図1は、従来技術によるスフィンゴシン−1−リン酸の分子構造である。
図2は、従来技術によるFTY720の分子構造である。
図3および図4は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体の分子構造である。
図3および図4は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体の分子構造である。
図5〜図22は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体を産生するための反応経路である。
図5〜図22は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体を産生するための反応経路である。
図5〜図22は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体を産生するための反応経路である。
図5〜図22は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体を産生するための反応経路である。
図5〜図22は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体を産生するための反応経路である。
図5〜図22は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体を産生するための反応経路である。
図5〜図22は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体を産生するための反応経路である。
図5〜図22は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体を産生するための反応経路である。
図5〜図22は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体を産生するための反応経路である。
図5〜図22は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体を産生するための反応経路である。
図5〜図22は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体を産生するための反応経路である。
図5〜図22は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体を産生するための反応経路である。
図5〜図22は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体を産生するための反応経路である。
図5〜図22は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体を産生するための反応経路である。
図5〜図22は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体を産生するための反応経路である。
図5〜図22は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体を産生するための反応経路である。
図5〜図22は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体を産生するための反応経路である。
図5〜図22は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体を産生するための反応経路である。
図23および図24は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体の分子構造である。
図23および図24は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体の分子構造である。
図25〜図27は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体の作用機序の態様を説明する概略図である。
図25〜図27は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体の作用機序の態様を説明する概略図である。
図25〜図27は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体の作用機序の態様を説明する概略図である。
図28は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体の分子構造である。
図29は、ヒドロキシメチルと比較した、アリールの立体化学の影響の、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体の前立腺がん細胞を殺傷する能力に対する影響の研究を要約するデータプロットである。
図30は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体の分子構造である。
図31は、ピロリジン環の窒素における電荷の、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体の前立腺がん細胞を殺傷する能力に対する効果の研究を要約するデータプロットである。
図32は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体の、S1P受容体活性化に対する効果の研究を要約するデータプロットである。
図33は、FTY720と比較した、in vitroの無傷細胞における化合物5のリン酸化の効率性の研究を要約するデータプロットである。
図34および図35は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体の、心拍数に対する効果の研究を要約するデータプロットである。
図34および図35は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体の、心拍数に対する効果の研究を要約するデータプロットである。
図36は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体の、心拍数に対する効果を示す遠隔測定の読み取り値である。
図37は、本発明の実施形態による治療用小分子類似体の、リンパ球の隔離に対する効果の研究を要約するデータプロットである。
図38および図39は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体の分子構造である。
図38および図39は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体の分子構造である。
図40は、本発明の様々な実施形態による様々な治療用小分子類似体の、栄養素輸送体の発現をもたらす能力に関する研究を要約するデータプロットである。
図41は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体の、結腸直腸がん異種移植モデルにおいて新生物活性をもたらす能力に関する研究を要約するデータプロットである。
図42および図43は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体の分子構造である。
図42および図43は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体の分子構造である。
図44は、空胞形成、CD98喪失、および細胞死を誘発することが可能である、本発明の様々な実施形態によるいくつかのスフィンゴ脂質のグラフ表示である。
図45は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体の分子構造である。
図46は、テール鎖長の、本発明の様々な実施形態による様々な小分子類似体に対する効果のグラフ表示である。
図47は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体の分子構造である。
図48は、空胞形成、CD98喪失、および細胞死を誘発することが可能である、本発明の様々な実施形態によるいくつかの小分子類似体のグラフ表示である。
図49は、本発明の様々な実施形態による治療用小分子類似体の分子構造である。
図50は、空胞形成およびCD98喪失を誘発することが可能である、本発明の様々な実施形態によるいくつかの小分子類似体のドットプロット表現である。
図51A〜51Gは、本発明の実施形態による治療用小分子類似体の分子構造、顕微鏡撮像画像、ならびに小分子類似体の、栄養素輸送体の細胞内移行および代謝変化は誘起するが、S1P受容体活性化は誘起しない能力について詳述するグラフデータである。
図51A〜51Gは、本発明の実施形態による治療用小分子類似体の分子構造、顕微鏡撮像画像、ならびに小分子類似体の、栄養素輸送体の細胞内移行および代謝変化は誘起するが、S1P受容体活性化は誘起しない能力について詳述するグラフデータである。
図51A〜51Gは、本発明の実施形態による治療用小分子類似体の分子構造、顕微鏡撮像画像、ならびに小分子類似体の、栄養素輸送体の細胞内移行および代謝変化は誘起するが、S1P受容体活性化は誘起しない能力について詳述するグラフデータである。
図52Aおよび52Bは、本発明の実施形態による小分子類似体によって引き起こされる誘発細胞死が、アポトーシスに対して耐性がある細胞においても起こらないことについて詳述するグラフデータである。
図53A〜53Iは、本発明の実施形態による小分子類似体の、がん細胞を選択的に殺傷する能力について詳述するグラフデータである。
図53A〜53Iは、本発明の実施形態による小分子類似体の、がん細胞を選択的に殺傷する能力について詳述するグラフデータである。
図53A〜53Iは、本発明の実施形態による小分子類似体の、がん細胞を選択的に殺傷する能力について詳述するグラフデータである。
図54A〜54Fは、本発明の実施形態による小分子類似体の、がん遺伝子を発現しているかまたは腫瘍抑制遺伝子を欠いている細胞を選択的に殺傷する能力、およびin vivoにおいて腫瘍成長を阻害する能力について詳述するグラフデータおよび顕微鏡撮像画像である。
図54A〜54Fは、本発明の実施形態による小分子類似体の、がん遺伝子を発現しているかまたは腫瘍抑制遺伝子を欠いている細胞を選択的に殺傷する能力、およびin vivoにおいて腫瘍成長を阻害する能力について詳述するグラフデータおよび顕微鏡撮像画像である。
図54A〜54Fは、本発明の実施形態による小分子類似体の、がん遺伝子を発現しているかまたは腫瘍抑制遺伝子を欠いている細胞を選択的に殺傷する能力、およびin vivoにおいて腫瘍成長を阻害する能力について詳述するグラフデータおよび顕微鏡撮像画像である。
図55A〜55Fは、本発明の実施形態による小分子類似体の、空胞形成を誘発する能力について詳述する顕微鏡撮像画像およびグラフデータである。
図55A〜55Fは、本発明の実施形態による小分子類似体の、空胞形成を誘発する能力について詳述する顕微鏡撮像画像およびグラフデータである。
図55A〜55Fは、本発明の実施形態による小分子類似体の、空胞形成を誘発する能力について詳述する顕微鏡撮像画像およびグラフデータである。
図56A〜56Eは、本発明の実施形態による小分子類似体によって誘発された空胞形成を特徴付ける顕微鏡撮像画像である。図56Fおよび図57A〜57Dは、本発明の実施形態による小分子類似体の、PIKfyveの局在化は妨害するが、活性は妨害しない能力について詳述するウエスタンブロットデータおよび顕微鏡撮像画像である。
図56A〜56Eは、本発明の実施形態による小分子類似体によって誘発された空胞形成を特徴付ける顕微鏡撮像画像である。図56Fおよび図57A〜57Dは、本発明の実施形態による小分子類似体の、PIKfyveの局在化は妨害するが、活性は妨害しない能力について詳述するウエスタンブロットデータおよび顕微鏡撮像画像である。
図56A〜56Eは、本発明の実施形態による小分子類似体によって誘発された空胞形成を特徴付ける顕微鏡撮像画像である。図56Fおよび図57A〜57Dは、本発明の実施形態による小分子類似体の、PIKfyveの局在化は妨害するが、活性は妨害しない能力について詳述するウエスタンブロットデータおよび顕微鏡撮像画像である。
図56A〜56Eは、本発明の実施形態による小分子類似体によって誘発された空胞形成を特徴付ける顕微鏡撮像画像である。図56Fおよび図57A〜57Dは、本発明の実施形態による小分子類似体の、PIKfyveの局在化は妨害するが、活性は妨害しない能力について詳述するウエスタンブロットデータおよび顕微鏡撮像画像である。
図56A〜56Eは、本発明の実施形態による小分子類似体によって誘発された空胞形成を特徴付ける顕微鏡撮像画像である。図56Fおよび図57A〜57Dは、本発明の実施形態による小分子類似体の、PIKfyveの局在化は妨害するが、活性は妨害しない能力について詳述するウエスタンブロットデータおよび顕微鏡撮像画像である。
図56A〜56Eは、本発明の実施形態による小分子類似体によって誘発された空胞形成を特徴付ける顕微鏡撮像画像である。図56Fおよび図57A〜57Dは、本発明の実施形態による小分子類似体の、PIKfyveの局在化は妨害するが、活性は妨害しない能力について詳述するウエスタンブロットデータおよび顕微鏡撮像画像である。
図58A〜58Dは、本発明の実施形態による小分子類似体の、PIKfyveの局在化は妨害するが、活性は妨害しない能力について詳述するグラフデータおよび顕微鏡撮像画像である。
図58A〜58Dは、本発明の実施形態による小分子類似体の、PIKfyveの局在化は妨害するが、活性は妨害しない能力について詳述するグラフデータおよび顕微鏡撮像画像である。
図58A〜58Dは、本発明の実施形態による小分子類似体の、PIKfyveの局在化は妨害するが、活性は妨害しない能力について詳述するグラフデータおよび顕微鏡撮像画像である。
図59A〜59Cは、本発明の実施形態による小分子類似体の、栄養素輸送体の喪失および空胞形成を誘発するための手段としてPP2Aを活性化する能力について詳述するグラフデータおよび顕微鏡撮像画像である。
図59A〜59Cは、本発明の実施形態による小分子類似体の、栄養素輸送体の喪失および空胞形成を誘発するための手段としてPP2Aを活性化する能力について詳述するグラフデータおよび顕微鏡撮像画像である。
図60A〜60Eは、本発明の実施形態による小分子類似体にはあるが、他のスフィンゴ脂質には無い、2つの別個のPP2A依存性機序によって表面栄養素輸送体の喪失および空胞形成を誘発する能力について詳述するグラフデータおよび顕微鏡撮像画像である。
図60A〜60Eは、本発明の実施形態による小分子類似体にはあるが、他のスフィンゴ脂質には無い、2つの別個のPP2A依存性機序によって表面栄養素輸送体の喪失および空胞形成を誘発する能力について詳述するグラフデータおよび顕微鏡撮像画像である。
図60A〜60Eは、本発明の実施形態による小分子類似体にはあるが、他のスフィンゴ脂質には無い、2つの別個のPP2A依存性機序によって表面栄養素輸送体の喪失および空胞形成を誘発する能力について詳述するグラフデータおよび顕微鏡撮像画像である。
図61A〜61Hは、本発明の実施形態による小分子類似体の、オートファジーフラックス(autophagic flux)およびマクロピノソーム(macropinosome)分解を低減する能力について詳述するグラフデータおよび顕微鏡撮像画像である。
図61A〜61Hは、本発明の実施形態による小分子類似体の、オートファジーフラックス(autophagic flux)およびマクロピノソーム(macropinosome)分解を低減する能力について詳述するグラフデータおよび顕微鏡撮像画像である。
図61A〜61Hは、本発明の実施形態による小分子類似体の、オートファジーフラックス(autophagic flux)およびマクロピノソーム(macropinosome)分解を低減する能力について詳述するグラフデータおよび顕微鏡撮像画像である。
図62Aおよび62Bは、本発明の実施形態による小分子類似体の、PIKfyveの局在化は改変するが、活性は改変しない能力について詳述するグラフデータおよび顕微鏡撮像画像である。
図63A〜63Fは、空胞形成が、in vitroおよびin vivoにおいて、本発明の実施形態による小分子類似体の抗新生物効果を増進することについて詳述するグラフデータおよび顕微鏡撮像画像である。
図63A〜63Fは、空胞形成が、in vitroおよびin vivoにおいて、本発明の実施形態による小分子類似体の抗新生物効果を増進することについて詳述するグラフデータおよび顕微鏡撮像画像である。
図64Aおよび64Bは、本発明の実施形態による、空胞形成が細胞死を増進することについて詳述するグラフデータである。
図65A〜65Jは、本発明の実施形態による小分子類似体の、前立腺がん細胞を飢えさせ、前立腺腫瘍成長を制限する能力について詳述するグラフデータおよび顕微鏡撮像画像である。
図65A〜65Jは、本発明の実施形態による小分子類似体の、前立腺がん細胞を飢えさせ、前立腺腫瘍成長を制限する能力について詳述するグラフデータおよび顕微鏡撮像画像である。
図65A〜65Jは、本発明の実施形態による小分子類似体の、前立腺がん細胞を飢えさせ、前立腺腫瘍成長を制限する能力について詳述するグラフデータおよび顕微鏡撮像画像である。
図66A〜66Cは、本発明の実施形態による小分子類似体の、in vitroおよびin vivoにおいて前立腺がん細胞における脂質およびアミノ酸の取り込みを遮断する能力について詳述するウエスタンブロットデータ、グラフデータ、および顕微鏡撮像画像であり、一方で、図66DおよびEは、本発明の実施形態による、新生物細胞に対する選択的毒性を示す。
図66A〜66Cは、本発明の実施形態による小分子類似体の、in vitroおよびin vivoにおいて前立腺がん細胞における脂質およびアミノ酸の取り込みを遮断する能力について詳述するウエスタンブロットデータ、グラフデータ、および顕微鏡撮像画像であり、一方で、図66DおよびEは、本発明の実施形態による、新生物細胞に対する選択的毒性を示す。
図66A〜66Cは、本発明の実施形態による小分子類似体の、in vitroおよびin vivoにおいて前立腺がん細胞における脂質およびアミノ酸の取り込みを遮断する能力について詳述するウエスタンブロットデータ、グラフデータ、および顕微鏡撮像画像であり、一方で、図66DおよびEは、本発明の実施形態による、新生物細胞に対する選択的毒性を示す。
図67は、本発明の実施形態による小分子類似体の、前立腺がんの進行を阻害する能力について詳述する顕微鏡撮像画像である。
図67は、本発明の実施形態による小分子類似体の、前立腺がんの進行を阻害する能力について詳述する顕微鏡撮像画像である。
ここで、図面およびデータを参照すると、細胞の栄養素輸送体の下方調節の誘起およびリソソーム融合反応の遮断などの様々な治療的機序によって、新生物およびがんなどの障害を処置することが可能である分子、これらの分子から形成される医薬、これらの分子を合成する方法、ならびにこのような治療薬を使用して障害を処置するための方法が開示される。一部の実施形態では、分子は、拘束アザ環式スフィンゴ脂質様化合物である。小分子の追加的な実施形態は、ジアステレオマーの3−および4−C−アリールピロリジンである。実施形態は、純粋な化合物の形態または薬学的に有効な塩の形態で存在し得る。他の実施形態では、障害の処置を目的とする製剤および医薬が提供される。そのような一部の実施形態では、これらの製剤および医薬は、例えば白血病、前立腺がん、結腸がん、肺がん、膵臓がんおよび乳がんなどのがん、ならびに可能性としては他の疾患、例えば発がん性のRas変異またはPTEN喪失が新生物細胞と関連する疾患などを標的とする。他の実施形態、標的とされる障害は、例えば肥満などの摂食障害に関する。治療用実施形態は、治療有効用量の、薬学的に有効な塩または純粋な形態のいずれかとして存在する1つまたは複数の小分子化合物を含有する。実施形態は、様々な製剤、例えば、限定されるものではないが、経口投与、静脈内投与、または筋肉内投与用の製剤を可能とする。他の追加的な実施形態は、治療量の小分子を使用する、障害のための処置レジメンを提供する。
医薬および処置の実施形態に加えて、実施形態は、アザ環式拘束スフィンゴ脂質様分子の、細胞において細胞の生体エネルギーにおける変化を誘発する能力を対象とする。機序の実施形態は、栄養素へのアクセスにおける減少に起因して、生体エネルギーストレスを誘発する。したがって、ストレスは、一部の実施形態では新生物細胞の死を引き起こし、他の実施形態では、ストレスは、正常な健康細胞において毒性をもたらさない。本発明の多くの実施形態は、これらの分子の、細胞表面における栄養素輸送体、低密度リポタンパク質の分解、マクロピノソームの分解、およびオートファジーを減少させる能力を対象とする。
定義
本明細書の目的のために、別途記載されない限り、以下の定義を使用する。
「スフィンゴシン−1リン酸(S1P)」は、脂肪酸に由来し、かついくつかの細胞シグナル応答に関与する、リン酸化された生化学的分子である。この分子の構造は、図1に示されている。
「S1P受容体」は、S1Pが標的とする、Gタンパク質共役受容体のクラスである。S1P受容体1、S1P受容体2、S1P受容体3、S1P受容体4、およびS1P受容体5を含む、5つのサブタイプが存在する。
「プロテインホスファターゼ2(PP2A)」は、広範な基質特異性および多様な細胞機能をもつ、セリン/スレオニンホスファターゼ活性を有する酵素である。この酵素は、いくつかの発がん性シグナル伝達カスケードを含む、様々なシグナル伝達経路に影響を及ぼすことが公知である。
図2において図示されている「FTY720」(2−アミノ−2−[2−(4−オクチルフェニル)エチル]プロパン1,3−ジオール塩酸塩)は、疎水性の脂肪族鎖を有する芳香族部分においてアミノジオール官能性を有する、合成免疫調節剤である。この分子はまた、フィンゴリモドとしても公知であり、再発寛解型多発性硬化症を処置するために、Gilenya(商標)という商品名で販売されている。
専門用語
「アシル」は、−R−C=O基を意味する。
「アルコール」は、飽和アルカン様化合物に結合した−OH基を有する化合物(ROH)を意味する。
「アルキル」は、水素原子をアルカンから除去したときに残る部分構造を指す。
「アルキルホスホネート」は、ホスフェートに結合したアシル基、RCO2PO3 2を意味する。
「アルカン」は、単結合のみを含む、炭素および水素の化合物を意味する。
「アルケン」は、炭素−炭素二重結合を含む炭化水素、R2C=CR2を指す。
「アルキン」は、炭素−炭素三重結合を含む炭化水素構造を指す。
「アルコキシ」は、酸素原子に結合したアルキル基を特色とする分子構造の一部を指す。
「アリール」は、芳香環に由来する任意の官能基または置換基を指す。
「アミン」分子は、窒素原子に結合した1つまたは複数の有機置換基を含む化合物、RNH2、R2NH、またはR3Nである。
「アミノ酸」は、カルボキシル基に隣接する炭素原子上にアミノ基を有する二官能性化合物、RCH(NH2)CO2Hを指す。
「アジド」は、N3を指す。
「シアニド」は、CNを指す。
「エステル」は、−CO2R官能基を含む化合物である。
「エーテル」は、同じ酸素原子に結合した2つの有機置換基を有する化合物、すなわちR−O−R’を指す。
「ハロゲン」または「ハロ」は、フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)、またはヨード(I)を意味する。
「炭化水素」は、炭素(C)および水素(H)という元素からもっぱら構成される有機化合物を意味する。
「ホスフェート」、「ホスホネート」、または「PO」は、リン(P)および酸素(O)という元素を含有する化合物を意味する。
上および全体を通じて、分子式中の「R」は、任意の好適な有機分子を示すことが意図される。
C−アリールアザ環式拘束ピロリジン分子
本発明の実施形態による化合物は、ジアステレオマーの3−および4−C−アリール2−ヒドロキシメチルピロリジンに基づく。本発明の実施形態による化合物は、図3に図示されており、下にも描写されている。実施形態は、図3に図示されているような分子、このような分子のホスフェート、このような分子のホスホネート、または薬学的に許容されるこれらの塩を含み、式中、
