以下、実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1及び2は、実施形態1に係るVリブドベルトB(摩擦伝動ベルト)を示す。実施形態1に係るVリブドベルトBは、例えば、自動車のエンジンルーム内に設けられる補機駆動用のベルト伝動装置等に用いられるエンドレスのものである。実施形態1に係るVリブドベルトBは、例えば、ベルト長さが700〜3000mm、ベルト幅が10〜36mm、及びベルト厚さが4.0〜5.0mmである。
実施形態1に係るVリブドベルトBは、ベルト内周側の圧縮ゴム層11と中間の接着ゴム層12とベルト外周側の伸張ゴム層13との三重層に構成されたVリブドベルト本体10を備えている。Vリブドベルト本体10の接着ゴム層12の厚さ方向の中間部には、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように配された心線14が埋設されている。圧縮ゴム層11の厚さは例えば1.0〜3.6mmであり、接着ゴム層12の厚さは例えば1.0〜2.5mmであり、伸張ゴム層13の厚さは例えば0.4〜0.8mmである。なお、伸張ゴム層13の代わりに背面補強布が設けられた構成であってもよい。
圧縮ゴム層11は、複数のVリブ15がベルト内周側に垂下するように設けられている。複数のVリブ15のは、各々がベルト長さ方向に延びる断面略逆三角形の突条に形成されていると共に、ベルト幅方向に並設されている。圧縮ゴム層11におけるこれらの複数のVリブ15の表面が動力伝達面としてのプーリ接触面を構成している。各Vリブ15は、例えば、リブ高さが2.0〜3.0mm、基端間の幅が1.0〜3.6mmである。Vリブ数は例えば3〜6個である(図1では6個)。
圧縮ゴム層11は、ゴム成分に、架橋した中空樹脂粒子(以下、「架橋中空樹脂粒子」ともいう。)を含む種々の配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物が加熱及び加圧されてゴム成分が架橋したゴム組成物で形成されている。従って、圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物は、架橋したゴム成分と、そのゴム成分に分散した架橋中空樹脂粒子を含む各種の配合剤とを含有する。実施形態1に係るVリブドベルトBによれば、プーリ接触面を構成する圧縮ゴム層11が、架橋中空樹脂粒子を含有するゴム組成物で形成され、プーリ接触面に架橋中空樹脂粒子が分散して露出しているので、後述の実施例で示すように、被水時におけるスリップによる動力伝達能力の低下を抑えることができる。
圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物のゴム成分としては、例えば、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(以下「EPDM」という。)、エチレン−プロピレンコポリマー(EPM)、エチレン−ブテンコポリマー(EDM)、エチレン−オクテンコポリマー(EOM)などのエチレン−α−オレフィンエラストマー;クロロプレンゴム(CR);クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM);水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)等が挙げられる。ゴム成分は、これらのうち1種又は2種以上をブレンドしたものを用いることが好ましく、エチレン−α−オレフィンエラストマーを用いることが好ましく、EPDMを用いることがより好ましい。
架橋中空樹脂粒子を構成する樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等が挙げられる。架橋中空樹脂粒子は、これらのうちの1種又は2種以上の架橋中空樹脂粒子を用いることが好ましく、架橋した中空のポリオレフィン樹脂粒子を用いることがより好ましい。
架橋した中空のポリオレフィン樹脂粒子の場合、それを構成するポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテンなどのホモポリマー;エチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。架橋した中空のポリオレフィン樹脂粒子は、これらのうち1種又は2種以上の粒子を用いることが好ましく、ポリエチレンのホモポリマーの粒子を用いることがより好ましい。
