以下、この発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
まず、下記の式(1)に示される抗アレルギー作用を呈するフェニルペプチド誘導体は炭素元素35個、水素元素46個、酸素元素6個及び窒素元素2個から構成されている。
すなわち、C35H46O6N2の化学式である。2分子のL−ロイシンと3分子のフェニル基から構成されている。2分子のロイシンは互いにペプチド結合で結合し、ロイシンジペプチドを構成している。
この誘導体の中心に存在するフェニル基部分はロイシンジペプチドとエステル結合している。つまり、ジペプチドのカルボン酸とフェニル基の水酸基とのエステル結合である。ジペプチドのN末はフリー状態である。
3分子のフェニル基はエチル基を介したエーテル結合で結合されている。これらのフェニル基の由来はフェニルアラニンと類推される。
この誘導体はアレルギーを発症させるIgE二量体のマスト細胞への結合を阻害する。また、この誘導体はマスト細胞のヒスタミン遊離を抑制する。つまり、この誘導体はマスト細胞の細胞膜に侵入し、細胞膜を安定化させる。これによりヒスタミン遊離を抑制する。
さらに、この誘導体はアレルギー性サイトカインの産生を抑制する。アレルギー性サイトカインとしてはIL−6(インターロイキン−6)がある。この誘導体はIL−6の産生を抑制することによりアレルギーを改善する。IL−6の抑制はこの誘導体がIL−6のmRNAの発現を抑制することにより生じる。
また、この誘導体は炎症性のプロスタグランジン(プロスタグランジンE2)の産生を抑制することにより抗アレルギー作用を発揮する。
また、このフェニルペプチド誘導体をフェニル基及びロイシンを原料として有機化学的に合成することができる。この有機合成された誘導体は標準物質として解析や分析に利用される。しかし、化学的な製造にはコストがかかり、かつ、有害な有機溶媒と重金属を使用することから、化粧品や食品分野には利用しにくいという安全性上の欠点がある。
このフェニルペプチド誘導体の構造についてはこの誘導体の重水素化ジメチルスルホキシド中の600MHzのH−NMR(1H−NMR)解析(ブルカー製)により、ピークの位置は0.45、0.62、0.79、0.86、1.64、1.77、1.78、1.79、1.94、2.67、2.71、2.86、3.01、3.23、3.54、3.67、4.08、4.09、4.20、4.72、6.79、6.80、6.94、7.06、7.13、7.41、8.35及び9.38ppmに認められる。
また、この誘導体の重水素化ジメチルスルホキシド中のC−NMR(13C−NMR)解析ではピークの位置は18.1、19.2、19.3、19.6、21.9、30.2、30.6、31.2、31.7、33.3、37.6、46.6、53.0、53.4、61.5、61.8、62.1、116.0、116.2、128.2、128.3、131.2、131.4、157.3、157.6、169.9、170.3、171.0、171.7及び172.0ppmに認められる。
このフェニルペプチド誘導体は天然由来であることから、吸収性と安全性が高い。特に、このフェニルペプチド誘導体は体内酵素、特に、ペプチダーゼやエステラーゼなどによりフェニル基とロイシンに分解される点から、安全性が高い。仮に、この誘導体を大量に摂取した場合でも体内で過剰量は分解されることから安全性が高い。
このフェニルペプチド誘導体は特に、皮膚のアレルギーを抑える働きが強い。その理由は胃における胃酸による分解である。つまり、胃酸の強酸性によって分解される。したがって、経口摂取する場合には耐酸性の製剤化または腸溶性カプセルに充填されるなど胃酸に対する対策が必要である。
さらに、この誘導体は粉末にした場合、水溶液と反応する際に、水素ガスを発生する。発生する水素ガスは活性酸素を除去する働きがあるため、紫外線や酸化物質によって発生した活性酸素を除去して生体を安定に維持できることから好ましい。また、水素ガスはヒドロキシルラジカルを消去し、還元作用を呈し、かつ、抗酸化作用を発揮することから好ましい。
