以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。最初に、実施例及び比較例に共通する力覚センサの基本的な構成について説明する。図1は、力覚センサ100の外観斜視図である。力覚センサ100は、略円柱状の本体部2と、本体部2の下部を覆う円盤形状の下蓋1とを備える。
説明の便宜上、図1に示すように、互いに直交するx軸、y軸及びz軸を定める。力覚センサ100は、略円板状或いは略円柱状の形状を有しており、その厚み方向をz方向とする。x方向とy方向は、図2を参照して後述するように、z方向から力覚センサ100を見たときにxy平面において力覚センサ100を4つの象限に分けるように設定される。なお、図1に示す中心軸Lは、z軸と平行であり、力覚センサ100におけるxy平面の中心を通る軸である。
図2(a)は、力覚センサ100のzx断面図である。図2(b)は、力覚センサ100の受力部4の上部を透視して力覚センサ100を上面側から見た平面図である。図2(c)は、下蓋1を取り外して力覚センサ100を底面側から見た平面図である。
本体部2は、円筒形状を有する支持部6と、略円盤形状を有する受力部4と、支持部6と受力部4を連結する弾性連結部5とを有する。下蓋1は支持部6の下面に固定されており、支持部6と下蓋1により固定部が構成されている。受力部4は、弾性連結部5が変形することによって固定部に対してz方向に変位可能であり、また、xy平面に対して傾斜可能な可動部である。固定部は不図示の基台等に取り付けられ、受力部4は不図示のロボットアームやマニピュレータ等に取り付けられる。
弾性連結部5は、xy平面内において中心軸Lまわりに90°間隔で4箇所の配置されている。換言すれば、弾性連結部5は、支持部6と受力部4との間においてz方向での高さが同じとなるように、xy平面内で十字型に配置されている。4箇所の弾性連結部5のそれぞれに、y方向又はx方向から見たときに略U字型となっている変位方向変換部3(以下「変位変換部3」という)が設けられている。よって、力覚センサ100では、より正確には、弾性連結部5は変位変換部3を挟んで支持部6と受力部4とを連結している。変位変換部3の先端の外側の面には、検出対象体が取り付けられている。以下、4箇所の変位変換部3のそれぞれに取り付けられている4つの検出対象体を検出対象体8a,8b,8c,8dと記す。
なお、受力部4の4箇所から下蓋1側(-z方向)へ向けて柱状部が突出しており、それぞれの柱状部の先端にも検出対象体が取り付けられている。以下、4箇所の柱状部のそれぞれの先端に取り付けられている4つの検出対象体を検出対象体8e,8f,8g,8hと記す。検出対象体8a~8hは、同一方向(-z方向)を向くように、且つ、z方向において同じ高さに位置するように、変位変換部3又は柱状部に取り付けられている。支持部6にはセンサ基板7が固定されており、センサ基板7上には、z方向において検出対象体8a~8hと所定の間隔を隔てて正対するように、変位検出素子9a~9hが実装されている。
受力部4に負荷(外力又はモーメント)が作用すると、可動部である受力部4が固定部に対して変位することにより、弾性連結部5の受力部4側の端部が変位することで、変位変換部3に取り付けられている検出対象体8a~8dに変位が生じる。受力部4に-z方向(下蓋1側へ向かう方向)の外力Fzが作用したときの検出対象体8a~8dの変位について、図3を参照して説明する。
図3は、受力部4に下蓋1側へ向かう外力Fzが入力された場合の、検出対象体8dが設けられている変位変換部3の変形前後の様子をy方向から見て表した図である。受力部4に-z方向の外力Fzが入力されると、不図示の検出対象体8aはy方向へ、不図示の検出対象体8bはx方向へ、不図示の検出対象体8cは-y方向へ、検出対象体8dは-x方向へそれぞれ変位する。このとき、受力部4のz方向での変位量Δzは、弾性連結部5の剛性が高いほど小さくなる。
ここで、変位検出素子9d(不図示)の受光面の法線と直交する方向における検出対象体8dの変位検出素子9d(不図示)に対する相対的な変位量を「感度」と定義する。力覚センサ100では、変位検出素子9d(不図示)の受光面はz方向と直交しているため、検出対象体8dの感度はx方向の変位量Δxで与えられる。図3から、変位変換部3の高さhが低くなると、感度は低下することがわかる。また、変位量Δxは、検出対象体8dの表面の中心を通り、x方向と直交する線23,24間の距離(間隔)として定められる。なお、略U字型の形状を有する変位変換部3の高さhは、弾性連結部5のz方向厚みを2等分する線21と変位変換部3の先端部のz方向厚みを2等分する線22の間の距離(間隔)で規定する。
