JP6961469B2 - 電極構造体、当該電極構造体を備えるセンサー、及び当該電極構造体を備える分析装置 - Google Patents
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Description
しかしながら、センサーや評価分析装置等においては、検体試料を検知・測定系に投入した際に発生する、または発生している「変化」、例えば電流や電圧、電気抵抗値、電気容量などの変化「量」を正確に、高感度に検出する機能が極めて重要であり、特に微小な変化(量)を正しく検出することが必要であることから、検知電極の材料として、表層に電気抵抗の大きい不動態皮膜を伴う「弁金属」を選定しないことが定石であって、前述のように、通常は、耐食性に優れ、電気抵抗も低い貴金属よりなる電極が使用されている。
一方、前述のとおり、検知用のセンサーや評価分析装置においては、低コスト化が求められており、貴金属に代えて、前記の卑金属である弁金属を使用することは、低コスト化のための1手法として期待される。
しかしながら、検知用のセンサーや評価分析装置における電極に弁金属を用いることについては、以下のように種々の解決すべき問題がある。
弁金属(バルブメタル)の一例として、アルミニウムまたはアルミニウム合金の表層には、アルミニウム酸化物及び/又はアルミニウム水酸化物よりなる不動態層が、チタンやチタン合金の表層には、チタン酸化物よりなる不動態層が、ニッケルやニッケル合金の表層にはニッケル酸化物よりなる不動態層が、クロムやクロム合金の表層、さらには表層でクロム量が多いステンレス鋼合金の表層には、クロム水和オキシ酸化物よりなる不動態層が、それぞれ形成されている。これらの不動態層は、酸素供給源(空気中のO2、水中のO2やO等)により金属上に自然形成されて保護層となるものであるが、形成される不動態層が1〜数十nmと非常に薄い場合があり、該不動態層のみでは、電極が存在する外部環境からの進入ガスや、検出反応時に発生する各種ガス、例えばバッファー液を構成する水や、環境の温度サイクルから不用意に発生し電極表層に付着する結露水等が電気分解して発生する水素による電極の対水素脆性や、水蒸気や酸素などのガス、腐食性の検体自体、検体が含まれる溶液(溶媒)や腐食性雰囲気等に対する耐食性など耐久性、感度の維持向上は十分でない。
また、アルミニウムなどの弁金属で構成される櫛形電極などは、ゴム、樹脂、ガラスエポキシ、ガラス、セラミクス、Si等の半導体表層に形成される絶縁膜など、の絶縁基板(膜、物)の上層に部分的にパターンニング形成される場合が多い。例えば、前記弁金属の耐食性を確保するため、その表層に撥水性材料、撥水撥油材料よりなる皮膜を塗布し、撥水撥油性の樹脂薄膜を形成する方法があるが、弁金属の不動態層表層は反応性や結合性に乏しく、また絶縁基板である樹脂基板等には、結合性の高いカップリング剤よりなる(を含む)撥水撥油性の樹脂薄膜を含めて、定着良く形成することができず、電極の耐侯性の向上もままならないまま、撥水撥油性の樹脂薄膜カップリング剤層が、基板や電極から剥離しコンタミ源(汚染源)となる場合もある。
このように、前記弁金属に自然形成される不動態層は、電極の耐食性には貢献する一方、電気抵抗は大きく、前記不動態層に追加形成される保護層がさらに絶縁性の場合、微弱な電流を感知するセンサー電極等にとっては逆に存在しないほうが良いものとなってくる。
さらに当然、検知電極、検知機器に供する冶具については、前記不可避の感度の向上のため複雑な造形構造で検体試料をハンドリングし電極に接触させるなど複雑な構造に由来するコスト高や加工限界などの問題が生じる。
しかしながら、陽極酸化膜は絶縁性が高く、一定程度以上に導電性が必要な電極用途には適さない。また、陽極酸化膜の膜厚の制御は極めて困難となる。さらには非晶質炭素膜と密着が悪いなどの改善すべき点もある。
しかしながら、導電性のDLCを形成するには、B(ホウ素)やAs(砒素)などの毒性や爆発性の高い、危険でさらに高価な原料ガスの使用が必要になるか、或いは、別の方法では、一度絶縁性のDLC膜を形成した後、または形成しながら真空装置内においてDLC皮膜に逆バイアスの正電圧を印加し高エネルギーの乖離電子などをDLC皮膜に向け照射する必要があるなど、装置を含めコストが高くなるなどの課題がある。
[1]基材と、該基材上の少なくとも一部に形成された弁金属よりなる電極と、該電極上に形成された膜厚が10nmを超え200nm未満の保護層を備え、
該保護層が、非晶質炭素膜よりなることを特徴とするセンサー用又は評価分析装置用の電極構造体。
[2]基材と、該基材上の少なくとも一部に形成された弁金属よりなる電極と、該電極上にドライプロセスにより形成された膜厚が10nmを超え200nm未満の保護層を備え、
該保護層が、珪素又は金属の、酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、炭酸化物、炭窒化物又は炭酸窒化物層のいずれか1つ以上を含む薄膜よりなることを特徴とするセンサー用又は評価分析装置用の電極構造体。
[3]前記保護層上に、撥水性及び/または撥水撥油性の薄膜層を備えることを特徴とする[1]又は[2]に記載のセンサー用又は評価分析用装置用の電極構造体。
[4]前記薄膜層が、膜厚50nm未満のフッ素含有カップリング剤よりなる樹脂層であることを特徴とする[3]に記載のセンサー用又は評価分析用装置用の電極構造体。
[5]前記弁金属は、その表層に不動態層を備えることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のセンサー用又は評価分析用装置用の電極構造体。
[6]負荷電圧0.39v下における電気抵抗が0.45Ω未満である[1]〜[5]のいずれかに記載のセンサー用又は評価分析用装置用の電極構造体。
[7]前記電極が形成されていない基材の最表面及び/又は前記電極が形成された部分の最表面に、水及び/または油との表面濡れ性が異なる表面を備えることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載のセンサー用又は評価分析用装置用の電極構造体。
[8]前記保護膜が、食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)に適合していることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載のセンサー用又は評価分析用装置用の電極構造体。
