以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明は、上下水道管やガス管などに広く用いられる鋳鉄管(管体)pの受口2内面2aに水系塗料による塗装を施した鋳鉄管およびその塗装方法に関するものであり、鋳鉄管(管体)pは、図1に示すように、管内外径一定の直管部3を挟んで、図中右側に示す一端に挿し口1を他端に受口2を備える。領域Aにはジンクリッチプライマによる第1の層が形成され、領域Bには直管部Cから続いて粉体塗料により第2の層が形成され、ジンクリッチプライマによる第1の層と粉体塗料による第2の層との境界を含む領域Dに溶剤系プライマによる第3の層が形成され、その上の領域Eに水系塗料により形成される第4の層が形成され、受口内面の塗膜を構成する。
[第1の層]
鋳鉄管pの受口内面の図1の領域Aに、第1の層として、ジンクリッチプライマを塗装する。第1の層の膜厚は、好ましくは20〜50μmが好ましく、20〜30μmがより好ましい。膜厚が20μm未満では塗膜が不均一となりやすく、防食効果が十分に得られなくなる傾向があり、また、100μmを超えると、鉄素地との密着性が十分に得られなくなる傾向がある。なお、鋳鉄管が水道管である場合、ジンクリッチプライマ塗装の規格は150g/m2以上で膜厚換算20μm以上である。鋳鉄管の受口内面への塗装方法としては、ジンクリッチプライマを、刷毛で、または吹き付けで行う方法を用いることができる。これにより、受口端の防錆効果が十分に得られる傾向がある。
(ジンクリッチプライマ)
ジンクリッチプライマは、樹脂成分に顔料として亜鉛末を多く含み、防錆力に優れた亜鉛系プライマとして鋳鉄管の下塗りとして知られているものを使用することができる。ジンクリッチプライマとしては、亜鉛末にアクリル樹脂ワニス、ビニル変性エポキシエステル樹脂ワニス等の樹脂を加え、その他に酸化亜鉛、添加剤などを加えた水系のジンクリッチプライマが好ましく、亜鉛含有量が65〜85質量%程度のものがより好ましい。具体例としては、大日本塗料(株)製のクリモトコートWZ(JIS K 5552規格品、固形分86%、亜鉛末70質量%、酸化亜鉛9.2質量%、樹脂ワニス(ブタジエン/スチレンポリマー)7.2質量%、高沸点溶媒(ブチルセロゾルブなど)1.2質量%、水11.8質量%および分散剤)を挙げることができる。
[第2の層]
鋳鉄管pの直管部3内面に、粉体塗料、とりわけエポキシ樹脂粉体塗料により第2の層を形成する。この際、直管部3には段部4も含まれ、粉体塗装は、直管部から受口内面の一定領域まで前記第1の層の一部を被覆するように、例えば図1の領域Cに加え、領域Bにも行われる。また、本明細書で直管部内面という場合には、直管部内面3aのみならず、挿し口1内面1aや直管部3と受口2との間の段部4を含む。また、段部4には、面部4bや縁部4aを含む。この粉体塗装工程の前に、必要に応じて管内面を研磨、清掃などの素地調整を行うことが好ましい。
鋳鉄管pは、塗装される粉体塗料、特にエポキシ樹脂粉体塗料を溶融し、硬化させるために、通常、塗装前に加熱される。加熱方法は特に限定されるものではないが、例えばガス炉や電気炉などの加熱炉を用いて行われる。鋳鉄管pの加熱温度は、使用するエポキシ樹脂粉体塗料の種類や硬化時間などによって任意に決定されるものであるため特に限定されるものではないが、樹脂を溶融させ、樹脂と硬化剤とを架橋反応させるため、鋳鉄管pの表面温度は好ましくは150℃以上であり、より好ましくは170〜270℃である。
(エポキシ樹脂粉体塗料)
次に、粉体塗料のうち、特にエポキシ樹脂粉体塗料について説明する。直管部3から受口内面の一定領域まで前記第1の層の一部を被覆するように塗装されるエポキシ樹脂粉体塗料は、常温で固形のエポキシ樹脂、該エポキシ樹脂用の硬化剤、さらに必要に応じて各種顔料、添加剤などを含有する。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルアミン型樹脂、複素環式エポキシ樹脂、多官能型エポキシ樹脂などが挙げられる。また、エポキシ樹脂の軟化点は特に限定されるものではないが、好ましくは60〜150℃であり、エポキシ当量も特に限定されるものではないが、好ましくは400〜3000である。軟化点が60℃未満またはエポキシ当量が400未満では、粉体塗料が貯蔵中に固まる傾向があり、軟化点が150℃を超え、またはエポキシ当量が3000を超えると、溶融粘度が高くなるため、塗面が平滑になりにくい傾向があり、ピンホールなどが生じやすい傾向がある。
粉体塗料用のエポキシ樹脂に用いる硬化剤は、通常使用される硬化剤であれば特に限定されるものではないが、例えばイミダゾール系化合物、イミダゾリン系化合物、ジシアンジアミド、酸無水物、ポリカルボン酸ヒドラジドおよびその誘導体、フェノール樹脂およびその誘導体などが挙げられる。なかでも、イミダゾール系化合物、イミダゾリン系化合物またはポリカルボン酸ヒドラジドおよびその誘導体を単独または併用して用いることが塗膜の防食性、可撓性、密着性および強度が著しく良好となる点から好ましい。
エポキシ樹脂粉体塗料には、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、タルクなどの各種顔料や、充填剤、分散剤、表面調整剤などの各種添加剤を必要に応じて配合することができる。顔料および充填剤の添加量は、塗膜を厚膜化できるという理由から、塗料中に好ましくは20〜50質量%、より好ましくは30〜45質量%である。エポキシ樹脂粉体塗料の製造方法は特に限定されず、例えばドライブレンド法や熱溶融錬合法により製造することができる。
エポキシ樹脂粉体塗料の塗装方法は特に限定されるものではなく、例えば鋳鉄管を回転させ、管内部に粉体塗料を気体とともに過剰送入し、管内面に融着させ、余剰の粉体塗料を除去する方法などによって粉体塗料を塗装する。エポキシ樹脂粉体塗料を塗装することによって形成される内面塗膜層の厚さは、140〜700μmが好ましく、150〜400μmがより好ましい。膜厚が140μm未満では管内面の防食性が低下する傾向がある。
[第3の層]
直管部3内面3aに第2の層を形成した後、ジンクリッチプライマによる第1の層と粉体塗料による第2の層との境界を含む領域(以下、境界領域という。例えば図1の領域D)に溶剤系プライマにより第3の層を形成する。境界領域の面積は、第1の層と第2の層との境界を含むものであれば、特に限定されるものではないが、少なくとも境界線を含み両側に少なくともそれぞれ10〜60mmの幅を有するものとすることが好ましく、20〜30mmの幅を有するものとすることが好ましい。この幅が狭すぎると受口内面における水系塗料の密着性の改善効果が十分には得られない傾向があり、広すぎると溶剤の使用を抑えることによる本発明の効果が得られない傾向がある。
第3の層の膜厚は、好ましくは10〜80μmが好ましく、10〜20μmがより好ましい。膜厚が10μm未満では均一な塗膜が得られず、粉体塗膜と上塗りとの密着性が低下する傾向があり、また、80μmを超えると、乾燥が遅くなり、生産性が低下する傾向や、塗膜中に溶剤が残存する傾向がある。溶剤系プライマの塗装方法としては、刷毛で、または吹き付けで行う方法を用いることができる。
(溶剤系プライマ)
溶剤系プライマは、特に限定されるものではなく、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、シクロペンタジエン樹脂、クマロンインデン樹脂、カルボキシル化アクリル変性SBR樹脂などの樹脂の有機溶剤を媒体とした塗料であって、この有機溶剤が粉体塗装の表面を膨潤・軟化させ、これによりアンカー効果を生み出し付着性能を向上させることができるものを使用することができる。この媒体とする有機溶剤は、特に限定されるものではないが、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ブチルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチルなどが挙げられる。これらのアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂は、鋳鉄管の上塗り塗料として流通しているものなどを使用することができ、特に限定されるものではない。水道管に使用する場合には、例えば日本水道協会規格JWWA K 139「水道用ダクタイル鋳鉄管合成樹脂塗料」に規定されている合成樹脂塗料を好適に用いることができる。
アクリル系樹脂としては、スチレン、酢酸ビニルまたはブタジエンを含むアクリレートもしくはメタクリレート共重合物などを使用することができる。
アクリル系樹脂の溶剤系プライマとしては、例えば、大日本塗料(株)製クリモトコートWRグレー、日本ペイントインダストリアルコーティングス(株)製クリモトコートAC−1−SRグレー、日本ペイントインダストリアルコーティングス(株)製クリモトコートAC−1グレーなどを使用することができる。
