本明細書で記載した特定の組成物および方法はもちろん変化することがあるので、本発明は、それらだけに限定はされない。本明細書で使用した用語は、特定の実施形態を説明する目的のためのものにすぎず、本発明の範囲を制限するものではないことも理解されたい。
受託番号:本記載を通じて配列受託番号は、米国の国立衛生研究所によって管理されているNCBI(国立バイオテクノロジー情報センター)によって提供されるデータベースから(本明細書では、「NCBI受託番号」あるいは「GenBank受託番号」と識別される)、スイスバイオインフォマティクス研究所によって提供されるUniProt知識データベース(UniProtKB)およびSwiss-Protデータベースから(本明細書では「UniProtKB受託番号」と識別される)得られた。特に明確に指示されていなければ、NCBI/GenBank受託番号によって識別された配列は、バージョン番号1である(すなわち、配列のバージョン番号は「受託番号1」である)。本明細書で提供されたNCBIおよびUniProtKB受託番号は、2011年8月2日時点で最新であった。
酵素分類(EC)番号:EC番号は、国際生化学および分子生物学連合(IUBMB)の命名委員会によって確立され、その記述はワールドワイドウェブのIUBMB酵素命名ウェブサイトで利用可能である。EC番号は、触媒する反応に応じて酵素を分類する。本明細書で参考にしたEC番号は、一部を東京大学によって支援されているKyoto Encyclopedia of Genes and Genomicsによって維持されているKEGGリガンドデータベースから得られる。特に指示がなければ、EC番号は、2011年8月2日時点のKEGGデータベースに提供されている通りである。
特に定義しなければ、本明細書で使用した技術的および科学的用語は全て、本発明が属する当分野の技術者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で記載したものと類似または同等のいかなる材料および方法も、本発明の実施または試験において使用することができるが、好ましい組成物および方法をここで記載する。
定義
本明細書では、「脂肪酸」という用語は、式R-(C=O)-OHを有するカルボン酸を指し、式中、Rは長さが炭素原子約4個と約36個の間、より一般的には長さが炭素原子約4個と約22個の間であってもよい炭素鎖を表す。脂肪酸は、飽和しているか、または不飽和であってもよい。不飽和の場合、Rは1個または複数の不飽和点を有していてもよく、すなわち、Rはモノ不飽和またはポリ不飽和であってもよい。Rは、直鎖(本明細書ではまた「直線状鎖(linear chain)」と称する)または分枝鎖であってもよい。「脂肪酸」という用語は、1種または複数の異なる脂肪酸誘導体または脂肪酸誘導体の混合物を含むことができる「脂肪酸誘導体」を指すために本明細書では使用してもよい。
本明細書で使用される場合、「奇数鎖脂肪酸」(「oc-FA」と略す)は、カルボニル炭素を含めて、奇数の炭素原子を含有する直鎖状炭素鎖を有する脂肪酸分子を指す。oc-FAの非限定的例には、飽和oc-FAであるトリデカン酸(C13:0)、ペンタデカン酸(C15:0)およびヘプタデカン酸(C17:0)および不飽和(すなわちモノ不飽和)oc-FAであるヘプタデカン酸(C17:1)が含まれる。
本明細書で使用される場合、「β-ケトアシル-ACP」という用語は、図1Aおよび1Bで示した経路の部分(D)によって表されるようなベータケトアシル-ACP合成酵素活性(例えば、EC2.3.1.180)を有する酵素によって触媒されるアシル-CoAプライマー分子とマロニル-ACPとの縮合生成物を指す。アシル-CoAプライマー分子は、図1Aで示したアセチル-CoAなどの偶数の炭素原子を含有するアシル基を有していてもよく、この場合、得られたβ-ケトアシル-ACP中間体はアセトセチル-ACPで、これは偶数鎖(ec-)β-ケトアシル-ACPである。アシル-CoAプライマー分子は、図1Bで表したようなプロピオニル-CoAなどの奇数の炭素原子を含有するアシル基を有していてもよく、この場合、得られたβ-ケトアシル-ACP中間体は3-オキソバレリル-ACPで、これは奇数鎖(oc-)β-ケトアシル-ACPである。β-ケトアシル-ACP中間体は、図1Aおよび1Bの(E)部に表した脂肪酸合成酵素(FAS)サイクルに入り、一巡の伸長反応を受け(すなわち、ケト還元、脱水およびエノイル還元)、アシル鎖に2個の炭素単位を付加し、その後さらに伸長サイクルを行い、それぞれのサイクルは、別のマロニル-ACP分子との縮合、ケト還元、脱水およびエノイル還元が関与しており、したがってアシル-ACPのアシル鎖は伸長サイクル1回当たり2個の炭素単位が伸長される。
「アシル-ACP」は一般的に、β-ケトアシル-ACP中間体の1回または複数のFAS触媒伸長による生成物を指す。アシル-ACPは、アルキル鎖のカルボニル炭素とアシル運搬タンパク質(ACP)の4’-ホスホパンテチオニル部分のスルフヒドリル基との間で形成されたアシルチオエステルであり、直鎖状炭素鎖の場合、通常、式CH3-(CH2)n-C(=O)-s-ACPを有し、式中、nは偶数(例えば、「偶数鎖アシル-ACP」または「ec-アシル-ACP」で、例えば、アセチル-CoAがプライマー分子のとき生成される、図1A参照)または奇数(例えば、「奇数鎖アシル-ACP」または「oc-アシル-ACP」で、例えば、プロピオニル-CoAがプライマー分子のとき生成される、図1B参照)であってもよい。
特に記載がなければ、「脂肪酸誘導体」(略して「FA誘導体」)は、少なくとも一部が組換え微生物細胞の脂肪酸生合成経路によって作製されたいかなる生成物も含むものとする。脂肪酸誘導体はまた、少なくとも一部がアシル-ACP中間体などの脂肪酸経路中間体によって作製されたいかなる生成物も含む。本明細書で記載した脂肪酸生合成経路は、脂肪酸誘導体を生成するために操作することができる脂肪酸誘導体酵素を含むことができ、場合によっては、例えば、所望する数の炭素原子を含有する炭素鎖を有する脂肪酸誘導体の組成物または奇数の炭素鎖を含有する誘導体の所望する割合などを有する脂肪酸誘導体の組成物などの、所望する炭素鎖特性を有する脂肪酸誘導体を生成するために、さらに酵素を発現させることができる。脂肪酸誘導体は、限定はしないが、脂肪酸、脂肪アルデヒド、脂肪アルコール、脂肪エステル(ワックスなど)、炭化水素(アルカンおよびアルケンなど(末端オレフィンおよび内部オレフィンを含む))およびケトンを含む。
「奇数鎖脂肪酸誘導体」(略して「oc-FA誘導体」)という用語は、上記で定義したように、oc-アシル-ACPと1種または複数の脂肪酸誘導体酵素との反応の生成物を指す。脂肪酸誘導体がそれ自体oc-FA誘導体またはoc-アシル-ACPの脱カルボニル化または脱カルボキシル化の生成物でなければ、すなわち、得られたoc-FA誘導体が偶数の炭素原子を有する場合でなければ、例えば、脂肪酸誘導体がoc-脂肪アルデヒドの脱カルボニル化によって生成したec-アルカンまたはec-アルケン、oc-脂肪酸の脱カルボキシル化によって生成したec末端オレフィン、oc-アシル-ACPの脱カルボキシル化によって生成したec-ケトンもしくはec-内部オレフィンなどであるときでなければ、同様にして得られた脂肪酸誘導体生成物は、奇数の炭素原子を含有する直鎖状炭素鎖を有する。oc-FA誘導体またはoc-アシル-ACP前駆体分子のこのような偶数鎖長生成物は、偶数の炭素原子を含有する直鎖状鎖を有するけれども、それでも「oc-FA誘導体」の定義に入ると見なされるものと理解されたい。
「内在性」ポリペプチドとは、組換え細胞が操作された(または「得られた」)親微生物細胞(「宿主細胞」とも称する)のゲノムによってコードされるポリペプチドを指す。
「外来性」ポリペプチドとは、親微生物細胞のゲノムによってコードされていないポリペプチドを指す。変異体(すなわち、突然変異体)ポリペプチドは、外来性ポリペプチドの一例である。
ポリヌクレオチド配列が内在性ポリペプチドをコードする本発明の実施形態では、場合によっては内在性ポリペプチドは過剰発現している。本明細書で使用される場合、「過剰発現」とは、同じ条件下で対応する親細胞(例えば、野生型細胞)において通常生成されるよりも高い濃度で、細胞においてポリヌクレオチドまたはポリペプチドを生成すること、あるいは生成を引き起こすことを意味する。ポリヌクレオチドまたはポリペプチドが、同じ条件下で同種の非組換え微生物細胞(例えば、親微生物細胞)における濃度と比較して、組換え微生物細胞においてより高い濃度で存在するとき、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドは組換え微生物細胞において「過剰発現」することができる。過剰発現は、当技術分野で公知の任意の適切な手段によって実現することができる。
いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞における内在性ポリペプチドの過剰発現は、外来性調節要素の使用によって実現することができる。「外来性調節要素」という用語は一般的に、宿主細胞の外から生じる調節要素(例えば、発現制御配列または化合物)を指す。しかし、ある種の実施形態では、「外来性調節要素」(例えば、「外来性プロモーター」)という用語は、組換え細胞において内在性ポリペプチドの発現を制御するためにその機能が複製されているかまたは奪われている宿主細胞から得られた調節要素を指し得る。例えば、宿主細胞がE.コリ細胞の場合、ポリペプチドは内在性ポリペプチドであり、組換え細胞における内在性ポリペプチドの発現は別のE.コリ遺伝子から得られたプロモーターによって制御され得る。いくつかの実施形態では、内在性ポリペプチドの発現および/または活性のレベルの増加を引き起こす外来性調節要素は、低分子などの化合物である。
いくつかの実施形態では、内在性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、内在性ポリヌクレオチド)の発現を制御する外来性調節要素は、組換え組み込みによって内在性ポリヌクレオチドを宿主細胞のゲノムに操作可能に連結される発現制御配列である。ある種の実施形態では、発現制御配列は、当技術分野で公知の方法を使用して相同組換えによって宿主細胞染色体に組み込まれる(例えば、Datsenko et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 97(12):
6640-6645 (2000))。
発現制御配列は、当技術分野では公知で、例えば、宿主細胞におけるポリヌクレオチド配列の発現をもたらすプロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、転写ターミネーター、リボソーム内部進入部位(IRES)などを含む。発現制御配列は、転写に関与した細胞タンパク質と特異的に相互作用する(Maniatis et al., Science 236: 1237-1245 (1987))。発現制御配列の例は、例えば、Goeddel, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology, Vol. 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990)に記載されている。
本発明の方法では、発現制御配列は、ポリヌクレオチド配列に操作可能に連結する。「操作可能に連結した」とは、適切な分子(例えば、転写活性化タンパク質)が発現制御配列(複数可)に結合したとき、遺伝子発現を可能にするような様式でポリヌクレオチド配列および発現制御配列(複数可)が接続することを意味する。操作可能に連結したプロモーターは、転写および翻訳の方向の観点から選択されるポリヌクレオチド配列の上流に位置する。操作可能に連結したエンハンサーは、選択されるポリヌクレオチドの上流、内部または下流に位置することができる。選択マーカー、精製部分、標的タンパク質などをコードする核酸配列などのさらなる核酸配列は、さらなる核酸配列がポリヌクレオチド配列と一緒に発現するように、ポリヌクレオチド配列に操作可能に連結することができる。
いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチド配列は、ポリヌクレオチド配列に操作可能に連結したプロモーターを含む組換えベクターによって組換え細胞に与えられる。ある種の実施形態では、プロモーターは、発生調節された、細胞内小器官特異的、組織特異的、誘導性、構成的または細胞特異的プロモーターである。
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、連結した別の核酸、すなわちポリヌクレオチド配列を輸送することができる核酸分子を指す。有用なベクターの1種は、エピソーム(すなわち、染色体外での複製が可能な核酸)である。有用なベクターは、連結した核酸の自己複製および/または発現を可能にするベクターである。操作可能に連結した遺伝子の発現を対象とすることができるベクターは、本明細書では「発現ベクター」と称する。一般的に、組換えDNA技術で有用な発現ベクターは、ベクター形態で染色体に結合しない環状2本鎖DNAループを通常指す「プラスミド」の形態であることが多い。プラスミドはベクターの最も一般的に使用される形態であるので、本明細書では、「プラスミド」および「ベクター」という用語は同義に使用される。しかし、同等の機能を果たし、今後当技術分野で公知になる発現ベクターのこのような他の形態も含まれる。
いくつかの実施形態では、組換えベクターは、(a)ポリヌクレオチド配列に操作可能に連結した発現制御配列、(b)ポリヌクレオチド配列に操作可能に連結した選択マーカー、(c)ポリヌクレオチド配列に操作可能に連結したマーカー配列、(d)ポリヌクレオチド配列に操作可能に連結した精製部分、(e)ポリヌクレオチド配列に操作可能に連結した分泌配列、および(f)ポリヌクレオチド配列に操作可能に連結した標的配列からなる群から選択される少なくとも1種の配列を含む。
本明細書で記載した発現ベクターは、宿主細胞におけるポリヌクレオチド配列の発現に適切な形態の本明細書で記載したポリヌクレオチド配列を含む。当業者であれば、発現ベクターの設計は、形質転換する宿主細胞の選択、所望するポリペプチドの発現レベルなどの要因に左右され得ることなどを理解するだろう。本明細書で記載した発現ベクターは、本明細書で記載したポリヌクレオチド配列によってコードされる融合ポリペプチドを含むポリペプチドを生成するために宿主細胞に導入することができる。
原核細胞、例えば、E.コリにおけるポリペプチドをコードする遺伝子の発現は、融合または非融合ポリペプチドのどちらかの発現を対象とする構成的または誘導性プロモーターを含有するベクターで実施することが多い。融合ベクターは、ベクター内でコードされるポリペプチドに、通常組換えポリペプチドのアミノまたはカルボキシ末端にいくつかのアミノ酸を付加する。このような融合ベクターは通常、以下の3つの目的の1つまたは複数に役立つ:(1)組換えポリペプチドの発現の増加、(2)組換えポリペプチドの溶解性の増加および(3)アフィニティ精製においてリガンドとして作用することによる組換えポリペプチドの精製の補助。しばしば、融合発現ベクターでは、タンパク質分解切断部位を融合部分および組換えポリペプチドの接合部に導入する。これによって、融合ポリペプチドの精製後、融合部分から組換えポリペプチドを分離することが可能になる。このような酵素および同族認識配列の例には、第Xa因子、トロンビンおよびエンテロキナーゼが含まれる。融合発現ベクターの例には、pGEX(Pharmacia Biotech, Inc., Piscataway, NJ; Smith et al., Gene, 67: 31-40 (1988))、pMAL(New England Biolabs, Beverly, MA)およびpRITS(Pharmacia Biotech, Inc., Piscataway, N.J.)が含まれ、それぞれ標的組換えポリペプチドにグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質またはプロテインAを融合させる。
ベクターは、従来の形質転換または遺伝子導入技術によって原核細胞または真核細胞に導入することができる。本明細書で使用される場合、「形質転換」および「遺伝子導入」という用語は、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈殿法、DEAEデキストランによる遺伝子導入、リポフェクションまたはエレクトロポレーションを含む、外来性核酸(例えば、DNA)を宿主細胞に導入するための当技術分野で確認された様々な技術を指す。宿主細胞を形質転換または遺伝子導入するために適切な方法は、例えば、Sambrook et al.(上記)に見出すことができる。
細菌細胞の安定した形質転換のために、使用する発現ベクターおよび形質転換技術に応じて、細胞の小画分のみを取り出し、発現ベクターを複製することが知られている。これらの形質転換体を同定し選択するために、選択可能なマーカー(例えば、抗生物質に対する耐性)をコードする遺伝子を目的の遺伝子と一緒に宿主細胞に導入することができる。選択可能なマーカーには、限定はしないが、アンピシリン、カナマイシン、クラムフェニコールまたはテトラサイクリンなどの薬物に対する耐性を付与するマーカーが含まれる。選択可能なマーカーをコードする核酸は、本明細書で記載したポリペプチドをコードするベクターと同じベクターで、宿主細胞に導入することができるか、または別のベクターで導入することができる。導入した核酸で安定して形質転換され、組換え細胞を生じる宿主細胞は、適切な選択薬の存在下での増殖によって同定することができる。
同様に、ほ乳類細胞の安定した遺伝子導入のために、使用する発現ベクターおよび遺伝子導入技術に応じて、細胞の小画分のみが外来DNAをそのゲノムに組み込むことができることが知られている。これらの組み込み体を同定し選択するために、選択可能なマーカー(例えば、抗生物質に対する耐性)をコードする遺伝子を目的の遺伝子と一緒に宿主細胞に導入することができる。好ましい選択可能なマーカーには、G418、ハイグロマイシンおよびメトトレキセートなどの薬物に対する耐性を付与するマーカーが含まれる。選択可能なマーカーをコードする核酸は、本明細書で記載したポリペプチドをコードするベクターと同じベクターで、宿主細胞に導入することができるか、または別のベクターで導入することができる。導入した核酸で安定して遺伝子導入され、組換え細胞を生じる宿主細胞は、適切な選択薬の存在下での増殖によって同定することができる。
本明細書で使用される場合、「遺伝子ノックアウト」とは、インタクトなタンパク質の機能を低下させるかまたは排除するために、標的タンパク質をコードする遺伝子を改変または不活性化する手順を指す。遺伝子の不活性化は、UV照射による突然変異誘発またはN-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジンによる処理、部位特異的突然変異誘発、相同組換え、挿入欠失変異または「Red-driven integration」(Datsenko et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97:6640-45, 2000)などの一般的方法によって実施することができる。例えば、一実施形態では、得られた組換え細胞において相同組換え事象を選択することが可能であるように、コンストラクトを親細胞に導入する。当業者であれば、コンストラクトで相同組換え事象を受けた遺伝子導入(すなわち、組換え)細胞を効率よく選択するために、ポジティブおよびネガティブ選択遺伝子の両方を含むノックアウトコンストラクトを容易に設計することができるだろう。親細胞の変化は、例えば、シングルもしくはダブルクロスオーバー組換えによって、変化を含有するDNA配列で野生型(すなわち、内在性)DNA配列を置換することによって得ることができる。形質転換体(すなわち、組換え細胞)の便利な選択のために、この変化は、例えば、抗生物質耐性マーカーをコードするDNA配列または宿主細胞の可能性のある栄養要求性を補完する遺伝子であってもよい。突然変異には、限定はしないが、欠失挿入突然変異が含まれる。組換え細胞におけるこのような変化の一例には、ある遺伝子から通常生成される生成物が機能型で生成されないような遺伝子破壊、すなわち、遺伝子の混乱が含まれる。これは、完全な欠失、選択マーカーの欠失もしくは挿入、選択マーカーの挿入、フレームシフト突然変異、インフレーム欠失または中途終止を引き起こす点突然変異によって行われ得る。場合によっては、遺伝子の全mRNAが存在しない。他の状況では、生じるmRNAの量は変動する。
「内在性ポリペプチドの発現レベルの増加」という表現は、内在性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の過剰発現を引き起こすか、または内在性ポリペプチド配列の過剰発現を引き起こすことを意味する。過剰発現の程度は、約1.5倍以上、約2倍以上、約3倍以上、約5倍以上、約10倍以上、約20倍以上、約50倍以上、約100倍以上またはそれらの任意の範囲であってもよい。
「内在性ポリペプチドの活性レベルの増加」という表現は、内在性ポリペプチドの生化学的または生物学的機能(例えば、酵素活性)を増強することを意味する。活性増強の程度は、約10%以上、約20%以上、約50%以上、約75%以上、約100%以上、約200%以上、約500%以上、約1000%以上またはそれらの任意の範囲であってもよい。
「前記ポリヌクレオチド配列の発現は野生型ポリヌクレオチド配列に対して改変されている」という表現は、本明細書で使用される場合、内在性ポリヌクレオチド配列の発現および/または活性のレベルの増加または減少を意味する。いくつかの実施形態では、内在性ポリヌクレオチドの発現を制御する外来性調節要素は、組換え組み込みによって内在性ポリヌクレオチドを宿主細胞のゲノムに操作可能に連結される発現制御配列である。いくつかの実施形態では、発現制御配列は、当技術分野で公知の方法を使用して相同組換えによって宿主細胞染色体に組み込まれる。
本明細書で使用される場合、「前記ポリヌクレオチド配列(複数可)を発現するために有効な条件下で」という表現は、組換え細胞が所望する脂肪酸誘導体を生成することを可能にする任意の条件を意味する。適切な条件には、例えば、発酵条件が含まれる。発酵条件には、温度範囲、通気レベルおよび培地組成などの多くのパラメータを含めることができる。これらの条件はそれぞれ、個々におよび組み合わせて、宿主細胞の増殖を可能にする。培養培地例には、ブロスまたはゲルが含まれる。一般的に、培地には、組換え細胞が直接代謝することができる炭素源が含まれる。発酵とは、本発明の組換え微生物細胞などの生成宿主による炭素源の使用を意味する。発酵は、好気性、嫌気性またはそれらの変種(微好気性など)であってもよい。当業者によって理解されるように、組換え微生物細胞が炭素源をoc-アシル-ACPまたは所望するoc-FA誘導体(例えば、oc-脂肪酸、oc-脂肪エステル、oc-脂肪アルデヒド、oc-脂肪アルコール、ec-アルカン、ec-アルケンまたはec-ケトン)に処理できる条件は、一部には、特定の微生物に基づいて変化するだろう。いくつかの実施形態では、このプロセスは好気性環境で生じる。いくつかの実施形態では、このプロセスは嫌気性環境で生じる。いくつかの実施形態では、このプロセスは微好気性環境で生じる。
本明細書で使用される場合、「炭素源」という用語は、原核細胞または単純な真核細胞の増殖のための炭素の供給源としての使用に適切な基質または化合物を指す。炭素源は、限定はしないが、ポリマー、炭水化物(例えば、単糖類、二糖類、オリゴ糖類および多糖類などの糖類)、酸、アルコール、アルデヒド、ケトン、アミノ酸、ペプチドおよび気体(例えば、COおよびCO2)を含む様々な形態であってもよい。炭素源の例には、限定はしないが、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、キシロースおよびアラビノースなどの単糖類、スクロース、マルトース、セロビオースおよびツラノースなどの二糖類、フルクトオリゴ糖およびガラクトオリゴ糖などのオリゴ糖類、デンプン、セルロース、ペクチンおよびキシランなどの多糖類、ヘミセルロース、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース物質および変異体、飽和または不飽和脂肪酸、コハク酸、乳酸および酢酸、エタノール、メタノールおよびグリセロールなどのアルコールまたはそれらの混合物が含まれる。炭素源は、グルコースなどの光合成の生成物であってもよい。ある種の好ましい実施形態では、炭素源はバイオマスから得られる。別の好ましい実施形態では、炭素源にはスクロースが含まれる。別の好ましい実施形態では、炭素源にはグルコースが含まれる。
本明細書で使用される場合、「バイオマス」という用語は、炭素源が得られる任意の生物学的材料を指す。いくつかの実施形態では、バイオマスは生物変換に適した炭素源に処理される。他の実施形態では、バイオマスはさらに炭素源に処理する必要はない。炭素源は、バイオ燃料に変換することができる。バイオマス源の例は、トウモロコシ、サトウキビまたはアメリカクサキビなどの植物質または植生である。別のバイオマス源の例は、動物質などの代謝廃棄物(例えば、牛糞肥料)である。バイオマス源のさらなる例には、藻類および他の海洋性植物が含まれる。バイオマスにはまた、限定はしないが、発酵廃棄物、エンシレージ、ワラ、木材、下水、ゴミ、セルロース性都市廃棄物および残飯を含む工業、農業、林業および家庭からの廃棄物が含まれる。「バイオマス」という用語はまた、炭水化物(例えば、単糖類、二糖類または多糖類)などの炭素源を指す。
条件が生成物の生成またはポリペプチドの発現を可能にするために十分であるかどうかを決定するために、組換え微生物細胞を、例えば、約4、8、12、24、36、48、72時間またはそれ以上培養してもよい。培養中および/または後に、試料を採取し、その条件が生成または発現を可能にするかどうかを決定するために分析することができる。例えば、組換え微生物細胞が増殖した試料または培地中の組換え微生物細胞の所望する生成物の存在を試験することができる。奇数鎖脂肪酸誘導体(例えば、oc-脂肪酸、oc-脂肪エステル、oc-脂肪アルデヒド、oc-脂肪アルコールまたはec-炭化水素)などの所望する生成物の存在を試験するとき、限定はしないが、ガスクロマトグラフィー(GC)、質量分析(MS)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、液体クロマトグラフィー(LC)、水素炎イオン化検出器付きGC(GC-FID)、GC-MSおよびLC-MSなどのアッセイを使用することができる。ポリペプチドの発現を試験するとき、限定はしないが、ウェスタンブロットおよびドットブロットなどの技術を使用してもよい。
本明細書で使用される場合、「微生物」という用語は、古細菌、細菌および真核生物のドメインの原核および真核微生物種を意味し、後者には酵母および糸状菌、原生動物、藻類および高等原生動物が含まれる。「微生物(microbe)」および「微生物細胞(microbial cell)」(すなわち、微生物の細胞)は「微生物(microorganism)」と同義に使用され、顕微鏡を用いてのみ見ることができる細胞または小生物を指す。
いくつかの実施形態では、宿主細胞(例えば、親細胞)は微生物細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、エシェリキア(Escherichia)、バチルス、ラクトバチルス(Lactobacillus)、パンテア(Pantoea)、ザイモモナス(Zymomonas)、ロドコッカス(Rhodococcus)、シュードモナス(Pseudomonas)、アスペルギルス(Aspergillus)、トリコデルマ(Trichoderma)、ニューロスポラ(Neurospora)、フザリウム(Fusarium)、ヒューミコーラ(Humicola)、リゾムコール(Rhizomucor)、クリベロマイセス(Kluyveromyces)、ピキア(Pichia)、ムコール(Mucor)、ミセリオフトラ(Myceliophtora)、ペニシリウム(Penicillium)、ファネロカエテ(Phanerochaete)、プレウロタス(Pleurotus)、トラメテス(Trametes)、クリソスポリウム(Chrysosporium)、サッカロミセス(Saccharomyces)、ステノトロホモナス(Stenotrophamonas)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、ヤロウイア(Yarrowia)、ストレプトマイセス(Streptomyces)、シネココッカス(Synechococcus)、クロレラ(Chlorella)またはプロトテカ(Prototheca)属から選択される微生物細胞である。
他の実施形態では、宿主細胞は、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)細胞、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)細胞、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)細胞、バチルス・リケニフォフミス(Bacillus lichenoformis)細胞、バチルス・アルカロフィラス(Bacillus alkalophilus)細胞、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)細胞、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)細胞、バチルス・プミルス(Bacillus pumilis)細胞、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)細胞、バチルス・クラウジ(Bacillus
clausii)細胞、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)細胞、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)細胞またはバチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)細胞である。
