より具体的には、ロール成形工程において、集電箔に電極合材を転写するための第2ロールと、これに対向する第1ロールと、からなる一対のロールの間隙に電極合材を通すことによって、電極合材を膜状にすると共に、膜状にした電極合材を第2ロールに付着させる。その後、転写工程において、第2ロールに付着している膜状の電極合材を、集電箔の表面上に転写する(付着させる)。その後 電極合材層形成工程において、集電箔の表面上に付着させた膜状の電極合材を乾燥させることで、集電箔の表面上に電極合材層を形成して、電極シートを作製する。
なお、特許文献1では、第2ロールの周速度を第1ロールの周速度よりも速くしている。これにより、第1ロールと第2ロールとの間で圧縮されて膜状にされた電極合材(湿潤造粒体)は、第1ロールと第2ロールとの間隙を通過するとき、第1ロールとの接触面積(液架橋面積)よりも第2ロールとの接触面積(液架橋面積)が大きくなる。これにより、膜状の電極合材(湿潤造粒体)は、第1ロールと第2ロールとの間隙を通過するとき、第2ロールの表面に付着する(担持される)。
(実施例1)
以下、本発明を具体化した実施例1について、図面を参照しつつ詳細に説明する。本実施例1は、リチウムイオン二次電池の負極シート(電極シート)の製造に、本発明を適用したものである。本実施例1では、負極シートの負極合材層(電極合材層)を形成するための負極合材(電極合材)の材料として、負極活物質(電極活物質)と、結着材と、溶媒とを使用する。
なお、本実施例1では、負極活物質として、粉末状の炭素材料(具体的には、アモルファスコートグラファイト)を使用する。また、溶媒として、水を使用する。また、結着材として、CMC(カルボキシメチルセルロース)を使用する。
本実施例1において製造される負極シート19は、図3に示すように、負極集電箔7と、この負極集電箔7の表面上に積層された負極合材層18とを有する。
ここで、本実施例1にかかる電極シート(負極シート19)の製造方法について、詳細に説明する。図1は、実施例1にかかるロール成膜装置20の斜視概略図である。図2は、ロール成膜装置20の側面視概略図である。図4は、実施例1にかかる電極シート(負極シート19)の製造方法の流れを示すフローチャートである。図5は、図4のフローチャートのサブルーチンであり、負極合材6の製造方法の流れを示すフローチャートである。図6は、負極湿潤造粒体16(負極合材6)の作製手順を示す図である。
図4に示すように、まず、ステップS1(電極合材作製工程)において、負極活物質13(炭素材料)と結着材14(CMC)と溶媒15(水)とを混合しつつ造粒して多数の負極湿潤造粒体16を作製すると共に、多数の負極湿潤造粒体16からなる負極合材6を作製する。具体的には、図5に示すように、ステップS11(第1混合工程)において、負極活物質13と結着材14とを混合して、先行混合体6Aを作製する。本実施例1では、公知の攪拌造粒機(図示なし)内に負極活物質13と結着材14とを投入し、攪拌することで、負極活物質13と結着材14とを混合(分散)して、先行混合体6Aとしている(図6参照)。
次いで、ステップS12(第2混合工程)に進み、負極活物質13と結着材14とを混合してなる先行混合体6Aと、溶媒15である水とを混合して、負極湿潤造粒体16を作製すると共に、多数の負極湿潤造粒体16からなる負極合材6を作製する。具体的には、負極活物質13と結着材14とを混合してなる先行混合体6Aが収容されている前述の攪拌造粒機内に、溶媒15である水を加え、攪拌することで、多数の負極湿潤造粒体16にする。ステップS12(第2混合工程)の混合では、負極湿潤造粒体16を構成する全成分が混合されることとなる。この全成分混合を行うことにより、多数の負極湿潤造粒体16からなる負極合材6が得られる。
また、本実施例1のステップS12(第2混合工程)では、工程の前半と後半とで、攪拌の回転速度を変更している。具体的には、前半は低速回転で、負極活物質13と結着材14とを混合してなる先行混合体6Aと溶媒15である水とを攪拌(混合)している。これにより、適切に、負極活物質13と結着材14とに溶媒15(水)を吸収(保持)させつつこれらを造粒して、湿潤造粒体を作製することができる。但し、低速回転の攪拌で得られる湿潤造粒体は、粒径が大きすぎて、後述するステップS2(ロール成形工程)において適切に膜状にすることができない。このため、ステップS12(第2混合工程)の後半は、高速回転で攪拌し、湿潤造粒体を微細化して、ステップS2(ロール成形工程)において適切に膜状にできる粒径の負極湿潤造粒体16としている(図6参照)。
なお、負極湿潤造粒体16は、図7に示すように、溶媒15である水が、複数の負極活物質13の粒子と結着材14(図示省略)に保持(吸収)された状態で、これらが集合(結合)した物質(粒状体)である。負極合材6は、このような負極湿潤造粒体16の集合体である。
また、本実施例1では、ステップS11(第1混合工程)及びステップS12(第2混合工程)において混合する各成分の配合比は、次のようにしている。ステップS11(第1混合工程)では、負極活物質13と結着材14との混合比(配合比)を、重量比で99:1としている。また、ステップS12(第2混合工程)では、負極湿潤造粒体16のNV(固形分率)が重量比で71%となるように、溶媒15(水)を配合している。具体的には、溶媒15(水)以外の成分、すなわち負極活物質13及び結着材14が固形分(不揮発成分)であり、これらの合計重量が、負極湿潤造粒体16の全体重量(負極活物質13と結着材14と溶媒15の合計重量)に対して、71wt%となるようにする。
次に、ステップS2(ロール成形工程)に進み、ステップS1(電極合材作製工程)で作製された負極合材6(負極湿潤造粒体16)を、対向して回転する第1ロール1と第2ロール2との間隙に通すことによって、負極合材6を圧縮しつつ膜状にして、膜状にした負極合材6を第2ロール2の表面2bに付着させる(図1及び図2参照)。その後、ステップS3(転写工程)に進み、第2ロール2の表面2bに付着している膜状の負極合材6(膜状負極合材8とする)を、負極集電箔7の表面上に転写する。なお、本実施例1では、図1及び図2に示すロール成膜装置20を用いて、ステップS2(ロール成形工程)及びステップS3(転写工程)を連続して行う。
ロール成膜装置20は、図1及び図2に示すように、第1ロール1と第2ロール2と第3ロール3の、3つのロールを有している。これらの3つのロール1,2,3は、水平方向に一列に並べて配置され、互いに平行に設けられている。また、第1ロール1と第2ロール2とは、わずかに間隔を置いて対面している。同様に、第2ロール2と第3ロール3とも、わずかに間隔を置いて対面している。さらに、第1ロール1と第2ロール2との対面箇所の上側には、仕切り板4と5が、ロールの幅方向(軸方向、図2において紙面に直交する方向)に離間して配置されている。
また、これら3つのロール1~3の回転方向は、図1及び図2において矢印で示すように、隣り合う(対面する)2つのロールの回転方向が互いに逆方向となるように、すなわち、対面する2つのロールが互いに順方向回転となるように設定されている。そして、第1ロール1と第2ロール2との対面箇所では、これらのロールの表面が回転により下向きに移動するようになっている。また、第2ロール2と第3ロール3との対面箇所では、これらのロールの表面が回転により上向きに移動するようになっている。
また、ロールの周速度(回転によるロールの表面の移動速度)は、第1ロール1において最も遅く、第3ロール3において最も速く、第2ロール2ではそれらの中間となるように設定されている。従って、ステップS2(ロール成形工程)において、第2ロール2の周速度を第1ロール1の周速度よりも速くしている。
このようなロール成膜装置20では、第1ロール1と第2ロール2との対面箇所の上に位置する仕切り板4と5の間の収容空間内に、ステップS1(電極合材作製工程)で作製した負極合材6(負極湿潤造粒体16)が投入される。また、第3ロール3には、負極集電箔7が掛け渡されている。負極集電箔7は、金属箔(銅箔)であり、第3ロール3の回転と共に、第2ロール2と第3ロール3との対面箇所を通って、第3ロール3の右下から右上へと搬送されるようになっている。また、第2ロール2と第3ロール3との対面箇所には、負極集電箔7が通されている状態で、さらに第2ロール2と負極集電箔7との間に若干の隙間があるようにされている。すなわち、第2ロール2と第3ロール3との間の隙間(負極集電箔7が存在していない状態での隙間)は、負極集電箔7の厚さより少し広い。
ステップS2(ロール成形工程)では、まず、ロール成膜装置20の仕切り板4と5の間の収容空間内に、負極合材6を投入する。すると、投入された負極合材6が、第1ロール1と第2ロール2との対面箇所の隙間内に供給され、第1ロール1及び第2ロール2の回転により、両ロールの間の隙間を通過して膜状となる(図1、図2、図8参照)。このとき、第1ロール1よりも第2ロール2のほうが周速度が速いので、図8に示すように、負極合材6に含まれる負極湿潤造粒体16は、第1ロール1の表面1bよりも第2ロール2の表面2bにおいてより大きく引き伸ばされ、第1ロール1の表面1bよりも第2ロール2の表面2bでの接触面積(液架橋面積)が大きくなることで、第2ロール2の表面2bに付着する(担持される)。なお、図8は、図2のA部拡大図である。
