源に電力を供給するラインに挿入された遮断スイッチと、前記電磁ブレーキの他方の端子と接地点との間に設けられた第1スイッチング素子と、前記第1回路電圧とは異なる第2回路電圧の第2電源と前記電磁ブレーキの前記一方の端子との間で直列に設けられた第2スイッチング素子及び第2整流素子と、を有し、前記第1電源は前記電磁ブレーキによるブレーキ動作の対象であるモータを駆動する電源であり、前記遮断スイッチは前記モータに対する安全回路に設けられている。
前記モニタ手段は、前記電磁ブレーキの前記他方の端子と前記第1スイッチング素子との接続点の電圧を検出する第1モニタ回路と、前記第2スイッチング素子と前記第2整流素子との接続点の電圧を検出する第2モニタ回路と、を有する。
前記遮断スイッチが開放しかつ前記第1電源が非動作であるときに、ブレーキ解除スイッチの操作またはブレーキ解除コマンドの入力に基づき前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子が動作状態とされて前記電磁ブレーキが解除される
このようなブレーキ駆動制御回路では、電磁ブレーキを挟んで遮断スイッチと第1スイッチング素子とが直列に接続されているので、一方が短絡モードの故障となっても他方によって電磁ブレーキへの通電を遮断でき、電磁ブレーキのロック状態を維持することができる。その一方で、第2電源と第2スイッチング素子とを用いることにより電磁ブレーキを解除することができるので、「モータを駆動するための電源が失われている状態においてブレーキを解除できる」という安全規格に基づく要求を満足することができる。第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子としては、例えば、トランジスタなどの半導体素子を用いることができる。
本発明のブレーキ駆動制御回路では、第2回路電圧を第1回路電圧よりも低くすることができる。第2スイッチング素子はハイサイドスイッチに相当するものであるが、第2回路電圧が低いので、第1回路電圧と同じ電圧で動作させる場合に比べ、第2スイッチング素子として耐圧が低くて小型の半導体素子を使用することが可能となり、また、第2スイッチング素子に対する駆動回路も簡素化できる。
本発明のブレーキ駆動制御回路では、電磁ブレーキによるブレーキ動作の対象であるモータを駆動する電源を第1電源とし、モータに対する安全回路において一般的に設けられるスイッチを遮断スイッチとして用いることができる。モータに対する安全回路には高い信頼性が要求されており、安全回路においてモータ駆動用の電源を遮断するためのスイッチを本発明における遮断スイッチとして用いることにより、モータへの動力を遮断するとともにブレーキを確実に動作させるという安全規格に準拠した、信頼性が高いブレーキ駆動制御回路を構成することができる。
本発明のブレーキ駆動制御回路では、電磁ブレーキの一方の端子及び他方の端子の電圧を監視するモニタ手段を備えてもよい。このようなモニタ手段を設けることにより、スイッチング素子の故障を検出することができて安全性を高めることができる。このモニタ手段は、例えば、電磁ブレーキの他方の端子と第1スイッチング素子との接続点の電圧を検出する第1モニタ回路と、第2スイッチング素子と第2整流素子との接続点の電圧を検出する第2モニタ回路と、を備えている。このような第1モニタ回路及び第2モニタ回路を用いることにより、電磁ブレーキの両端のそれぞれの電圧を監視できて第1スイッチング素子の故障と第2スイッチング素子の故障を独立に検出することができる。
あるいは本発明のブレーキ駆動制御回路では、電磁ブレーキの両端間の電圧を監視する回路を有するモニタ手段を備えてもよい。このようなモニタ手段を設けることによっても、スイッチング素子の故障を検出することができて安全性を高めることができる。
