[第1実施形態の眼科装置の構成]
図1は、本発明の眼科装置10の光学系の配置を示した光学配置図である。ここで、図中のX軸方向は被検者を基準とした左右方向(被検眼Eの眼幅方向)であり、Y軸方向は上下方向であり、Z軸方向は被検者に近づく前方向と被検者から遠ざかる後方向とに平行な前後方向(作動距離方向ともいう)である。
図1に示すように、眼科装置10は、被検眼Eの眼特性と、被検眼Eの前眼部の角膜Ecの角膜形状との双方を測定する複合機である。なお、本実施形態では、被検眼Eの眼特性の測定として、被検眼Eの眼屈折力及び眼球波面収差の測定を例に挙げて説明する。また、本実施形態の角膜形状の測定には、角膜Ecのほぼ全領域の角膜曲率及び曲率半径等の測定の他に、角膜形状から求められる角膜波面収差の測定も含まれるものとする。
眼科装置10は、眼特性測定光学系12と、角膜形状測定光学系14と、アライメント光学系16と、固視光学系18とを備える。
[眼特性測定光学系]
眼特性測定光学系12は、測定光投影光学系20と第1受光光学系22とを有する。測定光投影光学系20は、被検眼Eの眼底部Efに対して眼特性測定用の測定光L1を投影する。第1受光光学系22は、眼底部Efで反射された測定光L1の反射光を受光して、眼特性測定データD1を出力する。
<測定光投影光学系>
測定光投影光学系20は、測定光源26と、コリメータレンズ28と、偏光ビームスプリッタ30と、ダイクロイックミラー32と、ダイクロイックミラー34と、対物レンズ36と、光源移動部38と、を有する。
測定光源26は、例えば近赤外の波長域の測定光L1をコリメータレンズ28に向けて出射する。この測定光源26としては、例えば、SLD(Super luminescent diode)、レーザ光源、及びLED(Light emitting diode)などが用いられる。また、測定光源26は、光源移動部38により測定光L1の出射方向に平行な方向に沿って移動自在に保持されている。
コリメータレンズ28は、測定光源26から入射される測定光L1を平行光とした後、偏光ビームスプリッタ30へ出射する。
偏光ビームスプリッタ30は、コリメータレンズ28から入射される測定光L1のP偏光成分をダイクロイックミラー32に向けて反射する。また、偏光ビームスプリッタ30は、ダイクロイックミラー32から入射される眼底部Efからの測定光L1の反射光のS偏光成分を透過して後述の反射鏡40に入射させる。
ダイクロイックミラー32は、偏光ビームスプリッタ30から入射される測定光L1をダイクロイックミラー34に向けて反射し、ダイクロイックミラー34から入射される測定光L1の反射光を偏光ビームスプリッタ30に向けて反射し、さらに後述の反射鏡96から入射される固視標光L5を透過してダイクロイックミラー34に入射させる。
ダイクロイックミラー34は、ダイクロイックミラー32から入射される測定光L1及び固視標光L5を対物レンズ36に向けて反射し、対物レンズ36から入射される測定光L1の反射光をダイクロイックミラー32に向けて反射する。また、ダイクロイックミラー34は、対物レンズ36から入射される後述のプラチドリング光L2の反射光を透過して後述のハーフミラー70に向けて出射し、ハーフミラー70から入射される後述のXYアライメント光L4を透過して対物レンズ36に向けて出射する。
対物レンズ36は、後述のリング光投影光学系52を除く各光学系で共通に用いられ、測定光L1、XYアライメント光L4、及び固視標光L5を被検眼Eに入射させる。
<第1受光光学系>
第1受光光学系22は、偏光ビームスプリッタ30、ダイクロイックミラー32,34、及び対物レンズ36を測定光投影光学系20と共有すると共に、反射鏡40と、レンズ42と、コリメータレンズ43と、ハルトマン板44と、エリアセンサ46と、センサ駆動部48と、を有する。
反射鏡40は、偏光ビームスプリッタ30から入射される測定光L1の反射光を、レンズ42に向けて反射する。これにより、測定光L1の反射光が、レンズ42を経てコリメータレンズ43にて平行光に変換された後、ハルトマン板44に入射する。
ハルトマン板44は、2次元配列された複数のマイクロレンズを有しており、レンズ42から入射する測定光L1の反射光を複数の分割光に分割してエリアセンサ46の受光面に入射させる。
エリアセンサ46は、例えばCMOS(complementary metal oxide semiconductor)型又はCCD(Charge Coupled Device)型の撮像素子である。このエリアセンサ46は、ハルトマン板44から入射される複数の分割光を受光(撮像)して、各分割光に対応した複数の点像からなるハルトマン像の画像データを、被検眼Eの眼底部Efの眼特性測定データD1として後述の統括制御部100(図4参照)へ出力する。
センサ駆動部48は、コリメータレンズ43、ハルトマン板44、及びエリアセンサ46を、測定光L1の反射光の入射方向に平行な方向に沿って移動自在に保持する。センサ駆動部48及び既述の光源移動部38は、被検眼Eの屈折度数に応じて、測定光源26と眼底部Efとエリアセンサ46とが略共役な位置関係となるように駆動される。
[角膜形状測定光学系]
角膜形状測定光学系14は、リング光投影光学系52と第2受光光学系54とを有する。リング光投影光学系52は、本発明のパターン光投影光学系に相当するものであり、被検眼Eの前眼部の角膜Ecに対してプラチドリング光L2を投影する。また、第2受光光学系54は、本発明の角膜撮影像取得部に相当するものであり、プラチドリング光L2が投影されている角膜Ec(前眼部)を撮影、すなわちプラチドリング光L2の反射光を撮像して、角膜Ecを含む前眼部の撮影画像データD2を出力する。
<リング光投影光学系>
リング光投影光学系52は、プラチドリング58と、一対の光源60と、一対のコリメータレンズ62と、を有する。
