以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
図1〜図3は本発明による一実施の形態を説明するための図である。このうち図1は、表示装置の全体構成を移動体の一部分とともに示す縦断面図であり、図2は、表示装置の要部を示す縦断面図である。図3は、表示装置に含まれ得る偏光選択反射層の一変形例を示す縦断面図である。
図1に示すように、移動体1は、移動体本体2と、移動体本体2に搭載された表示装置10と、を有している。移動体本体2として、車、船、鉄道車両、飛行機等を例示することができる。図1に示された例において、移動体本体2は、自動車となっている。この例において、表示装置10は、ダッシュボード4内に配置され、フロントガラス3に画像を投影する。フロントガラス3に向けて投射された画像光は、フロントガラス3で反射して、移動体本体2の運転者によって観察され得るようになる。運転者は、表示装置10に含まれた画像形成装置30からフロントガラス3までの画像光Liの光路長に対応した距離だけ、フロントガラス3よりも前方となる位置に、虚像を視認するようになる。すなわち、図1に示された例において、表示装置10は、投影型の表示装置、より具体的にはヘッドアップディスプレイとして構成されている。
図1に示された例において、ダッシュボード4には、開口4aが形成されている。表示装置10からの画像光Liは、この開口4aを介して、フロントガラス3に向かう。一方、図1に示すように、フロントガラス3を介して移動体本体2の内部に入射してきた外光Lx、とりわけ太陽光は、画像光Liの光路を逆向きに進んで、表示装置10内に入射する。表示装置10に含まれる画像形成装置30は、とりわけ耐熱性の低い光学フィルム類を含んでおり、外光Lxを受けることによって機能が害される可能性がある。以下に説明する一実施の形態では、表示装置10に含まれる画像形成装置30の加熱を効果的に抑制するための工夫がなされている。以下、本実施の形態における表示装置10の詳細について説明していく。
なお、自動車に限られることなく、移動体1には、通常、表示装置10が設けられており、移動体1の運転者または操縦者は、表示装置10を介して、移動体本体2の状態や移動体本体2の周囲の様子を確認することができるようになっている。移動体1の運転者または操縦者は、通常、透明ガラス等で区画された領域内に位置し、透明ガラスを介して外部の状況を把握する。したがって、移動体本体2に搭載される表示装置10は、外光Lx、とりわけ太陽光を受光しやすい環境に設置される傾向にある。そして、以下に説明する一実施の形態は、自動車に限られることなく、移動体1一般に搭載される表示装置10において広く有用である。
図1に示すように、表示装置10は、筐体20と、筐体20内に配置された画像形成装置30と、画像形成装置30で形成された画像光Liを筐体20外へと誘導する誘導手段55と、を有している。誘導手段55は選択反射板(反射体)60を含んでおり、選択反射板60は、複数のコレステリック液晶構造層を含む偏光選択反射層70を有している。また、図示された例では、画像形成装置30からの画像光Liは、一方の直線偏光成分の光によって構成されている。このような画像形成装置30に対応して、画像形成装置30と誘導手段55との間に、1/4波長位相差層50が設けられている。以下、各構成要素について説明する。
筐体20は、樹脂または金属によって形成されている。図1に示すように、筐体20には、フロントガラス3に対面する位置に、開口21が形成されている。この開口21には、可視光透過性を有した透明カバー25が設けられている。透明カバー25は、一具体例として、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂からなる透明板とすることができる。また、透明カバー25は、筐体20内への赤外線の入射を抑制する目的から、可視光である画像形成装置30の画像光Liの透過を損なわない範囲で、赤外線(近赤外線を含む概念)を反射する赤外線反射膜もしくは赤外線を吸収する赤外線吸収膜として機能するようにしてもよい。
画像形成装置30は、画像を形成する装置であり、画像を形成する画像光Liを射出する。図1および図2に示す例では、画像光Liは、複数の波長域の可視光で構成されている。図2に示すように、画像形成装置30として、液晶表示装置31を用いることができる。
液晶表示装置31は、液晶表示パネル32と、液晶表示パネル32の背面側に配置され液晶表示パネル32を背面側から面状に照らす面光源装置33と、を有している。面光源装置33は、直下型やエッジライト型等、種々の形式のバックライトにより構成され得る。液晶表示パネル32は、面光源装置33からの光の透過または遮断を画素毎に制御するシャッターとして機能し、表示面に画像を表示することができる。
図示された液晶表示パネル32は、面光源装置33の側から順に、下偏光板32a、液晶セル32bおよび上偏光板32cを有している。下偏光板32aおよび上偏光板32cは、吸収型の偏光子であり、入射した光を直交する二つの偏光成分(P波およびS波)に分解し、一方の方向(透過軸と平行な方向)に振動する直線偏光成分(例えば、P波)を透過させ、前記一方の方向に直交する他方の方向(吸収軸と平行な方向)に振動する直線偏光成分(例えば、S波)を吸収する機能を有している。
液晶セル32bには、一つの画素を形成する領域毎に、電界印加がなされ得るようになっている。そして、電界印加の有無によって液晶セル32b中の液晶分子の配向方向が変化するようになる。一例として、入光側に配置された下偏光板32aを透過した特定方向の偏光成分は、電界印加されていない液晶セル32bを通過する際にその偏光方向を90°回転させ、その一方で、電界印加された液晶セル32bを通過する際にその偏光方向を維持する。この場合、液晶セル32bへの電界印加の有無によって、下偏光板32aを透過した特定方向に振動する偏光成分が、下偏光板32aの出光側に配置された上偏光板32cをさらに透過するか、あるいは、上偏光板32cで吸収されて遮断されるか、を制御することができる。
このようにして液晶表示パネル32(液晶表示部)では、面光源装置33からの光の透過または遮断を画素毎に制御し得るようになっている。なお、液晶表示装置31の詳細については、種々の公知文献(例えば、「フラットパネルディスプレイ大辞典(内田龍男、内池平樹監修)」2001年工業調査会発行)に記載されており、ここではこれ以上の詳細な説明を省略する。
