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JP6354339B2 - ポリアリーレンスルフィドの製造方法 - Google Patents

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JP6354339B2 JP2014112413A JP2014112413A JP6354339B2 JP 6354339 B2 JP6354339 B2 JP 6354339B2 JP 2014112413 A JP2014112413 A JP 2014112413A JP 2014112413 A JP2014112413 A JP 2014112413A JP 6354339 B2 JP6354339 B2 JP 6354339B2
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  • Polymers With Sulfur, Phosphorus Or Metals In The Main Chain (AREA)

Description

本発明はポリアリーレンスルフィドの製造方法に関するものであり、さらに詳しくは環式ポリアリーレンスルフィドを遷移金属化合物存在下で加熱することを特徴とするポリアリーレンスルフィドの製造方法に関するものである。
ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略する場合もある)に代表されるポリアリーレンスルフィドは優れた耐熱性、バリア性、耐薬品性、電気絶縁性、耐湿熱性、難燃性などエンジニアリングプラスチックとして好適な性質を有する樹脂である。また、射出成形、押出成形により各種成形部品、フィルム、シート、繊維などに成形可能であり、各種電気・電子部品、機械部品及び自動車部品など耐熱性、耐薬品性の要求される分野に幅広く用いられている。
このポリアリーレンスルフィドの具体的な製造方法として、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機アミド溶媒中で硫化ナトリウムなどのアルカリ金属硫化物とp−ジクロロベンゼンなどのポリハロ芳香族化合物とを反応させる方法が提案されており、この方法はポリアリーレンスルフィドの工業的製造方法として幅広く利用されている。しかしながら、この製造方法は高温、高圧、かつ強アルカリ条件下で反応を行うことが必要であり、さらに、N−メチルピロリドンのような高価な高沸点極性溶媒を必要とし、溶媒回収に多大なコストがかかるエネルギー多消費型で、多大なプロセスコストを必要とするといった課題を有している。
一方、ポリアリーレンスルフィドの別の製造方法として、環式ポリアリーレンスルフィドを加熱することによるポリアリーレンスルフィドの製造方法が開示されている。この方法では、高分子量で、狭い分子量分布を有し、加熱した際の重量減少が少ないポリアリーレンスルフィドを得ることが期待できるが、環式ポリアリーレンスルフィドの反応が完結するには反応に高温、長時間を有するため、より低温、より短時間でのポリアリーレンスルフィドの製造方法が望まれていた(例えば特許文献1)。モノマー源として環式ポリフェニレンスルフィドと線状ポリフェニレンスルフィドの混合物を加熱するポリフェニレンスルフィドの重合方法も知られている(非特許文献1)。この方法はポリフェニレンスルフィドの安易な重合法であるが、得られるポリフェニレンスルフィドの重合度は低く実用に適さないポリフェニレンスルフィドであった。該文献では加熱温度を高くすることで重合度の向上が見られることが開示されているが、それでもなお実用に適した分子量には到達しておらず、また、この場合は架橋構造の生成が回避できず、熱的特性の劣るポリフェニレンスルフィドしか得られないことが指摘されており、より実用に適した品質の高いポリフェニレンスルフィドの重合方法が望まれていた。
また、環式ポリアリーレンスルフィドのポリアリーレンスルフィドへの転化に際し、転化を促進する各種触媒成分(ラジカル発生能を有する化合物やイオン性化合物など)を使用する方法が知られている。特許文献2、非特許文献2には、ラジカル発生能を有する化合物として、例えば加熱により硫黄ラジカルを発生する化合物が開示されており、具体的にはジスルフィド結合を含有する化合物が開示されている。
特許文献3及び4には、アニオン重合において開環重合触媒になり得るイオン性化合物が開示されており、具体的には例えばチオフェノールのナトリウム塩のようなアニオン種を生成する硫黄のアルカリ金属塩を用いる方法が開示されている。しかしながら、この方法を用いても、環式ポリアリーレンスルフィドのポリアリーレンスルフィドへの転化の促進効果としては不十分で、環式ポリアリーレンスルフィドの反応が完結するには高温、長時間を有するという課題があった。また、特許文献3には、カチオン重合において開環重合触媒となり得るイオン性化合物として、塩化鉄(III)などのルイス酸、プロトン酸、トリアルキルオキソニウム塩、カルボニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、アルキル化剤またはシリル化剤などを用いる方法も挙げられているが、これら開環重合触媒の効果に関する具体的な開示はなく、効果は明らかでなかった。さらに、例えば塩化鉄(III)を開環重合触媒として用いた際の、開環重合触媒の作用機構についても明らかでなく、環式ポリアリーレンスルフィドへの触媒の添加方法、重合条件に関する具体的な開示もなかった。
また、特許文献5には、アニオン重合において開環重合触媒となり得るイオン性化合物とルイス酸を共存させる方法が開示されており、具体的にはチオフェノールのナトリウム塩と塩化銅(II)を共存させる方法が開示されている。しかしながら、この方法を用いても、環式ポリアリーレンスルフィドのポリアリーレンスルフィドへの転化の促進効果としては不十分で、環式ポリアリーレンスルフィドの反応が完結するには高温、長時間を有するという課題があった。
また、特許文献6には、0価遷移金属化合物として、具体的には例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムなどを用いる方法が開示されており、この方法を用いた場合、低温、短時間でポリアリーレンスルフィドが得られることが記載されている。
特許文献7には、低原子価鉄化合物として、具体的には例えば、塩化鉄などを用いる方法が開示されており、この方法を用いた場合も、低温、短時間でポリアリーレンスルフィドが得られるが、さらに高重合度のポリアリーレンスルフィドの製造方法が望まれていた。
このように、従来の技術による環式ポリアリーレンスルフィドのポリアリーレンスルフィドへの転化においては触媒の促進効果、ポリアリーレンスルフィドの高重合度化が十分ではなく、より低温、短時間で、より高重合度のポリアリーレンスルフィドを製造する方法が望まれていた。
国際公開第2007/034800号 米国特許第5869599号明細書 特開平5−163349号公報 特開平5−105757号公報 特開平5−301962号公報 国際公開第2011/013686号 特開2012−92315号公報
ポリマー(Polymer), vol. 37, no. 14, 1996年(第3111〜3116ページ) マクロモレキュールズ(Macromolecules), 30, 1997年(第4502〜4503ページ)
本発明は、環式ポリアリーレンスルフィドのポリアリーレンスルフィドへの転化に際し、高温、長時間を要し、高重合度化が困難であるという前記課題を解決し、より高重合度のポリアリーレンスルフィドを低温、短時間で得ることのできる製造方法を提供することを課題とするものである。
特に、特許文献6に記載されるようなテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムなどの0価遷移金属化合物は、環式ポリアリーレンスルフィドのポリアリーレンスルフィドへの転化の促進効果が高いものの、安定性が低い傾向があり、より安定性が高く取り扱い性の良好な触媒を用いる製造方法を提供することを課題とする。また、ポリアリーレンスルフィド成形品の機械強度や耐薬品性などの特性をより高めるため、さらに高重合度のポリアリーレンスルフィドの製造方法を提供することを課題とする。
本発明は、環式ポリアリーレンスルフィドを下記一般式で示される遷移金属化合物存在下で加熱することを特徴とするポリアリーレンスルフィドの製造方法である。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)環式ポリアリーレンスルフィドを下記一般式で示される遷移金属化合物存在下、非酸化性雰囲気下で加熱することを特徴とするポリアリーレンスルフィドの製造方法。
Figure 0006354339
