以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本実施形態の脳画像解析装置10を含む脳画像解析システム1の構成図である。脳画像解析システム1は、例えば、被験者の脳検査を実施する医療施設等に設置される。同図には、脳画像解析システム1だけでなく、外部から脳画像解析システム1を利用する遠隔ビューワ2及び遠隔クライアント3も示されている。遠隔ビューワ2及び遠隔クライアント3は、インターネット、専用回線等の通信ネットワークNを介して、脳画像解析システム1に接続されている。脳画像解析システム1は、脳画像解析装置10、ストレージ20、DICOMサーバ30、各種モダリティ(CT装置41、MRI装置42、PET-CT装置43、PET装置44、及びSPECT装置45)、クライアント50、及びビューワ60を含んでいる。
脳画像解析装置10は、特定のモダリティ(本実施形態では一例として、PET装置44)用の仮想正常脳データベースを生成する処理を主に実行する装置である。脳画像解析装置10の各機能の詳細については後述する。
ストレージ20は、画像データ(DICOM画像)及び被験者情報を記憶する記憶装置である。画像データは、各種モダリティによって撮影された被験者の脳画像である。被験者情報は、例えば、被験者の個人情報(例えば、氏名、年齢、性別、検査結果等)である。画像データには、対応する被験者の被験者情報が関連付けられており、どの被験者の脳画像であるかを特定することが可能となっている。
DICOMサーバ30は、各種モダリティから転送される画像データを受信してストレージ20に保存する装置である。また、DICOMサーバ30は、ビューワ60又は遠隔ビューワ2からの要求に応じて、ストレージ20に保存された画像データをビューワ60又は遠隔ビューワ2に転送する処理を行う。
各種モダリティ(CT装置41、MRI装置42、PET-CT装置43、PET装置44、及びSPECT装置45)は、被験者の頭部(脳)を撮影する断層撮影装置である。モダリティは、取得した画像データ(被験者の脳画像)をストレージ20に保存するために、当該画像データの登録要求をDICOMサーバ30に対して行う。
モダリティにより撮像される画像データは、被験者の頭部(脳)の内部を示すスライス画像である。スライス画像を構成する各画素は、各画素に対応する位置の、頭部における組織又は領域に応じた強度(画素値)を有している。例えば、PET装置44により取得されるスライス画像の画素値は、投与される薬剤に応じた脳機能、脳代謝量等を表す値である。例えば、上記画素値は、脳糖代謝量を示す半定量値であるSUV(Standard Update Value)又は神経受容体に結合する結合能を示すBP(Binding Potential)等の値である。本実施形態では、PET装置により取得されたスライス画像(脳画像)に対する解析について主に説明する。また、本実施形態では、スライス画像の画素値は、上述した脳糖代謝量を示すSUVであるものとする。ただし、本実施形態で説明する脳画像に対する解析は、PET装置以外のモダリティによって取得されたスライス画像に対しても同様に実施可能である。
クライアント50は、ユーザが脳画像解析システム1を利用するために用いる端末である。クライアント50は、例えば、ストレージ20に保存された被験者情報の閲覧、及び医療施設に関する各種管理情報(受付、電子カルテ、予約、会計等)の確認等のために用いられる。
ビューワ60は、医師等のユーザが画像データを読影するための読影用端末である。ビューワ60は、DICOMサーバ30に対して画像データの取得要求を送信し、DICOMサーバ30から取得した画像データを表示する。
遠隔ビューワ2は、脳画像解析システム1が設置されている医療施設とは異なる施設(外部施設)に設置された読影用端末である。遠隔ビューワ2は、通信ネットワークNを介して、上述したビューワ60と同様の処理を実行することができる。遠隔クライアント3は、外部施設に設置された端末である。遠隔クライアント3は、通信ネットワークNを介して、上述したクライアント50と同様の処理を実行することができる。
上記の脳画像解析装置10、ストレージ20、DICOMサーバ30、各種モダリティ(CT装置41、MRI装置42、PET-CT装置43、PET装置44、及びSPECT装置45)、クライアント50、ビューワ60、遠隔ビューワ2、及び遠隔クライアント3は、物理的には、CPU等のプロセッサ、RAM及びROM等のメモリ、HDD及びSDD等のストレージ、マウス及びキーボード等の入力装置、ディスプレイ等の出力装置、通信装置等を備えたコンピュータとして構成され得る。例えば、脳画像解析装置10の後述する各機能は、プロセッサ及びメモリ等のハードウェアに所定のソフトウェア(後述する脳画像解析プログラムP等)を読み込ませることで、プロセッサが演算を行い、通信装置による通信、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び/又は書き込みを制御することで実現される。
図2を参照して、脳画像解析システム1で扱われる脳画像の概要について説明する。脳画像解析システム1において最初に取得される脳画像は、モダリティ(ここではPET装置44)により取得された被験者のスライス画像である。PET装置44は、被験者の脳の断層撮影を行うことにより、スライス画像(PET生画像)201を取得する。PET装置44により取得されたスライス画像201は、DICOMサーバ30等を介して、ストレージ20に保存される。脳画像解析装置10は、ストレージに20に保存されたスライス画像201に対して解剖学的標準化を行うことにより、標準脳画像(断層像)202を取得する。なお、PET装置44によって取得されたスライス画像が全身の画像である場合には、脳画像解析装置10は、診断に必要な頭部画像のみを切り出す。解剖学的標準化は、例えば、3D-SSP(3D Stereotactic Surface Projection)、SPM、freesurfer等の公知の手法を用いることにより行われる。
続いて、脳画像解析装置10は、標準脳画像202に対してマスク処理を行うことで周辺ノイズをカットし、脳内部の画像データを抽出する。マスク処理は、任意の公知の手法を用いることにより行われ得る。なお、マスク処理は省略されてもよい。続いて、脳画像解析装置10は、解剖学的標準化後又はマスク処理後の標準脳画像202に対して、補正処理を行う。この補正処理は、画像間の画素値のばらつきを軽減するための標準化である。具体的には、全脳の画素値の平均が予め設定された値(設定値)となるように、標準脳画像202に対する補正(例えば、画素値の平均が設定値となるような係数を画素値に乗算する)を行う。なお、画素値平均が設定値となるように補正される対象は必ずしも全脳でなくてもよく、例えば、標準脳画像202の小脳、橋又は視床に相当する部分の画素値の平均が設定値となるように補正されてもよい。
続いて、脳画像解析装置10は、補正された標準脳画像202から、脳表を示す脳表画像203を生成する。脳画像解析装置10は、生成した脳表画像203を各方向から投影した脳表投影画像204を生成する。脳表投影画像204は、投影する方向毎に生成される。図2に示されるように、投影する方向は、右(右外側)、左(左外側)、上、下、前、後、並びに中心で切って右(右内側)及び左(左内側)の8方向である。脳表画像203及び脳表投影画像204の生成は、具体的には、上述した3D-SSP等の公知の手法を用いることにより行われる。
続いて、脳画像解析装置10は、被験者の脳と正常脳との比較結果を示す比較画像205を生成する。ここで、正常脳は、脳疾患を患っていない健常被験者の脳である。正常脳の脳表投影画像は、予めストレージ20に格納されている。脳画像解析装置10は、ストレージ20から、正常脳の脳表投影画像を取得する。具体的には、ストレージ20には、性別及び年代毎に、複数の正常脳の脳表投影画像が格納されており、脳画像解析装置10は、被験者の性別及び年齢に応じた正常脳の脳表投影画像をストレージ20から取得する。脳画像解析装置10は、取得した正常脳の脳表投影画像の画素値の平均値(正常脳平均値)及び標準偏差(正常脳標準偏差)を画素毎に算出する。これにより、各画素の正常脳平均値を含む正常脳平均画像と各画素の正常脳標準偏差を含む正常脳標準偏差画像とが得られる。続いて、脳画像解析装置10は、下記(式1)により、被験者の脳画像(脳表投影画像)のZスコアを算出する。
Zスコア=(被験者の脳画像-正常脳平均画像)/正常脳標準偏差画像 …(式1)
Zスコアは、画素毎に得られる値であり、被験者の脳の脳表投影画像の各画素の画素値が正常脳平均画像の各画素の画素値と乖離している度合いを示している。PET装置44により得られた脳画像に対して上記処理を実行した場合、Zスコアの値が高いほど糖代謝量が低いことを示している。比較画像205は、算出された各画素のZスコアを各画素の画素値とした画像である。
