以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。
本発明は、一実施の形態によれば、接合組立装置に関する。図1に本発明に係る接合組立装置の概略図を示す。本発明に係る接合組立装置は、減圧炉11内に、金属線12と、搬送ステージ13と、冷却板15と、熱板16と、活性種生成ガス導入管17と、不活性ガス導入管18とを主として備えてなる。本発明において、活性種生成ガスとは、金属線12により接触分解されて、高い還元性を有する、不対電子を有する元素を生成し得るガスをいう。このような活性種生成ガスは、特定のガスには限定されないが、以下の本実施形態の説明においては、活性種生成ガスの一例として、水素ガスを用いて説明する。
減圧炉11は、炉本体110およびこれにパッキン112を介して被せられ、炉内部を気密状態に保つ蓋体111から主として構成される。減圧炉11には、炉内に水素分子ガスaを供給するための水素分子ガス導入管17、炉内に窒素ガスbなどの不活性ガスを供給するための不活性ガス導入管18、および排気口113が設けられている。炉本体110の底部には、熱板16と冷却板15とが、離間して設置されている。搬送ステージ13は、搬送レール14により、熱板16と冷却板15との間を行き来することができるように構成されている。搬送ステージ13はまた、図示しない別の機構により、鉛直方向上下にも可動に構成される。
減圧炉11内の上部、好ましくは、蓋体111を構成する減圧炉11の天井部であって、熱板16の上方には、金属線12が取り付けられる。金属線12は、金属線12を通電により加熱する加熱手段である炉外の図示しない交流もしくは直流電力供給源に接続されている。なお、この交流もしくは直流電力供給源としては、金属線12への供給電力を調整する機能を備えた電源装置を減圧炉11の外部に備える。このとき、金属線12の周囲は、耐熱性の部材で、かつ絶縁性を確保するように構成する。金属線12の周囲は、非常に高温となり、かつ電流・電圧が印加されるためである。なお、金属線12の取り付け位置は、金属線が後述する所定の箇所に位置するのであれば、減圧炉11の天井部に取り付けられている必要はなく、減圧炉11の側壁部に取り付けられていても、減圧炉11の底部から適当な手段で支持されていても良い。また、金属線12は熱や酸化により劣化しうるため、金属線12は交換可能に減圧炉11に取り付けられていることが好ましい。
金属線12は、1000℃以上、好ましくは1500℃以上、さらに好ましくは1600℃以上であって、好ましくは2000℃以下に加熱することが可能な線状の金属部材であって、水素分子ガスの接触分解反応により、還元性の原子状水素(水素原子)を生成することができるものである。金属線12は、複数回繰り返して使用することが可能であり、例えば、約1000回程度繰り返して使用することが可能であるが、繰り返し使用回数は特定の回数には限定されるものではない。本明細書において、水素分子ガスとは、気体状の水素分子をいい、金属線の加熱により生成される原子状水素と区別して用いられる。金属線を構成する材料は、例えば、タングステン、タンタル、モリブデン、バナジウム、白金、トリウム、ジルコニウム、イットリウム、ハフニウム、パラジウム、ニッケル、レニウム、あるいはこれらの一以上を主成分とする合金であってよく、タングステンを用いることが好ましいが、上記機能を有するものであれば、特定の金属には限定されない。
金属線12は、直径が、例えば、0.1mm〜1.0mm、好ましくは、0.3mm〜0.8mmのものを使用することができるが、このような直径には限定されない。金属線12は、単線であってもよく、2以上の金属線を組み合わせて複線にしたものであってよく、単線もしくは複線とした金属線12を、別々に、複数本設けても良い。またこのような、単線もしくは複線にした金属線12を、例えば、ジグザグ形状(Z字形状、U字形状)、らせん状(渦巻き状)、網目状、格子状、またはこれらを適宜、組み合わせた形状としたものであってもよい。特定の形状には限定されないが、金属線の表面積が大きくなるようにすることが好ましい。水素分子ガスと金属線12との接触面積を大きくすることで、より多くの還元性の原子状水素を生成させるためである。