(ここで、Mはニッケルを除く周期表第8族から第11族かつ第4周期から第6周期の金属から選ばれる遷移金属原子を表し、mは0〜10の整数を表し、nはMの価数によって決定される1〜3の整数を表し、RおよびRは炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基、およびハロゲン基からなる群より選ばれる置換基を表し、該アルキル基、該アルコキシ基、該アリール基の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよく、またRおよびRは同一でもそれぞれ異なっていてもよい。)
(2)前記一般式で示される遷移金属化合物のmが0であることを特徴とする(1)に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
(3)前記一般式で示される遷移金属化合物のRが炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、および炭素数6〜24のアリール基からなる群より選ばれる置換基であり、Rが炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、および炭素数6〜24のアリール基からなる群より選ばれる置換基であることを特徴とする(1)または(2)に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
(4)前記一般式で示される遷移金属化合物のRが炭素数1〜12のアルキル基から選ばれる置換基であり、Rが炭素数1〜12のアルキル基から選ばれる置換基であることを特徴とする(1)または(2)に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
(5)前記一般式で示される遷移金属化合物のRおよびRがメチル基であるり、Rが炭素数1〜12のアルキル基から選ばれる置換基であることを特徴とする(1)または(2)に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
(6)前記一般式で示される遷移金属化合物のMがパラジウムまたは白金であることを特徴とする(1)から(5)のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
(7)加熱を大気圧以上の圧力下で行うことを特徴とする(1)から(6)のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
本発明によれば、環式ポリアリーレンスルフィドの加熱によるポリアリーレンスルフィドの製造において、従来法と比較して低温、短時間で、より高重合度のポリアリーレンスルフィドを得ることができる。さらに、環式ポリアリーレンスルフィドのポリアリーレンスルフィドへの転化促進効果が高く、かつ安定性にすぐれた触媒を用いた製造方法を提供できる。
以下に、本発明実施の形態を説明する。
<ポリアリーレンスルフィド>
本発明におけるポリアリーレンスルフィドとは、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有するホモポリマーまたはコポリマーである。Arとしては下記の式(A)〜式(K)などで表される単位などがあるが、なかでも式(A)が特に好ましい。
Figure 0006354339
(R、Rは水素、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリーレン基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、RとRは同一でも異なっていてもよい)
この繰り返し単位を主要構成単位とする限り、下記の式(L)〜(N)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。
Figure 0006354339
また、本発明におけるポリアリーレンスルフィドは上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいポリアリーレンスルフィドとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
Figure 0006354339
を80モル%以上、特に90モル%以上含有するポリフェニレンスルフィドが挙げられる。
本発明のポリアリーレンスルフィドの好ましい分子量は、重量平均分子量で10,000以上、好ましくは40,000以上、より好ましくは50,000以上、さらに好ましくは60,000以上、よりいっそう好ましくは70,000以上、さらにいっそう好ましくは100,000以上である。重量平均分子量が10,000以上では加工時の成形性が良好で、また成形品の機械強度や耐薬品性などの特性が高くなる。重量平均分子量の上限に特に制限は無いが、1,000,000未満を好ましい範囲として例示でき、より好ましくは500,000未満、さらに好ましくは200,000未満であり、この範囲内では高い成形加工性を得ることができる。
本発明の製造方法で得られるポリアリーレンスルフィドは、分子量分布の広がり、即ち重量平均分子量と数平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)で表される分散度が狭い特長を有する傾向にある。本発明の製法で得られるポリアリーレンスルフィドの分散度は2.5以下が好ましく、2.3以下がより好ましく、2.1以下がさらに好ましい。分散度が2.5以下ではポリアリーレンスルフィドに含まれる低分子成分の量が少なくなる傾向が強く、このことはポリアリーレンスルフィドを成形加工用途に用いた場合の機械特性向上、加熱した際のガス発生量の低減及び溶剤と接した際の溶出成分量の低減などの効果を奏する。なお、前記重量平均分子量及び数平均分子量は例えば示差屈折率検出器を具備したSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)を使用して求めることができる。
本発明のポリアリーレンスルフィドの製造方法は、環式ポリアリーレンスルフィドを前記一般式で示される遷移金属化合物存在下で加熱することを特徴とし、この方法によれば容易に前述した特性を有する本発明のポリアリーレンスルフィドを得ることができる。
本発明の製法における、環式ポリアリーレンスルフィドのポリアリーレンスルフィドへの転化率は70%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。転化率が70%以上では前述した特性を有するポリアリーレンスルフィドを得ることができる。
環式ポリアリーレンスルフィドのポリアリーレンスルフィドへの転化率は、加熱前の原料に含まれる環式ポリアリーレンスルフィドの質量、および、加熱により得られる生成物に含まれる未反応の環式ポリアリーレンスルフィドの質量を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて定量し、その値から算出することができる。具体的には、
転化率=(加熱前の原料に含まれる環式ポリアリーレンスルフィドの質量−未反応の環式ポリアリーレンスルフィドの質量)/加熱前の原料に含まれる環式ポリアリーレンスルフィドの質量
のように算出することができる。
<環式ポリアリーレンスルフィド>
本発明のポリアリーレンスルフィドの製造方法における環式ポリアリーレンスルフィドとは式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とし、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する下記一般式(O)のごとき環式化合物を、少なくとも50重量%以上含むものであり、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上含むものが好ましい。Arとしては前記式(A)〜式(K)などで表される単位などがあるが、なかでも式(A)が特に好ましい。
Figure 0006354339
なお、環式ポリアリーレンスルフィド中の前記(O)式の環式化合物においては前記式(A)〜式(K)などの繰り返し単位をランダムに含んでもよいし、ブロックで含んでもよく、それらの混合物のいずれかであってもよい。これらの代表的なものとして、環式ポリフェニレンスルフィド、環式ポリフェニレンスルフィドスルホン、環式ポリフェニレンスルフィドケトン、これらが含まれる環式ランダム共重合体、環式ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましい前記(O)式の環式化合物としては、主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位
Figure 0006354339
を80モル%以上、特に90モル%以上含有する環式化合物が挙げられる。