R
1は、アルキル鎖、(CH
2)
nOH、CHOH−アルキル、CHOH−アルキン、(CH
2)
nOMe、(CH
2)
nPO(OH)
2およびそのエステル、CH=CHPO(OH)
2およびそのエステル、(CH
2CH
2)
nPO(OH)
2およびそのエステル、ならびに(CH
2)
nOPO(OH)
2およびそのエステル、(CH
2)
nPO
3およびそのエステルから選択される任意選択の官能基であり、ここで、Meは、アルキル、アルケン、またはアルキンであり、
R
2は、脂肪族鎖(C
6〜C
14)であり、
R
3は、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アジド(N
3)、エーテル、NO
2、またはシアニド(CN)を含む、モノ、ジ、トリ、またはテトラ芳香族置換基であり、
nは、1、2、または3から選択される、独立して選択される整数であり、
フェニルは、5員炭素環の周囲で、例えば、環の3位から4位へ、5位へと動いてもよい。
さらなる実施形態では、C−アリール基は、3位または4位に動いてもよく、ここでは、C−アリール基によって占有されていない位置は、図4に示されており、下にも再現されているように現在Hである(すなわち、CH
2)。
追加的な実施形態では、アルキル、CH2OH、または(CH2)nOH基が5位に付加されてもよい。
なおも他の実施形態では、R2およびR3置換基は、それらの位置に関して、フェニル環の周囲で異なる組み合わせを有してもよい。
なおも他の実施形態では、R2は、不飽和炭化水素鎖であってもよい。
なおも他の実施形態では、R1は、1〜6個の炭素を有するアルキルであってもよい。
本発明における化合物は、立体異性体(ホスフェート、ホスホネートを含む)、エナンチオマー、ジアステレオマー、シス、トランス、シン、アンチ、溶媒和物(水和物など)、互変異性体として存在してもよく、これらの混合物が、本発明の化合物として企図されることが理解されるであろう。(例えば、図の3a〜3b、5a、6a、7c、および9を参照されたい。)
化合物がホスフェートまたはホスホネートである多くの実施形態では、R1は、例えば、(CH2)nPO(OH)2およびそのエステル、CH=CHPO(OH)2およびそのエステル、(CH2CH2)nPO(OH)2およびそのエステル、ならびに(CH2)nOPO(OH)2およびそのエステルであってもよい。
また、特許請求されている本発明は、薬学的に許容される塩にも関する。「薬学的に許容される塩」は、所望されない毒物学的効果は伴わずに、化合物の望ましい生物学的活性を保持する。塩は、好適な酸、例えば、限定されるものではないが、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸など;酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、リンゴ酸、安息香酸、パモ酸、アルギン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などによる塩であってよい。また、組み込まれるカチオンは、アンモニウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、亜鉛、銅、バリウム、ビスマス、カルシウムなど;または有機カチオン、例えばテトラアルキルアンモニウムおよびトリアルキルアンモニウムカチオンなどを含み得る。酸性塩およびカチオン性塩の組み合わせも有用である。他の酸および/またはカチオンの塩、例えばトリフルオロ酢酸、クロロ酢酸、およびトリクロロ酢酸による塩などが含まれる。
本発明の実施にとって好適である、他のアザ環式拘束スフィンゴ脂質様分子および修飾アザ環式拘束スフィンゴ脂質様分子が、当業者には明らかであろう。一部の分子は、任意のジアステレオマーのC−アリールピロリジン化合物を含んでもよい。さらに、これらの分子は、これらの分子が上に示される化合物と構造的に同一でない場合であっても、毒性のあるS1P受容体活性を誘発することなく、新生物成長を阻害するいくつかの作用機序を用い得る。
C−アリール拘束ピロリジン分子の合成
実施形態は、適切に置換されたピロロンまたは1−ブロモ−4−オクチルベンゼンから出発する、ジアステレオマーのC−アリールピロリジンを含む。アザ環式拘束スフィンゴ脂質様小分子化合物の一部の列記される実施形態は、同様の反応から始まる。
化合物3:化合物3および4の合成は、ピロロン3a(図5の3a)の異なる立体異性体で始まる(対して、化合物4の場合は(2S,4R))。化合物3は、化合物6、9、および10の前駆体である。中間体である(2R,3S)−tert−ブチル3−(4−ブロモフェニル)−2−((tert−ブチルジフェニルシリルオキシ)メチル)−5−オキソピロリジン−1−カルボキシレート(3b)を合成するために、1,4−ジブロモベンゼン(9.44g、40mmol)を、アルゴン下で、無水Et2O(86mL)に溶解させる。この溶液を−20℃に冷却し、n−BuLi(ヘキサン中2.5M、16mL、40mmol)を滴下添加する。添加した後、溶液を、−20℃で1時間撹拌する。その後、この混合物に、CuBr DMS(4.11g、20.0mmol)を一度に添加する。このクプラート混合物を、−20℃でさらに1時間撹拌した後、−78℃に冷却する。別の乾燥したフラスコにおいて、3a(1.8g、4.0mmol)を、アルゴン下で、無水Et2O(22mL)に溶解させ、これも−78℃に冷却する。TMSCl(1.02mL、8mmol)を、後者の溶液に添加する。この溶液を、クプラート混合物に、カニューレで滴下して移す。この混合物を−78℃で1時間撹拌し、1晩かけて室温まで温める。反応をクエンチして、飽和NH4Clと0.5MのNH4OHとの1:1溶液で3回洗浄した後、ブラインで洗浄する。有機層をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。その後、残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc、10:1〜6:1)によって精製して、3bを得る。
化合物3c、(2R,3S)−tert−ブチル2−((tert−ブチルジフェニルシリルオキシ)メチル)−3−(4−オクチルフェニル)−5−オキソピロリジン−1−カルボキシレートを合成するために、以下のステップに従う。1−オクチン(398μL、2.70mmol)およびカテコールボラン(THF中1.0M、2.70mL、2.70mmol)の溶液を、アルゴン雰囲気下において、70℃で2時間加熱する。この反応混合物を、室温に冷めるまで放置する。DME(21.9mL)中の化合物3b(1.1g、1.8mmol)の溶液を、反応混合物に添加して、その後、Pd(PPh3)4(62mg、0.054mmol)およびNaHCO3の1N水溶液(16.8mL)を添加する。反応混合物を、激しく撹拌しながら、4時間還流させる。混合物を室温まで冷まし、ブライン溶液を添加する。混合物をEt2Oで3回抽出し、合わせた有機層をNaSO4で乾燥させ、濾過する。溶媒を減圧下で除去して、残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc、8:1〜6:1)によって精製して、わずかに黄色の油を得る。次いで、この油をEtOAc(30mL)に溶解させ、Pd/C(10%、192mg、0.18mmol)を添加する。フラスコから空気を吸い出し、H2によって置き換える。TLCによって完了が示されると(1晩)、反応混合物を、セライトを通して濾過する。溶媒を減圧下で除去して、水素化生成物である化合物3c(0.80g、2ステップで69%)をわずかに黄色の油として得る。
中間体である化合物3d((R)−tert−ブチル2−((tert−ブチルジフェニルシリルオキシ)メチル)−3−(4−オクチルフェニル)−5−オキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−カルボキシレート)を合成するために、以下のステップを実施する。無水THF(4.0mL)中の3c(257mg、0.40mmol)の溶液を、アルゴン雰囲気下で、−78℃に冷却する。この溶液に、LiHMDS(THF中1M、0.44mL、0.44mmol)を滴下添加する。この混合物を、−78℃で1時間撹拌する。また、アルゴン雰囲気下の別のフラスコにおいて、無水THF(1mL)中のPhSeBr(104mg、0.44mmol)の溶液を−78℃に冷却する。次いで、このフェニルセレニルブロミド溶液を、反応混合物に、カニューレで滴下して移す。この混合物を−78℃で2時間撹拌すると、TLCにおいて出発物質が目視されなくなる。NH4Clの飽和溶液で反応をクエンチし、CH2Cl2で希釈すると、2つの相が分離する。水性相をCH2Cl2で2回抽出し、合わせた有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過する。溶媒を減圧下で除去する。フラスコにおいて、残留物をCH2Cl2(2mL)に溶解させ、−78℃に冷却する。この溶液に、過酸化水素溶液(H2O中30%(w/w)、204μL)およびピリジン(160μL、2.2mmol)を順次添加した。この溶液を、室温に温まるまで放置し、1時間撹拌する。NH4Clの飽和溶液で反応をクエンチし、CH2Cl2で3回抽出する。有機層を合わせ、NaSO4で乾燥させ、濾過した。溶媒を減圧下で除去して、残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc、6:1)によって精製して、3d(192mg、2ステップで75%)を黄色の油として得る。
中間体である化合物3e((2R,3R)−tert−ブチル2−((tert−ブチルジフェニルシリルオキシ)メチル)−3−(4−オクチルフェニル)−5−オキソピロリジン−1−カルボキシレート)を、以下のステップを使用して、3dから合成する。EtOAc(30mL)中の3d(170mg、0.27mmol)の溶液に、Pd/C(10%、28mg、0.027mmol)を添加する。フラスコから空気を吸い出し、H2によって置き換える。TLCによって完了が示されると(1晩)、反応混合物を、セライトを通して濾過する。溶媒を減圧下で除去して、残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc、6:1)によって精製して、水素化生成物である化合物3e(150mg、88%)をわずかに黄色の油として得る。
中間体である化合物3f((2R,3R,5S)−tert−ブチル5−アリル−2−((tert−ブチルジフェニルシリルオキシ)メチル)−3−(4−オクチルフェニル)ピロリジン−1−カルボキシレート)を、少なくとも以下のステップによって合成する。化合物3e(105mg、0.16mmol)および無水THF(2.7mL)を、アルゴン雰囲気下で、乾燥したフラスコに添加した後、この溶液を−78℃に冷却する。水素化トリエチルホウ素リチウム(THF中1.0M、80μL、0.080mmol)を滴下添加し、混合物を−78℃で1時間撹拌する。別の乾燥したフラスコにおいて、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム(22.0mg、0.088mmol)を、アルゴン下で、無水MeOH(1.80mL)に溶解させ、これも−78℃に冷却する。この溶液を、反応混合物に、カニューレで滴下して移す。pHがわずかに酸性(pHが約6)であることを確かめ、そうでなければ、さらに多くのp−トルエンスルホン酸ピリジニウムを添加すべきである。この混合物を、室温に温まるまで放置し、1晩撹拌する。NaHCO3の飽和溶液で反応をクエンチし、CH2Cl2で3回抽出する。有機層を合わせ、NaSO4で乾燥させ、濾過する。溶媒を減圧下で除去して、粗製O−メチルアミナール生成物(48mg)を黄色の油として得る。次いで、この油を、アルゴン雰囲気下で、無水CH2Cl2(0.34mL)に溶解させ、この溶液を−78℃に冷却する。この溶液に、アリルトリメチルシラン(59μL、0.365mmol)および四塩化チタン(CH2Cl2中1.0M、80μL、0.080mmol)を順次添加する。橙色の混合物を、−78℃で1時間撹拌し、水でクエンチし、CH2Cl2で3回抽出する。有機層を合わせ、NaSO4で乾燥させ、濾過する。溶媒を減圧下で除去して、残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc、6:1)によって精製して、水素化生成物である3f(20mg、2ステップで41%)をわずかに黄色の油として得る。
次の中間体である化合物3g、すなわち(2R,3R,5R)−tert−ブチル2−((tert−ブチルジフェニルシリルオキシ)メチル)−5−(ヒドロキシメチル)−3−(4−オクチルフェニル)ピロリジン−1−カルボキシレートを、以下によって合成する。凝縮器を備え付けた乾燥フラスコにおいて、アルゴン雰囲気下で、化合物3f(57mg、0.085mmol)を無水トルエン(1.8mL)に溶解させる。次いで、化合物3fの溶液に、N−アリルトリチルアミン(51mg、0.17mmol)および第二世代グラブス触媒(14.4mg、0.017mmol)を順次添加する。この混合物を3日間還流させ、室温まで冷まし、ブラインでクエンチする。この混合物を、CH2Cl2で3回抽出する。有機層を合わせ、NaSO4で乾燥させ、濾過する。溶媒を減圧下で除去して、残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc、40:1〜20:1)によって精製して、二置換アルケン異性体(40mg、70%)を黄色の油として得る。この油(40mg、0.06mmol)を、MeOHおよびCH2Cl2(1:1)の溶液(6mL)に溶解させ、−78℃に冷却する。オゾンを、濃い青色が持続するようになるまで、溶液に通して泡立てる。TLCによってアルケン出発物質が観察されなくなる。次いで、残留オゾンを除去するために、青色が観察されなくなるまで、アルゴンを溶液に通して泡立てる。硫化ジメチル(0.4mL)を慎重に添加し、反応を、室温にゆっくりと温まるまで放置し、1晩撹拌する。溶媒を減圧下で除去する。残留物をMeOH(1.96mL)に溶解させ、0℃に冷却する。水素化ホウ素ナトリウム(6.8mg、0.180mmol)を添加する。そして、反応を0℃で4時間撹拌した。TLCによってアルデヒド出発物質が観察されなくなる。NH4Clの飽和溶液で反応をクエンチし、CH2Cl2で3回抽出する。有機層を合わせ、NaSO4で乾燥させ、濾過する。溶媒を減圧下で除去して、残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc、8:1〜4:1)によって精製して、3g(23.8mg、2ステップで75%)を黄色の油として得る(23.8mg、3ステップで42%)。
最終的に、化合物3((2R,3R,5R)−2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−3−(4−オクチルフェニル)ピロリジニウムクロリド)の合成は、以下のステップで終わる。3g(21mg、0.032mmol)の入ったフラスコに、HCl(1,4−ジオキサン中4M、1.6mL、6.4mmol)を添加し、この溶液を、TLCによって完了が示されるまで、室温で撹拌する(24〜48時間)。溶媒を減圧下で除去し、1,4−ジオキサン(2mL)をフラスコに添加し、蒸発させて、残留HClを除去する。この粗製混合物を、フラッシュクロマトグラフィー(CH2Cl2:EtOH、4:1〜1:1)によって精製して、黄色の油を得る。この油を水に溶解させ、プラスチックのシリンジフィルター(孔径:0.45μm)を通して濾過し、凍結乾燥させて、化合物3(10.0mg、88%)を黄色の固体として得る。
化合物4:化合物4は、図6に図示されているように、化合物3を合成するための手順に従うことで得られた。最初の分子である化合物4aは、化合物3aの立体異性体である。
化合物9:化合物9((4S,5R)−5−(ヒドロキシメチル)−4−(4−オクチルフェニル)ピロリジン−2−オン)の合成は、図7に図示されているように、化合物3cで始まる。3c(40mg、0.062mmol)の入ったフラスコに、トリフルオロ酢酸(6.2mmol、0.48mL)およびH2O(0.05mL)の溶液(9:1)を0℃で添加する。15分後、溶液を室温まで温め、1晩撹拌する。TLCによって出発物質が観察されなくなる。溶媒を減圧下で除去する。残留物をCH2Cl2に溶解させ、NaHCO3の飽和溶液で3回抽出する。有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過する。溶媒を減圧下で除去して、残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(CH2Cl2:MeOH:NH4OH、100:8:1)によって精製して、9(12.0mg、63%)を白色の固体として得る。
化合物10:化合物10の合成は、化合物9を合成するための手順に従うことで得られる。図8に示されているように、化合物10のための合成プロセスは、化合物3eで始まる。
化合物11:化合物11の合成は、化合物9を合成するための手順に従うことで得られる。図9に示されているように、化合物11のための合成プロセスは、化合物4eで始まる。
化合物5:図10に図示されているように、化合物5の合成は、化合物4cで始まる。第1の中間体である5a((2S,3R)−tert−ブチル2−((tert−ブチルジフェニルシリルオキシ)メチル)−3−(4−オクチルフェニル)ピロリジン−1−カルボキシレート)を、以下の様式で合成する。無水THF(2.4mL)中の化合物4c(120mg、0.187mmol)の溶液を、0℃に冷却する。ボラン硫化ジメチル錯体(THF中2M、0.37mL、0.748mmol)を添加し、反応を、室温に温まるまで放置し、1晩撹拌する。TLCによって出発物質が観察されなくなる。溶媒を減圧下で除去する。残留物をMeOH(2mL)とともに2回同時蒸発させた後、それをCH2Cl2に溶解させ、NaHCO3の飽和溶液で3回抽出する。有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過する。溶媒を減圧下で除去する。そして、残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc、8:1)によって精製して、5a(94.6mg、81%)をわずかに黄色の油として得た。
次の中間体である化合物5b((2S,3R)−tert−ブチル2−(ヒドロキシメチル)−3−(4−オクチルフェニル)ピロリジン−1−カルボキシレート)の合成は、無水THF(14.3mL)中の5a(271mg、0.432mmol)の溶液を0℃に冷却することで始まる。フッ化テトラブチルアンモニウム溶液(THF中1M、0.756mL、0.756mmol)を添加し、反応を、室温に温まるまで放置し、1晩撹拌する。TLCによって出発物質が観察されなくなる。NaHCO3の飽和溶液で反応をクエンチし、CH2Cl2で3回抽出する。有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過する。溶媒を減圧下で除去して、残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc、6:1〜4:1)によって精製して、5b(155mg、92%)を無色の油として得る。
化合物5((2S,3R)−2−(ヒドロキシメチル)−3−(4−オクチルフェニル)ピロリジニウムクロリド)を合成する最終ステップでは、化合物5b(15mg、0.039mmol)の入ったフラスコに、HCl(1,4−ジオキサン中4M、0.98mL、3.9mmol)を添加し、この溶液を、TLCによって完了が示されるまで、室温で撹拌する(24〜48時間)。溶媒を減圧下で除去し、1,4−ジオキサン(2mL)をフラスコに添加し、蒸発させて、残留HClを除去する。この粗製混合物を、フラッシュクロマトグラフィー(CH2Cl2:EtOH、7:1〜4:1)によって精製して、黄色の油を得る。この油を水に溶解させ、プラスチックのシリンジフィルター(孔径:0.45μm)を通して濾過し、凍結乾燥させて、化合物5(11.0mg、88%)を黄色の固体として得る。
化合物5−P:図11に図示されているように、化合物5−Pの合成は、化合物5bで始まる。最初のステップでは、化合物5c(tert−ブチル(2S,3R)−2−(((ジ−tert−ブトキシホスホリル)オキシ)メチル)−3−(4−オクチルフェニル)ピロリジン−1−カルボキシレート)を、中間体化合物5bから合成する。無水THF(0.45mL)中の化合物5b(14mg、0.036mmol)の溶液に、ジ−tert−ブチルN,N−ジエチルホスホラミダイト(31μL、28mg、0.104mmol)および1H−テトラゾール(15mg、0.212mmol)を、アルゴン雰囲気下において室温で順次添加する。混合物をこの温度で1晩撹拌した後、−78℃に冷却する。この混合物に、CH2Cl2(0.45ml)中のm−CPBA(72%、25mg、0.104mmol)の溶液を添加し、反応を再度室温まで温める。0.5時間後、NaHCO3の飽和水溶液で反応をクエンチし、EtOAcで3回抽出する。有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過する。溶媒を減圧下で除去して、残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc、4:1〜2:1)によって精製して、化合物5c(10mg、48%)を無色の油として得る。
次のステップでは、化合物5−P(((2S,3R)−3−(4−オクチルフェニル)ピロリジン−1−イウム−2−イル)メチル水素ホスフェート)を、化合物5cから合成する。5b(5mg、0.009mmol)の入ったフラスコに、HCl(1,4−ジオキサン中4M、0.34mL、1.35mmol)を添加し、この溶液を、室温で24時間撹拌する。溶媒を減圧下で除去し、1,4−ジオキサン(2mL)をフラスコに添加し、蒸発させて、残留HClを除去する。この粗製混合物を、フラッシュクロマトグラフィー(i−PrOH:NH4OH:H2O、8:2:1〜8:4:1)によって精製して、5−P(2.5mg、78%)を白色の固体として得る。
化合物6:化合物6は、化合物5を合成するための手順に従うことで得られる。図12に図示されているように、化合物6を合成するための出発分子は、中間体化合物3cである。
化合物7:図13に図示されているように、化合物7を合成するための出発分子は、中間体化合物3eである。化合物7は、中間体化合物7b((2R,3R)−tert−ブチル2−(ヒドロキシメチル)−3−(4−オクチルフェニル)ピロリジン−1−カルボキシレート)の合成において差異を有するものの、化合物5を合成するための手順に従うことで得られる。中間体化合物7bを合成するために、無水THF(1.14mL)中の化合物7a(22mg、0.035mmol)の溶液を、0℃に冷却する。フッ化テトラブチルアンモニウム溶液(THF中1M、61μL、0.061mmol)を添加し、反応を、室温に温まるまで放置し、1晩撹拌する。TLCによって示されるように、出発物質はすべて消費されない。次いで、反応を48時間40℃に加熱し、NaHCO3の飽和溶液でクエンチし、CH2Cl2で3回抽出する。有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過する。溶媒を減圧下で除去して、残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc、6:1〜4:1)によって精製して、7b(12.5mg、92%)を無色の油として得る。
化合物8:化合物8は、化合物5および7を合成するための手順に従うことで得られる。図14に図示されているように、化合物6を合成するための出発分子は、中間体化合物4eである。