液晶表示装置31から射出する画像光Liは、上偏光板32cの透過軸に対応した一方の直線偏光成分の光となる。そして、図示された例では、画像形成装置30から射出した画像光Liは、1/4波長位相差層50に入射する。1/4波長位相差層50は、透過光に対して1/4波長分の位相差を付与する。一方の直線偏光成分の光からなる画像光Liは、1/4波長位相差層50を透過することで、右円偏光成分または左円偏光成分に変換される。1/4波長位相差層50は、1/4波長位相差層50を透過する画像光Liが右円偏光成分または左円偏光成分に変換されるように、その遅相軸の向きが調整されて、配置されている。図1および図2に示された例において、1/4波長位相差層50を透過した画像光Liは、右円偏光成分に変換されている。なお、図1および図2では、1/4波長位相差層50は、画像形成装置30から離間して配置されているが、これに限られない。1/4波長位相差層50は、画像形成装置30に対して固定されていてもよい。例えば、画像形成装置30の画像形成面に1/4波長位相差層50が積層されていてもよい。また、後述する偏光選択反射層70の入光面70a上に積層されていてもよい。
次に、誘導手段(光路調整光学系)55について説明する。誘導手段55は、画像形成装置30からの画像光Liをフロントガラス3に向けて誘導する。すなわち、誘導手段55は、画像形成装置30からの画像光Liをフロントガラス3に投影する投影光学系(投射光学系)である。誘導手段55は、選択反射板60および反射手段80を有している。
このうち、選択反射板60は、画像光Liを選択的に反射させて画像光Liの光路を調整する一方で、表示装置10に入射してきた不要な外光Lxの多くを透過させるように構成されている。すなわち、選択反射板60は、画像光Liの光路と不要な外光Lxの光路とを区分けする機能を期待された部材である。選択反射板60を設けることで、外光Lxが、画像形成装置30に進むことを効果的に防止している。一方、反射手段80は、画像光Liおよび外光Lxを分離させる機能を付与されていない。反射手段80は、例えば、反射鏡として構成され得る。とりわけ図示された例において、反射手段80は、凹面鏡81として構成されている。凹面鏡81を用いることで、画像形成装置30で形成される画像を拡大して投影することが可能となる。ただし、誘導手段55は、図示された例に限られず、例えば、反射手段80に代えて又は反射手段80に加えて、プリズム等の光学要素を含んでいてもよい。
以下、誘導手段55の選択反射板60についてさらに詳述する。図2に示すように、選択反射板60は、基材61と、基材61に積層された偏光選択反射層70と、を有している。偏光選択反射層70は、画像光Liを選択的に反射して画像光の光路を変化させる性質を有している。すなわち、偏光選択反射層70は、画像光Liをそれ以外の何らかの光から区別して、画像光をそれ以外の何らかの光よりも高い反射率で反射する。図示された例において、偏光選択反射層70は、画像光Liを外光Lxよりも高い反射率で反射する。また、偏光選択反射層70は、外光Lxを選択的に透過する性質を有している。すなわち、偏光選択反射層70は、外光Lxをそれ以外の何らかの光から区別して、外光Lxをそれ以外の何らかの光よりも高い透過率で透過させる。図示された例において、偏光選択反射層70は、外光Lxを画像光Liよりも高い透過率で透過させる。
偏光選択反射層70は、具体的な構成として、コレステリック液晶構造を有した複数のコレステリック液晶構造層を含んでいる。コレステリック液晶構造層は、コレステリック規則性を示す液晶性組成物からなり、コレステリック液晶構造における液晶分子の物理的な分子配列として、液晶分子のダイレクターが層の厚さ方向に連続的に回転してなる螺旋構造をとなっている。そして、コレステリック液晶構造は、このような液晶分子の物理的な分子配列に基づいて、一方向の円偏光成分と、これと逆回りの円偏光成分とを分離する偏光分離特性を有している。すなわち、コレステリック液晶構造において、螺旋軸に沿って入射した無偏光状態の光は、2つの偏光状態の光(右円偏光および左円偏光)に分離され、一方は透過され、残りは反射される。この現象は、円偏光二色性として知られ、液晶分子の螺旋構造における螺旋巻き方向を適宜選択すると、この螺旋巻き方向と同一の旋光方向を有する円偏光成分が選択的に反射される。
この場合の最大旋光光散乱は、次式(1)の波長λ0で生じる。
λ0=nav・p … (1)
ここで、pは液晶分子の螺旋構造における螺旋ピッチ長(液晶分子の分子螺旋の1ピッチ当たりの長さ)、navは螺旋軸に直交する平面内での平均屈折率である。
また、このときの反射光の波長バンド幅△λは次式(2)で表される。ここで、△nは複屈折値である。
△λ=△n・p … (2)
すなわち、コレステリック液晶構造層は、円偏光選択性に加え波長選択性をも有している。したがって、選択反射中心波長λ0を中心とした波長バンド幅△λの範囲(選択反射波長域)に属する一方の円偏光成分(例えば選択反射波長域内の右円偏光)の光が、偏光選択反射層70で選択的に反射され(それ以外の光よりも高反射率で反射され)、それ以外の光が、偏光選択反射層70で選択的に透過される(選択反射波長域内の右円偏光成分の光よりも高い透過率で透過される)。
偏光選択反射層70は、可視光域(例えば、380nm〜780nmの波長域)に含まれる複数の波長域の光を反射する。すなわち、図1および図2に示す例では、上述のように画像光Liは複数の波長域の可視光で構成されており、偏光選択反射層70は、当該複数の波長域の光に対応して、不連続的に異なる螺旋ピッチ長を有する少なくとも2以上のコレステリック液晶構造層を含んでいる。例えば、画像形成装置30は一般に、光の三原色である赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の波長域の光によりカラー表示を実現している。したがって、例えば、偏光選択反射層70に対して光が垂直に入射する場合を基準にして、選択反射中心波長が430〜460nm、540〜570nmおよび580〜620nmの範囲に存在する光を選択的に反射するように、偏光選択反射層70に含まれる複数のコレステリック液晶構造層について、コレステリック液晶構造の螺旋ピッチ長を決定している。
なお、コレステリック液晶構造層のコレステリック液晶構造は、光が斜めに入射した際にその選択反射波長域が短波長側へシフト(いわゆる「ブルーシフト」)するという光学特性を有している。したがって、画像形成装置30から選択反射板60に入射する画像光Liの入射角に応じて、適宜、コレステリック液晶構造の螺旋ピッチ長を調節するようにすることが好ましい。