このような比較画像205を読影することにより、被験者の脳機能(ここでは糖代謝量)が正常であるか否か(正常脳平均画像に近いか否か)を把握することができる。一方、このような比較画像205を得るためには、性別及び年代毎に分類された正常脳画像(正常脳平均画像、正常脳標準偏差画像)を蓄積した正常脳データベースが、予め用意されている必要がある。しかし、モダリティ(断層撮影装置)により得られる脳画像の画質(各画素の画素値)は、断層撮影装置の機種によって異なる。このような画質の相違は、例えば装置構成、投影データ収集条件、画像再構成条件等が機種毎に異なることに起因する。このため、例えば、新しい機種のモダリティを導入する場合、古い機種のモダリティ用の正常脳データベースをそのまま利用することができず、新しい機種のモダリティ用の正常脳データベースを新たに構築する必要がある。しかし、あるモダリティ用の正常脳データベースを生成するためには、当該モダリティによって得られた多数の被験者の脳画像を蓄積する必要がある。ここで、新しい機種のモダリティにより実際に得られた被験者の脳画像を蓄積することによって、当該新しい機種のモダリティ用の正常脳データベースを構築しようとすると、多くの手間と時間を要する。脳画像解析装置10は、いわゆるビッグデータ(既に構築済みの異機種の正常脳データベース)を活用して、新しい機種のモダリティ用の仮想正常脳データベースを生成することにより、上記の問題の解決を図るものである。
図3を参照して、脳画像解析装置10の各機能について詳細に説明する。なお、本実施形態では、第1断層撮影装置(PET装置44)により取得されたサンプル(脳画像)が少ない一方で、第1断層撮影装置とは異なる機種の第2断層撮影装置(例えば、PET装置44の前に利用されていたPET装置44とは異なる機種のPET装置)により取得された非常に多くのサンプル(例えば20000以上の被験者の脳画像)を利用可能な状況を想定している。
図3に示されるように、脳画像解析装置10は、第1脳画像取得部101、抽出部102、異機種正常脳データベース103、第2脳画像取得部104、比較部105、補正パラメータ算出部106、補正部107、仮想正常脳データベース108、診断画像取得部109、第1出力部110、モデル関数生成部111、脳画像生成部112、補正画像取得部113、及び第2出力部114を備えている。
まず、図4を参照して、脳画像解析装置10により実現される処理の概要について説明する。図4に示されるように、脳画像解析装置10は、仮想正常脳データベース108を生成したい機種の第1断層撮影装置により撮影された複数(例えば20人)の第1被験者の脳画像のセットである脳画像セットAを取得する。続いて、脳画像解析装置10は、第2断層撮影装置のビッグデータ(非常に多くの脳画像のサンプル)が格納された異機種正常脳データベース103を参照することにより、複数の第1被験者と同一又は類似の生体特徴を有する第2被験者のセットを複数抽出する。続いて、脳画像解析装置10は、このようにして抽出された各セットに含まれる第2被験者の脳画像(第2断層撮影装置により得られた脳画像)と脳画像セットAに含まれる第1被験者の脳画像(第1断層撮影装置により得られた脳画像)とを比較することにより、補正パラメータを算出する。続いて、脳画像解析装置10は、第2断層撮影装置のビッグデータから得られる正常脳画像(例えば、正常脳平均画像及び正常脳標準偏差画像)を補正パラメータにより補正する。これにより、第1断層撮影装置用の仮想正常脳画像(仮想正常脳平均画像及び仮想正常脳標準偏差画像)が得られる。脳画像解析装置10は、このようにして得られた仮想正常脳画像を蓄積することにより、第1断層撮影装置用の仮想正常脳データベース108を生成する。
次に、上述したような仮想正常脳データベース108を生成するための脳画像解析装置10の各機能(第1脳画像取得部101、抽出部102、異機種正常脳データベース103、第2脳画像取得部104、比較部105、補正パラメータ算出部106、補正部107)の詳細について説明する。
第1脳画像取得部101は、第1断層撮影装置により撮影された第1の数の健常被験者(第1被験者)の各々の生体特徴を示す情報と、第1断層撮影装置により得られた第1の数の第1被験者の各々の脳画像(第1脳画像)と、を取得する。本実施形態では一例として、第1の数は「20」である。また、本実施形態では、第1脳画像は、上述した解剖学的標準化が行われた後の脳画像(図2に示した脳表投影画像204)である。上述したように、第1脳画像取得部101は、第1断層撮影装置により取得された個々のスライス画像201に対する解剖学的標準化等の処理を行うことにより、脳表投影画像204としての第1脳画像を取得することができる。
第1被験者の生体特徴を示す情報は、当該第1被験者の性別、年齢、その他の生理学的特徴を示す情報を含み得る。上記その他の生理学的特徴は、例えば、血圧、血糖値、コレステロール値等の医療機関における各種検査項目の測定結果を含み得る。また、上記その他の生理学的特徴は、生理学的なテストの結果(スコア)を含み得る。このようなテストの具体例としては、例えば、認知症診断用の神経心理テスト(MMSE:Mini Mental State Examination)、前頭葉の機能検査(FAB:Frontal Assessment Battery)、うつ病のスクリーニング検査(GDS:Geriatric Depression Scale)等が挙げられる。
図5に示されるように、第1脳画像取得部101の上記処理により、第1断層撮影装置により得られた20人の第1被験者の第1脳画像のセットである脳画像セットAが取得される。図5における脳画像セットAの各要素の表記(例えば「F53」)は、第1脳画像に対応付けられた第1被験者の生体特徴(ここでは、性別及び年齢)を示している。具体的には、1番目の文字は、第1被験者の性別を示している。「M」は男性を示し、「F」は女性を示している。また、2番目及び3番目の数字は、第1被験者の年齢を示している。したがって、脳画像セットAの要素「F53」は、当該要素に対応する第1脳画像が53歳女性の脳を撮影することにより得られた画像であることを示している。
抽出部102は、第1断層撮影装置とは異なる機種の第2断層撮影装置により撮影された第2の数の健常被験者(第2被験者)の各々の生体特徴を示す情報を参照する。本実施形態では一例として、第2の数は「20000」である。本実施形態では、異機種正常脳データベース103が、20000人の第2被験者の生体特徴を示す情報と共に、各第2被験者に対応付けられた脳画像(第2脳画像)を格納している。抽出部102は、このような異機種正常脳データベース103を参照することにより、20人(第1の数)の第1被験者と同一又は類似の生体特徴を有する20人(第1の数)の第2被験者をそれぞれ含む複数(ここでは12個)の第2被験者セットを抽出する。抽出部102は、同一の第2被験者が2以上の第2被験者セットに含まれないように、複数の第2被験者セットを抽出する。つまり、互いに異なる第2被験者セット間で第2被験者が重複しないように、複数の第2被験者セットが抽出される。本実施形態では、抽出部102は、20000人の第2被験者の中から、240人(=20人×12セット)の第2被験者を抽出する。
抽出部102は、例えば、互いに比較対象となる2つの生体特徴の間で、性別が同一であり、且つ、年齢差が所定の閾値以下である場合に、当該2つの生体特徴が同一又は類似すると判定する。所定の閾値は、例えばオペレータ等によって予め設定され得る。この場合、性別及び年齢の類似度に基づいて、第1被験者と同様の脳の特徴を有すると考えられる第2被験者を適切に抽出することができる。これにより、後述する比較部105による比較において第1断層撮影装置と第2断層撮影装置との間の機種間差を精度良く抽出でき、その結果、後述する補正パラメータ算出部106によって補正パラメータを精度良く得ることができる。例えば、抽出部102は、なるべく第1被験者と性別及び年齢が同一の第2被験者を当該第1被験者と同一又は類似の生体特徴を有する第2被験者として抽出するようにマッチングを行う。そして、抽出部102は、当該第1被験者と年齢が同一の第2被験者を抽出できない場合に、当該第1被験者との年齢差が所定の閾値以下であり、且つ、なるべく当該第1被験者と年齢差が少ない第2被験者を抽出する。
また、抽出部102は、互いに比較対象となる2つの生体特徴の間で、性別及び年齢のいずれでもない生理学的特徴が同一又は類似するか否かにも基づいて、当該2つの生体特徴が同一又は類似するか否かを判定してもよい。例えば、抽出部102は、ある第1被験者と同一又は類似の生体特徴を有する第2被験者を抽出する際に、上述した血圧、血糖値、コレステロール値等の類似度、上述した各種テストの結果の類似度等を予め定められた計算手順により算出する。そして、抽出部102は、第1被験者との類似度がなるべく大きい第2被験者が優先的に抽出されるように、第2被験者を抽出してもよい。このように、性別及び年齢以外の生理学的特徴の類似度にも基づいて第2被験者を抽出することにより、第1被験者と同様の脳の特徴を有すると考えられる第2被験者をより一層精度良く抽出することができる。その結果、後述する補正パラメータ算出部106によって算出される補正パラメータの精度をより一層向上させることができる。
以上のように、第1被験者と同一又は類似の生体特徴を有する第2被験者を抽出することにより、後述する第1脳画像と第2脳画像との比較により求まる差分に、なるべく個体差が含まれない(機種間差のみが含まれる)ようにすることができる。