また、架橋した中空のポリオレフィン樹脂粒子は、プーリ接触面を構成する圧縮ゴム層11の耐摩耗性を高めると共に被水時におけるスリップによる動力伝達能力の低下を抑える観点から、平均分子量(重量平均分子量、数平均分子量)が50万以上の超高分子量ポリオレフィンの架橋中空樹脂粒子であることが好ましく、その平均分子量(重量平均分子量、数平均分子量)は、好ましくは100万以上、より好ましくは180万以上、更に好ましくは200万以上であり、また、耐屈曲疲労性を高める観点から、好ましくは600万以下、より好ましくは350万以下、更に好ましくは300万以下である。
架橋中空樹脂粒子の平均粒子径は、プーリ接触面を構成する圧縮ゴム層11の耐摩耗性を高めると共に被水時におけるスリップによる動力伝達能力の低下を抑える観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは100μm以上であり、また、耐屈曲疲労性を高める観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは170μm以下、更に好ましくは150μm以下である。この平均粒子径は、架橋中空樹脂粒子の走査型電子顕微鏡の観察写真から拡大倍率を考慮して実測した50〜100個の粒子径(最大外径)を算術平均することにより求められる。
架橋中空樹脂粒子の粒度分布は、プーリ接触面を構成する圧縮ゴム層11の耐摩耗性を高めると共に被水時におけるスリップによる動力伝達能力の低下を抑える観点から、好ましくは粒子径が100〜150μmの範囲にあるものが70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。
架橋中空樹脂粒子の形状は、プーリ接触面を構成する圧縮ゴム層11の耐摩耗性を高めると共に被水時におけるスリップによる動力伝達能力の低下を抑える観点から球体状に近いことが好ましく、架橋中空樹脂粒子の最大外径を最小外径で除したアスペクト比は、好ましくは2.00以下、より好ましくは1.50以下、更に好ましくは1.30以下である。このアスペクト比は、架橋中空樹脂粒子の走査型電子顕微鏡の観察写真から拡大倍率を考慮して実測した50〜100個の最大外径を最小外径で除したものを算術平均することにより求められる。架橋中空樹脂粒子は、配合前の形態が、粒子径が10〜50μmの球状粒子が房状に凝集したものである場合、それらの球状粒子が製造時の加熱により融着して一体化することにより球体状乃至楕円体状に形成されたものであることが好ましい。
架橋中空樹脂粒子の135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]は、プーリ接触面を構成する圧縮ゴム層11の耐摩耗性を高めると共に被水時におけるスリップによる動力伝達能力の低下を抑える観点から、好ましくは5dl/g以上であり、また、耐屈曲疲労性を高める観点から、好ましくは50dl/g以下、より好ましくは30dl/g以下である。
架橋中空樹脂粒子の融点は、プーリ接触面を構成する圧縮ゴム層11の耐摩耗性を高めると共に被水時におけるスリップによる動力伝達能力の低下を抑える観点から、好ましくは125℃以上、より好ましくは130℃以上であり、また、好ましくは145℃以下である。この融点は、示差走査熱量測定(DSC)により求められる。
圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物における架橋中空樹脂粒子の含有量は、プーリ接触面を構成する圧縮ゴム層11の耐摩耗性を高めると共に被水時におけるスリップによる動力伝達能力の低下を抑える観点から、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは70質量部以上であり、また、耐屈曲疲労性を高める観点から、好ましくは100質量部以下、より好ましくは90質量部以下である。
架橋中空樹脂粒子は、それを構成するポリマーの分子鎖が架橋していると共に、中空部が形成されている。このような架橋中空樹脂粒子は、未架橋の中実樹脂粒子に放射線を照射して架橋処理を施すことにより調整することができる。中空部は、この処理の際に形成される。未架橋の中実樹脂粒子に放射線を照射すると、ポリマーの分子鎖の切断と架橋とが生じ、その結果、分子鎖が架橋点で結合し、その際にガスが発生して中空部を形成するものと考えられる。放射線としては、例えば、α線、β線、γ線、電子線、イオン等が挙げられるが、電子線又はγ線を用いることが好ましい。放射線の照射線量は、好ましくは50kGy以上、より好ましくは100kGy以上であり、また、好ましくは700kGy以下、より好ましくは500kGy以下である。
圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物は、架橋中空樹脂粒子に加えて、架橋した中実樹脂粒子、未架橋の中空樹脂粒子、及び未架橋の中実樹脂粒子のうちの1種又は2種以上を含有していてもよい。
配合剤としては、カーボンブラックなどの補強材、充填材、加工助剤、加硫助剤、架橋剤、共架橋剤等が挙げられる。
補強材としては、カーボンブラックでは、例えば、チャネルブラック;SAF、ISAF、N−339、HAF、N−351、MAF、FEF、SRF、GPF、ECF、N−234などのファーネスブラック;FT、MTなどのサーマルブラック;アセチレンブラック等が挙げられる。補強材としてはシリカも挙げられる。補強材は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましい。補強材の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30〜60質量部である。
充填材としては、例えば、炭酸カルシウムや層状珪酸塩等が挙げられる。充填材は、これらのうちの一方又は両方を用いることが好ましい。充填材の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10〜60質量部である。
充填材の層状珪酸塩としては、スメクタイト族、バーミュライト族、カオリン族が挙げられる。スメクタイト族としては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト等が挙げられる。バーミュライト族としては、例えば、3八面体型バーミュライト、2八面体型バーミュライト等が挙げられる。カオリン族としては、例えば、カオリナイト、ディッカイト、ハロイサイト、リザーダイト、アメサイト、クリソタイル等が挙げられる。層状珪酸塩は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましい。圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物における層状珪酸塩の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10〜50質量部である。
加工助剤としては、例えば、ステアリン酸、ポリエチレンワックス、脂肪酸の金属塩等が挙げられる。加工助剤は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましい。圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物における加工助剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜3質量部である。
加硫助剤としては、例えば、酸化亜鉛(亜鉛華)や酸化マグネシウムなどの金属酸化物等が挙げられる。加硫助剤は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましい。加硫助剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して例えば1〜10質量部である。
架橋剤としては、例えば、有機過酸化物及び硫黄が挙げられる。架橋剤は、有機過酸化物を単独で用いても、また、硫黄を単独で用いても、更に、それらの両方を併用しても、いずれでもよい。架橋剤の配合量は、有機過酸化物の場合、ゴム成分100質量部に対して例えば0.5〜8質量部であり、また、硫黄の場合、ゴム成分100質量部に対して例えば0.5〜4質量部である。
共架橋剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、液状ポリブタジェエン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド等が挙げられる。共架橋剤は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましい。圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物における共架橋剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5〜7質量部である。
圧縮ゴム層11を形成するゴム組成物は、短繊維を含有していないことが好ましい。但し、耐摩耗性向上の作用効果を損なわない範囲で、短繊維を含有していてもよい。