第2ロール2の表面2bに付着した膜状の負極合材6(膜状負極合材8)は、第2ロール2の回転と共に搬送されてゆく(図1、図2参照)。その後、第2ロール2と第3ロール3との対面箇所において、負極集電箔7と膜状負極合材8とが出会う。
すると、ステップS3(転写工程)において、膜状負極合材8が、第2ロール2から、より移動速度の速い第3ロール3と共に回転している負極集電箔7の表面上に転写される(付着する)。これにより、負極集電箔7上に膜状負極合材8が成膜された、膜状負極合材付き集電箔9が得られる。
ところで、ステップS1(電極合材作製工程)において、負極湿潤造粒体16からなる負極合材6を作製するとき、負極合材6の全体にわたって溶媒15を均一に分散させることが難しい。このため、負極合材6において、当該負極合材6を構成する複数の負極湿潤造粒体16にかかる固形分率(換言すれば、溶媒含有率)に、大きなバラツキが生じることがあった。すなわち、固形分率の高い(換言すれば、溶媒含有率の低い)負極湿潤造粒体16と固形分率の低い(換言すれば、溶媒含有率の高い)負極湿潤造粒体16とが、負極合材6中に混在することがあった。
また、負極合材6を構成する各々の負極湿潤造粒体16においても、固形分率(換言すれば、溶媒含有率)に大きなバラツキが生じることがあった。すなわち、1つの負極湿潤造粒体16の中で、固形分率の高い(換言すれば、溶媒含有率の低い)部位と固形分率の低い(換言すれば、溶媒含有率の高い)部位とが混在することがあった。例えば、図7に示す負極湿潤造粒体16Bでは、図において右側の部位が相対的に固形分率が高い(換言すれば、溶媒含有率の低い)第1部位16B1となっており、左側の部位が相対的に固形分率が低い(換言すれば、溶媒含有率の高い)第2部位16B2となっており、第1部位16B1と第2部位16B2とでは、固形分率(溶媒含有率)が大きく異なっている。
従来、このような負極湿潤造粒体16からなる負極合材6が、ステップS2(ロール成形工程)において、対向して回転する第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するとき、負極合材6中の一部の負極湿潤造粒体16が、第2ロール2の表面2bに付着せずに、第1ロール1の表面1bに付着してしまうことがあった。このため、第2ロール2の表面2bに付着する負極合材6の膜に孔が空いてしまう(あるいは、部分的に膜の厚みが極端に薄くなる)ことがあった。その結果、ステップS3(転写工程)において、第2ロール2の表面2bから負極集電箔7の表面上に転写させた負極合材6の膜(膜状負極合材8)に孔が空いた状態となる(あるいは、部分的に膜の厚みが極端に薄くなる)成膜不良(成膜欠点)が発生することがあった。この成膜不良(成膜欠点)が多い場合には、電池を構成する負極シート19として、適切に使用できないことがあった。
このような不具合が生じる理由は、以下のように考えられる。具体的には、例えば、図7に示すような、固形分率の高い(換言すれば、溶媒含有率の低い)第1部位16B1と固形分率の低い(換言すれば、溶媒含有率の高い)第2部位16B2とを有する負極湿潤造粒体16Bが、図8に示すように、ステップS2(ロール成形工程)において、対向して回転する第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するとき、第1部位16B1が第2ロール2の表面2bに接触すると共に、第2部位16B2が第1ロール1の表面1bに接触した場合には、当該負極湿潤造粒体16Bと第1ロール1の表面1bとの間の液架橋力が、当該負極湿潤造粒体16Bと第2ロール2の表面2bとの間の液架橋力よりも大きくなる傾向にある。
このために、当該負極湿潤造粒体16Bが、ステップS2(ロール成形工程)において、対向して回転する第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するときに、図21に示すように、第2ロール2の表面2bに付着せずに、第1ロール1の表面1bに付着してしまうことがある。このため、第2ロール2の表面2bに付着する負極合材6の膜(膜状負極合材8)において、当該負極湿潤造粒体16Bが抜けた部位に孔が空いてしまう(あるいは、当該部位において膜の厚みが極端に薄くなる)ことがある。その結果、ステップS3(転写工程)において、第2ロール2の表面2bから負極集電箔7の表面上に転写させた負極合材6の膜(膜状負極合材8)においても、図22に示すように、当該部位に孔Hが空いた状態となり(あるいは、当該部位において膜の厚みが極端に薄くなり)、成膜不良(成膜欠点)が発生すると考えられる。
これに対し、本実施例1では、ロール成膜装置20に、乾燥装置60を設けている。この乾燥装置60は、エアARを外部に吹き出すためのエア吹き出し口61bを有するエアノズル61を備えている(図1及び図2参照)。このエアノズル61は、エア吹き出し口61bが第1ロール1の表面1bに対向するように配置されている。本実施例1のロール成形工程では、乾燥装置60のエアノズル61から、第1ロール1の表面1bにエアARを吹き付けることによって、第1ロール1の表面1bを乾燥させつつ、負極合材6(負極湿潤造粒体16)を第1ロール1と第2ロール2との間隙に通すようにしている。
このように、第1ロール1の表面1bにエアAR(大気)を吹き付けることによって第1ロール1の表面1bを乾燥させることで、第1ロール1の表面1bの水分量を、第2ロール2の表面2bの水分量よりも少なくすることができる。換言すれば、第2ロール2の表面2bの水分量を、第1ロール1の表面1bの水分量よりも多くすることができる。これにより、ステップS2(ロール成形工程)において、負極合材6が第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するときの、負極合材6に含まれる負極湿潤造粒体16と第1ロール1の表面1bとの間の液架橋力の平均値F1(kPa)と、負極合材6に含まれる負極湿潤造粒体16と第2ロール2の表面2bとの間の液架橋力の平均値F2(kPa)とが、F1<F2の関係を満たすようになる。
このようにすることで、ステップS2(ロール成形工程)において、負極合材6に含まれる負極湿潤造粒体16が、対向して回転する第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するとき、第1ロール1と第2ロール2のうち、相対的に液架橋力の大きい第2ロール2の表面2bに付着し易くなる。従って、第2ロール2の表面2b上に形成される負極合材の膜(膜状負極合材8)において、孔(あるいは、膜厚の極端な低下)が生じ難くなり、後のステップS3(転写工程)において、負極集電箔7の表面上に転写した負極合材6の膜(膜状負極合材8)にも孔(あるいは、膜厚の極端な低下)が生じ難くなる。すなわち、成膜不良(成膜欠点)が生じ難くなる。
具体的には、例えば、図7に示すような、固形分率の高い(換言すれば、溶媒含有率の低い)第1部位16B1と固形分率の低い(換言すれば、溶媒含有率の高い)第2部位16B2とを有する負極湿潤造粒体16Bが、図8に示すように、ステップS2(ロール成形工程)において、対向して回転する第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するとき、第1部位16B1が第2ロール2の表面2bに接触すると共に、第2部位16B2が第1ロール1の表面1bに接触した場合でも、当該負極湿潤造粒体16Bと第2ロール2の表面2bとの間の液架橋力が、当該負極湿潤造粒体16Bと第1ロール1の表面1bとの間の液架橋力よりも大きくなり得る。しかも、第1ロール1よりも第2ロール2のほうが周速度が速いので、図8に示すように、当該負極湿潤造粒体16Bは、第1ロール1の表面1bよりも第2ロール2の表面2bにおいてより大きく引き伸ばされ、第1ロール1の表面1bよりも第2ロール2の表面2bでの接触面積(液架橋面積)が大きくなる。これにより、図9に示すように、当該負極湿潤造粒体16Bを、第2ロール2の表面2bに付着させることが可能となる。
従って、本実施例1のロール成形工程(ステップS2)では、第2ロール2の表面2bに付着する負極合材6の膜(膜状負極合材8)において、負極合材6に含まれる一部の負極湿潤造粒体16が第1ロール1の表面1bに付着したことに起因する孔(あるいは、膜厚の極端な低下)が生じ難くなる。その結果、後の転写工程(ステップS3)において、第2ロール2の表面2bから負極集電箔7の表面上に転写させた負極合材6の膜(膜状負極合材8)にも孔(あるいは、膜厚の極端な低下)が生じ難くなり、成膜不良(成膜欠点)が発生し難くなる。
その後、ステップS4(電極合材層形成工程)に進み、図示しない乾燥炉内で、膜状負極合材付き集電箔9を乾燥させる(負極集電箔7の表面上に転写した膜状負極合材8を乾燥させる)。これにより、膜状負極合材8(負極湿潤造粒体16)に吸収(保持)されている溶媒15(水)が除去されて(蒸発して)、膜状負極合材8が負極合材層18(電極合材層)になる(図2参照)。これにより、負極集電箔7の表面上に負極合材層18を有する負極シート19(図3参照)が得られる。