本発明においてモニタ手段を設けるときは、モニタ手段での監視結果に基づいて故障検出信号を出力し、遮断スイッチを開放状態に維持させる故障検出回路をさらに設けることが好ましい。このような故障検出回路を設けることによって、スイッチング素子が故障しているときに第1電源が動作状態となることを防止できてブレーキが解除されることも防止でき、安全性をさらに高めることができる。故障検出信号の出力に基づいて遮断スイッチを開放とした場合、第1電源の出力にコンデンサが設けられているとすると第1電源の出力電圧が直ちにゼロなるとは限らない。そこで本発明では、故障検出信号が出力されたときに、例えばモータにD軸電流を流す、あるいは放電用抵抗を用いるなどして、第1電源の出力を強制的に放電させ、ブレーキが早期に作動するようにすることが好ましい。
本発明のブレーキ駆動制御回路では、遮断スイッチが開放しかつ第1電源が非動作であるときに、ブレーキ解除スイッチの操作またはブレーキ解除コマンドの入力に基づき第1スイッチング素子及び第2スイッチング素子が動作状態とされて電磁ブレーキが解除されるように構成することができる。ロボットの各軸ごとに設けられるブレーキ解除スイッチやロボット教示用のペンダントからのブレーキ解除コマンドの入力により、緊急時に確実に電磁ブレーキを解除できるようになる。
本発明のブレーキ駆動制御回路では、電磁ブレーキの解除状態を維持するときに電磁ブレーキに加わる電圧が電磁ブレーキを解除状態に移行させるときに電磁ブレーキに加わる電圧よりも低くなるように、第1スイッチング素子をPWM駆動することが好ましい。電磁ブレーキの解除動作と解除状態の維持に必要な電圧を変えることで省電力化することができ、PWM駆動を行なうことにより、さらなる省電力化を図ることができる。特に、ロボットなどが通常動作を行なっているときは、電磁ブレーキの解除状態を維持しなければならない時間が長くなるので、状態に応じた電圧とPWM駆動を行なうことにより、より一層の省電力化が可能である。
本発明の故障検出方法は、第1回路電圧の第1電源と電磁ブレーキの一方の端子との間に設けられた第1整流素子と、電磁ブレーキの他方の端子と接地点との間に設けられた第1スイッチング素子と、第1回路電圧とは異なる第2回路電圧の第2電源と電磁ブレーキの一方の端子との間で直列に設けられた第2スイッチング素子及び第2整流素子と、を有し、通電することによりブレーキを解除する電磁ブレーキを制御するブレーキ駆動制御回路における故障検出方法であって、第1電源が非動作であるときに電磁ブレーキが応答しない長さのパルスを用いて第2スイッチング素子を駆動し、電磁ブレーキの他方の端子と第1スイッチング素子との接続点の電圧と、第2スイッチング素子と第2整流素子との接続点の電圧とを監視する。
本発明の故障検出方法によれば、第1スイッチング素子の故障と第2スイッチング素子の故障とを別個の検出することができるともに、さらに、電圧を監視するための回路や電磁ブレーキの断線(あるいは未接続)といった故障の検出も可能になる。
本発明の故障検出方法においては、さらに、電磁ブレーキを解除しているときに第1スイッチング素子をPWM駆動し、PWM駆動に同期して電磁ブレーキの他方の端子と第1スイッチング素子との接続点の電圧を監視してもよい。このような監視を行なうことで、電磁ブレーキに通電してブレーキを解除しているときにおいても、第1スイッチング素子の故障や電磁ブレーキの断線を検出することが可能になる。
本発明によれば、ブレーキ駆動制御回路において、安全性を損なうことなく、ハイサイドスイッチとして用いられるスイッチング素子への印加電圧を比較的低い電圧とすることができ、かつ、大容量の別個の電源回路を設けることを不要とすることができる。またこのようなブレーキ駆動制御回路におけるスイッチング素子等の故障を確実に検出できる故障検出方法が提供される。
