JP7009902B2 - ポリイミドフィルムの製造方法、ポリイミド前駆体の製造方法、積層体の製造方法及びディスプレイ用表面材の製造方法 - Google Patents
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Description
しかしながら、化学イミド化により製造されるポリイミドフィルムは、ポリイミドフィルム中のアンモニウムイオンを完全に除去することが困難であり、残留したアンモニウムイオンの影響により光学特性が低下するという問題がある。
一方で、熱イミド化により製造されるポリイミドフィルムは、イミド化の際に行われる高温処理により、ポリイミドフィルムが着色を示すという問題がある。
また、本発明は、前記ポリイミドフィルムの製造に適したポリイミド前駆体の製造方法、前記ポリイミドフィルムを有する積層体の製造方法、及び、前記ポリイミドフィルム又は前記積層体であるディスプレイ用表面材の製造方法を提供することを目的とする。
前記ポリイミド前駆体溶液中の、残留モノマーを低減することにより、精製されたポリイミド前駆体を得る工程と、
前記精製されたポリイミド前駆体と有機溶剤とを含有するポリイミド前駆体組成物を調製する工程と、
前記ポリイミド前駆体組成物を支持体に塗布して、ポリイミド前駆体塗膜を形成する工程と、
前記ポリイミド前駆体塗膜を加熱することにより、ポリイミド前駆体をイミド化する工程と、を含む。
前記ポリイミド前駆体溶液を貧溶媒に滴下してポリイミド前駆体を沈殿させることにより、ポリイミド前駆体を回収する工程を含むことが、精製されたポリイミド前駆体を回収しやすい点から好ましい。
ポリイミドを含有し、アンモニウムイオンを含有せず、
JIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率が90%以上であり、
JIS K-7105に準拠したヘイズ値が2.0以下であり、
JIS K7373-2006に準拠して算出される黄色度が5.0以下であることが、ポリイミドフィルムの着色の抑制及び透明性の向上の点から好ましい。
前記ポリイミド前駆体溶液中の、残留モノマーを低減する工程と、を含む。
前記ポリイミド前駆体溶液を貧溶媒に滴下してポリイミド前駆体を沈殿させることにより、ポリイミド前駆体を回収する工程を含むことが、精製されたポリイミド前駆体を回収しやすい点から好ましい。
前記工程により得られるポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有するハードコート層形成用組成物の塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を硬化する工程と、を含む。
また、本発明は、前記ポリイミドフィルムの製造に適したポリイミド前駆体の製造方法、前記ポリイミドフィルムを有する積層体の製造方法、及び、前記ポリイミドフィルム又は前記積層体であるディスプレイ用表面材の製造方法を提供することができる。
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、ポリイミド前駆体溶液を準備する工程(以下、ポリイミド前駆体溶液準備工程という)と、
前記ポリイミド前駆体溶液中の、残留モノマーを低減することにより、精製されたポリイミド前駆体を得る工程(以下、ポリイミド前駆体精製工程という)と、
前記精製されたポリイミド前駆体と有機溶剤とを含有するポリイミド前駆体組成物を調製する工程(以下、ポリイミド前駆体組成物調製工程という)と、
前記ポリイミド前駆体組成物を支持体に塗布して、ポリイミド前駆体塗膜を形成する工程(以下、ポリイミド前駆体塗膜形成工程という)と、
前記ポリイミド前駆体塗膜を加熱することにより、ポリイミド前駆体をイミド化する工程(以下、イミド化工程という)と、を含む。
そこで本発明者らは、熱イミド化により作製されるポリイミドフィルムに着目した。熱イミド化はアミン等の触媒を用いずに行うことができるため、アンモニウムイオンを含有しないポリイミドフィルムを作製することができる。これにより、アンモニウムイオンの影響による光学特性の低下は生じない。しかし、熱イミド化により作製されるポリイミドフィルムでは、高温処理により着色を示すという問題がある。それに対し、本発明では、精製されたポリイミド前駆体を有機溶剤に溶解させたポリイミド前駆体組成物を用いることにより、熱イミド化のための高温処理を行っても、フィルムの着色を抑制し、YI値の上昇を抑制することができる。高温処理に起因するフィルムの着色は、残留モノマーの酸化、中でもジアミンの酸化による影響が大きいと考えられるが、本発明では、ポリイミド前駆体組成物中の残留モノマーが低減されていることにより、フィルムの着色が抑制されると考えられる。ポリイミド前駆体の合成に用いるテトラカルボン酸成分又はジアミン成分が、比較的反応性の低い構造を有する場合には、未反応モノマーが残留しやすいため、本発明の製造方法は、比較的反応性の低い構造を有するモノマー成分を用いる場合に特に有効であり、中でも比較的反応性の低い構造を有するジアミン成分を用いる場合に有効である。
また、化学イミド化により得られるポリイミドフィルムは、ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)の合成、及びポリイミド前駆体のイミド化が溶液中で行われるため、溶媒の沸点以上の温度をかけることができず、フィルム形成までの熱履歴の温度が熱イミド化を行う場合に比べて低いことから、熱イミド化により得られるポリイミドフィルムに比べ、寸法安定性、耐溶剤性、耐吸湿性、耐透湿性等に劣る傾向がある。それに対し、本発明の製造方法では熱イミド化の際に高温処理を行うため、これらの性質が向上したポリイミドフィルムを得ることができる。本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、良好な耐溶剤性を有することにより、表面にワニスを塗布しやすい。そのため、例えば接着層や平坦化層等を介して、当該ポリイミドフィルムを所望の物品上に配置したり、当該ポリイミドフィルム上に加飾部を設けたりすることができる。また、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、良好な耐吸湿性乃至耐透湿性を有することから、所望の物品の表面材等として用いることにより、当該物品の水分による劣化を抑制することができる。
また、ポリイミドフィルムは内部の分子鎖の配置が一定の秩序構造を形成することが知られており、それにより屈曲耐性を向上することができる。ポリイミド樹脂の分子鎖の配置は、化学イミド化を行った場合に比べ、熱イミド化を行った場合の方が一定の秩序構造を形成しやすい。そのため、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、屈曲耐性を向上しやすく、フレキシブルデバイスに好適に用いることができる。また、フィルムの屈曲耐性は、フィルムの吸湿により悪化する傾向があるが、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、耐吸湿性が良好であることから、高湿下における屈曲耐性の低下が抑制される。
以下、各工程について詳細に説明する。
本発明において準備するポリイミド前駆体溶液は、ポリイミド前駆体と、溶剤とを含有し、必要に応じて添加剤等を含有していてもよい。本発明に用いられるポリイミド前駆体溶液は、例えば、テトラカルボン酸成分と、ジアミン成分とを、溶剤中で反応させることにより得ることができる。或いは、予め合成された固体のポリイミド前駆体を溶剤に溶解させることにより、ポリイミド前駆体溶液を準備してもよい。
また、芳香族環を有するテトラカルボン酸成分は、ポリイミドフィルムの表面硬度を向上する点から好ましい。
芳香族環を有するテトラカルボン酸成分としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3-ビス〔(3,4-ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、1,4-ビス〔(3,4-ジカルボキシ)ベンゾイル〕ベンゼン二無水物、2,2-ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、2,2-ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、4,4’-ビス〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、4,4’-ビス〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕ビフェニル二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルホン二無水物、ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}スルフィド二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,3’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、3,4’-オキシジフタル酸無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ぺリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