エポキシ樹脂を主剤とする溶剤系プライマは、少なくとも主剤であるエポキシ樹脂、硬化剤、および上記有機溶剤とを含む。主剤と硬化剤とを分け、二液型としたものを用いることが好ましい。エポキシ樹脂は特に限定されるものではないが、ビスフェノール類とエピクロロヒドリンとの反応により得られるビスフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂に脂肪酸を反応させたもの、ノボラック型、脂環型、グリシジルアミン型、水添ビスフェノールA型などのエポキシ樹脂を主剤として用いることができる。そして、それに加えて必要に応じて、炭素数12または炭素数13のアルキル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパンなどのグリシジルエーテル、クマロンインデン樹脂、キシレン樹脂、ケトン樹脂、トルエン樹脂、石油樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリイミド樹脂などの樹脂類、モノグリシジルエーテル類、ジオクチルフタレート、ベンジルアルコール等の反応性または非反応性の希釈剤を、単独または複数選んで、上記主剤と混合して用いることができる。
硬化剤は、エポキシ樹脂に硬化反応を起こさせる化合物である。具体的な化合物としては、ポリアミドアミン類、ポリアミンエポキシ樹脂アダクト体、エポキシ樹脂アミンアダクト、脂肪族ポリアミン、変性ポリアミン、芳香族アミン、第三アミン、ヒドラジド、ジシアンジアミド、イミダゾール、酸無水物、ケチミン、酸末端ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、レゾール樹脂、アミノ樹脂、イソシアネート、ブロックイソシアネート、トリエチレンテトラミン変性物、メタキシレンジアミン変性物、トルエンジイソシアネートの変性物などを、単独または複数で用いることができる。
エポキシ樹脂を主剤とする溶剤系プライマの具体例としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピクロロヒドリンとビスフェノールAとの反応物)に石油樹脂(クマロン/スチレンの共重合体)を加え、種々の顔料および添加剤に、溶剤としてキシレン、エチルベンゼン、イソブタノール、メタノール、メチルイソブチルケトンおよびプロピレングリコールモノエチルエーテルを加えたものを主剤とし、ポリアミンとエポキシ樹脂とのアダクト体に溶剤としてキシレン、エチルベンゼン、イソブタノールおよびn−ブタノールを加えたものを硬化剤とする、大日本塗料(株)製のクリモトコートNT#100新Hグレーや、関西ペイント(株)製クリモトコートNT#100新などを使用することができる。
[第4の層]
直管部3内面3aに塗膜層を形成した後、第2工程として、その余熱を利用して、鋳鉄管pの受口2内面2aの溶射被膜層の表面に、水系塗料を塗装して受口2内面2a塗膜層を形成する。水系塗料は、エポキシエステル樹脂(A)とアクリル系樹脂エマルジョン(B)とアクリル系樹脂ディスパージョン(C)と顔料(D)とを含む。(A)、(B)および(C)成分はいずれも水性分散体であり、これらの成分を後述する所定の比率で水系塗料中に配合することで、直管部3内面3aに設けた粉体塗装膜との密着性に優れ、耐腐食性や耐候性に優れ、また、密着性など防食塗装に求められる諸機能を損なうことのない、受口内面塗膜層を1コートで形成することができる。
また、受口2内面2a塗膜層の形成は、直管部3内面3aに塗膜層を形成するときの余熱を利用して行うため、直管部3内面3a塗膜層を形成した後、連続して行うことが好ましい。直管部3内面3a塗膜層の形成工程と受口2内面2a塗膜層の形成工程との間隔は特に限定されるものではないが、自然冷却の場合、直管部3内面3a塗膜層の形成工程の後、通常30分〜3時間以内の間隔、より好ましくは1〜2時間以内の間隔で連続して受口2内面2a塗膜層の形成を行う。このときの鋳鉄管pの表面温度は好ましくは50〜80℃であり、より好ましくは70〜80℃である。50℃未満では塗膜が乾燥しにくい傾向があり、80℃を超えると塗料中の水分が沸く傾向がある。また、受口内面塗膜層の形成に用いる水系塗料は乾燥が迅速であることから、鋳鉄管の受口内面塗装の所要時間を短縮することができる。
(水系塗料)
第4の層を形成する水系塗料は、固形分として、(A)エポキシエステル樹脂を1〜15質量部、(B)アクリル系樹脂エマルジョンを5〜30質量部、および(C)アクリル系樹脂ディスパージョンを55〜94質量部含み、(A)、(B)および(C)の固形分の合計が100質量部であり、かつ(D)顔料体積濃度が35〜45%の顔料を含むものであれば、特に限定されることなく用いることができる。
エポキシエステル樹脂(A)は、耐腐食性を向上させるために水性分散体として水系塗料に配合される。エポキシエステル樹脂(A)は、不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(a1)、末端カルボキシル基含有構造を有するビニル単量体およびその他のビニル単量体を塊状重合させて得られるビニル変性エポキシエステル樹脂(a2)を主成分とし、このビニル変性エポキシエステル樹脂(a2)を中和して得られるビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(a3)の水性分散体である。詳細については後述する。
エポキシエステル樹脂(A)の水性分散体の固形分濃度は特に限定されるものではないが、作業性を考慮して通常は15〜70質量%であり、より好ましくは25〜60質量%であり、最も好ましくは35〜50質量%である。
エポキシエステル樹脂(A)の配合量は、固形分として、水系塗料の(A)、(B)および(C)成分100質量部中に1〜15質量部であり、好ましくは3〜12質量部であり、より好ましくは5〜10質量部である。配合量が1質量部未満では耐腐食性が低下する傾向があり、15質量部を超えるとアクリル系樹脂成分が相対的に少なくなり、良好な塗膜が形成されない傾向がある。
アクリル系樹脂エマルジョン(B)は、耐腐食性および乾燥性に優れた塗膜を形成するために水系塗料に配合される。アクリル系樹脂エマルジョン(B)は、強制乳化型の(メタ)アクリル重合体(b)の水性樹脂分散体を主成分とするものである。強制乳化型とは、乳化剤を用いて強制的に乳化したもので、樹脂部分は基本的に自己乳化力を有しないものを意味し、本発明においてエマルジョンは強制乳化型の分散体という意味で用いる。詳細については後述する。
アクリル系樹脂エマルジョン(B)の固形分濃度は特に限定されるものではないが、作業性を考慮して通常は15〜70質量%の範囲内であり、より好ましくは25〜60質量%であり、最も好ましくは35〜50質量%である。
アクリル系樹脂エマルジョン(B)の配合量は、固形分として、水系塗料の(A)、(B)および(C)成分100質量部中に5〜30質量部であり、好ましくは8〜25質量部であり、より好ましくは10〜20質量部である。配合量が5質量部未満では乾燥性が低下する傾向があり、30質量部を超えると後述するアクリル系樹脂ディスパージョン(C)が相対的に少なくなり、耐腐食性と耐候性が低下する傾向がある。
アクリル系樹脂ディスパージョン(C)は、耐腐食性と耐候性に優れた塗膜を形成するために水系塗料に配合される。アクリル系樹脂ディスパージョン(C)は、自己乳化型のビニル系重合体の水性樹脂分散体(c1)を主成分とし、常圧下の沸点が130〜220℃の範囲内で、かつ20℃での水の溶解度が100以上の有機溶剤(c2)をアクリル系樹脂ディスパージョン(C)中に15質量%以下含有する自己乳化型の水性分散体である。自己乳化型とは、樹脂骨格に何らかの親水性基を化学的に導入し、樹脂自体が乳化能を有することを意味し、本発明においてディスパージョンは自己乳化型の分散体という意味で用いる。詳細については後述する。
アクリル系樹脂ディスパージョン(C)の固形分濃度は特に限定されるものではないが、作業性を考慮して通常は15〜70質量%の範囲内であり、より好ましくは25〜60質量%であり、最も好ましくは35〜50質量%である。
アクリル系樹脂ディスパージョン(C)の配合量は、固形分として、水系塗料の(A)、(B)および(C)成分100質量部中に55〜94質量部であり、好ましくは73〜89質量部であり、より好ましくは75〜85質量部である。配合量が55質量部未満では良好な塗膜が形成されない傾向があり、94質量部を超えるとエポキシエステル樹脂(A)やアクリル系樹脂エマルジョン(B)が相対的に少なくなり、耐腐食性や耐久性が低下する傾向がある。
水系塗料に用いる顔料(D)は、主として強度と乾燥性のバランスに優れた塗膜を形成するためのものであり、後述する体質顔料や防錆顔料などの各種顔料を使用することができる。