環式ポリアリーレンスルフィドに含まれる前記(O)式中の繰り返し数pに特に制限は無いが、4〜50が好ましい。ここで下限は4以上が好ましく、5以上がより好ましく、6以上がさらに好ましく、7以上がよりいっそう好ましく、8以上がさらにいっそう好ましい。pが小さい環式化合物は反応性が低い傾向があるため、短時間でポリアリーレンスルフィドが得られるようになるとの観点ではpを前記範囲にすることが好ましい。一方上限は50以下が好ましく、25以下がより好ましく、15以下がさらに好ましい。後述するように環式ポリアリーレンスルフィドの加熱によるポリアリーレンスルフィドへの転化は環式ポリアリーレンスルフィドが融解する温度以上で行うことが好ましいが、pが大きくなると環式ポリアリーレンスルフィドが融解する温度が高くなる傾向にある。そのため、環式ポリアリーレンスルフィドのポリアリーレンスルフィドへの転化をより低い温度で行うためには、pを前記範囲にすることが好ましい。
また、環式ポリアリーレンスルフィドに含まれる前記(O)式の環式化合物は、単一の繰り返し数を有する単独化合物、異なる繰り返し数を有する環式化合物の混合物のいずれでもよいが、異なる繰り返し数を有する環式化合物の混合物の方が単一の繰り返し数を有する単独化合物よりも融解する温度が低い傾向があり、異なる繰り返し数を有する環式化合物の混合物の使用はポリアリーレンスルフィドへの転化を行う際の加熱温度をより低くできるため好ましい。
環式ポリアリーレンスルフィドにおける前記(O)式の環式化合物以外の成分はポリアリーレンスルフィドオリゴマーであることが特に好ましい。ここでポリアリーレンスルフィドオリゴマーとは、式、−(Ar−S)−の繰り返し単位を主要構成単位とする、好ましくは当該繰り返し単位を80モル%以上含有する線状のホモオリゴマーまたはコオリゴマーである。Arとしては前記した式(A)〜式(K)などであらわされる単位などがあるが、なかでも式(A)が特に好ましい。ポリアリーレンスルフィドオリゴマーはこれら繰り返し単位を主要構成単位とする限り、前記した式(L)〜式(N)などで表される少量の分岐単位または架橋単位を含むことができる。これら分岐単位または架橋単位の共重合量は、−(Ar−S)−の単位1モルに対して0〜1モル%の範囲であることが好ましい。また、ポリアリーレンスルフィドオリゴマーは上記繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物のいずれかであってもよい。
これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィドオリゴマー、ポリフェニレンスルフィドスルホンオリゴマー、ポリフェニレンスルフィドケトンオリゴマー、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいポリアリーレンスルフィドオリゴマーとしては、ポリマーの主要構成単位としてp−フェニレンスルフィド単位を80モル%以上、特に90モル%以上含有するポリフェニレンスルフィドオリゴマーが挙げられる。
ポリアリーレンスルフィドオリゴマーの分子量としては、ポリアリーレンスルフィドよりも低分子量のものが例示でき、具体的には重量平均分子量で10,000未満であることが好ましい。
環式ポリアリーレンスルフィドが含有するポリアリーレンスルフィドオリゴマー量は、環式ポリアリーレンスルフィドが含有する前記(O)式の環式化合物よりも少ないことが特に好ましい。即ち環式ポリアリーレンスルフィド中の前記(O)式環式化合物とポリアリーレンスルフィドオリゴマーの重量比(前記(O)式の環式化合物/ポリアリーレンスルフィドオリゴマー)は1を超えることが好ましく、2.3以上がより好ましく、4以上がさらに好ましく、9以上がよりいっそう好ましく、このような環式ポリアリーレンスルフィドを用いることで重量平均分子量が10,000以上のポリアリーレンスルフィドを容易に得ることが可能である。従って、環式ポリアリーレンスルフィド中の前記(O)式の環式化合物とポリアリーレンスルフィドオリゴマーの重量比の値が大きいほど、本発明のポリアリーレンスルフィド製造方法により得られるポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量は大きくなる傾向にある。この重量比に特に上限は無いが、該重量比が100を超える環式ポリアリーレンスルフィドを得るためには、環式ポリアリーレンスルフィド中のポリアリーレンスルフィドオリゴマー含有量を著しく低減する必要があり、これには多大の労力を要する。本発明のポリアリーレンスルフィド製造方法によれば該重量比が100以下の環式ポリアリーレンスルフィドを用いても重量平均分子量が10,000以上のポリアリーレンスルフィドを容易に得ることが可能である。
環式ポリアリーレンスルフィド中の前記(O)式の環式化合物とポリアリーレンスルフィドオリゴマーの重量比は、HPLCを用いて定量した環式ポリアリーレンスルフィド中の前記(O)式の環式化合物量から算出することができる。例えば環式ポリアリーレンスルフィドにおける前記(O)式の環式化合物以外の成分がポリアリーレンスルフィドオリゴマーである場合には、
重量比=前記(O)式の環式化合物量(%)/(100−前記(O)式の環式化合物量(%))
のように算出できる。
本発明のポリアリーレンスルフィドの製造に用いる環式ポリアリーレンスルフィドの分子量の上限値は、重量平均分子量で10,000以下が好ましく、5,000以下が好ましく、3,000以下がさらに好ましく、一方、下限値は重量平均分子量で300以上が好ましく、400以上が好ましく、500以上がさらに好ましい。
<遷移金属化合物>
本発明において、下記一般式で示される種々の遷移金属化合物が重合触媒として用いられる。
Figure 0006354339
(ここで、Mはニッケルを除く周期表第8族から第11族かつ第4周期から第6周期の金属から選ばれる遷移金属原子を表し、mは0〜10の整数を表し、nはMの価数によって決定される1〜3の整数を表し、RおよびRは炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基、およびハロゲン基からなる群より選ばれる置換基を表し、該アルキル基、該アルコキシ基、該アリール基の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよく、またRおよびRは同一でもそれぞれ異なっていてもよい。)
mは0〜10の整数であれば重合触媒として有効であるが、遷移金属化合物構造の立体的な安定性の観点からは0〜5であることが好ましく、さらに遷移金属化合物構造の電子的な安定性の観点からは共鳴構造をとることができるため0であることがより好ましい。
nは遷移金属原子Mの価数と同一の整数である。
およびRは炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基、およびハロゲン基からなる群より選ばれる置換基であれば重合触媒として有効であり、該アルキル基、該アルコキシ基、該アリール基の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよく、またRおよびRは同一でもそれぞれ異なっていてもよい。例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ブチル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルおよびそれらのハロゲン置換体、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシおよびそれらのハロゲン置換体、フェニル、ベンジル、トリル、キシリル、ビフェニル、ナフチルおよびそれらのハロゲン置換体、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などが例示できる。遷移金属化合物として具体的には、トリス(2,4−ペンタンジオナト)鉄、トリス(トリフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)鉄、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)鉄、トリス(ジベンゾイルメタナト)鉄、トリス(2,4−ペンタンジオナト)ルテニウム、ビス(2,4−ペンタンジオナト)コバルト、ビス(トリフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)コバルト、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)コバルト、トリス(2,4−ペンタンジオナト)コバルト、トリス(2,4−ペンタンジオナト)ロジウム、トリス(2,4−ペンタンジオナト)イリジウム、ビス(2,4−ペンタンジオナト)パラジウム、ビス(ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)パラジウム、ビス(2,4−ペンタンジオナト)白金、ビス(ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)白金、ビス(2,4−ペンタンジオナト)銅、ビス(トリフルオロ−2,4−ペンタンジオナト)銅、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)銅、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)銅、エチルアセト酢酸銅などが例示できる。
