以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
以下に説明する本発明の一実施形態では、まず超音波肉厚測定装置10について説明し、その後、配管の内面にて生じる減肉現象を当該超音波肉厚測定装置10による肉厚測定情報を利用して評価する方法について説明する。
<超音波肉厚測定装置10>
超音波肉厚測定装置10は、超音波を用いて配管等の肉厚を測定するための装置である。該超音波肉厚測定装置10の具体的構成は、例えば特許文献1に詳しいが、これについて言及すれば以下のとおりである。
図1〜図11に示すように、本発明の一実施形態に係る配管の超音波肉厚測定装置(以下、単に測定装置ともいう)10は、曲がり管(配管の一例)11の外側に取付け固定されるガイドレール12と、ガイドレール12に沿って移動する走行台車13と、走行台車13に回転自在に設けられる回転リング14と、回転リング14に取付けられる厚み測定センサ15と、走行台車13に設けられたロータリエンコーダ(第1の位置検知センサの一例)16及びマイクロエンコーダ(第2の位置検知センサの一例)17と、厚み測定センサ15で測定された曲がり管11の厚みを、ロータリエンコーダ16及びマイクロエンコーダ17で得られた測定位置と共に表示する制御手段18とを有する。以下、詳しく説明する。
厚みの測定対象である曲がり管11とは、例えば、エルボ管である。なお、曲がり管は、これに限定されず、これらを組み合わせて、又は単体で、例えば、波形又は略波形に構成したものでもよく、またベント管でもよい。
図1に示すように、曲がり管11の外側に取付けられるガイドレール12は、曲がり管11の外側線から一定の距離Dを有して固定されている。この曲がり管11の外側線とは、曲がり管11の軸心と一定の距離を有する線を意味し、本実施形態においては、曲がり管11の最大曲率半径に位置する線、即ち曲がり管11の背側に位置する線(最外側線)L1を意味している。しかし、これに限定されるものではなく、例えば、曲がり管11の最小曲率半径に位置する線、即ち曲がり管11の腹側に位置する線L2、又は曲がり管11の側方、即ち曲がり管11の背側と腹側の中間に位置する線L3でもよい。
ガイドレール12は、ガイドレール12の裏面(曲がり管11との対向面)と、曲がり管11の線L1との距離(最短距離)Dが、曲がり管11の長手方向に渡って、例えば、50mm以上150mm以下の範囲内で一定となる曲率半径を有するように曲げられている。このガイドレール12は、例えば、厚みが1〜10mm、幅が20〜50mmの断面長方形となった金属製のものである。
なお、ガイドレールの形状は、これに限定されるものではなく、例えば、断面正方形でもよく、また断面円形、断面楕円形等でもよく、更には、中空、板、又は棒でもよい。そして、ガイドレールは、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム、又はアルミニウム合金等の金属製で構成されているが、強化プラスチック等も使用でき、更には、ガイドレールの表面に、コーティング材(例えば、ゴム、樹脂等)を貼り着けてもよい。
ガイドレール12の長手方向の両側端部(片側のみでもよい)には、ガイドレール12を曲がり管11へ取付けるためのレール固定部19、20が設けられている。このレール固定部19、20は、それぞれL字状となった接続部21を有し、この接続部21の先側端部には、ガイドレール12がねじ22によって取付けられ、基側平坦部には、鉄製の曲がり管11に吸着する磁石(固定手段の一例)23がボルト24によって取付けられている。
この磁石23は、曲がり管11と接触する断面がV字状となっており、このV字状の2つの面が、曲がり管11を挟むようにその表面に当接する構成となっている。このため、曲がり管11の直径が多少変わっても、磁石23の2つの面が曲がり管11の表面に接触する範囲であれば、1種類の磁石で直径の異なる複数種類の曲がり管に対応できる。なお、曲がり管が鉄でなく、例えば、磁性を有しない金属(例えば、ステンレス)、セラミックス、プラスチック、又はゴムで構成されている場合は、バンド又は固定リングを使用して、レール固定部19、20を曲がり管11に縛り付け固定してもよい。
図1〜図7に示すように、ガイドレール12に取付けられる走行台車13は、下部走行部25、上部走行部26、及び走行駆動部27を有している。
下部走行部25は、図3、図4(A)、(B)に示すように、ガイドレール12を裏面側から囲むように配置される正断面視して溝状の下部走行ベース28を有している。この下部走行ベース28内には、その軸心がガイドレール12の長手方向に直交して配置される対となる走行ローラ軸29が、間隔を有して回転自在に設けられ、各走行ローラ軸29には、ガイドレール12の裏面の幅方向両側に接触する対となる走行ローラ30が設けられている。また、下部走行ベース28内の側部であって、ガイドレール12の幅方向両外側には、ガイドローラ軸31が立設され、このガイドローラ軸31にベアリング32を介して、ガイドレール12を幅方向から挟み込んで接触するガイドローラ33が設けられている。
上部走行部26は、図5、図6(A)、(B)に示すように、ガイドレール12の表面側を覆うように、ねじ34によって下部走行ベース28の上側に取付けられる上部走行ベース35を有している。この上部走行ベース35には、その軸心がガイドレール12の長手方向に直交して配置される対となる走行ローラ軸36が、間隔を有して設けられ、各走行ローラ軸36に、ガイドレール12の表面の幅方向両側に接触する対となる走行ローラ37が、それぞれベアリング38を介して設けられている。
