以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る測定装置1の構成を示す図である。本実施形態において、測定装置1は、テラヘルツ時間領域分光装置である。図1に示すように、測定装置1は、パルスレーザー発生源2と、λ/2板3と、偏光ビームスプリッタ4と、音響光学素子(Acoustic Optic Modulator;AOM)6と、測定用デバイス10と、一対の軸外し放物面ミラー11、12と、Siレンズ13と、検出器14と、遅延ステージ17と、第2高調波発生素子21と、集光レンズ5、7、9、20、22と、反射ミラー8、15、16、18、19と、遅延ステージ駆動機構23と、演算装置24とを備える。
パルスレーザー発生源2は、パルスレーザーを発生する。パルスレーザーは、テラヘルツ波Tを発生させる励起光となるものであれば、特に限定されない。一般に、フェムト秒(10-15秒)オーダーのパルス幅を有するフェムト秒パルスレーザーを使用し得る。典型的には、フェムト秒パルスレーザーは、1.5μm帯の波長と、50fs(フェムト秒)以上200fs(フェムト秒)以下のパルス幅を有する。
λ/2板3は、パルスレーザー発生源2から発生したパルスレーザーの直線偏光を任意の方向に調整する。λ/2板3を通過したパルスレーザーは、偏光ビームスプリッタ4へ入射する。
偏光ビームスプリッタ4は、λ/2板3から入射したパルスレーザーを、所定の比率でポンプ光(パルスレーザー)とプローブ光(パルスレーザー)とに分配する。
ポンプ光は、集光レンズ5を介して音響光学素子6に入射する。ポンプ光は、音響光学素子6によって高速変調される。高速変調されたポンプ光は、集光レンズ7、反射ミラー8、及び集光レンズ9をこの順に経由して測定用デバイス10に導かれる。集光レンズ9は、ポンプ光を測定用デバイス10の予め定められた位置へ集光する。
測定用デバイス10は、テラヘルツ波Tを発生するテラヘルツ波発生素子を備える。テラヘルツ波発生素子の材料は、照射される光に応じてテラヘルツ波Tを発生させる材料であればよく、特に限定されない。例えば、フェムト秒パルスレーザーを用いる場合、テラヘルツ波発生素子の材料として非線形光学結晶を使用し得る。換言すると、テラヘルツ波Tの発生に、非線形光学結晶の光整流作用(非線形光学効果)を利用することができる。具体的には、非線形光学結晶として、ガリウム砒素(GaAs)<110>を使用し得る。ガリウム砒素は半導体である。本実施形態では、テラヘルツ波発生素子として、ガリウム砒素<110>基板を用いる。ガリウム砒素<110>基板は、半導体基板である。以下、ガリウム砒素<110>基板を、「GaAs基板」と記載する。なお、ガリウム砒素<110>は非有機結晶であるが、テラヘルツ波発生素子の材料は非有機結晶に限定されない。テラヘルツ波発生素子の材料に、有機結晶を使用してもよい。具体的には、テラヘルツ波発生素子の材料として、4−dimethylamino−N−methyl−4−stilbazolium tosylate(DAST)及び4−dimethylamino−N−methyl−4−stilbazolium p−chlorobenzenesulfonate(DASC)等の有機結晶を使用し得る。
GaAs基板は、ポンプ光が集光されたスポットから、テラヘルツ波T(テラヘルツ電磁波パルス)を発生する。換言すると、GaAs基板は、局所的にテラヘルツ波を発生する。実施形態1では、GaAs基板に、測定対象が注入される測定対象注入流路(測定対象注入部)が形成されており、ポンプ光は、テラヘルツ波Tが測定対象注入流路を透過するようにGaAs基板に集光される。
このように測定装置1は、GaAs基板(テラヘルツ波発生素子)から局所的にテラヘルツ波Tを発生させる光学系を備える。図1に示す測定装置1において、GaAs基板から局所的にテラヘルツ波Tを発生させる光学系は、λ/2板3と、偏光ビームスプリッタ4と、音響光学素子6と、集光レンズ5、7、9と、反射ミラー8とを含む。なお、実施形態1において、測定対象は、液体試料である。
GaAs基板から発生したテラヘルツ波Tは、測定対象注入流路を透過した後、一対の軸外し放物面ミラー11、12と、Si(シリコン)レンズ13とをこの順に経由して検出器14へ導かれる。Siレンズ13は、テラヘルツ波Tを検出器14の予め定められた位置へ集光する。検出器14は、テラヘルツ波Tを検出できる限り、特に限定されるものではない。検出器14には、一般的には、光伝導スイッチ又は電気光学結晶が使用される。本実施形態では、光伝導スイッチを使用する。一例として、検出器14は、LT−GaAs光伝導スイッチによって構成される。LT−GaAs光伝導スイッチは、半絶縁性ガリウム砒素(GaAs)基板にGaAsエピキタシャル膜を低温成長させることによって作製することができる。
一方、偏光ビームスプリッタ4から分岐した他方のパルスレーザー(プローブ光)は、遅延ステージ17に設置された一対の反射ミラー15、16を経由して、反射ミラー18へ導かれる。反射ミラー18は、プローブ光を反射ミラー19へ導く。反射ミラー19は、プローブ光を集光レンズ20に入射する。集光レンズ20は、プローブ光を第2高調波発生素子21へと集光する。第2高調波発生素子21は、高効率でテラヘルツ波Tを検出するために設けられている。第2高調波発生素子21は、プローブ光を倍波変調する。なお、第2高調波発生素子21は、典型的には、ホウ酸バリウム(BaB2O4;BBO)結晶、又はPPLN(Periodically Poled Lithium niobate)結晶からなる。倍波変調されたプローブ光は、集光レンズ22によって検出器14へと集光される。集光レンズ22は、プローブ光を検出器14の予め定められた位置へ集光する。
検出器14は、テラヘルツ波T(テラヘルツ電磁波パルス)が検出器14に入射するタイミングと、プローブ光(パルスレーザー)が検出器14に入射するタイミングとが重なると、瞬時電流を発生させる。瞬時電流は、テラヘルツ波Tの電場の強度に比例した電流値を有する。
遅延ステージ駆動機構23は、偏光ビームスプリッタ4から分岐したプローブ光が直進する方向と平行な方向に沿って、遅延ステージ17を一定速度で連続的に往復運動させる。この結果、テラヘルツ波Tとプローブ光とが同時に検出器14に入射するタイミングが連続的(時間的)に変化する。換言すると、遅延ステージ17の往復運動(位置変化)に応じて、テラヘルツ波Tが検出器14に入射するタイミングと、プローブ光が検出器14に入射するタイミングとの間の時間差(遅延時間)が変化する。したがって、検出器14が発生させる瞬時電流の電流値が時間的に変化する。このように瞬時電流の電流値を時間的に変化させることで、テラヘルツ波Tの電場の強度変化を示す時間波形(テラヘルツ波Tの検出信号)を取得することができる。
演算装置24は、検出器14の出力(テラヘルツ波Tの検出信号)をフーリエ変換する。検出器14の出力をフーリエ変換することで、テラヘルツ波Tの周波数スペクトルを取得することができる。演算装置24は、例えばパーソナルコンピューターのような汎用的コンピューターにより構成し得る。
図2は、実施形態1に係る測定用デバイス10を示す平面図である。図2に示すように、測定用デバイス10は、GaAs基板31を備える。GaAs基板31は、テラヘルツ波発生素子の一例である。GaAs基板31には、測定対象注入流路32(測定対象注入部)が形成されている。測定対象注入流路32に、液体試料(測定対象)が注入される。実施形態1において、測定対象注入流路32は、溝からなる。
測定用デバイス10は更に、第1ポート33と、第2ポート34とを備える。第1ポート33及び第2ポート34は、GaAs基板31に形成されている。第1ポート33は、測定対象注入流路32の一端に接続する。第2ポート34は、測定対象注入流路32の他端に接続する。測定対象注入流路32は、マイクロ流路である。具体的には、測定対象注入流路32は、マイクロメートルオーダー(1μm以上1mm未満)の幅及び深さを有する。所定量の液体試料がマイクロシリンジ等から第1ポート33又は第2ポート34に滴下されると、毛細管現象を駆動力として液体試料が測定対象注入流路32に注入される。例えば、第1ポート33に滴下された液体試料は、毛細管現象によって測定対象注入流路32を流れる(移動する)。その結果、測定対象注入流路32に液体試料が充填される。測定対象注入流路32内に収容できなかった余剰量の液体試料は、第2ポート34から排出される。