化合物12:化合物12の合成は、図15に図示されているように、中間体化合物6bで始まる。中間体化合物12aを合成するために、無水CH2Cl2(0.30mL)中の化合物6b(30mg、0.077mmol)の溶液に、トリエチルアミン(22μL、0.154mmol)を添加し、次いでこの溶液を0℃に冷却する。メタンスルホニルクロリド(9.0μL、0.116mmol)を溶液に添加し、反応を、室温に温まるまで放置し、1晩撹拌する。反応物を水に注ぎ入れ、EtOAcで3回抽出する。有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過する。溶媒を減圧下で除去して、残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc、3:1〜2:1)によって精製して、12a(34.0mg、94%)を無色の油として得る。
中間体化合物12bを合成するために、無水THF(0.06mL)中の化合物12a(29mg、0.062mmol)の溶液を、0℃に冷却する。この溶液に、水素化トリエチルホウ素リチウム(THF中1.0M、248μL、0.248mmol)を添加し、反応を、室温に温まるまで放置し、5時間撹拌する。反応物を水に注ぎ入れ、EtOAcで3回抽出する。有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過した。溶媒を減圧下で除去して、残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc、14:1)によって精製して、12b(20.7mg、89%)を無色の油として得る。
最終的に、化合物12を合成するために、12b(10mg、0.027mmol)の入ったフラスコに、HCl(1,4−ジオキサン中4M、0.68mL、2.7mmol)を添加し、この溶液を、室温で1晩撹拌する。溶媒を減圧下で除去し、1,4−ジオキサン(1mL)をフラスコに添加し、蒸発させて、残留HClを除去する。この粗製混合物を、フラッシュクロマトグラフィー(CH2Cl2:EtOH、9:1〜3:1)によって精製して、黄色の油を得る。この油を水に溶解させ、プラスチックのシリンジフィルター(孔径:0.45μm)を通して濾過し、凍結乾燥させて、12(8.0mg、96%)を黄色の固体として得た。
化合物13:化合物13は、化合物12を合成するための手順に従うことで得られる。図16に図示されているように、化合物13を合成するための出発分子は、中間体化合物5bである。
化合物14:図17は、化合物14を合成するプロセスを図示している。化合物14の合成は、中間体化合物6bで始まる。無水THF(0.75mL)中の化合物6b(35mg、0.090mmol)の溶液を、0℃に冷却する。この溶液に、水素化ナトリウム(鉱油中60%分散物、7.2mg、0.180mmol)を添加して、その後、ヨウ化メチル(26mg、12μL、0.180mmol)を添加する。反応を、室温に温まるまで放置し、1晩撹拌する。この混合物を水に注ぎ入れ、EtOAcで3回抽出する。有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過する。溶媒を減圧下で除去して、残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc、4:1)によって精製して、14a(33mg、92%)を無色の油として得る。
化合物14を合成するために、化合物14a(12mg、0.030mmol)の入ったフラスコに、HCl(1,4−ジオキサン中4M、0.75mL、3.0mmol)を添加し、この溶液を、室温で1晩撹拌する。溶媒を減圧下で除去し、1,4−ジオキサン(1mL)をフラスコに添加し、蒸発させて、残留HClを除去する。この粗製混合物を、フラッシュクロマトグラフィー(CH2Cl2:EtOH、9:1〜4:1)によって精製して、黄色の油を得る。この油を水に溶解させ、プラスチックのシリンジフィルター(孔径:0.45μm)を通して濾過し、凍結乾燥させて、12(9.9mg、98%)を黄色の油として得る。
化合物15:化合物15は、化合物14を合成するための手順に従うことで得られる。図18に図示されているように、化合物15を合成するための出発分子は、中間体化合物5bである。
化合物16:図19は、化合物16を合成するプロセスを図示している。化合物16aを、Ian Mannersによって報告された、p−ドデシルC6H4Brを生成する手順(Dorn, H.ら、Macromolecules、2003年、36巻、291〜297頁)に従って合成する。化合物16b、16cはすべて公知の化合物である。そして、スペクトルデータは、提案された構造と一致し、文献において報告されているものと整合した。(Barraclough, P.ら、1995年、51巻、4195〜4212頁、Van Huis, C. A.ら、J. J. Bioorg. Med. Chem.、2009年、17巻、2501〜2511頁。)
中間体化合物16aを合成するために、1,4−ジブロモベンゼン(5g、21.2mmol)およびPdCl2(dppf)のジエチルエーテル溶液(12.5mL)に、オクチルマグネシウムブロミド溶液(ジエチルエーテル中2.0M、10.6mL、21.2mmol)を、アルゴン下において、0℃で滴下添加する。室温で48時間撹拌した後、混合物を2.5時間還流させ、空気に曝露し、水に注ぎ入れ、ジエチルエーテルで3回抽出する。合わせた有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過する。溶媒を減圧下で除去し、残留物を、分取薄層クロマトグラフィー(20×20cm、1000μm、ヘキサン中4プレート)によって精製して、化合物16a(4.4g、77%)を無色の油として得る。この生成物は、わずかに不純物を含有した。これを、後続の反応においてそのまま使用する。
中間体化合物16bを合成するために、ジオキサンおよび水(1:1、100mL)中のトランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン(5g、38.0mmol)の溶液に、飽和NaHCO3溶液(200mL)を添加する。この溶液を0℃に冷却する。そして、(Boc)2O(9.2g、9.7mL、41.8mmol)を滴下添加した。反応を、室温で1晩撹拌する。2MのHClを添加することによってpHを3に維持し、反応混合物をEtOAcで抽出する。有機層を合わせ、MgSO4で乾燥させ、濾過する。溶媒を減圧下で除去して、粗生成物(8.0g、91%)を無色の油として得る。この粗製油(1.5g、6.5mmol)をCH2Cl2(32mL)に溶解させ、トリクロロイソシアヌル酸(1.5g、6.5mmol)を一度に添加する。次いで、この混合物を0℃に冷却し、TEMPO(51mg、0.325mmol)を反応物に添加する。混合物を0℃で0.5時間撹拌した後、室温まで温め、さらに0.5時間撹拌する。TLCにおいて出発物質が目視されなくなる。その後、水(5mL)を混合物に添加する。10分間撹拌した後、有機物を真空中で除去し、酢酸エチル(20mL)で希釈し、セライトを通して濾過する。HCl溶液(1M、40mL)で濾液を酸性化し、水(10mL)で4回洗浄し、ブライン(10mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過する。溶媒を減圧下で除去して、化合物16b(1.35g、91%)を白色の固体として得る。これを、精製せずに、次のステップにおいて直接使用する。
中間体化合物16cを合成するために、無水CH2Cl2(27mL)中の中間体化合物16b(1.35g、5.9mmol)の溶液を0℃に冷却する。この溶液に、tert−ブチルアルコール(1.7mL、17.7mmol)およびDMAP(72mg、0.59mmol)を添加する。5分間撹拌した後、溶液に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(1.19g、6.2mmol)を添加する。反応を、室温に温まるまで放置し、1晩撹拌する。飽和NaHCO3溶液によって混合物をクエンチし、CH2Cl2で3回抽出する。有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過する。溶媒を減圧下で除去して、残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc、8:1)によって精製して、16c(0.96g、57%)をわずかに黄色の油として得る。
中間体化合物16dを合成するために、THF(0.53mL)中の1−ブロモ−4−オクチルベンゼン(16a)(94mg、0.350mmol)の溶液に、n−BuLi(ヘキサン中2.5M、146μL、0.364mmol)を、−78℃で滴下添加する。0.5時間撹拌した後、この混合物に、THF(0.1mL)中の16c(40mg、0.14mmol)を添加し、この溶液を−78℃でさらに2時間撹拌する。次いで、反応を−40℃に温め、1晩撹拌する。飽和NH4Cl溶液を用いて、反応混合物を−40℃でクエンチし、室温に温まるまで放置する。有機層を分離し、水性層をCH2Cl2で3回抽出する。合わせた有機層をブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過する。溶媒を減圧下で除去して、残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc、12:1〜8:1)によって精製して、化合物16d(21mg、32%)をわずかに黄色の油として得る。
中間体化合物16eを合成するために、トルエン(0.3mL)中の16e(15mg、0.032mmol)の溶液に、バージェス試薬(15mg、0.064mmol)を添加する。この混合物を、アルゴン下で4時間加熱して還流させた後、室温まで冷まし、EtOAcで希釈する。混合物を水、ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過する。溶媒を減圧下で除去する。そして、残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc、12:1〜8:1)によって精製して、化合物16e(10mg、67%)をわずかに黄色の油として得た。
中間体化合物16fを合成するために、MeOH(1.0mL)中の16e(20mg、0.044mmol)の溶液に、Pd/C(10%、4.6mg、0.004mmol)を添加する。フラスコから空気を吸い出し、H2によって置き換える。TLCによって完了が示されると(1晩)、反応混合物を、セライトを通して濾過する。溶媒を減圧下で除去して、残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc、12:1〜8:1)によって精製して、水素化生成物である化合物16f(19mg、95%)を白色の固体として得る。融点(82.5〜83.5℃)。
中間体化合物16gを合成するために、無水THF(1.0mL)中の水素化アルミニウムリチウム(1.3mg、0.033mmol)の混合物を0℃に冷却する。次いで、この混合物に、THF(1.0mL)中の16f(15mg、0.033mmol)をゆっくりと添加する。0℃で1時間撹拌した後、水によって反応をクエンチし、CH2Cl2で希釈し、水およびブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過する。溶媒を減圧下で除去して、残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc、4:1)によって精製して、化合物16g(11.4mg、90%)をわずかに黄色の油として得る。
最終的に、化合物16を合成するために、16g(9mg、0.023mmol)の入ったフラスコに、HCl(1,4−ジオキサン中4M、1.2mL、4.621mmol)を添加し、この溶液を、TLCによって完了が示されるまで、室温で撹拌する(1〜5時間)。溶媒を減圧下で除去し、1,4−ジオキサン(2mL)をフラスコに添加し、蒸発させて、残留HClを除去する。この粗製混合物を、フラッシュクロマトグラフィー(CH2Cl2:EtOH、8:1〜4:1)によって精製して、黄色の油を得る。この油を水に溶解させ、プラスチックのシリンジフィルター(孔径:0.45μm)を通して濾過し、凍結乾燥させて、化合物5(7.0mg、93%)をわずかに黄色の固体として得る。
化合物17:化合物17は、図20に図示されているように、化合物16を合成するための手順に従うことで得られた。化合物17bは公知の化合物である。そして、スペクトルデータは、提案された構造と一致し、文献において報告されているものと整合した。(Chabaud, P.ら、Tetrahedron、2005年、61巻、3725〜3731頁。)
化合物18:化合物18の合成は、図21に図示されている。化合物18aは、化合物16gを合成するための手順に従うことで合成される。
中間体化合物18bを合成するために、無水CH2Cl2(0.8mL)中の化合物18a(16mg、0.041mmol)の溶液に、クラブトリー触媒(5.0mg、0.006mmol)を添加する。次いで、この淡橙色の混合物を、72時間、70psiの水素圧力に供する。溶媒を減圧下で除去して、残留物を、フラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc、10:1〜8:1)によって精製して、トランス水素化生成物18b(11.6mg、72%)をわずかに黄色の油として得る。
最終的に、化合物18を合成するために、18b(11.6mg、0.030mmol)の入ったフラスコに、HCl(1,4−ジオキサン中4M、0.75mL、3.0mmol)を添加し、この溶液を、TLCによって完了が示されるまで、室温で撹拌する(1〜2時間)。溶媒を減圧下で除去し、1,4−ジオキサン(2mL)をフラスコに添加し、蒸発させて、残留HClを除去する。この粗製混合物を、フラッシュクロマトグラフィー(CH2Cl2:EtOH、8:1〜4:1)によって精製して、黄色の油を得る。この油を水に溶解させ、プラスチックのシリンジフィルター(孔径:0.45μm)を通して濾過し、凍結乾燥させて、18(8.5mg、88%)をわずかに黄色の固体として得る。
化合物19:化合物19の合成は、図22に図示されている。化合物19は、化合物18を合成するための手順に従うことで得られた。化合物19aは、16gを合成するための手順に従うことで得られた。
医薬製剤およびその処置
実施形態では、小分子アザ環式拘束スフィンゴ脂質様分子は、処置するための、治療用医薬へと製剤化される。多くの実施形態は、アザ環式拘束スフィンゴ脂質様分子を含有する医薬で処置する方法を対象とする。一部の実施形態では、医薬は、例えば新生物、がん、または肥満などの増殖的成長または過剰な栄養素の消費によって例示される障害を標的とする。他の実施形態は、栄養素の輸送を変更する医薬を有することになる。なおも他の実施形態は、PP2A酵素を活性化する医薬を有することになる。なおも他の実施形態では、医薬は、酵素、FYVEフィンガー含有ホスホイノシチドキナーゼ(PIKfyve)を誤った場所に局在化させることが可能である。
多くのこのような実施形態では、治療薬のための投与様式には、限定されるものではないが、経口、経皮、経粘膜(例えば舌下、鼻、膣もしくは直腸)、または非経口(例えば皮下、筋肉内、静脈内、ボーラスもしくは持続注入)が含まれる。必要とされる薬物の実際の量は、罹患している個体のサイズ、年齢、および疾患の重症度などの因子に依存することになる。また、必要とされる薬物の実際の量は、様々なアザ環式拘束スフィンゴ脂質様化合物の有効阻害濃度範囲にも依存することになる。下の表1〜6においてより詳細に示され、かつ記載されているように、異なる類似体化合物は、異なる有効阻害濃度範囲を有する。
一部の実施形態では、アザ環式拘束スフィンゴ脂質様化合物は、処置の過程の一部として、治療有効量で投与される。この文脈において使用される場合、「処置」するとは、処置される障害の少なくとも1つの症状を好転させる(ameliorate)こと、または有益な生理学的効果もたらすことを意味する。例えば、このような症状の好転の1つは、新生物の増殖を阻害することであり得る。新生物の増殖の評価は、多くの方法で実施することができ、限定されるものではないが、腫瘍直径における変化、腫瘍バイオルミネセンスにおける変化、腫瘍体積における変化、腫瘍質量における変化、または新生物細胞増殖速度における変化を評価することが含まれる。
治療有効量は、このような処置の影響を受けやすい疾患または病理学的状態、例えば白血病、前立腺がん、結腸がん、肺がん、膵臓がんもしくは乳がんなどのがん、または発がん性のRas変異が形質転換細胞に対して複数の代謝的利点を生み出す疾患などの症状を、予防、低減、好転、または排除するのに十分な量であり得る。一部の実施形態では、治療有効量は、栄養素、例えばグルコースまたはアミノ酸などの細胞への輸送を低減するのに十分な量である。
化合物の投薬量、毒性、および治療有効性は、例えばLD50(集団の50%にとって致死的な用量)およびED50(集団の50%において治療的に有効である用量)を決定するための、例えば細胞培養物または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比が治療指数であり、これは、LD50/ED50という比で表すことができる。高い治療指数を呈する化合物が好ましい。毒性副作用を呈する化合物が使用されてもよいが、非新生物細胞に対する潜在的な損傷を最小化し、それにより副作用を低減するために、罹患組織の部位に対してそのような化合物を標的化させる送達系を設計するための注意が払われるべきである。
細胞培養物アッセイまたは動物研究から得られたデータを、ヒトにおいて使用する場合の投薬量の範囲を処方する際に使用することができる。医薬が全身的に提供される場合、そのような化合物の投薬量は、好ましくは、毒性がわずかかまたは毒性のないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投薬量は、用いられる剤形および活用される投与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。本発明の方法において使用される任意の化合物について、治療有効用量は、最初は、細胞培養物アッセイから推定され得る。用量は、動物モデルにおいて、循環血漿濃度を達成するように処方されてもよく、あるいは細胞培養物において決定する場合、処置される局所的環境内において、IC50(すなわち、新生物成長の最大半量阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む範囲で処方されてもよい。このような情報は、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定するために使用することができる。血漿中のレベルは、例えば質量分析計に連結した液体クロマトグラフィーによって測定することができる。
「有効量」とは、有益なまたは所望の結果をもたらすのに十分な量のことである。例えば、治療量とは、所望される治療効果を達成する量のことである。この量は、疾患または疾患症状の発症を予防するのに必要な量である予防有効量と、同じであってもあるいは異なっていてもよい。有効量は、1回または複数回の投与、適用、または投薬量で投与されてもよい。組成物の治療有効量は、選択される組成物に依存する。組成物は、1日当たり1回〜1回または複数回から1週間当たり1回または複数回、例えば1日おきに1回などで投与されてもよい。当業者であれば、ある特定の因子、例えば、限定されるものではないが、疾患または障害の重症度、以前の処置、被験体の一般的健康状態および/または年齢、ならびに他の存在する疾患などが、被験体を有効に処置するために必要とされる投薬量およびタイミングに対して影響を及ぼし得ることを理解するであろう。また、被験体を、治療有効量の本明細書に記載される組成物で処置することは、単回の処置または一連の処置を含み得る。例えば、所望される治療上の結果を達成するために、いくつかに分割された用量が毎日投与されてもよく、1用量が投与されてもよく、あるいは化合物の周期的投与が行われてもよい。単一のアザ環式拘束スフィンゴ脂質様小分子化合物が投与されてもよく、あるいは様々なアザ環式拘束スフィンゴ脂質様小分子化合物の組み合わせが投与されてもよい。
これらの化合物の溶解度を改善する薬剤を添加することも可能である。例えば、特許請求される化合物は、選択される投与経路に従って、1つまたは複数の、アジュバントおよび/または薬学的に許容される担体とともに製剤化されてもよい。経口適用の場合、ゼラチン、矯味矯臭剤、またはコーティング材料が添加されてもよい。一般に、溶液または乳濁液の場合、担体は、水溶液またはアルコール/水溶液、乳剤または懸濁剤、例えば生理食塩水および緩衝媒体などを含み得る。非経口的ビヒクルは、とりわけ、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムを含み得る。加えて、静脈内ビヒクルは、流体および栄養素補液、電解質補液などを含み得る。
また、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなどの防腐剤および他の添加剤が存在してもよい。(一般に、Remington's Pharmaceutical Sciences、第16版、Mack、(1980年)を参照されたい。この開示は、参照により本明細書に組み込まれる。)
免疫抑制剤化合物FTY720の抗増殖活性
FTY720は、周知の免疫抑制剤であり、その化学構造は図2に図示されている。免疫抑制剤として用いられる場合、FTY720は、in vivoでのリン酸化を必要とするプロドラッグである。いったんリン酸化されると、FTY720は、S1P受容体を活性化させた後、下方調節して、二次リンパ組織にリンパ球を隔離することによって、機能的アンタゴニストとして作用する。リンパ球を隔離することによって、FTY720は、これらの免疫細胞を血液循環から除去することで、免疫系を抑制する。
また、FTY720は、強力な抗増殖剤でもある。(Lee, T. K.ら、(2005年)Clin. Cancer Res.、11巻、8458〜8466頁、Azuma, H.ら、(2002年)Cancer Res.、62巻、1410〜1419頁、Chua, C. W.ら、(2005年)Int. J. Cancer、117巻、1039〜1048頁、Azuma, H.ら、(2003年)J. Urol.、169巻、2372〜2377頁、Neviani, P.ら、(2007年)J. Clin. Invest.、117巻、2408〜2421頁。これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。近年、科学者らは、抗がん剤として使用するためにFTY720を提案し始めている(例えば、Byrd, J.C.ら、US2013/0123366を参照されたい。この開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。動物モデルにおいては有効であるものの、FTY720は、その活性リン酸化形態が、S1P受容体1およびS1P受容体3に対する作用を通じて重大な徐脈を誘起することから、ヒトがん患者においては使用することができない。(Camm, J.ら、(2014年)Am. Heart J.、168巻、632〜644頁、Cohen, J. A.、(2011年)Ann. Neurol.、69巻、759〜777頁、Sanna, M.G.ら、(2004年)J. Biol. Chem.、279巻、13839〜13848頁。これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。このS1P受容体の活性化によって、FTY720の抗がん薬としての有用性は排除されてきた。