[9]前記保護膜は前記基材よりも大きな水素ガス透過防止性を有することを特徴とする[1]〜[8]のいずれかに記載のセンサー用又は評価分析用の電極構造体。
[10]前記保護膜の誘電率が50未満であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれかに記載のセンサー用又は評価分析用の電極構造体。
また、本発明の第二の実施形態は、保護膜を、ドライプロセスにより形成される薄膜で、弁金属の不動態層との付きまわりも良く、かつ、皮膜密度が非常に高く、酸素ガス、水蒸気バリア性等を有する、珪素、チタン、アルミニウム、ジルコニウムなどの金属の酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、炭酸化物、炭窒化物、炭酸窒化物のいずれか1つ以上の素材よりなる膜厚200nm未満の膜とするものである。
さらに、本発明の第三の実施形態は、ガスバリア等の耐侯性目的でドライプロセスにより形成される保護膜のピンフォールに水等の電極を腐食させる極性物質を吸着乃至誘導して腐食を起こすことがないように、保護膜の上に、さらに撥水性又は撥水撥油性の皮膜を付与することである、
以下、順に詳しく説明する。
これは、ウエットプロセスで保護膜を形成する場合は、複雑微細な構造を有する電極に対して、液状保護膜の塗布時に重力や表面張力、塗布対象基材の表層濡れ性の影響を受け易く、検知電極等の微細で複雑な凹凸を伴う部分において重力方向に液状保護膜が流動し、例えば凹部で膜が厚く、凸部頂点で膜が薄いなど、膜厚ムラを発生させ、精度良い薄膜を形成することが困難な場合があるためである。また、カップリング剤などの数十ナノメートルの膜厚のものを除き、液状保護膜を、電気抵抗をばらつかせないように薄く、均一に塗布することが困難な場合があるためである。
従来のドライプロセスによる保護膜は耐磨耗、高摺動、耐焼付け、耐食用途等のものが多く、その膜密度は高く、残留内部応力は強力で、その膜厚は500nm以上、場合によっては3μm程度までの厚膜となる場合が多い。さらに電気伝導性などはほぼ検討されない、或いは重要視されていない。
また、弁金属に前記のような保護膜を形成する場合、その表層の不動態層は密着が悪いため、Arなどの不活性ガスプラズマによるスパッタリング前処理(例えばスパッタリング前処理を5分間以上行うなど)で弁金属の不動態層を十分除去し密着を確保することが当業者の常識となっている。
例えば、SixOyやAlxOy、TixOyよりなるドライ皮膜の延伸性は1%程度しかなく、延性の大きな金属電極が延伸した場合、その追随性に乏しく、クラックが容易に入り基材からの剥離や、ガス漏れ(外界からのガスの進入)を起こす。
またSixOyやAlxOy、TixOyよりなるドライ皮膜の熱線膨張係数は1桁×106cm・℃程度しかないが、弁金属であるAlは、23×106cm・℃程度、Niで13×106cm・℃程度と1桁大きく、マイナス40℃から80℃近くまでと広範な範囲で刻々と短時間で繰り返される外界でのヒートサイクル、検知する検体試料の滴下に伴う温度変化等により、剥離を起こしやすい状態となる場合が有り得る。
非晶質炭素膜は1桁×106cm・℃程度の線膨張係数でありながら延伸性は3%程度と大きく各種硬質膜中では柔軟で、本発明の電極構造体の保護膜としての適正が大きいが、しかし、厚膜で形成すると上記のような剥離の問題が発生し得る。
よって電極と基材に対して同時に非晶質炭素膜を形成する場合、樹脂基板からの非晶質炭素膜の剥離等のコンタミ源の発生を抑制することが可能となる(実施例参照)。
このような場合、前記非晶質炭素膜に前記のSi、Ti、Al、Zrなどの各種金属元素を添加し、非晶質炭素膜の皮膜の応力を緩和、基材への密着性を向上させる(特に基材が含む元素と同様な元素を添加する方法)方法や、比較的内部応力の小さい絶縁膜であるSixOy、AlxOy、TixOy、ZrxOy等のシリコンや金属の酸化膜、窒化膜、酸窒化膜、または前記に皮膜に炭素を混ぜたドライ薄膜で代用することが可能となる。
例えば、ドライプロセスにより形成されシリコンの酸化物膜(シリカ膜)、または基材密着向上用の炭素を含むシリコンの酸化物膜などは、太陽電池バックシートや食品包装基材、電子部品の透明硬質ガスバリア保護膜として公知になっている。
例えば、ステンレス鋼板(SUS304 2B基材)上に公知のプラズマCVDプロセスにて各々概ね40nm程度の厚さで、水素と炭素からなる非晶質炭素膜を形成した試料1と、珪素を含む非晶質炭素膜に酸素をプラズマ照射し、極性のシラノール基(Si-OH基)を表層に大量に生成した試料2と、前記試料2の表層に前記シラノール基と脱水縮合反応で皮膜を形成する公知のフッ素含有カップリング剤(フロロテクノロジー社のフロロサーフFG−5010Z130−0.2)よりなる撥水撥油層をスプレー法で概ね20nmの厚さで最表層に追加形成した2日後、IPA(イソプロピルアルコール)を満たした超音波洗浄槽で5分間洗浄した試料3をつくり、試料1、2、3を高温高湿試験用恒温恒湿槽(試験機器:PR−2GP/タバイエスペック)にて温度40℃、湿度93%にて96時間保持した前後で、摩擦磨耗試験(装置:トライボギアHHS−2000新東科学(株)、一定荷重往復測定荷重:50g、圧子:SUJ2 φ2.0mm、50往復摩擦)を行うと、高温高湿槽への投入前後で試料1と試料3は摩擦係数の劣化に大きな差が出ないが、極性のシラノール基(Si−OH基)を表層に大量に生成し親水化した試料2の最大の摩擦係数が、高温高湿槽への投入前の同試料の最大値0.5μ(ミュー)から3倍の1.5μに増大しており、皮膜自体の劣化や基材密着の劣化が確認できる。なお、ステンレス鋼はAlなどに比べ腐食し難い基材であり摩擦係数の劣化から基材の腐食に起因する試料の劣化ではなく、試料自体の高温高湿環境に対する劣化が想定でき、各試料形態での耐久性能の違いが確認できる。
但し、試料3の形態は、本発明に係る保護層に比べ極端に大きな絶縁性を有するフッ素樹脂膜が追加形成されるため導電性の劣化の点では試料2や試料1の形態に比べ劣ることにはなる。
また、前記試料2のような親水性側の濡れ性の皮膜中、例えば皮膜のピンフォール中に水が含まれた後、環境中で当該水が氷結した場合の水の体積膨張による皮膜の劣化は容易に想定が可能である。
