本発明は、DNA損傷および/または細胞老化に関連する症状を処置または予防するための、より詳細には、DNA損傷関連疾患または障害、および加齢に関連する疾患または障害、とりわけ神経変性障害の予防および/または処置のための、ホメオタンパク質、または該タンパク質をコードする組換えベクターの使用に関する。特に、本発明は、パーキンソン病の処置におけるEngrailedの使用に関する。
加齢過程の研究は重要である。その理由として、一つには、多くの疾患または症状、例えば、いくつか挙げると、癌、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中、緑内障、心血管疾患が、高齢者の間でより多く見られ、これらの多くは、有効な予防法または処置法が未だにないからである。莫大な文献が加齢過程の理解に寄与してきたが、当該過程を完全に理解することは依然として大きな課題である。世界中の高齢者の人口増加、およびそれに伴う健康管理の負担及び費用の増加を考えると、加齢に関連する疾患または障害の予防または処置用の老化防止剤の有効な発見に導く加齢過程の研究が、ますます重要になっている。
細胞のDNAは、外因性および内因性の遺伝毒性ストレス(例えば、酸化ストレス、有毒な副産物、ミトコンドリア機能の低下)による、絶え間のない脅威下にあり、当該ストレスは、塩基の修飾または誤取込みによってDNAを修飾して、DNA損傷をもたらす。DNA損傷は、一本鎖の切断および二本鎖の切断等の、DNA構造の物理的異常である。DNA損傷は、特定の酵素によって認識され得るので、DNA損傷応答(DDR)によって正確に修復され得る。この天然のDNA修復能力が喪失すると、細胞の機能不全および細胞死に至る虞がある遺伝的不安定性を生じる。DNA損傷がクロマチン変化(これ自体、DNA修復機構へのアクセスを与えるのに必要である)を誘導するので、クロマチンリモデリング経路およびDDR経路が相互に関連していることが、さらに示されている(Soria et al.,2012,Mol Cell 46,722−734)。
DNA損傷の蓄積が、加齢の過程に、そして、運動失調、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、およびパーキンソン病等の神経変性障害を含む、加齢に関連する疾患の発症に関連付けられている(Canugovi et al.,2013,12,578−587およびMadabhushi et al.,2014,Neuron 83,266−282)。
加えて、虚血およびアルツハイマー病等の神経変性障害において、ニューロンは、サイクリン−A等の細胞周期マーカーを発現する、異常な細胞周期活性を呈し、そして程度の限られたDNAリモデリングを経験する。この挙動は、ヒトではニューロンが、発達中に最終的に分化して、これらの事象の発症前の数十年間、休止したままであることを考慮すると、注目に値する。基本的な機構はあまり理解されていないが、これらの活性が、ニューロン死において、早期に貢献する役割を果たすことを、複数の系列の証拠が示唆している(Andorfer et al.,2005,J.Neurosci.,1,25,5446−54)。
前記DNA損傷、および細胞周期への再進入が、神経疾患でのアポトーシスにおける共通した経路を構成し得ることがさらに示されている(Kim and Tsai,2009,Ann N Y ACAD Sci.,1170,674−9またはPizarro et al.,2009,Free Radic.Res.,43,985−994)。
したがって、DNA修復を促進し、DNA損傷および/もしくは細胞の老化に関連する障害を予防かつ/または処置することができ、かつ/または細胞周期を調節することができる新しい治療薬の開発が、強く必要とされている。
ホメオタンパク質、またはホメオドメインタンパク質は、形態形成に関与する細胞の移動過程および分化過程において主要な役割を果たす転写因子である。これは、ヘリックス/ターン/ヘリックス構造を有するDNA結合ドメインであるホメオドメインの60アミノ酸の配列の存在によって特徴付けられる。ショウジョウバエ属(Drosophila)のアンテナペディアタンパク質の単離ドメインは、培養中のニューロンの膜を横切って、核内に蓄積して、神経突起成長を促進することが示されている(欧州特許第0485578号明細書)。ホメオドメインは、高度に保存されており、そして内在化(internalization)特性を多数のホメオタンパク質に付与する(Spatazza et al.,2013,Pharmacol.Rev.65,90−104)。
Engrailedタンパク質(Engrailed−1およびEngrailed−2)は、類似の生物学的活性を有するホメオタンパク質であり、以降、総括的用語Engrailed(ヒトについてはEN、またはマウスについてはEn1/2)で総称する。新生児および成体では、Engrailedは、黒質緻密部(SNpc、パーキンソン病で変性する)および腹側被蓋野(VTA)を含む、小脳顆粒細胞および中脳ドーパミン作動性(DA)核内で発現される。En1/2は、中脳の発達、中脳内の、中脳ドーパミン作動性(mDA)ニューロンの発達において重要な役割を果たす(Joyner,1996,Trends Genet 12,15−20)。En1/2はまた、中脳の腹側部におけるSNpcおよびVTAに位置する成体mDAニューロンの生存において重複した役割を果たす(Alberi et al.,2004,Development 131,3229−3236)。このため、パーキンソン病におけるDAニューロンの喪失の予防または処置のために提案された。国際公開第2013/128239号パンフレットにおいて、中脳内注入によるEn1/2の局所投与により、DAニューロンによるDA合成および関連する運動活性が増大することが報告された。Prochiantz et al.,2011,FEBS Letters,278,52、Abstract, Brunet et al.,Nature 438 :94−98,2005およびAlvarez−Fisher et al.,Nature Neurosci 14:1260−1266,2011は、Engrailedが転写因子であるだけでなく、核内で転写されるミトコンドリアmRNAの翻訳を増強する翻訳レギュレータであることを報告している。そして、Engrailed形質導入が、ミトコンドリア複合体Iの2つのタンパク質、Ndufs1およびNdufs3の翻訳を上方制御し、かつATP合成を増大させることが示された(Alvarez−Fisher et al.,Nature Neurosci 14:1260−1266,2011、Stettler et al.2012も参照)。また、国際公開第2007/099227号パンフレットにおいて、マウスへのEn1/2の全身投与が、線条体におけるDA代謝回転の増大を誘導し、これは、ドーパミンレベルを変更せずに、DA代謝産物である3,4−ジヒドロキシフェニル酢酸(DOPAC)の産生の増大によって反映されることが示されている。
Otx2(orthodenticle homolog 2)は、ビコイド型ホメオドメインを含有する別のホメオタンパク質である(Simeone et al,1993,EMBO J 12,2735−2747)。これは、Otxタンパク質ファミリに属し、脳胚形成中に基本的な役割を果たす(Acampora et al,1995;Simeone et al,2002)。また、Otx2は、網膜の形成、ならびに成体網膜神経節細胞の生存および生理に関与することも示されている(Bernard et al,2013;Torero Ibad et al,2011)。ゆえに、インビトロ培養での成体網膜神経節ニューロン(RGC)の生存を向上させるための、そしてまた、RGCの変性をインビボで予防または処置するための、ビコイドファミリの、特にOtx2等のOtxファミリのホメオタンパク質の使用が提案された(国際公開第2009/106767号パンフレット)。
本発明者らは今回、ホメオタンパク質が、DNA損傷およびクロマチンリモデリングから細胞を保護し、DNA鎖の切断数を減少させ、核および核小体の全ヘテロクロマチンマークを回復させて、細胞周期を調節し、かつ老化様興奮毒性(アポトーシスを含む)から細胞を保護することができることを示した。特に、本発明者らは、Engrailedが、SNpc領域に投与された場合に、強い酸化ストレスによって起こる細胞死に至る損傷を修復することができることを示した。特に、本発明者らは、急性酸化ストレスのモデルにおいて、ヘテロクロマチンマークを回復させる(核小体の完全性が挙げられる)ことによって、そして二本鎖切断を消滅させることによって、抗アポトーシス経路を活性化して、長期生存を促進する。これらの結果により、ホメオタンパク質、特にEngrailedを、DNA損傷が生じる病理、例えばパーキンソン病に用いることを提唱することができる。
本発明によれば、用語「DNA損傷」は、DNA損傷、DNA鎖の切断(一本鎖および二本鎖)、ならびに核および核小体のヘテロクロマチン崩壊をまとめて網羅する。
欧州特許第0485578号明細書
国際公開第2007/099227号パンフレット
国際公開第2009/106767号パンフレット
Soria et al.,2012,Mol Cell 46,722−734
Canugovi et al.,2013,12,578−587
Madabhushi et al.,2014,Neuron 83,266−282
Andorfer et al.,2005,J.Neurosci.,1,25,5446−54
Kim and Tsai,2009,Ann N Y ACAD Sci.,1170,674−9
Pizarro et al.,2009,Free Radic.Res.,43,985−994
Spatazza et al.,2013,Pharmacol.Rev.65,90−104
Joyner,1996,Trends Genet 12,15−20
Alberi et al.,2004,Development 131,3229−3236
Prochiantz et al.,2011,FEBS Letters,278,52
Abstract, Brunet et al.,Nature 438 :94−98,2005
Alvarez−Fisher et al.,Nature Neurosci 14:1260−1266,2011
Stettler et al.2012
Simeone et al,1993,EMBO J 12,2735−2747
Acampora et al,1995;Simeone et al,2002
Bernard et al,2013
Torero Ibad et al,2011
したがって、本発明は、DNA損傷および/または細胞老化の処置または予防のための少なくとも1つのホメオタンパク質、またはそのペプチド誘導体の使用に関する。本発明はさらに、DNA損傷および/または細胞老化に関連する症状の処置または予防のための、より詳細には、DNA損傷関連疾患または障害、および加齢に関連する疾患または障害の予防および/または処置のための少なくとも1つのホメオタンパク質、またはそのペプチド誘導体の使用に関する。
これ以外にも、本発明は、DNA損傷および/または細胞老化の処置または予防のための、そしてDNA損傷および/または細胞老化に関連する症状の処置または予防のための、より詳細には、DNA損傷関連疾患または障害、および加齢に関連する疾患または障害の予防および/または処置のための前記タンパク質またはペプチドをコードする組換えベクターの使用に関する。
本明細書中で用いられる用語「ホメオタンパク質」および「ホメオドメインタンパク質」は、同義語であり、当該技術においてこれらの名称で一般的に知られている遺伝子産物、タンパク質、およびポリペプチドを指す。当該用語は、見出される場合には、あらゆる生物、特に動物、好ましくは脊椎動物、より好ましくは、ヒト以外の哺乳動物を含む哺乳動物、さらにより好ましくはヒトの遺伝子産物、タンパク質、およびポリペプチドを包含する。より詳細には、「ホメオタンパク質」は、ホメオドメインを含むタンパク質に関する。ホメオタンパク質として、天然ホメオタンパク質および組換えホメオタンパク質、または合成ホメオタンパク質が挙げられる。