図2に示された例において、偏光選択反射層70は、赤色(R)の波長域の右円偏光成分の光を選択的に反射する第1コレステリック液晶構造層71と、緑色(G)の波長域の右円偏光成分の光を選択的に反射する第2コレステリック液晶構造層72と、青色(B)の波長域の右円偏光成分の光を選択的に反射する第3コレステリック液晶構造層73と、を有している。第1コレステリック液晶構造層71、第2コレステリック液晶構造層72および第3コレステリック液晶構造層73は、偏光選択反射層70の入光側からこの順で配置されている。
コレステリック液晶構造層71,72,73の厚さは、選択的に反射される特定の円偏光成分の光を略100%反射する程度の大きさ(反射率が飽和する程度の大きさ)とすることが好ましい。コレステリック液晶構造層の反射率は、直接的には螺旋ピッチ数に依存しているが、螺旋ピッチ長が固定であるとすれば間接的にはコレステリック液晶構造層の厚さに依存している。具体的には、100%の反射率を得るためには、4〜10ピッチ程度必要といわれているので、コレステリック液晶構造層を形成するための材料(例えばコレステリック規則性を示す液晶性組成物)の材料の種類や選択反射波長域にもよるが、例えば赤色(R)、緑色(G)および青色(B)のいずれかの波長域の光を反射する一層分のコレステリック液晶構造層であれば1〜10μm程度の厚さを有することが好ましい。一方で、コレステリック液晶構造層の厚さは、厚くなればなるほどよいというわけではなく、厚くなりすぎると配向の制御などが困難となったり、ムラが生じたり、また材料自体による光吸収の程度が大きくなるので、上述した範囲が適切である
一具体例として、第1コレステリック液晶構造層71が、600nm以上700nm以下の波長域の無偏光の光を30%以上の反射率で反射し、第2コレステリック液晶構造層72が、450nm以上550nm以下の波長域の無偏光の光を30%以上の反射率で反射し、第3コレステリック液晶構造層73が、300nm以上400nm以下の波長域の無偏光の光を30%以上の反射率で反射するようにしてもよい。
なお、画像形成装置30は、4色以上の色の波長域の光によりカラー表示を実現してもよい。例えば、画像形成装置30は、濃赤色(DR)、赤色(R)、緑色(G)、淡青色(LB)および青色(B)の波長域の光によりカラー表示を実現してもよい。この場合、偏光選択反射層70に対して光が垂直に入射する場合を基準にして、例えば、選択反射中心波長が430〜460nm、490nm〜520nm、540〜570nm、580〜620nmおよび640〜680nmの範囲に存在する光を選択的に反射するように、偏光選択反射層70に含まれる複数のコレステリック液晶構造層について、コレステリック液晶構造の螺旋ピッチ長を決定すればよい。
以上に説明してきた表示装置10では、偏光選択反射層70が、画像光Liを選択反射し、画像光Liとは異なる波長域の光および画像光Liとは異なる円偏光成分の光を透過させることにより、フロントガラス30を介して移動体本体2の内部に入射してきた外光Lx、とりわけ太陽光が、画像光Liの光路を逆向きに進み、耐熱性の低い光学フィルム(例えば、上偏光板32c)を含む画像形成装置30へ入射する虞を低減させることができる。具体的には、画像光Liの光路を逆向きに進んだ外光Lxは、その大部分が偏光選択反射層70を透過する。したがって、偏光選択反射層70で反射して画像形成装置30に入射する外光Lxは、僅かに過ぎない。つまり、本実施の形態によれば、画像形成装置30が外光照射による加熱で損傷するといった不具合に効果的に対処することができる。
また、特許文献1では、外光Lxを拡散させることで、外光Lxが画像形成装置30に入射することを防止している。しかしながら、表示装置10の筐体20内において外光Lxを拡散させると、画像のコントラストが低下する。一方、上述の表示装置10において、画像形成装置30は、外光Lxを拡散させる手段を用いることなく、外光Lxが画像形成装置30へ入射する虞を低減させている。このため、外光拡散に起因したコントラスト低下の問題が回避される。
また、図2に示された例のように、選択反射板60は、基材61と、基材61上に積層された三つのコレステリック液晶構造層71,72,73と、に加え、基材61のコレステリック液晶構造層71,72,73とは反対側に積層された吸収層62を、有していてもよい。この吸収層62が、ビームストッパとして機能し、外光Lxを筐体20内で拡散させることなく回収することができる。これにより、外光拡散に起因したコントラスト低下を極めて効果的に防止することができる。なお、吸収層62としては、特に限定されることなく、可視光および赤外線(近赤外線を含む概念)を吸収し得る部材を用いることができる。具体的には、黒色の光吸収性ゴム材料や無機酸化物(一例として、黒アルマイト処理したアルミニウム)等を用いることができる。また、この吸収層の加熱を防止するため、放熱フィンを吸収層62に設置することや、送風ファン等の冷却手段を設けることも有効である。
ところで、表示装置10では、上述のように、画像形成装置30からの画像光Liは、偏光選択反射層70に斜めに、すなわち0°より大きい入射角で入射する。ここで、入射角とは、画像光Liの入射方向と偏光選択反射層70の入光面70aの法線方向とがなす角度である。ここで、本件発明者らが得た知見によれば、複数のコレステリック液晶構造層を積層してなる積層体に、画像光を斜めに入射させた場合、画像光が所望のように反射されないことがある。すなわち、当該積層体に含まれる一部のコレステリック液晶構造層において、当該層で反射されるべき波長域の光が所望のように反射されないことがある。とりわけ、積層体の入光面から離れた場所に配置されたコレステリック液層構造層において、当該層で反射されるべき波長域の光の反射率が低下する傾向にあることが知見された。また、このような現象は、画像光の入射角が大きいほど顕著であることが知見された。
しかしながら、本件発明者らが鋭意研究を重ねたところ、積層体に含まれる複数のコレステリック液晶構造層の間に面内複屈折性を有する補償層を配置することで、当該積層体の入光面から離れた位置に配置されたコレステリック液晶構造層において当該層で反射されるべき波長域の光が所望のように反射されない、ということが抑制されることが見出された。これは、次の理由によるものと考えられる。