芳香族環を有し、且つカルボキシル基又は酸二無水物構造を有する芳香族環が電子供与性基を有するテトラカルボン酸成分としては、例えば、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2-ビス{4-〔3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、2,2-ビス{4-〔4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ〕フェニル}プロパン二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、3,4’-オキシジフタル酸無水物等が挙げられる。
脂肪族環を有するテトラカルボン酸成分としては、例えば、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキサン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
なお、上述したテトラカルボン酸成分は、単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
また、表面硬度を向上する点からは、芳香族環を有するジアミンが好ましく、屈曲耐性と表面硬度を両立する点から、主鎖にケイ素原子を含有するジアミンと、ケイ素原子を有さず、芳香族環を有するジアミンとを組み合わせて用いることがより好ましい。
炭素数1以上20以下のアルキル基としては、炭素数1以上10以下のアルキル基であることが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。前記環状のアルキル基としては、炭素数3以上10以下のシクロアルキル基であることが好ましく、具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。前記アリール基としては、炭素数6以上12以下のアリール基であることが好ましく、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。また、R10で表される1価の炭化水素基としては、アラルキル基であっても良く、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等が挙げられる。
酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い炭化水素基としては、例えば後述する2価の炭化水素基と前記1価の炭化水素基とをエーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合、及びイミノ結合(-NH-)の少なくとも1つで結合した基が挙げられる。
R10で表される1価の炭化水素基が有していても良い置換基としては、本発明の効果が損なわれない範囲で特に限定されず、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、水酸基等が挙げられる。
炭素数1以上20以下のアルキレン基としては、炭素数1以上10以下のアルキレン基であることが好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、各種プロピレン基、各種ブチレン基、シクロヘキシレン基等の直鎖状又は分岐状アルキレン基と環状アルキレン基との組合せの基などを挙げることができる。
前記アリーレン基としては、炭素数6以上12以下のアリーレン基であることが好ましく、アリーレン基としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等が挙げられ、更に後述する芳香族環に対する置換基を有していてもよい。
酸素原子又は窒素原子を含んでいても良い2価の炭化水素基としては、前記2価の炭化水素基同士をエーテル結合、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合、及びイミノ結合(-NH-)の少なくとも1つで結合した基が挙げられる。
R11で表される2価の炭化水素基が有していても良い置換基としては、前記R10で表される1価の炭化水素基が有していても良い置換基と同様であって良い。
ケイ素原子を有さず芳香族環を有し、且つアミノ基を有する芳香族環が電子吸引性基を有するジアミンとしては、例えば、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、1,3-ビス(3-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-α,α-ジトリフルオロメチルベンジル)ベンゼン、2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン)、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル等が挙げられる。
ケイ素原子を有さず、脂肪族環を有するジアミンとしては、例えば、trans-シクロヘキサンジアミン、trans-1,4-ビスメチレンシクロヘキサンジアミン、2,6-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン等が挙げられる。
なお、上述したジアミン成分は、単独でも、2種以上を混合して用いることもできる。
重合反応の手順は、公知の方法を適宜選択して用いることができ、特に限定されない。
前記ポリイミド前駆体は、数平均分子量、または重量平均分子量の少なくともいずれかが、フィルムとした際の強度の点から、10000以上であることが好ましく、更に20000以上であることが好ましい。一方、平均分子量が大きすぎると、高粘度となり、ろ過などの作業性が低下の恐れがある点から、10000000以下であることが好ましく、更に500000以下であることが好ましい。
ポリイミド前駆体の数平均分子量は、NMR(例えば、BRUKER製、AVANCEIII)により求めることができる。例えば、ポリイミド前駆体溶液をガラス板に塗布して100℃で5分乾燥後、固形分10mgをジメチルスルホキシド-d6溶媒7.5mlに溶解し、NMR測定を行い、芳香族環に結合している水素原子のピーク強度比から数平均分子量を算出することができる。
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定できる。具体的には、ポリイミド前駆体を0.5重量%の濃度のN-メチルピロリドン(NMP)溶液とし、展開溶媒は、含水量500ppm以下の10mmol%LiBr-NMP溶液を用い、東ソー製GPC装置(HLC-8120、使用カラム:SHODEX製GPC LF-804)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.5mL/分、40℃の条件で測定を行う。重量平均分子量は、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプルを基準に求める。
前記一般式(1)におけるR1としては、例えば、上述したテトラカルボン酸成分から4つのカルボキシル基又は酸二無水物構造を除いた残基が挙げられ、前記一般式(1)におけるR2としては、例えば、上述したジアミン成分から2つのアミノ基を除いた残基が挙げられる。
ポリイミド前駆体に含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子である場合には、大気中における加熱工程を経ても、例えば200℃以上で延伸を行っても、作製されるポリイミドフィルムの光学特性、特に全光線透過率や黄色度YI値の変化が少ない点から好ましい。ポリイミド前駆体に含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子であるポリイミドである場合には、酸素との反応性が低いため、ポリイミド前駆体乃至ポリイミドの化学構造が変化し難いことが推定される。ポリイミドフィルムはその高い耐熱性を利用し、加熱を伴う加工工程が必要なデバイスなどに用いられる場合が多いが、ポリイミド前駆体に含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子である場合には、これら後工程を透明性維持のために不活性雰囲気下で実施する必要が生じないので、設備コストや雰囲気制御にかかる費用を抑制できるというメリットがある。