また、金属線12の取り付け位置については、搬送ステージ13が位置Bにあるとき、搬送ステージ13上に載置する積層体10と金属線12との鉛直方向の距離が、150mm以内であって、30mm以上とすることが好ましく、50〜100mmとすることがより好ましい。積層体10と金属線12との鉛直方向の距離とは、後述するように積層体10と金属線12とが均一になるような位置関係で設けられている場合の金属線12の径の中心と加熱接合する積層体10の上面との距離をいうものとする。なお、積層体10と金属線12との鉛直方向の距離は、搬送ステージ13の鉛直方向上下の調節機構により調節することもできる。特には、金属線12による水素分子ガスの分解活性や、積層体10を構成するはんだの温度を、後述する適切な条件に保つように、当業者が適宜調節することができるように構成される。
減圧炉11内において、搬送ステージ13が、位置Bもしくは位置Cにあるとき、金属線12と、接合対象である積層体10との距離が、均一になるような位置関係であることが好ましい。金属線12と積層体10との距離が不均一であると、金属線12は高温に加熱されるため、積層体10への輻射熱が影響し、積層体10の温度上昇を伴う可能性があるためである。また、減圧炉11内における、金属線12と熱板16との水平方向の位置関係は、接合対象である積層体10の形状を網羅する範囲で、片よりなく金属線を設置することが好ましく、熱板16表面全域を網羅する範囲で設置することがより好ましい。金属線との接触で分解された水素分子ガスは金属線の全方位に放射状に発生するが、距離に応じ減衰するためである。図2(a)は、減圧炉11内の、金属線12上方から炉底の向きに見た場合の、金属線12と熱板16との位置関係を示す図であり、図2(b)は、減圧炉の正面から見た場合の、金属線12と熱板16との位置関係を示す図である。なお、図が煩雑になるのを避けるために、搬送ステージ13の記載は省略している。また、金属線12と熱板16との関係は、必ずしもこの態様に限定されるものではなく、例えば、少なくとも接合対象となる積層体10の表面全域を網羅する範囲で設置されていればよい。
図示する実施形態では、金属線12は、熱板16の上方のみに取り付けられているが、これに加えて、熱板16の四方を取り囲むように、好ましくは、熱板16の加熱面に対して垂直かつ減圧炉11の側壁に平行に金属線12を取り付けてもよい。この場合でも、金属線12と積層体10との距離を、上記適切な距離範囲に保つことにより、原子状水素による還元効果を得ることができる。
冷却板15は、冷却面を少なくとも有し、冷却温度及び速度を調節可能な任意の冷却機構を備えるものであれば、典型的なはんだ付け装置で一般的に使用されるものであってよい。冷却板15は、一例として、炉外の、冷却板15の冷却水dを循環させるチラー20に接続されていてもよい。この場合、炉本体110の、好ましくは底部であって、冷却板15の下方には、冷却水の循環のための図示しない出入口が設けられていてもよい。なお、冷却板15は、他の機構で積層体を冷却するものであっても良い。また、熱板16は、加熱面を少なくとも有し、加熱温度及び速度を調節可能な任意の加熱機構を備えるものであれば、典型的なはんだ付け装置で一般的に使用されるものであってよい。例えば、熱板16としては、搬送ステージ13を介して、積層体10を、常温〜400℃の範囲で加熱可能なヒーター等であってよい。
冷却板15と、熱板16とは、減圧炉11の底部に、離間して設置される。冷却板15と、熱板16とは、例えば、10mm〜50mm程度の距離をおいて、設置されることが好ましい。また、冷却板15の冷却面と、熱板16の加熱面が、減圧炉11内の底部から、略同一の高さに位置するように設置されることが好ましい。また、冷却板15の冷却面と、熱板16の加熱面は、略同一の面積を有することが好ましい。なお、図示する実施形態では、冷却板15、熱板16は、それぞれ、減圧炉11内の底部から離間して設置されている。冷却板15、熱板16から炉本体への熱移動を避け、効率の良い冷却もしくは加熱を行うためである。しかしながら、このような設置態様に替えて、好適な断熱材を配置して、冷却板15、熱板16を減圧炉11内の底部に接して設置することもできる。
図示しない任意選択的な構成として、冷却板15と、熱板16との間に、断熱壁として機能する仕切り板を設けてもよい。また、熱板16の外周に断熱壁を設けても良い。かかる構成により、熱板16と冷却板15とが近接した領域における温度の不均一部分をなくすことができる。かかる構成により、保温効果を奏することができる。
