まず、電子写真における転写工程について考える。転写工程では、転写ローラ等に転写バイアスを印加して、潜像担持体上のトナー像を紙等のメディアに静電的に付着させる。本発明者らの検討によると、磁性トナー粒子内で磁性体が偏って存在(以下、偏在粒子)したり、異形粒子、合一粒子が多く存在したりすると、転写性に劣る傾向がみられた。
偏在粒子等の磁性分散が不均一な粒子は、転写性だけでなく現像性も不十分であることが多い。そのため、例えば、補給の無いレーザービームプリンターにおいて長期使用された場合、偏在粒子、異形粒子、合一粒子が現像器内に蓄積するため、転写性は初期に対して低下する傾向であった。
一方、定着性に関しても改良が求められている。従来から、定着改良のために低融点のワックスや結晶性ポリエステルを添加する手法が用いられてきた。しかし、こうした材料は熱を受けて溶融しつつ表面に染み出すことが多い。長期使用時には、例えば磁性トナー担持体や現像器内に撹拌を具備した系では、それら部材との摺擦によって磁性トナーは局所的に熱を受ける。その際、低融点材料の染み出しに起因して、合一粒子の生成や粒子の異形化が起きることがあり、この場合も上述したように転写性は低下してしまう。
こうした磁性トナーを長期使用した場合の転写性の低下という課題に対して結晶性ポリエステルの構造と、磁性体の組み合わせに関して本発明者らが鋭意検討した結果、特定の組み合わせにおいて上記課題を解決できることを見出し、発明の完成に至った。本発明のトナーに関して、以下説明する。
本発明のトナーは、結着樹脂、結晶性ポリエステルおよび磁性体を含有する磁性トナー粒子を有する磁性トナーであって、
該結着樹脂は、該結着樹脂の質量を基準として、スチレンアクリル系樹脂を70質量%以上含有しており、
該結晶性ポリエステルが、
i)融点(Tm)が55℃以上90℃以下であり、
ii)ポリエステル部位およびビニルポリマー部位を有し、
ii−1)該ポリエステル部位が下記式(1)で示されるユニットを有し、
ii−2)該ビニルポリマー部位の重量平均分子量(Mw)が3000以上40000以下であり、
該磁性体の表面には、下記式(2)で示される部分構造を有するシラン化合物が固定化されて存在しており、
下記式(1)で示されるユニットの溶解性パラメーターと下記式(2)で示される部分構造の溶解性パラメーターとの差が0.80以上1.20以下である、ことを特徴とするものである。
(式
(1)中、mは4〜14の整数、nは6〜16の整数を表す。)
(式
(2)中、Rは炭素数3以上の炭化水素基を表す。)
[結晶性ポリエステル]
本発明において、樹脂が“結晶性”を有するということは、示差走査熱量測定(DSC)において吸熱ピークが観測される樹脂であることを意味する。
本発明で使用する結晶性ポリエステルは、
i)融点が55〜90℃であり、
ii)ポリエステル部位およびビニルポリマー部位を有する。
融点は、現像性、定着性、トナー製造安定性の観点から上記範囲が好ましい。
次に、結晶性ポリエステルのビニルポリマー部位について述べる。本発明の磁性トナーは、スチレンアクリル系樹脂を含有するが、これは、材料分散性や各種トナー製法への適用し易さ、現像や転写性の観点で優れるためである。本発明者らの検討によると、ポリエステルとスチレンアクリル系樹脂は親和性が低く相溶し難いが、結晶性ポリエステルにビニルポリマー部位を導入することで相溶性が大きく向上させることができる。
ポリエステル部位に着目すると、ポリエステルは極性が高いエステル結合を多数有する。一方、磁性体は、式(2)で示される部分構造を有するシラン化合物が表面に固定化されているため、表面にはシロキサン結合が多数存在しているが、シロキサン結合もまた、極性が高い。そのため、極性が近いポリエステルと本発明の磁性体は馴染む傾向であった。
即ち、上記ビニルポリマー部位を有する結晶性ポリエステルは、スチレンアクリル系樹脂とも本発明の磁性体とも親和するため、いわば磁性体に対する分散助剤として機能することで、上述したような磁性体の偏在を抑制できたと考えている。
ただし、磁性体分散に対する効果が見られたのは、結晶性ポリエステルと磁性体が特定の条件を満たす組み合わせの場合だけであった。上記条件とは、まず磁性体と結晶性ポリエステルの溶解性パラメーターの関係、磁性体表面の構造、結晶性ポリエステルのビニルポリマー部位の分子量、そしてポリエステル部位の構造であった。
1つ目として、磁性体と結晶性ポリエステルの溶解性パラメーターの関係について述べる。具体的な範囲は式(1)で示されるユニットの溶解性パラメーターと、式(2)で示される部分構造の溶解性パラメーターとの差が0.80以上1.20以下である。式(1)で示されるユニットとはポリエステル部位の構造を指している。また、ここで言う溶解性パラメーターとは後述するFedorsの式から得られるものであり、一般に溶解性パラメーターは互いの数値の差が小さいほど親和しやすい。しかし、本発明者らの検討によると、結晶性ポリエステルと磁性体の数値が近い方が良いが、ある程度は離れている必要があると分かった。これは、本発明の結晶性ポリエステルはスチレンアクリル樹脂とも磁性体とも親和するため、ポリエステル部位と磁性体が過剰に親和してしまうとビニルポリマーとスチレンアクリルの相互作用を阻害するためだと考えている。
2つ目として、磁性体の表面構造について述べる。磁性体は式(2)で示される部分構造を有するシラン化合物が表面に固定化されている必要がある。シラン化合物の磁性体表面への固定化は疎水性を付与することで樹脂に対する分散性を高める狙いで行っている。Rの炭素数が3以下であると、十分な疎水性が得られ、また、水系媒体中での製造時においてもトナー粒子中に内包させやすくなる。
3つ目として、結晶性ポリエステルのビニルポリマー部位の分子量について述べる。該ビニルポリマー部位は、スチレンアクリル系樹脂に対する分散効果を出すためにはある程度長さが必要である一方で、短すぎると効果を奏しなかった。具体的には重量平均分子量(Mw)は3000〜40000である必要があった。これは、結晶性ポリエステルがスチレンアクリル樹脂に対する親和性が十分高まるだけでなく、定着性にも優れる範囲でもあった。更に、ビニルポリマー部位を結合させることで結晶性ポリエステルの溶融時粘度がやや上がることから、局所的な熱を受けた場合の染み出しが抑制される傾向でもあった。ビニルポリマー部位の分子量は、定着性の観点から、4000〜15000がより好ましい。
4つ目として、本発明の結晶性ポリエステルのポリエステル部位について述べる。該ポリエステル部位は式(1)に示されるユニットを有する。これは、メチレン基を4〜14個(m=4〜14)有するジカルボン酸と、メチレン基を6〜16個(n=6〜16)有するジオールが縮合した構造を繰り返し単位として有することを示している。なお、本発明の結晶性ポリエステルは、上記繰り返し単位由来の構造が結晶性ポリエステルの全ポリエステル部位において、90質量%以上有するものであることが好ましい。式(1)におけるメチレン基の数がそれぞれ規定されている範囲内である場合には、適度な疎水性が得られ、またスチレンアクリル樹脂に対する相溶性が適度となる。
また、転写性や現像性の観点から、m+nは10〜22が好ましい。m、nをこの範囲内で適宜調整することによって、結晶性ポリエステルの融点やポリエステル部位の溶解性パラメーターを制御することができる。
さらに、式(1)におけるm、nの平均値と式(2)におけるRの炭素数との差が、2〜6であることも転写性や現像性の観点で好ましい。
スチレンアクリル樹脂の有無、結晶性ポリエステルの構造や含有量は、下記の方法で確認できる。まず、磁性トナーにテトラヒドロフランを加え、大部分の樹脂成分を溶解させる。ここで、磁性体や外添剤等、樹脂分以外のものは比重差を利用して遠心分離で除去しておく。その後、テトラヒドロフラン可溶成分を核磁気共鳴分光分析(1H−NMR)等の構造解析することで、スチレンアクリル樹脂が含有されているかを知ることができる。溶け残った樹脂分は、結晶性ポリエステルと離型剤を主成分とする混合物であるため、分取型LCにより結晶性ポリエステルを単離した後に核磁気共鳴分光分析(1H−NMR)等の構造解析することで、構造を特定できる。