ここで、ポリイミド前駆体に含まれる炭素原子に結合する全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合は、NMRを用いて求めることができる。
ポリイミド前駆体乃至ポリイミドに(i)フッ素原子を含むと、ポリイミド骨格内の電子状態を電荷移動し難くすることができる点から、ポリイミドフィルムの光透過性が向上する。
ポリイミド前駆体乃至ポリイミドに(ii)脂肪族環を含むと、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点から、ポリイミドフィルムの光透過性が向上する。
ポリイミド前駆体乃至ポリイミドに(iii)芳香族環同士をスルホニル基又はフッ素で置換されていても良いアルキレン基で連結した構造を含むと、ポリイミド骨格内のπ電子の共役を断ち切ることで骨格内の電荷の移動を阻害することができる点から、ポリイミドフィルムの光透過性が向上する。
ポリイミド前駆体中のフッ素原子の含有割合は、ポリイミド前駆体の表面をX線光電子分光法により測定したフッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が、0.01以上であることが好ましく、更に0.05以上であることが好ましい。一方でフッ素原子の含有割合が高すぎるとポリイミド本来の耐熱性などが低下する恐れがあることから、前記フッ素原子数(F)と炭素原子数(C)の比率(F/C)が1以下であることが好ましく、更に0.8以下であることが好ましい。
本発明において、X線光電子分光法(XPS)の測定による各原子の比率は、X線光電子分光装置(例えば、Thermo Scientific社 Theta Probe)を用いて測定される各原子の原子%の値から求めることができる。
前記一般式(1)で表される構造を有するポリイミド前駆体は、作製されるポリイミドフィルムの表面硬度と光透過性が向上する点から、前記一般式(1)におけるR1及びR2の合計を100モル%としたときに、芳香族環及びフッ素原子を有するテトラカルボン酸残基及び芳香族環及びフッ素原子を有するジアミン残基の合計が50モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、75モル%以上であることがより更に好ましい。
なお、前記一般式(1)中のR1は、芳香族環を有するテトラカルボン酸残基及び脂肪族環を有するテトラカルボン酸残基とは異なる他のテトラカルボン酸残基を含んでいてもよい。当該他のテトラカルボン酸残基は、R1の総量の10モル%以下であることが好ましく、更に5モル%以下であることが好ましく、より更に3モル%以下であることが好ましく、特に1モル%以下であることが好ましい。
より具体的には、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン残基、1,3-ビス(4-アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(5-アミノペンチル)テトラメチルジシロキサン等が、入手容易性や光透過性と表面硬度の両立の観点から好ましい。
なお、前記一般式(1)中のR2は、芳香族環又は脂肪族環を有するジアミン残基及び主鎖にケイ素原子を1個又は2個含有するジアミン残基とは異なるジアミン残基を含んでいても良い。当該他のジアミンは、R2の総量の10モル%以下であることが好ましく、更に5モル%以下であることが好ましく、より更に3モル%以下であることが好ましく、特に1モル%以下であることが好ましい。当該他のジアミン残基としては、例えば、ケイ素原子を有さず、且つ芳香族環及び脂肪族環を有しないジアミン残基等が挙げられる。
ポリイミド前駆体における繰り返し単位数nは、例えばポリイミドフィルムが後述する好ましいガラス転移温度を示すように、構造に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。
平均繰り返し単位数は、通常10以上2000以下であり、更に15以上1000以下であることが好ましい。
本発明に用いられるポリイミド前駆体は、本発明の効果が損なわれない限り、その一部に前記一般式(1)で表される構造とは異なる構造を有していても良い。前記一般式(1)で表される構造とは異なる構造としては、例えば、トリメリット酸無水物を用いた場合のようなトリカルボン酸由来の構造や、テレフタル酸を用いた場合のようなジカルボン酸由来の構造が挙げられる。
本発明の製造方法は、前記ポリイミド前駆体溶液中の、残留モノマーを低減することにより、精製されたポリイミド前駆体を得るポリイミド前駆体精製工程を有する。これにより、後述するポリイミド前駆体組成物中の残留モノマーを低減することができるため、残留モノマーの酸化によるポリイミドフィルムの着色を抑制し、透明性を向上することができる。
なお、本発明において、残留モノマーには、前記ポリイミド前駆体を製造するために用いられたテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸、及びジアミンからなる群から選択される1種以上が挙げられるが、更に、これらの誘導体が含まれていても良い。
なお、回収されるポリイミド前駆体は、通常は固体であり、ポリイミド前駆体の分子量によって形態は異なるが、例えば、繊維状又は粉末状である。
前記貧溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類;トルエン等の芳香族炭化水素;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。中でも、ポリイミド前駆体の単離のしやすさの点、及び後述する良溶媒との相溶性の点から、前記貧溶媒としては、水、及び水とアルコール類との混合溶媒が好ましい。
なお、ポリイミド前駆体を再度回収する工程を行う場合、各工程に用いる貧溶媒は、それぞれ同じ溶媒であってもよいし、異なる溶媒であってもよい。
なお、ポリイミド前駆体を再度回収する工程を2回以上行う場合、各工程に用いる良溶媒は、それぞれ同じ溶媒であってもよいし、異なる溶媒であってもよい。
本発明において調製するポリイミド前駆体組成物は、前記ポリイミド前駆体精製工程により得られる精製されたポリイミド前駆体と、有機溶剤とを含有し、必要に応じて更に添加剤等を含有していてもよい。
本発明において調製するポリイミド前駆体組成物は、精製されたポリイミド前駆体を再溶解させることにより得られるものであるため、残留モノマーが低減されたものである。
なお、ポリイミド前駆体組成物の含有水分量は、カールフィッシャー水分計(例えば、三菱化学株式会社製、微量水分測定装置CA-200型)を用いて求めることができる。
ポリイミド前駆体組成物の粘度は、粘度計(例えば、TVE-22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で、サンプル量0.8mlとして測定することができる。
また、前記ポリイミド前駆体組成物を保存する場合は、当該組成物の劣化を抑制する点から、-5℃以下で保存することが好ましい。
前記ポリイミド前駆体組成物を支持体に塗布して、ポリイミド前駆体塗膜を形成する工程において、用いられる支持体としては、表面が平滑で耐熱性および耐溶剤性のある材料であれば特に制限はない。例えばガラス板などの無機材料、表面を鏡面処理した金属板等が挙げられる。また支持体の形状は塗布方式によって選択され、例えば板状であってもよく、またドラム状やベルト状、ロールに巻き取り可能なシート状等であってもよい。
塗布は、枚葉式の塗布装置により行ってもよく、ロールtoロール方式の塗布装置により行ってもよい。
光学特性の高度な管理が必要な場合、溶剤の乾燥時の雰囲気は、不活性ガス雰囲気下であることが好ましい。不活性ガス雰囲気下としては、窒素雰囲気下であることが好ましく、酸素濃度が100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましい。大気下で熱処理を行うと、フィルムが酸化され、着色したり、性能が低下する可能性がある。
本発明の製造方法においては、前記ポリイミド前駆体塗膜を加熱することにより、ポリイミド前駆体をイミド化する。