なお、図1に示すように、下部走行部25の走行ローラ30と、上部走行部26の走行ローラ37とは、ガイドレール12の長手方向の異なる位置(本実施形態では、走行ローラ30の走行方向前側と後ろ側に走行ローラ37を配置)に設けられているが、同じ位置でもよい。このように構成することで、下部走行部25の走行ローラ30、ガイドローラ33、及び上部走行部26の走行ローラ37が、それぞれガイドレール12の裏面、側面、及び表面に接触するので、ガイドレール12の長手方向に沿って、走行台車13をスムーズに移動させることができる。
この上部走行ベース35内の側部には、回動軸39が立設され、この回動軸39に、ロータリエンコーダ16が取付けられた載置台40が、ベアリング41を介して回動自在に取付けられている。なお、ロータリエンコーダ16はエンコーダケース42に収納されている。ここで、上部走行ベース35と載置台40とは、引張ばね43で接続され、自由状態では、回動軸39を中心として、載置台40がガイドレール12の幅方向中心位置に向けて付勢されている。
載置台40上に配置されたロータリエンコーダ16の入力軸44は、ベアリング45を介して載置台40の下方に突出して設けられ、しかもガイドレール12の側方に配置されている。この入力軸44には、ガイドレール12の側面に接触する距離測定用ローラ46が取付けられている。これにより、走行台車13がガイドレール12に沿って移動する場合、引張ばね43の力によって、距離測定用ローラ46がガイドレール12の側面に常時接触した状態を維持するため、距離測定用ローラ46の回転角度がロータリエンコーダ16に入力され、走行台車13の移動距離を測定できる。
図3、図5、及び図6(A)、(B)に示すように、上部走行ベース35の上側には、走行駆動部27のケーシング47が取付けられている。
ケーシング47内には、図7(A)〜(C)に示すように、走行台車13を移動させるための駆動モータ48と、ガイドレール12の表面に接触する駆動ローラ49と、駆動モータ48と駆動ローラ49を接続する減速手段50が内装されている。ここで、減速手段50は、駆動モータ48の出力軸51に設けられたモータ平歯車52と、このモータ平歯車52に螺合する車軸用平歯車53と、この車軸用平歯車53に接続され、ケーシング47にベアリング54を介して回転自在に支持されたウォームホイル55と、このウォームホイル55に螺合するウォームギア56で構成されている。また、駆動ローラ49は、ウォームギア56が取付けられ、ケーシング47にベアリング57を介して回転自在に支持された回転軸58に取付けられている。
図1〜図3、図7(B)、(C)に示すように、ケーシング47の上端部に設けられたガイド部59の孔60には、上部走行ベース35に立設されたセット軸61が挿通し、ケーシング47が上部走行ベース35に対して上下動自在に取付けられている。このセット軸61の下側には、高さ位置が固定された止め部62が取付けられ、この止め部62とケーシング47のガイド部59との間に、圧縮ばね63が取付けられ、ガイド部59から突出したセット軸61の上端部に、レバー64が回動自在に設けられている。なお、レバー64は、ケーシング47の上面側に倒したり、また直立状態にすることで、てこと偏心カムを利用して、ケーシング47を上部走行ベース35上に押圧したり、またその押圧を解除したりできる。
このように構成することで、レバー64をケーシング47の上面側に倒した場合、ケーシング47が上部走行ベース35の上面側に押圧されるため、圧縮ばね63が縮み、駆動ローラ49をガイドレール12の表面に接触させた状態を維持できる。これにより、駆動モータ48を駆動させることで、駆動ローラ49が回転し、走行台車13をガイドレール12に沿って移動させることができる。
一方、レバー64をケーシング47に対して直立状態にした場合、圧縮ばね63が自由状態となって、ケーシング47が上部走行ベース35の上面から離れ、駆動ローラ49がガイドレール12の表面と離れた状態を維持できる。これにより、走行台車13をガイドレール12に取付ける際に、駆動ローラ49が上部走行部26の走行ローラ37よりもガイドレール12側へ突出することを防止できるため、ガイドレール12への走行台車13の取付け作業が良好である。
図1、図2、図8(A)〜(C)に示すように、下部走行ベース28の下側には、リング回転駆動部65のフレーム66が取付けられている。
フレーム66には、曲がり管11の軸心と同一方向に配置される回転軸67が、フレーム66の基部と中央部に設けられたベアリング68、69を介して、回転自在に取付けられている。この回転軸67の中央部には、マイタギア70が設けられており、その先部には、駆動平歯車71が取付けられている。
回転軸67に取付けられたマイタギア70を中心としてその両側には、出力軸にマイタギア72が取付けられた駆動モータ73と、入力軸にマイタギア74が取付けられたマイクロエンコーダ17が、それぞれ配置されている。なお、駆動モータ73とマイクロエンコーダ17は、それぞれケース75、76内に収納されている。これらのマイタギア70、72、74は、マイタギア70を中心にして互いに螺合しているため、駆動モータ73の出力がマイタギア72を介して回転軸67を回転させると共に、その回転角度がマイタギア74を介してマイクロエンコーダ17に入力される。