また、磁性トナー内の結晶性ポリエステルの含有量に関しては、磁性トナーそのものと分取後の結晶性ポリエステルそれぞれの核磁気共鳴分光分析結果を見比べ、結晶性ポリエステル特有のピークの面積比を取ることで得られる。このようにして得られた結晶性ポリエステルの構造から、後述する計算方法によって溶解性パラメーターを得る。
さらに、核磁気共鳴分光分析におけるビニルポリマー量とピーク面積の検量線を別途作成することで、核磁気共鳴分光分析結果から結晶性ポリエステル中のビニルポリマーの含有量を知ることができる。それらの質量比を取ることで、結晶性ポリエステルのポリエステル部位とビニルポリマー部位の質量基準の比が得られる。
なお、溶解性パラメーターは、添加するモノマーの種類と量によって制御することができる。溶解性パラメーターを大きくするためには溶解性パラメーターの大きいモノマー(炭素鎖の短いモノマー)を添加すればよく、溶解性パラメーターを小さくするためには溶解性パラメーターの小さいモノマー(炭素鎖の長いモノマー)を添加すればよい。
上記(1)式で示されるユニットはジカルボン酸とジオールの縮合により得ることができる。
ジカルボン酸としては、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸などを用いることができる。
ジオールとしては、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオールなどを用いることができる。
また、本発明の結晶性ポリエステルのビニルポリマー部位にはスチレン、メチルメタクリレートまたはn−ブチルアクリレートのような公知のビニルモノマーを用いることができる。特に好ましくはスチレンを用いると、スチレンアクリル樹脂に対する相溶部位として有効に働き溶融時の可塑性がより発揮される。
結晶性ポリエステルにおいて、ポリエステル部位とビニルポリマー部位の質量を基準とした割合(ポリエステル部位/ビニルポリマー部位)は、40/60〜95/5が好ましく、より好ましくは40/60〜80/20である。この範囲であると、ポリエステル部位の特性であるシャープメルト性によって十分な低温定着性が得られると共に転写性に優れる。
本発明における結晶性ポリエステルは、ポリエステル部位と、ビニルポリマー部位を有するブロックポリマーであることが好ましい。
結晶性を有するポリエステル部位によって、スチレンアクリル樹脂に対する相溶性と、トナー添加時の結晶性維持を両立する設計が容易になる。また、非晶性であるビニルポリマー部位を有することで、スチレンアクリル樹脂中において結晶性ポリエステルを微分散させることが可能であり、低温定着性がより向上する。また、ブロックポリマーであると、結晶性部位と非晶性部位とが主鎖で繋がる形態をとるため、3次元的な構造をとらないのでスチレンアクリル樹脂に対する分散状態が均一であり、長期使用においても転写性に優れる。
なお、ブロックポリマーの定義としては、線状に連結した複数のブロックで構成されたポリマー(高分子学会 国際純正応用化学連合高分子命名法委員会による高分子科学の基本的術語の用語集)とあり、本発明もその定義に従う。
結晶性ポリエステルの含有量は、結着樹脂100質量部当たり、2.0〜40.0質量部であることが好ましく、より好ましくは2.0〜30.0質量部である。結晶性ポリエステルが2.0質量部以上であると、本発明の効果である定着性や磁性体分散に対する作用が向上する。結晶性ポリエステルが40.0質量部以下であると、結晶性ポリエステルの表面染み出し量が抑えられ、転写性に優れる。
結晶性ポリエステルの重量平均分子量は12000〜45000であることが好ましい。この範囲であれば、磁性トナー粒子内における磁性体の分散効果を発揮しつつ、スチレンアクリル樹脂に対する相溶性に優れるため、転写性および定着性の観点で好ましい。
本発明の結晶性ポリエステルの製造方法は特に限定されないが、ポリエステル部位とビニルポリマー部位を含む為、両者が化学的に結合した構造を得る製法を選択する必要がある。以下に好ましい製法を例示する。
(1)ジカルボン酸とジオールを縮重合することでポリエステルを得る。このとき、エステル化触媒として酸化ジブチル錫、ジオクチル酸錫、チタン(IV)イソプロポキシド等の錫化合物やチタン化合物等の公知のエステル化触媒を使用しても良い。次に、不飽和基を有し、且つカルボキシル基やエステル基のようなエステル交換反応をし得る官能基を有するモノマーと、スチレンや(メタ)アクリル酸の如きビニルモノマーを添加して重合を進めることで目的のポリマーを得る。こうした製法で作成した場合、ビニルポリマー製造時にポリエステル部位同士を架橋する反応の起こるため、一部グラフト構造を取る。そのため、本発明者らはこうした結晶性ポリエステルをグラフトポリマーと呼ぶ。
(2)片末端又は両末端がカルボン酸又はカルボン酸エステルのビニルポリマーを製造し、該ビニルポリマーに対して適宜ジオールおよびジカルボン酸を加えた後に縮重合反応を進め、目的のポリマーを得る。縮重合反応に関しては、(1)と同様に公知のエステル化触媒を使用できる。片末端又は両末端がカルボン酸又はカルボン酸エステルのビニルポリマーを製造に関して、官能基含有開始剤を用いる方法や、官能基含有連鎖移動剤を用いる方法が公知の方法として挙げられる。官能基含有開始剤を用いる方法としては、例えば、Koji Ishizu、「Journal of Polymer SciencePart A: Polymer Chemistry」、(米国)、John Wiley & Sons、1990年、第28巻、1887−1894頁。官能基含有連鎖移動剤を用いる方法としては、例えば、Toshiro Uchida、外 4名、「Journal of Polymer Science Part A: Polymer Chemistry」、(米国)、John Wiley & Sons、2000年、第38巻、3052−3058頁。]。こうした製法で作成したものは、上述したようなブロックポリマーの形態を取る。
(3)(1)と同様にポリエステルを得る。その後、ATRP法に従い、ポリエステル部位とビニルポリマー部位ブロック共重合体を得る。いわゆる精密ラジカル重合を用いることで一分子内にポリエステルとビニルポリマーが1ブロックずつ存在するポリマーを作成することができる。こうした製法で作成したものは、上述したようなブロックポリマーの形態を取る。
不飽和基を有し、且つエステル交換反応をし得る官能基を有するモノマーを例示する。アクリル酸、フマル酸、メタクリル酸、シトラコン酸、マレイン酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、及びこれらのカルボン酸の無水物、アルキル(炭素数1〜2)エステル等の誘導体等が挙げられる。これらのなかでは反応性の観点からアクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸及びこれらのカルボン酸の誘導体が好ましい。
ビニルモノマーとしては、下記のものが例示できる。スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン、ビニルナフタリン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、又は、アクリルアミド等を挙げる事ができる。
結晶性ポリエステルを製造する際に上記したビニルポリマーを重合するために用いられる重合開始剤としては、本発明で用いられるもの以外にも本発明の効果を阻害しない範囲であれば油溶性開始剤及び/又は水溶性開始剤が適宜用いることが可能である。例えば、油溶性開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、の如きアゾ化合物;t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジt−ブチルパーオキシイソフタレート、ジt−ブチルパーオキサイドの如き過酸化物が挙げられる。