測定対象注入流路32、第1ポート33、及び第2ポート34の作製方法は、特に限定されない。一例として、測定対象注入流路32、第1ポート33、及び第2ポート34は、光リソグラフィー法によってGaAs基板31の表面に形成し得る。
測定用デバイス10は、テラヘルツ波Tを共振させるメタマテリアル35を更に備える。メタマテリアル35は、負の誘電率と、負の透磁率とを有する。換言すると、メタマテリアル35は、負の屈折率を有する。メタマテリアル35は、メタアトムである分割リング共振器(Split−ring resonator;SRR)36を少なくとも1つ有する。実施形態1において、メタマテリアル35は、25個の分割リング共振器36からなる。なお、実施形態1では各分割リング共振器36の外形は正方形であるが、各分割リング共振器36の外形は正方形に限定されるものではない。例えば、各分割リング共振器36の外形は、長方形や円形であってもよい。
実施形態1において、メタマテリアル35は、GaAs基板31上に形成されている。メタマテリアル35(分割リング共振器36)の作製方法は、特に限定されない。例えば、スパッタ法やナノインプリント法により、GaAs基板31上にメタマテリアル35(分割リング共振器36の配列)を形成し得る。メタマテリアル35(分割リング共振器36)の材料は、導電性を有する限り特に限定されないが、導電性の面から金属が好適であり、特に、高い導電性を有する金が好ましい。
実施形態1では、各分割リング共振器36は、ギャップ部37の向きを揃えて、縦横方向に等間隔に(周期的に)配列されている。但し、各分割リング共振器36の配列は、テラヘルツ波Tを共振させ得る限り、特に限定されるものではない。
測定対象注入流路32は、GaAs基板31(測定用デバイス10)を平面視したとき、メタマテリアル配置領域31aを貫通するように形成されている。メタマテリアル35は、GaAs基板31のメタマテリアル配置領域31aに形成される。実施形態1では、測定対象注入流路32は、メタマテリアル配置領域31aのうち、メタマテリアル35の中央に配列されている5つの分割リング共振器36が配置される部分を貫通するように形成されている。換言すると、測定対象注入流路32は、メタマテリアル35の中央に配列されている5つの分割リング共振器36の下方を通過する。したがって、メタマテリアル35の中央に配列されている5つの分割リング共振器36は、測定対象注入流路32と対向している。なお、測定対象注入流路32の幅は、分割リング共振器36の寸法に応じて予め決定すればよく、典型的には、5μm以上100μm以下の範囲から選択し得る。また、測定対象注入流路32の深さは任意に決定すればよく、典型的には、5μm以上30μm以下の範囲から選択し得る。
各分割リング共振器36は、少なくとも1つのギャップ部37を含む。実施形態1では、測定対象注入流路32と対向する5つの分割リング共振器36は3つのギャップ部37を含み、他の20個の分割リング共振器36は1つのギャップ部37を含む。図3は、実施形態1に係る分割リング共振器36を示す平面図である。詳しくは、図3は、測定対象注入流路32と対向する分割リング共振器36を示している。
図3に示すように、測定対象注入流路32と対向する分割リング共振器36は、3つのギャップ部37a、37b、及び37cを含む。3つのギャップ部37a、37b、及び37cのうち、2つのギャップ部37a、37cは、測定対象注入流路32に沿った方向において互いに対向する。測定対象注入流路32は、2つのギャップ部37a、37cの下方を通過する。換言すると、測定対象注入流路32は、2つのギャップ部37a、37cに対向する。一方、測定対象注入流路32は、ギャップ部37bには対向していない。ギャップ部37bは、測定対象注入流路32と対向していない分割リング共振器36のギャップ部37と同じ辺に設けられている(図2参照)。
図1を参照して説明した測定装置1は、メタマテリアル35に含まれる分割リング共振器36のうちの1つにテラヘルツ波Tが照射されるように、ポンプ光(パルスレーザー)を集光させる。詳しくは、テラヘルツ波Tは、測定対象注入流路32に対向する分割リング共振器36のうちの1つに照射される。実施形態1では、メタマテリアル35の中心に位置する分割リング共振器36にテラヘルツ波Tが照射される。また、実施形態1では、測定対象注入流路32に対向するギャップ部37a、及び37cのうちの1つに、測定対象注入流路32を介してテラヘルツ波Tが照射されるように、ポンプ光(パルスレーザー)が集光される。したがって、実施形態1において、GaAs基板31から局所的に発生したテラヘルツ波Tは、メタマテリアル35の中心に位置する分割リング共振器36のギャップ部37a、及び37cのうちの一方に照射される。
実施形態1では、測定対象注入流路32はGaAs基板31に形成されている。また、テラヘルツ波Tは、GaAs基板31から局所的に発生する。その結果、回折前のテラヘルツ波Tが高密度に測定対象注入流路32に照射される。よって、測定対象注入流路32に液体試料が注入されていても、テラヘルツ波Tは、測定対象注入流路32(液体試料)を透過する。測定対象注入流路32を透過したテラヘルツ波Tは、メタマテリアル35に照射された後、測定用デバイス10から出射する。
更に、実施形態1では、メタマテリアル35がGaAs基板31上に形成されているため、回折前のテラヘルツ波Tがメタマテリアル35に照射される。換言すると、メタマテリアル35に対して垂直な偏光の光(テラヘルツ波T)が、メタマテリアル35に含まれる分割リング共振器36のうちの1つに入射する。その結果、テラヘルツ波Tは、ある周波数で共振する。換言すると、テラヘルツ波Tの周波数スペクトルに、ある周波数で共振が現れる。
テラヘルツ波Tの共振周波数は、メタマテリアル35の構造や液体試料に依存して決まる。詳しくは、テラヘルツ波Tは、分割リング共振器36の個数や配列、各分割リング共振器36の形状や寸法、ギャップ部37の容量等に依存して決まる特定の周波数で共振する。ギャップ部37a、37cの容量は、測定対象注入流路32に液体試料が注入されているか否かに応じて変化する。また、ギャップ部37a、37cの容量は、液体試料の内容(液体の種類や、液体に含まれる成分等)に応じて変化する。その結果、測定対象注入流路32に液体試料が注入されているか否かに応じて、テラヘルツ波Tの共振周波数が変化する(シフトする)。また、液体試料の内容に応じて、テラヘルツ波Tの共振周波数が変化する(シフトする)。換言すると、測定対象注入流路32に液体試料が注入されているか否かに応じて、テラヘルツ波Tの周波数スペクトルが変化する。また、液体試料の内容に応じて、テラヘルツ波Tの周波数スペクトルが変化する。
なお、分割リング共振器36の縦横の幅、及びギャップ部37の幅は、分割リング共振器36がテラヘルツ波Tを共振させ得る限り特に限定されない。換言すると、分割リング共振器36の縦横の幅は、テラヘルツ波Tの波長よりも小さい限り特に限定されない。典型的には、分割リング共振器36の縦幅は、40μm以上100μm以下であり、分割リング共振器36の横幅は40μm以上100μm以下であり、ギャップ部37の幅は5μm以上10μm以下である。ギャップ部37a、37cの幅は、測定対象注入流路32の幅と等しくてもよいし、測定対象注入流路32の幅と異なっていてもよい。各ギャップ部37a〜37cの幅は等しくてもよいし、異なっていてもよい。
分割リング共振器36を繰り返し配置する位置の周期(図2参照)は、テラヘルツ波Tの波長よりも小さいことが好ましい。これにより、テラヘルツ波Tに顕著な共振が現れる。また、分割リング共振器36を繰り返し配置する位置の周期が小さい程、より顕著な共振がテラヘルツ波Tに現れる傾向がある。以下、分割リング共振器36を繰り返し配置する位置の周期を、「分割リング共振器36の周期」と記載する。典型的には、分割リング共振器36の周期は、50μm以上200μm以下である。
以上説明した実施形態1によれば、測定用デバイス10に含まれるテラヘルツ波発生素子(GaAs基板31)から局所的にテラヘルツ波Tを発生させることができる。したがって、1つの分割リング共振器36にテラヘルツ波Tを直接照射することが可能となる。メタマテリアル35に含まれる分割リング共振器36のうちの1つにテラヘルツ波Tを照射することにより、テラヘルツ波Tを共振させることが可能となる。