フレーム66の中央部には、ガイドレール12の幅方向に間隔を有して配置されるガイドローラ77、78が、回転自在に設けられている。また、このフレーム66の先部には、吊り下げ状態となった固定板79が設けられ、この固定板79の下部には、ガイドレール12の幅方向に間隔を有して配置されるガイドローラ80、81が、回転自在に設けられている。これにより、ガイドローラ77、78の下方に、ガイドローラ80、81が配置される。
ここで、各ガイドローラ77、78、80、81の回転中心は平行に配置されており、しかもガイドローラ77とガイドローラ80の間隔と、ガイドローラ78とガイドローラ81の間隔とが同一となっている。なお、これらの間隔は、固定板79に設けられた2つの圧縮ばね82により、調整自在となっている。
図1、図2、図8(B)に示すように、リング回転駆動部65には、回転リング14が取付けられている。
回転リング14は、図9(A)、(B)に示すように、曲がり管11の外側周方向に配置されるものであり、曲がり管11の外径よりも大きな内径を有する円形のガイドリング83と、円形のラックギア84を有している。このガイドリング83の片面には、ラックギア84の片面が、その軸心を同一にして、ねじ85により一体的に接続されている。
なお、ガイドリング83は、前記したリング回転駆動部65のガイドローラ77とガイドローラ80との間、及びガイドローラ78とガイドローラ81との間に、その幅方向から挟み込まれるように配置される。また、ラックギア84は、リング回転駆動部65の駆動平歯車71に螺合するように配置される。
このガイドリング83とラックギア84は、それぞれその軸心を中心として2つに分割されており、しかもその分割位置をずらしている。このため、ガイドリング83とラックギア84のずれた部分を重ね合わせ、固定ねじ86によって接続することで、回転リング14を容易に環状に形成できる。
このように、回転リング14を、回転リング14の軸心を中心として2以上に分割することで、回転リング14のリング回転駆動部65への取付け作業、及び曲がり管11への配置作業を容易にできると共に、回転リング14を環状のまま持ち運ぶ必要がないため作業性を良好にできる。なお、回転リングは、分割しなくてもよく、また曲がり管11の外径等に応じて3以上に分割してもよい。更に、回転リングの分割は、回転リングの軸心を中心として等角度に行ったが、異なる角度でもよい。これにより、各ガイドローラ77、78、80、81によって、ガイドリング83を走行台車13に対して回転自在な状態に支持できるので、駆動平歯車71によりラックギア84を回転させ、回転リング14を曲がり管11の軸心を中心として周方向に回転できる。なお、測定誤差が生じない範囲であれば、回転リング14の回転中心と曲がり管11の軸心とが完全に一致しなくてもよい。
図1、図2、図9(A)に示すように、回転リング14のラックギア84の表面には、曲がり管11の表面に押し付けられ、その厚みを測定する厚み測定センサ15が取付けられている。
厚み測定センサ15は、図10(A)〜(D)に示すように、取付け部87を有し、この取付け部87の取付け側平坦部分が、ラックギア84の表面に取付け固定されている。取付け部87の取付け側とは反対側の対向する突出部分には、圧縮ばね88に挿通された揺動ピン89の基部が取付けられ、この揺動ピン89の先部に、首振り軸90を介して探触子ホルダー91が取付けられている。これにより、探触子ホルダー91は、取付け部87に対して上下動可能になると共に、揺動ピン89により前後左右に揺れ動くことができる。
探触子ホルダー91には、超音波探触子(以下、超音波センサ又は単に探触子ともいう)92が、圧縮ばね93を介して上下動可能に取付けられている。また、探触子ホルダー91には、超音波探触子92を囲むように、複数(本実施形態では4個)のボールベアリング94が取付けられ、超音波探触子92が曲がり管11の表面にひっかかることなく、スムーズに移動できるようになっている。
以上に示した厚み測定センサ15は、図1、図2、図9(A)に示すように、ラックギア84に2台取付けられ、しかもこの2台が、ラックギア84の軸心を中心として等角度(180度)、即ち曲がり管11の背側と腹側の対向する位置に、1台ずつ配置されている。なお、ラックギア84に取付ける厚み測定センサ15は、1台でもよく、また3台以上でもよい。また、厚み測定センサ15をラックギア84に2台以上取付ける場合は、ラックギア84の軸心を中心として等角度に取付けることが好ましいが、異なる角度でもよい。
図11に示すように、配管の測定装置10は、制御手段18を有している。
この制御手段18は、1ch超音波P/R、2ch超音波P/R、マイコン、交流100V電源に接続されるDC電源(12V)、及びコンピュータを備えている。ここで、1ch超音波P/Rと2ch超音波P/Rは、共にパルサーレシーバである。なお、1ch超音波P/Rと2ch超音波P/Rは、図7(A)に示すように、それぞれケーブル96、97を介して走行駆動部27のケーシング47に接続され、このケーシング47に接続されたケーブル98、99により、曲がり管11の背側と腹側に配置された厚み測定センサ15の超音波探触子(1ch探触子、2ch探触子)92に接続されている。