水溶性開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチロアミジン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミノジノプロパン)塩酸塩、アゾビス(イソブチルアミジン)塩酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルスルホン酸ナトリウム、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}、塩酸塩硫酸第一鉄又は過酸化水素が挙げられる。
[磁性体]
以下に本発明で使用できる磁性体の形態について述べる。
本発明の磁性体は、その表面に、式(2)で示される部分構造を有するシラン化合物が固定化されて存在するものである。これは、上述したように本発明の結晶性ポリエステルとの相互作用によってトナー内部での分散性を向上させる目的に加え、水系媒体中でトナーを製造する場合に非常に好ましいためである。
式(2)で示される部分構造を有するシラン化合物が固定化された磁性体を得るには、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等を用いて、磁性体表面の処理を行う手法が挙げられる。より好ましく用いられるのはシランカップリング剤であり、一般式(I)で示されるものである。
RmSiYn (I)
[式(I)中、Rはアルコキシ基を示し、mは1から3の整数を示し、Yはアルキル基、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリル基などの官能基を示し、nは1から3の整数を示す。但し、m+n=4である。]
一般式(I)で示されるシランカップリング剤としては、例えば、n−プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。本発明においては、一般式(I)のYが炭素数3以上のアルキル基であるものが好ましく用いることができる。中でも好ましいのは、炭素数3〜10のアルキル基であり、特に好ましくは、炭素数3〜6のアルキル基である。
上記シランカップリング剤を用いる場合、単独で処理する、或いは複数の種類を併用して処理することが可能である。複数の種類を併用する場合、それぞれのカップリング剤で個別に処理してもよいし、同時に処理してもよい。
乾式にて表面処理をする場合、洗浄・ろ過・乾燥した磁性粉体にカップリング剤処理を行う。湿式にて表面処理を行う場合、酸化反応終了後、乾燥させたものを再分散させる、又は酸化反応終了後、洗浄、濾過して得られた酸化鉄体を乾燥せずに別の水系媒体中に再分散させ、カップリング処理を行う。本発明においては、乾式法及び湿式法どちらも適宜選択できる。
磁性体は表面処理剤がある程度、磁性粉体表面に固定化されていることが好ましい。具体的には、磁性体の表面に固定化された、該シラン化合物に由来する炭素量が磁性体基準で0.35〜0.60質量%であると、現像性の観点で好ましい。
本発明の磁性体は、表面処理されていない磁性粉体を製造した後に表面処理を施したものである。磁性体は、四三酸化鉄やγ−酸化鉄などの磁性酸化鉄を主成分とするものであり、リン、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、珪素などの元素を含んでもよい。これら磁性粉体は、窒素吸着法によるBET比表面積が2〜30m2/gであることが好ましく、3〜28m2/gであることがより好ましい。また、モース硬度が5〜7のものが好ましい。磁性粉体の形状としては、多面体、8面体、6面体、球形、針状、鱗片状などがあるが、多面体、8面体、6面体、球形等の異方性の少ないものが、画像濃度を高める上で好ましい。
磁性体は、個数平均粒径が0.10〜0.40μmであることが好ましい。一般に磁性体の粒径は小さい方が着色力は上がるものの磁性体が凝集しやすくなり、トナー中での磁性体の均一分散性が劣るものとなり好ましくない。
なお、磁性体の個数平均粒径は、透過型電子顕微鏡を用いて測定できる。具体的には、エポキシ樹脂中へ観察すべきトナー粒子を十分に分散させた後、温度40℃の雰囲気中で2日間硬化させ得られた硬化物を得る。得られた硬化物をミクロトームにより薄片状のサンプルとして、透過型電子顕微鏡(TEM)において1万倍ないしは4万倍の拡大倍率の写真で視野中の100個の磁性体の粒子径を測定する。そして、磁性体の投影面積に等しい円の相当径を基に、個数平均粒径の算出を行う。また、画像解析装置により粒径を測定することも可能である。
本発明のトナーに用いられる磁性体は、例えば下記の方法で製造することができる。第一鉄塩水溶液に、鉄成分に対して当量又は当量以上の水酸化ナトリウム等のアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。調製した水溶液のpHをpH7以上に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応を行い、磁性酸化鉄粉体の芯となる種晶をまず生成する。
次に、種晶を含むスラリー状の液に前に加えたアルカリの添加量を基準として約1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。液のpHを5から10に維持しながら空気を吹き込みながら水酸化第一鉄の反応を進め、種晶を芯にして磁性酸化鉄粉体を成長させる。この時、任意のpH及び反応温度、撹拌条件を選択することにより、磁性体の形状及び磁気特性をコントロールすることが可能である。酸化反応が進むにつれて液のpHは酸性側に移行していくが、液のpHは5未満にしない方が好ましい。このようにして得られた磁性体を定法によりろ過、洗浄、乾燥することにより磁性体を得ることができる。
本発明では、磁性体以外に他の着色剤を併用しても良い。併用し得る着色剤としては、上記した公知の染料及び顔料の他、磁性又は非磁性の無機化合物が挙げられる。具体的には、コバルト、ニッケルなどの強磁性金属粒子、又はこれらにクロム、マンガン、銅、亜鉛、アルミニウム、希土類元素などを加えた合金。ヘマタイトなどの粒子、チタンブラック、ニグロシン染料/顔料、カーボンブラック、フタロシアニン等が挙げられる。これらもまた、表面を処理して用いることが好ましい。
本発明の磁性トナー粒子は、結着樹脂100質量部当たり、30.0〜80.0質量部の磁性体を含有することが、転写性や現像性に優れるため好ましい。
なお、磁性トナー中の磁性体の含有量の測定は、パーキンエルマー社製熱分析装置、TGA7を用いて測定することができる。測定方法は以下の通りである。窒素雰囲気下において昇温速度25℃/分で常温から900℃までトナーを加熱する。100℃から750℃まで間の減量質量%を結着樹脂量とし、残存質量を近似的に磁性体量とする。
シラン化合物の構造は例えば下記のようにして確認することができる。
まず、磁性体をスチレン中に分散および撹拌し、表面に固定化されていないシラン化合物を洗い流す。洗浄した磁性体を乾燥した後、塩酸中に数日間放置することでマグネタイトを溶解させる。残ったシラン化合物について核磁気共鳴分光分析(1H−NMR、29Si−NMR)等の構造解析することで、シラン化合物の構造を特定することができ、式(2)におけるRの特定および溶解性パラメーター値の算出ができる。
本発明の磁性トナーは、結晶性ポリエステルと磁性体の相互作用を制御するために、両者の含有量の割合を調整することも好ましい。具体的には、磁性体と結晶性ポリエステルの含有量が、質量を基準として、磁性体/結晶性ポリエステル=95/5〜75/25であると、現像性や転写性の観点で好ましい。
磁性体の含有量は上述したように、パーキンエルマー社製熱分析装置、TGA7を用いて測定することができる。また、結晶性ポリエステルの含有量に関しても、上述したように分取型LCによる単離と核磁気共鳴分光分析を組み合わせて得ることができる。これらの数値を用いて、質量基準の比率を得る。
