JP6991714B2 - 脛骨交感神経活動、脂肪交感神経活動、腎臓交感神経活動若しくは脾臓交感神経活動の評価システムの作動方法、ヒト以外の動物の脛骨交感神経活動、脂肪交感神経活動、腎臓交感神経活動若しくは脾臓交感神経活動を評価する方法、並びに、脛骨交感神経活動、脂肪交感神経活動、腎臓交感神経活動若しくは脾臓交感神経活動の評価システム - Google Patents
脛骨交感神経活動、脂肪交感神経活動、腎臓交感神経活動若しくは脾臓交感神経活動の評価システムの作動方法、ヒト以外の動物の脛骨交感神経活動、脂肪交感神経活動、腎臓交感神経活動若しくは脾臓交感神経活動を評価する方法、並びに、脛骨交感神経活動、脂肪交感神経活動、腎臓交感神経活動若しくは脾臓交感神経活動の評価システム Download PDFInfo
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Description
その為、動物の末梢交感神経活動の評価は、交感神経調節を介した健康状態や、病態の改善が可能な新規医薬品や新規素材の開発に利用されている。実際に近年、末梢交感神経活動と、健康状態や睡眠状態、病態などとの数多くの関連性が明らかになってきた。さらに、医薬品や食品ポリフェノールが末梢交感神経活動の調節を介して、健康状態や睡眠状態、病態を改善することが報告されてきた。
しかし、R-R間隔の周波数解析から算出される交感神経活動は、あくまでも心臓の自律神経活動の変化を反映しているに過ぎない。そのため、R-R間隔の周波数解析から、心臓以外の他の臓器や組織の機能に特異的に影響を与える末梢交感神経活動を知ることは不可能である。
しかし、非特許文献2~5に示される従来の方法では、末梢交感神経活動測定の妨げとなる電気信号の低減が不十分な為、評価の精度を低下させ、評価の難易度を上げる原因になっていた。よって、末梢交感神経活動を測定する際には、評価の妨げになる生体内外の電気信号の干渉を、より低減させる必要があった。
本発明はこれらの知見に基づき完成されるに至ったものである。
また本発明は、脛骨神経が発する50Hz以上250Hz以下の周波数帯における電気信号を用いて、脛骨交感神経活動を評価する方法に関する。
また本発明は、脂肪神経が発する50Hz以上400Hz以下の周波数帯における電気信号を用いて、脂肪交感神経活動を評価する方法に関する。
また本発明は、脂肪神経が発する50Hz以上250Hz以下の周波数帯における電気信号を用いて、脂肪交感神経活動を評価する方法に関する。
また本発明は、腎臓神経が発する50Hz以上600Hz以下の周波数帯における電気信号を用いて、腎臓交感神経活動を評価する方法に関する。
また本発明は、脾臓神経が発する50Hz以上600Hz以下の周波数帯における電気信号を用いて、脾臓交感神経活動を評価する方法に関する。
また本発明は、脛骨神経が発する電気信号のうち、50Hz以上250Hz以下の周波数帯における電気信号を指標として、脛骨交感神経活動を評価するシステムに関する。
また本発明は、脂肪神経が発する電気信号のうち、50Hz以上400Hz以下の周波数帯における電気信号を指標として、脂肪交感神経活動を評価するシステムに関する。
また本発明は、脂肪神経が発する電気信号のうち、50Hz以上250Hz以下の周波数帯における電気信号を指標として、脂肪交感神経活動を評価するシステムに関する。
また本発明は、腎臓神経が発する電気信号のうち、50Hz以上600Hz以下の周波数帯における電気信号を指標として、腎臓交感神経活動を評価するシステムに関する。
さらに本発明は、脾臓神経が発する電気信号のうち、50Hz以上600Hz以下の周波数帯における電気信号を指標として、脾臓交感神経活動を評価するシステムに関する。
末梢組織においてはこれら求心性神経、遠心性神経が、神経束を形成する。一般的に、光学顕微鏡等を用いて視認可能な神経とは神経束であり、求心性神経、遠心性神経を含む。例えば、ラットの坐骨神経は、直径1mmにも満たない神経に関わらず、求心性、遠心性神経を含む約14,000本の神経線維から構成されている(Schmalbruch H., Anat. Rec., 1986, vol. 215(1), p.71-81参照)。その為、正確に末梢交感神経活動を評価する際には、1本の神経の束から交感神経以外の神経、即ち、求心性神経、運動神経と交感神経を分離する必要がある。しかし、神経は細い為、分離の際に神経を損傷させる可能性が生じる。