すなわち、コレステリック液晶構造層に斜めに入射した光には、当該層を透過する際、位相変調がもたらされ、その偏光状態が変化する。そして、複数のコレステリック液晶構造層を積層した積層体に斜めに光が入射すると、当該光にはコレステリック液晶構造層を透過する毎に位相変調がもたらされ、その偏光状態は、当該光にもたらされた位相変調量の分だけ変化する。この結果、例えば右円偏光成分の光として積層体に入射した光は、積層体の入光面から離れた位置に配置されたコレステリック液晶構造層に入射する際、右楕円偏光成分の光、あるいは直線偏光成分の光、場合によっては左円偏光成分の光に変換されている。ここで、積層体に含まれるコレステリック液晶構造層は、通常、積層体に入射する光に含まれる特定の円偏光成分の光を反射させるように設計される。したがって、積層体に入射した光の偏光状態が変化してしまうと、当該積層体に含まれるコレステリック液晶構造層では、当該層に入射した光を所望のように反射させることができない。以上のように、積層体の入光面から離れた位置に配置されたコレステリック液晶構造層においては、積層体に入射した光とは偏光状態の異なる光が入射するため、当該層に入射した光を所望のように反射させることができない。しかしながら、積層体に含まれる複数のコレステリック液晶構造層の間に面内複屈折性を有する補償層を配置して、コレステリック液晶構造層を透過して位相変調がもたらされた光に当該補償層を透過させれば、当該光の位相差を補正するように位相変調をもたらすことができる。例えば、右円偏光成分の光として入射し、コレステリック液晶構造層を透過して右楕円偏光成分の光に変換された光に、補償層を透過させることにより、当該光を右円偏光成分の光に近付けることができる。この結果、積層体の入光面から離れた位置に配置されたコレステリック液晶構造層においても、積層体に入射した際の偏光状態に近い偏光状態の光を入射させることができる。この結果、当該層における光の反射率を向上させることができる。
したがって、図2に示す偏光選択反射層70は、複数のコレステリック液晶構造層71,72,73の間に配置された面内複屈折性を有する補償層90を含んでいる。補償層90は、複数のコレステリック液晶構造層71,72,73に含まれる任意の隣り合う二つのコレステリック液晶構造層の間に配置されていてよい。図2に示す例では、補償層90は、第2コレステリック液晶構造層72と第3コレステリック液晶構造層73との間に配置されているが、これに限られない。補償層90は、第1コレステリック液晶構造層71と第2コレステリック液晶構造層72との間に配置されていてもよい。なお、補償層90による位相変調量(リタデーションの量)は、偏光選択反射層70において補償層90よりも入光側に位置するコレステリック液晶構造層71,72により変調される位相変調量に応じて決定される。また、偏光選択反射層70は、複数の補償層90を有してよい。この場合、図3に示すように、補償層90は、各コレステリック液晶構造層71,72,73の間に配置されていてよい。
補償層90は、例えばポジティブAプレート特性またはネガティブAプレート特性を有する位相差フィルムである。ポジティブAプレート特性を有する位相差フィルムとは、面内の主屈折率nx(遅相軸方向)、ny(進相軸方向)とし、厚み方向の屈折率をnzとしたとき、屈折率分布がnx>ny=nzを満足する位相差フィルムをいう。また、ネガティブAプレート特性を有する位相差フィルムとは、屈折率分布がnx=nz>nyを満足する位相差フィルムをいう。なお、ny=nzとは、nyとnzが完全に同一である場合だけでなく、nyとnzとが実質的に同一である場合も包含する。また、nx=nzとは、nxとnzが完全に同一である場合だけでなく、nxとnzとが実質的に同一である場合も包含する。なお、ポジティブAプレート特性およびネガティブAプレート特性を有する位相差フィルムは、公知の方法により作製することができる。
なお、コレステリック液晶構造層71,72,73と補償層90とは、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡を用いることにより、識別することが可能である。具体的には、コレステリック液晶構造層71,72,73の場合、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡を用いることにより、その液晶分子がなす構造を観察することが可能である。例えば、走査型電子顕微鏡を通してコレステリック液晶構造層の断面を観察した場合、螺旋構造をなす液晶分子の螺旋軸に沿った濃淡の変化が観察される。一方、補償層90の場合、そのような構造(例えば螺旋軸に沿った濃淡の変化)は確認されない。
次に、図4〜図6を参照して、コレステリック液晶構造層の間に補償層が配置された積層体の反射特性と、コレステリック液晶構造層の間に補償層が配置されていない積層体の反射特性と、の違いの一例を説明する。
図4は、コレステリック液晶構造層の間に補償層が配置された積層体の縦断面図である。図4に示す積層体170は、入光側から順に、1/4波長位相差層150と、550nmに選択反射中心波長を有するコレステリック液晶構造層171と、650nmに選択反射中心波長を有するコレステリック液晶構造層172と、補償層190と、600nmに選択反射中心波長を有するコレステリック液晶構造層173と、450nmに選択反射中心波長を有するコレステリック液晶構造層174と、500nmに選択反射中心波長を有するコレステリック液晶構造層175と、ガラス基材161とを有している。補償層190は、ポジティブAプレート特性を有する位相差フィルムであり、そのリタデーションの量は80nmである。図5は、コレステリック液晶構造層の間に補償層が配置されていない積層体の縦断面図である。図5に示す積層体1170は、図4に示す積層体170と比較して、補償層190を有していない点が異なるのみである。
図6に、図4および図5に示す積層体170,1170の反射特性を示している。図6に示す反射特性は、1/4波長位相差層150に、一方の直線偏光成分の光を入射角30度で入射させた場合の測定値である。ここで、入射光の入射方向は、以下のような入射方向であった。すなわち、積層体170の入光面170aと、入射光の進行方向および反射光の進行方向のいずれにも沿った面と、が交わる方向が、補償層190の遅相軸方向に沿う、という入射方向であった。反射特性は、日本分光製のV-670を用いて測定した。図6において、補償層190を有する積層体170の反射特性が実線で示されており、補償層190を有しない積層体1170の反射特性が破線で示されている。