[結着樹脂]
本発明のトナーに用いられる結着樹脂は、結着樹脂全量に対してスチレンアクリル系樹脂を70質量%以上含有する。より好ましくは80質量%以上である。
スチレンアクリル系樹脂は、スチレンと、アクリル系モノマー(アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル)との共重合体であり、例えば、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体等を例示することができる。
また、結着樹脂はその他の公知の樹脂を組み合わせて使用することもできる。その他の樹脂としては、ポリスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸樹脂が挙げられる。
上記スチレンアクリル系樹脂を形成する重合性単量体としては、以下のものが例示できる。スチレン系重合性単量体としては、スチレン;α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンの如きスチレン系重合性単量体が挙げられる。アクリル系重合性単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートの如きアクリル系重合性単量体が挙げられる。メタクリル系重合性単量体としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレートの如きメタクリル系重合性単量体が挙げられる。
なお、スチレンアクリル系樹脂の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
本発明によって製造されるトナーの重量平均粒径(D4)は3.0〜12.0μmであることが好ましく、より好ましくは4.0〜10.0μmである。上記の範囲であると良好な流動性が得られ、潜像に忠実に現像することができる。
本発明のトナーは、公知のいずれの方法によっても製造することが可能である。まず、粉砕法により製造する場合は、例えば、結着樹脂、着色剤、エステルワックス、低融点物質、荷電制御剤等のトナーとして必要な成分及びその他の添加剤等をヘンシェルミキサ、ボールミル等の混合器により十分混合する。その後、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融混練してトナー材料を分散又は溶解させ、冷却固化、粉砕後、分級、必要に応じて表面処理を行ってトナー粒子を得ることができる。分級及び表面処理の順序はどちらが先でもよい。分級工程においては生産効率上、多分割分級機を用いることが好ましい。
粉砕工程は、機械衝撃式、ジェット式等の公知の粉砕装置を用いた方法により行うことができる。また、更に熱をかけて粉砕したり、補助的に機械的衝撃を加える処理を行ったりすることが好ましい。また、微粉砕(必要に応じて分級)されたトナー粒子を熱水中に分散させる湯浴法、熱気流中を通過させる方法などを用いても良い。
機械的衝撃力を加える手段としては、例えば川崎重工社製のクリプトロンシステムやターボ工業社製のターボミル等の機械衝撃式粉砕機を用いる方法が挙げられる。また、ホソカワミクロン社製のメカノフージョンシステムや奈良機械製作所製のハイブリダイゼーションシステム等の装置のように、高速回転する羽根によりトナーをケーシングの内側に遠心力により押しつけ、圧縮力、摩擦力等の力によりトナーに機械的衝撃力を加える方法が挙げられる。
本発明に係るトナー粒子を製造するためには、上述のように粉砕法によって製造することも可能であるが、懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化凝集法のように水系媒体中で重合体組成物を造粒することによってトナー粒子を得る製造方法がより適している。
以下に本発明に用いることができるトナー粒子の製造方法の中で最も好適な懸濁重合法を用いて、トナー粒子の製造方法を説明する。
前述のスチレンアクリル樹脂を生成する重合性単量体、結晶性樹脂、ワックス、および必要に応じて、着色剤、離型剤などその他の添加物を、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機のような分散機に依って均一に溶解または分散させる。これに重合開始剤を溶解し、重合性単量体組成物を調製する。次に、該重合性単量体組成物を分散安定剤を含有した水系媒体中に投入して重合性単量体組成物液滴を造粒し、ついで重合を行うことによってトナー粒子を製造する。
重合開始剤は、重合性単量体中に他の添加物を添加するときに同時に加えてもよいし、水系媒体中に懸濁する直前に混合してもよい。また、造粒中または造粒直後、重合反応を開始する前に重合開始剤を加えることもできる。
懸濁重合法のように水系媒体を用いる重合法の場合には、上記重合性単量体組成物中に極性樹脂を添加することが好ましい。極性樹脂を添加することにより、結晶性樹脂やワックスの内包化が促進される。
水系媒体に懸濁した重合性単量体組成物液滴中に極性樹脂が存在する場合、水に対する親和性の違いから、極性樹脂が水系媒体と重合性単量体組成物液滴との界面付近に移行しやすいため、トナー粒子の表面に極性樹脂が偏在することになる。その結果、トナー粒子はコア−シェル構造を形成する。
極性樹脂としては、ポリエステル系樹脂またはカルボキシル含有スチレン系樹脂が好ましい。これらの極性樹脂がトナー粒子の表面に偏在してシェルを形成した際には、極性樹脂自身のもつ潤滑性を期待することもできる。
ポリエステル系樹脂としては、下記に挙げる酸成分単量体とアルコール成分単量体とを縮合重合した樹脂を用いることができる。
酸成分単量体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、しょうのう酸、シクロヘキサンジカルボン酸、およびトリメリット酸が挙げられる。
アルコール成分単量体としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンのアルキレングリコール類およびポリアルキレングリコール類、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトールが挙げられる。
カルボキシル基含有スチレン系樹脂としては、スチレンのアクリル酸共重合体、スチレンのメタクリル酸共重合体、スチレンのマレイン酸共重合体などが好ましく、特にスチレン−アクリル酸エステル−アクリル酸系共重合体が帯電量を制御しやすく好ましい。
また、カルボキシル基含有スチレン系樹脂は1級または2級の水酸基を有するモノマーを含有していることがより好ましい。具体的な重合体組成物としては、スチレン−2−ヒドロキシエチルメタクリレート−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−n−ブチルアクリレート−2−ヒドロキシエチルメタクリレート−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−2−ヒドロキシエチルメタクリレート−メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体などを挙げることができる。1級または2級の水酸基を有するモノマーを含有した樹脂は極性が大きく、長期放置安定性がより良好となる。
極性樹脂の含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して1.0〜20.0質量部が好ましく、2.0〜10.0質量部がより好ましい。
