以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。また、図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きくまたは強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現している。以下の各図において、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。このXYZ座標系においては、水平面に平行な平面をXY平面とする。このXY平面に平行な任意の方向をX方向と表記し、X方向に直交する方向をY方向と表記する。また、XY平面に垂直な方向(上下方向)はZ方向と表記する。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の方向が+方向であり、矢印の方向とは反対の方向が−方向であるものとして説明する。
[第1実施形態]
第1実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、触媒層形成装置1を−Y方向から見た図である。なお、以下の各実施形態において「触媒層形成装置」を「装置」と称す。図2は、装置1を+Z方向から見た平面図である。装置1は、電解質膜(被塗布物)2に触媒層3を形成して燃料電池用積層膜4を製造する装置である(図1参照)。なお、以下の各実施形態において「燃料電池用積層膜」を「積層膜」と称す。装置1は、触媒層3を形成するための触媒インク5を電解質膜2に塗布して乾燥させることにより、電解質膜2に触媒層3を形成し、積層膜4を製造する(図1参照)。
装置1は、図1及び図2に示すように、保持部6と、塗布部7と、チャンバ部8と、吸引部9と、を備える。また、装置1は、上記各部を統括的に制御する不図示の制御部を備えてもよい。保持部6、塗布部7及びチャンバ部8は、メインフレーム10により支持される。メインフレーム10は、Z方向の複数の支持フレーム11と、支持フレーム11間に配置された複数の水平フレーム12、13、及びテーブル14と、で構成される。ただし、メインフレーム10は、図示のものに限定されず、保持部6等を支持可能な任意の形状を適用できる。また、メインフレーム10に吸引部9を支持するか否かは任意である。また、メインフレーム10の下面にキャスタ等が設けられ、装置1を移動可能としてもよい。
保持部6は、シート状の電解質膜2を保持する。保持部6は、吸着部15と、基部16と、吸着用吸引部17と、を備える。吸着部15は、例えば、外形が矩形平板状であり、基部16の上側(+Z側)に支持される。吸着部15としては、例えば、セラミック製、樹脂製、カーボン製等の多孔質部材が用いられる。吸着部15の外形や大きさは、シート状の電解質膜2を広げた状態で保持可能であれば、図示のものに限定されず、種々の形状や大きさのものを適用することができる。基部16は、後述するチャンバ部8のベース部56の上に配置される。吸着用吸引部17は、例えば、所定の吸引力を発生させる吸引ポンプ等が用いられる。吸着用吸引部17は、基部16を介して吸着部15の上面側に吸引力を作用させる。
図3(A)は保持部6の一例を示す図であり、図2に示すA−A線に沿った断面図である。図3(A)は、説明のため、特徴部分を大きくして記載している。また、図3(A)には、後述する塗布部7による触媒インク5の塗布も併せて記載している。図3(A)に示すように、吸着部15は、上面側を吸着面として用い、吸着面と下面(−Z側の面)とを貫通する複数の孔部18を備える。吸着部15の吸着面は、例えば、ほぼ水平に配置されるが、これに限定されず、いずれかの方向に傾いた状態で配置されてもよい。孔部18は、例えばその孔径が0.1μm〜数mm程度に形成されるが、この孔径を特に限定するものではない。孔部18の開口形状は、円形状、楕円形状、長円形状、多角形状のいずれであってもよい。
また、孔部18は、単位面積あたりの個数が吸着部15の全面にわたって一定に形成されるが、これに限定されない。例えば、吸着対象となる電解質膜2の縁部分に対応する箇所において孔部18の単位面積あたりの個数を増加させ、電解質膜2の中央部分に対応する箇所において孔部18の個数を減少させてもよく、逆に、電解質膜2の中央部分に対応する箇所において孔部18の個数を増加させ、電解質膜2の縁部分に対応する箇所において孔部18の個数を減少させてもよい。また、吸着部15の吸着面に複数の溝部が形成され、この溝部に孔部18が接続されるものでもよい。
基部16は、図3(A)に示すように、吸着部15を上面側で支持するとともに、吸着部15の下面側に空間部20を形成する。基部16は、空間部20と吸着用吸引部17とを接続する接続孔22が設けられる。吸着用吸引部17から接続孔22までは、例えば不図示の管状部材等により接続される。従って、吸着用吸引部17を駆動することにより空間部20内が吸引されて減圧し、空間部20と連通する孔部18を介して吸着部15の吸着面に吸着力を作用させる。吸着部15の吸着力は、吸着用吸引部17の駆動により設定される。吸着用吸引部17による吸着力の大きさや駆動タイミングは、不図示の制御部により制御されてもよく、また作業者によりマニュアル操作されてもよい。孔部18は、吸着部15のほぼ全体に形成されているので、シート状の電解質膜2を容易かつ確実に吸着することができる。
吸着部15の上面には、シート部材24が配置される。従って、電解質膜2は、シート部材24を挟んで吸着部15に吸着される。シート部材24は、その表裏間で通気可能な部材が用いられ、例えば、樹脂製多孔質シート、和紙等の紙部材、不織布、メンブレンフィルタ等が用いられる。なお、シート部材24の孔径は、吸着部15の孔部18の孔径より小さいものが用いられる。なお、シート部材24の孔径は平均孔径を意味する。シート部材24が配置されることにより、電解質膜2の吸着する際の吸引力により電解質膜2に与えるダメージを抑制することができる。また、シート部材24が弾性を有する場合、電解質膜2を強く吸引したときでも弾性により電解質膜2を受け止めることができ、吸着部15により吸引したダメージをさらに抑制することができる。なお、吸着部15の上面にシート部材24を配置するか否かは任意であり、シート部材24を配置しなくてもよい。
保持部6は、吸着部15に吸着した電解質膜2を加熱するための加熱部26を備える。加熱部26は、例えば、電気ヒータ等の熱源が用いられる。この加熱部26を駆動することにより、基部16及び吸着部15を介して電解質膜2を所定温度で加熱することができる。これにより、後述する塗布部7により電解質膜2に塗布された触媒インク5の乾燥時間を短縮することができる。加熱部26による加熱温度や加熱タイミングは、不図示の制御部により制御されてもよく、また作業者によりマニュアル操作されてもよい。加熱部26による加熱タイミングの一例として、後述する塗布部7により電解質膜2に触媒インク5を塗布したタイミングや、後述するチャンバ部8により触媒インク5を減圧乾燥する際又は減圧乾燥の後のタイミングなどがある。
なお、加熱部26は、図示のように基部16等を介して電解質膜2を加熱するものに限定されず、遠赤外線等を用いた輻射熱により電解質膜2を加熱するものでもよい。輻射熱を用いた加熱部26の場合、吸着部15の上方に加熱部26が配置され、電解質膜2の全面にわたって赤外領域の波長の光を照射するものが用いられる。なお、加熱部26を備えるか否かは任意であり、加熱部26がなくてもよい。また、保持部6は、加熱部26に代えて、または加熱部26に加えて冷却装置を備えてもよい。
このように、保持部6は、吸着部15からの吸引によって電解質膜2を広げた状態で保持することができる。これにより、電解質膜2が薄膜であっても、後述する塗布部7によって触媒インク5を塗布する際や、チャンバ部8によって触媒インク5を減圧乾燥する際においても電解質膜2を広げた状態で保持することができ、触媒インク5の塗布ムラが生じることや、電解質膜2及び触媒インク5に皺やひび割れ等の変形が生じるのを防止することができる。
なお、保持部6は、吸着部15からの吸引により電解質膜2を保持するものに限定されず、電解質膜2を保持可能であれば任意の構成が適用可能である。例えば、保持部6は、静電チャックを利用して電解質膜2を保持するものでもよい。また、保持部6は、剥離可能な接着剤または接着テープが配置され、この接着作用により電解質膜2を保持するものでもよい。また、保持部6は、吸引や静電チャック、接着剤等の2つ以上を組み合わせて電解質膜2を保持するものでもよい。
図1及び図2に戻り、塗布部7は、保持部6に保持された電解質膜2の少なくとも一方の面に、触媒層3を形成するための触媒インク5を塗布する。塗布部7は、図1に示すように、キャリッジ28と、タンク29と、ポンプ30と、ノズル31と、を有するスリットコーターである。キャリッジ28は、水平方向に配置される矩形板状の下部プレート33と、下部プレート33の±Y側から起立する2枚の鉛直プレート34と、2枚の鉛直プレート34の上端間に配置される上部プレート35と、上部プレートから35から下方に延びるノズル支持プレート36と、を有する。
下部プレート33は、メインフレーム10のテーブル14の下方に配置される。2枚の鉛直プレート34のそれぞれは、テーブル14にX方向に形成された2つの開口部38(図2参照)を貫通した状態で、上部がテーブル14の上方に位置するように配置される。上部プレート35は、タンク29及びポンプ30を支持する。ノズル支持プレート36は、ノズル31を支持する。タンク29は、ポンプ30の上方に設けられており、触媒インク5を格納する。タンク29は、ノズル31に触媒インク5を供給する際、一時的に保管するものとして用いられる。なお、タンク29への触媒インク5の供給は、メインフレーム10の外側等に配置されたインク保管容器等から、不図示のチューブ等を介してタンク29に触媒インク5が供給される。また、タンク29は、格納した触媒インク5の温度を調節する温度調節機構を備えてもよい。
タンク29とノズル31との間は、不図示のチューブ等によって接続されている。ポンプ30は、タンク29に格納された触媒インク5を、チューブ等を介してノズル31に供給する。ポンプ30は、ロータリーポンプなど、触媒インク5を送ることが可能な任意のポンプが使用可能である。ノズル31に供給する触媒インク5の量は、例えば、不図示の制御部によって制御される。なお、タンク29及びポンプ30の配置は一例であり、図示の形態に限定するものではない。また、タンク29及びポンプ30をキャリッジ28に配置することに限定されない。例えば、キャリッジ28以外にタンク29及びポンプ30が配置され、このタンク29からチューブ等を介してノズル31に触媒インク5が供給されてもよい。
ノズル31は、触媒インク5を吐出する。ノズル31は、ノズル支持プレート36に設けられた不図示のガイドによって上下方向(Z方向)に移動可能に取り付けられており、不図示の駆動装置によりZ方向に移動可能である。これにより、触媒インク5を塗布する際に、ノズル31と電解質膜2との間隔を調整することができる。なお、塗布部7は、電解質膜2とノズル31との間隔を測定可能なセンサを備えてもよい。このセンサとしては光学式等の非接触式センサや、プローブ等を用いた接触式センサのいずれでもよい。ノズル31のZ方向の移動は、例えば、不図示の制御部によって制御される。ノズル31は、タンク29から送られた触媒インク5を収容する不図示の収容部と、この収容部の触媒インク5を吐出する吐出口32と、を備える。
吐出口32は、ノズル31の下端(−Z側の端部)に電解質膜2と対向するように形成される。吐出口32は、Y方向に延びるスリット状に形成される。吐出口32の幅(X方向の長さ)は、触媒インク5の粘性や吐出量に応じて設定される。吐出口32のY方向の長さは、電解質膜2に塗布する触媒インク5の幅に応じて設定される。なお、ノズル31は、触媒インク5の温度を調節する温度調節機構を備えてもよい。また、ノズル31は、ノズル支持プレート36に取り外し可能に形成され、交換可能としてもよい。また、ノズル31のうち、吐出口32の部分が取り外し可能に形成され、交換可能とするものでもよい。
塗布部7は、塗布部駆動部40によりX方向に移動可能に形成される。塗布部駆動部40は、X方向に離間して配置される駆動ローラ42及び従動ローラ44と、駆動ローラ42及び従動ローラ44に架け渡されるベルト45と、を備える。駆動ローラ42は、水平フレーム13上において+X側に配置され、不図示の駆動装置により駆動する。従動ローラ44は、水平フレーム13上において−X側に配置される。ベルト45は、ステンレス製、樹脂製、布製のものが用いられ、+Z側の面にキャリッジ28の下部プレート33が固定されている。
駆動ローラ42を駆動してベルト45を移動させることにより、キャリッジ28はX方向に移動する。また、駆動ローラ42の駆動を停止することにより、キャリッジ28をX方向の任意の位置に配置することができる。なお、塗布部駆動部40は、上記したベルト45等を用いた構成に限定されず、例えば、ボールねじ機構やラックアンドピニオン機構が用いられてもよい。また、塗布部7は、キャリッジ28ごとX方向に移動するものに限定されない。例えば、ノズル31がロボットアームやマニュピレータ等に保持され、このロボットアーム等を駆動することによりノズル31をX方向やZ方向等に移動可能としてもよい。
塗布部7の移動や停止位置は、不図示の制御部により制御されてもよく、また作業者によりマニュアル操作されてもよい。塗布部7は、X方向に移動することにより、図1に示すように、電解質膜2に触媒インク5を塗布可能な対向位置P1と、後述するチャンバ部8の外側に退避した退避位置P2と、の間を移動可能である。退避位置P2は、チャンバ部8と干渉しないようにチャンバ部8のサイズに応じて設定される。なお、退避位置P2は、図示の位置に限定されず、チャンバ部8の外側の任意の位置に設定することができる。