水系塗料中の顔料(D)の配合量は、顔料体積濃度(以下、PVCという)で35〜45%であり、好ましくは35〜40%である。PVCが35%未満では塗膜に粘着性が残りやすく、乾燥しにくい傾向があり、45%を超えると塗膜の耐腐食性が低下する傾向がある。なお、PVCとは、Pigment Volume Concentrationの略称であり、PVC(%)=顔料/(樹脂+顔料)×100で算出される顔料の体積比率である。樹脂と顔料との合計体積は、通常、分散体中の不揮発分容積を用いる。
水系塗料の塗装方法は特に限定されるものではなく、スプレーや刷毛、ローラーによって塗装することができる。水系塗料を塗装することによって形成される第4の層の厚さは、80〜200μmが好ましく、80〜100μmがより好ましい。
(エポキシエステル樹脂(A))
本発明に用いるエポキシエステル樹脂(A)は、水系塗料に耐腐食性を付与する成分であり、不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(a1)、一般式(I)
(式中、nは1〜10の整数であり、R
1は炭素数2〜18のアルキレン基を示す。)で示される末端カルボキシル基含有構造を有するビニル単量体およびその他のビニル単量体を塊状重合させて得られるビニル変性エポキシエステル樹脂(a2)と、塩基性化合物とからなり、水を用いてビニル変性エポキシエステル樹脂(a2)中のカルボキシル基の一部または全部を塩基性化合物によって中和し、この中和で得られるビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(a3)を水に分散することによって得られるものである。
不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(a1)としては、例えばエポキシ樹脂が有するエポキシ基および/または水酸基と、不飽和脂肪酸が有するカルボキシル基とを反応させて得られる不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂が挙げられる。
不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(a1)の調製に用いる前記エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ポリエチレングリコール系エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン樹脂などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、耐腐食性に優れる塗膜を形成できるという理由からビスフェノール型エポキシ樹脂を使用することが好ましい。
前記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂が挙げられ、なかでも、耐腐食性に優れる塗膜を形成できるという理由からビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用することが好ましい。
前記ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロン850、1050、3050、4050、7050、HM−091、HM−101(以上、いずれもDIC(株)製)などが挙げられる。前記ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロン830(DIC(株)製)などが挙げられる。
前記脂環式エポキシ樹脂としては、例えばユノックス201、289(以上、いずれも米国ユニオンカーバイド社製)などが挙げられる。前記フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えばエピクロンN−740、775(以上、いずれもDIC(株)製)などが挙げられる。前記ポリエチレングリコール系エポキシ樹脂としては、例えばエピコート812(オランダ国シェル社製)、エポライト40E、200E、400E(以上、いずれも(株)共栄社製)などが挙げられる。前記エポキシ化ポリブタジエン樹脂としては、例えばBF−1000((株)ADEKA製)などが挙げられる。
前記エポキシ樹脂としては、常温での造膜性に優れる水系塗料が得られることから、400〜1,000(g/当量)のエポキシ当量を有するものを使用することが好ましく、400〜600のエポキシ当量を有することがより好ましい。
前記エポキシ樹脂由来の構造は、ビニル変性エポキシエステル樹脂(a2)中に、好ましくは15〜75質量%含まれ、より好ましくは25〜60質量%含まれる。これによって、造膜性に優れ、耐腐食性に優れた塗膜を形成できる。
前記エポキシ樹脂と反応する不飽和脂肪酸としては、例えばオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エレオステアリン酸、リシノール酸、桐油脂肪酸、亜麻仁油脂肪酸、脱水ひまし油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、トール油脂肪酸、綿実油脂肪酸、大豆油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、米糠油脂肪酸などの脂肪酸などが挙げられる。なかでも、ヨウ素価120〜200の大豆油脂肪酸、脱水ひまし油脂肪酸などの半乾性油、乾性油を使用することが、後述するビニル単量体を、不飽和脂肪酸の有する不飽和結合に効率よくグラフト重合させることができるため好ましい。
前記不飽和脂肪酸に由来する構造は、前記ビニル変性エポキシエステル樹脂中に、好ましくは15〜50質量%含まれ、より好ましくは15〜40質量%含まれ、最も好ましくは20〜35質量%含まれる。これによって、常温における塗膜の乾燥性、顔料分散性および得られる塗膜の耐腐食性を向上させることができる。
前記不飽和脂肪酸の使用の際には、目的の範囲内でその他のカルボン酸を併用することができる。前記その他のカルボン酸としては、例えばオクチル酸、ラウリル酸、ステアリン酸、水添ヤシ油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸などの飽和脂肪酸や、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸、テトラクロル(無水)フタル酸、1,1−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ(無水)フタル酸、(無水)ヘット酸、(無水)ハイミック酸(日立化成化学工業(株)の登録商標)、水添(無水)トリメリット酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、オクテン酸、イソノナン酸、安息香酸、p−tert−安息香酸、イソオクタン酸、イソデカン酸、シクロヘキサン酸、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。
不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(a1)は、例えば前記エポキシ樹脂と前記不飽和脂肪酸とを、必要に応じてエステル化触媒の存在下で、150〜250℃に加熱して脱水し、前記エポキシ樹脂が有するエポキシ基や2級の水酸基と前記不飽和脂肪酸が有するカルボキシル基とをエステル化反応させることで製造できる。
不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(a1)を製造する際に、エーテル化反応などの副反応を抑制したい場合は、例えばジメチルベンジルアミン、トリエチルアミンなどを用いることが好ましい。
なお、前記エポキシ樹脂と前記不飽和脂肪酸とを反応させる際には、多価アルコールを併用することができる。前記多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。
前記多価アルコールを使用する場合は、前記エポキシ樹脂と前記不飽和脂肪酸と前記多価アルコールとを混合しエステル化反応させることで、不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(a1)を製造することができる。
得られた不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(a1)の質量平均分子量としては、塊状重合時のゲル化を抑制でき、かつ、水分散安定性に優れるという理由から3,000〜15,000であることが好ましい。
また、不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(a1)の油長は、塊状重合時に高粘度化、水分散樹脂粒子の粗大化、起泡性の高まりなどの問題が発生しにくいことから、15〜60質量%であることが好ましい。
次に、不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(a1)、一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造を有するビニル単量体およびその他のビニル単量体を塊状重合させて得られるビニル変性エポキシエステル樹脂(a2)について説明する。