本発明の一実施形態である、ドライプロセスにより形成された皮膜の表面には、シラノール基、カルボニル基、カルボキシル基などの、極性の官能基が多く生成されるため、脱水縮合反応にて基材に結合するカップリング剤等よりなる撥水性又は撥水撥油性の皮膜が強力に密着しやすい。
前記の、ドライプロセスによる膜厚200nm未満の絶縁性薄膜よりなる耐食性に優れる保護膜と、フッ素含有カップリング剤等よりなるフッ素樹脂(層)より、少なくとも50nm未満の膜厚の複合層を電極の導電性を一定程度以上損なわない厚みで保護膜として形成するものとする。
よって、前記の本発明の第三の実施形態における保護膜の上の撥水性又は撥水撥油性皮膜形成も抵抗加熱法や真空プラズマ法などのドライプロセスで行うことが好適である。
例えばフッ素含有カップリング剤溶液中にワークをディップして撥水性又は撥水撥油性皮膜形成する場合、フッ素含有カップリング剤溶液の高濃度の未反応残渣が基材やプライマー層である本発明の一実施形態にかかるドライ薄膜の凹凸部分、または、ドライ薄膜のピンフォール中等に進入、厚く偏在し、また、電極の凹凸構造の凹部に重力によって溜まるなどし、検知電極を使用する際に検体試料である溶液中にフッ素含有カップリング剤(成分含む)が溶出や拡散することのないようにすることが、絶縁性でもあるフッ素含有カップリング剤膜の導電性管理と並んで極めて重要である。
例えば、ステンレス鋼板(SUS304 2B基材)上に公知のプラズマCVDプロセスにて各々概ね40nm程度の厚さで、珪素を含む非晶質炭素膜に酸素をプラズマ照射し、極性のシラノール基(Si−OH基)を表層に大量に生成させ、前記シラノール基と脱水縮合反応で皮膜を形成する公知のフッ素含有カップリング剤(フロロテクノロジー社のフロロサーフFG−5010Z130−0.2)よりなる撥水撥油層をスプレー法で概ね20nmの厚さで最表層に追加形成した2日後、IPA(イソプロピルアルコール)を満たした超音波洗浄槽で35分間洗浄した本発明の一実施形態にかかる試料をつくり、食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)の第3のDの2 100℃以下))器具及び容器包装規格試験(合成樹脂)一般規格溶出試験(一般財団法人日本食品分析センターにて実施)を行い、本発明前記試料が該規格に適合していること(限度内)が確認できている。
弁金属表層の不動態層は、電極表層に電気二重層を形成しにくく、さらに不動態層自体が有する電気容量の安定性が高いので、検知電極による検出の安定性や再現性確保には極めて有利、有意義な存在となる場合が有り得る。
また、前記弁金属表層の不動態層へのドライ薄膜よりなる保護膜も電気二重層を形成しにくいため、電極も安定化に貢献する。
電気二重層は、電極近傍でのイオンの挙動に大きな影響を与えるため、電気化学などの分野では重要な意味を持つ。また、電気二重層容量は電極の腐食、溶解で電極の面粗度が上昇し電極の表面積が大きくなることによって上昇変化するため、電極の耐食性は測定系にとって非常に重要な性能となる。
基材は、特に限定されず、様々な金属、樹脂、又はガラス、半導体、セラミクス、セルロースまたは各種素材の混合物や複合体、積層体などからなる。なお絶縁物であることが好ましい場合もある。
さらに、基材の表層の粗さは、必要な機能、例えば表面の濡れ性改質等の要求に合わせ適宜研磨や、ブラスト、ラッピング、ピーニングなどの物理処理や電解研磨や薬液エッチィングなどの化学(電気化学)処理、或いはプラズマ処理やUV処理等にて適宜調整されても良い。
本発明の電極材料として用いられる弁金属としては、アルミニウム、クロム、チタン、タンタル、ニオブ、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、亜鉛、タングステン、ビスマス、アンチモン、ニッケルなどが例示できる。さらには前記弁金属のいずれか1つ以上を含む各種合金、または複合体とすることもできる。さらに金属結晶の形を採らないアモルファス金属であってもかまわない。
また、電極の加工、形成方法は特に限定されず、公知のフォトリソグラフィー法、めっき法、めっき電鋳法、プレス加工、切削加工、レーザ加工等、様々な方法で行うことができ、特に限定されない。
さらに、電極表層の粗さは、必要な機能、例えば表面の濡れ性改質等の要求に合わせ適宜研磨や、ブラスト、ラッピング、ピーニングなどの物理処理や電解研磨や薬液エッチィングなどの化学(電気化学)処理、或いはプラズマ処理やUV処理等にて適宜調整されても良い。
でも良く、複数の弁金属からなるものでも本発明の趣旨を逸脱しない範囲のものであればかまわない。
本発明にかかるドライプロセスによる薄膜からなる保護層を形成する前に行う、弁金属
基材に対するクリーニングなどの前処理について説明する。
一般的にドライプロセスによる薄膜を基材上に形成する場合のAr等の不活性ガス、その他エッチィングガスによる処理基材表層のスパッタリング(クリーニング)は、ドライプロセスにより基材上に形成する薄膜を、基材の異物を除去し、酸化物や酸化膜に起因するプラズマのチャージアップを未然に防止し、基材温度を(反応温度)を上昇させ基材を活性化し、ドライ薄膜を密着良く基材に形成するため最も重要な工程として常識的に当業者により実施される重要工程である。
しかしながら、本発明にかかる弁金属の表層に形成されている不動態層は非常に薄いため、前記ドライプロセスによるAr等の不活性ガス、その他エッチィングガスによりスパッタリング(クリーニング)を通常どおり行うと前記弁金属の不動態層が除去、消滅、または部分破壊されてしまう場合がある。
例えば、真空プラズマプロセスでは、DC高圧パルス等で十分バイアスのかかったArイオンなどの基材表層から基材内部への注入深さは30nmを超える場合もあり、例えばArプラズマクリーングをArガス圧2Pa以下程度の状態で、3000ボルトを超える印加電圧でArイオンを基材に加速注入しその処理を10分間程度行えば、数nm程度の薄い前記不動態層はきれいに除去されてしまう場合がある。
よってArプラズマクリーングは長くても概ね5分間未満、好適には3分間未満、または、基材に異物等のないきれいな状態の場合は実施しないことが最良の場合もある
本発明にかかるドライ薄膜よりなる保護膜の形成について説明する。