第2脳画像取得部104は、第2断層撮影装置により得られた各第2被験者セットに含まれる各第2被験者の第2脳画像を取得する。本実施形態では、第2脳画像取得部104は、異機種正常脳データベース103を参照することにより、各第2被験者に対応付けられた第2脳画像を取得することができる。ここで、第2脳画像は、第1脳画像に対応する形式を有する画像である。本実施形態では、第2脳画像は、第1脳画像と同様に、上述した解剖学的標準化が行われた後の脳画像(脳表投影画像204)である。なお、解剖学的標準化を行う前の脳画像(例えばスライス画像201)が異機種正常脳データベース103に格納されている場合には、第2脳画像取得部104は、スライス画像201に対して上述した解剖学的標準化等の処理を行うことにより、脳表投影画像204としての第2脳画像を取得してもよい。
図5に示されるように、抽出部102によって、20人の第1被験者と同一又は類似の生体特徴を有する20人の第2被験者をそれぞれ含む12個の第2被験者セットが抽出され、第2脳画像取得部104によって、第2被験者セット毎の脳画像セットA1~A12が取得される。同図に示されるように、脳画像セットA1~A12は、それぞれ20人の第2被験者の第2脳画像を含んでいる。図5の例では、全ての第2被験者セットについて、20人の第1被験者と同一の生体特徴(性別及び年齢)を有する20人の第2被験者が抽出されている。
比較部105は、脳画像セットAに含まれる20個の第1脳画像(第1の数の第1脳画像)と各脳画像セットA1~A12に含まれる20個の第2脳画像(第2被験者セットに含まれる第1の数の第2被験者の第2脳画像)との比較を、第2被験者セット毎に行う。例えば、比較部105は、脳画像セットAと各脳画像セットA1~A12との比較(2群間比較)を順次実行する。図5に示されるように、このような第2被験者セット毎の比較により、脳画像セットAと各脳画像セットA1~A12との比較結果を示すパラメータセットΔ1~Δ12が、第2被験者セットの数(ここでは12個)だけ得られる。
ここで、いずれも解剖学的標準化後の画像である第1脳画像及び第2脳画像には、互いに対応する複数の領域(例えば15964個の画素)が設定されている。第1脳画像又は第2脳画像の画素数は、第1脳画像及び第2脳画像に共通に設定される解像度に依存する。第1脳画像及び第2脳画像において、同一の座標位置に存在する画素の画素値は、脳における同一箇所の特徴を表している。本実施形態では、比較部105は、各画素に対応付けられた画素値の統計量(平均値及び標準偏差)を画素毎に算出し、当該統計量同士の比較を画素毎に行う。ただし、このような比較の単位となる領域は画素(1画素分の領域)に限られず、複数の画素をひとまとめにした領域(例えば、前頭葉等の脳機能領域単位)でもよい。この場合、当該領域に関連付けられた画素値(例えば、当該領域に含まれる複数の画素から選択された代表画素の画素値、平均画素値等)に対して、後述する比較(計算)が実行されてもよい。具体的には、以降の説明における「画素毎」及び「画素の画素値」を「領域毎」及び「領域の画素値」に読み替えた処理が実行される。
本実施形態では、比較部105は、脳画像セットAに含まれる20個の第1脳画像の画素に対応付けられた画素値の平均値を画素毎に算出する。これにより、比較部105は、脳画像セットAについて、画素毎の画素値の平均値を含む第1脳平均画像(各画素に対して、20個の第1脳画像の当該画素の画素値の平均値が対応付けられた情報)を取得する。また、比較部105は、脳画像セットAに含まれる20個の第1脳画像の画素値の標準偏差を画素毎に算出する。これにより、比較部105は、脳画像セットAについて、画素毎の画素値の標準偏差を含む第1脳標準偏差画像(各画素に対して、20個の第1脳画像の当該画素の画素値の標準偏差が対応付けられた情報)を取得する。
同様に、比較部105は、各脳画像セットA1~A12について、20個の第2脳画像の画素値の平均値を画素毎に算出することにより、画素毎の画素値の平均値を含む第2脳平均画像(各画素に対して、20個の第2脳画像の当該画素の画素値の平均値が対応付けられた情報)を取得する。また、比較部105は、各脳画像セットA1~A12について、20個の第2脳画像の画素値の標準偏差を画素毎に算出することにより、画素毎の画素値の標準偏差を含む第2脳標準偏差画像(各画素に対して、20個の第2脳画像の当該画素の画素値標準偏差が対応付けられた情報)を取得する。
比較部105は、脳画像セットAの第1脳平均画像と第2被験者セット毎に取得された各脳画像セットA1~A12の第2脳平均画像とを比較する。具体的には、比較部105は、第1脳平均画像の各画素の画素値と脳画像セットA1の第2脳平均画像の各画素の画素値とを比較することにより、脳画像セットAと脳画像セットA1との間における画素値の平均値の差を画素毎に算出する。これにより、脳画像セットAと脳画像セットA1との間における15964画素の各々についての画素値の平均値の差を示すパラメータΔave1が得られる。同様に、比較部105は、脳画像セットAと2番目以降の各脳画像セットA2~A12との間で上記と同様の比較を順次行う。これにより、脳画像セットAと各脳画像セットA2~A12との間における15964画素の各々についての画素値の平均値の差を示すパラメータΔave2~Δave12が得られる。Δave1~Δave12は、それぞれ15964画素の各々についての画素値の平均値の差を格納した15964次元のデータである。すなわち、Δaven(n=1~12)は、「Δaven=(Δaven(1),…,Δaven(15964)」と表される。ここで、「Δaven(k)」は、脳画像セットAと脳画像セットAnとの間における画素kの画素値の平均値の差(「脳画像セットAにおける画素kの画素値の平均値」-「脳画像セットAnにおける画素kの画素値の平均値」)である。
また、比較部105は、脳画像セットAの第1脳標準偏差画像と第2被験者セット毎に取得された各脳画像セットA1~A12の第2脳標準偏差画像とを比較する。第1脳標準偏差画像と第2脳標準偏差画像との比較は、上述した第1脳平均画像と第2脳平均画像との比較とほぼ同様である。すなわち、比較部105は、第1脳標準偏差画像の各画素の画素値と脳画像セットA1の第2脳標準偏差画像の各画素の画素値とを比較することにより、脳画像セットAと脳画像セットA1との間における画素値の標準偏差の差を画素毎に算出する。これにより、脳画像セットAと脳画像セットA1との間における15964画素の各々についての画素値の標準偏差の差を示すパラメータΔdev1が得られる。同様に、比較部105は、脳画像セットAと2番目以降の各脳画像セットA2~A12との間で上記と同様の比較を順次行う。これにより、脳画像セットAと各脳画像セットA2~A12との間における15964画素の各々についての画素値の標準偏差の差を示すパラメータΔdev2~Δdev12が得られる。Δdev1~Δdev12は、それぞれ15964画素の各々についての画素値の標準偏差の差を格納した15964次元のデータである。すなわち、Δdevn(n=1~12)は、「Δdevn=(Δdevn(1),…,Δdevn(15964)」と表される。ここで、「Δdevn(k)」は、脳画像セットAと脳画像セットAnとの間における画素kの画素値の標準偏差の差(「脳画像セットAにおける画素kの画素値の標準偏差」-「脳画像セットAnにおける画素kの画素値の標準偏差」)である。
以上のようにして、脳画像セットAと各脳画像セットAn(n=1~12)との間の比較により、パラメータΔaven及びΔdevnを含むパラメータセットΔnが得られる。
補正パラメータ算出部106は、比較部105による比較の結果に基づいて、第1断層撮影装置により得られる脳画像に基づく画像と第2断層撮影装置により得られる脳画像に基づく画像との差(機種間差)を補正するための補正パラメータを算出する。本実施形態では、補正パラメータ算出部106は、画素毎の画素値の平均値を補正するためのパラメータΔaveと画素毎の画素値の標準偏差を補正するためのパラメータΔdevとを補正パラメータとして算出する。下記(式2)及び(式3)に示すように、Δaveは、例えばΔave1~Δave12の平均であり、Δdevは、例えばΔdev1~Δdev12の平均である。
Δave=(Δave1+…+Δave12)/12 …(式2)
Δdev=(Δdev1+…+Δdev12)/12 …(式3)
このようにして算出されるΔaveは、第1断層撮影装置により得られた複数の被験者の脳画像から得られる正常脳平均画像と第2断層撮影装置により得られた複数の被験者の脳画像から得られる正常脳平均画像との間で平均的に生じると推定される機種間差(各画素の画素値の平均値の差)を示す値であるといえる。同様に、Δdevは、第1断層撮影装置により得られた複数の被験者の脳画像から得られる正常脳標準偏差画像と第2断層撮影装置により得られた複数の被験者の脳画像から得られる正常脳標準偏差画像との間で平均的に生じると推定される機種間差(各画素の画素値の標準偏差の差)を示す値であるといえる。
本実施形態では、上述のようにして補正パラメータ算出部106により算出される補正パラメータ(Δave及びΔdev)は、15964画素の各々に対応する変換係数(オフセット)を有するパラメータである。補正パラメータ算出部106は、このようにして得られた補正パラメータを最終的なものとして決定してもよいが、当該補正パラメータに対して、平滑化、ノイズ除去等の画像処理における公知の処理(一種のフィルタ処理)を実行することにより、最終的な補正パラメータを決定してもよい。