搬送ステージ13は、積層体10を保持し、積層体10の移動手段として機能する。搬送ステージ13及びその駆動機構は、典型的なはんだ付け装置で一般的に使用されるものであってよい。搬送ステージ13は、熱板16と冷却板15との間を、搬送レール14により、水平方向に移動可能に構成される。すなわち、図1における左右方向に移動することができ、位置A、B間、位置C、D間を移動することができる。また、図示しない機構により、鉛直方向にも移動可能に構成され、位置A、B、C、D間を移動することができる。すなわち、図1における上下方向にも移動することができる。搬送ステージ13の鉛直方向の可動範囲は、0mm〜50mmとすることが好ましい。また、この可動範囲は、金属線12と搬送ステージ13との鉛直方向距離を、30mm〜150mm、好ましくは、50mm〜100mmの範囲で調整することができるものであることが好ましい。搬送ステージ13は、その上に着脱可能な均熱板(図示せず)を備えることが好ましい。均熱板は、接合対象となる積層体10を保持することができ、均熱化に供するものであればよく、例えば、2〜3mmのカーボン板からなる均熱板を使用することができる。
水素分子ガス導入管17及び不活性ガス導入管18は、減圧炉本体111に取り付けられる。水素分子ガス導入管17及び不活性ガス導入管18は、それぞれ、炉外の図示しない水素分子ガス供給源および不活性ガス供給源にそれぞれ接続されて、減圧炉11内に、水素分子ガス導入管17及び不活性ガス導入管18を供給する。なお、水素分子ガス導入管17は、水素分子ガスのみならず、その他の活性種生成ガスを、単独であるいは水素分子ガスとともに導入する機能を果たす場合もある活性種生成ガスとしては、水素分子ガスの他に、例えば、アンモニア、四フッ化炭素、六フッ化硫黄などのハロゲン含有ガス等が挙げられるが、これらには限定されない。あるいは、他の活性種生成ガスを減圧炉11内に導入するための、図示しないさらに別の管が設けられていてもよい。また、不活性ガス導入管18は、典型的には窒素ガス導入管であるが、その他の不活性ガスを導入するものであってもよい。
水素分子ガス導入管17は、金属線12の上方、すなわち、蓋体111と金属線12との間に噴出部が位置するように設置する。図が煩雑になるのを避けるために図示省略するが、水素分子ガス導入管の噴出部は、金属線全体へ万遍なく水素分子ガスを吹き付けられる範囲に配管を設置し、金属線12に向けた方向に吹き出し孔を設ける。図1に示す形態の場合には、具体的には、真下に向けた方向に吹き出し孔を設ける。吹き出した水素分子ガスは、金属線12を通過し、その過程で原子状水素に分解され、積層体10へ到達することができる。一方、不活性ガス導入管18は、炉11内に、窒素ガスなどの不活性ガスを略均一に導入して、炉内雰囲気を置換することができるように構成されていればよく、特定の態様には限定されない。
減圧炉11は、内部が真空に耐えることができ、かつ気密性を保持することができる炉体であればよく、その容量等は限定されるものではない。内部が、原子状水素もしくはその他の活性種により劣化されにくい材料で構成されていることが好ましく、例えば、SUS304やSUS316などのステンレスや表面処理を施したステンレス及びアルミニウム合金で構成することができる。減圧炉11の排気口113は炉内を真空引きするために用いられるほか、炉内で積層体10の構成部材の還元の結果生成する、酸素含有化合物や、硫化物、塩化物などを含んだ水素含有化合物等の排出口ともなる。排気口113には、真空ポンプ等の減圧装置30が接続される。
減圧炉11内には、さらに、図示しない圧力測定装置及び/または温度測定装置を備えてもよい。炉内の全圧、及び任意選択的に水素分圧を、圧力測定装置を用いてモニタリングすることで、及び/または積層体10を構成する部材や金属線12の温度を温度測定装置を用いてモニタリングすることで、減圧炉11内部における反応の調節が可能になる。
このような接合組立装置は、少なくとも1つの被接合部材と少なくとも1つのはんだ材との積層体のはんだ接合のために用いられる。典型的には、金属回路板を有するセラミック等の絶縁基板上にシリコンチップ等の素子がはんだ付けされたものを、金属ベース上にはんだ付けしてなるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)モジュールやIPM(Intelligent Power Module:インテリジェントパワーモジュール)などのパワーモジュールに代表される半導体装置の製造に用いられる、接合組立装置である。
次に、本発明に係る接合組立装置を、その作動方法の面から説明する。なお、本発明に係る図1に示す接合組立装置の作動方法は、当該接合組立装置を用いた積層体、例えば半導体装置の製造方法としても捉えることができる。したがって、以下の説明は、図1に示す上記接合組立装置を用いた積層体の製造方法に関するものでもある。