さらに、皮膚表皮細胞に働き、皮膚細胞を増殖させ、また、ケラチンを増加させる。このフェニルペプチド誘導体はケラチン合成酵素を活性化してケラチン量を増加させる。ケラチンの増加作用は皮膚や毛髪を強固にすることから好ましい。
このフェニルペプチド誘導体の抽出方法または製造方法としては発酵法、酵素反応法や化学合成法などがある。
このフェニルペプチド誘導体の製造方法としては乳酸桿菌、アサイヤシ果実、コメヌカなどから抽出することができる。この抽出方法ではプロテアーゼやリパーゼなどの消化酵素を利用することは抽出効率が高められることから好ましい。
特に、乳酸桿菌にはもともとペプチドが豊富であることから原料として好ましい。また、酵素反応法の場合、フェニルペプチド誘導体を含有する植物から抽出することができる。または、発酵により微生物に生合成させることができる。
乳酸桿菌をアサイヤシ果実とコメヌカと発酵させることはこのフェニルペプチド誘導体の製造方法として有用である。発酵させる場合には、乳酸桿菌に加えてベニコウジ菌を利用できる。これらの発酵技術は日本では知識が豊富であり、食用としての実績も多く、かつ、安全性も高いことから好ましい。
さらに、高純度の誘導体を得る目的で精製されることは好ましい。精製の方法としては、分離用の樹脂などの精製操作を利用することは好ましい。
例えば、分離用担体または樹脂により分離され、分取されることは好ましい。分離用担体または樹脂としては、表面が後述のようにコーティングされた、多孔性のフェニルペプチド、酸化珪素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ビニルベンゼン共重合体等が用いられる。0.1〜300μmの粒度を有するものが好ましく、粒度が細かい程、精度の高い分離が行なわれるが、分離時間が長い欠点がある。
例えば、逆相担体または樹脂として表面が疎水性化合物でコーティングされたものは、疎水性の高い物質の分離に利用される。陽イオン物質でコーティングされたものは陰イオン性に荷電した物質の分離に適している。また、陰イオン物質でコーティングされたものは陽イオン性に荷電した物質の分離に適している。特異的な抗体をコーティングした場合には、特異的な物質のみを分離するアフィニティ担体または樹脂として利用される。
アフィニティ担体または樹脂は、抗原抗体反応を利用して抗原の特異的な調製に利用される。分配性担体または樹脂は、シリカゲル(メルク社製)等のように、物質と分離用溶媒の間の分配係数に差異がある場合、それらの物質の単離に利用される。
これらのうち、製造コストを低減することができる点から、吸着性担体または樹脂、分配性担体または樹脂、分子篩用担体または樹脂及びイオン交換担体または樹脂が好ましい。さらに、分離用溶媒に対して分配係数の差異が大きい点から、逆相担体または樹脂及び分配性担体または樹脂はより好ましい。
分離用溶媒として有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒に耐性を有する担体または樹脂が用いられる。また、医薬品製造または食品製造に利用される担体または樹脂は好ましい。これらの点から吸着性担体としてダイヤイオン(三菱化学(株)社製、HP−20及びHP−21)及びXAD−2またはXAD−4(ロームアンドハース社製)、分子篩用担体としてセファデックスLH−20(アマシャムファルマシア社製)、分配用担体としてシリカゲル、イオン交換担体としてIRA−410(ロームアンドハース社製)、逆相担体としてDM1020T(富士シリシア社製)がより好ましい。
これらのうち、ダイヤイオンHP−20、セファデックスLH−20及びDM1020Tはさらに好ましい。