一実施形態として、膜厚200nm未満の非晶質炭素膜よりなる保護層である。保護層の膜厚は厚い場合には保護膜や電極自体に応力剥離や反りなどの変形の恐れがあり、さらには、非晶質炭素膜は本来的に絶縁性の被膜であり電気抵抗が大きくなるなどの理由から、最大の膜厚を200nm未満とすることが好ましく、さらに好適には150nm未満、最適には50nm未満であり、使用条件により適宜選定される。
また、非晶質炭素膜はSi(珪素)、F(フッ素)、B(ホウ素)、S(イオウ)さらには、TiやAlなどの多様な金属など、他の元素が含有されたものでも良い。
または他の実施形態として、膜厚200nm未満の珪素または金属の酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、炭酸化物、炭窒化物、炭酸窒化物層のいずれか1つ以上を含むドライ薄膜よりなる保護層となる。
前記ドライ薄膜もプラズマプロセス等で撥水撥油性の元素、例えばフッ素などを添加したものであってもかまわない。
この場合も、保護層の膜厚は厚い場合には保護膜や電極自体に応力剥離や反りなどの変形の恐れがあり、さらには電気抵抗が大きくなるなどの理由から、最大の膜厚を200nm未満とすることが好ましく、さらに好適には150nm未満、最適には50nm未満であり、使用条件により適宜選定される。
但し、本発明のいずれの実施形態においても、本発明にかかるドライ薄膜よりなる保護膜の膜厚は、その厚みが薄い場合、複雑な凹凸構造を伴う本発明にかかる電極や冶具において、凹凸部分や貫通孔の壁面(断面)を構成する面への十分な前記プラズマドライプロセスにより形成される保護膜の着き回り(カバレッジ)が確保できなくなり、着き回りに左右される耐食効果が得難いため最低でも10nmを超える膜厚とすることが望ましい。
非晶質炭素膜の誘電率は8〜12程度、体積電気抵抗率は概ね×104〜14Ω・cmである。
誘電率は電極の電気二重層の形成に影響を与えるため、水溶液の誘電率が概ね50〜80、水の誘電率は80となるため、ドライ薄膜よりなる保護膜の誘電率は50未満であることが望ましく、さらに望ましくは12以下となる。
SiO2 :誘電率:3.7〜3.9 体積電気抵抗率 ×1018Ω・cm
Al2O3:誘電率:9.5〜10 体積電気抵抗率 ×1014Ω・cm
TiO2(ルチル):誘電率:113 体積電気抵抗率 ×1010Ω・cm
Si3N4:誘電率:7.3〜10 体積電気抵抗率 ×1014Ω・cm
AlN:誘電率:8.5〜9 体積電気抵抗率 ×1014Ω・cm
TiC:体積電気抵抗率 ×1012Ω・cm
TiN:体積電気抵抗率 ×1012Ω・cm
SiC:体積電気抵抗率 ×1013Ω・cm
なお、非晶質炭素膜は非晶質炭素膜を形成した後、その表面に酸素によるドライエッチィングを行うことでその面粗さを粗く、尖った形状に適宜調整することができ、抗菌性を付与することで液体試料中の菌体等の増殖を検知中に抑制することも可能となり得る
(上記特許文献3参照)。
例えば平面視矩形のアルミニウム合金基材(A5052)(100mm×100mm、厚さ1mm)を準備し洗浄後、アルミニウム合金基材を該基材に電圧を印加し、該基材の周囲に電界を形成することで該基材にドライ薄膜を形成可能な、高圧DCμパルスプラズマCVD装置にセットし、当該CVD装置を1×10−3Paまで真空排気を行った。その後、CVD装置に流量30SCCM、ガス圧1.5PaのAr(アルゴン)ガスを導入し、−3kVpの印加電圧によって基材表面を10分間プラズマクリーニングした。続いて、CVD装置からArガスを排気した後、流量30SCCM、ガス圧1.5PaのアセチレンガスをCVD装置に導入し、−4.5kVpの電圧を印加して、基材表面に厚さ概ね1μmの非晶質炭素膜を形成した。この表面に非晶質炭素膜が形成されたアルミニウム合金基材を作成した。
続いて該非晶質炭素膜が形成されたアルミニウム合金基材に塩水噴霧による腐食劣化加速試験を行った。株式会社東洋精機製作所製の塩水噴霧試験機S−800を用い、JISZ2371に準拠して塩水噴霧は24時間行った後、該基材各試料を試験機から取り出して純水で洗浄し、乾燥させた。この乾燥後の該基材をCCDカメラで撮影した結果、前記塩水噴霧試験後の非晶質炭素膜が形成されたアルミニウム合金基材の周辺部分の辺(端)から概ね10〜20mm程度幅の内部の面に腐食部分が集中しており、前記腐食はプラズマのアーキングによる、前記基材の周辺部分の辺(端)から概ね10〜20mm程度の内部の面に発生したピンフォールに起因する腐食と推定できる。
本発明の一実施形態において、フッ素含有カップリング剤膜は、フッ素含有カップリング剤からなる薄膜である。本発明の一実施形態におけるフッ素含有カップリング剤膜は、フッ素を含有するカップリング剤を前記ドライプロセスよりなる保護層に塗布することにより形成されるが塗布方法は特に限定されないが、抵抗加熱法や真空プラズマ法などのドライプロセスで行うことが好適である。
撥水撥油層はフッ素を含む絶縁性の被膜であり電気抵抗が大きくなるなどの理由から最大の膜厚を50nm未満することが好ましく、さらに好適には30nm満、最適には20nm未満であり、使用条件により適宜選定される。
なお、フッ素樹脂の誘電率は4.0〜8.0、体積電気抵抗率は×1018〜22Ω・cmと非常に大きな電気抵抗値を有する。
フッ素含有カップリング剤は、その分子構造内にフッ素の置換基を有するカップリング剤であり、撥水・撥油機能を奏する。フッ素含有カップリング剤膜として使用可能なフッ素含有カップリング剤には、以下のものが含まれる。
(ii) CF3(CF2)7CH2CH2SiCH3Cl2
(iii) CF3(CF2)7CH2CH2SiCH3(OCH3)2
(iv) (CH3)3SiOSO2CF3
(v) CF3CON(CH3)SiCH3
(vi) CF3CH2CH2Si(OCH3)3
(vii) CF3CH2SiCl3
(Viii) CF3(CF2)5CH2CH2SiCl3
(ix) CF3(CF2)5CH2CH2Si(OCH3)3
(x) CF3(CF2)7CH2CH2SiCl3
本発明の一実施形態に用いる非晶質炭素膜は、本来的に絶縁性であるため、非晶質炭素膜を電極の表層に形成すると導電性が低下し、電気的な感度が低下する場合があるが、非晶質炭素膜に非晶質炭素膜が蒸散しない程度のレーザ光、電子ビーム等の電磁波を照射すると照射部分において残存部分を電気導電体に改質できることが公知になっている(上記特許文献2参照)。