他の実施形態では、宿主細胞は、トリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii)細胞、トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)細胞、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)細胞、トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)細胞、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)細胞、アスペルギルス・フミガータス(Aspergillus fumigates)細胞、アスペルギルス・フェチダス(Aspergillus foetidus)細胞、アスペルギルス・ニディランス(Aspergillus nidulans)細胞、アスペルギルス・ニガ-(Aspergillus niger)細胞、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)細胞、ヒューミコラ・インソレンス(Humicola insolens)細胞、ヒューミコラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginose)細胞、ロドコッカス・オパクス(Rhodococcus opacus)細胞、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)細胞またはムコール・ミエヘイ(Mucor michei)細胞である。
さらに他の実施形態では、宿主細胞はストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)細胞またはストレプトマイセス・ムリヌス(Streptomyces murinus)細胞である。
さらに他の実施形態では、宿主細胞はアクチノマイセス(Actinomycetes)細胞である。
いくつかの実施形態では、宿主細胞はサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)細胞である。
さらに他の実施形態では、宿主細胞は、CHO細胞、COS細胞、VERO細胞、BHK細胞、HeLa細胞、Cvl細胞、MDCK細胞、293細胞、3T3細胞またはPC12細胞である。
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、真核植物、藻類、ラン藻、緑色硫黄細菌、緑色非硫黄細菌、紅色硫黄細菌、紅色非硫黄細菌、好極限性細菌、酵母、真菌、それらの操作された生物または合成生物の細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は光依存性であるかまたは炭素を固定する。いくつかの実施形態では、宿主細胞は独立栄養活性を有する。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、光の存在下などにおいて光独立栄養活性を有する。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、光の非存在下において従属栄養性または混合栄養性である。
ある種の実施形態では、宿主細胞はアラビドプシス・タリアナ(Avabidopsis thaliana)、パニカム・ウィルガツム(Panicum virgatum)、ミスカンサス・ギガンテス(Miscanthus giganteus)、ジー・メイズ(Zea mays)、ボツリオコッカス・ブラウニー(Botryococcuse braunii)、クラミドモナス・レインハルディ(Chlamydomonas reinhardtii)、ドナリエナ・サリナ(Dunaliela salina)、シネココッカス種PCC7002、シネココッカス種PCC7942、シネコシスティス(Synechocystis)種PCC6803、サーモシネココッカス・エロンガタス(Thermosynechococcus elongates)BP-1、クロロビウム・テピダム(Chlorobium tepidum)、クロロフレクサス・オウランティアカス(Chlorojlexus auranticus)、クロマチウム・ビノサム(Chromatiumm vinosum)、ロドスピリラム・ラブラム(Rhodospirillum rubrum)、ロドバクター・カプスラータ(Rhodobacter capsulatus)、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palusris)、クロストリジウム・リュングダーリイ(Clostridium ljungdahlii)、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridiuthermocellum)、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロマイセス・セレビシエ、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas jluorescens)、パンテア・シトレア(Pantoea citrea)またはザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)の細胞である。ある種の実施形態では、宿主細胞は、クロレラ・フスカ(Chlorella fusca)、クロレラ・プロトセコイデス(Chlorella protothecoides)、クロレラ・ピレノイドサ(Chlorella pyrenoidosa)、クロレラ・ケスレリ(Chlorella kessleri)、クロレラ・ブルガリス(Chlorella vulgaris)、クロレラ・サッカロフィラ(Chlorella saccharophila)、クロレラ・ソロキニアナ(Chlorella sorokiniana)、クロレラ・エリプソイディア(Chlorella ellipsoidea)、プロトテカ・スタグノラ(Prototheca stagnora)、プロトテカ・ポロトリセンシズ(Prototheca portoricensis)、プロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)、プロトテカ・ウィッカハミイ(Prototheca wickerhamii)またはプロトテカ・ゾフィ(Prototheca zopfii)の細胞である。
いくつかの実施形態では、宿主細胞は細菌細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞はグラム陽性細菌細胞である。いくつかの実施形態では、宿主細胞はグラム陰性細菌細胞である。
いくつかの実施形態では、宿主細胞はE.コリ細胞である。いくつかの実施形態では、E.コリ細胞は、B株、C株、K株またはW株E.コリ細胞である。
本発明のある種の実施形態では、宿主細胞は輸送タンパク質を発現(または過剰発現)するために操作されている。輸送タンパク質は、ポリペプチドおよび有機化合物(例えば、脂肪酸またはそれらの誘導体)を宿主細胞の外に運び出すことができる。
本明細書で使用される場合、「代謝的に操作された」または「代謝操作」という用語は、例えば、本明細書で記載したような組換え微生物細胞などの組換え細胞におけるoc-β-ケトアシル-ACP、oc-アシル-ACPまたはoc-脂肪酸誘導体などの所望する代謝物を生成するための合理的な経路設計ならびに生合成遺伝子、オペロンに関連する遺伝子に対応するポリヌクレオチドおよびこのようなポリヌクレオチドの制御要素のアセンブリーを含む。「代謝操作」はさらに、所望する経路に導く中間体と競合する競合代謝経路の低下、破壊またはノックアウトを含む遺伝子操作および適切な培養条件を使用した転写、翻訳、タンパク質安定性およびタンパク質機能の調節および最適化による代謝流の最適化を含むことができる。「生合成遺伝子」は、宿主細胞にとって内在性(天然)であってもよく(すなわち、宿主細胞から改変されていない遺伝子)、あるいは宿主細胞にとって外来性であることによってかまたは組換え細胞における突然変異誘発、組換えおよび/または外来性(異種)発現制御配列との関連によって改変されることによって、宿主細胞にとって外来性(異種)であってもよい。生合成遺伝子は、「生合成ポリペプチド」または「生合成酵素」をコードする。
「生合成経路」という用語はまた「代謝経路」とも呼ばれ、1化学種を別の化学種に変換する生合成酵素によって触媒される一連の生化学反応を指す。本明細書で使用される場合、「脂肪酸生合成経路」(または、より簡単に、「脂肪酸経路」)という用語は、脂肪酸誘導体(例えば、脂肪酸、脂肪エステル、脂肪アルデヒド、脂肪アルコール、アルカン、アルケン、ケトンなど)を生成する一連の生化学反応を指す。脂肪酸経路には、本明細書で記載したように、脂肪酸誘導体を生成するために操作することができ、いくつかの実施形態では、所望する炭素鎖特性を有する脂肪酸誘導体を生成するためにさらなる酵素と一緒に発現することができる脂肪酸経路生合成酵素(すなわち、「脂肪酸経路酵素」)が含まれる。例えば、本明細書で記載した「奇数鎖脂肪酸生合成経路」(すなわち、「oc-FA経路」)には、oc-脂肪酸誘導体を生成するために十分な酵素が含まれる。
「組換え微生物細胞」という用語は、選択した「親微生物細胞」(すなわち、宿主細胞)に遺伝物質を導入し、それによって親微生物細胞の細胞生理機能および生化学的機能を改変または変化させることによって、遺伝的に改変した(すなわち、操作された)微生物細胞(すなわち、微生物)を指す。遺伝物質の導入によって、組換え微生物細胞は親微生物細胞と比較して新たな、または改善された特性、例えば、新たな細胞内代謝物または既存の細胞内代謝物をより多量に生成する能力などを獲得する。本明細書で提供する組換え微生物細胞は、例えば、適切な炭素源からoc-アシル-ACP中間体またはoc-脂肪酸誘導体を生成するための経路に関与する複数の生合成酵素(例えば、oc-FA経路酵素などの脂肪酸経路酵素)を発現する。親微生物細胞に導入された遺伝物質は、oc-脂肪酸誘導体の生成のための生合成経路(すなわち、生合成酵素)に関与する1種または複数の酵素をコードする遺伝子(複数可)または遺伝子の一部を含有していてもよく、代わりにまたはさらに、プロモーター配列などのこのような生合成酵素をコードする遺伝子の発現および/または発現の調節のためのさらなる要素を含んでいてもよい。したがって、本明細書で記載した組換え微生物細胞は、本明細書で記載したoc-脂肪酸(oc-FA)生合成経路に関与する生合成酵素を発現または過剰発現するように遺伝的に操作されている。
「組換え微生物細胞」および「組換え微生物」という用語は、特定の組換え微生物細胞/微生物を指すだけでなく、このような細胞の後代または可能性のある後代も指すことを理解されたい。
組換え微生物細胞は、親微生物細胞に導入された遺伝物質を含むことの代わりに、あるいは、それに加えて、親微生物細胞の細胞生理学的機能および生化学的機能を変化させる遺伝子またはポリヌクレオチドの低下、破壊、欠失または「ノックアウト」を含んでいてもよい。遺伝子またはポリヌクレオチドの低下、破壊、欠失または「ノックアウト」(遺伝子またはポリヌクレオチドの「減衰」としても知られている)があっても、組換え微生物細胞は、親微生物細胞と比較して新たなまたは改善された特性(例えば、新たな、またはより多量の細胞内代謝物を生成する能力、所望する経路による代謝物の流れを改善する能力、および/または望ましくない副生成物の生成を低下させる能力)を獲得する。
奇数鎖脂肪酸誘導体を生成するための組換え微生物細胞の操作
多くの微生物細胞は通常、直鎖状脂肪族鎖が主に偶数の炭素原子を含有する直鎖脂肪酸を生成し、奇数の炭素原子を含有する直鎖状脂肪族鎖を有する脂肪酸の生成量は一般的に比較的少ない。E.コリなどのこのような微生物細胞によって生成される直鎖状奇数鎖脂肪酸(oc-FA)および他の直鎖状奇数鎖脂肪酸誘導体(oc-FA誘導体)の量が比較的少ないのは、場合によってはこのような細胞中に存在するプロピオニル-CoAが低レベルなためであり得る。このような細胞は主に、脂肪酸生合成にプライマー分子としてアセチル-CoAを利用して脂肪酸の大部分をもたらし、このような細胞によって生成される他の脂肪酸誘導体は直鎖状偶数鎖脂肪酸(ec-FA)および他の直鎖状偶数鎖脂肪酸誘導体(ec-FA誘導体)である。
本発明は、親微生物によって生成されるプロピオニル-CoAと比較して増加した量のプロピオニル-CoAを生成するように微生物を操作することによって、操作された微生物が親微生物によって生成されるoc-FA誘導体の量と比較してより多量(力価)のoc-FA誘導体を生成し、かつ/または親微生物によって生成される脂肪酸誘導体組成物におけるoc-FA誘導体の割合と比較して高い割合のoc-FA誘導体を有する脂肪酸誘導体組成物を生成するという発見に一部基づいている。
最終的な目的は、工業規模での炭素源からの開始した(例えば、炭水化物またはバイオマスなど)、環境的に信頼のおける対費用効果の高い、oc-FA誘導体を含む脂肪酸誘導体の生成方法を実現することなので、微生物によって生成されるoc-FA誘導体分子の収量の改善および/または微生物によって生成される脂肪酸誘導体分子の組成の最適化(偶数鎖生成物に対する奇数鎖生成物の割合の増加などによって)が所望される。したがって、奇数鎖脂肪酸生成をもたらす経路を通る代謝流を増加させるために、様々な経路の中間体を過剰生成する戦略を検討した。糖などの開始物質からプロピオニル-CoAへ、奇数鎖アシル-ACP(oc-アシル-ACP)中間体を通り、oc-FA誘導体生成物への代謝流を目指す経路は、工業的に有用な微生物において操作することができる。
一態様では、本発明は、組換え微生物細胞を炭素源の存在下で、ポリヌクレオチドを発現するために有効な条件下で培養したとき、プロピオニル-CoAの生合成に関与する、および/またはoc-アシル-ACP中間体の生合成に関与する酵素活性を有するポリペプチド(例えば、酵素)をコードする1種または複数のポリヌクレオチドを含む組換え微生物細胞を含む。いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞はさらに、脂肪酸誘導体酵素活性を有するポリペプチドをそれぞれコードする1種または複数のポリヌクレオチドを含み、組換え微生物細胞は、炭素源の存在下で、ポリヌクレオチドを発現するために十分な条件下で培養したとき、奇数鎖脂肪酸誘導体を生成する。本発明はまた、本発明の組換え微生物細胞を培養することを含む奇数鎖長脂肪酸誘導体を含む組成物の作製方法を含む。本発明はまた、微生物細胞によって生成されるプロピオニル-CoAの量を増加させる方法および微生物細胞によって生成される奇数鎖脂肪酸誘導体の量または割合を増加させる方法およびさらなる検討によって明らかな他の特性を含む。
組換え微生物細胞は、糸状菌、藻類、酵母または細菌などの原核細胞(例えば、E.コリまたはバチルス種)であってもよい。
一般的に、奇数鎖脂肪酸誘導体[奇数鎖脂肪酸、奇数鎖脂肪エステル(奇数鎖脂肪酸メチルエステル(oc-FAME)、奇数鎖脂肪酸エチルエステル(oc-FAEE)および奇数鎖ワックスエステルを含む)、奇数鎖脂肪アルデヒド、奇数鎖脂肪アルコールおよび奇数鎖前駆体の脱カルボニル化もしくは脱カルボキシル化による、偶数鎖アルカン、偶数鎖アルケン、偶数鎖末端オレフィン、偶数鎖内部オレフィンおよび偶数鎖ケトンなどの偶数鎖炭化水素]は、本発明の組換え微生物細胞において図1Bで示した奇数鎖脂肪酸生合成経路(「oc-FA経路」)を介して生成することができる。
奇数鎖脂肪酸誘導体を生成するために、組換え微生物細胞は、脂肪アシル鎖伸長プロセスを開始するための「プライマー」としてプロピオニル-CoAを利用する。図1Bに示したように、脂肪アシル伸長プロセスは、最初に、図1Bの工程(D)に示したように、最初の奇数鎖β-ケトアシル-ACP中間体(例えば、3-オキソバレリル-ACP)を形成するために、β-ケトアシルACP合成酵素活性を有する酵素(例えば、β-ケトアシルACP合成酵素III酵素)によって触媒される奇数鎖長プライマー分子プロピオニル-CoAとマロニル-ACP分子の縮合を必要とする。奇数鎖β-ケトアシル-ACP中間体は、最初の奇数鎖アシル-ACP中間体を形成するために、脂肪酸合成酵素(FAS)複合体によってβ炭素でのケト還元、脱水およびエノイル還元を受け、図1Bの工程(E)に示したように、奇数炭素鎖長(「oc-アシル-ACP」)の増加したアシル-ACP中間体を形成するために、マロニル-ACPとの縮合、ケト還元、脱水およびエオニル還元のサイクルをさらに受けて、サイクル当たり2個の炭素単位を追加する。oc-アシル-ACP中間体は、図1Bの工程(F)に示したように、1種または複数の脂肪酸誘導体酵素と反応し、奇数鎖脂肪酸誘導体(oc-FA誘導体)生成物を生じる。これは、比較的低レベルのプロピオニル-CoAを生成する細胞(例えば、野生型E.コリ細胞など)におけるプロセスとは対照的である。このような細胞は、偶数の炭素原子を有する直鎖脂肪酸を主に生成し、奇数の炭素原子を有する直鎖脂肪酸は低量または微量である。図1Aに示したように、偶数鎖長プライマー分子アセチル-CoAは最初に、図1Aの工程(D)に示したように、偶数鎖β-ケトアシル-ACP中間体(例えば、アセトアセチル-ACP)を形成するためにマロニル-ACP分子と縮合し、今度は図1Aの工程(E)に示したように偶数炭素鎖長(「ec-アシル-ACP」)の増加したアシル-ACP中間体を形成するために、同様に、ケト還元、脱水、エオニル還元およびさらなるマロニル-ACP分子との縮合のFAS触媒サイクルを受け、同様にサイクル当たり2個の炭素単位を追加する。ec-アシル-ACP中間体は、図1Aの工程(F)に示したように、1種または複数の脂肪酸誘導体酵素と反応し、偶数鎖脂肪酸誘導体を生じる。
プロピオニル-CoA「プライマー」分子は、いくつかの方法によって本発明の組換え微生物細胞のoc-FA生合成経路に供給することができる。微生物細胞におけるプロピオニル-CoAの生成を増加させる方法には、限定しないが、以下が含まれる。
プロピオニル-CoAは、親微生物細胞の天然の生合成機構によって生成することができる(例えば、親微生物細胞に対して内在性の酵素によって)。親微生物細胞において生成されるプロピオニル-CoAの量の増加を所望するならば、プロピオニル-CoAの生成に寄与する親微生物細胞に対して内在性の1種または複数の酵素を組換え微生物細胞において過剰発現させることができる。
プロピオニル-CoAは、図2に示したように、中間体α-ケトブチレートを通る代謝流の進路を変える内在性酵素を過剰発現させる、および/または外来性酵素を発現させるように細胞を操作することによって生成することができる。このような経路の操作で使用するための非限定的な酵素の例を以下の表1および表2に挙げる。
プロピオニル-CoAは、図3に示したように、中間体メチルマロニル-CoAを通るスクシニル-CoAからの代謝流の進路を変える内在性酵素を過剰発現させる、および/または外来性酵素を発現させるように細胞を操作することによって生成することができる。このような経路の操作で使用するための非限定的な酵素の例を以下の表3に挙げる。
アプローチ例において、プロピオニル-CoAは、中間体マロン酸セミアルデヒドおよび3-ヒドロキシプロピオン酸を通るマロニル-CoAからの代謝流の進路を変える内在性酵素を過剰発現させる、および/または外来性酵素を発現させるように細胞を操作することによって生成することができる。このような経路の操作で使用するための非限定的な酵素の例は、例えば、米国特許出願公開第US20110201068A1号に挙げられている。
別のアプローチにおいて、プロピオニル-CoAは、中間体ラクトイル-CoAおよびアクリロイル-CoAを通るD-ラクテートからの代謝流の進路を変える内在性酵素を過剰発現させる、および/または外来性酵素を発現させるように細胞を操作することによって生成することができる。このような経路の操作で使用するための非限定的な酵素の例は、例えば、米国特許出願公開第US20110201068A1号に挙げられている。
前述のように、奇数鎖伸長プロセスの開始には、oc-β-ケトアシル-ACP中間体を形成するためにプロピオニル-CoAとマロニル-ACP分子との縮合が必要である。この工程は、図1Bの(D)部に表したように、組換え微生物細胞において、基質としてプロピオニル-CoAを利用するβ-ケトアシル-ACP合成酵素活性、好ましくはβ-ケトアシル-ACP合成酵素III活性を有する酵素によって(例えば、EC2.3.1.180)触媒される。酵素は、組換え微生物細胞にとって内在性であってもよく、または組換え微生物細胞にとって外来性であってもよい。
一実施形態では、基質としてプロピオニル-CoAを利用するβ-ケトアシル-ACP合成酵素活性を有する親微生物細胞にとって内在性のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、組換え微生物細胞において発現するか、または過剰発現する。別の実施形態では、親微生物細胞に対して外来性である、基質としてプロピオニル-CoAを利用するβ-ケトアシル-ACP合成酵素活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、組換え微生物細胞において発現する。
oc-FA経路(図1B)の工程(D)において生成されるoc-β-ケトアシル-ACP中間体は、例えば、II型FAS複合体などの脂肪酸合成酵素(FAS)複合体によって触媒されるベータ炭素でのケト還元、脱水およびエノイル還元、マロニル-ACP分子とのさらなる縮合の連続的サイクルによる伸長を受けることができ、それによって図1Bの工程(E)によって表されるoc-アシル-ACP中間体の長い奇数炭素鎖に2個の炭素単位が追加される。一実施形態では、組換え微生物細胞にとって天然な内在性FAS複合体は、マロニル-ACPとの縮合/ケト還元/脱水/エノイル還元のサイクルを触媒して、oc-アシル-ACP中間体を生成する。
奇数鎖脂肪酸誘導体(oc-脂肪酸、oc-脂肪エステル、oc-脂肪アルデヒド、oc-脂肪アルコール、ec-ケトンおよびec-炭化水素)は、以下に詳細を記載するように、oc-アシル-ACP中間体から生成することができる。したがって、いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞はさらに、それぞれ脂肪酸誘導体酵素活性を有するペプチドをコードする1種または複数のポリヌクレオチド配列、例えば、チオエステラーゼ(例えば、TesA)、デカルボキシラーゼ、カルボン酸レダクターゼ(CAR、例えば、CarA、CarBまたはFadD9)、アルコール脱水素酵素/アルデヒドレダクターゼ、アルデヒドデカルボニラーゼ(ADC)、脂肪アルコール形成アシル-CoAレダクターゼ(FAR)、アシルACPレダクターゼ(AAR)、エステル合成酵素、アシル-CoAレダクターゼ(ACR1)、OleA、OleCDまたはOleBCDを含み、組換え微生物細胞を炭素源の存在下でポリヌクレオチドを発現するために有効な条件下で培養したとき、微生物細胞は、oc-脂肪酸、oc-脂肪エステル(oc-脂肪酸メチルエステル、oc-脂肪酸エチルエステル、oc-ワックスエステルなど)oc-脂肪アルデヒド、oc-脂肪アルコール、ec-ケトンまたはec-炭化水素(ec-アルカン、ec-アルケン、ec-末端オレフィンまたはec-内部オレフィンなど)を含む組成物を生成する。本発明はまた、本発明の組換え微生物細胞を培養することを含むoc-脂肪酸誘導体の生成方法を含む。
増加した量のプロピオニル-CoAを生成させるための微生物細胞の操作
一態様では、本発明には、微生物細胞によって生成される奇数鎖脂肪酸誘導体の量を増加させる方法が含まれ、増加した量のプロピオニル-CoAを生成させるために親微生物細胞を操作することが含まれる。増加した量のプロピオニル-CoAを生成させるための親微生物細胞の操作は、例えば、(a)アスパルトキナーゼ活性、ホモセリン脱水素酵素、ホモセリンキナーゼ活性、スレオニン合成酵素活性およびスレオニンデアミナーゼ活性を有するポリペプチド、(b)(R)-シトラマル酸合成酵素活性、イソプロピルリンゴ酸イソメラーゼ活性およびベータ-イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素活性を有するポリペプチド、または(c)メチルマロニル-CoAムターゼ活性を有するポリペプチドならびにメチルマロニル-CoAデカルボキシラーゼ活性およびメチルマロニルカルボキシルトランスフェラーゼ活性を有する1種または複数のポリペプチドならびに適宜メチルマロニルエピメラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現するために細胞を操作することによって実現することができ、少なくとも1種のポリペプチドが組換え微生物細胞にとって外来性であるか、または少なくとも1種のポリヌクレオチドの発現が、親微生物細胞おけるポリヌクレオチドの発現と比較して組換え微生物細胞においてモジュレートされており、組換え微生物細胞は、炭素源の存在下でポリヌクレオチドを発現するために有効な条件下で培養したとき、同条件下で培養した親微生物細胞によって生成されるプロピオニル-CoAの量に対してより多量のプロピオニル-CoAを生成する。
いくつかの実施形態では、(a)によるポリヌクレオチドによってコードされる少なくとも1種のポリペプチドは、外来性ポリペプチドである(例えば、親微生物細胞以外の生物から生じるポリペプチドまたは親微生物細胞にとって天然のポリペプチドの変異体)。場合によって、(a)によるポリヌクレオチドによってコードされる少なくとも1種のポリペプチドは、内在性ポリペプチドであり(すなわち、親微生物細胞にとって天然のポリペプチド)、内在性ポリペプチドは組換え微生物細胞において過剰発現する。
いくつかの実施形態では、(b)によるポリヌクレオチドによってコードされる少なくとも1種のポリペプチドは、外来性ポリペプチドである。場合によって、(b)によるポリヌクレオチドによってコードされる少なくとも1種のポリペプチドは、内在性ポリペプチドであり、内在性ポリペプチドは組換え微生物細胞において過剰発現する。
いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞は、(a)による1種または複数のポリヌクレオチドおよび(b)による1種または複数のポリヌクレオチドを含む。場合によって、(a)または(b)によるポリヌクレオチドによってコードされる少なくとも1種のポリペプチドは、外来性ポリペプチドである。場合によって、(a)または(b)によるポリヌクレオチドによってコードされる少なくとも1種のポリペプチドは、内在性ポリペプチドであり、内在性ポリペプチドは組換え微生物細胞において過剰発現する。
いくつかの実施形態では、(c)によるポリヌクレオチドによってコードされる少なくとも1種のポリペプチドは、外来性ポリペプチドである。場合によって、(c)によるポリヌクレオチドによってコードされる少なくとも1種のポリペプチドは、内在性ポリペプチドであり、内在性ポリペプチドは組換え微生物細胞において過剰発現する。
親(例えば、非操作)微生物細胞と比較してプロピオニル-CoAを通る代謝流が増加した組換え微生物細胞を得るために親微生物細胞を操作することによって、操作された微生物細胞は、親微生物細胞によって生成されるoc-FA誘導体の量と比較してより多量(力価)のoc-FA誘導体を生成し、かつ/または親微生物細胞によって生成される脂肪酸誘導体組成物におけるoc-FA誘導体の割合と比較してより高い割合のoc-FA誘導体を有する脂肪酸誘導体組成物を生成する。
したがって、別の態様では、本発明は、微生物細胞によって生成される奇数鎖脂肪酸誘導体の量または割合を増加させる方法であって、同じ条件下で培養した親微生物細胞によって生成されるプロピオニル-CoAの量に対してより多量のプロピオニル-CoAを生成する、またはより多量を生成することができる組換え微生物細胞を得るために親微生物細胞を操作することを含み、組換え微生物細胞および親微生物細胞をそれぞれ炭素源の存在下で、組換え微生物細胞におけるプロピオニル-CoAのレベルを親微生物細胞と比較して増加させるために有効な同一の条件下で培養したとき、組換え微生物細胞の培養が親微生物細胞によって生成される奇数鎖脂肪酸誘導体の量または割合に対してより多量またはより高い割合の奇数鎖脂肪酸誘導体を生成する方法を含む。いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞は、以下により詳細に記載するような経路(a)、(b)および(c)の1種または複数によるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、少なくとも1種のコードされたポリペプチドが組換え微生物細胞にとって外来性であるか、または少なくとも1種のポリヌクレオチドの発現が親微生物細胞におけるポリヌクレオチドの発現と比較して組換え微生物細胞においてモジュレートされている。いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞は、脂肪酸誘導体酵素活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1種のポリペプチドを含む。いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞は、基質としてプロピオニル-CoAを利用するβ-ケトアシル-ACP合成酵素活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
組換え微生物細胞におけるプロピオニル-CoA生成の増加に有用な代謝経路の例を以下に記載する。組換え細胞においてプロピオニル-CoA生成を増加させるためのこれらの経路の例は、本発明の範囲を限定するものではなく、細胞におけるプロピオニル-CoA生成を増加させ、かつ/またはプロピオニル-CoA中間体を通る細胞における代謝流を増加させる任意の適切な代謝経路が本発明の組換え微生物細胞、組成物および方法で使用するために適切であることを理解されたい。プロピオニル-CoA生成を増加させ、かつ/またはプロピオニル-CoA中間体を通る代謝流を増加させる代謝経路は、したがって、本発明の組換え微生物細胞、組成物および方法における使用に適切である。
α-ケト酪酸中間体を介するプロピオニル-CoAの生成
様々なアミノ酸生合成経路の操作が、微生物細胞におけるそれらの様々なアミノ酸の生成を増加させるために示されてきた(Guillouet S., et al., Appl. Environ. Microbiol. 65:3100-3107 (1999); Lee K.H., et al., Mol. Syst. Biol.