補正部107は、補正パラメータ算出部106により算出された補正パラメータを用いて、第2断層撮影装置により得られた脳画像に基づく画像を補正する。本実施形態では、補正部107は、補正パラメータ(Δave及びΔdev)を用いて、第2断層撮影装置により得られた複数の脳画像から得られる画素値の統計量(ここでは、画素毎の画素値の平均値及び標準偏差)を画素毎に補正する。これにより、画素毎の補正後の画素値の平均値を含む仮想正常脳平均画像(仮想脳平均画像)と、画素毎の補正後の画素値の標準偏差を含む仮想正常脳標準偏差画像(仮想脳標準偏差画像)と、が得られる。このような処理により、異機種正常脳データベース103に格納されている複数の正常脳画像(第2断層撮影装置により得られた脳画像に基づく画像)から、第1断層撮影装置用の仮想正常脳データベース(仮想正常脳平均画像及び仮想正常脳標準偏差画像)を構築することができる。
具体的には、補正部107は、異機種正常脳データベース103から、性別及び年齢(ある程度の年齢幅を有する年代を含む)の組毎に、複数の被験者の正常脳画像(ここでは、脳表投影画像204)を取得する。そして、補正部107は、性別及び年齢の各組について、正常脳平均画像(各画素に対して、複数の正常脳画像の当該画素の画素値の平均値が対応付けられた情報)と正常脳標準偏差画像(各画素に対して、複数の正常脳画像の当該画素の画素値の標準偏差が対応付けられた情報)とを算出する。なお、異機種正常脳データベース103に、既に性別及び年齢の各組についての正常脳平均画像及び正常脳標準偏差画像が格納されている場合には、補正部107は、上述したような算出処理を実行する必要はない。
続いて、補正部107は、性別及び年齢の各組について取得された正常脳平均画像に補正パラメータΔaveを加算する。これにより、性別及び年齢の各組について、第2断層撮影装置用の正常脳平均画像の各画素の画素値が補正され、第1断層撮影装置用の仮想正常脳平均画像が得られる。仮想正常脳平均画像は、補正パラメータΔaveを用いた補正によって、第2断層撮影装置用の正常脳平均画像から第1断層撮影装置と第2断層撮影装置との機種間差が低減された画像であるといえる。
同様に、補正部107は、性別及び年齢の各組について取得された正常脳標準偏差画像に補正パラメータΔdevを加算する。これにより、性別及び年齢の各組について、第2断層撮影装置用の正常脳標準偏差画像の各画素の画素値が補正され、第1断層撮影装置用の仮想正常脳標準偏差画像が得られる。仮想正常脳標準偏差画像は、補正パラメータΔdevを用いた補正によって、第2断層撮影装置用の正常脳標準偏差画像から第1断層撮影装置と第2断層撮影装置との機種間差が低減された画像であるといえる。
補正部107は、上記のようにして得られた性別及び年齢の組毎の仮想正常脳平均画像及び仮想正常脳標準偏差画像を仮想正常脳データベース108に保存する。これにより、図4に示されるように、性別及び年齢の組毎の仮想正常脳画像vNDB(仮想正常脳平均画像及び仮想正常脳標準偏差画像)が、仮想正常脳データベース108に蓄積される。
次に、仮想正常脳データベース108を用いて、第1断層撮影装置で撮影された被験者の脳を診断するための機能要素(診断画像取得部109、第1出力部110)について説明する。
診断画像取得部109は、第1断層撮影装置により得られた任意の被験者の脳画像である診断画像を取得する。具体的には、診断画像取得部109は、脳画像解析システム1が備えるモダリティ(ここではPET装置44)により得られたスライス画像201を取得する。診断画像取得部109は、上述した解剖学的標準化等の処理を行うことにより、当該スライス画像201から脳表投影画像204を生成し、当該脳表投影画像204を診断画像として取得する。
第1出力部110は、被験者の性別及び年齢に応じた仮想正常脳平均画像及び仮想正常脳標準偏差画像を仮想正常脳データベース108から取得する。そして、第1出力部110は、診断画像取得部109により取得された診断画像と、上述のように取得された仮想正常脳平均画像及び仮想正常脳標準偏差画像と、に基づいて、診断画像が仮想正常脳平均画像から乖離している度合いを示すZスコアを出力する。具体的には、第1出力部110は、画素毎のZスコアを下記(式4)によって算出する。これにより、図2に示したような比較画像205を生成することができる。第1出力部110は、このような比較画像205(或いは脳の機能領域毎のZスコアを数値で表した数値結果等)をビューワ60又は遠隔ビューワ2のディスプレイ、或いはプリンタ等に出力してもよい。医師等のユーザは、このように出力された比較画像205を読影したり、数値結果を確認したりすることにより、診断画像に対する統計学的な診断を行うことができる。
Zスコア=(診断画像-仮想正常脳平均画像)/仮想正常脳標準偏差画像 …(式4)
[実施例1:正常脳平均画像の補正のみ]
本発明者は、上述した脳画像解析装置10の効果を確認すべく、以下の検証作業を実施した。当該検証作業では、第1断層撮影装置としての浜松ホトニクス社製PET装置(SHR-92000)と第2断層撮影装置としてのシーメンス社製PET装置(mCT)とを用いた。SHR-92000により、199名の被験者(女性79人、男性120人、年齢幅63.6±8.9歳)の脳画像を取得し、当該199名の被験者のうちから無作為に20人の第1被験者を抽出した(図2の脳画像セットAに対応)。また、mCTにより撮影された約2000人の被験者のうちから、240人(20人×12セット)の第2被験者を抽出した(図2の脳画像セットA1~A12に対応)。ここで、各セットに含まれる20人の第2被験者の性別及び年齢は、20人の第1被験者の性別及び年齢と同一であった。また、第1被験者と各セットの第2被験者は、互いに重複することがないように(同一の被験者の脳画像が複数の脳画像セットに含まれることのないように)抽出された。
SHR-92000の199名の被験者の脳画像に基づいて得られた正常脳平均画像(各画素に対して、199人の脳画像の当該画素の画素値の平均値が対応付けられた情報)を正解平均画像(SHR-92000用の正常脳平均画像)として取得した。同様に、上記199名の被験者の脳画像に基づいて得られた正常脳標準偏差画像(各画素に対して、199人の脳画像の当該画素の標準偏差が対応付けられた情報)を、正解標準偏差画像(SHR-92000用の正常脳標準偏差画像)として取得した。
また、240人の第2被験者の脳画像に基づいて得られた正常脳平均画像を不正解平均画像(mCT用の正常脳平均画像)として取得し、240人の第2被験者の脳画像に基づいて得られた正常脳標準偏差画像を不正解標準偏差画像(mCT用の正常脳標準偏差画像)として取得した。
また、上述した補正パラメータ算出部106により算出された補正パラメータ(Δave)によって不正解平均画像を補正することにより、仮想正常脳平均画像(SHR-92000とmCTとの間の機種間差を低減するための補正がされた画像)を取得した。
次に、20人の第1被験者の中から無作為に1人の被験者を抽出し、当該被験者の脳画像(脳表投影画像204のうちの右外側及び右内側の2つ)について、下記(式5)~(式7)によって、3通りのZスコア(Z1~Z3)を算出した。
Z1=(正解平均画像-被験者の脳画像)/正解標準偏差画像 …(式5)
Z2=(不正解平均画像-被験者の脳画像)/不正解標準偏差画像 …(式6)
Z3=(仮想正常脳平均画像-被験者の脳画像)/不正解標準偏差画像 …(式7)
図6の(A)は、(式5)により算出された各画素のZスコア(Z1)を各画素の画素値とした画像である。(B)は、(式6)により算出された各画素のZスコア(Z2)を各画素の画素値とした画像である。(C)は、(式7)により算出された各画素のZスコア(Z3)を各画素の画素値とした画像である。(A)~(C)のいずれについても、左側の脳画像は右外側の脳表投影画像に相当し、右側の脳画像は右内側の脳表投影画像に相当する。
(A)の画像は、SHR-92000により得られた被験者の脳画像について、SHR-92000用の正常脳データベースを用いて算出されたZスコア(Z1)を示す画像であり、読影による統計学的診断に適したものであるといえる。一方、(B)の画像は、SHR-92000により得られた被験者の脳画像について、SHR-92000とは異なる機種(mCT)用の正常脳データベースを用いて算出されたZスコア(Z2)を示す画像であり、SHR-92000とmCTとの機種間差が画像に表れている。このため、(B)の画像は、読影による統計学的診断に適したものとはいえない。(C)の画像は、不正解平均画像ではなく仮想正常脳平均画像を用いることにより、上述した機種間差の低減を図った画像である。
図6に示されるように、(A)の画像と(B)の画像との間には、比較的大きな画素値の差が確認された。これは、上述した機種間差の影響によるものと考えられる。一方、(A)の画像と(C)の画像とは、若干の画素値の差が確認されたものの、ほぼ類似している。すなわち、ビッグデータに基づく画像(不正解平均画像)を補正パラメータ(Δave)で補正することにより得られた仮想正常脳平均画像を用いることで、機種間差が低減された比較画像((C)の画像)が得られることが定性的に確認された。すなわち、仮想正常脳平均画像を用いることにより、適切なZスコアを算出することができ、上述した統計学的診断を適切に行うことが可能であることが確認された。