すなわち、本発明は、別の局面によれば、接合組立装置の作動方法であって、少なくとも1つの被接合部材と少なくとも1つのはんだ材とを含む積層体を投入した減圧炉内を真空排気する一次減圧工程と、前記一次減圧工程後、前記減圧炉内を負圧の水素雰囲気にして、前記金属線を加熱して、原子状水素を発生させる、熱線式加熱工程と、前記熱線式加熱工程後、前記減圧炉内を正圧の水素雰囲気にして、接合温度まで加熱して前記はんだ材を溶融する加熱工程と、前記加熱工程後、接合温度に保持したまま前記減圧炉内を再び真空雰囲気にしてはんだ融液中の気泡を除去する気泡除去工程と、任意選択的に、前記気泡除去工程後、接合温度に保持したまま再び前記減圧炉内を正圧の水素雰囲気にする再還元工程と、前記再還元工程後、前記減圧炉内を正圧の水素雰囲気にしたまま前記積層体を急冷する冷却工程と、前記冷却工程後、前記減圧炉内を真空排気する二次減圧工程と、前記二次減圧工程後、前記減圧炉内を正圧の不活性ガス雰囲気にした後、前記減圧炉を開放する工程とを含む。
本発明に係る接合組立装置において、接合する対象となるのは、少なくとも1つの被接合部材と、少なくとも1つのはんだ材との積層体であり、特には、少なくとも2つの被接合部材間にはんだ材を介した任意の積層体である。このような接合の対象となる積層体としては、半導体装置、電力変換器、通電回路、プリント配線板等が挙げられるが、これらには限定されない。以下においては、半導体装置の製造を一例として本発明を説明するが、本発明に係る接合組立装置の作動方法は、特定の装置の製造における使用には限定されない。図3を参照すると、接合組立対象となる積層体10は、典型的には、金属ベース1上に、絶縁基板2を、絶縁基板−金属ベース接合用はんだ材3を介して積層し、さらにその上にシリコンチップ4を、シリコンチップ−絶縁基板接合用はんだ材5を介して積層してなる。なお、図3においては、半導体素子の一例として、シリコンチップを挙げて説明したが、本発明において接合対象となる半導体素子は、シリコンチップには限定されず、SiCチップ、GaNチップが挙げられるが、これらには限定されない。
半導体素子のコレクタ電極面、金属ベース、及び絶縁基板の表面を構成する典型的な被接合部材(接合母材)としては、金(Au)、銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、及び/またはこれらの一以上を主成分とする合金が挙げられるが、これらには限定されない。典型的なはんだ材としては、鉛フリーはんだ、好ましくは融点が約190〜290℃の鉛フリーはんだを用いることができ、より好ましくは融点が約210〜290℃の鉛フリーはんだを用いることができる。好ましい実施態様として、融点が約190〜290℃の鉛フリーのSn含有はんだを用いる。Sn含有鉛フリーはんだには、Snはんだ、Sn−Ag系はんだ、Sn−Cu系はんだ、Sn−Sb系はんだ(融点:約190〜290℃),Sn−Bi系(融点:約270℃)などが含まれる。より好ましくはSn−Ag系はんだである。Sn−Ag系はんだには、Sn−Ag、Sn−Ag−Cu、Sn−Ag−Bi、Sn−Ag−Cu−Bi、Sn−Ag−Cu−In、Sn−Ag−Cu−S、およびSn−Ag−Cu−Ni−Geなどが含まれる。より好ましくは、Sn−3.5Ag−0.5Cu−0.1Ni−0.05Geはんだ、またはSn−3.5Ag−0.5Cuはんだである。同様に、Sn−Sb系はんだも、パワーデバイスのダイボンド接合には広く用いられる。Sn−Sb系はんだには、Sn−Sb、Sn−Sb−Ag、Sn−Sb−Ag−Cu、Sn−Sb−Ag−Cu−Niなどが含まれる。好ましくは、Sn−5Sb、Sn−8Sb、Sn−13Sb、Sn−8Sb−3Ag、Sn−8Sb−3Ag−0.5Cu、Sn−8Sb−3Ag−0.5Cu−Ni0.03〜0.07wt.%などである。また、はんだ材は、はんだ板であってもよく、ペースト状はんだであってもよく、その形態は限定されない。
前準備として、図3に示すように、複数の被接合部材およびはんだ材を積層し、積層体10を形成する。次いで、この積層体10を、減圧炉11内の搬送ステージ13上に載置する。積層体10の搬送ステージ13への載置は、適切な装置で行うこともできるし、人が行うこともできる。本発明に係るバッチ式接合組立装置において、1回の操作で接合する積層体10は、図示するように1つであってもよく、複数であってもよい。