なお、本実施例1では、膜状負極合材8(負極合材層18)を、負極集電箔7の片面のみに形成する(すなわち、片面塗工の負極シートを製造する)例を示しているが、負極集電箔7の両面に形成する(すなわち、両面塗工の負極シートを製造する)ようにしても良い。負極集電箔7の両面に負極合材層18を形成する場合は、負極集電箔7の片面に負極合材層18を形成した片面塗工の負極シートを製造した後、当該片面塗工の負極シートの負極集電箔7のうち負極合材層18を形成していない面に対し、ステップS2,S3,S4の処理を行うようにすれば良い。
作製した負極シート19は、その後、後述する正極シート49及びセパレータと組み合わされて、電極体を形成する。次いで、この電極体に端子部材を取り付けた後、電池ケース内に電極体及び電解液を収容する。これにより、リチウムイオン二次電池が完成する。
(実施例2)
次に、本発明の実施例2について、図面を参照しつつ詳細に説明する。本実施例2は、リチウムイオン二次電池の正極シート(電極シート)の製造に、本発明を適用したものである。本実施例2では、正極シートの正極合材層(電極合材層)を形成するための正極合材(電極合材)の材料として、正極活物質(電極活物質)と、結着材と、導電材と、溶媒とを使用する。
なお、本実施例2では、正極活物質として、ニッケルコバルトアルミ酸リチウムを使用する。また、導電材として、アセチレンブラックを使用する。また、結着材として、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVdFともいう)を使用する。また、溶媒として、N-メチルピロリドン(以下、NMPともいう)を使用する。
本実施例2において製造される正極シート49は、図3に示すように、正極集電箔37と、この正極集電箔37の表面上に積層された正極合材層48とを有する。
ここで、本実施例2にかかる電極シート(正極シート49)の製造方法について、詳細に説明する。図10は、実施例2にかかる電極シート(正極シート49)の製造方法の流れを示すフローチャートである。図11は、図10のフローチャートのサブルーチンであり、正極合材36の製造方法の流れを示すフローチャートである。図12は、正極湿潤造粒体56(正極合材36)の作製手順を示す図である。なお、本実施例2では、実施例1と同様に、図1及び図2に示すロール成膜装置20を用いて、後述するステップT2(ロール成形工程)及びステップT3(転写工程)を行う。
図10に示すように、まず、ステップT1(電極合材作製工程)において、正極活物質33と導電材44と結着材34と溶媒35とを混合しつつ造粒して多数の正極湿潤造粒体56を作製すると共に、多数の正極湿潤造粒体56からなる正極合材36を作製する。具体的には、図11に示すように、ステップT11(第1混合工程)において、図示しない公知の攪拌造粒機を用いて、正極活物質33と導電材44とを混合して、先行混合体36Aを作製する。(図12参照)。
次いで、ステップT12(第2混合工程)に進み、正極活物質33と導電材44とを混合してなる先行混合体36Aと、結着材34及び溶媒35とを混合して、正極湿潤造粒体56を作製すると共に、多数の正極湿潤造粒体56からなる正極合材36を作製する。具体的には、正極活物質33と導電材44とを混合してなる先行混合体36Aが収容されている攪拌造粒機内に、結着材34と溶媒35とを混合した混合液を加え、攪拌することで、多数の正極湿潤造粒体56にする。ステップT12(第2混合工程)の混合では、正極湿潤造粒体56を構成する全成分が混合されることとなる。この全成分混合を行うことにより、多数の正極湿潤造粒体56からなる正極合材36が得られる。
なお、正極湿潤造粒体56は、図7に示すように、溶媒35であるNMPが、複数の正極活物質33の粒子と導電材44の粒子(図示省略)と結着材34(図示省略)に保持(吸収)された状態で、これらが集合(結合)した物質(粒状体)である。正極合材36は、このような正極湿潤造粒体56の集合体である。
また、本実施例1では、ステップT11(第1混合工程)及びステップT12(第2混合工程)において混合する各成分の配合比は、次のようにしている。固形分である正極活物質33と導電材44と結着材34との混合比(配合比)を、重量比で94.4:4.1:1.5としている。また、ステップT12(第2混合工程)では、正極湿潤造粒体56のNV(固形分率)が重量比で81%となるように、溶媒35を配合している。
次に、ステップT2(ロール成形工程)に進み、ステップT1(電極合材作製工程)で作製された正極合材36(正極湿潤造粒体56)を、対向して回転する第1ロール1と第2ロール2との間隙に通すことによって、正極合材36を圧縮しつつ膜状にして、膜状にした正極合材36を第2ロール2の表面2bに付着させる(図1及び図2参照)。その後、ステップT3(転写工程)に進み、第2ロール2の表面2bに付着している膜状の正極合材36(膜状正極合材38とする)を、正極集電箔37の表面上に転写する。これにより、正極集電箔37上に膜状正極合材38が成膜された、膜状正極合材付き集電箔39が得られる。
ところで、本実施例2でも、実施例1と同様に、ロール成膜装置20に乾燥装置60を設けている。本実施例2のロール成形工程でも、実施例1のロール成形工程と同様に、乾燥装置60のエアノズル61から、第1ロール1の表面1bにエアARを吹き付けることによって、第1ロール1の表面1bを乾燥させつつ、正極合材36(正極湿潤造粒体56)を第1ロール1と第2ロール2との間隙に通すようにしている(図1及び図2参照)。
このように、第1ロール1の表面1bにエアAR(大気)を吹き付けることによって第1ロール1の表面1bを乾燥させることで、第1ロール1の表面1bの水分量を、第2ロール2の表面2bの水分量よりも少なくすることができる。換言すれば、第2ロール2の表面2bの水分量を、第1ロール1の表面1bの水分量よりも多くすることができる。これにより、ステップT2(ロール成形工程)において、正極合材36が第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するときの、正極合材36に含まれる正極湿潤造粒体56と第1ロール1の表面1bとの間の液架橋力の平均値F1(kPa)と、正極合材36に含まれる正極湿潤造粒体56と第2ロール2の表面2bとの間の液架橋力の平均値F2(kPa)とが、F1<F2の関係を満たすようになる。
このようにすることで、ステップT2(ロール成形工程)において、正極合材36に含まれる正極湿潤造粒体56が、対向して回転する第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するとき、第1ロール1と第2ロール2のうち、相対的に液架橋力の大きい第2ロール2の表面2bに付着し易くなる。従って、第2ロール2の表面2b上に形成される正極合材36の膜(膜状正極合材38)において、孔(あるいは、膜厚の極端な低下)が生じ難くなり、後のステップT3(転写工程)において、正極集電箔37の表面上に転写した正極合材36の膜(膜状正極合材38)にも孔(あるいは、膜厚の極端な低下)が生じ難くなる。すなわち、成膜不良(成膜欠点)が生じ難くなる。
具体的には、例えば、図7に示すような、固形分率の高い(換言すれば、溶媒含有率の低い)第1部位56B1と固形分率の低い(換言すれば、溶媒含有率の高い)第2部位56B2とを有する正極湿潤造粒体56Bが、図8に示すように、ステップT2(ロール成形工程)において、対向して回転する第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するとき、第1部位56B1が第2ロール2の表面2bに接触すると共に、第2部位56B2が第1ロール1の表面1bに接触した場合でも、当該正極湿潤造粒体56Bと第2ロール2の表面2bとの間の液架橋力が、当該正極湿潤造粒体56Bと第1ロール1の表面1bとの間の液架橋力よりも大きくなり得る。しかも、第1ロール1よりも第2ロール2のほうが周速度が速いので、図8に示すように、当該正極湿潤造粒体56Bは、第1ロール1の表面1bよりも第2ロール2の表面2bにおいてより大きく引き伸ばされ、第1ロール1の表面1bよりも第2ロール2の表面2bでの接触面積(液架橋面積)が大きくなる。これにより、図9に示すように、当該正極湿潤造粒体56Bを、第2ロール2の表面2bに付着させることが可能となる。
その後、ステップT4(電極合材層形成工程)に進み、図示しない乾燥炉内で、膜状正極合材付き集電箔39を乾燥させる(正極集電箔37の表面上に転写した膜状正極合材38を乾燥させる)。これにより、膜状正極合材38(正極湿潤造粒体56)に吸収(保持)されている溶媒35が除去されて(蒸発して)、膜状正極合材38が正極合材層48(電極合材層)になる(図2参照)。これにより、正極集電箔37の表面上に正極合材層48を有する正極シート49(図3参照)が得られる。