また、上述した機種間差が低減される効果は、定量的にも確認された。具体的には、(B)の画像の各画素の画素値(Z2)から(A)の画像の各画素の画素値(Z1)を減じることで得られた差(Z2-Z1)の総和(15964画素分の差の総和)を画素数(15964)で割った平均値は「0.263」であった。一方、(C)の画像の各画素の画素値(Z3)から(A)の画像の各画素の画素値(Z1)を減じることで得られた差(Z3-Z1)の総和を画素数で割った平均値は「-0.052」であった。ここで、上述のように算出される平均値は、比較対象となる画像同士の類似度を示す指標(値が0に近いほど互いに類似している度合いが大きいことを示す指標)であるといえる。したがって、上記結果から、(B)の画像よりも(C)の画像の方が(A)の画像に類似する画像であるといえる。
[実施例2:正常脳平均画像及び正常脳標準偏差画像の補正]
実施例2は、正常脳平均画像だけでなく正常脳標準偏差画像についても補正を行う点で実施例1と相違する。具体的には、実施例2では、上述した補正パラメータ算出部106により算出された補正パラメータ(Δdev)によって不正解標準偏差画像を補正することにより、仮想正常脳標準偏差画像(SHR-92000とmCTとの間の機種間差を低減するための補正がされた画像)を更に取得した。そして、上記(式7)により算出されるZスコア(Z3)の代わりに、下記(式8)によってZスコア(Z4)を算出した。
Z4=(仮想正常脳平均画像-被験者の脳画像)/仮想正常脳標準偏差画像 …(式8)
上記(式8)を用いて得られた画像の各画素の画素値(Z4)から図6の(A)の画像の各画素の画素値(Z1)を減じることで得られた差(Z4-Z1)の総和を画素数で割った平均値は「0.011」であり、正常脳平均画像の補正のみを行った場合の平均値「-0.052」よりも「0」に近い値となった。これにより、正常脳平均画像の補正に加えて正常脳標準偏差画像の補正(ばらつき補正)を行うことで(すなわち、仮想正常脳平均画像に加えて仮想正常脳標準偏差画像を用いることで)、機種間差の低減効果をより一層向上できることが、定量的に確認された。
図7のグラフは、脳画像セットAと各脳画像セットA1~A12との比較回数と画素値の平均値の差の絶対値(|Δaven(k)|)の全画素平均との関係を示している。ここで、比較回数nは、脳画像セットAと各脳画像セットA1~A12との比較を脳画像セットA1から順に実行した場合において、n番目の脳画像セットAnとの比較(すなわち、Δavenの算出)が完了した時点を示している。1番目の脳画像セットA1との比較が完了した時点(比較回数1)での画素値の平均値の差の絶対値の全画素平均mean1は、下記(式9)により求まる値である。
mean1=(|Δave1(1)|+…+|Δave1(15964)|)/15964 …(式9)
また、2番目の脳画像セットA2との比較が完了した時点(比較回数2)での画素値の平均値の差の絶対値の全画素平均mean2は、下記(式10)により求まる値である。
mean2=(|Δave1(1)|+…+|Δave1(15964)|+|Δave2(1)|+…+|Δave2(15964)|)/(15964×2) …(式10)
すなわち、n番目の脳画像セットAnとの比較が完了した時点(比較回数n)での平均画素の差の全画素平均meannは、それまでに得られている全ての画素値の差の絶対値の平均であり、下記(式11)により求まる。
meann=(|Δave1(1)|+…+|Δaven(15964)|)/(15964×n) …(式11)
同様に、図8のグラフは、脳画像セットAと各脳画像セットA1~A12との比較回数と画素値の標準偏差値の差の絶対値(|Δdevn(k)|)の全画素平均との関係を示している。
図7及び図8に示されるように、脳画像セットAと複数の脳画像セットA1~A12との複数回の比較を実施することにより、正常脳平均画像及び正常脳標準偏差の機種間差が収束する様子が確認された。このことから、1回だけ(或いは2~3回程度の少ない比較回数)の比較を実施する場合よりも、複数回の比較を繰り返し実施することで補正パラメータ(Δave、Δdev)の精度を向上させられることがわかる。
次に、幅広い性別及び年齢の組毎の仮想正常脳画像(仮想正常脳平均画像、仮想正常脳標準偏差画像)を得るための機能要素(モデル関数生成部111、脳画像生成部112)について説明する。脳機能(例えば糖代謝量等)は、性別、年齢等の違いによって異なる傾向がある。このため、Zスコアの算出には、被験者と同じ性別、同じ年齢(或いは年代)の正常脳画像に基づく正常脳平均画像及び正常脳標準偏差画像を用いることが好ましい。一方で、ビッグデータ(異機種正常脳データベース103)において、男女共に幅広い年齢層に対応する正常脳画像が蓄積されているとは限らない。このため、ビッグデータとして保存されている正常脳画像のみでは、性別及び年齢のあらゆる組み合わせに対応する正常脳平均画像及び正常脳標準偏差画像を生成することができない場合がある。そこで、モデル関数生成部111及び脳画像生成部112は、ビッグデータ側において不足している年齢層の正常脳平均画像及び正常脳標準偏差画像を生成するための処理を実行する。
モデル関数生成部111は、第2断層撮影装置により撮影された複数の被験者の各々の年齢を示す情報と、第2断層撮影装置により得られた当該複数の被験者の脳画像と、に基づいて、入力された年齢に応じた画素毎の画素値の平均値を含む正常脳平均画像を出力するモデル関数を生成する。なお、モデル関数生成部111は、性別毎(男女別)にモデル関数を生成してもよいし、検査対象となる脳機能(すなわち、脳画像における各画素の画素値)についての性差が少ない場合等には、男女共通のモデル関数を生成してもよい。なお、以下では男性の被験者の脳画像に基づいて男性用のモデル関数を生成する場合について説明する。女性用のモデル関数は、女性の被験者の脳画像に対して同様の処理を実行することにより生成される。
例えば、モデル関数生成部111は、異機種正常脳データベース103に保存されている複数の男性の被験者の脳画像と当該脳画像に対応付けられた被験者の年齢を示す情報とを取得する。そして、モデル関数生成部111は、画素毎に、年齢と画素値との組(サンプル)を抽出する。モデル関数生成部111は、このようにして抽出された複数のサンプルに基づく線形補間又は非線形補間を行うことにより、年齢と画素値との関係を示す線形関数又は非線形関数を導出する。線形補間、非線形補間等の複数のフィッティング方式のうちからどのフィッティング方式を選択するかについては、予めオペレータ等によって決定されてもよいし、複数のフィッティング方式を試行して近似精度が高い方の方式を採用するようにしてもよい。
本実施形態では一例として、モデル関数生成部111は、線形補間を行うことにより、線形回帰モデル「y1=a1×x+b1」を画素毎に導出する。具体的には、モデル関数生成部111は、当該線形回帰モデルにおける傾きa1と切片b1を画素毎に導出する。ここで、xは年齢に対応する説明変数であり、y1は画素値の平均値に対応する目的変数である。なお、上記のように抽出された複数のサンプルをそのまま用いた場合、ばらつきが大きく、線形回帰モデル(傾きa1、切片b1)を適切に導出できないことがある。そこで、モデル関数生成部111は、サンプルの間引きを行ってもよい。モデル関数生成部111は、例えば、各年齢に対して当該年齢を中心とする±5歳の範囲に含まれる被験者の脳画像の画素値の平均値(移動平均±5歳)を対応付けたサンプル(各年齢に対して1つ決定されるサンプル)のみを用いて線形補間を行ってもよい。
図9は、年齢を横軸、平均画素値を縦軸とした平面上に、上述したサンプルの間引きがされた後の49歳~64歳の男性の被験者のサンプル(脳画像のある特定画素の画素値の平均値(計16点))をプロットしたものである。この例では、当該特定画素に関して、線形回帰モデル「y1=0.042×x+0.5453」が導出されている。上述したモデル関数生成部111の処理を他の画素についても同様に実行することにより、画素毎の線形回帰モデル(15964個の線形回帰モデル)が導出される。このように画素毎に導出された線形回帰モデルによって、上述したモデル関数が構成される。なお、モデル関数生成部111は、画素毎に導出された傾きa1及び切片b1の各々について、画素間での平滑化処理、ノイズ除去処理等の画像処理における公知の処理(一種のフィルタ処理)を実行してもよい。
モデル関数生成部111は、上記と同様の処理により、入力された年齢に応じた画素毎の画素値の標準偏差を含む脳標準偏差画像を出力するモデル関数(第2モデル関数)も生成する。例えば、モデル関数生成部111は、画素毎に、各年齢に対して当該年齢を中心とする±5歳の範囲に含まれる被験者の脳画像の画素値の標準偏差(移動標準偏差±5歳)を対応付けたサンプルのみを用いて上述した線形補間を行う。これにより、線形回帰モデル「y2=a2×x+b2」を画素毎に導出する。具体的には、モデル関数生成部111は、当該線形回帰モデルにおける傾きa2と切片b2を画素毎に導出する。ここで、y2は画素値の標準偏差に対応する目的変数である。このように画素毎に導出された線形回帰モデルによって、上述した第2モデル関数が構成される。なお、モデル関数生成部111は、画素毎に導出された傾きa2及び切片b2の各々について、画素間での平滑化処理、ノイズ除去処理等の画像処理における公知の処理(一種のフィルタ処理)を実行してもよい。