一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造を有するビニル単量体としては、例えば2−メタクリロキシエチルサクシニクアシッド、2−メタクリロキシエチルヘキサハイドロフタレート、2−メタクリロキシエチルグルタレート、ω−カルボキシポリカプロラクトンメタクリレートなどが挙げられる。
一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造を有するビニル単量体は、例えば、(i)ヒドロキシカルボン酸とカルボキシル基を有するラジカル重合性不飽和化合物とを反応させる方法、(ii)カルボキシル基を有するラジカル重合性不飽和化合物とε−カプロラクトンとを酸触媒の存在下で反応させる方法などにより製造できる。前記(ii)の方法としては、例えばカルボキシル基を有するラジカル重合性不飽和化合物とε−カプロラクトンとを、酸触媒の存在下で混合、撹拌し、40〜150℃で反応させる方法が挙げられる。
前記(ii)の方法で使用できるカルボキシル基を有するラジカル重合性不飽和化合物としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸などが挙げられる。酸触媒としては、例えばp−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、塩化アルミニウム、塩化第二錫などが挙げられる。酸性触媒は、前記カルボキシル基を有するラジカル重合性不飽和化合物100質量部に対して、1〜20質量部の範囲で使用することが好ましい。
前記方法で得られる、一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造を有するビニル単量体は、得られる塗膜の乾燥性が良好なことから、1分子中にε−カプロラクトン由来の構造単位を平均1〜10個有することが好ましく、平均1〜5個有することがより好ましい。その具体例としては、1分子中のε−カプロラクトン単位の平均数が2のアロニクスM−5300(東亜合成化学工業(株)製)などが挙げられる。
ビニル変性エポキシエステル樹脂(a2)中における一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造の質量割合は、好ましくは0.5〜30質量%であり、より好ましくは2〜17質量%である。これによって、ビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(a3)と顔料の分散安定性に優れ、良好な耐腐食性を有すると共に、塊状重合時のゲル化を抑制することができる。
ビニル変性エポキシエステル樹脂(a2)は、前記ビニル単量体およびその他のビニル重合体部分に、一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造であって、一部または全部が塩基性化合物で中和されている構造の他に、一般式(II)
(式中、mは3〜90の整数であり、R
2は炭素数2〜4のアルキレン基、R
3は水素原子またはメチル基である。)で示されるポリアルキレンオキサイド構造を有するものが好ましい。
一般式(II)で示されるポリアルキレンオキサイド構造は、不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(a1)が有する不飽和結合の一部または全部に、一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造を有するビニル単量体およびその他のビニル単量体を重合させる際に、前記その他のビニル単量体の一部または全部として一般式(II)で示されるポリアルキレンオキサイド構造を有するビニル単量体を用いることで、前記ビニル重合体部分に導入することができる。
一般式(II)で示されるポリアルキレンオキサイド構造を有するビニル単量体としては、例えば水酸基含有ビニル単量体にエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加反応させて得られるものが挙げられ、例えばメトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
一般式(II)中のmは好ましくは10〜100の整数であり、より好ましくは10〜30の整数である。これによって、ビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(a3)と顔料の分散安定性に優れ、耐食性の良好な塗膜が得られる。
ビニル変性エポキシエステル樹脂(a2)中における一般式(II)で示されるポリアルキレンオキサイド構造の質量割合は、好ましくは0.5〜10質量%であり、より好ましくは2〜5質量%である。これによって、ビニル変性エポキシエステル樹脂(a2)と顔料の分散安定性に優れ、耐腐食性の良好な塗膜を形成できると共に、塊状重合時のゲル化を抑制することができる。
前記その他のビニル単量体としては、一般式(II)で示されるポリアルキレンオキサイド構造を有するビニル単量体以外に、例えば(メタ)アクリル酸、2−カルボキシエチルアクリレート、クロトン酸、ビニル酢酸、アジピン酸モノビニル、セバシン酸モノビニル、イタコン酸モノメチル、マレイン酸モノメチル、フマル酸モノメチル、コハク酸モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)、フタル酸モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)、ヘキサヒドロフタル酸モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)、ソルビン酸などの不飽和二重結合を有するモノカルボン酸;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などの不飽和二重結合を有するジカルボン酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ドコサニル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;スチレン、p−tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、4−メトキシブチル(メタ)アクリレートなどのω−アルコキシアルキル(メタ)アクリレート;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどの3級アミド基含有ビニル系単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基を含有する(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテルなどの水酸基含有ビニルエーテル;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、;N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの二級アミノ基含有ビニル系単量体;ビニルアセトアセテート、2−アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートなどの活性メチレン基を有するビニル単量体;ビニルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなどの加水分解性シリル基を有するビニル系単量体;トリメチルシリル(メタ)アクリレートなどのシリルエステル基を含有するビニル系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基を含有するビニル系単量体;2−イソシアナートプロペン、2−イソシアナートエチルビニルエーテル、2−イソシアナートエチルメタアクリレート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートなどのイソシアネート基を含有するビニル系単量体などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、前記その他のビニル単量体としては、例えば前記水酸基を有するビニル単量体とε−カプロラクトンとを付加反応させたものも使用することができる。
前記塊状重合によるビニル変性エポキシエステル樹脂(a2)の合成は、通常、ラジカル重合開始剤の存在下、合成原料である不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(a1)と、合成により得られるビニル変性エポキシエステル樹脂(a2)がいずれも溶融して攪拌可能となる温度で行う。前記ラジカル重合開始剤としては、各種のラジカル重合開始剤が使用できるが、なかでも未反応のビニル単量体が残存しにくいことから、1時間半減期が100℃以上のラジカル重合開始剤が好ましい。