本発明は、天然のホメオタンパク質(対立遺伝子体を含む)、ならびにその天然に存在しない変異体、合成ホメオタンパク質、断片、ならびにホメオタンパク質、その断片または変異体の全てまたは一部を含む融合タンパク質を包含する。好ましくは、本発明のホメオタンパク質は、完全長のホメオドメインを含む。特定の実施形態によれば、本発明によるホメオタンパク質は、転写リプレッサドメインに融合した単離ホメオドメイン(融合タンパク質)を、または場合によってはアクチベータドメインに融合した単離ホメオドメインを含む。リプレッサドメインまたはアクチベータドメインは、ホメオドメインと同じタンパク質、ホメオタンパク質ファミリの別のタンパク質、またはホメオタンパク質ファミリに由来しないタンパク質に由来してよい。融合タンパク質は、完全長のホメオタンパク質とは異なる。
集団中に存在し得るホメオタンパク質実体の天然に存在する対立遺伝子変異体に加えて、当業者であれば、変化(すなわち、1つまたは複数のアミノ酸の1つまたは複数の欠失、付加、および/もしくは置換)が、ランダムな突然変異誘発、または標的突然変異誘発をもたらす古典的技術または組換え技術を用いて、突然変異によって導入され得ることをさらに認識するであろう。本発明での使用に適した変異体は、好ましくは、対応する天然のホメオタンパク質のアミノ酸配列との相同性の程度が高いアミノ酸配列がある。一実施形態において、本発明で用いられる変異型ホメオタンパク質のアミノ酸配列は、対応する天然の配列と少なくとも70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約97%、さらにより好ましくは少なくとも約99%同一である。
アミノ酸(または核酸)配列間の同一性パーセントは、当業者に知られている標準的な方法を用いて判定され得る。例えば、2つのアミノ酸配列間の相同性のパーセンテージを判定するために、配列は、最適な比較のためにアラインされる。次いで、対応するアミノ酸位置のアミノ酸残基が比較される。最適なアラインメントのために、アミノ酸配列の一方または双方にギャップが導入され得、そして比較のために、非相同配列が無視され得る。第1の配列中のある位置が、第2の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基によって占有されている場合、これらの配列はその位置にて同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、最適なアラインメントのために導入されるギャップの数、および各ギャップの長さを考慮した、配列によって共有される同一位置の数の関数である。2つの配列間の配列の比較、ならびに同一性パーセントおよび類似性パーセントは、数学的アルゴリズムを用いて判定され得る。
本発明での使用に適したホメオタンパク質変異体は、対応する天然ホメオタンパク質に関して、生物学的に活性であり、かつ本明細書中に記載される活性の少なくとも1つを保持する。天然のホメオタンパク質の所与の機能が、例えば生物学的活性の低下を示す変異体により、ある程度正または負に影響され得るが、好ましくは、DNA損傷および/またはクロマチン変化に及ぶ作用は、保存されている。所与の機能に必須であるアミノ酸が、当該技術において知られている方法によって、例えば部位特異的突然変異誘発によって、同定され得る。例えば、機能的変異体の一クラスにおいて、1つまたは複数のアミノ酸残基が、保存的に置換される。「保存的アミノ酸置換」は、天然のポリペプチド中のアミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基と置換される置換である。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリが、当該技術において定義されている。典型的には、置換基が、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu、およびIle;ヒドロキシル残基SerおよびThr;酸性残基AspおよびGlu;アミド残基AsnおよびGin;塩基性残基LysおよびArg;または芳香族残基PheおよびTyrの中で互いに存在する場合、置換が保存的であるとみなされる。
本発明に従って用いられるタンパク質は、当業者に知られている従来の技術によって、特に、適切な細胞系(真核生物または原核生物)での組換えDNAの発現によって、または固相合成もしくは液相合成によって、調製され得る。より詳細には、タンパク質およびその誘導体は、通常、当該タンパク質をコードする配列を含むDNAポリヌクレオチドから生産されて、当業者に知られているあらゆる手段(PCRまたはRT−PCRによる核酸配列の増幅、相同プローブとのハイブリダイゼーションによるゲノムDNAライブラリのスクリーニング、または全体的もしくは部分的化学合成が挙げられる)によって、得られる。組換えベクターは、当該技術において知られている従来の組換えDNA技術および遺伝子工学技術によって構築されて、宿主細胞中に導入される。DNAポリヌクレオチドは、真核生物または原核生物の発現ベクター中にクローニングされ、そして、組換えベクターにより改変された細胞内で産生されたタンパク質は、あらゆる適切な手段によって、特にアフィニティクロマトグラフィによって精製される。ペプチドおよびその誘導体は、通常、Merrifield et al.(J.Am.Chem.Soc,1964,85:2149−2154)によって最初に記載されたFmoc技術に従って固相合成されて、逆相高速液体クロマトグラフィによって精製される。
より好ましい実施形態によれば、当該用語は、以下のアミノ酸配列(ホメオドメイン)を含むタンパク質およびポリペプチドを示す:
RRRKRTA−YTRYQLLE−LEKEFLF−NRYLTRRRRI ELAHSL−NLTERHI KIWFQN−RRM K−WKKEN
[典型的な挿入部位が、ダッシュと共に示される](配列番号1)(http://homeobox.biosci.ki.se/参照)。
本発明に用いられ得るホメオタンパク質の非限定的な例として、成体ニューロンの異なるサブセットにおいて発現される全てのホメオタンパク質、例えば、Engrailedタンパク質(Engrailed−1またはEngrailed−2)、ビコイドファミリ、特にOtx2のようなOtxサブファミリ由来のホメオタンパク質、pairedファミリ(Pax)、Lhxファミリ由来のタンパク質、例えばLhx9、およびGbx2が挙げられる。
ホメオタンパク質の遺伝子配列および推定されるアミノ酸配列が、当該技術において周知であり、配列データベース内で入手可能である。
例示的なEn1/2タンパク質またはポリペプチドとして、マウスEn1/2タンパク質、または一次アミノ酸配列(配列番号2):musEn1:NP_034263(401aa)
MEEQQPEPKSQRDSGLGAVAAAAPSGLSLSLSPGASGSSGSDGDSVPVSPQPAPPSPPAAPCLP PLAHHPHLPPHPPPPPPPPPPPPQHLAAPAHQPQPAAQLHRTTN FFIDN ILRPDFGCKKEQPLP QLLVASAAAGGGAAAGGGSRVERDRGQTGAGRDPVHSLGTRASGAASLLCAPDANCGPPDGS QPATAVGAGASKAGNPAAAAAAAAAAAAAAVAAAAAAASKPSDSGGGSGGNAGSPGAQGA KFPEHNPAI LLMGSANGGPVVKTDSQQPLVWPAWVYCTRYSDRPSSGPRTRKLKKKKNEKEDK RPRTAFTAEQLQRLKAEFQANRYITEQRRQTLAQELSLNESQI KIWFQN KRAKIKKATGI KNGLAL H LM AQG LY N H STTTVQD KD ES E
を有するポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
例示的なGbx2タンパク質またはポリペプチドとして、マウスGbx2タンパク質、または一次アミノ酸配列(配列番号3):musGbx2:NP_034392(最長変異体、348aa)
MSAAFPPSLMM MQRPLGSSTAFSI DSLIGSPPQPSPGHFVYTGYPM FM PYRPWLPPPPPPPP ALPQAALQPALPPAHPHHQI PSLPTGFCSSLAQGMALTSTLMATLPGGFSASPQHQEAAAARK FAPQPLPGGGN FDKAEALQADAEDGKAFLAKEGSLLAFSAAEAVQASLVGAVRGQGKDESKVE DDPKGKEESFSLESDVDYSSDDNLPGQTAHKEEDPGHALEETPQSGGAAGSTTSTGKNRRRRTA FTSEQLLELEKEFHCKKYLSLTERSQIAHALKLSEVQVKIWFQNRRAKWKRVKAGNANSKTGEPS RNPKIWPI PVHVSRFAI RSQHQQLEQARP
を有するポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
例示的なLhx9タンパク質またはポリペプチドとして、マウスLhx9タンパク質、または一次アミノ酸配列(配列番号4):musLhx9:NP_001036042(最長変異型、397aa)
MEIVGCRAENNSCPFRPPAMLFHGISGGHIQGIMEEMERRSKTEARLTKGTQLNGRDAGMPPL SPEKPALCAGCGGKISDRYYLLAVDKQWHLRCLKCCECKLALESELTCFAKDGSIYCKEDYYRRFS VQRCARCHLGISASEMVMRARDSVYHLSCFTCSTCNKTLTTGDHFGMKDSLVYCRAHFETLLQ GEYPPQLSYTELAAKSGGLALPYFNGTGTVQKGRPRKRKSPALGVDIVNYNSGCNENEADHLDR DQQPYPPSQKTKRMRTSFKHHQLRTMKSYFAINHNPDAKDLK
を有するポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
例示的なEn1タンパク質またはポリペプチドとして、ヒトEN1タンパク質、またはGenbank受託番号AAA 53502.2もしくはNCBI NP_001417.3の注釈が付いた一次アミノ酸配列を有するポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
例示的なEn2タンパク質またはポリペプチドとして、ヒトEN2タンパク質、またはGenbank受託番号AAA 53504.2もしくはNCBI NP_001418.2の注釈が付いた一次アミノ酸配列を有するポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
例示的なGbx2タンパク質またはポリペプチドとして、ヒトGbx2タンパク質、またはGenbank受託番号EAW71084.1の注釈が付いた一次アミノ酸配列を有するポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
例示的なLhx9タンパク質またはポリペプチドとして、ヒトLhx9タンパク質、またはGenbank受託番号NP_001014434.1もしくはNP_064589.2の注釈が付いた一次アミノ酸配列を有するポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の好ましい一実施形態によれば、前記ホメオタンパク質は、Engrailedタンパク質(Engrailed−1またはEngrailed−2)、またはその、リプレッサドメインもしくはアクチベータドメインに融合されたホメオドメインを含む融合タンパク質である。融合ドメインは、Engrailedタンパク質、または別のタンパク質、例えば先で定義されたホメオタンパク質由来であってもよい。Engrailedリプレッサドメインは、Engrailed−1アミノ酸配列の1位〜298位に位置するドメイン、またはそのサブドメイン、例えばeh1ドメイン(Engrailed−2アミノ酸配列の46位〜67位)であってもよい。