脳画像生成部112は、モデル関数に任意の年齢を入力することにより、当該任意の年齢に対応する画素毎の画素値の平均値を示す正常脳平均画像を生成する。同様に、脳画像生成部112は、第2モデル関数に任意の年齢を入力することにより、当該任意の年齢に対応する画素毎の画素値の標準偏差を示す正常脳標準偏差画像を生成する。これにより、任意の年齢に対応する正常脳平均画像及び正常脳標準偏差画像を補完することができる。
補正部107は、上述した補正パラメータ(Δave)を用いて、脳画像生成部112によって得られた任意の年齢に対応する正常脳平均画像の画素毎の画素値の平均値を補正することにより、当該任意の年齢に対応する補正後の画素毎の画素値の平均値を含む仮想正常脳平均画像を取得する。同様に、補正部107は、上述した補正パラメータ(Δdev)を用いて、脳画像生成部112によって得られた任意の年齢に対応する正常脳標準偏差画像の画素毎の画素値の標準偏差を補正することにより、当該任意の年齢に対応する補正後の画素毎の画素値の標準偏差を含む仮想正常脳標準偏差画像を取得する。以上のように、ビッグデータ側で不足している年齢層に対応する正常脳平均画像及び正常脳標準偏差画像を補完することにより、当該年齢層に対応する仮想正常脳平均画像及び仮想正常脳標準偏差画像を補完することができる。
次に、第1断層撮影装置により得られた脳画像(診断画像取得部109により取得された診断画像)に対して補正を行うことで仮想的に第2断層撮影装置により得られたものと同等の脳画像(補正画像)を取得し、当該脳画像に対する統計学的な診断を行うための機能要素(補正画像取得部113、第2出力部114)について説明する。
補正画像取得部113は、診断画像取得部109により取得された診断画像を、補正パラメータ算出部106により得られた補正パラメータを用いて補正することにより、補正後の脳画像である補正画像を取得する。ここで、上述した補正部107による処理(第2断層撮影装置用の正常脳平均画像から第1断層撮影装置用の仮想正常脳平均画像への変換)では、第2断層撮影装置用の正常脳平均画像に対して補正パラメータΔaveが加算された。そこで、補正画像取得部113は、上記とは逆に、診断画像から補正パラメータΔaveを減算することにより、仮想的に第2断層撮影装置により得られたものと同等の補正画像を取得する。
第2出力部114は、上述した第2断層撮影装置用の正常脳平均画像及び正常脳標準偏差画像と、補正画像取得部113により得られた補正画像と、に基づいて、補正画像が当該正常脳平均画像から乖離している度合いを示すZスコアを出力する。具体的には、第2出力部114は、下記(式12)によって、補正画像の画素毎のZスコアを算出する。
Zスコア=(補正画像-正常脳平均画像)/正常脳標準偏差画像 …(式12)
以上のように、第1断層撮影装置により得られた個別の診断画像を補正し、仮想的に第2断層撮影装置により得られたものと同等の脳画像(補正画像)を得ることにより、既存の正常脳データベース(第2断層撮影装置用の正常脳平均画像及び正常脳標準偏差画像)を利用して適切なZスコアを算出することができる。
次に、図10~図13のフローチャートを参照して、脳画像解析装置10の動作(一実施形態の脳画像解析方法を含む)について説明する。まず、図10のフローチャートを参照して、補正パラメータ(本実施形態では、Δave及びΔdev)を算出するための処理手順の一例について説明する。
まず、第1脳画像取得部101は、第1断層撮影装置により撮影された20人(第1の数)の健常被験者(第1被験者)の各々の生体特徴を示す情報と、第1断層撮影装置により得られた当該20人の第1被験者の各々の第1脳画像と、を取得する(ステップS1)。これにより、図5に示される脳画像セットAが取得される。
続いて、抽出部102は、第2断層撮影装置により撮影された20000人(第1の数よりも多い第2の数)の健常被験者(第2被験者)の各々の生体特徴を示す情報を参照することにより、20人の第1被験者と同一又は類似の生体特徴を有する20人の第2被験者をそれぞれ含む複数(ここでは12個)の第2被験者セットを抽出する(ステップS2)。ここで、複数の第2被験者セットは、同一の第2被験者が2以上の第2被験者セットに含まれないように抽出される。
続いて、第2脳画像取得部104は、第2断層撮影装置により得られた各第2被験者セットに含まれる各第2被験者の第2脳画像を取得する(ステップS3)。これにより、図5に示される脳画像セットA1~A12が取得される。
続いて、比較部105は、脳画像セットAに含まれる20個の第1脳画像と各脳画像セットA1~A12に含まれる20個の第2脳画像との比較を、第2被験者セット毎に行う(ステップS4)。本実施形態では、比較部105は、脳画像セットAに含まれる20個の第1脳画像の画素に対応付けられた画素値の平均値を画素毎に算出することにより、画素毎の画素値の平均値を含む第1脳平均画像を取得する(ステップS5)。また、比較部105は、脳画像セットAに含まれる20個の第1脳画像の画素値の標準偏差を画素毎に算出することにより、画素毎の画素値の標準偏差を含む第1脳標準偏差画像を取得する(ステップS5)。同様に、比較部105は、脳画像セットA1~A12毎に、20個の第2脳画像の画素値の平均値を画素毎に算出することにより、画素毎の画素値の平均値を含む第2脳平均画像を取得する(ステップS6)。また、比較部105は、脳画像セットA1~A12毎に、20個の第2脳画像の画素値の標準偏差を画素毎に算出することにより、画素毎の画素値の標準偏差を含む第2脳標準偏差画像を取得する(ステップS6)。
続いて、比較部105は、脳画像セットAの第1脳平均画像と第2被験者セット毎に取得された各脳画像セットA1~A12の第2脳平均画像とを比較すると共に、脳画像セットAの第1脳標準偏差画像と第2被験者セット毎に取得された各脳画像セットA1~A12の第2脳標準偏差画像とを比較する(ステップS7)。これにより、上述したパラメータセットΔ1(Δave1及びΔdev1)~Δ12(Δave12及びΔdev12)が得られる。
続いて、補正パラメータ算出部106は、比較部105による比較の結果に基づいて、補正パラメータを算出する(ステップS8)。本実施形態では、補正パラメータ算出部106は、上記(式2)及び(式3)に基づいて、画素毎の画素値の平均値を補正するためのパラメータΔaveと画素毎の画素値の標準偏差を補正するためのパラメータΔdevとを、上記補正パラメータとして算出する。
次に、図11のフローチャートを参照して、ビッグデータ側(第2断層撮影装置側)で不足している年齢層に対応する正常脳データベースを補完するための処理手順の一例について説明する。
まず、モデル関数生成部111は、第2断層撮影装置により撮影された複数の被験者(ここでは、男性の健常被験者)の各々の年齢を示す情報と、第2断層撮影装置により得られた当該複数の被験者の脳画像と、を取得する(ステップS11)。
続いて、モデル関数生成部111は、上述したような線形補間等を行うことにより、入力された年齢に応じた正常脳平均画像及び正常脳標準偏差画像を出力するモデル関数を生成する(ステップS12)。
続いて、脳画像生成部112は、上記モデル関数に任意の年齢(例えば、正常脳平均画像及び正常脳標準偏差画像が不足している年齢)を入力することにより、入力された年齢に応じた正常脳平均画像及び正常脳標準偏差画像を生成する(ステップS13)。これにより、ビッグデータ側(第2断層撮影装置側)で不足している年齢層の正常脳平均画像及び正常脳標準偏差画像が補完される。
次に、図12のフローチャートを参照して、仮想正常脳データベースを用いて第1断層撮影装置により得られた診断画像の統計学的な診断を行うための処理手順の一例について説明する。
まず、補正部107は、異機種正常脳データベース103から、性別及び年齢の各組についての第2断層撮影装置用の正常脳データベース(正常脳平均画像及び正常脳標準偏差画像)を取得する(ステップS21)。ここで、補正部107は、元々異機種正常脳データベース103に格納されていた正常脳データベースを取得してもよいし、上述したモデル関数生成部111及び脳画像生成部112の処理によって生成(補完)された正常脳平均画像及び正常脳標準偏差画像を取得してもよい。
続いて、補正部107は、上述した補正パラメータ(Δave及びΔdev)を用いて、取得した正常脳データベースを補正する(ステップS22)。続いて、補正部107は、補正後の正常脳データベースを、第1断層撮影装置用の仮想正常脳データベース108(仮想正常脳画像及び仮想正常脳標準偏差画像)として保存する(ステップS23)。ここまでで、第1断層撮影装置により得られた任意の被験者の脳画像に対する統計学的な診断を行うための準備(仮想正常脳データベース108の準備)が完了する。