これに対して本発明によれば、神経線維の束から運動神経を分離することなく、各組織の末梢交感神経活動を評価することができる。そのため、神経を損傷させる可能性を低下させ、容易に末梢交感神経活動を評価することが可能になる。
本発明において好ましい実施態様としては、脛骨神経、脂肪神経、又は脾臓神経の電気信号を測定する際には、神経活動を評価する組織の末梢側が切断又は破壊されていることが好ましい。脛骨神経、脂肪神経、又は脾臓神経の末梢側を切断又は破壊することで、脛骨神経、脂肪神経、又は脾臓神経の電気信号における求心性神経活動の関与を取り除くことができる。
また、解析効率、精度のさらなる向上の観点から、測定した電気信号中でも、脛骨交感神経活動に由来する50Hz以上250Hz以下の周波数帯における生体信号を解析することが好ましい。この場合における、解析する周波数帯の上限値及び下限値は、本発明の効果を損なわない範囲で、50~250Hzの範囲内で適宜設定することができる。例えば、前記下限値は、S/N比を考慮して、50~70Hzの範囲内で設定することが好ましく、50~60Hzの範囲内で設定することがより好ましい。同様の観点から、前記上限値は、230~250Hzの範囲内で設定することが好ましく、240~250Hzの範囲内で設定することがより好ましい。
また、解析効率、精度のさらなる向上の観点から、測定した電気信号中でも、脂肪交感神経活動に由来する50Hz以上250Hz以下の周波数帯における生体信号を解析することが好ましい。この場合における、解析する周波数帯の上限値及び下限値は、本発明の効果を損なわない範囲で、50~250Hzの範囲内で適宜設定することができる。例えば、前記下限値は、S/N比を考慮して、50~70Hzの範囲内で設定することが好ましく、50~60Hzの範囲内で設定することがより好ましい。同様の観点から、前記上限値は、230~250Hzの範囲内で設定することが好ましく、240~250Hzの範囲内で設定することがより好ましい。
この場合における、解析する周波数帯の上限値及び下限値は、本発明の効果を損なわない範囲で、50~600Hzの範囲内で適宜設定することができる。例えば、前記下限値は、S/N比を考慮して、50~70Hzの範囲内で設定することが好ましく、50~60Hzの範囲内で設定することがより好ましい。同様の観点から、前記上限値は、580~600Hzの範囲内で設定することが好ましく、590~600Hzの範囲内で設定することがより好ましい。
この場合における、解析する周波数帯の上限値及び下限値は、本発明の効果を損なわない範囲で、50~600Hzの範囲内で適宜設定することができる。例えば、前記下限値は、S/N比を考慮して、50~70Hzの範囲内で設定することが好ましく、50~60Hzの範囲内で設定することがより好ましい。同様の観点から、前記上限値は、580~600Hzの範囲内で設定することが好ましく、590~600Hzの範囲内で設定することがより好ましい。
周波数解析には、高速フーリエ変換、フーリエ変換、ウェーブレット変換、コサイン変換などを採用してもよい。ここでいう「フーリエ変換」とは、離散フーリエ変換や、短時間フーリエ変換などを含む。また「コサイン変換」は、特殊な離散フーリエ変換である離散コサイン変換や、離散コサイン変換の一手法である変形離散コサイン変換などを含む。また、「ウェーブレット変換」は、連続ウェーブレット変換や、離散ウェーブレット変換などを含む。本発明において、周波数解析の際にデータの不連続性が問題になる場合は、周波数解析を容易にするために、「カイザー窓」、「ハミング窓」、「ガウス窓」、「矩形窓」、「ハニング窓」、「ブラックマン窓」、「バートレット窓」等の窓関数を用いることが好ましい。
デジタルフィルタには、インパルス応答が有限であるFIR(finite impulse response)フィルタと、インパルス応答が無限に続くIIR(infinite impulse response)フィルタを用いることができる。
これら解析手法を用いて、取得した神経活動から、各周波数におけるパワースペクトル密度、また、神経種によって特定される特定周波数帯における電気信号強度、及び電気信号量を交感神経活動量として算出する。