なお、受力部4にx方向の外力Fxが入力されると、検出対象体8e~8hはx方向に変位し、受力部4にy方向の外力Fyが入力されると検出対象体8e~8hはy方向に変位する。受力部4にx軸まわりのモーメントMxが入力されると検出対象体8a,8cが-y方向に変位し、受力部4にy軸まわりのモーメントMyが入力されると検出対象体8b,8dがx方向に変位する。受力部4にz軸まわりのモーメントMzが入力された場合には、検出対象体8e,8fはy方向及び-x方向へ変位し、検出対象体8g,8hは-y方向及びx方向に変位する。このように、変位変換部3及び弾性連結部5は、受力部4に作用する力の方向を変換する変位方向変換機構として機能する。
次に、力覚センサ100における外力及びモーメントの検出方法について説明する。図4は、センサ基板7の平面図である。センサ基板7には、光源10a~10hと変位検出素子9a~9hが、1個の光源と1個の変位検出素子を1組として実装されている。各組の1個の光源と1個の変位検出素子は、一体的に構成されていてもよいし別体であってもよい。光源10a~10hは、例えばLEDであり、変位検出素子9a~9hはフォトダイオード(PD)であるが、これらに限定されるものではない。変位検出素子9a~9hは、光検出面である複数の受光面がストライプ状に配列された構造を有する。不図示であるが、検出対象体8a~8hはそれぞれ、ガラス等の基板の表面又は裏面に形成された金属反射膜等によって回折格子が形成された反射面を有する。
変位検出素子9a~9hと検出対象体8a~8hは1対1で、検出対象体の反射面と変位検出素子の受光面とがz方向において正対するように配置されている。光源10a~10hから検出対象体8a~8hへ照射される発散光束は、検出対象体8a~8hで反射し、検出対象体8a~8hからの反射光は変位検出素子9a~9hの受光面に明暗の縞である回折光パターンを形成する。変位検出素子9a~9hの受光面の配列ピッチは、回折光パターンの1/4周期に一致している。したがって、検出対象体8a~8hが変位検出素子9a~9hの受光面の配列方向に変位すると、変位に伴って回折光パターンが移動する。こうして、複数の受光面からは90°の位相差を持った2相の正弦波状信号(sin,cos)が得られる。
不図示の演算回路は、得られた2相の正弦波状信号の逆正接演算(tan-1)を行って、検出対象体8a~8hの変位量を算出する。演算回路は更に、算出した変位量から外力Fx,Fy,Fz及びモーメントMx,My,Mzの6つの成分(6軸方向の力)を算出する。変位変換部3に検出対象体8a~8dを設置することにより、別途に変位方向変換機構を設ける必要がなくなることで、部品点数の削減による低コスト化を図ることができると共に力覚センサ100の小型化を図ることができる。
次に、力覚センサ100をベースとした本発明の実施例に係る力覚センサについて説明する。以下に説明する実施例1~3に係る力覚センサは、概略、上述した力覚センサ100の変位変換部3の構造等を改良し、これに伴って検出対象体8a~8dと変位検出素子9a~9dの配置を工夫したものである。
図5(a)は、実施例1に係る力覚センサ100Aの部分断面図であり、検出対象体8dが取り付けられている変位変換部3とその近傍が示されている。力覚センサ100Aにおいて長さ方向がx方向と平行になっている他方の弾性連結部の構造と、長さ方向がy方向と平行になっている2箇所の弾性連結部の構造はそれぞれ図5(a)に示す構造と同等であるため、図示と説明を省略する。なお、図5(a)中の座標軸は図2に示した座標軸に対応しており、よって、図5(a)に示されている部分の右側が不図示の中心軸L側となっている。説明の便宜上、図5(a)の状態で、z方向は鉛直方向と平行であり、x方向及びy方向は共に水平方向と平行であるものとし、このことは後述する力覚センサ100B,100C,100p~100vについても同様とする。