よって、本発明の一実施形態の電極上に形成された非晶質炭素膜において、導電性が必要な部分に、レーザ光を全面照射、またはパターニング照射して、レーザ照射部分のみを導電性とすることによって、1面の非晶質炭素膜を、全面、または部分的に電気導電性部分に改質するができる。また、非晶質炭素膜の本来の絶縁部分とレーザ照射して形成した導電部分とでパターンニングされた炭素材料からなる電極も形成可能となる。
当該レーザ光を照射した部分は、レーザ光照射の酸素アシストガスや熱による酸化などから極性の官能基が生成し、親水性を示す。また、面粗度が荒くなることから濡れ性が向上し、当該部分に液状の試料を集め、濡れ広がらせることができるため、本実施形態も、導電性に劣る弁金属上に非晶質炭素からなる保護膜を有する電極の電気導電性や感度や腐食への安定性を向上させるために有効である。
さらに前記非晶質炭素膜にレーザ光等の電磁波を照射して改質形成した導電体(導電性の炭素)は、イオンマイグレーション、ガルバニ腐食などを起こしにくいため、電極機能の劣化、変質を抑制し得る。
また、レーザ光は公知の金属加工用のYAGレーザなどが使用でき、特に限定されないが、例えば波長340nm付近のUV光、パルス周波数10kHzで照射を使ったUV−YAGパルスレーザなども使用可能である。
また、本発明の第二の実施形態の、珪素又は金属の、酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、炭酸化物、炭窒化物又は炭酸窒化物層のいずれか1つ以上を含むドライ薄膜に、酸素や窒素のプラズマを照射することで、大量に極性の官能基を表層に形成し、強く安定的な親水性(親水親油性)の表層も簡単に同一のプラズマ装置(プロセスで)形成することが可能となる。
さらに電極に限らず、検知機器に供する冶具の表面に、撥水性、撥水撥油性、親水性、親水親油の皮膜等を適宜形成することで、検知機器に供する冶具の表面の濡れ性制御(表面自由エネルギーの制御)を行うことができる。
この場合の一実施形態においては、絶縁部分(例えば絶縁性の電極基板上に)に、電極を構成する導電部分がパターニングされたもの(櫛形電極など)の場合、前記、絶縁基板部分を除く、電極部分の表層部分のみ、絶縁部分に比べ強い撥水性、撥水撥油性とすること、または、前記絶縁部分を電極部分よりも強い親水性、親水親油性とすることもできる。
このように、電極部分と絶縁部分の表面濡れ性を全部、または必要な部分において変えることで、液体試料の配置を適宜濡れ性の強い部分に誘導し、液体試料が電極の表層を占めること(接触すること)による腐食の加速を防止すると伴に、検体の液体試料が電極と電極の間(絶縁基板)上に収集配置され、少ない量の液体試料の付与で隈なく電極や冶具の必要部分(通電部分等)に試料を誘導し、また、必要に応じて濡れ性改質を行った所望の形状で液体試料を配置することが容易となり、貴金属電極等他の全ての電極でも共通で有効ではあるが、特に本発明にかかる弁金属などの不動態を伴い電気への感度の劣る電極の感度補完、感度向上、耐食性付与に好適である。
この積層電極構造を採ることで電極の平面視の面積を広げないで電極の試料への絶対接触面積を確保することも可能となることから、貴金属電極等他の全ての電極においても有効ではあるが、特に本発明にかかる弁金属などの不動態を伴い電気への感度の劣る電極の感度補完、感度向上に好適である。また本発明の一実施形態において、前記のように形成した積層構造断面部分の濡れ性を他の部分に対して良く設計し、または他の部分の濡れ性を悪く設計することで、当該断面からなる積層電極部分に液体試料を誘導し、効率良く充填することが容易になる。
本発明の一実施形態にかかるドライプロセスにより形成される、珪素や金属の酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、炭酸化物、炭窒化物、炭酸窒化物にさらに撥水性、撥水撥油性の皮膜(以下撥水膜、または撥水層という場合もある)を単一の面からなる電極に付与する場合、撥水部分、または撥水撥油性部分で取り囲んだ該電極面上の例えば中央部分に前記撥水部分、または撥水撥油性部分に比べ、親水性表面、或いは親水親油性表面等を含むさらに濡れ性の良い部分を形成、付与する形態とすることができる。
この場合、液体試料を同一電極上の濡れ性の高い部分に所望の形状や配置で集め、また液体試料が水滴状にならないよう電極の表層にもれなく濡れ広げることが可能となり、貴金属電極等他の全ての電極でも有効ではあるが、特に本発明にかかる弁金属などの不動態を伴い電気への感度の劣る電極の感度補完、感度向上に好適である。
このような事態を回避するため、例えば、液体試料を保持する凹部分の壁面部分を撥水性や撥水撥油性の壁面とすること、または凹部壁面に比べ、底部の液体試料濡れ性を高くすること(例えば親水性や親水親油性の表面とする)などの対応方法がある。
この部分的に濡れ性の異なる部分の作成においては、撥水性や撥水撥油性の部分と親水性や親水親油性部分とでなることが理想ではあるが、部分的に濡れ性の異なる部分間の接触角の差が油の場合で概ね20°以上、水の場合では概ね40°以上とすることで、液体が異なる濡れ性の面に進出する際に現れる「濡れのピン止め効果」「濡れのヒステリシス効果」を利用し液体試料の流動、流出を制御することができる。
該構造を検知電極や検知用の冶具の表面に採用することで、検体である液体試料を測定後、速やかにまた完全に廃棄し、電極への残留を抑制し、次なる試料の同一電極や冶具での再測定が可能、容易となり得る。
様々な検体のうち、タンパク質などの生体分子を主成分とするもの、例えば細菌や毛髪は、pH7付近の中性条件下で、その表面のカルボキシル基やリン酸基などが解離し負に帯電しているので、弱酸性領域に等電点を有することが通常であるため、例えばステンレス鋼始めとする金属など、アルカリ性領域に等電点を有し中性条件下で正に帯電する基材(検知用の電極や検知用の冶具等)に吸着されやすい。また、微生物細胞も、pH7近傍の中性条件で通常正に帯電している金属電極や冶具表面に吸着(付着)しやすい状態になっている。
このように、基材である電極や冶具が中性条件下に存在する場合には、基材(例えば検知用の電極や検知用の冶具等)が金属である場合は殆ど正に帯電する一方、タンパク質などの生体分子を主成分とする物質は負に帯電するので、この物質が電極や冶具などの基材に電気的に吸着されてしまうことになる。