図2は、被検眼E側から見たプラチドリング58の正面図である。図2及び既述の図1に示すように、プラチドリング58は略円環状に形成されており、中心開口66と、複数のリングパターン68と、一対の開口69と、を有する。
中心開口66は、プラチドリング58の中心部に形成された円状の開口穴であり、その中心が対物レンズ36の光軸と略一致している。この中心開口66を通して、測定光L1、XYアライメント光L4、及び固視標光L5が被検眼Eに入射されると共に、被検眼Eにて反射された反射光が対物レンズ36に入射される。
複数のリングパターン68は、対物レンズ36の光軸を中心として同心円状に形成されており、それぞれ光を透過させる。また、プラチドリング58の裏面側(対物レンズ36側)には、各リングパターン68に沿って複数のLED58a(LED以外の公知の各種光源でも可)が配置されている。
各リングパターン68は、各LED58aから出射される不可視光(例えば近赤外光)により照明される。これにより、本発明の角膜形状測定用のパターン光として、各リングパターン68をそれぞれ透過した不可視光からなるプラチドリング光L2が被検眼Eの角膜Ecに投影されると共に、角膜Ecにて反射されたプラチドリング光L2の反射光が、対物レンズ36に入射される。なお、不可視光であるプラチドリング光L2の波長域は特に限定はされない。
本実施形態のLED58aは、後述の統括制御部100(図4参照)の制御の下、各リングパターン68の照明光量、すなわち、被検眼Eに入射させるプラチドリング光L2の光量を変化させる。
一対の開口69は、プラチドリング58の内側から外側に向かって例えば3番目(3番目以外でも可)のリングパターン68の円周上に形成されている。
一対の光源60は、一対の開口69にそれぞれ対応してプラチドリング58の裏面側に設けられている。一対の光源60は、それぞれ一対のコリメータレンズ62に向けてZアライメント光L3を出射する。
一対のコリメータレンズ62は、一対の光源60から入射されたZアライメント光L3を平行光にした後、一対の開口69に向けてそれぞれ出射する。これにより、一対の開口69をそれぞれ通過した一対のZアライメント光L3が被検眼Eの角膜Ecに投影される。そして、被検眼Eの角膜Ecにて反射された一対のZアライメント光L3の反射光が、既述のプラチドリング光L2の反射光と共に、対物レンズ36に入射される。
[第2受光光学系]
図1に戻って、第2受光光学系54は、ダイクロイックミラー34及び対物レンズ36を測定光投影光学系20と共有すると共に、ハーフミラー70と、リレーレンズ72と、結像レンズ74と、エリアセンサ76と、を有する。
ハーフミラー70は、後述の反射鏡84から入射されるXYアライメント光L4をダイクロイックミラー34に向けて反射させる。また、ハーフミラー70は、ダイクロイックミラー34から入射されるプラチドリング光L2、一対のZアライメント光L3、及びXYアライメント光L4の各反射光を透過させてリレーレンズ72に入射させる。これにより、各反射光が、リレーレンズ72及び結像レンズ74を介して、エリアセンサ76の受光面に入射される。
[アライメント光学系]
アライメント光学系16は、ダイクロイックミラー34、対物レンズ36、及びハーフミラー70を第2受光光学系54と共有すると共に、アライメント光源80と、レンズ82と、反射鏡84と、を有する。
アライメント光源80は、XYアライメント光L4をレンズ82に向けて出射する。このXYアライメント光L4は、レンズ82を透過後、反射鏡84、ハーフミラー70、ダイクロイックミラー34、及び対物レンズ36を経て平行光として被検眼Eの角膜Ecに投影される。そして、角膜Ecにて反射されたXYアライメント光L4の反射光は、対物レンズ36、ダイクロイックミラー34、ハーフミラー70、リレーレンズ72、及び結像レンズ74を経て、エリアセンサ76の受光面に入射される。
エリアセンサ76は、CCD型又はCMOS型の撮像素子である。このエリアセンサ76は、眼科装置10の作動距離が既定の距離にセットされている場合に、被検眼Eの角膜表面での反射像と共役になるように配置されている。
図3は、第2受光光学系54のエリアセンサ76の受光面の正面図である。図3に示すように、エリアセンサ76の受光面には、結像レンズ74により、前眼部像に重畳してプラチドリング光L2の反射光に基づく反射像であるプラチドリング像86と、一対のZアライメント光L3の反射光に基づく反射像である一対の輝点像B1と、XYアライメント光L4の反射光に基づく反射像である輝点像B2と、が結像される。
エリアセンサ76は、プラチドリング像86、一対の輝点像B1、及び輝点像B2を含む被検眼Eの前眼部の画像を撮像し、撮影画像データD2を後述の統括制御部100(図4参照)へ出力する。なお、撮影画像データD2は本発明の角膜撮影像に相当する。
プラチドリング像86は、本発明のパターン光の(角膜Ecによる)反射像に相当するものであり、同心円状の複数(本実施形態では8本)のリング像87により構成された多重リング像である。なお、本実施形態では、プラチドリング像86が8重のリング像87により構成されているが、2重以上のリング像87で構成されていてもよい。以下、各リング像87を、プラチドリング像86の内側から外側に向かって第1リング像87、第2リング像87、…第8リング像87とする。また、各リング像87を特に区別しない場合には単に「リング像87」と記載する。
第3リング像87(他のリング像87でも可)と一対の輝点像B1との双方は、被検眼Eに対する眼科装置10のZ軸方向のアライメント状態を示す。具体的には、一対の輝点像B1の間隔と、第3リング像87の直径とが一致している場合は、Z軸方向のアライメントが調整され、逆に不一致の場合にはZ軸方向のアライメントがずれている(特開2011-115387号公報参照)。