接着ゴム層12は、断面横長矩形の帯状に構成されている。伸張ゴム層13も、断面横長矩形の帯状に構成されている。伸張ゴム層13の表面は、接触する平プーリとの間で生じる音を抑制する観点から、織布の布目が転写された形態に形成されていることが好ましい。
接着ゴム層12及び伸張ゴム層13のそれぞれは、ゴム成分に種々の配合剤が配合されて混練された未架橋ゴム組成物が加熱及び加圧されて架橋したゴム組成物で形成されている。従って、接着ゴム層12及び伸張ゴム層13のそれぞれは、架橋したゴム成分と各種の配合剤とを含有する。伸張ゴム層13は、平プーリとの接触で粘着が生じるのを抑制する観点から、接着ゴム層12よりもやや硬めのゴム組成物で形成されていることが好ましい。
接着ゴム層12及び伸張ゴム層13を形成するゴム組成物のゴム成分としては、例えば、エチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリロニトリルゴム(H−NBR)等が挙げられるが、圧縮ゴム層11と同一のゴム成分であることが好ましい。
配合剤としては、圧縮ゴム層11と同様、カーボンブラックなどの補強材、充填材、加工助剤、加硫助剤、架橋剤、共架橋剤等が挙げられる。
圧縮ゴム層11、接着ゴム層12、及び伸張ゴム層13は、同じ配合のゴム組成物で形成されていても、また、別配合のゴム組成物で形成されていても、どちらでもよい。
心線14は、ポリエステル繊維(PET)、ポリエチレンナフタレート繊維(PEN)、アラミド繊維、ビニロン繊維等の撚り糸で構成されている。心線14の直径は例えば0.5〜2.5mmであり、断面における相互に隣接する心線14中心間の寸法は例えば0.05〜0.20mmである。心線14は、Vリブドベルト本体10の接着ゴム層12に対する接着性を付与するために、成形加工前にRFL水溶液に浸漬された後に加熱される接着処理及び/又はゴム糊に浸漬された後に乾燥される接着処理が施されている。
次に、実施形態1に係るVリブドベルトBの製造方法について説明する。
実施形態1に係るVリブドベルトBの製造では、図3及び4に示すように、同心状に設けられた、各々、円筒状の内型21及び外型22を備えたベルト成形型20を用いる。
このベルト成形型20では、内型21はゴム等の可撓性材料で形成されている。外型22は金属等の剛性材料で形成されている。外型22の内周面は成型面に構成されており、その外型22の内周面には、Vリブ形成溝23が軸方向に一定ピッチで設けられている。また、外型22には、水蒸気等の熱媒体や水等の冷媒体を流通させて温調する温調機構が設けられている。そして、このベルト成形型20では、内型21を内部から加圧膨張させるための加圧手段が設けられている。
実施形態1に係るVリブドベルトBの製造において、まず、ゴム成分に各配合剤を配合し、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機で混練し、得られた未架橋ゴム組成物をカレンダー成形等によってシート状に成形して圧縮ゴム層用の未架橋ゴムシート11’を作製する。圧縮ゴム層用の未架橋ゴムシート11’には架橋中空樹脂粒子を配合する。この架橋中空樹脂粒子は、未架橋ゴムシート11’への配合前に、未架橋の中実樹脂粒子に放射線を照射する等して予め調製する。この配合前の架橋中空樹脂粒子は、粒子径が10〜50μmの球状粒子が房状に凝集した形態を有していてもよい。
同様に、接着ゴム層用及び伸張ゴム層用の未架橋ゴムシート12’,13’も作製する。また、心線用の撚り糸14’をRFL水溶液に浸漬して加熱する接着処理を行った後、ゴム糊に浸漬して加熱乾燥する接着処理を行う。
次いで、図5に示すように、表面が平滑な円筒ドラム24上にゴムスリーブ25を被せ、その上に、伸張ゴム層用の未架橋ゴムシート13’、及び接着ゴム層用の未架橋ゴムシート12’を順に巻き付けて積層し、その上から心線用の撚り糸14’を円筒状の内型21に対して螺旋状に巻き付け、更にその上から接着ゴム層用の未架橋ゴムシート12’、及び圧縮ゴム層用の未架橋ゴムシート11’を順に巻き付けて未架橋スラブS’を形成する。なお、このとき、未架橋ゴムシート11’,12’,13’を、列理方向がベルト長さ方向(周方向)となるように巻き付ける。
次いで、未架橋スラブS’を設けたゴムスリーブ25を円筒ドラム24から外し、図6に示すように、それを外型22の内周面側に内嵌め状態にセットする。
次いで、図7に示すように、内型21を外型22にセットされたゴムスリーブ25内に位置付けて密閉する。