図3(B)は、塗布部7が触媒インク5を塗布する一例を示している。図3(B)に示すように、塗布部7は、対向位置P1において、保持部6に保持された電解質膜2に対して相対的にX方向に移動し、その際、ノズル31の吐出口32から電解質膜2上に触媒インク5を吐出する。このとき、電解質膜2は、上記のように保持部6の吸着部15によって広がった状態で保持されているので、触媒インク5をムラなく電解質膜2上に塗布することができる(図3(A)も参照)。吐出口32から電解質膜2上に触媒インク5を吐出する際、ノズル31の高さ(Z方向位置)は、塗布に適した位置に調整されている。
なお、触媒インク5を塗布する際、ノズル31(塗布部7)をX方向に移動させることに限定されない。例えば、ノズル31を固定し、保持部6をX方向に移動させて触媒インク5を塗布してもよく、ノズル31及び保持部6をそれぞれX方向の反対向きに移動させて触媒インク5を塗布してもよい。また、触媒インク5を塗布する際の湿度は、任意であるが、通常20%以上に設定される。これにより、触媒インク5をムラなく電解質膜2上に塗布することができ、また、ノズル31の吐出口32の乾燥を抑制することができる。
図1及び図2に戻り、塗布部7は、ノズル31をメンテナンスするための、ノズル浸漬部52及び予備吐出部53を備えている。ノズル浸漬部52及び予備吐出部53は、保持部6の−X側に、X方向に並んで配置され、チャンバ部8と干渉しないように設置される。また、ノズル浸漬部52及び予備吐出部53は、退避位置P2の塗布部7のノズル31がそれぞれ接続可能に配置される。
ノズル浸漬部52は、+Z方向が開口する容器を備え、ノズル31の先端部分が+Z方向から挿入可能に形成される。容器内には、例えば、触媒インク5や、触媒インク5を形成する溶液等が溜められている。電解質膜2に触媒インク5を塗布しない間、ノズル31の先端部分をノズル浸漬部52の溶液等に浸すことにより、ノズル31の吐出口32の乾燥防止や、ノズル31の洗浄を行うことができる。
予備吐出部53は、ノズル31により触媒インク5の予備吐出を行うために設けられる。予備吐出部53は、例えば+Z方向が開口する容器で、ノズル31の先端部分が+Z方向から挿入可能に形成される。容器内に、触媒インク5を予備吐出させるための被吐出面が形成されてもよい。ノズル31による触媒インク5の最初の吐出は、吐出量にばらつきが生じる場合がある。電解質膜2への塗布に先だって、予備吐出部53によりノズル31の予備吐出を行うことにより、触媒インク5の吐出量を安定させることができる。
なお、ノズル31をメンテナンスするため、ノズル浸漬部52及び予備吐出部53以外の処理部が設けられてもよい。また、ノズル浸漬部52及び予備吐出部53は、保持部6の−X側に配置されることに限定されず、保持部6の+X側や、塗布部7の+Y側または−Y側に配置されてもよい。また、ノズル洗浄時にノズル31がノズル浸漬部52等に移動することに代えて、ノズル洗浄時にノズル浸漬部52等がノズル31まで移動するものでもよい。この場合、ノズル浸漬部52及び予備吐出部53は移動可能に形成され、例えば通常時はノズル31に対してY方向またはZ方向に退避し、ノズル31のメンテナンスの際に、ノズル31まで移動させるような任意の構成が採用される。また、ノズル浸漬部52及び予備吐出部53を備えるか否かは任意であり、ノズル浸漬部52等を備えないものでもよい。
なお、塗布部7は、上記した構成に限定されず、触媒インク5を吐出可能な任意の構成を適用することができる。例えば、ノズル31に代えて、インクジェット法やスプレー法により触媒インク5を電解質膜2に塗布するものでもよい。また、ディスペンサ等により触媒インク5を電解質膜2に吐出し、この触媒インク5をスキージ等により電解質膜2上に拡げるものでもよい。
チャンバ部8は、図1及び図2に示すように、保持部6を含んで密閉した空間55を形成する。この空間55は、吸引部9の吸引により減圧可能な空間である。チャンバ部8は、メインフレーム10のテーブル14上に配置される。チャンバ部8は、ベース部56と、蓋部57と、を備える。ベース部56は、下面側がテーブル14に固定され、かつ上面側に保持部6の基部16を固定している。ベース部56は、矩形板状の部材が用いられる。なお、図示しないが、ベース部56は、基部16に備える接続孔22(図3(A)参照)と連通する接続孔が設けられており、吸着用吸引部17の吸引力が吸着部15に至るまでの経路を確保している。蓋部57は、ベース部56の上面の外縁に当接して、空間55を形成可能な凹状に形成される。
図4(A)は、チャンバ部8の一例を示す斜視図、(B)は、蓋部57の一例を示す斜視図である。図4(A)に示すように、ベース部56の上面の略中央の領域に保持部6が固定される。蓋部57は、ベース部56上面の+X側において2か所のヒンジ部58によりベース部56に接続されている。蓋部57は、保持部6を覆うような小さな空間55を形成するので、後述する吸引部9により空間55の減圧に要する時間を短縮することができる。
蓋部57は、図4(A)に示すように、ヒンジ部58によりY軸回りに回転可能に形成され、保持部6を含んだ空間55を形成する空間形成位置と、保持部6を開放した保持部開放位置との間を回転移動する。なお、保持部開放位置は、上記した塗布部7が蓋部57に干渉しない位置に設定される。蓋部57は、上記した塗布部7により保持部6の電解質膜2に触媒インク5を塗布する際は保持部開放位置に配置(図4(A)の二点鎖線で示す蓋部57を参照)され、後述する吸引部9により空間55を吸引して減圧する際は空間形成位置に配置(図4(A)の実線で示す蓋部57を参照)される。なお、ヒンジ部58は、ベース部56の+X側に配置されることに代えて、ベース部56の+Y側または−Y側に配置されてもよい。
ベース部56は、貫通孔59が設けられている。貫通孔59は、ベース部56の+Z側から−Z側に貫通するように設けられている。貫通孔59は、蓋部57が空間形成位置にある場合、空間55と接続するように形成される。貫通孔59は、例えば、チューブ等の管状部材(不図示)により吸引部9と接続されている。従って、吸引部9を駆動することにより、空間55内を吸引して減圧することができる。なお、貫通孔59は、空間55に接続するものであれば、その個数や配置は任意である。例えば、2以上の貫通孔59が形成され、それぞれ吸引部9に接続されるものでもよい。また、ベース部56の貫通孔59を介して吸引部9が接続されることに限定されず、例えば、蓋部57の一部に開口部が設けられ、この開口部と吸引部9とがチューブ等を介して接続され、蓋部57側から空間55内を吸引するものでもよい。
蓋部57は、図4(B)に示すように、中央部分に内部を目視可能な窓部57aが形成されてもよい。窓部57aとしては、透明または半透明な板状ガラス、アクリル板などの板状の樹脂が用いられる。窓部57aにより、作業者等が触媒インク5の乾燥状態を目視で確認することが可能となる。ただし、窓部57aを形成するか否かは任意である。また、蓋部57は、空間形成位置において、ベース部56との密着性を向上させるために、ゴム等の弾性部材が縁部に取り付けられてもよい。
チャンバ部8は、蓋部57を回転駆動するための蓋部駆動部60を備えている。蓋部駆動部60の駆動は、不図示の制御部により制御されてもよく、また作業者によりマニュアル操作されてもよい。また、蓋部駆動部60を備えるか否かは任意である。蓋部駆動部60がない場合は、作業者が蓋部57の開閉操作を行ってもよい。また、蓋部57は、ヒンジ部58により開閉可能に形成されることに限定されない。例えば、蓋部57は、上下方向(Z方向)に移動可能に形成されてもよい。また、蓋部57は、ロボットアームやマニュピレータに保持され、このロボットアームを駆動することにより開閉可能としてもよい。
吸引部9は、塗布部7により電解質膜2に触媒インク5が塗布された後、チャンバ部8が空間55を形成した後に、空間55を吸引して減圧し、触媒インク5を減圧した状態で乾燥させる。吸引部9は、例えば、所定の吸引力を発生する真空ポンプ等、任意のポンプが適用可能である。吸引部9による吸引力の大きさや駆動タイミングの制御は、不図示の制御部により制御されてもよく、また作業者によりマニュアル操作されてもよい。このとき、制御部は、吸引部9による吸引力が、保持部6の吸着用吸引部17の吸引力より小さくなるように制御してもよい。吸着用吸引部17の吸引力が吸引部9の吸引力より大きくすることにより、空間55を吸引したときでも電解質膜2が吸着部15から外れることを抑制できる。また、吸引部9は、吸引力を段階的に大きくして、空間55を減圧してもよい。これにより、電解質膜2に塗布された触媒インク5が吸引力により変形することを抑制できる。例えば、吸引部9は、空間55の圧力を大気圧から所定の圧力に減圧する第1吸引を行った後、第1吸引より吸引力を大きくして、空間55の圧力を1000Pa以下、好ましくは100Pa以下に減圧する第2吸引を行う場合、上記した触媒インク5の吸引力による破損を抑制し、且つ触媒インク5の乾燥が十分に行われて、多孔質形状の触媒層3を精度よく形成することができる。この場合、第1吸引における所定の圧力は、20000〜60000Paであるのが好ましい。第1吸引における所定の圧力まで減圧する時間は、5〜20秒であるのが好ましい。第1吸引における減圧速度は、4000〜6000Pa/secの速度であるのが好ましい。また、第2吸引は、使用する溶媒によって適宜調節すればよいが、空間55の圧力を1000Pa以下、好ましくは100Pa以下に減圧する。第2吸引は、第1吸引より長い時間行うことが好ましい。吸引部9による吸引後、空間55の圧力は、大気圧まで戻される。空間55の圧力を大気圧まで戻す機構は、任意である。例えば、空間55の圧力を大気圧まで戻す機構は、空間内に空気やガスを流入させる機構等を用いることができる。また、空間55の圧力を大気圧にする条件は、任意である。
このように、本実施形態によれば、電解質膜2を保持部6で保持した状態から電解質膜2の移動や搬送をすることなしに、チャンバ部8によって触媒インク5の減圧乾燥を行うことができる。これにより、電解質膜2が触媒インク5や大気中に含まれる水分を吸収して皺やゆがみ等の変形が生じるのを抑制し、変形等が少ない積層膜4を形成することができる。また、触媒インク5の塗布後から短時間で減圧乾燥を行うので、多孔質形状の触媒層3を形成することができる。これにより、触媒層3の比表面積を大きくすることができ、触媒層3の活性を高くすることができる。
ここで、積層膜4を構成する電解質膜2及び触媒層3、並びに触媒層3を形成する触媒インク5について説明する。なお、以下に説明する内容は、他の実施形態についても同様である。電解質膜2は、例えば、プロトンを膜厚方向に選択的に透過させる機能を有する。電解質膜2は、特に限定されず、公知のものを用いることができる。電解質膜2としては、例えば、構成材料であるイオン交換樹脂の種類によって大別され、フッ素系高分子電解質膜、炭化水素系高分子電解質膜等を用いることができる。
フッ素系高分子電解質膜を構成するイオン交換樹脂としては、例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーなどが挙げられる。なお、耐熱性、化学的安定性などの発電性能を向上させるという観点からは、これらのフッ素系高分子電解質膜が用いられ、特にパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーから構成されるフッ素系高分子電解質膜が用いられる。
また、炭化水素系電解質膜を構成するイオン交換樹脂としては、例えば、スルホン化ポリエーテルスルホン(S−PES)、スルホン化ポリアリールエーテルケトン、スルホン化ポリベンズイミダゾールアルキル、ホスホン化ポリベンズイミダゾールアルキル、スルホン化ポリスチレン、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(S−PEEK)、スルホン化ポリフェニレン(S−PPP)などが挙げられる。これらのイオン交換樹脂により形成される炭化水素系高分子電解質膜は、原料が安価で製造工程が簡便であり、かつ材料の選択性が高いといった製造上の利点がある。なお、上述したイオン交換樹脂は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。また、上述した材料のみに制限されず、その他の材料が用いられてもよい。
電解質膜2の厚さは、燃料電池の特性を考慮して適宜決定すればよく、特に制限されない。電解質膜2の厚さは、通常は5〜100μm程度である。電解質膜2の厚さがこのような範囲内の値であると、製膜時の強度や使用時の耐久性および使用時の出力特性のバランスが適切となる。なお、電解質膜2は、剥離可能な基材シートに積層されたものを用いてもよい。これにより、電解質膜2のハンドリングが容易になる。このような基材シートとしては、例えば、触媒インク5における導電性担体等の種類に応じて適宜選択され、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シート、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート、ポリエステルシート等の樹脂製のシートを用いることができる。
触媒層3は、燃料電池においてアノード側に用いられるアノード触媒層及び燃料電池においてカソード側に用いられるカソード触媒層のうち、少なくとも1つを有する。アノード触媒層は、例えば水素の酸化反応に触媒作用を有するものである。カソード触媒層は、例えば酸素の還元反応に触媒作用を有するものである。なお、触媒層3は、アノード触媒層及びカソード触媒層の両方を備える場合、アノード側触媒層及びカソード側触媒層は、それぞれ、電解質膜2の異なる面に形成される。