本発明の別の好ましい実施形態によれば、前記ホメオタンパク質は、Engrailedタンパク質(Engrailed−1またはEngrailed−2)、およびビコイドファミリのホメオタンパク質とは異なる。本発明の別の好ましい実施形態によれば、前記ホメオタンパク質は、先で定義された、リプレッサドメインに融合されたホメオドメインを含む融合タンパク質である。
本発明の別の好ましい実施形態によれば、前記ホメオタンパク質は、脊椎動物のホメオタンパク質である。
本発明に従って用いられるホメオタンパク質または関連するコーディング核酸配列は、DNA損傷、特にDNA鎖切断、特にDNA二本鎖切断(DSB)、形成およびクロマチンリモデリング、特にクロマチン弛緩、とりわけ、ストレス因子または加齢によって誘導されるものから、細胞をインビボで保護することができる。ストレス因子は、特に、酸化ストレスまたは興奮毒性ストレスを指す。
DNA損傷に対するホメオタンパク質の作用は、ニューロンまたは特定のタイプのニューロン(例えば、中脳DAニューロンまたはRGC)に制限されないので、例えば運動ニューロン、線維芽細胞、上皮細胞といった他のタイプの細胞に利用され得る。
本明細書中で用いられる用語「DNA損傷関連障害」は、神経変性障害および神経変性疾患、例えば癌、老化、および、酸化ストレス、発癌物質、毒素、フリーラジカル(酸素ラジカル等)、またはDNA損傷放射線(電離放射線およびUV放射線等)への曝露に起因する、DNAへの損傷によって引き起こされる他の障害を含む。本発明の実施には機構の理解は必要とされないが、本発明に従うホメオタンパク質の投与は、DNA損傷を防止し、DNA損傷の影響を阻害し、DNA鎖の切断数を減少させ、かつ/またはDNA損傷に対する細胞の修復応答を刺激すると考えられる。
特別な実施形態によれば、DNA損傷は、DNA鎖切断またはDNAの化学修飾(例えばアルキル化)等の染色体機能不全の形態をとり得る。好ましい実施形態によれば、DNA損傷は、一本鎖切断および二本鎖切断が挙げられるDNA鎖切断、好ましくは二本鎖切断を意味する。
好ましい実施形態によれば、用語「DNA損傷関連障害」は、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、およびパーキンソン病と一緒に、運動失調症が挙げられる、神経変性状態に関する。しかしながら、重要な病理学的特徴は、DNA損傷である。ゆえに、DNA損傷を抑制もしくは制限し、かつ/またはDNA鎖の切断量を減少させることで、ニューロン細胞死を減少させ、かつ/またはDNA損傷に関連する神経障害を処置/予防する方法が提供される。
したがって、特別な実施形態によれば、本発明は、ニューロン細胞におけるDNA損傷の抑制用の医薬の製造、およびDNA損傷に関連する神経学的障害の処置のための、少なくとも1つのホメオタンパク質もしくはそのペプチド誘導体、または前記タンパク質/ペプチドをコードする組換えベクターの使用に関する。本発明はさらに、DNA損傷に関連する神経障害の処置の前記方法に関する。
本発明の別の特別な実施形態によれば、前記変性疾患は、神経変性疾患、特にパーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、および眼または耳(すなわち、視覚または聴覚)に影響を及ぼす変性疾患、例えば緑内障である。好ましい実施形態において、前記神経変性障害はパーキンソン病である。
本発明の別の特別な実施形態によれば、前記変性疾患は、特定のあらゆるタイプのニューロンの喪失と関連せず、またはこれに起因しない。例えば、前記変性疾患は、筋ジストロフィまたは早老症からなる群から選択され得る。
別の好ましい実施形態によれば、用語「加齢に関連する疾患または障害」は、例えば、腎機能障害、後弯症、椎間板ヘルニア、虚弱、脱毛、難聴、視力喪失(失明または視力障害)、筋肉疲労、皮膚疾患、皮膚母斑、糖尿病、メタボリックシンドローム、およびサルコペニアを含む。視力喪失は、対象に以前に視力があった場合の、視力の欠如を指す。視力の程度、および視力に基づく視力の喪失を記載するための、様々な尺度が開発されている。また、加齢に関連する疾患および症状として、例えば、以下に限定されないが、以下の症状のうちの1つまたは複数を処置する皮膚疾患が挙げられる:しわ(表面の細かいしわが挙げられる);色素沈着過剰;瘢痕;ケロイド;皮膚炎;乾癬;湿疹(脂漏性湿疹が挙げられる);酒さ;白斑;尋常性魚鱗癬;皮膚筋炎;光線性角化症。
別の特別な実施形態によれば、本発明は、細胞、より詳細には神経細胞中のDNA鎖の切断量を減少させる医薬の製造のための、少なくとも1つのホメオタンパク質またはそのペプチド誘導体の使用に関する。
別の特別な実施形態によれば、本発明は、DNA損傷に関連する疾患または障害、および加齢に関連する疾患または障害の処置および/または予防用の医薬の製造のための、ホメオタンパク質またはそのペプチド誘導体の使用に関し、前記ホメオタンパク質はEngrailedタンパク質であり、DNA損傷に関連する前記疾患または前記障害はパーキンソン病である。
別の特別な実施形態によれば、本発明は、DNA損傷に関連する疾患または障害、および加齢に関連する疾患または障害の処置および/または予防用の医薬の製造のための、ホメオタンパク質またはそのペプチド誘導体の使用に関し、前記ホメオタンパク質はEngrailedタンパク質であり、DNA損傷に関連する前記疾患または前記障害は筋萎縮性側索硬化症である。
別の特別な実施形態によれば、本発明は、DNA損傷に関連する疾患または障害、および加齢に関連する疾患または障害の処置および/または予防用の医薬の製造のための、ホメオタンパク質またはそのペプチド誘導体の使用に関し、前記ホメオタンパク質はGbx2タンパク質であり、DNA損傷に関連する前記疾患または前記障害はハンチントン病である。
別の特別な実施形態によれば、本発明は、DNA損傷に関連する疾患または障害、および加齢に関連する疾患または障害の処置および/または予防用の医薬の製造のための、ホメオタンパク質またはそのペプチド誘導体の使用に関し、前記ホメオタンパク質はGbx2タンパク質であり、DNA損傷に関連する前記疾患または前記障害はパーキンソン病である。
別の特別な実施形態によれば、本発明は、DNA損傷に関連する疾患または障害、および加齢に関連する疾患または障害の処置および/または予防用の医薬の製造のための、ホメオタンパク質またはそのペプチド誘導体の使用に関し、前記ホメオタンパク質はLhx9タンパク質であり、DNA損傷に関連する前記疾患または前記障害はハンチントン病である。
別の特別な実施形態によれば、本発明は、DNA損傷に関連する疾患または障害、および加齢に関連する疾患または障害の処置および/または予防用の医薬の製造のための、ホメオタンパク質またはそのペプチド誘導体の使用に関し、前記ホメオタンパク質はLhx9タンパク質であり、DNA損傷に関連する前記疾患または前記障害はパーキンソン病である。
これ以外にも、本発明は、タンパク質またはペプチドそれ自体ではなく、前記ホメオタンパク質をコードする組換えベクターの使用に関する。本明細書中で用いられる用語「ベクター」は、宿主細胞または宿主生物内の1つまたは複数の核酸分子の送達、増殖、および/または発現を可能にするのに必須の要素を含有するビヒクル、好ましくは核酸分子またはウイルス粒子を指す。当該用語は、種々の宿主細胞または宿主生物(発現ベクター)における維持用ベクター(クローニングベクター)または発現用ベクター、染色体外ベクター(例えば多コピープラスミド)または組込み型ベクター(例えば、宿主細胞ゲノム中に組み込まれて、宿主細胞が複製する場合に核酸分子の更なるコピーを生成するように設計されている)、ならびにシャトルベクター(例えば、原核宿主および/または真核宿主の双方で機能する)およびトランスファベクター(例えば、ウイルスゲノム中に核酸分子を移す用)を含む。本発明の目的のために、ベクターは、天然に存在する遺伝子源のものであってもよいし、合成または人工の遺伝的要素のものであってもよいし、天然および人工の遺伝的要素の一部の組合せのものであってもよい。
本発明の文脈において、用語「ベクター」は、プラスミドベクターおよびウイルスベクターを含むと広く理解されるべきである。本明細書中で用いられる「プラスミドベクター」は、複製可能なDNA構築物を指す。通常、プラスミドベクターは、プラスミドベクターを有する宿主細胞が、対応する選択的薬物の存在下で、これについて、またはこれに対して選択されることを可能にする選択マーカー遺伝子を含有する。多様なポジティブ選択マーカー遺伝子およびネガティブ選択マーカー遺伝子が、当該技術において知られている。実例として、抗生物質耐性遺伝子が、対応する抗生物質の存在下で、宿主細胞が選択されることを可能にするポジティブ選択マーカー遺伝子として用いられ得る。本明細書中で用いられる用語「ウイルスベクター」は、ウイルスゲノムの少なくとも1つの要素を含んで、ウイルス粒子中に、またはウイルス粒子にパッケージングされ得る核酸ベクターを指す。用語「ウイルス」、「ビリオン」、「ウイルス粒子」、および「ウイルスベクター粒子」は、適切な細胞または細胞株中に核酸ベクターが導入された場合に、感染性ウイルス粒子の生成を可能にするのに適した条件に従って形成されるウイルス粒子を指すのに、互換的に用いられる。本発明の文脈において、用語「ウイルスベクター」は、核酸ベクター(例えばDNAウイルスベクター)およびその生じたウイルス粒子を含むと広く理解されるべきである。用語「感染性」は、ウイルスベクターが宿主細胞または生物中に侵入してこれらに感染する能力を指す。ウイルスベクターは、複製可能型または複製選択型であってもよいし(例えば、特定の宿主細胞においてより良好に、または選択的に複製するように操作されている)、複製欠陥または複製障害があるように遺伝的に無能にされていてもよい。本発明の文脈において適切なベクターとして、細菌(例えば、大腸菌(E.coli)、枯草菌(Bacillus subtilis、またはリステリア属(Listeria))等の原核宿主細胞における発現用のバクテリオファージベクター、プラスミドベクター、またはコスミドベクター;酵母(例えば、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、分裂酵母(Saccharomyces pombe)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris))における発現用のベクター;昆虫細胞系(例えばSf9細胞)における発現用のバキュロウイルスベクター;植物細胞系における発現用のウイルスベクターおよびプラスミドベクター(例えば、Tiプラスミド、カリフラワーモザイクウイルスCaMV;タバコモザイクウイルスTMV);ならびに高等真核細胞または高等生物における発現用のウイルスベクターおよびプラスミドベクターが挙げられるが、これらに限定されない。典型的には、そのようなベクターは、市販されており(例えば、Invitrogen、Stratagene、Amersham Biosciences、Promegaその他)、もしくは寄託機関(例えば、American Type Culture Collection(ATCC、Rockville、Md.))から入手可能であり、または当業者が利用可能な、そのようなベクターの配列、組織、および生産方法を記載する多数の刊行物の対象となってきた。適切なプラスミドベクターの代表例として、pREP4、pCEP4(Invitrogen)、pCI(Promega)、pVAX(Invitrogen)、およびpgWiz(Gene Therapy System Inc)が挙げられるが、これらに限定されない。