さらに、前記ラジカル重合開始剤としては、架橋効率ε(n−ペンタデカン中でラジカル重合開始剤を15分半減期温度で分解させた時に生成するn−ペンタデカンダイマーのモル数を測定し、ラジカル重合開始剤1モルに対する生成割合を算出したもの(モル%))が30モル%以上の水素引抜き性の強いラジカル重合開始剤であることが好ましい。これによって、未反応のビニル単量体が残存しにくく、得られるビニル変性エポキシエステル樹脂(a2)の中和および水分散後の樹脂粒子が粗大化して水分散安定性が低下するのを防止できる。
1時間半減期100℃以上、架橋効率30モル%以上のラジカル重合開始剤としては、例えばtert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−アミルパーオキシベンゾエート、ジ−tert−ブチルパーオキサイドなどが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。前記ラジカル重合開始剤は、前記ビニル単量体の合計量100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲内で使用することが好ましい。
前記塊状重合の際には、必要に応じて連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、例えばn−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン;ベンジルメルカプタン、ドデシルベンジルメルカプタンなどの芳香族メルカプタン;チオリンゴ酸などのチオカルボン酸またはそれらの塩、アルキルエステルなどが挙げられる。
ビニル変性エポキシエステル樹脂(a2)の合成の際の塊状重合温度は、塊状重合時の攪拌制御が比較的容易で、不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(a1)と、前記ビニル単量体との反応が進行しやすいことから、100〜200℃であることが好ましく、100〜150℃であることがより好ましい。前記塊状重合は、常圧においても重合可能であるが、密閉容器内で加圧重合を行うことが好ましい。常圧下での塊状重合は、重合温度が100〜140℃では重合時に高粘度化し易く、重合温度が140〜200℃では前記ビニル単量体が揮発しやすい。
ビニル変性エポキシエステル樹脂(a2)の質量平均分子量は、好ましくは8,000〜100,000である。これによって、ビニル変性エポキシエステル樹脂(a2)は、水中に安定して分散し、耐水性および耐腐食性に優れた塗膜を形成できる。
ビニル変性エポキシエステル樹脂(a2)の酸価は、好ましくは5〜100(mgKOH/g)であり、より好ましくは15〜40であり、最も好ましくは20〜35である。これによって、顔料分散性、耐食性および耐水性に優れた塗膜を形成できる。
次に、得られたビニル変性エポキシエステル樹脂(a2)に含有されているカルボキシル基の一部または全部の塩基性化合物での中和と、水との混合による分散について説明する。
ビニル変性エポキシエステル樹脂(a2)の中和に用いる前記塩基性化合物としては、例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、2−アミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムハイドロオキサイドなどが挙げられる。これら塩基性化合物は、アンモニア水などのように水溶液として使用することもできる。また、ビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(a3)を含有する水系塗料が塗膜を形成した際に揮発して塗膜中に残留せず、耐水性および耐腐食性に優れた塗膜を形成ができることから、揮発性の塩基性化合物やその水溶液、例えばアンモニア水、トリエチルアミン、2−ジメチルアミノエタノールを用いることが好ましい。
ビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(a3)を水中に分散させる方法としては、例えば、(i)不飽和脂肪酸変性エポキシエステル樹脂(a1)と、前記ビニル単量体を塊状重合して得られるビニル変性エポキシエステル樹脂(a2)の溶融物を、塩基性化合物と混合して、好ましくは80〜125℃で混合してビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(a3)の溶融物とした後、水と混合して、好ましくは90℃以下、より好ましくは50〜90℃で混合してビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(a3)を水に分散させる方法、(ii)前記(i)と同様に中和して得られるビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(a3)を、沸点90℃以下の有機溶剤、好ましくは沸点50〜90℃の有機溶剤に溶解した後、好ましくは90℃以下、より好ましくは50〜90℃で溶解した後、水と混合して、好ましくは90℃以下、より好ましくは50〜90℃で水と混合してビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(a3)を水に分散させた後、有機溶剤の一部または全部を減圧除去する方法などが挙げられる。前記(i)の分散方法では、ハレルホモジナイザー、スタティックミキサー、ソノレーター、ディスパー、ミキサーなどにより常圧で機械的剪断力をかける分散方法や、マイクロフルイダイザーや、キャビトロンでの加圧化で機械的剪断力をかける分散方法が好ましい。
ビニル変性エポキシエステル樹脂(a2)は、中和される前では、一般式(I)で示される末端カルボキシル基含有構造中のカルボキシル基などの酸基を有する。そのため、ビニル変性エポキシエステル樹脂(a2)の酸価が、15〜40(mgKOH/g)程度と低い場合でも、有機溶剤の含有量が極めて少ない、または、全く含まない水性媒体中に安定して分散することができ、顔料も安定して分散させることができる。また、このような低酸価のビニル変性エポキシエステル樹脂(a2)の中和物(a3)を含有する水系塗料を用いることにより、得られる塗膜の耐腐食性および耐水性を向上させることができる。なお、中和前のビニル変性エポキシエステル樹脂(a2)の酸価は必要に応じて選択でき、15〜40以外の酸価であっても良い。酸価は好ましくは10〜60であり、より好ましくは10〜40であり、最も好ましくは20〜30である。
また、ビニル変性エポキシエステル樹脂(a2)の水中への分散に際しては、ビニル変性エポキシエステル樹脂(a2)や顔料の分散安定性を向上させるために、目的の範囲内で乳化剤を使用することができる。乳化剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体などのノニオン系乳化剤、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩などのアニオン系乳化剤、4級アンモニウム塩などのカチオン系乳化剤などが挙げられる。乳化剤は、得られる塗膜の耐水性および耐腐食性を低下させないためにも、できるだけ使用しないことが好ましい。
本発明の製造方法により得られるエポキシエステル樹脂(A)は、水性媒体中にビニル変性エポキシエステル樹脂中和物(a3)の粒子が分散したものであり、この粒子の粒子径は40〜300nmであることが好ましく、80〜200nmであることがより好ましい。なお、粒子径は、マイクロトラック粒度分析計(マイクロトラック9340−UPA、日機装(株)製)で求めた値である。
上述したようなエポキシエステル樹脂(A)の具体例としては、ウォーターゾールEFD−5560(DIC(株)製)などが挙げられる。
(アクリル系樹脂エマルジョン(B))
本発明に用いるアクリル系樹脂エマルジョン(B)は、強制乳化型の(メタ)アクリル重合体(b)の水性樹脂分散体を主成分とするものである。(メタ)アクリル重合体(b)は、単独重合体であっても良く、また2種以上の重合体の混合物であっても良い。また、アクリル系樹脂エマルジョン(B)が2種以上の重合体の混合物である場合、2種以上の(メタ)アクリル重合体(b)の水性エマルジョンを混合したものであっても良く、その配合比率は特に制限されるものではなく、自由に設定される。
(メタ)アクリル重合体(b)は、(メタ)アクリル系単量体のみからなるアクリル重合体に限定されるものではなく、主たる重合単位としてスチレン単量体単位を有するスチレン−アクリル系重合体であっても良い。