また、実施形態1によれば、測定対象注入流路32に液体試料が注入されているか否かに応じて、ギャップ部37a、37cの容量が変化する。また、テラヘルツ波Tが照射される分割リング共振器36のギャップ部37a、37cに測定対象注入流路32が対向する。その結果、測定対象注入流路32に液体試料が注入されているか否かに応じて、テラヘルツ波Tの共振周波数がシフトする。更に、液体試料の内容に応じて、テラヘルツ波Tの共振周波数がシフトする。よって、例えば、測定対象注入流路32に液体試料が注入されていない状態で取得される共振周波数と、測定対象注入流路32に液体試料が注入された状態で取得される共振周波数とを比較することにより、共振周波数のシフト量を解析することができる。更に、共振周波数のシフト量に基づいて液体試料の複素誘電率等の電気的特性を測定することができる。したがって、液体試料(特に水溶液試料)の定性分析を高感度で行うことが可能となる。
また、実施形態1によれば、測定対象注入流路32に注入された液体試料の測定を行うことができる。よって、液体試料(特に水溶液試料)の定量分析を高感度で行うことが可能となる。更に、第1ポート33と第2ポート34とにそれぞれ異なる種類の液体試料を滴下し、それらを測定対象注入流路32内で混合させることができる。よって、2種類の液体試料の反応(混合液の時間的変化)を追跡することが可能となる。
なお、実施形態1では、メタマテリアル35が25個の分割リング共振器36を有する形態について説明したが、分割リング共振器36の個数は特に限定されない。但し、n2個(nは整数)の分割リング共振器36を縦横方向に周期的に配列する場合、分割リング共振器36の個数が多い程、共振が増強される傾向がある。即ち、テラヘルツ波Tに顕著な共振が現れる。よって、n2個の分割リング共振器36を縦横方向に周期的に配列するとともに、分割リング共振器36の個数を可能な限り増加させることが好ましい。
また、実施形態1では、メタマテリアル35の中心に位置する分割リング共振器36にテラヘルツ波Tが照射される形態について説明したが、テラヘルツ波Tが照射される分割リング共振器36は、測定対象注入流路32に対向する分割リング共振器36であればよく、メタマテリアル35の中心に位置する分割リング共振器36に限定されない。但し、n2個の分割リング共振器36を縦横方向に周期的に配列する場合、メタマテリアル35の中心に位置する分割リング共振器36にテラヘルツ波Tを照射することにより、テラヘルツ波Tに顕著な共振が現れる。換言すると、共振の増強効果を効率よく得ることができる。
また、実施形態1では、測定対象注入流路32が、メタマテリアル35の中央に配列されている5つの分割リング共振器36に対向する形態について説明したが、測定対象注入流路32と対向する分割リング共振器36は特に限定されない。但し、n2個の分割リング共振器36を縦横方向に周期的に配列する場合、メタマテリアル35の中心に位置する分割リング共振器36にテラヘルツ波Tを照射することにより、テラヘルツ波Tに顕著な共振が現れる。よって、測定対象注入流路32は、メタマテリアル35の中央に配列されている分割リング共振器36に対向することが好ましい。換言すると、測定対象注入流路32は、メタマテリアル配置領域31aの中央を貫通することが好ましい。
また、実施形態1では、テラヘルツ波Tが、測定対象注入流路32に対向するギャップ部37のうちの1つに照射される形態について説明したが、テラヘルツ波Tが照射される位置は、測定対象注入流路32に対向するギャップ部37のうちの1つに限定されない。テラヘルツ波Tは、照射対象の分割リング共振器36のギャップ部37a、37b付近に照射され得る。換言すると、テラヘルツ波Tは、照射対象の分割リング共振器36のうちの任意の部分に照射され得る。例えば、テラヘルツ波Tは、照射対象の分割リング共振器36の中心部分に照射されてもよい。
また、実施形態1では、測定対象注入部が測定対象注入流路32である形態について説明したが、測定対象注入部は測定対象注入流路32に限定されない。図4は、測定用デバイス10の第1変形例を示す平面図である。
図4に示すように、測定用デバイス10は、測定対象注入部として、有底の測定対象注入穴32aを有してもよい。第1変形例に係る測定用デバイス10は、9個の分割リング共振器36を備える。9個の分割リング共振器36は、縦横方向に周期的に配列されている。測定対象注入穴32aは、9個の分割リング共振器36のうちの中心の分割リング共振器36に含まれるギャップ部37に対向する。以下、メタマテリアル35の中心に位置する分割リング共振器36を、「中心の分割リング共振器36」と記載する。
測定対象注入穴32aの直径は、分割リング共振器36の寸法に応じて予め決定すればよく、典型的には、5μm以上10μm以下の範囲から選択し得る。また、測定対象注入穴32aの深さは、典型的には、5μm以上30μm以下の範囲から選択し得る。測定対象注入部が測定対象注入穴32aである場合、図2を参照して説明した第1ポート33及び第2ポート34は不要となる。なお、ギャップ部37の幅は、測定対象注入穴32aの直径と等しくてもよいし、測定対象注入穴32aの直径と異なっていてもよい。
また、実施形態1では、測定対象注入流路32(測定対象注入部)がGaAs基板31に形成される形態について説明したが、測定対象注入流路32(測定対象注入部)は別のデバイス(例えば、別の基板)に形成されてもよい。図5(a)は、測定用デバイス10の第2変形例を示す平面図であり、図5(b)は、測定用デバイス10の第2変形例を示す断面図である。詳しくは、図5(b)は、図5(a)に示すVB−VB線に沿った断面を示す。
図5(a)及び図5(b)に示すように、第2変形例に係る測定用デバイス10は、測定対象配置用デバイス38を更に備える。測定対象配置用デバイス38は、例えば、樹脂製又はガラス製であり得る。
測定対象配置用デバイス38には、測定対象注入流路32(測定対象注入部)と、第1ポート33と、第2ポート34とが形成されている。測定対象注入流路32は、測定対象配置用デバイス38の内部に設けられている。測定対象配置用デバイス38は、メタマテリアル35の上方に配置される。
第2変形例では、GaAs基板31から局所的に発生したテラヘルツ波Tは、まず、メタマテリアル35に含まれる分割リング共振器36のうちの1つに照射される。典型的には、テラヘルツ波Tは、中心の分割リング共振器36に照射される。テラヘルツ波Tは、1つの分割リング共振器36を介して、測定対象注入流路32(測定対象注入部)に照射される。メタマテリアル35(分割リング共振器36)と測定対象注入流路32(測定対象注入部)との間の距離は、回折前のテラヘルツ波Tが測定対象注入流路32(測定対象注入部)に照射され得る距離である限り、特に限定されるものではい。典型的には、メタマテリアル35(分割リング共振器36)と測定対象注入流路32(測定対象注入部)との間の距離は、50μm以下である。
また、実施形態1では、メタマテリアル35がGaAs基板31上に形成される形態について説明したが、メタマテリアル35は別のデバイス(例えば、別の基板)に形成されてもよい。図6(a)は、測定用デバイス10の第3変形例を示す平面図であり、図6(b)は、測定用デバイス10の第3変形例を示す断面図である。詳しくは、図6(b)は、図6(a)に示すVIB−VIB線に沿った断面を示す。
図6(a)及び図6(b)に示すように、第3変形例に係る測定用デバイス10は、メタマテリアル配置用デバイス39と、スペーサー40とを備える。メタマテリアル配置用デバイス39は、例えば、高抵抗シリコン基板であり得る。
第3変形例では、メタマテリアル配置用デバイス39上にメタマテリアル35(分割リング共振器36)が形成されている。メタマテリアル配置用デバイス39は、GaAs基板31の上方にスペーサー40を介して配置される。詳しくは、メタマテリアル配置用デバイス39は、メタマテリアル35がメタマテリアル配置用デバイス39とGaAs基板31とによって挟まれるように設けられる。
第3変形例では、図2を参照して説明した測定用デバイス10と同様に、GaAs基板31から局所的に発生したテラヘルツ波Tは、まず、測定対象注入流路32(測定対象注入部)に照射される。テラヘルツ波Tは、測定対象注入流路32を介して、メタマテリアル35に含まれる分割リング共振器36のうちの1つに照射される。典型的には、テラヘルツ波Tは、中心の分割リング共振器36に照射される。メタマテリアル35(分割リング共振器36)と測定対象注入流路32(測定対象注入部)との間の距離は、回折前のテラヘルツ波Tがメタマテリアル35(分割リング共振器36)に照射され得る距離である限り、特に限定されるものではい。典型的には、メタマテリアル35(分割リング共振器36)と測定対象注入流路32(測定対象注入部)との間の距離は、50μm以下である。