続いて、診断画像取得部109は、第1断層撮影装置により得られた任意の被験者の脳画像である診断画像を取得する(ステップS24)。続いて、第1出力部110は、被験者の性別及び年齢に応じた仮想正常脳平均画像及び仮想正常脳標準偏差画像を仮想正常脳データベース108から取得する。そして、第1出力部110は、診断画像取得部109により取得された診断画像と、上述のように取得された仮想正常脳平均画像及び仮想正常脳標準偏差画像と、に基づいて、診断画像が仮想正常脳平均画像から乖離している度合いを示すZスコアを出力する(ステップS25)。Zスコアは、上述した(式4)によって算出される。これにより、図2に示したような比較画像205を生成することができ、医師等が比較画像205を読影することによって診断画像に対する統計学的な診断を行うことが可能となる。
次に、図13のフローチャートを参照して、第1断層撮影装置により得られた脳画像に対して、第2断層撮影装置用の正常脳データベースを用いて統計学的な診断を行うための処理手順の一例について説明する。
まず、診断画像取得部109は、第1断層撮影装置により得られた任意の被験者の脳画像である診断画像を取得する(ステップS31)。続いて、補正画像取得部113は、診断画像取得部109により取得された診断画像を、補正パラメータ算出部106により得られた補正パラメータを用いて補正することにより、補正画像を取得する(ステップS32)。例えば、診断画像に対して上述した補正パラメータΔaveを減算することにより、仮想的に第2断層撮影装置により得られたものと同等の補正画像が得られる。続いて、第2出力部114は、第2断層撮影装置用の正常脳データベース(正常脳平均画像及び正常脳標準偏差画像)と、補正画像取得部113により得られた補正画像と、に基づいて、補正画像が当該正常脳平均画像から乖離している度合いを示すZスコアを出力する(ステップS33)。Zスコアは、上述した(式12)によって算出される。
次に、図14を参照して、コンピュータを脳画像解析装置10として機能させるための脳画像解析プログラムPについて説明する。
脳画像解析プログラムPは、メインモジュールP0、第1脳画像取得モジュールP1、抽出モジュールP2、第2脳画像取得モジュールP3、比較モジュールP4、補正パラメータ算出モジュールP5、補正モジュールP6、診断画像取得モジュールP7、第1出力モジュールP8、モデル関数生成モジュールP9、脳画像生成モジュールP10、補正画像取得モジュールP11、及び第2出力モジュールP12を備えている。メインモジュールP0は、脳画像解析装置10としての処理を統括的に制御する部分である。第1脳画像取得モジュールP1、抽出モジュールP2、第2脳画像取得モジュールP3、比較モジュールP4、補正パラメータ算出モジュールP5、補正モジュールP6、診断画像取得モジュールP7、第1出力モジュールP8、モデル関数生成モジュールP9、脳画像生成モジュールP10、補正画像取得モジュールP11、及び第2出力モジュールP12を実行することにより実現される機能は、それぞれ、脳画像解析装置10の第1脳画像取得部101、抽出部102、第2脳画像取得部104、比較部105、補正パラメータ算出部106、補正部107、診断画像取得部109、第1出力部110、モデル関数生成部111、脳画像生成部112、補正画像取得部113、及び第2出力部114の機能と同様である。
脳画像解析プログラムPは、例えば、CD-ROM、DVD若しくはROM等の記録媒体又は半導体メモリによって提供される。また、脳画像解析プログラムPは、搬送波に重畳されたコンピュータデータ信号としてネットワークを介して提供されてもよい。
[作用効果]
以上述べた脳画像解析装置10では、20人(第1の数)の第1被験者の第1脳画像と、20人の第1被験者と同一又は類似の生体特徴を有する20人の第2被験者の第2脳画像との比較が、第2被験者セットの数(本実施形態では12回)だけ実行される。これにより、実際に第1断層撮影装置により得られたサンプル数(20個)よりも多いサンプル数での画像比較(機種間比較)を疑似的に行うことができる。このように、第1断層撮影装置のサンプル(第1脳画像)が少ない場合であっても、比較的多くのサンプルを有する第2断層撮影装置のサンプル(異機種正常脳データベース103に蓄積された第2脳画像)を活用することにより、機種間差を補正するための補正パラメータを精度良く得ることができる。さらに、上記の画像比較を行うために、同一の被験者について第1断層撮影装置及び第2断層撮影装置の両方で脳画像を取得する必要がない。また、上述した補正パラメータを用いて第2断層撮影装置により得られた脳画像に基づく画像を補正することにより、仮想的に第1断層撮影装置により得られた脳画像に基づく画像(すなわち、第1断層撮影装置により得られる画像と同等の画像)を得ることができる。そして、このように得られた仮想的な画像を蓄積することにより、第1断層撮影装置用の仮想的な正常脳データベース(仮想正常脳データベース108)を構築することができる。以上により、脳画像解析装置10によれば、第1断層撮影装置用の正常脳データベース(仮想正常脳データベース108)を容易に生成することが可能となる。
補足すると、脳画像解析装置10によれば、これまでに蓄積されているビッグデータ(異機種正常脳データベース103)を有効活用することができる。具体的には、第1断層撮影装置により得られている脳画像のサンプル数が比較的少ない場合(本実施形態のように20個程度の場合)でも、上述のようにビッグデータに基づいて、仮想正常脳データベース108を容易に生成することができる。また、少ないサンプル数で仮想正常脳データベース108を生成することが可能であることによって、第1断層撮影装置で脳を撮影してもらうボランティアの数(ボランティア撮影の回数)を減らすことができる。ボランティア撮影は、ボランティアにとっても、作業者にとっても負担が大きいため、ボランティア撮影の回数を減らすことにより、このような負担を低減できる。また、ボランティア撮影によって脳画像を一から取得する場合には、取得された脳画像が正常脳画像として用いることが可能か否かの最低限の画像チェックを行う必要がある。一方、脳画像解析装置10では、既に画像チェック済みのビッグデータ(第2断層撮影装置用の正常脳データベース)を変換して第1断層撮影装置用の仮想正常脳データベースを生成するため、画像チェックの負担を軽減できる。
また、第1脳画像及び第2脳画像には、互いに対応する複数の画素(領域)が設定されている。比較部105は、20個の第1脳画像の画素に対応付けられた画素値の平均値を画素毎に算出することにより、画素毎の画素値の平均値を含む第1脳平均画像を取得する。比較部105は、第2被験者セット毎(脳画像セットA1~A12毎)に、20個の第2脳画像の画素に対応付けられた画素値の平均値を画素毎に算出することにより、画素毎の画素値の平均値を含む第2脳平均画像を取得する。比較部105は、第1脳平均画像と第2被験者セット毎に取得された第2脳平均画像とを比較する。補正パラメータ算出部106は、画素毎の画素値の平均値を補正するためのパラメータ(Δave)を含む補正パラメータを算出する。補正部107は、当該補正パラメータを用いて、第2断層撮影装置により得られた複数の脳画像の画素毎の画素値の平均値(すなわち、第2断層撮影装置用の正常脳平均画像)を補正することにより、補正後の画素毎の画素値の平均値を含む仮想脳平均画像を取得する。この構成によれば、第2断層撮影装置用の正常脳平均画像を補正することにより、仮想的に第1断層撮影装置により得られた複数の被験者の脳画像の脳平均画像(仮想脳平均画像)を得ることができる。このようにして得られた仮想脳平均画像を蓄積することにより、第1断層撮影装置用の仮想正常脳データベース108を構築することが可能となる。
また、脳画像解析装置10は、第1断層撮影装置により得られた任意の被験者の脳画像である診断画像を取得する診断画像取得部109と、診断画像と仮想脳平均画像とに基づいて、診断画像が仮想脳平均画像から乖離している度合いを示すZスコアを出力する第1出力部110と、を備えている。この構成によれば、仮想脳平均画像を用いることにより、第1断層撮影装置により得られた任意の被験者の脳画像を適切に診断することが可能となる。具体的には、当該任意の被験者の脳画像が仮想脳平均画像から乖離している度合いを示すZスコアに基づいて、統計学的な診断を行うことが可能となる。
また、比較部105は、20個の第1脳画像の画素に対応付けられた画素値の標準偏差を画素毎に算出することにより、画素毎の画素値の標準偏差を含む第1脳標準偏差画像を更に取得する。比較部105は、第2被験者セット毎(脳画像セットA1~A12毎)に、20個の第2脳画像の画素に対応付けられた画素値の標準偏差を画素毎に算出することにより、画素毎の画素値の標準偏差を含む第2脳標準偏差画像を更に取得する。比較部105は、第1脳標準偏差画像と第2被験者セット毎に取得された第2脳標準偏差画像とを更に比較する。補正パラメータ算出部106は、画素毎の画素値の標準偏差を補正するためのパラメータ(Δdev)を更に含む補正パラメータを算出する。補正部107は、当該補正パラメータを用いて、第2断層撮影装置により得られた複数の脳画像の画素毎の画素値の標準偏差(すなわち、第2断層撮影装置用の正常脳標準偏差画像)を補正することにより、補正後の画素毎の画素値の標準偏差を含む仮想脳標準偏差画像を更に取得してもよい。この構成によれば、第2断層撮影装置用の正常脳標準偏差画像を補正することにより、仮想的に第1断層撮影装置により得られた複数の被験者の脳画像の脳標準偏差画像(仮想脳標準偏差画像)を得ることができる。このようにして得られた仮想脳標準偏差画像を蓄積することにより、第1断層撮影装置用の仮想正常脳データベース108を構築することが可能となる。