マイコンは、走行駆動部27のロータリエンコーダ16と、リング回転駆動部65のマイクロエンコーダ17のアナログ信号を、デジタル信号に変換する機能を有している。更に、走行駆動部27のロータリエンコーダ16の出力信号に基づき、駆動モータ48に作動信号及び停止信号を送信する機能と、リング回転駆動部65のマイクロエンコーダ17の出力信号に基づき、駆動モータ73に作動信号及び停止信号を送信する機能も有している。
DC電源は、上記した1ch超音波P/R、2ch超音波P/R、及びマイコンに、それぞれ電力供給を行っている。
なお、マイコンは、図7(A)に示すように、走行駆動部27のケーシング47に接続されたケーブル100を介して、走行駆動部27のロータリエンコーダ16及び駆動モータ48の信号の入出力と、駆動モータ48への電力供給の制御を行い、走行駆動部27のケーシング47に接続されたケーブル101を介して、リング回転駆動部65のマイクロエンコーダ17及び駆動モータ73の信号の入出力と、駆動モータ73への電力供給の制御を行っている。
更に、マイコンは、ディスプレイを備えたコンピュータに接続されている。このコンピュータは、マイコンによって、走行台車13をガイドレール12に沿って移動させ、しかも回転リング14をリング回転駆動部65によって回転させるため、測定条件の入力を行うものである。更に、厚み測定センサ15の超音波探触子92で測定した曲がり管11の厚みを、ロータリエンコーダ16及びマイクロエンコーダ17で得られた測定位置と共にディスプレイに出力表示する機能も有している。この表示に際しては、コンピュータのディスプレイに、曲がり管11の全表面を展開状態で示し、しかも曲がり管11の厚みを色分け表示するが、これに限定されるものではない。
以上に示したように、配管の測定装置10を構成することで、従来測定が困難であった曲がり管11の厚み測定を、簡単な装置構成で容易に実施できる。
続いて、本発明の一実施形態に係る配管の検査方法について、図1、図2を参照しながら説明する。
まず、超音波探触子92を取付け部87に取付け、その板厚校正を行う。そして、曲がり管11の外径に応じた内径を備える回転リング14を選択し、この回転リング14のラックギア84に取付け部87を取付けた後、この回転リング14を2つに分割する。この分割された一方側のガイドリング83を、リング回転駆動部65のガイドローラ77とガイドローラ80との間、及びガイドローラ78とガイドローラ81との間に配置する。このとき、分割された一方側のラックギア84についても、リング回転駆動部65の駆動平歯車71に螺合するように配置する。
次に、曲がり管11の背側に位置する線L1の最大曲率半径に対応した曲率半径を有するガイドレール12を選択し、このガイドレール12の両側にレール固定部19、20を取付ける。そして、レール固定部19、20の磁石23を曲がり管11の表面に接触させることにより、曲がり管11の背側にガイドレール12が取付け固定される。これは、曲がり管11が鉄製であるため可能であるが、曲がり管が鉄製でない場合は、磁石23の部分を、バンド等を用いて、曲がり管に縛り付けてもよい。これにより、曲がり管11の背側の線L1から一定の距離Dを有して、曲がり管11にガイドレール12を固定できる(以上、ガイドレール取付け工程)。
続いて、一方側のレール固定部19(レール固定部20でもよい)のみをガイドレール12から外し、走行台車13の下部走行部25と上部走行部26との間に形成される開口部を、ガイドレール12に差し込んだ後、再度、ガイドレール12をレール固定部19に取付ける。なお、ガイドレール12への走行台車13の取付けの際は、走行台車13の走行駆動部27に設けられたレバー64をケーシング47に対して立設状態とし、駆動ローラ49を自由状態にして行い、取付けた後は、レバー64をケーシング47の上面に対して倒し、駆動ローラ49をガイドレール12の表面に押し付ける。これにより、曲がり管11の外側に取付け固定されたガイドレール12に、走行台車13を移動可能に取付けることができる。
次に、分割された回転リング14の他方側を、曲がり管11の腹側を外側から囲むように配置し、このガイドリング83とラックギア84のずれた部分を、前記した一方側のガイドリング83とラックギア84のずれた部分に重ね合わせ、分割した状態の回転リング14を固定ねじ86によって繋げ、回転リング14を環状に形成する。これにより、曲がり管11の外側周方向に配置される回転リング14が、走行台車13に回転自在に取付けられると共に、厚み測定センサ15の超音波探触子92を、曲がり管11の表面に押し付けることができる。なお、分割された回転リング14の一方側は、予めリング回転駆動部65へ取付けていたが、ガイドレール12に走行台車13を取付けた後に、リング回転駆動部65へ取付けてもよい。
そして、走行台車13を、曲がり管11の測定開始位置まで移動させた後、図7(A)に示すように、厚み測定センサ15の超音波探触子92に接続されたケーブル98、99と、リング回転駆動部65に接続されたケーブル101と、制御手段18に接続されたケーブル96、97、100を、それぞれ走行駆動部27のケーシング47に接続する。
このように、各ケーブル96〜101の接続が終了した後、制御手段18を操作し、配管の測定装置10の各種動作確認を行う。具体的には、走行台車13がガイドレール12の長手方向に沿ってスムーズに走行するか否か、リング回転駆動部65により回転リング14が曲がり管11の外側周囲を、曲がり管11の軸心を中心として180度の範囲で回転(又は回動)するか否かを確認する。これらの動作確認が終了すれば、曲がり管11の厚み測定を行う(以上、厚み測定準備工程)。