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施の一形態のブレーキ駆動制御回路を説明する図であって、ロボットの中にこのブレーキ駆動制御回路を組み込んだ状態を示している。ロボットには、ロボットコントローラによってサーボ制御される複数のモータ13が設けられるが、図では、ロボットにおける1軸分のモータ13、電磁ブレーキ31及びブレーキ駆動制御回路が示されている。
図示二重線で示すように、モータ13の回転軸に対して電磁ブレーキ31が機械的に接続している。電磁ブレーキ31のソレノイド(コイル)には、ソレノイドへの電流を遮断したときに発生する大きな逆起電力を吸収するためのサージアブソーバ32が並列に設けられている。サージアブソーバ32としては、例えば、バリスタ、ダイオードなどが使用される。各軸のモータ13にはそれぞれドライバ12が設けられている。そして各軸に共通に、交流であるモータ用電源を直流に変換するモータ駆動電源11が設けられており、各ドライバは、モータ駆動電源11から直流電力の供給を受け、ロボットコントローラからの指令に基づいて対応するモータ13を駆動する。
モータ用電源とモータ駆動電源11との間には、安全回路20が設けられている。この安全回路20は、ロボットの安全な動作を保証するためにロボットに一般的に設けられるものであり、モータ用電源からモータ駆動電源11に電力を供給するラインに設けられてこの電力の供給を遮断する遮断スイッチ21と、遮断スイッチ21を制御する安全制御部22を備えている。安全回路20は、ロボットが安全であると確認できるときにのみモータ駆動電源11に電力を供給するように構成されている。安全制御部22には、操作スイッチからの信号や異常時遮断信号が入力している。安全制御部22は、操作スイッチによってロボットの動作が指示されたときに遮断スイッチ21を閉じてモータ駆動電源に電力を供給するとともに、緊急時遮断信号が入力したときには即時に遮断スイッチ21を開放してモータ駆動電源11への電力の供給を停止し、全軸のモータ13を停止させる。さらに安全制御部22は、安全回路20の状態を示す安全回路モニタ信号を外部に出力する。モータ駆動電源20及び安全回路20は、ロボットに接続してロボットを制御するロボットコントローラの内部に設けられている。
安全回路20はロボットの安全に直結する回路なので、各種の安全規格に準拠した信頼性の高い回路である。また、モータ13への電力が遮断されたときは、各軸の電磁ブレーキ31はモータ軸をロックするように動作しなければならない。そこで、本実施形態では、特許文献2に示すような従来のブレーキ駆動制御回路でのハイサイドスイッチの代わりに安全回路20内の遮断スイッチ21を使用する。このことは、モータ駆動電源11を電磁ブレーキ31の電源として使用することを意味し、モータ駆動電源11が不動作となってモータ13が非駆動状態となったときに、電磁ブレーキ31はモータ軸を確実にロックすることができる。しかしながら、モータ駆動電源11を電磁ブレーキ31の駆動電源として用いただけでは、安全規格に定められた「モータを駆動するための電源が失われている状態においてもブレーキを解除できる」という要件を満たすことができない。そこで本実施形態では、モータ13を駆動するための電源が失われているときであっても電磁ブレーキ31を解除できるようにするため、モータ駆動電源11とは別個にブレーキ用電源を用意する。モータを駆動するための電源が失われているときに電磁ブレーキ31を解除するのは緊急時であり、その場合、ロボットに設けられている全ての軸の電磁ブレーキ31を同時に解除することはなく、ブレーキ解除が必要な軸について、1軸ずつ電磁ブレーキ31を解除することになる。したがって、ブレーキ用電源に求められる容量は、高々1軸の電磁ブレーキ31を解除できるだけの容量であり、このため、ブレーキ用電源としては、ロボットコントローラ内の制御回路(不図示)のためにモータ駆動電源11とは別個に設けられる電源を使用することができる。