電極とは、神経と電気的接触とをもたらすために使用される導体を意味し、通常、塩化銀コーティングや、神経との接触部以外がテフロン(登録商標)等で覆われたステンレス、銅、スズ、金又は銀で作られる細い針や、電線である。電極部は、この電極が増幅部に接続されるまでの部位を指す。神経と直接接触した電極部位以外で、組織液等の液体に電極が接触する可能性のある部位は、外部から液体を介した電気的ノイズの混入を防ぐ為に、シリコン、ミネラルオイルを用いて完全に被覆し絶縁することが好ましい。電極の形状にはクランプ型、フォーク型あるいはニードル型等様々なものが存在するが、本発明於いて形状は適宜選択することができる。但し、取得する末梢交感神経の電気信号には、直流電圧や商用交流電圧が外来由来の電気的ノイズとして混入することが在る。その為、神経の発する電気信号は、2極以上の電極から電位差を差分電圧として取り出すことが好ましい。その為、電極は2極性のものを用いるか、もしくはアース電極を兼ね備えるものが好ましい。
増幅部は、一般的に数百nVから数十μVである微小な神経活動による電気信号を数十~数万倍に増幅する電気信号増幅器が、解析部に接続されるまでを指す。電気信号は、差分電圧として取り出すため、増幅器には差動増幅器を用いることが好ましい。
解析部は、増幅部より発生される信号の受信部、及び、周波数解析によってパワースペクトル密度を解析装置、また、電気信号から特定周波数帯の差分電圧強度を抽出し、且つ積算できる解析装置、さらには、解析結果を表示するディスプレイ、結果を記録する記録装置からなる。解析装置では、前述の特定周波数帯での周波数解析が行われる。また、解析は、電気信号取得と同時に、リアルタイムで行えることが好ましい。
しかし、図2(A)の左側のグラフや、図3の左側のグラフに示したように、従来の方法のオシログラムの波形からでは、測定対象が末梢交感神経活動であるかどうかを判断できない場合がある。その際には、測定対象を替えたり、測定対象の神経を細かく割いて分離したり、測定評価自体をやり直す必要が生じる。
これに対して、本発明のように特定周波数帯の解析を用いれば、図2の右側のグラフに示したように、環境由来のノイズを低減させ、交感神経外の多種神経に由来する生体由来のノイズの干渉を低減することで、図3の右側のグラフで示すように、オシログラムの波形の視認性も大幅に向上する。よって、上記のような誤認事象の発生を抑えることが可能になる。
本発明の評価方法及び評価システムは、神経活動測定の際のノイズを低減し、簡便にかつ正確に末梢交感神経活動の測定を可能とする。よって、本発明の評価方法及び評価システムを用いることにより、末梢交感神経活動を容易に同定することが可能になるだけでなく、末梢交感神経活動の各種病態の発症原因への関与の証明がより正確にできる。さらには、腎臓交感神経を介した低血圧、高血圧などの循環器疾患、脂肪交感神経を介した肥満、脛骨交感神経を介した筋疲労、脾臓交感神経を介した免疫状態、又は、健康状態や睡眠状態を調節する末梢交感神経調節剤のスクリーニングを高精度に行うことが可能になる。
なお、本発明の評価方法及び評価システムで測定対象とする神経活動は、ヒトの神経活動でもよいし、ヒト以外の動物の神経活動であってもよい。本発明では、ヒト以外の動物の神経活動が好ましい。
<2>脛骨神経が発する50Hz以上(好ましくは50~70Hzの範囲内の任意の周波数以上、より好ましくは50~60Hzの範囲内の任意の周波数以上)250Hz以下(好ましくは230~250Hzの範囲内の任意の周波数以下、より好ましくは240~250Hzの範囲内の任意の周波数以下)の周波数帯における電気信号を用いて、脛骨交感神経活動を評価する方法。
<3>脂肪神経が発する50Hz以上(好ましくは50~70Hzの範囲内の任意の周波数以上、より好ましくは50~60Hzの範囲内の任意の周波数以上)400Hz以下(好ましくは230~400Hzの範囲内の任意の周波数以下、より好ましくは240~400Hzの範囲内の任意の周波数以下)の周波数帯における電気信号を用いて、脂肪交感神経活動を評価する方法。
<4>脂肪神経が発する50Hz以上(好ましくは50~70Hzの範囲内の任意の周波数以上、より好ましくは50~60Hzの範囲内の任意の周波数以上)250Hz以下(好ましくは230~250Hzの範囲内の任意の周波数以下、より好ましくは240~250Hzの範囲内の任意の周波数以下)の周波数帯における電気信号を用いて、脂肪交感神経活動を評価する方法。
<5>腎臓神経が発する50Hz以上(好ましくは50~70Hzの範囲内の任意の周波数以上、より好ましくは50~60Hzの範囲内の任意の周波数以上)600Hz以下(好ましくは580~600Hzの範囲内の任意の周波数以下、より好ましくは590~600Hzの範囲内の任意の周波数以下)の周波数帯における電気信号を用いて、腎臓交感神経活動を評価する方法。