3:149 (2007))。アミノ酸生合成経路が、E.コリにおける短鎖分枝アルコールの生成において使用されてきた(Atsumi S. and Liao J.C., Appl. Environ. Microbiol. 74(24): 7802-7808 (2008); Cann A.F. and Liao J.C., Appl Microbiol Biotechnol. 81(1):89-98(2008); Zhang K., et al., Proc. Natl. Acad. Sci.USA. 105(52):20653-20658(2008))。
ある種のアミノ酸生合成代謝物の流れの進路を中間体α-ケト酪酸(アルファ-ケト酪酸、2-ケト酪酸、2-ケトブタノエート、2-オキソ酪酸および2-オキソブタノエートとしても知られている)の生成に向けることによって、プロピオニル-CoA生成の増加が引き起こされる。したがって、一実施形態では、本発明は、組換え微生物細胞を炭素源の存在下で、ポリヌクレオチドを発現するために十分な条件下で培養したとき、炭素源(例えば、糖などの炭水化物)からα-ケト酪酸への変換に関与する1種または複数の酵素(すなわち、「oc-FA経路酵素」)をコードするポリヌクレオチドを含む組換え微生物細胞を含む。α-ケト酪酸分子は、oc-FA経路による直鎖状奇数鎖脂肪酸誘導体の生成におけるプライマーとして役立つプロピオニル-CoAの微生物生成における中間体である(図1B)。
ピルビン酸脱水素酵素複合体(PDC)は、細菌においてプロピオニル-CoAを生成するためにα-ケト酪酸の酸化的脱カルボキシル化を触媒する(Danchin, A.
et al., Mol. Gen. Genet. 193: 473 -478 (1984); Bisswanger, H., J. Biol .Chem. 256:815-822 (1981))。ピルビン酸脱水素酵素複合体は、3種類の活性:ピルビン酸デカルボキシラーゼ(E1)、ジヒドロリポイルトランスアセチラーゼ(E2)およびジヒドロリポイル脱水素酵素(E3)を含有する多酵素複合体である。ピルビン酸以外のα-ケト酸基質を利用する類似の触媒様式を使用する他の適切なケト酸脱水素酵素複合体も存在する。TCAサイクルα-ケトグルタル酸脱水素酵素複合体が一例である。一実施形態では、宿主細胞にとって内在性のピルビン酸脱水素酵素複合体(すなわち、親細胞にとって天然のピルビン酸脱水素酵素複合体)が、α-ケト酪酸からプロピオニル-CoAへの変換を触媒するために利用される。他の実施形態では、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ジヒドロリポイルトランスアセチラーゼおよび/またはジヒドロリポイル脱水素酵素活性を有する1種または複数のPDC複合体ポリペプチドをコードする遺伝子が、組換え微生物細胞において過剰発現する。α-ケト酪酸からプロピオニル-CoAへの変換を触媒する他の酵素または酵素複合体は、α-ケト酪酸からプロピオニル-CoAへの代謝流をさらに増加させるために組換え微生物細胞において発現または過剰発現することができる。
α-ケト酪酸からプロピオニル-CoAへの変換はまた、α-ケト酪酸からプロピオン酸への変換およびプロピオン酸からプロピオニル-CoAへの活性化によって実現することができる。α-ケト酪酸からプロピオン酸への変換は、poxB遺伝子によってコードされるE.コリピルビン酸オキシダーゼなどのピルビン酸オキシダーゼ(EC.1.2.3.3)によって触媒され得る(Grabau and Cronan, Nucleic Acids Res. 14(13): 5449-5460 (1986))。天然のE.コリPoxB酵素は、α-ケト酪酸およびピルビン酸と反応し、ピルビン酸に選択性を示すが、Chang and Cronan(Biochem J. 352:717-724 (2000))は、α-ケト酪酸に対して完全な活性を保持し、ピルビン酸に対する活性が低下しているPoxB突然変異体酵素について記載した。プロピオン酸からプロピオニル-CoAへの活性化は、アセチル-CoA合成酵素などのアシル-CoA合成酵素によって触媒することができる(Doi et al., J. Chem
Soc. 23: 1696 (1986))。酵母アセチル-CoA合成酵素は、プロピオン酸からプロピオニル-CoAへの活性化を触媒することが示された(Patel
and Walt, J. Biol. Chem. 262: 7132 (1987))。プロピオン酸はまた、酢酸キナーゼ(ackA)およびホスホトランスアセチラーゼ(pta)の作用によってプロピオニル-CoAに活性化され得る。
親微生物細胞に対して内在性の1種または複数の酵素は、組換え微生物細胞において操作されたoc-FA生合成経路の酵素と基質を競合することがあるか、または中間体(例えば、α-ケト酪酸)を分解するかそうでなければoc-FA生合成経路から進路を変えさせることがあり、このような望ましくない内在性酵素をコードする遺伝子は、組換え微生物細胞による奇数鎖脂肪酸誘導体の生成を増加させるために減衰させることができる。例えば、E.コリにおいて、AHAS I(例えば、ilvBN遺伝子によってコードされる)、AHAS II(例えば、ilvGM遺伝子によってコードされる)およびAHAS III(例えば、ilvIH遺伝子によってコードされる)などの内在性アセトヒドロキシ酸合成酵素(AHAS)複合体は、α-ケト酪酸からα-アセト-α-ヒドロキシ酪酸への変換を触媒し、したがって、代謝流の進路をプロピオニル-CoAから変えさせ、oc-FA生成を低下させることがある。したがって、1種または複数の内在性AHAS遺伝子の発現を欠如させるか、またはそうでなければ低下させることによって、組換え微生物細胞における生合成をよりプロピオニル-CoAに向かわせ、最終的により奇数鎖脂肪酸生成に向かわせることができる。oc-FA生合成経路酵素と競合し得る他の内在性酵素には、α-アセト-α-ヒドロキシ酪酸から2,3-ジヒドロキシ-3-メチル吉草酸への変換を触媒するアセトヒドロキシ酸イソメロレダクターゼ活性を備えた酵素(例えば、ilvC遺伝子によってコードされる)および2,3-ジヒドロキシ-3-メチル吉草酸から2-ケト-3-メチル吉草酸への変換を触媒するジヒドロキシ酸脱水酵素活性を備えた酵素(例えば、ilvD遺伝子によってコードされる)が含まれ、これらの遺伝子の1種または複数の発現を欠如させるかまたはそうでなければ低下させることによって、組換え微生物細胞における生合成をよりプロピオニル-CoAに向かわせ、最終的により奇数鎖脂肪酸生成に向かわせることができる。
以下の経路例のいずれかまたは両方は、一般的なα-ケト酪酸中間体を通る代謝流を増加させて、細胞内でのプロピオニル-CoA生成の増加を引き起こすために、組換え微生物細胞において操作することができる。これらの経路例を図2に示し、以下により詳細に記載する。
経路A(スレオニン中間体)
図2の経路(A)に表される一般的なα-ケト酪酸中間体を導く第1の経路には、スレオニン生合成酵素による中間体スレオニンの生成、それに続くスレオニン脱水酵素活性を備えた酵素によって触媒されるスレオニンからα-ケト酪酸への脱アミノ化が関与する。
経路(A)において、スレオニンへの代謝流の増加は、アスパラギン酸からアスパルチルリン酸への変換を触媒するアスパラギン酸キナーゼ活性(例えば、EC2.7.2.4;アスパルトキナーゼ活性とも称される)、アスパルチルリン酸からアスパラギン酸セミアルデヒドへの変換を触媒するアスパラギン酸-セミアルデヒド脱水素酵素活性(例えば、EC1.2.1.11)、アスパラギン酸セミアルデヒドからホモセリンへの変換を触媒するホモセリン脱水素酵素活性(例えば、EC1.1.1.3)、ホモセリンからO-ホスホ-L-ホモセリンへの変換を触媒するホモセリンキナーゼ活性(例えば、EC2.7.1.39)およびO-ホスホ-L-ホモセリンからスレオニンへの変換を触媒するスレオニン合成酵素活性(例えば、EC4.2.3.1)を有する酵素を含む、スレオニン生合成に関与する酵素をコードするポリヌクレオチドを発現することによって実現することができる。スレオニン中間体を通る代謝流を増加させるために、上記に挙げた活性全てが組換え微生物細胞において操作される必要はなく、場合によっては、親微生物細胞において既に存在する活性(例えば、親微生物細胞において天然の遺伝子によって生成される活性を有するポリペプチド)は上記に挙げた工程を触媒するために十分であろう。一実施形態では、組換え微生物細胞は、アスパラギン酸キナーゼ活性を有するポリペプチドであって、アスパラギン酸からアスパルチルリン酸への変換を触媒するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、アスパラギン酸セミアルデヒド脱水素酵素活性を有するポリペプチドであって、アスパルチルリン酸からアスパラギン酸セミアルデヒドへの変換を触媒するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ホモセリン脱水素酵素活性を有するポリペプチドであって、アスパラギン酸セミアルデヒドからホモセリンへの変換を触媒するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ホモセリンキナーゼ活性を有するポリペプチドであって、ホモセリンからO-ホスホ-L-ホモセリンの変換を触媒するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、スレオニン合成酵素活性を有するポリペプチドであって、O-ホスホ-L-ホモセリンからスレオニンへの変換を触媒するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドから選択される1種または複数のポリヌクレオチドを組換えによって発現するために操作され、組換え微生物細胞は、親微生物細胞と比較して経路中間体スレオニンを通る代謝流が増加している。場合によっては、組換えによって発現したポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドは、同じ条件下で培養したとき、親微生物細胞における濃度と比較してより高い濃度で組換え微生物細胞中に存在する、すなわち、このポリペプチドは組換え細胞において「過剰発現」する。例えば、組換え発現したポリヌクレオチドは、同じ条件下で培養したとき、親微生物細胞において通常発現するよりも高い濃度で組換え微生物細胞においてポリヌクレオチドを発現するプロモーターに操作可能に連結することができる。一実施形態では、アスパラギン酸キナーゼおよびホモセリン脱水素酵素活性を有する二官能性ThrAをコードするE.コリthrA遺伝子を使用する。別の実施形態では、アスパラギン酸キナーゼおよびホモセリン脱水素酵素活性を有し、親ThrA酵素に対してフィードバック阻害が低下した変異体酵素をコードする突然変異体E.コリthrA遺伝子を使用する(ThrA*と称する;Ogawa-Miyata,Y., et al., Biosci. Biotechnol. Biochem. 65:1149-1154 (2001); Lee J.-H., et al., J. Bacteriol. 185: 5442-5451 (2003))。
スレオニンは、スレオニンデアミナーゼ活性(例えば、EC4.3.1.19;スレオニンアンモニアリアーゼ活性としても知られており、以前はEC4.2.1.16、スレオニン脱水酵素として分類された)を有する酵素によってα-ケト酪酸に脱アミノ化することができる。一実施形態では、親微生物細胞に既に存在する(すなわち、内在性)スレオニンデアミナーゼ活性は、スレオニンからα-ケト酪酸への変換を触媒するために十分である。別の実施形態では、組換え微生物細胞は、スレオニンデアミナーゼ活性を有するポリペプチドであって、スレオニンからα-ケト酪酸への変換を触媒するポリペプチドを組換えによって発現するように操作する。いくつかの実施形態では、スレオニンデアミナーゼ活性を有するポリペプチドは組換え微生物細胞において過剰発現する。
経路(A)の操作に使用するための酵素およびこのような酵素をコードするポリヌクレオチドの非限定的な例を表1に挙げる。
例えば、上記のEC番号によって分類されるポリペプチドについては、いずれもワールドワイドウェブで利用可能な関連のあるデータベース[KEGGデータベース(東京大学)、PROTEINまたはGENEデータベース(Entrezデータベース;NCBI)、UNIPROTKBまたはENZYMEデータベース(ExPASy;スイスバイオインフォマティクス研究所)およびBRENDAデータベース(The Comprehensive Enzyme Information System;Technical University of Braunschweig)]を検索することによって、ポリペプチドをさらに同定することができる。例えば、アスパルトキナーゼポリペプチドはさらに、EC2.7.2.4に分類されたポリペプチドを検索することによって同定することができ、ホモセリン脱水素酵素ポリペプチドはさらに、EC1.1.1.3に分類されたポリペプチドを検索することによって同定することができ、ホモセリンキナーゼポリペプチドはさらに、EC2.7.1.39に分類されたポリペプチドを検索することによって同定することができ、スレオニン合成酵素ポリペプチドはさらに、EC4.2.3.1に分類されたポリペプチドを検索することによって同定することができ、スレオニンデアミナーゼポリペプチドはさらに、EC4.3.1.19に分類されたポリペプチドを検索することによって同定することができる。
いくつかの実施形態では、親脂肪酸経路ポリペプチド(例えば、表1で記載した、またはEC番号によってもしくはポリペプチドの例に対する相同性によって同定されたポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドは、上記の酵素活性(例えば、アスパルトキナーゼ活性、ホモセリン脱水素酵素活性、ホモセリンキナーゼ活性、スレオニン合成酵素活性、スレオニンデアミナーゼ活性)および親ポリペプチドの特性と比較して改善された特性を有する変異体ポリペプチドを生成する当技術分野で周知の方法を使用して改変され、この特性は、例えば、組換え微生物細胞を培養する条件下での触媒活性の増加または安定性の改善、細胞代謝物による、または培養培地成分などによる阻害の低下(例えば、フィードバック阻害の低下)などの操作する微生物細胞および/または経路により適合している。
経路B(シトラマル酸中間体)
図2の経路(B)に表されるように、一般的なα-ケト酪酸中間体を導く第2の経路には、シトラマル酸合成酵素活性を有する酵素を介した中間体シトラマル酸(2-メチルリンゴ酸としても知られている)の生成およびイソプロピルリンゴ酸イソメラーゼおよびアルコール脱水素酵素活性を有する酵素の作用によるシトラマル酸からα-ケト酪酸への変換が関与する。
アセチル-CoAとピルビン酸との反応を触媒して(R)-シトラマル酸を形成するシトラマル酸合成酵素活性(例えば、EC2.3.1.182)は、M.ヤンナスキイ(配列番号40)またはL.インテロガンス(配列番号42)のCimAなどのCimAポリペプチドをコードする、メタノコックス・ヤンナスキイ(Methanococcus jannaschi)またはレプトスピラ・インテロガンス(Leptospira interrogans)などの細菌のcimA遺伝子の発現によって供給することができる(Howell, D.M. et al., J. Bacteriol. 181(1):331-3 (1999); Xu, H., et al., J. Bacteriol. 186:5400-5409(2004))。あるいは、例えば、Atsumi S. and Liao J.C. (Appl. Environ. Microbiol. 74(24): 7802-7808 (2008))によって記載されたCimA変異体、好ましくはcimA3.7遺伝子によってコードされたCimA3.7変異体(配列番号41)などの組換え微生物細胞における触媒活性または安定性が改善された、および/またはフィードバック阻害が低下したCimA変異体をコードする改変されたcimA核酸配列を使用することができる。あるいは、レプトスピラ・インテロガンスCimA変異体(配列番号43)を使用することができる。まず(R)-シトラマル酸からシトラコン酸へ、次にベータ-メチル-D-リンゴ酸への変換を触媒するイソプロピルリンゴ酸イソメラーゼ活性(EC4.2.1.33、イソプロピルリンゴ酸脱水酵素とも称する)は、例えば、E.コリまたはB.ズブチリスleuCD遺伝子によってコードされるヘテロ二量体タンパク質の発現によってもたらすことができる。ベータ-メチル-D-リンゴ酸から2-ケト酪酸(すなわちα-ケト酪酸)への変換を触媒するアルコール脱水素酵素活性(EC1.1.1.85、ベータ-イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素)は、例えば、E.コリまたはB.ズブチリスleuB遺伝子または酵母leu2遺伝子の発現によってもたらすことができる。脂肪酸経路酵素およびoc-FA経路の経路(B)の操作に使用するためのこのような酵素をコードするポリヌクレオチドの非限定的な例を表2に挙げる。
例えば、上記のEC番号によって分類されるポリペプチドについては、いずれもワールドワイドウェブで利用可能な関連のあるデータベース[KEGGデータベース(東京大学)、PROTEINまたはGENEデータベース(Entrezデータベース;NCBI)、UNIPROTKBまたはENZYMEデータベース(ExPASy;スイスバイオインフォマティクス研究所)およびBRENDAデータベース(The Comprehensive Enzyme Information System;Technical University of Braunschweig)]を検索することによって、ポリペプチドをさらに同定することができる。例えば、(R)-シトラマル酸合成酵素ポリペプチドはさらに、EC2.3.1.182に分類されたポリペプチドを検索することによって同定することができ、イソプロピルリンゴ酸イソメラーゼポリペプチドはさらに、EC4.2.1.33に分類されたポリペプチドを検索することによって同定することができ、ベータ-イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素ポリペプチドはさらに、EC1.1.1.85に分類されたポリペプチドを検索することによって同定することができる。
いくつかの実施形態では、親脂肪酸経路ポリペプチド(例えば、表2で記載した、またはEC番号によってもしくはポリペプチドの例に対する相同性によって同定されたポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドは、上記の酵素活性(例えば、(R)-シトラマル酸合成酵素活性、イソプロピルリンゴ酸イソメラーゼ活性、ベータ-イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素活性)および親ポリペプチドの特性と比較して改善された特性を有する変異体ポリペプチドを生成する当技術分野で周知の方法を使用して改変され、この特性は、親ポリペプチドの特性と比較して、例えば、組換え微生物細胞を培養する条件下での触媒活性の増加または安定性の改善、細胞代謝物による、または培養培地成分などによる阻害の低下(例えば、フィードバック阻害の低下)などの操作する微生物細胞および/または経路により適合している。
メチルマロニル-CoAを介するプロピオニル-CoAの生成
経路C(メチルマロニル-CoA中間体)
以下の経路例は、メチルマロニル-CoA中間体を通る代謝流を増加させて、細胞内でのプロピオニル-CoA生成の増加を引き起こすために組換え微生物細胞において操作することができる。この経路例を図3に示し、以下により詳細に記載する。
代謝流をメチルマロニル-CoAに向けることによって、プロピオニル-CoA生成の増加を引き起こすことができる。したがって、一実施形態では、本発明は、組換え微生物細胞を炭素源の存在下で、ポリヌクレオチドを発現するために十分な条件下で培養したとき、炭素源(例えば、糖などの炭水化物)からスクシニル-CoAおよびメチルマロニル-CoAへの変換に関与するものをコードするポリヌクレオチドを含む組換え微生物細胞を含む。スクシニル-CoAおよびメチルマロニル-CoAは、oc-FA経路による直鎖状奇数鎖脂肪酸誘導体の生成におけるプライマーとして役立つプロピオニル-CoAの微生物生成における中間体である(図1B)。
図3に示したようなプロピオニル-CoAに導く経路(本明細書では「経路(C)」とも称する)には、メチルマロニル-CoAムターゼ活性を有する酵素を介したスクシニル-CoAからメチルマロニル-CoAへの変換ならびにメチルマロニル-CoAデカルボキシラーゼ活性を有する酵素の作用および/またはメチルマロニル-CoAカルボキシルトランスフェラーゼ活性を有する酵素の作用によるメチルマロニル-CoAからプロピオニル-CoAへの変換が関与する。場合によっては、使用した特定のメチルマロニル-CoAデカルボキシラーゼまたはメチルマロニル-CoAカルボキシルトランスフェラーゼによって利用されるメチルマロニル-CoAの立体異性体に応じて、メチルマロニル-CoAエピメラーゼ活性を有する酵素は、(R)-および(S)-メチルマロニル-CoAを相互変換するために利用してもよい。
スクシニル-CoAは、細胞TCAサイクルによってこの経路に提供することができる。場合によっては、フマル酸からコハク酸への流れは、例えば、内在性frd(フマル酸レダクターゼ)またはコハク酸もしくはスクシニル-CoAの生成に関与する他の遺伝子(複数可)の過剰発現によって増加し得る。スクシニル-CoAからメチルマロニル-CoAへの変換は、メチルマロニル-CoAムターゼ活性(例えば、EC5.4.99.2)を有する酵素によって触媒され得る。このような活性は、外来性scpA(sbmとしても知られている)遺伝子の発現によって、または内在性scpA遺伝子の過剰発現によって、組換え微生物細胞に供給することができる。sbm遺伝子の一例は、メチルマロニル-CoAムターゼ活性を有するSbmポリペプチド(受託番号NP_417392、配列番号51)をコードするE.コリの遺伝子を含む(Haller, T. et al., Biochemistry 39:4622-4629 (2000))。あるいは、例えば、α-サブユニットまたは「大サブユニット」(MutB、受託番号YP_003687736)およびベータ-サブユニットまたは「小サブユニット」(MutA、受託番号CAA33089)を含むプロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ亜種シャーマニ(Propionibacterium freundenreichii subsp.shermanii)のメチルマロニル-CoAムターゼを使用することができる。スクシニル-CoAからメチルマロニル-CoAへの変換を触媒するポリペプチドの非限定的例を以下の表3に挙げる。
一実施形態では、メチルマロニル-CoAからプロピオニル-CoAへの変換は、メチルマロニル-CoAのプロピオニル-CoAへの脱カルボキシル化を触媒するメチルマロニル-CoAデカルボキシラーゼ活性(例えば、EC4.1.1.41)を有するポリペプチドによって触媒され得る。このような活性は、外来性scpB(ygfGとしても知られている)遺伝子の発現によって、または内在性scpB遺伝子の過剰発現によって、組換え微生物細胞に供給することができる。メチルマロニル-CoAデカルボキシラーゼポリペプチドの例には、例えば、E.コリscpB遺伝子によってコードされるメチルマロニル-CoAデカルボキシラーゼポリペプチド(Haller et al.、上記)またはサルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)もしくはエルシニア・エンテロコリティカ(Yersinia enterocolitica)によってコードされるメチルマロニル-CoAデカルボキシラーゼポリペプチドが含まれる。別の実施形態では、メチルマロニル-CoAからプロピオニル-CoAへの変換は、例えば、P.フロイデンライヒ亜種シャーマニ(mmdA、NBCI受託番号Q8GBW6.3)のメチルマロニル-CoAカルボキシルトランスフェラーゼなどのメチルマロニル-CoAカルボキシルトランスフェラーゼ活性(例えば、EC2.1.3.1)を有するポリペプチドによって触媒され得る。メチルマロニル-CoAデカルボキシラーゼによって、またはメチルマロニル-CoAカルボキシルトランスフェラーゼによって利用されるメチルマロニル-CoAの立体異性体に応じて、例えば、バチルス・ズブチリス(yqjC;Haller et al., Biochemistry 39:4622-4629 (2000))またはプロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ亜種シャーマニ(NCBI受託番号YP_003688018)のメチルマロニル-CoAエピメラーゼなどのメチルマロニル-CoAエピメラーゼ活性(例えば、EC5.1.99.1)を有するポリペプチドによって触媒され得る(R)-メチルマロニル-CoAと(S)-メチルマロニル-CoAとの間の変換が所望されることがある。
親微生物細胞に対して内在性の1種または複数の酵素は、組換え微生物細胞において操作されたoc-FA生合成経路の酵素と基質を競合することがあるか、または中間体を分解するかそうでなければoc-FA生合成経路から進路を変えさせることがあり、このような望ましくない内在性酵素をコードする遺伝子は、組換え微生物細胞による奇数鎖脂肪酸誘導体の生成を増加させるために減衰させることができる。例えば、E.コリにおいて、E.コリscpC(ygfHとしても知られている)遺伝子によってコードされる内在性プロピオニル-CoA:スクシニル-CoAトランスフェラーゼ(NCBI受託番号NP_417395)は、プロピオニル-CoAからスクシニル-CoAへの変換を触媒し、したがって、プロピオニル-CoAからの代謝流の進路を変え、oc-FA生成を低下させ得る。したがって、scpC(ygfH)遺伝子の発現を欠如させるか、そうでなければ低下させることは、組換え微生物細胞における生合成をよりプロピオニル-CoAに向かわせ、最終的により奇数鎖脂肪酸生成に向かわせることができる。
oc-FA経路の経路(C)の操作に使用するための脂肪酸経路酵素およびスクシニル-CoAからメチルマロニル-CoAへの変換およびメチルマロニル-CoAからプロピオニル-CoAへの変換を触媒するこのような酵素をコードするポリヌクレオチドの非限定的な例を表3に挙げる。
例えば、上記のEC番号によって分類されるポリペプチドについては、いずれもワールドワイドウェブで利用可能な関連のあるデータベース[KEGGデータベース(東京大学)、PROTEINまたはGENEデータベース(Entrezデータベース;NCBI)、UNIPROTKBまたはENZYMEデータベース(ExPASy;スイスバイオインフォマティクス研究所)およびBRENDAデータベース(The Comprehensive Enzyme Information System;Technical University of Braunschweig)]を検索することによって、ポリペプチドをさらに同定することができる。例えば、メチルマロニル-CoAムターゼポリペプチドはさらに、EC5.4.99.2に分類されたポリペプチドを検索することによって同定することができ、メチルマロニル-CoAデカルボキシラーゼポリペプチドはさらに、EC4.1.1.41に分類されたポリペプチドを検索することによって同定することができ、メチルマロニル-CoAカルボキシルトランスフェラーゼポリペプチドはさらに、EC2.1.3.1に分類されたポリペプチドを検索することによって同定することができ、メチルマロニル-CoAエピメラーゼポリペプチドはさらに、EC5.1.99.1に分類されたポリペプチドを検索することによって同定することができる。
いくつかの実施形態では、親脂肪酸経路ポリペプチド(例えば、表3で記載した、またはEC番号によってもしくはポリペプチドの例に対する相同性によって同定されたポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドは、上記の酵素活性(例えば、メチルマロニル-CoAムターゼ活性、メチルマロニル-CoAデカルボキシラーゼ活性、メチルマロニル-CoAエピメラーゼ活性、メチルマロニル-CoAカルボキシルトランスフェラーゼ活性)および親ポリペプチドの特性と比較して改善された特性を有する変異体ポリペプチドを生成する当技術分野で周知の方法を使用して改変され、この特性は、例えば、組換え微生物細胞を培養する条件下での触媒活性の増加または安定性の改善、細胞代謝物による、または培養培地成分などによる阻害の低下(例えば、フィードバック阻害の低下)などの操作する微生物細胞および/または経路により適合している。
oc-FA誘導体の増加した量を生成させるための微生物細胞の操作
プロピオニル-CoAからoc-β-ケトアシル-ACP
前述したように、プロピオニル-CoAは、oc-FA誘導体の生成におけるその後のFAS触媒伸長工程のプライマーとして役立つ。このプロセスの開始には、oc-β-ケトアシル-ACP中間体3-オキソバレリル-ACPを形成するためにプロピオニル-CoAとマロニル-ACP分子との縮合が必要である(図1B)。この開始工程は、図1Bの工程(D)に表されるように、組換え微生物細胞において、基質としてプロピオニル-CoAを利用するβ-ケトアシル-ACP合成酵素活性を有する酵素[例えば、III型β-ケトアシル-ACP合成酵素(例えば、EC2.3.1.180)]によって触媒される。