図6の破線から理解されるように、補償層190を有しない積層体1170の反射率は、波長域毎に異なっている。具体的には、積層体1170の反射率は、510〜560nmの波長域において概ね93%であるが、610〜650nmの波長域では概ね87%であり、570〜610nmの波長域では概ね82%であり、430〜460nmの波長域では概ね76%であり、470〜500nmの波長域では概ね65%である。これは、積層体1170の入光面1170aに近い位置に配置されたコレステリック液晶構造層171,172においては、その選択反射中心波長の光を高い反射率で反射することができるが、入光面1170aから離れた位置に配置されたコレステリック液晶構造層173,174,175においては、その選択反射中心波長の光の反射率が低いことを示している。
一方、図6の実線から理解されるように、補償層190を有する積層体170の反射率は、全体的に、補償層190を有しない積層体1170の反射率と比較して高い。とりわけ、570〜610nmの波長域、430〜460nmの波長域、および470〜500nmの波長域で、その反射率が大きく向上している。これは、補償層190を透過した光が入射したコレステリック液晶構造層173,174,175において、その選択反射中心波長の光の反射率が向上していることを示している。したがって、コレステリック液晶構造層171,172,173,174,175の間に補償層190を配置することにより、入光面170aから離れた位置に配置されたコレステリック液晶構造層173,174,175において、その選択波長域の光の反射率を向上させることができることが理解される。
さらに、図7〜図9を参照して、コレステリック液晶構造層の間に補償層が配置された積層体の反射特性と、コレステリック液晶構造層の間に補償層が配置されていない積層体の反射特性と、の違いの他の一例を説明する。
図7は、コレステリック液晶構造層の間に補償層が配置された積層体の縦断面図である。図7に示す積層体270は、入光側から順に、1/4波長位相差層250と、600nmに選択反射中心波長を有するコレステリック液晶構造層271と、500nmに選択反射中心波長を有するコレステリック液晶構造層272と、補償層290と、550nmに選択反射中心波長を有するコレステリック液晶構造層273と、650nmに選択反射中心波長を有するコレステリック液晶構造層274と、450nmに選択反射中心波長を有するコレステリック液晶構造層275と、ガラス基材261とを有している。補償層290はポジティブAプレート特性を有する位相差フィルムであり、そのリタデーションの量は60nmである。図8は、コレステリック液晶構造層の間に補償層が配置されていない積層体の縦断面図である。図8に示す積層体1270は、図7に示す積層体270と比較して、補償層290を有していない点が異なるのみである。
図9に、図7および図8に示す積層体270,1270の反射特性を示している。図9に示す反射特性は、1/4波長位相差層250に、一方の直線偏光成分の光を入射角30度で入射させた場合の測定値である。ここで、入射光の入射方向は、以下のような入射方向であった。すなわち、積層体270の入光面270aと、入射光の進行方向および反射光の進行方向のいずれにも沿った面と、が交わる方向が、補償層290の遅相軸方向に沿う、という入射方向であった。反射特性は、日本分光製のV-670を用いて測定した。図9において、補償層290を有する積層体270の反射特性が実線で示されており、補償層290を有しない積層体1270の反射特性が破線で示されている。
図9の破線から理解されるように、補償層290を有しない積層体1270の反射率は、波長域毎に顕著に異なっている。具体的には、積層体1270の反射率は、570〜610nmの波長域において概ね92%であり、480〜510nmの波長域では概ね90%であるが、530〜560nmの波長域では概ね76%であり、640〜660nmの波長域では概ね66%であり、430〜460nmの波長域では概ね78%である。これは、積層体1270の入光面1270aに近い位置に配置されたコレステリック液晶構造層271,272においては、その選択反射中心波長の光を高い反射率で反射することができるが、入光面1270aから離れた位置に配置されたコレステリック液晶構造層273,274,275においては、その選択反射中心波長の光の反射率が低いことを示している。
一方、図9の実線から理解されるように、補償層290を有する積層体270の反射率は、全体的に、補償層290を有しない積層体1270の反射率と比較して、向上している。とりわけ、570〜610nmの波長域、530〜560nmの波長域、640〜660nmの波長域、430〜460nmの波長域で、その反射率が大きく向上している。これは、補償層290を透過した光が入射したコレステリック液晶構造層273,274,275において、その選択反射中心波長の光の反射率が向上していることを示している。したがって、コレステリック液晶構造層271,272,273,274,275の間に補償層290を配置することにより、入光面270aから離れた位置に配置されたコレステリック液晶構造層273,274,275において、その選択波長域の光の反射率を向上させることができることが理解される。
次に、以上の構成からなる表示装置10の作用について説明する。
まず、画像形成装置30から画像光Liが射出する。画像形成装置30は、液晶表示装置31である。したがって、画像光Liは、液晶表示装置31の上偏光板32cの透過軸の向きに対応した直線偏光成分の光によって構成されている。図1および図2に示すように、画像形成装置30から射出した画像光Liは、次に、1/4波長位相差層50を透過する。1/4波長位相差層50は、1/4波長分の位相変調を画像光Liに対してもたらす。この結果、画像光Liの偏光状態は、一方の直線偏光から一方の円偏光、例えば右円偏光へと変換される。