なお、本実施例2では、膜状正極合材38(正極合材層48)を、正極集電箔37の片面のみに形成する(すなわち、片面塗工の正極シートを製造する)例を示しているが、正極集電箔37の両面に形成する(すなわち、両面塗工の正極シートを製造する)ようにしても良い。正極集電箔37の両面に正極合材層48を形成する場合は、正極集電箔37の片面に正極合材層48を形成した片面塗工の正極シートを製造した後、当該片面塗工の正極シートの正極集電箔37のうち正極合材層48を形成していない面に対し、ステップT2,T3,T4の処理を行うようにすれば良い。
(実施例3)
次に、本発明の実施例3について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本実施例3は、実施例1と比較して、ステップS2(ロール成形工程)及びステップS3(転写工程)を行うために使用するロール成膜装置のみが異なり、その他については同様である。従って、ここでは、実施例1と異なる点を中心に説明し、同様な点については説明を省略または簡略化する。
本実施例3は、実施例1と同様に、リチウムイオン二次電池の負極シート19(電極シート)の製造に、本発明を適用したものである。本実施例3では、実施例1と同様に、負極シート19の負極合材層18(電極合材層)を形成するための負極合材6(電極合材)の材料として、負極活物質13(電極活物質)と、結着材14と、溶媒15とを使用する。以下、本実施例3にかかる電極シート(負極シート19)の製造方法について、詳細に説明する。
図4に示すように、まず、ステップS1(電極合材作製工程)において、負極活物質13(炭素材料)と結着材14(CMC)と溶媒15(水)とを混合しつつ造粒して多数の負極湿潤造粒体16を作製すると共に、多数の負極湿潤造粒体16からなる負極合材6を作製する。すなわち、実施例1と同等の負極合材6を作製する。
次いで、ステップS2(ロール成形工程)に進み、ステップS1(電極合材作製工程)で作製された負極合材6(負極湿潤造粒体16)を、対向して回転する第1ロール1と第2ロール2との間隙に通すことによって、負極合材6を圧縮しつつ膜状にして、膜状にした負極合材6を第2ロール2の表面2bに付着させる(図13及び図14参照)。その後、ステップS3(転写工程)に進み、第2ロール2の表面2bに付着している膜状の負極合材6(膜状負極合材8とする)を、負極集電箔7の表面上に転写する。
なお、本実施例3では、実施例1と異なり、図13及び図14に示すロール成膜装置120を用いて、ステップS2(ロール成形工程)及びステップS3(転写工程)を行う。
本実施例3のロール成膜装置120は、図13及び図14に示すように、実施例1のロール成膜装置20と比較して、乾燥装置60を乾燥装置160に変更した点のみが異なり、その他は同様である。
本実施例3のロール成膜装置120に設けられている乾燥装置160は、ドライエアDARを外部に吹き出すためのエア吹き出し口161bを有するエアノズル161を備えている(図13及び図14参照)。このエアノズル161は、エア吹き出し口161bが第1ロール1の表面1bに対向するように配置されている。本実施例3のロール成形工程では、乾燥装置160のエアノズル161から、第1ロール1の表面1bにドライエアDARを吹き付けることによって、第1ロール1の表面1bを乾燥させつつ、負極合材6(負極湿潤造粒体16)を第1ロール1と第2ロール2との間隙に通すようにしている。なお、本実施例3では、露点が-30℃以下のドライエアDARを、第1ロール1の表面1bに吹き付けるようにしている。
本実施例3では、このように、第1ロール1の表面1bにドライエアDARを吹き付けることによって第1ロール1の表面1bを乾燥させることで、実施例1と比較して、第1ロール1の表面1bの水分量を、第2ロール2の表面2bの水分量よりも、より一層少なくすることができる。換言すれば、実施例1と比較して、第2ロール2の表面2bの水分量を、第1ロール1の表面1bの水分量よりも、より一層多くすることができる。
これにより、本実施例3では、ステップS2(ロール成形工程)において、負極合材6が第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するときの、負極合材6に含まれる負極湿潤造粒体16と第1ロール1の表面1bとの間の液架橋力の平均値F1(kPa)と、負極合材6に含まれる負極湿潤造粒体16と第2ロール2の表面2bとの間の液架橋力の平均値F2(kPa)とが、F1<F2の関係を満たすようになる。詳細には、本実施例3では、実施例1と比較して、F1とF2との差を大きくすることができる。すなわち、F1に比べて、F2をより一層大きくすることができる。
このようにすることで、ステップS2(ロール成形工程)において、負極合材6に含まれる負極湿潤造粒体16が、対向して回転する第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するとき、第1ロール1と第2ロール2のうち、相対的に液架橋力の大きい第2ロール2の表面2bに、より一層付着し易くなる。従って、第2ロール2の表面2b上に形成される負極合材の膜(膜状負極合材8)において、孔(あるいは、膜厚の極端な低下)がより一層生じ難くなり、後のステップS3(転写工程)において、負極集電箔7の表面上に転写した負極合材6の膜(膜状負極合材8)に、孔(あるいは、膜厚の極端な低下)がより一層生じ難くなる。すなわち、成膜不良(成膜欠点)がより一層生じ難くなる。
その後、ステップS4(電極合材層形成工程)に進み、図示しない乾燥炉内で、膜状負極合材付き集電箔9を乾燥させる(負極集電箔7の表面上に転写した膜状負極合材8を乾燥させる)。これにより、膜状負極合材8(負極湿潤造粒体16)に吸収(保持)されている溶媒15(水)が除去されて(蒸発して)、膜状負極合材8が負極合材層18(電極合材層)になる(図2参照)。これにより、負極集電箔7の表面上に負極合材層18を有する負極シート19(図3参照)が得られる。
(実施例4)
次に、本発明の実施例4について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本実施例4は、実施例2と比較して、ステップT2(ロール成形工程)及びステップT3(転写工程)を行うために使用するロール成膜装置のみが異なり、その他については同様である。従って、ここでは、実施例2と異なる点を中心に説明し、同様な点については説明を省略または簡略化する。
本実施例4は、実施例2と同様に、リチウムイオン二次電池の正極シート49(電極シート)の製造に、本発明を適用したものである。本実施例4では、実施例2と同様に、正極シート49の正極合材層48(電極合材層)を形成するための正極合材36(電極合材)の材料として、正極活物質33(電極活物質)と、結着材34と、導電材44と、溶媒35とを使用する。以下、本実施例4にかかる電極シート(正極シート49)の製造方法について、詳細に説明する。
図10に示すように、まず、ステップT1(電極合材作製工程)において、正極活物質33と導電材44と結着材34と溶媒35とを混合しつつ造粒して多数の正極湿潤造粒体56を作製すると共に、多数の正極湿潤造粒体56からなる正極合材36を作製する。すなわち、実施例2と同等の正極合材36を作製する。
次に、ステップT2(ロール成形工程)に進み、ステップT1(電極合材作製工程)で作製された正極合材36(正極湿潤造粒体56)を、対向して回転する第1ロール1と第2ロール2との間隙に通すことによって、正極合材36を圧縮しつつ膜状にして、膜状にした正極合材36を第2ロール2の表面2bに付着させる(図13及び図14参照)。その後、ステップT3(転写工程)に進み、第2ロール2の表面2bに付着している膜状の正極合材36(膜状正極合材38とする)を、正極集電箔37の表面上に転写する。
なお、本実施例4では、実施例2と異なり、図13及び図14に示すロール成膜装置120を用いて、ステップT2(ロール成形工程)及びステップS3(転写工程)を行う。すなわち、実施例3と同様に、ロール成膜装置として、乾燥装置160を備えるロール成膜装置120を用いている。従って、本実施例4のロール成形工程では、乾燥装置160のエアノズル161から、第1ロール1の表面1bに、露点が-30℃以下のドライエアDARを吹き付けることによって、第1ロール1の表面1bを乾燥させつつ、正極合材36(正極湿潤造粒体56)を第1ロール1と第2ロール2との間隙に通している。
これにより、本実施例4では、ステップT2(ロール成形工程)において、正極合材36が第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するときの、正極合材36に含まれる正極湿潤造粒体56と第1ロール1の表面1bとの間の液架橋力の平均値F1(kPa)と、正極合材36に含まれる正極湿潤造粒体56と第2ロール2の表面2bとの間の液架橋力の平均値F2(kPa)とが、F1<F2の関係を満たすようになる。詳細には、本実施例4では、実施例3と比較して、F1とF2との差を大きくすることができる。すなわち、F1に比べて、F2をより一層大きくすることができる。