<6>脾臓神経が発する50Hz以上(好ましくは50~70Hzの範囲内の任意の周波数以上、より好ましくは50~60Hzの範囲内の任意の周波数以上)600Hz以下(好ましくは580~600Hzの範囲内の任意の周波数以下、より好ましくは590~600Hzの範囲内の任意の周波数以下)の周波数帯における電気信号を用いて、脾臓交感神経活動を評価する方法。
<8>脛骨神経が発する電気信号のうち、50Hz以上(好ましくは50~70Hzの範囲内の任意の周波数以上、より好ましくは50~60Hzの範囲内の任意の周波数以上)250Hz以下(好ましくは230~250Hzの範囲内の任意の周波数以下、より好ましくは240~250Hzの範囲内の任意の周波数以下)の周波数帯における電気信号を指標として、脛骨交感神経活動を評価するシステム。
<9>脂肪神経が発する電気信号のうち、50Hz以上(好ましくは50~70Hzの範囲内の任意の周波数以上、より好ましくは50~60Hzの範囲内の任意の周波数以上)400Hz以下(好ましくは230~400Hzの範囲内の任意の周波数以下、より好ましくは240~400Hzの範囲内の任意の周波数以下)の周波数帯における電気信号を指標として、脂肪交感神経活動を評価するシステム。
<10>脂肪神経が発する電気信号のうち、50Hz以上(好ましくは50~70Hzの範囲内の任意の周波数以上、より好ましくは50~60Hzの範囲内の任意の周波数以上)250Hz以下(好ましくは230~250Hzの範囲内の任意の周波数以下、より好ましくは240~250Hzの範囲内の任意の周波数以下)の周波数帯における電気信号を指標として、脂肪交感神経活動を評価するシステム。
<11>腎臓神経が発する電気信号のうち、50Hz以上(好ましくは50~70Hzの範囲内の任意の周波数以上、より好ましくは50~60Hzの範囲内の任意の周波数以上)600Hz以下(好ましくは580~600Hzの範囲内の任意の周波数以下、より好ましくは590~600Hzの範囲内の任意の周波数以下)の周波数帯における電気信号を指標として、腎臓交感神経活動を評価するシステム。
<12>脾臓神経が発する電気信号のうち、50Hz以上(好ましくは50~70Hzの範囲内の任意の周波数以上、より好ましくは50~60Hzの範囲内の任意の周波数以上)600Hz以下(好ましくは580~600Hzの範囲内の任意の周波数以下、より好ましくは590~600Hzの範囲内の任意の周波数以下)の周波数帯における電気信号を指標として、脾臓交感神経活動を評価するシステム。
<14>脛骨神経、脂肪神経、又は脾臓神経の電気信号を測定する際、神経活動を評価する組織の末梢側が切断又は破壊されている、前記<1>~<4>、<6>~<10>、<12>、及び<13>のいずれか1項に記載の方法又はシステム。
<15>前記交感神経以外の生体由来の電気信号の干渉を低減する、前記<1>~<14>のいずれか1項に記載の方法又はシステム。
<16>測定した電気信号から、交感神経活動を含まない電気信号を除去する、前記<1>~<14>のいずれか1項に記載の方法又はシステム。
<17>高速フーリエ変換、フーリエ変換、ウェーブレット変換、又はコサイン変換、好ましくは高速フーリエ変換、により、交感神経活動の周波数解析を行う、前記<1>~<16>のいずれか1項に記載の方法又はシステム。
<18>ヒト以外の動物の神経活動を評価対象とする、前記<1>~<17>のいずれか1項に記載の方法又はシステム。
<19>神経が発する電気信号を取得する為の電極部と、電気信号を増幅する為の増幅部と、電気信号を解析する為の解析部から構成される、前記<7>~<18>のいずれか1項に記載のシステム。
ラット(SHR、雄、11週齢)に18時間の絶食をさせた後、生理食塩水に溶解し0.25g/mLの濃度に調整したウレタン(和光純薬工業社製、1g/kg体重、腹腔内投与)による麻酔下で、生理食塩水で調整したヘパリンナトリウム(持田製薬社製、100unit/mL)を満したポリエチレンカテーテル(ベクトン・ディッキンソン社製)を右大腿静脈へ挿入した。その後、外側大腿部位を切開し、脛骨神経を露出させ、露出させた神経を末梢側(足先側)で切断した。