1/4波長位相差層50を透過した画像光Liは、選択反射板60に向かう。図2に示すように、選択反射板60は、入光側から順に、第1コレステリック液晶構造層71、第2コレステリック液晶構造層72、補償層90、第3コレステリック液晶構造層73を有している。コレステリック液晶構造層は、コレステリック液晶構造を有した層であって、波長選択性および円偏光選択性を有しており、画像光Liを選択的に反射させることができる。補償層90は、面内複屈折性を有しており、補償層90の平面方向に沿った非平行な二つの方向において、異なる屈折率を有している。このため、補償層90は、第1コレステリック液晶構造層71および第2コレステリック液晶構造層72を透過して位相変調がもたらされた画像光Liに対し、その位相差を補正するように位相変調をもたらすことができる。したがって、第3コレステリック液晶構造層73には、補償層90で位相差が補正された画像光Liが入射する。選択反射板60で反射された画像光Liは、その後、反射手段80で拡大反射される。反射手段80で拡大反射された画像光Liは、透明カバー25を通過して、表示装置10から出射する。画像光Liは、その後フロントガラス3で反射して、観察者である運転者や操縦者に観察されるようになる。
また、図示された例において、最終的に観察されるようになる画像光は、一方の円偏光成分からなっている。したがって、偏光サングラスを装着した観察者によっても、画像が観察され得る。
以上に説明してきた上述の一実施の形態において、表示装置10は、画像光Liを射出する画像形成装置30と、画像光Liを反射して画像光Liの光路を変化させる偏光選択反射層70と、を備えている。偏光選択反射層70は、複数のコレステリック液晶構造層71,72,73と、複数のコレステリック液晶構造層71,72,73に含まれる二つのコレステリック液晶構造層72,73の間に配置された面内複屈折性を有する補償層90と、を含む。補償層90は、例えば、ポジティブAプレート特性またはネガティブAプレート特性を有している。
このような表示装置10では、偏光選択反射層70において、画像光Liを斜めに入射させても、画像光を所望のように反射させることができる。すなわち、通常、複数のコレステリック液晶構造層を積層してなる反射層においては、光を斜めに入射させると、当該反射層の入光面から離れた位置に配置されたコレステリック液晶構造層においては、所望の波長域の光の反射率が低下してしまって、反射層全体として、光を所望のように反射させることができない虞がある。一方、上述した一実施の形態において、偏光選択反射層70は、複数のコレステリック液晶構造層71,72,73に含まれる二つのコレステリック液晶構造層72,73の間に配置された面内複屈折性を有する補償層90を含んでいる。これにより、偏光選択反射層70の入光面70aから離れた位置に配置されたコレステリック液晶構造層73において所望の光が所望のように反射されない、ということを抑制することができる。このため、偏光選択反射層70において、画像光Liを斜めに入射させても、画像光を所望のように反射させることができる。この結果、表示装置10において、所望の色の表示を得ることができる。なお、補償層90は、複数のコレステリック液晶構造層71,72,73に含まれる任意の隣り合う二つのコレステリック液晶構造層72,73の間に配置されてよい。
加えて、この表示装置10では、偏光選択反射層70は、画像光Liを反射させる一方で、画像光Liとは異なる円偏光成分の光や画像光Liとは異なる波長域の光を透過させることができる。偏光選択反射層70をなすコレステリック液晶構造層は波長選択性を有することから、赤外線(近赤外線を含む概念)および画像光Liとは異なる波長域の可視光等、画像光Liの光路を逆向きに進むようにして表示装置10に入射した外光Lxの大部分は、偏光選択反射層70を透過するようになる。これにより、画像形成装置30に多くの外光Lxが入射することを効果的に回避することができる。そして、画像形成装置30が外光により加熱され損傷に至ること効果的に防止することができる。
また、この表示装置10では、反射ではなく偏光選択反射層70を透過させることによって、表示装置10に入射した不要な光を画像形成装置30から反らしている。したがって、不要な光が、画像光Liと同様の光路に沿って表示装置10から出射することを効果的に防止することができる。そして、この不要な光に起因したコントラスト低下による画像劣化を効果的に回避することができる。さらに、画像形成装置30から反らされた不要な光の多くを、偏光選択反射層70を透過した後に回収することもできる。これにより、表示装置10に入射した外光Lxに起因する画像の劣化を、より効果的に防止することができる。
また、偏光選択反射層70を作製する際、可視光波長域のうちの画像光Liの波長域に選択反射波長域を有するコレステリック液晶構造層を用意すればよい。フルカラーの表示装置10においても、画像光Liの波長域は限られている。したがって、偏光選択反射層70は、多数のコレステリック液晶構造層を含む必要はなく、典型的には、カラー表示の表示装置10では選択反射波長域の異なる三つのコレステリック液晶構造層を含めば十分である。したがって、偏光選択反射層の多層化、複雑化、高額化を効果的に防止することができる。
さらに、円偏光成分の光によって形成された画像は、偏光サングラスを介しても視認され得る。以上のことから、本実施の形態による表示装置10は、外光が入射し易い環境となる移動体1へ好適である。
また上述した一実施の形態において、表示装置10は、画層形成装置30から偏光選択反射層70までの画像光Liの光路上となる位置に配置された1/4波長位相差層50を、さらに有している。画像形成装置30が射出する画像光Liが一方の直線偏光成分の光である場合、典型的には、画像形成装置30が液晶表示装置31やレーザープロジェクタ等である場合、偏光選択反射層70迄の光路上に配置された1/4波長位相差層50により、偏光選択反射層70で選択的に反射されるようになる円偏光成分の光に画像光Liを変換することができる。したがって、画像形成装置30を適宜選択しながら、上述した優れた作用効果を享受することができる。
さらに上述した一実施の形態において、画像形成装置30は、一方の直線偏光成分の光からなる画像光Liを射出する。一方の直線偏光成分の光からなる画像光Liは、1/4波長位相差層50を用いることにより、円偏光成分に変換することができる。したがって、画像形成装置30から射出する画像光Liを、高い利用効率で使用することができる。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