力覚センサ100Aにおいて支持部6と受力部4(不図示)を連結する弾性連結部5と変位変換部3とが接合されている部分を接合部11と称呼し、後述する力覚センサ100B,100C,100p~100vについても同様の称呼を用いる。また、支持部6と受力部4を連結する方向と直交し、且つ、接合部11の中心を通る線、つまり、接合部11のx方向中心を通り、z方向と平行な直線、を「接合部鉛直線12」と規定する。力覚センサ100Aでは、接合部11は弾性連結部5の長さ方向中央(x方向中央)に設けられている。つまり、x方向において、支持部6の内周面から接合部鉛直線12までの距離Eは、弾性連結部5と受力部4との境界から接合部鉛直線12までの距離Fと同じ距離に設定されている。なお、詳細は後述するが、接合部11の位置は、弾性連結部5の長さ方向中央部に限られるものではなく、支持部6側(外周寄り)又は不図示の中心軸L側(中心寄り)に設けることもできる。
変位変換部3には、センサ基板7側の先端部から不図示の中心軸Lへ向けて突出した張り出し部15が設けられている。検出対象体8dは、不図示の光源10dから照射された光を反射する反射面がz方向と平行となるように、張り出し部15の先端面に取り付けられている。なお、張り出し部15は、変位変換部3と一体的に形成されていてもよいし、別部品として準備されて変位変換部3に接合されていてもよい。力覚センサ100Aでは検出対象体8dは、接合部鉛直線12よりも弾性連結部5と受力部4との接合部がある側、つまり、中心軸L側に配置されている。変位検出素子9dは、検出対象体8dと正対するようにセンサ基板7に実装されている。
なお、力覚センサ100Aでは、変位変換部3の高さhは、図3に示した力覚センサ100と同様に規定される。ここで、図5(a)に示すように、検出対象体8dの弾性連結部5に対する垂直距離Gを、検出対象体8dの表面の中心から弾性連結部5のz方向厚みを2等分する線21に下ろした垂線の長さであると定義する。また、検出対象体8dの表面中心から接合部鉛直線12に下ろした垂線の長さを、検出対象体8dの接合部鉛直線12に対する水平距離Jと定義する。変位変換部3の高さh、垂直距離G、水平距離Jは、後述する力覚センサ100B,100C,100p~100vについても同様に定義される。
図5(b),(c)はそれぞれ、力覚センサ100Aの第1の変形例と第2の変形例の部分断面図であり、図5(a)に示した部位に対応する部位が表されている。力覚センサ100Aは、変位変換部3が略U字型となっているため、検出対象体8b(不図示),8dは受力部4に加わったx方向の力を検出することができ、検出対象体8a,8c(共に不図示)は受力部4に加わったy方向の力を検出することができる。これに対して、図5(b),(c)にそれぞれ示す第1の変形例と第2の変形例は、力覚センサ100Aを水平方向に作用する力を検出しない構成へと変更したものである。
力覚センサ100Aの第1の変形例は、接合部11からz方向と所定の角度θで交わり、且つ、中心軸L(不図示)とセンサ基板7へ近付く方向へ直線的に延びる変位変換部3Aを有する。力覚センサ100Aの第2の変形例は、接合部11からセンサ基板7(不図示)へz方向に延びた後に中心軸L(不図示)へ向かう方向へ延びる変位変換部3Bを有する。第1の変形例と第2の変形例の双方で、検出対象体8dは、接合部鉛直線12よりも中心軸L側において、反射面がz方向と平行となるように変位変換部に配置される。変位検出素子9d(不図示)は図5(a)に示した状態と同様に、検出対象体8dと正対するように配置される。
図6(a)は、実施例2に係る力覚センサ100Bの部分断面図であり、図5(a)に示した部位に対応する部位が示されている。なお、力覚センサ100Bにおいて長さ方向がx方向と平行になっている他方の弾性連結部の構造と、長さ方向がy方向と平行になっている2箇所の弾性連結部の構造はそれぞれ図6(a)に示す構造と同等であるため、図示と説明を省略する。
力覚センサ100Aでは、検出対象体8dの反射面がz方向と平行となっている。これに対して、力覚センサ100Bでは、検出対象体8dの反射面が所定の角度でz方向と交差してセンサ基板7側を向くように、張り出し部15の先端面がz方向に対して傾斜した面となっている。変位検出素子9dは、検出対象体8dと正対するようにセンサ基板7に実装されている。力覚センサ100Bのその他の構成は、力覚センサ100Aと同じであるので、重複する説明を省略する。なお、力覚センサ100Bでの垂直距離G、水平距離Jは、図5(a)を参照して説明した定義に従い、図6(a)に示す通りとなる。