なお、Z軸方向のアライメントを検出する検出方法は、上記方法に限定されるものではない。例えば、異なる2以上の距離から角膜Ecに視標を投影して各々の指標像の高さの比からアライメントを検出する方法(倍率法)、光軸とは異なる角度から光束を角膜Ecに照射し、この反射光束の角膜頂点からの変位に基づきアライメントを検出する方法(光テコ法)、角度の異なる2以上の方向から角膜Ecを撮影した撮影画像の視差からアライメントを検出する方法(ステレオカメラ法)、及び第2受光光学系54のピント(撮影画像のコントラスト)からアライメントを検出する方法などが例として挙げられる。
輝点像B2は、被検眼Eに対する眼科装置10のX軸方向及びY軸方向のアライメント状態を示す。具体的には、輝点像B2がエリアセンサ76の中心に位置している場合にはX軸方向及びY軸方向のアライメントが調整され、逆に中心に位置していない場合にはX軸方向及びY軸方向の少なくとも一方のアライメントがずれている(特開2011-115387号公報参照)。
[固視光学系]
図1に戻って、固視光学系18は、被検眼Eに対して、被検眼Eの固視又は雲霧のための固視標光L5を投影する。固視光学系18は、ダイクロイックミラー32、ダイクロイックミラー34、及び対物レンズ36を既述の測定光投影光学系20と共有すると共に、光源88と、レンズ90と、固視標92と、レンズ94と、反射鏡96と、視標移動部98と、を有する。
光源88は、レンズ90に向けて可視光の波長域の照明光を出射する。この照明光は、レンズ90にて平行光とされた後、固視標92に入射される。
固視標92は、例えば風景又は放射線のパターンであり、レンズ90から入射される照明光によって後方から照明される。これにより、固視標92からレンズ94に向けて固視標光L5が出射される。この固視標光L5は、レンズ94、反射鏡96、ダイクロイックミラー32、ダイクロイックミラー34、及び対物レンズ36を経て、被検眼Eに入射され、その眼底部Efに投影される。
視標移動部98は、被検眼Eの屈折力に応じて、光源88、レンズ90、及び固視標92を一体に移動させる。これにより、被検眼Eを固視させることができる。さらに、視標移動部98は、被検眼Eの眼屈折力の測定時には、被検眼Eの調節の影響をなくすための雲霧を行う。
[統括制御部の構成]
図4は、眼科装置10の統括制御部100の機能ブロック図である。図4に示すように、統括制御部100は、例えばCPU(Central Processing Unit)又はFPGA(field-programmable gate array)等を含む各種の演算部及びメモリ等から構成された演算回路である。この統括制御部100には、既述の各光学系の他に、操作部102、記憶部104、表示部106、及びアライメント駆動部108が接続されている。そして、統括制御部100は、検者による操作部102への入力操作に応じて、眼科装置10の各部の動作を統括制御する。
記憶部104には、被検眼Eの眼特性及び角膜形状の測定結果が記憶される他、眼科装置10による測定を実行させるための測定プログラム(不図示)などが記憶されている。表示部106には、被検眼Eの眼特性及び角膜形状の測定結果等が表示される。アライメント駆動部108は、統括制御部100による制御の下、被検眼Eに対して眼科装置10の各光学系をXYZ軸の各軸方向に相対移動させることにより、被検眼Eに対して眼科装置10をオートアライメントさせる。
統括制御部100は、記憶部104から読み出した不図示の測定プログラムを実行することにより、眼特性測定制御部110、第1画像取得部112、眼特性演算部114、角膜形状測定制御部116、第2画像取得部118、アライメント検出部120、リング像解析部122、及び角膜形状演算部126として機能する。
眼特性測定制御部110は、眼科装置10による被検眼Eの眼特性の測定を制御する。この眼特性測定制御部110は、固視光学系18を制御して被検眼Eを雲霧(眼屈折力の測定時)させると共に、眼特性測定光学系12(測定光投影光学系20及び第1受光光学系22)を制御して、被検眼Eの眼底部Efに対する測定光L1の投影と、測定光L1の反射光の撮像及び眼特性測定データD1の出力とを実行させる。
なお、被検眼Eの眼特性の測定は、後述の角膜形状の測定のタイミングとは異なる任意のタイミングで実行される。また、被検眼Eの眼特性の測定は必須ではなく、不要であれば省略してもよい。この場合、操作部102に対して眼特性の測定の中止操作を入力することで、眼科装置10による被検眼Eの眼特性の測定が省略される。
第1画像取得部112は、第1受光光学系22から出力される眼底部Efの眼特性測定データD1を取得して、この眼特性測定データD1を眼特性演算部114へ出力する。
眼特性演算部114は、第1画像取得部112から入力された眼特性測定データD1を解析して、被検眼Eの眼屈折力及び眼球波面収差等の眼特性を演算する。なお、眼特性の演算方法については公知技術(特開2011-115387号公報)であるので、ここでは具体的な説明は省略する。そして、眼特性演算部114は、被検眼Eの眼特性の演算結果を記憶部104に記憶させると共に表示部106に表示させる。
角膜形状測定制御部116は、本発明の投影制御部及び取得制御部に相当するものであり、眼科装置10による角膜形状の測定を制御する。この角膜形状測定制御部116は、最初に、固視光学系18を制御して被検眼Eを固視させると共に、リング光投影光学系52及びアライメント光学系16を制御して、被検眼Eの角膜Ecに対して、プラチドリング光L2、一対のZアライメント光L3、及びXYアライメント光L4を投影する。また、角膜形状測定制御部116は、第2受光光学系54を制御して、各光の反射光、すなわち既述の図3に示したプラチドリング像86、一対の輝点像B1、及び輝点像B2の撮像と、アライメント検出用の撮影画像データD2の出力とを実行させる。