アノード側触媒層及びカソード側触媒層は、例えば、触媒インク5により形成することができる。アノード側触媒層を形成する触媒インク5及びカソード側触媒層を形成する触媒インク5は、それぞれ、上記した触媒作用を有するものであれば特に制限なく、公知のものを用いることができる。このような触媒インク5としては、例えば、特開2013−069614に開示される、触媒成分を2層のアイオノマ層で被覆した触媒を含むものを用いることができる。また、触媒インク5としては、例えば、導電性担体に触媒成分が担持された電極触媒、高分子電解質および溶剤を含むものを用いることができる。なお、溶剤は、高分子電解質を完全に溶解させるものでなくてもよく、高分子電解質を分散可能であればよい。
アノード触媒層に用いられる触媒成分は、水素の酸化反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒を使用できる。また、カソード触媒層に用いられる触媒成分もまた、酸素の還元反応に触媒作用を有するものであれば特に制限はなく公知の触媒を使用できる。具体的には、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属およびこれらの合金などから選択可能である。
これらのうち、触媒活性、一酸化炭素等に対する耐被毒性、耐熱性などを向上させるために、例えば、白金を含むものが用いられる。上記した合金の組成は、合金化する金属の種類にもよるが、例えば、白金の含有量を30〜90原子%とし、白金と合金化する金属の含有量を10〜70原子%としてもよい。なお、合金とは、一般に金属元素に1種以上の金属元素または非金属元素を加えたものであって、金属的性質をもっているものの総称である。合金の組織には、成分元素が別個の結晶となるいわば混合物である共晶合金、成分元素が完全に溶け合い固溶体となっているもの、成分元素が金属間化合物または金属と非金属との化合物を形成しているものなどがあり、本実施形態においては、いずれであってもよい。この際、アノード触媒層に用いられる触媒成分およびカソード触媒層に用いられる触媒成分は、上記の中から適宜選択可能である。
触媒成分の形状や大きさは、特に制限されず公知の触媒成分と同様の形状および大きさが採用可能である。触媒成分の形状は、例えば、粒状、鱗片状、層状などのものが使用できる。この際、触媒粒子の平均粒子径は、例えば、1〜30nm、1〜10nm、1〜5nm、2〜4nmなどである。触媒粒子の平均粒子径がこのような範囲内の値であると、電気化学反応が進行する有効電極面積に関連する触媒利用率と担持の簡便さとのバランスが適切となる。なお、触媒粒子の平均粒子径は、X線回折における触媒成分の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径や、透過型電子顕微鏡(TEM)より調べられる触媒成分の粒子径の平均値として測定可能である。
導電性担体は、上述した触媒成分を担持するための担体、および触媒成分と他の部材との間での電子の授受に関与する電子伝導パスとして機能する。導電性担体としては、触媒粒子を所望の分散状態で担持させるための比表面積を有し、集電体として十分な電子導電性を有しているものであればよく、例えば、主成分がカーボン(炭素原子)のものが用いられる。例えば、カーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、人造黒鉛などからなるカーボン粒子が挙げられる。なお、カーボンを主成分とするものは、炭素原子のみからなるもの、または実質的に炭素原子からなるもの、の双方を含む。また、燃料電池の特性を向上させるために、炭素原子以外の元素が含まれていてもよい。なお、実質的に炭素原子からなる場合、2〜3重量%程度以下の不純物の混入が許容される。
導電性担体のBET比表面積は、触媒成分を高分散担持させるのに十分な比表面積であればよく、例えば、20〜1600m2/g、80〜1200m2/gである。比表面積が上記したような範囲であれば、導電性担体への触媒成分および高分子電解質が十分分散して十分な発電性能が得られ、また、触媒成分および高分子電解質を十分有効に利用することができる。また、導電性担体の大きさは、特に限定されないが、担持の容易さ、触媒利用率、電極触媒層の厚みを適切な範囲とするなどの観点から、平均粒子径が、例えば、5〜200nm、10〜100nm程度に設定される。
導電性担体に触媒成分が担持された電極触媒において、触媒成分の担持量は、電極触媒の全量に対して、例えば、10〜80重量%、30〜70重量%に設定される。触媒成分の担持量がこのような範囲内の値であると、触媒担体上での触媒成分の分散度と触媒性能とのバランスを適切となる。なお、触媒成分の担持量は、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)によって調べることができる。
高分子電解質としては、例えば、上記したフッ素系高分子電解質膜や炭化水素系高分子電解質膜等を用いることができる。中でも、耐熱性、化学的安定性などに優れることから、フッ素原子を含むものが用いられる。例えば、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)などのフッ素系電解質が用いられる。触媒層3中の高分子電解質量の含有量は特に限定されるものではないが、電極触媒中のカーボンの量に対する高分子電解質量の比が例えば0.3〜1.2に設定される。
溶剤としては、特に制限されず、触媒層3を形成するのに使用される通常の溶剤が同様に使用可能である。例えば、水;メタノール、エタノール、1-プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、ペンタノール、シクロヘキサノール等のアルコールを使用することができる。中でも、アルコールが、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2−プロパノール等の炭素数1〜3の低級アルコールである場合、扱いやすさやコストの点で好ましい。これらの溶剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合したものを使用してもよい。中でも、溶剤が、水を70重量%以上含有するアルコールを含む水溶液である場合、電解質膜2がアルコールを吸収する際に生じる水の吸収を抑制でき、その結果、積層膜4の変形を抑制することができる。また、溶剤の使用量は、特に制限されず公知と同様の量が使用できる。触媒インク5において、電極触媒は、所望の作用、即ち、水素の酸化反応(アノード側)および酸素の還元反応(カソード側)を触媒する作用を十分発揮できる量であればいずれの量で使用されてもよい。電極触媒が、触媒インク5中に、例えば、5〜30重量%、9〜20重量%となるように設定される。
次に、積層膜4の製造方法(触媒層3の形成方法)について、装置1の動作とともに図面を参照して説明する。ただし、以下の説明は一例であって、製造方法を限定するものではない。図5は、積層膜4の製造方法を示すフローチャートである。図6及び図7は、装置1の動作を示す図である。なお、図5のフローチャートに沿って説明しつつ、図6及び図7を適宜参照する。
先ず、シート状の電解質膜2を準備する。シート状の電解質膜2の作成は任意の方法が適用可能である。次に、図5に示すように、シート状の電解質膜2を保持部6により保持する(ステップS1)。電解質膜2の保持は、図6(A)に示すように、チャンバ部8の蓋部57を開いて保持部開放位置に配置させ、電解質膜2を広げた状態で吸着部15の上のシート部材24の上に載置し、吸着用吸引部17を駆動して電解質膜2を吸引することにより行う。これにより、電解質膜2は広がった状態で保持部6に保持される。このとき、塗布部7は、退避位置P2に位置している。
なお、電解質膜2を保持部6に載置する作業は、作業者が手作業で搬送してもよく、また各種搬送装置によって行ってもよい。また、吸着用吸引部17の駆動タイミングは、電解質膜2をシート部材24に載置した後、または載置する前のいずれであってもよい。電解質膜2をシート部材24に載置する前に吸着用吸引部17を駆動する場合、載置中は吸引力を弱く設定し、載置が完了した後に強く吸引するなど、多段階で吸引力を変化させてもよい。載置中に弱く吸引することにより、電解質膜2の載置を容易にすることが可能となる。このような吸着用吸引部17の吸引力の変化は、不図示の制御部により制御してもよく、また作業者によりマニュアル操作してもよい。
次に、図5に示すように、塗布部7によって電解質膜2に触媒インク5を塗布する(ステップS2)。なお、塗布に先だって、ノズル31をノズル浸漬部52及び予備吐出部53によってメンテナンスを行ってもよい。塗布部7は、塗布部駆動部40(図1参照)を駆動することにより+X方向移動に移動し、退避位置P2から対向位置P1の−X側に配置される。対向位置P1の−X側の位置は、例えば、電解質膜2の外縁に対向する位置、または電解質膜2の外縁の外側に対向する位置である。続いて、不図示の駆動部を駆動してノズル31のZ位置が調整される。ノズル31のZ位置は、吐出口32と電解質膜2との間隔が所定の間隔となるように設定される。なお、塗布部7が退避位置P2から対向位置P1に移動する間に、ノズル31のZ位置が調整されてもよい。
続いて、図6(B)に示すように、塗布部駆動部40を駆動して、塗布部7を+X方向に移動させる。このとき、ノズル31の吐出口32から触媒インク5を吐出し、ノズル31が電解質膜2の+X側に達した段階(塗布部7が対向位置P1の+X側に達した段階)でノズル31から触媒インク5の吐出を停止する。これにより、電解質膜2上の所定領域に触媒インク5が塗布される。電解質膜2は、保持部6によって広がった状態で保持されているため、触媒インク5の塗布時に電解質膜2がずれるのを防止しており、触媒インク5を電解質膜2上に適切に塗布することができる。
ノズル31から触媒インク5を吐出するタイミングは、例えば、塗布部7が一定速度でX方向に移動している段階で触媒インク5の吐出を行ってもよい。すなわち、塗布部7が+X方向に移動を開始した際、加速中は触媒インク5を吐出せず、ほぼ一定速度となってから触媒インク5の吐出を開始してもよい。例えば単位時間あたりの触媒インク5の吐出量を一定に制御した場合、電解質膜2に対するノズル31の相対速度が変化すると電解質膜2の単位面積当たりの塗布量が変化してムラが生じてしまう。従って、塗布部7がほぼ一定速度になってから触媒インク5の吐出を開始することにより、電解質膜2上において触媒インク5のムラ、例えば塗布ムラ、乾燥ムラ等が生じるのを抑制でき、膜厚均一性の良好な膜を形成することができる。
次に、図5に示すように、塗布部7は、塗布部駆動部40を駆動することにより−X方向移動に移動し、チャンバ部8の外側に退避する(ステップS3)。塗布部7は、図7(A)に示すように、対向位置P1から退避位置P2に移動することにより、保持部6から離れ、チャンバ部8の外側に退避する。なお、このステップS3においても、吸着用吸引部17により電解質膜2の吸引は継続している。また、塗布部7を退避している間に、ノズル31から触媒インク5が漏れ落ちないように、ノズル31の吐出口32付近の触媒インク5をノズル31内に吸引させてもよい。
次に、図5に示すように、触媒インク5が塗布された電解質膜2を含んだ空間55をチャンバ部8により形成する(ステップS4)。蓋部57は、図7(B)に示すように、蓋部駆動部60を駆動して、保持部開放位置から空間形成位置に回転することによりベース部56と密着し、密閉した空間55を形成する。この空間55には、保持部6に保持された状態で触媒インク5が塗布された電解質膜2が含まれる。なお、蓋部駆動部60により蓋部57を保持部開放位置から回転させるタイミングは、塗布部7が退避位置P2に移動した後でもよいし、塗布部7が対向位置P1から退避位置P2に移動中でもよい。
次に、図5に示すように、吸引部9を駆動することにより空間55内を吸引して減圧する(ステップS5)。空間55の減圧は、図7(B)に示すように、空間55が形成された後、吸引部9を駆動することにより行われる。空間55の減圧により、触媒インク5が乾燥し、電解質膜2上において触媒層3が形成される。触媒インク5を減圧乾燥するので、多孔質形状の触媒層3を形成でき、触媒層3の比表面積を大きくすることができる。また、チャンバ部8の空間55は、保持部6を覆った小さな空間であるため、空間55を減圧する時間を短縮できる。なお、吸引部9による減圧の際、吸着用吸引部17による電解質膜2の吸引力が、空間55内に対する吸引力より大きく設定されてもよい。これにより、空間55を減圧したときでも電解質膜2を確実に保持部6保持することができる。なお、電解質膜2の吸引力を空間55内に対する吸引力より大きくするか否かは任意である。また、吸引部9は、吸引力を段階的に大きくして、空間55を減圧してもよい。これにより、電解質膜2に塗布された触媒インク5が吸引力により変形することを抑制できる。例えば、吸引部9は、空間55の圧力を大気圧から所定の圧力に減圧する第1吸引を行った後、第1吸引より吸引力を大きくして、空間55の圧力を1000Pa以下、好ましくは100Pa以下に減圧する第2吸引を行う場合、上記した触媒インク5の吸引力による破損を抑制し、且つ触媒インク5の乾燥が十分に行われて、多孔質形状の触媒層3を精度よく形成することができる。なお、吸引部9が、吸引力を段階的に大きくして、空間55を減圧するか否かは任意である。
また、ステップS5において、触媒インク5の減圧乾燥を行う際又は減圧乾燥を行った後に、加熱部26により電解質膜2を所定の温度で加熱してもよい。これにより、触媒インク5の乾燥時間を短縮することができる。また、加熱部26による電解質膜2の加熱は、上記したステップS2において触媒インク5の塗布中または塗布後が開始してもよい。また、加熱部26による電解質膜2の加熱温度は、例えば触媒インク5の乾燥の進行に合わせて変化させてもよい。なお、加熱部26により電解質膜2を加熱するか否かは任意である。