図6(b),(c)はそれぞれ、力覚センサ100Bの第1の変形例と第2の変形例の部分断面図であり、図6(a)に示した部位に対応する部位が表されている。力覚センサ100Bは、力覚センサ100Aと同様に、受力部4に加わったx方向とy方向の力を検出することができる。これに対して、図6(b),(c)にそれぞれ示す第1の変形例と第2の変形例は、力覚センサ100Bを水平方向に作用する力を検出しない構成へと変更したものである。
力覚センサ100Bの第1の変形例は、力覚センサ100Aの第1の変形例(図5(b))と比較すると、検出対象体8dの受光面の角度が力覚センサ100Bと同様にz方向と所定の角度で交わるように変更されている点で異なるが、その他の構成は同じである。力覚センサ100Bの第2の変形例は、力覚センサ100Aの第2の変形例(図5(c))と比較すると、検出対象体8dの受光面の角度が力覚センサ100Bと同様にz方向と所定の角度で交差するように変更されている点で異なるが、その他の構成は同じである。変位検出素子9d(不図示)は図6(a)に示した状態と同様に、検出対象体8dと正対するように配置される。
図7(a)は、実施例3に係る力覚センサ100Cの部分断面図であり、図5(a)に示した部位に対応する部位が示されている。なお、力覚センサ100Cにおいて長さ方向がx方向と平行になっている他方の弾性連結部の構造と、長さ方向がy方向と平行になっている2箇所の弾性連結部の構造はそれぞれ図7(a)に示す構造と同等であるため、図示と説明を省略する。
力覚センサ100Cは、実施例2に係る力覚センサ100Bと比較すると、変位検出素子9dの受光面が検出対象体8dの反射面に対して正対していない点で異なるが、その他の構成は同じであるので、共通する説明は省略する。力覚センサ100Cでは、変位検出素子9dは、受光面の法線がz方向と平行になるようにセンサ基板7に実装されている。
図7(b)は、検出対象体8dと変位検出素子9dの間の光路を説明する図である。検出対象体8dの反射面と直交する線は、変位検出素子9dの受光面と角度ηで交わる。図7(c)は、変位検出素子9dの拡大図である。力覚センサ100Cでは、検出対象体8dの反射面と平行となるように角度ηの傾斜を有する受光面が形成された回折格子13が変位検出素子9dの表面(受光面上)に配置されている。よって、検出対象体8dからの入射光は、回折格子13によって図7(c)に破線で示すように屈折し、変位検出素子9dの受光面に対して垂直に入射する。その結果、力覚センサ100Cでの検出対象体8dと変位検出素子9dとの光学的な関係は、力覚センサ100Bでの検出対象体8dと変位検出素子9dとの光学的な関係と同等になる。なお、力覚センサ100Cは、力覚センサ100Bの第1の変形例及び第2の変形例と同様にして、x方向とy方向に作用する力を検出しない構成へと変更することができる。
次に、上述した実施例1~3に係る力覚センサ100A~100Cとの比較対象となる比較例1~7に係る力覚センサ100p~100vについて説明する。図8(a),(b)はそれぞれ、比較例1,2に係る力覚センサ100p,100qの部分断面図であり、図5(a)に示した部位に対応する部位が示されている。
比較例1に係る力覚センサ100pは、実質的に図2を参照して説明した力覚センサ100と同等である。つまり、検出対象体8dと変位検出素子9dは、それぞれの中心が接合部鉛直線12上に位置するよう配置され、且つ、z方向で正対している。なお、図5(a)を参照して説明した定義に従い、力覚センサ100pでは、検出対象体8dの接合部鉛直線12に対する水平距離Jはゼロ(0)となる。また、力覚センサ100pでの検出対象体8dの弾性連結部5に対する垂直距離Gは、厳密には、変位変換部3の高さhに検出対象体8dの厚みを加えた長さとなる。但し、変位変換部3の高さhに比べて検出対象体8dの厚みは十分に小さいと見なして、力覚センサ100pでは、垂直距離Gは変位変換部3の高さhと同じであるとする。