図7(a)は、測定用デバイス10の第4変形例を示す平面図であり、図7(b)は、測定用デバイス10の第4変形例を示す断面図である。詳しくは、図7(b)は、図7(a)に示すVIIB−VIIB線に沿った断面を示す。
図7(a)及び図7(b)に示すように、第4変形例に係る測定用デバイス10は、測定対象注入流路32(溝)を覆うカバー部41を備える。カバー部41は、例えば、樹脂製又はガラス製であり得る。カバー部41は、排出路42を含む。排出路42は、マイクロ流路であり、排出路42の一方端は、測定対象注入流路32の中央位置において測定対象注入流路32に連通する。また、排出路42の他方端は、カバー部本体(排出路42が形成されている部分)の長手方向の側面において開口している。第4変形例では、排出路42の他方端は、カバー部本体の第2ポート34側の側面において開口している。換言すると、排出路42の他方端は、第2ポート34の上方で開口している。カバー部41は更に、受け皿部46を有する。受け皿部46は、カバー部本体の側面から突出する。第4変形例において、受け皿部46は、カバー部本体の第2ポート34側の側面から突出する。詳しくは、受け皿部46は、排出路42の他方端(開口)の下方の位置から、第2ポート34を部分的に覆うように突出する。
第4変形例に係る測定用デバイス10によれば、第1ポート33と第2ポート34とに液体試料を滴下した場合に、測定対象注入流路32内に収容できなかった余剰量の液体試料が、毛細管現象を駆動力として排出路42に注入される。また、排出路42内にも収容できなかった余剰量の液体試料が、受け皿部46へ排出される。なお、第1ポート33と第2ポート34とに滴下する液体試料は、種類が異なる液体試料であってもよいし、同じ種類の液体試料であってもよい。
なお、排出路42の他方端が開口する位置は、第2ポート34の上方に限定されない。例えば、排出路42の他方端は、第1ポート33の上方で開口してもよい。この場合、受け皿部46は、排出路42の他方端(開口)の下方の位置から、第1ポート33を部分的に覆うように突出する。あるいは、排出路42の他方端は、カバー部本体の、第1ポート33側の側面及び第2ポート34側の側面とは異なる面において開口してもよい。この場合、受け皿部46は省略することができる。
また、実施形態1では、各分割リング共振器36が1つ又は3つのギャップ部37を含む形態について説明したが、各分割リング共振器36に含まれるギャップ部37の数は、メタマテリアル35がテラヘルツ波Tを共振させ得る限り特に限定されない。図8は、測定用デバイス10の第5変形例を示す平面図である。
図8に示すように、第5変形例に係る測定用デバイス10の各分割リング共振器36は、ギャップ部37を2つ含む。2つのギャップ部37は、各分割リング共振器36において、対向する2つの辺に設けられており、各分割リング共振器36は、ギャップ部37の向きを揃えて、縦横方向に等間隔に(周期的に)配列されている。詳しくは、各分割リング共振器36の2つのギャップ部37は、測定対象注入流路32に沿った方向において互い対向しており、測定対象注入流路32は、メタマテリアル35の中央に配列されている5つの分割リング共振器36に含まれるギャップ部37の下方を通過する。
また、実施形態1では、GaAs基板31が直線状の測定対象注入流路32を有する形態について説明したが、測定対象注入流路32の形状は特に限定されない。図9は、測定用デバイス10の第6変形例を示す平面図である。
図9に示すように、第6変形例に係る測定用デバイス10は、Y字状の測定対象注入流路32を有する。詳しくは、測定対象注入流路32は、第1流路321、第2流路322、及び第3流路323を含み、第1流路321、第2流路322、及び第3流路323の基端同士が接続(合流)している。換言すると、測定対象注入流路32は、2本の流路に分岐している。また、第6変形例に係る測定用デバイス10は、2つの第1ポート33と1つの第2ポート34とを備える。2つの第1ポート33、及び1つの第2ポート34は、GaAs基板31に形成されている。2つの第1ポート33は、第1流路321及び第2流路322の先端にそれぞれ接続しており、第2ポート34は第3流路323の先端に接続している。
第6変形例に係る測定用デバイス10では、第3流路323がメタマテリアル35の下方を通過している。換言すると、メタマテリアル35は、測定用デバイス10を平面視したとき、第1流路321、第2流路322、及び第3流路323の基端同士が合流する位置と、第2ポート34との間に配設される。
第6変形例に係る測定用デバイス10によれば、2つの第1ポート33にそれぞれ異なる種類の液体試料を滴下して、それらを第3流路323内で混合させることができる。したがって、2種類の液体試料を混合させた混合試料を測定対象にする場合、2種類の液体試料を2つの第1ポート33にそれぞれ滴下するだけで、所期の混合試料の測定を実行することができる。換言すると、所期の混合試料の調製と測定とを、1つの測定用デバイス10を用いて同時に行うことができる。よって、所期の混合試料の調製を事前に行う手間(労力)を削減できる。
なお、第6変形例では、測定対象注入流路32は2本の流路に分岐したが、測定対象注入流路32が分岐する数は特に限定されない。測定対象注入流路32は、3本以上の流路に分岐してもよい。
[実施形態2]
続いて、実施形態2に係る測定装置1について説明する。但し、実施形態1と異なる事項を主に説明し、実施形態1と重複する説明は適宜割愛する。実施形態2に係る測定装置1は、実施形態1と異なり、液体試料に含まれる成分を電気泳動させることができる。
図10は、実施形態2に係る測定装置1の主要部を示す図である。図10に示すように、実施形態2に係る測定装置1は、直流電源装置25と、正電極43と、負電極44とを更に備える。実施形態2では、正電極43が第1ポート33に配置され、負電極44が第2ポート34に配置される。直流電源装置25の正極は、電線45を介して正電極43に電気的に接続し、直流電源装置25の負極は、電線45を介して負電極44に電気的に接続する。電気泳動の実行時には、液体試料が測定対象注入流路32、第1ポート33及び第2ポート34に充填されるように、第1ポート33及び第2ポート34のうちの少なくとも一方に液体試料を滴下する。
直流電源装置25は、測定対象注入流路32の両端間(第1ポート33と第2ポート34との間)に直流電圧を印加する。その結果、液体試料に含まれる各成分が溶媒中を泳動(移動)して分離する。
以上説明した実施形態2によれば、電気泳動実行前の共振周波数と、電気泳動実行後の共振周波数とを比較することができる。したがって、電気泳動実行前の共振周波数と、電気泳動実行後の共振周波数とを比較することにより、生体試料(例えば、タンパク質、アミノ酸、脂肪、糖)の複素誘電率等の電気的特性を測定することが可能となる。また、共振周波数の測定を、電気泳動によって各成分(生体試料)が分離する場で行うことができる。
なお、図5を参照して説明したように、測定対象注入流路32は別のデバイス(例えば、別の基板)に形成されてもよい。図11は、実施形態2に係る測定用デバイス10の変形例を示す平面図である。図11に示す測定用デバイス10は、図5を参照して説明した測定用デバイス10と同様に、測定対象配置用デバイス38を備える。測定対象配置用デバイス38には、測定対象注入流路32、第1ポート33及び第2ポート34が形成されている。また、図11に示す測定用デバイス10は、正電極43及び負電極44を備える。正電極43及び負電極44は、測定対象配置用デバイス38の第1ポート33及び第2ポート34にそれぞれ配置される。
[実施形態3]
続いて、実施形態3に係る測定装置1について説明する。但し、実施形態1及び実施形態2と異なる事項を主に説明し、実施形態1及び実施形態2と重複する説明は適宜割愛する。実施形態3に係る測定装置1は、実施形態1と異なり、ポンプ光が走査される。