本発明には公知のワックスを用いてもよい。具体的には、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムなどの石油系ワックスおよびその誘導体、モンタンワックスおよびその誘導体、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックスおよびその誘導体、ポリエチレンに代表されるポリオレフィンワックスおよびその誘導体、カルナバワックス、キャンデリラワックスなどの天然ワックスおよびそれらの誘導体が挙げられ、誘導体には酸化物や、ビニルモノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物も含まれる。また、高級脂肪族アルコールなどのアルコール;ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸またはその化合物;酸アミド、エステル、ケトン、硬化ヒマシ油およびその誘導体、植物ワックス、動物ワックスが挙げられる。これらは単独、もしくは併用して用いることができる。
これらの中でも、ポリオレフィン、フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックスまたは石油系ワックスを使用した場合に、現像性や転写性の改善効果がさらに高くなる。なお、これらのワックス成分には、トナーの帯電性に影響を与えない範囲で酸化防止剤が添加されていてもよい。また、これらのワックス成分は、結着樹脂100.0質量部に対して1.0〜30.0質量部使用するのが好ましい。
本発明に用いられるワックス成分の融点は30〜120℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは60〜100℃の範囲であることが好ましい。
上記のような熱特性を呈するワックス成分を用いることにより、離型効果が効率良く発現され、十分な定着領域が確保される。
懸濁重合法を用いてトナー粒子を得る場合には、着色剤の持つ重合阻害性や水相移行性を考慮し、重合阻害のない物質による疎水化処理を施した着色剤を用いることが好ましい。
また、必要に応じて荷電制御剤を用いることもできる。荷電制御剤としては公知のものが利用できるが、摩擦帯電速度が速く、かつ一定の摩擦帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。さらに、トナー粒子を懸濁重合法により製造する場合には、重合阻害性が低く、水系媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が求められる。
荷電制御剤としてはトナーを負荷電性に制御するものと正荷電性に制御するものがある。トナーを負荷電性に制御するものとしては、例えば以下のものが挙げられる。モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸およびダイカルボン酸系の金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノおよびポリカルボン酸およびその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールのようなフェノール誘導体類、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、および、荷電制御樹脂が挙げられる。
トナーを正荷電性に制御する荷電制御剤としては、例えば以下のものが挙げられる。グアニジン化合物;イミダゾール化合物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートのような4級アンモニウム塩、および、これらの類似体であるホスホニウム塩のようなオニウム塩およびこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料およびこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、および、フェロシアン化物);高級脂肪酸の金属塩;荷電制御樹脂。
上記の荷電制御剤は、単独または2種類以上組み合わせて使用することができる。
これら荷電制御剤の中でも、含金属サリチル酸系化合物が好ましく、特にその金属がアルミニウムもしくはジルコニウムであるものが好ましい。
荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100.0質量部に対して0.01〜20.0質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10.0質量部である。
また、荷電制御樹脂としては、スルホン酸基、スルホン酸塩基またはスルホン酸エステル基を有する重合体または共重合体を用いることが好ましい。スルホン酸基、スルホン酸塩基またはスルホン酸エステル基を有する重合体としては、特にスルホン酸基含有アクリルアミド系モノマーまたはスルホン酸基含有メタクリルアミド系モノマーを共重合比で2質量%以上含有することが好ましい。より好ましくは共重合比で5質量%以上含有することである。荷電制御樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が35〜90℃、ピーク分子量(Mp)が10,000〜30,000、重量平均分子量(Mn)が25,000〜50,000であるものが好ましい。この荷電制御樹脂を用いた場合、トナー粒子に求められる熱特性に影響を及ぼすことなく、好ましい摩擦帯電特性を付与することができる。さらに、荷電制御樹脂がスルホン酸基を含有しているため、着色剤の分散液中の荷電制御樹脂自身の分散性、および、着色剤の分散性が向上し、着色力、透明性、および、摩擦帯電特性をより向上させることができる。
重合性単量体を重合させるために、重合開始剤を用いてもよい。本発明に用いることができる重合開始剤としては、有機過酸化物系開始剤やアゾ系重合開始剤が挙げられる。有機過酸化物系開始剤としては、以下のものが挙げられる。ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ−α−クミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ブチルパーオキシマレイン酸、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、メチルエチルケトンパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、および、tert−ブチル−パーオキシピバレートなどである。
アゾ系重合開始剤としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、および、アゾビスメチルブチロニトリルなどが挙げられる。
また、重合開始剤として、酸化性物質と還元性物質とを組み合わせたレドックス系開始剤を用いることもできる。酸化性物質としては、過酸化水素、過硫酸塩(ナトリウム塩、カリウム塩、および、アンモニウム塩)の無機過酸化物、および、4価のセリウム塩の酸化性金属塩が挙げられる。還元性物質としては還元性金属塩(2価の鉄塩、1価の銅塩、および、3価のクロム塩)、アンモニア、低級アミン(メチルアミン、および、エチルアミンのような炭素数1〜6程度のアミン)、ヒドロキシルアミンのようなアミノ化合物、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムハイドロサルファイト、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、および、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートの還元性硫黄化合物、低級アルコール(炭素数1〜6)、アスコルビン酸またはその塩、および低級アルデヒド(炭素数1〜6)が挙げられる。
重合開始剤は、10時間半減期温度を参考に選択され、単独または混合して利用される。前記重合開始剤の添加量は、目的とする重合度により変化するが、一般的には重合性単量体100.0質量部に対し0.5〜20.0質量部が添加される。