このようにすることで、ステップT2(ロール成形工程)において、正極合材36に含まれる正極湿潤造粒体56が、対向して回転する第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するとき、第1ロール1と第2ロール2のうち、相対的に液架橋力の大きい第2ロール2の表面2bに、より一層付着し易くなる。従って、第2ロール2の表面2b上に形成される正極合材の膜(膜状正極合材38)において、孔(あるいは、膜厚の極端な低下)がより一層生じ難くなり、後のステップT3(転写工程)において、正極集電箔37の表面上に転写した正極合材36の膜(膜状正極合材38)に、孔(あるいは、膜厚の極端な低下)がより一層生じ難くなる。すなわち、成膜不良(成膜欠点)がより一層生じ難くなる。
その後、ステップT4(電極合材層形成工程)に進み、図示しない乾燥炉内で、膜状正極合材付き集電箔39を乾燥させる(正極集電箔37の表面上に転写した膜状正極合材38を乾燥させる)。これにより、膜状正極合材38(正極湿潤造粒体56)に吸収(保持)されている溶媒35が除去されて(蒸発して)、膜状正極合材38が正極合材層48(電極合材層)になる(図2参照)。これにより、正極集電箔37の表面上に正極合材層48を有する正極シート49(図3参照)が得られる。
(実施例5)
次に、本発明の実施例5について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本実施例5は、実施例1と比較して、ステップS2(ロール成形工程)及びステップS3(転写工程)を行うために使用するロール成膜装置のみが異なり、その他については同様である。従って、ここでは、実施例1と異なる点を中心に説明し、同様な点については説明を省略または簡略化する。
図4に示すように、まず、ステップS1(電極合材作製工程)において、負極活物質13(炭素材料)と結着材14(CMC)と溶媒15(水)とを混合しつつ造粒して多数の負極湿潤造粒体16を作製すると共に、多数の負極湿潤造粒体16からなる負極合材6を作製する。すなわち、実施例1と同等の負極合材6を作製する。
次いで、ステップS2(ロール成形工程)に進み、ステップS1(電極合材作製工程)で作製された負極合材6(負極湿潤造粒体16)を、対向して回転する第1ロール1と第2ロール2との間隙に通すことによって、負極合材6を圧縮しつつ膜状にして、膜状にした負極合材6を第2ロール2の表面2bに付着させる(図15及び図16参照)。その後、ステップS3(転写工程)に進み、第2ロール2の表面2bに付着している膜状の負極合材6(膜状負極合材8とする)を、負極集電箔7の表面上に転写する。
なお、本実施例5では、実施例1と異なり、図15及び図16に示すロール成膜装置220を用いて、ステップS2(ロール成形工程)及びステップS3(転写工程)を行う。
本実施例5のロール成膜装置220は、図15及び図16に示すように、実施例1のロール成膜装置20と比較して、乾燥装置60を設けることなく、湿潤装置260を設けた点のみが異なり、その他は同様である。
本実施例5のロール成膜装置220に設けられている湿潤装置260は、第2ロール2の表面2b上に配置された不織布261と、この不織布261を第2ロール2の表面2bに対して押し付ける押圧手段(図示省略)とを備えている(図15及び図16参照)。このうち、不織布261には、負極合材6に含まれている溶媒15と同等の液体L1(すなわち、水)を含浸させている。従って、本実施例5のロール成形工程では、湿潤装置260の図示しない押圧手段によって、不織布261を、回転する第2ロール2の表面2bに押し当てることによって、不織布261に含まれている液体L1を第2ロール2の表面2bに付着させる。これにより、第2ロール2の表面2bを湿潤させつつ、負極合材6(負極湿潤造粒体16)を第1ロール1と第2ロール2との間隙に通すようにしている。
本実施例5では、このように、第2ロール2の表面2bに液体L1を付着させることによって第2ロール2の表面2bを湿潤させることで、第2ロール2の表面2bの水分量を、第1ロール1の表面1bの水分量よりも多くすることができる。これにより、本実施例5では、ステップS2(ロール成形工程)において、負極合材6が第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するときの、負極合材6に含まれる負極湿潤造粒体16と第1ロール1の表面1bとの間の液架橋力の平均値F1(kPa)と、負極合材6に含まれる負極湿潤造粒体16と第2ロール2の表面2bとの間の液架橋力の平均値F2(kPa)とが、F1<F2の関係を満たすようになる。
このようにすることで、ステップS2(ロール成形工程)において、負極合材6に含まれる負極湿潤造粒体16が、対向して回転する第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するとき、第1ロール1と第2ロール2のうち、相対的に液架橋力の大きい第2ロール2の表面2bに付着し易くなる。従って、第2ロール2の表面2b上に形成される負極合材の膜(膜状負極合材8)において、孔(あるいは、膜厚の極端な低下)が生じ難くなり、後のステップS3(転写工程)において、負極集電箔7の表面上に転写した負極合材6の膜(膜状負極合材8)に、孔(あるいは、膜厚の極端な低下)が生じ難くなる。すなわち、成膜不良(成膜欠点)が生じ難くなる。
その後、ステップS4(電極合材層形成工程)に進み、図示しない乾燥炉内で、膜状負極合材付き集電箔9を乾燥させる(負極集電箔7の表面上に転写した膜状負極合材8を乾燥させる)。これにより、膜状負極合材8(負極湿潤造粒体16)に吸収(保持)されている溶媒15(水)が除去されて(蒸発して)、膜状負極合材8が負極合材層18(電極合材層)になる(図2参照)。これにより、負極集電箔7の表面上に負極合材層18を有する負極シート19(図3参照)が得られる。
(実施例6)
次に、本発明の実施例6について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本実施例6は、実施例2と比較して、ステップT2(ロール成形工程)及びステップT3(転写工程)を行うために使用するロール成膜装置のみが異なり、その他については同様である。従って、ここでは、実施例2と異なる点を中心に説明し、同様な点については説明を省略または簡略化する。
図10に示すように、まず、ステップT1(電極合材作製工程)において、正極活物質33と導電材44と結着材34と溶媒35とを混合しつつ造粒して多数の正極湿潤造粒体56を作製すると共に、多数の正極湿潤造粒体56からなる正極合材36を作製する。すなわち、実施例2と同等の正極合材36を作製する。
次に、ステップT2(ロール成形工程)に進み、ステップT1(電極合材作製工程)で作製された正極合材36(正極湿潤造粒体56)を、対向して回転する第1ロール1と第2ロール2との間隙に通すことによって、正極合材36を圧縮しつつ膜状にして、膜状にした正極合材36を第2ロール2の表面2bに付着させる(図15及び図16参照)。その後、ステップT3(転写工程)に進み、第2ロール2の表面2bに付着している膜状の正極合材36(膜状正極合材38とする)を、正極集電箔37の表面上に転写する。
なお、本実施例6では、実施例2と異なり、図15及び図16に示すロール成膜装置220を用いて、ステップS2(ロール成形工程)及びステップS3(転写工程)を行う。すなわち、実施例5と同様に、ロール成膜装置として、湿潤装置260を備えるロール成膜装置220を用いている。但し、本実施例6では、実施例5と異なり、湿潤装置260の不織布261には、正極合材36に含まれている溶媒35と同等の液体L2(すなわち、NMP)を含浸させている。
本実施例6のロール成形工程では、実施例5と同様に、湿潤装置260の不織布261を、回転する第2ロール2の表面2bに押し当てることによって、不織布261に含まれている液体L2を第2ロール2の表面2bに付着させることにより、第2ロール2の表面2bを湿潤させつつ、正極合材36(正極湿潤造粒体56)を第1ロール1と第2ロール2との間隙に通している。
これにより、本実施例6では、ステップT2(ロール成形工程)において、正極合材36が第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するときの、正極合材36に含まれる正極湿潤造粒体56と第1ロール1の表面1bとの間の液架橋力の平均値F1(kPa)と、正極合材36に含まれる正極湿潤造粒体56と第2ロール2の表面2bとの間の液架橋力の平均値F2(kPa)とが、F1<F2の関係を満たすようになる。
このようにすることで、ステップT2(ロール成形工程)において、正極合材36に含まれる正極湿潤造粒体56が、対向して回転する第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するとき、第1ロール1と第2ロール2のうち、相対的に液架橋力の大きい第2ロール2の表面2bに付着し易くなる。従って、第2ロール2の表面2b上に形成される正極合材の膜(膜状正極合材38)において、孔(あるいは、膜厚の極端な低下)が生じ難くなり、後のステップT3(転写工程)においても、正極集電箔37の表面上に転写した正極合材36の膜(膜状正極合材38)に孔(あるいは、膜厚の極端な低下)が生じ難くなる。すなわち、成膜不良(成膜欠点)が生じ難くなる。