曲がり管11の厚み測定に際しては、制御手段18のコンピュータに測定条件を入力し、走行駆動部27のロータリエンコーダ16からの出力に基づいて、駆動モータ48を駆動させ、走行台車13をガイドレール12に沿って所定ピッチ(例えば、0.5〜5mmの範囲)で移動させる。このとき、走行台車13がガイドレール12を所定ピッチ移動するごとに、制御手段18により、リング回転駆動部65のマイクロエンコーダ17からの出力に基づいて、駆動モータ73を駆動させ、回転リング14を曲がり管11の軸心を中心としてその周方向に回転させ、所定ピッチ(例えば、0.5〜5mmの範囲)で超音波の波形を収録する。
この回転リング14には、回転リング14の軸心を中心として等角度に、厚み測定センサ15が2台取付けられている。このため、各厚み測定センサ15による曲がり管11の周方向の厚み測定範囲は、曲がり管11の背側の線L1を中心として±90度の範囲(合計180度の範囲)と、曲がり管11の腹側の線L2を中心として±90度の範囲(合計180度の範囲)の2つに分割でき、測定時間の短縮が図れる。
このとき、各厚み測定センサ15の超音波探触子92から超音波を発し、反射されるエコー(以下、反射エコーともいう)を検出して、演算によりその位置と厚みを計算し、曲がり管11の2次元平面の展開図に、その分布状況を、所定の厚み範囲ごとに色分けして図示する。以下、この方法について、図12〜図15を参照しながら説明する。
まず、図12に示すように、前記した方法で、制御手段18のコンピュータに測定条件を入力し(ステップS1)、各厚み測定センサ15による測定を開始する(ステップS2)ことで、測定データの収録を行う(ステップS3)。この測定データとは、検出される反射エコーと、ロータリエンコーダ16及びマイクロエンコーダ17のカウント、即ち超音波探触子92の曲がり管11の軸心方向(X方向)及び周方向(Y方向)の移動距離である。これにより、曲がり管11の位置ごとの厚みが計算される(ステップS4)。
そして、厚み測定センサ15の超音波探触子92により測定された曲がり管11の厚み(反射エコーについても)を、ロータリエンコーダ16及びマイクロエンコーダ17で得られた測定位置(以下、位置情報ともいう)と共に、コンピュータのディスプレイに表示する(状況表示:ステップS5)。このとき、曲がり管11の厚みを、複数の範囲に分割して色分け表示した肉厚分布図を作成することで、例えば、薄くなった箇所の検出を容易にできる。この肉厚分布図は、超音波探触子92の1ch探触子と2ch探触子で別々に作成しているが、1ch探触子と2ch探触子を一緒にして作成してもよい。また、肉厚分布図の作成は、曲がり管11を測定しながらリアルタイムに行うことが好ましいが、測定終了後に行ってもよい。このように、リアルタイムに行った場合には、測定の進捗状況及び測定結果が容易に確認できる。
なお、得られた結果が、例えば、極端におかしいというような問題がないものであれば、状況表示を終了し(ステップS6)、このデータをファイルに保存して(ステップS7)、測定を終了する。一方、上記した問題があれば、再度ステップS3へ戻り、必要なデータが得られるまで、ステップS3〜ステップS5を繰り返し行う。
次に、このファイルを使用して、曲がり管11の各種情報を表示する方法について、図13を参照しながら説明する。
まず、前記したファイルを読み込み(ステップS8)、1ch探触子と2ch探触子を一緒にした曲がり管11の肉厚分布図を作成する(ステップS9)。そして、曲がり管11の各種情報を、ディスプレイ上に表示する(ステップS10)。この情報には、例えば、前記した反射エコー、位置情報、曲がり管11の断面図、及び肉厚分布図(補正あり又は補正なし)がある。
このように、曲がり管11の各種情報をディスプレイ上に表示した後、知りたい情報を変える場合は、表示モードの切り替えを行ってステップS9に戻り、再度ステップS10で情報を表示する。また、他の曲がり管11の各種情報を表示する場合には、ファイルを選択し直すため、ステップS8へ戻り、ステップS9、ステップS10を順次行う(ステップS11)。そして、情報の確認が終われば、終了する。
なお、曲がり管11の1ch探触子と2ch探触子を一緒にした曲がり管11の肉厚分布図を作成するに際しては、曲がり管11の展開図を作成する必要がある。ここで、曲がり管11の曲率を補正することなく作成した場合、曲がり管11の軸心方向(X方向)と周方向(Y方向)の位置は、直感的には分かりやすいが、曲がり管11の背側に対して腹側の距離が短いため、ディスプレイ上では、曲がり管11の腹側に近づくと共に、X方向に拡大されて表示される。その結果、厚みの減少領域が横に広がって表示され、現実と異なった判断がなされることになる。しかし、曲がり管11の曲率を補正して作成した場合、この不具合が解消され、現実に即した形状で曲がり管11の厚み分布をみることができる。ここで、曲がり管11の断面図を表示する場合には、同時に、曲率補正した線を、曲がり管11の展開図上に位置させることで、曲がり管11の断面位置の把握が容易になる。この曲率補正の有無は、肉厚分布図の使用状況により、切り替えて表示する。
続いて、曲がり管11の展開図の作成方法について、図14、図15を参照しながら説明する。