比較例2に係る力覚センサ100qでは、検出対象体8dが接合部鉛直線12よりも支持部6側に配置されるように、変位変換部3にはセンサ基板7側の先端部から支持部6側へ突出した張り出し部15が設けられている。検出対象体8dは、反射面がz方向と平行になるように張り出し部15の先端面に取り付けられている。また、変位検出素子9dは、検出対象体8dと正対するようにセンサ基板7に実装されている。
図9(a)~(c)はそれぞれ、比較例3,4,5に係る力覚センサ100r,100s,100tの部分断面図であり、図5(a)に示した部位に対応する部位で示されている。比較例3に係る力覚センサ100rは、実施例1に係る力覚センサ100Aが備える変位変換部3及び張り出し部15と同じ変位変換部を備えている。よって、力覚センサ100rにおいて検出対象体8dは接合部鉛直線12よりも中心軸L側に配置されている。但し、力覚センサ100rでは、検出対象体8dは、張り出し部15の先端部においてセンサ基板7と対面する面に取り付けられ、センサ基板7に実装された変位検出素子9dとz方向で正対しており、この点で力覚センサ100Aと異なっている。なお、図5(a)を参照して説明した定義に従い、力覚センサ100rにおいて検出対象体8dの接合部鉛直線12に対する水平距離Jは、検出対象体8dの表面の中心から接合部鉛直線12へ下ろした垂線の長さとなる。また、比較例1に係る力覚センサ100pと同様に、力覚センサ100rでは、垂直距離Gは変位変換部3の高さhと同じであるとする。
比較例4に係る力覚センサ100sは、比較例2に係る力覚センサ100qと比較すると、検出対象体8dと変位検出素子9dの配置が異なるが、その他の構成は力覚センサ100qと同等である。力覚センサ100sでは、検出対象体8dは、張り出し部15の先端部においてセンサ基板7と対面する面に取り付けられ、接合部鉛直線12よりも支持部6側に配置されている。また、検出対象体8dは、センサ基板7に実装された変位検出素子9dとz方向で正対している。なお、比較例1に係る力覚センサ100pと同様に、力覚センサ100rでは、垂直距離Gは変位変換部3の高さhと同じであるとする。
比較例5に係る力覚センサ100tでは、検出対象体8dが接合部鉛直線12よりも支持部6側に配置されるように、変位変換部3にはセンサ基板7側の先端部から支持部6側へ突出した張り出し部15が設けられている。力覚センサ100tは、張り出し部15の先端面が所定の角度でz方向と交わるように設計されている点で、力覚センサ100q,100sと異なる。検出対象体8dは張り出し部15tの先端面に取り付けられており、よって、検出対象体8dの反射面はz方向と所定の角度で交差している。また、変位検出素子9dは、検出対象体8と正対するようにセンサ基板7に実装されている。
図10(a),(b)はそれぞれ、比較例6,7に係る力覚センサ100u,100vの部分断面図であり、図5(a)に示した部位に対応する部位で示されている。比較例6に係る力覚センサ100uでは、検出対象体8dと変位検出素子9dの位置関係は実施例1に係る力覚センサ100Aと同様であり、検出対象体8dは接合部鉛直線12よりも中心軸L側に配置されている。但し、変位変換部3の高さhが、後述する各部の寸法の通り、力覚センサ100uでは実施例1に係る力覚センサ100Aよりも高くなっている。具体的には、力覚センサ100uでは、図5(a)を参照して説明した距離Eと水平距離Jの和が変位変換部3の高さhよりも短い構造となっている。
比較例7に係る力覚センサ100vは、比較例6に係る力覚センサ100uの変位変換部3と同じ変位変換部3を備えている。但し、力覚センサ100vでは、検出対象体8dの反射面がz方向と直交し、且つ、検出対象体8の中心が接合部鉛直線12上に位置するように配置されており、この点で力覚センサ100uと異なる。
次に、実施例1~3(力覚センサ100A~100C)と比較例1~7(力覚センサ100p~100v)の感度等について説明する。なお、力覚センサが備える4箇所の変位変換部3のそれぞれに取り付けられた検出対象体は等価であり、各検出対象体に対面する各変位検出素子も等価であるため、以下では「検出対象体8」及び「変位検出素子9」と記して説明を行う。