また、脳画像解析装置10では、第1出力部110は、診断画像と仮想脳平均画像と仮想脳標準偏差画像とに基づいて、診断画像が仮想脳平均画像から乖離している度合いを示すスコアを出力する(上記(式4)参照)。この構成によれば、仮想脳平均画像に加えて仮想脳標準偏差画像を用いることにより、第1断層撮影装置により得られた任意の被験者の脳画像をより一層適切に診断することが可能となる。具体的には、画素値のばらつき(仮想脳標準偏差画像)も考慮することにより、当該任意の被験者の脳画像が仮想脳平均画像から乖離している度合いを示すZスコアをより精度良く算出でき、統計学的な診断の精度を向上させることができる。
また、脳画像解析装置10は、複数の被験者の年齢を示す情報と、第2断層撮影装置により得られた複数の被験者の脳画像と、に基づいて、入力された年齢に応じた画素毎の画素値の平均値を含む脳平均画像を出力するモデル関数を生成するモデル関数生成部111と、モデル関数に任意の年齢を入力することにより、任意の年齢に対応する脳平均画像を生成する脳画像生成部112と、を備えている。補正部107は、補正パラメータを用いて、当該脳平均画像の画素毎の画素値の平均値を補正することにより、任意の年齢に対応する仮想脳平均画像を取得する。この構成によれば、第2断層撮影装置により得られた複数のサンプル(年齢及び脳画像の組)から、任意の年齢(実際にはサンプルが存在しない年齢を含む)に対応する脳平均画像を生成することができる。さらに、このように生成された脳平均画像を、補正パラメータ(Δave)を用いて補正することにより、任意の年齢に対応する仮想脳平均画像を補完することができる。
また、モデル関数生成部111は、複数の被験者の年齢を示す情報と、第2断層撮影装置により得られた複数の被験者の脳画像と、に基づいて、入力された年齢に応じた画素毎の画素値の標準偏差を含む脳標準偏差画像を出力する第2モデル関数を更に生成する。脳画像生成部112は、第2モデル関数に任意の年齢を入力することにより、任意の年齢に対応する脳標準偏差画像を更に生成する。補正部107は、補正パラメータを用いて、脳標準偏差画像の画素毎の画素値の標準偏差を補正することにより、任意の年齢に対応する補正後の画素毎の画素の標準偏差を含む仮想脳標準偏差画像を更に取得する。この構成によれば、第2断層撮影装置により得られた複数のサンプル(年齢及び脳画像の組)から、任意の年齢(実際にはサンプルが存在しない年齢を含む)に対応する脳標準偏差画像を生成することができる。さらに、このように生成された脳標準偏差画像を、補正パラメータ(Δdev)を用いて補正することにより、任意の年齢に対応する仮想脳標準偏差画像を補完することができる。
また、脳画像解析装置10は、補正パラメータを用いて診断画像を補正することにより、補正後の脳画像である補正画像を取得する補正画像取得部113と、第2断層撮影装置により得られた複数の被験者の脳画像の画素毎の画素値の平均値を含む脳平均画像と、当該複数の被験者の脳画像の領域毎の画素値の標準偏差を含む脳標準偏差画像と、補正画像と、に基づいて、補正画像が脳平均画像から乖離している度合いを示すZスコアを出力する第2出力部114と、を更に備えている。この構成によれば、第1断層撮影装置により得られた被験者の脳画像(診断画像)から、仮想的に第2断層撮影装置によって得られた補正画像(すなわち、第2断層撮影装置により得られたものと同等の画像)が取得される。そして、当該補正画像と第2断層撮影装置用の脳平均画像及び脳標準偏差画像に基づいて算出されたZスコア(上記(式12)により算出されたZスコア)によって、第1断層撮影装置の被験者の脳画像の統計学的な診断が可能となる。
[変形例]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、脳画像解析装置10は、脳画像解析装置10と同じ施設に設置される第1断層撮影装置(PET装置44)用の正常脳データベースを構築するために用いられたが、脳画像解析装置10は、他施設からの依頼を受けて、脳画像解析装置10とは異なる施設に設置されているモダリティ用の正常脳データベースを構築することも可能である。
また、比較部105による比較の手法は、上述したような脳平均画像及び脳標準偏差画像についての画素毎の差(平均値)の算出に限られない。比較部105は、比較の手法として、例えば、回帰モデル(線形回帰モデル又は非線形回帰モデル)、深層学習(ディープラーニング)等を用いてもよい。
脳画像セットAに含まれる20個の第1脳画像と各脳画像セットAnに含まれる20個の第2脳画像とを比較することにより、第1脳画像の画素値v1と第2脳画像の画素値v2との組が20個得られる。そこで、比較部105は、このような20個の組に基づいて、第2脳画像の画素値v2から第1脳画像の画素値v1を推測するための回帰モデル(線形回帰モデル又は非線形回帰モデル)を導出してもよい。この場合、脳画像セットAと脳画像セットAnとの比較毎に、回帰モデルの係数(パラメータ)が得られる。そして、補正パラメータ算出部106は、例えば、上述のようにして比較毎に得られた係数の平均値を、最終的な補正パラメータ(回帰モデルの係数)として算出してもよい。
また、比較部105は、脳画像セットAに含まれる20個の第1脳画像と各脳画像セットAnに含まれる20個の第2脳画像とを、cGAN(conditional Generative Adversarial Network)等の深層学習モデルに入力して対比させることで、第2断層撮影装置により得られた脳画像から第1断層撮影装置により得られる脳画像を推定する推定モデルを生成してもよい。この場合、脳画像セットAと脳画像セットAnとの比較毎に、上記推定モデルの係数(パラメータ)が得られる。そして、補正パラメータ算出部106は、例えば、上述のようにして比較毎に得られた係数の平均値を、最終的な補正パラメータ(推定モデルの係数)として算出してもよい。
上記のいずれの場合にも、補正部107は、最終的な補正パラメータを用いて第2断層撮影装置により得られた脳画像を補正することにより、仮想的に第1断層撮影装置により得られた脳画像(以下「推定脳画像」)を得ることができる。この場合、複数の推定脳画像から算出される脳平均画像及び脳標準偏差画像を、第1断層撮影装置用の仮想正常脳平均画像及び仮想正常脳標準偏差画像として用いることができる。
また、脳画像解析装置10は、脳画像以外の生体画像に対する処理を実行する生体画像解析装置としても利用され得る。例えば、上記実施形態では、断層撮影された脳の画像が処理対象であるが、断層撮影に限られない撮影方式により撮影された他の生体部位(例えば、心臓等の脳以外の臓器、指等の身体の外側部分等)の生体画像が処理対象とされてもよい。また、生体画像は、人以外の生物を撮影することにより得られた画像であってもよい。このような生体画像解析装置は、上述した脳画像解析装置10の定義を書き換えることにより、以下のように定義され得る。
すなわち、生体画像解析装置は、第1撮影装置により撮影された第1の数の第1被験体の各々の生体特徴を示す情報と、前記第1撮影装置により得られた前記第1の数の前記第1被験体の各々の第1生体画像と、を取得する第1生体画像取得部と、
第2撮影装置により撮影された前記第1の数よりも多い第2の数の第2被験体の各々の生体特徴を示す情報を参照することにより、前記第1の数の前記第1被験体と同一又は類似の生体特徴を有する前記第1の数の前記第2被験体をそれぞれ含む複数の第2被験体セットを、同一の前記第2被験体が2以上の前記第2被験体セットに含まれないように抽出する抽出部と、
前記第2撮影装置により得られた各前記第2被験体セットに含まれる各前記第2被験体の第2生体画像を取得する第2生体画像取得部と、
前記第1の数の前記第1生体画像と前記第2被験体セットに含まれる前記第1の数の前記第2被験体の前記第2生体画像との比較を、前記第2被験体セット毎に行う比較部と、
前記比較の結果に基づいて、前記第1撮影装置により得られる生体画像に基づく画像と前記第2撮影装置により得られる生体画像に基づく画像との差を補正するための補正パラメータを算出する算出部と、
前記補正パラメータを用いて、前記第2撮影装置により得られた生体画像に基づく画像を補正する補正部と、
を備える。
脳画像解析装置10が人の脳画像(断層画像)を処理対象とするのに対し、生体画像解析装置は、人以外の生物を含む被験体の生体画像(断層撮影以外の撮影方式により撮影された画像を含むと共に、脳以外の生体部位を撮影することにより得られた画像を含む)を処理対象とする点で異なるのみであり、生体画像解析装置が備える第1生体画像取得部、抽出部、第2生体画像取得部、比較部、算出部、及び補正部により実行される情報処理は、脳画像解析装置10の第1脳画像取得部101、抽出部102、第2脳画像取得部104、比較部105、補正パラメータ算出部106、及び補正部107により実行される情報処理と同様である。