当該製造方法において、延伸工程を有する場合、イミド化工程は、延伸工程前の前記ポリイミド前駆体塗膜中のポリイミド前駆体に対して行っても良いし、延伸工程後の前記ポリイミド前駆体塗膜中のポリイミド前駆体に対して行っても良いし、延伸工程前の前記ポリイミド前駆体塗膜中のポリイミド前駆体及び延伸工程後の膜中に存在するポリイミド前駆体の両方に対して行っても良い。
通常、昇温開始温度を30℃以上とすることが好ましく、100℃以上とすることがより好ましい。一方、昇温終了温度は250℃以上とすることが好ましい。光学特性、吸湿性、寸法安定性、耐溶剤性等の点から、昇温終了温度をポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドのガラス転移温度±30℃の範囲内とすることが好ましく、ポリイミドのガラス転移温度±20℃の範囲内とすることがより好ましく、ポリイミドのガラス転移温度±15℃の範囲内とすることがより更に好ましい。イミド化の温度が高すぎると、ポリイミド乃至ポリイミド前駆体の骨格内で酸化することにより、ポリイミドフィルムが着色する場合があり、イミド化の温度が低すぎると、イミド化が十分に進行しない場合がある。
ポリイミドフィルムの製造効率の点から、5℃/分以上とすることが好ましく、10℃/分以上とすることが更に好ましい。一方、昇温速度の上限は、通常50℃/分とされ、好ましくは40℃/分以下、さらに好ましくは30℃/分以下である。上記昇温速度とすることが、フィルムの外観不良や強度低下の抑制、イミド化反応に伴う白化をコントロールでき、光透過性が向上する点から好ましい。
ただし、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する水素原子の50%以上が、芳香族環に直接結合する水素原子である場合は、光学特性に対する酸素の影響が少なく、不活性ガス雰囲気を用いなくても光透過性の高いポリイミドが得られる。
なお、イミド化率の測定は、赤外測定(IR)によるスペクトルの分析等により行うことができる。
イミド化を90%以上、さらには100%まで反応を進行させるには、昇温終了温度で一定時間保持することが好ましく、当該保持時間は、通常1分~180分、更に、5分~150分とすることが好ましい。
本発明の製造方法は、前記ポリイミド前駆体塗膜、及び、前記ポリイミド前駆体塗膜をイミド化したイミド化後塗膜の少なくとも一方を延伸する延伸工程を有していてもよい。当該延伸工程を有する場合は、中でも、イミド化後塗膜を延伸する工程を含むことが、ポリイミドフィルムの表面硬度が向上する点から好ましい。
延伸時の加熱温度は、ポリイミド乃至ポリイミド前駆体のガラス転移温度±50℃の範囲内であることが好ましく、ガラス転移温度±40℃の範囲内であることが好ましい。延伸温度が低すぎるとフィルムが変形せず充分に配向を誘起できない恐れがある。一方で、延伸温度が高すぎると延伸によって得られた配向が温度で緩和し、充分な配向が得られない恐れがある。
延伸工程は、イミド化工程と同時に行っても良い。イミド化率80%以上、更に90%以上、より更に95%以上、特に実質的に100%イミド化を行った後のイミド化後塗膜を延伸することが、ポリイミドフィルムの表面硬度を向上する点から好ましい。
本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、少なくとも上述したポリイミド前駆体をイミド化して得られるポリイミドを含有し、本発明の効果が損なわれない限り、更にその他の成分を含有していても良いものである。その他の成分としては、例えば、前述のポリイミド前駆体組成物において説明した添加剤等と同様のものが挙げられる。
なお、本発明においてアンモニウムイオンを含有しないとは、ポリイミドフィルム1gあたりのアンモニウムイオン含有量が0.01μg未満であることをいう。ポリイミドフィルム1gあたりのアンモニウムイオン含有量は、例えば、ポリイミドフィルム中のアンモニウムイオンを水中に溶出させて測定することができる。具体的には、重さ約0.4gのポリイミドフィルムの試験片をポリプロピレン袋に入れ、袋内で、50mLの超純水に浸し、ヒートシーラーにて封入する。それを60℃のウォーターバス浴内に入れ、1時間以上静置することにより、ポリイミドフィルム中のアンモニウムイオンを溶出させる。得られた溶出液のイオン濃度をイオンクロマトグラフ(例えば、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社、ICS-3000)にて測定し、試験片1gあたりのアンモニウムイオン量を算出する。
ポリイミドを含有し、アンモニウムイオンを含有せず、
JIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率が90%以上であり、
JIS K-7105に準拠したヘイズ値が2.0以下であり、
JIS K7373-2006に準拠して算出される黄色度が5.0以下である、ポリイミドフィルムを容易に得ることができる。
なお、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、厚み5μm以上100μm以下において、前記JIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率が、90%以上であることが好ましく、更に91%以上であることが好ましい。
また、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、厚み50μm±5μmにおいて、前記JIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率が、90%以上であることが好ましく、更に91%以上であることが好ましい。
JIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率は、例えば、ヘイズメーター(例えば村上色彩技術研究所製 HM150)により測定することができる。なお、ある厚みの全光線透過率の測定値から、異なる厚みの全光線透過率は、ランベルトベールの法則により換算値を求めることができ、それを利用することができる。
Log10(1/T)=kcb
(k=物質固有の定数、c=濃度、b=光路長)で表される。
フィルムの透過率の場合、膜厚が変化しても密度が一定であると仮定するとcも定数となるので、上記式は、定数fを用いて
Log10(1/T)=fb
(f=kc)と表すことができる。ここで、ある膜厚の時の透過率がわかれば、各物質の固有の定数fを求めることができる。従って、T=1/10f・b の式を用いて、fに固有の定数、bに目標の膜厚を代入すれば、所望の膜厚の時の透過率を求めることができる。
また、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、厚み50μm±5μmにおいて、JIS K-7105に準拠したヘイズ値が、2.0以下であることが好ましく、1.0以下であることが更に好ましく、0.5以下であることがより更に好ましい。
前記ヘイズ値は、JIS K-7105に準拠した方法で測定することができ、例えば村上色彩技術研究所製のヘイズメーターHM150により測定することができる。
なお、ある厚みのヘイズ値の測定値から、異なる厚みのヘイズ値は、ある特定の膜厚のサンプルの380nm以上780nm以下の間の5nm間隔で測定された各波長におけるヘイズ値と、前記方法により測定される各波長の全光線透過率から、各波長の拡散透過率を算出し、前記全光線透過率と同様にランベルトベールの法則により異なる厚みの各波長における拡散透過率の換算値を求め、ヘイズ値を全光線透過率に対する拡散透過率の比として算出し用いることができる。
本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、厚み5μm以上100μm以下において、前記JIS K7373-2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が5.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.0以下であることが更に好ましい。
また、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、厚み50μm±5μmにおいて、前記JIS K7373-2006に準拠して算出される黄色度(YI値)が、5.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.0以下であることが更に好ましい。