触媒インク5が減圧乾燥されて触媒層3が形成された後、吸引部9の駆動が停止され、空間55の圧力が大気圧まで戻される。空間55の圧力を大気圧にする条件は、任意である。空間55の圧力が大気圧まで戻された後、蓋部駆動部60により蓋部57が保持部開放位置まで回転して保持部6を開放する。なお、触媒層3が形成されたか否かは、蓋部57の窓部57aから作業者が目視にて確認してもよく、また予め設定された時間経過をもって判断してもよい。また、吸引部9の駆動を停止した後、空間55内に、電解質膜2や触媒層3に対して不活性なガス(例えば窒素ガスやアルゴンガスなど)を供給して空間55をパージしてもよい。また、空間55を減圧した状態から開放する際、例えば、電解質膜2の一部をフック等により吸着部15に弾性的に押し付けるようにしてもよい。これにより、電解質膜2(積層膜4)は、例えば空間55を大気開放したときでも吸着部15の吸引とフック等により確実に保持され、吸着部15から剥がれることを防止できる。続いて、吸着用吸引部17の駆動が停止されることにより、積層膜4を取り出すことが可能となる。なお、積層膜4の取り出しは、作業者による手作業の他に各種搬送装置が使用されてもよい。以上のステップにより、電解質膜2上に触媒層3を積層した積層膜4が完成する。
このように、本実施形態によれば、触媒インク5の塗布から減圧による乾燥までの時間が短いので、電解質膜2が触媒インク5中の水分を吸収する時間が短く、電解質膜2の変形を抑制できる。また、電解質膜2は、保持部6に保持されて触媒インク5の塗布や減圧乾燥が行われるので、電解質膜2の移動や搬送が不要であり、積層膜4の製造時間を短縮できる。また、触媒インク5の塗布から乾燥開始までの時間が短いので、触媒インク5として塗布から乾燥までに短い時間が要求される材料を使用することができる。また、電解質膜2は、保持部6に広がった状態で保持されるので、触媒インク5の塗布や減圧乾燥において電解質膜2の変形を抑制し、変形が少ない適切な積層膜4を製造できる。また、触媒インク5を減圧乾燥して触媒層3を形成するため、多孔質形状の触媒層3が形成される。これにより、触媒層3の比表面積が大きくなり、触媒層3の触媒活性が高い積層膜4を効率よく製造することができる。
なお、電解質膜2の両面に触媒層3を形成させる場合、先ず、電解質膜2の一方の面に触媒層3を形成した後、この電解質膜2を他方の面を上面として再度保持部6に吸着させ、上記と同様の手順により他方の面に触媒層3を形成することより電解質膜2の両面に触媒層3を持った積層膜4を形成することができる。なお、電解質膜2の両面に触媒インク5を塗布する場合、片面ごとに触媒インク5の成分を変え、異なる触媒層3を形成してもよい。
また、上記したステップS2〜ステップS5を繰り返すことにより、触媒層3を多層にしてもよい。この場合、同一の触媒インク5を用いて触媒層3を多層にしてもよく、異なる触媒インク5を用いて触媒層3を多層にしてもよい。同一の触媒インク5を用いる場合は、同一材料による触媒層3の厚さを容易に厚くすることができる。また、異なる触媒インク5を用いる場合は、複数材料が積層された状態の触媒層3を容易に形成することができる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態において、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を簡略化あるいは省略する。また、第1実施形態において説明した事項のうち、第2実施形態に適用可能なものは全て第2実施形態で適用してもよい。
図8は、第2実施形態に係る装置100における吸引部109を示す図である。本実施形態では、吸引部109が第1実施形態と異なっている。なお、保持部6、塗布部7、及びチャンバ部8は、第1実施形態と同様である。吸引部109は、第1実施形態と同様、例えば、所定の吸引力を発生する真空ポンプ等、任意のポンプが適用可能である。また、吸引部109による吸着力の大きさや駆動タイミングは、不図示の制御部により制御されてもよく、また作業者によりマニュアル操作されてもよい。吸引部109は、調整部110を介してチューブ等の管状部材により吸着部15及び空間55の双方に接続される。調整部110は、吸引部109による吸引を、吸着部15の吸引と、空間55の吸引とに振り分けて、それぞれ調整を行う。
調整部110は、例えば、ガス流量を制御可能な真空バルブが用いられる。調整部110は、例えば、吸着部15に対する吸引力が、空間55に対する吸引力より大きくなるように調整する。なお、調整部110は、吸引部109と別に形成されることに限定されず、吸引部109の一部として形成されてもよい。また、調整部110による調整は、不図示の制御部により制御してもよく、また作業者によりマニュアル操作してもよい。
以上のように、本実施形態によれば、1台の吸引部109によって吸着部15の吸引及び空間55の吸引の双方を行うため、第1実施形態のように吸着用吸引部17が不要となり、吸引部(例えば真空ポンプ)の数を減らすことができ、装置コストを低減することができる。また、調整部110を操作することにより、吸着部15の吸引力と、空間55の吸引力とを容易に調整することができる。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態において、上記した実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を簡略化あるいは省略する。また、上記した実施形態において説明した事項のうち、第3実施形態に適用可能なものは全て第3実施形態で適用してもよい。
図9は、第3実施形態に係る装置200の一例を示す図である。装置200は、図9に示すように、第1保持部206A及び第2保持部206Bと、塗布部207と、チャンバ部208と、を備える。複数の保持部206A、206B、塗布部207、及びチャンバ部208は、メインフレーム210により支持される。メインフレーム210は、図1に示すメインフレーム10に対して、X方向に長く形成される点を除いて、メインフレーム10と同様である。
第1保持部206A及び第2保持部206Bは、それぞれ図1に示す保持部6と同様の構成である。第1保持部206A及び第2保持部206Bは、チャンバ部208のベース部256上にX方向に並んで配置される。第1保持部206A及び第2保持部206Bは、それぞれ第1吸着用吸引部217A、第2吸着用吸引部217Bと接続される。第1吸着用吸引部217A及び第2吸着用吸引部217Bは、それぞれ図1に示す吸着用吸引部17と同様の構成である。第1吸着用吸引部217A及び第2吸着用吸引部217Bは、別に配置することに限定されず、例えば1台の吸着用吸引部217A(または吸着用吸引部217B)を用いて複数の吸着部15の吸引を行ってもよい。
塗布部207は、第1保持部206A及び第2保持部206Bのそれぞれに保持された電解質膜2に対して触媒インク5を塗布するようにX方向に移動可能である。これに伴い、対向位置P1の範囲も第1実施形態よりX方向に長くなっている。塗布部駆動部240は、塗布部207のX方向の移動を確保するため、第1実施形態のベルト45よりX方向に長いベルト245が使用される。なお、塗布部207の他の構成は、図1に示す塗布部7と同様である。ノズル31をメンテナンスするノズル浸漬部52及び予備吐出部53は、第1保持部206Aの−X側に配置される。
チャンバ部208は、第1保持部206A及び第2保持部206Bを支持するベース部256と、第1保持部206A及び第2保持部206Bを含む空間255を形成可能な蓋部257と、を備える。蓋部257は、不図示の駆動装置により、第1保持部206A等を開放した保持部開放位置と、空間255を形成した空間形成位置と、を移動可能に形成される。蓋部257は、第1実施形態の蓋部57と同様に、ヒンジ部58によって回転可能に形成されてもよい。空間255は、吸引部9に接続され、吸引部9による吸引により減圧可能である。なお、チャンバ部208は、第1保持部206A及び第2保持部206Bの双方を含んだ空間255を形成することに代えて、第1保持部206A及び第2保持部206Bに対して個別に空間を形成してもよい。
以上のように、本実施形態によれば、第1保持部206A及び第2保持部206Bに保持された複数の電解質膜2に対して、1つの塗布部207で触媒インク5を塗布することができる。さらに、触媒インク5を塗布した複数の電解質膜2に対して1つの空間255を減圧することでまとめて乾燥させるので、積層膜4(触媒層3)を効率よく製造(形成)することができる。なお、図9では2つの第1保持部206A及び第2保持部206Bを使用するが、3つ以上の保持部が配置されてもよい。
また、本実施形態において、第1保持部206A及び第2保持部206Bの双方で電解質膜2の一方の面に触媒インク5を塗布する使用形態の他に、第1保持部206Aにより電解質膜2の一方の面に触媒インク5を塗布し、次いで、第2保持部206Bにより電解質膜2の他方の面に触媒インク5を塗布する使用形態であってもよい。このとき、第1保持部206Aから第2保持部206Bへの電解質膜2の搬送は、作業者が手作業で行ってもよく、また各種搬送装置によって行ってもよい。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明する。本実施形態において、上記した実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を簡略化あるいは省略する。また、上記した実施形態において説明した事項のうち、第4実施形態に適用可能なものは全て第4実施形態で適用してもよい。
図10は、第4実施形態に係る装置300の一例を示す図である。装置300は、図10に示すように、第1保持部206A及び第2保持部206Bと、第1塗布部307A及び第2塗布部307Bと、チャンバ部208と、を備える。複数の保持部206A、206B、第1塗布部307A及び第2塗布部307B、及びチャンバ部208は、メインフレーム310により支持される。メインフレーム310は、図1や図2に示すメインフレーム10、210に対して、X方向に長く形成される点を除いて、メインフレーム10、210と同様である。第1保持部206A及び第2保持部206Bは、第2実施形態と同様である。
第1塗布部307Aは、第1保持部206Aに保持された電解質膜2を塗布するのに使用される。第1塗布部307Aは、第1実施形態の塗布部7と同様の構成である。第1塗布部307Aの退避位置P2Aは、第1保持部206Aの−X側に設定される。第1塗布部307Aのノズル31をメンテナンスするノズル浸漬部52A及び予備吐出部53Aは、第1保持部206Aの−X側に配置される。第1塗布部307Aは、退避位置P2Aから+X方向に移動して対向位置P1Aに配置可能である。第1塗布部307Aの移動は、第1塗布部駆動部340Aにより行う。第1塗布部駆動部340Aは、駆動ローラ42Aと、従動ローラ44Aと、ベルト45Aと、を備える。第1塗布部駆動部340Aは、第1実施形態の塗布部駆動部40の構成とほぼ同様である。
第2塗布部307Bは、第2保持部206Bに保持された電解質膜2を塗布するのに使用される。第2塗布部307Bは、第1実施形態の塗布部7と同様の構成である。第2塗布部307Bの退避位置P2Bは、第2保持部206Bの+X側に設定される。第2塗布部307Bのノズル31をメンテナンスするノズル浸漬部52B及び予備吐出部53Bは、第2保持部206Bの+X側に配置される。第2塗布部307Bは、退避位置P2Bから−X方向に移動して対向位置P1Bに配置可能である。第2塗布部307Bの移動は、第2塗布部駆動部340Bにより行う。第2塗布部駆動部340Bは、駆動ローラ42Bと、従動ローラ44Bと、ベルト45Bと、を備える。第2塗布部駆動部340Bは、第1実施形態の塗布部駆動部40の構成とほぼ同様である。
以上のように、本実施形態によれば、第1保持部206A及び第2保持部206Bに保持された複数の電解質膜2に対して、それぞれ第1塗布部307A及び第2塗布部307Bで触媒インク5を塗布するので、塗布時間を短縮できる。さらに、複数の電解質膜2に対して1つの空間255により減圧乾燥するので、積層膜4(触媒層3)を効率よく製造(形成)することができる。なお、図10では2つの第1保持部206A及び第2保持部206Bを使用するが、3つ以上の保持部が配置され、保持部ごとに塗布部が配置されてもよい。
また、本実施形態において、第2実施形態と同様、第1保持部206A及び第2保持部206Bの双方で電解質膜2の一方の面に触媒インク5を塗布する使用形態の他に、第1保持部206Aにより電解質膜2の一方の面に触媒インク5を塗布し、次いで、第2保持部206Bにより電解質膜2の他方の面に触媒インク5を塗布する使用形態であってもよい。このとき、第1保持部206Aから第2保持部206Bへの電解質膜2の搬送は、作業者が手作業で行ってもよく、また各種搬送装置によって行ってもよい。
また、本実施形態において、第1塗布部307A及び第2塗布部307Bは、同一の触媒インク5を塗布してもよく、また異なる触媒インク5を塗布してもよい。この場合、第1塗布部307Aにより電解質膜2の一方の面に所定の触媒インク5を塗布し、さらに、第2塗布部307Bにより電解質膜2の他方の面に異なる触媒インク5を塗布してもよい。これにより、電解質膜2の一方の面と他方の面とで異なる触媒層3を形成することができる。
[第5実施形態]
次に、第5実施形態について説明する。本実施形態において、上記した実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を簡略化あるいは省略する。また、上記した実施形態において説明した事項のうち、第5実施形態に適用可能なものは全て第5実施形態で適用してもよい。
図11は、第5実施形態に係る装置400の一例を示す図である。装置400は、積層膜4に枠部471を形成する。装置400は、図11に示すように、枠部形成部470と、積層膜保管部472と、を備える。なお、枠部形成部470より前段の工程は、上記した実施形態と同様であり、電解質膜2に触媒層3を形成した積層膜4を製造する。製造された積層膜4は、枠部形成部470に搬送される。積層膜4の搬送は、作業者による手作業の他に、各種搬送装置により行ってもよい。