適切なウイルスベクターの代表例が、種々の異なるウイルス(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、麻疹ウイルス、泡沫状ウイルス、アルファウイルス、水疱性口内炎ウイルスその他)から生成される。先に記載される用語「ウイルスベクター」は、ベクターDNA、ゲノムDNA、および生じたそれらのウイルス粒子を包含する。本発明はまた、脂質またはポリマーに複合化されて、粒子構造(例えば、リポソーム、リポプレックス、またはナノ粒子)を形成するベクター(例えばプラスミドDNA)を包含する。本発明によれば、本発明のベクター内に含まれる核酸分子は、宿主細胞または生物における発現に適した形態にあり、これは、核酸分子が、適切な調節配列の制御下に置かれていることを意味する。本明細書中で用いられる用語「調節エレメント」は、核酸またはその誘導体(すなわちmRNA)の複製、転写、スプライシング、翻訳、安定性、および/または輸送が挙げられる、所与の宿主細胞または宿主生物における核酸分子の発現を可能にし、これに寄与し、またはこれを調節するあらゆる要素を指す。当業者であれば、調節配列の選択は、ベクターそれ自体、宿主細胞、所望される発現レベルその他の要因によって決まり得ることを当然理解するであろう。哺乳動物細胞における構成的発現に適したプロモータとして、サイトメガロウイルス(CMV)即時型初期プロモータ、RSVプロモータ、アデノウイルス主要後期プロモータ、ホスホグリセロキナーゼ(PGK)プロモータ、単純ヘルペスウイルス(HSV)−1のチミジンキナーゼ(TK)プロモータ、およびT7ポリメラーゼプロモータが挙げられるが、これらに限定されない。当業者であれば、本発明の核酸分子の発現を制御する調節エレメントはさらに、転写の適切な開始、調節、および/または終結(例えばポリA転写終結配列)、mRNA輸送(例えば核局在化シグナル配列)、プロセシング(例えばスプライシングシグナル)、安定性(例えば、イントロン、ならびに非コーディング5’配列および非コーディング3’配列)、宿主細胞または宿主生物での翻訳(例えば、開始Met、三部分リーダー配列、IRESリボソーム結合部位、Shine−Dalgarno配列その他)、ならびに精製工程(例えばタグ)のための更なる要素を含んでよいことを当然理解するであろう。
別の態様において、本発明は、対象におけるDNA損傷関連障害を処置する方法を提供し、当該方法は、必要な対象に、少なくとも1つのホメオタンパク質もしくはそのペプチド誘導体、または前記タンパク質をコードする組換えベクター、および薬学的に許容可能なビヒクルを含む組成物を投与することを含む。
本明細書中で用いられる「薬学的に許容可能なビヒクル」は、薬学的投与に適合する担体、溶媒、希釈剤、賦形剤、アジュバント、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、吸収遅延剤、ならびに類似物のいずれかおよび全てを含むことが意図される。
本発明の組成物は、適切には、生理学的pH、またはわずかに塩基性のpH(例えば、約pH7〜約pH9)でのヒトの使用に適切であるように、緩衝化される。適切なバッファとして、リン酸バッファ(例えばPBS)、重炭酸バッファ、HEPESバッファおよびPIPESバッファ、ならびに/またはTrisバッファが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の組成物はさらに、ヒトまたは動物の使用に適した希釈剤を含んでもよい。希釈剤は好ましくは、等張性、低張性、または弱い高張性であり、そしてイオン強度が比較的低い。代表的な例として、滅菌水、生理食塩水(例えば塩化ナトリウム)、リンガー溶液、グルコース、トレハロース溶液またはサッカロース溶液、ハンク溶液、および他の生理学的に平衡化された塩水溶液が挙げられる(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,A.Gennaro,Lippincott,Williams & Wilkinsの最新の版参照)。本発明の組成物に含まれる薬学的に許容可能なビヒクルはまた、製造条件下での、そして、凍結温度(例えば、−70℃、−20℃)、冷蔵温度(例えば4℃)、または周囲温度での長期保存(すなわち、少なくとも1ヶ月、好ましくは少なくとも1年間)条件下での安定性の保持を可能としなければならない。所望の特性を与える(例えば、製剤のpH、浸透圧、粘度、透明度、色、無菌性、安定性、溶解速度を修飾または維持し、ヒトまたは動物の生体中への放出または吸収を修飾または維持し、特定の器官(例えば脳)における血液関門を越える輸送または貫通を促進することが挙げられる)ための、更なる薬学的に許容可能な賦形剤が用いられてもよい。
本明細書中に記載されるホメオタンパク質のいずれか1つを含む組成物が、持続放出または徐放(時限放出または制御放出とも呼ばれる)されるように製剤化されてもよい。そのような組成物は、一般に、周知の技術を用いて調製され得、そして例えば、経口、直腸、皮内、鼻腔内、もしくは皮下移植によって、または所望の標的部位への移植によって、投与され得る。持続放出性製剤は、担体マトリックス中に分散した化合物、および/または速度制御膜で囲まれたリザーバ内に含有された化合物を含有してよい。
組成物は、有利には、少なくとももう1つの医薬品、例えば、成長因子、複合糖(グリコサミノグリカン、ポリシアル酸)、サーチュインもしくはサーチュイン活性化剤、抗コリンエステラーゼ、または逆転写酵素インヒビタ、特にヌクレオシド転写酵素インヒビタを含み得る。
これ以外にも、本発明は、癌処置を受けている対象においてDNA損傷関連障害を処置または予防する方法に関する。
本発明はさらに、DNA損傷応答経路、またはクロマチン変化を処置または予防する方法に関する。
本発明はさらに、日光への曝露またはDNAを損傷させる化学物質への曝露に応じたDNA損傷を処置または予防する方法に関する。本発明に従う前記方法は、皮膚老化を軽減し、皮膚癌を予防し、かつ美容的外見を向上させることができる。
本発明はさらに、細胞老化の影響の予防または軽減を必要とする対象に、これを実行する方法であって、予防または軽減を必要とする対象に、少なくとも1つの有効量のホメオタンパク質もしくはそのペプチド誘導体、または前記タンパク質をコードする組換えベクターを投与することを含む方法に関する。本発明に従うホメオタンパク質はまた、自然な加齢過程の一部として生じる、または対象が誘引剤もしくは誘引因子(例えば、放射線照射、化学療法、タバコ喫煙、高脂肪食/高糖食、他の環境因子)に曝露されている場合に生じる「加齢に関連する疾患および障害」または「老化」の処置または予防(すなわち、発生の可能性の低減)に有用であり得る。
医学分野の当業者によって理解される用語「処置する」および「処置」は、対象(すなわち患者)の疾患、障害、または症状の医学的管理を指す。一般に、適切な投与レジメンおよび処置レジメンは、治療的利益および/または予防的利益を提供するのに十分な量のホメオタンパク質を提供する。本明細書中に記載されるホメオタンパク質が投与される対象にとっての治療的利益として、例えば、臨床転帰の向上が挙げられ、目的は、前記疾患に関連する不所望の生理学的変化を予防し、もしくは遅らせること、またはそのような疾患の拡大もしくは重症化を予防し、もしくは遅らせることである。本明細書で議論されるように、1つまたは複数のホメオタンパク質の有効性として、以下に限定されないが、処置されるべき疾患に由来し、もしくはこれに関連する症候の減退、軽減、もしくは緩和を含む有益な、もしくは所望の臨床結果; 症候の発症の低減;生活の質の改善;より長い無病状態(すなわち、疾患の診断に基づいた、対象が症候を示すであろう可能性または傾向の縮小);疾患範囲の縮小;疾患状態の安定化(すなわち、悪化させない);疾患の進行の遅延または緩徐化;疾患状態の緩和または軽減;および、検出可能か検出不能かに拘らない、寛解(部分的寛解か全体的寛解かに拘らない);ならびに/または全生存期間が挙げられ得る。本明細書中に記載されるホメオタンパク質の有効性はまた、対象が本発明に従うホメオタンパク質を受けていない場合に予想される細胞生存と比較した、より詳細にはニューロンの、細胞生存の延長を意味し得る。
処置を必要とする対象として、既に疾患または障害に苦しんでいる対象、ならびに疾患または障害を発症しやすい、または発症するリスクのある対象、および疾患、症状、または障害が予防的に処置されるべき対象が挙げられる。対象は、本発明の方法から恩恵を受けることとなる、疾患または障害を発症する素因があってもよいし、特定の年齢であってもよく、本発明の方法を受けることで、DNA損傷関連疾患もしくは障害、および/または加齢に関連する疾患もしくは障害が挙げられる疾患の発症を遅延させ、または当該疾患の重篤度を引き下げる臨床的利益が得られるであろう。
DNA損傷に関連する疾患もしくは障害、および/または加齢に関連する疾患もしくは障害を処置するための、本発明に従うホメオタンパク質の用量は、対象の状態、すなわち疾患のステージ、疾患によって引き起こされる症候の重篤度、全体的健康状態、ならびに年齢、性別、および体重、ならびに医学分野の当業者に明らかな他の要因によって決まり得る。薬学的組成物は、医学分野の当業者によって決定される、処置されるべき疾患にとって適切な方法で、投与されてよい。DNA損傷に関連する疾患もしくは障害、および/または加齢に関連する疾患もしくは障害を処置するためのホメオタンパク質の使用に関連する、本明細書に、そして先に記載される要因に加えて、ホメオタンパク質の適切な投与期間および投与頻度もまた、患者の状態、患者の疾患の種類および重症度、有効成分の特定の形態、および投与の方法等の要因によって決定され得、または調整され得る。ホメオタンパク質の最適用量が、一般に、実験モデルおよび/または臨床試験を用いて決定され得る。最適用量は、対象のボディマス、体重、または血液量によって決まり得る。効果的な治療を実現するのに十分な最小用量の使用が通常好ましい。本明細書中に記載されるホメオタンパク質の前臨床研究および臨床研究の設計および実施(予防的利益を得るための投与の時期が挙げられる)は、十分に、当業者の技術の範囲内である。2つ以上のホメオタンパク質が投与される場合、各ホメオタンパク質の最適な用量は、いずれかの薬剤が単独の薬剤療法として単独で投与される場合とは異なってよく、例えばその場合よりも少ない。典型的には、前記ホメオタンパク質は、0.001〜100μM、より好ましくは0.005〜100μM、有利には0.005〜10μM、特に有利には0.001〜0.10μMに及ぶ濃度にて用いられてよい。1日に投与されてよいホメオタンパク質の量は、例えば、約0.01mg/kg体重〜100mg/kg(例えば、約0.1〜1mg/kg、約1〜10mg/kg、約10〜50mg/kg、約50〜100mg/kg)であってよい。他の実施形態において、1日に投与されてよいホメオタンパク質の量は、約0.01mg/kg〜1000mg/kg体重、約100〜500mg/kg、または約500〜1000mg/kgである。脳内注射について、ホメオタンパク質は、Rekaik et al.(2015,Cell Reports)に記載されるように、特にEngrailedについて、10pmol〜100pmol、例えば25pmolで構成される用量にて投与されてよい。別の実施形態において、ホメオタンパク質は、特にOtx2について、眼内注射によって投与されてよい。
最適な用量(1日あたり、または1処置コースあたり)は、処置されることになる、DNA損傷に関連する疾患もしくは障害、および/または加齢に関連する疾患もしくは障害について異なり得、そして投与経路および/または治療剤レジメンによって異なり得る。
医薬組成物は、経口経路、非経口経路、および局所経路が挙げられるが、これらに限定されないいくつかの経路による投与用に、製剤化される。薬学的に許容可能な担体として、従来用いられている担体がある。