次に、切断された脛骨神経の末梢側の切断端末をテフロン(登録商標)コートした2極性のステンレスワイヤー電極(As634、Cooner Wire社製)に繋ぎ、シリコン(Sil-Gel 604、Wacker社製)を用いて絶縁固定し、脛骨神経が発する電気信号を取得した。以後、脛骨神経が発する電気信号を「脛骨神経活動」と表す。脛骨神経活動は、プレアンプ(JC-101B、日本光電社製)及びバンドパスフィルタ(low cut:50Hz、high cut:1kHz)内蔵の高感度増幅器(MEG-5100、日本光電社製)を用いて増幅させ、多目的データ取得システム(PowerLab 4/30、AD Instruments社製)に出力させ、10,000サンプル/秒のサンプリング速度にてデータ収録した。
記録終了後、飽和塩化カリウム水溶液を大腿静脈カテーテルより静脈投与し、ラットを安楽死させた。取得したデータの解析はLabChart解析ソフト(ver 7.0、ADInstruments社製)を用いて行った。LabChart解析ソフトにおいては、交感神経遮断剤投与前後、及び、安楽死20分後以降に取得した30秒間の電気信号データに対して、窓関数としてハミング窓を用い、高速フーリエ変換によるパワースペクトル解析を行った。そして、得られたパワースペクトラムから、主たる交感神経活動の周波数帯域を特定した。次に、取得した全ての電気信号データに対し、窓関数としてカイザー窓(サイドローブ減衰を調整するパラメーターβは6)を用い、FIRフィルタを用いて、バンドパスフィルタをかけ、特定周波数帯域における電気信号強度を0.1秒間毎に積算することで、特定周波数帯域における電気信号量を算出した。
算出した電気信号量の比較には、1分間以上の電気信号量の平均値を用いた。解析の際、安楽死20分後以降に取得した電気信号は、生体反応に依存しない電気信号、即ち、環境由来の電気的ノイズとして用いた。
ラット(SHR、雄、11週齢)に18時間の絶食をさせた後、生理食塩水に溶解し0.25g/mLの濃度に調整したウレタン(和光純薬工業社製、1g/kg体重、腹腔内投与)による麻酔下で、生理食塩水で調整したヘパリンナトリウム(持田製薬社製、100unit/mL)を満したポリエチレンカテーテル(ベクトン・ディッキンソン社製)を右大腿静脈へ挿入した。その後、背部肩甲骨付近を切開し、褐色脂肪神経を露出させ、露出させた神経を末梢側(褐色脂肪側)で切断した。そして、試験例1と同様な操作を行い、褐色脂肪神経が発する電気信号を取得し、高速フーリエ変換によるパワースペクトル解析、及び特定周波数帯における電気信号量の算出を行った。以後、褐色脂肪神経が発する電気信号を「脂肪神経活動」と表す。
ラット(SHR、雄、11週齢)に18時間の絶食をさせた後、生理食塩水に溶解し0.25g/mLの濃度に調整したウレタン(和光純薬工業社製、1g/kg体重、腹腔内投与)による麻酔下で、生理食塩水で調整したヘパリンナトリウム(持田製薬社製、100unit/mL)を満したポリエチレンカテーテル(ベクトン・ディッキンソン社製)を右大腿静脈へ挿入した。その後、後背部を切開し、腎臓神経を露出させた。次に、腎臓神経をテフロン(登録商標)コートした2極性のステンレスワイヤー電極(As634、Cooner Wire社製)に載せ、シリコン(Sil-Gel 604、Wacker社製)を用いて絶縁固定し、腎臓神経が発する電気信号を取得し、試験例1と同様に高速フーリエ変換によるパワースペクトル解析、及び特定周波数帯における電気信号量の算出を行った。以後、腎臓神経が発する電気信号を「腎臓神経活動」と表す。
ラット(SHR、雄、11週齢)に18時間の絶食をさせた後、生理食塩水に溶解し0.25g/mLの濃度に調整したウレタン(和光純薬工業社製、1g/kg体重、腹腔内投与)による麻酔下で、生理食塩水で調整したヘパリンナトリウム(持田製薬社製、100unit/mL)を満したポリエチレンカテーテル(ベクトン・ディッキンソン社製)を右大腿静脈へ挿入した。その後、後背部を切開し、脾臓神経を露出させた。次に、脾臓神経をテフロン(登録商標)コートした2極性のステンレスワイヤー電極(As634、Cooner Wire社製)に載せ、電極より脾臓側に位置する脾臓神経を圧迫破壊した上で、シリコン(Sil-Gel 604、Wacker社製)を用いて絶縁固定し、脾臓神経が発する電気信号を取得し、試験例1と同様に高速フーリエ変換によるパワースペクトル解析、及び特定周波数帯における電気信号量の算出を行った。以後、脾臓神経が発する電気信号を「脾臓神経活動」と表す。
交感神経遮断剤投与前後の各組織の神経活動のパワースペクトラムを図1に示す。