図4は、本発明にかかる接合組立装置を用いた半導体装置の製造方法における、積層体を構成するはんだの温度プロファイル、金属線の通電、チャンバー内雰囲気および圧力、並びに処理動作の一例を示すチャートである。搬送ステージ13上に積層体10を載せ、図4に示すチャートにしたがってはんだ付けを開始すると、積層体10が投入された減圧炉11が密封され、減圧装置30が作動して、炉内の減圧が開始される(タイミングT0)。この脱気処理時には、搬送ステージ13は、熱板16および冷却板15のいずれからも離れた待機状態である、図1の位置Aにある。タイミングT0〜T8の操作において、減圧装置30は、常に作動した状態として、減圧炉11内の排気を継続することが好ましい。
前記一次減圧工程後、前記減圧炉内を負圧の水素雰囲気にして、減圧炉内の金属線を加熱して、原子状水素を発生させる熱線式加熱工程を行う(タイミングT1からT2)。かかる工程はまた、負圧の水素雰囲気において、原子状水素により被接合部材及びはんだ材を還元する一次還元工程ということもできる。本明細書において、負圧とは、101.3×103Paより低い圧力をいうものとする。水素分子ガスの流量は、例えばマスフローコントローラーなどで制御される。
熱線式加熱工程では、減圧炉11内の真空度が、1〜10Pa、例えば5.7319Paに達すると、減圧炉11内に水素分子ガスの導入が開始される(タイミングT1)。また、搬送ステージが、熱板16の上方であって、熱板16により直接に加熱されない位置である図1の位置Bへ移動する。すなわち、搬送ステージは、金属線と積層体とが、熱線式加熱処理において適切な位置関係ならびに距離を確保することができる場所に移動する。減圧炉11内の圧力が、1〜100Pa、好ましくは、1〜50Paになると、金属線12は通電により加熱される。図4のチャートにおいては、金属線12に通電されるタイミングあるいは通電可能なタイミングを、「金属線通電」として示した。金属線12の温度が例えば1600℃に達すると、減圧炉11内の水素分子ガスが分解され、高い還元能力を有する原子状水素の状態となる。なお、他の実施形態においては、タイミングT1において搬送ステージが、熱板16の上方であって、熱板16により加熱される位置、すなわち図1の位置Cに移動し、積層体10を加熱しながら、金属線への通電が行われてもよい。
金属線12の好ましい加熱温度は、金属線12を構成する金属材料もしくは合金材料によって異なり、例えば、金属線として、タングステンを用いる場合には、1600〜1800℃とすることができる。積層体10を構成する各部材表面の還元処理に必要な金属線12の加熱継続時間(タイミングT1とタイミングT2までの時間)は、例えば、10秒〜5分とすることができ、好ましくは、30秒〜120秒とすることができる。金属線12の好ましい加熱時間は、金属線12を構成する金属材料もしくは合金材料によっても異なり、例えば、金属線として、タングステンを用いる場合には、30秒〜120秒とすることができる。また、この時の金属線12と積層体10との距離は、30〜150mmとすることが好ましく、50〜100mmとすることがより好ましい。金属線12の加熱温度、通電時間、及び、金属線12と積層体10との距離を適切な範囲に設定することで、金属線12を構成する金属材料による積層体10の汚染などを防止することができる。
この間、減圧炉11内の圧力は、例えば、1〜100Pa、好ましくは10〜50Paに保持されるように、水素分子ガス流量を制御しながら、炉内の減圧(排気)も継続させる。これにより、原子状水素による還元反応の結果、生成されて減圧炉内の雰囲気に放出される物質、例えば、水や水素化合物に属する硫化水素、塩化水素などが、排気cとして減圧炉11外に排出されることとなる。また、金属線12が通電されている期間においては、同時に熱板16により積層体10を構成する各部材が加熱され、積層体10を構成するはんだ材3、5の温度は、部材にもよるが、約100〜200℃となる。このように、熱線式加熱工程では、従来の水素分子ガスによる還元に必要とされていた温度よりも低い温度で還元の効果を実現することができる。なお、熱線式加熱工程においては、原子状水素源として炉内に導入される水素分子ガスに替えて、あるいは水素分子ガスに加えて、アンモニアガス、四フッ化炭素、六フッ化硫黄などのハロゲン含有ガスを使用することもできる。