特定の微生物のβ-ケトアシル-ACP合成酵素の基質特異性は、その微生物の脂肪酸組成物を反映することが多い(Han, L., et al., J. Bacteriol. 180:4481-4486 (1998); Qui, X., et al., Protein Sci. 14:2087-2094 (2005))。例えば、E.コリFabH酵素は、プロピオニル-CoAおよびアセチル-CoAを利用するが、高い割合で直鎖状偶数鎖脂肪酸を生成することを反映してアセチル-CoAに対して非常に高い選択性を有し(Choi, K.H., et al., J. Bacteriology 182:365-370 (2000); Qui, et al.,
上記)、一方、ストレプトコッカス・ニューモネア(Streptococcus pneumoniae)の酵素は、様々な直鎖状および分枝鎖脂肪酸を生成することを反映して、炭素の長さが2個と4個の間の短い直鎖アシル-CoAプライマーならびに様々な分枝鎖アシル-CoAプライマーを利用する(Khandekar S.S., et al., J. Biol. Chem. 276:30024-30030 (2001))。基質としてプロピオニル-CoAを利用するβ-ケトアシル-ACP合成酵素活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は一般的に、広範なアシル-CoA基質特異性を備えたβ-ケトアシル-ACP合成酵素を含有する微生物細胞から得ることができる。基質特異性の広いβ-ケトアシル-ACP合成酵素源は、例えば、バチルス(例えば、B.ズブチリス)、リステリア(Listeria)[例えば、L.モノサイトゲネス(L.monocytogenes)]、ストレプトマイセス[例えば、S.コエリカラー(S.coelicolor)]およびプロピオニバクテリウム(例えば、P.フロイデンライヒ亜種シャーマニ)などの分枝鎖脂肪酸を含む様々な脂肪酸構造物を生成する細菌を含むことができる。特に好ましいβ-ケトアシル-ACP合成酵素には、内在性FabHによって示されるよりもプロピオニル-CoA対アセチル-CoAにより選択性を有するものが含まれる。例えば、E.コリ細胞を操作するとき、好ましいβ-ケトアシル-ACP合成酵素は、限定はしないが、B.ズブチリスFabH1(Choi
et al. 2000、上記)、ストレプトマイセス・グラウセンス(Streptomyces glauscens)FabH(Han, L., et al., J. Bacteriol. 180:4481-4486 (1998))、ストレプトコッカス・ニューモネアFabH(Khandekar S.S., et al., J. Biol. Chem. 276:30024-30030 (2001)およびスタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)FabH(Qui, X. et al., Protein Sci. 14:2087-2094 (2005))を含むことができる。
1種または複数の内在性の酵素は、組換え微生物細胞において操作されたoc-FA生合成経路の酵素と基質を競合することがあるか、またはoc-FA経路中間体を分解するかそうでなければoc-FA生成から代謝流の進路を変えさせることがあり、このような望ましくない内在性酵素をコードする遺伝子は、組換え微生物細胞によるoc-FA誘導体の生成を増加させるために減衰させることができる。例えば、E.コリの内在性fabHがコードするβ-ケトアシル-ACP合成酵素は、基質としてプロピオニル-CoAを利用するが、3炭素プロピオニル-CoA分子よりも2炭素アセチル-CoA分子に対してより選択性を有する(Choi et al. 2000、上記)。したがって、E.コリfabH遺伝子を発現する細胞は、脂肪酸合成のプライマーとして選択的にアセチル-CoAを利用し、インビボにおいて偶数鎖脂肪酸分子を主に生成する。内在性fabH遺伝子の発現を欠如させるかそうでなければ低下させ、内在性FabHによって示されるよりもプロピオニル-CoAにより選択性を有するβ-ケトアシル-ACP合成酵素をコードする外来性遺伝子を発現することによって(例えば、E.コリを操作するとき、内在性E.コリFabHを、B.ズブチリスFabH1またはアセチル-CoAよりプロピオニル-CoAに対して、E.コリFabHによって示されるよりも高い選択性を有する代わりの外来性FabHで置換する)、組換え微生物細胞における代謝流をよりoc-β-ケトアシル-ACP中間体に、最終的にはよりoc-FA誘導体の生成に向けることができる。
脂肪酸経路酵素およびoc-FA経路の工程Dの操作に使用するためのこのような酵素をコードするポリヌクレオチドの非限定的な例を表4に挙げる。
β-ケトアシル-ACP合成酵素ポリペプチドは、例えば、EC2.3.1.180に分類されるポリペプチドについて、いずれもワールドワイドウェブで利用可能である関連のあるデータベース[KEGGデータベース(東京大学)、PROTEINまたはGENEデータベース(Entrezデータベース;NCBI)、UNIPROTKBまたはENZYMEデータベース(ExPASy;スイスバイオインフォマティクス研究所)およびBRENDAデータベース(The Comprehensive Enzyme Information System;Technical University of Braunschweig)]を検索することによって、さらに同定することができる。
β-ケトアシル-ACP合成酵素ポリペプチドはまた、以下に挙げた配列モチーフの1種または複数を含むポリペプチドについて、Prositeデータベース(ExPASyプロテオミクスサーバー、スイスバイオインフォマティクス研究所)などの配列パターンデータベースを検索することによってさらに同定することができる。これは、例えば、ExPaSyプロテオミクスサーバーのワールドワイドウェブサイトで利用可能なScanPrositeツールを使用することによって容易に実現される。
一実施形態では、β-ケトアシル-ACP合成酵素ポリペプチドは、以下から選択される1種または複数の配列モチーフを含み、
D-T-[N,S]D-[A,E]-W-I-x(2)-[M,R]-T-G-I-x-[N,E]-R-[R,H] (配列番号14)
[S,A]-x-D-x(2)-A-[A,V]-C-[A,S]-G-F-x(3)-[M,L]-x(2)-A (配列番号15)
D-R-x-T-[A,I]-[I,V]-x-F-[A,G]-D-G-A-[A,G]-[G,A]-[A,V] (配列番号16)
H-Q-A-N-x-R-I-[M,L] (配列番号17)
G-N-T-[G,S]-A-A-S-[V,I]-P-x(2)-[I,L]-x(6)-G (配列番号18)
[I,V]-x-L-x(2)-F-G-G-G-[L,F]-[T,S]-W-G (配列番号19)
括弧のそれぞれのアミノ酸残基は特定の位置の代替アミノ酸残基を示し、各xは任意のアミノ酸残基を示し、「x(n)」中の各nは連続した一連のアミノ酸残基におけるx残基の数を示す。
いくつかの実施形態では、親脂肪酸経路ポリペプチド(例えば、表4で記載した、またはEC番号もしくはモチーフもしくはポリペプチドの例に対する相同性によって同定されたポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドは、β-ケトアシル-ACP合成酵素活性および親ポリペプチドの特性と比較して改善された特性を有する変異体ポリペプチドを生成するために当技術分野で周知の方法を使用して改変され、この特性は、例えば、触媒活性の増加および/またはプロピオニル-CoAに対する特異性の増加(例えば、アセチル-CoAと比較して)、組換え微生物細胞を培養する条件下での触媒活性の改善または安定性の改善、細胞代謝物による、または培養培地成分などによる阻害の低下(例えば、フィードバック阻害の低下)などの操作する微生物および/または経路により適合している。
本発明は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組換え微生物細胞であって、前記ポリペプチドが配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、146、147、148および149の1つに対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するポリペプチド配列を含み、ポリペプチドが、基質としてプロピオニル-CoAを利用するβ-ケトアシル-ACP合成酵素活性を有する組換え微生物細胞を含む。場合によっては、ポリペプチド配列は、配列番号14~19から選択される1種または複数の配列モチーフを含む。本発明はまた、前記ポリペプチド配列を含む単離されたポリペプチドおよび前記ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを含む。一実施形態では、ポリペプチドは、W310位またはそれと同等の位置に置換を含む。一実施形態では、ポリペプチドはW310G置換を含む。一実施形態では、ポリペプチドは、配列番号7に対して少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有する配列を含み、置換W310Gを含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、アセチル-CoAよりもプロピオニル-CoAに対してより高い特異性を示す。
本明細書で使用される場合、「基質としてプロピオニル-CoAを利用するβ-ケトアシル-ACP合成酵素活性を有するポリペプチド」には、基質プロピオニル-CoAを供給したとき検出可能なレベルのβ-ケトアシル-ACP合成酵素活性を有するいかなるポリペプチドも含まれる。
β-ケトアシル-ACP合成酵素のプロピオニル-CoAなどの基質に対する酵素活性および特異性は、公知の方法を使用して測定することができる。例えば、Choi et
al. (J. Bacteriology 182(2):365-370 (2000))は、アセチル-CoA基質に対するβ-ケトアシル-ACP合成酵素(「FabH」)活性を測定するために適切なフィルターディスクアッセイ(filtered disc assay)について詳細に記載しており、このアッセイは基質としてプロピオニル-CoAをアッセイするために改変することができる。アッセイは、最終容量40μL中ACP 25μM、β-メルカプトエタノール1mM、マロニル-CoA 65μM、[1-14C]アセチル-CoA 45μM(比放射能約45.8Ci/mol)、E.コリFadD(0.2μg)および0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)を含有する。β-ケトアシル-ACP合成酵素活性をアッセイするために、[1-14C]アセチル-CoAは14C標識プロピオニル-CoAで置換することができる。反応は、FabHを添加することによって開始し、混合物は37℃で12分間インキュベートする。次に、一定量35mLを取り出し、Whatman3MMフィルターディスクに沈着させる。次に氷冷トリクロロ酢酸を3回交換してこのディスクを洗浄する(それぞれ20mL/ディスクで20分間)。次に、連続洗浄それぞれにおいて、トリクロロ酢酸の濃度は10%から5%、さらに1%に低下させる。フィルターを乾燥させ、シンチレーションカクテル3mL中でカウントする。
あるいは、FabH活性は、生成物を分離し定量するために放射活性標識したマロニル-CoA基質およびゲル電気泳動を使用して測定することができる(Choi et al. 2000、上記)。アッセイ混合物は、最終容量40μL中ACP 25μM、β-メルカプトエタノール 1mM、[2-14C]マロニル-CoA 70μM(比放射能約9Ci/mol)、CoA基質(例えば、アセチル-CoAまたはプロピオニル-CoA)45μL、FadD(0.2μg)、NADPH 100μM、FabG(0.2μg)および0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)を含有する。反応は、FAbHを添加することによって開始することができる。混合物を37℃で12分間インキュベートし、その後氷スラリー中に置き、次いでゲルロ-ディング緩衝液を添加し、混合物は、尿素0.5Mから2.0Mを含有する立体構造感受性13%ポリアクリルアミドゲルにロードする。電気泳動は25℃において32mA/ゲルで実施することができる。その後、ゲルを乾燥させ、バンドはゲルをホスホイメージャースクリーン(PhosphoImager screen)に暴露させて定量する。比放射能は、アッセイ中における生成物形成対FabHタンパク質濃度のプロットの勾配から算出することができる。
oc-β-ケトアシル-ACPからoc-アシル-ACP
図1Bの工程(E)に示されるように、工程(D)において生成するoc-β-ケトアシル-ACP中間体3-オキソバレリル-ACPは、例えば、II型脂肪酸合成酵素複合体などの脂肪酸合成酵素(FAS)複合体によって触媒されるマロニル-ACPとの縮合/ケト還元/脱水/エノイル還元の連続的サイクルによる伸長を受けることができ、それによって得られたoc-アシル-ACPの長い脂肪酸鎖に2個の炭素単位が追加される。一実施形態では、微生物細胞にとって内在性のFAS酵素複合体(例えば、II型FAS複合体など)は、oc-アシル-ACP中間体を生成するためのマロニル-ACPとの縮合/ケト還元/脱水/エノイル還元のサイクルを触媒するために使用される。
oc-アシル-ACPからoc-FA誘導体
奇数鎖脂肪酸誘導体は、本発明の組換え微生物細胞によって生成することができる。図1Bの工程(F)に示したように、oc-アシル-ACP中間体は、それぞれが脂肪酸誘導体化活性を有する1種または複数の酵素(すなわち、脂肪酸誘導体酵素)によって触媒される反応においてoc-FA誘導体に変換される。脂肪酸誘導体酵素は、例えば、oc-アシル-ACPを最初のoc-FA誘導体に変換するか、または最初のoc-FA誘導体を第2のoc-FA誘導体に変換することができる。場合によっては、最初のoc-FA誘導体は、異なる脂肪酸誘導体化活性を有する酵素によって第2のoc-FA誘導体に変換される。場合によっては、第2のoc-FA誘導体はさらに、別の脂肪酸誘導体酵素によって第3のoc-FA誘導体に変換されるなどとなる。
したがって、いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞はさらに、1種または複数のポリヌクレオチドを含み、それぞれのポリヌクレオチドは脂肪酸誘導体酵素活性を有するポリペプチドをコードし、組換え微生物細胞は、炭素源の存在下で、ポリヌクレオチドを発現するために有効な条件下で培養したとき、oc-FA誘導体を生成する。
様々な実施形態では、脂肪酸誘導体化活性には、組換え微生物細胞がoc-脂肪酸を生成するチオエステラーゼ活性、組換え微生物細胞がoc-脂肪エステルを生成するエステル合成酵素活性、組換え微生物細胞がoc-脂肪アルデヒドを生成する脂肪アルデヒド生合成活性、組換え微生物細胞がoc-脂肪アルコールを生成する脂肪アルコール生合成活性、組換え微生物細胞がec-ケトンを生成するケトン生合成活性または組換え微生物細胞がec-炭化水素を生成する炭化水素生合成活性が含まれる。いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞は、2種以上のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、各ポリペプチドが脂肪酸誘導体酵素活性を有するポリヌクレオチドを含む。
さらに特定の実施形態では、組換え微生物細胞は、前述したような脂肪酸誘導体酵素活性を有する1種または複数のポリペプチドを発現または過剰発現し、組換え微生物細胞はoc-脂肪酸、oc-脂肪エステル、oc-ワックスエステル、oc-脂肪アルデヒド、oc-脂肪アルコール、ec-ケトン、ec-アルカン、ec-アルカン、ec-内部オレフィンまたはec-末端オレフィンを含むoc-FA組成物を生成する。
以下は、本発明の様々な実施形態による、脂肪酸誘導体酵素およびこのような酵素によって触媒される反応によって生成するoc-FA誘導体のさらなる例である。
oc-脂肪酸
一実施形態では、組換え微生物細胞には、チオエステラーゼをコードするポリヌクレオチドが含まれ、組換え微生物細胞によって生成されるoc-アシル-ACP中間体はチオエステラーゼ(例えば、3.1.1.5、EC3.1.2.-、例えば、EC3.1.2.14など)によって加水分解され、oc-脂肪酸の生成をもたらす。いくつかの実施形態では、oc-脂肪酸を含む脂肪酸を含む組成物(本明細書では「脂肪酸組成物」とも称する)は、炭素源の存在下で、ポリヌクレオチドを発現するために有効な条件下で組換え細胞を培養することによって生成される。いくつかの実施形態では、脂肪酸組成物には、oc-脂肪酸およびec-脂肪酸が含まれる。いくつかの実施形態では、組成物は細胞培養物から回収する。
いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞は、チオエステラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドおよび他の脂肪酸誘導体酵素活性を有するポリペプチドをコードする1種または複数のさらなるポリヌクレオチドを含む。このような場合には、チオエステラーゼの作用によって生成するoc-脂肪酸は、様々な脂肪酸誘導体酵素活性を有する1種または複数の酵素によって、例えば、oc-脂肪エステル、oc-脂肪アルデヒド、oc-脂肪アルコールまたはec-炭化水素などの別のoc-脂肪酸誘導体に変換される。
一実施形態では、oc-アシル-ACP中間体はチオエステラーゼと反応してoc-脂肪酸を形成する。oc-脂肪酸は、細胞培養物から回収することができるか、またはoc-脂肪エステル、oc-脂肪アルデヒド、oc-脂肪アルコールまたはec-末端オレフィンなどの別のoc-FA誘導体にさらに変換することができる。
脂肪酸またはそれらから作製される脂肪酸誘導体の鎖長は、ある種のチオエステラーゼの発現を改変することによって選択することができる。チオエステラーゼは、生成した脂肪酸の鎖長ならびにそれらから作製された誘導体の鎖長に影響を及ぼす。したがって、組換え微生物細胞は、好ましい脂肪酸または脂肪酸誘導体化基質の生成を増加させるために、1種または複数の選択されるチオエステルを発現、過剰発現するように、発現が減衰するように、または発現しないように操作することができる。例えば、C10脂肪酸は、C10脂肪酸の生成を選択するチオエステラーゼを発現させ、およびC10脂肪酸以外の脂肪酸の生成を選択するチオエステラーゼ(例えば、C14脂肪酸の生成を好むチオエステラーゼ)を減衰することによって生成することができる。これは、炭素鎖長10個を有する脂肪酸の比較的均一な集団をもたらす。他の場合、C14脂肪酸は非C14脂肪酸を生成する内在性チオエステラーゼを減衰させ、C14-ACPを使用するチオエステラーゼを発現することによって生成することができる。場合によっては、C12脂肪酸は、C12-ACPを使用するチオエステラーゼを発現し、非C12脂肪酸を生成するチオエステラーゼを減衰することによって生成することができる。脂肪酸過剰生成は、当技術分野で公知の方法、例えば、細胞溶解後の放射活性前駆体、HPLCまたはGC-MSの使用によって検証することができる。
oc-脂肪酸経路で使用するためのチオエステラーゼおよびそれらをコードするポリヌクレオチドのさらなる非限定的例を表5および参照により本明細書に組み込まれるPCT公開番号WO2010/075483号に挙げる。
oc-脂肪エステル
一実施形態では、組換え微生物細胞は例えば、oc-脂肪酸メチルエステルまたはoc-脂肪酸エチルエステルまたはoc-ワックスエステルなどのoc-脂肪エステルを生成する。いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞によって生成されるoc-脂肪酸は、oc-脂肪エステルに変換される。
いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞は、エステル合成酵素活性(本明細書では「エステル合成酵素ポリペプチド」または「エステル合成酵素」とも称する)を有するポリペプチド(すなわち、酵素)をコードするポリヌクレオチドを含み、oc-脂肪エステルは組換え微生物細胞において発現または過剰発現したエステル合成酵素ポリペプチドによって触媒される反応によって生成される。いくつかの実施形態では、oc-脂肪エステルを含む脂肪エステルを含む組成物(本明細書では「脂肪エステル組成物」とも称する)は、炭素源の存在下で、ポリヌクレオチドを発現するために有効な条件下で組換え細胞を培養することによって生成される。いくつかの実施形態では、脂肪エステル組成物には、oc-脂肪エステルおよびec-脂肪エステルが含まれる。いくつかの実施形態では、組成物は細胞培養物から回収する。
エステル合成酵素ポリペプチドには、例えば、EC2.3.1.75として分類されるエステル合成酵素ポリペプチド、または限定はしないが、ワックス-エステル合成酵素、アシル-CoA:アルコールトランスアシラーゼ、アシルトランスフェラーゼまたは脂肪アシル-CoA:脂肪アルコールアシルトランスフェラーゼを含むアシル-チオエステルから脂肪エステルへの変換を触媒する任意の他のポリペプチドが含まれる。例えば、ポリヌクレオチドは、ワックス/dgat、シモンドシア・キネンシス(Simmondsia chinensis)、アシネトバクター(Acinetobacter)種ADP1株、アルカニボラックス・ボルクメンシス(Alcanivorax borkumensis)、シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、フンディバクター・ジャデンシス(Fundibacter jadensis)、アラビドプシス・タリアナまたはアルカリゲネス・エウトロフス(Alkaligenes eutrophus)の二官能性エステル合成酵素/アシル-CoA:ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼをコードしていてもよい。特定の実施形態では、エステル合成酵素ポリペプチドは、アシネトバクター種ジアシルグリセロールO-アシルトランスフェラーゼ(ワックス-dgaT;UniProtKB Q8GGG1、GenBank AAO17391)またはシモンドシア・キネンシスワックス合成酵素(UniProtKB Q9XGY6、GenBank AAD38041)である。特定の実施形態では、エステル合成酵素ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、組換え微生物細胞において過剰発現する。いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞はさらにチオエステラーゼをコードするポリヌクレオチドを含む。
別の実施形態では、組換え微生物細胞は、例えば、oc-脂肪酸メチルエステルまたはoc-脂肪酸エチルエステルなどのoc-脂肪エステルを生成し、組換え微生物細胞は、AtfA1(アルカニボラックス・ボルクメンシスSK2から得られたアシルトランスフェラーゼ、UniProtKB Q0VKV8、GenBank YP_694462)またはAtfA2(アルカニボラックス・ボルクメンシスSK2から得られた別のアシルトランスフェラーゼ、UniProtKB Q0VNJ6、GenBank YP_693524)などの2.3.1.20として分類されるエステル合成酵素/アシルトランスフェラーゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現する。特定の実施形態では、エステル合成酵素ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、組換え微生物細胞において過剰発現する。いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞はさらにチオエステラーゼをコードするポリヌクレオチドを含む。
別の実施形態では、組換え微生物細胞は、例えば、oc-脂肪酸メチルエステルまたはoc-脂肪酸エチルエステルなどのoc-脂肪エステルを生成し、組換え微生物細胞は、ES9(ws2遺伝子によってコードされるマリノバクター・ハイドロカーボノクラスティカス(Marinobacter hydrocarbonoclasticus)DSM8798から得られたワックスエステル合成酵素、UniProtKB A3RE51、GenBank ABO21021)またはES376(ws1遺伝子によってコードされるマリノバクター・ハイドロカーボノクラスティカスDSM8798から得られた別のワックスエステル合成酵素、UniProtKB A3RE50、GenBank ABO21020)などのエステル合成酵素ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現する。特定の実施形態では、エステル合成酵素ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、組換え微生物細胞において過剰発現する。いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞はさらにチオエステラーゼをコードするポリヌクレオチドを含む。
これらの実施形態で使用するために適切なエステル合成酵素ポリペプチドおよびそれらをコードするポリヌクレオチドのさらなる非限定的な例には、参照により本明細書に組み込まれるPCT公開番号WO2007/136762およびWO2008/119082に記載されたものが含まれる。
oc-脂肪アルデヒド
一実施形態では、組換え微生物細胞はoc-脂肪アルデヒドを生成する。いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞によって生成されるoc-脂肪酸は、oc-脂肪アルデヒドに変換される。いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞によって生成されるoc-脂肪アルデヒドは、次にoc-脂肪アルコールまたはec-炭化水素に変換される。
いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞は、脂肪アルデヒド生合成活性(本明細書では「脂肪アルデヒド生合成ポリペプチド」または「脂肪アルデヒド生合成酵素」とも称する)を有するポリペプチド(すなわち、酵素)をコードするポリヌクレオチドを含み、oc-脂肪アルデヒドは、組換え微生物細胞において発現または過剰発現した脂肪アルデヒド生合成ポリペプチドによって触媒される反応によって生成される。いくつかの実施形態では、oc-脂肪アルデヒドを含む脂肪アルデヒドを含む組成物(本明細書では「脂肪アルデヒド組成物」とも称する)は、炭素源の存在下で、ポリヌクレオチドを発現するために有効な条件下で組換え細胞を培養することによって生成される。いくつかの実施形態では、脂肪アルデヒド組成物には、oc-脂肪アルデヒドおよびec-脂肪アルデヒドが含まれる。いくつかの実施形態では、組成物は細胞培養物から回収する。
いくつかの実施形態では、oc-脂肪アルデヒドは、組換え微生物細胞において、カルボン酸レダクターゼ(CAR)活性(例えば、car遺伝子によってコードされる)などの脂肪アルデヒド生合成活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現または過剰発現することによって生成される。この実施形態によって有用なカルボン酸レダクターゼ(CAR)ポリペプチドおよびそれらをコードするポリヌクレオチドの例には、限定はしないが、FadD9(EC6.2.1.-、UniProtKB Q50631、GenBank NP_217106)、CarA(GenBank ABK75684)、CarB(GenBank YP889972)および参照により本明細書に組み込まれるPCT公開番号WO2010/042664に記載された関連するポリペプチドが含まれる。いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞はさらにチオエステラーゼをコードするポリヌクレオチドを含む。
いくつかの実施形態では、oc-脂肪アルデヒドは、組換え微生物細胞において、例えば、aar遺伝子によってコードされるアシル-ACPレダクターゼ(AAR)活性を有するポリペプチドなどの脂肪アルデヒド生合成ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現または過剰発現することによって生成される。この実施形態によって有用なアシル-ACPレダクターゼポリペプチドの例には、限定はしないが、シネココッカス・エロンガタスPCC7942(GenBank YP_400611)のアシル-ACPレダクターゼおよび参照により本明細書に組み込まれるPCT公開番号WO2010/042664に記載された関連するポリペプチドが含まれる。