実施例1~3と比較例1~7のそれぞれの力覚センサに対して以下の通りに形状(寸法)を設定する。実施例1~3及び比較例1~7に共通して、距離Eと距離Fは共に14.75mmである。弾性連結部5をyz平面で切断して現れる断面の断面積は、19.2mm2である。また、変位変換部3においてz方向と平行な2本の直線部をxy平面で切断して現れる2つの断面のそれぞれの断面積も19.2mm2である。実施例1~3及び比較例1~5に共通して、変位変換部3の高さhは9.1mmである。比較例6,7では、変位変換部3の高さは36mmである。実施例1~3及び比較例1~5に共通して、垂直距離Gは9.1mmである。比較例6,7では、垂直距離Gは36mmである。実施例1~3及び比較例2~5に共通して、水平距離Jは9.1mmである。比較例6では、水平距離Jは14.75mmである。なお、比較例1,7では、前述した通り、水平距離Jはゼロ(0)である。また、ここに規定した寸法は一例であり、実施例1~3に係る力覚センサ100A~100Cの各部の寸法を限定するものではない。
実施例1~3と比較例1~7に係る力覚センサ100の受力部4に-z方向に40Nの負荷を印加し、変位検出素子9により検知された感度(変位検出素子9に対する検出対象体8の相対移動距離)を計測した。なお、実施例3を除き、全ての力覚センサで変位検出素子9と検出対象体8とは正対しており、よって、変位検出素子9の受光面の法線と検出対象体8dの受光面の法線とは平行であるとする。
実施例1、比較例1,2の感度及び剛性の測定値を図11(a)に示す。なお、図11(a)中の「観測方向」とは、実施例3を除き検出対象体8と変位検出素子9とが正対している方向であり、図11(b),(c)でも同様である。実施例3では検出対象体9の受光面の法線方向である。例えば、実施例1では、検出対象体8と変位検出素子9とはxy平面(水平面)と平行な方向で正対しているため、観測方向を水平方向と定める。
実施例1、比較例1,2の力覚センサでは、検出対象体8の弾性連結部5に対する垂直距離Gは等しい。検出対象体8が接合部鉛直線12よりも中心軸L側にある実施例1では、検出対象体8が支持部6側にある比較例2よりも感度が高くなっていることがわかる。また、検出対象体8が接合部鉛直線12上にある比較例1の感度は、比較例2よりも高いが、実施例1よりも低いことがわかる。これらのことから、検出対象体8の弾性連結部5に対する垂直距離Gが等しく、観測方向が水平方向である場合には、検出対象体8を接合部鉛直線12よりも中心軸L側に配置することで、感度を高めることが可能なことがわかる。なお、剛性に関しては、変位変換部3の形状に依存するため、各力覚センサで同等となっている。
実施例2,3及び比較例2,5の感度及び剛性の測定値を図11(b)に示す。これらの力覚センサでは、検出対象体8の弾性連結部5に対する垂直距離Gは等しい。実施例2と比較例5では、検出対象体8の表面(反射面)の法線と接合部鉛直線12とが成す角は0度より大きい。検出対象体8が接合部鉛直線12より中心軸L側にある実施例2,3の感度は、検出対象体8が支持部6側にある比較例2,5の感度よりも高い。なお、剛性に関しては、変位変換部3の形状に依存するため、各力覚センサで同等となっている。
比較例3,1,4の感度及び剛性の測定値を図11(c)に示す。これらの力覚センサでは、検出対象体8の弾性連結部5に対する垂直距離Gは等しい。検出対象体8の向きがz方向(鉛直方向)である場合、検出対象体8が接合部鉛直線12よりも中心軸L側か、接合部鉛直線12上か、支持部6側かは、感度に影響を与えないことがわかる。剛性に関しては、変位変換部3の形状に依存するため、各力覚センサで同等となっている。以上の比較から、検出対象体8を接合部鉛直線12よりも中心軸L側に配置し、且つ、検出対象体8の表面の法線と接合部鉛直線12との成す角を0度より大きい角度とすることで、感度を高めることができることがわかる。
比較例6,7の感度及び剛性の測定値を図11(d)に示す。これらの力覚センサでは、検出対象体8の弾性連結部5に対する垂直距離Gは等しい。比較例6では、検出対象体8は中心軸L側にあるが、比較例6の感度は検出対象体8が接合部鉛直線12上にある比較例7の感度よりも低くなっていることがわかる。そして、比較例6,7では、実施例1~3及び比較例1~5と比較して、剛性が低下しており、これは、変位変換部3の高さの違いに起因するものと考えられる。更に比較例6では、検出対象体8の支持部6からの水平距離(距離E(14.75mm)と水平距離J(14.75mm)の和)が変位変換部3の高さh(36mm)よりも短い。このような条件が揃った場合、検出対象体8を接合部鉛直線12より中心軸L側に配置しても、検出対象体8が接合部鉛直線12上にあるものに比較して、感度を高める効果が得られないことがわかる。