得られた抽出物は、分離前に分離用担体または樹脂を膨潤化させるための溶媒に溶解される。その量は、分離効率の点から抽出物の重量に対して1〜40倍量が好ましく、4〜20倍量がより好ましい。分離の温度としては物質の安定性の点から4〜30℃が好ましく、10〜25℃がより好ましい。
分離用溶媒には、水、または、水を含有する低級アルコール、親水性溶媒、親油性溶媒が用いられる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが用いられるが、食用として利用されているエタノールが好ましい。
セファデックスLH−20を用いる場合、分離用溶媒には低級アルコールが好ましい。シリカゲルを用いる場合、分離用溶媒にはクロロホルム、メタノール、酢酸またはこれらの混合液が好ましい。
ダイヤイオンHP−20及びDM1020Tを用いる場合、分離用溶媒はメタノール、エタノール等の低級アルコールまたは低級アルコールと水の混合液が好ましい。
また、活性を含む画分を採取して乾燥または真空乾燥により溶媒を除去し、粉末または濃縮液として得ることは溶媒による影響を除外できることから、好ましい。
このフェニルペプチド誘導体は優れた抗アレルギー作用を発揮し、特に、皮膚に対して外敵抗原に対するアレルギーを防御できる点から好ましい。たとえば、細菌感染によるアレルギー、ニキビ菌によるアレルギーやアトピー性のアレルギーに対して作用する。さらに、皮膚のケラチンも生合成し、美肌作用、抗アレルギー作用や皮膚再生作用を呈する。また、ケラチン産生を必要とするまつ毛増殖剤、育毛剤、毛髪用化粧料としても利用できる。
フェニルペプチド誘導体に油脂を添加することは、得られる活性部分が油の中で安定に維持することから好ましい。例えば、大豆油、米ぬか油、グレープシード油、オリーブ油、ホホバ油で抽出することは好ましい。この誘導体は水溶性と油溶性の両方の溶媒に溶解する。この両親媒性の性質はこの誘導体の利用を広げることから好ましい。
医薬品として注射剤または経口剤または塗布剤などの非経口剤として利用され、医薬部外品としては、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、石鹸、塗布剤、ゲル剤、歯磨き粉等に配合されて利用される。
経口剤としては錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、ドリンク剤等が挙げられる。上記の錠剤及びカプセル剤に混和される場合には、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤等とともに用いることができる。上記の錠剤は、シェラックまたは砂糖で被覆することもできる。
また、上記のカプセル剤の場合には、上記の材料にさらに油脂等の液体担体を含有させることができる。上記のシロップ剤及びドリンク剤の場合には、甘味剤、防腐剤、色素香味剤等を添加することができる。
非経口剤としては、軟膏剤、クリーム剤、水剤等の外用剤の他に、注射剤が挙げられる。外用剤の基材としては、ワセリン、パラフィン、油脂類、ラノリン、マクロゴールド等が用いられ、通常の方法によって軟膏剤やクリーム剤等とすることができる。
注射剤には、液剤があり、その他、凍結乾燥剤がある。これは使用時、注射用蒸留水や生理食塩液等に無菌的に溶解して用いられる。
食品製剤として抗アレルギー作用を目的とした食品、抗アレルギー作用を目的とした健康食品、ケラチン増加による皮膚保護のための食品などに利用される。また、保健機能食品として栄養機能食品や特定保健用食品に利用することは好ましい。
得られた食品製剤をイヌやネコなどのペットや家畜動物に利用する場合、アレルギー改善する目的として、飼料やペット用サプリメントとして利用される。
化粧料として常法に従って界面活性化剤、溶剤、増粘剤、賦形剤等とともに用いることができる。例えば、クリーム、毛髪用ジェル、洗顔剤、美容液、化粧水等の形態とすることができ、抗アレルギー作用及びケラチンの産生を呈する化粧料となる。化粧料の形態は任意であり、溶液状、クリーム状、ペースト状、ゲル状、ジェル状、固形状または粉末状として用いることができる。この誘導体は水溶性と油溶性の両方の溶媒に溶解する。この両親媒性の性質はこの誘導体の利用を広げることから好ましい。