FTY720は、多発性硬化症(MS)を処置するための効果的なFDA承認薬であり、フィンゴリモドという名称で登録されている(商標名、Gilenya)。MSを処置するために使用される用量では、FTY720は、良好に耐容されることが示されている。しかしながら、がんの処置の場合、有効であるためには増加した用量のFTY720が必要とされる。このFTY720の必要量は、S1P受容体1および3の活性化を介して、徐脈を引き起こすことが示されている。(例えば、Lee, T. K.ら、Clin. Cancer Res.、2005年、11巻、8458〜8466頁、Azuma, H.ら、Cancer Res.、2002年、62巻、1410〜1419頁、Chua, C. W.ら、Int. J. Cancer、2005年、117巻、1039〜1048頁、Azuma, H.ら、J. Urol.、2003年、169巻、2372〜2377頁、Neviani, P.ら、J. Clin. Invest.、2007年、117巻、2408〜2421頁、Sanna, M. G.ら、J. Biol. Chem.、2004年、279巻、13839〜13848頁、およびKoyrakh, Lら、Am. J. Transplant.、2005年、5巻、529〜536頁を参照されたい。これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。)したがって、FTY720は、がんを処置するその潜在能力にも関わらず、用量制限的な徐脈の副作用によって、がん処置にとって受け入れがたいものとされている。最近、科学者らが、FTY720がS1P受容体の活性化とは独立して新生物細胞を処置できることを公開した。(Romero Rosales, K.ら、(2011年)、Biochem. J.、439巻、299〜311頁。この開示は、参照により本明細書に組み込まれる。)FTY720が、プロテインホスファターゼ2A(PP2A)の活性化を伴う機序を通じて、アミノ酸およびグルコースのための原形質膜輸送体を下方調節することに続く、飢餓様の死を誘発することが見出された。これは、S1P受容体を活性化させないが、栄養素輸送体の発現を低減する能力を保持するスフィンゴ脂質様分子が、安全かつ有効な抗がん剤となり得ることを示している。
当該技術分野では、すべての生きた細胞は、それら自体にグルコースおよびアミノ酸などの栄養素を細胞外環境から供給するために、輸送体を発現することが周知である。したがって、新生物細胞の栄養素輸送体の阻害は、非新生物の健康細胞に対しても影響を及ぼす可能性がある。この影響は、健康細胞にとって、有害であり、あるいは有毒ですらあり得る。それでもなお、新生物細胞の栄養素輸送体系を標的とすることは、危険ではあるものの興味深い、がんおよび他の新生物を攻撃するための実験的仮説であり続けた。
新生物の栄養素輸送体を標的とする処置の可能性の1つは、競合的阻害因子(例えばフロレチン)を使用することである。しかしながら、栄養素輸送体の競合的阻害因子は、有効であるにはミリモル濃度にまで達しなければならないため、抗がん薬の候補としては不良である。一方で、栄養素輸送体の輸送を調節する、進化的に保存されている経路を標的とすることは実現可能であり得る。例えば、スフィンゴ脂質であるフィトスフィンゴシンで処置することで、酵母のアミノ酸輸送体を下方調節すると、順応的に成長停止が誘起される(Chung, N.ら、J. Biol. Chem.、276巻、35614〜21頁(2001年)。この開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。また、天然に存在するスフィンゴ脂質であるセラミドおよびFDA承認薬であるFTY720も、栄養素輸送体を下方調節し、哺乳動物細胞において飢餓を誘発する(Guenther, G. G.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.、105巻、17402〜7頁(2008年)、Romero Rosales, K.ら、Biochem. J.、439巻、299〜311頁(2011年)、Welsch, C. A.ら、J. Biol. Chem.、279巻、36720〜36731頁(2004年)、Azuma, H.ら、Cancer Res.、62巻、1410〜1419頁(2002年)、Pchejetski, D.ら、Cancer Res.、70巻、8651〜8661頁(2010年)、Neviani, P.ら、J. Clin. Invest.、117巻(2007年)、Chua, C. W.ら、Int. J. Cancer、117巻、1039〜48頁(2005年)、Lee, T. K.ら、Clin. Cancer Res.、11巻、8458〜8466頁(2005年)。これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。輸送体の喪失は腫瘍成長を緩徐にするものの、マクロピノサイトーシス経路およびオートファジー経路の活性化によって、特にこれらの経路が両方とも上方調節されている、活性化されたRasを有する腫瘍では、スフィンゴ脂質によって誘発された飢餓に対する耐性がもたらされる場合がある。(Commisso, C.ら、Nature、497巻、633〜7頁(2013年)、White, E.、Genes Dev.、27巻、2065〜2071頁(2013年)。これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。したがって、栄養素の取り込みを標的とする望ましい抗新生物化合物は、機序が複雑であることと、それらの化合物が、新生物の成長を緩徐にするためには、栄養素輸送体の発現の下方調節、ならびにミクロピノサイトーシス経路およびオートファジー経路の遮断、ならびに栄養素獲得の他の機序の遮断を含み得る、複数の栄養素輸送体経路を標的とする必要があり得ることとによって、発見することが困難であった。
他のスフィンゴ脂質様化合物
従来の研究では、一般的なピロリジンコアスキャフォールドA(図23)によって表されるFTY720の拘束アザ環式類似体として、2,3,5−三置換ピロリジンのシリーズが調製されてきた(Hanessian, S.ら、(2007年)Bioorg. Med. Chem. Lett.、17巻、491〜494頁。この開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。これらの、(2R,3R,5R)−2,5−ビス−ヒドロキシメチル−3−(4−オクチル)フェニルピロリジン(化合物1)および対応するエナンチオマー(化合物2)のリン酸化バージョンは、FTY720ホスフェートと比較して、S1P1およびS1P3よりもS1P4およびS1P5に対して顕著な選択性を呈した。この観察により、FTY720のコンフォメーション的に柔軟であるアミノジオール部分の化学修飾が、S1P受容体に対する選択的親和性につながり得るということが認められた(Clemens, J. J.ら、(2005年)Bioorg. Med. Chem. Lett.、15巻、3568〜3572頁、Davis, M. D.ら、(2005年)J. Biol. Chem.、280巻、9833〜9841頁、Zhu, R.ら、(2007年)J. Med. Chem.、50巻、6428〜6435頁、Forrest, M.ら、(2004年)J. Pharmacol. Exp. Ther.、309巻、758〜768頁。これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。
別の研究では、合成的により入手しやすい、立体化学的に別個の2−ヒドロキシメチル4−O−アリールメチルピロリジンのシリーズの、FTY720の拘束類似体が報告された。これは、(2R,4S)−類似体B(図24)によって例示されるように、BCR−Abl発現細胞株において顕著な抗白血病活性を呈した(Fransson, R.ら、(2013年)ACS. Med. Chem. Lett.、4巻、969〜973頁。この開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。エナンチオマーである(2S,4R)−ジアステレオマーは活性が6分の1であったため、立体化学的依存性が示された。しかしながら、拘束FTY720類似体のこのシリーズは、固形腫瘍由来の多くの細胞株を含む他の種類のがん細胞株に対して呈した活性が、遥かに弱かった。
C−アリール拘束ピロリジン化合物の機序
したがって、従来の研究とは著しく対照的に、FTY720のS1P受容体に関連する用量制限的毒性と関与することのない、C−アリール拘束ピロリジン類似体シリーズに基づく、安全かつ有効な抗がん剤が、本発明の実施形態として提示される。特定の実施形態では、拘束アザ環式スフィンゴ脂質様分子としてのC−アリールピロリジンが、新生物成長の有望な阻害因子であることが発見された。したがって、実施形態は、S1P受容体を活性化させない強力な増殖阻害因子としての、拘束アザ環式スフィンゴ脂質様分子としてのC−アリールピロリジンを対象とする。さらに、本発明の実施形態、特に化合物SH−BC−893は、セラミドおよびFTY720の薬理学的に不利な点を有しない、新規の抗新生物スフィンゴ脂質様化合物である。本発明の実施形態は、LDL、マクロピノソーム、およびオートファゴソームの分解にとって必須であるリソソーム融合反応を遮断し、同時に、細胞表面からのグルコースおよびアミノ酸の輸送体を下方調節することによって、抗がん活性に対して影響を及ぼす。
FTY720などの従来技術の分子は、新生物成長を阻害し、重篤な徐脈を引き起こすことが見出されている(図25)。一方で、C−アリールアザ環式拘束スフィンゴ脂質様化合物は、新生物成長を阻害するが、徐脈症状を刺激することはない。高用量のFTY720でのS1P受容体の活性化は、徐脈の表現型を刺激することが現在公知である。拘束ピロリジンを有するある特定のスフィンゴ脂質様分子はS1P受容体を活性化させず、したがって、これらの分子は徐脈を引き起こさない(図25および図34〜36)。したがって、本発明の実施形態は、S1P受容体の活性化を予防するスフィンゴ脂質様分子の拘束ピロリジン部分を対象とする。
C−アリールアザ環式拘束スフィンゴ脂質様化合物およびFTY720は、ある生体エネルギー的機序によって、S1Pの活性化から独立して、新生物を阻害および殺傷する。この機序では、スフィンゴ脂質様化合物は、グルコースおよびアミノ酸などの重要な栄養素および生物燃料に対するアクセスを防止することによって、新生物細胞を餓死させる(図26)。したがって、本発明の多くの実施形態は、新生物細胞から重要な栄養素およびアミノ酸を欠乏させる、アザ環式拘束スフィンゴ脂質様化合物を対象とする。
新生物細胞は、いくつかの異なる経路によって栄養素を獲得することができる。これらの経路には、アミノ酸またはグルコース輸送チャネルによって細胞膜を横切る栄養素の通路(1)、LDL受容体を介した低密度リポタンパク質(LDL)移入(2)、オートファジー(3)、およびマクロピノサイトーシス(4)が含まれる(図26)。したがって、本発明の複数の実施形態は、栄養素輸送体、LDLエンドサイトーシス、オートファジー、またはマクロピノサイトーシスによる栄養素へのアクセスを防止する処置としての拘束スフィンゴ脂質様分子を対象とする。
この生体エネルギー的機序の詳細な説明図を、図27に表している。示されるように、アザ環式拘束スフィンゴ脂質様分子(101)は、栄養素輸送体の細胞内移行経路(103)および/または空胞形成経路(105)という並行する2つの経路を刺激することができる。全体としては、これらの経路は両方とも、最終的には細胞内栄養素の減少(111)および(125)につながり、これによって、処置された細胞は、生体エネルギーストレスを受けることになる(127)。しかしながら、細胞種が異なれば、ストレスに対する反応も異なる。健康な正常細胞(129)は静止状態となり(133)、より低い栄養補給速度に対して単に順応する。しかしながら、形質転換された新生物細胞(131)は、高レベルの栄養素に対して「依存症」であるため、この生体エネルギーストレスに対して順応することができない。これらの新生物細胞は、栄養素が欠乏しているにも関わらず、高分子を合成しようとする試みを継続し、最終的には蓄えが枯渇したときに細胞死を迎える(133)。
栄養素輸送体の細胞内移行経路(103)および空胞形成経路(105)はそれぞれ、アザ環式拘束スフィンゴ脂質様分子がPP2A複合体を活性化すること(107)および(113)で始まる。これらの経路は別個であるため、活性化されるPP2A複合体は、これら2つの経路に関して異なったものであると考えられる。PP2Aは、90を超えるアイソフォームを有するヘテロ三量体の複合体であり、したがって、スフィンゴ脂質様分子が異なるPP2A複合体を刺激して、ひいてはこれらの複合体が2つの別個の経路を誘起し得る可能性はかなり高い。
栄養素輸送体の細胞内移行経路(103)では、PP2Aの活性化(107)は、直接的に、細胞表面からの栄養素輸送体の喪失(109)につながる。この輸送体の喪失は、グルコースおよびアミノ酸などの栄養素の細胞外空間からの利用可能性を低減する(111)。利用可能な栄養素の低減は、少なくとも部分的に、生体エネルギーストレス(127)に寄与する。
並行する空胞形成経路(105)では、PP2Aの活性化(113)は、キナーゼPIKfyveの誤った場所での局在化を引き起こし得る(115)。したがって、PIKfyveは細胞の多小胞体と会合せず、LDL小胞、マクロピノソーム、およびオートファゴソームとのリソソーム融合(117)を減少させる。結果的に、リソソーム融合の欠乏は、LDLの分解(119)、マクロピノソームの分解(121)、およびオートファジー(123)を減少させ、ひいてはこれらは、細胞外栄養素(111)および細胞内栄養素(125)それぞれに対する細胞のアクセスを減少させる。ここでも、利用可能な栄養素の低減が、生体エネルギーストレス(127)に寄与する。
生体エネルギーストレスの機序を理解することで、C−アリールアザ環式拘束スフィンゴ脂質様化合物が、あらゆるすべてのがんの種類およびクラスを処置可能であることがわかるようになる。すべての新生物にわたって一貫している特質の1つは、同化作用に対する、柔軟性のない拘束(commitment)である。したがって、任意のがんのクラス、例えば、限定されるものではないが、成長が遅い、成長が速い、侵攻性、悪性、Ras陽性、PTEN陰性、良性、転移性、結節性、特発性、固形腫瘍、または血液がんとして特徴付けられる新生物などが、アザ環式拘束スフィンゴ脂質様化合物に対して感受性であることが予期される。したがって、これらの分子は、ほぼすべてのがん性組織、例えば、限定されるものではないが、白血病、前立腺がん、結腸がん、膵臓がん、または乳がんなどに対して有効であることが予期される。さらに、記載されるスフィンゴ脂質様化合物は、患者間および患者内での新生物の不均質性の合併症を克服すべきである。不均質性を克服することは、腫瘍の遺伝子型に対して特異的な多くの現在の処置にとって一般的である薬物耐性を低減させることにもなる。
この生体エネルギーストレスモデルからは、C−アリールアザ環式拘束スフィンゴ脂質様化合物が、新生物障害に加えて、ある特定の代謝障害も処置できることが予測され得る。特に、過剰な栄養素を獲得する障害、例えば肥満などを、これらの化合物で処置し得る。細胞における栄養素の取り込みを制限することによって、患者は、過剰な体重を減らすことが予期され得る。C−アリールアザ環式拘束スフィンゴ脂質様化合物は、ヒト患者において有効であることが十分に予期される。下の例示的実施形態において説明されるように、スフィンゴ脂質様化合物は、複数のヒト新生物細胞株、マウスにおける細胞株異種移植片、およびマウスにおける特発性腫瘍に対して有効である。これらのモデルの各々、ならびに患者由来のがんオルガノイドおよびマウスにおける患者由来のがん異種移植片における成功から、これらの分子が、ヒト臨床治験においても最終的には効果的であることが予期される。さらに、これらの化合物が、他のがん処置または医薬、例えば、限定されるものではないが、FDA承認標準治療、メトトレキセート、ゲムシタビン、タモキシフェン、タキソール、ドセタキセル、およびエンザルタミドなどと組み合わせてもよく、それらの有効性を向上させ得ることが予期される。
この生体エネルギー的機序に従って、本発明の多くの実施形態は、ストレスの増加に起因して新生物細胞を殺傷することが可能である、アザ環式拘束スフィンゴ脂質様化合物を対象とする。他の実施形態では、スフィンゴ脂質様化合物は、正常な健康細胞に対して毒性をもたない。さらに多くの実施形態では、スフィンゴ脂質様化合物は、栄養素輸送体の細胞内移行経路および/または空胞形成経路を刺激する。本発明の実施形態は、細胞外栄養素または細胞内栄養素に対する細胞のアクセスを低減することが可能である、スフィンゴ脂質様化合物を対象とする。より具体的な実施形態は、表面栄養素輸送体の量、LDLの分解、マクロピノソームの分解、またはオートファジーを減少させることが可能である、これらの化合物を対象とする。さらに、他の実施形態は、PP2Aの活性化、PIKfyveの誤った場所での局在化、またはリソソーム融合の減少を対象とする。
まとめると、本明細書に記載されるC−アリールアザ環式拘束スフィンゴ脂質様化合物は、当該技術分野における他のアプローチに内在する致死的な副作用を伴わずに、がんおよび新生物と戦い、受け入れがたいFTY720を、抗がん剤として有効に利用するものである。したがって、小分子アザ環式拘束スフィンゴ脂質様分子、このような小分子に基づく治療薬、ならびにがんおよび他の障害の処置において使用するためにこのような治療薬を組み込む処置レジメンの実施形態が下に提示される。
例示的実施形態
生物学的データは、障害を処置する様々な実施形態における、前述のアザ環式拘束スフィンゴ脂質様化合物の使用を支持している。従来の研究により、FTY720の柔軟なアミノジオール部分に対する化学修飾が、S1P受容体に対する選択的結合に影響を及ぼすことは確立されている。(上で引用した、Clemens,J.J.ら、Davisら、Zhuら、およびForrestら。)本開示によるFTY720のアザ環式拘束類似体の実施形態は、新生物細胞を殺傷し、および/またはその成長を阻害し、徐脈のような致死的な副作用のリスクを低減することに留意されたい。したがって、様々な疾患を処置するためにこれらの化合物を使用する実施形態は、従来のアプローチと関連する潜在的な危険を回避する。考察されるように、データは、本開示による小分子アザ環式拘束スフィンゴ脂質様分子の実施形態が、既存のFTY720関連分子および関連する処置方法よりも優れているという提案を支持している。
アザ環式拘束スフィンゴ脂質様小分子の実施形態の予期される治療有効性は、PC3およびDU15前立腺がん細胞を使用する予備研究において実証された、その生物学的活性に起因する。SW−620およびSW−480結腸がん細胞、A−549肺がん細胞、PANC−1膵臓がん細胞、MDA−MB−231乳がん細胞、ならびにSup−B15白血病細胞を使用する追加的な研究により、アザ環式拘束スフィンゴ脂質様小分子の実施形態の生物学的活性が実証された。下で考察されるように、ピロリジンにおける窒素の電荷に対する変更およびリン酸化部位の喪失などの、わずかな化学修飾および構造修飾が、これらの分子の活性に対して異なった影響を及ぼす。ピロリジン(ラクタム)における窒素の電荷に対する変更は、活性の喪失につながった。リン酸化部位の喪失は、活性に対してわずかに影響を及ぼした。したがって、非ラクタム類似体でも、FTY720対照を上回る治療上の利点を示す。アザ環式拘束スフィンゴ脂質様化合物の実施形態は、少なくとも、マクロピノソームおよびオートファゴソームの分解にとって必須であるリソソーム融合反応を遮断し、細胞表面からのグルコースおよびアミノ酸の輸送体を下方調節することによって、腫瘍成長を緩徐にし、がん細胞を殺傷する。
アザ環式拘束スフィンゴ脂質様化合物およびがん細胞に対する効果の最適化:
第1の実施形態では、異なる小分子の殺傷能力を実証するために、細胞培養物アッセイを実行した。先に提示した化合物1〜4(図23)、化合物5〜8(図28)、および対照化合物FTY720(図2)を使用して、良好に樹立されたPC3およびDU145前立腺がん株を処置した(図29および表1)。これらのがん株の増殖を測定するために、Cell Titer Gloアッセイを実施した。表1に示されているように、化合物1〜8はそれぞれ、その抗がん活性を保持することが可能である。
化合物5〜8は、化合物1〜4の切断されたバージョンであり、5−ヒドロキシメチル基を含有していない。化合物5および6は、前立腺がん細胞株においてFTY720と同程度に活性であったため、この構造的バージョンは、化合物1〜4の活性を縮小させていなかった。また、これらの知見は、このシリーズのC−アリール類似体における立体化学は、抗がん標的との相互作用にとって重要ではないことも示唆している。
別の例示的実施形態では、ピロリジン環における窒素の電荷が活性にとって重要であるかどうかを決定するために、さらなる細胞培養物アッセイを実行した。特に、ラクタム環を含有する化合物9〜11(図30)を、前立腺がん細胞増殖アッセイにおける類似体6〜8(図28)に対応して比較した。図31および表1に示されているように、ピロリジンにおける窒素の電荷を中和することは、活性の劇的な喪失をもたらした。これは、標的との静電相互作用が、化合物の活性にとって非常に重要であり得ることを示唆している。
なおも別の例示的実施形態では、S1P受容体活性に対するリン酸化の効果を実証するために、細胞培養物アッセイを実行した。リン酸化は、徐脈を引き起こす可能性があるS1P受容体の活性に対して影響を及ぼし得る。がん患者におけるFTY720の使用を防止する用量制限的毒性である徐脈は、S1P受容体1および3に対するFTY720−Pの作用に起因する。(Camm, J.ら、(2014年)Am. Heart J.、168巻、632〜644頁、Cohen, J. A.、Chun, J.、(2011年)Ann. Neurol.、69巻、759〜777頁、Sanna, M.G.ら、(2004年)J. Biol. Chem.、279巻、13839〜13848頁。これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。スフィンゴシンキナーゼによるリン酸化によって、化合物は、S1P受容体を活性化させることができるようになり得る。例えば、FTY720は、リン酸化された場合に、S1P受容体1および3を活性化させることが公知である。化合物5はリン酸化され得るため、化合物5およびそのホスフェートである5−P(図28)のS1P受容体に対する活性を評価した(図32)。予期されたように、陽性対照S1Pは、ナノモル濃度で、その受容体のすべて(1〜5)を活性化させた。対照的に、様々な実施形態によるアザ環式拘束スフィンゴ脂質様分子の例示的実施形態は、S1P受容体を活性化させないか、あるいはほんのわずかしか活性化させない。特に、細胞培養物に基づくアッセイは、類似体5、5−P、および6が、S1P受容体2、3、4、または5を活性化させなかったことを示している(図32)。S1P受容体1はわずかに活性化されたが、S1P対照よりも1000倍多い用量(>1uM)で活性化されたに過ぎなかった。以前の報告では、他のC−アリール拘束スフィンゴ脂質様化合物がS1P受容体を刺激することが示されていたこと(Hanessian, S.ら、(2007年)Bioorg. Med. Chem. Lett.、17巻、491〜494頁、上で引用した)を考慮すると、これらの結果は予期せぬものであった。これらの結果は、新生物を処置するためにFTY720および他のスフィンゴ脂質様化合物を使用することを妨げてきたS1P受容体活性を、スフィンゴ脂質様化合物の本実施形態が欠くことを実証している。
さらなる例示的実施形態では、in vitro研究が、類似体5がPC3およびSW620細胞においてFTY720よりもわずかに効率的にリン酸化され、培地中に搬出されることを示している(図33、16時間インキュベートした後の、前立腺がん(PC3)または結腸がん(SW620)細胞におけるリン酸化化合物、UPLC−MS/MSによって回収された化合物全体のパーセントとして表されている)。これはさらに、S1P受容体活性化の喪失が、非効率的なリン酸化の結果ではないことを実証している。
さらにより例示的な実施形態では、化合物5および5−Pを、複数のS1P受容体をin vivoで活性化するそれらの能力に関してさらに調査した。特に、マウスの心拍数およびリンパ球の隔離について調査した。マウスの心拍数は、S1P受容体3が活性化された場合に減少し、徐脈が引き起こされるが、一方でヒトでは、この効果はS1P受容体1によって媒介され得る。マウスにおいてもヒトにおいても、S1P受容体1が活性化された場合、リンパ球は隔離される。予期されたように、プロドラッグFTY720および活性化された薬物FTY720−Pは両方とも、生理食塩水ビヒクルと比較して、心拍数をおよそ50%減少させ、有意にリンパ球を隔離した(図34〜図37)。一方で、化合物5および5−Pは、生理食塩水対照と比較して、心拍数またはリンパ球の隔離に対して有意な影響を及ぼさなかった(図34〜図37)。