交感神経遮断剤投与によって交感神経活動は低下する。よって、交感神経遮断剤の投与前後においてパワースペクトラムが変化した周波数帯は、交感神経が発する電気信号、即ち交感神経活動を反映している周波数帯であることを示している。
図1(A)及び(B)に依れば、脛骨神経、脂肪神経における交感神経活動は、パワースペクトラム上の50Hzから400Hzの周波数帯に存在していることが明らかである。また、図1(C)及び(D)に依れば、腎臓神経、脾臓神経における交感神経活動は、パワースペクトラム上の50Hzから600Hzの周波数帯に存在していることが明らかである。
さらに、図1(A)及び(B)に依れば、脛骨神経、脂肪神経における交感神経に由来するパワースペクトル密度の極大は、低周波側に偏り、ピークの形状は高周波側に長く裾を引いており、主たる交感神経活動は、50Hzから250Hzの周波数帯に存在していることが明らかである。
さらに、図1(A)に示したように、脛骨神経活動においては、パワースペクトラム上、500Hz付近に交感神経遮断剤では活動が抑制されない成分、即ち、運動神経由来と思われる成分が存在する。
腎臓、脾臓神経においては50Hz~1,000Hzの周波数帯を解析周波数帯(1)、50Hz~600Hzの周波数帯を解析周波数帯(2)とし、下記の解析に用いた。
測定例1の結果を踏まえ、各々の特定解析周波数帯において、各々の神経における交感神経遮断剤投与前の電気信号量「B(Before)」、交感神経遮断剤投与後の電気信号量「A(After)」、安楽死20分後以降に取得した電気信号量から得られる環境由来の電気的ノイズ量「EN(Environment Noise)」を算出した。
また、交感神経活動量「S(Signal)」は、交感神経遮断剤投与前後の電気信号量の差、即ち「B」から「A」を控除した値として算出した。さらに、交感神経活動測定時に妨げとなる生体由来の電気的ノイズ「BN(Body Noise)」は、交感神経遮断剤投与後に得られる、交感神経活動を含まない電気信号「A」より環境由来の電気的ノイズ「EN」を控除した値として算出した。
S/EN比改善率は、環境由来のノイズの干渉の低減による交感神経活動測定精度の向上率を示す。一方で、S/BN比改善率は、生体由来のノイズの干渉の低減による交感神経活動測定精度の向上率を示す。
得られた結果は、平均値±標準誤差で表した(表1)。平均値の差の検定には、対応のあるt検定(paired t-test)を用いた。
また、脂肪神経については、神経活動の解析周波数帯(2)を用いた場合、解析周波数帯(1)で解析したものよりもS/EN比の平均値は統計学的有意に高い値を示した。
腎臓神経と脾臓神経については、神経活動の解析周波数帯(2)を用いた場合、解析周波数帯(1)で解析したものよりもS/EN比の平均値は統計学的有意に高い値を示した。
また、脂肪神経については、神経活動の解析周波数帯(3)を用いた場合、解析周波数帯(1)で解析したものよりもS/EN比の平均値は統計学的有意に高い値を示し、解析周波数帯(2)よりも、S/EN比改善率の平均値は統計学的有意に高い値を示した。
前記試験例1~4で取得した各組織神経活動の電気信号データに対し、前記解析周波数帯(1)~(3)のいずれかにおいて、窓関数としてカイザー窓(β=6)を用い、FIRフィルタを用いて、バンドパスフィルタをかけた結果の電気信号データのオシログラムの代表例を図2に示した。
図2(A)及び(B)に依れば、脛骨神経及び脂肪神経において、交感神経遮断剤投与前後の変化の差が、解析周波数帯(3)を用いたバンドパスフィルタを用いることにより鮮明になっていることが明らかである。
また、図2(C)及び(D)に依れば、腎臓神経及び脾臓神経においても、交感神経遮断剤投与前後の変化の差が、解析周波数帯(2)を用いたバンドパスフィルタを用いることにより鮮明になっていることが明らかである。
脂肪神経については、神経が発する電気信号の50Hz以上400Hz以下の周波数帯の電気信号を用いれば、従来の50~1,000Hzの周波数帯での解析方法と比較し、交感神経活動に対する環境由来のノイズの干渉を低減でき、交感活動を高精度で解析可能になることが明らかとなった。特に、50Hz以上250Hz以下の周波数帯の電気信号を用いれば、脂肪の交感活動をより高精度で解析可能になることが明らかとなった。