図12は、実施形態3に係る測定装置1の光学的構成を示す図である。図12に示すように、実施形態3に係る測定装置1は、パルスレーザー発生源2と、偏光ビームスプリッタ4と、音響光学素子6と、測定用デバイス10と、一対の軸外し放物面ミラー11、12と、Siレンズ13と、検出器14と、遅延ステージ17と、第2高調波発生素子21と、集光レンズ9、22と、第1ガルバノミラー26aと、第2ガルバノミラー26bと、ビームエキスパンダ27と、8枚の反射ミラー28とを備える。なお、図示しないが、実施形態3に係る測定装置1は、第1ガルバノミラー26aを駆動する第1ステッピングモーターと、第2ガルバノミラー26bを駆動する第2ステッピングモーターとを備える。更に、実施形態3に係る測定装置1は、図1を参照して説明した測定装置1と同様に、遅延ステージ駆動機構23と、演算装置24とを備える。
実施形態3に係る測定装置1は、第1ガルバノミラー26a(第1ステッピングモーター)の動作、及び第2ガルバノミラー26b(第2ステッピングモーター)の動作を演算装置24により制御することができる。詳しくは、実施形態3に係る測定装置1は、GaAs基板31の背面上でポンプ光(パルスレーザー)のスポットが2次元的に走査されるように、第1ガルバノミラー26a(第1ステッピングモーター)の動作、及び第2ガルバノミラー26b(第2ステッピングモーター)の動作を制御することが可能である。
図13は、実施形態3に係る測定用デバイス10を示す平面図である。図13に示すように、実施形態3に係る測定用デバイス10は、4つのメタマテリアル35を有する。4つのメタマテリアル35は、縦横方向に周期的に配列される。また、実施形態3に係る測定用デバイス10は、4つのメタマテリアル35の各々に対して設けられた測定対象注入穴32aを有する。詳しくは、各測定対象注入穴32aは、対応するメタマテリアル35の中心の分割リング共振器36のギャップ部37に対向する。
図12を参照して説明した測定装置1は、各メタマテリアル35の中心の分割リング共振器36にテラヘルツ波Tが順次照射されるように、第1ガルバノミラー26a及び第2ガルバノミラー26bを動作させる。なお、隣接するメタマテリアル35間の距離D(図13参照)は、各メタマテリアル35を透過する各テラヘルツ波Tの共振周波数に対して、各メタマテリアル35が互いに影響を与えない距離に決定する。典型的には、隣接するメタマテリアル35間の距離Dは、300μm以上である。
以上説明した実施形態3によれば、例えば、測定用デバイス10を交換することなく、4種類の液体試料の測定を実施することができる。よって、測定の効率化を図ることができる。
なお、実施形態3では、測定装置1が、ポンプ光のスポットを走査させる機構として、ガルバノミラーを用いた機構、所謂ガルバノスキャナーを備える形態について説明したが、ポンプ光のスポットを走査させる機構は、ガルバノスキャナーに限定されるものではない。ポンプ光のスポットを走査させる機構(走査機構)は、少なくとも1枚のミラーと、そのミラーを駆動する駆動機構とを含む機構であればよい。例えば、ポンプ光のスポットを走査させる機構として、ジャイロスキャナーが使用されてもよい。
また、実施形態3では、4つのメタマテリアル35を縦横方向に周期的に配列する形態について説明したが、メタマテリアル35の数やメタマテリアル35の配列は特に限定されるものではない。図14は、実施形態3に係る測定用デバイス10の第1変形例を示す平面図である。図14に示す測定用デバイス10は、3つのメタマテリアル35を有し、3つのメタマテリアル35は、縦方向に周期的に配列される。
また、実施形態3では、各メタマテリアル35に含まれる分割リング共振器36の外形が同形(正方形)である形態について説明したが、各メタマテリアル35間で、分割リング共振器36の外形(形状又は寸法)は異なってもよい。図15は、実施形態3に係る測定用デバイス10の第2変形例を示す平面図である。図15に示す測定用デバイス10は、3種類のメタマテリアル35を備える。詳しくは、図15に示す測定用デバイス10は、第1メタマテリアル35a、第2メタマテリアル35b、及び第3メタマテリアル35cを備える。第1メタマテリアル35aに含まれる分割リング共振器36の外形は、円形である。第2メタマテリアル35bに含まれる分割リング共振器36の外形は、正方形である。第3メタマテリアル35cに含まれる分割リング共振器36の外形は、長方形である。
テラヘルツ波Tの共振周波数は、メタマテリアル35の構造や液体試料に依存して決まり、メタマテリアル35の構造と液体試料との組み合わせによっては、テラヘルツ波Tに顕著な共振が現れない可能性がある。これに対し、図15に示す測定用デバイス10を用いることにより、測定用デバイス10を交換することなく、同一の液体試料を、互いに異なる構造を有する第1メタマテリアル35a〜第3メタマテリアル35cの各々を介して測定することが可能となる。したがって、測定用デバイス10を交換することなく取得した3種類の測定結果のうちから、より顕著な共振が現れた結果を選択することができる。したがって、測定の効率化を図ることができる。
また、実施形態3では、測定用デバイス10が、測定対象注入部として測定対象注入穴32aを有する形態について説明したが、測定対象注入部は測定対象注入流路32であってもよい。図16は、実施形態3に係る測定用デバイス10の第3変形例を示す平面図である。図16に示す測定用デバイス10は、測定対象注入部として測定対象注入流路32を有する。更に、図16に示す測定用デバイス10は、第1共通ポート33aと第2共通ポート34aとを備える。第1共通ポート33aと第2共通ポート34aとはGaAs基板31に形成されている。第1共通ポート33aには、各測定対象注入流路32の一方の端が接続し、第2共通ポート34aには、各測定対象注入流路32の他方の端が接続する。斯かる構成によれば、例えば、第1共通ポート33a又は第2共通ポート34aに液体試料を滴下することができる。第1共通ポート33a又は第2共通ポート34aに液体試料を滴下した場合、3つの測定対象注入流路32に液体試料を注入することができる。よって、測定の効率化を図ることができる。
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明した。本発明の実施形態によれば、微量な量の液体試料の測定が可能となる。本発明の実施形態に係る測定装置1及び測定用デバイス10の検出感度は、測定対象注入部(測定対象注入流路32及び測定対象注入穴32a)の体積に依存する。詳しくは、測定対象注入部の体積をより小さくすることにより、検出感度の向上を図ることができる。なお、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。
例えば、本発明による実施形態では、GaAs基板31の背面(テラヘルツ波Tが出射する面とは反対側の面)にポンプ光を照射する形態について説明したが、本発明はこの形態に限定されない。ポンプ光を照射する位置は、測定対象注入部(測定対象注入流路32又は測定対象注入穴32a)と分割リング共振器36とを透過するテラヘルツ波Tを局所的に発生させることが可能な限り、特に限定されない。
また、本発明による実施形態では、共振周波数のシフト量に基づいて液体試料の複素誘電率等の電気的特性を測定する形態について説明したが、本発明はこの形態に限定されない。例えば、測定対象注入部に液体試料が注入されていない状態で取得される周波数スペクトルと、測定対象注入部に液体試料が注入された状態で取得される周波数スペクトルとを比較して、つまり周波数スペクトルの変化に基づいて、複素誘電率等の電気的特性を測定することも可能である。
また、本発明による実施形態では、分割リング共振器36の外形が矩形状(正方形又は長方形)である場合、局所的に発生したテラヘルツ波T(テラヘルツ電磁波パルス)の電場E及び磁場Hの向き(方向)に、テラヘルツ波Tが照射される分割リング共振器36の各辺が揃うように、メタマテリアル35を配置しているが、メタマテリアル35の向きは、この向きに限定されない。メタマテリアル35の向きは、テラヘルツ波Tに顕著な共振が現れる向きに調整され得る。換言すると、メタマテリアル35の向きは、テラヘルツ波Tが照射される分割リング共振器36の各辺がテラヘルツ波Tの電場E及び磁場Hの向きに揃う向きから傾いていてもよい。なお、この場合、テラヘルツ波Tが照射される分割リング共振器36のギャップ部37に測定対象注入部が対向するように、メタマテリアル35の向きに合わせて測定対象注入部を配置する。
