JP7052493B2 - 肉盛用合金粉末およびこれを用いた組み合わせ構造 - Google Patents
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Description
Cr(-0.53C+1.2)+Mo(-1.2C+2.8)≧24…(1)
23W+2.7Mo≧73…(2)
ここで、前記(1)式および前記(2)式に示す元素記号は、該元素記号に相当する元素の含有量を質量%で表した値である。
本実施形態に係る肉盛用合金粉末は、後述する金属材料からなるエンジンバルブ1のバルブ本体10に環状に肉盛られることで、盛金部20を成形するために使用される。このエンジンバルブ1がシリンダヘッドに搭載された際に、盛金部20の表面が、バルブシート30に接触するバルブフェース11となり、この表面にバルブシート30が繰り返し当接する(例えば図3参照)。
Crは、盛金部20のCo基地の表面に、Cr酸化膜(不動態酸化膜)を形成することにより、エンジンバルブ1の耐食性を発揮する元素である。また、このCr酸化膜は、盛金部20とバルブシート30との凝着を防止する。ここで、Crが22質量%未満であると、Co基地の表面にCr酸化膜の安定的な形成を確保できず、耐食性が発揮されない。よって、本実施形態では、Crの下限値を22質量%に規定している。一方、Crが27質量%を超えると、肉盛用合金粉末の盛金性が悪化するばかりでなく、盛金部20の靭性が低下する。よって、本実施形態では、Crの上限値を27質量%に規定している。なお、本発明でいう「盛金性」とは、肉盛時に、バルブ本体10に対する濡れ性、および溶融状態の盛金部の形状安定性のことをいい、盛金性の悪化とは、肉盛り時に盛金部20の形状(具体的にはビードの形状)を所望の形状に保てないことをいう。
Moは、盛金部20のCo基地に固溶することで、Cr酸化膜の形成を促進し、Cr酸化膜が破壊された場合は、Cr酸化膜の再生を促進する元素である。これにより盛金部20の耐食性を確保するとともに、相手材であるバルブシート30の凝着を抑えることができる。ここで、Moが10質量%未満であると、盛金部20の表面に、安定してCr酸化膜を形成することができず、この結果、盛金部20の耐食性が低下する。よって、本実施形態では、Moの下限値を10質量%に規定している。一方、Moが30質量%を超えると、盛金性が悪化するばかりでなく、盛金部20の靭性が低下することから、本実施形態では、Moの上限値を30質量%に規定している。
Wは、盛金部20の耐凝着性の向上に寄与する元素である。ここで、Wが2.0質量%未満であると、盛金部20に存在する炭化タングステンの量が十分でなく、Cr酸化皮膜の下地の硬さを十分に確保することができない。そのため、Cr酸化皮膜が破壊され易い。この結果、盛金部20とバルブシート30との金属部分が凝着し、これらの摩耗が促進される。よって、本実施形態では、Wの下限値を、2.0質量%に規定している。一方、Wが6.0質量%を超えると、肉盛用合金粉末の盛金性が悪化するばかりでなく、盛金部20の靭性が低下する。よって、本実施形態では、Wの上限値を6.0質量%に規定している。
Cは、盛金部20に炭化物を形成し、盛金部20の強度および耐摩耗性を向上させる元素である。ここで、Cが0.4質量%未満であると、盛金部20に硬質な炭化物相が形成されないため、Cr酸化皮膜の下地の硬さを十分に確保することがでず、盛金部20が摩耗し易い。これに加えて、この下地の硬さが確保できないため、バルブシート30とCr酸化皮膜が接触した際に、Cr酸化皮膜が破壊され易い。これにより、盛金部20とバルブシート30との金属部分が凝着し、バルブシート30の摩耗が促進される。よって、本実施形態では、Cの下限値を、0.40質量%に規定している。一方、Cが1.30質量%を超えると、炭化物相の形成が過多となり、Co基地に固溶するCrおよびMoが減少するため、Cr酸化膜が十分に形成されず、盛金部20の耐食性が低下する。その結果、盛金部20の表面が粗くなり、バルブシートに対する相手攻撃性が増加する。よって、本実施形態では、Cの上限値を1.30質量%に規定している。