また、角膜形状測定制御部116は、アライメント完了後、角膜形状測定光学系14を制御して、リング光投影光学系52による角膜Ecへのプラチドリング光L2の投影と、第2受光光学系54によるプラチドリング像86の撮像(取得)及び撮影画像データD2の出力と、を3回繰り返し実行させる。
この際に角膜形状測定制御部116は、リング光投影光学系52のLED58aを制御して、角膜Ecに1回目に投影されるプラチドリング光L2の光量と、2回目に投影されるプラチドリング光L2の光量と、3回目に投影されるプラチドリング光L2の光量と、を異ならせる。具体的に本実施形態では、角膜Ecに投影されるプラチドリング光L2の光量を3段階で段階的に増加させる。なお、1回目に角膜Ecに投影されるプラチドリング光L2の光量を「小」とし、2回目に角膜Ecに投影されるプラチドリング光L2の光量を「中」とし、3回目に角膜Ecに投影されるプラチドリング光L2の光量を「大」とする。
図5は、光量別のプラチドリング光L2を説明するための説明図である。なお、以下の説明において「瞳孔Ep」には撮影画像データD2内の瞳孔像が含まれ、且つ「虹彩Ei」には撮影画像データD2内の虹彩像が含まれるものとする。
図5に示すように、プラチドリング光L2の光量「小」は、虹彩Ei上に投影されているプラチドリング光L2のリング光L2a(図中の実線で表示)の反射像であるリング像87を、撮影画像データD2から検出するのに適した光量に調整されている。また、プラチドリング光L2の光量「中」は、瞳孔Ep上に投影されているリング光L2a(図中、一点鎖線で表示)の反射像であるリング像87を、撮影画像データD2から検出するのに適した光量に調整されている。
プラチドリング光L2の光量「大」は、角膜Ecの外周部に投影されているプラチドリング光L2のリング光L2a(図中の点線で表示)の反射像であるリング像87を、撮影画像データD2から検出するのに適した光量に調整されている。角膜Ecの外周部に投影されるリング光L2aは、既述の通り、睫毛ELなどによりケラレてしまう。その結果、リング像87は、その一部が途切れたり、或いは像が暗くなったりする。このため、光量「大」は、リング像87の途切れ或いはリング像87が暗くなることを防止可能な光量に調整されている。
このように、プラチドリング光L2の光量「小」、光量「中」、及び光量「大」の各光量については、実験又はシミュレーションにより適切な値が予め設定されている。
図4に戻って、第2画像取得部118は、既述の第2受光光学系54と共に本発明の角膜撮影像取得部を構成するものであり、第2受光光学系54から撮影画像データD2を取得する。この第2画像取得部118は、前述のアライメント駆動部108によるアライメント前に第2受光光学系54からアライメント検出用の撮影画像データD2を取得した場合、この撮影画像データD2をアライメント検出部120へ出力する。
また、第2画像取得部118は、後述のアライメント駆動部108によるアライメント後に第2受光光学系54からプラチドリング光L2の光量別(「小」、「中」、「大」)の撮影画像データD2を順次取得すると共に、取得した撮影画像データD2をリング像解析部122へ順次出力する。以下、プラチドリング光L2の光量別を、単に「光量別」と略す。
アライメント検出部120は、第2画像取得部118から入力されるアライメント検出用の撮影画像データD2を解析して、既述の第3リング像87と一対の輝点像B1との位置関係に基づき、被検眼Eに対する眼科装置10のZ軸方向のアライメント状態を検出する。また、アライメント検出部120は、輝点像B2の位置に基づき、被検眼Eに対する眼科装置10のX軸方向及びY軸方向のアライメント状態を検出する。
そして、アライメント検出部120は、XYZ軸の各軸方向のアライメント検出結果をアライメント駆動部108へ出力する。これにより、アライメント駆動部108によって、被検眼Eに対する眼科装置10のオートアライメントが実行される。なお、オートアライメントを実行する代わりに、アライメント検出部120によるアライメント検出結果を表示部106に表示させると共に、操作部102への入力操作に応じてアライメント駆動部108を駆動させる手動アライメントを行ってもよい。
リング像解析部122は、第2画像取得部118から入力される光量別の撮影画像データD2をそれぞれ解析して、プラチドリング像86のリング像87ごとに、リング像87の検出に最適な撮影画像データD2の選択と、選択した撮影画像データD2からのリング像87の検出と、を行う。このリング像解析部122は、輝度値検出部123と選択部124とリング像検出部125として機能する。
図6は、輝度値検出部123による輝度値の検出対象となる光量別の撮影画像データD2の一例を示した説明図である。なお、図6では、被検眼Eの瞳孔Epと虹彩Eiとを明確化するため、図6の符号6Aに示す撮影画像データD2として、符号6Bに示す撮影画像データD2からプラチドリング像86を省略したものを図示している。
図6に示すように、輝度値検出部123は、光量別に取得された撮影画像データD2内の各画素の輝度値(例えば8ビットのデータであれば0~255)を検出する。そして、輝度値検出部123は、撮影画像データD2ごとの輝度値の検出結果を選択部124へ出力する。なお、図中の符号dは、撮影画像データD2内において、プラチドリング像86又は瞳孔Epの中心位置(仮中心位置でも可)を通る任意の径線方向を示す。