前記したように、曲がり管11の厚み測定は、曲がり管11の軸心を中心として、超音波探触子92を曲がり管11の周方向に回転させ、曲がり管11の周方向の連続厚みの測定を行った後、超音波探触子92を曲がり管11の軸方向に、一定のピッチで移動させる操作を繰り返すことにより行う。このため、図14に示す90度の曲がり部の全厚みの測定を行う場合、内側の超音波探触子の移動ピッチは、外側の移動ピッチの(F−d/2)/(F+d/2)倍に小さくなる。なお、Fは、曲がり管の一端面から他端面の軸心位置までの距離であり、dは曲がり管の外径である。
従って、厚み測定結果を展開図に色分け表示するに際し、曲がり管の展開図を長方形の平面で表示しようとすれば、曲がり管の背側と原側に同一寸法の減肉部が存在する場合、背側よりも腹側の方が大きな減肉部であるかのように表示されてしまう。そこで、周方向の各位置における曲率半径を求めて、曲がり管の展開図を作成することにより、曲がり管の背側と腹側で、同様の評価ができるようにする。日本工業規格(JIS)では、90度の曲がり管の寸法は、図14に示すように、外径dと、曲がり管の中心から端面までの距離Fとで規定されている。このとき、曲がり管の断面において、背側OからP(任意の位置)までの周方向の距離yは、(1)式で示される。
y=πd(180°−θ)/360° ・・・(1)
また、Pにおける曲がり管の曲率半径Rは、(2)式で求めることができる。
R=F−(d・cosθ)/2 ・・・(2)
これにより、Pにおける探触子の移動ピッチは、背側Oにおける移動ピッチのR/(F+d/2)倍となり、図15に示す展開図を作成できる。なお、この展開図は、「90°エルボ 150A ロング」の曲がり管の展開図である(d=165.2mm、F=228.6mm)。そして、このように作成した展開図に対して、厚み測定結果を色分け表示する。
このように、曲がり管11の展開は、曲がり管11の線L2で行っているが、曲がり管11の他の線L1又は線L3で行ってもよい(以上、測定結果出力工程)。
<超音波肉厚測定装置10を用いた配管の減肉評価方法>
次に、上述の超音波肉厚測定装置10を用いた配管の減肉評価方法について、超音波肉厚測定装置10で得られる肉厚分布図から配管の減肉評価をする手順の一例を示しながら説明する(図16〜図32参照)。
(1) まず、超音波肉厚測定装置10から得られる肉厚分布図(マッピング図)から、測定した範囲全部又は測定した範囲から切り出した単位面積(一例として、64画素×64画素=192mm×192mmの領域からなる単位面積)の肉厚(板厚)情報及び測定位置情報(x,y方向)のデータを抽出する(図16、図17参照)。ここでは、配管の測定対象領域がほぼ平面とした場合の、当該平面((x,y)平面)内における直交座標軸をそれぞれx軸、y軸とし、軸方向距離をx軸、周方向距離をy軸に表している。超音波肉厚測定装置10から得られる肉厚情報は、x,y方向の広がりをもつ離散データ(情報)であるということができる。
(2) 得られた肉厚測定情報において、例えば欠測値が含まれている場合は(図16のマッピング図内の白抜き表示部分および図17を参照)、前処理をして補間する。本実施形態では、当該欠測値となったデータの近傍における測定値の平均値を推定値として補間し、測定画像Bとする(図18参照)。具体的な手順を図19で例示する。欠測値を含む測定値(図19(a)参照)の近傍3×3の領域の有効なデータの平均値(欠測値を含まない平均値)(図19(b)参照)を得て、欠測値を補間することができる。欠測値がより大きな領域として存在する場合、3×3の領域では、有効な平均データを得られないことも起こりうる。その場合、平均値を得る領域を、5×5、7×7と、有効な平均データが得られるまで順次拡大すればよい。また、欠測値の補間と同時に測定異常値の補間を行ってもよい。すなわち、分布図中の欠測値および異常値(隣接した測定値と大きく乖離した測定異常値)となったデータの、近傍の測定値の平均値(欠測値および異常値を除く平均値)を用いて、欠測値および異常値を補間した結果を測定画像Bとする。以上のように、本来得られるはずのない測定異常値が含まれている場合、当該肉厚測定情報はいわば荒れた状態であるが、本実施形態では上述のごとき所要の前処理を施し、測定異常値を除去することによって、後述する基準画像Aiと合成させうる測定画像Bのデータを得ることができる。
要は、例えば配管の内外面に、腐食とは無関係であって、解析するうえで邪魔となる測定異常値(例えば測定面の凹凸、付着物、きず等)が含まれることがある。このような場合、本実施形態では、いわば第1段階として前処理を施し、荒れたデータ、一部が欠落したデータであっても減肉評価に利用できるようにする。
(3) 上記の(1)(2)で得られた肉厚離散データ(情報)から、すべての減肉又は一定程度を超える減肉の位置(肉厚が極小値となっている位置)を特定する。本実施形態では、まず、測定画像Bを、適当なサイズの平滑化係数を持つ平滑化フィルタを用いて平滑化し、これを画像Sとする。図20、図21に、平滑化係数の例を示す。図22に平滑化係数のサイズを変えて得た平滑化画像Sを2例挙げる。さらに、平均(例えば当該処理領域の平均)の肉厚(板厚)を一様な値として持つ画像から画像Sを減算した画像を画像Tとする(図示省略)。この画像Tをスキャンし、注目点の周囲8点のいずれよりも大きい値を持つ点を抽出し(ピークの検出)、その位置(平面座標値)と値(=減肉量、すなわち、該平面座標値に対応した肉厚の情報)を記録する。ピーク検出手順において、サイズの小さな(あるいは大きな)平滑化係数を用いると小径(あるいは大径)の減肉を抽出しやすくなる。実際の減肉は、小径の減肉と大径の減肉が重畳したものである場合もある。小径の減肉と大径の減肉を漏れなく検出するためには、平滑化サイズを変えて、ピーク検出をすることが望ましい。図23に、平滑化サイズを変えて抽出したピーク位置(図23(a)および(b))と、これらを重ね合わせた図(図23(c))を示す。画像Tをスキャンするとき、値が一定以上のピーク(平滑化画像における極小値)を記録すれば、一定以上の減肉(極小値)のみを抽出できる。