本発明の実施形態においては、検知用の電極や検知用の冶具等の表層に形成する非晶質炭素膜等の保護膜の等電点を調整すること、或いは、生体分子を含む液体試料のpHを調整することで、検知用の電極や検知用の冶具等とタンパク質等生体分子を主成分とする検体の極性の違いを利用し、生体分子よりなる検体を検知用の電極や検知用の冶具等の表層に吸着させたり、逆に反発させ引き離したりすることが可能となる。
このように、非晶質炭素膜の表層にカルボキシル基(−COOH)や水酸基(−OH)を形成することにより、非晶質炭素膜をさらに負に帯電させて、負に帯電したタンパク質などの生体分子を主成分とする検体の付着を抑制することができる。
このように電極に検体を付着させたり、反発させ引き離したりすることが可能となり得る。
水素と炭素から構成される非晶質炭素膜のゼータ電位は概ね、pH4:−5mV,pH5:−50mV、pH6:−80mV、pH7:−95mV、pH8:−105mVである。
また水素と炭素から構成される非晶質炭素膜にSiとOを付加したものゼータ電位は概ね、pH4:−50mV、pH5:−85mV、pH6:−98mV、pH7:−100mV、pH8:−105mVである。このように,非晶質炭素膜を例えばSiと酸素を含有させた非晶質炭素膜等に改質することで,その等電点が酸性側にシフトすることが確認できた。さらには同一pHの環境にて、より大きなマイナスのゼータ電位が得られることができる。
アルミニウム箔(サイズ100mm×100mm)の基材(以下、単に「アルミ箔基材」ということもある)を必要枚数準備し、以下の、比較例1及び実施例1〜3により4種のサンプルを作成した。
まず無処理のアルミ箔基材を比較例1のサンプルとした。
準備したアルミ箔基材の表面に、公知の方法でSiを含有する非晶質炭素膜を20nmの厚さで、以下のようにして形成した。
まず、準備したアルミ箔基材を高圧パルスプラズマCVD装置に投入し、CVD装置の反応容器を1×10−3Paまで真空減圧した。通常は最初にアルゴンガスを導入し、アルゴンガスプラズマにより基材をクリーニングするが、不動態層を保全するためクリーニング工程を省略した。次に当該CVD装置に、流量30SCCM、ガス圧2Paでトリメチルシランガスを導入し、印加電圧−4kV、パルス周波数10kHz、パルス幅10μsの条件でプラズマを形成し、アルミ箔基材上にSiを含有する非晶質炭素膜を概ね20nmの厚みで形成した。得られたものを実施例1のサンプルとした。
実施例1の方法で作成したSiを含む非晶質炭素膜が形成されたアルミ箔基材の表面(非晶質炭素膜が形成された面)に、フッ素含有シランカップリング剤(フロロテクノロジー社のフロロサーフFG−5010Z130−0.2)を旭化成株式会社製のベンコット(製品名)を用いて塗布した。2日後、IPA(イソプロピルアルコール)を満たした超音波洗浄槽で1分間洗浄した後、得られたものを実施例2のサンプルとした。
準備したアルミ箔基材の表面に、以下のようにして、非晶質炭素膜を20nmの厚さで形成した。
まず、準備したアルミ箔基材を高圧パルスプラズマCVD装置に投入し、CVD装置の反応容器を1×10−3Paまで真空減圧した。通常は最初にアルゴンガスを導入し、アルゴンガスプラズマにより基材をクリーニングするが、不動態層を保全するためクリーニング工程を省略した。次に当該CVD装置に、流量30SCCM、ガス圧2Paでアセチレンガスを導入し、印加電圧−4kV、パルス周波数10kHz、パルス幅10μsの条件でプラズマを形成し、アルミ箔基材上に非晶質炭素膜を概ね20nmの厚みで形成した。得られたものを実施例3のサンプルとした。
JISZ2371に準拠したキャス試験の条件で各サンプルを腐食させた。
キャス試験は、サンプルの腐食(さび)具合を調べるための環境試験であり、試験に使用する液は、酢酸を用いて酸性(pH3.1〜3.3)にし、さらに塩化銅を加えた塩化ナトリウム水溶液であり、同様の試験である中性の食塩水を用いた試験に比べ、腐食促進試験として効果的で、短い試験時間で評価することができる。
具体的には、
○キャス試験機
CAP−90 スガ試験機株式会社
○JISZ2371(キャス試験)準拠
・試験液:塩化ナトリウム 50±5g/L、塩化銅(II) 0.205±0.015g/L、pH=3.1〜3.3(酢酸酸性)
・噴霧室内温度:50±2℃
・噴霧量:1.5±0.5mL/h(80cm2)
○噴霧:噴霧塔方式(噴霧室中央に噴霧塔があります)
○試験槽の大きさ:奥行60cm×幅86cm×高さ22cm
○試験時間:6時間
6時間キャス試験の状態で各サンプルの腐食を保持加速させた後、公知の4端子測定法にて負荷電圧は概ね0.39v付近で電気抵抗を測定した。抵抗測定器はAgilent社製34420Aを使用した。
結果を、表1に示す。
まずこのことから、保護膜をアルミ箔基材に形成してある各実施例のサンプルの電気抵抗(Ω)は×10−2(−2剰代)であり、電極として使用可能なレベルであることが確認できる。
キャス試験投入後はいずれの実施例も、比較例に比べキャス試験投入前後の抵抗の上昇が低く抑制されており、アルミ箔が腐食から守られていることでアルミニウムの腐食膜による電気抵抗の上昇が極端に低く抑えられていることがわかる。また、各実施例における抵抗の増加率の有意差も確認でき、本キャス試験における腐食の防止効果の差として理解できる。
また各実施例のサンプルは、皮膜剥離も発生せず、さらに電極として使用可能な×10−2(−2剰代)の低い導電性の電気抵抗を維持しており、中でも保護膜の表層に、さらに薄膜フッ素樹脂層を形成した実施例2は電気抵抗の上昇率が最も低く、安定性(耐食保護性能)を発揮したことが確認できた。
測定装置は、Agilent Technologies社製ハイレジスタンスメータ 4339B、Agilent Technologies社製レジスティビティ・セル16008B
主電極サイズ26mmφ、対電極内径38mmφ、カード電極110mm×110mm
荷重1kgfの条件である。
また、測定環境は、温度:23±1℃、湿度:50%±5%、電磁気計測室(シールドルーム)内にて測定を行っている。
弁金属よりなる微細幅、間隔で配置される櫛形電極は、表面積に比べ、面積当りの周囲の辺部延長が長く、細かな浮き島状態のため基材密着が取りにくい電極である。