図7は、光量「小」の撮影画像データD2の経線方向dに沿った輝度値の検出結果(輝度値プロファイル)を示したグラフである。図8は、光量「中」の撮影画像データD2の経線方向dに沿った輝度値の検出結果を示したグラフである。図9は、光量「大」の撮影画像データD2の経線方向dに沿った輝度値の検出結果を示したグラフである。なお、各図中の符号STは、輝度値の飽和閾値(例えば8ビットのデータであれば255)を示す。
図7から図9に示すように、輝度値検出部123による撮影画像データD2ごとの輝度値の検出結果には、第1リング像87から第8リング像87にそれぞれ相当する輝度値の変化を示す波形V1から波形V8が含まれている。このため、輝度値検出部123による輝度値の検出結果に基づき、撮影画像データD2ごとに、各リング像87の輝度値を検出することができる。そして、各リング像87の輝度値は、プラチドリング光L2の光量の増加に応じて段階的に増加する。
また、瞳孔Epではプラチドリング光L2の反射率が低くなるのに対して、虹彩Eiではプラチドリング光L2の反射率が高くなる。このため、各撮影画像データD2において、瞳孔Ep上に位置する第1リング像87から第3リング像87の輝度値に加算される背景輝度値(瞳孔Epの輝度値)よりも、虹彩Ei上に位置する第4リング像87から第8リング像87の輝度値に加算される背景輝度値(虹彩Eiの輝度値)の方が高くなる。
さらに、既述の図5に示したように、角膜Ecの外周部に投影されるプラチドリング光L2のリング光L2aは、睫毛ELによりケラレる。このため、各撮影画像データD2において、第8リング像87の輝度値が、第4リング像87から第7リング像87の輝度値よりも低くなる。
図4と、図7から図9とに示すように、選択部124は、輝度値検出部123から入力される撮影画像データD2ごとの輝度値の検出結果に基づき、プラチドリング像86のリング像87(本発明の反射像内の部位に相当)ごとに、リング像87の検出に最適な撮影画像データD2を、光量別の撮影画像データD2の中から選択する。
具体的に、選択部124は、プラチドリング像86のリング像87ごとに、リング像87の輝度値(ピーク値)が予め定めた既述の飽和閾値STよりも小さくなる撮影画像データD2の中で、この輝度値のSN比(signal-noise ratio)が最も高くなる撮影画像データD2を、光量別の撮影画像データD2の中から選択する。ここでいうSN比とは、[(リング像87の輝度値)/(背景輝度値)]であり、換言するとリング像87と背景像(瞳孔Ep又は虹彩Ei)とのコントラスト比を示す。
瞳孔Ep上に位置する第1リング像87から第3リング像87の各輝度値は、光量「小」の撮影画像データD2(図7参照)及び光量「中」の撮影画像データD2(図8参照)では飽和閾値ST未満であるのに対して、光量「大」の撮影画像データD2(図9参照)では飽和閾値STを超える。そして、光量「中」の撮影画像データD2の方が、光量「小」の撮影画像データD2よりも、第1リング像87から第3リング像87の各輝度値のSN比が高くなる。このため、選択部124は、第1リング像87から第3リング像87の検出に最適な撮影画像データD2として、光量「中」の撮影画像データD2を選択し、その選択結果をリング像検出部125へ出力する。
虹彩Ei上に位置する第4リング像87から第7リング像87の各輝度値は、光量「小」の撮影画像データD2では飽和閾値ST未満であるのに対して、光量「中」の撮影画像データD2及び光量「大」の撮影画像データD2では飽和閾値STを超える。このため、選択部124は、第4リング像87から第7リング像87の検出に最適な撮影画像データD2として、光量「小」の撮影画像データD2を選択し、その選択結果をリング像検出部125へ出力する。
睫毛ELによりケラレている第8リング像87の各輝度値は、光量「小」、光量「中」、及び光量「大」の各撮影画像データD2のいずれにおいても飽和閾値ST未満となる。そして、各撮影画像データD2の中で、光量「大」の撮影画像データD2の第8リング像87の輝度値のSN比が最も高くなる。このため、選択部124は、第8リング像87の検出に最適な撮影画像データD2として、光量「大」の撮影画像データD2を選択し、その選択結果をリング像検出部125へ出力する。
図10は、リング像検出部125による各リング像87の検出を説明するための説明図である。図10に示すように、リング像検出部125は、本発明の部位検出部に相当するものであり、選択部124から入力されるリング像87ごとの撮影画像データD2の選択結果に基づき、リング像87ごとに、選択部124により選択された撮影画像データD2からリング像87の検出を行う。ここでいうリング像87の検出とは、リング像87の各位置の位置検出、より具体的にはリング像87の複数の経線方向dごとの半径検出である。
具体的にリング像検出部125は、光量「小」の撮影画像データD2から第4リング像87から第7リング像87の検出を行い、光量「中」の撮影画像データD2から第1リング像87から第3リング像87の検出を行い、光量「大」の撮影画像データD2から第8リング像87の検出を行う。
リング像検出部125による各リング像87の検出には公知の方法が用いられる。例えば1つのリング像87の検出を例に挙げて説明すると、リング像検出部125は、リング像87の複数の経線方向d(例えば1°ピッチで360本)ごとのエッジ強度を検出し、経線方向dごとにリング像87のエッジ強度を微分して変曲点位置を決定する。そして、リング像検出部125は、リング像87の経線方向dごとの変曲点位置をリング像87の位置(半径)として決定する。以下同様に、リング像検出部125は他のリング像87の検出を行う。リング像検出部125は、各リング像87の検出結果を角膜形状演算部126へ出力する。なお、各リング像87の検出の方法は、上述の方法に限定されず、公知の各種方法を用いてよい。