医薬組成物は、それを必要とする対象に、当業者に知られているいくつかの経路のいずれか1つによって送達され得る。非限定的な例として、組成物は、経口的に、静脈内に、腹腔内に、注入(例えばボーラス注入)によって、皮下に、経腸で、直腸に、鼻腔内に、吸入によって、口腔内に、舌下に、筋肉内に、経皮で、皮内に、局所的に、眼内に、膣に、直腸に、もしくは頭蓋内注射によって、またはそれらのあらゆる組合せによって、送達され得る。特定の実施形態において、先に記載される用量の投与は、静脈内、腹腔内を介して、標的組織もしくは標的器官中に直接的に、または皮下経路を介して、なされる。特定の実施形態において、送達方法として、薬物コーティングステントまたは薬物含浸ステントが挙げられ、薬物は、ホメオタンパク質またはそれをコードする核酸である。
神経変性疾患の処置のために、ホメオタンパク質は、局所的に、特に、標的とされる大脳領域中への注射または注入によって、投与されてよい。ホメオタンパク質はまた、放出制御装置、例えば脳内に移植されたカニューレに連結された浸透圧ミニポンプを用いて、投与されてもよい。
本発明の好ましい実施形態によれば、ホメオタンパク質は、とりわけパーキンソン病の処置のために、SNpc領域中に直接投与される。特に好ましい実施形態において、この手順によって投与されるホメオタンパク質は、Engrailedである。特に好ましい実施形態において、Engrailedの単回注射が、それを必要とする個体に施される。
ゆえに、特定の実施形態において、本発明は、パーキンソン病の処置のための、医薬品としてのEngrailedの使用に関し、Engrailedは、それを必要とする対象のSNpc領域内に一度投与される。
また、ホメオタンパク質の投与は、非薬理学的療法と組み合わされてもよい。例えば、パーキンソン病の処置のために、視床下核刺激と組み合わされてもよい。
特許、刊行物、およびデータベースエントリの、先で引用される開示は全て、そのような個々の特許、刊行物、またはエントリがそれぞれ、具体的かつ個別に示されて、参照によって組み込まれているものとして、それらの全体が参照によって本明細書に具体的に組み込まれる。
先の構成に加えて、本発明はまた、以下の図面を参照して、例示的な実施形態に言及する説明から明らかとなろう、他の構成も含む。
En1+/−マウスにおけるDNA損傷およびヘテロクロマチンマークの発現の変化 (A)DNA損傷群、クロマチンリモデリング群、およびアポトーシス群に属するEn1+/− SNpc TH+ニューロン中の差次的発現遺伝子を、p値によってランク付けする。 (B)wtマウスのSNpc中のTH+ニューロンが、γ−H2AX染色の単一環を示す;En1+/− TH+ニューロンが、核内に散存する更なるγ−H2A病巣を示す。スケールバー、10μm。 (C)SNpcにおいて2つを超えるγ−H2AX病巣を有するTH+ニューロンのパーセンテージは、wtにおける2%から、8週齢のEn1+/−マウスにおける16%に増大する(n=3;Studentのt検定)。En1+/−マウスおよびwtマウスのVTAにおけるTH+ニューロンのγ−H2AX染色は、類似している。各条件で110〜162個のニューロンを数えた。 (D)核小体周囲、そして核周囲のH3K27me3染色が、En1+/−SNpc mDAニューロンにおいて減少する。スケールバー、10μm。 (E)点線に沿って蛍光強度を測定することによって、H3K27me3核小体周囲染色を定量化する(左)。En1+/−マウスにおいて高密度染色を有する細胞のパーセンテージは、低下する(n=3;Studentのt検定;wtマウスおよびEn1+/−マウスにおいてそれぞれ129および159個のニューロンを数えた)(右)。 (F)En1+/− TH+ニューロンにおける核周囲H3K27me3染色が、核ラミナ/核原形質の蛍光強度の低下によって示されるように、減少する(n=3;Studentのt検定;30および30個のニューロンを、偽条件および6−OHDA条件において数えた)。 (G)DAPI高密度領域の表面定量化。頻度分布が、En1+/−マウスにおいて、より小さなDAPI高密度領域へのシフトを示す(n=162〜211;Kolmogorov−Smirnov検定;3頭のwtマウスおよびEn1+/−マウスを分析した)。図S1および表S1も参照。
6−OHDA注射直後のSNpc TH+ニューロン中のDNA損傷およびクロマチン変化 (A、B)wtマウスのSNpc中に注射した6−OHDAは、6時間後に、TH+ニューロンの約25%において、γ−H2AX病巣を出現させる(n=3〜6;Studentのt検定)。En1+/−マウスは、感受性がより高く、ニューロンの50%が、複数のγ−H2AX病巣を示す(n=3〜6;Studentのt検定;130、210、および146個のニューロンを、各条件についてそれぞれ数えた)。スケールバー、10μm。6−OHDA注射は、wtマウスおよびEn1+/−マウスにおいてそれぞれ、TH+ニューロンの約30%および60%の喪失を引き起こす(n=3;Studentのt検定)。注射してない対側を基準とする。各条件において、1534〜2034個のニューロンを数えた。 (C)中脳切片を、γ−H2AX、H3k27me3、およびTHについて染色して、共焦点顕微鏡法によって分析した。核小体周囲、そして核周囲のH3K27me3染色が、6−OHDA注射直後に減少する。注射の6時間後に、マウスを分析した。スケールバー、10μm。 (D)図1E、図1Fのように定量化した核小体周囲、そして核周囲の高密度H3K27me3染色を示すTH+ニューロンのパーセンテージは、6−OHDA注射マウスにおいて、劇的に低下した(左)(n=3;Studentのt検定;148および91個のニューロンを、偽条件および6−OHDA条件でそれぞれ数えた)。TH+ニューロンにおける核周囲H3K27me3染色もまた、6−OHDA注射直後に減少する(右)(n=3;Studentのt検定;40および47個のニューロンを、偽条件および6−OHDA条件でそれぞれ数えた)。 (E)中脳切片を、y−H2AX、ヌクレオリン、およびTHについて染色して、共焦点顕微鏡法によって分析した。偽注射したマウスにおけるヌクレオリン核小体局在化が、6−OHDA注射の6時間後に失われる。NCL、ヌクレオリン。スケールバー、10μm。 (F)核小体ヌクレオリンを有するTH+ニューロンのパーセンテージは、6−OHDA注射直後に有意に低下する(n=3;Studentのt検定;161および97個のニューロンを、偽条件および6−OHDA条件でそれぞれ数えた)。NCL、ヌクレオリン。 (G)qRT−PCRによって分析したpre−45S rRNAは、SNpc精製核中で、6−OHDA注射後に上方制御される(n=3;Studentのt検定)。 (H)ヌクレオリンおよびTHについて染色した中脳切片(1年齢の動物由来)を、共焦点顕微鏡法によって分析した。ヌクレオリンは、wt TH+ニューロンにおいて核小体の局在化を示す一方、En1+/−マウスにおいて、TH+ニューロンの40%が、拡散した染色パターンを示す(矢印)。スケールバー、50μm。点線の矩形領域のより高倍率の画像を、右端のパネルに示す。スケールバー、10μm。核小体ヌクレオリンを有するTH+ニューロンのパーセンテージは、En1+/−マウスにおいて有意に低下した(n=3;Studentのt検定;wtマウスおよびEn1+/−マウスにおいてそれぞれ99および87個のニューロンを数えた)。NCL、ヌクレオリン。図S2も参照。
Engrailedは、TH+細胞を、6−OHDA誘導細胞死から救済する (A)SNpc中に6−OHDAを注射したマウスに、30分後に偽またはEn2を再注射して、24時間後に分析した。偽注射と比較して、En2注射は、同側SNpcにおける6−OHDA誘導TH細胞喪失を防止する。スケールバー、500μm。 (B)En2の保護作用を、注射の6時間、24時間、および7日後の同側SNpc対対側SNpcでのTH+細胞カウントの比率によって、評価した(n=3〜5;Studentのt検定)。 数えたニューロン数は、条件ごとに1670〜2275個に及んだ。 (C)6−OHDA注射マウスにおけるEn2によるTH+ニューロンレスキューは、24時間後にサイクリンAの消失と並行する。スケールバー、100μm。 (D)H3K27me3についての免疫染色が、En2注射後に、段階的回復を示す。核小体ヌクレオリンの回復は、24時間後にほぼ完了する。γ−H2AX病巣を有するTH+ニューロンのパーセンテージは、注射の24時間〜7日後に正常に戻る。各分析について、n=3。一元配置ANOVAに続いてDunett検定を行った(対偽)。数えたニューロン数は、各条件について102〜150個に及んだ。 (E)選択した遺伝子の発現は、注射の6時間後に分析した6−OHDA/偽マウスおよび6−OHDA/En2マウスのSNpcにおいて、アポトーシスおよび細胞周期に関連した(n=5;Studentのt検定)。 (F)Otx2は、TH+ニューロンを、6−OHDA誘導細胞死から保護する。6−OHDA注射の30分後にOtx2を注射して、24時間後にマウスを分析した。En2注射(n=3;Studentのt検定)について、保護作用を評価した。数えたニューロン数は、各条件について1268〜1495個に及んだ。図S3も参照。
RNA−seq分析は、Engrailed抗アポトーシス活性を明らかにする (A、B)DNA損傷、クロマチンリモデリング、アポトーシス、および細胞周期に関連する、6−OHDA対6−OHDA/En2の、SNpc中の差次的発現遺伝子を、p値によってランク付けする。 (C)6−OHDAおよび6−OHDA/En2のSNpcにおける、選択した遺伝子の発現を、qRT−PCRによって確認する(n=5;Studentのt検定)。 (D)左のパネル:6−OHDAおよび6−OHDA/En2の、SNpcにおけるqRT−PCRによって、Gadd45b転写物およびPml転写物を6時間後に測定した(シクロヘキシミド、CHXの注射;n=5;Studentのt検定)。右のパネル:8週齢のwtマウスおよびEn1+/−マウスのSNpc中のGadd45b転写物(n=4;Studentのt検定)。 (E)偽、6−OHDA/偽、および6−OHDA/En2由来の中脳切片を、p−JNKおよびTHについて染色して、共焦点顕微鏡法によって分析した。スケールバー、50μm。点線の矩形のより高倍率の画像を、右端のパネルに示す。スケールバー、10μm。 (F)En2は、p−JNK染色したSNpc TH+ニューロンのパーセンテージを有意に低下させる(n=3;一元配置ANOVAに続くTukeyの多重比較検定;分析したニューロン数は、各条件について227および351個に及んだ)。図S4も参照。
図1に関連する。En1+/−マウスのmDAニューロンにおける遺伝子発現の変化 (A)wtマウスおよびEn1+/−マウス由来のSNpcを、RNA−seq分析のために、レーザで顕微解剖した(laser microdissected)。読取り総数および差次的発現遺伝子総数(p<0.05)を示す。En1+/− SNpc中のEn1発現の減少が、RNA−seqによって確認された。 (B)RNA−seqデータ分析(Pathway Studio)が、wt同腹仔とEn1+/−同腹仔間のDNA損傷およびクロマチンリモデリングに関与するオントロジ遺伝子サブグループにおける有意な富化を明らかにする(p<0.005)。Cell Process Pathwaysを用いた分析はまた、アポトーシス関連遺伝子の差次的発現を示した。 (C)Pathway Studioによる機能実験のEngrailedゲイン由来のRNA−seqデータの分析。富化した遺伝子サブグループ(p<0.01)が示される(n=5)。 (D)wtおよびEn1+/− SNpcの、Pathway StudioによるRNA−seq分析における差次的発現転写因子を、p値によってランク付けする。 (E)DNA損傷、クロマチンリモデリング、およびアポトーシスに関連する選択遺伝子の発現の変化を、6週齢のwtマウスおよびEn1+/−マウス由来のSNpc RNAを用いたqRT−PCRによって確認する(n=3〜6;Studentのt検定)。 (F)SNpcにおいて2つを超えるγ−H2AX病巣を有するTH+ニューロンのパーセンテージは、wtにおける5%から、24週齢のEn1+/−マウスにおける17%に増大する(n=3;Studentのt検定;107および94個のニューロンを、wt条件およびEn1+/−条件においてそれぞれ数えた)。 (G)En1+/−マウスのSNpc中のLINE−1転写物を、qRT−PCR増幅によって、wtと比較して分析した(n=5;Studentのt検定)。 (H)活性化カスパーゼ−3陽性TH+ニューロンが、En1+/−マウス(8週齢)のSNpc中で検出される。スケールバー、50μm。