その後、ステップT4(電極合材層形成工程)に進み、図示しない乾燥炉内で、膜状正極合材付き集電箔39を乾燥させる(正極集電箔37の表面上に転写した膜状正極合材38を乾燥させる)。これにより、膜状正極合材38(正極湿潤造粒体56)に吸収(保持)されている溶媒35が除去されて(蒸発して)、膜状正極合材38が正極合材層48(電極合材層)になる(図2参照)。これにより、正極集電箔37の表面上に正極合材層48を有する正極シート49(図3参照)が得られる。
(実施例7)
次に、本発明の実施例7について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本実施例7は、実施例5と比較して、ステップS2(ロール成形工程)及びステップS3(転写工程)を行うために使用するロール成膜装置のみが異なり、その他については同様である。従って、ここでは、実施例1と異なる点を中心に説明し、同様な点については説明を省略または簡略化する。
図4に示すように、まず、ステップS1(電極合材作製工程)において、負極活物質13(炭素材料)と結着材14(CMC)と溶媒15(水)とを混合しつつ造粒して多数の負極湿潤造粒体16を作製すると共に、多数の負極湿潤造粒体16からなる負極合材6を作製する。すなわち、実施例1と同等の負極合材6を作製する。
次いで、ステップS2(ロール成形工程)に進み、ステップS1(電極合材作製工程)で作製された負極合材6(負極湿潤造粒体16)を、対向して回転する第1ロール1と第2ロール2との間隙に通すことによって、負極合材6を圧縮しつつ膜状にして、膜状にした負極合材6を第2ロール2の表面2bに付着させる(図17及び図18参照)。その後、ステップS3(転写工程)に進み、第2ロール2の表面2bに付着している膜状の負極合材6(膜状負極合材8とする)を、負極集電箔7の表面上に転写する。
なお、本実施例7では、実施例5と異なり、図17及び図18に示すロール成膜装置320を用いて、ステップS2(ロール成形工程)及びステップS3(転写工程)を行う。
本実施例7のロール成膜装置320は、図17及び図18に示すように、実施例5のロール成膜装置220と比較して、湿潤装置260に代えて湿潤装置360を設けた点のみが異なり、その他は同様である。
本実施例7のロール成膜装置320に設けられている湿潤装置360は、第2ロール2の上方に配置された複数のスプレーノズル361と、スプレーノズル361に液体を供給する図示しない液体供給部とを備えている(図17及び図18参照)。なお、本実施例7では、スプレーノズル361に供給する液体として、負極合材6に含まれている溶媒15と同等の液体L1(すなわち、水)を用いる。従って、本実施例7のロール成形工程では、スプレーノズル361から下方に噴霧された液体L1を、第2ロール2の表面2bに付着させることにより、第2ロール2の表面2bを湿潤させつつ、負極合材6(負極湿潤造粒体16)を第1ロール1と第2ロール2との間隙に通すようにしている。
本実施例7では、このように、第2ロール2の表面2bに液体L1を付着させることによって第2ロール2の表面2bを湿潤させることで、第2ロール2の表面2bの水分量を、第1ロール1の表面1bの水分量よりも多くすることができる。これにより、本実施例7では、ステップS2(ロール成形工程)において、負極合材6が第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するときの、負極合材6に含まれる負極湿潤造粒体16と第1ロール1の表面1bとの間の液架橋力の平均値F1(kPa)と、負極合材6に含まれる負極湿潤造粒体16と第2ロール2の表面2bとの間の液架橋力の平均値F2(kPa)とが、F1<F2の関係を満たすようになる。
このようにすることで、ステップS2(ロール成形工程)において、負極合材6に含まれる負極湿潤造粒体16が、対向して回転する第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するとき、第1ロール1と第2ロール2のうち、相対的に液架橋力の大きい第2ロール2の表面2bに付着し易くなる。従って、第2ロール2の表面2b上に形成される負極合材の膜(膜状負極合材8)において、孔(あるいは、膜厚の極端な低下)が生じ難くなり、後のステップS3(転写工程)において、負極集電箔7の表面上に転写した負極合材6の膜(膜状負極合材8)に、孔(あるいは、膜厚の極端な低下)が生じ難くなる。すなわち、成膜不良(成膜欠点)が生じ難くなる。
その後、ステップS4(電極合材層形成工程)に進み、図示しない乾燥炉内で、膜状負極合材付き集電箔9を乾燥させる(負極集電箔7の表面上に転写した膜状負極合材8を乾燥させる)。これにより、膜状負極合材8(負極湿潤造粒体16)に吸収(保持)されている溶媒15(水)が除去されて(蒸発して)、膜状負極合材8が負極合材層18(電極合材層)になる(図2参照)。これにより、負極集電箔7の表面上に負極合材層18を有する負極シート19(図3参照)が得られる。
(実施例8)
次に、本発明の実施例8について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本実施例8は、実施例6と比較して、ステップT2(ロール成形工程)及びステップT3(転写工程)を行うために使用するロール成膜装置のみが異なり、その他については同様である。従って、ここでは、実施例6と異なる点を中心に説明し、同様な点については説明を省略または簡略化する。
図10に示すように、まず、ステップT1(電極合材作製工程)において、正極活物質33と導電材44と結着材34と溶媒35とを混合しつつ造粒して多数の正極湿潤造粒体56を作製すると共に、多数の正極湿潤造粒体56からなる正極合材36を作製する。すなわち、実施例2と同等の正極合材36を作製する。
次に、ステップT2(ロール成形工程)に進み、ステップT1(電極合材作製工程)で作製された正極合材36(正極湿潤造粒体56)を、対向して回転する第1ロール1と第2ロール2との間隙に通すことによって、正極合材36を圧縮しつつ膜状にして、膜状にした正極合材36を第2ロール2の表面2bに付着させる(図17及び図18参照)。その後、ステップT3(転写工程)に進み、第2ロール2の表面2bに付着している膜状の正極合材36(膜状正極合材38とする)を、正極集電箔37の表面上に転写する。
なお、本実施例8では、実施例6と異なり、図17及び図18に示すロール成膜装置320を用いて、ステップS2(ロール成形工程)及びステップS3(転写工程)を行う。すなわち、実施例7と同様に、ロール成膜装置として、湿潤装置360を備えるロール成膜装置320を用いている。但し、本実施例8では、実施例7と異なり、スプレーノズル361に供給する液体として、正極合材36に含まれている溶媒35と同等の液体L2(すなわち、NMP)を用いる。
本実施例8のロール成形工程では、実施例7と同様に、スプレーノズル361から下方に噴霧された液体L2を、第2ロール2の表面2bに付着させることにより、第2ロール2の表面2bを湿潤させつつ、正極合材36(正極湿潤造粒体56)を第1ロール1と第2ロール2との間隙に通している。
これにより、本実施例8では、ステップT2(ロール成形工程)において、正極合材36が第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するときの、正極合材36に含まれる正極湿潤造粒体56と第1ロール1の表面1bとの間の液架橋力の平均値F1(kPa)と、正極合材36に含まれる正極湿潤造粒体56と第2ロール2の表面2bとの間の液架橋力の平均値F2(kPa)とが、F1<F2の関係を満たすようになる。
このようにすることで、ステップT2(ロール成形工程)において、正極合材36に含まれる正極湿潤造粒体56が、対向して回転する第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するとき、第1ロール1と第2ロール2のうち、相対的に液架橋力の大きい第2ロール2の表面2bに付着し易くなる。従って、第2ロール2の表面2b上に形成される正極合材の膜(膜状正極合材38)において、孔(あるいは、膜厚の極端な低下)が生じ難くなり、後のステップT3(転写工程)においても、正極集電箔37の表面上に転写した正極合材36の膜(膜状正極合材38)に孔(あるいは、膜厚の極端な低下)が生じ難くなる。すなわち、成膜不良(成膜欠点)が生じ難くなる。
その後、ステップT4(電極合材層形成工程)に進み、図示しない乾燥炉内で、膜状正極合材付き集電箔39を乾燥させる(正極集電箔37の表面上に転写した膜状正極合材38を乾燥させる)。これにより、膜状正極合材38(正極湿潤造粒体56)に吸収(保持)されている溶媒35が除去されて(蒸発して)、膜状正極合材38が正極合材層48(電極合材層)になる(図2参照)。これにより、正極集電箔37の表面上に正極合材層48を有する正極シート49(図3参照)が得られる。
(製造方法の評価試験)