角膜形状演算部126は、リング像検出部125から入力される各リング像87の検出結果に基づき、被検眼Eの角膜形状及び角膜波面収差を演算する。ここで、角膜形状及び角膜波面収差の具体的な演算方法は公知技術であるので、具体的な説明は省略する。そして、角膜形状演算部126は、被検眼Eの角膜形状等の演算結果を記憶部104に記憶させると共に表示部106に表示させる。なお、既述のアライメント検出部120によるZ軸方向のアライメント検出結果に基づき、角膜形状測定時の眼科装置10の作動距離誤差を検出し、この誤差検出結果を角膜形状の測定結果にフィードバックしてもよい。
[眼科装置の作用]
図11は、上記構成の眼科装置10による被検眼Eの角膜形状の測定処理(本発明の眼科装置の角膜形状測定方法に相当)の流れを示すフローチャートである。なお、説明の煩雑化を防止するため、以下では被検眼Eの眼特性の測定は省略する。
図11に示すように、最初に統括制御部100の角膜形状測定制御部116は、固視光学系18を制御して被検眼Eの眼底部Efに固視標光L5を通常の光量で投影させることにより、被検眼Eを固視させる(ステップS1)。
また、角膜形状測定制御部116は、アライメント光学系16及びリング光投影光学系52を制御して、被検眼Eの前眼部にプラチドリング光L2、一対のZアライメント光L3、及びXYアライメント光L4を投影させる。さらに、角膜形状測定制御部116は、第2受光光学系54を制御して、被検眼Eからの各反射光(反射像)の撮像とアライメント検出用の撮影画像データD2の出力とを実行させる。このアライメント検出用の撮影画像データD2は、第2受光光学系54から第2画像取得部118を経てアライメント検出部120に入力される。
アライメント検出部120は、第2画像取得部118から入力されたアライメント検出用の撮影画像データD2を解析して、第3リング像87と一対の輝点像B1との位置関係、及び輝点像B2の位置に基づき、被検眼Eに対する眼科装置10のXYZ軸方向のアライメント状態を検出する。そして、アライメント検出部120は、アライメント状態の検出結果をアライメント駆動部108へ出力する。これにより、アライメント駆動部108によって、被検眼Eに対する眼科装置10のオートアライメントが実行される(ステップS2)。なお、既述のようにオートアライメントの代わりに手動アライメントを行ってもよい。
上述のアライメントが完了すると、角膜形状測定制御部116は、リング光投影光学系52(LED58a)による角膜Ecへの光量「小」のプラチドリング光L2の投影(ステップS3)と、第2受光光学系54による角膜Ecの撮影及び撮影画像データD2の出力(ステップS4)と、を実行させる。これにより、プラチドリング光L2の光量「小」に対応する1回目の撮影画像データD2が、第2受光光学系54から第2画像取得部118を経て輝度値検出部123に入力される。なお、ステップS3は本発明のパターン光投影ステップに相当し、且つステップS4は本発明の角膜撮影像取得ステップに相当する。
1回目の撮影画像データD2の取得後、角膜形状測定制御部116は、リング光投影光学系52(LED58a)を制御して、プラチドリング光L2の光量を「小」から「中」に変更する(ステップS5でYES、ステップS6)。次いで、角膜形状測定制御部116は、リング光投影光学系52による角膜Ecへの光量「中」のプラチドリング光L2の投影(ステップS3)と、第2受光光学系54による角膜Ecの撮影及び撮影画像データD2の出力(ステップS4)と、を実行させる。これにより、プラチドリング光L2の光量「中」に対応する2回目の撮影画像データD2が、第2受光光学系54から第2画像取得部118を経て輝度値検出部123に入力される。
以下同様にして、角膜形状測定制御部116は、リング光投影光学系52による角膜Ecへの光量「大」のプラチドリング光L2の投影(ステップS3)と、第2受光光学系54による角膜Ecの撮影及び撮影画像データD2の出力(ステップS4)と、を実行させる(ステップS5でYES)。これにより、プラチドリング光L2の光量「大」に対応する3回目の撮影画像データD2が、第2受光光学系54から第2画像取得部118を経て輝度値検出部123に入力される。なお、ステップS5は、本発明の投影制御ステップ及び取得制御ステップに相当する。
第2画像取得部118から光量別の撮影画像データD2の入力を受けた輝度値検出部123は、既述の図6から図9に示したように、撮影画像データD2ごとに輝度値の検出を行う(ステップS5でNO、ステップS7)。これにより、撮影画像データD2ごとに各リング像87の輝度値が検出される。このため、ステップS7は、本発明の輝度値検出ステップに相当する。そして、輝度値検出部123は、輝度値の検出結果を選択部124へ出力する。
輝度値検出部123から輝度値の検出結果の入力を受けた選択部124は、既述の図7から図9に示したように、リング像87ごとに、リング像87の検出に最適な撮影画像データD2を光量別の撮影画像データD2の中から選択する(ステップS8、本発明の選択ステップに相当)。これにより、瞳孔Ep上に位置するリング像87の検出と、虹彩Ei上に位置するリング像87の検出と、睫毛ELによりケラレる第8リング像87の検出と、にそれぞれ最適な撮影画像データD2が選択される。そして、選択部124は、リング像87ごとの撮影画像データD2の選択結果をリング像検出部125へ出力する。
選択部124からの選択結果の入力を受けたリング像検出部125は、既述の図10に示したように、リング像87ごとに、選択部124により選択された撮影画像データD2からリング像87の検出を行う(ステップS9、本発明の部位検出ステップに相当)。これにより、各リング像87の検出を、それぞれの検出に最適な撮影画像データD2を用いて実行することができる。その結果、各リング像87の検出を高精度に行うことができる。そして、リング像検出部125は、リング像87ごとの検出結果を角膜形状演算部126へ出力する。