Siは、盛金性を改善する元素である。Siが3.0質量%を超えると、肉盛用合金粉末の盛金性が悪化するばかりでなく、盛金部20の靭性が低下する。また、盛金部20のバルブシート30への攻撃性が増加する。よって、本実施形態では、Siの上限値を3.0質量%に規定している。
Niは、盛金部20の靭性および耐食性の向上に寄与する元素である。ここで、Niが15質量%を超えると、肉盛用合金粉末の盛金性が悪化するばかりでなく、盛金部20の耐摩耗性が低下する。よって、本実施形態では、Niの上限値を15質量%に規定している。
Feは、盛金部20の靭性の向上に寄与する元素である。ここで、Feが30質量%を超えると耐食性が低下する。よって、本実施形態では、Feの上限値を30質量%に規定している。
Sは、盛金性およびブローホール排出促進性の向上に寄与する元素である。Sが0.4質量%を超えると凝固割れが発生する。よって本実施形態では、Sの上限値を0.4質量%に規定している。
Mnは、盛金性の改善に寄与する元素であり、必要に応じて添加される元素である。Mnが3.0質量%を超えると、耐摩耗性が低下する。よって、本実施形態では、Mnの上限値を3.0質量%に規定している。
Coは、肉盛用合金粉末の基地であり、上述した組成を含むことを前提に、残部として肉盛用合金粉末に含まれる。なお、残部には不可避不純物が含まれてもよい。
Cr(-0.53C+1.2)+Mo(-1.2C+2.8)≧24…(1)
23W+2.7Mo≧73…(2)
ここで、前記(1)式および前記(2)式に示す元素記号は、該元素記号に相当する元素の含有量を質量%で表した値である。
図1および図3に示すように、本実施形態のエンジンバルブ1のバルブ本体10には、盛金部20が形成されており、盛金部20の表面は、バルブシート30に接触するバルブフェース11となっている。盛金部20は、プラズマ肉盛法等で、肉盛用合金粉末を溶融し、溶融した肉盛用合金粉末(盛金材)が肉盛られた部分である。
エンジンバブルは、燃料の燃焼により腐食雰囲気下に晒されることがある。特に、アルコール含有燃料では、ガソリン燃料よりも、酸性と還元性とを併せもつ酸(例えば、ギ酸)が多く発生する。エンジンバルブのうち、盛金部は、バルブシートと接触するため、盛金部が腐食すると、これらにアブレッシブ摩耗が発生することがある。
表1に示すように、Cr:22.9質量%、Mo:13.2質量%、C:0.9質量%、および残部がCoと不可避不純物からなる条件組成の合金(インゴット)を準備した。このインゴットを、1500℃以上の温度で溶解し、不活性ガスを用いたガスアトマイズで、肉盛用合金粉末を作製し、これを、44~250μmの範囲に分級した。このようにして、参考例1-1の肉盛用合金粉末を取得した。
参考例1-1と同じように、参考例1-2~1-8のエンジンバルブの試験体を作製した。参考例1-2~1-8が、参考例1-1と相違する点は、表1に示す肉盛用合金粉末の化学成分である。なお、参考例1-1~1-8の試験体では、C含有量を一定として、CrおよびMo含有量を変化させている。
参考例1-1~1-8の試験体をpH0.6の塩酸溶液下で24時間浸漬させた。次いで、浸漬後の各試験体の断面を切り出して、盛金部を顕微鏡で観察し、顕微鏡像から腐食の深さを計測した。結果を表1に示す。