続いて、外型22を加熱すると共に、内型21の密封された内部に高圧空気等を注入して加圧する。このとき、図8に示すように、内型21が膨張し、外型22の成型面に、未架橋スラブS’のベルト形成用の未架橋ゴムシート11’,12’,13’が圧縮され、また、それらのゴム成分の架橋が進行して一体化すると共に撚り糸14’と複合化し、最終的に、円筒状のベルトスラブSが成型される。架橋中空樹脂粒子は、配合前の形態が、粒子径が10〜50μmの球状粒子が房状に凝集したものである場合、それらの球状粒子が加熱により融着して一体化することにより球体状乃至楕円体状に形成されることが好ましい。このベルトスラブSの成型温度は例えば100〜180℃、成型圧力は例えば0.5〜2.0MPa、成型時間は例えば10〜60分である。
そして、内型21の内部を減圧して密閉を解き、内型21と外型22との間でゴムスリーブ25を介して成型されたベルトスラブSを取り出し、ベルトスラブSを所定幅に輪切りして表裏を裏返すことによりVリブドベルトBが得られる。なお、必要に応じて、ベルトスラブSの外周側、つまり、Vリブ15側の表面を研磨してもよい。
図9は、実施形態1に係るVリブドベルトBを用いた自動車の補機駆動ベルト伝動装置30のプーリレイアウトを示す。この補機駆動ベルト伝動装置30は、VリブドベルトBが4つのリブプーリ及び2つの平プーリの6つのプーリに巻き掛けられて動力を伝達するサーペンタインドライブ方式のものである。
この補機駆動ベルト伝動装置30は、最上位置にリブプーリのパワーステアリングプーリ31が設けられ、そのパワーステアリングプーリ31の下方にリブプーリのACジェネレータプーリ32が設けられている。また、パワーステアリングプーリ31の左下方には平プーリのテンショナプーリ33が設けられており、そのテンショナプーリ33の下方には平プーリのウォーターポンププーリ34が設けられている。更に、テンショナプーリ33の左下方にはリブプーリのクランクシャフトプーリ35が設けられており、そのクランクシャフトプーリ35の右下方にリブプーリのエアコンプーリ36が設けられている。これらのプーリは、例えば、金属のプレス加工品や鋳物、ナイロン樹脂、フェノール樹脂などの樹脂成形品で構成されており、また、プーリ径がφ50〜150mmである。
この補機駆動ベルト伝動装置30では、VリブドベルトBは、Vリブ15側が接触するようにパワーステアリングプーリ31に巻き掛けられ、次いで、ベルト背面側が接触するようにテンショナプーリ33に巻き掛けられた後、Vリブ15側が接触するようにクランクシャフトプーリ35及びエアコンプーリ36に順に巻き掛けられ、更に、ベルト背面側が接触するようにウォーターポンププーリ34に巻き掛けられ、そして、Vリブ15側が接触するようにACジェネレータプーリ32に巻き掛けられ、最後にパワーステアリングプーリ31に戻るように設けられている。プーリ間で掛け渡されるVリブドベルトBの長さであるベルトスパン長は例えば50〜300mmである。プーリ間で生じ得るミスアライメントは0〜2°である。
(実施形態2)
図10及び11は、実施形態2に係るVリブドベルトBを示す。なお、実施形態1と同一名称の部分は、実施形態1と同一符号を用いて示す。
実施形態2に係るVリブドベルトBでは、圧縮ゴム層11は、表面ゴム層11aとコアゴム層11bとを有する。表面ゴム層11aは、Vリブ15の表面全体に沿うように層状に設けられ、表面ゴム層11aにおけるこれらの複数のVリブ15の表面が動力伝達面としてのプーリ接触面を構成している。表面ゴム層11aの厚さは例えば50〜500μmである。コアゴム層11bは、表面ゴム層11aの内側に設けられ、圧縮ゴム層11における表面ゴム層11a以外の部分を構成している。
表面ゴム層11aは、実施形態1における圧縮ゴム層11と同様、架橋したゴム成分と、そのゴム成分に分散した架橋中空樹脂粒子を含む各種の配合剤とを含有するゴム組成物で形成されている。
コアゴム層11bは、架橋したゴム成分と各種の配合剤とを含有するゴム組成物で形成されている。コアゴム層11bを形成するゴム組成物は、架橋中空樹脂粒子を含有していてもよく、そのゴム成分100質量部に対する含有量は、表面ゴム部11aを形成するゴム組成物における架橋中空樹脂粒子のゴム成分100質量部に対する含有量よりも少ないことが好ましい。但し、耐屈曲疲労性を高める観点からは、コアゴム層11bを形成するゴム組成物は、架橋中空樹脂粒子を実質的に含有していないことが好ましく、具体的には、ゴム成分100質量部に対するそれらの含有量が、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは2質量部以下、最も好ましくは0質量部である。なお、コアゴム層11bを形成するゴム組成物は、接着ゴム層12又は伸張ゴム層13を形成するゴム組成物と同一であってもよい。