タイミングT2において、金属線12への通電を停止し、金属線加熱を終了する。また、搬送ステージ13が、位置Bから位置Cに移動する。熱線式加熱工程後、前記減圧炉内を正圧の水素雰囲気にして接合温度まで加熱して前記はんだ材を溶融する加熱工程を実施する(タイミングT2からT3)。かかる工程はまた、熱線式加熱工程後、前記減圧炉内を正圧の水素雰囲気にして前記積層体の各部材の少なくとも被接合表面を還元する二次還元工程ということもできる。本明細書において、正圧とは、101.3×103Paより大きい圧力をいうものとする。加熱工程では、減圧炉11内に水素分子ガスを導入して、炉内を、正圧の水素雰囲気にする。積層体10は位置Cに移動した搬送ステージ13を介して加熱され、目標とする接合温度に到達するまでその状態で保持される。図4における、タイミングT3〜T5における一定温度が、接合温度を示すものである。昇温速度は、昇温速度は、毎秒約1〜30℃とすることができ、約5〜10℃とすることが好ましい。
ここで、熱板16の温度は、はんだの液相線温度に対して約25℃程度以上高い温度であるのが好ましい。例えば、シリコンチップ−絶縁基板接合用はんだ材5として、液相線温度が221℃のSn−3.5Agはんだを用い、かつ絶縁基板−金属ベース接合用はんだ材3として、液相線温度が243℃のSn−8Sbはんだを用いる場合、熱板16の温度は、熱板16の面内のばらつきを考慮して、270〜280℃とすることができる。また、例えば、シリコンチップ−絶縁基板接合用はんだ材5として、液相線温度が221℃のSn−Ag系はんだを用い、かつ絶縁基板−金属ベース接合用はんだ材3として、液相線温度が219℃のSn−3.0Ag−0.5Cuはんだを用いる場合、上記記述にしたがえば、熱板16の温度は、245〜250℃である。しかし250℃以上で水素分子の還元力の効果が明らかに発揮されることを鑑みれば、十分に還元力が発揮されるための熱板16の加熱温度は、290℃以上であって、350℃以下であることが好ましい。なお、半導体素子が、SiCチップである場合には、熱板16の加熱温度は、例えば、290℃〜500℃程度であってよいが、特定の加熱温度には限定されない。
目標の接合温度に到達するまでの昇温過程(タイミングT2〜T3)において、減圧炉11内の圧力が、正圧であるため、積層体10の各部材の隙間に、水素分子ガスが浸透しやすくなり、水素分子ガスによる還元作用も進行する。したがって、絶縁基板−金属ベース接合用はんだ材3、シリコンチップ−絶縁基板接合用はんだ材5、絶縁基板2および金属ベース1の各表面の還元が促進され、被接合表面、例えばワイヤボンディングをおこなう表面などの濡れ性が確保される。また、各はんだ材3、5が溶融し、そのときに生じた気泡に水素分子ガスが充填され、それによって気泡が活性化する。すなわち、気泡中にあるガス成分が水素に置換され、その後のタイミングT3〜T5における気泡除去工程、及び再還元工程よって十分に活性化される。はんだ材3、5が溶融している間は、減圧炉11内の酸素濃度は例えば30ppm以下、好ましくは10ppm以下に保たれ、かつ露点は−30℃以下、好ましくは−50℃以下に保たれる。
前記加熱工程後、積層体10の構成部材が目標の接合温度に達すると、接合温度に保持したまま前記減圧炉内を再び真空雰囲気にしてはんだ融液中の気泡を除去する気泡除去工程を実施する(タイミングT3からT4)。気泡除去工程では、再び減圧炉11内の減圧が開始される(タイミングT3)。そして、減圧炉11内の真空度が例えば10Paに達した後、さらに、例えば、30秒〜1分間、減圧が継続される。それによって、減圧炉11内の真空度はおおよそ1Paに達する。この減圧の継続により、はんだ材と被接合部材との間の濡れ不足によって発生する気泡、およびはんだ材中に含まれる溶存ガスによって発生する気泡の両方がほとんど除去される。ここで、減圧の継続時間(T3〜T4)を30秒〜1分間としたのは、急激な減圧など行う場合には,液体中に発生した気泡が急激に外部に排出される際に、泡が弾ける作用と同様にはんだが飛散し、はんだボールや外周部にはんだの飛散が発生する懸念があるからであり、かつ、減圧を1分間より長く継続してもさらなる気泡除去効果が得られないからである。
タイミングT3からT4までの間は、水素分子ガスを減圧炉11内に導入することなく、単に減圧のみを行ってもよい。あるいは、タイミングT3で減圧を開始した後、いったん真空度を、例えば1〜10Pa程度にまでした後、タイミングT4までに間に、再度、熱線式加熱工程を1回以上実施しても良い。すなわち、炉内に水素分子ガスを供給し、炉内圧力を、1〜100Pa、好ましくは10〜50Paとした後、金属線12に通電して、原子状水素による還元処理を行う。このとき、タイミングT3からT4までの間に、1回だけ、金属線12に通電してもよいし、通電と、通電の停止とを1セットとして、これを複数セット繰り返しても良い。