図36に詳述されている遠隔測定の読み取り値において示されているように、FTY720(B)は、化合物5(C)および対照(A、生理食塩水)と比較して、心拍数を緩徐にした。Aに示されているように、生理食塩水を投与した後、心房脱分極を表す明白に識別できるP波と、心室脱分極を表すQRS群とを有する正常洞調律が、規則的な間隔で観察される。このトレースの心拍数は、1分当たりおよそ600拍(BPM)であった。対照的に、Bに示されているように、FTY720を投与すると、およそ200BPMの徐脈がこのトレースにおいて観察された。明瞭なP波はもはや存在せず、R−Rのリズムは遥かにより可変的であった。このことは、薬物の注射後の最低の心拍数は、単に洞調律における低減に起因するのではなく、洞房結節伝導(sinoatrial node conduction)の抑制に起因することを示していた。最後に、Cに示されているように、例示的実施形態の化合物5では、生理食塩水の注射と同様に、注射後も明確かつ一貫したP波とQRS群とを有する正常洞調律が存在した。このトレースの心拍数は、生理食塩水と同様に、およそ600BPMであった。
このin vivoデータはともに、例示的実施形態化合物5が、がん患者におけるFTY720の使用を妨げてきた用量制限的S1P1活性およびS1P3活性を欠くことを実証している。さらに、活性化合物、例えば5などのリン酸化は、親のFTY720とは異なり、マウスの心拍数に対して有害な効果を有しない。
なおも別の例では、分子のリン酸化のあらゆる可能性を取り除くために、2−ヒドロキシメチル部分を、メチル部分で置き換えた(化合物12〜15)(図38)。予期されたように、化合物12および14は、S1P受容体のいずれも活性化させることはできなかった(図23)。しかしながら、リン酸化不能部分による置き換えは、化合物12〜15のがん細胞株の増殖を抑制する能力を制限することもなかった(表1)。予期せぬことに、これらの化合物は、親である2−ヒドロキシメチル化合物およびFTY720とほぼ同程度に強力であった。したがって、これらの分子は、がんの成長を阻害するのに、2−ヒドロキシメチル部分も、化合物のリン酸化も必要ないことを実証している。
別の例示的研究では、活性に対するC−アリール環の位置の効果を調査した。化合物12〜15におけるC−アリールピロリジンの位置を、3位から4位に移して、化合物16〜19を創出した(図39)。がん細胞株増殖アッセイにおける評価は、4−C−アリールピロリジン16および17が、3−C−アリールピロリジン12〜15およびFTY720と同程度に活性であることを実証した(表1)。しかしながら、化合物18および19は、活性ではあるものの、効力は低かった(表1)。この結果は、このシリーズにおけるピロリジンコアスキャフォールド上の置換基の相対位置および立体化学が、抗がん活性に対して大きな負の効果を有しないことを示唆している。
Cell Titer Glo増殖アッセイは、表1に表されているような化合物をスクリーニングするために使用したが、細胞増殖抑制性である化合物と細胞傷害性である化合物とを良好には区別しない。したがって、本発明の実施形態による類似体が細胞傷害性であるかどうかを決定するために、生細胞色素排除(vital dye exclusion)およびフローサイトメトリーを使用する研究を実行した(表2)。化合物3〜6および14を試験し、細胞傷害性であり、PC3前立腺がん細胞において細胞死を誘起することが見出された。IC
50は、Cell Titer Gloアッセイにおいて観察されたものと同様であった(表1および2)。
本発明の一部の実施形態、例えば少なくとも前立腺がん細胞株における化合物3〜6、14の好適な効力を観察したところで、これらの化合物を用いて、他のがん細胞株を試験した。生細胞色素排除アッセイの結果から、結腸(SW−620)、肺(A−549)、膵臓(PANC−1)、乳房(MDA−MB−231)、および白血病(SupB−15)のがん細胞株において、FTY720と同様の活性が実証された(表3)。表3は、がん細胞株におけるIC
50値を、μΜで示している(NDは、未決定を意味する)。前立腺がん細胞株において活性であった化合物は、FTY720と同様の効力で、BCR−Abl陽性白血病細胞も殺傷した。エナンチオマーである4−O−アリールメチルエーテル化合物20および21とは異なり、4−C−アリール−2−ヒドロキシメチルピロリジン16〜19は、BCR−Abl陽性白血病細胞に対するそれらの活性において、明瞭な立体化学的差異を示さなかった。(Fransson, R.ら、(2013年)ACS. Med. Chem. Lett.、4巻、969〜973頁。)化合物4〜6、14は、FTY720と同様に、肺がん細胞株A−549に対してはわずかに活性が低かった。
本明細書に記載される本発明の実施形態の広範な活性は、上に記載されているような、栄養素輸送体の下方調節を含む、がん細胞に対する生体エネルギー的作用機序と矛盾しない。したがって、栄養素輸送に対する拘束ピロリジンスフィンゴ脂質様分子を直接的に調査するために、いくつかの類似体を用いて、それらのIC50およびこの2倍の用量で処置した後に、アミノ酸輸送体関連タンパク質4F2細胞表面抗原重鎖(4F2hc)の表面レベルを調査した。化合物4、5、および6は、FTY720と同様の有効性で、4F2hcの表面レベルを低減した(図40)。これらの結果は、新生物細胞を飢えさせそして殺傷するための生体エネルギー的機序と矛盾しない。
なおも別の例示的研究では、異種移植腫瘍動物研究における、拘束ピロリジンスフィンゴ脂質様化合物の抗新生物効力。皮下SW620異種移植腫瘍を有するヌードマウスを、腹腔内注射によって、10mg/kgのFTY720、または20mg/kgの化合物5もしくは15で毎日処置した。3種の化合物すべてが、腫瘍成長を阻害した(図41)。これらの結果は、ピロリジンスフィンゴ脂質様化合物が、生体エネルギー的機序によって新生物を処置することが可能であることを示唆している。さらに、これらの化合物は、例えば水溶性、経口バイオアベイラビリティ、および抗腫瘍活性などのFTY720の有益な能力の多くを保持するものの、もはや徐脈を誘起することはない。したがって、これらの化合物は、新生物用の医薬および処置にとって理想的である。
アザ環式拘束スフィンゴ脂質様化合物、ならびに栄養素輸送、空胞形成および細胞死に対する効果のさらなる最適化
アザ環式拘束スフィンゴ脂質様化合物を修飾し、栄養素輸送体タンパク質を下方調節し、細胞質空胞形成を誘発するそれらの能力について分析した。化合物の修飾には、炭化水素鎖の長さ、不飽和度、および付加されている鎖上のアリール部分の存在または不在、ならびに2つの不斉中心における立体化学を変えることが含まれる。一般に、細胞傷害性は、栄養素輸送体の下方調節および空胞形成と正の相関があった。したがって、最大の空胞形成および輸送体喪失をもたらす分子が、最大の抗新生物活性を有することが予期され、したがって、医薬および処置レジメンにとって理想的であり得る。
上に記載される生体エネルギー的機序に基づき、スフィンゴ脂質およびスフィンゴ脂質様分子は、アロステリック調節部位に結合して、PP2Aを活性化させ得る。PP2Aは、基質特異性を制御する、90を超えるアイソフォームを有するヘテロ三量体の複合体である。したがって、スフィンゴ脂質様分子によって、2つの別個のPP2A複合体が活性化されて、2つの別個の表現型:栄養素輸送体の下方調節および空胞形成を誘発することが示唆される。アザ環式拘束スフィンゴ脂質様化合物に対する修飾の目的は、どの特色が、栄養素輸送体の下方調節および空胞形成の両方を最大限に誘発するかを特定することである。
例示的な研究では、栄養素輸送体の下方調節は、フローサイトメトリーによって、アミノ酸輸送体関連タンパク質であるCD98の表面レベルを定量化することによってモニタリングした。空胞形成については、下の「材料および方法」のセクションにおいてより詳細に説明している空胞形成アッセイによって決定した通り、0〜84の範囲でスコア付けした。IC50は、生細胞色素排除アッセイを介して、マウス造血細胞株FL5.12の半分を48時間で殺傷した濃度を測定することによって決定した。このデータは、様々な天然に存在するスフィンゴ脂質および合成のスフィンゴ脂質様化合物について得た。
本発明の実施形態による構造−活性相関(SAR)ストラテジーは、天然に存在するスフィンゴ脂質であるスフィンゴシン(化合物106)およびスフィンガニン(化合物107)、ならびに極度に疎水性の(ただし、生理学的な)長鎖セラミドの代わりに使用されることが多い、中程度に可溶性である短鎖C2−セラミド(化合物109)およびジヒドロ−C2−セラミド(化合物110)を用いて得られた結果を根拠とした(図42および図43)。スフィンゴシン(106)およびスフィンガニン(107)は両方とも、栄養素輸送体の喪失および空胞形成を誘起し、それぞれ3.6μMおよび3.5μMのIC
50で細胞を効率的に殺傷した(図44および表4)。C2−セラミド(109)は、スフィンゴシン(106)と比較して低減された効力で、栄養素輸送体の喪失を誘起した。これは、2.5μMのスフィンゴシン(106)と同様の輸送体の喪失を引き起こすのに、50μMのC2−セラミド(109)が必要であったためである(表4)。C2−セラミドは、いかなる用量においても、空胞形成を引き起こさなかった。PP2Aを活性化させないという従来の報告と一貫して(Chalfant, C. E.ら、Y. A. J. Lipid Res.、2004年、45巻、496頁。この開示は、参照により本明細書に組み込まれる)、ジヒドロ−C2−セラミド(110)は、細胞を殺傷せず、CD98の下方調節を効率的に誘起せず、空胞形成をまったく引き起こさなかった(表4および図44)。C2−セラミド(109)は、スフィンゴシン(106)よりも遥かに活性が低かったが、ジメチルスフィンゴシン(108)は、ほぼ5倍強力であった(IC
50=0.77μΜ)(表4および図44)。興味深いことに、スフィンゴシンを飽和させると、空胞形成は低減したが、輸送体の喪失および細胞傷害性は影響を受けなかった。これらの結果は、天然に存在する異なるスフィンゴ脂質構造は、別個のPP2A複合体を活性化させ、栄養素輸送体の下方調節または空胞形成のいずれかにつながり得ることを示唆している。一部のスフィンゴ脂質は、栄養素輸送体の下方調節および空胞形成の経路を両方とも活性化させたが、他のものは一方の経路しか活性化させず、なおも他のスフィンゴ脂質はどちらの経路も活性化しなかった。
また、天然に存在するスフィンゴ脂質のデータに基づけば、O−ベンジルおよびC−アリールを含有するスフィンゴ脂質様ピロリジン類似体は、栄養素輸送体の下方調節または空胞形成の経路のいずれかを活性化させるそれらの能力において異なり得ることが示唆される。したがって、スフィンゴ脂質様分子のいくつかの改変体を合成し、試験した。この結果は、表4〜表6および図45〜図50に含まれている。
一部の特定の実施形態では、O−ベンジル化合物102および103の鎖長は、C6、C8、C10、C12、またはC14炭化水素鎖で生成された(図45)。これらの化合物を、細胞傷害性、栄養素輸送体レベルに対する効果、および空胞形成に関してアッセイした(表4および図46)。
(2R,4S)および(2S,4R)という両方の立体化学シリーズにおいて、完全飽和鎖を有する類似体114(C12)、116(C14)、121(C12)、および123(C14)は、輸送体アッセイおよび空胞形成アッセイで、活性を喪失した(図46、表4)。類似体115(C12)および122(C12)のように、炭化水素鎖が部分不飽和であった場合は、より長い鎖も耐容された(表4)。類似体114および115と、それぞれエナンチオマーである121および122とによって表されるように、両方の立体化学シリーズにおいて、C12類似体は不飽和である場合により活性であるという知見は、二重結合を導入することによって、標的タンパク質の疎水性結合部位において、準最適に長い炭化水素鎖のより良好な嵌合を可能にし得ることを示唆している。スフィンゴシン(116)が、その飽和同類物であるスフィンガニン(117)よりも空胞形成において良好であったことを想起されたい(表4)。
化合物117および124は、不飽和C14鎖を含有し、強固な空胞形成を誘発せず、輸送体レベルも低減しなかった(表4および図46)。また、このO−ベンジルシリーズにおいて、より短いC6炭化水素鎖を有する類似体(化合物111、112、および118)は、C8炭化水素鎖化合物(102、103、113、および119)よりも活性が低かった(表4)。これらの結果は、化合物115および122のようにC12鎖も部分不飽和であれば耐容されるものの、このシリーズでは、C8炭化水素鎖長が、輸送体アッセイおよび空胞形成アッセイの両方において最適な効力につながることを示している(表4)。
興味深いことに、化合物103に対応する不飽和の(2S,4R)シリーズでは、ピーク空胞形成スコアが、ピーク輸送体喪失スコアよりも高かったが、102に対応する不飽和(2R,4S)シリーズでは、これらの活性は逆転しており、空胞形成よりも高い輸送体喪失が観察された(図46)。例えば、(2S,4R)不飽和化合物119は、(2R,4S)不飽和エナンチオマー113よりも2倍良好に空胞形成を誘起するが、この傾向は、113が、119の2倍近くも輸送体喪失を誘発することで逆転している(表4)。輸送体アッセイおよび空胞形成アッセイにおけるエナンチオマー化合物の活性のこれらの差は、飽和化合物102および103を比較した場合にも明らかではあるが、強固さはより低い。これらの結果は、ある特定のエナンチオマーが、所望される臨床転帰につながり得る所望される特性(例えば、より大きな空胞形成を誘発する)を有し得ることを示唆している。
103の不飽和(2S,4R)類似体が、空胞形成アッセイにおいて、匹敵する飽和化合物よりも遥かに活性であることに留意するのも興味深い。部分不飽和は、輸送体喪失も増加させるが、より低い程度しか増加させない。各アッセイにおいて、炭化水素鎖における不飽和は、すべての化合物の活性を増加させたため、不飽和が、(2S,3R)104のように、構造的に関連するC−アリールシリーズの活性も増進し得るかどうかを評価した(図42および図45)。不飽和類似体125は、アッセイのいずれにおいても、その飽和対応物である104よりも有意に活性であるわけではなかった(表4)。しかしながら、化合物104は、対応する飽和O−ベンジル類似体103よりも、空胞形成の誘発においては遥かに良好である(表4)。
O−ベンジルシリーズと同様に、C−アリールシリーズ内でも、最適な活性に関する立体化学的依存性が存在することが観察されている。したがって、C−アリール類似体(2R,3S)105は、エナンチオマーである(2S,3R)104ほど良好には空胞形成せず、スコアはそれぞれ53および81である(表4)。
要約すると、103によって表されるO−ベンジルシリーズにおける(2S,4R)立体化学は、より良好な空胞形成につながるが、一方で、102の場合のように、エナンチオマーである(2R,4S)立体化学は、栄養素輸送体の下方調節を促進する。これらの結果は、別個のPP2Aヘテロ三量体に対する差次的親和性を反映している可能性がある。両方のアッセイにおいて、C8炭化水素鎖長が好ましく、この最適なテール長では、不飽和は、活性に対して、わずかな正の効果しか有しない。C−アリール(2S,3R)および(2R,3S)類似体104および105では、それぞれのO−ベンジル対応物である103および102と比較して、より良好な空胞形成が観察される。
さらに多くの実施形態では、様々な変更を、O−アルキルピロリジン類似体に関して調査して、スフィンゴシン(106)およびスフィンガニン(107)と比較した(図47)。スフィンゴシン(106)およびスフィンガニン(107)の極性アミノジオール部分を、ピロリジン環と置き換えることは、126が親化合物であるスフィンガニンよりも3倍細胞障害性であった点を除き、エナンチオマー類似体126〜129のIC
50値を劇的には改変しなかった(表5、図48)。CD98輸送体の喪失および空胞形成は、その上昇した細胞傷害性と一貫して、類似体126で親よりもわずかに大きかった。しかしながら、不飽和類似体127は、随伴するIC
50における増加を伴わずに、スフィンゴシンと比較して、輸送体アッセイおよび空胞形成アッセイにおいて活性の減少を呈した。スフィンゴシン(106)およびスフィンガニン(107)は、栄養素輸送体タンパク質に対しては同様の効果を有するが、スフィンゴシン(106)は、スフィンガニン(107)よりも遥かに良好に空胞形成する(図48)。予期せぬことに、この関係性は拘束類似体においては逆転し、ここでは、エナンチオマーである完全飽和拘束スフィンガニン類似体126および128は、空胞形成アッセイにおいて、不飽和スフィンゴシン類似体127および129よりも2〜4倍活性が高かった(表5、図48)。
(2R,4S)立体異性体が、空胞形成において、(2S,4R)バージョンよりもわずかに良好であったものの、立体化学は、O−アルキルシリーズではわずかな効果しか有しなかった(表5、図48)。要約すると、O−ベンジルシリーズとは異なり、拘束は、スフィンゴシン(106)の輸送体活性および空胞形成活性に対して負の効果を有したが、スフィンガニン(107)に対しては有しなかった。
なおもさらに多くの実施形態では、いくつかの類似体のピロリジン窒素の電荷を中和して、その後アッセイした(図49)。予期されたように、塩基性窒素の欠乏を考慮すると、O−ベンジルシリーズにおけるN−アセチル類似体131は、C2−セラミド(109)とスフィンゴシン(106)との間における効力の同様の差異と類似して、類似体102の10分の1の効力であった(表6)。さらに、類似体131は、試験した最高の用量でも空胞形成活性を呈しなかった(表6)。また、空胞形成を非常に効率的に誘発する、104および125などのC−アリール化合物に対するN−アセチル化の効果も評価した。輸送体活性の喪失は有意ではなかったが、化合物134および135は、空胞形成も誘発しなかった(表6)。したがって、C−アリールシリーズのN−アセチル化ピロリジンスフィンゴ脂質様類似体は、栄養素輸送体の下方調節しかもたらさない適用にとっては有用であり得るが、空胞形成に対しては効果を有しない。
N−アセチル化が効力を低減させるという知見は、ピロリジンにおける窒素の正電荷が、化合物の活性の増進にとって非常に重要であるという先の観察と矛盾しない。試験したスフィンゴ脂質の中で、ジメチルスフィンゴシン(108)が、最良の効力、輸送体喪失、および空胞形成を呈したため(表4〜表6、図44)、N−メチル類似体130が、ピロリジンスキャフォールドを有するが、良好な模倣物を表すことが推測された。予期せぬことに、N−メチル類似体130の活性は、親113以下であり、輸送体喪失および空胞形成を誘発するその能力は低減されていた(表6)。
ピロリジン窒素原子の塩基性度を増加させることが、効力も増加させ得るかどうかを決定するために、グアニジノ類似体132および133を生成した(表6)。しかしながら、これらの化合物の効力は、同じシリーズの親化合物103および102と比較して、5〜7分の1になった。また、空胞形成を誘発する能力は、試験した最高濃度(30μM)においても失われた。これらの結果は、塩基性度は重要であるが、ピロリジン窒素の環境における立体効果が、細胞の標的との相互作用において役割を果たし得ることを示唆している。
要約すると、拘束アザ環式スフィンゴ脂質様類似体のこれらのSAR研究は、例えば化合物119などの、(2S,4R)−O−ベンジルピロリジンシリーズの不飽和C8炭化水素鎖を有する化合物が、同じ立体化学を有し、飽和したより長いまたはより短い鎖を伴う類似体よりも、高い全体的活性を有することを示唆している(図50)。119のような(S,R)立体化学は、より良好な空胞形成能力と相関し、一方で、エナンチオマーである102および113のような(R,S)化合物は、栄養素輸送体の喪失を誘起することにおいてわずかにより良好である(表4、ならびに図46および図50)。しかしながら、C−アリールシリーズでは、エナンチオマー間での輸送体の下方調節におけるこの差異は無視できるほどになる(化合物104および105で、それぞれ54%対47%)。試験したピロリジン類似体のうち、それぞれ飽和C−アリール類似体および不飽和C−アリール類似体である104および125が、空胞形成および輸送体の喪失の最も強力な誘発物質であり、低いμM範囲で強力な細胞傷害性をもたらす(図50)。このプロファイルを考慮すると、これらの化合物が、高い抗新生物活性を有することが予測される。
アザ環式拘束スフィンゴ脂質様化合物が、新生物細胞における栄養素獲得を妨害する
上で説明したように、スフィンゴ脂質様化合物は、栄養素輸送体を下方調節することによって、新生物成長を抑制することができる。しかしながら、新生物細胞は、細胞表面の栄養素輸送体を使用することに加えて、マクロピノサイトーシスおよびオートファジーによって栄養素を獲得することもできる。ここで、アザ環式拘束スフィンゴ脂質様化合物が、マクロピノサイトーシスまたはオートファジーを阻害することによって、新生物細胞の栄養素へのアクセスを遮断することができる実施形態を提供する。ある実施形態では、スフィンゴ脂質様化合物は、PP2Aを活性化させ、脂質キナーゼPIKfyveの誤った場所での局在化をもたらす。別の実施形態では、スフィンゴ脂質様化合物は、サイトゾルの空胞形成を誘起する。なおも他の実施形態では、化合物は、低密度リポタンパク質(LDL)、オートファゴソーム、およびマクロピノソームの分解にとって必須であるリソソーム融合反応を遮断する。実施形態は、活性化Rasを発現するか、または腫瘍抑制因子PTENを欠く細胞を選択的に殺傷するスフィンゴ脂質様化合物を対象とする。さらに多くの実施形態は、古典的なワールブルク表現型を呈しない新生物を処置する化合物の能力を対象とする。さらに、一部の実施形態は、正常な増殖性組織に有意に影響を及ぼさずに、新生物成長を阻害する化合物の能力を対象とする。
C−アリールアザ環式拘束スフィンゴ脂質様化合物の能力に関する原理の証拠として、化合物SH−BC−893を、一連の例示的実施形態の実験で徹底的に調査した。(本出願において化合物5および化合物104とも呼ばれるSH−BC−893の化学構造、ならびにFTY720の化学構造は、図51Aに示されている)。いくつかの相関データの表およびグラフとともに、結果を下に提供する(表7および表8、ならびに図51〜図67)。実施形態では、SH−BC−893は、栄養素輸送体の喪失を誘発し、FTY720のS1P受容体関連毒性を伴わずに、飢餓を模倣する。SH−BC−893は、がん患者におけるFTY720の使用を防止する、スフィンゴシン−1−リン酸(S1P)受容体活性を欠いている(図51B)。SH−BC−893は、例えば4F2hcまたはアラニン−セリン−システイン輸送体2(ASCT2)などのアミノ酸輸送体、および例えばグルコース輸送体1(GLUT1)などのグルコース輸送体の選択的細胞内移行を依然として誘起する(図51Cおよび51D)。4F2hcと同様の機能を有するシャペロンタンパク質であるCD147などの他の表面タンパク質は、影響を受けない。細胞が栄養について制限されている場合、Bcl−XL過剰発現を介したアポトーシスの遮断は、SH−BC−893によって誘発された細胞死を防止しなかった(図51E、図52Aおよび52B)。対照的に、輸送体とは独立した、膜透過性の栄養素であるピルビン酸メチルおよびジメチル−α−ケトグルタレートは、SH−BC−893で処置された細胞をレスキューした(図51E)。これらの結果は、SH−BC−893が、栄養素のアクセスを制限することによって細胞を殺傷することを確認するものである。
細胞は、酸化的リン酸化を増加させることによって、栄養素の制限に順応する。解糖および酸化的リン酸化の相対速度は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)の還元形態の蛍光寿命を測定することによってモニタリングすることができる。高比率の、タンパク質に結合したNADH 対 遊離NADH(増加した寿命)は、in vitroおよびin vivoの両方において、複数の細胞種で、増加した酸化的リン酸化と相関する。オリゴマイシンおよびロテノン/アンチマイシンAは、当該技術分野において公知の、解糖を誘発する分子であるが、一方で、2−デオキシ−グルコース(2DG)は、解糖の阻害因子であり、続いて酸化的リン酸化を増加させる。また、グルコースおよびアミノ酸に対するアクセスを取り除くことによる細胞の飢餓も、酸化的リン酸化を増加させることが公知である。