中でも、RおよびRが電子供与性基であれば環式ポリアリーレンスルフィドの転化を促進する効果が大きい傾向にあるため炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、および炭素数6〜24のアリール基からなる群より選ばれる置換基であることが好ましい。例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ブチル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルおよびそれらのハロゲン置換体、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシおよびそれらのハロゲン置換体、フェニル、ベンジル、トリル、キシリル、ビフェニル、ナフチルおよびそれらのハロゲン置換体などが例示できる。遷移金属化合物として具体的には、トリス(2,4−ペンタンジオナト)鉄、トリス(ジベンゾイルメタナト)鉄、トリス(2,4−ペンタンジオナト)ルテニウム、ビス(2,4−ペンタンジオナト)コバルト、トリス(2,4−ペンタンジオナト)コバルト、トリス(2,4−ペンタンジオナト)ロジウム、トリス(2,4−ペンタンジオナト)イリジウム、ビス(2,4−ペンタンジオナト)パラジウム、ビス(2,4−ペンタンジオナト)白金、ビス(2,4−ペンタンジオナト)銅、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)銅、エチルアセト酢酸銅などが例示できる。
さらに、遷移金属化合物構造の立体的な安定性の観点からは炭素数1〜12のアルキル基であることがより好ましく、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ブチル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルおよびそれらのハロゲン置換体などが例示できる。遷移金属化合物として具体的には、トリス(2,4−ペンタンジオナト)鉄、トリス(2,4−ペンタンジオナト)ルテニウム、ビス(2,4−ペンタンジオナト)コバルト、トリス(2,4−ペンタンジオナト)コバルト、トリス(2,4−ペンタンジオナト)ロジウム、トリス(2,4−ペンタンジオナト)イリジウム、ビス(2,4−ペンタンジオナト)パラジウム、ビス(2,4−ペンタンジオナト)白金、ビス(2,4−ペンタンジオナト)銅、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)銅などが例示できる。
これらの中でも、電子供与性、遷移金属化合物構造の立体的な安定性を両立可能であり、さらに遷移金属化合物の入手性、取り扱い性にも優れるメチル基が最も好ましい。遷移金属化合物として具体的には、トリス(2,4−ペンタンジオナト)鉄、トリス(2,4−ペンタンジオナト)ルテニウム、ビス(2,4−ペンタンジオナト)コバルト、トリス(2,4−ペンタンジオナト)コバルト、トリス(2,4−ペンタンジオナト)ロジウム、トリス(2,4−ペンタンジオナト)イリジウム、ビス(2,4−ペンタンジオナト)パラジウム、ビス(2,4−ペンタンジオナト)白金、ビス(2,4−ペンタンジオナト)銅などが例示できる。
遷移金属種はニッケルを除く周期表第8族から第11族かつ第4周期から第6周期の金属から選ばれる遷移金属原子であれば重合触媒として有効であり、具体的には鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銅、銀、金が挙げられる。この理由は現時点で明らかではないが、これら遷移金属原子は多くの価数状態を取りうるため、これら遷移金属原子の原子半径が環式ポリアリーレンスルフィド構造との相互作用を生じやすいため、あるいは、これら遷移金属原子は環式ポリアリーレンスルフィド中に分散しやすい遷移金属化合物を形成可能であるためと推測している。
これら遷移金属種の中でも、パラジウムおよび白金が環式ポリアリーレンスルフィドの転化を促進する高い効果を有する傾向にあり好ましい。この理由も現時点で明らかではないが、これら遷移金属原子が取りうる電子状態により、遷移金属原子と環式ポリアリーレンスルフィド構造との相互作用が比較的強い傾向にあるためと推測している。
本発明では、一般式で示される遷移金属化合物存在下で環式ポリアリーレンスルフィドを加熱することが特徴であり、一般式で示される遷移金属化合物を原料として添加してもよいし、系内で一般式で示される遷移金属化合物を生成させてもよい。また、1種単独で用いてもよいし2種以上併用してもよい。ここで後者のように系内で一般式で示される遷移金属化合物を生成させるには、例えば一般的な溶液中でのアセチルアセトナート化合物合成方法で用いられるような、遷移金属塩とアセチルアセトンから生成させる方法などが挙げられる。
遷移金属原子の価数状態、遷移金属原子と酸素原子の結合または配位状態などは、例えばX線吸収微細構造(XAFS)解析により把握が可能である。本発明において触媒として用いられる遷移金属化合物、または、遷移金属化合物を含む環式ポリアリーレンスルフィド、または、遷移金属化合物を含むポリアリーレンスルフィドに、X線を照射し、その吸収スペクトルを比較することで把握できる。
使用する遷移金属化合物の濃度は、目的とするポリアリーレンスルフィドの分子量ならびに重合触媒の種類により異なるが、通常、下限としては、環式ポリアリーレンスルフィド中の硫黄原子に対して0.001モル%以上が好ましく、より好ましくは0.005モル%以上、さらに好ましくは0.01モル%以上が例示できる。0.001モル%では環式ポリアリーレンスルフィドはポリアリーレンスルフィドへ十分に転化する。一方、上限としては、環式ポリアリーレンスルフィド中の硫黄原子に対して20モル%以下が好ましく、より好ましくは15モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下が例示できる。20モル%以下では前述した特性を有するポリアリーレンスルフィドを得ることができる。ここでいう遷移金属化合物の濃度とは、一般式で示される遷移金属化合物を原料として添加する場合は、その濃度をいう。一方、系内で一般式で示される遷移金属化合物を生成させる場合は、原料として添加する遷移金属塩などの濃度をいう。
一般式で示される遷移金属化合物、系内で一般式で示される遷移金属化合物を生成させるための遷移金属塩の添加に際しては、そのまま添加してもよいが、環式ポリアリーレンスルフィド中に均一に分散させることが好ましい。均一に分散させる方法として、例えば機械的に分散させる方法、溶媒を用いて分散させる方法、環式ポリアリーレンスルフィドを溶融し分散させる方法、あらかじめ重合反応装置、成形品を製造する型、押出機や溶融混練機などの装置内に分散させる方法、あるいは環式ポリアリーレンスルフィドの加熱時に繊維状物質を共存させる場合にはあらかじめ繊維状物質上に分散させる方法などが挙げられる。
機械的に分散させる方法として、具体的には粉砕機、撹拌機、混合機、振とう機、乳鉢を用いる方法などが例示できる。
溶媒を用いて分散させる方法として、具体的には環式ポリアリーレンスルフィドを適宜な溶媒に溶解または分散し、これに遷移金属化合物、遷移金属塩を所定量加えた後、溶媒を除去する方法などが例示できる。
環式ポリアリーレンスルフィドを溶融し分散させる方法としては、固体状態の環式ポリアリーレンスルフィドに遷移金属化合物、遷移金属塩を添加した後、加熱により環式ポリアリーレンスルフィドを溶融させる方法、あらかじめ環式ポリアリーレンスルフィドを溶融した後に遷移金属化合物、遷移金属塩を添加する方法などが例示できる。
あらかじめ重合反応装置、成形品を製造する型、押出機や溶融混練機などの装置内に分散させる方法としては、そのまま分散させる方法、適宜な溶媒に遷移金属化合物、遷移金属塩を所定量加えた後、重合反応装置、成形品を製造する型、押出機や溶融混練機などの装置内で溶媒を除去することで分散させる方法などが例示できる。
あらかじめ繊維状物質上に分散させる方法としては、そのまま分散させる方法、適宜な溶媒に遷移金属化合物、遷移金属塩を所定量加えた後、繊維状物質に塗布するか散布するか含浸させるなどした後、溶媒を除去することで分散させる方法などが例示できる。