また、重合度を制御するため公知の連鎖移動剤または重合禁止剤をさらに添加し用いることも可能である。
重合性単量体を重合させる場合に各種架橋剤を用いることもできる。架橋剤としては、ジビニルベンゼン、4,4’−ジビニルビフェニル、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートのような多官能性化合物が挙げられる。
水系媒体を調製するときに使用する分散安定剤としては、公知の無機化合物の分散安定剤、および、有機化合物の分散安定剤を用いることができる。無機化合物の分散安定剤としては、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、およびアルミナが挙げられる。一方、有機化合物の分散安定剤としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、ポリアクリル酸およびその塩、およびデンプンが挙げられる。これら分散安定剤の使用量は、重合性単量体100.0質量部に対して0.2〜20.0質量部であることが好ましい。
無機化合物の分散安定剤を用いる場合、市販のものをそのまま用いてもよいが、より細かい粒径の分散安定剤を得るために、水系媒体中で該無機化合物を生成させてもよい。例えば、リン酸三カルシウムの場合、高撹拌下において、リン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合することで得られる。
トナー粒子には、トナーへの各種特性を付与するために外添剤を外添してもよい。トナーの流動性を向上させるための外添剤としては、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、およびそれらの複酸化物微粒子のような無機微粒子が挙げられる。無機微粒子の中でもシリカ微粒子および酸化チタン微粒子が好ましい。例えば、トナー粒子に無機微粒子を外添混合してトナー粒子の表面に付着させることで、本発明のトナーを得ることができる。無機微粒子の外添は公知の方法で行うことができ、例えばFMミキサ(日本コークス工業(株))を用いて混合処理を行う方法が挙げられる。
シリカ微粒子としては、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成された乾式シリカまたはヒュームドシリカ、および水ガラスから製造される湿式シリカが挙げられる。無機微粒子としては、表面およびシリカ微粒子の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、(SO3)2−の少ない乾式シリカの方が好ましい。また、乾式シリカの製造工程において、塩化アルミニウム、塩化チタン他のような金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって生成する、シリカと他の金属酸化物の複合微粒子であってもよい。
無機微粒子は、その表面を疎水化処理されたものを用いる方が、トナーの摩擦帯電量の調整、環境安定性の向上、および、高温高湿下での流動性の向上を達成することができるため好ましい。トナーに外添された無機微粒子が吸湿すると、トナーの摩擦帯電量、および、流動性が低下し、現像性や転写性の低下が生じやすくなる。
無機微粒子を疎水化処理するための処理剤としては、未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、および有機チタン化合物が挙げられる。その中でも、シリコーンオイルが好ましい。これらの処理剤は単独で用いてもまたは併用してもよい。
無機微粒子の総添加量は、トナー粒子100.0質量部に対して1.0〜5.0質量部であることが好ましく、より好ましくは1.0〜2.5質量部である。外添剤は、トナーに添加したときの耐久性の点から、トナー粒子の平均粒径の1/10以下の粒径であることが好ましい。
次に、本発明のトナーを好適に用いることのできる画像形成装置の一例を図1に沿って具体的に説明する。図1において、100は感光ドラムであり、その周囲に一次帯電ローラー117、現像スリーブ102を有する現像器140、転写帯電ローラー114、クリーナー116、レジスタローラー124等が設けられている。感光ドラム100は一次帯電ローラー117によって例えば−600Vに帯電される(印加電圧は例えば交流電圧1.85kVpp、直流電圧−620Vdc)。そして、レーザー発生装置121によりレーザー光123を感光体100に照射することによって露光が行われ、目的の画像に対応した静電潜像が形成される。感光ドラム100上の静電潜像は現像器140によって一成分トナーで現像されてトナー画像を得、トナー画像は転写材を介して感光体に当接された転写ローラー114により転写材上へ転写される。トナー画像を載せた転写材は搬送ベルト125等により定着器126へ運ばれ転写材上に定着される。また、一部感光体上に残されたトナーはクリーナー116によりクリーニングされる。
なお、ここでは磁性一成分ジャンピング現像の画像形成装置を示したが、ジャンピング現像又は接触現像のいずれの方法に用いられるものであってもよい。
以下、本発明に係る各種物性の測定方法について説明する。
<溶解性パラメーター(SP値)の計算方法>
本発明におけるSP値は、以下のFedorsの式(4)を用いて求めた。ここでのΔei、および、Δviの値は「コーティングの基礎科学」54〜57頁、1986年(槇書店)の表3−9による原子および原子団の蒸発エネルギーとモル体積(25℃)を参考にした。
δi=[Ev/V]1/2=[Δei/Δvi]1/2 式(4)
Ev:蒸発エネルギー
V:モル体積
Δei:i成分の原子または原子団の蒸発エネルギー
Δvi:i成分の原子または原子団のモル体積
例えば、ヘキサンジオールは、原子団(−OH)×2+(−CH2)×6から構成され、計算SP値は下記式で求められる。
δi=[Δei/Δvi]1/2=[{(5220)×2+(1180)×6}/{(13)×2+(16.1)×6}]1/2
これより、SP値(δi)は11.95となる。
<分子量の測定方法>
結晶性ポリエステルの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、結晶性ポリエステルを室温でテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マイショリディスク」(東ソー(株)製)で濾過してサンプル溶液を得る。サンプル溶液をTHFに可溶な成分の濃度が0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:高速GPC装置「HLC−8220GPC」(東ソー(株)製)
カラム:LF−604の2連
溶離液:THF
流速:0.6ml/min
オーブン温度:40℃
試料注入量:0.020ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダードポリスチレンF−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソー(株)製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
なお、結晶性ポリエステルのビニルポリマー部位の分子量の測定は、結晶性ポリエステルのポリエステル部位を加水分解させて測定を行う。
具体的な方法は、結晶性ポリエステル30mgにジオキサン5ml、10質量%の水酸化カリウム水溶液1mlを加え、温度70℃で6時間振とうさせてポリエステル部位を加水分解させる。その後、溶液を乾燥させて、ビニルポリマー部位の分子量の測定用試料を作成する。その後の操作は、結晶性ポリエステルの分子量の測定と同様に行う。
<結晶性ポリエステルの融点の測定方法>