また、この誘導体は抗アレルギー作用を利用した植物活性化剤としても利用される。すなわち、植物はウイルスや細菌などの外敵に対して局所でアレルギー性反応を起こして生育が抑制される。そこで、この誘導体が植物のアレルギーを抑制することにより植物の生育を活性化し、開花、結実、収穫量の増加をもたらすことは好ましい。
以下に、乳酸桿菌、アサイヤシ果実とコメヌカを発酵する製造工程によりこの誘導体の製造ついて説明する。つまり、乳酸桿菌とベニコウジ菌によりアサイヤシ果実とコメヌカを発酵させた発酵液に分岐シクロデキストリンを添加してプロテアーゼ処理を行う。
原料となる物質は乳酸桿菌、ベニコウジ菌、アサイヤシ果実、コメヌカ、分岐シクロデキストリン及びプロテアーゼである。
乳酸桿菌はラクトバチルス属の細菌であり、ヒトの腸管内の細菌叢に存在して腸管免疫に関与している。特に、乳幼児の乳酸桿菌はアレルギーの抑制にも関与が深い。用いる乳酸桿菌としては、たとえば、Lactobacillus acidophilusやL55菌が適している。この乳酸桿菌は市販されているものを用いることもできるが、乳幼児から採取したものも用いられる。
アサイヤシ果実は学名Euterpe oleraceaでヤシ科アレカ亜科キャベツヤシ属の果実であり、中央アメリカ、南アメリカにかけて分布する食用果実である。日本にも南米ペルーから輸入されているため、新鮮な果実を利用できる。
原料となるコメヌカは米から得られる外皮と胚芽部分である。日本産のコメヌカはトレーサビリティーが確実であり、生産者が明確である点から好ましい。
このうち、有機栽培や無農薬で栽培されたコメヌカは有害な農薬や金属を含有しないことから、さらに好ましい。
これらの原料は使用に際して株式会社奈良機械製作所製の自由ミル、スーパー自由ミル、サンプルミル、ゴブリン、スーパークリーンミル、マイクロス、減圧乾燥機として東洋理工製の小型減圧乾燥機、株式会社マツイ製の小型減圧伝熱式乾燥機DPTH−40、エーキューエム九州テクノス株式会社製のクリーンドライVD−7、VD−20、中山技術研究所製DM−6などの粉砕機で乾燥され、粉砕される。これにより発酵の工程が効率的に進行されやすい。
発酵に用いるベニコウジ菌は学名Monascuc purpureusの糸状菌であり、古くから日本、中国や台湾において紅酒や豆腐ようなどの発酵食品に利用されている。また、沖縄や鹿児島などの日本産、中国や台湾の東南アジア原産の菌種が用いられる。紅麹本舗製のベニコウジ菌は発酵効率に優れている。
上記の発酵は清浄な培養用タンクで実施され、滅菌された水道水により上記の材料を混合することは好ましい。さらに、発酵物は以下の工程により、低分子化され、安定に維持される。
分岐シクロデキストリンは環状ブドウ糖の一つであり、内腔に疎水性部分を有することから疎水性の高い物質を吸着しやすい。塩水港精糖社製の分岐シクロデキストリンは品質が高いことから好ましい。
用いるプロテアーゼとしては天野エンザイム社製の食品加工用プロテアーゼであるプロテアーゼA「アマノ」SD、プロテアーゼM「アマノ」SDまたはプロテアーゼP「アマノ」3SDの品質が安定し、使用実績が豊富なことから好ましい。
まず、アサイヤシ果実とコメヌカはベニコウジ菌により発酵される。発酵は静置法または撹拌法のいずれでも良いが、発酵を短時間で実施できる点から撹拌法が好ましい。発酵は39〜44℃で24時間から72時間行われることが好ましい。温度が低く、時間が短い場合には発酵が進まず、温度が高く、時間が長い場合には目的とするフェニルペプチド誘導体が分解されてしまうおそれがある。