なお、黄色度(YI値)は、JIS K7373-2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計(例えば、日本分光(株) V-7100)を用い、JIS Z8722に規定する分光測色方法により測定される透過率をもとに算出することができる。
なお、ある厚みの黄色度の測定値から、異なる厚みの黄色度は、ある特定の膜厚のサンプルの380nm以上780nm以下の間の5nm間隔で測定された各波長における各透過率について、前記全光線透過率と同様にランベルトベールの法則により異なる厚みの各波長における各透過率の換算値を求め、それを元に算出し用いることができる。
また、前記ポリイミドは、前記一般式(1’)で表される構造が、ポリイミドの全繰り返し単位数の95%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましく、100%であることがより更に好ましい。
前記ポリイミドは、本発明の効果が損なわれない限り、その一部に前記一般式(1’)で表される構造とは異なる構造を有していても良い。前記一般式(1’)で表される構造とは異なる構造としては、例えば、ポリアミド構造が挙げられる。含んでいても良いポリアミド構造としては、例えば、トリメリット酸無水物のようなトリカルボン酸残基を含むポリアミドイミド構造や、テレフタル酸のようなジカルボン酸残基を含むポリアミド構造が挙げられる。
ここで、ポリイミドに含まれる炭素原子に結合する全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合は、ポリイミドの分解物を高速液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフ質量分析計及びNMRを用いて求めることができる。例えば、サンプルを、アルカリ水溶液、又は、超臨界メタノールにより分解し、得られた分解物を、高速液体クロマトグラフィーで分離し、当該分離した各ピークの定性分析をガスクロマトグラフ質量分析計及びNMR等を用いて行い、高速液体クロマトグラフィーを用いて定量することでポリイミドに含まれる全水素原子(個数)中の、芳香族環に直接結合する水素原子(個数)の割合を求めることができる。
また、前記ポリイミドとしては、中でも、ポリイミドフィルムの光透過性及び表面硬度の点からフッ素原子を含むポリイミドが好ましい。
また、ポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定した、フィルム表面のフッ素原子数(F)と窒素原子数(N)の比率(F/N)が、0.1以上20以下であることが好ましく、更に0.5以上15以下であることが好ましい。
また、ポリイミドフィルムのX線光電子分光法により測定した、フィルム表面のフッ素原子数(F)とケイ素原子数(Si)の比率(F/Si)が、1以上50以下であることが好ましく、更に3以上30以下であることが好ましい。
ここで、X線光電子分光法(XPS)の測定による上記比率は、X線光電子分光装置(例えば、Thermo Scientific社 Theta Probe)を用いて測定されるポリイミドフィルムの各原子の原子%の値から求めることができる。
本発明において、X線光電子分光法(XPS)により測定されるポリイミドフィルムの各原子濃度は、X線光電子分光装置(例えば、Thermo Scientific社 Theta Probe)を用いて測定することができる
なお、前記ガラス転移温度は、動的粘弾性測定によって得られる温度-tanδ(tanδ=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’))曲線のピーク温度から求められるものである。ポリイミドフィルムのガラス転移温度は、tanδ曲線のピークが複数存在する場合、ピークの極大値が最大であるピークの温度をいう。動的粘弾性測定としては、例えば、動的粘弾性測定装置 RSA III(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株))によって、測定範囲を-150℃~400℃として、周波数1Hz、昇温速度5℃/minにより行うことができる。また、サンプル幅を5mm、チャック間距離を20mmとして測定することができる。
本発明において、tanδ曲線のピークとは、極大値である変曲点を有し、且つ、ピークの谷と谷の間であるピーク幅が3℃以上であるものをいい、ノイズ等測定由来の細かい上下変動については、前記ピークと解釈しない。
前記引張弾性率は、引張り試験機(例えば島津製作所製:オートグラフAG-X 1N、ロードセル:SBL-1KN)を用い、幅15mm×長さ40mmの試験片をポリイミドフィルムから切り出して、25℃で、引張り速度10mm/min、チャック間距離は20mmとして測定することができる。前記引張弾性率を求める際のポリイミドフィルムは厚みが50μm±5μmであることが好ましい。
[静的屈曲試験方法]
15mm×40mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片を、長辺の半分の位置で折り曲げ、当該試験片の長辺の両端部が厚み6mmの金属片(100mm×30mm×6mm)を上下面から挟むようにして配置し、当該試験片の両端部と金属片との上下面での重なりしろが各々10mmずつになるようにテープで固定した状態で、上下からガラス板(100mm×100mm×0.7mm)で挟み、当該試験片を内径6mmで屈曲した状態で固定する。その際に、金属片とガラス板の間で当該試験片がない部分には、ダミーの試験片を挟み込み、ガラス板が平行になるようにテープで固定する。このようにして屈曲した状態で固定した当該試験片を、60±2℃、93±2%相対湿度(RH)の環境下で24時間静置した後、ガラス板と固定用のテープを外し、当該試験片にかかる力を解放する。その後、当該試験片の一方の端部を固定し、試験片にかかる力を解放してから30分後の試験片の内角を測定する。
[動的屈曲試験方法]
20mm×100mmの大きさに切り出したポリイミドフィルムの試験片を、恒温恒湿器内耐久試験システム(ユアサシステム機器製、面状体無負荷U字伸縮試験治具 DMX-FS)にテープで固定する。試験片を前記静的屈曲試験と同様の屈曲した状態、すなわち、屈曲した状態の試験片の長辺の両端部間の距離が6mmとなるように設定(内径6mmで屈曲した状態で固定)した後、60±2℃、93±2%相対湿度(RH)の環境下で1分間に90回の屈曲回数で、20万回屈曲を繰り返す。
その後、試験片を取り外し、得られた試験片の一方の端部を固定し、20万回屈曲を繰り返してから30分後の試験片の内角を測定する。
[密着性試験方法]
ペンタエリスリトールトリアクリレートの40質量%メチルイソブチルケトン溶液に、ペンタエリスリトールトリアクリレート100質量部に対して10質量部の1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトンを添加して調製した密着性評価用組成物を、10cm×10cmに切り出したポリイミドフィルムの試験片上に塗布し、紫外線を窒素気流下200mJ/cm2の露光量で照射し硬化させることにより、10μm膜厚の硬化膜を形成する。当該硬化膜について、JIS K 5600-5-6に準拠したクロスカット試験を行い、テープによる剥離操作を繰り返し5回実施した後、硬化膜の剥がれの有無を観察する。
前記ポリイミドフィルムの鉛筆硬度は、測定サンプルを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS-S-6006が規定する試験用鉛筆を用いて、JIS K5600-5-4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(0.98N荷重)をフィルム表面に行い、傷がつかない最も高い鉛筆硬度を評価することにより行うことができる。例えば東洋精機(株)製 鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機を用いることができる。
なお、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムの波長590nmにおける厚み方向の複屈折率は、以下のように求めることができる。
まず、位相差測定装置(例えば、王子計測機器株式会社製、製品名「KOBRA-WR」)を用いて、25℃、波長590nmの光で、ポリイミドフィルムの厚み方向位相差値(Rth)を測定する。厚み方向位相差値(Rth)は、0度入射の位相差値と、斜め40度入射の位相差値を測定し、これらの位相差値から厚み方向位相差値Rthを算出する。前記斜め40度入射の位相差値は、位相差フィルムの法線から40度傾けた方向から、波長590nmの光を位相差フィルムに入射させて測定する。