以上の構成の実施形態2に係るVリブドベルトBによれば、プーリ接触面を構成する表面ゴム11aが、架橋中空樹脂粒子を含有するゴム組成物で形成され、プーリ接触面に架橋中空樹脂粒子が分散して露出しているので、後述の実施例で示すように、被水時におけるスリップによる動力伝達能力の低下を抑えることができる。
実施形態2に係るVリブドベルトBを製造するには、圧縮ゴム層11の表面ゴム層用及びコアゴム層用の未架橋ゴムシート11a’,11b’を作製する。表面ゴム層用の未架橋ゴムシート11a’には、架橋中空樹脂粒子を配合する。次いで、実施形態1と同様の方法により、図12に示すように、表面が平滑な円筒ドラム24上に被せたゴムスリーブ25上に、伸張ゴム層用の未架橋ゴムシート13’、及び接着ゴム層用の未架橋ゴムシート12’を順に巻き付けて積層し、その上から心線用の撚り糸14’を円筒状の内型21に対して螺旋状に巻き付け、更にその上から接着ゴム層用の未架橋ゴムシート12’、並びに圧縮ゴム層11におけるコアゴム層用の未架橋ゴムシート11b’、及び表面ゴム層用の未架橋ゴムシート11a’を順に巻き付けて未架橋スラブS’を形成する。そして、この未架橋スラブS’により図13に示すような円筒状のベルトスラブSを成型する。
その他の構成及び作用効果は実施形態1と同一である。
(実施形態3)
図14及び15は、実施形態3に係るVリブドベルトBを示す。なお、実施形態1と同一名称の部分は、実施形態1と同一符号を用いて示す。
実施形態3に係るVリブドベルトBでは、圧縮ゴム層11は、表面ゴム層11aとコアゴム層11bとを有する。表面ゴム層11aは、多孔ゴムで形成され、Vリブ15の表面全体に沿うように層状に設けられ、ベルト内周側のプーリ接触面を構成している。表面ゴム層11aの厚さは例えば50〜500μmである。コアゴム層11bは、中実ゴムで形成され、表面ゴム層11aの内側に設けられ、圧縮ゴム層11における表面ゴム層11a以外の部分を構成している。
ここで、本出願における「多孔ゴム」とは、内部に多数の中空部を有すると共に表面に多数の凹孔16を有する架橋済みのゴム組成物を意味し、中空部及び凹孔16が分散して配された構造並びに中空部及び凹孔16が連通した構造のいずれも含まれる。また、本出願における「中実ゴム」とは、「多孔ゴム」以外の中空部及び凹孔16を含まない架橋済みのゴム組成物を意味する。
表面ゴム層11aは、実施形態1における圧縮ゴム層11と同様、架橋したゴム成分と、そのゴム成分に分散した架橋中空樹脂粒子を含む各種の配合剤とを含有するゴム組成物で形成されている。表面ゴム層11aは、それに加えて多孔ゴムであることから、その形成前の未架橋ゴム組成物に、多孔ゴムを構成するための未膨張の中空粒子及び/又は発泡剤が配合されている。
未膨張の中空粒子としては、例えば、熱可塑性ポリマー(例えばアクリロニトリル系ポリマー)等で形成されたシェルの内部に溶剤が封入された粒子等が挙げられる。中空粒子は、1種だけ用いても、また、2種以上を用いても、どちらでもよい。中空粒子の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部である。発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミドを主成分とするADCA系発泡剤、ジニトロソペンタメチレンテトラミンを主成分とするDPT系発泡剤、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドを主成分とするOBSH系発泡剤、ヒドラゾジカルボンアミドを主成分とするHDCA系発泡剤などの有機系発泡剤等が挙げられる。発泡剤は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましい。発泡剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部である。
表面ゴム層11aは多孔ゴムであるので、その表面には多数の凹孔16が形成されている。凹孔16の平均孔径は、好ましくは10〜150μmである。凹孔16の平均孔径は、表面画像で測定される50〜100個の数平均によって求められる。
コアゴム層11bは、架橋したゴム成分と各種の配合剤とを含有するゴム組成物で形成されている。コアゴム層11bを形成するゴム組成物は、中空部及び凹孔16を除いた表面ゴム層11aを形成するゴム組成物と同一であってもよい。