予期されたように、オリゴマイシンまたはロテノン/アンチマイシンAで処置された細胞は、解糖を増加させ、結合したNADH画分を減少させることによって、酸化的リン酸化の喪失を補填した(図51F)。反対に、解糖阻害因子2−DGおよび飢餓は、酸化的リン酸化および結合型NADH 対 遊離NADHの比を増加させた。SH−BC−893は、アミノ酸およびグルコースの飢餓の効果を模倣し、結合したNADH画分および細胞の酸素消費を増加させた(図51Fおよび51G)。細胞は、抗炎症薬FTY720と同様に応答した。したがって、SH−BC−893によって誘起された代謝変化は、重要な代謝基質に対するアクセスが制限された細胞において見られるものと対応している。
上に記載された生体エネルギー的機序と一貫して、より高い同化率を有する細胞は、スフィンゴ脂質様化合物に対してより感受性であるべきである。この機序を試験する例示的実施形態では、異なる同化率を有するマウスFL5.12細胞を、SH−BC−893で処置した。FL5.12細胞の同化率は、それらの必要とする成長因子、IL−3のレベルをモジュレートすることによって滴定することができる。高いおよび低いIL−3において成長させたFL5.12細胞を比較することで、一定の遺伝的背景において、上昇した成長因子のシグナル伝達および同化作用の影響を評価することができる。高濃度のIL−3は、好気性解糖を行わせ、倍加時間を迅速にする(12時間)。IL−3レベルを低減すると、増殖は緩徐になり、細胞の生存率を損なうことなく、酸化的リン酸化が増加する(図53Aおよび53B)。IL−3が低い培地で維持すると、代謝順応に対する必要性が低減され(図53B)、細胞は、SH−BC−893によって誘発される死から保護された(図53A)。このことから、同化作用が低い細胞(例えば、健康細胞)は、同化作用が高い細胞(例えば、新生物細胞)よりも、スフィンゴ脂質様化合物による処置に対して感受性が低いことが示唆される。実際、本発明の特定の実施形態と一貫して、形質転換されていないマウスOP9骨髄間質細胞および初代マウス胚線維芽細胞(MEF)は、例えばDLD−1、LS180、SW48、SW480、SW620、MDA−MB−231、およびPANC−1などのヒトがん細胞株よりも、SH−BC−893に対する感受性が低かった(図53C)。これらのがん細胞株の多くは、Rasにおいて活性化変異を有している。事実、Lox−STOP−Lox−KRasG12D MEFにおけるCre発現後のK−Ras活性化は、代謝柔軟性を制限し、細胞をSH−BC−893に対して感作するのに十分であった(図53Dおよび53E)(細胞株については、Tuveson D.A.ら、Cancer Cell、5巻:375〜87頁、2004年に記載されている。この開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。他の実施形態では、腫瘍抑制因子PTENの喪失が、同様の効果をもたらした(図54Aおよび54B)。重要なことに、発がん性変異は、K−Ras G12Dを発現するかまたはPTENを欠損したMEFにおいて、表面の栄養素輸送体の下方調節に影響を及ぼさなかった(図54C)。
これらの結果は、正常細胞および形質転換細胞は両方ともSH−BC−893の標的を発現するが、化合物に対する差次的感受性を示すことを指し示している。感受性における差異は、新生物細胞が、代謝作用の減少に順応できないことに起因する。これらの結果と一貫して、柔軟な代謝作用を有する健康細胞、例えば正常ヒト末梢血単核細胞(PBMC)は、SH−BC−893に対して耐性を有したが、一方で、結腸がん細胞SW620は、コロニー形成アッセイにおいて高度に感受性であった(図53F)。まとめると、これらのデータは、構成的同化作用が、がん細胞をSH−BC−893に対して感作し、許容可能な治療指数を生成し得るということを示唆している。
多くの実施形態では、アザ環式拘束スフィンゴ脂質−脂質分子が、in vivoにおいて新生物成長を阻害したかどうかを決定するために、例示的実験を実行した。この実験を実行するために、マウスにおいて、ルシフェラーゼ発現SW620異種移植片を生成した。バイオルミネセンスイメージング(BLI)、ノギス測定、および屠殺実験での腫瘍質量の結果は、SW620腫瘍が、SH−BC−893およびFTY720によって同程度まで低減されたことを示した(図53G〜Iおよび図54D)。SH−BC−893は、屠殺時に、腫瘍および血漿の両方において、低いマイクロモル濃度の濃度で存在した(図54E)。栄養素へのアクセスは正常細胞および形質転換細胞の両方で制限され得ることを考慮すれば、予期されたように、処置されたマウスでは軽度の体重の減少が起こった(図54F)。これらの結果は、SH−BC−893などのスフィンゴ脂質様分子が、例えばRasによって引き起こされたがんまたはPTENの喪失を伴う腫瘍などの新生物を標的とするための、安全かつ有効な手段を提供し得ることを示唆している。
本発明のある特定の実施形態は、生体エネルギー的機序と一貫して、マクロピノサイトーシスおよびオートファジーを阻害する、アザ環式拘束スフィンゴ脂質様分子を対象とする。この機序の態様は、これらの分子が、栄養素輸送体の表面発現を低減することしかしないと当初は考えられていたため、予期せぬものであった。しかしながら、Ras活性化がマクロピノサイトーシスおよびオートファジーを増加させること、およびSH−BC−893が、活性化したRasを有する新生物細胞に対して非常に有効であったという知見を考慮すると、アザ環式拘束スフィンゴ脂質様分子が、マクロピノサイトーシス経路およびオートファジー経路にも影響を及ぼし得るという仮説につながった。SH−BC−893は、形質転換されていない細胞およびがん細胞の両方において、同等に顕著なサイトゾルの空胞形成を誘発することが見出された(図55A、図56A、56B、および56C)。これらの空胞は、腔内小胞(intraluminal vesicle)(ILV)および無構造の部分的に分解された物質を含有し、このことは、それらが、多小胞体(MVB)または別の後期エンドサイトーシスコンパートメントに由来するものであることを示唆している(図55B)。空胞は、後期エンドソームマーカーであるLamp1およびRab7について陽性であり(図55C)、早期エンドソームマーカーであるEEA1およびRab5、ならびに脂質染料ナイルレッドについて陰性であった(図56D)。リソソームである可能性がある、酸性化された斑点が、GFP−LC3によってオートファゴソームとしてマークされた物質とともに、空胞内または空胞に近接して観察された(図55C、55D、および図56E)。まとめると、これらの結果は、SH−BC−893などのアザ環式拘束スフィンゴ脂質様分子が、MVBを膨大させることを示唆している。
ホスファチジルイノシトール3,5−二リン酸(PI(3,5)P2)は、ホスファチジルイノシトール3−リン酸5−キナーゼ(PI3P 5−キナーゼ)の生成物である。PIKfyveは膜融合およびMVBにおけるILV形成を調節する。阻害因子YM201636でPIKfyve活性を低減すると、SH−BC−893およびFTY720によって生成されるものと表現型的に同様の、PI3P陽性であり、PI(3,5)P2陰性の空胞が産生された(図55A、55E、図56A、および56F)。Ca2+チャネル一過性受容器電位カチオンチャネル、ムコリピンファミリー、メンバー1(TRPML1)が、MVB膜において見出され、ここでそれは、PIKfyveによって生成されたPI(3,5)P2によって活性化される。
FTY720またはYM201636で処置された細胞は、(図55E)では、液胞膜においてTRPML1を蓄積した。さらに、PIKfyveの過剰発現、そのスキャフォールドタンパク質Vac14、またはそのエフェクタータンパク質TRMPL1は、FTY720またはYM201636により誘発された細胞における空胞形成をレスキューした(図55F)。PIKfyveと会合していないVac14の変異体形態は、FTY720またはYM201636により誘発された空胞形成から細胞をレスキューしなかったことに留意されたい(図55F)。まとめると、これらのデータは、スフィンゴ脂質様分子が、PIKfyve活性に干渉することによって、MVBを膨大させ得ることを示唆している。
阻害因子YM201636とは異なり、FTY720は、予期せぬことに、PIKfyveキナーゼの活性を阻害することも、PI(3,5)P2レベルを低減することもなかった(図57Aおよび57B)。本発明のある特定の実施形態では、スフィンゴ脂質様分子は、PIKfyveを誤った場所において局在化させ、TRMPL1とのその会合を防止し、PIKfyveキナーゼの活性を阻害する代わりに空胞形成を誘発する。予期されたように、PIKfyveは、YM201636によって誘発された空胞の境界膜に局在化していたが、FTY720で処置された細胞では、空胞間の凝集塊中にPIKfyveは存在していた(図57Cおよび図56F)。内因性PIKfyveおよびVac14を認識する検証済み抗体によってこの結果は確認された(図57C、図58Aおよび58B)。
それらの不同性の作用機序と一貫して、YM201636は、PI(3,5)P2プローブの膜会合を廃止したが、一方で、FTY720またはSH−BC−893で処置された細胞では、PI(3,5)P2プローブは、PIKfyveとともに、空胞間の斑点に共局在化していた(図56F)。また、PIKfyve(図57D)もPI(3,5)P2(図58D)も、FTY720またはSH−BC−893で処置された細胞では、空胞上のPI(3,5)P2エフェクタータンパク質TRPML1とともに共局在化しなかった。TRPML1は、YM201636およびSH−BC−893によって誘発された空胞のどちらにも存在していたため(図55Eおよび図58D)、PIKfyveは、FTY720およびSH−BC−893によって誤った場所に局在化されていたが、TRPML1はそうではなかった。また、FTY720およびSH−BC−893は、YM201636で処置された細胞において、TRPML1陽性の空胞からPIKfyveを排除していた(図57D)。セラミドは、それが空胞形成活性を欠いていることと一貫して(図55A)、YM201636が存在していてもまたは不在であっても、PIKfyve−TRMPL1の共局在化を妨害しなかった(図57D)。これらの結果は、スフィンゴ脂質様分子が、PIKfyveを誤った場所に局在化させることによって空胞形成を誘発し、これが、PI(3,5)P2の、その膜貫通エフェクタータンパク質であるTRPML1とは不同性のコンパートメントにおける生成につながることを示している。
さらに、本発明の多くの実施形態は、PP2Aを活性化させる機序を介して、栄養素輸送体の細胞内移行を誘発するアザ環式拘束スフィンゴ脂質様分子を対象とする。これらの実施形態は、セラミド、FTY720、およびSH−BC−893が、PP2Aを活性化させることによって、栄養素輸送体の喪失を誘起することを反映している(図59Aおよび59B)。単一の飽和結合によってセラミドとは異なるジヒドロセラミドは、PP2Aを活性化させず、細胞を殺傷せず、輸送体の喪失も空胞形成も誘起しない(図59Aおよび図60A)。したがって、PP2Aの活性化は、ある特定のスフィンゴ脂質構造に極めて特有のものである。また、FTY720およびSH−BC−893によるPP2Aの活性化は、空胞形成も刺激し、PP2A阻害因子として、カリクリンAおよびSV40スモールT抗原が、この効果をそれぞれ遮断した(図59C)。YM201636によって誘発された空胞形成は、PP2Aの阻害によっては影響を受けなかったことに留意されたい(図60B)。加えて、PP2Aの阻害は、FTY720またはSH−BC−893で処置された細胞において、空胞内の適正な場所にPIKfyveを回復させた(図57D)。セラミドは、PP2Aを活性化させることによって輸送体の喪失を誘起するが、空胞形成を刺激する能力を欠き、PIKfyveを誤った場所に局在化させることがないため、異なる組み合わせ、PP2Aヘテロ三量体またはPP2Aの別個のプールが、栄養素輸送体の細胞内移行および空胞形成経路を促進することが示唆される。この示唆と一貫して、データは、FTY720およびSH−BC−893によって細胞内移行されたアミノ酸およびグルコース輸送体が、PIKfyve複合体と共局在化していなかったことを示している(図60C)。また、YM201636による空胞形成の誘起は、表面栄養素輸送体レベルを減少させず、Vac14を過剰発現させることによる空胞形成の防止は、FTY720による栄養素輸送体の下方調節に干渉しなかった(図60Dおよび60E)。まとめると、これらのデータは、スフィンゴ脂質様化合物が、2つの別個のPP2A依存性機序を通じて、正常細胞および形質転換細胞の両方において、PIKfyveの局在化および栄養素輸送体の輸送を妨害することを示している。
他の実施形態では、アザ環式拘束スフィンゴ脂質様分子は、オートファジーを阻害する。さらに多くの特定の実施形態では、スフィンゴ脂質様分子は、PIKfyveおよびPI(3,5)P2の誤った場所での局在化に起因して、オートファゴソーム−リソソーム融合を防止することによってオートファジーフラックスを阻害する。他の特定の実施形態では、分子は、オートファゴソーム形成を防止することによって、オートファジーフラックスを阻害する。
当該技術分野では、細胞が、オートファジーフラックスを増加させることによって栄養素ストレスに順応することは公知である。しかしながら、オートファゴソーム−リソソーム融合反応は、PI(3,5)P2によって活性化されるTRPML1チャネルを介したCa2+の放出に依存する。PIKfyveおよびPI(3,5)P2のTRPML1との共局在化の欠如(図57Dおよび図58D)は、SH−BC−893などのスフィンゴ脂質様薬物が、オートファジーフラックスを制限し得ることを示唆した。クロロキン(CQ)は、一過的なオートファゴソームを安定化させる分子である。細胞をCGで処置して、オートファゴリソソームを安定化させた後、FTY720、SH−BC−893、またはYM201636で処置した。各処置は、LC3陽性オートファゴソームのLAMP1陽性リソソームとの融合を低減した(図61Aおよび61B)。また、スフィンゴ脂質様分子およびYM201636は、細胞当たりのLC3斑点の総数を減少させた。これは、オートファゴソームの形成が低減されたことを示唆している(図61C)。ホスファチジルイノシトール5−リン酸(PI(5)P)は、グルコースが枯渇した際のオートファゴソーム生合成にとって必須である。PI(5)Pは、PI(3,5)P2を脱リン酸化することによって産生されるため、PI(5)Pもまた、SH−BC−893で処置した細胞では誤った場所に局在化している可能性があり、そのため、オートファゴソーム形成の妨害にも寄与し得る。実際、オートファゴソーム形成と相関することが公知であるWIPI2タンパク質を同定することによって発生期のオートファゴソームを検出した実験では、FTY720およびSH−BC−893による処置は、低栄養素培地において、PI5Pレベルに影響を及ぼすことなく、オートファゴソームの数を低減させた(図61D、61E、および図62A)。したがって、SH−BC−893は、オートファゴソームの形成および分解の両方を阻害した。対照として、Vac14の過剰発現は、空胞形成を制限し(図55F、図61F、および図62B)、SH−BC−893で処置した細胞において、オートファジーフラックスをレスキューした(図61A、61B、61D、および61E)。まとめると、これらのデータは、アザ環式拘束スフィンゴ脂質様分子が、PIKfyveを誤った場所に局在化させることによって、形成およびリソソーム融合を含む複数のレベルでオートファジーフラックスを遮断することを示している。
なおも他の実施形態では、スフィンゴ脂質様化合物は、リソソームとのマクロピノソームの融合を防止することによって、ミクロピノサイトーシスを阻害する。活性化したRasを有する細胞では、マクロピノサイトーシスもまた、栄養素輸送体の下方調節に対する耐性を付与する可能性がある。しかしながら、マクロピノソームの分解には、PI(3,5)P2も必要とされる。K−RasG12D発現細胞が、5−(N−エチル−N−イソプロピル)アミロライド(EIPA)感受性の様式で、デキストランをマクロピノサイトーシスによって効率的に取り込む一方で、YM201636およびSH−BC−893の両方が、リソソームとのマクロピノソームの融合を劇的に低減した(図61Gおよび61H)。リソソームと融合しないマクロピノソームは、アミノ酸などの栄養素を供給することができない。したがって、PIKfyveの局在化を妨害することによって、スフィンゴ脂質様化合物は、アミノ酸およびグルコースの輸送体を下方調節するのと同時に、リソソーム由来の栄養素へのアクセスを制限する。
なおもさらに多くの実施形態では、アザ環式拘束スフィンゴ脂質様分子は、空胞形成を介して、新生物の細胞死を刺激する。SH−BC−893の抗新生物活性に対する空胞形成の相対的寄与を評価するために、細胞を、YM201636単独(空胞形成のみ)およびセラミド単独(空胞形成を伴わない、輸送体喪失)、ならびに組み合わせで処置した。YM201636の細胞傷害性は、単独では最小限でしかないが、セラミドと組み合わされると、この組み合わせは、栄養素輸送体の喪失を増加させることなく、複数のがん細胞株において細胞死を有意に増進した(図60D、図63A、63B、図64A)。また、空胞形成しないVac14過剰発現細胞(図55Fおよび図61F)は、SH−BC−893およびFTY720によって誘発される死に対して耐性を有した。しかしながら、Vac14過剰発現細胞は、非空胞形成性スフィンゴ脂質であるセラミドによって誘発される死からは保護されなかった(図63C、63D、および図64B)。まとめると、これらのデータは、空胞形成が、SH−BC−893などのスフィンゴ脂質様分子のがん細胞を殺傷する能力に寄与することを示唆している。
空胞形成が、in vivoにおいて、SH−BC−893の抗新生物活性を増進するかどうかを評価するために、空のベクターまたはVac14を発現するSW480異種移植片を有するマウスを、ビヒクルまたはSH−BC−893で処置した。腫瘍は、SH−BC−893により誘発される空胞形成の顕微鏡分析を混乱させてしまう可能性がある腫瘍壊死を制限するために、まだ小さい間に摘出した。in vitroで見られるように、Vac14過剰発現は、SH−BC−893による空胞形成および成長阻害の両方に対する耐性を付与した(図63Eおよび63F)。これらの結果は、空胞形成が、in vitroおよびin vivoの両方において、SH−BC−893の抗新生物効果に寄与することを実証している。
したがって、本発明の実施形態は、アザ環式拘束スフィンゴ脂質様分子の治療上の使用を伴って、成長が遅いまたは特発性の新生物において飢餓様表現型を誘発する、処置する方法を対象とする。本発明のなおもさらに多くの実施形態は、スフィンゴ脂質様分子の治療上の使用を伴って、成長が遅いまたは特発性の新生物を殺傷する、処置する方法を対象とする。さらに多くの特定の実施形態は、これらの分子の、良好に耐容されるか、またはin vivoにおいて毒性を欠く能力を対象とする。
SH−BC−893の活性は代謝率と関連していたため、古典的なワールブルク表現型を呈しない成長が遅い腫瘍もまた感受性であるかどうかは明白ではなかった。感受性を決定するために、前立腺において排他的にp53およびPTEN発現を欠く(pDKO)、侵襲性の去勢抵抗性前立腺がんのための、遺伝子操作した検証済みマウスモデルにおいて、SH−BC−893を評価した(Wu Xら、Am J Clin Exp Urol.、2014年、2巻(2号):111〜20頁、Schwarzenbock Sら、Theranostics.、2012年、2巻(3号):318〜330頁、Chen Zら、Nature.、2005年、436巻(7051号):725〜730頁。これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。これらのマウスにおいて発達した腫瘍に由来する細胞(マウス前立腺がん上皮細胞、mPCE)は、低減された解糖を呈し、生存のために細胞外グルコースおよびアミノ酸に依存しなかった(図65Aおよび65B)。しかしながら、SH−BC−893は、結合したNADH画分が増加し、細胞透過性の栄養素がmPCE細胞を死から保護していたため、飢餓と一貫した表現型をなおも産生していた(図65Aおよび65C)。前立腺がん細胞は、成長および生存のために、外因性のLDLに依存している。したがって、SH−BC−893は、mPCE細胞に空胞を形成し、4F2hcを下方調節していただけではなく、LDL受容体(LDLr)の表面レベル、LDLの取り込み、および脂肪滴の蓄積も劇的に減少させていた(図55B、図65D〜H、図66A、および66B)。セラミドおよびYM201636は両方とも、表面LDLrレベルは低減したが、LDLrは依然として、異なる細胞内コンパートメントに蓄積していた(図66A)。YM201636およびSH−BC−893はともに、リソソーム融合を遮断するそれらの能力と一貫して(図61)、LDLのLysotracker Blueとの共局在化を低減した(図65Fおよび65G)。リソソームにおけるLDL分解の阻害に合わせて、細胞の脂肪滴含有量は、空胞形成の程度と逆に相関していた(図66B)。要約すると、SH−BC−893などのスフィンゴ脂質様化合物は、栄養素輸送体を下方調節およびリソソームによる栄養素の生成を遮断することによって、前立腺がんなどの成長が遅い新生物を飢えさせる。
また、飢餓誘発性スフィンゴ脂質様薬物の、成長が遅いまたは特発性の新生物の成長に影響を及ぼす能力を評価した。mPCE皮下同系移植片を有するC57BL/6マウスにおいて、胃管栄養法によって毎日60mg/kgのSH−BC−893を与え、腫瘍成長を60%減速させた。これは、20mg/kgを腹腔内投与した、SW620異種移植片での結果と同様であった(図53G〜Iおよび図65I)。120mg/kgでは、SH−BC−893は、前立腺腫瘍成長を、90%を超えて阻害した(図65I)。また、SH−BC−893は、pDKOマウスにおいて、特発性腫瘍の成長を62%(60mg/kg)または82%(120mg/kg)減少させた(図65J)。組織学的には、SH−BC−893は、前立腺腫瘍の進行を緩徐にし、侵襲性疾患を排除し、細胞多形態性、過染性、および核非定型性を劇的に低減させた。SH−BC−893で処置されたマウスは、前立腺上皮細胞内新生物を排他的に呈したが、一方で、すべてのビヒクルで処置された動物では、腺癌が存在した(図67)。予期されたように、アミノ酸輸送体が下方調節された場合(図65D)、TORC1依存性であるリボソームタンパク質S6のリン酸化は、SH−BC−893で処置された腫瘍では低減された(図66C)。TORC1によって媒介される負のフィードバックの喪失と一貫して、Akt活性は、SH−BC−893によってわずかに上昇した。したがって、SH−BC−893などのスフィンゴ脂質様化合物は、別個の分子欠陥および代謝特性を有する新生物に対して有効である。
SH−BC−893は、正常細胞および形質転換細胞において同等の輸送体喪失および空胞形成をもたらすため、正常細胞の栄養素へのアクセスも制限する(図51C、51E、図56B、および56C)。したがって、SH−BC−893で処置されたpDKOマウスは、未処置のマウスよりも体重増加が少なかった(図66D)。しかしながら、最高用量のSH−BC−893で処置されたマウスでも体重が増加し、処置されたマウスはすべて、正常な挙動および活性レベルを呈した。屠殺時の血液化学分析は、SH−BC−893が、抗新生物用量において、肝臓または腎臓に対して毒性を有しないことを示した(表7)。120mg/kgのSH−BC−893で処置した動物における、血清クレアチンホスホキナーゼのわずかな上昇は、栄養素の制限に応答した、軽度の筋肉異化作用を示唆している。重要なことに、増殖性の正常な健康組織では、120mg/kgのSH−BC−893で11週間処置したマウスにおける正常な全血球数および腸陰窩の組織病理学によって証拠づけられるように、SH−BC−893による影響は最小限であった(表8および図66E)。正常組織に対する毒性の欠如は、代謝的に柔軟性が低い腫瘍細胞においては生体エネルギー的危機を誘起する栄養素ストレスに対して、形質転換されていない細胞は順応し得るという知見と矛盾しない(図53Dおよび53E)。結論としては、膜輸送を妨害することによって、並行する栄養素アクセス経路を遮断することは、多岐にわたる代謝プログラムを有するがん細胞における構成的同化作用を標的とする、安全かつ有効な手段である。