図2に関連する。6−OHDAを注射したマウスにおけるTH細胞死およびクロマチン変化 (A)ウェスタンブロット分析が、6−OHDAを注射した同側SNpc(n=3)において、6時間後のTHタンパク質レベルの50%の減少を示す。 (B)6−OHDAを注射したSNpcにおいて、THおよびEn1のmRNAのレベル(6時間後)が、それぞれ70および50%減少している(n=6;Studentのt検定)。 (C)活性化されたカスパーゼ−3が、6−OHDAを注射した側のTH+ニューロン中で6時間後に検出されるが、反対側では検出されない。スケールバー、100μm。 (D)γ−H2AX、H3K9me3、およびTHについての中脳切片の三重免疫染色は、偽条件下でのDAPIとのH3K9me3の共局在が、6−OHDAを注射したマウスにおいて失われていることを示す。同様に、偽注射したマウスのTH+ニューロンにおけるDAPIとのMeCP2共局在が、6−OHDAを注射したマウスにおいて失われている。スケールバー、10μm。 (E)6−OHDAを注射したマウスにおいて、H3K9me3マーカーまたはMeCP2マーカーが高濃度であるTH+ニューロンのパーセンテージは、有意に減少する(n=3;Studentのt検定)。数えたニューロン数は、H3K9me3について161(偽)および97(6−OHDA)であり、MecP2について150(偽)および128(6−OHDA)であった。 (F)6−OHDAを注射したマウスのSNpcにおけるTH+ニューロン中の核周囲ラミンB2染色の喪失。スケールバー、20μm。 (G)偽注射または6−OHDA注射したマウスにおけるTH+ニューロン中のDAPI高密度領域の表面定量化。偽注射した対照と比較して、相対頻度分布は、6−OHDAを注射したマウスのTH+ニューロンにおいて、より小さなDAPI高密度領域へのシフトを示す(n=137〜177;Kolmogorov−Smirnov検定;1条件あたり3頭)。 (H)6−OHDA注射または偽注射したマウスのSNpc由来の全RNAを用いて、p53 mRNAおよびp21 mRNAを、qRT−PCRによって定量化した(n=6;Studentのt検定)。 (I)6−OHDAを注射したSNpc中の反復要素のより高い発現。全SNpc RNAを用いたqRT−PCRによって分析したLINE−1転写物のレベルが、6−OHDAを注射したマウスにおいて、増大する。LINE−1 RNAのレベルもまた、SNpc精製核由来のRNAを用いて分析した(n=3〜5;Studentのt検定)。
図2〜図3に関連する。THニューロン保護に関係するEngrailed転写活性 (A)マウスに、偽またはEnHD−VP64をSNpc中に片側だけから注入して、7日目に分析した。THについての中脳切片の免疫染色は、EnHD−VP64注入(偽でない)が、同側SNpcにおけるTH細胞の喪失を引き起こすことを示す。スケールバー、500μm。 (B)EnHD−VP64誘導TH細胞喪失を、注入の7日後の同側SNpc対対側SNpcでのTH+細胞カウントの比率を比較することによって、評価した(n=6;Studentのt検定)。数えたニューロン数は、条件ごとに1902〜2118個に及んだ。 (C)γ−H2AX染色の定量化は、SNpcにおいて2つを超えるγ−H2AX病巣を有するTH+ニューロンのパーセンテージが、EnHD−VP64注入直後に増大することを示す(n=3;Studentのt検定;偽条件およびEnHD−VP64条件においてそれぞれ138および129個のニューロンを数えた)。 (D)また、RNA−seqデータの分析が、En1+/−マウスのSNpc中の核小体組織化および生体発生に関連する、Pathway Studio Ontologyサブグループにおける差次的発現遺伝子を明らかにする(p<0.1)。 (E)wtマウスおよびEn1+/−マウス(8週齢の動物)のSNpc中のpre−45S rRNAのレベルを、qRT−PCRによって分析した(n=4;Studentのt検定)。 (F)Engrailedは、6−OHDAモデルにおいて、TH+ニューロンの生存を促進する。6−OHDA注射の24時間後(TH+ニューロンの大部分が失われている)にEngrailedを注射して、6時間後に回復を評価した場合、Engrailedの生存作用は観察されなかった(n=3)。
図4に関連する。インビボでの急性酸化ストレス直後のTH+ニューロン中の細胞周期マーカーの検出、およびインビトロでのH2O2誘導DSBからのEngrailed媒介性保護 (A)6−OHDAを注射した側のTH+ニューロン中の、PCNAマーカーおよびpH3細胞周期マーカーの検出。スケールバー、20μm。 (B)中脳切片の免疫染色が、6−OHDAを注射したマウスの同側においてのみサイクリンAを発現するTH+ニューロンを明らかにする。注射の6時間後に、マウスを分析した。スケールバー、100μm。 (C)pH3についてポジティブ染色されたTH+ニューロンにおける活性化カスパーゼ−3の検出。スケールバー、50μm。 (D)6−OHDA注射直後にサイクリンAを発現するTH+ニューロンのパーセンテージを定量化し(左、n=3;Studentのt検定)、そしてウェスタンブロット分析によって確認した(右、n=4;Studentのt検定)。 (E)Engrailed処置は、中脳ニューロンを、H2O2誘導性DSBから保護する。E14.5マウス胚の一次中脳ニューロン培養物を、NaClまたはEn1(15nM)で24時間インキュベートした後に、5μMのH2O2で処理した。細胞をH2O2処理の1時間後に固定して、γ−H 2 A Xについて染色して、病巣の数を定量した(n=68〜137;一元配置ANOVAに続いて、Tukeyの多重比較検定)。中脳ニューロン培養を用いたH2O2誘導DSBからのEn2媒介性保護を、Trevigen CometAssayキットの指示に従って行ったコメットアッセイによって評価して、OpenCometプラグインで分析した(スケールバー、100μm)。コメットテールを有するニューロンの数を定量化した(n=39〜46;一元配置ANOVAに続いて、Tukeyの多重比較検定)。 (F)偽注射したマウスに対する、En2のSN pc中の差次的発現遺伝子。DNA損傷、クロマチンリモデリング、アポトーシスに関連する遺伝子を、p値によってランク付けする。
En1/GBX2/LHX9 5.1、Engrailedに対する用量反応;5.2、Gbx2に対する用量反応; 5.3、Lhx9に対する用量反応。
実験手順
動物
実験動物のケアおよび使用に関するガイドライン(US National Institute of Health)および欧州指令86/609(EEC Council for Animal Protection in Experimental Research and Other Scientific Utilization)に従って、マウスを処理した。Swiss OF1 wt(Janvier)およびEn1+/−マウス(Hanks et al.,1995 Science 269,679−682)を、従来の動物施設において維持した。実験群は、6〜9週齢のマウスからなった。
インビボ処置
6−OHDA注射のために、マウスを定位固定装置に置いて、穿頭孔を頭蓋骨中に、尾側の3.3mm、およびブレグマの側方の1mmに穿孔した。針を頭蓋骨の表面から4mm下げて、6−OHDA(2μl;0.8μg/μl Sigma)注射または偽(NaCl 0.9%)注射を、4分間にわたって行った。この手順で、ホメオタンパク質をSNpc組織に向ける。Engrailedレスキュー実験について、細菌組換えEn2(300ng;4μM)およびコロミン酸(3μg)の溶液(2μl)(Sonnier et al.,2007 J Neurosci 27,1063−1071)、またはビヒクル(NaCl 0.9%)を、6−OHDA注射の30分後に、同じ座標を用いて注射した。示す場合に、シクロヘキシミド(0.1μg/μl、sigma)を加えた。Otx2タンパク質注射について、300ngのタンパク質を含有する2μlの溶液を用いた。分析のために、示す時点にてマウスを殺した。厚さ2mmの凍結冠状切片から1mmの穿孔を行うことによって、qRT−PCR分析およびウェスタンブロット分析用のSNpc組織を得た。
EnHD−VP64について、先の同じ定位座標に配置した4mm長カニューレに連結した浸透圧ミニポンプ(Alzet 1002、Charles River Laboratories)で7日間、マウスに注入した。En−VP64(400nM、0.9%NaCl、または等量の空のプラスミド含有細菌抽出物)およびコロミン酸(1.5μg/μl)を含有する100μlで、ポンプを充填した。
画像の定量化
ImageJで画像を分析した。免疫蛍光のために、60倍の倍率および0.7μm厚の連続した焦点面を用いて、全ての定量化を行った。H3K27me3核小体パターン分析のために、核小体を通して置かれる線に沿うピクセルの強度のグラフを作成した。核の周辺での、そして核質におけるピクセル密度を測定することによって、H3K27me3蛍光強度の核周囲/核の比率を判定した。各TH+細胞における個々のDAPI表面積を測定し、かつこれを、相対頻度分布ヒストグラムとしてプロットすることによって、偽注射したマウスおよび6−OHDA注射したマウスにおけるDAPI高密度領域を定量化した。
統計分析
示した適切な検定を用いて、統計的有意性を判定した。データを平均±SEMとして表す。全ての実験において、*p<0.5、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001である。
RNA−seq分析
迅速なTH染色プロトコル(Chung et al.,2005,Hum Mol Genet 14,1709−1725)を用いて標識したwtマウスおよびEn1+/−マウスのSNpc中のmDAニューロンを、Laser Capture Microdissection(LMD7000、Leica)によって単離した。1群あたり動物4頭由来のサンプルをプールして、オンカラムDNAse I処置用のRNeasy MinElute Cleanupプロトコルを用いて、AllPrep DNA/RNA Micro Kit(OJagen)に続いてDNase Iを用いて、全RNAを抽出した。Ecole Normale Superieure Genomicプラットフォーム(Paris)によって、cDNAライブラリの構築(Ovation RNA−seq System V2)およびlllumina RNA−seqを行って、DESeqパッケージ(Anders et al.,2010,Genome Biol 11,R106)を用いて、wtサンプルとEn1+/−サンプルとの差次的発現遺伝子のp値を算出した。統計的富化について検定するために、標準化した読取りカウントを、Gene Set Enrichment Analysisアルゴリズム(Pathway Studio、Elsevier)に導入した。Pathway Studio OntologyコレクションおよびCell Process Pathwaysコレクションを、分析のためのGene Set Categoriesとして選択した。また、6−OHDA/偽注射および6−OHDA/En2注射の6時間後に収集したwtマウスのSNpc、およびSNpc組織パンチ由来のSNpc中の、Engrailed注入後の、Laser Captureで顕微解剖したmDAニューロンから抽出したRNAを用いて、RNA−seq分析を行った(Alvarez−Fischer et al.,2011,Nat Neurosci 14,1260−1266)。