参考例1-1~1-8に対して、試験体の盛金部からのバルブ本体への固溶量をX線分析装置により測定した。具体的には、盛金部近傍のバルブ本体に含まれるC、Cr、Moの量を固溶量として測定した。この結果を表1に示す。
表1に示す肉盛用合金粉末の各化学成分の含有量と腐食深さとから、C、Cr、およびMoの含有量を変数として、腐食深さをこれらの変数から算出される耐食性値として、重回帰分析により、以下の(1A)式を得た。
ここで、(1A)式に示す元素記号は、該元素記号に相当する元素の含有量を質量%で表した値である。
エンジンバルブに接触するバルブシートには、使用時に凝着摩耗が発生する。この凝着摩耗は、盛金部のうち、CrおよびMoが固溶したCo基地と、バルブシートとが凝着し、その結果、バルブシートがむしられて、バルブシートが摩耗する現象である。この凝着摩耗を低減するためには、使用時において、Co基地を含む盛金部の表面にCr酸化膜が継続的に形成されることが重要である。
参考例1-1と同じように、参考例2-1~2-10のエンジンバルブの試験体を作製した。参考例2-1~2-10が、参考例1-1と相違する点は、表2に示す肉盛用合金粉末の化学成分である。
図3は、単体摩耗試験に係る摩耗試験機の模式的概念図である。図3に示す試験装置を用いて、参考例2-1~2-10に係るエンジンバルブ(試験体)に対して、単体摩耗試験を行った。具体的には、Cu系材料として、Ni:17質量%、Fe:9質量%、Mo:7質量%、Si:3質量%、Nb:1質量%、C:0.1質量%、および残部がCuおよび不可避不純物からなる銅合金をガスアトマイズにより粉化した銅合金粉末(粒径44~250μm)を準備し、この粉末をシリンダヘッドに肉盛ることによりバルブシート30を形成した。次いで、プロパンガスバーナー5を加熱源に用い、上述のように肉盛りされた盛金部20と、バルブシート30との摺動部をプロパンガス燃焼雰囲気とした。
表2に示す肉盛用合金粉末の各化学成分の含有量と摩耗量とから、肉盛用合金粉末のMoおよびWの含有量を変数として、摩耗量をこれらの変数から算出される耐凝着性値として、重回帰分析により、以下の(2A)式を得た。
ここで、(2A)式に示す元素記号は、該元素記号に相当する元素の含有量を質量%で表した値である。
以下の実施例1-1~1-5および比較例1-1~1-3により、耐食性値および耐凝着性値の適正な範囲を確認した。
本発明の実施例に相当する肉盛用合金粉末として、Cr:22~27質量%、Mo:10~30質量%、W:2.0~6.0質量%、C:0.40~1.30質量%、Si:3.0質量%以下、Ni:15.0質量%以下、Fe:30.0質量%以下、S:0.4質量%以下、および残部がCoと不可避不純物を含む条件を満たすコバルト基の肉盛用合金粉末を作製した。
実施例1-1と同じように肉盛用合金粉末で肉盛りした試験体を作製した。実施例1-2~1-5および比較例1-1~1-3が、相違する点は、表3に示す肉盛合金用粉末の成分である。なお、表3に示す化学成分のうち、耐食性および耐凝着性に寄与するCr、Mo、W、およびCの含有量を変化させ、それ以外の化学成分の含有量は一定にした。
実施例1-1~1-5および比較例1-1~1-3について、上述のように決定した(1A)式および(2A)式を用いて、耐食性値および耐凝着性値を算出した。この結果を表3に示す。
実施例1-1~1-5および比較例1-1~1-3のエンジンバルブの試験体について、盛金部のビードの形状を観察した。いずれの試験体も、盛金性は良好であり、盛金部のビードの形状に不良がなく、盛金部に割れは認められなかった。