この発酵液は濾過布などにより濾過され、ここに乳酸桿菌が添加されてさらなる発酵が行われる。発酵は38〜43℃で24時間から72時間行われることが好ましい。温度が低く、時間が短い場合には発酵が進まず、温度が高く、時間が長い場合には目的とするフェニルペプチド誘導体が分解されてしまうおそれがある。発酵物はろ過されてろ液が以下の工程に供される。
このろ液に分岐シクロデキストリンが添加される。ブドウ糖が環状に結合し、食品や化粧料に利用されることから好ましい。
添加される分岐シクロデキストリンは上記の発酵液100gに対して分岐シクロデキストリンの100gから300gが好ましい。この分岐シクロデキストリンによりリボースとペプチドが結合する。この分岐シクロデキストリンとの懸濁液は攪拌されることが好ましい。
この懸濁液にプロテアーゼが添加される。添加されるプロテアーゼは上記の発酵液100gに対して0.001gから0.3gが好ましい。このプロテアーゼは精製水に懸濁して添加されることは反応が進むことから好ましい。
この懸濁液は反応を促進するために加温され、攪拌されることは好ましい。加温としては37〜44℃が好ましい。また、攪拌は1分間当り10〜30回が好ましい。時間は1時間から6時間が好ましい。
このプロテアーゼ反応液は濾過される。濾紙やメンブランフィルターを用いることにより効率良くろ過される。ろ過してろ液を得ることにより反応していない成分や原料を排除できることから好ましい。
得られた反応物は煮沸滅菌され、プロテアーゼを失活させることは好ましい。さらに、得られた反応物は、凍結乾燥することにより粉末化され、用いられる。
上記の反応物から、目的とするフェニルペプチド誘導体を上記に記載した精製方法により分離し、精製することは純度の高い物質として摂取量を減少させることができる点から好ましい。
フェニルペプチド誘導体を含む画分を採取して乾燥または真空乾燥により溶媒を除去し、目的とするフェニルペプチド誘導体を粉末または濃縮液として得ることは溶媒による影響を除外できることから、好ましい。
また、このフェニルペプチド誘導体を粉末化することは防腐の目的から好ましい。
以下、上記実施形態を実施例及び試験例を用いて具体的に説明する。なお、これらは一例であり、素材、原料や検体の違いに応じて常識の範囲内で条件を変更させることが可能である。
ブラジルで減農薬栽培されたアサイーの果実を株式会社フルッタフルッタより購入して用いた。果実を水道水で水洗後、天日で乾燥させ、粉砕機(株式会社奈良機械製作所製のスーパー自由ミル)にて粉砕し、アサイーの果実の乾燥粉末粉砕物を1.1kg得た。
秋田県で無農薬栽培されたコメより得られたコメヌカを農業生産法人シェアふぁーむ秋田五城目より購入して用いた。これをミキサー(クイジナート)に供し、コメヌカ粉砕物1.1kgを得た。上記のアサイーの果実とコメヌカ粉砕物をオートクレーブに供し、121℃、20分間、滅菌した。
これらを清浄な発酵タンク(滅菌された発酵用丸形40リットルタンク)に入れ、滅菌された水道水11kgを添加し、攪拌した。
これとは別に、有限会社紅麹本舗より購入したベニコウジ菌の11gを小型発酵タンクに供し、滅菌したコメヌカ粉末と前培養させた培養液を用意した。
上記の前培養したベニコウジ菌の溶液を上記のアサイーの果実粉末とコメヌカ粉末を入れた発酵タンクに添加し、攪拌後、40〜41℃の温度範囲で加温し、発酵させた。
発酵過程では、通気によりバブリングと攪拌を行いつつ、発酵液のサンプリングを行った。
発酵の状態は溶解したタンパク質の定量(ビューレット法)によりモニタリングした。
発酵後、得られた発酵液の上清を濾過布により粗濾過してろ液を得た。
このろ液10リットルを清浄なタンクに移して森永乳業株式会社より乳酸桿菌10gを添加してさらに、発酵させた。発酵温度は39〜40℃とし、24時間発酵させた。
発酵後、発酵液をろ過してろ液を採取した。このろ液に塩水港精糖社製の分岐シクロデキストリン(イソエリート)50gを添加して十分に攪拌した。
さらに、天野エンザイム製のプロテアーゼM「アマノ」SDの5gを添加し、37℃に加温して攪拌した。