枠部形成部470は、積層膜4に枠部471を形成する。枠部471は、例えば、積層膜4おける触媒層3を囲むように形成される。枠部471は、例えば、外縁が積層膜4の外縁とほぼ同一に形成され、内側の開口部分を有する。枠部471の開口部分の大きさは、例えば、触媒層3の大きさに対応して設定される。枠部471は、積層膜4の剛性を向上させるために用いられる。枠部471の材料は任意であり、例えば、電気絶縁性を有する樹脂材料等の他に、金属材料、ガラス等が用いられる。枠部471の厚さは、例えば数十μm〜数100μmに設定されるが、特に厚さを限定するものではない。
枠部471は、触媒層3と重ならないように形成されるが、一部の触媒層3と重ねて形成されてもよい。また、枠部471の開口部分により多くの触媒層3を露出させるため、触媒層3を有効に機能させることができる。なお、枠部471の形状は、図示のように触媒層3を囲むものに限定されず、積層膜4の一部に形成されてもよい。例えば、積層膜4の外縁の4辺のうち1辺〜3辺に沿って枠部471が形成されてもよい。また、枠部471は、燃料電池等に使用されるガスの流入出孔や、組み立てる際に用いられるねじ穴や位置決め用の穴などの貫通孔を備えてもよい。
枠部形成部470は、予め作成された枠部471を積層膜4に接着することにより枠部471を形成する。枠部形成部470は、不図示の接着剤塗布部により枠部471の接着対象面、または積層膜4のうち枠部接着面に接着剤を塗布し、続いて積層膜4に枠部471を押し付けることにより枠部471を積層膜4に固定させる。なお、接着剤としては、任意の接着剤が用いられる。また、接着剤を用いずに、枠部471の一部を溶融させて積層膜4に接着させてもよい。また、積層膜4と枠部471との位置合わせのため、積層膜4の一部(例えば触媒層3のない電解質膜2上の一部)にアライメント用のマークが形成され、このマークを光学式のセンサ等で認識して枠部471の位置合わせを行ってもよい。
積層膜保管部472は、枠部形成部470から搬送された積層膜4を保管する。積層膜保管部472は、積層膜4を重ねた状態で保管してもよく、また、積層膜4を1枚ごとまたは複数枚ごとに収容可能な棚(スロット)を備えてもよい。なお、積層膜保管部472を配置するか否かは任意であり、積層膜保管部472がなくてもよい。
また、本実施形態では、枠部471を積層膜4の一方の面に形成しているが、積層膜4の両面に枠部471が形成されてもよい。また、本実施形態では、枠部471を積層膜4に接着しているが、これに限定されない。例えば、積層膜4の上面(例えば電解質膜2の上面)において触媒層3を囲むように、熱硬化性または光硬化性などの樹脂材料を塗布し、この樹脂材料を適宜硬化させることにより枠部471が形成されてもよい。
以上のように、本実施形態によれば、枠部形成部470によって積層膜4に枠部471を容易に形成することができる。また、積層膜4は、枠部471により剛性が向上するので、例えば積層膜4が10数μm程度と極めて薄い場合でも、その後の搬送や組み立てなどのハンドリング性を向上させることができる。
[第6実施形態]
次に、第6実施形態について説明する。本実施形態において、上記した実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を簡略化あるいは省略する。また、上記した実施形態において説明した事項のうち、第6実施形態に適用可能なものは全て第6実施形態で適用してもよい。
図12は、第6実施形態に係る装置500の一例を示す図である。図12(A)は+Z方向から見た平面図、図12(B)は−Y方向から見た側面図である。装置500は、図12に示すように、長尺の電解質膜(被塗布物)2Aがロール状に巻かれたロール体R1として供給され、製造する積層膜4Aも長尺としてロール状に巻かれたロール体R2として形成する。電解質膜2Aは、長尺である以外は、図1に示す電解質膜2と同様である。装置500は、保持部6と、塗布部507と、チャンバ部508と、を備える。
ロール体R2は、不図示の駆動装置により回転駆動する駆動軸に支持されており、この駆動軸の回転により電解質膜2Aを+X方向に移送する。ロール体R1は、例えば従動軸に支持されており、電解質膜2Aが引き出されること伴って回転する。なお、ロール体R1は、ロール体R2の回転と同期して電解質膜2Aを送り出すように回転してもよい。ロール体R2を回転させるタイミング及び回転量(電解質膜2Aの移送タイミング及び移送量)は、不図示の制御部によって制御してもよく、作業者のマニュアル操作によって行ってもよい。なお、電解質膜2Aをロール体R2の回転により行うことに限定されない。例えば、保持部6の+X側で電解質膜2Aを挟んだ一対の駆動ローラにより、電解質膜2Aを移送してもよい。
保持部6は、ロール体R1から引き出された電解質膜2Aの一部を保持する。保持部6は、例えば、図1に示す保持部6と同様であり、電解質膜2Aの一部を吸着部15で吸引することにより保持する。保持部6と電解質膜2Aとの間に、図3に示すようなシート部材24が配置されてもよい。保持部6の−X側及び+X側のそれぞれには、ローラ562、563が設けられ、長尺の電解質膜2Aを案内する。ローラ562、563の高さは任意に設定可能であるが、例えば、電解質膜2Aをほぼ水平に移送する高さに設定される。また、ローラ562、563に加えて他のローラを配置してもよい。また、ローラ562、563を配置するか否かは任意である。
塗布部507は、保持部6に保持された電解質膜2に触媒インク5を塗布する。塗布部507は、図1に示す塗布部7と同様に、吐出口32を有するノズル31等を備える。塗布部507は、電解質膜2Aの移送方向と直交するY方向に移動可能に形成される。なお、塗布部507の移動は、例えば、第1実施形態の塗布部駆動部40がY方向に配置されて使用されてもよい。塗布部507は、保持部6に保持された電解質膜2Aに対して触媒インク5を塗布可能な対向位置P501と、保持部6の+Y側に設定された退避位置P502との間を移動可能である。なお、退避位置P502は、保持部6の−Y側に設定されてもよい。また、ノズル31をメンテナンスするノズル浸漬部52及び予備吐出部53(図1参照)は、保持部6の+X側に配置されてもよい。
チャンバ部508は、保持部6を含んだ空間555を形成する。チャンバ部508は、蓋部557を備える。蓋部557は、空間555を形成する空間形成位置と、電解質膜2Aに対して塗布部507により触媒インク5を塗布可能な保持部開放位置との間をZ方向に移動可能に形成される。蓋部557の移動は、不図示の駆動装置により行ってもよく、作業者が行ってもよい。蓋部557の移動を駆動装置で行う場合、移動のタイミング等は、不図示の制御部により制御してもよく、または作業者がマニュアル操作により行ってもよい。
蓋部557が空間形成位置にある場合、蓋部557の下端は、保持部6の基部16の上面と密着する。このとき、電解質膜2Aにおいて触媒インク5の塗布領域を挟んだ両側は、蓋部557と基部16とで挟まれた状態となる。なお、蓋部557の下端に弾性部材が取り付けられてもよい。これにより、電解質膜2Aを挟んだ場合でも、密閉した空間555を形成することができる。なお、空間555内が吸引部9により減圧される点は、第1実施形態と同様である。また、蓋部557は、Z方向に移動することに限定されず、例えば、第1実施形態のようにヒンジ部58を用いて、例えばX方向を軸として回転可能に形成されてもよい。
また、本実施形態において、保持部6により電解質膜2Aを保持するか否かは任意である。電解質膜2Aは、ロール体R1、R2の間にわたって配置されており、ロール体R1の回転を停止した状態でロール体R2を回転させることにより、電解質膜2Aに張力を付与することができる。この状態で電解質膜2Aに対して塗布部507により触媒インク5の塗布が可能である。このように、ロール体R1、R2の一方または双方を回転させる機構は、電解質膜2Aに対する張力付与部として作用する。また、空間555を形成する場合、電解質膜2Aは蓋部557によって挟まれているため、減圧乾燥時に電解質膜2Aの保持を行っている。
次に、装置500を用いた積層膜4の製造方法(触媒層3の形成方法)について説明する。図13は、積層膜4の製造方法の他の例を示すフローチャートである。図14(A)は、保持部6及び塗布部507の一例を示す斜視図、(B)は保持部6及び塗布部507の他の例を示す斜視図である。図15は、チャンバ部508の一例を示し、(A)は斜視図、(B)は−Y方向から見た側面図である。図16は、切断部580の一例を及び動作を示す図である。なお、図13のフローチャートに沿って説明しつつ、図14〜図16を適宜参照する。
先ず、長尺の電解質膜2Aが、ロール体R1、R2にわたって配置される。例えば、ロール体R1の電解質膜2Aの始端が引き出されて、ロール体R2を形成するための駆動軸に取り付けられる。次に、図13に示すように、電解質膜2Aは、ロール体R2の回転によりロール体R1から引き出されてその一部が保持部6に保持される(ステップS501)。このステップS501は、例えば、図14(A)に示すように、保持部6が電解質膜2Aを吸引することにより保持を行う。保持部6は、ロール体R1から引き出されて広がった状態の電解質膜2Aを保持する。電解質膜2Aの吸着は、後述する空間555の減圧の終了後まで行ってもよく、また、塗布部507による触媒インク5の塗布後まで行ってもよい。
次に、図13に示すように、保持された電解質膜2Aの少なくとも一方の面に、触媒層3を形成するための触媒インク5を塗布部507により塗布する(ステップS502)。このステップS502は、塗布部507が退避位置P502から対向位置P501に移動し、図14(A)に示すように、ノズル31がY方向に移動することにより、電解質膜2Aの所定領域に触媒インク5を塗布する。なお、塗布部507は、ノズル31をY方向に移動させて電解質膜2Aの所定領域に触媒インク5を塗布してもよい。
また、図14(B)に示す塗布部507Aのように、ノズル31がX方向及びY方向に移動せず、電解質膜2AがX方向に移動することを利用して電解質膜2A上に触媒インク5を塗布するものでもよい。この塗布部507Aは、図14(B)に示すように、電解質膜2Aを案内するローラ564の上方にノズル31を配置する。ノズル31は、吐出口32がローラ564に沿ったY方向に配置される。ノズル31は、保持部6(チャンバ部508)の−X側に配置され、電解質膜2Aの移送方向において保持部6の上流側に配置される。ノズル31は、Z方向に移動可能に形成され、電解質膜2Aとの間隔を調整可能としてもよい。また、ノズル31をメンテナンスするノズル浸漬部52及び予備吐出部53(図1参照)は、図示のノズル31の位置から+Y側または−Y側に配置されてもよい。図14(B)に示すものでは、電解質膜2Aを+X方向に移送するとともに、ノズル31から触媒インク5を吐出することにより電解質膜2Aの所定領域に触媒インク5を塗布する。
次に、図13に示すように、チャンバ部508により空間555を形成するのに先立って、塗布部507をチャンバ部508の外側に退避させる(ステップS503)。このステップS503は、例えば、図14(A)に示すように、塗布部507が+Y方向の退避位置P502向けて移動し、チャンバ部508の外側に退避することにより行う。なお、図14(B)に示すものでは、塗布部507Aは、保持部6から離れて配置されているので、既に退避が完了した状態である。
次に、図13に示すように、触媒インク5が塗布された電解質膜2Aを含んだ空間555をチャンバ部508により形成する(ステップS504)。このステップS504は、例えば、図15(A)及び(B)に示すように、蓋部557が、−Z方向に移動して基部16の上面と接触することにより空間555を形成する。このとき、触媒インク5の塗布領域から+X方向及び−X方向に延びる電解質膜2Aは、蓋部557と基部16との間に挟まれた状態となる。なお、チャンバ部508は、保持部6を囲んだ小さな空間555を形成するので、空間555の減圧に要する時間を短くすることができる。
次に、図13に示すように、空間555を減圧する(ステップS505)。このステップS505は、例えば、図15(B)に示すように、空間555が形成された後、吸引部9を駆動することにより空間555を吸引することにより行う。空間555を減圧することにより触媒インク5が乾燥して触媒層3を形成し、積層膜4Aが製造される。なお、空間555を吸引する際、電解質膜2Aの吸引力が空間555内に対する吸引力より大きくなるように設定してもよい。これにより、電解質膜2Aを確実に保持部6保持することができる。ただし、空間555を減圧する際、電解質膜2Aを保持部6に保持するか否かは任意である。また、吸引部9は、吸引力を段階的に大きくして、空間555を減圧してもよい。これにより、電解質膜2Aに塗布された触媒インク5が吸引力により変形することを抑制できる。例えば、吸引部9は、空間555の圧力を大気圧から所定の圧力に減圧する第1吸引を行った後、第1吸引より吸引力を大きくして、空間555の圧力を1000Pa以下、好ましくは100Pa以下に減圧する第2吸引を行う場合、上記した触媒インク5の吸引力による破損を抑制し、且つ触媒インク5の乾燥が十分に行われて、多孔質形状の触媒層3を精度よく形成することができる。なお、吸引部9が、吸引力を段階的に大きくして、空間555を減圧するか否かは任意である。
なお、図14(B)に示すものでは、電解質膜2Aの移送とともに触媒インク5の塗布を行い(ステップS502)、塗布された触媒インク5が位置P503に達した段階で電解質膜2Aの移送を停止する。続いて、保持部6により電解質膜2Aを吸引して保持する。なお、保持部6により電解質膜2Aを保持するか否かは任意である。続いて、位置P503を囲むように蓋部557が移動して空間555を形成させ(ステップS504)、この空間555内を吸引部9により吸引して減圧することにより触媒インク5を減圧乾燥させる(ステップS505)。なお、図14(B)に示すものでは、保持部6上に塗布部507Aが達しないので、蓋部557全体を移動させる必要がない。例えば、蓋部557は保持部6の基部16上に固定され、電解質膜2Aの出入り口部分だけを開口させて、この開口をシャッタ等により開閉することで空間555を形成させるものでもよい。