実施例1-1~1-5および比較例1-1~1-3の腐食試験用の試験体を、pH1.5の腐食液に70℃で24時間浸漬した。浸漬後、各試験体の断面(2か所)を切り出して、それぞれの断面を走査型顕微鏡(SEM)により観察(4000倍)し、試験面の最表層の腐食の有無を確認した。腐食の有無の確認は、浸漬処理を行っていない鏡面研磨面と比較して行い、1試験体につき2つの断面を観察した。腐食が無い場合を「良好」と判定し、腐食があった場合を「不良」と判定した。結果を表4に示す。また、組織を観察した実施例および比較例のうち、実施例1-5および比較例1-1の腐食試験後の最表層付近の断面(SEM)写真を、図5Aおよび図5Bに示す。
実施例1-1~1-5、比較例1-2、および比較例1-3に係るエンジンバルブの試験体に対して、上述した単体摩耗試験を行った。単体摩耗試験後のエンジンバルブの盛金部の摩耗量およびバルブシートの摩耗量を測定し、その総量を合計の摩耗量として算出した。なお、摩耗量が100μm以下である結果を「良好」と判定し、これを超えた場合を「不良」と判定した。この結果を表4に示す。また、図6Aに、実施例1-1~1-5、比較例1-2、および比較例1-3の耐凝着性値と単体摩耗試験における摩耗量との関係を示す。
実施例1-1~1-5および比較例1-1、1-3に係るエンジンバルブの試験体に対して、実機摩耗試験を行った。この試験では、アルコール含有燃料を使用することにより、単体摩耗試験と異なり、高腐食および強還元環境下で、エンジンバルブの盛金部の相手攻撃性と耐摩耗性とを確認した。具体的には、2400ccのガソリンエンジンを用い、アルコール含有燃料を用いて300時間の実機摩耗試験を実施した。実機摩耗試験後のエンジンバルブの盛金部の摩耗量およびバルブシートの摩耗量を測定し、その総量を合計の摩耗量として算出した。なお、摩耗量が100μm以下である場合を「良好」と判定し、これを超えた場合を「不良」と判定した。また、図6Bに、実施例1-1~1-5および比較例1-1、1-3の耐凝着性値と実機摩耗試験における摩耗量との関係を示す。
3-1.耐食性値の最適範囲について
実施例1-5の耐食性値は24であり、図5Aに示すように、実施例1-5の盛金部には腐食が確認されなかった。一方、比較例1-1の耐食性値は23であり、図5Bに示すように、比較例1-1の盛金部には腐食が確認され、その表面の荒れが確認された。比較例1-1では、盛金部において、炭化物相により、Co基地が腐食(ガルバニック腐食)し、盛金部の表面から炭化物相が浮き出し、盛金部の表面が粗くなったと考えらえる。これらの結果、実機試験において、比較例1-1では、実施例1-5に比べて、アブレッシブ摩耗により、摩耗量が多くなったと考えられる。よって、腐食が起因したアブレッシブ摩耗を抑制するためには、以下の(1)式を満たすことが必要であると考えられる。なお、表3および表4に示すように、実施例1-1~1-4の場合も、以下の(1)式を満たし、腐食試験の結果は、良好であった。
ここで、前記(1)式に示す元素記号は、該元素記号に相当する元素の含有量を質量%で表した値である。
表3に示すように、比較例1-2および比較例1-3では、(1A)式から算出された耐食性値が24以上である。このため、表4に示すように、比較例1-2および比較例1-3の試験体の腐食試験の結果は良好であった。
ここで、前記(2)式に示す元素記号は、該元素記号に相当する元素の含有量を質量%で表した値である。
[実施例2-1、2-2]
実施例1-1と同じように肉盛用合金粉末で肉盛りした試験体を作製した。実施例2-1、2-2が、実施例1-1と相違する点は、表5に示す肉盛合金用粉末の化学成分である。なお、表5に、実施例1-1と同様にして算出した、実施例2-1、2-2の耐食性値と耐凝着性値を示した。