結晶性ポリエステルの融点は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、結晶性ポリエステル5mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。測定においては、一度200℃まで昇温させ、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程での温度30〜200℃の範囲におけるDSC曲線の最大の吸熱ピークを、本発明の結晶性ポリエステルのDSC測定における融点とする。
<磁性体の表面に固定化された、シラン化合物由来の炭素量の測定方法>
本発明の磁性トナーに用いる磁性体は、炭化水素基を有するシラン化合物によって表面処理されている。処理されたシラン化合物のうち、表面に固定化されていない成分は溶剤による洗浄処理により除去することが出来る。そのため、洗浄処理後の磁性体が含む炭素量を正確に測定することによって、磁性体表面に固定化されたシラン化合物量を知ることができる。
まず、磁性体をスチレンで洗浄する。50ml容量のガラス製バイアルに、スチレン20g及び磁性体1.0gを仕込み、ガラス製バイアルをいわき産業社製「KM Shaker」(model:V.SX)にセットする。次に、speedを50に設定して1時間振とうして表面処理がされた磁性体に含まれる処理剤をスチレンに溶出させる。その後、磁性体とスチレンとを分離し、真空乾燥機にて磁性体を十分に乾燥させる。
乾燥した磁性体について、磁性体をHORIBA製炭素・硫黄分析装置(EMIA−320V)を用いて単位重量あたりの炭素量を測定する。測定にあたっては、例えば、EMIA−320V測定時のサンプル仕込み量を0.20gとし、助燃剤としてタングステンとスズとの混合物を用いることができる。
本発明では、洗浄後の炭素量を磁性体表面に固定化されたシラン化合物由来の炭素量とした。
<重量平均粒子径(D4)の測定方法>
トナーの重量平均粒子径(D4)、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。尚、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒子径(D4)を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒子径(D4)である。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。なお、実施例および比較例の部数および%は、特に断りが無い場合すべて質量基準である。
<ビニルポリマー1の製造>
撹拌機、温度計、窒素導入管、および減圧装置を備えた反応容器に、キシレン100.0質量部を窒素置換しながら加熱し、液温140℃で還流させた。該溶液にスチレン100.0質量部、Dimethyl−2,2’−azobis(2−methylpropionate)10.0質量部を混合したものを3時間かけて滴下し、滴下終了後、溶液を3時間撹拌した。その後、160℃、1kPaにて、キシレンおよび残存スチレンを留去しビニルポリマー1を得た。ビニルポリマー1のMwは6000であった。
<ビニルポリマー3の製造>
表1に示すような製造条件に変更すること以外はビニルポリマー1の製造と同様にしてビニルポリマー3を得た。得られたビニルポリマー3の物性を表1に示す。
<結晶性ポリエステル1の製造>
撹拌機、温度計、窒素導入管、脱水管、および減圧装置を備えた反応容器に下記を投入し、窒素雰囲気下、160℃で5時間反応させた。
・ビニルポリマー1 159.1質量部
・キシレン 127.3質量部
・1,10−デカンジオール 105.3質量部
・チタン(IV)イソプロポキシド 0.56質量部
その後、セバシン酸100.0質量部を加えて160℃で5時間、180℃で4時間反応させた。さらに180℃、1kPaで所望のMwとなるまで反応させてブロックポリマーである結晶性ポリエステル1を得た。得られた結晶性ポリエステル1の物性を表2に示す。
<結晶性ポリエステル3〜6、9、15、16、21の製造>
表2に示すような原料および製造条件に変更すること以外は結晶性ポリエステル1の製造と同様にして、結晶性ポリエステル3〜6、9、15、16、21を得た。得られた結晶性ポリエステル3〜6、9、15、16、21の物性を表2に示す。
<磁性酸化鉄の製造>
Fe2+を2.0mol/L含有する硫酸鉄第一水溶液50リットルに、4.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液55リットルを混合撹拌し、水酸化第一鉄コロイドを含む第一鉄塩水溶液を得た。この水溶液を85℃に保ち、20L/minで空気を吹き込みながら酸化反応を行い、コア粒子を含むスラリーを得た。
得られたスラリーをフィルタープレスにてろ過・洗浄した後、コア粒子を水中に再度分散させ、リスラリーした。このリスラリー液に、コア粒子100部あたり珪素換算で0.20質量%となる珪酸ソーダを添加し、スラリー液のpHを6.0に調整し、撹拌することで珪素リッチな表面を有する磁性酸化鉄粒子を得た。得られたスラリーをフィルタープレスにてろ過、洗浄、更にイオン交換水にてリスラリーを行った。このリスラリー液(固形分50g/L)に500g(磁性酸化鉄に対して10質量%)のイオン交換樹脂SK110(三菱化学製)を投入し、2時間撹拌してイオン交換を行った。その後、イオン交換樹脂をメッシュでろ過して除去し、フィルタープレスにてろ過・洗浄し、乾燥・解砕して個数平均径が0.23μmの磁性酸化鉄を得た。
<シラン化合物1の製造>
iso−ブチルトリメトキシシラン30部をイオン交換水70部に撹拌しながら滴下した。その後、この水溶液をpH5.5、温度40℃に保持し、ディスパー翼を用いて、周速0.46m/sで120分間分散させて加水分解を行った。その後、水溶液のpHを7.0とし、10℃に冷却して加水分解反応を停止させた。こうしてシラン化合物1を含有する水溶液を得た。
<シラン化合物2の製造>
iso−プロピルトリメトキシシラン30部をイオン交換水70部に撹拌しながら滴下した。その後、この水溶液をpH4.2、温度25℃に保持し、ディスパー翼を用いて、周速0.46m/sで60分間分散させて加水分解を行った。その後、水溶液のpHを7.0とし、10℃に冷却して加水分解反応を停止させた。こうしてシラン化合物2を含有する水溶液を得た。
<シラン化合物3の製造>
n−デシルトリメトキシシラン30部をイオン交換水70部に撹拌しながら滴下した。その後、この水溶液をpH6.1、温度53℃に保持し、ディスパー翼を用いて、周速0.46m/sで360分間分散させて加水分解を行った。その後、水溶液のpHを7.0とし、10℃に冷却して加水分解反応を停止させた。こうしてシラン化合物3を含有する水溶液を得た。
<シラン化合物4の製造>
n−ヘキシルトリメトキシシラン30部をイオン交換水70部に撹拌しながら滴下した。その後、この水溶液をpH5.7、温度45℃に保持し、ディスパー翼を用いて、周速0.46m/sで180分間分散させて加水分解を行った。その後、水溶液のpHを7.0とし、10℃に冷却して加水分解反応を停止させた。こうしてシラン化合物4を含有する水溶液を得た。
<シラン化合物5の製造>
エチルトリメトキシシラン30部をイオン交換水70部に撹拌しながら滴下した。その後、この水溶液をpH3.3、温度10℃に保持し、ディスパー翼を用いて、周速0.46m/sで30分間分散させて加水分解を行った。その後、水溶液のpHを7.0として加水分解反応を停止させた。こうしてシラン化合物5を含有する水溶液を得た。
<磁性体1の製造>
上記磁性酸化鉄の100部をハイスピードミキサー(深江パウテック社製 LFS−2型)に入れ、回転数2000rpmで撹拌しながら、シラン化合物1(8.0部)を2分間かけて滴下した。その後5分間混合・撹拌した。次いで、シラン化合物の固着性を高めるために、40℃で1時間乾燥し、水分を減少させた後に、混合物を110℃で3時間乾燥し、シラン化合物の縮合反応を進行させた。その後、解砕し、目開き100μmの篩を通して磁性体1を得た。磁性体1の物性を表3に示す。
<磁性体4、5の製造>