ポリイミドフィルムの厚み方向の複屈折率は、式:Rth/dに代入して求めることができる。前記dは、ポリイミドフィルムの膜厚(nm)を表す。
なお、厚み方向位相差値は、フィルムの面内方向における遅相軸方向(フィルム面内方向における屈折率が最大となる方向)の屈折率をnx、フィルム面内における進相軸方向(フィルム面内方向における屈折率が最小となる方向)の屈折率をny、及びフィルムの厚み方向の屈折率をnzとしたときに、Rth[nm]={(nx+ny)/2-nz}×dと表すことができる。
厚みが薄いと強度が低下し破断しやすくなり、厚みが厚いと屈曲時の内径と外径の差が大きくなり、フィルムへの負荷が大きくなることから屈曲耐性が低下する恐れがある。
例えば、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、着色が抑制され、透明性が向上したものであるため、ディスプレイの表面材として好適に用いることができる。また、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、屈曲耐性を向上しやすいため、曲面に対応できるディスプレイとして、例えば、薄くて曲げられるフレキシブルタイプの有機ELディスプレイや、スマートフォンや腕時計型端末などの携帯端末、自動車内部の表示装置、腕時計などに使用するフレキシブルパネル等に好適に用いることができる。また、本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムは、液晶表示装置、有機EL表示装置等の画像表示装置用部材や、タッチパネル用部材、フレキシブルプリント基板、表面保護膜や基板材料等の太陽電池パネル用部材、光導波路用部材、その他半導体関連部材等に適用することもできる。
本発明のポリイミド前駆体の製造方法は、
ポリイミド前駆体溶液を準備する工程と、
前記ポリイミド前駆体溶液中の、残留モノマーを低減する工程と、を含む。
また、前記ポリイミド前駆体溶液中の、残留モノマーを低減する工程は、前述した本発明のポリイミドフィルムの製造方法で説明したポリイミド前駆体精製工程と同様に行うことができる。
本発明の製造方法により得られるポリイミド前駆体は、残留モノマーが低減されたものであるため、当該ポリイミド前駆体をポリイミドフィルムの製造に用いることにより、残留モノマーの酸化によるポリイミドフィルムの着色を抑制することができる。
本発明のポリイミド前駆体組成物の製造方法は、
ポリイミド前駆体溶液を準備する工程と、
前記ポリイミド前駆体溶液中の、残留モノマーを低減することにより、精製されたポリイミド前駆体を得る工程と、
前記精製されたポリイミド前駆体と有機溶剤とを含有するポリイミド前駆体組成物を調製する工程と、を含む。
本発明の製造方法により得られるポリイミド前駆体組成物は、精製されたポリイミド前駆体を再溶解させて得られるものであるため、残留モノマーが低減されており、且つ、アミン等の触媒を含有しない。そのため、本発明の製造方法により得られるポリイミド前駆体組成物を、熱イミド化を行うポリイミドフィルムの製造に用いることにより、前述した本発明のポリイミドの製造方法で説明したように、着色が抑制され、透明性が向上し、更に、寸法安定性、耐溶剤性、耐吸湿性乃至耐透湿性、屈曲耐性を向上したポリイミドフィルムを得ることができる。
本発明の積層体の製造方法は、前述した本発明の製造方法によりポリイミドフィルムを製造する工程(以下、ポリイミドフィルム製造工程という)と、
前記工程により得られるポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有するハードコート層形成用組成物の塗膜を形成する工程(以下、ハードコート層用塗膜形成工程という)と、
前記塗膜を硬化する工程(以下、ハードコート層用塗膜硬化工程という)と、を含む。
本発明の積層体の製造方法において、ポリイミドフィルムを製造する工程では、前述した本発明のポリイミドフィルムの製造方法を用いることができるので、ここでの説明を省略する。
本発明の積層体の製造方法においては、前記本発明のポリイミドフィルムの製造方法により得られるポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有するハードコート層形成用組成物の塗膜を形成する。
前記ハードコート層形成用組成物は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有し、必要に応じて更に重合開始剤、溶剤及び添加剤等その他の成分を含有していてもよい。
前記ラジカル重合性化合物としては、反応性の高さの点から、中でも(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましく、更に、ポリイミドフィルムとハードコート層との密着性の点及び光透過性と表面硬度の点から、(メタ)アクリロイル基を1分子中に2つ以上有する化合物が好ましい。例えば、1分子中に2~6個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレートモノマーと称される化合物やウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートと称される分子内に数個の(メタ)アクリロイル基を有する分子量が数百から数千のオリゴマーを好ましく使用できる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルの各々を表し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの各々を表す。
また、前記カチオン重合性化合物としては、中でも、カチオン重合性基としてエポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を有する化合物が好ましく、ポリイミドフィルムとハードコート層との密着性の点及び光透過性と表面硬度の点から、エポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を1分子中に2つ以上有する化合物がより好ましい。エポキシ基、オキセタニル基等の環状エーテル基は、重合反応に伴う収縮が小さいという点から好ましい。また、環状エーテル基のうちエポキシ基を有する化合物は多様な構造の化合物が入手し易く、得られたハードコート層の耐久性に悪影響を与えず、ラジカル重合性化合物との相溶性もコントロールし易いという利点がある。また、環状エーテル基のうちオキセタニル基は、エポキシ基と比較して重合度が高い、低毒性であり、得られたハードコート層をエポキシ基を有する化合物と組み合わせた際に塗膜中でのカチオン重合性化合物から得られるネットワーク形成速度を早め、ラジカル重合性化合物と混在する領域でも未反応のモノマーを膜中に残さずに独立したネットワークを形成する等の利点がある。
前記塗布手段は、目的とする膜厚で塗布可能な方法であれば特に制限はなく、例えば、前記ポリイミド前駆体組成物を支持体に塗布する手段と同様のものが挙げられる。
なお、前記ハードコート層形成用組成物の塗膜は、ポリイミドフィルムの一方の面のみに形成してもよいし、ポリイミドフィルムの両面に形成してもよい。
前記ハードコート層用硬化性組成物を塗布、必要に応じて乾燥させた塗膜に対し、当該硬化性組成物に含まれるラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の重合性基に応じて、光照射及び加熱の少なくともいずれかにより塗膜を硬化させることにより、ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層を形成することができる。
加熱をする場合は、通常40℃以上120℃以下の温度にて処理する。また、室温(25℃)で24時間以上放置することにより反応を行っても良い。
本発明の製造方法により得られる積層体は、前述した本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルムと、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有するハードコート層とが隣接して位置する積層体である。
本発明の製造方法により得られる積層体は、前記ポリイミドフィルムの一方の面のみに前記ハードコート層が隣接して積層されたものであってもよいし、前記ポリイミドフィルムの両面に前記ハードコート層が隣接して積層されたものであってもよい。
また、前記ハードコート層は、反射防止性、防眩性等の機能が付与されたものであってもよい。当該機能は、例えば、前記ハードコート層に公知の表面処理を施したり、無機又は有機微粒子等の添加剤を含有させること等により付与することができる。