形質転換されていない細胞の、FTY720によって誘発される死に対する相対的耐性は、正常細胞が、ストレス下において代謝的に静止状態となる能力に由来する可能性が高い。具体的には、がん細胞では、生合成および増殖を支持するために、発がん性変異が、グルコースおよびアミノ酸の輸送体発現を駆動する。(McCracken, A. N.およびEdinger, A. L.、Trends Endocrinol. Metab.、24巻、200〜8頁(2013年)。この開示は、参照により本明細書に組み込まれる。)また、発がん性Ras変異は、マクロピノサイトーシスによって獲得した細胞外タンパク質の分解を通じて、アミノ酸獲得を後押しする。(Palm, W.ら、Cell、162巻、1〜12頁(2015年)、Commisso, C.ら、Nature、497巻、633〜7頁(2013年)。これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。多くのがん細胞はこの上昇した栄養素の流入に対して「依存症」となる。例えば、分解性酵素であるL−アスパラギナーゼは、急性リンパ芽球性白血病に対する有効な療法である。なぜなら、これらの細胞が、その同化作用的要求を満たすのに十分なアスパラギンを合成することができないからである(Pieters, R.ら、Cancer、117巻、238〜249頁(2011年)。この開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。前臨床研究は、他の種類のがんも、成長および生存のために同様の依存性を呈し、移入されたアルギニン、セリン、またはグリシンに依存していることを示している。(Feun, L. G.ら、Curr. Opin. Clin. Nutr. Metab. Care、18巻、78〜82頁(2015年)、Jain, M.ら、Science.、336巻、1040〜1044頁(2012年)、Maddocks, O. D. K.ら、Nature、493巻、542〜6頁(2013年)。これらの開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。これらの結果は、栄養素の取り込みを制限することが、多くの種類の新生物およびがんにとって広範に有効な治療手法であり得ることを示唆している。
実験材料および方法
初期最適化研究における生物学の手順:
細胞培養物研究;Sup−B15細胞を、10%ウシ胎仔血清(FCS、Sigma−Aldrich)、10mMのHepes(Mediatech)、55μΜのβ−メルカプトエタノール(Sigma−Aldrich)、2mMのL−グルタミン(Mediatech)、および抗生物質を補充したRPMI 1640(Mediatech)において、2〜3百万個/mLに維持する。すべての接着細胞を、70〜80%コンフルエンスで維持する。細胞は以下の培地において培養する。PC3およびA549、10%のFCSおよび抗生物質を補充したHam’s F12K(Corning Cell Gro);DU145細胞、10%のFCS、1mMのピルビン酸ナトリウム(Mediatech)、および抗生物質を補充したMEM(Corning Cell Gro);SW620およびMDA−MB−231、10%のFCS、1mMのピルビン酸ナトリウム(Mediatech)、および抗生物質を含むDMEM(Corning Cell Gro);Panc−1細胞、10%のFCSおよび抗生物質を補充したDMEM(Corning Cell Gro)。上の細胞株はすべて、ATCCから入手可能である。
生存率アッセイ:Cell Titer Gloアッセイ(Cell Titer Glo Luminescent Cell Viability Assayキット、カタログ番号G7571、Promega Corporation)を、透明底96ウェル黒色細胞培養プレート(カタログ番号655090、Greiner Bio−One、NC、USA)において実施する。100μlの体積で、ウェル当たり細胞1,000個で播種した後、細胞を、薬物添加前少なくとも24時間にわたり静置する。72時間後、室温(RT)で1分間振盪させながら、10μlのPBS中0.1%のTriton−X100を添加することによって、細胞を分析のために調製する。次いで、Cell Titer−Glo細胞溶解試薬(20μl)を添加した後、1分間振盪し、暗所において室温で10分間インキュベートする。ルミネセンスを、IVISイメージングシステム(IVIS Lumina II、Perkin Elmer、USA)を使用して検出する。また、IC50値を、PC3細胞において72時間のフローサイトメトリーによって、DAPI(4’,6ジアミジノ−2−フェニルインドール)を使用する生細胞色素排除によって決定した。IC50は、GraphPad Prism(GraphPad Software,Inc、La Jolla、CA)を使用して決定する。SupB−15生存率を、フローサイトメトリーによって決定した。Cell Titer Gloアッセイを、他の細胞株で実施した。
S1P1〜5活性化:異なるヒトS1P受容体サブタイプを安定して過剰発現する、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を使用する。S1P1、S1P4、およびS1P5を過剰発現するCHO細胞を、10%のFBS、50μg/mlのゲンタマイシン、および0.5mg/mlのG418を補充した、アルファ−MEMを含有する培地において培養する。S1P2およびS1P3を過剰発現するCHO細胞を、10%のFBS、50μg/mlのゲンタマイシン、および0.5mg/mlのG418を含有するRPMIにおいて培養する。刺激の前に、細胞は24時間無血清にする。刺激は、様々な化合物またはS1Pの不在下または存在下で、0.1mg/mlの、脂肪酸を含まないBSAを含有する無血清のDMEM中において10分間実行する。タンパク質溶解物を、(50mMのTris、pH7.4、150mMのNaCl、10%のグリセロール、1%のTriton X−100、2mMのEDTA、2mMのEGTA、40mMのβ−グリセロホスフェート、50mMのフッ化ナトリウム、10mMのピロリン酸ナトリウム、2mMのジチオスレイトール、0.2mMのオルトバナジウム酸ナトリウム)を含有する緩衝液を使用して調製する。細胞を、MSE Ultrasonic Disintegratorにおいて1回、5秒間のバーストによって均質化し、遠心分離し、タンパク質決定のために採取する。同量のタンパク質を、SDS−PAGE(10%のポリアクリルアミドゲル)によって分離し、ニトロセルロース膜に移し、ウエスタンブロット分析に供する。バンドを、IRDye(登録商標)二次抗体を使用して染色し、LICOR Odyssey(登録商標)Fcイメージングシステムによって可視化した。ホスホ−Thr202/Tyr204−p42/p44−MAPKおよびホスホ−Ser PKC基質に対する抗体は、Cell Signaling、Frankfurt am Main、Germany製である。p42全体およびp44全体に対するポリクローナル抗血清を、先に記載したように生成し、特徴付けた。(Huwiler, A.、Pfeilschifter, J.、Br. J. Pharmacol.、1994年、113巻、1455〜1463頁。この開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。
心拍数:C57BL/6マウスに、DSI TA−ETAF20心電図遠隔測定デバイス(Data Sciences International、St.Paul、MN)を外科的に移植する。心電図データを、PhysioTel遠隔測定システムおよびDataquest A.R.T 4.0ソフトウェア(DSI)を使用して収集し、記録する。この遠隔測定デバイスは、マウスの腹腔内に、生体電位リードを胸壁の定位置に縫合して移植される。疼痛管理のために、手術後は、ブプレノルフィン(0.05mg/kg)を12時間毎に投与し、手術後7日間、抗生物質として、エンロフロキサシン(3mg/kg)を1日当たり2回投与する。マウスは、ベースラインの遠隔測定記録を開始する前に、手術後2週間の回復させる。心拍数は、自由に動く意識のあるマウスにおいて採取されるECGデータから計算される。マウスは、3匹のマウスからなる2つの群に分け、単回用量のビヒクル(0.9%生理食塩水または0.9%生理食塩水中20%の酸性化DMSO)、10mg/kgのFTY720、FTY720−ホスフェート、5、または5−Pで腹腔内処置を行い、心拍数を連続的に10時間モニタリングする。マウスは、2週間休ませ、その時点で、実験を、控えの群に割り当てたマウスで繰り返す。これらの実験は、すべての国または地方のガイドラインおよび規制に従って実施し、UCI Institutional Animal Care and Use Committeeによって承認された。
リンパ球の隔離:8〜24週齢のメスC57BL6マウスに、ビヒクル(0.9%生理食塩水または0.9%生理食塩水中20%の酸性化DMSO)、10mg/kgのFTY720、FTY720−ホスフェート、5、または5−Pを腹腔内注射する。12時間後、ケタミン/キシラジンによる麻酔の下で、後眼窩洞から血液を収集する。10μLの全血を190μLのACK赤血球溶解緩衝液に添加し、室温で、37℃で3〜5分間インキュベートし、白血球を遠心分離によって回収する。有核細胞(Hoechst33342陽性)を、血球計を使用してカウントして、白血球数を得る。別個に、50μLの全血を1mLのACK赤血球溶解緩衝液に添加し、室温で3〜5分間インキュベートする。細胞を、FACS洗浄液(0.05%のNaN3を伴うPBS中2%のFCS)で洗浄し、赤血球溶解を繰り返す。チューブをデカントし、100μLのFACSブロック(0.05%のNaN3を伴うPBS中10%のFCS)中に、B220、CD4、またはCD8を認識する直接的にコンジュゲートした抗体(すべて、Biolegend、San Diego製)とともに30分間氷上で再懸濁させる。細胞を、BD LSR IIフローサイトメーターで分析する。分析は、生細胞(DAPI陰性)に限定する。これらの実験は、すべての国または地方のガイドラインおよび規制に従って実施し、UCI Institutional Animal Care and Use Committeeによって承認されている。
SW620およびSW480異種移植研究:SW620異種移植研究では、2%のFCSを伴うPBS中に懸濁させた250万個のルシフェラーゼ発現SW620結腸がん細胞を、7週齢のオスヌードマウス(Charles Rivers Labs、Crl:NU(NCr)−Foxn1nu)の側腹部に皮下注射する。腫瘍の体積が100mm3に達したら、マウスを、平均腫瘍体積および動物の重量が整合するように、群に割り当てる。7匹のマウスを含む4つの群に対して、ビヒクル(0.9%生理食塩水)、10mg/kgのFTY720、または20mg/kgの化合物5もしくは化合物15のいずれかで腹腔内処置を行う。腫瘍の長さおよび幅を、処置の7日目および11日目にノギスで測定する。腫瘍体積は、式、体積(mm3)=長さ[mm]×(幅[mm])2×0.52を使用して計算する。各腫瘍の体積の経時的な平均倍数変化を示す。
SW480異種移植研究では、250万個の細胞をNSGマウスの側腹部に皮下注射することによって、異種移植片を産生する。いったん腫瘍が100mm3に達したら、本発明の様々な実施形態による化合物(例えば、化合物5/104)を、示される通りに、腹腔内注射または経口胃管栄養法によって投与する。腫瘍体積は、上の式を使用して計算する。BLIは、IVISイメージングシステム(Xenogen)を使用して測定する。SW480腫瘍を切除し、0.1Mのリン酸緩衝液中2.5%のグルタルアルデヒド、pH7.4で固定して、包埋するまで暗所4℃で保管する。
これらの実験は、すべての国または地方のガイドラインおよび規制に従って実施し、UCI Institutional Animal Care and Use Committeeによって承認されている。
栄養素輸送体発現:表面4F2hc発現を、フィコエリトリン(PE)コンジュゲートマウス抗ヒト4F2hc抗体(BD Pharmingen、カタログ番号556077)を使用して、6時間で測定する。分析は、生存細胞に限定する。PEコンジュゲートマウスIgG1、κ(カタログ番号555749、BD Pharmingen)を、アイソタイプ対照として使用する。細胞を、BD LSR IIフローサイトメーター、およびFlowJoソフトウェア(Treestar)で分析する。
質量分析定量化:6ウェルプレートの1つのウェル中の、100万個のPC3細胞または500万個のSW620細胞を、10μΜのFTY720または5で16時間処置する。培地(100μl)をウェルから除去し、100μlのアセトニトリルと組み合わせる。細胞を掻き取ることで収集し、ペレット化し、100μlのHPLCグレードの水中に再懸濁させた後、100μlのアセトニトリルを添加した。定量化されていない75ナノグラムの化合物(5のリン酸化の分析の場合、FTY720およびFTY720−P、またはFTY720/FYT720−Pの分析の場合、5および5−P)を、内部標準として働かせるために添加して、試料の調製中に失われた化合物の補正を可能とする。沈澱タンパク質を、遠心分離によって両方の試料から除去し(微量遠心機において15,000rpmで10分間)、上清を、100μlのアセトニトリル+0.2%の酢酸が入った、氷上の新しいチューブに移す。遠心分離によって、不溶性の物質を再度除去し、上清を、化合物の含有量に関して分析する。20マイクロリットルのこの脱タンパク試料を、アセトニトリル(+0.2%の酢酸)勾配溶出を使用する、C18逆相カラム(Waters)を備え付けたUPLC−MS/MS(Waters Micromass Quattro Premier XE)によって分析する。計器は陽イオンモードで動作させる。多重反応モニタリング用のイオン移行チャネルは、FTY720の場合308→255、FTY720−Pの場合388→255、5の場合290→104、および5−Pの場合370→272であり、200ミリ秒の滞留時間を伴う。FTY720および5の場合、コーン電圧は30Vであり、FTY720−Pおよび5−Pの場合、20Vである。純粋な化合物を使用して標準曲線を生成して、定量化を可能にさせる。標準曲線は、50〜1000ng/mlにおいて直線状であり、R2は0.98またはそれよりも大きかった。内部標準の回復は80〜120%の範囲であり、計器の確立された精度と矛盾しない。また、リン酸化された化合物およびリン酸化されていない化合物について同様である。
細胞分析:生存率および4F2hc発現を、生細胞色素排除およびフローサイトメトリーによって決定する。酸素消費を、XF24 Extracellular Flux Analyzer(Seahorse Bioscience)で測定する。値は、総タンパク質に対して正規化する。共焦点顕微鏡法を、Zeiss LSM780またはNikon Eclipse Tiのいずれかにおいて実施する。空胞形成は、DICフィルターを備え付けたNikon TE2000−Sを使用してモニタリングした。SW620細胞の足場非依存性成長を、0.5%のアガロース底層とともに0.35%のアガロースを含有するDMEM−10において測定する。PBMNCは、IRBプロトコール2015−1883(Edinger)および2001−2058(ICTS)の下で、UCIにおいてCTSA−supported Institute for Clinical and Translational Scienceによって行われている正常血液ドナープログラムから得られる。PBMNCは、Ficoll−Paque密度勾配沈降を介して、全血から単離される。プレートを、5%のCO2を含有する加湿雰囲気下において、37℃でインキュベートし、12日後にコロニーをカウントした。
さらなる最適化研究における生物学の手順:
化合物:化合物のストック(5〜25mM)を水中で調製したが、C2−セラミド(109)、ジヒドロ−C2−セラミド(110)、14〜17、21〜24、および31〜35は、DMSO中で作製し、スフィンゴシン(106)、スフィンガニン(107)、およびジメチルスフィンゴシン(108)は、エタノール中で調製した。
細胞培養物研究;FL5.12細胞(元々はCraig Thompson、Memorial Sloan Kettering Cancer Centerから得られたマウス造血細胞)を、10%ウシ胎仔血清(FCS、Sigma−Aldrich)、10mMのHepes(Mediatech)、500pg/mlの組換えIL−3(カタログ番号575502、Biolegend)、55μΜのβ−メルカプトエタノール(Sigma−Aldrich)、2mMのL−グルタミン(Mediatech)、および抗生物質を補充したRPMI 1640(Mediatech)において、10万〜50万個/mlに維持した。細胞を、Look−Out Mycoplasma PCR Detectionキット(カタログ番号MP0035、Sigma)を使用して、3カ月毎にマイコプラズマについてスクリーニングした。
生存率アッセイ:IC50値を、48時間のフローサイトメトリーによって、DAPI(4’,6ジアミジノ−2−フェニルインドール)を使用する生細胞色素排除によって決定した。IC50値は、GraphPad Prism(GraphPad Software,Inc、La Jolla、CA)を使用して計算した。
栄養素輸送体発現:表面CD98(4F2hc、SLC3A2)発現を、フィコエリトリン(PE)コンジュゲートラット抗マウスCD98抗体(Biolegend、カタログ番号128208)を使用して、3時間で測定した。分析は、生存細胞に限定した。PEコンジュゲートラットIgG2a、κ(カタログ番号400508、Biolegend)を、アイソタイプ対照として使用した。染色のために、200,000個の細胞をペレット化し、0.25μLの抗CD98抗体を含有する、100μlのFACSブロック(10%のFCSおよび0.05%のNaN3を伴うPBS)中に再懸濁させ、氷上で30分間インキュベートし、1mlのFACS洗浄液(2%のFCSおよび0.05%のNaN3を伴うPBS)で2回洗浄し、BD LSR IIフローサイトメーターで分析した。データは、FlowJoソフトウェア(Treestar)で処理した。
空胞形成アッセイ:細胞を、明視野顕微鏡法およびDICフィルターを備え付けたNikon TE2000−S蛍光顕微鏡を使用して、100倍で評価した。空胞形成を、別途示される場所を除き、2.5μMの化合物で3時間インキュベートした後に定量化した。空胞形成スコアを計算するために、実験当たり少なくとも15個の個別の細胞において、空胞形成の重症度を定性的に評価した。スコアは、以下の通りに個別の細胞に対して割り当てた。0=空胞なし、1=非常に小さな空胞、2=複数の明確な空胞、3=複数の大きな空胞。ある化合物に関連する空胞形成スコアを計算するには、以下の式を使用した:空胞形成スコア=[(3×区分3の細胞%)+(2×区分2の細胞%)+(1×区分1の細胞%)]/3。
このスコアは、その細胞が100%区分3であった化合物が、100の空胞形成スコアを有するように、3によって除算されている。3回の独立した実験を実行し、空胞形成スコアを平均して、平均+/−SEMを生成した。すべての細胞は、盲検化され、スコア付けされた個別の化合物5つが、同様の結果を有することを確認した後に、1人の研究員によってスコア付けされた。
この定性的空胞形成スコアが、どのくらい良好に真の空胞形成度を反映したかを決定するために、ImageJに基づく空胞検出マクロを開発し、検証した。細胞の輪郭を手作業でトレースし、同じ視野の細胞に対応する輪郭のセットを、さらなる処理のために、ZIP関心領域(ROI)ファイルとして保存した。Otsu閾値を各細胞に対して適用した。結果として得られた画像を反転させ、半径2のメディアンフィルターを適用し、分水嶺変換(watershed transform)を使用して、互いに対して近過ぎる接続された構成要素を分離した。次に、ImageJの「粒子分析」機能を使用して、結果として得られた画像中のすべての接続された構成要素を検出し、それらの対応する領域および円形度(circularity)を計算した。20ピクセルよりも小さい領域または>0.8の円形度を有する接続された構成要素を、空胞として同定した。その他の接続された構成要素が、不十分な分割の結果であったことを確かめた。この不十分な分割を克服するために、ImageJの「最大値検索」機能を使用して、これらの接続された構成要素内部の強度の最大値を検出した。1つよりも多くの最大値が見出された場合、その構成要素を、分水嶺によって分け、各々の新しい構成要素を、独立して、円形度および領域試験に供した。空胞の画像処理結果を、手作業で検出した空胞と比較して、86%の検出精度が表示された。
コントラストを上げるために、細胞を、CFSE(5(6)−カルボキシフルオレセインN−ヒドロキシスクシンイミジルエステル)で染色した。これらのアッセイでは、200,000個の細胞を、目的の化合物において3時間インキュベートした後に、暗所において1μΜのCFSE1mlで20分間染色した。細胞を、Zeiss LSM780共焦点顕微鏡において評価した。空胞によって占められているサイトゾルのパーセントを、ImageJのマクロを使用して決定した。空胞形成パーセントを計算する場合、核は除外した。このマクロを使用して、スフィンゴシン、スフィンガニン、およびジメチルスフィンゴシンで処置した細胞を評価することで、空胞形成スコアが、空胞形成された領域%のおよそ2倍であることが決定され、空胞形成度の半定量的尺度としての空胞形成スコアが検証された。このアルゴリズムおよび共焦点顕微鏡法によって、すべての試料を定量化することは、多数の化合物が評価される場合には実行不可能であった。
統計。少なくとも3つの独立した実験の平均は、+/−SEMで示される(CD98喪失または空胞形成)。IC50研究の場合、IC50は、GraphPad Prismで計算された95%信頼区間とともに与えられる。
さらなる最適化研究の一般的化学の手順:
一般的化学の情報:水分感受性化合物が関与するすべての反応は、火炎乾燥したガラス器具において、陽圧の、乾燥した、酸素を含まないアルゴンの下で、ならびに乾燥溶媒において実施した。無水溶媒は、使用前に、陽圧のアルゴンの下で蒸留し、標準的方法によって乾燥させた。THF、エーテル、CH2Cl2、およびトルエンは、SDS(溶媒送達システム)によって乾燥させた。市販グレードの試薬を、さらなる精製を伴わずに使用した。シリカカラムクロマトグラフィーは、230〜400メッシュのシリカゲルで実施した。薄層クロマトグラフィー(TLC)は、ガラスで裏打ちされたシリカゲルプレートにおいて実行した。可視化は、UV光(254nm)によって、あるいは過マンガン酸カリウム溶液またはモリブデン酸セリウムアンモニウムを用いて染色した後、加熱することによってもたらされる。1Hおよび13C NMRスペクトルは、Bruker AV−400およびAV−500 MHz分光計において、室温(298K)で記録された。ケミカルシフトは、CDCl3(δΗ:7.26ppmおよびδC:77.0ppm)またはMeOD(δΗ:3.31ppmおよびδC:49.0ppm)から参照した百万分率(ppm)で報告される。カップリング定数(J)は、ヘルツ(Hz)で報告される。多重度は、多重線(m)、一重線(s)、二重線(d)、三重線(t)、四重線(q)、五重線(quin.)、および幅広線(br.)として与えられる。赤外スペクトルは、FT−IR分光計で記録された。そして、これは、センチメートルの逆数(cm−1)で報告される。旋光度は、Anton Paar MCP 300偏光計で、25℃において589nmで決定した。具体的な旋光度は、10−1度cm2g−1という単位で与えられる。高分解能質量スペクトル(HRMS)は、定量的飛行時間型(TOF)検出器に連結された、エレクトロスプレーイオン化(ESI)を用いる「Centre regional de spectroscopie de masse de I’Universite de Montreal」によって実施した。純度の分析は、HPLC(ブランクは最終トレースから減じた)によって評価した。溶離液は0.1%のギ酸を有するH2Oおよび0.1%のギ酸を有するMeOHであり、流速は0.50mL/分(別途明言されない限り)であり、UV検出は214nmであった。カラム:Sunfire C8=100×4.6mm、粒径=5μ。Hypersil Gold C8=100×2.1mm、粒径=3μ。tert−ブチル(2R,4S)−2−(ヒドロキシメチル)−4−((4−オクチルベンジル)オキシ)ピロリジン−1−カルボキシレート、tert−ブチル(2S,4R)−2−(ヒドロキシメチル)−4−((4−オクチルベンジル)オキシ)ピロリジン−1−カルボキシレート、(2R,4S)−2−(メトキシメチル)−4−((4−オクチルベンジル)オキシ)ピロリジン塩酸塩、および(2S,4S)−2−メチル−4−((4−オクチルベンジル)オキシ)ピロリジン塩酸塩を、R. Franssonら、S. ACS Med. Chem. Lett.、2013年、4巻、969〜973頁に記載されているように調製した。この開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。
一般的方法A:THFおよびDMF中の関連するアルコール(1当量)に、NaH(3当量)を0℃で少量ずつ添加し、結果として得られた懸濁物を、この温度で30分間撹拌した。1−ブロモドデカン(3当量)およびヨウ化テトラ−N−ブチルアンモニウム(TBAI)(0.1当量)を同時に添加し、結果として得られた混合物を、室温に温まるまで放置し、これを48時間撹拌した。水(15mL)を滴下添加した後、この溶液を、酢酸エチル(2回×20mL)で抽出した。合わせた有機物を乾燥させ(MgSO4)、濾過し、真空中で濃縮した。残留物を、シリカカラムクロマトグラフィー(ヘキサン〜ヘキサン中10%の酢酸エチル)によって精製して、油を得た。
一般的方法B:乾燥CH2Cl2(c=0.06M)中の関連するアリル性エーテル(1当量)に、アルケン(10当量)および第一世代グラブス触媒(20mol%)をアルゴン下で添加した。結果として得られた混合物を室温で24時間撹拌した後、さらなる第一世代グラブス触媒(15mol%)およびアルケン(10当量)を添加し、これをさらに24時間室温で撹拌した。この反応混合物を真空中で濃縮し、シリカカラムクロマトグラフィー(条件については特定の化合物を参照されたい)によって精製して、油を得た。
一般的方法C:関連するアルキン(3当量)およびカテコールボラン(THF中1M、3当量)を、アルゴン下において、70℃で2時間還流させた。その後、この反応混合物を、室温に冷めるまで放置した。これに、1,2−ジメトキシエタン(12mL/mmol)中の適切な臭化アリール(1当量)、Pd(PPh3)4(3mol%)、およびNaHCO3水溶液(1M、10mL/mmol)を添加した。結果として得られた混合物を、アルゴン下において、85℃で5時間還流させた。その後、この反応混合物を、室温に冷めるまで放置し、ジエチルエーテルで3回抽出した。合わせた有機物を乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、真空中で濃縮した。残留物を、シリカカラムクロマトグラフィー(別途明言されない限り、ヘキサン〜ヘキサン中20%の酢酸エチル)によって精製して、油を得た。
一般的方法D:関連する(E)−アルケン(1当量)を酢酸エチル(c=0.04M)に溶解させ、これに、Pd/C(10%)を一度に添加した。空気を、真空下でフラスコから除去し、水素のバルーンで置き換えた。結果として得られた混合物を室温で撹拌し(反応時間については特定の化合物を参照されたい)、次いでセライトのパッドを通して濾過して、油を得た。これを、さらなる精製を伴わずに使用した。
一般的方法E:乾燥THF中の関連するTBS保護アルコール(1当量)に、TBAF(THF中1M、当量については個別の化合物を参照されたい)を添加し、結果として得られた混合物を、室温で17時間撹拌した。この反応混合物を水で希釈し、酢酸エチルで2回抽出した。合わせた有機物を乾燥させ(MgSO4)、濾過し、真空中で濃縮した。残留物を、シリカカラムクロマトグラフィー(別途明言されない限り、ヘキサン中10%の酢酸エチル〜ヘキサン中30%の酢酸エチル)によって精製して、油を得た。
一般的方法F:1,4−ジオキサン中の関連するN−Boc保護アルコール(1当量)に、1,4−ジオキサン中4MのHCl(量については個別の化合物を参照されたい)を添加し、結果として得られた混合物を、室温で17時間撹拌した。この反応混合物を真空中で濃縮し、さらに2回、1,4−ジオキサンとともに同時蒸発させて、すべてのHClが除去されたことを確実にした。結果として得られた残留物を、ジエチルエーテルで3回粉砕することによって、あるいはシリカカラムクロマトグラフィー(条件については特定の化合物を参照されたい)によって精製して、生成物を固体として得た。生物学的試験の場合、この固体の一部を最小量のHPLCグレードの水に溶解させ、濾過し(孔径=0.45μm)、凍結乾燥させた。
一般的方法G:関連するHCl塩をCH2Cl2に溶解させ、NaHCO3飽和水溶液で3回抽出した。有機層を乾燥させ(MgSO4)、濾過し、真空中で濃縮して、対応する遊離塩基を得た。これを、さらなる精製を伴わずに使用した。この残留物(0.9当量)を最小量のCH2Cl2に溶解させ、アルゴン雰囲気下で、1,3−ジ−Boc−2−(トリフルオロメチルスルホニル)グアニジン(1当量)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(1.5当量)を添加した。反応を、室温で17時間撹拌した。CH2Cl2を蒸発させ、残留物を、シリカカラムクロマトグラフィー(CH2Cl2〜CH2Cl2中10%のMeOH)によって精製して、油を得た。
一般的方法H:関連するHCl塩をCH2Cl2に溶解させ、NaHCO3飽和水溶液で3回抽出した。有機層を乾燥させ(MgSO4)、濾過し、真空中で濃縮して、対応する遊離塩基を得た。これを、さらなる精製を伴わずに使用した。この残留物(1当量)をCH2Cl2に溶解させ、無水酢酸(1.5当量)を0℃で滴下添加した。反応混合物を、室温に達するまで放置し、これをさらに17時間撹拌した。残留物を、シリカカラムクロマトグラフィー(ヘキサン〜ヘキサン中50%の酢酸エチル)によって精製して、油を得た。
SH−BC−893のIn vitroおよびIn vivo特徴付けのための手順:
細胞培養物および試薬。OP9、DLD−1、SW48、SW620、MDA−MB−231、PANC−1、HOS、MG−63、およびZr75−1細胞は、ATCCから得た。SW480細胞は、Marian Waterman(UCI、Irvine CA)によって供給され、HeLa細胞は、Christine Suetterlin(UCI、Irvine CA)によって供給され、LS180細胞は、Bruce Blumberg(UCI、Irvine CA)によって供給され、FL5.12細胞は、Craig Thompson(Memorial Sloan Kettering Cancer Center、New York、NY)によって供給された。STOPカセットのCre媒介欠失を伴う、および伴わないp53−/−;LSL−KRasG12D MEFは、David Tuveson博士(Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor NY)の厚意で供給された。初代p53+/+;PTEN+/+、p53−/−;PTEN+/+、およびp53−/−;PTEN−/− MEFは、所内で、標準的技法を使用してC57BL/6マウスに由来する胚から生成した。p53−/− PTEN−/−マウス前立腺組織から生成したmPCE細胞は、10%のFBS、25μg/mlのウシ下垂体抽出物、5μg/mlのウシインスリン、および6ng/mlの組換えヒト上皮成長因子を伴うDMEM中において維持した。FL5.12細胞は、10%のウシ胎仔血清(FCS)、10mMのHEPES、55μΜの2−メルカプトエタノール、抗生物質、2mMのL−グルタミン、および500pg/mlのrIL−3を補充したRPMI 1640培地において維持した。FL5.12細胞は、2週間の培養にわたって、徐々にIL−3濃度を低減することによって、25pg/mlのIL−3で成長するように順応させた。DLD−1およびZr75−1細胞は、FL5.12と同様の培地だが、IL−3は伴わない培地において培養した。HeLa、OP9、MG−63、およびMEF細胞は、10%のFCSおよび抗生物質を補充した、4.5g/LのグルコースおよびL−グルタミンを伴うDMEMにおいて培養した。飢餓培地は、化学成分からアミノ酸およびグルコースを欠くDMEMを作製し、10%の透析済みFCSを補充することで産生した。LS180、SW48、PANC−1、MDA−MB−231、SW480、およびSW620細胞は、10%のFCS、抗生物質、および1mMのピルビン酸ナトリウムを補充したDMEMにおいて培養した。細胞生存率は、1μg/mlのヨウ化プロピジウムまたはDAPIのいずれかを使用する生細胞色素排除によって測定した。PEコンジュゲート抗CD98による細胞表面4F2hcレベルの分析は、DAPI排除によって決定された生存細胞に限定した。SW620細胞の足場非依存性成長を、0.5%のアガロース底層とともに0.35%の低融点アガロースを含有するDMEM−10において測定した。PBMCは、IRBプロトコール2015−1883(Edinger)および2001−2058(ICTS)の下で、UCIにおいてCTSA−supported Institute for Clinical and Translational Scienceによって行われている正常血液ドナープログラムから得た。P40Px−EGFPプラスミドは、Seth Field(UCSD、San Diego)によって供給され、mCherry−Vac14WTおよびmCherry−Vac14L156Rプラスミドは、Thomas Weide(University Hospital of Muenster、Germany)によって供給され、mCherry−TRPML1、EGFP−TRPML1、およびmCherry−ML1 N*2プラスミドは、Haoxing Xu(University of Michigan、Ann Arbor)によって供給され、PIKfyveおよびVac14 shRNAは、Anand Ganesan(UCI、Irvine)によって供給された。
光学顕微鏡法:明視野および落射蛍光顕微鏡法を、Nikon TE2000−S蛍光顕微鏡を使用して実行した。共焦点顕微鏡法を、Zeiss LSM780共焦点顕微鏡またはNikon Eclipse Tiスピニングディスク共焦点顕微鏡において実施した。抗体は、以下から得た。マウス4F2hc(カタログ番号128208)およびLamp1(カタログ番号53−1079−42)はeBioscienceから、ヒト4F2hc(カタログ番号556077)はBD Biosciencesから、ヒトGLUT1(カタログ番号NB300−666)はNovus Biologicalsから、LC3(カタログ番号4108)はCell Signaling Technologyから、PIKfyve(カタログ番号4082)はTocrisから、Vac14(カタログ番号SAB4200074)はSigma−Aldrichから、WIPI2(カタログ番号LS−C 154557−100)はLifespan Biosciencesから得た。共局在化は、ImageJソフトウェアのJACoPプラグインを使用して決定した。マクロピノサイトーシスは、無血清DMEMにおいて16時間インキュベートした後に測定した。(LSL)前またはCreの(KRasG12D)導入後のp53−/−;LSL−K−RasG12D MEFは、16時間血清欠乏にさせた後、マクロピノサイトーシス阻害因子5−(N−エチル−N−イソプロピル)アミロライド(EIPA、75μΜ)で1時間、またはSH−BC−893で6時間処置した。Oregon Greenデキストラン(Life Technologies、カタログ番号D7173)(1mg/mL)およびLysotracker Red(Life Technologies、カタログ番号L−7525)(1:2,000希釈)を30分間添加し、生細胞を、スピニングディスク共焦点顕微鏡で評価した。Dil−LDL取り込みの場合、mPCEは、10%のチャコール処理血清を伴う培地で24時間インキュベートした後、20μg/mlのDil−LDL(Life Technologies、カタログ番号L3482)+/−SH−BC−893とともに6時間、およびLysotracker Blue(Life Technologies、カタログ番号L−7525)とともに30分間インキュベートした。表面LDL受容体を検出するために、SH−BC−893で3時間処置したmPCE細胞にDil−LDLを4℃で添加するか、あるいは細胞を、LDL受容体抗体(R&D Systems、カタログ番号AF2255)で染色した。SW480腫瘍を切除し、0.1Mのリン酸緩衝液中2.5%のグルタルアルデヒド、pH7.4で固定して、包埋するまで暗所4℃で保管した。腫瘍試料を、UC IrvineのPathology Research Services Core Facilityで処理した。
電子顕微鏡法。FTY720で処置したFL5.12細胞を、0.1Mのカコジル酸ナトリウム緩衝液中の2.5%のグルタルアルデヒド/2.5%のホルムアルデヒドで固定し、包埋するまで4℃で保管した。細胞を、1%の四酸化オスミウムで後固定し、続けて脱水し、エポナット12樹脂(eponat12 resin)に包埋し、超薄切片を切り出し、グリッド上に載せ、酢酸ウラニルおよびクエン酸鉛で染色した。試料を、Philips CM10透過型電子顕微鏡で分析した。2つの独立した実験から、代表的な画像を示す。
In vivo研究。マウスにおいて実行した実験は、Institutional Animal Care and Use Committee of University of California,Irvineに従って、UCIのBiostatistics Shared Resource of Chao Family Comprehensive Cancer Centerと協議して実行したパワー分析(power analysis)に則って実施した。異種移植片は、10〜16週齢のオスまたはメスのNSGマウスの側腹部に、5百万個の細胞を皮下注射することによって産生した。前立腺同系移植片は、同様の様式だが、6〜8週齢のオスC57BL/6マウスにおいて産生した。いったん腫瘍が100mm3に達したら、SH−BC−893を、示される通りに、腹腔内(i.p.)注射または経口胃管栄養法によって投与した。腫瘍体積は、式、体積(mm3)=長さ[mm]×(幅[mm])2×0.52を使用して計算した。BLIは、IVISイメージングシステム(Xenogen)を使用して測定した。C57BL6バックグラウンドにおいてpDKOマウスを生成するために、Ptenfloxマウス(ストック番号0045597)およびp53floxマウス(ストック番号008462)をJackson Laboratoryから得て、PB−Cre4マウス(系統番号01XF5)を、NCI−Frederick Mouse Repositoryから得た。pDKOのオスの同年齢のコホートを、UC IrvineのTransgenic Mouse Facilityの協力を得て行われたin vitro受精によって生成した。処置は、6〜7週齢で始めた。正常なマウスに対するSH−BC−893による処置が、尿生殖(GU)路の重量を改変しなかった(n=3)ことが決定された後、腫瘍重量を、pDKOマウスの完全なGU路を単離して、同年齢のマウスの正常なGU路の平均重量(n=3)を差し引くことによって決定した。腫瘍試料を、UC IrvineのPathology Research Services Core Facilityで処理および画像化した。血液化学を、IDEXX BioResearchによって分析し、全血球算定を、Hemavet血液学システムを使用して実施した。
NADH蛍光寿命イメージング顕微鏡法(FLIM)。Ti:サファイアレーザーシステム(Spectra−Physics Mai Tai)に連結されたZeiss 780顕微鏡を使用して、寿命画像を獲得した。励起波長は740nmであり、二色性フィルター(690nm)を使用して、レーザー光から蛍光シグナルを分離した。63×1.15水浸対物レンズを使用した。画像獲得設定は、画像サイズが256×256ピクセルであり、走査速度が25.21マイクロ秒/ピクセルであった。蛍光は、ハイブリッド検出器(HPM−100 Hamamatsu)によって検出した。データは、画像の最も明るいピクセルにおいて100カウントが獲得されるまで収集した。FLIMシステムは、各イメージングセッション中に、4.04ナノ秒の単一指数でフルオレセインの蛍光減衰を測定することによって較正された。FLIM画像のフェーザ変換および単一細胞における平均寿命の分析は、先に記載されているように行った(Digman MAら、Biophys J.、2008年、94巻(2号):L14〜L16頁、Pate KTら、EMBO J.、2014年、33巻(13号):1454〜73頁、Stringari Cら、Sci Rep.、2012年、2巻、568頁。この開示は、参照により本明細書に組み込まれる)。データは、UCIのLaboratory of Fluorescence Dynamicsにおいて開発されたSimFCSソフトウェアで処理した。結合したNADH画分を決定する場合、核は除外した。平均+/−SEMを示す、n≧2つの独立した実験に由来する45細胞。
コヒーレント反ストークスラマン分光法(CARS)。CARSイメージングシステムは、(Suhalim JLら、Biophys J.、2012年、102巻(8号):1988〜1995頁。この開示は、参照により本明細書に組み込まれる)において詳細に記載されている。細胞を、4%のホルムアルデヒドで固定し、60×水浸対物レンズで画像化した。試料に対するレーザー出力は10mWであり、10ミリ秒のピクセル滞留時間であった。脂肪滴領域は、カスタマイズしたMatlabプログラムを使用して、CARS画像から推定した。4構成要素のOtsu閾値化方法を使用して、脂肪滴、細胞質、細胞核、および背景を分離した。脂肪滴領域は、細胞質が覆っているピクセルの数に対する、脂肪滴が覆っているピクセルの数として定義した。
PIKfyve in vitroキナーゼアッセイ。FLAG−PIKfyveを、HEK293T細胞に発現させ、FLAG−ビーズで精製し、FLAGペプチドで溶離した。PI3Pおよびホスファチジルセリン(C16)リポソームを、FTY720を伴う、または伴わない、2×脂質混合物緩衝液[40mMのTris−HCl(pH7.4)、200mMのNaCl、1mMのEGTA]における超音波処理によって生成した。FLAG−PIKfyveおよび脂質混合物を、室温で15分間、Mg2+−ATP溶液[6.5mMのHEPES(pH7.3)、2.5mMのMnCl2、10mMのMgCl2、1mMのβ−グリセロホスフェート、0.1mMのATP、および[32P]−γ−ATP]とともにインキュベートした。4MのHClを添加することによって反応を停止し、ホスホイノシチドを、メタノール/クロロホルム(1:1)で抽出した。ホスホイノシチドを、シリカ薄層クロマトグラフィープレート上にスポットし、2Mの酢酸/1−プロパノール(35:65)で分離した。膜を乾燥させ、Phospho Imagerに曝露し、PI(3,5)P2スポットからのカウントをImageQuantを用いて定量化した。
HPLCによるPI(3,5)P2の測定。HeLa細胞を、PBSで2回すすぎ、イノシトール標識培地(5μg/mlのトランスフェリン、5μg/mlのインスリン、10%の透析済みFCS、20mMのHEPES、2mMのL−グルタミンを含有する、イノシトールを含まないDMEM)および10μCi/mlのミオ−[2−3H]イノシトールにおいて48時間インキュベートした。細胞を4.5%の過塩素酸で溶解させ、掻き取り、14,000×gで10分間4℃で遠心分離した。細胞ペレットを100mMのEDTAですすぎ、再度遠心分離し、50μlの水中に再懸濁させた。脂質を脱アシル化するために、1mlのメタノール/40%メチルアミン/ブタノール(45.7%のメタノール、10.7%のメチルアミン、11.4%のブタノール)を添加し、次いで、この混合物をガラスバイアルに移し、55℃で1時間インキュベートした。室温に冷ました後、試料を真空乾燥し、0.5mlの水中に再懸濁させた。同体積のブタノール/エチルエーテル/ギ酸エチル(20:4:1)で、脂質を2回抽出した。水性相を真空乾燥させ、75μlの水中に再懸濁させ、50μlの各々の試料をHPLCによって分析した。PI(3,5)P2レベルを、ホスファチジルイノシトール全体の割合として表した。
PP2Aホスファターゼ活性。PP2A活性を、PP2A免疫沈降ホスファターゼアッセイキット(EMD Millipore)を使用して測定した。簡潔に述べれば、PP2Aの触媒的サブユニットを、4μgの抗PP2A、Cサブユニットで、FL5.12細胞溶解物から免疫沈降させた。4回洗浄した後、免疫沈降したPP2Aの活性を、C2−セラミド、ジヒドロ−C2−セラミド、FTY720、SH−BC−893、またはカリクリンAの存在下または不在下において、製造業者の指示に従って、ホスホペプチドを脱リン酸化することによって評価した。
SH−BC−893の質量分析定量化。内部標準として、アセトニトリルと1:1で組み合わされた、50μlの血漿または50μlの腫瘍ホモジネート(0.25Mのスクロース、25mMのKCl、50mMのTris HCl、0.5mMのEDTA、pH7.4、1:9重量体積)に、75ngのFTY720を添加した。タンパク質を沈澱させ、遠心分離によって除去し(15,000rpmで10分間)、上清を、50μlのアセトニトリル+0.2%の酢酸が入った、氷上の新しいチューブに移した。アセトニトリル+0.2%の酢酸による第2の脱タンパクの後、20μlの脱タンパク試料を、アセトニトリル+0.2%の酢酸による勾配溶出を用いて、C18逆相カラム(Waters)を備え付けた、Waters Micromass Quattro Premier XEを使用するUPLC−MS/MSによって分析した。計器は陽イオンモードで動作させた。多重反応モニタリング用のイオン移行チャネルは、SH−BC−893の場合290→104であり、200ミリ秒の滞留時間を伴った。コーン電圧は30Vであった。定量化に使用する標準曲線は、50〜1000ng/mlにおいて線形であり、R2は0.98またはそれよりも大きかった。内部標準の回復は、>80%であった。腫瘍濃度は、1gm=1mLと仮定して計算した。
統計的方法およびデータ分析。有意性は、単回のペアワイズ比較については対応t検定を使用して決定した。チューキー法を利用し、複数の比較が行われた場合は、補正したp値を報告している。データが正規分布ではなかった腫瘍研究では、処置マウスを対照と比較するために、マン・ホイットニーのU検定を使用した。*、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001;n.s.、有意ではない(P>0.05)。CARS実験の脂肪滴領域では、対照と実験群との間において、平均値は両側ANOVAで比較した。
均等物の原則
上の説明は、本発明の多くの具体的実施形態を含んでいるが、これらの実施形態は、本発明の範囲に対する限定として解釈されるべきではなく、本発明の一実施形態の例として解釈されるべきである。したがって、本発明の範囲は、例証された実施形態によって決定されるべきではなく、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって決定されるべきである。