攪拌は攪拌装置を用いて室温で10時間実施した。この反応液を短時間、煮沸滅菌し、酵素を失活させた。得られた反応液を東洋濾紙の濾紙(No.2)により吸引ろ過してろ液を得た。
この溶液を凍結乾燥機(タイテック社製のフリーズトラップVA−140S)により凍結乾燥させて目的とする粉末18gを得た。これを検体1とした。
得られた検体1の粉末10gを精製水100mLに懸濁して5%エタノールで膨潤させたダイヤイオンHP−20(三菱化学製)500gに供した。5%エタノール1200mLで洗浄後、20%エタノールでさらに洗浄した。
これに50%エタノール500mLを添加し、目的とするフェニルペプチド誘導体を分画した。得られた分画を減圧乾燥器により乾燥した。この精製操作を4回実施して最終精製物として粉末3gを得た。この粉末を検体2とした。
以下に、フェニルペプチド誘導体の構造解析に関する試験方法及び結果について説明する。
(試験例1)
上記のように得られた検体2を精製水に溶解し、濾過後、質量分析器付き高速液体クロマトグラフィ(HPLC、島津製作所)で分析した。
さらに、重水素化ジメチルスルホキシド中、核磁気共鳴装置(NMR、ブルカー製)で解析した。構造解析の結果、検体2及び検体1からフェニル基及びロイシンペプチドが結合した目的とする誘導体が検出された。
その結合はフェニル基は3分子であり、2分子のロイシンはジペプチド型であった。
600MHzのH−NHR分析結果では、0.45、0.62、0.79、0.86、1.64、1.77、1.78、1.79、1.94、2.67、2.71、2.86、3.01、3.23、3.54、3.67、4.08、4.09、4.20、4.72、6.79、6.80、6.94、7.06、7.13、7.41、8.35及び9.38ppmにピークが認められた。
さらに、C−NMR分析結果では、18.1、19.2、19.3、19.6、21.9、30.2、30.6、31.2、31.7、33.3、37.6、46.6、53.0、53.4、61.5、61.8、62.1、116.0、116.2、128.2、128.3、131.2、131.4、157.3、157.6、169.9、170.3、171.0、171.7及び172.0ppmにピークが認められた。
以下に、C−NMRの解析結果のチャートを示した。(横軸単位はppm、縦軸単位はピーク強度を示す。)
上記の分析値は有機化学合成されたフェニルペプチド誘導体のピークと同一であり、目的とするフェニルペプチド誘導体として同定された。検体2に含まれるこの誘導体は98.8%、つまり、純度98.8%であり、一方、検体1の純度は78.8%であった。
また、得られた誘導体の粉末0.1gを精製水10mLに溶解した場合、水素ガスの発生が認められた。ガスクロマトグラフィー(島津製作所製)で定量した結果、1.6ppmの水素ガス濃度を呈した。
以下に、ヒト由来白血球を用いた抗アレルギー作用の確認試験について述べる。
(試験例2)
インフォームドコンセプトのもと、スギ花粉に対して花粉症を発症しているアレルギー患者5例(男性3例及び女性2例、年齢28〜61歳)よりヘパリン加血液を医師の元で無菌的に採取した。採取した血液からフィコールを用いた遠心分離法により白血球を採取した。この白血球をRPMI−1640培地(和光純薬製)に懸濁して37℃、5%炭酸ガス下、炭酸ガス培養器(MG−70C、タイテック製)内で培養した。この細胞を96孔マイクロプレート(ファルコン製)に播種し、ここにLPS(リポポリサッカライド、和光純薬製)の溶液を添加した。この最終濃度は0.1mg/mLとした。
ここに試験物質として検体2及び対照物質として抗アレルギー剤である塩酸ジフェンヒドラミン(ドリエル、エスエス製薬)を用いた。いずれも生理食塩液に懸濁し、希釈してそれぞれ最終濃度で1mg/mLになるように添加した。なお、溶媒対照として生理食塩液を用いた。これを37℃で3日間培養して生細胞数を顕微鏡下で計数した。さらに、上清を採取して含有されるIL−6量(フナコシ製、IDELISA ELISAキット)及びプロスタグランジンE2量をELISA法(コスモ・バイオ株式会社)により比色法により定量した。