(4) 減肉形状を回転体形状で模擬した基準画像Aを作成する。本実施形態では、このような基準画像Aを、いわば減肉の形を模擬した参照形状として利用する。ここでは、回転体の基部の直径Dを変えたいくつかの基準画像Ai(i=1〜n)を作成しておく(図24、図25参照)。例えば、回転体は以下のような式(数式2)で与えられる。基準画像Aの高さは無次元値(例えば1)である。
[数2]
r=√((x-x0)^2+(y-y0)^2), z=(2*r/D)^2-1,
(ただし、z>0の場合は、z=0とする。)
r:半径
x:x方向位置
y:y方向位置
z:画像高さ
D:回転体の基部の直径D
(5) 減肉の画像と基準画像との相関をみるパターンマッチング手法を実施する。本実施形態では、基準画像Ai(本実施形態では、i=1〜9)のフーリエ変換後の位相データと、測定画像Bのフーリエ変換データを合成し、これを逆フーリエ変換した画像を画像Ci(i=1〜9)とする(図26参照)。この画像Ciには、基準画像Aと測定画像Bとの相関の程度に関する情報が含まれる。特定された各々の極小値について、画像Ciの当該位置を参照し、その値が最も大きい画像Ciを探索する。つまり、画像を少しずつずらして相関をみるように、位相限定相関法に似た処理を行い、極小位置にある減肉の形状と最も高い相関が得られる基準画像Aj(本実施形態では、j=1〜9)を決定し、該決定した基準画像Aj(すなわち、高相関基準画像Ax)の直径Dを、当該測定画像Bにおける減肉の大きさとする。
なお、基準画像Aiとしてある所定の形状を模擬し、i=1〜nの複数種類の基準画像Aiを適用して測定画像Bとの相関を求める場合、当該基準画像Aiの振幅はさしたる意味を持たない。そこで、上述のように、本実施形態では、基準画像Aiのフーリエ変換後のデータから振幅に関するデータを除き、位相に関するデータのみを合成している(図27参照)。このように、当該基準画像Aiの振幅に関するデータを除いてから合成することによっても、配管の内面減肉のリスクを定量的に提供することができる。
また、本実施形態では、上述の合成を、基準画像Ai(本実施形態では、i=1〜9)のフーリエ変換後の位相データと、測定画像Bのフーリエ変換データとを乗算する。より詳細には、基準画像Aiのフーリエ変換後の位相データにおける各画素と、測定画像Bのフーリエ変換後のデータにおける画素に対応する各画素とを乗算することによって行う。本実施形態の場合、基準画像Aのフーリエ変換後のデータ(位相データ)と、測定画像Bのフーリエ変換後のデータとが同じサイズであることから、同じ箇所どうしの画素を乗算し、その値を結果として出力する(図27参照)。
なお、以下では簡単な説明にとどめるが、パターンマッチング手法としては、(a)上述した手法があり、さらにこの他、(b)基準画像Aのフーリエ変換データと、測定画像Bのフーリエ変換データを合成し、これを逆フーリエ変換した画像Cを利用する手法(図28参照)、(c)基準画像Aのフーリエ変換後の位相データと、測定画像Bのフーリエ変換後の位相データを合成し、これを逆フーリエ変換した画像Cを利用する手法(図29参照)などがある(なお、フーリエ変換、逆フーリエ変換を経由する相互相関の計算方法が記述された文献として「信号処理 森下巖、小畑秀文著 計測自動制御学会発行」などがあり、指紋一致判別に応用された位相限定相関の使用例が記述された文献として「特許庁 標準技術資料 指紋/照合・判定技術/画像型/パターンマッチング方式」などがある)。ところが、(b)の手法(相関法)は、基準画像Aと測定画像Bとの相関をとることに相当することから、相関のピークがブロードで緩やかになりすぎる場合があり、(c)の手法(位相限定相関法)は、基準画像Aの輪郭と測定画像Bの輪郭との相関をとることに相当することから、エッジの情報だけが取り出されたようになって相関のピークがシャープすぎてしまう場合がある。また、基準画像と測定画像の近似度が低い場合、相関値が十分に得られないことが起こりえる。この点、(a)基準画像Aのフーリエ変換後の位相データと、測定画像Bのフーリエ変換データとを合成する本実施形態のパターンマッチング手法は、いわば“半”位相限定相関法といえるものであり、(b)や(c)の短所を補いうるものである。このことを数値例により示す。原画像(図30(a))のフーリエ変換結果から位相成分のみを取り出し、逆フーリエ変換を行った結果を図30(b)に示す(見やすくするためコントラストの調整を行っている)。位相データが原画像から輝度情報を除去し輪郭情報のみを保存していることがわかる。図31および図32には、前述の3つの相関手法の差異を示す。図31に示すケースでは、測定画像が、数式3において、D=10としたものであり(図31(a))、基準画像は、数式3において、D=2〜25とし、3種の方法で相関を求めたものである。
[数式3]