また、触媒インク5を塗布する際や、塗布した後、空間555内で減圧乾燥を行う際又は減圧乾燥の後に、電解質膜2Aを加熱部26(図12(B)参照)により所定の温度で加熱してもよい。これにより、触媒インク5の乾燥時間を短縮することができる。なお、電解質膜2Aを加熱するか否かは任意である。
以上のステップS501〜S505により、長尺の電解質膜2A上に所定の間隔で触媒層3が形成された長尺の積層膜4Aが形成される、この長尺の積層膜4Aを巻き取ることでロール体R2となる。このロール体R2を他の装置等(例えば燃料電池の組み立て装置など)に搬送して、適宜触媒層3ごとに切断して各積層膜4として使用される。また、触媒層3を多層にする場合、上記ステップを繰り返して行い、積層膜4Aにおける触媒層3に重ねて、触媒インク5の塗布を塗布することにより行う。なお、多層の触媒層3を形成する場合、層ごとに異なる触媒インク5を用いてもよい。
また、長尺の積層膜4Aが巻かれたロール体R2とすることに代えて、図13に示すように、触媒層3が形成された部分ごとに積層膜4Aを切断してもよい(ステップS506)。ただし、ステップS506により積層膜4Aを切断するか否かは任意である。装置500は、図16に示すように、切断部580を備え、触媒層3が形成された部分ごとに切断部580により積層膜4Aを切断してもよい。
切断部580は、図16(A)に示すように、第1保持部581と、第2保持部582と、可動ホルダ583と、一対の刃部584と、を備える。第1保持部581は、Y方向に伸びる棒状に形成され、積層膜4Aの+X側の端部を裏面側から保持する。第1保持部581は、例えば、吸引により積層膜4Aの裏面の一部を吸着して保持する。第2保持部582は、第1保持部581の+X側に隣接して配置される。第2保持部582は、矩形板状に形成され、触媒層3が形成された積層膜4Aを保持する。第2保持部582は、例えば、吸引により積層膜4Aの裏面を吸着して保持する。
可動ホルダ583は、ロッド585と、ホルダ586と、を備える。ロッド585は、不図示のガイドによりX方向に移動可能に形成され、不図示の駆動装置によってX方向に移動する。ホルダ586は、ロッド585の−X側端部に形成される。ホルダ586は、積層膜4の+X側の端部の一部を挟んでまたは吸着して保持可能に形成される。可動ホルダ583は、ホルダ586が第1保持部581に保持された積層膜4Aの端部を保持可能な位置と、積層膜4Aを+X方向に引き出して第2保持部582により積層膜4Aを保持可能な位置との間を移動する。
一対の刃部584は、第2保持部582に保持された積層膜4Aを切断する。一対の刃部584は、第2保持部582の−X側及び+X側のそれぞれに配置され、不図示のガイドに沿ってY方向に移動可能に形成される。一対の刃部584は、第2保持部582の+Y側に退避しており、不図示の駆動装置によりガイドに沿って−Y方向に移動することで積層膜4Aの所定部分を切断する。なお、一対の刃部584に代えて、第2保持部582の−X側の1箇所に刃部584が形成されてもよい。また、一対の刃部584に代えて、積層膜4AをZ方向に挟み込んで切断するものでもよい。
次に、切断部580を用いて、上記したステップS506について説明する。図16(A)に示すように、積層膜4Aの+X側の端部が第1保持部581に保持された状態から開始する。次に、図16(B)に示すように、可動ホルダ583は、ロッド585を−X方向に移動させ、ホルダ586により積層膜4の+X側の端部を保持する。次に、第1保持部581による積層膜4Aの保持を停止した後、図16(C)に示すように、可動ホルダ583は、ホルダ586で積層膜4Aを保持したまま+X方向に移動する。これにより、積層膜4Aは、第2保持部582上に移動する。続いて、第2保持部582は、吸引等により積層膜4を保持する。
次に、図16(D)に示すように、可動ホルダ583は、積層膜4Aの保持を解除して+X方向に移動し、第2保持部582から退避する。続いて、一対の刃部584は、−Y方向に移動することにより、積層膜4のうち触媒層3の+X側及び−X側をY方向に切断する。すなわち、長尺の積層膜4Aは、触媒インク5が塗布された部分ごとの積層膜4となる。次に、図16(E)に示すように、一対の刃部584が+Y方向に移動して元の位置に移動した後、可動ホルダ583は、−X方向に移動して、切断後の積層膜4を保持する。続いて、第2保持部582による積層膜4の保持が解除された後、可動ホルダ583が+X方向に移動することにより、積層膜4が+X方向に移送され、所定位置に載置される。この所定位置は、例えば、積層膜4を保管位置としてもよい。なお、可動ホルダ583は、例えば、積層膜4を所定位置に移動させるために、X方向以外に、Y方向やZ方向に移動してもよい。
以上のように、本実施形態によれば、電解質膜2Aが巻かれたロール体R1を用いて、長尺の積層膜4Aのロール体R2、または長尺の積層膜4Aを切断した積層膜4を形成するので、積層膜4、4A(触媒層3)を効率よく製造(形成)することができる。なお、第1実施形態と同様、触媒インク5の塗布から減圧乾燥までを短時間で行うので、触媒活性が高い多孔質形状の触媒層3を形成することができる。
[第7実施形態]
次に、第7実施形態について説明する。本実施形態において、上記した実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を簡略化あるいは省略する。また、上記した実施形態において説明した事項のうち、第7実施形態に適用可能なものは全て第7実施形態で適用してもよい。
図17は、第7実施形態に係る装置600の一例を示し、(A)は保持部606の一例を示す斜視図、(B)は−Y方向から見た側面図である。装置600は、図17に示すように、保持部606として、テーブル616と、張力付与部688と、を備える。その他の構成は上記した各実施形態と同様であり、図示を省略する。テーブル616は、長尺の電解質膜2Aの一部を上面に載置する。テーブル616は、例えば矩形板状の部材が用いられ、不図示の空間を吸引するための吸引部9に接続されている。なお、テーブル616は、図1に示す吸着部15や吸着用吸引部17を備えてもよい。
張力付与部688は、ローラ662と、ローラ663と、を備える。ローラ662、663は、それぞれテーブル616の−X側、+X側に配置される。また、ローラ662、663は、いずれもテーブル616の上面より−Z側に配置されている。これにより、張力付与部688は、ローラ662、ローラ663により、テーブル616上において電解質膜2Aに張力を付与し、テーブル616上(保持部606上)に電解質膜2Aの一部を保持するように作用する。
なお、ローラ662、663は、それぞれ電解質膜2Aを挟んだ一対のローラであってもよい。この場合、各ローラ662、663は、不図示の駆動装置によって回転駆動するものでもよい。各ローラ662、663が回転駆動する場合、ローラ663に対して電解質膜2Aを+X方向に送る方向に駆動をかけ、かつ、ローラ662に対して電解質膜2Aを−X方向に戻す方向に駆動をかけることで、テーブル616上の電解質膜2Aにさらに張力を付与することができる。なお、テーブル616の−X側及び+X側の端部には、電解質膜2Aとの摩擦を軽減するため、傾斜面や曲面、ローラなどが形成されてもよい。また、張力付与部688による電解質膜2Aへの張力の付与は、触媒インク5の塗布から減圧による乾燥が終了するまで行われる。
以上のように、本実施形態によれば、電解質膜2Aは、張力付与部688によって張力が付与された状態で触媒インク5の塗布及び減圧乾燥が行われるため、電解質膜2Aの変形を抑制することができる。また、張力付与部688によって保持部606に電解質膜2Aを保持できるので、電解質膜2Aを保持するための吸着部15や吸着用吸引部17が不要となり、装置コストを低減できる。
[第8実施形態]
次に、第8実施形態について説明する。本実施形態において、上記した実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を簡略化あるいは省略する。また、上記した実施形態において説明した事項のうち、第8実施形態に適用可能なものは全て第8実施形態で適用してもよい。
図18は、第8実施形態に係る装置700の一例を示す図であり、(A)は枠部形成部の一例を示す斜視図、(B)は動作の一例を示すフローチャート図である。装置700は、図18(A)に示すように、枠部形成部770と、切断部780と、を備える。枠部形成部770は、長尺の積層膜4Aにおいて、それぞれの触媒層3を囲むように枠部471(図11参照)を形成する。なお、枠部形成部770より前段の工程は、上記した実施形態と同様であり、長尺の電解質膜2Aに触媒層3を形成した長尺の積層膜4Aを製造する。製造された積層膜4Aは、枠部形成部770に搬送される。積層膜4の搬送は、各種搬送装置により行ってもよい。また、枠部形成部770の構成は、図11に示す枠部形成部470と同様の構成が適用され、例えば、積層膜4Aに対して枠部471を接着する構成等が適用される。
切断部780は、枠部471が形成された積層膜4Aを、枠部471が形成された部分ごとに切断する。切断部780は、枠部形成部770の+X側に配置され、不図示のガイドに沿ってY方向に移動可能に形成される。切断部780は、枠部形成部770の+Y側に退避しており、不図示の駆動装置によりガイドに沿って−Y方向に移動することで積層膜4Aの所定部分を切断する。なお、切断部780は、Y方向に移動して積層膜4Aを切断するものに代えて、積層膜4AをZ方向に挟み込んで切断するものでもよい。
この装置700を用いることにより、図18(B)のフローチャートの実施が可能となる。なお、先の図13のフローチャートでは、ステップS505により触媒インク5を減圧乾燥して触媒層3としているが、本実施形態では、このステップS505に続いて、以下の工程が追加される。
図18(B)に示すように、ステップS505に続いて、積層膜4Aに枠部471が形成される(ステップS708)。長尺の積層膜4Aは、+X方向に移送され、枠部形成部770に順次移送され、各触媒層3を囲むように枠部471が形成される。次に、図18(B)に示すように、枠部形成部770から+X側に移送された積層膜4Aに対して、切断部780を−Y方向に移動させることにより、枠部471ごとに積層膜4Aが切断される(ステップS709)。なお、切断部780による切断の際、枠部形成部770から+X側に移送された積層膜4Aを保持してもよい。
なお、切断された積層膜4は、各種搬送装置等によって所定の保管位置や他の装置に搬送される。積層膜4を保管する際、図11に示す積層膜保管部472と同様に、積層膜4を重ねた状態で保管してもよく、また、積層膜4を1枚ごとまたは複数枚ごとに収容可能な棚(スロット)に保管してもよい。また、枠部471が形成された積層膜4Aを切断するか否かは任意である。従って、装置700は、切断部780がなくてもよい。積層膜4Aを切断しない場合、枠部471が形成された積層膜4Aは、折り重ねた状態で保管されてもよい。
以上のように、本実施形態によれば、長尺の積層膜4Aに対して枠部471を形成するので、枠部471の形成を短時間で効率よく行うことができる。また、第5実施形態と同様、枠部471により積層膜4の剛性が向上するので、その後の搬送や組み立てなどのハンドリング性を向上させることができる。
[第9実施形態]
次に、第9実施形態について説明する。本実施形態において、上記した実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を簡略化あるいは省略する。また、上記した実施形態において説明した事項のうち、第9実施形態に適用可能なものは全て第9実施形態で適用してもよい。
図19は、第9実施形態に係る燃料電池用積層膜装置の一例を示し、(A)は+Z方向から見た積層膜4Aの拡大図、(B)は装置800を−Y方向から見た側面図である。第9実施形態に係る装置800は、図12に示す装置500とほぼ同様の構成である。本実施形態では、長尺の積層膜4Aの一方の面だけでなく、他方の面について触媒層3を形成する手法を示している。
図19(A)に示すように、長尺の積層膜4Aには、触媒層3ごとにマークMが形成される。このマークMは、各触媒層3との位置関係が予め設定されている。マークMは、光学式等の非接触センサ、または接触式プローブによる接触式センサなどの検出装置により検出可能であれば、任意の形状、色等を適用できる。また、マークMは、積層膜4Aの一部に形成された貫通穴であってもよい。また、マークMは、触媒層3の一部に形成されてもよい。マークMの形成は、専用のマーク形成装置が使用されてもよく、また、塗布部507から触媒インク5を塗布してマークMを形成してもよい。また、マークMは、触媒層3が形成された面に形成されることに代えて、触媒層3が形成されていない面に形成されてもよい。
図19(A)に示すように、長尺の電解質膜2Aの一方の面に触媒層3が形成された長尺の積層膜4Aは、ロール体R2として装置800の供給側に配置される。この積層膜4Aは、触媒層3が形成されていない他方の面を+Z方向(上方)に向けた状態でX方向に引き出される。また、装置800は、マークMを検出する不図示の検出装置を備えている。この検出装置は、マークMを認識した場合、例えば、認識結果を不図示の制御部に送信する。制御部は、この認識結果から−Z面の触媒層3の位置を判断し、この触媒層3の位置に保持部6を合わせるように積層膜4Aの移送を制御する。