また、本発明の製造方法により得られる積層体は、本発明の効果を損なわない範囲で、前記ポリイミドフィルム及び前記ハードコート層の他に、更にウレタンやアクリル樹脂などを含むゲル等の他の層が積層されたものであってもよい。
また、本発明の積層体において、各ハードコート層の厚さは、用途により適宜選択されれば良いが、2μm以上80μm以下であることが好ましく、3μm以上50μm以下であることがより好ましい。また、カール防止の観点からポリイミドフィルムの両面にハードコート層を形成しても良い。
本発明の積層体の鉛筆硬度は、前記ポリイミドフィルムの鉛筆硬度と同様にして測定することができる。
本発明の製造方法により得られる積層体の前記全光線透過率は、前記ポリイミドフィルムのJIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率と同様にして測定することができる。
本発明の製造方法により得られる積層体の前記黄色度(YI値)は、前記ポリイミドフィルムのJIS K7373-2006に準拠して算出される黄色度(YI値)と同様にして測定することができる。
本発明の製造方法により得られる積層体のJIS K-7105に準拠したヘイズ値は、前記ポリイミドフィルムのヘイズ値と同様にして測定することができる。
本発明の製造方法により得られる積層体の前記複屈折率は、前記ポリイミドフィルムの波長590nmにおける厚み方向の複屈折率と同様にして測定することができる。
本発明のディスプレイ用表面材の製造方法は、前述した本発明の製造方法によりポリイミドフィルムを製造する工程、又は、前述した本発明の製造方法により積層体を製造する工程を含む。すなわち、本発明の製造方法により得られるディスプレイ用表面材は、前述した本発明の製造方法により得られるポリイミドフィルム、又は、前述した本発明の製造方法により得られる積層体である。
<ポリイミド前駆体の重量平均分子量>
ポリイミド前駆体の重量平均分子量は、ポリイミド前駆体を0.5重量%の濃度のN-メチルピロリドン(NMP)溶液とし、展開溶媒として、含水量500ppm以下の10mmol%LiBr-NMP溶液を用い、GPC装置(東ソー製、HLC-8120、使用カラム:SHODEX製GPC LF-804)を用い、サンプル打ち込み量50μL、溶媒流量0.5mL/分、40℃の条件で測定を行い、サンプルと同濃度のポリスチレン標準サンプルを基準に重量平均分子量を求めた。
<ポリイミド前駆体溶液の粘度>
ポリイミド前駆体溶液の粘度は、粘度計(例えば、TVE-22HT、東機産業株式会社)を用いて、25℃で、サンプル量0.8mlとして測定した。
動的粘弾性測定装置 RSA III(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株))を用い、測定範囲を-150℃~400℃として、周波数1Hz、昇温速度5℃/min、サンプル幅を5mm、チャック間距離を20mmとして動的粘弾性測定を行い、tanδ(tanδ=損失弾性率(E’’)/貯蔵弾性率(E’))のピーク温度から、ガラス転移温度(Tg)を求めた。
ポリイミドフィルム中のアンモニウムイオン含有量は、以下のようにして求めた。重さを測定した5cm×5cmに切り出した重さ約0.4gのポリイミドフィルムの試験片をポリプロピレン袋に入れ、袋内で、50mLの超純水に浸し、ヒートシーラーにて封入した。それを60℃のウォーターバス浴内に入れ、1時間以上静置することにより、ポリイミドフィルム中のアンモニウムイオンを溶出させ、得られた溶出液のイオン濃度をイオンクロマトグラフ(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社、ICS-3000)にて測定し、ポリイミドフィルム1gあたりのアンモニウムイオン量を算出した。なお、溶出液中のアンモニウムイオンの検出限界値は0.1ppbである。
JIS K7361-1に準拠して、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製 HM150)により測定した。
YI値は、JIS K7373-2006に準拠して、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株) V-7100)を用い、JIS Z8720に規定する分光測色方法により測定した透過率をもとに算出した。
JIS K-7105に準拠して、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所製 HM150)により測定した。
(1)ポリイミド前駆体溶液の合成
500mlのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド302.0g、及び、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)2.49g(10mmol)、を溶解させた溶液を液温30℃に制御されたところへ、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)2.22g(5mmol)を、温度上昇が2℃以下になるように徐々に投入し、メカニカルスターラーで4時間撹拌した。そこへ、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)28.8g(90mmol)を添加し、完全に溶解したことを確認後、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)42.0g(94.5mmol)を温度上昇が2℃以下になるように数回に分けて徐々に投入し、ポリイミド前駆体1が溶解したポリイミド前駆体溶液1を合成した。ポリイミド前駆体1に用いられたTFMBとAprTMOSとのモル比は90:10であった。ポリイミド前駆体溶液1(固形分20重量%)の25℃における粘度は40150cpsであり、GPCによって測定したポリイミド前駆体1の重量平均分子量は253000であった。
得られたポリイミド前駆体溶液1(固形分20重量%)5gを溶媒(ジメチルアセトアミド)20gで希釈した。ビーカーに水100mlを入れ、マグネティックスターラーで撹拌し、そこに希釈したポリイミド前駆体溶液1を2.5g/minで滴下して、ポリイミド前駆体1を沈殿させた。沈殿したポリイミド前駆体1をろ過し、水10mlで洗浄することにより回収した。
前記回収したポリイミド前駆体1をジメチルアセトアミドに溶解させた溶液(固形分4質量%)を用いて、前記と同様の方法によりポリイミド前駆体1を沈殿させ、回収する操作を更に2回繰り返し、白色繊維状の精製されたポリイミド前駆体1を得た。
沈殿させて回収する操作を合計3回繰り返し行って得られたポリイミド前駆体1を、ジメチルアセトアミドに固形分25重量%になるように溶解させ、ポリイミド前駆体組成物1を得た。
ポリイミド前駆体組成物1をガラス上に塗布し、120℃の循環オーブンで10分乾燥した。次いで、窒素気流下(酸素濃度100ppm以下)、昇温速度10℃/分で、330℃まで昇温し、330℃で1時間保持後、室温まで冷却した。ガラスより剥離し、実施例1のポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムを用いて測定したところ、ポリイミドのガラス転移温度は312℃であった。
実施例1において、ポリイミド前駆体の精製及びポリイミド前駆体組成物の調製を行わず、ポリイミドフィルムの作製の際に、ポリイミド前駆体組成物1に代えて、精製されていないポリイミド前駆体溶液1を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1のポリイミドフィルムを得た。
500mlのセパラブルフラスコに、脱水されたジメチルアセトアミド302.0gをいれ4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)44.22g(99.5mmol)、および1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(AprTMOS)2.49g(10mmol)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)28.8g(90mmol)を入れた。続いて120℃に加熱しピリジン40gを入れた。続いて無水トリフルオロ酢酸を50g加え、150℃で8時間撹拌し、比較ポリイミド樹脂Aが溶解した比較ポリイミド樹脂溶液Aを合成した。比較ポリイミド樹脂Aに用いられたTFMBとAprTMOSとのモル比は90:10であった。