(メタ)アクリル重合体(b)としては、例えば炭素数1〜10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位20〜100質量%と、スチレン系単量体単位0〜80質量%と、これらと共重合可能なビニル系単量体単位0〜30質量%とからなる(メタ)アクリル重合体が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の配合量は、好ましくは40〜95質量%であり、より好ましくは60〜90質量%である。スチレン系単量体単位の配合量は、好ましくは5〜60質量%であり、より好ましくは10〜40質量%である。これらと共重合可能なビニル系単量体単位の配合量は、好ましくは0〜15質量%であり、より好ましくは0〜10質量%である。
(メタ)アクリル重合体(b)に用いる(メタ)アクリル系単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどの炭素原子数1〜10のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、その無水物、フマル酸、イタコン酸、不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステル(例えばマレイン酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノノルマルブチル)などのカルボキシル基含有ビニル系単量体が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
(メタ)アクリル重合体(b)に用いるスチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン、2,4―ジブロモスチレンなどが挙げられる。
(メタ)アクリル重合体(b)に用いる(メタ)アクリル系単量体やスチレン系単量体と共重合可能な単量体としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;塩化ビニリデン、臭化ビニリデンなどのビニリデンハライド;(メタ)アクリロニトリル;(メタ)アクリル酸グリシジル;(メタ)アクリルアミド、Nーメチロール(メタ)アクリルアミド、ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルミドなどが挙げられる。
(メタ)アクリル重合体(b)の合成方法は特に限定されるものではなく、乳化重合などの公知の重合方法を用いることができる。アクリル系樹脂エマルジョン(B)の調製方法としては、例えば単量体、乳化剤、重合開始剤などの混合物(単量体プレミックス)を、予め所定量の水の入った反応容器の中に一括して仕込み、単量体混合物を乳化重合させて、反応が終了した後、反応物を冷却し、中和して目的とする水性アクリルエマルジョンを得る。
上記反応で用いる乳化剤は、アクリル系樹脂エマルジョン(B)を水に強制的に乳化させるための必須の成分である。その具体例としては、例えば脂肪酸石鹸、ロジン酸石鹸、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジアルキルアリールスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩などのアニオン系重合乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマーなどのノニオン系重合乳化剤などが挙げられる。これらの乳化剤は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。ノニオン系およびアニオン系の併用、および陽イオン界面活性剤、両イオン界面活性剤などの使用も可能である。乳化剤の使用量は、乳化重合に供する重合性モノマーの全量100質量部に対して、0.3〜3質量部が好ましい。
乳化重合反応で使用する重合開始剤としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などの水性触媒;tert−ブチルハイドパ−オキサイド、クメンハイドロパ−オキサイドなどの油性触媒が挙げられる。重合開始剤の使用量は、乳化重合に供する重合性単量体の100質量部に対して、0.1〜0.7質量部が好ましい。
また、乳化重合反応では、分子量を調整するために重合時に連鎖移動剤や重合停止剤などの分子量調整剤、重合率調整剤を適宜使用することができる。さらに冷却による反応中断により分子量のコントロールを行っても良い。連鎖移動剤としては、例えばtert−ドデシルメルカプタン、n−トデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタンなどのメルカプタン、ターピノーレン、tert−テルピネン、α−メチルスチレンダイマー、エチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンスルフィド、アミノフェニルスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドなどが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。連鎖移動剤の使用量は、乳化重合に供する重合性単量体の全量100質量部に対して1.0質量部以下が好ましい。
また、重合停止剤としては、例えばハイドロキノン(フェノール)、アミン系硫黄、硫酸ヒドロキシルアミン、アンモニア、苛性ソーダ、苛性カリなどが挙げられ、またその他重合停止効果のあるものが使用できる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。その使用量は重合禁止剤の種類および単量体との反応性比により異なる。乳化重合反応においては、前記乳化剤、連鎖移動剤および重合開始剤のほか、必要に応じて各種電解質、pH調整剤などの添加剤を併用しても良い。
上述したようなアクリル系樹脂エマルジョン(B)の具体例としては、ボンコートEC−740EF(DIC(株)製)などが挙げられる。
(アクリル系樹脂ディスパージョン(C))
水系塗料に用いるアクリル系樹脂ディスパージョン(C)は、自己水分散能を有するビニル系重合体の水性樹脂分散体(c1)と、常圧下の沸点が130〜220℃の範囲内で、かつ20℃での水の溶解度が100以上の有機溶剤(c2)とを含有する自己乳化型の水性分散体である。自己乳化型とは、樹脂骨格に何らかの親水性基を化学的に導入し、樹脂自体が乳化能を有することを意味する。
アクリル系樹脂ディスパージョン(C)に用いるビニル系重合体の水性樹脂分散体(c1)は、非官能性の(メタ)アクリル酸エステルおよび/または芳香族ビニル系単量体と、ポリエチレングリコール基を有する単官能性不飽和単量体と、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸とを含有する。
水性樹脂分散体(c1)に用いる非官能性の(メタ)アクリル酸エステルは、得られる塗膜の耐水性、耐薬品性および耐候性を向上するための成分であり、炭素数が4〜12の炭化水素基を有する。炭素数が12を超えると得られる塗膜の基材付着性が低下する傾向がある。
前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えばn−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記芳香族ビニル系単量体としては、例えばスチレン、ビニルトルエン、p−tert−ブチルスチレンなどが挙げられ、塗膜の耐薬品性などを向上させるために、必要に応じて使用される。芳香族ビニル系単量体の全単量体中の含有量は、得られる塗膜の諸物性のバランスを考慮して好ましくは40質量%未満である。(メタ)アクリル酸エステルおよび/または芳香族ビニル系単量体の含有量は、全重合性不飽和単量体中で65質量%以上である。
ポリエチレングリコール基を有する単官能性不飽和単量体は、水性樹脂分散体(c1)の親水性、水分散性、顔料分散性および保水性を向上させ、得られる塗膜の表面乾燥性を遅らせる成分である。前記単官能性不飽和単量体としては、例えばポリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、その末端水酸基をメトキシ基やエトキシ基などのアルコキシル基とした化合物が挙げられる。具体例としては、ブレンマーPME400、PME4000、AE350、PE350(以上、いずれも日油(株)社製)、NKエステルM−90G、M−230G(以上、いずれも新中村化学工業(株)社製)、NFバイソマーS−10W、S−20W、MPEG350MA、PEM6E(以上、いずれも第一工業製薬(株)社製)などが挙げられる。ポリエチレングリコールの分子量は特に限定されるものではないが、好ましくはエチレンオキサイド付加物が3〜50モルである。3モル未満では親水性、顔料分散性および保水性を向上させる効果が低い傾向があり、50モルを超えると得られる塗膜の基材付着性が低下する傾向がある。