上述した実施例1~3及び比較例1~7の比較から、以下の第1乃至第3の条件が満たされることで、力覚センサの感度を高めることが可能になることがわかる。第1の条件は「検出対象体8が接合部鉛直線12よりも中心軸L側に配置されること」である。第2の条件は「変位変換部3が無変位の状態で検出対象体8の表面の法線方向(反射面と直交する方向)がz方向(鉛直方向)を向いていないこと」である。第3の条件は「支持部6の内周面から検出対象体8までの距離が変位変換部3の高さよりも長いこと」である。
なお、上記実施例1~3及び比較例1~7の比較は、各例に対応する各力覚センサにおいて、検出対象体8の弾性連結部5に対する垂直距離Gは変位変換部3の高さhと等しいという条件の下で行っている。よって、上記第1乃至第3の条件は、力覚センサ全体の厚み(力覚センサのz方向で高さ)が等しい場合に感度を高める条件を示している。変位変換部3の高さhと感度とは正の相関関係にある。よって、設計上、比較例1で変位変換部3の高さを高くしたもの(力覚センサ全体の厚みが厚いもの)と、実施例1~3で変位変換部3の高さを低くしたもの(力覚センサ全体の厚みが薄いもの)とで、同等の感度を出すことが可能である。また、上記比較結果からわかるように、力覚センサの剛性は変位変換部3の高さが低いと向上する傾向がある。よって、実施例1~3に係る力覚センサでは、感度を維持したままセンサを薄型化、剛性を向上させることが可能になる。逆に、力覚センサの高さを従来からの高さと変えることなく検出対象体8の配置を実施例1~3の通りに変更することにより、感度を高めることができる。
次に、上記第1乃至第3の条件が力覚センサの感度増大に寄与する理由について、図12を参照して説明する。図12(a)は、感度増大効果を奏する力覚センサの部分断面図である。ここでは、第2実施形態に係る力覚センサ100Bの第1の変形例を取り上げる。図12(b)は、図12(a)の弾性連結部5の右側にある不図示の受力部4に-z方向に外力が作用した後の弾性連結部5及び変位変換部3の変形後の状態を示す断面図である。なお、図12(a),(b)では、各部の寸法等を明記するために、各部でのハッチングを省略している。
図12(a)に示す変位変換部3の高さh、距離E、垂直距離G及び水平距離Jは、図5(a)及び図6(a)を参照して説明した定義に従う。ここでは、検出対象体8は、変位変換部3の高さhと垂直距離Gとが等しくなるように配置されている。線21と接合部鉛直線12との交点を接合部中心点14aとし、接合部中心点14aから検出対象体8の表面中心までの距離を“w”とする。また、接合部中心点14aと検出対象体8の表面中心とを結ぶ直線が接合部鉛直線12と成す角を“β”とし、検出対象体8における反射面の法線がz方向(接合部鉛直線12)と成す角を“γ”とする。なお、角度β,γについては、検出対象体8が接合部鉛直線12よりも不図示の中心軸L側(図12(a)において右側)にある場合に正の値をとり、支持部6側にある場合に負の値を取るものとする。また、力覚センサに外力が作用していない状態では、検出対象体8と変位検出素子9は正対しているものとする。図12(b)に示すように、変形後の弾性連結部5が水平面と成す角度を“dα”とする。接合部中心点14aは変形後に接合部中心点14bへ移動し、接合部鉛直線12は変形後に接合部鉛直線12´の通りに傾斜するものとする。
変形時の検出対象体8の軌跡は、以下の第1の運動と第2の運動からなると考えることができる。第1の運動は、接合部中心点14aが支持部6と弾性連結部5との境界点を中心にdαだけ回転することによる-z方向(鉛直方向下向き)の運動である。第2の運動は、変形後の接合部中心点14bを中心にdαだけ回転する運動である。これらの運動を変位検出素子9による観測方向であるz方向(鉛直方向)に対して角度βを成す方向に射影するので、第1の運動と第2の運動によって検出対象体8はそれぞれ、zx平面上を下記式1,2のベクトルで表される分だけ移動する。以下の計算では、変位変換部3の高さh(=wcosβ)は一定として計算を行う。