比較例2と同様の方法により得られた比較ポリイミド樹脂溶液Aを用い、比較例2と同様の方法により比較ポリイミド樹脂Aを沈殿させて回収する操作を合計6回繰り返し行って得た比較ポリイミド樹脂A’を、ジメチルアセトアミドに固形分25重量%になるように溶解させ、比較ポリイミド樹脂組成物A’を得た。
比較例2において、比較ポリイミド樹脂組成物Aに代えて、前記比較ポリイミド樹脂組成物A’を用いた以外は、比較例2と同様にして、比較例3のポリイミドフィルムを得た。
比較例1では、ポリイミド前駆体の精製を行わなかったため、実施例1のポリイミドフィルムに比べ、YI値が高くなり、黄色味が強かった。
比較例2、3では、触媒を用いて化学イミド化によりポリイミドフィルムを作製したため、ポリイミドフィルム中にアンモニウムイオンを含み、実施例1のポリイミドフィルムに比べ、YI値及びヘイズが高く、全光線透過率が低かった。
以下、静的屈曲試験の方法について、図1を参照して説明する。
15mm×40mmに切り出したポリイミドフィルムの試験片1を長辺の半分の位置で折り曲げ、試験片1の長辺の両端部が厚み6mmの金属片2(100mm×30mm×6mm)を上下面から挟むようにして配置し、試験片1の両端部と金属片2との上下面での重なりしろが各々10mmずつになるようにテープで固定した。試験片1が固定された金属片2を、上下からガラス板(100mm×100mm×0.7mm)3a、3bで挟み、試験片1を内径6mmで屈曲した状態で固定した。その際に、金属片2上で試験片1がない部分にダミーの試験片4a、4bを挟み込み、ガラス板3a、3bが平行になるようにテープで固定した。
このようにして屈曲した状態で固定した試験片を、60±2℃、93±2%相対湿度(RH)の環境下で24時間静置した後、ガラス板と試験片固定用のテープを外し、試験片にかかる力を解放した。その後、試験片の一方の端部を固定し、試験片にかかる力を解放してから30分後に試験片の内角を測定した。なお、前記内角の角度が大きいほど、屈曲耐性に優れる。当該静的屈曲試験によってフィルムが影響を受けずに完全に元に戻った場合は、前記内角は180°となる。また、当該静的屈曲試験は、60±2℃、93±2%相対湿度(RH)の高湿下で行われるため、耐吸湿性に優れるほど、前記内角の角度が大きくなる。耐吸湿性が悪いと、吸湿することによりフィルムの屈曲耐性が悪化し、前記内角の角度が小さくなる。
各ポリイミドフィルムの前記内角は、実施例1が135°、比較例1が130°、比較例2が120°であった。
5cm×5cmに切り出したポリイミドフィルムの試験片を、300℃のオーブンで30分間焼成し、焼成前後の寸法の変化を評価した。実施例1及び比較例1のポリイミドフィルムは寸法に変化がなく、比較例2のポリイミドフィルムは寸法に変化があった。
5cm×5cmに切り出したポリイミドフィルムの試験片を、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)に5時間浸漬した後、目視でポリイミドフィルムに変化が起こるか観察した。実施例1及び比較例1のポリイミドフィルムは、軽度な変化のみであり、比較例2のポリイミドフィルムは歪み等の変化があった。
<鉛筆硬度>
測定サンプルを温度25℃、相対湿度60%の条件で2時間調湿した後、JIS-S-6006が規定する試験用鉛筆を用い、東洋精機(株)製 鉛筆引っかき塗膜硬さ試験機を用いて、JIS K5600-5-4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(0.98N荷重)をフィルム表面に行い、傷がつかない最も高い鉛筆硬度を評価することにより行った。
ペンタエリスリトールトリアクリレートの40重量%メチルイソブチルケトン溶液に、ペンタエリスリトールトリアクリレート100重量部に対して10重量部の1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(BASF製、イルガキュア184)を添加して、ハードコート層形成用組成物を調製した。
実施例1で得られたポリイミドフィルムを10cm×10cmに切り出し、切り出したポリイミドフィルムの表面に前記ハードコート層形成用組成物を塗布し、紫外線を窒素気流下200mJ/cm2の露光量で照射し硬化させ、10μm膜厚の硬化膜であるハードコート層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体のハードコート層側表面について、ポリイミドフィルムと同様の方法により、鉛筆硬度の評価を行った結果、3Hであった。
Claims (10)
- 下記一般式(1)で表されるポリイミド前駆体を含むポリイミド前駆体溶液を準備する工程と、
前記ポリイミド前駆体溶液中の、残留モノマーを低減することにより、精製されたポリイミド前駆体を得る工程と、
前記精製されたポリイミド前駆体と有機溶剤とを含有するポリイミド前駆体組成物を調製する工程と、
前記ポリイミド前駆体組成物を支持体に塗布して、ポリイミド前駆体塗膜を形成する工程と、
前記ポリイミド前駆体塗膜を加熱することにより、ポリイミド前駆体をイミド化する工程と、を含む、ポリイミドフィルムの製造方法。
(一般式(1)において、R 1 はテトラカルボン酸残基である4価の基を表し、R 2 は、ジアミン残基である2価の基を表し、主鎖にケイ素原子を含有するジアミン残基を含む。nは繰り返し単位数を表す。) - 前記精製されたポリイミド前駆体を得る工程が、
前記ポリイミド前駆体溶液を貧溶媒に滴下してポリイミド前駆体を沈殿させることにより、ポリイミド前駆体を回収する工程を含む、請求項1に記載のポリイミドフィルムの製造方法。 - 前記一般式(1)で表されるポリイミド前駆体が、
前記一般式(1)におけるR 1 及びR 2 の合計を100モル%としたときに、芳香族環及びフッ素原子を有するテトラカルボン酸残基及び芳香族環及びフッ素原子を有するジアミン残基の合計が50モル%以上であり、
前記一般式(1)におけるR 2 の合計を100モル%としたときに、ケイ素原子を有さず、芳香族環を有するジアミン残基が50モル%以上90モル%以下であり、主鎖にケイ素原子を1個又は2個含有するジアミン残基が10モル%以上50モル%以下である、請求項1又は2に記載のポリイミドフィルムの製造方法。 - 前記ポリイミドフィルムが、
ポリイミドを含有し、アンモニウムイオンを含有せず、
JIS K7361-1に準拠して測定する全光線透過率が90%以上であり、
JIS K-7105に準拠したヘイズ値が2.0以下であり、
JIS K7373-2006に準拠して算出される黄色度が5.0以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。 - 前記残留モノマーを低減する工程が、
前記ポリイミド前駆体溶液を貧溶媒に滴下してポリイミド前駆体を沈殿させることにより、ポリイミド前駆体を回収する工程を含む、請求項5に記載のポリイミド前駆体の製造方法。 - 前記一般式(1)で表されるポリイミド前駆体が、
前記一般式(1)におけるR 1 及びR 2 の合計を100モル%としたときに、芳香族環及びフッ素原子を有するテトラカルボン酸残基及び芳香族環及びフッ素原子を有するジアミン残基の合計が50モル%以上であり、
前記一般式(1)におけるR 2 の合計を100モル%としたときに、ケイ素原子を有さず、芳香族環を有するジアミン残基が50モル%以上90モル%以下であり、主鎖にケイ素原子を1個又は2個含有するジアミン残基が10モル%以上50モル%以下である、請求項5又は6に記載のポリイミド前駆体の製造方法。 - 前記請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法によりポリイミドフィルムを製造する工程と、
前記工程により得られるポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種を含有するハードコート層形成用組成物の塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を硬化する工程と、を含む積層体の製造方法。 - 前記ラジカル重合性化合物が(メタ)アクリロイル基を1分子中に2つ以上有する化合物であり、前記カチオン重合性化合物がエポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を1分子中に2つ以上有する化合物である、請求項8に記載の積層体の製造方法。
- 前記請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法によりポリイミドフィルムを製造する工程、又は、前記請求項8又は9に記載の製造方法により積層体を製造する工程を含む、ディスプレイ用表面材の製造方法。
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