このような電極に対してドライプロセスにて形成する薄膜を形成した場合の応力剥離の状況を、以下のようにして確認した。
100mm×100mm矩形で、厚さ1mmのソーダライムガラス基板を準備した。
超音波洗浄を行った後、公知のフォトリソグラフィー法にて幅30μm、隣接する対抗電極なでのスペースが30μmの微細な櫛形電極をレジストで描画形成し「型」とした。
Alターゲットは、株式会社高純度化学研究所製、Al 4N 4“φ×5t 純度99.99%を使用した。
まず予め、スパッタリング法にて、Al(アルミニウム)電極を形成したガラス基板全体に、公知のプラズマCVD法でSiを含有する非晶質炭素膜を200nmの厚さで形成した。
Siを含む非晶質炭素膜の形成は以下のようにして行った。まず、準備したガラス基材を高圧パルスプラズマCVD装置に投入し、CVD装置の反応容器を1x10−3Paまで真空減圧した。通常は最初にアルゴンガスを導入し、通常はここでアルゴンガスプラズマにより基材をクリーニングするが、不動態層を保全するためクリーニング工程を省略した。次に当該CVD装置に、流量30SCCM、ガス圧2Paでトリメチルシランガスを導入し、印加電圧−5kV、パルス周波数10kHz、パルス幅10μsの条件でプラズマし、Al(アルミニウム)電極上にSiを含有する非晶質炭素膜を概ね200nmの厚みで形成した。
さらに、作成したSiを含む非晶質炭素膜が形成されたAl電極の表面(非晶質炭素膜が形成された面)に、フッ素含有シランカップリング剤(フロロテクノロジー社のフロロサーフFG−5010Z130−0.2)をスプレー塗布し、処理後1週間経過した後、Al電極の状況を観察したが、Al電極と基材間、Al電極とSiを含有する非晶質炭素膜間で応力剥離等が発生していないことが確認できた。
フッ素含有シランカップリング剤は表面張力が低く、剥離の隙間に這いいりこみ皮膜の浮きを助長し易いが問題が発生しないレベルの密着が取れていることが確認できた。
次に、実施例3と同様の方法で、東レ株式会社のPETフィルム(ルミラーT60(t=25μm)上に非晶質炭素膜を概ね35nmの厚みで形成し、水素、水蒸気、酸素バリア性を確認した。
なお測定は、GTRテック製GTR−10XFKS、JIS−K7176−2ガスクログラム法(25℃DRY)にて実施した。
・水素透過率:2599ml/(m2・24h/atm)
・水蒸気透過率:64.0g/(m2・2day)
・酸素透過率:79.0cc/(m2・day/atm)
であったが、非晶質炭素膜形成後は、
・水素透過率:73.5ml/(m2・24h/atm) 概ね93%のガス透過防止性
・水蒸気透過率:2.0g/(m2・2day)
・酸素透過率:9.0cc/(m2・day/atm)
と非常に高いガスバリア性が確認された。
あることが推定できる。
表面の濡れ性制御による液体のパターンニング性について確認した。
まずPETフィルム ルミラーT60(t=100μm)幅600mm長さ600mmの矩形のシートに、全面親水性の表面処理を行った。
このPETフィルムをCVD装置にセットし、当該CVD装置を1×10−3Paまで
真空排気を行った。その後、CVD装置に流量30SCCM、ガス圧2Paのアルゴンガスを導入し、−3kVpの印加電圧によって基材表面を2分間プラズマクリーニングした。続いて、CVD装置からアルゴンガスを排気した後、流量30SCCM、ガス圧1PaのトリメチルシランガスをCVD装置に導入し、−3kVpの電圧を印加して、基材表面に厚さ30nmのSiを含有する非晶質炭素膜を形成した。
その後CVD装置からトリメチルシランガスを排気した後、流量30SCCM、ガス圧1Paの酸素ガスをCVD装置に導入し、−3kVpの電圧を印加して、1分間基材表面に酸素プラズマを照射して親水親油性表面を形成した。
続いてPETフィルム全面にフッ素含有シランカップリング剤(フロロテクノロジー社のフロロサーフFG−5010Z130−0.2)をスプレー塗布し1日間乾燥定着させ作成したパターンの「インクが印刷されないパターン」100μm幅の六角形を囲む線部に、フッ素含有シランカップリング剤よりなる撥水撥油層を形成した。
続いて、超音波洗浄機に前記PETフィルムを投入しインク部分を剥離し、インクでマスキングされていた下層の親水親油性のSiと酸素を含む非晶質炭素膜を露出させ概ね500μmφの直径の六角形の親水親油性部分を100μm幅の撥水撥油性表面が囲む表面を形成した。
当該親水親油性表面部分と撥水撥油性表面部分よりなる表面に純水を噴霧した。
写真から純水が親水親油性の六角形部分にのみ濡れ広がっていることは確認できる。
このように、表面の濡れ性(の差)を形成することで、液体試料を適宜必要な場所に
所望の形で配置することが可能となることが確認できた。
NBCメッシュ製のポリエステルメッシュで大きさ縦横100mmの方形を2枚準備した。
(有機高分子基材へ水素フリーで炭素が60%未満のSiを含む非晶質炭素膜密着層を形成した後、Siを含まない非晶質炭素膜層を形成した試料の作成)
前記ポリエステルメッシュ試料をステンレス鋼板上に平置きし、前記ステンレス鋼板にマイナス電圧が印加可能なように直流パルス方式の公知のプラズマCVD装置の成膜室の反応容器内に設置し、ポリエステルメッシュ試料のステンレス鋼と接する面の反対面に非晶炭素膜を成膜した。具体的には、成膜室反応容器を1×10−3Paの真空度まで排気した。次にArガスをガス流量30SCCM、ガス圧2Paで導入し、印加電圧−3kVpの条件でArガスプラズマを発生させ、試料台上の基材を1分間クリーニングした。Arガスを排気し15分間冷却した後、反応容器にトリメチルシランガスを流量30SCCM、1.5Paのガス圧で導入し、印加電圧−3kVp、パルス幅10μs、パルス周波数10kHzの条件で1分間Siを含む非晶質炭素膜を成膜した。当該Siを含む非晶質炭素膜の基材密着層の水素フリー基準での炭素含有量は概ね53.2at%、Siの含有量は概ね37.6at%であった。
トリメチルシランガスを排気し、15分間冷却した後、アセチレンガスを反応容器に流量30SCCM、1.5Paのガス圧で導入し、印加電圧−3.5kVp、パルス幅10μs、パルス周波数10kHzの条件で3分間Siを含まない、水素と炭素のみからなる晶質炭素膜を成膜し、一旦成膜を中断、15分間冷却した後、再度同じ条件でSiを含まない水素と炭素のみからなる非晶質炭素膜を同様の成膜時間と冷却時間で繰り返し成膜し、膜厚が概ね100nmの非晶質炭素膜を形成した。その後真空容器を常圧に戻し、ポリエステルメッシュ試料を取り出して比較例とした。