また、本発明による実施形態では、ポンプ光を高速変調する素子に音響光学素子6を用いる形態について説明したが、ポンプ光を高速変調する素子は、光の周波数を変調可能な素子であればよく、音響光学素子6に限定されない。例えば、ポンプ光を高速変調する素子として、光学チョッパーを使用し得る。
また、本発明による実施形態では、ポンプ光を測定用デバイス10の予め定められた位置へ集光するレンズに集光レンズ9が使用されたが、ポンプ光を測定用デバイス10へ向けて集光するレンズは集光レンズ9に限定されない。例えば、集光レンズ9に替えてf−θレンズが使用されてもよい。測定装置1が、ポンプ光のスポットを走査させる場合、f−θレンズを使用することにより、ポンプ光の集光強度の均一性を保つことができる。
また、本発明による実施形態では、測定用デバイス10が測定対象注入流路32と測定対象注入穴32aとのうちの一方を有したが、測定用デバイス10は測定対象注入流路32と測定対象注入穴32aとの両者を有してもよい。
また、本発明による実施形態で説明した各事項は、適宜、組み合わせることができる。例えば、図16を参照して説明した測定用デバイス10において、実施形態2で説明したように、第1共通ポート33aと第2共通ポート34aとの間に電圧を印加して、液体試料に含まれる成分を電気泳動させてもよい。
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明は、以下で説明する実施例に限定されるものではない。
[実施例1〜3]
図17(a)は実施例1に係るメタマテリアル35の構成を示す平面図であり、図17(b)は実施例2に係るメタマテリアル35の構成を示す平面図であり、図17(c)は実施例3に係るメタマテリアル35の構成を示す平面図である。
実施例1では、GaAs<110>基板上に直接金スパッタにより図17(a)に示す構造を有するメタマテリアル35を形成したデバイスを用いて、テラヘルツ波Tの透過率の周波数スペクトルを測定した。即ち、実施例1では、分割リング共振器36を1つだけ作製した。作製した分割リング共振器36は、縦幅及び横幅がいずれも84μmの正方形の外形を有し、一つの辺に、ギャップ幅10μmのギャップ部37を含む。
実施例2では、分割リング共振器36の周期が異なる4種類のデバイスを用いて、テラヘルツ波Tの透過率の周波数スペクトルを測定した。各デバイスは、図17(b)に示す構造を有するメタマテリアル35をGaAs<110>基板上に形成することにより作製した。即ち、9個の分割リング共振器36を、縦横方向に周期的に配列させた。分割リング共振器36の周期には、100μm、120μm、180μm、240μmを採用した。メタマテリアル35(9個の分割リング共振器36)は、金スパッタにより作製した。作製した各分割リング共振器36は、縦幅及び横幅がいずれも84μmの正方形の外形を有し、一つの辺に、ギャップ幅10μmのギャップ部37を含む。
実施例3では、分割リング共振器36の周期が異なる4種類のデバイスを用いて、テラヘルツ波Tの透過率の周波数スペクトルを測定した。各デバイスは、図17(c)に示す構造を有するメタマテリアル35をGaAs<110>基板上に形成することにより作製した。即ち、25個の分割リング共振器36を、縦横方向に周期的に配列させた。分割リング共振器36の周期には、100μm、120μm、180μm、240μmを採用した。メタマテリアル35(25個の分割リング共振器36)は、金スパッタにより作製した。作製した各分割リング共振器36は、縦幅及び横幅がいずれも84μmの正方形の外形を有し、一つの辺に、ギャップ幅10μmのギャップ部37を含む。
本実施例では、図12を参照して説明した構成を有する測定装置1を用いて、テラヘルツ波Tの透過率の周波数スペクトルを測定した。パルスレーザー発生源2には、フェムト秒ファイバーレーザー(TOPTICA社製、λ=1.56μm、繰返周波数80MHz、パルス幅110fs、平均出力350mW)を用いた。検出器14には、LT−GaAs光伝導スイッチを用いた。第2高調波発生素子21には、PPLN結晶を用いた。GaAs基板上でのパルスレーザー(ポンプ光)の集光スポットサイズは約20μm程度であった。よって、GaAs基板から局所的に発生した回折前のテラヘルツ波Tは、約20μm程度のスポットサイズに高密度に集光されている。実施例2及び3では、中心の分割リング共振器36のギャップ部37にテラヘルツ波Tが照射されるように、ポンプ光をGaAs基板に集光した。図18〜図21に測定結果を示す。
具体的には、図18は、分割リング共振器36の個数が1個のデバイス(実施例1)を用いて取得した周波数スペクトルと、分割リング共振器36の個数が9個であって、分割リング共振器36の周期が100μmのデバイス(実施例2)を用いて取得した周波数スペクトルと、分割リング共振器36の個数が25個であって、分割リング共振器36の周期が100μmのデバイス(実施例3)を用いて取得した周波数スペクトルとを示す。
図19は、分割リング共振器36の個数が1個のデバイス(実施例1)を用いて取得した周波数スペクトルと、分割リング共振器36の個数が9個であって、分割リング共振器36の周期が120μmのデバイス(実施例2)を用いて取得した周波数スペクトルと、分割リング共振器36の個数が25個であって、分割リング共振器36の周期が120μmのデバイス(実施例3)を用いて取得した周波数スペクトルとを示す。
図20は、分割リング共振器36の個数が1個のデバイス(実施例1)を用いて取得した周波数スペクトルと、分割リング共振器36の個数が9個であって、分割リング共振器36の周期が180μmのデバイス(実施例2)を用いて取得した周波数スペクトルと、分割リング共振器36の個数が25個であって、分割リング共振器36の周期が180μmのデバイス(実施例3)を用いて取得した周波数スペクトルとを示す。
図21は、分割リング共振器36の個数が1個のデバイス(実施例1)を用いて取得した周波数スペクトルと、分割リング共振器36の個数が9個であって、分割リング共振器36の周期が240μmのデバイス(実施例2)を用いて取得した周波数スペクトルと、分割リング共振器36の個数が25個であって、分割リング共振器36の周期が240μmのデバイス(実施例3)を用いて取得した周波数スペクトルとを示す。
また、図18〜図21は、比較例1として、FDTD法(Finite−difference time−domain method;FDTD method)により、分割リング共振器36の個数が無限個である場合に発生する周波数スペクトルをシミュレーションした結果を併せて示す。
図18〜図21において、縦軸は透過率を示し、横軸は周波数[THz(×1012Hz)]を示す。また、図18〜図21に示す各グラフにおいて、透過率の谷(ディップ)が発生している周波数が、共振周波数を示す。図18〜図21に示すように、分割リング共振器36の周期が減少する程、ディップが顕著になった。即ち、顕著な共振が現れた。また、分割リング共振器36の個数が増加する程、ディップが顕著になった。
[実施例4]
図22(a)は実施例4の測定結果を示すグラフであり、図22(b)は図22(a)のグラフの一部を拡大して示す図である。実施例4では、図2を参照して説明した構成を有する測定用デバイス10を用いて、テラヘルツ波Tの透過率の周波数スペクトルを測定した。メタマテリアル35は、GaAs<110>基板上に直接金スパッタにより作製した。分割リング共振器36の周期には、100μmを採用した。作製した各分割リング共振器36は、縦幅及び横幅がいずれも84μmの正方形の外形を有し、一つの辺に、ギャップ幅10μmのギャップ部37を含む。また、測定対象注入流路32は、光リソグラフィー法によってGaAs基板31の表面に形成した。測定対象注入流路32の幅は20μmであり、測定対象注入流路32の深さは20μmであった。測定装置には、実施例1〜3と同じ測定装置を用いた。また、中心の分割リング共振器36のギャップ部37a及びギャップ部37cの一方にテラヘルツ波Tが照射されるように、ポンプ光をGaAs基板31に集光した。更に、実施例4では、液体試料の乾燥を防止するために、測定対象注入流路32の上方(メタマテリアル35上)に厚さ500μmの石英カバーを配置して、測定対象注入流路32を石英カバーで覆った。また、条件を合わせるために、測定対象注入流路32に液体試料を注入していない状態で測定を行う際にも、測定対象注入流路32を石英カバーで覆った。