また、2種以上の化合物を添加する場合には、添加する化合物の安定性、反応性にもよるが、一度に添加してもよいし、別々に添加した後に、重合反応装置、成形品を製造する型、押出機や溶融混練機などの装置内外で混合してもよい。
また、遷移金属化合物、遷移金属塩が固体である場合、より均一な分散が可能となるため、それらの平均粒径は1mm以下であることが好ましい。
また、本発明で用いる一般式で示される遷移金属化合物は安定性が高い傾向にあるため、非酸化性雰囲気下で添加することも好ましいが、大気中で添加することも可能である。非酸化性雰囲気とは環式ポリアリーレンスルフィド、および遷移金属化合物、遷移金属塩が接する気相における酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、さらに好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、すなわち窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気であることを指し、経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が好ましい。大気中とは、酸素濃度21体積%程度の一般的な組成の雰囲気であることを指す。
一般式で示される遷移金属化合物、系内で一般式で示される遷移金属化合物を生成させるための遷移金属塩を添加する際の温度は、添加に用いる方法が実施可能な温度範囲であれば特に制限はないが、上限としては、環式ポリアリーレンスルフィドがポリアリーレンスルフィドへ転化しにくい温度領域であることが好ましく、例えば300℃以下、好ましくは260℃以下、より好ましくは240℃以下、さらに好ましくは220℃以下、よりいっそう好ましくは200℃以下、さらにいっそう好ましくは180℃以下が例示できる。また、使用する重合触媒の種類によって異なるが、重合触媒が環式ポリアリーレンスルフィドのポリアリーレンスルフィドへの転化を促進しにくい温度領域であることが好ましい。
<ポリアリーレンスルフィドの製造条件>
本発明におけるポリアリーレンスルフィドを製造する際の加熱温度は、環式ポリアリーレンスルフィドが融解する温度であることが好ましく、このような温度条件であれば特に制限はない。ただし、加熱温度が環式ポリアリーレンスルフィドが融解する温度未満ではポリアリーレンスルフィドを得るのに長時間が必要となる傾向がある。なお、環式ポリアリーレンスルフィドが融解する温度は、環式ポリアリーレンスルフィドの組成や分子量、また、加熱時の環境により変化するため、一意的に示すことはできないが、例えば環式ポリアリーレンスルフィドを示差走査型熱量計で分析することで把握することが可能である。ただし、一般に融解する温度には幅があり、融点以上でも融解にともなう吸熱が継続する傾向があるため、均一に融解させるためには、加熱温度は環式ポリアリーレンスルフィドの融点以上であることが好ましく、環式ポリアリーレンスルフィドの融点よりも10℃以上高い温度が好ましく、20℃以上高い温度がより好ましい。なお、融点は示差走査熱量計により測定することができる。
加熱温度の下限としては、180℃以上が例示でき、好ましくは200℃以上、より好ましくは220℃以上、さらに好ましくは240℃以上である。この温度範囲では、環式ポリアリーレンスルフィドが融解し、一般式で示される遷移金属化合物と環式ポリアリーレンスルフィドが相溶しやすく、一般式で示される遷移金属化合物と環式ポリアリーレンスルフィド間の相互作用が生じやすく、短時間で高重合度のポリアリーレンスルフィドを得ることができる。一方、温度が高すぎると環式ポリアリーレンスルフィド間、加熱により生成したポリアリーレンスルフィド間、及びポリアリーレンスルフィドと環式ポリアリーレンスルフィド間などでの架橋反応や分解反応に代表される好ましくない副反応が生じやすくなる傾向にあり、得られるポリアリーレンスルフィドの特性が低下する場合があるため、このような好ましくない副反応が顕著に生じる温度は避けることが望ましい。加熱温度の上限としては、400℃以下が例示できる。この温度以下では、好ましくない副反応による得られるポリアリーレンスルフィドの特性への悪影響を抑制できる傾向にあり、前述した特性を有するポリアリーレンスルフィドを得ることができる。また加熱温度は、加熱あるいは冷却に要するエネルギー低減や時間短縮が可能になり生産性が向上することから低い方がより好ましい。このことから、好ましい加熱温度として400℃以下、より好ましくは360℃以下、さらに好ましくは320℃以下、よりいっそう好ましくは300℃以下といった温度が例示できる。
環式ポリアリーレンスルフィドの加熱の際の雰囲気は非酸化性雰囲気で行うことが好ましい。非酸化性雰囲気とは環式ポリアリーレンスルフィドが接する気相における酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、さらに好ましくは酸素を実質的に含有しない雰囲気、即ち窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素雰囲気が好ましい。これにより環式ポリアリーレンスルフィド間、加熱により生成したポリアリーレンスルフィド間、及びポリアリーレンスルフィドと環式ポリアリーレンスルフィド間などで架橋反応や分解反応などの好ましくない副反応の発生を抑制できる傾向にある。
環式ポリアリーレンスルフィドの加熱は、非酸化性雰囲気下であれば、大気圧下には限定されず、減圧条件下あるいは脱揮条件下で行うことも可能である。
減圧条件下とは反応を行う系内が大気圧よりも低いことを指し、上限として50kPa以下が好ましく、20kPa以下がより好ましく、10kPa以下がさらに好ましい。下限としては0.1kPa以上が例示でき、0.2kPa以上がより好ましい。減圧条件が好ましい下限以上では、環式ポリアリーレンスルフィドに含まれる分子量の低い前記(O)式の環式化合物が揮散しにくく、一方好ましい上限以下では、架橋反応など好ましくない副反応が起こりにくい傾向にあり、前述した特性を有するポリアリーレンスルフィドを得ることができる。また、減圧条件下で行う場合、反応系内の雰囲気を一度非酸化性雰囲気としてから減圧条件にすることが好ましい。
脱揮条件下とは環式ポリアリーレンスルフィドを一般式で示される遷移金属化合物存在下に加熱する際に発生する気体状態の成分を、加熱系内から除去する条件のことである。前記気体状態の成分としては、それぞれの化合物の特性および脱揮条件の詳細により発生の有無やその程度は異なるが、例えば環式ポリアリーレンスルフィドが含有するポリアリーレンスルフィドオリゴマー、遷移金属化合物成分、遷移金属化合物構造中の分解物、系内で一般式で示される遷移金属化合物を生成させる際に添加する遷移金属塩構造中の分解物などが例示できる。前記条件としては、発生した気体状態の成分を加熱系内から除去可能であれば特に限定はされないが、例えば連続的な減圧条件下での脱揮や、連続的にガスを系内へ流入し、流入したガスとともに、発生した気体状態の成分を加熱系外に流出させる条件、発生した気体状態の成分を冷却し系外に捕集する条件などが挙げられる。脱揮条件下で加熱することにより、ポリアリーレンスルフィドオリゴマーが加熱系内に残存しにくく、加熱系内における環式ポリアリーレンスルフィド中の前記(O)式環式化合物とポリアリーレンスルフィドオリゴマーの重量比が大きくなりやすいため、本発明のポリアリーレンスルフィド製造方法により得られるポリアリーレンスルフィドの重量平均分子量は大きくなる傾向にある点で好ましい。
連続的な減圧条件下での脱揮における、連続的な減圧条件としては、発生した気体状態の成分を加熱系内から除去可能であればよく、例えば反応を行う系内全体が連続的に減圧されていてもよいし、成形品を製造する型、押出機や溶融混練機などを用いて加熱する場合には、常圧あるいは加圧条件下にある型内、押出機内、溶融混練機内などから一部が減圧装置に連結され連続的に減圧されていてもよい。連続的に減圧し脱揮を行うことで、より効率よく環式ポリアリーレンスルフィドが含有するポリアリーレンスルフィドオリゴマーの加熱系内からの除去が可能になることにより、より高重合度のポリアリーレンスルフィドを得られる傾向にある。
また、連続的に減圧する場合、反応系内の雰囲気は一度非酸化性雰囲気としてから減圧条件にすることが好ましい。これにより環式ポリアリーレンスルフィド間、加熱により生成したポリアリーレンスルフィド間、及びポリアリーレンスルフィドと環式ポリアリーレンスルフィド間などで架橋反応や分解反応などの好ましくない副反応の発生を抑制できる傾向にある。