続いて、保持部6により積層膜4Aを保持した後、塗布部507により積層膜4Aの+Z側の面に触媒インク5が塗布され、チャンバ部508により触媒インク5が減圧乾燥されることにより触媒層3が形成される。その結果、電解質膜2Aを挟んだ+Z面側及び−Z面側の双方に触媒層3を持つ長尺の積層膜4Bが形成される。長尺の積層膜4Bは、+X方向に移送され、ロール体R3として巻き取られてもよく、また、図16に示すように、触媒層3が形成された部分ごとに適宜切断されてもよい。
積層膜4Bは、+Z面側及び−Z面側で同一の触媒インク5により同一の触媒層3が形成されてもよく、また、異なる触媒インク5により異なる触媒層3が形成されてもよい。なお、上記ではマークMを検出して触媒インク5の塗布位置を制御しているが、これに限定されない。例えば、先に形成された触媒層3を+Z面側から認識可能な場合は、この触媒層3のエッジを検出装置等により検出して触媒インク5の塗布位置を制御してもよい。また、触媒インク5の塗布位置を不図示の検出装置を用いて制御部により制御することに代えて、作業者が目視等により触媒インク5の塗布位置を設定してもよい。
以上のように、本実施形態によれば、長尺の電解質膜2Aの両面に対して触媒層3を効率よく形成できる。なお、電解質膜2Aの両面に形成される触媒層3は、同一の大きさ(面積)であることに限定されず、異なる大きさであってもよい。各触媒層3の大きさは、塗布部507による塗布領域をそれぞれ設定することで、互いに同一または異なる大きさに設定される。
[第10実施形態]
次に、第10実施形態について説明する。本実施形態において、上記した実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を簡略化あるいは省略する。また、上記した実施形態において説明した事項のうち、第10実施形態に適用可能なものは全て第10実施形態で適用してもよい。
図20(A)は、第10実施形態に係る積層膜4Cの一例を示す図、(B)は、他の例に係る積層膜4Dの一例を示す図である。図21(A)は、他の例に係る積層膜4Dの一例を示す図、(B)は、他の例に係る積層膜4Eの一例を示す図、(C)は、他の例に係る積層膜4Fを示す図である。図20(A)に示すように、電解質膜2は、−Z面側に剥離可能な基材シートSを備えている。この電解質膜2は、予め作成した電解質膜2と基材シートSとを接着剤または静電力等により接合して形成されてもよく、また、基材シートS上に電解質膜2を形成するための液体を塗布し、この液体を乾燥等させることにより基材シートS上に電解質膜2を形成されたもののいずれでもよい。この電解質膜2の+Z面側に触媒層3を形成する手段は、上記した各実施形態が適用可能である。
電解質膜2上に触媒層3を形成した積層膜4Cは、−Z側から順に基材シートS、電解質膜2、触媒層3の3層構造となる。なお、電解質膜2の+Z面側に、図11に示すような枠部471が形成されてもよい。この積層膜4Cは、図20(A)に示すように、裏面の基材シートSを剥がすことにより、燃料電池に使用可能な積層膜4となる。なお、基材シートSは、電解質膜2から剥離可能であれば任意の材料のシートを用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シート、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート、ポリエステルシート等の樹脂製のシートを用いることができる。
なお、本実施形態において、基材シートSの剥離は、専用の剥離装置が使用されてもよく、また、作業者が手作業により行ってもよい。また、本実施形態において、基材シートSを有する積層膜4Cの状態で保管されてもよく、また、各積層膜4Cから基材シートSを剥離した状態で保管されてもよい。
また、図20(B)に示すように、長尺の電解質膜2Aは、−Z面側に剥離可能な長尺な基材シートSAを備えており、ロール体R4として供給されてもよい。この電解質膜2Aは、上記と同様に、予め作成した長尺の電解質膜2Aと基材シートSAとを接合して形成してもよく、また、長尺の基材シートSA上に所定の液体を塗布して電解質膜2Aを形成したもののいずれであってもよい。ロール体R4から引き出された電解質膜2Aの+Z面側に適宜触媒層3を形成する手段は、上記した各実施形態が適用可能である。基材シートSAの材料は、上記した基材シートSと同様である。
電解質膜2A上に触媒層3を形成した長尺の積層膜4Dは、触媒層3を形成した部分において−Z側から順に基材シートSA、電解質膜2A、触媒層3の3層構造となる。なお、電解質膜2Aの+Z面側において、図18(A)に示すように、触媒層3ごとに枠部471が形成されてもよい。この積層膜4Dは、図20(B)に示すように、移送経路の一部において基材シートSAが連続して電解質膜2Aから剥離される。基材シートSAを剥離する位置に楔状の部材が配置され、この楔状の部材により基材シートSAの剥離を行ってもよい。なお、剥離した基材シートSAは、巻き取られてロール体R5を形成する。このロール体R5は、基材シートSAが巻かれたものであり、再度電解質膜2Aを形成するなど、再利用が可能である。
基材シートSAが剥がされた積層膜4Dは、積層膜4Aとなって巻き取られることによりロール体R2を形成する。なお、積層膜4Dは、基材シートSAを剥離する前に触媒層3ごとに切断されてもよい。積層膜4Dが触媒層3ごとに切断されることにより、図20(A)に示す積層膜4Cとなる。また、積層膜4Dは、基材シートSAを剥離せずに巻き取られてロール体を形成してもよい。
また、図21(A)に示すように、長尺な基材シートSAを一方の面に備えた長尺の電解質膜2Aは、触媒層3を形成する前に基材シートSAを剥離してもよい。また、長尺の電解質膜2Aは、触媒層3を形成した後に、剥離可能な長尺な基材シートSAを積層してもよい。
例えば、図21(A)に示すように、−Z面側に剥離可能な長尺な基材シートSAを備えた長尺の電解質膜2Aは、ロール体R4として供給され、+X方向に移送される。この基材シートSAを備えた電解質膜2Aは、触媒層3が形成される前の移送経路の一部において基材シートSAが連続して電解質膜2Aから剥離され、巻き取られてロール体R5を形成する。基材シートSAの剥離は、基材シートSAを剥離する位置に楔状の部材が配置され、この楔状の部材により行ってもよい。
基材シートSAが剥離された電解質膜2Aは、保持部6により保持された後、塗布部507により+Z側の面に触媒インク5が塗布され、チャンバ部508により触媒インク5が減圧乾燥されることにより触媒層3が形成され、長尺の積層膜4Aが形成される。
電解質膜2A上に触媒層3を形成した長尺の積層膜4Aは、触媒層3を形成した後の移送経路の一部において基材シートSAが連続して積層膜4Aの−Z側の面に形成される。基材シートSAは、例えば、保持部6等の+X側に配置されるロール体R5として供給され、+X方向に移送される。この基材シートSAは、積層膜4Aの−Z面側に対向する面(基材シートSAの+Z面側)に不図示の塗布装置により離型剤が塗布された後、一対のプレスローラPR1、PR2に移送される。離型剤は、例えば、剥離性の観点から、ケイ素酸化物、フッ素やシリコーン系の離型剤が用いられる。積層膜4Aは、基材シートSAの+Z面側に位置するように、一対のプレスローラPR1、PR2に移送される。一対のプレスローラPR1、PR2は、移送された積層膜4Aと基材シートSAとを+Z側及び−Z側から挟むことにより、積層膜4Aの−Z面側に基材シートSAを積層し、長尺の積層膜4Dを形成する。この積層膜4Dは、触媒層3を形成した部分において、−Z側から順に基材シートSA、電解質膜2A、触媒層3の3層構造となる。この長尺の積層膜4Dは、基材シートSAを剥離せずに、巻き取られることによりロール体R6を形成する。
なお、積層膜4Aへの基材シートSAの積層は、電解質膜4Aと基材シートSAが離型剤を用いないでも積層でき且つ剥離可能な材料であれば、離型剤を用いずに積層してもよい。また、積層膜4Dは、触媒層3ごとに切断されてもよい。この場合、積層膜4Dが触媒層3ごとに切断されることにより、図20(A)に示す積層膜4Cとなる。また、電解質膜2A上に触媒層3を形成した長尺の積層膜4Aは、基材シートSAを形成せずに巻き取ることによりロール体R2を形成してもよいし、基材シートSAを積層せずに触媒層3ごとに切断され、枚葉の積層膜4を形成してもよい。また、積層膜4Aへの基材シートSAの積層は、触媒層3を形成した面(積層膜4Aの+Z側の面)に行ってもよい。
また、図21(B)に示すように、長尺の電解質膜2Aは、剥離可能な長尺な基材シートSAを+Z面側及び−Z面側に備えたものを用いてもよい。また、長尺の電解質膜2Aは、触媒層3を形成した後の積層膜4Aの+Z面側及び−Z面側に、基材シートSAを積層してもよい。
例えば、図21(B)に示すように、+Z面側及び−Z面側に剥離可能な長尺な基材シートSAを備えた長尺の電解質膜2Aは、ロール体R7として供給され、+X方向に移送される。この+Z面側及び−Z面側に基材シートSAを備えた電解質膜2Aは、触媒層3が形成される前の移送経路の一部において、電解質膜2Aの+Z面側及び−Z面側に備えられた基材シートSAが連続して電解質膜2Aから剥離され、それぞれ、巻き取られてロール体R5を形成する。基材シートSAの剥離は、基材シートSAを剥離する位置に楔状の部材が配置され、この楔状の部材により行ってもよい。
+Z面側及び−Z面側に備えた基材シートSAが剥離された電解質膜2Aは、保持部6により保持された後、塗布部507により+Z側の面に触媒インク5が塗布され、チャンバ部508により触媒インク5が減圧乾燥されることにより触媒層3が形成され、長尺の積層膜4Aが形成される。
電解質膜2A上に触媒層3を形成した長尺の積層膜4Aは、触媒層3を形成した後の移送経路の一部において、積層膜4Aの+Z側の面及び−Z側の面に基材シートSAが連続して積層される。電解質膜4Aの+Z側の面及び−Z側の面に積層する基材シートSAは、例えば、保持部6等の+X側に配置される2つのロール体R5として供給され、+X方向に移送される。2つのロール体R5から移送された基材シートSAは、それぞれ、積層膜4Aの+Z側又は−Z側の面に対向する面に、不図示の塗布装置により離型剤が塗布された後、一対のプレスローラPR1、PR2に移送される。積層膜4Aは、2つの基材シートSAの間に位置するように、一対のプレスローラPR1、PR2に移送される。一対のプレスローラPR1、PR2は、移送された積層膜4Aと2つの基材シートSAとを+Z側及び−Z側から挟むことにより、積層膜4Aの+Z面側及び−Z面側に基材シートSAを積層し、積層膜4Eを形成する。積層膜4Eは、触媒層3を形成した部分において、−Z側から順に基材シートSA、電解質膜2A、触媒層3、基材シートSAの4層構造となる。長尺の積層膜4Eは、基材シートSAを剥離せずに、巻き取られることによりロール体R8を形成する。なお、積層膜4Eは、触媒層3ごとに切断されてもよい。この場合、積層膜4Eが触媒層3ごとに切断されることにより、基材シートSAを+Z側及び−Z側に備えた、図21(C)に示す積層膜4Fとなる。
以上のように、本実施形態によれば、電解質膜2、2Aに剥離可能な基材シートS、SAが積層されるので、電解質膜2、2Aは基材シートS、SAによって剛性が付与され、搬送等のハンドリング性を向上させることができる。また、基材シートS、SAは、電解質膜2、2Aを被覆するので、電解質膜2、2Aに傷がつくことや、ほこりが付着することを抑制できる。なお、本実施形態では、電解質膜2、2Aに1枚の基材シートS、SAを積層しているが、2枚以上の基材シートS、SAを積層してもよい。また、基材シートS、SAは、電解質膜2、2Aからの剥離を容易にするため、一部が電解質膜2、2Aから突出して形成されてもよい。また、触媒層3を形成した面(積層膜4Aの+Z側の面)に基材シートSAを積層する場合、剥離可能な基材シートSAに代えて、シート状のセパレータやガス拡散層を用いて、触媒層3に密着するようにセパレータやガス拡散層を積層してもよい。これにより、燃料電池のセルを簡便に製造することができる。
[第11実施形態]
次に、第11実施形態について説明する。本実施形態において、上記した実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を簡略化あるいは省略する。また、上記した実施形態において説明した事項のうち、第11実施形態に適用可能なものは全て第11実施形態で適用してもよい。
図22は、第11実施形態に係る触媒層の一例を示している。図22(A)に示すように、触媒層3を形成するための被塗布物として剥離用シートFが用意される。剥離用シートFは、例えば、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系樹脂や、ポリイミド、ポリエチレンテレフタラート、ポリアミド(ナイロン)、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテル・エーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレートなどの高分子シートまたは高分子フィルムや、不織布などを用いることができる。
剥離用シートFの+Z側の面には、離型層Qが形成されてもよい。離型層Qは、例えば、剥離性の観点から、ケイ素酸化物、フッ素やシリコーン系の離型剤等が化学気相成長法、物理気相成長法等の公知の方法により形成される。ただし、剥離用シートFが剥離性を有している場合は、離型層Qを形成しなくてもよい。
次に、図22(B)に示すように、剥離用シートF(離型層Q)上にノズル31から触媒インク5が塗布される。触媒インク5の塗布は、上記した各実施形態の塗布部7等が適用可能である。次に、図22(C)に示すように、触媒インク5が塗布された剥離用シートFは、チャンバ部8内に収容され、上記と同様に減圧されることにより、触媒インク5を減圧乾燥する。これにより、剥離用シートF上に触媒層3を備えた転写シートTが形成される。