ブレーキ用電源で電磁ブレーキ31を駆動するときは、安全回路20内の遮断スイッチ21をハイサイドスイッチの代わりに使用することはできないから、特許文献2に示す回路と同様に、モータ13ごとに独立したハイサイドスイッチを設ける必要がある。また、モータ駆動電源11と
ブレーキ用電源とは分離されなければならない。そこで、本実施形態のブレーキ駆動制御回路は、電磁ブレーキ31の両端をそれぞれ接続点33,34として、接続点34と接地点との間にローサイドスイッチとして設けられるトランジスタTr1と、ブレーキ用電源に接続するハイサイドスイッチとして設けられるトランジスタTr2と、モータ駆動電源11と接続点33との間に設けられる逆電圧阻止用のダイオードD1と、トランジスタTr2と接続点33との間に設けられる逆電圧阻止用のダイオードD2と、から構成される。このブレーキ駆動制御回路の構成では、遮断スイッチ21はロボット内の全ての電磁ブレーキ31に共通に設けられるが、トランジスタTr1,Tr2及びダイオードD1,D2は電磁ブレーキ31ごとに設けられることになる。トランジスタTr1は例えばNチャネルのFETであって、そのゲートにはブレーキ信号が供給され、トランジスタTr2は例えばPチャネルのFETであって、そのゲートには緊急時ブレーキ信号が供給される。ここでモータ駆動電源11は第1電源に相当し、ブレーキ用電源は第2電源に相当し、トランジスタTr1は第1スイッチング素子に相当し、トランジスタTr2は第2スイッチング素子に相当し、ダイオードD1は第1整流素子に相当し、ダイオードD2は第2整流素子に相当する。ここでは第1及び第2スイッチング素子としてそれぞれNチャネル及びPチャネルのFETを使用しているが、各スイッチング素子に使用されるデバイスはこれに限定されるものではない。
本実施形態の回路では、モータ13の駆動に伴って電磁ブレーキ31を解除する場合には、ロボットの軸の数に比例した電流を供給する必要があり、そのため、一般的に大容量であるモータ駆動電源11を使用する。モータ13が駆動されない状態で緊急時に電磁ブレーキ31を解除するときには、1軸分の電磁ブレーキ31の解除に必要な容量たけを有していればよい。モータ駆動電源11の電圧を第1回路電圧とし、ブレーキ用電源の電圧Vccを第2回路電圧とすれば、第1回路電圧と第2回路電圧とは異なっており、第2回路電圧は第1回路電圧よりも低い電圧とすることができる。第2回路電圧が第1回路電圧よりも低く、かつ、トランジスタTr2を流れる必要がある電流は1軸分の電磁ブレーキ31を駆動するために電流であるから、ハイサイドスイッチであるトランジスタTr2として、耐電圧が低くかつ小型であるデバイスを使用することができ、その駆動回路も小型のものとすることができる。
さらに図1に示すブレーキ駆動制御回路は、電磁ブレーキ31の駆動電圧をモニタしてトランジスタTr1,Tr2の故障検出を行なうために、モニタ回路41,42と故障検出回路45とを備えている。モニタ回路41は、トランジスタTr1と電磁ブレーキ31との接続点である接続点34に接続してTr1モニタ信号を出力し、モニタ回路42は、トランジスタTr2とダイオードD2の接続点35に接続してTr2モニタ信号を出力する。モニタ回路41,42は、例えば、抵抗分圧回路、レベルシフト回路、フォトカプラなどで構成することができる。図示したものでは、モニタ回路41,42の各々は、2本の抵抗を直列に接続しその中点からモニタ信号を出力する抵抗分圧回路によって構成されている。Tr1モニタ信号とTr2モニタ信号は、故障検出回路45に入力する。