連続的にガスを系内へ流入し、流入したガスとともに、発生した気体状態の成分を加熱系外に流出させる条件においては、反応系内の雰囲気は非酸化性雰囲気であることが好ましい。これにより環式ポリアリーレンスルフィド間、加熱により生成したポリアリーレンスルフィド間、及びポリアリーレンスルフィドと環式ポリアリーレンスルフィド間などで架橋反応や分解反応などの好ましくない副反応の発生を抑制できる傾向にある。用いるガスは窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスが好ましく、この中でも特に経済性及び取扱いの容易さの面からは窒素ガスが好ましい。
系内へ流入するガスの温度は、流入するガスの流量、系内の加熱温度、反応系の構造にもよるが、系内の加熱温度を安定に制御できる範囲であれば特に制限はない。ただし、安定なガス温度制御の面から0℃以上であることが好ましく、20℃以上であることがより好ましく、50℃以上であることがさらに好ましく、安定な系内の加熱温度制御の面からはさらに、100℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、180℃以上であることがさらに好ましく、系内の加熱温度と同温度であることがよりいっそう好ましい範囲として例示できる。
また、系内へ流入するガスの流量は、流入するガスの温度、系内の加熱温度、反応系に構造にもよるが、環式ポリアリーレンスルフィドを一般式で示される遷移金属化合物存在下に加熱する際に発生する気体状態の成分を加熱系内から除去可能であり、系内の加熱温度を安定に制御できる範囲であれば特に制限はない。ただし、環式ポリアリーレンスルフィドを一般式で示される遷移金属化合物存在下に加熱する際に発生する気体状態の成分を、加熱系内から除去する効果の面からは、1分間に系内へ流入するガスの流量は、系内の容積の1%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることがさらに好ましく、20%以上であることがよりいっそう好ましい範囲として例示できる。
脱揮による発生した気体状態の成分の加熱系内からの除去量は、加熱系外に除去された成分を回収し秤量する方法、加熱前後の重量差から算出する方法、得られたポリアリーレンスルフィドの加熱時重量減少により残存成分量を算出し差し引く方法などにより把握することができる。
環式ポリアリーレンスルフィドの加熱は、非酸化性雰囲気下であれば50kPa以上の条件下で行うことも好ましい。50kPa以上の条件下であれば、加熱時に重合触媒が揮散しにくい傾向にあり、短時間でポリアリーレンスルフィドを得ることができる点で好ましい。加熱時に重合触媒が揮散しにくいという観点から、50kPa以上の条件下であればよいが、70kPa以上であることがより好ましく、90kPa以上であることがさらに好ましく、大気圧下であることがよりいっそう好ましく、大気圧よりも高い加圧条件下であることがさらにいっそう好ましい。加圧条件の上限としては特に制限はないが、反応装置の取り扱いの容易さの面からは0.2MPa以下が好ましい。また、加熱を50kPa以上の条件下で行う場合、反応系内の雰囲気を一度非酸化性雰囲気としてから目的の圧力条件にすることが好ましい。これにより環式ポリアリーレンスルフィド間、加熱により生成したポリアリーレンスルフィド間、及びポリアリーレンスルフィドと環式ポリアリーレンスルフィド間などで架橋反応や分解反応などの好ましくない副反応の発生を抑制できる傾向にある。
反応時間は、使用する環式ポリアリーレンスルフィドにおける前記(O)式の環式化合物の含有率や繰り返し数p、及び分子量などの各種特性、使用する重合触媒の種類、また、加熱の温度などの条件によって異なるため一様には規定できないが、前記した好ましくない副反応がなるべく起こらないように設定することが好ましい。加熱時間の下限としては0.01時間以上が例示でき、好ましくは0.05時間以上が例示できる。0.01時間以上では環式ポリアリーレンスルフィドはポリアリーレンスルフィドへ十分に転化する。一方上限としては100時間以下が例示でき、好ましくは20時間以下、より好ましくは10時間以下が例示できる。本発明の好ましい製造方法によれば、環式ポリアリーレンスルフィドの加熱は2時間以下で行うことも可能である。加熱時間としては2時間以下、さらには1時間以下、0.5時間以下、0.3時間以下、0.2時間以下が例示できる。100時間以下では好ましくない副反応による得られるポリアリーレンスルフィドの特性への悪影響を抑制できる傾向にある。
環式ポリアリーレンスルフィドの加熱は、実質的に溶媒を含まない条件下で行うことも可能である。このような条件下で行う場合、短時間での昇温が可能であり、反応速度が高く、短時間でポリアリーレンスルフィドを得やすくなる傾向がある。ここで実質的に溶媒を含まない条件とは、環式ポリアリーレンスルフィド中の溶媒が10重量%以下であることを指し、3重量%以下がより好ましい。
前記加熱は、通常の重合反応装置を用いる方法で行うのはもちろんのこと、成形品を製造する型内で行ってもよいし、押出機や溶融混練機を用いて行うなど、加熱機構を具備した装置であれば特に制限なく行うことが可能であり、バッチ方式、連続方式など公知の方法が採用できる。
前記した環式ポリアリーレンスルフィドの加熱は繊維状物質の共存下で行うことも可能である。ここで繊維状物質とは細い糸状の物質のことであって、天然繊維のごとく細長く引き延ばされた構造である任意の物質が好ましい。繊維状物質存在下で環式ポリアリーレンスルフィドのポリアリーレンスルフィドへの転化を行うことで、ポリアリーレンスルフィドと繊維状物質からなる複合材料構造体を容易に作成する事ができる。このような構造体は、繊維状物質によって補強されるため、ポリアリーレンスルフィド単独の場合に比べて、例えば機械物性に優れる傾向にある。
ここで、各種繊維状物質の中でも長繊維からなる強化繊維を用いることが好ましく、これによりポリアリーレンスルフィドを高度に強化する事が可能になる。一般に樹脂と繊維状物質からなる複合材料構造体を作成する際には、樹脂が溶融した際の粘度が高いことに起因して、樹脂と繊維状物質のぬれが悪くなる傾向にあり、均一な複合材料ができなかったり、期待通りの機械物性が発現しないことが多い。ここでぬれとは、溶融樹脂のごとき流体物質と、繊維状化合物のごとき固体基質との間に実質的に空気または他のガスが捕捉されないようにこの流体物質と固体基質との物理的状態の良好かつ維持された接触があることを意味する。ここで流体物質の粘度が低い方が繊維状物質とのぬれは良好になる傾向にある。本発明の環式ポリアリーレンスルフィドは融解した際の粘度が、一般的な熱可塑性樹脂、例えばポリアリーレンスルフィドと比べて著しく低いため、繊維状物質とのぬれが良好になりやすい。環式ポリアリーレンスルフィドと繊維状物質が良好なぬれを形成した後、本発明のポリアリーレンスルフィドの製造方法によれば環式ポリアリーレンスルフィドがポリアリーレンスルフィドに転化するので、繊維状物質とポリアリーレンスルフィドが良好なぬれを形成した複合材料構造体を容易に得ることができる。
繊維状物質としては長繊維からなる強化繊維が好ましいことを前述したとおりであり、本発明に用いられる強化繊維に特に制限はないが、好適に用いられる強化繊維としては、一般に、高性能強化繊維として用いられる耐熱性及び引張強度の良好な繊維があげられる。例えば、その強化繊維には、ガラス繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維が挙げられる。この内、比強度、比弾性率が良好で、軽量化に大きな寄与が認められる炭素繊維や黒鉛繊維が最も良好なものとして例示できる。炭素繊維や黒鉛繊維は用途に応じて、あらゆる種類の炭素繊維や黒鉛繊維を用いることが可能であるが、引張強度450Kgf/mm、引張伸度1.6%以上の高強度高伸度炭素繊維が最も適している。長繊維状の強化繊維を用いる場合、その長さは、5cm以上であることが好ましい。この長さの範囲では、強化繊維の強度を複合材料として十分に発現させることが容易となる。また、炭素繊維や黒鉛繊維は、他の強化繊維を混合して用いてもかまわない。また、強化繊維は、その形状や配列を限定されず、例えば、単一方向、ランダム方向、シート状、マット状、織物状、組み紐状であっても使用可能である。また、特に、比強度、比弾性率が高いことを要求される用途には、強化繊維が単一方向に引き揃えられた配列が最も適しているが、取り扱いの容易なクロス(織物)状の配列も本発明には適している。
また、前記した環式ポリアリーレンスルフィドのポリアリーレンスルフィドへの転化は充填剤の存在下で行うことも可能である。充填剤としては、例えば非繊維状ガラス、非繊維状炭素や、無機充填剤、例えば炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナなどを例示できる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。これら例は例示的なものであって限定的なものではない。
<分子量の測定>