図22(a)及び図22(b)において、縦軸は透過率を示し、横軸は周波数[THz]を示す。また、図22(a)及び図22(b)において、実線のグラフは、測定対象注入流路32に液体試料を注入していない状態で測定した測定結果を示し、破線のグラフは、測定対象注入流路32に液体試料として蒸留水(純水)を注入した状態で測定した測定結果を示す。また、1点鎖線のグラフは、蒸留水とエタノールとを1:1の割合(濃度比)で混合した液体試料(50%エタノール水溶液)を測定対象注入流路32に注入した状態で測定した測定結果を示す。測定の結果、測定対象注入流路32に液体試料を注入していない状態では、共振周波数は約0.20[THz]となった。また、測定対象注入流路32に蒸留水を注入した状態では、共振周波数は約0.11[THz]となり、蒸留水とエタノールとの混合試料を測定対象注入流路32に注入した状態では、共振周波数は約0.15[THz]となった。以上のように、本実施例によれば、蒸留水とエタノールとの混合試料と、蒸留水との間で、共振周波数が変化(シフト)することを確認できた。つまり、液体試料の内容によって共振周波数がシフトすることを確認できた。
[実施例5]
図23は、実施例5に係るデバイスの構成を示す平面図である。実施例5に係るデバイスは、図6(a)及び図6(b)を参照して説明した測定用デバイス10と同様に、GaAs基板31の上方にメタマテリアル配置用デバイス39が配置された構成を有する。メタマテリアル配置用デバイス39は、高抵抗シリコン基板上に1個の分割リング共振器36(メタマテリアル)を形成することにより作製した。分割リング共振器36は、金スパッタにより作製した。作製した分割リング共振器36は、縦幅及び横幅がいずれも84μmの正方形の外形を有している。また、作製した分割リング共振器36は、対向する2つの辺に、ギャップ幅10μmのギャップ部37を含む。
実施例5では、メタマテリアル(分割リング共振器36)の向きを、テラヘルツ波Tの電場E及び磁場Hの向きに分割リング共振器36の各辺が揃う向きから傾けて(傾斜角度θ)、テラヘルツ波Tの透過率の周波数スペクトルを測定した。具体的には、メタマテリアル配置用デバイス39をその中心軸回りに回転させて、GaAs基板31に対するメタマテリアル(分割リング共振器36)の角度(向き)を変化させた。測定装置には、実施例1〜4と同じ測定装置を用いた。また、2つのギャップ部37のうちの一方にテラヘルツ波Tが照射されるように、ポンプ光をGaAs基板31に集光した。測定結果を図24に示す。なお、傾斜角度θは、時計回りの方向をプラスの角度としている。
図24において、縦軸は透過率を示し、横軸は周波数[THz]を示す。実施例5では、傾斜角度θを−2°、18°、36°、47°、55°、64°、80°、91°の各角度に変更して周波数スペクトルを測定した。図24に示すように、傾斜角度θを変化させると、周波数スペクトルが変化することを確認できた。詳しくは、共振周波数における透過率の落ち込みが、傾斜角度が増加に応じて鋭くなった。
[実施例6]
図25は、実施例6に係る測定用デバイス10を示す平面図である。実施例6では、図25に示す測定用デバイス10を用いて、ミネラル水及び蒸留水(純水)を測定した。具体的には、測定対象注入流路32にミネラル水を注入して、テラヘルツ波Tの透過率の周波数スペクトルを測定した。また、測定対象注入流路32に蒸留水を注入して、テラヘルツ波Tの透過率の周波数スペクトルを測定した。実施例6では、更に、測定対象注入流路32に液体試料を注入していない状態で、テラヘルツ波Tの透過率の周波数スペクトルを測定した。
図25に示すように、実施例6に係る測定用デバイス10は、GaAs基板31と、メタマテリアル35とを備える。実施例6において、GaAs基板31は、GaAs<110>基板である。メタマテリアル35は、121個の分割リング共振器36(11×11個の分割リング共振器36)からなる。メタマテリアル35は、測定対象注入流路32を形成したGaAs<110>基板上に、直接金スパッタにより作製した。
121個の分割リング共振器36は、縦横方向に周期的に配列させた。分割リング共振器36の周期は、120μmを採用した。各分割リング共振器36は、縦幅及び横幅がいずれも84μmの正方形の外形を有する。また、各分割リング共振器36は、図8に示す分割リング共振器36と同様に、対向する2つの辺にギャップ部37を含む。各ギャップ部37のギャップ幅は、10μmである。各分割リング共振器36の2つのギャップ部37は、測定対象注入流路32に沿った方向において互い対向する。測定対象注入流路32は、メタマテリアル35の中央に配列されている11個の分割リング共振器36に含まれるギャップ部37の下方を通過する。測定対象注入流路32は、幅が26.5μm、深さが10μmのマイクロ流路である。測定対象注入流路32の長さは、2.2mmである。
図26〜図33、図34(a)、及び図34(b)に測定結果を示す。図26〜図33において、縦軸は透過率を示し、横軸は周波数[THz]を示す。また、図34(a)及び図34(b)において、縦軸は共振周波数[THz]を示し、横軸はミネラル量を示す。詳しくは、図34(a)及び図34(b)の横軸は、モル数[フェムトモル]を示す。モル数は、測定対象注入流路32の体積(流路の体積)、及びミネラル水に含まれるミネラル成分の分子量に基づいて取得した。具体的には、ミネラル成分の分子量として、炭酸カルシウム(CaCO3;100g/mol)の分子量を用いた。測定装置には、実施例1〜5と同じ測定装置を用いた。測定時には、中心の分割リング共振器36にテラヘルツ波Tが照射されるように、ポンプ光をGaAs基板31に集光した。詳しくは、照射対象の分割リング共振器36の中心部分にテラヘルツ波Tが照射されるように、ポンプ光をGaAs基板31に集光した。また、実施例6では、液体試料の乾燥を防止するために、測定対象注入流路32の上方(メタマテリアル35上)に厚さ500μmの石英カバーを配置して、測定対象注入流路32を石英カバーで覆った。測定対象注入流路32に液体試料を注入する際には、第1ポート33又は第2ポート34に、100nL(ナノリットル)以下の液体試料を滴下した。
図26は、測定対象注入流路32に液体試料を注入していない状態で測定した測定結果を示す。図27〜図31は、1リットル当たりのミネラル成分の含有量が異なるミネラル水A〜Eを測定対象注入流路32に注入した状態で測定した測定結果を示す。
具体的には、図27は、ミネラル水Aを測定対象注入流路32に注入した状態で測定した測定結果を示す。ミネラル水Aは、1リットル当たり1000mgのミネラル成分を含有する。ミネラル水Aは、市販のミネラル水である。図28は、ミネラル水Bを測定対象注入流路32に注入した状態で測定した測定結果を示す。ミネラル水Bは、1リットル当たり600mgのミネラル成分を含有する。図29は、ミネラル水Cを測定対象注入流路32に注入した状態で測定した測定結果を示す。ミネラル水Cは、1リットル当たり200mgのミネラル成分を含有する。図30は、ミネラル水Dを測定対象注入流路32に注入した状態で測定した測定結果を示す。ミネラル水Dは、1リットル当たり40mgのミネラル成分を含有する。図31は、ミネラル水Eを測定対象注入流路32に注入した状態で測定した測定結果を示す。ミネラル水Eは、1リットル当たり10mgのミネラル成分を含有する。ミネラル水B〜Eは、ミネラル水A(市販のミネラル水)を蒸留水で希釈することによって調製した。
図32は、測定対象注入流路32に蒸留水を注入した状態で測定した測定結果を示す。図33は、図26〜図32の各グラフを重ねて示している。図34(a)及び図34(b)は、異なる日に測定(取得)した共振周波数とミネラル量との関係を示す。共振周波数とミネラル量との関係は、ミネラル水A〜Eを測定対象注入流路32に注入して、テラヘルツ波Tの透過率の周波数スペクトルを測定することにより取得した。
図26及び図33に示すように、測定対象注入流路32に液体試料を注入していない状態では、共振周波数は0.5THz以上0.6THz以下の値となった。一方、図27〜図31、図33、図34(a)及び図34(b)に示すように、測定対象注入流路32にミネラル水を注入した場合、共振周波数は0.48THz以上0.5THz未満の値となった。また、図32及び図33に示すように、測定対象注入流路32に蒸留水を注入した場合、共振周波数は0.48THz未満の値となった。したがって、測定対象注入流路32に液体試料(ミネラル水又は蒸留水)を注入することで、共振周波数が変化(シフト)することを確認できた。また、図27〜図33、図34(a)及び図34(b)に示すように、ミネラル成分の含有量によっても、共振周波数が変化(シフト)することを確認できた。したがって、共振周波数のシフト量からミネラル成分の含有量を評価できることを確認できた。更に、本実施例で使用した測定装置及び測定用デバイスは、1リットル当たり10mgのミネラル成分を含むミネラル水を100nL以下の微量な量で測定できる検出感度を有することを確認できた。