前記α,β−エチレン性不飽和カルボン酸は、親水性、水分散安定性および顔料分散性を向上させ、得られる塗膜の基材付着性を付与するための成分であり、例えば(メタ)アクリル酸や、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸などの不飽和ジカルボン酸;これらジカルボン酸のモノアルコール・エステルなどが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記ポリエチレングリコール基を有する単官能性不飽和単量体と、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸との使用量は、得られる塗膜の耐水性および耐アルカリ性を考慮して、全単量体中に好ましくは3〜6質量%である。3質量%未満では樹脂の水分散性が低下する傾向があり、6質量%を超えると得られる塗膜の親水性が高くなり、耐水性が低下する傾向がある。
また、ポリエチレングリコール基を有する単官能性不飽和単量体/α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の質量比は、1〜5の範囲内であることが好ましい。前記質量比が1未満では得られる塗料の保水性が不足する傾向があり、質量比が5を超えると樹脂の顔料分散性や、得られる塗料の基材付着性が低下する傾向がある。
水性樹脂分散体(c1)の固形分酸価は特に限定されるものではないが、塗膜の耐水性、耐アルカリ性および基材付着性の観点から、好ましくは3〜18mgKOH/gであり、より好ましくは6〜15mgKOH/gである。
その他、共重合可能な重合性不飽和単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレートなどの炭素数が3以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ベオバ(オランダ国シェル社製のバーサチック酸ビニルエステルの商品名)などのビニルエステル;パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジ−パーフルオロシクロヘキシルフマレートなどのパーフルオロアルキル基含有単量体;(メタ)アクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニルなどの(ハロゲン化)オレフィン;グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのアミド結合含有単量体;(メタ)アクリロイロキシアルキルアッシドフォスフェート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アルコキシ化ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジ−2−ヒドロキシエチルフマレート、分子量が250未満のポリエチレングリコール基を有するポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシルジメタノールモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。具体例としては、プラクセルFM、FEモノマー(以上、いずれもダイセル化学工業(株)製のε−カプロラクトン付加モノマーの商品名)などが挙げられる。
これらの共重合性不飽和単量体は、得られる塗膜の硬さや顔料分散性および基材付着性の向上を目的として、全単量体中に32質量%以下の量で使用される。
水性樹脂分散体(c1)の分子量は、得られる塗膜の耐久性と造膜性とのバランスや、水性樹脂分散体の粘度を考慮してゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量に基づいて数平均分子量が8,000〜20,000であり、好ましくは15,000〜50,000である。
また、水性樹脂分散体(c1)の重合方法は特に限定されるものではないが、後述する水溶性の有機溶剤(c2)の存在下で溶液重合させ、水中に分散させるか、有機溶剤(c2)と水との共存下で分散重合させることが好ましい。
水性樹脂分散体(c1)のガラス転移温度(Tg)は特に限定されるものではなく、得られる塗膜の耐汚染性、耐水性および靱性を考慮して、非架橋系塗料の場合の理論Tgは、好ましくは40〜80℃であり、ポリイソシアネート化合物併用型の架橋系塗料の場合の理論Tgは、好ましくは10〜60℃である。
水性樹脂分散体(c1)中のカルボキシル基は、塗料の安定性および顔料分散性の観点から揮発性の塩基性物質で中和されることが好ましい。前記塩基性物質としては、例えばアンモニア、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールなどが挙げられる。
アクリル系樹脂ディスパージョン(C)に用いる有機溶剤(c2)は、アクリル系樹脂ディスパージョン(C)を水相に分配させるものである。有機溶剤(c2)は、水性樹脂分散体(c1)の造膜性を向上させると共に、塗膜の乾燥時に塗膜表面の乾燥を遅らせ、さらに水と混合させることによって、得られる塗料の表面張力を下げて、顔料の分散性や、塗料の基材に対する濡れ性を向上させ、塗装作業性および塗膜の基材付着性を向上させる。
有機溶剤(c2)の親水性は、20℃での水の溶解度が100以上である。水の溶解度が100未満では塗膜表面の乾燥が早まる傾向がある。また、有機溶剤(c2)の沸点は、常圧において130〜220℃である。沸点が130℃未満では塗膜の乾燥過程で水と共に揮散しやすく塗膜の平滑性が得られなくなる傾向があり、沸点が220℃を超えると塗膜に有機溶剤(c2)が残存しやすい傾向がある。
有機溶剤(c2)としては、例えば3−メトキシブタノール、3−メトキシ−3−メチルブタノール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ(n−もしくはiso−)プロピルエーテル、エチレングリコールモノ(n−、iso−またはtert−)ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ(n−またはiso−)プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ(n−、iso−またはtert−)ブチルエーテル、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコールメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
有機溶剤(c2)の使用量としては、水性樹脂分散体(c1)の固形分100質量部に対して、20質量部以上使用することが好ましい。20質量部未満では有機溶剤(c2)の使用の効果が十分ではないからである。アクリル系樹脂ディスパージョン(C)中の有機溶剤(c2)の含有量は、塗料の引火燃焼などの諸災害防止や、環境汚染防止対策などの観点から15質量%以下であり、好ましくは12質量%以下である。15質量%を超えると乾燥性が低下する傾向があり、環境負荷が大きくなる傾向がある。なお、アクリル系樹脂ディスパージョン(C)中には、有機溶剤(c2)以外の有機溶剤をその目的に応じて併用することができる。
水性樹脂分散体(c1)は、水酸基を導入してポリイソシアネート系架橋剤と組み合わせる架橋系塗料とすることが、耐候性、耐水性、耐汚染性および耐溶剤性を向上させることができる点で好ましい。水性樹脂分散体(c1)中への水酸基の導入方法としては、水酸基含有の重合性単量体を共重合させる方法が好ましい。
また、ポリイソシアネート系架橋系塗料を調製するために用いるポリイソシアネート化合物としては、例えばトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4(または2,6)−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルジイソシアネート)、1,3−(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどの脂環式系イソシアネート;上記ジイソシアネートと、エチレングリコール、ポリエーテルポリオール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリカプロラクトンポリオールなど)、トリメチロールエタンまたはトリメチロールプロパンなどの多価アルコール、イソシアネート基と反応する官能基を有する低分子ポリエステル樹脂、アクリル系共重合体、これらと水との付加物;ビュレット体などが挙げられる。
その具体例としては、バーノックD−750、D−800、DN−950、DN−901S(以上、いずれもDIC(株)製)などが挙げられる。また、これらの化合物を乳化分散させて使用することができる。さらに、水溶性または水分散性を有するポリイソシアネート化合物、例えばBAYHYDUR LS−2980、LS−2032(以上、いずれもドイツ国バイエル社製)、アクアネート100、110、200または210(以上、いずれも日本ポリウレタン工業(株)製)などの水性ポリイソシアネート化合物を使用することができる。