例えば、図2に示す例において、基材61のコレステリック液晶構造層71,72,73とは反対側に吸収層62を積層してもよく、当該吸収層62によって、外光Lxを筐体20内で拡散させることなく回収し得ることを述べたが、これに限られない。外光Lxの処理方法に関する他の例として、図10に示された例では、画像光Liを誘導するための誘導手段55とは別途に、選択反射板60を透過した外光Lxを誘導するための外光誘導手段63が設けられている。外光誘導手段63は、光を誘導する種々の要素、例えば、レンズ、プリズム、反射鏡等を有し得る。図10に示された例において、外光誘導手段63は、外光Lxの光路を曲げる反射鏡から構成されている。この外光誘導手段63は、外光Lxを筐体20に設けられた排出開口22を介して、筐体20の外部へと誘導している。ただし、この例に限られず、画像形成装置30を冷却するために設けられた放熱フィンや、移動体本体2に設置された冷却システムに外光Lxを誘導するようにしてもよい。なお、図10に示す例において、排出開口22は、可視光透過性の蓋材22aによって覆われている。蓋材22aは、外光Lxを透過することができ、且つ、筐体20内へ粉塵等が入ることを防止している。
また、図11に示すように、表示装置10が、偏光選択反射層70で反射された画像光の光路上となる位置に配置された1/4波長位相差層51を、さらに有するようにしてもよい。この1/4波長位相差層51によれば、偏光選択反射層70で反射された画像光Liを、円偏光成分から直線偏光成分の光に変換することができる。直線偏光成分の画像光Liに対しては、種々の光学アプリケーションの適用が容易となる。
さらに、図11に示すように、表示装置10が、偏光選択反射層70で反射され1/4波長位相差層51を透過した後における画像光Liの光路上に配置された偏光子27をさらに有するようにしてもよい。偏光子27は、吸収型偏光子27aおよび反射型偏光子27bのいずれとしてもよい。図11に示された例では、上述した一実施の形態における透明カバー25に代えて、筐体20の開口21に、吸収型偏光子27a又は反射型偏光子27bが設置されている。吸収型偏光子27aは、入射した光を直交する二つの偏光成分(P波およびS波)に分解し、一方の方向(透過軸と平行な方向)に振動する直線偏光成分(例えば、P波)を透過させ、前記一方の方向に直交する他方の方向(吸収軸と平行な方向)に振動する直線偏光成分(例えば、S波)を吸収する機能を有している。また、反射型偏光子27bは、入射した光を直交する二つの偏光成分(P波およびS波)に分解し、一方の方向(透過軸と平行な方向)に振動する直線偏光成分(例えば、P波)を透過させ、前記一方の方向に直交する他方の方向(吸収軸と平行な方向)に振動する直線偏光成分(例えば、S波)を反射させる機能を有している。
図11に示された例において、画像光Liは、1/4波長位相差層51を透過することで円偏光成分から直線偏光成分へと変換される。そして、吸収型偏光子27a又は反射型偏光子27bを、画像光Liをなす直線偏光成分の光が透過し得るように配置すれば、画像光Liの利用効率は低下しない。また、画像光Liが、円偏光である場合よりも直線偏光(例えばS波)である場合の方が、フロントガラス3での反射率が高く画像光Liを有効利用し得ることが確認された。この点においても、偏光選択反射層70で反射された画像光Liの光路上に1/4波長位相差層を設けることは有効である。
一方、図11に示された例において、外光Lxは、その半分しか、吸収型偏光子27a又は反射型偏光子27bを透過することができない。したがって、画像光Liの利用効率を維持しながら、表示装置10の筐体20内に入射する外光Lxの量を大幅に低減することができる。これにより、画像の明るさに影響を及ぼすことなく、画像形成装置30の温度上昇および画像のコントラスト低下をさらに効果的に防止することできる。
なお、上述した透明カバー25と同様に、偏光子27に赤外線反射膜が積層されていてもよい。
さらに、図12に示すように、表示装置10が、上述した1/4波長位相差層50に代えて、画層形成装置30から偏光選択反射層70までの画像光Liの光路上となり且つ偏光選択反射層70で反射された画像光Liの光路上となる位置に配置された1/4波長位相差層52を、さらに有するようにしてもよい。この例によれば、画像形成装置30が射出する画像光Liが一方の直線偏光成分の光である場合、典型的には、画像形成装置30が液晶表示装置31やレーザープロジェクタ等である場合、偏光選択反射層70迄の光路上に配置された1/4波長位相差層52により、偏光選択反射層70で選択的に反射されるようになる円偏光成分の光に画像光Liを変換することができる。また、偏光選択反射層70で反射された画像光Liを、同一の1/4波長位相差層52によって、直線偏光成分に再変換することが可能となる。この結果、偏光選択反射層70で光路を調整された後における画像光Liの偏光状態を、直線偏光成分に変換することができる。直線偏光成分の画像光Liに対しては、種々の光学アプリケーションの適用が容易となる。
とりわけ、図12に示された例では、1/4波長位相差層52は、偏光選択反射層70に積層されている。このような1/4波長位相差層52の配置によれば、画像光Liは、偏光選択反射層70に入射する際と偏光選択反射層70で反射された後の二回にわたって、1/4波長位相差層52をより確実に透過することができる。そして、1/4波長位相差層52を偏光選択反射層70に近接して配置することができるので、表示装置10を小型化することができる。
なお、図11に示された例と同様に、図12に示された例においても、表示装置10が、偏光選択反射層70で反射され1/4波長位相差層52を透過した後における画像光Liの光路上に配置された偏光子27(吸収型偏光子27a又は反射型偏光子27b)を、さらに有するようにしてもよい。吸収型偏光子27a又は反射型偏光子27bを設置することで、図11を参照して既に説明したように、画像の明るさに影響を及ぼすことなく、画像形成装置30の温度上昇および画像のコントラスト低下をさらに効果的に防止することも可能となる。
さらに、上述した一実施の形態において、一方の直線偏光成分からなる画像光Liを射出する画像形成装置30として、液晶表示装置31を例示したが、この例に限られない。例えば、図13に示すように、レーザープロジェクタ36を、一方の直線偏光成分からなる画像光Liを射出する画像形成装置30として、利用可能である。図13に示されたレーザープロジェクタ36は、レーザー光を射出するレーザー光源37と、レーザー光の光路を経時的に変化させる走査装置38と、走査装置で光路を調整されたレーザー光が入射するスクリーン39と、を含んでいる。走査装置38は、スクリーン上をレーザー光が走査するように、レーザー光の光路を調整する。スクリーン上を画素領域に区分けして、画素領域毎にレーザー光源37からのレーザー光の射出および射出停止を制御することで、レーザー光源37上に画像を形成する。なお、レーザー光源37から発振されるレーザー光の偏光状態を一方の直線偏光成分に整えておくことにより、レーザープロジェクタ36は、一方の直線偏光成分からなる画像光Liを走査装置38から射出することができる。図13に示されたレーザープロジェクタ36は、液晶表示装置と比較して、光源光の利用高効率が非常に高くなる点において有利である。