r=√((x-x0)^2+(y-y0)^2), z=1-(2*r/D)^2, 0≦x,y≦64, x0=y0=32,
(ただし、z<0の場合は、z=0とする。)
図31(b)は、3種の相関手法での相関値ピークを、横軸を基準画像の基底部直径Dにとってプロットしたものである。いずれも、測定画像の基底部直径D=10にピークがある。通常の相関手法ではピークがなだらかであるが、位相限定相関法ではピークが先鋭であり、“半”位相限定相関法においてもピークは十分先鋭である。一方、図32では、測定画像を、基底部の大きさが11×11の四角柱状の画像とし、これを数式3の基底部の半径Dを振って、測定画像の特徴(四角状の基底部の大きさ)を、近似的に直径で捉えようとするものである。図32(b)に相関値ピークを示す。通常の相関手法ではピークがなだらかであり、大きさを捉えがたい。“半”位相限定相関法においては、ピーク値が比較的高く、ピークを与える半径は13となった。この値は、大きさ11の正方形の内接円と外接円の中間の大きさであり、近似的な大きさが適切に得られていると考えられる。位相限定相関法では、相関ピークが低くなっており、ピーク位置もD=15程度と前述の適切と思われる値13よりも大きい。図31に示すケースは、測定画像と近似画像が同種類(パラメータDを合わせれば一致する)の場合であり、図32に示すケースは、測定画像と近似画像が同種類でない(パラメータDを合わせても一致しない)場合である。このように、“半”位相限定相関法においては、基準画像と測定画像の近似度が高い場合でも低い場合でも、ほどよい感度(シャープさ)で相関演算を行い、近似的な大きさの抽出が可能である。
(6)減肉の深さと減肉の大きさとの比から、配管の内面減肉の進展リスクを求める。本実施形態では、最も高い相関が得られた基準画像(高相関基準画像)Axの直径をD、上述のパターンマッチングにより当該模擬減肉形状の位置において得られた減肉の深さのうち最大のもの(当該位置で得られた最大減肉深さ)をHとし、H/D値を抽出する。このH/D値は、減肉の範囲の径Dを横軸、減肉の深さHを縦軸としたグラフにおける傾斜として表される。より詳しくは、上述のパターンマッチングで得られた円形の減肉の範囲の径Dと各減肉範囲径Dのなかで最も減肉が深い点Hを抽出してそれぞれプロットし、これらプロットした点を結ぶ(図33参照)。結んだ線の傾きからH/D値の高低を判断することができる。例えば、減肉の無い新品の配管に適用した場合は図34に示すような結果となり、一様に減肉の進んだ配管に適用した場合は図35に示すような結果となる。
このようにして得られたH/D値ないしは該H/D値を表す線分の傾きに基づき判断し、H/D値が低い場合は、減肉の厚さ方向への進展リスクは小さく、一方H/D値が高い場合は、減肉の厚さ方向への進展リスクが大きいと判断することができる。内面減肉のリスクが大きい配管系は、従来通りのスポット的な超音波肉厚検査では見逃しが生じるリスクが大きく、このような配管は検査範囲を拡大するなどといった対策を講じる必要がある。また、リスクが大きいと判断される配管系と、類似の流体環境や運転条件の環境下にある他の配管に対しても内面減肉のリスクが考えられ、この評価を各配管系に実施し、リスクに応じた検査を適用することで化学プラント等における膨大な数の配管の減肉リスクの低減が図れる。
ここまで説明したように、本実施形態における超音波肉厚測定装置10を用いた配管の減肉評価方法は、配管の内面減肉の進展リスクのパラメータとしてH/D値(Hは当該位置で得られた最大減肉深さ、Dは最も高い相関が得られた基準画像Axの直径)から、配管の内面減肉のリスクを定量的に評価するものである。すなわち、減肉が局所的である場合、リスクが一定の度合いを超えることとなり、減肉速度の予想が難しくなることから、経験則などで安全性を保障することはできなくなる。こうした背景の下、本実施形態の減肉評価方法によれば、
(1)減肉の形態毎に類別化することができる
(2)内面減肉進展リスクによる検査の優先順位付けの定量化ができる(H/Dが小さい→リスクが小さい、H/Dが大きい→リスクが大きい)
(3)減肉リスクに応じた検査方法や管理方法を検討できる(H/Dが大きい→類似環境への水平展開検査や、内面減肉の要因推定が要求される)
(4)局部減肉の位置を推定できる。精度の高い余寿命予測ができる。配管の更新時期や次回検査時期の策定のための基礎データとなる
といった利点を奏することができる。
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば上述した実施形態では、配管の一例として曲がり管11を示したがこれは配管の一例にすぎないことはいうまでもない。
また、上述した実施形態では、減肉現象を評価する手法の好適例として、超音波を使って取得した肉厚測定情報を利用する例を説明したが、超音波以外の手法によって肉厚測定情報(減肉現象)を得ることも可能である。例示すれば、超音波のほか、磁気飽和による渦流探傷方法、放射線透過による肉厚測定方法などにより、配管の肉厚の離散データ、座標データ、画像データを取得することは可能である。ここではこれらの手法を用いた実施形態について特に言及することはしないが、これら手法に関する代表的な文献を挙げておくならば、磁気飽和による渦流探傷方法に関しては特開2010−96504号公報などがあり、また、放射線透過による肉厚測定方法に関しては特開2008−268103号公報、特開2001−4562号公報などがある。