次に、実施例1~4の製造方法について評価する試験を行った。具体的には、各実施例のロール成膜装置20,120を用いて、100mの長さの膜状負極合材付き集電箔9または膜状正極合材付き集電箔39を作製した。そして、各実施例の膜状負極合材付き集電箔9または膜状正極合材付き集電箔39について、長さ100m中に成膜不良(成膜欠点)が何個発生しているかを調査した。その結果を表1に示す。
また、比較例1として、実施例1のロール成膜装置20と比較して、乾燥装置60を設けていない点のみが異なるロール成膜装置を用いて、100mの長さの膜状負極合材付き集電箔9を作製した。さらに、比較例2として、実施例1のロール成膜装置20と比較して、乾燥装置60を設けていない点のみが異なるロール成膜装置を用いて、100mの長さの膜状正極合材付き集電箔39を作製した。これらについても、長さ100m中に成膜不良(成膜欠点)が何個発生しているかを調査した。その結果を表1に示す。
また、実施例1~4及び比較例1,2のロール成形工程において、「負極合材6が第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するときの、負極合材6に含まれる負極湿潤造粒体16と第1ロール1の表面1bとの間の液架橋力の平均値F1(kPa)」、または、「正極合材36が第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するときの、正極合材36に含まれる正極湿潤造粒体56と第1ロール1の表面1bとの間の液架橋力の平均値F1(kPa)」を調査した。なお、本試験では、以下のようにして、液架橋力の平均値F1(kPa)を求めている。
具体的には、公知の粉体層せん断力測定装置90(図19参照)を用いて、液架橋力の平均値F1(kPa)を求めた。粉体層せん断力測定装置90は、第1ロール1の表面1bと同等の表面91b(表面粗さ等が同等)を有する平板91と、この平板91の表面91b上に載置された筒体93と、この筒体93の内部を上下方向に移動可能な柱状のピストン95とを備える。
例えば、実施例1のステップS2(ロール成形工程)における液架橋力の平均値F1(kPa)は、以下のようにして求めている。まず、筒体93の内部に負極合材6(負極湿潤造粒体16)を収容することで、負極合材6を構成する負極湿潤造粒体16が平板91の表面91bに接触した状態にした後、ピストン95によって負極合材6を鉛直方向下方に押圧することで、負極合材6を構成する負極湿潤造粒体16に所定の垂直応力(kPa)を加える。この状態で、平板91を水平方向(図19において右方向)に移動させてゆくことで、負極合材6を構成する負極湿潤造粒体16にせん断応力を加えるようにして、当該せん断応力(kPa)を測定した。
但し、実施例1のロール成膜装置20と同様に、乾燥装置60のエアノズル61から平板91の表面91bにエアARを吹き付けることによって、平板91の表面91bを乾燥させつつ、上述の測定試験を行っている。すなわち、実施例1のロール成形工程における第1ロール1の表面1bと同様に、平板91の表面91bを乾燥させた状態で、せん断応力(kPa)を測定している。さらに、ピストン95によって負極合材6を構成する負極湿潤造粒体16に加える垂直応力(kPa)を異ならせて、各々の垂直応力(kPa)におけるせん断応力(kPa)を測定した。後述する実施例2にかかるせん断応力(kPa)の測定においても同様としている。
その後、図20に示すように、これらの測定データを、垂直応力(kPa)を横軸、せん断応力(kPa)を縦軸とした座標平面にプロットする。そして、これらのプロットデータを最小二乗法を用いて一次近似し、図20に直線で示すように、垂直応力(kPa)とせん断応力(kPa)との関係式(一次式)を得た。この一次式(直線)のy切片(すなわち、垂直応力の値が0のときのせん断応力の値)を、実施例1のステップS2(ロール成形工程)における「負極合材6が第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するときの、負極合材6に含まれる負極湿潤造粒体16と第1ロール1の表面1bとの間の液架橋力の平均値F1(kPa)」とみなした。
これと同様にして、実施例2~4及び比較例1,2のロール成形工程における「負極合材6が第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するときの、負極合材6に含まれる負極湿潤造粒体16と第1ロール1の表面1bとの間の液架橋力の平均値F1(kPa)」、または、「正極合材36が第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するときの、正極合材36に含まれる正極湿潤造粒体56と第1ロール1の表面1bとの間の液架橋力の平均値F1(kPa)」を求めた。これらの結果を表1に示す。
但し、実施例3,4にかかる液架橋力の平均値F1(kPa)を求める場合は、実施例3,4のロール成膜装置120と同様に、乾燥装置160のエアノズル161から平板91の表面91bにドライエアDARを吹き付けることによって、平板91の表面91bを乾燥させつつ、上述の測定試験を行っている。すなわち、実施例3,4のロール成形工程における第1ロール1の表面1bと同様に、平板91の表面91bを乾燥させた状態で、せん断応力(kPa)を測定している。なお、本測定試験では、ドライエアDARとして、露点が-30℃のドライエアDARを使用している。
また、比較例1,2にかかる液架橋力の平均値F1(kPa)を求める場合は、平板91の表面91bにエア等を吹き付けることなく、上述の測定試験を行っている。
さらに、実施例5~8の製造方法について評価する試験を行った。具体的には、各実施例のロール成膜装置220,320を用いて、100mの長さの膜状負極合材付き集電箔9または膜状正極合材付き集電箔39を作製した。そして、各実施例の膜状負極合材付き集電箔9または膜状正極合材付き集電箔39について、長さ100m中に成膜不良(成膜欠点)が何個発生しているかを調査した。その結果を表2に示す。
また、比較例3として、実施例5のロール成膜装置220と比較して、湿潤装置260を設けていない点のみが異なるロール成膜装置を用いて、100mの長さの膜状負極合材付き集電箔9を作製した。さらに、比較例4として、実施例5のロール成膜装置220と比較して、湿潤装置260を設けていない点のみが異なるロール成膜装置を用いて、100mの長さの膜状正極合材付き集電箔39を作製した。これらについても、長さ100m中に成膜不良(成膜欠点)が何個発生しているかを調査した。その結果を表2に示す。
また、実施例5~8及び比較例3,4のロール成形工程において、「負極合材6が第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するときの、負極合材6に含まれる負極湿潤造粒体16と第2ロール2の表面2bとの間の液架橋力の平均値F2(kPa)」、または、「正極合材36が第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するときの、正極合材36に含まれる正極湿潤造粒体56と第2ロール2の表面2bとの間の液架橋力の平均値F2(kPa)」を調査した。なお、本試験では、以下のようにして、液架橋力の平均値F2(kPa)を求めている。
具体的には、前述した実施例1等にかかる液架橋力の平均値F1(kPa)と同様に、粉体層せん断力測定装置90(図19参照)を用いて、液架橋力の平均値F2(kPa)を求めた。なお、第1ロール1の表面1bと第2ロール2の表面2bとは同等の表面(表面粗さ等が同等)であるため、本試験では、第1ロール1の表面1b及び第2ロール2の表面2bの代用として、平板91の表面91bを共通して用いている。
但し、実施例5,6にかかる液架橋力の平均値F2(kPa)を求める場合は、実施例5,6のロール成膜装置220と同様に、不織布261に含まれている液体L1,L2を平板91の表面91bに付着させることによって、平板91の表面91bを湿潤させつつ、上述の測定試験を行っている。すなわち、実施例5,6のロール成形工程における第2ロール2の表面2bと同様に、平板91の表面91bを湿潤させた状態で、せん断応力(kPa)を測定している。
また、実施例7,8にかかる液架橋力の平均値F2(kPa)を求める場合は、実施例7,8のロール成膜装置320と同様に、スプレーノズル361から噴霧された液体L1,L2を、平板91の表面91bに付着させることにより、平板91の表面91bを湿潤させつつ、上述の測定試験を行っている。すなわち、実施例7,8のロール成形工程における第2ロール2の表面2bと同様に、平板91の表面91bを湿潤させた状態で、せん断応力(kPa)を測定している。
また、比較例3,4にかかる液架橋力の平均値F2(kPa)を求める場合は、平板91の表面91bに液体を付着させることなく、上述の測定試験を行っている。
その後、前述した液架橋力の平均値F1(kPa)と同様に、各実施例及び比較例について、各測定データを、垂直応力(kPa)を横軸、せん断応力(kPa)を縦軸とした座標平面にプロットする(図20参照)。そして、これらのプロットデータを最小二乗法を用いて一次近似し、図20に直線で示すように、垂直応力(kPa)とせん断応力(kPa)との関係式(一次式)を得た。この一次式(直線)のy切片(すなわち、垂直応力の値が0のときのせん断応力の値)を、各実施例及び比較例のステップS2(ロール成形工程)における液架橋力の平均値F2(kPa)とした。これらの結果を表2に示す。