qRT−PCR
RNeasy Lipid Tissueキット(Qiagen)に続いてDNase I(Thermo)消化を用いて、SNpc組織由来の全RNAを抽出した。QuantiTect Reverse Transcriptionキット(Qiagen)を用いて、RNA(200ng)を転写した。SYBR −Green(Roche Applied Science)を用いてqRT−PCRを行って、値をGapdhおよび/またはHprtに対して標準化した。ddCt法を用いてデータを分析した。一部の実験において、RNAをSNpc核から特異的に単離した(Subcellular Protein Fractionation Kit、Thermo)。
方法の補足表:qRT−PCR分析に用いたプライマーのリスト
(実験手順を参照)
免疫染色
マウスにPBS中4%パラホルムアルデヒドを灌流して、脳を1時間、後固定して、15%スクロース中で凍結保護した。Tissue−Tek O.C.T(Sakura Finetek)中に包埋した組織を、イソペンタンで凍結して、−80℃にて保存した。SNpcのレベルで脳を18μm厚の切片に切断した。免疫蛍光のために、切片を、PBS中1%Triton X−100内に20分間浸透させて、クエン酸バッファ(10mMクエン酸、0.05%Tween 20、pH6.0)内で100℃にて20分間インキュベートした。1時間ブロッキングした後(PBS中10%正常ヤギ血清、0.05%Triton X−100)、組織を、ブロッキング溶液中に希釈した一次抗体(マウス抗Y−H2AX、1:200、Millipore;ニワトリ抗TH、1:500、Abeam;ウサギ抗活性化カスパーゼ3、1:200、Abeam;ウサギ抗ヌクレオリン、1:200、Sigma;ウサギ抗フィブリラリン(fibrillarin)、1:200、Cell Signaling;ウサギ抗H3k27me3、1:200、Millipore;ウサギ抗H3k9me3、1:200、Abeam;Edith Heardからの寛大な寄贈;ウサギ抗Lamin B2、1:100、Santa Cruz;ウサギ抗Mecp2、1:300、Abeam;ウサギ抗PCNA、1:200、Cell Signaling;ウサギ抗サイクリンA、1:200、Santa Cruz;マウス抗pH3、1:100、Cell Signaling;マウス抗−p−JNK、1:200、Santa Cruz)と4℃にて一晩インキュベートした。切片を、適切な二次抗体(488抗ニワトリ、647抗ニワトリ、488抗マウス、546抗マウス、および546抗ウサギAlexa Fluor、Life Technologies)と室温にて1時間インキュベートした。標識した切片を共焦点顕微鏡法(SP5、Leica)によって画像化した。TH免疫組織化学について、切片を1%Triton X−100内で透過処理して、PBS中10%正常ヤギ血清(THに対するウサギポリクローナル抗体(1:1000;Pel−Freez Biologicals)を含有する)と4℃にて一晩インキュベートした。切片を、ビオチン化二次抗体で処理して、アビジン−ビオチン化ホースラディッシュペルオキシダーゼ複合体(ABC system、Vectastain)とインキュベートした。DABペルオキシダーゼ(HRP)基質キット(Vectastain)を用いて、ペルオキシダーゼを明らかにして、Nokon Eclipe i90顕微鏡で画像化した。
結果
実施例1:En1+/−マウスのSNpc中のmDAニューロン遺伝子発現
顕微解剖したSNpcに関するRNA−seq分析を、wtマウスおよびEn1+/−マウスで行った。989個の差次的発現遺伝子を有するwtマウスおよびEn1+/−マウスにおいて、比較可能な読取りを得た(p<0.05)(図S1A)。全てのニューロンが依然としてEn1+/−マウスに存在する6週齢の動物に、分析を行った。Pathway Studio Ontology(Gene Set Enrichment Analysis、Pathway Studioソフトウェア)は、最も代表的かつ有意な3つの群が、DNA修復(p=0.002)、クロマチンリモデリング(p=0.004)、および転写因子(p=0.007)であることを示す;また、Cell Process Pathways分析は、差次的アポトーシス調節遺伝子を明らかにした(p=0.01)(図S1B)。
これらのオントロジおよび経路内の遺伝子を、p値の増大によってランク付けした;図1Aは、読取り数に有意差があるものを強調している。
転写因子遺伝子は、最も豊富な群を代表する(図S1B)。図S1Dは、En1+/−マウスにおいて発現が修飾されたものをp値によってランク付けしている。また、wtマウスのSNpcへのEn2注入は、転写因子遺伝子を修飾するが、DNA損傷応答およびクロマチンを修飾するものは非常に少ない(図S1C)。ゆえに、これらをさらに、本研究の文脈において調査した。定量的RT−PCR(図S1E)は、6週齢のEn1+/−マウスが、DNA損傷、クロマチンリモデリング、およびアポトーシスに関連するいくつかの遺伝子の発現の変化を示すことを確認した。
実施例2:En1+/−mDAニューロンにおけるDNA鎖切断および修飾クロマチンマーク
DNA損傷の徴候について、DNA鎖切断(DSB)マーカーγ−H2AX(Lobrich et al.,2010 Cell Cycle 9,662−669)に従って、En1+/−マウス(6〜8週齢)のSNpc中のmDAニューロンを調べた(Lobrich et al., 2010 Cell Cycle 9, 662−669)。これは、SNpc中のTH+ニューロンの約16%において、複数のγ−H2AX病巣の存在を明らかにした(図1B、図1C)。注目すべきは、細胞の16%が、24週目に複数のγ−H2AX病巣を有するにも拘らず(図S1F)、24〜48週のEn1+/−変異体では、重大な死がないことによって示されるように、DSBは、急速な細胞死に至るのに必須でない。wtマウスでは、mDAニューロンの約98%が、核小体の周りに、γ−H2AXの単一環を示す(図1B)(また、脳の全体にわたってニューロン中に存在する)。1つのEn1対立遺伝子の喪失に対するVTA mDAニューロンの感受性がより低いことと同調して、γ−H2AX染色は、wtマウスおよびEn1+/−マウスのVTAにおいて、類似した(図1C)。
En1+/−マウスはまた、クロマチン変化の徴候がある。図1D〜図1Fに示すように、核小体周囲および核周囲のH3K27me3(K27トリメチル化ヒストンH3)染色のパターンは、かなりの割合のEn1+/− TH+ニューロン中で、変化する。また、ヘテロクロマチンのDAPI高密度領域のサイズ分布(Guenatri et al.,2004 J Cell Biol 166,493−505)は、En1+/−マウスにおける大スポットのパーセンテージの減少を示す(図1G)。ヘテロクロマチン変化は、多くの場合、Long Interdispersed Nuclear Elements(LI NE)の発現の変化と、関連する。それに応じて、LINE発現が、En1+/−突然変異体のSNpc中で増大する(図S1G)。アポトーシス遺伝子の誘導(図1A)が、wt同腹仔では見られなかったEn1+/−マウスのSNpc中のTH /活性化カスパーゼ−3共染色によって、確認される(図S1H)。
実施例3:急性酸化ストレスに対するEn1+/−mDAニューロンの感受性の増強
6−OHDA(mDAニューロンによって特異的に捕捉されるスーパーオキシド産出薬物)をSNpc中に直接注射することによって、急性酸化ストレスをmDAニューロンに加えた。これは、6時間以内に、同側SNpcにおいてのみ、TH+ニューロンの35%の喪失を、そして残りのTH+ニューロンの約26%において、複数の異常なγ−H2AX病巣の形成を誘導した(図2A、図2B)。ニューロンの喪失は、THタンパク質およびmRNA(また、En1 mRNA)の減少と(図S2A、図S2B)、そして多数の活性化カスパーゼ−3陽性mDAニューロンの存在と(図S2C)、並行していた。En1+/−マウスに6−OHDAを注射すると、6−OHDAを注射した側で、γ−H2AX病巣を有するTH+ニューロンのパーセンテージがより高くなり(51%)、そしてTH+ニューロンの喪失が並行して増大した(60%)(図2A、図2B)。EnHD−VP64注入は、実際に、mDA細胞死に至り(図S3A、図S3B)、そしてγ−H2AX病巣の数が増大する(図S3C)。
実施例4:酸化ストレスが、ヘテロクロマチンマークの変化を誘導する
また、ヘテロクロマチンマークが、wtマウスへの6−OHDA注射の6時間後に、修飾される。偽注射したマウスのTH+ニューロンにおける高密度の核小体周囲の、そして核周囲のH3K27me3染色が、6−OHDAを注射したマウスにおいて、拡散した核質染色に変わる(図2C)。この変化を、核小体において、一直径に沿って核小体周囲の蛍光強度を測定することによって、定量化した(図2D、左)。同様に、末梢核ラミナと核間質とのH3K27me3蛍光強度の比率は、1.4から1.0に低下した(図2D、右)。急性6−OHDAはまた、H3K9me3(K9トリメチル化ヒストンH3)染色およびMeCP2染色を乱し(図S2D、図S2E)、正味のラミンB2染色が喪失し(図S2F)、DAPI高密度スポットのサイズ分布が変化した(図S2G)。MeCP2は、メチル化CpGに結合して、その染色の変化が、グアニンの酸化を反映し得る。
6−OHDA直後の、核小体周囲のγ−H2AXの喪失によって示唆される核小体ストレス(図2A)が、高密度のヌクレオリン染色による、mDA細胞の70%(偽)から30%(6−OHDA)への低下によって、確認される(図2E、図2F)。この変化は、核小体損傷の徴候であるリボソームpre−45S RNAの強い上方制御を伴った(図2G)。比較すると、En1+/− TH+ニューロンにおいて6週目にて正常なヌクレオリン染色は、1年後に破壊の徴候を示す(図2H)。しかしながら、核小体組織化に関与する遺伝子の発現分析(RNA−seq)、およびpre−45S rRNAのqRT−PCR分析は、6〜8週齢のEn1+/−マウスにおける核小体生理の変化を示唆している(図S3D、図S3E)。
実施例5:Engrailedは、H2O2によって誘導されるDSBの数を減少させる
Engrailedが、酸化ストレスによって誘導されるDNA損傷を調節することができるかを確認するために、wtマウスに6−OHDAを片側だけから注射して、30分後にビヒクル(偽)またはEn2を再注射した。注射の6時間、24時間、または7日後に、分析を行った。6−OHDA/偽を注射したSNpc中のTH+細胞の24時間後の劇的な喪失は、6−OHDA/En2を注射したマウスにおいて、非常に引き下げられている(図3A)。En2注射マウスおよび偽注射マウスでは、生存ニューロンのそれぞれ40%および20%で、保護が7日目に依然として見られる(図3B)。6−OHDAの24時間(30分ではない)後にEn2を注射して、6時間後に分析すると、回復を示さなかったことから、TH染色は、真の生存に対応しており、TH再発現には対応していないことが示された(図S3F)。
6−OHDA誘導アポトーシスは、細胞周期マーカーの発現と並行している(図S4A〜図S4D)。したがって、注射6時間後のEn2処理TH+細胞中で検出されたサイクリンA発現は、24時間後にほぼ消失していた(図3C)。En2によるニューロンレスキューは、H3K27me3、ヌクレオリン、およびγ−H2AXの正常な染色パターンの再現と関連する(図4D)。「野生型」核小体周囲がH3K27me3で染色されたTH+細胞のパーセンテージは、6時間後に20%から37%に増大し、そして24時間後および7日後にそれぞれ60%および80%に達した。野生型ヌクレオリンパターンは、回復が24時間目にのみ観察され、24時間から1週間、ほとんど変化が見られなかったので、再現にはより長い時間を要した。最後に、γ−H2AX病巣数の減少はより遅く、7日目にのみ完全に回復した。