実施例2-1と同じように肉盛用合金粉末で肉盛りした試験体を作製した。比較例2-1~2-3が、実施例2-1と相違する点は、表5に示す肉盛合金用粉末の化学成分である。なお、表5に、実施例2-1と同様にして算出した、比較例2-1~2-3の耐食性値と耐凝着性値を示した。
実施例2-1、2-2では、耐食性値は24を超え(表5参照)、上述した(1)式を満たしており、実施例2-1、2-2の腐食試験の結果は良好であった(表6参照)。しかしながら、比較例2-1、2-2では、耐食性値は24を超えて(表5参照)、(1)式を満たしているが、比較例2-1、2-2の腐食試験の結果は、不良であった(表6参照)。このような結果、実機摩耗試験において、比較例2-1、2-2の摩耗量は、実施例2-1のものよりも多くなった。以上の結果から、比較例2-1、2-2の試験体では、実施例2-1に比べて、Cr酸化膜が十分に形成されていないと考えられ、Cr酸化膜となるCrの含有量が十分でないと考えられる。以上の点から、肉盛用合金粉末のCrの含有量は、22質量%以上が最適であると考えられる。
[実施例3-1、3-2]
実施例1-1と同じように肉盛用合金粉末で肉盛りした試験体を作製した。実施例3-1、3-2が、実施例1-1と相違する点は、表7に示す肉盛合金用粉末の化学成分である。なお、表7に、実施例1-1と同様にして算出した、実施例3-1、3-2の耐食性値と耐凝着性値を示した。
実施例3-1と同じように肉盛用合金粉末で肉盛りした試験体を作製した。比較例3-1、3-2が、実施例3-1と相違する点は、表7に示す肉盛合金用粉末の化学成分である。なお、表7に、実施例3-1と同様にして算出した、比較例3-1、3-2の耐食性値と耐凝着性値を示した。
比較例3-1は、耐食性値が22である(表7参照)ため、(1)式を満たしておらず、腐食試験の結果が不良であった(表8参照)。比較例3-1では、Crの含有量は、上述した最適な範囲にあり、かつ、実施例3-1と比べてMo含有量が少ない。これにより、比較例3-1の盛金部は、含有するMoによりCr酸化膜が十分に形成されなかったと考えられる。以上の点から、肉盛用合金粉末のMoの含有量は、10質量%以上が最適であると考えられる。
[実施例4-1、4-2]
実施例1-1と同じように肉盛用合金粉末で肉盛りした試験体を作製した。実施例4-1および4-2が、実施例1-1と相違する点は、表9に示す肉盛合金用粉末の化学成分である。なお、表9に、実施例1-1と同様にして算出した、実施例4-1および4-2の耐食性値と耐凝着性値を示した。
実施例4-1と同じように肉盛用合金粉末で肉盛りした試験体を作製した。比較例4-1および4-2が、実施例4-1と相違する点は、表9に示す肉盛合金用粉末の化学成分である。なお、表9に、実施例4-1と同様にして算出した、比較例4-1、4-2の耐食性値と耐凝着性値を示した。
実施例4-1、4-2、比較例4-1では、耐食性値は24を超え(表9参照)、上述した(1)式を満たしており、実施例4-1、4-2、比較例4-1の腐食試験の結果は良好であった(表10参照)。一方、比較例4-1は、耐凝着性値が67である(表9参照)ため、(2)式を満たしておらず、単体摩耗試験の結果が不良であった(表10参照)。比較例4-1では、CrおよびMoの含有量は、上述した最適な範囲にあり、実施例4-1と比べて、Wの含有量が少ない。これにより、比較例4-1の盛金部は、硬質な炭化物相を構成する炭化タングステンの生成が抑えられてしまい、盛金部の硬度が低下したため、バブルシートの面圧によりCr酸化膜が破壊され、バルブシートの凝着摩耗が促進したと考えられる。以上の点から、肉盛用合金粉末のWの含有量は、2.0質量%以上が最適であると考えられる。