すなわち、減圧炉11内を、負圧の水素雰囲気にして金属線12を加熱し、原子状水素を発生させる熱線式加熱工程を1回以上、断続的に繰り返して含んでもよい。通電と、通電の停止とを1セットとして繰り返す場合、金属線12に通電されるタイミングにおいて、炉内圧力が、1〜100Pa、好ましくは10〜50Paとなり、通電を停止するタイミングにおいて、真空に近い圧力、例えば、1〜10Paとなるように、水素流量及び炉内圧力を制御することができる。また、通電の時間は、前述のように10秒〜5分とすることができ、通電を停止する時間は、30秒〜120秒とすることが好ましい。金属線12への通電と、通電の停止とを繰り返す場合には、繰り返し回数は2〜5回とすることが好ましいが、特定の回数には限定されない。なお、図4において、タイミングT3からT4で「金属線通電」としたのは、この区間で通電を継続することを必須とするものではなく、この区間において通電可能であることを示すものである。
前記気泡除去工程後、接合温度に保持したまま再び前記減圧炉内を正圧の水素雰囲気にする再還元工程を実施する(タイミングT4〜T5)。かかる工程は、タイミングT1〜T2における原子状水素による一次還元工程、タイミングT2〜T3における水素分子ガスによる二次還元工程に次ぐ還元工程であり、三次還元工程ともいう。再還元工程では、まず、炉内に再び水素分子ガスが導入される(タイミングT4)。減圧炉11内の圧力が正圧に達した後、さらに、30秒〜1分間以上5分程度継続して水素分子ガスが導入される(T4〜T5)。但しこの時間は対象の加熱する積層体の大きさによって変わるため、この時間に限定されるものではない。水素分子ガスの導入を継続する理由は、上述した1分間の減圧継続時にはんだ材3、5中の気泡がはんだ材3、5の外に除去される際にはんだ材3、5中に残るトンネル状の孔(気泡が通った跡)を、水素分子ガスの還元作用により塞ぐためである。つまり、はんだ材3、5中の気泡には酸化成分の気体が充満しているので、この気泡が通過する際に接触したはんだ部分は酸化してしまう。そのため、気泡の通過部分のはんだが濡れずに、トンネル状の開気泡が残ってしまう場合があった。タイミングT4〜T5で再還元工程を実施をすることで、この開気泡の中に水素分子ガスが充満することによって、酸化した内面が還元され、はんだの濡れがよくなり、開気泡がはんだで埋まることになる。
また、水素分子ガスの導入を継続するもう一つの理由は、水素分子ガスによる還元と熱板16による加熱保持により、はんだ材5の表面張力を低減させ、それによってはんだフィレット形状を安定化させて、はんだ亀裂発生寿命を向上させるためである。水素分子ガス導入の継続をおこなわないで、炉内減圧の後、直ちに冷却を開始してはんだ材を凝固させると、はんだ材の表面張力が大きいため、はんだフイレット形状が不均一になり、温度サイクルなどによるはんだ亀裂の発生寿命が短くなってしまう場合がある。はんだ材5の表面張力を小さくするには、タイミングT4〜T5において、はんだ材5を接合温度で加熱保持するか、水素分子ガスにはんだ材5をさらす時間を長くするか、またはそれらを組み合わせればよい。ただし、水素分子ガスの導入を1分間より長く継続しても、気泡が通った跡の孔を埋める効果や、はんだフィレット形状の安定化効果にあまり違いはみられないため、水素分子ガス導入の継続時間は、30秒〜1分間とすることが好ましい。
本発明のある実施形態においては、前記熱線式加熱工程から加熱工程(T1〜T3)を複数回繰り返して含んでも良い。すなわち、このタイミングT1〜T3の操作を1サイクルとして、T1〜T3を複数サイクル、例えば2〜5サイクル繰り返しても良い。T1〜T3を複数サイクル繰り返すことで、はんだ溶融前に、効率的に金属表面を改質することができる。
あるいは、上記タイミングT1〜T3の操作の繰り返しはせずに、もしくはT1〜T3の操作の繰り返しとともに、タイミングT3〜T5の気泡除去工程及び再還元工程を複数回繰り返しても良い。一例として、大面積基板を接合する場合や、気泡が抜けにくい場合には、T3〜T5の気泡除去工程及び再還元工程の操作を1サイクルとして、T3〜T5を複数サイクル、例えば2〜5サイクル繰り返す構成としてもよい。このようにして減圧と加圧を繰り返すことによって、溶融中のはんだに揺動が起こり、気泡が抜けやすくなるので、気泡除去効果が得られるためである。ただし、気泡除去工程の繰り返し回数が5回までは回数の増加とともに気泡率が小さくなるが、6サイクル以上繰り返してもそれ以上の効果は得られない場合が多い。
これらの繰り返し操作に加えて、T1〜T5を複数回繰り返す構成とすることも出来る。