次に、図1に示したブレーキ駆動制御回路の動作について、図2に示す状態遷移図を用いて説明する。ここでスタンバイ状態とは、ロボットコントローラ内の制御回路(不図示)にのみ通電されてモータ駆動電源11には電力が供給されていない状態であり、モータ13はフリー状態あるいはダイナミックブレーキ状態にある状態である。スタンバイ状態では、電磁ブレーキ31には電流は供給されず、電磁ブレーキ31によってモータ軸はロックされている。ローサイドスイッチであるトランジスタTr1はOff(オフ)状態(遮断状態)のままである。これに対し、サーボOn(オン)状態とは、モータ駆動電源11に電力が供給されてモータ13がサーボ駆動される状態(サーボロック状態)であり、このとき、電磁ブレーキ31は通電してブレーキ解除(リリース)状態となっている。
通常の動作において、スタンバイ状態では、モニタ回路41,42を用いてトランジスタTr1,Tr2の故障検出を行なう。電磁ブレーキ31は、非常に短いパルスを通電した場合には動作しないから、一定の周期(例えば100ミリ秒)で非常に短いパルス(例えば0.5ミリ秒)を故障検出回路45からトランジスタTr2に印加してトランジスタTr2を駆動し、故障を監視する。パルスの印加に対応してTr1モニタ信号の電圧がパルス状にハイレベルに変化しなければ、トランジスタTr1がOff状態にならない、すなわち故障している、あるいはモニタ回路41の故障と判断できる。一方、パルスの印加に対応してTr2モニタ信号の電圧がパルス状にハイレベルに変化しなければ、トランジスタTr2がOn状態(導通状態)にならない、すなわち故障している、あるいはモニタ回路42の故障と判断できる。いずれの故障が検出された場合であっても、故障検出回路45は故障検出信号を出力し、故障検出信号は、緊急時遮断信号の1つとして安全回路20に供給される。これにより、故障が検出された場合には、サーボOn状態に遷移することが禁止され、エラー状態に移行する。
ユーザによってロボットの操作スイッチが操作されることにより、スタンバイ状態からサーボOn状態への遷移が起こる。サーボOn状態への遷移では、操作スイッチの操作により安全回路20において遮断スイッチ21が導通状態となり、モータ駆動電源11に電力が供給される。この段階では、ブレーキ信号によってトランジスタTr1はOff状態のままとされる。また、スタンバイ状態で行なっていたトランジスタTr1,Tr2の故障検出動作を停止する。ロボットコントローラ内の制御回路(不図示)は、安全回路も似た信号によってサーボOn状態への遷移指令を検出する。なおこの段階で、Tr1モニタ信号がハイレベルとならなければ、トランジスタTr1がOff状態にならない故障である、電磁ブレーキ31それ自体の未接続(あるいは断線)である、及び、モニタ回路41が故障である、のいずれかであると判定され、故障検出回路45は故障検出信号を送出する。
サーボOn状態への遷移において、エラー(例えば故障検出回路45による故障の検出)がなければ、ロボットはサーボOn状態となる。サーボOn状態では、電磁ブレーキ31を解除するために、ブレーキ信号により、トランジスタTr1をOn状態に駆動する。このとき、トランジスタTr1は、常時On状態となるように駆動してもよいが、省電力を達成するためにパルス幅変調(PWM)で駆動することが好ましい。図3は、電磁ブレーキ31に加わる電圧を説明する図である。電磁ブレーキ31がモータ軸をロックしている状態をブレーキクランプ状態と呼ぶ。ブレーキクランプ状態からブレーキ解除状態に移行するためには、電磁ブレーキ31のソレノイドに比較的大きな電圧を加えて電磁ブレーキ31内のアクチュエータ(不図示)を動かす必要がある。これを吸引動作と呼ぶ。ひとたびアクチュエータがブレーキ解除状態での位置に動いた後にブレーキ解除状態を維持するためには、吸引動作のときよりも小さな電圧を加え続ければよい。これを保持動作と呼ぶ。そしてブレーキを動作させてブレーキクランプ状態とするためには、ブレーキ電圧をゼロにすればよい。実際には、トランジスタTr1の故障判定などのために、ブレーキクランプ状態でも電磁ブレーキ31が解除されないようなわずかな電流を流すようにする。