下記式1,2で表される変位の和のベクトルを検出対象体8上に射影したものが感度である。zx平面上での検出対象体8の設置方向は、下記式3で表される。よって下記3で表される方向に下記式1,2の変位を足し合わせたものの射影成分の絶対値を取り、J=wsinβ、及び、h=wcosβであることに注意すると、感度は下記式4で表される。
接合部鉛直線12上に検出対象体8がある場合(例えば、比較例1に係る力覚センサ100pの場合)、β=0度、γ=0度、w=hとなるため、感度はhdαとなる。以下感度hdαを基準値として力覚センサの感度を評価する。
所定の角度γに対して、角度βと感度の関係をグラフにしたものを図13(a),(b)に示す。図13(a),(b)中、縦軸の感度増大率とは、上記式4により計算した感度の値を基準値(=hdα)で除したものである。図13からわかるように、変位変換部3の高さhが一定の条件の下、角度γが正の値を取る場合には、角度βが正の値を取ると感度増大率が1以上となり、感度増大効果が顕著に現れることがわかる。また、角度βが大きいほど(水平距離Jが長い)、感度増大効果は大きいことがわかる。一方、角度γが負の値を取る場合でも、角度βが正の値を取って値が大きくなることで感度増大効果が得られる傾向は見られるが、感度増大効果が得られる角度βの範囲が限定されていることがわかる。
β>0、γ=90度の場合(検出対象体8と変位検出素子9が水平方向で正対しており、接合部鉛直線12より中心軸L側にあり、反射面がxy平面と平行な場合)、上記式4は下記式5の通りに変形することができる。これより、感度増大条件は、下記式6で表される。これにより、検出対象体8から支持部6までの水平距離(=E+J)が変位変換部3の高さhより長い場合、感度増大効果があることがわかる。つまり、本実施形態に係る力覚センサの感度は、検出対象体8から支持部6までの水平距離(E+J)の関数で表され、よって、弾性連結部5に対して変位変換部3を設ける接合部中心点14aの位置に依存しないことがわかる。変位変換部3の高さhが、下記式6を満たしていない上述の比較例6では感度増大効果が得られず、また、比較例7よりも感度が劣る結果となっている。
γ=0度、つまり、受力部4(不図示)に外力が印加されていない状態で検出対象体8と変位検出素子9がz方向で正対している構成の場合、上記式4は下記式7の通りに変形することができる。下記式7より、角度βの値に依らず、γ=0度の場合には感度増大率は1となることがわかる。このことは、変位変換部3の高さhが一定であるとの条件の下、検出対象体8と変位検出素子9とがz方向で正対している構成(比較例1,3,4)では、どの位置に検出対象体8があっても感度は角度βによらず一定となり、感度増大効果は得られないことがわかる。この結果は、図11に示した結果と一致している。
ところで、力覚センサを備える各種の装置では、受力部に作用する力によって受力部が大きく変形してしまうと、弾性連結部が自重で大きく振動してしまうおそれがある。例えば、ロボットアーム等の先端に取り付ける等、動作が大きい場所での力を検出する用途では、弾性連結部の振動が測定値にノイズとなって現れてしまう。また、ロボットハンドの所定の部位に掛かる力を検知するために力覚センサを用いる場合、ハンド取付部からハンド先端部までのストロークを短くしたいという要望があり、この要望に応えるために力覚センサの薄型化が求められている。更に、医療ロボットの一例であるマニピュレータ等のヒューマンインタラクティブなエンドエフェクタには、非常に小さな力を高精度で検知できる性能、つまり、感度の向上が求められている。
このような要求に対して上記第1乃至第3の条件を満たすように力覚センサを構成することにより、剛性を維持しながら、力覚センサ全体の厚みを増すことなく、感度を高めることが可能になる。逆に言えば、感度特性を維持しながら、力覚センサ全体の薄型化を実現することができる。これにより、力覚センサを装備する各種機器の性能向上を図ることが可能になる。
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。更に、上述した各実施形態は本発明の一実施形態を示すものにすぎず、各実施形態を適宜組み合わせることも可能である。例えば、上記実施形態では、検出対象体8と変位検出素子9との組み合わせに関して、光学的に変位を検出する手段を用いたが、静電容量や磁束密度を検出する手段を用いてもよい。