その結果、溶媒対照の細胞数を100%として検体2の添加による比率を求めた結果、検体2の添加により114%に増加した。一方、塩酸ジフェンヒドラミンでは107%となり、検体2の方が白血球の保護に優れていた。
IL−6量は溶媒対照を100%として検体2の添加による比率を求めた結果、検体2の添加により24%に減少した。一方、塩酸ジフェンヒドラミンでは64%となり。検体2の方がIL−6量の抑制作用に優れていた。
プロスタグランジンE2量は溶媒対照を100%として検体2の添加による比率を求めた結果、検体2の添加により13%に減少した。一方、塩酸ジフェンヒドラミンでは35%となり、検体2の方がプロスタグランジンE2量の抑制作用に優れていた。また、この誘導体はヒト由来白血球に対して障害を与えなかったという結果から安全性は高いと考えられた。
以下に、ヒト由来皮膚細胞を用いたケラチン産生の確認試験について述べる。
(試験例3)
コスモ・バイオ株式会社より購入したヒト皮膚由来の初代表皮培養細胞を用いた。細胞を専用の培養液に懸濁し、前培養して細胞を増殖させた。37℃、5%炭酸ガス下、炭酸ガス培養器内で培養した。その後、増殖期にある細胞をトリプシン含有培地にて剥離して実験に供した。生細胞数をトリパンブルー色素排除法により顕微鏡下で計数した。細胞数を1mLあたり1000個に調整して5mLずつ培養シャーレに播種してさらに、37℃、5%炭酸ガス下で培養した。これを紫外線照射装置(ロックタイト、出力88MH)により紫外線を照射して細胞にダメージを与えた。照射はシャーレの蓋を外して1時間実施した。
この紫外線照射により皮膚細胞が障害を受け、この障害に対する回復を試験した。なお、この方法は皮膚に対する試験物質の評価に実施される方法である。
ここに試験物質として検体2及び対照物質としてヒトEGF(フナコシ製)をいずれも生理食塩液に懸濁し、希釈して最終濃度で1mg/mLになるように添加した。なお、溶媒対照として生理食塩液を用いた。これを37℃で3日間培養して生細胞数を顕微鏡下で計数した。さらに、細胞を精製水に分散して超音波破砕機により細胞分散液を得た。この細胞分散液中に含まれるケラチン量をELISA法(コスモ・バイオ株式会社)により定量した。
その結果、溶媒対照の細胞数を100%として検体2の添加による比率を求めた結果、検体2の添加により226%に増加した。一方、EGFでは166%となり。検体2の方が皮膚細胞の増殖作用に優れていた。ケラチン量については溶媒対照の値を100%として検体2の添加により322%に増加した。一方、EGFでは288%となり、検体2の方がケラチン産生作用に優れていた。また、溶媒中の水素ガス濃度は1.6ppmであった。また、この誘導体はヒト由来皮膚細胞に対して障害を与えず、細胞数を回復させたという結果から、安全性は高いと考えられた。
以下に、ヒト由来マスト細胞(肥満細胞)を用いたヒスタミン産生抑制の確認試験について述べる。
(試験例4)
上述のヒトより採取した白血球よりマスト細胞を採取し、培養液に培養して96孔マイクロプレートに播種した。これを培養し、アレルゲンとなるスギ花粉(コスモ・バイオ株式会社)を0.1mg添加した。同時に、試験物質として検体2及び対照物質として塩酸ジフェンヒドラミンをいずれも生理食塩液に懸濁し、希釈して最終濃度で1mg/mLになるように添加した。なお、溶媒対照として生理食塩液を用いた。これを37℃で1日間培養して培養上清に遊離されたヒスタミン量をELISA法(高感度ヒスタミンELISAキット、コスモ・バイオ株式会社)により定量した。
その結果、ヒスタミン量は溶媒対照の値を100%として検体2の添加により28%に減少した。一方、塩酸ジフェンヒドラミンでは52%となり、検体2の方がヒスタミン抑制作用に優れていた。この結果から、検体2はヒスタミン遊離を抑制した。