続いて、他方のポリエステルメッシュ試料をステンレス鋼板上に平置きし、前記ステンレス鋼板にマイナス電圧が印加可能なように直流パルス方式の公知のプラズマCVD装置の成膜室の反応容器内に設置し、非晶炭素膜を成膜した。成膜室反応容器を1×10−3Paの真空度まで排気した。次にArガスをガス流量30SCCM、ガス圧2Paで導入し、印加電圧−3kVpの条件でArガスプラズマを発生させ、試料台上の基材を1分間クリーニングした。Arガスを排気し15分間冷却した後、アセチレンガスを反応容器に流量30SCCM、1.5Paのガス圧で導入し、印加電圧−3.0kVp、パルス幅10μs、パルス周波数10kHzの条件で1分間Siを含まない、水素と炭素のみからなる非晶質炭素膜(Siを含まない密着層に相当する部分)を成膜し、一旦成膜を中断、15分間冷却した後、アセチレンガスを反応容器に流量30SCCM、1.5Paのガス圧で導入し、印加電圧−3.5kVp、パルス幅10μs、パルス周波数10kHzの条件で3分間Siを含まない、水素と炭素のみからなる晶質炭素膜を成膜し、一旦成膜を中断、15分間冷却した後、再度同じ条件でSiを含まない水素と炭素のみからなる非晶質炭素膜を同様の成膜時間と冷却時間で繰り返し成膜し、膜厚が概ね100nmの非晶質炭素膜を形成した。その後真空容器を常圧に戻し、ポリエステルメッシュ試料を取り出して実施例とした
摩擦摩耗試験は、新東科学株式会社製のトライボギアHHS−2000を用い、常温、無潤滑にて以下の測定条件により、各試料の非晶質炭素膜が形成された面上で、直径2.0mmのSUJ2の圧子を繰り返し往復させながら各試料表面の摩擦係数を測定した。この摩擦係数の測定は、一定加圧往復測定により実施した。
測定条件
・測定距離: 20mm
・測定速度: 5mm/sec
・圧子の荷重: 100g一定
図2、3のグラフは、縦軸が摩擦係数(μ)、横軸が摩擦往復回数を示している。
比較例は、概ね5往復目付近で摩擦係数(縦軸)が0.3(μ)を超え、非晶質炭素膜が通常示す0.2μ未満を大きく超えており、非晶質炭素膜が部分剥離していることが推定できる。
これに対して、実施例の摩擦係数(縦軸)は0.2μ未満で50往復まで安定していることが確認でき、非晶質炭素膜の基材密着性に優れていることが推定できる。
このことは、例えば非晶質炭素膜よりなる水蒸気と酸素の双方のガスバリア膜を効率良く形成したい場合、水素と炭素からなる非晶質炭素膜は水蒸気の透過防止性に優れており、Si(さらにはSiと酸素)を含む非晶質炭素膜は酸素ガスの透過防止性能に優れていることが知られている。よって、樹脂などの有機高分子材料よりなる基材への水蒸気、並びに酸素の双方の透過防止を行う場合は、水素と炭素からなる非晶質炭素膜を基材にまず形成した後、その後Siを含む非晶質炭素膜を形成する方法が、有機高分子材料よりなる基材へ直接Siを含む非晶質炭素膜を形成し、後に水素と炭素からなる非晶質炭素膜を形成する方法より優れていることが推定できた。無論、Siを含む非晶質炭素膜、水素と炭素からなる非晶質炭素膜をその後続けて複数層積層等することも可能である。
Claims (12)
- 基材と、該基材上の少なくとも一部に形成された弁金属よりなる電極と、該電極上に形成された膜厚が10nmを超え200nm未満の保護層を備え、
該保護層が、非晶質炭素膜よりなることを特徴とするセンサー用又は評価分析装置用の電極構造体。 - 基材と、該基材上の少なくとも一部に形成された弁金属よりなる電極と、該電極上にドライプロセスにより形成された膜厚が10nmを超え200nm未満の保護層を備え、
該保護層が、珪素又は金属の、酸化物、窒化物、炭化物、酸窒化物、炭酸化物、炭窒化物又は炭酸窒化物層のいずれか1つ以上を含む薄膜よりなることを特徴とするセンサー用又は評価分析装置用の電極構造体。 - 前記保護層上に、撥水性及び/または撥水撥油性の薄膜層を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサー用又は評価分析用装置用の電極構造体。
- 前記薄膜層が、膜厚50nm未満のフッ素含有カップリング剤よりなる樹脂層であることを特徴とする請求項3記載のセンサー用又は評価分析用装置用の電極構造体。
- 前記弁金属は、その表層に不動態層を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセンサー用又は評価分析用装置用の電極構造体。
- 負荷電圧0.39v下における電気抵抗が0.45Ω未満である請求項1〜5のいずれか1項に記載のセンサー用又は評価分析用装置用の電極構造体。
- 前記電極が形成されていない基材の最表面及び/又は前記電極が形成された部分の最表面に、水及び/または油との表面濡れ性が異なる表面を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のセンサー用又は評価分析用装置用の電極構造体。
- 前記保護層が、食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)に適合していることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のセンサー用又は評価分析用装置用の電極構造体。
- 前記保護層は前記基材よりも大きな水素ガス透過防止性を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のセンサー用又は評価分析用の電極構造体。
- 前記保護層の誘電率が50未満であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のセンサー用又は評価分析用の電極構造体。
- 請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の前記電極構造体を備えるセンサー。
- 請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の前記電極構造体を備える分析装置。
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