[実施例5-1、5-2]
実施例1-1と同じように肉盛用合金粉末で肉盛りした試験体を作製した。実施例5-1、5-2が、実施例1-1と相違する点は、表11に示す肉盛合金用粉末の化学成分である。なお、表12に、実施例1-1と同様にして算出した、実施例5-1および5-2の耐食性値と耐凝着性値を示した。
実施例5-1と同じように肉盛用合金粉末で肉盛りした試験体を作製した。比較例5-1~5-3が、実施例5-1と相違する点は、表11に示す肉盛合金用粉末の化学成分である。なお、表12に、実施例5-1と同様にして算出した、比較例5-1~5-3の耐食性値と耐凝着性値を示した。
実施例5-1、5-2、および比較例5-1、5-2では、耐食性値は24を超え(表11参照)、上述した(1)式を満たしており、実施例5-1、5-2、比較例5-1、5-2の腐食試験の結果は良好であった(表12参照)。一方、比較例5-1、5-2は、耐凝着性値が73以上である(表11参照)ため、(2)式を満たしている。しかしながら、単体試験における比較例5-1、5-2の摩耗量は、実施例5-1、5-2のものに比べて多く、実機試験における比較例5-2の摩耗量は、実施例5-2のものよりも多かった。これは、比較例5-1、5-2では、Cの含有量は、実施例5-1、5-2に比べて少ない。これにより、比較例5-1、5-2では、実施例5-1、5-2に比べて、盛金部に硬質な炭化物相が生成され難いため、Cr酸化膜が破壊されてしまい、相手側であるバルブシートが盛金部のCo基地に凝着し、摩耗が促進されたと考えられる。以上の点から、肉盛用合金粉末のCの含有量は、0.40質量%以上が最適であると考えられる。
[実施例6-1、6-2]
実施例1-1と同じように肉盛用合金粉末で肉盛りした試験体を作製した。実施例6-1、6-2が、実施例1-1と相違する点は、表13に示す肉盛合金用粉末の化学成分である。なお、表13に、実施例1-1と同様にして算出した、実施例6-1、6-2の耐食性値と耐凝着性値を示した。
比較例6-1と同じように肉盛用合金粉末で肉盛りした試験体を作製した。実施例6-1が、実施例1-1と相違する点は、表13に示す肉盛合金用粉末の化学成分である。なお、表13に、実施例1-1と同様にして算出した、比較例6-1の耐食性値と耐凝着性値を示した。
これらの試験体に用いた肉盛用粉末は、(1)式および(2)式を満たしているが、比較例6-1では、上述した如く、盛金部のビードの形状が不良であり、盛金部に割れが発生していた。これらの結果から、肉盛用合金粉末のSiの含有量は、3.0質量%以下が最であると考えられる。
Claims (2)
- 燃料に、エタノールまたはエタノール混合ガソリンを用いるエンジンのバルブシートに接触する盛金部をエンジンバルブに成形するための肉盛用合金粉末であって、
Cr:22~27質量%、Mo:10~30質量%、W:2.0~6.0質量%、C:0.40~1.30質量%、Si:3.0質量%以下、Ni:6.0~15.0質量%、Fe:30.0質量%以下、S:0.4質量%以下、および残部がCoと不可避不純物を含み、
下記の(1)式および(2)式を満たすことを特徴とする肉盛用合金粉末。
Cr(-0.53C+1.2)+Mo(-1.2C+2.8)≧24…(1)
23W+2.7Mo≧73…(2)
ここで、前記(1)式および前記(2)式に示す元素記号は、該元素記号に相当する元素の含有量を質量%で表した値である。 - 前記バルブシートに接触する部分に、請求項1に記載の肉盛用合金粉末を肉盛りしたエンジンバルブと、前記バルブシートと、を組み合わせた組み合わせ構造。
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