いくつかの実施形態では、oc-脂肪アルデヒドは、組換え微生物細胞において、例えば、acr1遺伝子によってコードされるアシル-CoAレダクターゼ活性(例えば、EC1.1.2.x)を有するポリペプチドなどの脂肪アルデヒド生合成ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現または過剰発現することによって生成される。この実施形態によって有用なアシル-CoAレダクターゼポリペプチドの例には、限定はしないが、アシネトバクター種ADP1株(GenBank YP_047869)のACR1および参照により本明細書に組み込まれるPCT公開番号WO2010/042664に記載された関連するポリペプチドが含まれる。いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞はさらにチオエステラーゼおよびアシル-CoA合成酵素をコードするポリヌクレオチドを含む。
oc-脂肪アルコール
一実施形態では、組換え微生物細胞はoc-脂肪アルコールを生成する。いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞によって生成されるoc-脂肪アルデヒドは、oc-脂肪アルコールに変換される。他の実施形態では、組換え微生物細胞によって生成されるoc-脂肪酸は、oc-脂肪アルコールに変換される。
いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞は脂肪アルコール生合成活性を有するポリペプチド(すなわち、酵素)(本明細書では「脂肪アルコール生合成ポリペプチド」または「脂肪アルコール生合成酵素」とも称する)をコードするポリヌクレオチドを含み、oc-脂肪アルコールは、組換え微生物細胞において発現または過剰発現する脂肪アルコール生合成酵素によって触媒される反応によって生成される。いくつかの実施形態では、oc-脂肪アルコールを含む脂肪アルコールを含む組成物(本明細書では「脂肪アルコール組成物」とも称する)は、炭素源の存在下で、ポリヌクレオチドを発現するために有効な条件下で組換え細胞を培養することによって生成される。いくつかの実施形態では、脂肪アルコール組成物には、oc-脂肪アルコールおよびec-脂肪アルコールが含まれる。いくつかの実施形態では、組成物は細胞培養物から回収する。
いくつかの実施形態では、oc-脂肪アルコールは、組換え微生物細胞において、アルコール脱水素酵素(アルデヒドレダクターゼ)活性、例えば、EC1.1.1.1などの脂肪アルコール生合成活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現または過剰発現することによって生成される。この実施形態によって有用なアルコール脱水素酵素ポリペプチドの例には、限定はしないが、E.コリアルコール脱水素酵素YqhD(GenBank AP_003562)および参照により本明細書に組み込まれるPCT公開番号WO2007/136762およびWO2008/119082に記載された関連するポリペプチドが含まれる。いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞はさらに脂肪アルデヒド生合成ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞はさらにチオエステラーゼをコードするポリヌクレオチドを含む。
いくつかの実施形態では、oc-脂肪アルコールは、組換え微生物細胞において、脂肪アルコール形成アシル-ACPレダクターゼ(FAR)活性、例えば、EC1.1.1.xを有するポリペプチド、などの脂肪アルコール生合成ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現または過剰発現することによって生成される。この実施形態によって有用なFARポリペプチドの例には、限定はしないが、参照により本明細書に参考として組み込まれるPCT公開番号WO2010/062480に記載されたポリペプチドが含まれる。いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞はさらにチオエステラーゼおよびアシル-CoA合成酵素をコードするポリヌクレオチドを含む。
ec-炭化水素
一実施形態では、組換え微生物細胞は、ec-アルカンまたはec-アルケン(例えば、ec-末端オレフィンまたはec-内部オレフィン)またはec-ケトンなどのec-炭化水素を生成する。いくつかの実施形態では、oc-アシル-ACP中間体は脱カルボキシル化によって変換され、1個の炭素原子が除去されてec-内部オレフィンまたはec-ケトンを形成する。いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞によって生成されるoc-脂肪アルデヒドは、脱カルボニル化によって変換され、1個の炭素原子が除去されてec-炭化水素を形成する。いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞によって生成されるoc-脂肪酸は脱カルボキシル化によって変換され、1個の炭素原子が除去されてec-末端オレフィンを形成する。
いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞は炭化水素生合成活性を有するポリペプチド(すなわち、酵素)(本明細書では「炭化水素生合成ポリペプチド」または「炭化水素生合成酵素」とも称する)をコードするポリヌクレオチドを含み、ec-炭化水素は組換え微生物細胞において発現または過剰発現する炭化水素生合成酵素によって触媒される反応によって生成される。いくつかの実施形態では、ec-炭化水素を含む炭化水素を含む組成物(本明細書では「炭化水素組成物」とも称する)は、炭素源の存在下で、ポリヌクレオチドを発現するために有効な条件下で組換え細胞を培養することによって生成される。いくつかの実施形態では、炭化水素組成物はec-炭化水素およびoc-炭化水素を含む。いくつかの実施形態では、炭化水素組成物は細胞培養物から回収する。
いくつかの実施形態では、ec-炭化水素は、組換え微生物細胞において、アルデヒドデカルボニラーゼ(ADC)活性(例えば、EC4.1.99.5)などの炭化水素生合成活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、例えば、プロクロロコッカス・マリナス(Prochlorococcus marinus)MIT9313(GenBank NP_895059)またはノストック・パンクチフォルメ(Nostoc punctiforme)(GenBank受託番号YP_001865325)のアルデヒドデカルボニラーゼをコードするポリヌクレオチドを発現または過剰発現することによって生成される。この実施形態によって有用なアルデヒドデカルボニラーゼおよび関連するポリペプチドのさらなる例には、限定はしないが、参照により本明細書に組み込まれるPCT公開番号WO2008/119082号およびWO2009/140695号に記載されたポリペプチドが含まれる。いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞はさらに脂肪アルデヒド生合成ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞はさらにアシル-ACPレダクターゼをコードするポリヌクレオチドを含む。
いくつかの実施形態では、ec-末端オレフィンは、組換え微生物細胞において、例えば、参照により本明細書に組み込まれるPCT公開番号WO2009/085278号に記載されているようなデカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドなどの炭化水素生合成ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現または過剰発現することによって生成される。いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞はさらにチオエステラーゼをコードするポリヌクレオチドを含む。
いくつかの実施形態では、ec-内部オレフィンは、組換え微生物細胞において、例えば、参照により本明細書に組み込まれるPCT公開番号WO2008/147781号に記載されているようなOleCDまたはOleBCD活性を有するポリペプチドなどの炭化水素生合成ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現または過剰発現することによって生成される。
いくつかの実施形態では、ec-ケトンは、組換え微生物細胞において、例えば、参照により本明細書に組み込まれるPCT公開番号WO2008/147781号に記載されているようなOleA活性を有するポリペプチドなどの炭化水素生合成ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現または過剰発現することによって生成される。
oc-FA誘導体の飽和レベル
oc-アシル-ACP(次に、前述したような様々なoc-FA誘導体に変換することができる)の飽和度は、脂肪酸中間体の飽和度を調節することによって制御することができる。例えば、sfa、gnsおよびfabファミリーの遺伝子は、oc-アシル-ACPの飽和の量を制御するために発現、過剰発現または低下したレベルで発現させる(例えば、減衰させる)ことができる。
oc-FA経路ポリペプチドおよびポリヌクレオチド
本開示は、本発明の組換え微生物細胞、方法および組成物において有用なポリヌクレオチドを同定するが、このようなポリヌクレオチドに対する絶対的な配列同一性は必要ないことを認識されたい。例えば、特定のポリヌクレオチド配列中に変化を与え、コードされたポリペプチドの活性をスクリーニングすることができる。このような変化は通常、保存された突然変異およびサイレント突然変異(例えば、コドン最適化など)を含む。改変または突然変異した(すなわち突然変異体)ポリヌクレオチドおよびコードされた変異体ポリペプチドは、当技術分野で公知の方法を使用して、限定はしないが、増加した触媒活性、増加した安定性または減少した阻害(例えば、減少したフィードバック阻害)を含む親ポリペプチドと比較して改善された機能などの所望する機能についてスクリーニングすることができる。
本開示は、本明細書で記載したoc-FA生合成経路の様々な工程(すなわち、反応)に関与する酵素活性を酵素分類(EC)番号にしたがって同定し、このようなEC番号に分類されるポリペプチドの例(すなわち、酵素)およびこのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの例を提供する。受託番号および/または配列同定番号(配列番号)によって本明細書で同定したこのようなポリペプチドおよびポリヌクレオチドの例は、本明細書で記載した組換え微生物細胞を得るために親微生物細胞におけるoc-FA経路を操作するために有用である。しかし、本明細書で記載したポリペプチドおよびポリヌクレオチドは例であって、限定ではないことを理解されたい。本明細書で記載したポリペプチド例の相同体の配列は、例えば、いずれもワールドワイドウェブで利用可能な国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)によって提供されているEntrezデータベース、スイスバイオインフォマティクス研究所によって提供されているExPasyデータベース、Technical University of Braunschweigによって提供されているBRENDAデータベースならびに京都大学および東京大学のバイオインフォマティクスセンターによって提供されているKEGGデータベースなどのデータベースを使用して当業者は利用可能である。
様々な微生物細胞が本明細書で記載したoc-FA経路を含有するように改変し、奇数鎖脂肪酸誘導体の生成に適切な組換え微生物細胞を生じることができることをさらに理解されたい。様々な細胞は、本明細書で提供した組換え微生物細胞における使用に適切なポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列を含む遺伝子物質源を提供することができることも理解されたい。
本開示は、本明細書で記載したoc-FA生合成経路において使用するために適切な活性を有するポリペプチド(すなわち、酵素)の数多くの例を提供する。このようなポリペプチドは、本明細書では集合的に「oc-FA経路ポリペプチド」(あるいは、「oc-FA経路酵素」)と称する。本発明の組換え微生物細胞において使用するために適切なoc-FA経路ポリペプチドの非限定的例は、本明細書の表および説明および実施例に記載する。
いくつかの実施形態では、本発明には、oc-FA経路ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列(本明細書ではまた、「oc-FA経路ポリヌクレオチド」配列と称する)を含む組換え微生物細胞が含まれる。
本発明の組換え微生物細胞におけるoc-FA経路の操作において使用するために適切なさらなるoc-FA経路ポリペプチドおよびそれらをコードするポリヌクレオチドは、いくつかの方法によって得ることができる。例えば、EC番号は、触媒する反応に応じて酵素を分類する。本明細書で記載した生合成経路における反応を触媒する酵素は、例えば、いずれもワールドワイドウェブで利用可能なKEGGデータベース(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomics;京都大学および東京大学)、UNIPROTKBデータベースまたはENZYMEデータベース(ExPASyプロテオミクスサーバー;スイスバイオインフォマティクス研究所)、PROTEINデータベースまたはGENEデータベース(Entrezデータベース;国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI))あるいはBRENDAデータベース(The Comprehensive Enzyme Information System;Technical University of Braunschweig)などのデータベースにおける反応に対応するEC番号を検索することによって同定することができる。一実施形態では、EC番号(本明細書の説明または表の1つで挙げたEC番号など)によって分類される酵素活性を有するoc-FA経路ポリペプチドをコードするoc-FA経路ポリヌクレオチドまたはその活性を有するそれらの断片もしくは変異体は、組換え微生物細胞におけるoc-FA経路の対応する工程の操作において使用する。
いくつかの実施形態では、oc-FA経路ポリヌクレオチド配列は、操作する組換え細胞の親細胞にとって内在性のポリペプチドをコードする。いくつかのこのような内在性のポリペプチドは、組換え微生物細胞において過剰発現する。本明細書で使用する場合、「内在性ポリペプチド」とは、組換え微生物細胞を生成するために操作されている親(例えば、野生型)細胞のゲノムによってコードされるポリペプチドを指す。
例えば、内在性oc-FA経路ポリペプチドなどのoc-FA経路ポリペプチドは、任意の適切な手段によって過剰発現させることができる。本明細書で使用する場合、「過剰発現」とは、同じ条件下で対応する親(例えば、野生型)細胞において通常発現されるよりも高い濃度で、細胞においてポリヌクレオチドまたはポリペプチドを発現すること、あるいは発現を引き起こすことを意味する。例えば、ポリペプチドは、同じ条件下で培養したとき、同種の非組み換え宿主細胞(例えば、親細胞)における濃度と比較して、組換え細胞においてより高い濃度で存在するとき、ペプチドは組換え細胞内で「過剰発現」している。
いくつかの実施形態では、oc-FA経路ポリヌクレオチド配列は外来性または異種ポリペプチドをコードする。言い換えると、ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドは、親微生物細胞に対して外来性である。本明細書で使用する場合、「外来性」(または「異種」)ポリペプチドとは、組換え微生物細胞を生成するために操作されている親(例えば、野生型)微生物細胞のゲノムによってコードされていないポリペプチドを指す。このようなポリペプチドはまた、「非天然」ポリペプチドと呼ぶことができる。
ある種の実施形態では、oc-FA経路ポリペプチドは本明細書で提供したポリペプチドの例の1つのアミノ酸配列以外のアミノ酸配列を含み、例えば、oc-FA経路ポリペプチドは、ポリペプチドの例の配列の相同体、断片または変異体である配列を含むことができる。
本明細書で使用する場合、「相同体(homolog)」、「相同体(homologue)」および「相同の(homologous)」という用語は、対応するポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列と少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%)相同である配列を含むポリヌクレオチドまたはポリペプチドを指す。当業者であれば、2種類以上の配列の相同性の測定方法は熟知しているであろう。簡単に説明すると、2種類の配列の「相同性」の計算は、以下の通り実施することができる。配列を最適な比較のためにアラインさせる(例えば、最適なアラインメントのためにギャップを第1および第2のアミノ酸またはポリヌクレオチド配列の1つまたは両方に導入することができ、比較のために非相同な配列は無視することができる)。好ましい実施形態では、比較のためにアラインさせる第1の配列の長さは、第2の配列の長さの少なくとも約30%、好ましくは約40%、より好ましくは少なくとも約50%、さらにより好ましくは少なくとも約60%、さらにより好ましくは少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または約100%である。その後、第1および第2の配列の対応するアミノ酸の位置またはヌクレオチドの位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列の位置が、第2の配列の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められているときは、その分子はその位置において同一である(本明細書で使用する場合、アミノ酸または核酸の「同一性」は、アミノ酸または核酸の「相同性」と同等である)。2種類の配列の間のパーセント同一性は、2種類の配列の最適なアラインメントのために導入することが必要なギャップの数および各ギャップの長さを考慮して、配列によって共有される同一位置数の関数である。
2種類の配列の間の配列比較およびパーセント相同性(すなわち、パーセント同一性)の測定は、BLAST(Altschul et al., J. Mol. Biol., 215(3): 403-410 (1990))などの数学的アルゴリズムを使用して実現することができる。2種類のアミノ酸配列の間のパーセント相同性はまた、GCGソフトウェアパッケージ内のGAPプログラムに組み込まれているNeedlemanおよびWunschアルゴリズムを使用して、Blossum62マトリクスまたはPAM250マトリクスのどちらかを用いて、ギャップ重み16、14、12、10、8、6もしくは4および長さ重み1、2、3、4、5もしくは6を用いて測定することができる(Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol., 48: 444-453 (1970))。2種類のヌクレオチド配列のパーセント相同性はまた、GCGソフトウェアパッケージ内のGAPプログラムを使用して、NWSgapdna.CMPマトリクスおよびギャップ重み40、50、60、70もしくは80および長さ重み1、2、3、4、5もしくは6を用いて測定することができる。当業者であれば最初に相同性計算を実施し、それによってアルゴリズムパラメータを適合させることができる。好ましいパラメータセット(および分子が特許請求の範囲の相同性制限内にあるかどうかを決定するためにどのパラメータを適用すべきか医師が不明である場合使用すべきであるパラメータ)は、Blossum62スコアリングマトリクスで、ギャップペナルティ12,ギャップ拡張ペナルティ4、フレームシフトギャップペナルティ5を用いる。配列アラインメントのさらなる方法は、バイオテクノロジー分野では公知である(例えば、Rosenberg, BMC Bioinformatics, 6: 278 (2005); Altschul et al., FEBS J., 272(20): 5101-5109 (2005)を参照)。
「同等の位置」(例えば、「同等のアミノ酸位置」または「同等の核酸位置」)とは、本明細書では、本明細書で記載したアラインメントアルゴリズムを使用して最適にアラインさせたとき、参照ポリペプチド(または参照ポリヌクレオチド)配列の対応する位置とアラインする試験ポリペプチド(または試験ポリヌクレオチド)配列の位置(例えば、アミノ酸位置または核酸位置)と定義される。試験ポリペプチドの同等のアミノ酸の位置は、参照ポリペプチドの対応する位置と同じ数字の位置番号である必要はなく、同様に、試験ポリヌクレオチドの同等の核酸の位置は、参照ポリヌクレオチドの対応する位置と同じ数字の位置番号である必要はない。
いくつかの実施形態では、oc-FA経路ポリペプチドは、本明細書で記載したoc-FA経路ポリペプチドの例の変異体などの参照(例えば、親)ポリペプチドの変異体である。本明細書で使用する場合「変異体」(あるいは、「突然変異体」)ポリペプチドとは、親(例えば、野生型)ポリペプチドとは少なくとも1個のアミノ酸が異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを指す。変異体は、親ポリペプチド配列と比較して、1種または複数の保存的アミノ酸置換を含むことができ、かつ/または1種または複数の非保存的置換を含むことができる。いくつかの実施形態では、変異体ポリペプチドは、親ポリペプチド配列と比較して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50またはそれ以上のアミノ酸置換、付加、挿入または欠失を有する。いくつかの実施形態では、変異体ポリペプチドの配列は、親ポリペプチドの配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一である。
いくつかの実施形態では、oc-FA経路ポリペプチドは、本明細書で記載したoc-FA経路ポリペプチドの例の断片などの参照(例えば、親)ポリペプチドの断片である。「断片」という用語は、4個のアミノ酸残基から全体のアミノ酸配列マイナス1個のアミノ酸残基までの大きさの範囲の完全長ポリペプチドまたはタンパク質のより短い部分を指す。本発明のある種の実施形態では、断片は、ポリペプチドまたはタンパク質のドメイン(例えば、基質結合ドメインまたは触媒ドメイン)の全体のアミノ酸配列を指す。
いくつかの実施形態では、相同体、変異体または断片は、本明細書で定義したような1種または複数の配列モチーフを含む。一実施形態では、β-ケトアシル-ACP合成酵素ポリペプチドの相同体、変異体または断片は、配列番号14~19から選択される1種または複数の配列モチーフを含む。配列が特定の配列モチーフを含有することの決定は、例えば、ExPASyプロテオミクスサーバーのワールドワイドウェブサイトで利用可能なScanPrositeツールを使用して容易に実現することができる。
oc-FAポリペプチドは、oc-FAポリペプチドの生物学的機能または特性に対して実質的な効果を有さない、親ポリペプチドに対して保存的または非必須のアミノ酸置換を有していてもよいことを理解されたい。特定の置換が許容されるかどうか(すなわち、酵素活性などの所望する生物学的機能に悪影響を与えないこと)は、例えば、Bowie
et al.(Science, 247: 1306-1310 (1990))において記載されたように決定することができる。
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるアミノ酸置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野では定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷の極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。
変異体は天然に生じていてもよく、またはインビトロで作出してもよい。特に、変異体は部位特異的突然変異誘発、無作為な化学的突然変異誘発、エキソヌクレアーゼIII削除手順または標準的クローニング技術などの遺伝子操作技術を使用して作出することができる。あるいは、このような変異体、断片、類似体または誘導体は、化学合成または改変手順を使用して作出することができる。
変異体の作製方法は当技術分野では周知である。これらには、工業的または研究室適用における価値を高める特性(限定はしないが、触媒活性(代謝回転数)の増加、安定性の改善およびフィードバック阻害の低下を含む)を有するポリペプチドをコードする核酸を生成するために、天然の単離物から得られた核酸配列を改変する手順が含まれる。このような手順では、天然の単離物から得られた配列に関して1種または複数のヌクレオチドが異なる多数の改変された核酸配列が生成され、特徴付けられる。通常、これらのヌクレオチドの違いによって、天然の単離物の核酸によってコードされるポリペプチドに関してアミノ酸の変化が引き起こされる。例えば、変異体は無作為または部位特異的突然変異誘発を使用することによって調製することができる。
変異体はまた、インビボ突然変異誘発によって作出することができる。いくつかの実施形態では、核酸配列における無作為な突然変異は、DNA修復経路の1種または複数において突然変異を有するE.コリ株などの細菌株における配列の伝播によって生成される。このような「突然変異誘発」株は、野生型株よりも高い無作為突然変異率を有する。これらの株の1種におけるDNA配列の伝播は、最終的にDNA内における無作為突然変異を生成するものである。インビボにおける突然変異誘発で使用するために適切な突然変異株は、例えば、国際特許出願公開番号WO1991/016427号に記載されている。
変異体はまた、カセット突然変異誘発を使用して生成することができる。カセット突然変異誘発では、2本鎖DNA分子の小領域を、天然の配列とは異なる合成オリゴヌクレオチド「カセット」と置換する。オリゴヌクレオチドは、完全に、および/または部分的に無作為化された天然配列を含有することが多い。
再帰的アンサンブル突然変異誘発(Recursive ensemble mutagenesis)も変異体の生成に使用することができる。再帰的アンサンブル突然変異誘発は、メンバーのアミノ酸配列は異なるが表現型が関連した突然変異体の多様な集団を生成するために開発されたタンパク質操作(すなわち、タンパク質突然変異誘発)のためのアルゴリズムである。この方法は、一連のコンビナトリアルカセット突然変異誘発を制御するためにフィードバック機構を使用する。再帰的アンサンブル突然変異誘発は、例えば、Arkin et al., Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A., 89: 7811-7815 (1992)に記載されている。
いくつかの実施形態では、変異体は指数的アンサンブル突然変異誘発(exponential ensemble mutagenesis)を使用して作出される。指数的アンサンブル突然変異誘発は、独特の機能的突然変異体の割合が高いコンビナトリアルライブラリーを生成するための方法であり、変化した各位置において、機能的タンパク質を導くアミノ酸を同定するのと並行して、残基の小群が無作為化される。指数的アンサンブル突然変異誘発は、例えば、Delegrave et al., Biotech. Res, 11: 1548-1552 (1993)に記載されている。
親ポリペプチドの好ましい断片または変異体(例えば、親oc-FA経路ポリペプチドの断片または変異体)は、親ポリペプチドの生物学的機能または特性(例えば、酵素活性、熱安定性)のいくつかまたは全てを保持する。いくつかの実施形態では、断片または変異体は、親ポリペプチドの生物学的機能または特性の少なくとも75%(例えば、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%)を保持する。他の実施形態では、断片または変異体は、親ポリペプチドの生物学的機能または特性の約100%を保持する。
いくつかの実施形態では、親ポリペプチドの断片または変異体は、組換え微生物細胞を培養する条件下において、親ポリペプチドに対して増加した触媒活性を示す(例えば、より高い代謝回転数、変化したpH至適性、所望する基質に対して減少したKmまたは所望する基質に対して増加したkcat/Kmによって反映されるように)。例えば、親ポリペプチドが好熱性細胞にとって内在性(すなわち、好熱性細胞から得られる)場合、および組換え微生物細胞が一般的に好熱性細胞よりも低い温度で培養される場合、親ポリペプチドはより低い温度で著しく低下した活性を示す可能性があり、この場合、変異体ポリペプチドは、そのようなより低い温度で、親ポリペプチドに対して増加した触媒活性(例えば、より高い代謝回転数)を示すことが好ましい。
他の実施形態では、親ポリペプチドの断片または変異体は、組換え微生物細胞を培養する条件下において、親ポリペプチドの安定性に対して改善された安定性を示す。このような安定性は、組換え微生物細胞と親ポリペプチドが得られた細胞との間の温度、イオン強度、pHにおける変化または増殖もしくは培地条件の任意の他の差違に対する安定性を含み得る。例えば、親ポリペプチドが耐冷性細胞から得られる場合、および組換え微生物細胞が一般的に耐冷性細胞よりも高い温度で培養される場合、親ポリペプチドはより高い温度で比較的不安定である可能性があり、この場合、変異体ポリペプチドは、このような高い温度で、親ポリペプチドの安定性に対して改善された安定性を示すことが好ましい。