本実施形態では、トランジスタTr1をPWM駆動することにより、電磁ブレーキ31に加わる平均電圧が吸引動作での値、保持動作での値、あるいはブレーキクランプ状態での値のいずれかになるようにして、電磁ブレーキ31の動作及び解除を行なっている。省電力を目的としない場合であっても、電磁ブレーキ31の定格電圧よりもモータ駆動電源11の電圧の方が高い場合には、PWM駆動を行なうようにする。なお故障検出のため、サーボOn状態においてトランジスタTr1を常時On状態とするときは、電磁ブレーキが応答しないような短いパルスであるテストパルスを交えてトランジスタTr1を駆動する。
故障検出回路45は、トランジスタTr1の駆動に同期してTr1モニタ信号を監視する。このとき、トランジスタTr1の駆動に同期してモニタ信号がハイレベルとならない場合には、故障検出回路45は、トランジスタTr1がOff状態にならない故障である、電磁ブレーキ31それ自体の未接続(あるいは断線)である、及び、モニタ回路41が故障である、のいずれかであると判定し、故障検出信号を出力する。同様に、トランジスタTr1の駆動に同期してモニタ信号がローレベルとならない場合には、故障検出回路45は、トランジスタTr1がOn状態にならない故障であると判定し、故障検出信号を出力する。いずれの故障を検出した場合であっても、あるいはロボットコントローラに対して非常停止が指示された場合であっても、安全回路20には異常時遮断信号が入力され、遮断スイッチ21が遮断状態となり、エラー状態に移行する。エラー状態に移行したときは直ちに電磁ブレーキ31を作動させる必要があるが、モータ駆動電源11の出力側には一般に大容量のコンデンサが設けられているので、遮断スイッチ21が遮断状態となってもモータ駆動電源11の出力電圧が直ちにゼロになるとは限らない。このとき仮に故障のためにトランジスタTr1がOff状態に移行しないとすると電磁ブレーキ31がモータ軸をロックしないこととなって危険である。そこで、サーボOn状態からエラー状態に移行するときは、モータ13にD軸電流を流す、あるいは回生電圧放電用抵抗を用いるなどして強制放電を行い、モータ駆動電源11の出力電圧を強制的にゼロとし、ブレーキの作動を早めることができる。
エラーの発生がないまま、操作スイッチの操作などによってロボットの通常停止が指示されると、サーボOn状態からスタンバイ状態への遷移が起こる。この遷移はサーボOff状態への遷移である。サーボOff状態への遷移では、操作スイッチの操作などによって遮断スイッチ21がOff状態とされ、ロボットコントローラ内の制御回路(不図示)は、安全回路20からの安全回路モニタ信号によりスタンバイ状態への遷移指令を検出する。また、サーボOff状態への遷移では、トランジスタTr1がOff状態にされ、テストパルスによるスタンバイ状態でのエラー検出を有効にして、スタンバイ状態に移行する。
次に、緊急時の動作について説明する。人や物が挟まれた状態でサーボ機構が故障した場合などを想定して、安全規格にも定められるように、モータ13を駆動するための電源が失われている状態においても電磁ブレーキ31を解除できる機能が設けられる。本発明のブレーキ駆動制御装置では、上述したように、ブレーキ用電源とトランジスタTr2とを利用してこの機能を実現しており、ロボットコントローラに接続する操作ペンダント(不図示)からのブレーキ操作コマンドの入力、あるいはロボットの各軸ごとに設けられたブレーキ操作スイッチの操作によって、ブレーキ用電源からの電力によって電磁ブレーキ31が解除される。この緊急時のブレーキ解除操作は、安全回路20内の遮断スイッチ21がOff状態であり、かつ、モータ駆動電源がOff状態のときに実行可能である。