さらに、上述した一実施の形態において、一方の直線偏光成分からなる画像光Liを射出する画像形成装置30を用いる例を示したが、これに限られない。無偏光の画像光Liを射出する画像形成装置を使用することも可能である。無偏光の画像光Liが偏光選択反射層70に入射した場合、画像光Liの略半分が、偏光選択反射層70で反射される。すなわち、画像光Liの利用効率が低下するが、外光反射に起因した画像のコントラスト低下を効果的に防止し得るといった上述の作用効果を享受することができる。例えば、図13に示されたレーザープロジェクタ36において、レーザー光源37が偏光状態を調整されていないレーザー光を発振する場合や、図2に示された液晶表示装置31や図13に示されたレーザープロジェクタ36が強い拡散機能を有した部材を含む場合、無偏光の画像光Liが画像形成装置30から射出される。
また、図14に示すようなデジタルマイクロミラーデバイス44を利用した画像形成装置41も、特別な手段を用いなければ、無偏光の画像光Liを射出する。図14に示された画像形成装置41は、無偏光の光を射出する光源42と、プリズム43と、デジタルマイクロミラーデバイス44と、を有している。光源42は、例えば発光ダイオードを含み、無偏光の面状光をプリズム43に照射する。面状光は、プリズム43を透過してデジタルマイクロミラーデバイス44に入射する。デジタルマイクロミラーデバイス44は、多数の微小ミラーを含むMEMS素子であり、反射型の空間光変調器として機能する。デジタルマイクロミラーデバイス44は、画素毎に微小ミラーの反射方向を切り替えることで、画像を形成する。デジタルマイクロミラーデバイス44で形成された画像光Liは、プリズム43で全反射して、誘導手段55の選択反射板60へと向かう。
なお、図14に示された画像形成装置41は、液晶表示装置と比較して、光源光の利用高効率が非常に高くなる点において有利である。画像光Liの略半分しか偏光選択反射層70で反射され得なかったとしても、光源光の利用効率は全体として高くなる。
さらに、無偏光の画像光Liを射出する画像形成装置30との組み合わせにおいて、光源光の利用効率を改善する工夫が可能である。図15に示された例では、無偏光の画像光Liを射出する画像形成装置30を用いるとともに、偏光選択反射層70が、右円偏光成分の光を選択反射するコレステリック液晶構造層と、左円偏光成分の光を選択反射するコレステリック液晶構造層と、の両方を含むようにしてもよい。このような例によれば、コレステリック液晶構造層の選択反射波長域内にある無偏光の画像光Liを、偏光選択反射層70で、高反射率にて反射することができ、光源光に利用効率および表示装置10全体のエネルギー効率を大幅に改善することができる。
右円偏光成分の光を選択反射するコレステリック液晶構造層および左円偏光成分の光を選択反射するコレステリック液晶構造層は、液晶分子がなす螺旋構造の巻き方向を互いに逆向きとしている。そして、右円偏光成分の光を選択反射するコレステリック液晶構造層および左円偏光成分の光を選択反射するコレステリック液晶構造層は、螺旋構造のピッチを同一とすることで、同一の選択反射中心波長を有するようになる。図16に示された具体例において、偏光選択反射層70は、第1〜第6コレステリック液晶構造層71〜76を有している。第1〜第3のコレステリック液晶構造層71,72,73は、右円偏光成分の光を選択反射し、第4〜第6のコレステリック液晶構造層74,75,76は、左円偏光成分の光を選択反射する。第1コレステリック液晶構造層71および第4コレステリック液晶構造層74は、同一の選択反射中心波長を有し、赤色(R)の波長域の光を選択反射する。第2コレステリック液晶構造層72および第5コレステリック液晶構造層75は、同一の選択反射中心波長を有し、緑色(G)の波長域の光を選択反射する。第3コレステリック液晶構造層73および第6コレステリック液晶構造層76は、同一の選択反射中心波長を有し、青色(B)の波長域の光を選択反射する。
この場合、図16に示すように、補償層90は、複数のコレステリック液晶構造層71,74,72,75,73,76に含まれる任意の隣り合う二つのコレステリック液晶構造層75,73の間に配置されてよい。また、偏光選択反射層は、複数の補償層90を有していてよい。この場合、例えば図17に示すように、補償層90は、各コレステリック液晶構造層71,74,72,75,73,76の間に配置されていてよい。
さらに、図15に示された例においても、表示装置10が、偏光選択反射層70で反射された後における画像光Liの光路上に配置された偏光子27をさらに有するようにしてもよい。偏光子27は、吸収型偏光子27aおよび反射型偏光子27bのいずれとしてもよい。図18に示された例では、図15に示された表示装置10における透明カバー25に代えて、筐体20の開口21に、吸収型偏光子27a又は反射型偏光子27bが設置されている。
この例において、画像光Liは、偏光子27を透過する際に、その光量を略半分落としてしまう。しかしながら、上述したように、無偏光の画像光Liを射出する画像形成装置自体のエネルギー効率が優れているため、表示装置10全体としてのエネルギー効率も依然として高い水準となる。その一方で、図18に示された例において、外光Lxは、その半分しか、偏光子27を透過することができない。したがって、表示装置10の筐体20内に入射する外光Lxの量を大幅に低減することができる。これにより、画像形成装置30の温度上昇および画像のコントラスト低下をさらに効果的に防止することできる。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
また、上述した実施の形態およびその変形例では、偏光選択反射層が可視光域の光を選択的に反射しそれ以外の光(例えば赤外線)を透過する、いわゆるコールドミラーとして、遮熱のために使用される例について説明してきたが、これに限られない。例えば、本発明による偏光選択反射層は、可視光域の光を選択的に透過しそれ以外の光(例えば赤外線)を反射する、いわゆるホットミラーとして用いられてもよい。