なお、図26〜図33に示すように、測定対象注入流路32に液体試料(ミネラル水又は蒸留水)を注入した場合、測定対象注入流路32に液体試料を注入していない場合と比べて、Q値が低下(変化)した。また、ミネラル成分の含有量によっても、Q値が変化した。したがって、Q値からミネラル成分の含有量を評価できることを確認できた。また、図34(a)及び図34(b)に示すように、異なる日に測定した場合でも同様の測定結果を得られたことから、本実施例で使用した測定装置及び測定用デバイスに再現性があることを確認できた。
[実施例7]
図35は、実施例7に係るメタマテリアル35の構成を示す平面図である。実施例7では、GaAs<110>基板上に直接金スパッタにより図35に示す構造を有するメタマテリアル35を形成したデバイスを用いて、テラヘルツ波Tの透過率の周波数スペクトルを測定した。即ち、実施例7では、121個の分割リング共振器36(11×11個の分割リング共振器36)を、縦横方向に周期的に配列させた。分割リング共振器36の周期は、120μmを採用した。各分割リング共振器36は、縦幅及び横幅がいずれも84μmの正方形の外形を有し、一つの辺に、ギャップ幅10μmのギャップ部37を含む。
図36(a)に実施例7の測定結果を示す。図36(a)において、縦軸は透過率を示し、横軸は周波数[THz]を示す。測定装置には、実施例1〜6と同じ測定装置を用いた。測定時には、中心の分割リング共振器36にテラヘルツ波Tが照射されるように、ポンプ光をGaAs基板に集光した。詳しくは、照射対象の分割リング共振器36の中心部分にテラヘルツ波Tが照射されるように、ポンプ光をGaAs基板に集光した。
図36(b)は比較例2を示すグラフである。図36(b)において、縦軸は透過率を示し、横軸は周波数[THz]を示す。比較例2では、図35に示すメタマテリアル35を備えたデバイスに対し、遠方場からテラヘルツ波Tを照射した。即ち、図36(a)に示す測定結果が、1つの分割リング共振器36にテラヘルツ波Tを照射することにより得た測定結果であるのに対し、図36(b)に示す測定結果は、複数の分割リング共振器36にテラヘルツ波Tを照射することにより得た測定結果である。
図36(a)及び図36(b)に示すように、メタマテリアル35に含まれる分割リング共振器36のうちの1つにテラヘルツ波Tを照射することにより、テラヘルツ波Tの周波数スペクトルに顕著な共振が現れることを確認できた。換言すると、1つの分割リング共振器36にテラヘルツ波Tを照射することにより、良好な応答特性を得られることを確認できた。
[実施例8]
図37は実施例8の測定結果を示すグラフである。図37において、縦軸は透過率を示し、横軸は周波数[THz]を示す。具体的には、実線のグラフが、実施例8の測定結果を示す。実施例8では、図25を参照して説明した構成を有する測定用デバイス10を用いて、テラヘルツ波Tの透過率の周波数スペクトルを測定した。測定装置には、実施例1〜7と同じ測定装置を用いた。測定時には、中心の分割リング共振器36にテラヘルツ波Tが照射されるように、ポンプ光をGaAs基板31に集光した。詳しくは、照射対象の分割リング共振器36の中心部分にテラヘルツ波Tが照射されるように、ポンプ光をGaAs基板31に集光した。
図37において、破線のグラフは、比較例3を示す。比較例3では、測定対象注入流路32を形成したGaAs<110>基板をデバイスとして用いて、テラヘルツ波Tの透過率の周波数スペクトルを測定した。つまり、比較例3では、メタマテリアル35が設けられていないGaAs<110>基板を用いた。なお、比較例3の測定条件は、デバイスが異なる以外は実施例8と同じ条件である。比較例3では、GaAs<110>基板から局所的にテラヘルツ波Tを発生させて、回折前のテラヘルツ波が測定対象注入流路32の長手方向の中央に照射されるようにした。
図37に示すように、メタマテリアル35を設けることにより、テラヘルツ波Tの周波数スペクトルに顕著な共振が現れることを確認できた。換言すると、メタマテリアル35を設けることにより、良好な応答特性を得られることを確認できた。
[実施例9]
図38は、実施例9に係る測定用デバイス10を示す平面図である。図38に示すように、実施例9に係る測定用デバイス10は、GaAs基板31とメタマテリアル35とを備える。実施例9において、GaAs基板31はGaAs<110>基板であり、GaAs基板31に、図9を参照して説明した測定用デバイス10と同様に、Y字状の測定対象注入流路32と、2つの第1ポート33と、1つの第2ポート34とが形成されている。測定対象注入流路32は、幅26.5μm、深さ10μmのマイクロ流路である。メタマテリアル35は、実施例6のメタマテリアル35と同じ構成であり、測定対象注入流路32の第3流路323が、メタマテリアル35の中央に配列されている11個の分割リング共振器36に含まれるギャップ部37の下方を通過している。
図39は、実施例9の測定結果を示すグラフである。図39において、縦軸は透過率を示し、横軸は周波数[THz]を示す。実施例9では、4種類の液体試料の測定を行った。具体的には、測定対象注入流路32(第3流路323)に各液体試料を注入した状態で、テラヘルツ波Tの透過率の周波数スペクトルをそれぞれ測定した。図39は、周波数スペクトルのうち、透過率の谷(ディップ)が発生している箇所を拡大して示している。測定装置には、実施例1〜8と同じ測定装置を用いた。測定時には、中心の分割リング共振器36にテラヘルツ波Tが照射されるように、ポンプ光をGaAs基板31に集光した。詳しくは、照射対象の分割リング共振器36の中心部分にテラヘルツ波Tが照射されるように、ポンプ光をGaAs基板31に集光した。また、実施例9では、液体試料の乾燥を防止するために、測定対象注入流路32の上方(メタマテリアル35上)に厚さ500μmの石英カバーを配置して、測定対象注入流路32を石英カバーで覆った。
図39において、実線のグラフは、測定対象注入流路32の第3流路323に蒸留水(純水)を注入した状態で測定した測定結果を示す。具体的には、2つの第1ポート33のうちの一方に100nL以下の量の蒸留水を滴下して、第3流路323に蒸留水を注入した。
図39において、破線のグラフは、水とエタノールとを1:1の割合(濃度比)で混合した液体試料(50%エタノール水溶液)を測定対象注入流路32の第3流路323に注入した状態で測定した測定結果を示す。具体的には、測定前に50%エタノール水溶液を調製した。そして、100nL以下の量の50%エタノール水溶液を2つの第1ポート33のうちの一方に滴下して、第3流路323に50%エタノール水溶液を注入した。
図39において、一点鎖線のグラフは、水とエタノールとを3:1の割合(濃度比)で混合した液体試料(25%エタノール水溶液)を測定対象注入流路32の第3流路323に注入した状態で測定した測定結果を示す。具体的には、測定前に25%エタノール水溶液を調製した。そして、100nL以下の量の25%エタノール水溶液を2つの第1ポート33のうちの一方に滴下して、第3流路323に25%エタノール水溶液を注入した。
図39において、二点鎖線のグラフは、50%エタノール水溶液と蒸留水とを混合した混合試料を測定対象注入流路32の第3流路323に注入した状態で測定した測定結果を示す。具体的には、100nL以下の量の50%エタノール水溶液を2つの第1ポート33のうちの一方に滴下し、100nL以下の量の蒸留水を2つの第1ポート33のうちの他方に滴下して、第3流路323内で混合試料を調製した。理論的には、第3流路323内で調製された混合試料は、25%エタノール水溶液である。
図39に示すように、Y字状の測定対象注入流路32を用いた場合でも、液体試料の内容に応じて共振周波数が変化(シフト)することを確認できた。また、二点鎖線のグラフは一点鎖線のグラフに近似した。よって、Y字状の測定対象注入流路32を用いて混合試料を調製した場合、有意な測定結果を得られることを確認できた。