図2の状態遷移図に示すように、ブレーキ解除スイッチ操作あるいはブレーキ解除コマンドOnによって、ブレーキ解除の準備の段階に移行する。この段階では、緊急時ブレーキ信号によって、ブレーキ用電源に接続するトランジスタTr2がOn状態にされる。次に、上述のサーボOn状態のときと同様に、PWM駆動によりトランジスタTr1をOn状態とし、あるいはテストパルスを交えてトランジスタTr1をOn状態とす
る。これにより電磁ブレーキ31に電流が流れ、ブレーキが解除される。ブレーキ用電源の電圧Vccはモータ駆動電源11の出力電圧よりも低い場合には、トランジスタTr1をPWM駆動とするか常時Onとするかは、電磁ブレーキ31の仕様と電圧Vccとに依存する。PWM駆動を行なうときは、トランジスタTr2をPWM駆動し、トランジスタTr1を常時On状態としてもよい。故障検出回路45は、上述と同様にトランジスタTr1の駆動と同期してTr1モニタ信号に基づいてトランジスタTr1の故障を検出しており、故障を検出した場合にはロボットはエラー状態に遷移する。このエラー状態では、トランジスタTr2がOff状態とされてブレーキ解除操作が禁止される。
緊急時のブレーキ解除操作では、ブレーキ解除の状態が一定時間経過したら電磁ブレーキ31への通電を終了することにより、ロボットの自重などにより軸が落下することを防止する。したがって、ブレーキ解除スイッチがOffにされたとき、ブレーキ解除コマンドがOffにされたとき、及び設定時間が経過したときに、ロボットはブレーキ解除状態から元のスタンバイ状態に戻る。
[本実施形態の効果] 上述した本実施形態によれば、通常時にはハイサイドスイッチを介さずにモータ駆動電源11からの電力により電磁ブレーキ31を解除し、モータ13の駆動のための電源が失われたときには比較低い電圧かつ小さな容量のブレーキ用電源からの電力で電磁ブレーキ31を解除できるようにしたので、ハイサイドスイッチやそのための駆動回路を小規模かつ低耐圧のものとすることができて、安全性を損なうことなくコストを削減することができる。また、モニタ回路41,42及び故障検出回路45を設けることにより、電磁ブレーキ31の解除のためのスイッチング素子であるトランジスタTr1,Tr2の故障を確実に検出でき、安全性をさらに高めることができる。
[発明の別の実施形態] 図4は、本発明の別の実施形態のブレーキ駆動制御回路を示している。図4に示すブレーキ駆動制御回路は、図1に示す回路におけるモニタ回路41,42を取り除き、その代わりに抵抗Rとフォトカプラ43を設けたものである。抵抗Rとフォトカプラ43内の発光素子とが直列に接続し、この直列接続体の両端は、それぞれ、電磁ブレーキ31の両端(接続点33,34)に接続している。フォトカプラ43内の受光素子側からの検出信号が故障検出回路45に入力している。この抵抗R及びフォトカプラ43からなる構成は、特許文献2において故障検出に用いられる構成と同じものであり、トランジスタTr1とトランジスタTr2とを別個にOn状態としたときと同時にOn状態にしたときの検出信号の変化に基づいて故障検出を行なうものである。図4に示す構成では、図1に示す回路で説明したものと同様の手順によって故障検出を行なうが、ブレーキ解除状態におけるテストパルスによっては、トランジスタTr1での故障の検出を行うことができない。ブレーキ解除に際してトランジスタTr1をPWM駆動するのであれば、電磁ブレーキ31における電流不連続の許容範囲及びフォトカプラ43の動作点を適切に設定することによっては、ブレーキ解除中にトランジスタTr1の故障を検出できる。
[本実施形態の効果] この実施形態においても、ハイサイドスイッチやそのための駆動回路を小規模かつ低耐圧のものとすることができて、安全性を損なうことなくコストを削減することができる。さらに本実施形態では、フォトカプラを用いるという簡素な構成により、電磁ブレーキ31の解除のためのスイッチング素子であるトランジスタTr1,Tr2の故障を検出でき、安全性をさらに高めることができる。