レスキューは、En2注射の早くも6時間後に、TH mRNA発現の有意な増大、およびpre−45S rRNA発現の減少と相関した(図3E)。En1+/−マウスにおいて上方制御された、または6−OHDAの注射直後の、細胞周期およびアポトーシスに関連する、選択された遺伝子の発現は、6−OHDA/En2マウスのSNpcにおいて、抑制された(図3E)。偽注射、そしてEn2注射した動物が、類似した数のmDAニューロンを依然として有する6時間後に、分析を行った(図3B)。
Engrailedを発現するが、ドーパミン作動性であるのはわずか1〜2%であるE14.5中脳ニューロンを、En2の有無に拘らず、H2O2に曝した。図S4Eは、DNA損傷の徴候を示すコメットテールの形成の減少と並行して、En2が、H2O2によって誘導されるDSB数を減少させることを示す。
実施例6:Engrailedは、短期生存経路および長期生存経路を活性化する
En2による保護は、24時間前の注射を必要とする(図S3F)。この早期生存経路における遺伝子を同定するために、6−OHDA/偽マウスまたは6−OHDA/En2マウス(6時間)由来のSNpc RNAを配列決定して、クロマチンリモデリング、DNA損傷、アポトーシス、および細胞周期の経路における遺伝子を、Pathways Studioに従って分析した。図4A、図4Bは、読取り数の最も大きい差により、大きさの順によって、遺伝子をランク付けしており、図4Cは、分析した4つの経路における代表的な上位の遺伝子についての発現の増強の、qRT−PCRによる確認を示す。アポトーシス経路における遺伝子が、En1+/−マウスにおけるよりも多く表されている(図1)。これは、En2注射自体に起因するものではなく(図S4F)、このことは、En2による抗アポトーシス経路の急速な上方制御が、急性酸化ストレス後に特異的に起こることを示唆している。
8週齢のEn1+/−マウスにおけるGadd45b発現の減少と並行して、レスキュー実験においてシクロヘキシミドを加えることで、Gadd45bは、対照についてのPmlとは対照的に、介在タンパク質の翻訳を必要としないので、Engrailedの直接のターゲットであることが実証される(図4D)。Gadd45b/gおよびNF−kBの高誘導は、PDが挙げられるいくつかの神経変性疾患に包含される経路、c−Jun N末端キナーゼ(JNK)シグナル伝達の役割を示唆した(Coffey,2014,Nat Rev Neurosci 15,285−299)。図4E、図4Fは、6−OHDAの6時間後のp−JNK染色の強い増大が、En2によって拮抗されることを確認する(図4F)。
実施例7:Engrailed、ならびに2つの他のホメオタンパク質、Gbx2およびLhx9が、H2O2によって誘導されるDSBの数を減少させる
ホメオタンパク質の高い構造的保存および機能的保存を考慮して、本発明者らは、他のホメオタンパク質が、Engrailedと同様の作用を有するであろうと予想した。ゆえに、本発明者らは、2つの他のホメオタンパク質、Gbx2(Lin et al.,1996,Genomics,3,335−342)およびLhx9(Retaux et al.,1999,J.of Neuroscience,19(2),783−793)の、H2O2によって誘導されるDNA損傷に及ぼす作用を比較して、Engrailedと比較した。
E14.5中脳細胞を、トリプシンによって解離させて、ポリ−D−リシン/ラミニンガラスカバースリップ上の、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、および抗生物質/抗真菌混合物を補充したNeurobasal培地中で6日間、培養した。次に、細胞を、示した濃度のホメオタンパク質で24時間処理してから、100μM H2O2で1時間誘発(challenge)して、4%パラホルムアルデヒド中で固定した。DNA切断を、τ2HAX免疫蛍光法により可視化した。グラフ中の各データ点は、細胞の核中の、中程度から大きな病巣の数を表す。1条件につき4つのカバースリップが、そしてカバースリップあたり5〜10個の細胞が存在した。病巣のない細胞は含めなかった。
群間の差を、ノンパラメトリックKruskal−Wallis検定に続いて、Dunnの多重比較検定を用いて評価した。
7.1.Engrailed 1の用量反応(図5.1)
100μMH H2O2で処理すると、病巣の数は、1.9から8.3個/細胞に有意に増大した(p<0.01)。En1による前処理は、病巣の数を用量依存的に減少させた。1ng/ml(0.25nM)では、H2O2によって引き起こされる病巣の数は部分的に、しかし有意に減少した(p<0.01)。5ng/ml(1.25nM)および20ng/ml(0.5nM)では、病巣の数はさらに減少したが(p<0.01)、ビヒクル処理対照条件よりもずっと多かった(p<0.01)。100ng/ml(2.5nM)では、対照処理細胞と区別できなかったので、H2O2によって生じるDNA切断を完全に防止した。
7.2.Gbx2の用量反応(図5.2)
H2O2で処理すると、ビヒクル処理対照と比較して、τ2HAX病巣の数が有意に倍増した(p<0.01)。1ng/ml(0.027nM)では、病巣の数は部分的に、しかし有意に減少した(p<0.01)。20ng/ml(0.54nM)では、病巣の数がさらにいくらか減少し、100ng/ml(2.68nM)では、H2O2の作用を阻止した。
7.3.Lhx9の用量反応(図5.3)
H2O2で処理すると、ビヒクル処理対照と比較して、τ2HΑX病巣の数が有意に倍増した(p<0.01)。5ng/ml(0.022nM)では、病巣の数が有意に減少し、この減少は、20ng/ml(0.54nM)ではさらに大きかったが、完全ではなかった。100ng/ml(2.68nM)では、H2O2の作用を完全に阻止した。
結論
Engrailedホメオタンパク質は、黒質の成体ドーパミン作動性ニューロン中で発現される。Engrailed1ヘテロ接合マウスでは、当該ニューロンは、6週目に死に始め、酸化ストレスに対して感受性がより高く、かつ、野生型ニューロンに屈折した(inflected to)急性かつ強力な酸化ストレス後に観察される特性に類似した特性を次第に発揮する。これらの変化として、DNA鎖切断、ならびに核および核小体のいくつかのヘテロクロマチンマークの修飾(強度および分布)が挙げられる。Engrailed1およびEngrailed2は、Engrailed1ヘテロ接合マウスおよびパーキンソン病のマウスモデルにおいて、ドーパミン作動性ニューロン死に拮抗させるために以前に用いられた、生化学的に等価な形質導入タンパク質である。
したがって、本発明者らは、急性酸化ストレス後に、単回のEngrailed2注射が、核および核小体の全ヘテロクロマチンマークを回復し、DNA鎖の切断数を減少させ、かつドーパミン作動性ニューロンをアポトーシスから保護することを示す。これらの結果は、Engrailedが、黒質のドーパミン作動性ニューロンに存在するドーパミン作動性ニューロンの損傷を予防するだけでなく、当該ニューロンを、酸化ストレスによって損傷した場合に救済することができるという事実を支持している。
高レベルの活性酸素種(ROS)は、特にDDRを直接誘導するDNAレベルにて、毒性である。結果として、多量のATPおよびROSを産生する、代謝活性が高いニューロン、例えばSNpc mDAニューロンは、変性するリスクがある。DNA損傷が、クロマチン変化(それ自体、DNA修復機構を利用するのに必須である)を誘導するので、クロマチンリモデリング経路およびDDR経路が、相互に関連している。本研究は、Engrailed遺伝子を、mDAニューロンにおける慢性形態および急性形態の酸化ストレスに付随するDNA損傷およびクロマチン変化の重要なレギュレータとして位置付ける。
mDAニューロンが、進行性であるがWTマウスよりも速い死を示す、酸化ストレスのEn+/−慢性モデルは、成体網膜へのOtx2投薬量と同様に、Engrailed投薬量が、成体SNpcに重要であることを示している。実際、En1とEn2が生化学的に同等であることを考えると、4つのうち1つの対立遺伝子のみが喪失しても、細胞死を加速するのに十分である。老化および神経学的疾患の関連で、このことは、En1+/−マウスにおけるmDAニューロンが、PDの動物モデルに用いた毒素である6−OHDAに対してより速く、かつ感受性がより高いことを示唆している。
PDは、たとえそのファミリ形態であっても、生涯でかなり遅くに現れ、年齢に関連したリスクであることを明白に示している。EngrailedがPD遺伝子でないとしても、その老化防止特性は、EN1多型の関連性およびPDを発症するリスクを説明するかもしれない。これに関連して、En1+/−マウスまたは急性6−OHDAモデルのいずれかにおいて観察されるいくつかの表現型が、PD患者またはPDモデルにおいてなされた観察を連想させることは、注目に値する。例えば、SNpc mDAニューロンにおけるMeCP2の喪失は、黒質線条体のドーパミン作動性経路を損なう;JNK経路およびサイクリン経路は、PDに包含され、そしてヌクレオリン拡散は、PD患者において報告されている。
以前の研究では、Engrailedが、PDの3つのマウスモデルにおいて、mDAニューロンを保護することが示された(Alvarez−Fischer et al.,2011)。本研究は、6−OHDAが、SNpc中に直接注射されるのではなく、線条体中に注射される(長期の二次効果を妨げる急性かつ厳しい方法である)という意味で、非常に異なっていた。より重要なことに、以前の研究では、Engrailedは、6−OHDA注射の30分後に注射されずに、線条体傷害の3週前にSNpc中に注入された。最後に、以前の研究に反して、本研究は、転写レギュレータおよびエピジェネティックレギュレータとしてのEngrailedの役割を確立するが、これは、たとえ2つの作用モードが協働して細胞を救い得るとしても、タンパク質翻訳レベルにおいてだけではない。この転写活性およびエピジェネティック活性は、EngrailedがmDAニューロンの生存に及ぶ、長期間持続する作用を有し得ることを示唆しているため、非常に重要である。さらに、本研究は、以前の研究に反して、Engrailedが酸化ストレス誘導損傷を予防するだけでなく、ドーパミン作動性を救助するのに有用であり得ることを示している。
ゆえに、短期的作用および長期的作用に基づく機構を提案することができる。短期的作用として、ミトコンドリアタンパク質をコードするmRNAの翻訳(Alvarez−Fischer et al.,2011:Stettler et al.,2012)、そして特に、以下のものだけではないが、抗アポトーシス遺伝子の転写(本研究)、および既に提案されているアポトーシスの抑制(Alberi et al.,2004;Beltran et al.,2014)が挙げられ、外観上、GADD45b/g、NF−kB、およびJNKの経路で優勢である。本発明者らは、持続的な作用が、WTおよびEn1+/−のSNpcのトランスクリプトームを比較する本発明者らの初期のRNA−seq研究において強調した遺伝子の調節に基づいて、2つの高度に相互関連する経路であるクロマチン再構築およびDNA修復の双方を可能にする転写機構およびエピジェネティック機構に関連することを提唱する。
結論として、PDモデルにおけるEngrailedの保護作用(Alvarez−Fischer et al.,2011)は、本データと共に、mRNA翻訳、および直接的または間接的な遺伝子転写の双方のレベルにて作用する治療用タンパク質としてEngrailedを用いる発想を、正当に評価している。
配列番号: 1
<223> 合成ポリペプチド
配列番号: 5から50
<223> 合成オリゴヌクレオチド