各リング像87の検出結果の入力を受けた角膜形状演算部126は、公知の演算方法を用いて、角膜形状及び角膜波面収差を演算する(ステップS10、本発明の角膜形状演算ステップに相当)。この角膜形状演算部126による角膜形状等の演算結果は記憶部104に記憶されると共に表示部106に表示される(ステップS11)。
[本実施形態の効果]
以上のように本実施形態の眼科装置10では、角膜Ecに投影されるプラチドリング光L2の光量を段階的に変化させると共に、光量別の撮影画像データD2をそれぞれ取得して、リング像87ごとにそれぞれ検出に最適な撮影画像データD2を選択して検出を実行するので、各リング像87の検出を高精度に行うことができる。その結果、被検眼Eの角膜形状を高精度に測定することができる。また、この一連の測定で角膜形状の測定に必要な撮影画像データD2が得られるので、測定を何回もやり直す必要がなくなり、検者及び被検者の双方の負担を減らすことができる。
[第2実施形態の眼科装置]
上記第1実施形態では、プラチドリング像86の中心が被検眼E(瞳孔Ep及び虹彩Ei)の中心に略一致している場合の角膜形状の測定を例に挙げて説明したが、第2実施形態では、プラチドリング像86が被検眼E(瞳孔Ep及び虹彩Ei)に対して偏芯している場合の角膜形状の測定について説明を行う。
図12は、第2実施形態の撮影画像データD2の説明図である。なお、図12以降では、図面の煩雑化を防止するため、プラチドリング像86を構成する複数のリング像87のうちの任意の1つのリング像87を図示し、他のリング像87については図示を省略している。
図12に示すように、プラチドリング像86が被検眼Eに対して偏芯している場合、或いは図示は省略するが瞳孔Epの形状が歪である場合、同一径のリング像87であってもも、このリング像87には、瞳孔Ep上に位置する部位と虹彩Ei上に位置する部位とが存在する。このため、第2実施形態では、リング像87の周方向に沿ったリング像87内の部位ごとに、部位の検出に最適な撮影画像データD2を、光量別の撮影画像データD2の中から選択する。
なお、第2実施形態は、第1実施形態と基本的に同じ構成であるため、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては、同一符号を付してその説明は省略する。
第2実施形態の第2画像取得部118は、既述の第1実施形態と同様に、第2受光光学系54から光量別の撮影画像データD2を順次取得すると共に、取得した撮影画像データD2を輝度値検出部123へ順次出力する。
図13は、第2実施形態の輝度値検出部123よる撮影画像データD2ごとの輝度値の検出を説明するための説明図である。なお、各撮影画像データD2からの輝度値の検出方法は共通であるため、ここでは1つの撮影画像データD2からの輝度値の検出について説明を行う。
第2実施形態の輝度値検出部123は、撮影画像データD2を解析して、撮影画像データD2内からプラチドリング像86を公知の方法で検出することにより、プラチドリング像86中の任意のリング像87(例えば第1リング像87)の中心位置Cを検出する。そして、輝度値検出部123は、中心位置Cを基準として放射状(半径方向)に延びた複数の検出ラインαごとに、検出ラインαに沿って撮影画像データD2の画素の輝度値を検出する。なお、検出ラインαは、既述の経線方向dと実質的に同じものである。また、図中の「1、2、3、…k、…n、…」は、検出ラインαの番号である。そして、輝度値検出部123は、残りの2つの撮影画像データD2についても同様の方法で輝度値の検出を行う。
図14は、各撮影画像データD2の図13中の第k検出ラインαに沿った輝度値の検出結果(輝度値プロファイル)を示したグラフである。図15は、各撮影画像データD2の図13中の第n検出ラインαに沿った輝度値の検出結果を示したグラフである。図14及び図15に示すように、各検出ラインαに沿った輝度値の検出結果には、リング像87に相当する波形Vが含まれている。このため、撮影画像データD2ごとに、各検出ラインαにそれぞれ対応するリング像87内の部位の輝度値を検出することができる。
なお、第1実施形態と同様に、プラチドリング光L2の光量の増加に応じて、各検出ラインαにそれぞれ対応するリング像87内の部位の輝度値が段階的に増加する。また、例えば第k検出ラインαのように虹彩Ei上でリング像87と交差する場合には、虹彩Eiによるプラチドリング光L2の反射率が高くなるため、リング像87の輝度値が高くなる。逆に、例えば第n検出ラインαのように瞳孔Ep上でリング像87と交差する場合には、瞳孔Epによるプラチドリング光L2の反射率が低くなるため、リング像87の輝度値が低くなる。
第2実施形態の選択部124は、輝度値検出部123から入力される撮影画像データD2ごとの各検出ラインαの輝度値の検出結果に基づき、各検出ラインαにそれぞれ対応するリング像87の部位ごとに、部位の検出に最適な撮影画像データD2を、光量別の撮影画像データD2の中から選択する。
例えば、第k検出ラインαでは、光量「小」の撮影画像データD2におけるリング像87の輝度値が飽和閾値ST未満であるのに対して、光量「中」の撮影画像データD2及び光量「大」の撮影画像データD2の双方におけるリング像87の輝度値が飽和閾値STを超える。このため、選択部124は、第k検出ラインαに対応するリング像87の部位の検出に最適な撮影画像データD2として、光量「小」の撮影画像データD2を選択し、その選択結果をリング像検出部125へ出力する。