腎臓神経については、神経が発する電気信号の50Hz以上600Hz以下の周波数帯の電気信号を用いれば、従来の50~1,000Hzの周波数帯での解析方法と比較し、交感神経活動に対する、環境由来のノイズの干渉を低減でき、交感活動を高精度で解析可能になることが明らかとなった。
脾臓神経については、神経が発する電気信号の50Hz以上600Hz以下の周波数帯の電気信号を用いれば、従来の50~1,000Hzの周波数帯での解析方法と比較し、交感神経活動に対する、環境由来のノイズの干渉を低減でき、交感活動を高精度で解析可能になることが明らかとなった。
Claims (18)
- 脛骨神経が発する電気信号を取得し、
取得した電気信号を増幅し、
増幅した電気信号を測定ないし記録し、
測定ないし記録した電気信号のうち、50Hz以上400Hz以下の周波数帯における電気信号の周波数解析を行い、周波数解析の結果に基づき、前記の特定周波数帯の各周波数におけるパワースペクトル密度、並びに/又は、前記の特定周波数帯における電気信号強度及び/若しくは電気信号量を、脛骨交感神経の活動量として評価する、
脛骨交感神経活動の評価システムの作動方法。 - 前記の測定ないし記録した電気信号のうち、50Hz以上250Hz以下の周波数帯における電気信号の周波数解析を行う、請求項1に記載の脛骨交感神経活動の評価システムの作動方法。
- 脂肪神経が発する電気信号を取得し、
取得した電気信号を増幅し、
増幅した電気信号を測定ないし記録し、
測定ないし記録した電気信号のうち、50Hz以上400Hz以下の周波数帯における電気信号の周波数解析を行い、周波数解析の結果に基づき、前記の特定周波数帯の各周波数におけるパワースペクトル密度、並びに/又は、前記の特定周波数帯における電気信号強度及び/若しくは電気信号量を、脂肪交感神経の活動量として評価する、
脂肪交感神経活動の評価システムの作動方法。 - 前記の測定ないし記録した電気信号のうち、50Hz以上250Hz以下の周波数帯における電気信号の周波数解析を行う、請求項3に記載の脂肪交感神経活動の評価システムの作動方法。
- 腎臓神経が発する電気信号を取得し、
取得した電気信号を増幅し、
増幅した電気信号を測定ないし記録し、
測定ないし記録した電気信号のうち、50Hz以上600Hz以下の周波数帯における電気信号の周波数解析を行い、周波数解析の結果に基づき、前記の特定周波数帯の各周波数におけるパワースペクトル密度、並びに/又は、前記の特定周波数帯における電気信号強度及び/若しくは電気信号量を、腎臓交感神経の活動量として評価する、
腎臓交感神経活動の評価システムの作動方法。 - 脾臓神経が発する電気信号を取得し、
取得した電気信号を増幅し、
増幅した電気信号を測定ないし記録し、
測定ないし記録した電気信号のうち、50Hz以上600Hz以下の周波数帯における電気信号の周波数解析を行い、周波数解析の結果に基づき、前記の特定周波数帯の各周波数におけるパワースペクトル密度、並びに/又は、前記の特定周波数帯における電気信号強度及び/若しくは電気信号量を、脾臓交感神経の活動量として評価する、
脾臓交感神経活動の評価システムの作動方法。 - ヒト以外の動物の脛骨神経が発する電気信号を取得し、
取得した電気信号を増幅し、
増幅した電気信号を測定ないし記録し、
測定ないし記録した電気信号のうち、50Hz以上400Hz以下の周波数帯における電気信号の周波数解析を行い、周波数解析の結果に基づき、前記の特定周波数帯の各周波数におけるパワースペクトル密度、並びに/又は、前記の特定周波数帯における電気信号強度及び/若しくは電気信号量を、脛骨交感神経の活動量として評価する、
ヒト以外の動物の脛骨交感神経活動を評価する方法。 - 前記の測定ないし記録した電気信号のうち、50Hz以上250Hz以下の周波数帯における電気信号の周波数解析を行う、請求項7に記載のヒト以外の動物の脛骨交感神経活動を評価する方法。
- ヒト以外の動物の脂肪神経が発する電気信号を取得し、
取得した電気信号を増幅し、
増幅した電気信号を測定ないし記録し、
測定ないし記録した電気信号のうち、50Hz以上400Hz以下の周波数帯における電気信号の周波数解析を行い、周波数解析の結果に基づき、前記の特定周波数帯の各周波数におけるパワースペクトル密度、並びに/又は、前記の特定周波数帯における電気信号強度及び/若しくは電気信号量を、脂肪交感神経の活動量として評価する、
ヒト以外の動物の脂肪交感神経活動を評価する方法。 - 前記の測定ないし記録した電気信号のうち、50Hz以上250Hz以下の周波数帯における電気信号の周波数解析を行う、請求項9に記載のヒト以外の動物の脂肪交感神経活動を評価する方法。