次に、上記のように形成された転写シートTを用いて積層膜4を形成する方法について説明する。図23は、剥離用シートFの触媒層3を電解質膜2に転写する一例を示している。図23(A)に示すように、ホットプレスHPの下型HP1上に、触媒層3を+Z側に向けた状態で転写シートTが載置される。この転写シートT上に電解質膜2が載置される。電解質膜2上に、触媒層3を−Z側に向けた状態で転写シートTが載置される。従って、2枚の転写シートT及び電解質膜2の積層体は、電解質膜2の+Z側及び−Z側のそれぞれに触媒層3が接触した状態となっている。続いて、加熱装置Hを駆動して下型HP1及び上型HP2を加熱し、この積層体を加熱しながら下型HP1及び上型HP2により挟み込んで加圧する。
ホットプレスHPにより積層体に与える圧力は、電解質膜2や触媒層3中の成分などによって適宜選択されるが、例えば、1〜10MPaの範囲、1〜6MPaの範囲、2〜5MPaの範囲に設定される。また、加圧時間は、加圧時の温度および圧力によって適宜選択されるが、例えば、1〜20分の範囲、3〜20分の範囲、5〜20分の範囲に設定される。
ホットプレスHPによる積層体の加熱及び加圧により、図23(B)に示すように、それぞれの触媒層3は電解質膜2に接合される。次に、図23(C)に示すように、転写シートTから剥離用シートFを剥離することにより、電解質膜2の+Z側及び−Z側のそれぞれに触媒層3が形成された積層膜4が形成される。
なお、上記では、電解質膜2の+Z側及び−Z側のそれぞれに触媒層3を待つ積層膜4を形成しているが、電解質膜2の+Z側及び−Z側のいずれか一方の面に触媒層3が形成されたものでもよい。この場合、ホットプレスHPにより電解質膜2と1枚の転写シートTを挟み込んで形成される。また、電解質膜2の+Z側及び−Z側に同時に触媒層3を形成することに限定されず、例えば、先ず電解質膜2の+Z側にホットプレスHPを用いて触媒層3を形成し、その後、電解質膜2の−Z側に触媒層3を形成してもよい。
また、電解質膜2に触媒層3を接合する方法としてホットプレスHPを使用することに限定されず、例えば、熱ロールプレスや、超音波融着などが使用されてもよい。ただし、ホットプレスHPを用いる場合、電解質膜2と触媒層3との接合において面内の均一性を確保することが可能となる。また、電解質膜2に触媒層3を接合する方法として、接合材を用いるなど他の手法が適用されてもよい。
以上のように、本実施形態によれば、剥離用シートFに対して触媒活性が高い触媒層3を容易かつ確実に形成することができる。この触媒層3を持つ転写シートTを用いることにより、電解質膜2に触媒層3を容易に転写することができ、高機能な積層膜4を容易に形成することができる。
[第12実施形態]
次に、第12実施形態について説明する。本実施形態において、上記した実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を簡略化あるいは省略する。また、上記した実施形態において説明した事項のうち、第12実施形態に適用可能なものは全て第12実施形態で適用してもよい。
図24は、第12実施形態に係る触媒層の一例を示している。図24(A)に示すように、触媒層3を形成するための被塗布物として長尺の剥離用シートFAが用意される。剥離用シートFAは、巻かれた状態のロール体R9として提供され、適宜+X方向に引き出される。剥離用シートFAの上面(触媒層3を形成する面)に、上記した剥離用シートFと同様な離型層Qを形成してもよい。
剥離用シートFA上の一部には、例えば、図12〜図15で示す第6実施形態の装置500と同様に、ノズル31から触媒インク5が塗布され、さらにチャンバ部508によって触媒インク5を減圧乾燥させることにより触媒層3が形成される。触媒層3の形成後、剥離用シートFAが+X方向に移送され、次の触媒層3が形成され、このような動作が繰り返される。これにより、長尺の剥離用シートFA上に複数の触媒層3が一定間隔または間隔が異なる状態で形成された長尺の転写シートTAが形成される。
長尺の転写シートTAは、図24(A)に示すように、チャンバ部508の+X側において巻き取られ、ロール体R10を形成する。なお、転写シートTAは、触媒層3ごとに切断されて枚葉の転写シートT(図22(C)参照)としてもよい。枚葉の転写シートTを用いて積層膜4を形成する方法は、上記した図23に示す方法と同様である。なお、枚葉ごとに切断する機構は、例えば、図18に示す切断部780と同様の構成が適用されてもよい。
次に、上記のように形成された転写シートTAを用いて積層膜4Eを形成する方法について説明する。図24(B)は、剥離用シートFAの触媒層3を長尺の電解質膜2Aに転写する一例を示している。図24(B)に示すように、長尺の電解質膜2Aは+X側に向けて移送される。この電解質膜2Aの+Z側及び−Z側のそれぞれにロール体R10が配置され、各ロール体R10から転写シートTAが引き出されて、電解質膜2Aの+Z側及び−Z側に積層した状態で配置される。
続いで、電解質膜2A及び2つの転写シートTAは、+X方向に移動することにより、熱ロールプレスのローラRP1とローラRP2との間を通過し、これにより各転写シートTAの触媒層3は電解質膜2Aに接合して長尺の積層膜4Gを形成する。この積層膜4Gには、剥離用シートFAが残ったままとなっている。なお、ローラRP1、RP2は、不図示の加熱装置等によって所定温度に加熱されてもよい。また、熱ロールプレスを用いることに代えて、例えば、図23(A)に示すようなホットプレスHPが使用されてもよい。この場合、ホットプレスHPに各触媒層3を順次配置させ、ホットプレスHPによる加熱及び加圧を行う。
上記のように形成された長尺の積層膜4Gは、ローラRP1、RP2の+X側において巻き取られてロール体R11を形成する。この場合、転写シートTAに剥離用シートFAが残っているので、触媒層3同士が接触することを防ぎ、このロール体R11の状態で保管することが可能である。なお、上記のように形成された積層膜4Gをロール体R11とすることに限定されない。
図25は長尺の電解質膜2Aに触媒層3を接合した状態の他の例を示す図である。図25(A)に示すように、長尺の積層膜4Gは、ローラRP1、RP2の+X側において、触媒層3ごとに切断部CUによって切断され、枚葉の積層膜4Hとなる。この積層膜4Hは、剥離用シートFAの一部が残った状態となっている。従って、この積層膜4Hを重ねて保管した場合でも触媒層3同士が接触するのを防止できる。なお、切断部CUの構成は、例えば、図16に示す切断部580と同様の構成が適用されてもよい。
また、図25(B)に示すように、長尺の積層膜4Gは、ローラRP1、RP2の+X側において、2つの転写シートTAの剥離用シートFAが剥離されて、長尺の積層膜4Iが形成されてもよい。長尺の積層膜4Iは、不図示の切断部(例えば、図16に示す切断部580と同様の構成を持つもの)によって触媒層3ごとに切断され、枚葉の積層膜4を形成してもよい。また、剥離した長尺の剥離用シートFAは、巻き取られてロール体R12となる。ロール体R12の剥離用シートFAは、再度触媒層3を形成するために使用されてもよい。
なお、上記では、電解質膜2Aの+Z側及び−Z側のそれぞれに触媒層3を待つ積層膜4を形成しているが、電解質膜2Aの+Z側及び−Z側のいずれか一方の面に触媒層3が形成されたものでもよい。この場合、電解質膜2Aと1つの転写シートTAをローラRP1、RP2で挟み込んで形成される。また、電解質膜2Aの+Z側及び−Z側に同時に触媒層3を形成することに限定されず、例えば、先ず電解質膜2Aの+Z側に転写シートTAにより触媒層3を形成し、その後、電解質膜2の−Z側に触媒層3を形成してもよい。また、長尺の電解質膜2Aに触媒層3を転写することに代えて、枚葉の電解質膜2に転写シートTAから触媒層3を転写してもよい。転写に関する技術は、例えば、特開2010−182563号公報に開示される内容が適用されてもよい。
以上のように、本実施形態によれば、長尺の剥離用シートFAに対して触媒活性が高い触媒層3を容易かつ確実に形成することができる。この触媒層3を持つ長尺の転写シートTAを用いることにより、電解質膜2または長尺の電解質膜2Aに対して触媒層3を容易に転写することができ、高機能な積層膜4を容易に形成することができる。
[燃料電池製造システム及び燃料電池の製造方法]
次に、燃料電池製造システムの実施形態について、図面を参照して説明する。図26(A)は、燃料電池製造システムの一例を示すブロック図であり、(B)は燃料電池のセルの一例を示す分解斜視図である。燃料電池製造システムSYS1は、図26(A)に示すように、触媒層形成装置1と、ガス拡散層製造装置910と、セパレータ製造装置920と、組立装置930と、を含み、図26(B)に示すセル901を製造する。なお、図26(A)に示す燃料電池製造システムSYS1は、一例であって他の装置を含んで構成されてもよく、また、ガス拡散層製造装置910、セパレータ製造装置920、及び組立装置930のうち1つ以上を含まない構成であってもよい。
装置(触媒層形成装置)1は、上記した第1実施形態に示すものであり、これに代えて他の実施形態に示す装置100〜800のうちいずれかが使用されてもよい。また、装置1、ガス拡散層製造装置910、セパレータ製造装置920、及び組立装置930は、それぞれ1台で構成されることに限定されず、各装置の処理時間に応じて適宜複数台が配置されてもよい。また、各装置の配置は任意である。例えば、組立装置930を中心として、その周囲に装置1、ガス拡散層製造装置910、及びセパレータ製造装置920が配置されてもよい。
なお、本明細書において「燃料電池」とは、燃料の酸化還元反応を用いることにより電気を取り出すことのできる電池を意味し、例えば、電解質膜2の少なくとも一方の面に触媒層3を有する積層膜4を備える電池は「燃料電池」に含まれる。図26(B)に示すように、燃料電池のセル901は、積層膜4の+Z面側及び−Z面側にそれぞれガス拡散層911が配置され、ガス拡散層911の外側にそれぞれセパレータ921が配置されている。このセルが複数積層されて燃料電池スタックが形成される。なお、図示したセル901は一例であって他の構成であってもよい。
図26(A)に示すガス拡散層製造装置910は、セル901に使用するガス拡散層911を製造する。ガス拡散層911は、例えば、セル901において、水素や酸素(空気)などのガスを触媒層3に拡散させる機能や、電極での化学反応により生じた電子の集電等の機能を有する。ガス拡散層製造装置910の構成は任意である。例えば、図22や図24(A)に示すように、剥離用シートF、FA上にガス拡散層911が形成された転写シートを作成し、この転写シートを用いてガス拡散層911を触媒層3に転写可能としてもよい。セパレータ製造装置920は、セル901に使用するセパレータ921を製造する。セパレータ921は、例えば、セル901において、水素などの燃料や空気の流路としての機能や、積層するセル901間の仕切りとしての機能、集電や電流の外部への伝達部としての機能等を有する。セパレータ製造装置920の構成は任意である。組立装置930は、セル901を構成する部品を受け取り、これらを組み立てることにより複数のセル901が積層した燃料電池を製造する。組立装置930の構成は任意である。
次に、燃料電池の製造方法について、図面を参照して説明する。図27は、燃料電池の製造方法を示すフローチャートである。図27に示すように、装置1による電解質膜2への触媒層3の形成(ステップS901)と、ガス拡散層製造装置910によるガス拡散層911の製造(ステップS902)と、セパレータ製造装置920によるセパレータ921の製造(ステップS903)と、が行われる。なお、ステップS901は、燃料電池用の積層膜4の製造である。また、ステップS901は、触媒層3が剥離用シートF、FAに形成される場合(転写シートT、TAが形成される場合)、電解質膜2、2Aに対して剥離用シートF、FA(転写シートT、TA)から触媒層3を転写すること(ステップS911)を含んでもよい。これらステップS901〜S903は、並行して行ってもよく、また順番に行ってもよい。
次に、ステップS901〜S903でそれぞれ形成された積層膜4、ガス拡散層911、セパレータ921を用いて、組立装置930によりセル901の組み立て、及びセル901を積層した燃料電気スタックの組み立てを行う(ステップS904)。このステップS904は、例えば、セパレータ921上にガス拡散層911を載置し、このガス拡散層911上に積層膜4を載置し、この積層膜4上にガス拡散層911を載置する。このガス拡散層911上にセパレータ921を載置して、上記を繰り返すことにより複数のセルが積層する燃料電池スタックが完成する。なお、燃料電池スタックの電極形成やセル901同士の電気的な接続等の処理は省略している。
なお、上記した燃料電池の製造方法は一例であって他の方法でもよい。例えば、上記した方法は、積層膜4、ガス拡散層911、及びセパレータ921がそれぞれ製造された後にこれらを組み立ててセル901及び燃料電池スタックを製造しているがこの方法に限定されない。例えば、先に積層膜4を製造し、この積層膜4の両面にガス拡散層製造装置910によりガス拡散層911を形成して複合膜とし、この複合膜とセパレータ921とを交互に積層して複数のセル901を持つ燃料電池スタックが形成されてもよい。
以上のように、本実施形態によれば、装置1によって触媒効果が高い積層膜4を短時間で供給するため、発電効率が向上したセル901(燃料電池)を短時間で効率よく製造することができる。
なお、本発明の技術範囲は、上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態で説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上記の実施形態で説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、上記した実施形態では、被塗布物として電解質膜2、2Aや、剥離用シートF、FAを用いているが、これに限定されず、他のものを被塗布物として用いてもよい。