また、第n検出ラインαでは、光量「小」の撮影画像データD2及び光量「中」の撮影画像データD2の双方におけるリング像87の輝度値が飽和閾値ST未満であるのに対して、光量「大」の撮影画像データD2におけるリング像87の輝度値が飽和閾値STを超える。そして、光量「中」の撮影画像データD2の方が、光量「小」の撮影画像データD2よりも、リング像87の輝度値のSN比が高くなる。このため、選択部124は、第n検出ラインαに対応するリング像87の部位の検出に最適な撮影画像データD2として、光量「中」の撮影画像データD2を選択し、その選択結果をリング像検出部125へ出力する。
以下同様に、選択部124は、他の検出ラインαに対応するリング像87の部位の検出に最適な撮影画像データD2を選択した選択結果を、リング像検出部125へ出力する。
図16は、第2実施形態のリング像検出部125によるリング像87の部位ごとの検出を説明するための説明図である。図17は、リング像87の部位と、第2実施形態のリング像検出部125が検出を行う撮影画像データD2との対応関係を説明するための説明図である。なお、ここでは第m検出ラインαから第u検出ラインα(第n検出ラインαを含む)までが瞳孔Ep上でリング像87と交差し、他の検出ラインα(第k検出ラインαを含む)は虹彩Ei上でリング像87と交差するものとする。
図16及び図17に示すように、第2実施形態のリング像検出部125は、選択部124から入力される検出ラインαごとの撮影画像データD2の選択結果に基づき、各検出ラインαにそれぞれ対応するリング像87の部位ごとに、選択部124により選択された撮影画像データD2から部位の検出を行う。ここいう部位の検出とは、部位の位置検出、より具体的には部位の半径の検出である。
例えば、第m検出ラインαから第u検出ラインαまでの範囲R1(図17参照)では、既述の図15に示した第n検出ラインαと同様に、選択部124により光量「中」の撮影画像データD2が選択されている。このため、リング像検出部125は、光量「中」の撮影画像データD2から、第m検出ラインαから第u検出ラインαにそれぞれ対応するリング像87の部位の検出を行う。
また、範囲R1とは異なる範囲R2(図17参照)内の各検出ラインαでは、既述の図14に示した第k検出ラインαと同様に、選択部124により光量「小」の撮影画像データD2が選択されている。このため、リング像検出部125は、光量「小」の撮影画像データD2から、残りの検出ラインαにそれぞれ対応するリング像87の部位の検出を行う。
そして、リング像検出部125は、各検出ラインαにそれぞれ対応するリング像87の部位ごとの検出結果を、角膜形状演算部126へ出力する。
以下同様に、第2実施形態のリング像解析部122(輝度値検出部123、選択部124、及びリング像検出部125)により、プラチドリング像86の図示しない他のリング像87の各部位の検出が実行され、他のリング像87の各部位の検出結果が角膜形状演算部126に入力される。
第2実施形態の角膜形状演算部126は、リング像87ごとの各部位の検出結果に基づき、第1実施形態と同様に、被検眼Eの角膜形状及び角膜波面収差を演算する。
なお、第2実施形態の眼科装置10による被検眼Eの眼特性及び角膜形状の測定処理の流れは、既述の図11に示したステップS7からステップS9を除けば、第1実施形態と基本的に同じである。すなわち、第2実施形態では、ステップS7において撮影画像データD2ごとに、各検出ラインαにそれぞれ対応するリング像87内の部位の輝度値を検出する。また、第2実施形態では、ステップS8において各検出ラインαにそれぞれ対応するリング像87の部位ごとに検出に最適な撮影画像データD2の選択を行い、ステップS9においてリング像87の部位ごとに検出を行う。
以上のように第2実施形態においても、角膜Ecに投影されるプラチドリング光L2の光量を段階的に変化させると共に、光量別の撮影画像データD2をそれぞれ取得して、リング像87の各部位の検出に最適な撮影画像データD2を選択して検出を実行することにより、リング像87の各部位の検出を高精度に行うことができる。その結果、プラチドリング像86が被検眼Eに対して偏芯している場合、或いは瞳孔Epの形状が歪である場合でも、被検眼Eの角膜形状を高精度に測定することができる。
[その他]
上記実施形態では、本発明の角膜形状測定用のパターン光として8重のプラチドリング光L2を例に挙げて説明したが、1重又は2重以上のプラチドリング光L2(ケラトリング光を含む)、及び所定パターンのドット光などの角膜形状の測定に利用可能なパターン光であれば特に限定はされない。
上記実施形態では、角膜形状測定制御部116がリング光投影光学系52を制御して、被検眼Eに投影するプラチドリング光L2の光量を3段階で変化させているが、プラチドリング光L2の光量は少なくとも1回以上変化させればよく、その回数は特に限定はされない。また、この場合、角膜形状測定制御部116は、第2受光光学系54を制御して、プラチドリング光L2の光量が変更されるごとに、プラチドリング像86の撮像と撮影画像データD2の出力とを再実行させる。これにより、少なくとも2以上の光量別の撮影画像データD2が得られる。
上記実施形態では、光量別の撮影画像データD2の取得が全て完了した後で、輝度値検出部123による輝度値の検出を開始させているが、輝度値の検出については、第2受光光学系54により新たな撮影画像データD2が取得されるごとに逐次実行してもよい。
上記実施形態では、眼科装置10により被検眼Eの眼特性として眼屈折力等を測定する場合を例に挙げて説明を行ったが、眼屈折力以外の各種眼特性[眼圧、眼底の光学断層画像、角膜内皮細胞、及び眼軸長等]の測定を行ってもよい。
上記実施形態では、眼科装置10として被検眼Eの眼特性と角膜Ecの角膜形状との双方を測定する複合機を例に挙げて説明したが、本発明の眼科装置には、角膜Ecの角膜形状の測定を行う角膜トポグラファー装置等の角膜形状測定装置、及び角膜Ecの一部の領域の角膜曲率を測定するケラトメータ等も含まれる。