他の実施形態では、親ポリペプチドの断片または変異体は、組換え微生物細胞を培養する条件下において、親ポリペプチドによって示されるこのような阻害に対して、細胞代謝物による、または培養培地成分による触媒活性の阻害の低下(例えば、フィードバック阻害の低下)を示す。
ある種の実施形態では、oc-FA経路ポリペプチドは、親ポリペプチドの相同体、断片または変異体であり、oc-FA経路ポリペプチドは、組換え微生物細胞におけるoc-FA経路反応の実施に有効である。このようなoc-FA経路ポリペプチドは、本発明の組換え微生物細胞において使用するために適切である。
oc-FA経路の反応の実施における試験ポリペプチド(例えば、本明細書で記載したoc-FA経路ポリペプチドまたはそれらの相同体、断片もしくは変異体)の有効性は、いくつかの方法によって測定することができる。例えば、生化学経路の特定の反応の触媒における試験ポリペプチドの有効性を測定するために、まず、試験する特定の経路反応以外は、問題の生化学経路の反応を触媒するために必要な全活性を含む親細胞を得るために細胞を操作する(必要であれば)(場合によっては、親細胞は、試験する特定の経路反応を触媒する内在性ポリペプチド(複数可)を発現することがあるが、このような場合、内在性活性は試験ポリペプチドの活性による生成物の増加を容易に検出するために十分低いことが好ましい)。適切なプロモーターに操作可能に連結した試験ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは(例えば、発現ベクターにおいて)、次に親細胞に導入され、試験細胞を生成する。試験細胞および親細胞は、親および試験細胞培養における経路ポリペプチドの発現ならびに試験細胞培養における試験ポリペプチドの発現に十分な同一の条件下で別々に培養する。培養中および/または培養後の様々な時点で、試験細胞培養物および親細胞培養物から試料を採取する。試料は、特定の経路中間体または生成物の存在を分析する。経路中間体または生成物の存在は、限定はしないが、ガスクロマトグラフィー(GC)、質量分析(MS)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、液体クロマトグラフィー(LC)、水素炎イオン化検出器付きGC(GC-FID)、GC-MSおよびLC-MSを含む方法によって測定することができる。試験細胞培養物試料(複数可)においてoc-FA経路中間体または生成物が存在すること、および親培養試料(複数可)においてoc-FA経路中間体または生成物が存在しないこと(または量が低下していること)は、試験ポリペプチドがoc-FA経路反応の実施において有効であり、本発明の組換え微生物細胞において使用するために適切であることを示唆している。
組換え微生物細胞における奇数鎖脂肪酸誘導体の生成
一態様では、本発明は、奇数鎖脂肪酸誘導体組成物の作製方法であって、炭素源を含有する培養培地中において、組換えポリヌクレオチド配列を発現するために有効な条件下で本発明の組換え微生物細胞を培養することと、生成した奇数鎖脂肪酸誘導体組成物を適宜単離することとを含む方法を含む。
「奇数鎖脂肪酸誘導体組成物」(略して「oc-FA誘導体組成物」)は、例えば、奇数鎖脂肪酸、奇数鎖脂肪エステル(例えば、奇数鎖脂肪メチルエステル、奇数鎖脂肪エチルエステル、奇数鎖ワックスエステル)、奇数鎖脂肪アルデヒド、奇数鎖脂肪アルコール、偶数鎖炭化水素(偶数鎖アルカン、偶数鎖アルケン、偶数鎖末端オレフィン、偶数鎖内部オレフィンなど)または偶数鎖ケトンなどの本明細書で定義した奇数鎖脂肪酸誘導体を含む組成物である。同様に、「奇数鎖脂肪酸組成物」は、奇数鎖脂肪酸を含む組成物であり、「奇数鎖脂肪アルコール組成物」は、奇数鎖脂肪アルコールを含む組成物であり、「偶数鎖アルカン組成物」は、偶数鎖アルカンを含む組成物であるなどである。奇数鎖脂肪酸誘導体を含む組成物はまた、偶数鎖脂肪酸誘導体を含んでいてもよいことも理解されたい。
一態様では、本発明は、奇数鎖脂肪酸誘導体を含む組成物の作製方法であって、(a)増加した量のプロピオニル-CoAを生成するために有効な酵素活性を欠如しているか、または量が低下している親微生物細胞において生成するプロピオニル-CoAの量に対して、組換え微生物細胞において増加した量のプロピオニル-CoAを生成するために有効な前記酵素活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであり、少なくとも1種のポリペプチドが組換え微生物細胞にとって外来性であるか、または少なくとも1種のポリヌクレオチドの発現が親微生物細胞におけるポリヌクレオチドの発現と比較して組換え微生物細胞においてモジュレートされているポリヌクレオチド、(b)基質としてプロピオニル-CoAを利用するβ-ケトアシル-ACP合成酵素活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドおよび(c)脂肪酸誘導体酵素活性を有するポリペプチドをコードする1種または複数のポリヌクレオチドを含む組換え微生物細胞(例えば、組換え微生物細胞を含む培養物)を得ることであり、組換え微生物細胞が、炭素源の存在下で、(a)、(b)および(c)によるポリヌクレオチドを発現するために有効な条件下で培養したとき、奇数鎖脂肪酸誘導体および偶数鎖脂肪酸誘導体を含む脂肪酸誘導体組成物を生成することと、炭素源を含有する培養培地中で(a)、(b)および(c)によるポリヌクレオチドを発現し、奇数鎖脂肪酸誘導体および偶数鎖脂肪酸誘導体も含む脂肪酸誘導体組成物を生成するために有効な条件下で組換微生物細胞を培養することと、培養培地から組成物を適宜回収することとを含む方法を含む。
いくつかの実施形態では、組成物における脂肪酸誘導体の少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%または少なくとも90重量%が奇数鎖脂肪酸誘導体である。いくつかの実施形態では、脂肪酸誘導体組成物は、少なくとも10mg/L、少なくとも15mg/L、少なくとも20mg/L、少なくとも25mg/L、少なくとも50mg/L、少なくとも75mg/L、少なくとも100mg/L、少なくとも125mg/L、少なくとも150mg/L、少なくとも175mg/L、少なくとも200mg/L、少なくとも225mg/L、少なくとも250mg/L、少なくとも275mg/L、少なくとも300mg/L、少なくとも325mg/L、少なくとも350mg/L、少なくとも375mg/L、少なくとも400mg/L、少なくとも425mg/L、少なくとも450mg/L、少なくとも475mg/L、少なくとも500mg/L、少なくとも525mg/L、少なくとも550mg/L、少なくとも575mg/L、少なくとも600mg/L、少なくとも625mg/L、少なくとも650mg/L、少なくとも675mg/L、少なくとも700mg/L、少なくとも725mg/L、少なくとも750mg/L、少なくとも775mg/L、少なくとも800mg/L、少なくとも825mg/L、少なくとも850mg/L、少なくとも875mg/L、少なくとも900mg/L、少なくとも925mg/L、少なくとも950mg/L、少なくとも975mg/L、少なくとも1000mg/L、少なくとも1050mg/L、少なくとも1075mg/L、少なくとも1100mg/L、少なくとも1125mg/L、少なくとも1150mg/L、少なくとも1175mg/L、少なくとも1200mg/L、少なくとも1225mg/L、少なくとも1250mg/L、少なくとも1275mg/L、少なくとも1300mg/L、少なくとも1325mg/L、少なくとも1350mg/L、少なくとも1375mg/L、少なくとも1400mg/L、少なくとも1425mg/L、少なくとも1450mg/L、少なくとも1475mg/L、少なくとも1500mg/L、少なくとも1525mg/L、少なくとも1550mg/L、少なくとも1575mg/L、少なくとも1600mg/L、少なくとも1625mg/L、少なくとも1650mg/L、少なくとも1675mg/L、少なくとも1700mg/L、少なくとも1725mg/L、少なくとも1750mg/L、少なくとも1775mg/L、少なくとも1800mg/L、少なくとも1825mg/L、少なくとも1850mg/L、少なくとも1875mg/L、少なくとも1900mg/L、少なくとも1925mg/L、少なくとも1950mg/L、少なくとも1975mg/L、少なくとも2000mg/L、少なくとも3000mg/L、少なくとも4000mg/L、少なくとも5000mg/L、少なくとも6000mg/L、少なくとも7000mg/L、少なくとも8000mg/L、少なくとも9000mg/L、少なくとも10000mg/L、少なくとも20000mg/Lの量で(例えば、力価)、または上述の値の任意の2つによって結びつけられた範囲で奇数鎖脂肪酸誘導体を含む。
様々な実施形態では、脂肪酸誘導体酵素活性には、チオエステラーゼ活性、エステル合成酵素活性、脂肪アルデヒド生合成活性、脂肪アルコール生合成活性、ケトン生合成活性および/または炭化水素生合成活性が含まれる。いくつかの実施形態では、組換え微生物細胞は、2種以上のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、各ポリペプチドが脂肪酸誘導体酵素活性を有するポリヌクレオチドを含む。
様々な実施形態において、組換え微生物細胞は、奇数鎖脂肪酸、奇数鎖脂肪エステル、奇数鎖ワックスエステル、奇数鎖脂肪アルデヒド、奇数鎖脂肪アルコール、偶数鎖アルカン、偶数鎖アルケン、偶数鎖内部オレフィン、偶数鎖末端オレフィンまたは偶数鎖ケトンを含む組成物を生成する。
様々な実施形態では、組換え微生物細胞は、(i)アスパルトキナーゼ活性、ホモセリン脱水素酵素活性、ホモセリンキナーゼ活性、スレオニン合成酵素活性およびスレオニンデアミナーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または(ii)(R)-シトラマル酸合成酵素活性、イソプロピルリンゴ酸イソメラーゼ活性およびベータ-イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または(iii)メチルマロニル-CoAムターゼ活性、メチルマロニル-CoAデカルボキシラーゼ活性および/またはメチルマロニル-CoAカルボキシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドあるいは(i)および(ii)、または(i)および(iii)または(ii)および(iii)または(i)、(ii)および(iii)から選択される、組換え微生物細胞における増加した量のプロピオニル-CoAの生成に有効な酵素活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、少なくとも1種のポリペプチドが、組換え微生物細胞にとって外来性であるか、または少なくとも1種のポリヌクレオチドの発現が親微生物細胞におけるポリヌクレオチドの発現と比較して組換え微生物細胞においてモジュレートされている。
本発明の方法によって生成される奇数鎖脂肪酸誘導体を含む脂肪酸誘導体組成物は、組換え微生物細胞培養物から回収または単離することができる。本明細書で使用する場合、脂肪酸誘導体などの生成物に関する「単離した」という用語は、細胞成分、細胞培養培地または化学的もしくは合成前駆体から分離した生成物を指す。本明細書で記載した方法によって生成した脂肪酸誘導体は、発酵ブロスならびに細胞質において比較的不混和性であり得る。したがって、脂肪酸誘導体は、細胞内または細胞外のどちらかの有機相において収集することができる。有機相において生成物を収集すると、細胞機能に対する脂肪酸誘導体の影響を少なくすることができ、組換え微生物細胞がより多くの生成物を生成するのを可能にすることができる。
いくつかの実施形態では、本発明の方法によって生成される脂肪酸誘導体組成物(奇数鎖脂肪酸誘導体を含む)を精製する。本明細書で使用する場合、「精製する」、「精製した」または「精製」という用語は、例えば、単離または分離によって、その環境から分子を除去または単離することを意味する。「実質的に精製された」分子は、それらの関連する他の成分を少なくとも約60%(例えば、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約99%)含まない。本明細書で使用する場合、これらの用語はまた、試料から混入物を除去することを指す。例えば、混入物の除去は、試料中における他の成分に対する脂肪酸誘導体(例えば、脂肪酸または脂肪アルコールまたは脂肪エステルまたは炭化水素)の割合の増加をもたらすことができる。例えば、脂肪エステルまたは脂肪アルコールを組換え微生物細胞において生成するとき、脂肪エステルまたは脂肪アルコールは、組換え微生物細胞タンパク質の除去によって精製することができる。精製後、試料中の脂肪エステルまたは脂肪アルコールの他の成分に対する割合は増加する。
本明細書で使用する場合、「精製する」、「精製した」および「精製」という用語は、完全に純粋であることを必要としない相対的な用語である。したがって、例えば、脂肪誘導体組成物が組換え微生物細胞内で生成されるとき、精製された脂肪酸誘導体組成物は、他の細胞成分(例えば、核酸、ポリペプチド、脂質、炭水化物または他の炭化水素)から実質的に分離された脂肪酸誘導体組成物である。
脂肪酸誘導体組成物(奇数鎖脂肪酸誘導体を含む)は、細胞外環境において存在することができるか、または組換え微生物細胞の細胞外環境から単離することができる。ある種の実施形態では、脂肪酸誘導体は、組換え微生物細胞から分泌される。他の実施形態では、脂肪酸誘導体は細胞外環境に輸送される。さらに他の実施形態では、脂肪酸誘導体は細胞外環境に受動的に輸送される。脂肪酸誘導体は、当技術分野で公知の方法を使用して組換え微生物細胞から単離することができる。
脂肪酸誘導体(本発明の方法によって生成される奇数鎖脂肪酸誘導体を含む)は、2重炭素同位体フィンガープリント法または14C年代測定法に基づいて石油化学炭素由来の有機化合物と区別することができる。さらに、バイオ源の炭素(例えば、グルコース対グリセロール)の特定の供給源は、2重炭素同位体フィンガープリント法によって決定することができる(例えば、米国特許第7,169,588号参照)。
石油をベースにした有機化合物から組換え微生物細胞によって生成される脂肪酸誘導体を区別する能力は、商業目的でこれらの材料を追跡するために有益である。例えば、生物をベースにしたおよび石油をベースにした炭素同位体プロファイルの両方を含む有機化合物または化学物質は、石油をベースにした材料のみから作製された有機化合物および化学物質と区別することができる。したがって、本発明の方法によって調製された材料は、特有の炭素同位体プロファイルに基づいて商業的に追跡することができる。
組換え微生物細胞によって生成される脂肪酸誘導体は、それぞれの燃料中の安定炭素同位体比(13C/12C)を比較することによって、石油をベースにした有機化合物から区別することができる。本発明の方法によって生成されるそれらの所与の脂肪酸誘導体における13C/12C比は、二酸化炭素が固定された時の大気二酸化炭素中の13C/12C比の結果である。これはまた、正確な代謝経路を反映する。地域的な変動も生じる。石油、C3植物(広葉樹)、C4植物(イネ科植物)、海成炭酸塩は全て、13C/12Cおよび対応するδ13C値に著しい差異を示す。さらに、C3およびC4植物の脂質物質は、代謝経路の結果として、同じ植物の炭水化物成分から得られた物質とは異なって分析される。
13Cを測定する目盛りは元々、Pee Deeベレムナイト(PDB)石灰石をゼロと設定して定義され、値はこの物質からの千分偏差で与えられる。「δ13C」値は、千分偏差(パーミル)で表され、略して0/00であり、以下のように算出する:
δ13C(0/00)=[(13C/12C)試料-(13C/12C)標準]/(13C/12C)標準×1000
いくつかの実施形態では、本発明の方法によって生成される脂肪酸誘導体のδ13Cは、約-30以上、約-28以上、約-27以上、約-20以上、約-18以上、約-15以上、約-13以上または約-10以上である。あるいは、またはさらに、脂肪酸誘導体のδ13Cは、約-4以下、約-5以下、約-8以下、約-10以下、約-13以下、約-15以下、約-18以下または約-20以下である。したがって、脂肪酸誘導体は、上記の終端の任意の2つによって結びつけられたδ13Cを有することができる。例えば、脂肪酸誘導体のδ13Cは、約-30から約-15、約-27から約-19、約-25から約-21、約-15から約-5、約-13から約-7または約-13から約-10であってよい。いくつかの実施形態では、脂肪酸誘導体のδ13Cは、約-10、-11、-12または-12.3であってもよい。他の実施形態では、脂肪酸誘導体のδ13Cは、約-15.4以上である。さらに他の実施形態では、脂肪酸誘導体のδ13Cは、約-15.4から約-10.9、またはδ13Cは約-13.92から約-13.84である。
組換え微生物細胞によって生成される脂肪酸誘導体はまた、それぞれの化合物中の14Cの量を比較することによって、石油をベースにした有機化合物から区別することができる。14Cの核半減期は5730年なので、「古い」炭素を含有する石油をベースにした燃料は、「新しい」炭素を含有する脂肪酸またはそれらの誘導体と区別することができる(例えば、Currie,”Source Apportionment of Atmospheric Particles”, Characterization of
Environmental Particles, J. Buffle and H. P. van Leeuwen, Eds., Vol. I of the IUPAC Environmental Analytical Chemistry Series, Lewis Publishers, Inc., pp.3-74(1992)参照)。
本明細書で使用する場合、「現代炭素の画分」または「fM」は、それぞれシュウ酸標準物質HOxIおよびHOxIIとして知られている国立標準技術研究所(NIST)の標準物質(SRM)4990Bおよび4990Cによって定義された意味と同じ意味を有する。基本定義は、HOxIの14C/12C同位体比の0.95倍に関する(AD1950を参考にする)。これは、減衰補正された産業革命以前の森林とほぼ同等する。現代の生きている生物圏(植物物質)では、fMは約1.1である。
いくつかの実施形態では、本発明の方法によって生成される脂肪酸誘導体のfM
14Cは、少なくとも約1、例えば、少なくとも約1.003、少なくとも約1.01、少なくとも約1.04、少なくとも約1.111、少なくとも約1.18、または少なくとも約1.124である。あるいは、またはさらに、脂肪酸誘導体のfM
14Cは、約1.130以下、約1.124以下、約1.18以下、約1.111以下、約1.04以下である。したがって、脂肪酸誘導体は、上記終端の任意の2つによって結びつけられたfM
14Cを有することができる。例えば、脂肪酸誘導体は、約1.003から約1.124のfM
14C、約1.04から約1.18のfM
14C、または約1.111から約1.124のfM
14Cを有することができる。
刊行物、特許出願および特許を含む本明細書で引用した参考文献は全て、それぞれの参考文献が個々に、および具体的に参照により組み込まれることが示され、本明細書にその全体が記載されているのと同程度に参照により本明細書に組み込まれる。
本発明を説明する文脈における(特に以下の特許請求の範囲の文脈における)「a」および「an」および「the」という用語および類似の指示対象の使用は、本明細書で特に指示しない限り、または文脈と明らかに矛盾していない限り、単数および複数の両方を対象とするものとする。「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」および「含有する」という用語は、特に記載しない限り、オープンエンドな用語として解釈されるものである(すなわち、「限定はしないが、含む」を意味する)。本明細書の値の範囲の記述は、本明細書で特に指示しない限り、単に範囲内に含まれるそれぞれ別個の値を個々に言及する簡略化方法として使用されるものであり、それぞれ別個の値は本明細書で個々に記述したかのように本明細書に組み込まれる。本明細書で記載した方法は全て、本明細書で特に指示しない限り、または文脈と明らかに矛盾していない限り、任意の適切な順番で実施することができる。本明細書中で使用したあらゆる例または例示的な言い回し(「例えば(e.g.)」、「など(such as)」、「例えば(for example)」)の使用は、単に本発明をより明確にするためのものであり、特に請求されない限り、本発明の範囲に制限を設けるものではない。本明細書中のいかなる言い回しも、本発明の実施に不可欠である、特許請求されていない要素を示すものと解釈すべきではない。
本発明を実施する本発明者らに公知の最良の形態を含む、本発明の好ましい実施形態が本明細書で記載されている。それらの好ましい実施形態の変更は、前述の説明を読めば当業者には明らかになろう。本発明者は、当業者がこのような変更を適宜使用することを期待しており、本発明者らは特に本明細書で記載した以外の方法で本発明が実施されることを意図している。したがって、本発明は、適用可能な法によって許可されるように、添付の特許請求の範囲に列挙された対象の全ての改変および同等物を含む。さらに、本明細書で特に指示しない限り、または文脈と明らかに矛盾していない限り、それらの可能な変更全てにおける前述の要素の任意の組合せは本発明に包含される。
培地組成
Che-9培地:さらにNH4Cl(さらに1g/L)、ビス-Tris緩衝液(0.2M)、Triton X-100(0.1%v/v)および微量鉱物(FeCl3.6H2O 27mg/L、ZnCl.4H2O 2mg/L、CaCl2.6H2O 2mg/L、Na2MoO4.2H2O 2mg/L、CuSO4.5H2O 1.9mg/L、H3BO3 0.5mg/L、濃縮HCl 100 mL/L)を補給したM9。
2NBT:グルコース20g/L(2%w/v)を補給したChe-9。
4NBT:グルコース40g/L(4%w/v)を補給したChe-9。
細菌株およびプラスミド
E.コリMG1655 ΔfadE(「D1」株)
この実施例は、脂肪酸分解酵素の発現が減衰している組換え微生物細胞の構築について記載する。脂肪酸分解に関与するアシルコエンザイムA脱水素酵素(GenBank受託番号AAC73325)をコードするE.コリのfadE遺伝子(yafHとしても知られている)は、Datsenko, K.A. et al. (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 6640-6645 (2000))によって記載されたRed系を使用し、以下の改変を行ってE.コリ株MG1655から削除した。
以下の2個のプライマーは、fadEの欠失を作出するために使用した。
Del-fadE-F 5’ AAAAACAGCA ACAATGTGAG CTTTGTTGTAATTAT ATTGTAA ACATATT GATTCCGGGGATCCGTCGACC(配列番号82);および
Del-fadE-R 5’ AAACGGAGCCT TTCGGCTCCGTTATT CATTTACGCGGCTTCAAC TTTCCTG TAGGCTGGAGCTGCTTC(配列番号83)
Del-fadE-FおよびDel-fadE-Rプライマーは、PCRによってプラスミドpKD13からカナマイシン耐性(KmR)カセットを増幅するために使用した(Datsenko et al.、上記)。次に、このPCR生成物を使用して、Redリコンビナーゼ(Datsenko et al.、上記)を発現し、既にアラビノースで3~4時間誘導したプラスミドpKD46を含有するエレクトロコンピテントE.コリMG1655細胞を形質転換した。SOC培地で37℃で3時間増殖させた後、細胞をカナマイシン50μg/mLを含有するLuria寒天プレートに播種した。耐性コロニーを同定し、37℃で一晩インキュベーションした後単離した。E.コリfadE遺伝子に隣接するように設計されたプライマーfadE-L2およびfadE-R1を使用してPCR増幅することによって、fadE遺伝子の破壊がコロニーのいくつかで確認された。fadE-L2 5’-CGGGCAGGTGCTATGACCAGGAC(配列番号84);および
fadE-R1 5’-CGCGGCGTTGACCGGCAGCCTGG(配列番号85)
fadE欠失を確認した後、単一のコロニーを使用して、pCP20プラスミドを用いてKmRマーカーを除去した(Datsenko et al.、上記)。fadE遺伝子を削除し、KmRマーカーを除去して、得られたMG1655 E.コリ株は、E.コリMG1655 ΔfadEまたは「D1」株と称した。
E.コリMG1655 ΔfadE_ΔtonA(「DV2」株)
この実施例は、脂肪酸分解酵素の発現および外膜タンパク質受容体の発現が減衰している組換え微生物細胞の構築について記載する。バクテリオファージ受容体としても作用するフェリクローム外膜輸送体(GenBank受託番号NP_414692)をコードするE.コリMG1655のtonA(fhuAとしても知られている)遺伝子を、Datsenko et al.、上記にしたがってRed系を使用して、以下の改変を行ってD1株(前述)から削除した。
tonA欠失を作出するために使用したプライマーは、以下の通りであった。Del-tonA-F 5’-ATCATTCTCGTTTACGTTATCATTCACTTTACATCAGAGATATAC
CAATGATTCCGGGGATCCGTCGACC(配列番号86);およびDel-tonA-R 5’-GCACGGAAATCCGTGCCCCAAAAGAGAAATTAGAAACGGAAG
GTTGCGG TTGTAGGCTGGAGCTGCTTC(配列番号87)
Del-tonA-FおよびDel-tonA-Rプライマーは、PCRによってプラスミドpKD13からカナマイシン耐性(KmR)カセットを増幅するために使用した。この方法で得られたPCR生成物は、既にアラビノースで3~4時間誘導したpKD46を含有するエレクトロコンピテントE.コリMG1655 D1細胞(Datsenko
et al.、上記)を形質転換するために使用した。SOC培地で37℃で3時間増殖させた後、細胞をカナマイシン50μg/mLを含有するLuria寒天プレートに播種した。耐性コロニーを同定し、37℃で一晩インキュベートした後単離した。E.コリtonA遺伝子に隣接するプライマー:tonA-verFおよびtonA-verRを使用してPCR増幅することによって、tonA遺伝子の破壊がコロニーのいくつかで確認された。
tonA-verF 5’-CAACAGCAACCTGCTCAGCAA(配列番号88);および
tonA-verR 5’-AAGCTGGAGCAGCAAAGCGTT(配列番号89)
tonA欠失を確認した後、単一のコロニーを使用して、pCP20プラスミドを用いてKmRマーカーを除去した(Datsenko et al.、上記)。fadEおよびtonA遺伝子を削除して得られたMG1655 E.コリ株をE.コリ MG1655 ΔfadE ΔtonAまたは「DV2」株と称した。
E.コリ MG1655 ΔfadE_ΔtonA lacI:tesA(「DV2 ‘tesA」株)
この実施例では、脂肪酸誘導体酵素活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組換え微生物細胞の構築について記載する。E.コリ アシル-CoAチオエステラーゼI(EC3.1.1.5、3.1.2.-;例えば、GenBank受託番号AAC73596;配列番号64)をコードするtesAポリヌクレオチド配列は、リーダー配列を除去するために改変し、したがって、得られた‘tesA遺伝子生成物の25個のアミノ酸が切断され、元の26位のアミノ酸、アラニンがメチオニンで置換され、このメチオニンが‘TesAポリペプチド配列の最初のアミノ酸になった(配列番号65; Cho et al., J. Biol. Chem., 270:4216-4219 (1995))。
PTrcプロモーターおよびカナマイシン耐性遺伝子に操作可能に連結した‘tesAコーディング配列を含有する組み込みカセットは、プライマー
lacIフォワード: GGCTGGCTGGCATAAATATCTC(配列番号90)およびlacZリバース: GCGTTAAAGTTGTTCTGCTTCATCAGCAGGATATCCTGCACCATCGTCTGGATTTTGAACTTTTGCTTTGCCACGGAAC(配列番号91)
を使用してプラスミドpACYC-PTrc-tesAからPCR増幅し(実施例1、以下)、DV2株にエレクトロポレーションし、pKD46プラスミドから発現したRedリコンビナーゼを使用して染色体に組み込んだ(Datsenko et al.、上記)。形質転換体は、カナマイシンを補給したLBプレートで選択した。正確な組み込みは診断用PCRを使用して評価した。
pDG2発現ベクター
pDG2発現ベクターは、以下に記載したコンストラクトの多くの基礎となるプラスミドであった。pCDFDuet-1ベクター(Novagen/EMD Biosciences)は、CloDF13レプリコン、lacI遺伝子およびストレプトマイシン/スペクチノマイシン耐性遺伝子(aadA)を有する。pDG2プラスミドを構築するために、下流fabH遺伝子用の内部プロモーターを含有するplsX遺伝子のC末端部分(Podkovyrov and Larson, Nucl. Acids Res.