磁性体1の製造において、使用するシラン化合物を表3に示すように変更すること以外は同様にして、磁性体4、5を得た。磁性体4、5の物性を表3に示す。
<磁性トナー粒子1の製造>
イオン交換水720部に0.1モル/L−Na3PO4水溶液450部を投入して60℃に加温した後、1.0モル/L−CaCl2水溶液67.7部を添加して、分散安定剤を含む水系媒体を得た。
・スチレン 79.0部
・n−ブチルアクリレート 21.0部
・ジビニルベンゼン 0.6部
・モノアゾ染料の鉄錯体(T−77:保土ヶ谷化学社製) 1.5部
・磁性体1 90.0部
・非晶性飽和ポリエステル樹脂 5.0部
(ビスフェノールAのエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド付加物とテレフタル酸との縮合反応により得られる非晶性飽和ポリエステル樹脂;Mw=9500、酸価=2.2mgKOH/g、ガラス転移温度=68℃)
上記処方をアトライター(三井三池化工機株式会社製)を用いて均一に分散混合して単量体組成物を得た。この単量体組成物を63℃に加温し、そこに表2記載の結晶性ポリエステル1を10質量部、パラフィンワックス(日本精蝋株式会社製HNP−9)15質量部を添加混合し、溶解した。
上記水系媒体中に、結晶性ポリエステル1およびパラフィンワックスを溶解させた単量体組成物を投入し、60℃、N2雰囲気下においてT.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)にて12000rpmで10分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ重合開始剤t−ブチルパーオキシピバレート6.0質量部を投入し、70℃に昇温して4時間反応させた。反応終了後、懸濁液を100℃まで昇温させ、2時間保持した。その後、冷却工程として、懸濁液に氷を投入し、40℃/分の速度で懸濁液を100℃から50℃まで冷却した後、常温まで放冷した。その後、懸濁液に塩酸を加えて十分洗浄することで分散安定剤を溶解させ、濾過・乾燥して磁性トナー粒子1を得た。製法および処方を表4に示す。
<磁性トナー粒子3〜6、10、20、21、27の製造>
表4に示すように使用する材料と添加部数を変更し、重量平均粒径(D4)が6.0〜9.0μmとなるように分散安定剤量を調整すること以外は磁性トナー粒子1の製造と同様にして、磁性トナー粒子3〜6、10、20、21、27を得た。得られた磁性トナー粒子の物性を表4に示す。
<磁性トナー粒子29の製造>
下記材料を予め混合物し、二軸エクストルーダーで溶融混練し、冷却した混練物をハンマーミルで粗粉砕し、得られた微粉砕物を分級して磁性トナー粒子29を得た。
・結晶性ポリエステル1 100.0質量部
・磁性体1 100.0質量部
・モノアゾ染料の鉄錯体(T−77:保土ヶ谷化学社製) 1.5質量部
・パラフィンワックス(日本精蝋株式会社製HNP−9) 5.0質量部
磁性トナー粒子29の物性を表4に示す。
<磁性トナー1、3〜6、10、比較用磁性トナー1、2、8、10の製造>
100質量部の磁性トナー粒子1と、BET比表面積300m2/gの(一次粒径8nm)の乾式シリカ微粒子にヘキサメチルジシラザン処理を行った疎水性シリカ微粉体0.8質量部とを、ヘンシェルミキサー(三井三池化工機株式会社製)を用いて混合して、磁性トナー1を得た。
また、磁性トナー粒子1を磁性トナー粒子3〜6、10、20、21、27とすること以外は同様にして、磁性トナー3〜6、10、および比較用磁性トナー1、2、8、10を得た。得られた磁性トナーはいずれも重量平均粒径(D4)が6.0〜9.0μmであり、DSC測定において、結晶性ポリエステルに由来する吸熱ピークが観察された。
<実施例1、3〜6、10、比較例1、2、8、10>
得られたトナー1、3〜6、10、比較用磁性トナー1、2、8、10を用いて、以下の評価を行った。評価結果を表5に示す。
[初期現像性]
画像形成装置としては、トナーを充填したLP3410用のカートリッジを装着したLBP3410(モノクロレーザービームプリンター、キヤノン株式会社製)を用いた。初期現像性の評価においては、画像形成装置を、常温常湿環境下(温度23℃湿度60%)にて1日放置したものを用いた。記録紙としては、A4のカラーレーザーコピー用紙(キヤノン製、80g/m2)を用いた。
常温常湿環境下でベタ画像を連続で5枚出力し、得られたベタ画像5枚の画像濃度を、マクベス反射濃度計(マクベス社製)を用いて測定した。それらの最悪値をベタ濃度とし、ベタ濃度が高いほど、現像性が良好であるとして評価を行った。評価結果を表5に記載する。
[定着性]
画像形成装置としては、トナーを充填したLP3410用のカートリッジを装着したLBP3410を用いた。また、現像バイアス調整が可能になるよう改造した。定着性の評価においては、画像形成装置を、低温低湿環境(温度15℃湿度10%)下に一日放置したものを用いた。低温低湿環境は、トナーが冷え切った状態になるため、定着に対してより厳しい環境である。記録紙としては、低温低湿環境下に一日放置したFOX RIVER BOND紙(110g/m2)を用いた。この記録紙は、比較的表面の凹凸が大きい厚紙であり、印字画像の擦れの評価においては厳しい紙である。評価手順を以下に示す。
まず、低温低湿環境下に放置した画像形成装置を用いて、低温低湿環境下において、ベタ画像を印字した。得られたベタ画像の画像濃度をマクベス反射濃度計(マクベス社製)を用いて測定し、その後、画像濃度が1.4以上、1.45以下となるように現像バイアスを調整した。さらに低温低湿環境において1時間放置した後に、調整したバイアス設定でベタ画像を1枚出力した。シルボン紙に55g/cm2の加重をかけて、得られたベタ画像を、2回摺擦した。この摺擦後のベタ画像と、摺擦に用いたシルボン紙を目視で観察し、下記の基準で評価した。
A:摺擦後でも画像濃度の均一性を保っている。
B:摺擦後でも画像濃度の均一性を保っているが、シルボン紙が僅かに汚れている。
C:摺擦後でも画像濃度の均一性を保っているが、シルボン紙に明確な汚れがある。
D:摺擦後のベタ画像に、光にかざすと分かる程度の濃度が薄い部分(不均一な部分)がある。
E:摺擦後のベタ画像に、明確に濃度が薄い部分が見られる。
[転写性評価]
画像形成装置としては、トナーを充填したLP3410用のカートリッジを装着したLBP3410を用いた。転写性の評価においては、画像形成装置を、高温高湿環境(温度32.5℃湿度82.5%)下に一日放置したものを用いた。高温高湿環境は、紙が多量に水分を含むために転写バイアスが掛りにくく、転写不良が生じやすいため、転写に対してより厳しい環境である。また、記録紙としては、高湿高温環境下に一日放置したA4のカラーレーザーコピー用紙(キヤノン製、80g/m2)を用いた。
上記画像形成装置でベタ黒画像を5枚出力し、下記評価基準によって目視でランクをつけ、転写不良に伴う濃度薄が発生した部分については、マクベス反射濃度計により未発生部分と発生部分の濃度差を比較した。
その後、印字率1%の横線画像を間欠モードで15000枚出力し、再び上記転写性の評価を行った。磁性トナーを耐久評価した場合、磁性体の分散状態に関して粒子間で差があるため、現像時に消費されるトナーには偏りがある。本発明者らの検討によると、耐久後には、磁性体の分散がトナー粒子内で不均一なもの(粒子内での凝集等が見られる)が残り易いため、耐久後の転写性を見ることで上述したような磁性体の分散状態を厳しく評価することができる。
A:5枚全て均一なベタ画像が得られており、転写不良は認められない。
B:5枚中、1か所において軽微な転写抜け(濃度差0.1以下)部分が認められる。
C:5枚中、2〜5か所において、軽微な転写抜け(濃度差0.1以下)部分が認められるが、濃度差0.1を越える転写抜けは発生していない。
D:5枚中、6か所以上において、軽微な転写抜け(濃度差0.1以下)部分が認められるが、濃度差0.1を越える転写抜けは発生していない。
E:濃度差0.1を越える転写抜けが発生している。