(参考例1)本願発明の他の実施例として、通電することによりブレーキを解除する電磁ブレーキを制御するブレーキ駆動制御回路であって、第1回路電圧の第1電源と前記電磁ブレーキの一方の端子との間に設けられた第1整流素子と、前記第1電源を動作させるために前記第1電源に電力を供給するラインに挿入された遮断スイッチと、前記電磁ブレーキの他方の端子と接地点との間に設けられた第1スイッチング素子と、前記第1回路電圧とは異なる第2回路電圧の第2電源と前記電磁ブレーキの前記一方の端子との間で直列に設けられた第2スイッチング素子及び第2整流素子と、を有するブレーキ駆動制御回路。
(参考例2)本願発明の他の実施例として、前記第2回路電圧は前記第1回路電圧よりも低い、請求項1に記載のブレーキ駆動制御回路。
(参考例3)前記第1電源は前記電磁ブレーキによるブレーキ動作の対象であるモータを駆動する電源であり、前記遮断スイッチは前記モータに対する安全回路に設けられている、参考例1または2に記載のブレーキ駆動制御回路。
(参考例4)前記電磁ブレーキの前記一方の端子及び前記他方の端子の電圧を監視するモニタ手段を備える、参考例1乃至3のいずれか1項に記載のブレーキ駆動制御回路。
(参考例5)前記モニタ手段は、前記電磁ブレーキの前記他方の端子と前記第1スイッチング素子との接続点の電圧を検出する第1モニタ回路と、前記第2スイッチング素子と前記第2整流素子との接続点の電圧を検出する第2モニタ回路と、を有する、参考例4に記載のブレーキ駆動制御回路。
(参考例6)前記電磁ブレーキの両端間の電圧を監視する回路を有するモニタ手段を備える、参考例1乃至3の記載のブレーキ駆動制御回路。
(参考例7)前記モニタ手段での監視結果に基づいて故障検出信号を出力し、前記遮断スイッチを開放状態に維持させる故障検出回路をさらに有する参考例4乃至6のいずれか1項に記載のブレーキ駆動制御回路。
(参考例8)前記故障検出信号が出力されたときに前記第1電源の出力を強制的に放電させる、参考例7に記載のブレーキ駆動制御回路。
(参考例9)前記遮断スイッチが開放しかつ前記第1電源が非動作であるときに、ブレーキ解除スイッチの操作またはブレーキ解除コマンドの入力に基づき前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子が動作状態とされて前記電磁ブレーキが解除される、参考例1乃至8のいずれか1項に記載のブレーキ駆動制御回路。
(参考例10)前記電磁ブレーキの解除状態を維持するときに前記電磁ブレーキに加わる電圧が前記電磁ブレーキを解除状態に移行させるときに前記電磁ブレーキに加わる電圧よりも低くなるように、前記第1スイッチング素子をPWM駆動する、参考例1乃至9のいずれか1項に記載のブレーキ駆動制御回路。
(参考例11)第1回路電圧の第1電源と電磁ブレーキの一方の端子との間に設けられた第1整流素子と、前記電磁ブレーキの他方の端子と接地点との間に設けられた第1スイッチング素子と、前記第1回路電圧とは異なる第2回路電圧の第2電源と前記電磁ブレーキの前記一方の端子との間で直列に設けられた第2スイッチング素子及び第2整流素子と、を有し、通電することによりブレーキを解除する前記電磁ブレーキを制御するブレーキ駆動制御回路における故障検出方法であって、前記第1電源が非動作であるときに前記電磁ブレーキが応答しない長さのパルスを用いて前記第2スイッチング素子を駆動し、前記電磁ブレーキの前記他方の端子と前記第1スイッチング素子との接続点の電圧と、前記第2スイッチング素子と前記第2整流素子との接続点の電圧とを監視する、故障検出方法。
(参考例12)前記電磁ブレーキを解除しているときに前記第1スイッチング素子をPWM駆動し、前記PWM駆動に同期して前記電磁ブレーキの前記他方の端子と前記第1スイッチング素子との接続点の電圧を監視する、参考例11に記載の故障検出方法。