ここで、表1及び表2に示す結果について検討する。
まず、表1に示す実施例1~4及び比較例1,2の結果について検討する。比較例1では、液架橋力の平均値F1が9.3kPaであり、成膜不良(成膜欠点)が213箇所もあった。また、比較例2では、液架橋力の平均値F1が6.2kPaであり、成膜不良(成膜欠点)が168箇所もあった。
これに対し、実施例1では、液架橋力の平均値F1が2.8kPaと小さくなり、成膜不良(成膜欠点)が9箇所と少なくなった。また、実施例2では、液架橋力の平均値F1が1.6kPaと小さくなり、成膜不良(成膜欠点)が7箇所と少なくなった。さらに、実施例3では、液架橋力の平均値F1が0.4kPaと極めて小さくなり、成膜不良(成膜欠点)が2箇所と極めて少なくなった。さらに、実施例4では、液架橋力の平均値F1が0.2kPaと極めて小さくなり、成膜不良(成膜欠点)が2箇所と極めて少なくなった。
このように、実施例1~4では、比較例1,2に比べて、成膜不良(成膜欠点)を極めて少なくすることができた。その理由は、実施例1~4では、比較例1,2に比べて、液架橋力の平均値F1を大幅に小さくすることができたためである。
具体的には、実施例1,2では、ロール成形工程において、乾燥装置60のエアノズル61から、第1ロール1の表面1bにエアARを吹き付けることによって、第1ロール1の表面1bを乾燥させつつ、負極合材6(負極湿潤造粒体16)または正極合材36(正極湿潤造粒体56)を第1ロール1と第2ロール2との間隙に通すようにしたことで、液架橋力の平均値F1を低減して、F1<F2の関係を満たすようにしたからである(図1及び図2参照)。
また、実施例3,4では、ロール成形工程において、乾燥装置160のエアノズル161から、第1ロール1の表面1bにドライエアDARを吹き付けることによって、第1ロール1の表面1bを乾燥させつつ、負極合材6(負極湿潤造粒体16)または正極合材36(正極湿潤造粒体56)を第1ロール1と第2ロール2との間隙に通すようにしたことで、液架橋力の平均値F1を大幅に低減して、F1<F2の関係を満たすようにしたからである(図13及び図14参照)。
なお、実施例1,3及び比較例1におけるF2の値は、比較例3におけるF2の値と同等であるといえる。すなわち、F2=9.3(kPa)であるといえる。
また、実施例2,4及び比較例2におけるF2の値は、比較例4におけるF2の値と同等であるといえる。すなわち、F2=6.2(kPa)であるといえる。
このようにすることで、実施例1~4では、ロール成形工程において、負極合材6に含まれる負極湿潤造粒体16または正極合材36に含まれる正極湿潤造粒体56が、対向して回転する第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するとき、第1ロール1と第2ロール2のうち、相対的に液架橋力の大きい第2ロール2の表面2bに付着し易くなり、その結果、成膜不良(成膜欠点)が生じ難くなったといえる。
以上の結果より、ロール成形工程において、第1ロール1の表面1bを乾燥させて、F1<F2の関係を満たすようにすることで、成膜不良(成膜欠点)が生じ難くなるといえる。さらには、ロール成形工程において、F1<F2の関係を満たすようにすることに加えて、F1≦2.8kPaの関係を満たすようにすることで、成膜不良(成膜欠点)が極めて生じ難くなるといえる。
なお、実施例1,2に比べて実施例3,4のほうが成膜不良(成膜欠点)を少なくすることができた理由は、以下のように考えられる。具体的には、実施例1,2では、第1ロール1の表面1bに、エアAR(大気)を吹き付けているのに対し、実施例3,4では、露点が-30℃以下(上述の試験では-30℃)のドライエアDARを吹き付けているため、実施例1,2に比べて、第1ロール1の表面1bをより一層乾燥させることができたといえる。これにより、実施例3,4では、実施例1,2に比べて、F1がより一層小さくなると共に、負極合材6に含まれる負極湿潤造粒体16または正極合材36に含まれる正極湿潤造粒体56が、第2ロール2の表面2bにより一層付着し易くなり、その結果、成膜不良(成膜欠点)が生じ難くなったといえる。
次に、表2に示す実施例5~8及び比較例3,4の結果について検討する。比較例3では、液架橋力の平均値F2が9.3kPaであり、成膜不良(成膜欠点)が213箇所もあった。また、比較例4では、液架橋力の平均値F1が6.2kPaであり、成膜不良(成膜欠点)が168箇所もあった。
これに対し、実施例5では、液架橋力の平均値F2が29.1kPaと大きくなり、成膜不良(成膜欠点)が3箇所と極めて少なくなった。また、実施例6では、液架橋力の平均値F2が13.6kPaと大きくなり、成膜不良(成膜欠点)が5箇所と極めて少なくなった。さらに、実施例7では、液架橋力の平均値F2が19.1kPaと大きくなり、成膜不良(成膜欠点)が13箇所と少なくなった。さらに、実施例8では、液架橋力の平均値F2が12.4kPaと大きくなり、成膜不良(成膜欠点)が19箇所と少なくなった。
このように、実施例5~8では、比較例3,4に比べて、成膜不良(成膜欠点)を極めて少なくすることができた。その理由は、実施例5~8では、比較例3,4に比べて、液架橋力の平均値F2を大きくすることができたためである。
具体的には、実施例5,6では、ロール成形工程において、湿潤装置260を用いて、第2ロール2の表面2bに液体L1またはL2を付着させることによって、第2ロール2の表面2bを湿潤させつつ、負極合材6(負極湿潤造粒体16)または正極合材36(正極湿潤造粒体56)を第1ロール1と第2ロール2との間隙に通すようにしたことで、液架橋力の平均値F2を増大させて、F1<F2の関係を満たすようにしたからである(図15及び図16参照)。
また、実施例7,8では、ロール成形工程において、湿潤装置360を用いて、第2ロール2の表面2bに液体L1またはL2を付着させることによって、第2ロール2の表面2bを湿潤させつつ、負極合材6(負極湿潤造粒体16)または正極合材36(正極湿潤造粒体56)を第1ロール1と第2ロール2との間隙に通すようにしたことで、液架橋力の平均値F2を増大させて、F1<F2の関係を満たすようにしたからである(図17及び図18参照)。
なお、実施例5,7及び比較例3におけるF1の値は、比較例1におけるF1の値と同等であるといえる。すなわち、F1=9.3(kPa)であるといえる。
また、実施例6,8及び比較例4におけるF1の値は、比較例2におけるF1の値と同等であるといえる。すなわち、F1=6.2(kPa)であるといえる。
このようにすることで、実施例5~8では、ロール成形工程において、負極合材6に含まれる負極湿潤造粒体16または正極合材36に含まれる正極湿潤造粒体56が、対向して回転する第1ロール1と第2ロール2との間隙を通過するとき、第1ロール1と第2ロール2のうち、相対的に液架橋力の大きい第2ロール2の表面2bに付着し易くなり、その結果、成膜不良(成膜欠点)が生じ難くなったといえる。
以上の結果より、ロール成形工程において、第2ロール2の表面2bを湿潤させて、F1<F2の関係を満たすようにすることで、成膜不良(成膜欠点)が生じ難くなるといえる。さらには、ロール成形工程において、F1<F2の関係を満たすようにすることに加えて、F2≧12.4kPaの関係を満たすようにすることで、成膜不良(成膜欠点)が極めて生じ難くなるといえる。
なお、実施例7,8に比べて実施例5,6のほうが成膜不良(成膜欠点)を少なくすることができた理由は、以下のように考えられる。具体的には、実施例7,8では、スプレーノズル361から噴霧した液体L1,L2を第2ロール2の表面2bに付着させているのに対し、実施例5,6では、不織布261を第2ロール2の表面2bに押し当てることによって、不織布261に含まれている液体L1,L2を第2ロール2の表面2bに付着させている。
このため、実施例5,6では、実施例7,8に比べて、第2ロール2の表面2bをより均一に湿潤させることができたといえる。これにより、実施例5,6では、実施例7,8に比べて、負極合材6に含まれる負極湿潤造粒体16または正極合材36に含まれる正極湿潤造粒体56が、第2ロール2の表面2bの全体にわたって付着し易くなり、その結果、成膜不良(成膜欠点)が生じ難くなったといえる。
以上において、本発明を実施例1~8に即して説明したが、本発明は、実施例1~8に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施例5~8では、第2ロール2の表面2bに付着させる液体として、負極合材6に含まれている溶媒15と同等の液体L1、または、正極合材36に含まれている溶媒35と同等の液体L2を用いた。しかしながら、第2ロール2の表面2bに付着させる液体は、電極合材に含まれる溶媒と同等の液体に限定されるものではなく、電極合材に含まれる物質と化学反応を引き起こさない液体であれば、いずれの液体を用いても良い。