コアゴム層11bを形成するゴム組成物は、架橋中空樹脂粒子を含有していてもよく、そのゴム成分100質量部に対する含有量は、表面ゴム部11aを形成するゴム組成物における架橋中空樹脂粒子のゴム成分100質量部に対する含有量よりも少ないことが好ましい。但し、耐屈曲疲労性を高める観点からは、コアゴム層11bを形成するゴム組成物は、架橋中空樹脂粒子を実質的に含有していないことが好ましく、具体的には、ゴム成分100質量部に対するそれらの含有量が、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは2質量部以下、最も好ましくは0質量部である。なお、コアゴム層11bを形成するゴム組成物は、接着ゴム層12又は伸張ゴム層13を形成するゴム組成物と同一であってもよい。
以上の構成の実施形態3に係るVリブドベルトBによれば、プーリ接触面を構成する表面ゴム11aが、架橋中空樹脂粒子を含有するゴム組成物で形成され、プーリ接触面に架橋中空樹脂粒子が分散して露出しているので、後述の実施例で示すように、被水時におけるスリップによる動力伝達能力の低下を抑えることができる。
実施形態3に係るVリブドベルトBを製造するには、圧縮ゴム層11の表面ゴム層用及びコアゴム層用の未架橋ゴムシート11a’,11b’を作製する。表面ゴム層用の未架橋ゴムシート11a’には、架橋中空樹脂粒子に加えて、中空粒子及び/又は発泡剤を配合する。次いで、実施形態2と同様の方法により(図12及び13参照)、表面が平滑な円筒ドラム24上に被せたゴムスリーブ25上に、伸張ゴム層用の未架橋ゴムシート13’、及び接着ゴム層用の未架橋ゴムシート12’を順に巻き付けて積層し、その上から心線用の撚り糸14’を円筒状の内型21に対して螺旋状に巻き付け、更にその上から接着ゴム層用の未架橋ゴムシート12’、並びに圧縮ゴム層11におけるコアゴム層用の未架橋ゴムシート11b’、及び表面ゴム層用の未架橋ゴムシート11a’を順に巻き付けて未架橋スラブS’を形成する。そして、この未架橋スラブS’により円筒状のベルトスラブSを成型する。
その他の構成及び作用効果は実施形態1と同一である。
(その他の実施形態)
上記実施形態1〜3では、プーリ接触面を構成するゴム層を形成するゴム組成物が架橋中空樹脂粒子を含む構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、例えば、プーリ接触面を構成するゴム層を形成するゴム組成物には架橋中空樹脂粒子が含まれていないが、その表面に架橋中空樹脂粒子が分散して付着しているものであってもよい。このような構成は、プーリ接触面を構成するゴム層を成型する金型の成型面及び/又はそこに接触する未架橋ゴム組成物の表面に架橋中空樹脂粒子を分散させて付着させることにより得ることができる。
上記実施形態1〜3では、VリブドベルトBを示したが、特にこれに限定されるものではなく、摩擦伝動ベルトであれば、例えば、図16Aに示すようなベルト内周側のプーリ接触面を構成する圧縮ゴム層11を有するローエッジ型のVベルトBであってもよく、また、図16Bに示すようなベルト内周側のプーリ接触面を構成する内側ゴム層17を有する平ベルトBであってもよい。
(Vリブドベルト)
以下の実施例1〜3及び比較例1〜3のVリブドベルトを作製した。なお、それぞれの構成については表1にも示す。
<実施例1>
密閉式のバンバリーミキサーのチャンバーにゴム成分としてのEPDMを投入して素練りし、次いで、このゴム成分100質量部に対して、ISAFカーボンブラック2質量部、超高分子量ポリエチレンの架橋中空ポリエチレン樹脂粒子(1)80質量部、シリカ40質量部、層状珪酸塩(ベントナイト)40質量部、炭酸カルシウム5質量部、中空粒子2.7質量部、ステアリン酸0.5質量部、酸化亜鉛5質量部、純度40質量%の有機過酸化物架橋剤8質量部(3.2質量部)、及び共架橋剤2質量部を投入配合して混練し、得られた未架橋ゴム組成物を用いて圧縮ゴム層の表面ゴム層を形成した上記実施形態3と同様の構成のVリブドベルトを作製し、それを実施例1とした。
ここで、超高分子量ポリエチレンの架橋中空ポリエチレン樹脂粒子として、三井化学社製の商品名:ハイゼックスミリオン240S(平均分子量:200万、平均粒子径:120μm)に電子線を照射線量200kGyで照射して架橋処理を施すことにより中空部が形成されたものを用いた。
なお、圧縮ゴム層のコアゴム層、並びに接着ゴム層及び背面ゴム層を、EPDMをゴム成分とする他のゴム組成物で形成した。また、心線をポリエチレンテレフタレート繊維製の撚り糸で構成した。更に、圧縮ゴム層の表面ゴム層には表面研磨を施した。そして、ベルト長さを900mm、ベルト幅を21.36mm、ベルト厚さを4.3mmとし、リブ数を6個とした。