(1996) 24 (9): 1747-1752 (1996))をプライマー5’-TGAATTCCATGGCGCAACTCACTCTTCTTTTAGTCG-3’(配列番号92)および
5’-CAGTACCTCGAGTCTTCGTATACATATGCGCT CAGTCAC-3’(配列番号93)
を使用してE.コリMG1655ゲノムDNAから増幅した。これらのプライマーは、末端近くにNcoIおよびXhoI制限部位ならびに内部NdeI部位を導入した。
plsX挿入物(EcfabHプロモーターを含有する)およびpCDFDuet-1ベクターの両方は、制限酵素NcoIおよびXhoIで消化した。切断ベクターは、Antarcticホスファターゼで処理した。挿入物は、ベクターにライゲートし、形質転換コンピテントE.コリ細胞に形質転換した。クローンはDNA配列決定によってスクリーニングした。pDG2プラスミド配列は、本明細書では配列番号73とした。
FabH発現プラスミド
B.ズブチリスFabH1を発現するpDG6プラスミドは、pDG2プラスミドを使用して構築した。fabH1コーディング配列は、プライマー
5’-CCTTGGGGCATATGAAAGCTG-3’(配列番号94)および
5’-TTTAGTCATCTCGAGTGCACCTCACCTTT-3’(配列番号95)
を使用してバチルス・ズブチリス株168から増幅した。これらのプライマーは、増幅生成物の末端にNdeIおよびXhoI制限部位を導入した。
fabH1挿入物およびpDG2ベクターの両方は、制限酵素NdeIおよびXhoIで消化した。切断ベクターは、Antarcticホスファターゼで処理した。挿入物は、ベクターにライゲートし、形質転換コンピテントE.コリ細胞に形質転換した。クローンはDNA配列決定によってスクリーニングした。pDG6プラスミド配列は、本明細書では配列番号74とし、EcfabHプロモーターの制御下でB.ズブチリスFabH1ポリペプチド(配列番号2)を発現する。
pDG2をベースにした他のプラスミドは、pDG6プラスミドに使用した方法と類似の戦略を使用して調製した。プラスミドpDG7は、B.ズブチリスFabH2ポリペプチド(配列番号3)を発現するバチルス・ズブチリスfabH2コーディング配列を含む。プラスミドpDG8は、S.コエリカラーFabHポリペプチド(配列番号4)を発現するストレプトマイセス・コエリカラーfabHコーディング配列を含む。
pACYC-PTrc-tesAおよびpACYC-PTrc2-tesAプラスミド
プラスミドpACYC-PTrcは、lacIq、PTrcプロモーターおよびpTrcHis2A(Invitrogen、Carlsbad、CAA)のターミネーター領域をプライマー
pTrc_F TTTCGCGAGGCCGGCCCCGCCAACACCCGCTGACG(配列番号96)および
pTrc_R AAGGACGTCTTAATTAATCAGGAGAGCGTTCACCGACAA(配列番号97)
を使用してPCR増幅することによって構築した。
次に、PCR生成物をAatIIおよびNruIで消化し、AatIIおよびScaIで消化したプラスミドpACYC177(Rose, R.E., Nucleic Acids Res., 16:356 (1988))に挿入した。pACYC-PTrcベクターのヌクレオチド配列は、本明細書では配列番号75とした。
pACYC-PTrc2プラスミドを生成するために、単一の点突然変異をpACYC-PTrcプラスミドのPTrcプロモーターに導入し、変異体プロモーターPTrc2およびpACYC-PTrc2プラスミドを生成した。野生型PTrcプロモーター配列は、本明細書では配列番号76とし、PTrc2変異体プロモーターは本明細書では配列番号77とした。
E.コリ アシル-CoAチオエステラーゼI(TesA、EC3.1.1.5、3.1.2.-;例えば、GenBank受託番号AAC73596。配列番号64)をコードするヌクレオチド配列は、リーダー配列を除去するために改変し、したがって、得られた‘tesA遺伝子生成物の25個のアミノ酸が切断され、元の26位のアミノ酸、アラニンがメチオニンで置換され、このメチオニンが’TesAポリペプチドの最初のアミノ酸になった(配列番号65; Cho et al., J. Biol. Chem., 270:4216-4219 (1995))。‘TesAポリペプチドをコードするDNAをpACYC-PTrcベクターおよびpACYC-PTrc2ベクターのNcoIおよびEcoRI部位に挿入し、それぞれpACYC-PTrc-‘tesAおよびpACYC-PTrc2-‘tesAプラスミドを生成した。‘tesA配列のプラスミドへの正確な挿入は、制限消化によって確認した。
pOP80プラスミド
pOP80プラスミドは、制限酵素AflIIおよびSfoIでクローニングベクターpCL1920(GenBank AB236930; Lerner C.G. and Inouye M., Nucleic Acids Res. 18:4631
(1990))を消化することによって構築した。3種類のDNA断片がこの消化によって生成した。3737bp断片をゲル精製キット(Qiagen,Inc.、Valencia、CA)を使用してゲル精製した。並行して、市販のプラスミドpTrcHis2(Invitrogen、Carlsbad、CA)のPTrcプロモーターおよびlacI領域を含有するDNA配列断片は、プライマーLF302(5’-atatgacgtcGGCATCCGCTTACAGACA-3’, 配列番号98)およびLF303(5’-aattcttaagTCAGGAGAGCGTTCACCGACAA-3’, 配列番号99)を使用してPCRによって増幅し、それぞれZraIおよびAflII酵素の認識部位を導入した。増幅後、PCR生成物は、PCR精製キット(Qiagen,Inc.Valencia、CA)を使用して精製し、供給業者(New England BioLabs Inc.、Ipswich、MA)の推奨にしたがってZraIおよびAflIIで消化した。消化後、PCR生成物をゲル精製し、pCL1920から得られた3737bp DNA配列断片とライゲートし、PTrcプロモーターを含有する発現ベクターpOP80を生成した。
L.モノサイトゲネスfabH1およびfabH2プラスミド(pTB.079およびpTB.081)
リステリア・モノサイトゲネスLi23(ATCC19114D-5)のゲノムDNAは、以下のプライマーを使用してfabH遺伝子を増幅するための鋳型として使用した。TREE044 (fabH_フォワード) GAGGAATAAACCATGAACGCAGGAATTTTAGGAGTAG (配列番号100);プライマー61 (fabH_リバース) CCCAAGCTTCGAATTCTTACTTACCCCAACGAATGATTAGG (配列番号101)
次に、PCR生成物をpDS80(ファージラムダPLプロモーターを有するpCL1920をベースにしたベクター、配列番号78)のNcoI/EcoRI部位にクローニングし、形質転換コンピテントE.コリ細胞に形質転換した。クローニングされた挿入物の配列を検証するために個々のコロニーを採取した。野生型L.モノサイトゲネスfabHの核酸配列は、野生型LmFabH1タンパク質(配列番号7)をコードし、この配列を発現するプラスミドはpTB.079と称した。
突然変異体L.モノサイトゲネスfabH遺伝子は、928位にTからGへの変化を含有することが発見され、発現したタンパク質においてアミノ酸位置310のトリプトファン(W)からグリシン(G)への変化、すなわちW310G変異体が生じた。FabHW310G変異体をコードする突然変異体L.モノサイトゲネスfabH遺伝子(配列番号8)は、LmFabH2と称し、この配列を発現するプラスミドはpTB.081と称した。
pOP80をベースにしたfabH発現プラスミド
各遺伝子は指示した鋳型およびプライマーからPCR増幅された(表6)。E.コリコドン最適化配列を使用したPffabH(配列番号150)以外は、各遺伝子の天然の配列型を使用した。遺伝子PffabH(opt)、DpfabH1およびDpfabH2は、DNA2.0(Menlo Park、CA)によって合成した。クローニングベクターはまた、鋳型としてプラスミドOP80を使用して、プライマーPTrc_ベクター_FおよびPTrc_vector_R(表7)でPCR増幅した。次に、異なるfabH遺伝子をPCR増幅OP80ベクター主鎖にInFusionクローニングを使用してクローニングした(Clontech、Mountain View CA)。製造者によって概略を示された標準プロトコールに従った。全コンストラクトは、配列決定によって検証した。
経路(A)による奇数鎖脂肪酸の生成のためのE.コリの操作
以下の実施例は、図2の経路(A)による中間体スレオニンおよびα-ケト酪酸を通ってプロピオニル-CoAに至る代謝流の増加に役立ち、これらの組換え細胞における奇数鎖アシル-ACPおよび奇数鎖脂肪酸誘導体の生成増加を引き起こす酵素をコードする外来遺伝子を発現する、および/または内在性遺伝子を過剰発現する組換えE.コリ株の構築について記載する。
この実施例はまた、内在性遺伝子の発現の減衰および内在性遺伝子と外来性遺伝子との置換のoc-FA生成に対する効果を実証しており、この実施例において、β-ケトアシル-ACP合成酵素をコードする内在性E.コリfabH遺伝子の発現は、遺伝子の削除によって減衰し、β-ケトアシル-ACP合成酵素活性は、外来性B.ズブチリスfabH1遺伝子の発現によって供給された。
DV2 PLthrA*BC
スレオニン生合成に関与する染色体遺伝子が、強力な染色体組み込みラムダPLプロモーターの制御化にあり、遺伝子の1つが突然変異した組換えE.コリ株を構築した。
天然のアスパルトキナーゼI(thrA)遺伝子に1つの突然変異を導入するために、E.コリMG1655DNAから2つの部分の遺伝子を増幅した。第1の部分は、プライマーTREE026およびTREE028を使用して増幅し、一方、第2の部分はTREE029およびTREE030を使用して増幅した(表6)。2つの成分を増幅するために使用したプライマーは、次に個々の区画を一緒に「つなぎ合わせる(stitch)」ために使用した重複する配列を含有した。2個のPCR生成物は、thrA遺伝子全体を増幅するために1つのPCR反応ならびにプライマーTREE026およびTREE030と一緒にされた。プライマーTREE028およびTREE029は、天然のthrAのコドン345において突然変異を作出するために設計されており、アスパルトキナーゼIのS345F変異体(配列番号21)を生じた。この突然変異は、宿主株においてスレオニンによる酵素のフィードバック阻害を排除することが示された(Ogawa-Miyata,Y., et al., Biosci. Biotechnol. Biochem. 65:1149-1154 (2001); Lee J.-H., et al., J. Bacteriol. 185: 5442-5451 (2003))。この遺伝子の改変型を「thrA*」と称した。
PLプロモーターは、プライマーKm_trc_overFおよびTREE027(表8)を使用して、鋳型としてプラスミドpDS80(ファージラムダPLプロモーターを有するpCL1920をベースにしたベクター;配列番号78)を使用して増幅した。この断片を次に、FRT部位に隣接したカナマイシン耐性カセットにつなぎ合わせ、プラスミドpKD13からプライマーTREE025およびKm_trc_overR(表8)を使用してから増幅した。KmFRTカセットおよびPLプロモーターを含有する得られたPCR生成物をthrA*PCR生成物につなぎ合わせた。プライマーTREE025およびTREE030を使用して、KmFRT-PL-thrA*突然変異誘発カセット全体を増幅した。これらのプライマーはまた、5’末端に組み込み部位に相同な約50bp、3’末端に相同なthrA遺伝子全体を含有し、thrA、thrBおよびthrC遺伝子を含むオペロンの一部であるカセットをE.コリの天然のthrA部位に標的化する。この突然変異誘発カセットを、Redリコンビナーゼを発現するヘルパープラスミドpKD46を含有する親株E.coli DV2にエレクトロポレーションした(実施例1)(Datsenko et al.、上記)。染色体組み込みを含有するクローンは、カナマイシンの存在下で選択し、診断用PCRによって検証した。その後、カナマイシンマーカーをpCP20プラスミドの発現によって除去した(Datsenko et al.、上記)。適切な組み込みおよびマーカー除去は、PCRおよび配列決定によって検証した。突然変異体thrA*遺伝子ならびに内在性thrBおよびthrC遺伝子が染色体組み込みラムダPLプロモーターによって過剰発現している得られた株は、DV2
PL thrA*BCと称した。
DV2 PL thrA*BC PL tdcB
天然のE.コリ異化スレオニンデアミナーゼ(tdcB)遺伝子(スレオニンンアンモニアリアーゼとしても知られている)は、遺伝子のさらなるコピーをlacZ座に組み込み、強力な染色体組み込みラムダPLプロモーターの制御下に置くことによって過剰発現させた。
異化スレオニンデアミナーゼは、スレオニン分解/イソロイシン生成経路の第1反応であるスレオニンのα-ケト酪酸への分解を触媒する。触媒された反応は、最初に水の排除(したがって、この酵素はスレオニン脱水酵素として最初は分類された)、次いでC-N結合切断による生成物の異性化および加水分解に関与するものと考えられる。この遺伝子の発現増加は、異種生物においてイソロイシンのレベルを劇的に増加させることが示された(Guillouet S. et al., Appl. Environ. Microbiol. 65:3100-3107 (1999))。さらに、スレオニンデアミナーゼはイソロイシンフィードバック機構に比較的耐性を有する(Guillouet et al.、上記)。
E.コリMG1655ゲノムDNAは、天然のtdcB遺伝子を得るためにプライマーTREE020およびTREE021(表8)を使用して増幅した。同時に、プライマーKan/Chlor1およびKan/Chlor4(表8)を使用して、既に記載したような組み込み選択/スクリーニングに使用するためのFRT-カナマイシン耐性カセットを増幅した。鋳型としてE.コリMG1655ゲノムDNAを使用し、プライマーEG238およびTREE018(表8)はlacZ組み込み部位に相同な3’の領域を増幅するために使用し、一方プライマーTREE022およびTREE023(表8)はlacZ部位に相同な5’の領域を増幅するために使用した。プラスミドpDS80(ファージラムダPLプロモーター;配列番号78を有するpCL1920をベースにしたベクター)を鋳型として使用して、プライマーTREE017およびTREE018(表8)を用いることによってPLプロモーターを含有する断片を増幅した。これらの断片のそれぞれは、対応する近接した区画に重複して設計され、SOEing PCR技術を使用して一緒につなぎ合わせた。得られたPLtdcB突然変異誘発カセット(約4.3kb)は、5’末端の組み込み部位に相同な約700bpおよび3’末端の組み込み部位に相同な750bpを含有した。PLtdcB突然変異誘発カセットは、ヘルパープラスミド、pKD46を含有する宿主株E.coli DV2 PLthrA*BC(上記)にエレクトロポレーションした(Datsenko et al.、上記)。染色体組み込みを含有するクローンは、カナマイシンの存在下で選択し、PCRおよび配列決定分析によって検証した。その後、カナマイシンマーカーをpCP22プラスミドを使用して除去した(Datsenko et al.、上記)。得られた株はDV2 PLthrA*BC PL tdcBと称した。この株を、E.コリtesAの切断型を発現するプラスミドpACYC-ptrc2-‘tesA(実施例1)で形質転換した。
この株はまた、B.ズブチリスFabH1酵素を発現するプラスミドpDG6(実施例1)で形質転換した。発酵実験を実施し、遊離脂肪酸(FFA)、奇数鎖脂肪酸(oc-FA)およびoc-FAとして生成したFFAの画分の力価を、実施例5および表11に示したように測定した。あるいは、この株は、例えば、B.ズブチリスFabH2を発現するpDG7、ストレプトマイセス・コエリカラーFabHを発現するpDG8、リステリア・モノサイトゲネスFabHを発現するpTB.079、リステリア・モノサイトゲネスFabHW310G変異体を発現するpTB.081または実施例5および表12A~12Cで記載したFabHプラスミドなどの様々なFabHポリペプチドを発現するプラスミドで形質転換することができる。発酵実験を実施し、遊離脂肪酸(FFA)、奇数鎖脂肪酸(oc-FA)およびoc-FAとして生成したFFAの画分の力価を測定する。
DV2 PL-thrA*BC PT5-BsfabH1
B.ズブチリスfabH1遺伝子が染色体に組み込まれ、強力な構成T5プロモーターの転写制御下に置かれた組換え体E.コリ株を構築した。
最初に、DV2PLthrA*BCのfadE欠失痕の部位にクロラムフェニコール耐性遺伝子、T5プロモーター(PT5)およびBsfabH1コーディング配列を含むloxPcat組み込みカセットの染色体組み込みのためにPCR生成物を生成した。組み込みカセットの個々の成分を最初にPCR増幅した。loxP-cat-loxP PT5成分は、プライマーTREE133およびTREE135(表9)を使用してプラスミドp100.38(配列番号79)から増幅した。BsfabH1遺伝子は、プライマーTREE134およびTREE136を使用してBsfabH1遺伝子を有するプラスミドから増幅した。プライマーTREE133およびTREE136は、組み込みのための相同配列の5’および3’の50bpを含有する。成分を増幅するために使用したプライマーは、次に個々の区画を一緒に「つなぎ合わせる」ために使用した重複する配列を含有する。loxP-cat-PT5およびBsfabH1のPCR生成物は、1つのPCR反応において両区画を一緒にし、プライマーTREE133およびTREE136を使用することによって一緒につなぎ合わせ、最終的なloxPcat-PT5-BsfabH1組み込みカセットを増幅した。
loxP-cat-PT5-BsfabH1カセットは、Redリコンビナーゼ系を使用して組み込んだ(Datsenko, et al.、上記)。loxP-cat-PT5-BsfabH1PCR生成物を使用して、既にアラビノースで30℃で3~4時間誘導したプラスミドpKD46を含有するエレクトロコンピテントDV2 PL-thrA*BC細胞を形質転換した。SOC培地で37℃で3時間増殖させた後、細胞をクロラムフェニコール17μg/mLを含有するLuria寒天プレートに播種し、37℃で一晩インキュベートした。クロラムフェニコール耐性コロニーのloxP-cat-PT5-BsfabH1の適切な組み込みは、PCRによってスクリーニングした。染色体組み込み部位に隣接するプライマーfadE-L2およびfadE-R2(表9)を使用して、組み込みを確認した。組み込みを検証して、クロラムフェニコールマーカー遺伝子は、クロラムフェニコール耐性遺伝子に隣接する2つのloxP部位の間の再結合を促進するCreリコンビナーゼを発現することによって除去した。creリコンビナーゼ遺伝子を有するプラスミドpJW168は、DV2 PL-thrA*BC loxP-cat-PT5-BsfabH1株に形質転換し、マーカーはPalmeros et al.(Gene 247:255-264 (2000))によって記載された方法にしたがって除去した。得られたDV2 PL-thrA*BC PT5-BsFabH1株は、配列決定によって検証した。
DV2 PL-thrA*BC PT5-BsfabH1 ΔEcfabH
内在性遺伝子の発現(この場合、E.コリのfabH遺伝子)がその遺伝子の欠失によって減衰している組換えE.コリ株を構築した。
E.コリのfabH遺伝子は、DV2 PL-thrA*BC PT5-BsFabH1からRedリコンビナーゼ系を使用して削除した(Datsenko et al.、上記)。プライマーTREE137およびTREE138(表9)を使用して、PCRによってプラスミドpKD13からカナマイシン耐性カセットを増幅した。次に、PCR生成物を使用して、プラスミドpKD46を含有するエレクトロコンピテントDV2 PL-thrA*BC PT5-BsfabH1細胞を形質転換した。EcfabHの削除およびカナマイシンマーカーの除去は、Wanner and Datsenko、上記によって記載された方法にしたがって実施した。プライマーTREE139およびTREE140を使用してEcfabHの削除を確認した。最終的にマーカーのない株は、DV2
PL-thrA*BC PT5-BsFabH1 ΔEcfabHと称した。
DV2 PL-thrA*BC PL-tdcB PT5-BsfabH1 ΔEcfabH
図2に示した経路(A)および図1Bに示したoc-FA生合成経路の工程(D)の酵素を過剰発現する染色体組み込み遺伝子を含有する組換えE.コリ株を構築した。PL-tdcB突然変異誘発カセット(前述したように調製)をDV2 PL-thrA*BC
PT5-BsfabH1 ΔEcfabH株に組み込んで、DV2 PL-thrA*BC PL-tdcB PT5BsfabH1 ΔEcfabF株を生成した。この株では、組み込まれたE.コリthrA*BC遺伝子および組み込まれたE.コリtdcB遺伝子はいずれも強力なラムダPLプロモーターの制御下にあり、組み込まれたB.ズブチリスfabH1遺伝子は、強力なT5プロモーターの制御下にあり、内在性E.コリfabH遺伝子は削除された。発酵実験を実施し、結果を表11に示す。
経路(B)による奇数鎖脂肪酸の生成のためのE.コリの操作
以下の実施例は、図2の経路(B)による中間体シトラマル酸およびα-ケト酪酸を通ってプロピオニル-CoAに至る代謝流の増加に役立ち、これらの組換え細胞における奇数鎖アシル-ACPおよび奇数鎖脂肪酸誘導体の生成増加を引き起こす酵素をコードする外来遺伝子を発現する、および/または内在性遺伝子を過剰発現する組換えE.コリ株の構築について記載する。
DV2 PTrc-cimA3.7 leuBCD
内在性leuBCD遺伝子および外来性cimA3.7遺伝子を過剰発現するE.コリ株を調製するために、内在性染色体E.コリleuAとleuB遺伝子との間のKmFRTカセット、PTrcプロモーターおよびcimA3.7の染色体組み込みのためにPCR生成物を生成した。この組み込みによって天然のleuABCDオペロンは破壊され、cimA3.7およびleuBCDはオペロン内で強力なIPTG誘導性プロモーター、PTrcの制御下に置かれた。
CimA3.7をコードするDNAは、Geneart AG(Regensburg、Germany)によって合成された。DNAは、プラスミドpMK-RQ(kanR)のSfiI部位にクローニングされた(Geneart AG、Regensburg、Germany)。コーディング配列に隣接して、5’KpnI制限部位はATG開始コドンの直接上流、3’SacI制限部位はTAA終止コドンのすぐ下流にそれぞれ導入された。cimA3.7クローニングベクターは、配列決定によって検証した。
組み込みカセットの個々の成分を以下のようにPCR増幅した。KmFRT成分は、プライマーTREE146およびKm_trc_overR(表10)を使用してプラスミドpKD13から増幅した。PTrcプロモーターは、プライマーKm_trc_overFおよびTREE033を使用してpOP80から増幅した(実施例1)。
cimA3.7コーディング配列は、プライマーTREE032およびTREE035を使用して、前述のcimA3.7クローニングベクターから増幅した。組み込みのための3’相同配列を形成するために、E.コリ天然leuBC遺伝子を、E.コリゲノムDNAならびにプライマーTREE034およびTREE104を使用して増幅した。KmFRTカセットを増幅するために使用したフォワードプライマーTREE146には、組み込みのための相同配列の5’50bpが含まれた。成分を増幅するために使用したプライマーそれぞれは、個々の区画を一緒に「つなぎ合わせる」ために使用した重複する配列を含有した。最初に、KmFRTおよびPTrcは、1つのPCR反応において両区画を一緒にすることによって一緒につなぎ合わせ、プライマーTREE146およびTREE033を使用してKmFRT-PTrc生成物を増幅した。次に、プライマーTREE146およびTREE035を使用してKmFRT-PTrcをcimA3.7とつなぎ合わせ、KmFRT-PTrc-cimA3.7を生成した。最終的な区画、leuBCは、プライマーTREE146およびTREE104を使用してKmFRT-PTrc-cimA3.7につなぎ合わせ、最終的な組み込みカセット:KmFRT-PTrc-cimA3.7 leuBCを生成した。