ポリアリーレンスルフィド及び環式ポリアリーレンスルフィドの分子量はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の一種であるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算で数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)を算出した。GPCの測定条件を以下に示す。
装置:センシュー科学 SSC−7110
カラム名:Shodex UT806M×2
溶離液:1−クロロナフタレン
検出器:示差屈折率検出器
カラム温度:210℃
プレ恒温槽温度:250℃
ポンプ恒温槽温度:50℃
検出器温度:210℃
流量:1.0mL/min
試料注入量:300μL (スラリー状:約0.2重量%)。
<転化率の測定>
環式ポリフェニレンスルフィドのポリフェニレンスルフィドへの転化率の算出は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて下記方法で行った。
環式ポリアリーレンスルフィドの加熱により得られた生成物約10mgを250℃で1−クロロナフタレン約5gに溶解させた。室温に冷却すると沈殿が生成した。孔径0.45μmのメンブランフィルターを用いて1−クロロナフタレン不溶成分を濾過し、1−クロロナフタレン可溶成分を得た。得られた可溶成分のHPLC測定により、未反応の環式ポリアリーレンスルフィド量を定量し、環式ポリアリーレンスルフィドのポリアリーレンスルフィドへの転化率を算出した。HPLCの測定条件を以下に示す。
装置:島津株式会社製 LC−10Avpシリーズ
カラム:Mightysil RP−18 GP150−4.6(5μm)
検出器:フォトダイオードアレイ検出器(UV=270nm)。
参考例1(環式ポリアリーレンスルフィドの調製)
攪拌機を具備したステンレス製オートクレーブに、水硫化ナトリウムの48重量%水溶液を28.06g(0.240モル)、96%水酸化ナトリウムを用いて調製した48重量%水溶液25.00g(0.288モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)615.0g(6.20モル)、及びp−ジクロロベンゼン(p−DCB)36.16g(0.246モル)を仕込んだ。反応容器内を十分に窒素置換した後、窒素ガス下に密封した。
400rpmで撹拌しながら、室温から200℃まで約1時間かけて昇温した。次いで200℃から250℃まで約30分かけて昇温した。250℃で2時間保持した後、室温近傍まで急冷してから内容物を回収した。
得られた内容物をガスクロマトグラフィー及び高速液体クロマトグラフィーにより分析した結果、モノマーのp−DCBの消費率は96%、反応混合物中のイオウ成分がすべて環式PPSに転化すると仮定した場合の環式PPS生成率は16%であることがわかった。
得られた内容物500gを約1500gのイオン交換水で希釈したのちに平均目開き10〜16μmのガラスフィルターで濾過した。フィルターオン成分を約300gのイオン交換水に分散させ、70℃で30分攪拌し、再度前記同様の濾過を行う操作を計3回行い、白色固体を得た。これを80℃で一晩真空乾燥し、乾燥固体を得た。
得られた固形物を円筒濾紙に仕込み、溶剤としてクロロホルムを用いて約5時間ソックスレー抽出を行うことで固形分に含まれる低分子量成分を分離した。
クロロホルム抽出操作にて得られた抽出液から溶媒を除去した後、約5gのクロロホルムを加えてスラリーを調製し、これを約600gのメタノールに攪拌しながら滴下した。これにより得られた沈殿物を濾過回収し、70℃で5時間真空乾燥を行い、白色粉末を得た。この白色粉末は赤外分光分析における吸収スペクトルよりフェニレンスルフィド単位からなる化合物であることを確認した。また、高速液体クロマトグラフィーにより成分分割した成分のマススペクトル分析(装置;日立製M−1200H)、さらにMALDI−TOF−MSによる分子量情報より、この白色粉末はp−フェニレンスルフィド単位を主要構成単位とし繰り返し単位数4〜13の環式化合物を約96重量%含み、本発明のポリアリーレンスルフィドの製造に好適に用いられる環式ポリフェニレンスルフィドであることが判明した。なお、GPC測定を行った結果、環式ポリフェニレンスルフィドは室温で1−クロロナフタレンに全溶であり、重量平均分子量は900であった。
実施例1
参考例1で得られた環式ポリフェニレンスルフィドに、不活性雰囲気下で密栓された未開封のビス(2,4−ペンタンジオナト)パラジウム(表中にPd(acac)と記載、以下同様)を環式ポリフェニレンスルフィド中の硫黄原子に対して1モル%、窒素雰囲気下で開封、混合し、混合した粉末300mgをガラス製アンプルに仕込み、アンプル内を窒素で置換した。300℃に温調した電気炉内にアンプルを設置し、アンプル内を常圧の窒素雰囲気下に保ったまま60分間加熱した後、アンプルを取り出し室温まで冷却し、黒色固体を得た。固体の赤外分光分析における吸収スペクトルより、固体はフェニレンスルフィド単位からなる化合物(PPS)であることを確認した。固体は1−クロロナフタレンに250℃で一部不溶であったが、不溶部はフェニレンスルフィド構造からなる化合物ではなくパラジウム化合物であることがわかり、生成したPPS成分は可溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドのPPSへの転化率は61%であることがわかった。
実施例2
参考例1で得られた環式ポリフェニレンスルフィドに、不活性雰囲気下で密栓された未開封のビス(2,4−ペンタンジオナト)パラジウムを環式ポリフェニレンスルフィド中の硫黄原子に対して1モル%、窒素雰囲気下で開封、混合し、混合した粉末300mgをガラス製アンプルに仕込み、アンプル内を窒素で置換した後、真空ポンプを用いて約0.4kPaに減圧した。約0.4kPaに減圧してから約10秒後、300℃に温調した電気炉内にアンプルを設置し、真空ポンプによってアンプル内を約0.4kPaに保ち脱揮をしながら60分間加熱した後、アンプルを取り出し室温まで冷却し、黒色固体を得た。固体の赤外分光分析における吸収スペクトルより、固体はフェニレンスルフィド単位からなる化合物(PPS)であることを確認した。固体は1−クロロナフタレンに250℃で一部不溶であったが、不溶部はフェニレンスルフィド構造からなる化合物ではなくパラジウム化合物であることがわかり、生成したPPS成分は可溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドのPPSへの転化率は57%であることがわかった。
なお、ガラス製アンプル内を約0.4kPaに保ち脱揮をしながら、300℃に温調した電気炉内にアンプルを設置した場合の、アンプル内温度を別途測定したところ、電気炉内にアンプルを設置してから約3分後に260℃に、約4分後に290℃に到達し、約5分後以降300℃で安定することがわかった。
実施例3
実施例1で用いたビス(2,4−ペンタンジオナト)パラジウムにかえて、ビス(2,4−ペンタンジオナト)白金(表中にPt(acac)と記載、以下同様)を使用した以外は実施例1と同様の操作を行い、黒色固体を得た。固体の赤外分光分析における吸収スペクトルより、固体はフェニレンスルフィド単位からなる化合物(PPS)であることを確認した。固体は1−クロロナフタレンに250℃で一部不溶であったが、不溶部はフェニレンスルフィド構造からなる化合物ではなく白金化合物であることがわかり、生成したPPS成分は可溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドのPPSへの転化率は46%であることがわかった。
比較例1
参考例1で得られた環式ポリフェニレンスルフィド300mgをガラス製アンプルに仕込み、アンプル内を窒素で置換した。300℃に温調した電気炉内にアンプルを設置し、アンプル内を常圧の窒素雰囲気下に保ったまま60分間加熱した後、アンプルを取り出し室温まで冷却し、茶色固体を得た。固体の赤外分光分析における吸収スペクトルより、固体はフェニレンスルフィド単位からなる化合物(PPS)であることを確認した。固体は1−クロロナフタレンに250℃で全溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドのPPSへの転化率は37%であることがわかった。
GPC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドに由来するピークと生成したポリマー(PPS)のピークが確認でき、得られたPPSの重量平均分子量は7.5万、分散度は1.7であることがわかった。結果を表1に示した。
比較例2