再還元工程後、減圧炉11内を正圧の水素雰囲気にしたまま積層体10を急冷する冷却工程を実施する(タイミングT5〜T6)。冷却工程では、搬送ステージ13が、レール14を移動し、熱板16から冷却板15に移動される(位置D)。それによって、積層体10の冷却が開始される(タイミングT5)。積層体10は、例えば、毎分300℃の速度で冷却される。この際、炉内では、正圧の水素雰囲気が維持される。
冷却板15の温度および冷却時間は、はんだの冷却速度(凝固速度)を考慮して選定される。すなわち、本実施の形態では、熱膨張係数の異なるシリコンチップ4と絶縁基板2と金属ベース1とが同時にはんだ付けされるため、はんだ付けが完了した状態では、熱膨張係数の最も大きい金属ベース1が絶縁基板2の側に凸状となるように反ってしまう場合がある。その影響で、はんだ接合層を介して接合された積層体10には、最大0.3mm程度の反りが生じ得る。この反りが、次のワイヤボンディング工程まで持ち越されると、電気特性不良の発生原因となるので、ワイヤボンディング前に反りを除去する必要がある。そのためには、絶縁基板2と金属ベース1との間のはんだ接合層を短時間にクリープさせればよい。
クリープ速度を速くするために、冷却速度を毎分250℃以上、例えば毎分300℃とするのが好ましい。本出願人による、特開2003-297860号公報では、冷却速度が毎分250℃以上であれば、24時間以内に金属ベース1の反りが0〜−0.1mmの範囲(“−”は絶縁基板2側に凸であることを表す)に収まり、ワイヤボンディングへの悪影響をなくすことができることが示されている。換言すれば、冷却速度が毎分250℃未満では、金属ベース1の反りを十分に戻すことができず、ワイヤボンディングに悪影響を及ぼすおそれがある。また、はんだのクリープを速くして接合後の積層体10の残留応力をできるだけ前の工程で除去すれば、金属ベース1の変形を安定化させることができる。従って、冷却板15の温度および冷却時間は、はんだの冷却速度が毎分250℃以上となるように選定される。
そして、前記冷却工程後、前記減圧炉内を真空排気する二次減圧工程を実施する(タイミングT6〜T7)。二次減圧工程では、積層体10の温度が例えば50〜60℃になったら、減圧炉11内の水素の排気が開始される(タイミングT6)。
前記二次減圧工程後、前記減圧炉内を正圧の窒素雰囲気にした後、前記減圧炉を開放する工程を実施する(タイミングT7〜T8)。かかる工程では、水素の排気により、減圧炉11内の真空度が、例えば1〜10Paになったら、減圧炉11内に窒素ガスが導入される(タイミングT7)。そして、減圧炉11内が窒素ガスで置換され、炉内の水素濃度が爆発限界以下に達した後、減圧炉11が開放される(タイミングT8)。図4のタイミングT0〜T8の一連の操作は、繰り返し工程の回数にもよるが、概ね15分以内で完了することができる。そして、この一連の操作により、気泡のない高品質なはんだ接合層を有する半導体装置が得られる。なお、ここでは、窒素雰囲気を一例として説明したが、窒素に限定されず、任意の不活性ガスを用い、不活性ガス雰囲気とすることができる。
ところで、例えば、シリコンチップ4等の素子が5mm角以下の大きさである場合には、シリコンチップ−絶縁基板接合用はんだ材5の大きさも5mm角以下である。このように、シリコンチップおよびはんだ材の大きさが著しく小さいと、はんだ付けの前準備に時間がかかったり、シリコンチップ4とはんだ材5との位置合わせが十分でなく、接合不良が発生したりするおそれがある。そこで、このようなサイズのシリコンチップ4をはんだ接合する場合には、本発明に係る接合組立装置を用いて予備はんだをおこない、シリコンチップ4の裏面、例えばコレクタ電極面に、予めシリコンチップ−絶縁基板接合用はんだ5を設けておくのが望ましい。特に、はんだ材料として、酸化しやすいSnを主成分とし、Pbを含まないはんだを用いる場合、減圧炉11内の酸素濃度が数十ppm以下と極低酸素雰囲気であるため、予備はんだ後のはんだの表面酸化膜を極力少なくすることができる。そして、同様に、本発明に係る接合組立装置を用いて、予備はんだによりシリコンチップ4の裏面に設けたはんだを介して、絶縁基板2にシリコンチップ4をはんだ付けすることができる。なお、予備はんだは、上記のような小さいサイズのシリコンチップ4等の素子に対してだけ行なわれる処理ではなく、より大きなサイズのシリコンチップ4等の素子など、任意の素子に対して行なわれる場合があり、このような場合においても、本発明に係る半導体装置の製造方法は効果的に適用することができる。