KmFRT-PTrc-cimA3.7 leuBCカセットは、Redリコンビナーゼ系を使用してE.コリゲノムに組み込んだ(Datsenko, et al.、上記)。KmFRT-PTrc-cimA3.7 leuBC PCR生成物を使用して、既にアラビノースで30℃で3~4時間誘導されたプラスミドpKD46を含有するエレクトロコンピテントE.コリMG1655DV2細胞を形質転換した。SOC培地で37℃で3時間増殖させた後、細胞をカナマイシン50μg/mLを含有するLuria寒天プレートに播種し、37℃で一晩インキュベートした。カナマイシン耐性コロニーのKmFRT-PTrc-cimA3.7の適切な組み込みは、PCRによってスクリーニングした。染色体組み込み部位に隣接するプライマーTREE151およびTREE106を使用して、組み込みを確認した。組み込みを検証して、カナマイシンマーカー遺伝子はDatsenko et al.、上記によって記載された方法によって除去した。最終的な株DV2 PTrccimA3.7 leuBCDにおけるPTrc-cimA3.7の組み込み成功およびカナマイシンマーカー遺伝子の除去は、配列決定によって検証した。
この株をE.コリtesAの切断型を発現するプラスミドpACYC-ptrc2-tesAで形質転換し、場合によっては、B.ズブチリスfabH1を発現するpDG6で形質転換した。発酵実験を実施し、遊離脂肪酸(FFA)、奇数鎖脂肪酸(oc-FA)およびoc-FAとして生成したFFAの画分の力価を表11に挙げる。
経路(A)および(B)の組合せによる奇数鎖脂肪酸の生成のためのE.コリの操作
以下の実施例は、図2の経路(A)および(B)の組合せによる一般的な中間体α-ケト酪酸を通りプロピオニル-CoAに至る代謝流の増加に役立ち、これらの組換え細胞におけるoc-アシル-ACPおよび奇数鎖脂肪酸の生成増加も引き起こす酵素をコードする外来遺伝子を発現する、および/または内在性遺伝子を過剰発現する組換えE.コリ株の構築について記載する。
DV2 PL-thrA*BC PTrc-cimA3.7_leuBCD PT5-BsfabH1 ΔEcfabH(「G1」株)
図2の経路(A)および(B)の組合せを開始するために、PTrc-cimA3.7_leuBCDカセット(実施例5)をDV2 PL-thrA*BC PT5-BsfabH1 ΔEcfabH株に組み込んで(実施例4)、株G1とも称するDV2 PL-thrA*BC PTrc-cimA3.7_leuBCD PT5-BsfabH1
ΔEcfabH株を生成した。この株は、oc-FA経路の経路(B)による(R)-シトラマル酸合成酵素活性、イソプロピルリンゴ酸イソメラーゼ活性およびベータ-イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素活性を有するポリペプチドを過剰発現し、oc-FA経路(図2)の経路(A)によるアスパルトキナーゼ活性、ホモセリン脱水素酵素活性、ホモセリンキナーゼ活性およびスレオニン合成酵素活性を有するポリペプチドを過剰発現した。
DV2 PL-thrA*BC PL-tdcB PTrc-cimA3.7_leuBCD PT5-BsfabH1 ΔEcfabH(株「G2」)
oc-FA経路の経路(A)および(B)の組合せに対応する活性を有するポリペプチドを過剰発現するように操作した株を作出するために、PL-tdcBカセット(実施例4)を株G1に組み込んで、株G2とも称するDV2 PL-thrA*BC PL-tdcB PTrc-cimA3.7_leuBCD PT5-BsfabH1 ΔEcfabH株を生成した。この株では、組み込まれたE.コリthrA*BC遺伝子および組み込まれたE.コリtdcB遺伝子(経路(A)に対応するアスパルトキナーゼ活性、ホモセリン脱水素酵素活性、ホモセリンキナーゼ活性、スレオニン合成酵素活性およびスレオニンデアミナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする)を強力なラムダPLプロモーターの制御下に置き、過剰発現させた。外来性cimA3.7遺伝子および天然のE.コリleuBCD遺伝子(経路(B)に対応する(R)-シトラマル酸合成酵素活性、イソプロピルリンゴ酸イソメラーゼ活性およびベータ-イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素活性を有するポリペプチドをコードする)はまた、E.コリ染色体において強力なIPTG誘導性プロモーターPTrcの制御下に組み込み、したがってまた過剰発現させた。oc-FA経路の部分(D)(図1B)に対応する分枝鎖ベータケトアシル-ACP合成酵素をコードする組み込まれたB.ズブチリスfabH1遺伝子を、強力なT5プロモーターの制御下に置いた。内在性E.コリfabH遺伝子はこの株から削除した。
奇数鎖脂肪酸生成の評価
以下の実施例は、スレオニン依存性経路(図2の経路(A))またはシトラマル酸経路(図2の経路(B))のどちらかを介することによって、プロピオニル-CoAを生成するために一般的なα-ケト酪酸中間体を通る代謝流を増加させる酵素をコードする外来性遺伝子を発現し、および/または内在性遺伝子を過剰発現するように操作されたE.コリ株における直鎖状奇数鎖脂肪酸の生成を示す。奇数鎖脂肪酸生成のための「プライマー」分子として役立つプロピオニル-CoAをその後、β-ケトアシル-ACP合成酵素III(FabH)の作用によってマロニル-ACPと縮合して、奇数鎖脂肪酸およびoc-FA誘導体を生成するための脂肪酸合成サイクルに入る奇数鎖β-ケトアシル-ACP中間体を形成する。したがって、この実施例はまた、外来性FabH酵素の奇数鎖脂肪酸生成に対する効果を実証する。
1組目の実験では、4N-BTプロトコールを使用して96ディープウェルプレート発酵を実施することによって、株の遊離脂肪酸(FFA)生成を評価した。単一のコロニーまたはグリセロールストックからの掻き取りを使用してLB+抗生物質(複数可)300μLに接種した。LB種培養物は、濁るまで250rpmで振盪しながら、37℃で6~8時間増殖させた。LB培養物20μLを使用して2N-BT 400μLに接種した。これらを250rpmで振盪しながら32℃で一晩増殖させた。翌朝、2N-BT培養物20μLを4N-BT 400μLに移した。4N-BT培養物を250rpmで振盪しながら32℃で6時間増殖させ、その時点で細胞をIPTG 1mMで誘導した。誘導して、培養物を16~18時間さらに増殖させた後、抽出して、FFA生成を分析した。HCl 1M 40μL、次いでC24アルカン内部標準500mg/Lでスパイクした酢酸ブチル400μLを各ウェルに添加した。2000rpmで15分間ボルテックスすることによって細胞を抽出した。抽出物は、等容量のN,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA)で誘導体化した後、GC/MSによって分析した。
これらの実験で生成した奇数鎖脂肪酸は一般的に、C13:0、C15:0、C17:0およびC17:1脂肪酸を含み、C15:0が生成される主なoc-FAである。
表11の株1および2の比較によって、微生物細胞がスレオニンの生合成および分解に関与する遺伝子を過剰発現し、経路中間体α-ケト酪酸を通る代謝流を増加させ、細胞によって生成する奇数鎖長脂肪酸の割合を著しく増加させることが示される。親DV2株は直鎖脂肪酸を生成し、奇数鎖長脂肪酸の生成は無視できる量にすぎなかったが、thrA*BCおよびtdcB遺伝子(アスパルトキナーゼ活性、ホモセリン脱水素酵素活性、ホモセリンキナーゼ活性、スレオニン合成酵素活性およびスレオニンデアミナーゼ活性を有するポリペプチドをコードする)を過剰発現するDV2株は、著しく多量および著しく高い割合の奇数鎖長脂肪酸を生成し、生成した直鎖脂肪酸の約18%(重量)が奇数鎖長脂肪酸であった。
株2および3は、プロピオニル-CoAに対して高い特異性を有する外来性β-ケトアシルACP合成酵素を含むことによってoc-FA生成に対する効果を示す。株2は、天然(内在性)E.コリfabH遺伝子を含有した。B.ズブチリスfabH1遺伝子を発現するプラスミドを導入することによって、oc-FA生成は、生成した直鎖脂肪酸の約18%(株2)から約37%(株3)に著しく増加した。
oc-FA生成に対する際だった効果は、内在性E.コリfabH遺伝子が削除され、B.ズブチリスfabH1遺伝子が染色体に組み込まれたときに観察された。株4では、oc-FAの割合は、生成した直鎖脂肪酸の72%に増加した。
株5および6は、別のアプローチによって、今度はシトラマル酸生合成および分解に関与する経路によってα-ケト酪酸を通る代謝流を増加させることによってまた、生成する奇数鎖長脂肪酸の割合が増加することを示す。cimA3.7およびleuBCD遺伝子((R)-シトラマル酸合成酵素活性、イソプロピルリンゴ酸イソメラーゼ活性およびβ-イソプロピルリンゴ酸脱水素酵素活性を有するポリペプチドをコードする)を過剰発現するようにDV2株を操作することによって、生成した直鎖脂肪酸の約4%が奇数鎖長を有し、プラスミド発現B.ズブチリスfabH1を含めると約13%に増加した。
株7および9は、oc-FA生成に対するスレオニンおよびシトラマル酸経路の組合せの効果を示す。thrA*BC、cimA3.7およびleuBCD遺伝子が過剰発現している株G1では、内在性E.コリfabH遺伝子は削除され、B.ズブチリスfabH1遺伝子が染色体に組み込まれ、生成する直鎖脂肪酸の約26%が奇数鎖脂肪酸であった。thrA*BC、tdcB、cimA3.7およびleuBCD遺伝子が過剰発現している株G2では、内在性E.コリfabH遺伝子は削除され、B.ズブチリスfabH1遺伝子が染色体に組み込まれ、生成する直鎖脂肪酸のほぼ90%が奇数鎖脂肪酸であった。‘tesA遺伝子が染色体のTn7付着部位に組み込まれた株G1/Tn7-tesAおよびG/Tn7-tesA(それぞれ株8および10)は、‘tesA遺伝子がプラスミド発現した株G1およびG2(それぞれ、株7および9)におけるのとほぼ同等のoc-FAの量および割合を示した。
2組目の実験では、プロピオニル-CoA生成の役割およびoc-FA生成に対するFabH酵素の効果を調べた。この実験では、外来性fabHコーディング配列をpOP80発現ベクターにクローニングし(実施例1)、発現を強力なPTrcプロモーターによって制御した。fabH発現コンストラクト(または、外来性fabHを欠如する株においてはpOP80ベクターのみ)を‘tesAプラスミドpACYC-PTrc2-tesAと一緒に以下の株に形質転換した:
- DV2
- DV2 cimA3.7_leuBCD(図2のシトラマル酸経路(B)を介したプロピオニル-CoAの増加)
- DV2 thrA*BCtdcB(図2のthr依存経路(A)を介したプロピオニル-CoAの増加)
単一のコロニーまたは凍結したグリセロールストックからの掻き取りを使用してLB+抗生物質(複数可)300μLに接種した。LB種培養物は、濁るまで250rpmで振盪しながら、37℃で6~8時間増殖させた。LB培養物20μLを使用して2N-BT培地400μLに接種した。これらを一晩250rpmで振盪しながら32℃で少なくとも14時間増殖させた。翌朝、2N-BT培養物20μLを4N-BT 400μLに移した。4N-BT培養物を250rpmで振盪しながら32℃で6時間増殖させ、その時点で細胞をIPTG 1mMで誘導した。誘導して、培養物を20~22時間さらに増殖させた後、抽出して、遊離脂肪酸(FFA)生成を分析した。HCl 1M 40μL、次いで酢酸ブチル400μLを各ウェルに添加した。2000rpmで15分間ボルテックスすることによって細胞を抽出した。抽出物は、等容量のN,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA)で誘導体化した後、水素炎イオン化検出器を結合させたGC(GC-FID)によって分析した。
様々なfabH遺伝子を発現する株によって生成される全遊離脂肪酸に対する奇数鎖脂肪酸の比を以下の表12A-Cに挙げる。対照DV2株において生成した奇数鎖脂肪酸比は表12Aに挙げ、一方、シトラマル酸経路(図2の経路(B))またはスレオニン依存性経路(図2の経路(A))のどちらかの方法によってプロピオニル-CoAへの代謝流の増加のために操作された株における奇数鎖脂肪酸比はそれぞれ表12Bおよび12Cに示す。
表12A~12Cで記載した株は全て、内在性E.コリfabH遺伝子を発現した。株2~10はそれぞれ、プラスミド発現外来性fabH遺伝子をさらに含有した。内在性E.コリfabH遺伝子の削除および外来性B.ズブチリスfabH1遺伝子の染色体組み込みによって、内在性E.コリfabHおよびプラスミド発現外来性B.ズブチリスfabH1を含有する株と比較して(表11、株3)より多量およびより高い割合のoc-FAが生成されることが表11(上記)で示された(表11、株4)。それにも関わらず、表12A-12Cに示した結果は、(a)試験したfabH発現株の全てが、高いα-ケト酪酸およびプロピオニル-CoAレベルのために操作された株、DV2 cimA3.7 leuBCD(表12B)およびDV2thrA*BC tdcB(表12C)において著しい直鎖状oc-脂肪酸生成を表したが、DV2対照株においてはあまりoc-脂肪酸生成は観察されなかった(表12A)ので、プロピオニル-CoAは細菌における組換え直鎖状奇数鎖脂肪酸生成に必要な前駆体であり、(b)組換え直鎖状oc-脂肪酸生成は、メンバーが分枝鎖脂肪酸および/または奇数鎖脂肪酸を含有する生物から単離された様々な異種FabH酵素の存在下で生じることを示している。このようなFabH酵素は、脂肪酸生合成のプライミング反応においてプロピオニル-CoA分子を利用し、奇数鎖脂肪酸生合成能力を組換え微生物に付与することができる。
結論として、この実施例は、通常偶数鎖脂肪酸を生成する微生物は、プロピオニル-CoAを通る代謝流を増加させ、プロピオニル-CoAを利用するβ-ケトアシル合成酵素(FabH)酵素を発現することによって奇数鎖脂肪酸を生成するように操作することができることを示している。実施例6(以下)は、プロピオニル-CoAを通る代謝流を増加させるように操作できる代替経路を示す。奇数鎖脂肪酸を生成するように操作された組換え微生物は、奇数鎖脂肪アルコール(実施例7)および偶数鎖アルカン(実施例8)などの奇数鎖脂肪酸誘導体を生成するようにさらに改変することができる。
経路(C)による奇数鎖脂肪酸の生成のためのE.コリの操作
以下の実施例は、図3の経路(C)によってプロピオニル-CoAを生成するために中間体メチルマロニル-CoAを通る代謝流の増加に役立ち、これらの組換え細胞における奇数鎖アシル-ACPおよび奇数鎖脂肪酸誘導体の生成増加を引き起こす酵素をコードする外来遺伝子を発現する、および/または内在性遺伝子を過剰発現する組換えE.コリ株の構築について記載する。特に、この実施例は、プラスミドで内在性メチルマロニル-CoAムターゼ(scpA/sbm)およびメチルマロニル-CoAデカルボキシラーゼ(scpB/ygfG)遺伝子を過剰発現し、染色体のプロピオニル-CoA:スクシニル-CoAトランスフェラーゼ(scpC/ygfH)およびscpB/ygfG遺伝子が削除されたE.コリ株における奇数鎖脂肪酸の生成について記載する。
E.コリ株DV2、プラスミドpDG6(B.ズブチリスFabH1を発現する)およびプラスミドpACYC-pTrc2-tesA(切断型‘TesAポリペプチドを発現する)は、実施例1において記載されたように調製した。
プラスミドpACYC-PTrc-sbm-ygfG
プラスミドpACYC-PTrc-sbm-ygfGは、メチルマロニル-CoAムターゼをコードするE.コリsbmおよびメチルマロニル-CoAデカルボキシラーゼをコードするE.コリygfGを過剰発現するpACYC-PTrcプラスミド(実施例1)である。pACYC-PTrc-sbm-ygfGの配列は、本明細書では配列番号80とする。
sDF4株
sDF4株は、染色体のscpBおよびscpC遺伝子を削除し、天然のfrdプロモーターをtrcプロモーターと置換し、‘tesA遺伝子を染色体のTn7付着部位に組み込んだE.コリ株DV2である。
‘tesA遺伝子を組み込むために、pACYC-PTrc-‘tesAプラスミド(実施例1)を以下のプライマー:
IFF: 5’-GGGTCAATAGCGGCCGCCAATTCGCGCGCGAAGGCG(配列番号140)
IFR: 5’-TGGCGCGCCTCCTAGGGCATTACGCTGACTTGACGGG(配列番号141)
を使用して増幅することによってPTrc-‘tesA組み込みカセットをまず調製した。
組み込みカセットは、pGRG25(GenBank受託番号DQ460223)のNotIおよびAvrII制限部位に挿入し、lacIq、PTrc-‘tesAカセットの左右にTn7末端が隣接したTn7tesプラスミド(配列番号81)を作出した。
sDF4株を調製するために、McKenzie et al., BMC Microbiology 6:39 (2006)によって記載されたプロトコールを使用してプラスミドTn7tesをまずE.コリ株DV2(実施例1)にエレクトロポレーションした。エレクトロポレーション後、アンピシリン耐性細胞を、グルコース0.1%およびカルベニシリン100μg/mLを含有するLB培地において32℃で一晩増殖させることによって選択した。これに続いて、LBおよびアラビノース0.1%プレートでの32℃で一晩の細胞の増殖を使用して、Tn7遺伝子転移画分を含むプラスミドを選択した。単一のコロニーを選択し、アンピシリンを含むおよび含まない新たなLB培地プレートに画線し、Tn7tesプラスミドを回復するために42℃で一晩増殖させた。したがって、lacIq、PTrc-‘tesAをpstSおよびglmS遺伝子の間に位置するE.コリ染色体のattTn7部位に組み込んだ。これらの遺伝子の組み込みは、PCRおよび配列決定によって確認した。得られた株はDV2Tn7-tesAと称した。
DV2Tn7-tesAからscpBC遺伝子を削除するために、以下の2つのプライマーを使用した。
ScpBC-KOfwd 5’-GCTCAGTGAATTTATCCAGACGCAATATTTTGATTAAAGGA ATTTT TATGATTCCG GGGATCCGTCGACC(配列番号142);および
ScpBC-KOrc 5’-ATTGCTGAAGATCGTGACGGGACGAGTCATTAACCCAGCATCGAGCCGGTTGT AGGCTG GAGCTGCTTC(配列番号143)
ScpBC-KOfwdおよびScpBC-KOrcプライマーは、PCRによってプラスミドpKD13からカナマイシン耐性(KmR)カセットを増幅するために使用した(Datsenko et al.、上記)。PCR生成物を次に使用して、既にアラビノースで3~4時間誘導された、Redリコンビナーゼを発現するプラスミドpKD46を含有するエレクトロコンピテントE.コリDV2 Tn7-tesA細胞(Datsenko et al.、上記)を形質転換した。SOC培地で37℃で3時間増殖させた後、細胞をカナマイシン50μg/mLを含有するLuria寒天プレートに播種した。耐性コロニーを同定し、37℃一晩でインキュベートした後単離した。scpBC遺伝子の破壊は、染色体scpBC遺伝子に隣接するように設計した以下のプライマー:ScpBC check -60 fwd 5’-CGGGTTCTGACTTGTAGCG(配列番号144)
ScpBC check +60 rc 5’-CCAACTTCGAAGCAATGATTGATG(配列番号145)
を使用して、PCR増幅によって確認した。
scpBC削除を確認した後、単一のコロニーを採取し、pCP20プラスミドを用いてKmRマーカーを除去するために使用した(Datsenko et al.、上記)。Datsenko et al.(上記)の手順の改変法を使用して、天然のフマル酸レダクターゼ(frd)プロモーターをPTrcプロモーターと置換した。得られたE.コリDV2 ΔscpBC::FRT、ΔPfrd::FRT-PTrc、attTn7::PTrc-‘tesA株は「sDF4」と称した。
株は以下に示したようにプラスミドで形質転換し、実施例5で記載した96ディープウェルプレート発酵手順を使用して脂肪酸生成を評価し、ScpAはB-12依存性酵素なので、4N-BT培養培地にコバラミンを補給した。
中間体スクシニル-CoAおよびメチルマロニル-CoAを介したプロピオニル-CoAの生成に関与する遺伝子を過剰発現する微生物細胞では、細胞によって生成する奇数鎖長脂肪酸の割合が増加した。DV2株(表13の株1)の奇数鎖長脂肪酸の生成は無視できる量にすぎなかったが、内在性E.コリsbmおよびygfG遺伝子(メチルマロニル-CoAムターゼ活性およびメチルマロニル-CoAデカルボキシラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする)を過剰発現するsDF4株では奇数鎖長脂肪酸の生成量が増加した。
表13の株2および3は、プロピオニル-CoAに対して高い特異性を有する外来性β-ケトアシルACP合成酵素を含むことによるoc-FA生成に対する効果を示す。株2は、天然E.コリfabH遺伝子を含有した。B.ズブチリスfabH1遺伝子を発現するプラスミドを導入することによって、oc-FA生成は、株2において生成した脂肪酸の約4%から株3において生成した脂肪酸の約16%までさらに増加した。
E.コリにおける奇数鎖脂肪アルコールの生成
以下は、本実施例において、アシル-ACPレダクターゼ(AAR)活性を有するポリペプチドも発現した、以前に記載した株による奇数鎖脂肪アルコールの生成を示す。AAR活性はoc-アシル-ACP中間体をoc-脂肪アルデヒドに変換し、これは内在性アルデヒドレダクターゼと反応してoc-脂肪アルコールを形成した。
株DV2、DV2 PL-thrA*BC PL-tdcB PT5-BsfabH1
ΔEcfabHおよびG1(それぞれ実施例1、2および4において記載したように調製した)は、プラスミドpLS9185またはpDS171sのどちらかで形質転換した。プラスミドpLS9185はシネココッカス・エロンガタス脂肪アシル-ACPレダクターゼ(AAR;GenBank受託番号YP_400611)を発現した。プラスミドpDS171sは、S.エロンガタスAAR、シアノバクテリウム・ノストックパンクチュフォルメ(cyanobacterium Nostoc punctiforme)(cACP;GenBank受託番号YP_001867863)のアシル担体タンパク質(ACP)およびバチルス・ズブチリス(Sfp;GenBank受託番号YP_004206313)のホスホパンテテイニルトランスフェラーゼを発現した。これらの株は、実施例5で記載した96ディープウェルプレート発酵手順を使用して脂肪アルコール生成を評価した。
対照株DV2と比較して、株DV2 thrA*BC tdcB BsfabH1 ΔEcfabHおよびG1はいずれも、AARを発現するプラスミドまたはAAR、cACPおよびSfpを発現するプラスミド(表14)で形質転換したとき、著しく高い力価および割合の奇数鎖脂肪アルコールを生成した。奇数鎖脂肪アルコールとして生成される脂肪アルコールの割合は、これらの株の脂肪酸生成を評価したとき認められた割合をほぼ反映しており(表11)、AARは類似の全体鎖長の奇数鎖または偶数鎖アシル-ACPに選択性を示さないことが示唆された。
E.コリにおける偶数鎖アルカンの生成
以下の実施例は、アシル-ACPレダクターゼ(AAR)活性を有するポリペプチドおよびアルデヒドデカルボニラーゼ(ADC)活性を有するポリペプチドを発現する株による偶数鎖アルカンの生成を示す。AAR活性は、oc-アシル-ACP中間体をoc-脂肪アルデヒドに変換し、ADC活性はoc-脂肪アルデヒドを脱カルボニル化して偶数鎖(ec-)アルカンを形成した。
株DV2、DV2 thrA*BC tdcB BsfabH1 ΔEcfabHおよびG1(それぞれ実施例1、2および4において記載したように調製した)は、プラスミドpLS9185およびpLS9181で形質転換した。プラスミドpLS9185はシネココッカス・エロンガタス脂肪アシル-ACPレダクターゼ(AAR;GenBank受託番号YP_400611)を発現した。プラスミドpLS9181はノストック・パンクチュフォルメアルデヒドデカルボニラーゼ(ADC;GenBank受託番号YP_001865325)を発現した。両プラスミドで形質転換した株は、上記の実施例5で記載した96ディープウェルプレート発酵手順を使用し、しかし誘導時にMnSO4 25μM(最終濃度)のをさらに補給して、アルカン生成を分析した。
対照株DV2と比較して、DV2 thrA*BC tdcB BsfabH1 ΔEcfabHおよびG1はいずれも、AARおよびADCを発現するプラスミド(表15)で形質転換したとき、著しく高い力価および割合の偶数鎖アルカンを生成した。偶数鎖アルカンとして生成されるアルカンの割合は、これらの株の脂肪酸生成(表11)および脂肪アルコール生成(表14)を評価したとき生成した奇数鎖生成物の割合をほぼ反映しており、ADCには、AARのように、同程度の全体鎖長の奇数鎖または偶数鎖基質の間に選択性を示さないことが示唆された。
本発明はそれらの詳細な説明と併せて記載してきたが、前述の説明は本発明を例示するものであって、範囲を制限するものではなく、添付の特許請求の範囲によって定義されることを理解されたい。他の態様、利点および改変は以下の特許請求の範囲内である。