参考例1で得られた環式ポリフェニレンスルフィド300mgをガラス製アンプルに仕込み、アンプル内を窒素で置換した後、真空ポンプを用いて約0.4kPaに減圧した。約0.4kPaに減圧してから約10秒後、300℃に温調した電気炉内にアンプルを設置し、真空ポンプによってアンプル内を約0.4kPaに保ち脱揮をしながら60分間加熱した後、アンプルを取り出し室温まで冷却し、茶色固体を得た。固体の赤外分光分析における吸収スペクトルより、固体はフェニレンスルフィド単位からなる化合物(PPS)であることを確認した。固体は1−クロロナフタレンに250℃で全溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドのPPSへの転化率は35%であることがわかった。
GPC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドに由来するピークと生成したポリマー(PPS)のピークが確認でき、得られたPPSの重量平均分子量は7.6万、分散度は1.9であることがわかった。結果を表1に示した。
実施例1、実施例3と比較例1の比較から、環式ポリフェニレンスルフィドを一般式で示される遷移金属化合物であるビス(2,4−ペンタンジオナト)パラジウム、ビス(2,4−ペンタンジオナト)白金存在下、常圧の窒素雰囲気下で加熱することで、より短時間で環式ポリフェニレンスルフィドのポリフェニレンスルフィドへの転化が進行することがわかった。
実施例2と比較例2の比較から、環式ポリフェニレンスルフィドを一般式で示される遷移金属化合物であるビス(2,4−ペンタンジオナト)パラジウム存在下、脱揮条件下で加熱することでも、より短時間で環式ポリフェニレンスルフィドのポリフェニレンスルフィドへの転化が進行することがわかった。
また、実施例1と実施例2の比較から、一般式で示される遷移金属化合物であるビス(2,4−ペンタンジオナト)パラジウムが環式ポリフェニレンスルフィドのポリフェニレンスルフィドへの転化を促進する効果は、常圧の窒素雰囲気下においても脱揮条件下と同等であることがわかった。
Figure 0006354339
実施例4
加熱時間を10分に変更した以外は実施例1と同様の操作を行い、黒色固体を得た。固体の赤外分光分析における吸収スペクトルより、固体はフェニレンスルフィド単位からなる化合物(PPS)であることを確認した。固体は1−クロロナフタレンに250℃で一部不溶であったが、不溶部はフェニレンスルフィド構造からなる化合物ではなくパラジウム化合物であることがわかり、生成したPPS成分は可溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドのPPSへの転化率は53%であることがわかった。結果を表2に示した。
実施例5
加熱時間を10分に変更した以外は実施例2と同様の操作を行い、黒色固体を得た。固体の赤外分光分析における吸収スペクトルより、固体はフェニレンスルフィド単位からなる化合物(PPS)であることを確認した。固体は1−クロロナフタレンに250℃で一部不溶であったが、不溶部はフェニレンスルフィド構造からなる化合物ではなくパラジウム化合物であることがわかり、生成したPPS成分は可溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドのPPSへの転化率は54%であることがわかった。GPC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドに由来するピークと生成したポリマー(PPS)のピークが確認でき、得られたPPSの重量平均分子量は10.5万、分散度は2.5であることがわかった。結果を表2に示した。
実施例6
加熱時間を10分に変更した以外は実施例3と同様の操作を行い、黒色固体を得た。固体の赤外分光分析における吸収スペクトルより、固体はフェニレンスルフィド単位からなる化合物(PPS)であることを確認した。固体は1−クロロナフタレンに250℃で一部不溶であったが、不溶部はフェニレンスルフィド構造からなる化合物ではなく白金化合物であることがわかり、生成したPPS成分は可溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドのPPSへの転化率は31%であることがわかった。結果を表2に示した。
比較例3
加熱時間を10分に変更した以外は比較例1と同様の操作を行い、茶色固体を得た。固体の赤外分光分析における吸収スペクトルより、固体はフェニレンスルフィド単位からなる化合物(PPS)であることを確認した。固体は1−クロロナフタレンに250℃で全溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドのPPSへの転化率は12%であることがわかった。結果を表2に示した。
比較例4
加熱時間を10分に変更した以外は比較例2と同様の操作を行い、茶色固体を得た。固体の赤外分光分析における吸収スペクトルより、固体はフェニレンスルフィド単位からなる化合物(PPS)であることを確認した。固体は1−クロロナフタレンに250℃で全溶であった。HPLC測定の結果、環式ポリフェニレンスルフィドのPPSへの転化率は11%であることがわかった。結果を表2に示した。
実施例4、実施例6と比較例3の比較から、環式ポリフェニレンスルフィドを一般式で示される遷移金属化合物であるビス(2,4−ペンタンジオナト)パラジウム、ビス(2,4−ペンタンジオナト)白金存在下、常圧の窒素雰囲気下で加熱することで、より短時間で環式ポリフェニレンスルフィドのポリフェニレンスルフィドへの転化が進行することがわかった。
実施例5と比較例4の比較から、環式ポリフェニレンスルフィドを一般式で示される遷移金属化合物であるビス(2,4−ペンタンジオナト)パラジウム存在下、脱揮条件下で加熱することでも、より短時間で環式ポリフェニレンスルフィドのポリフェニレンスルフィドへの転化が進行することがわかった。
また、実施例4と実施例5の比較から、一般式で示される遷移金属化合物であるビス(2,4−ペンタンジオナト)パラジウムが環式ポリフェニレンスルフィドのポリフェニレンスルフィドへの転化を促進する効果は、常圧の窒素雰囲気下においても脱揮条件下と同等であることがわかった。
Figure 0006354339

Claims (7)

  1. 環式ポリアリーレンスルフィドを下記一般式で示される遷移金属化合物存在下、非酸化性雰囲気下で加熱することを特徴とするポリアリーレンスルフィドの製造方法。
    Figure 0006354339
    (ここで、Mはニッケルを除く周期表第8族から第11族かつ第4周期から第6周期の金属から選ばれる遷移金属原子を表し、mは0〜10の整数を表し、nはMの価数によって決定される1〜3の整数を表し、RおよびRは炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜24のアリール基、およびハロゲン基からなる群より選ばれる置換基を表し、該アルキル基、該アルコキシ基、該アリール基の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよく、またRおよびRは同一でもそれぞれ異なっていてもよい。)
  2. 前記一般式で示される遷移金属化合物のmが0であることを特徴とする請求項1に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  3. 前記一般式で示される遷移金属化合物のRが炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、および炭素数6〜24のアリール基からなる群より選ばれる置換基であり、Rが炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、および炭素数6〜24のアリール基からなる群より選ばれる置換基であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  4. 前記一般式で示される遷移金属化合物のRが炭素数1〜12のアルキル基から選ばれる置換基であり、Rが炭素数1〜12のアルキル基から選ばれる置換基であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  5. 前記一般式で示される遷移金属化合物のRおよびRがメチル基であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  6. 前記一般式で示される遷移金属化合物のMがパラジウムまたは白金であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
  7. 加熱を大気圧以上の圧力下で行うことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドの製造方法。
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