<実施例2>
超高分子量ポリエチレンの架橋中空ポリエチレン樹脂粒子として、旭化成ケミカルズ社製の商品名:サンファインUH−850(平均分子量:220万、平均粒子径:150μm)に電子線を照射線量200kGyで照射して架橋処理を施すことにより中空部が形成された架橋中空ポリエチレン樹脂粒子(2)を用いたことを除いて実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、それを実施例2とした。
<実施例3>
ISAFカーボンブラックの代わりにHAFカーボンブラックを用い且つ中空粒子を用いていないことを除いて実施例1と同一構成で且つ上記実施形態2と同様の構成のVリブドベルトを作製し、それを実施例3とした。
<比較例1>
超高分子量ポリエチレンの架橋中空ポリエチレン樹脂粒子(1)の代わりに電子線の照射による架橋処理を施していない三井化学社製の商品名:ハイゼックスミリオン240S、つまり、未架橋の中実ポリエチレン樹脂粒子をゴム成分100質量部に対して50質量部用い且つ中空粒子をゴム成分100質量部に対して2.6質量部及び発泡剤をゴム成分100質量部に対して7.3質量部用いたことを除いて実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、それを比較例1とした。
<比較例2>
未架橋の中実ポリエチレン樹脂粒子をゴム成分100質量部に対して70質量部用い且つ発泡剤を用いていないことを除いて比較例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、それを比較例2とした。
<比較例3>
未架橋の中実ポリエチレン樹脂粒子をゴム成分100質量部に対して100質量部及び中空粒子をゴム成分100質量部に対して3.1質量部用いたことを除いて比較例2と同一構成のVリブドベルトを作製し、それを比較例3とした。
(試験評価方法)
図17はベルト走行試験機40のプーリレイアウトを示す。
このベルト走行試験機40は、最下位置にプーリ径が140mmの亜鉛メッキしたリブプーリである駆動プーリ41が設けられ、その右斜め上方にプーリ径が100mmのリブプーリである第1従動プーリ42(エアコンプーリ)が設けられ、また、駆動プーリ41及び第1従動プーリ42の左斜め上方にプーリ径が60mmのリブプーリである第2従動プーリ43(オルタネータプーリ)が設けられ、更に、第1従動プーリ42左側方にプーリ径が95mmの平プーリであるアイドラプーリ44が設けられている。そして、このベルト走行試験機40は、VリブドベルトBのVリブ側がリブプーリである駆動プーリ41、第1及び第2従動プーリ42,43に接触すると共に、背面側が平プーリであるアイドラプーリ44に接触して巻き掛けられるように構成されている。
実施例1〜3及び比較例1〜3のそれぞれについて、上記ベルト走行試験機50の各プーリに巻き掛け、400Nのベルト張力が負荷されるようにアイドラプーリ44を位置決めし、第1及び第2従動プーリ42,43に負荷(第1従動プーリ42:1.5MPa、第2従動プーリ43:20A)を与え、雰囲気温度25℃の下、駆動プーリ41を750±120rpmの回転数で回転させてベルト走行させた。そして、駆動プーリ41のベルト巻き掛かり始め部分に10mlの水を滴下し、スリップによるベルト走行の停止の有無を確認した。
(試験結果)
表1に試験結果を示す。それによれば、プーリ接触面に架橋中空ポリエチレン粒子が分散して露出した実施例1〜3ではベルト走行は停止しなかったが、プーリ接触面に未架橋の中実ポリエチレン粒子が分散して露出した比較例1〜3ではベルト走行が停止した。このことから、プーリ接触面に架橋中空ポリエチレン粒子が分散して露出した実施例1〜3は、被水時におけるスリップによる動力伝達能力の低下を抑える効果が高いことが分かる。
図18Aは、実施例2のベルト走行後のプーリ接触面のSEM観察写真である。図18Bは、比較例3のベルト走行後のプーリ接触面のSEM観察写真である。これらの写真によれば、図18Aの実施例2では、プーリ接触面に露出した樹脂粒子に中空部が認められるのに対し、図18Bの比較例3では、プーリ接触面に露出した樹脂粒子に中空部が認められない。これらのことから、実施例1〜3では、プーリ接触面に露出した樹脂粒子の中空部による排水効果及び中空部のエッジがプーリに係合することによる駆動効果が得られるものであると考えられる。