- ヒト以外の動物の腎臓神経が発する電気信号を取得し、
取得した電気信号を増幅し、
増幅した電気信号を測定ないし記録し、
測定ないし記録した電気信号のうち、50Hz以上600Hz以下の周波数帯における電気信号の周波数解析を行い、周波数解析の結果に基づき、前記の特定周波数帯の各周波数におけるパワースペクトル密度、並びに/又は、前記の特定周波数帯における電気信号強度及び/若しくは電気信号量を、腎臓交感神経の活動量として評価する、
ヒト以外の動物の腎臓交感神経活動を評価する方法。 - ヒト以外の動物の脾臓神経が発する電気信号を取得し、
取得した電気信号を増幅し、
増幅した電気信号を測定ないし記録し、
測定ないし記録した電気信号のうち、50Hz以上600Hz以下の周波数帯における電気信号の周波数解析を行い、周波数解析の結果に基づき、前記の特定周波数帯の各周波数におけるパワースペクトル密度、並びに/又は、前記の特定周波数帯における電気信号強度及び/若しくは電気信号量を、脾臓交感神経の活動量として評価する、
ヒト以外の動物の脾臓交感神経活動を評価する方法。 - 脛骨神経が発する電気信号を取得する手段と、
取得した電気信号を増幅する手段と、
増幅した電気信号を測定ないし記録する手段と、
測定ないし記録した電気信号のうち、50Hz以上400Hz以下の周波数帯における電気信号の周波数解析を行い、周波数解析の結果に基づき、前記の特定周波数帯の各周波数におけるパワースペクトル密度、並びに/又は、前記の特定周波数帯における電気信号強度及び/若しくは電気信号量を指標として、脛骨交感神経の活動量を評価する手段を備えた、
脛骨交感神経活動の評価システム。 - 前記の脛骨交感神経の活動量を評価する手段が、前記の測定ないし記録した電気信号のうち、50Hz以上250Hz以下の周波数帯における電気信号の周波数解析を行う、請求項13に記載の脛骨交感神経活動の評価システム。
- 脂肪神経が発する電気信号を取得する手段と、
取得した電気信号を増幅する手段と、
増幅した電気信号を測定ないし記録する手段と、
測定ないし記録した電気信号のうち、50Hz以上400Hz以下の周波数帯における電気信号の周波数解析を行い、周波数解析の結果に基づき、前記の特定周波数帯の各周波数におけるパワースペクトル密度、並びに/又は、前記の特定周波数帯における電気信号強度及び/若しくは電気信号量を指標として、脂肪交感神経の活動量を評価する手段を備えた、
脂肪交感神経活動の評価システム。 - 前記の脂肪交感神経の活動量を評価する手段が、前記の測定ないし記録した電気信号のうち、50Hz以上250Hz以下の周波数帯における電気信号の周波数解析を行う、請求項15に記載の脂肪交感神経活動の評価システム。
- 腎臓神経が発する電気信号を取得する手段と、
取得した電気信号を増幅する手段と、
増幅した電気信号を測定ないし記録する手段と、
測定ないし記録した電気信号のうち、50Hz以上600Hz以下の周波数帯における電気信号の周波数解析を行い、周波数解析の結果に基づき、前記の特定周波数帯の各周波数におけるパワースペクトル密度、並びに/又は、前記の特定周波数帯における電気信号強度及び/若しくは電気信号量を指標として、腎臓交感神経の活動量を評価する手段を備えた、
腎臓交感神経活動の評価システム。 - 脾臓神経が発する電気信号を取得する手段と、
取得した電気信号を増幅する手段と、
増幅した電気信号を測定ないし記録する手段と、
測定ないし記録した電気信号のうち、50Hz以上600Hz以下の周波数帯における電気信号の周波数解析を行い、周波数解析の結果に基づき、前記の特定周波数帯の各周波数におけるパワースペクトル密度、並びに/又は、前記の特定周波数帯における電気信号強度及び/若しくは電気信号量を指標として、脾臓交感神経の活動量を評価する手段を備えた、
脾臓交感神経活動の評価システム。
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Non-Patent Citations (1)
| Title |
|---|
| 間野忠明、岩瀬敏、松川俊義,ニューログラムと交感神経活動,東女医大誌,日本,1993年01月,Vol.63, No.1 ,pp.75-87 |
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