上記ポリイソシアネート架橋系の場合には、水性樹脂分散体(c1)の固形分の水酸基価は、塗膜の諸物性を考慮して30〜120であり、好ましくは50〜100である。
ポリイソシアネート化合物(c−3)と、水性樹脂分散体(c1)との配合比としては、NCO基/OH基なる当量比で0.5〜2であり、好ましくは0.8〜1.3である。
上述したようなアクリル系樹脂ディスパージョン(C)の具体例としては、ウォーターゾールACD−1110(DIC(株)製)などが挙げられる。
顔料(D)
本発明に用いる顔料(D)は、主として強度と乾燥性のバランスに優れた塗膜を形成するために水系塗料に配合される。顔料(D)としては、二酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック、シアニンブルー、シアニングリーンなどの着色顔料;炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム、クレーなどの体質顔料などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、顔料(D)は、リン酸亜鉛、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウムなどの防錆顔料を用いることが好ましい。なかでも防錆性能に優れるリン酸亜鉛およびリン酸カルシウムを用いることが好ましい。リン酸亜鉛の具体例としては、LFボウセイP−W−2、LFボウセイD−1、LFボウセイD−2、LFボウセイZP−S1、LFボウセイZP−HS、LFボウセイP−WF(以上、いずれもキクチカラー(株)製)や、EXPERT NP−500、EXPERT NP−520、EXPERT NP−530(以上、いずれも東邦顔料工業(株)製)などが挙げられる。リン酸カルシウムの具体例としては、LFボウセイCP−Z(キクチカラー(株)製)、EXPERT NP−1000、EXPERT NP−1007、EXPERT NP−1020C、EXPERT NP−1055C(以上、いずれも東邦顔料工業(株)製)、プロテクスYM−60、プロテクスYM−70(以上、いずれも太平化学産業(株)製)などが挙げられる。
顔料(D)中の防錆顔料の含有量は特に限定されないが、2〜40質量%が好ましく、10〜15質量%がより好ましい。2質量%未満では防錆性能の向上が得られない傾向があり、40質量%を超えると貯蔵安定性が低下し、経済性も考慮すると適さない。
水系塗料には、その他必要に応じてシリコーンや有機高分子からなる消泡剤;シリコーンや有機高分子からなる表面調整剤;アマイドワックス、有機ベントナイトなどからなる粘性調整剤(タレ止め剤);シリカ、アルミナなどからなる艶消し剤;ポリカルボン酸塩などからなる分散剤;ベンゾフェノンなどからなる紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、フェノール系などの酸化防止剤;ワックスなど、公知の添加剤を用いることができる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらは水系塗料の固形分中に20質量%未満、好ましくは10質量%未満の配合割合で添加することができる。
[鋳鉄管外周面の塗装]
本発明では、図1の符号Fで示す鋳鉄管外周面1bは、従来公知の方法で塗装を行ってもよく、特開2011−209967号公報に記載の方法で塗装を行ってもよい。従来公知の方法で塗装を行う場合は、管体p受口2内面2aの塗装の前後に行うとよい。また、特開2011−209967号公報に記載の方法で塗装を行う場合は、鋳鉄管外周面1bと受口内面2aの塗装を同時に行ってもよい。
本発明の受口内面に塗膜を有する鋳鉄管pは、下塗りであるジンクリッチプライマや粉体塗装との密着性に優れることから、安定した品質を有する。また、受口内面の塗膜は溶剤系プライマの使用を最小限に抑えたものであるため、溶剤臭がほとんどなく、環境負荷が小さい。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
実施例および比較例で使用した成分を下記に示す。
(ジンクリッチプライマ)
・大日本塗料(株)製のクリモトコートWZ(水系ジンクリッチプライマ、JIS K 5552規格品、固形分86%)
(粉体塗装)
・大日本塗料(株)製のV−PET#1600クリモトグレーF(エポキシ樹脂粉体塗料、JWWA G 112規格品、粉末)
(溶剤系プライマ)
・溶剤系プライマA:大日本塗料(株)製のクリモトコートNT#100新H(溶剤系二液性エポキシ樹脂塗料、JWWA K 139規格品、固形分49%)
・溶剤系プライマB:日本ペイントインダストリアルコーティングス製のクリモトコートAC−1(溶剤系アクリル樹脂塗料、JWWA K 139規格品、固形分60%)
(水系塗料)
・製造例1で製造した水系塗料
製造例1
水性分散体として、エポキシエステル樹脂(A):ウォーターゾール EPD−5560(DIC(株)製)を固形分で10質量部、アクリルエマルジョン(B):ボンコート EC−740EF(DIC(株)製)を固形分で10質量部、およびアクリルディスパージョン(C):ウォーターゾール ACD−1110(DIC(株)製)を固形分で80質量部を併せて樹脂成分とし、水系塗料全体に対して樹脂成分45質量%、防錆顔料であるリン酸カルシウム20質量%と体質顔料(硫酸バリウムおよびタルク)35質量%となるように混合し、水系塗料を製造した。なお、顔料体積濃度PVCは35%であった。
実施例1〜4および比較例1および2
下塗り加工として上記水系ジンクリッチペイントで鋳鉄管(φ250×5000mm)受口内面の受口端から吹き付け塗装をおこない、約20μmの膜厚のジンクリッチプライマ層(第1の層)を形成した。表1中、下塗り加熱ありとしたのは、ジンクリッチプライマ塗装後にジンクリッチプライマ層を150℃以上に加熱したことを示す。つぎに、上記エポキシ樹脂粉体塗料にて粉体塗装をおこない、約150μmの粉体樹脂塗膜(第2の層)を形成した。なお、エポキシ粉体樹脂塗装前に鋳鉄管を270〜330℃まで加熱した。その後、上記水系ジンクリッチプライマとエポキシ樹脂粉体塗料とが塗装された境界領域に、該境界を中心に含む幅約40mmの領域に溶剤系プライマを塗装して第3の層を形成した(20μm)。ついで上記水系塗料を受口内面全体に塗装し、約80μmの膜厚の水系塗料層(第4の層)を形成した。
(塗膜の密着性の評価)
実施例および比較例で得られた塗膜の密着性について、長さ300mmに切り出した鋳鉄管の受口部分を円周方向に4等分に切断し、試験片の受口内面の中央部(図1におけるD領域を含む部分)において、JIS K 5600−5−6クロスカット法に準拠して密着性評価を行った。具体的には、塗装面にカッターにより2mm幅で碁盤目の切り込みを入れて25個のマスをつくり、セロハンテープを用いて剥離試験を行い、残存した碁盤目の状態で次に示す分類に分けた。また、それぞれ試験は2回行った。
<試験結果の分類>
分類0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない。
分類1:カットの交差点における塗膜の小さなはがれ。
クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
分類2:カットがクロスの縁に沿って、および/または交差点においてはがれている。
クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
分類3:塗膜がカットの縁に沿って、部分的または全面的に大はがれを生じており、および/または目のいろいろな部分が、部分的または全面的にはがれている。
クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。
分類4:塗膜がカットの縁に沿って、部分的または全面的に大はがれを生じており、および/または数箇所の目が、部分的または全面的にはがれている。
クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に35%を上回ることはない。
分類5:分類4でも分類できないはがれ程度のいずれか
結果は、表1に以下の三段階評価により示す。なお、○が目標性能である。
○:分類0〜1
△:分類2
×:分類3〜5
表1から、本発明の受口内面塗装においては、ジンクリッチプライマ層とエポキシ樹脂粉体塗料層との上塗りとして、最外層に所定の水系塗料を用いる場合、ジンクリッチプライマとエポキシ樹脂粉体塗料との境界を含む領域(例えば図1における領域D)に、溶剤系プライマを介して水系塗料が塗装されている実施例1〜4は、溶剤系プライマを介さない比較例1および2に比べて、より高温時の密着性に優れていることがわかる。